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特許7675373AEI骨格型を有する希土類元素含有ゼオライト材料及びコーティングされたモノリス基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】AEI骨格型を有する希土類元素含有ゼオライト材料及びコーティングされたモノリス基材
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20250502BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20250502BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20250502BHJP
   B01J 39/09 20170101ALI20250502BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20250502BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 400
B01J20/18 D
B01J20/30
B01J32/00
B01J35/57 Z
B01J37/02 301C
B01J37/10
B01J37/30
B01J39/09
C01B39/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022530705
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2020131162
(87)【国際公開番号】W WO2021104264
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/120528
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524318674
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ モバイル エミッションズ カタリスツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BASF Mobile Emissions Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】33 Wood Avenue South, Iselin, New Jersey 08830, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】パルフレスク,アンドレイ-ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】マクガイア,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェイピン
(72)【発明者】
【氏名】シー,チューアン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106925341(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110404580(CN,A)
【文献】国際公開第2018/168787(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093257(US,A1)
【文献】特表2019-510620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108786911(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108097301(CN,A)
【文献】特表2019-513537(JP,A)
【文献】特表2014-506182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0103345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 49/90
C01B 33/20 - 39/54
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含み、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでいる、コーティングされたモノリス基材であって、Xが3価の元素を表し、前記ゼオライト材料が骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして1種以上の希土類元素を含有し、そして前記ゼオライト材料が該モノリス基材上に担持されており
前記1種以上の希土類元素がYであり、前記Yは、前記ゼオライト材料に含有されているSiO の100質量%に基づいて、0.5~4.5質量%の範囲の量で前記ゼオライト材料に含有されている、
コーティングされたモノリス基材。
【請求項2】
前記モノリス基材が、ウォールフローモノリス基材又はフロースルーモノリス基材である、請求項1に記載のコーティングされたモノリス基材。
【請求項3】
前記ゼオライト材料が、ウォッシュコート層として又はその成分として、前記モノリス基材上に担持されている、請求項1又は2に記載のコーティングされたモノリス基材。
【請求項4】
AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料であって、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでおり、Xが3価の元素を表し、前記ゼオライト材料が骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして1種以上の希土類元素を含有し、そして前記ゼオライト材料が、前記希土類元素含有ゼオライト材料を400~1,000℃の範囲の温度で、0.5~72時間の範囲の期間、水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものであって
前記1種以上の希土類元素がYであり、前記Yは、前記ゼオライト材料に含有されているSiO の100質量%に基づいて、0.5~4.5質量%の範囲の量で前記ゼオライト材料に含有されている、
希土類元素含有ゼオライト材料。
【請求項5】
前記ゼオライト材料が、1~25体積%のH Oを含有する雰囲気中で、前記希土類元素含有ゼオライト材料を水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、請求項4に記載のゼオライト材料。
【請求項6】
前記ゼオライト材料におけるSiO:Xモル比が、6~200の範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【請求項7】
Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料
【請求項8】
請求項1~3及び6~7のいずれか1項に記載のAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含む、コーティングされたモノリス基材の製造方法であって、以下の工程、
(1) AEI型骨格構造を有し、その骨格構造がSiO及びXを含んでいるゼオライト材料を提供する工程、
(2) 任意に、工程(1)で提供されたゼオライト材料を、H及び/又はNH 用いる1つ以上のイオン交換手順に供する工程、
(3) 工程(1)で提供されたゼオライト材料又は工程(2)で得られたゼオライト材料を、1種以上の希土類元素を用いる1つ以上のイオン交換手順に供する工程、
(4) 任意に、工程(3)で得られたゼオライト材料を、1種以上の遷移金属元素Mを用いた1つ以上のイオン交換手順に供する工程、及び
(5) 工程(3)又は(4)により得られたゼオライト材料をモノリス基材上に提供する工
を含及び
工程(3)において、前記1種以上の希土類元素がYである、
方法。
【請求項9】
工程(1)で提供されるゼオライト材料におけるSiO:Xモル比が、6~200の範囲である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項又はに記載の方法
【請求項11】
燃焼エンジンからの排気ガスを処理するための排気処理システムであって、請求項1からのいずれか1項に記載のコーティングされたモノリス基材又は希土類元素含有ゼオライト材料を含む、排気処理システム。
【請求項12】
請求項1からのいずれか1項に記載のコーティングされたモノリス基材又は希土類元素含有ゼオライト材料の使用方法であって、分子ふるいとして、吸着剤として、イオン交換のための、触媒又はその前駆体として、及び/又は触媒担体又はその前駆体としての、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料に関するものであり、該ゼオライト材料は、希土類元素含有ゼオライト材料を400~1,000℃の範囲の温度で水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである。さらに、本発明は、AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含むコーティングされたモノリス基材に関するものであり、ここで該ゼオライト材料が該モノリス基材上に担持されている。さらに本発明は、AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含むコーティングされたモノリス基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NH-SCRは、希薄燃焼エンジンの排気後処理におけるNOx削減に最も有効な技術である。この点に関して、Cu-SSZ-13は、優れた触媒性能及び水熱安定性というその著しい利点から、NH-SCR触媒として商品化されている。しかし、エンジン排気に対する規制がますます厳しくなる中で、特に冷間始動条件下の車両では、SCR触媒の低温NH-SCR活性及び水熱安定性をさらに高めることが強く望まれている。
【0003】
Zhao,Z.et al.,Appl.Catal.B:Environ.2017,217,421-428は、ナトリウムを使用するCu交換したAlに富むSSZ-13ゼオライトの低温活性及び水熱安定性の向上に関する。Wang,J.et al.,Ind.Eng.Chem.Res.2016,55,1174-1182は、セリウム安定化されたCu-SSZ-13とSCRにおける触媒としてのその使用とに関する。Iwasaki,M.et al.,Chem.Commun.2011,47,3966-3968は、直径が1.05~1.15オングストロームの希土類イオンを、Fe-ベータゼオライトの水熱安定性を改善するために使用する方法及びSCRにおけるその使用に関する。
【0004】
一方で、Shu,Y.et al.,Top Catal 2015,58,334-342は、希土類イオンを、FCC触媒として使用されるY型ゼオライトの水熱安定性を向上させるために使用する方法に関する。
【0005】
類似のCu担持量を有するSSZ-13ゼオライトの中で、Alに富むSSZ-13、すなわち、シリカのアルミナに対するモル比が低いSSZ-13は、SCRにおいてより高い活性を示す傾向がある。従ってSSZ-13ゼオライト中のAl含有量を高めることは、低温及び高温での活性を高めるための有望な方法である。しかしながら、Alに富むSSZ-13ゼオライトの主要な課題は、その高いアルミニウム含有量のため水熱安定性が低く、深部水熱エージング後に低温活性が著しく低下することである。その結果、Alに富むCu-SSZ-13触媒の比較的低い水熱安定性は、これをNH-SCR反応へ実用化することの妨げとなっている。
【0006】
その観点から、Zhao,Z.et al.,Catal.Sci.Technol.2019,9,241-251は、有機テンプレートフリー合成からの希土類イオン交換Cu-SSZ-13ゼオライトを提案しており、これはNH-SCRにおける水熱安定性の向上を示す。
【0007】
しかしながら、水熱安定性に関してだけでなく、遭遇する種々の反応条件下での触媒活性及び選択性に関しても、また、他の負の要因、例えば触媒被毒、及び特に触媒の硫黄被毒に対する触媒材料の抵抗性に関しても、特にSCRにおいて使用するための改良された触媒材料に対する必要性が残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Zhao,Z.et al.,Appl.Catal.B:Environ.2017,217,421-428
【文献】Wang,J.et al.,Ind.Eng.Chem.Res.2016,55,1174-1182
【文献】Iwasaki,M.et al.,Chem.Commun.2011,47,3966-3968
【文献】Shu,Y.et al.,Top Catal 2015,58,334-342
【文献】Zhao,Z.et al.,Catal.Sci.Technol.2019,9,241-251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、特にその水熱安定性及び触媒特性に関して、改善されたゼオライト材料を提供することである。さらに、本発明の目的は、特にNOの選択的触媒還元(SCR)において使用するための、改善された触媒を提供することである。前記目的は、本発明によるAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料、及びその製造のための本発明の方法、並びに触媒としての、特にSCRにおけるその使用によって達成される。このように驚くべきことに、AEI型骨格構造を有するゼオライト材料に希土類元素が含まれることにより、過酷な水熱老化による急激な崩壊が防止されることが見出された。さらに、非常に驚くべきことに、AEI型骨格構造を有するゼオライト材料に希土類元素が含まれることにより、AEI型骨格構造を有するゼオライト材料、特にAEI型骨格構造を有するゼオライト触媒の、SO等による化学的被毒に対する耐性が大幅に向上することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
よって本発明は、AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含み、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでいる、コーティングされたモノリス基材に関するものであり、ここでXは3価の元素を表し、ゼオライト材料は骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして1種以上の希土類元素を含有し、そしてゼオライト材料はモノリス基材上に担持されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、温度の関数としてのNO転化率を示す。
図2図2は、NO転化率(a)及びNO収率(b)を示す。
図3図3は、XRDパターンを示す。
図4図4は、27Al MAS NMRスペクトルを示す。
図5図5は、250℃での時間の関数としてのNO転化率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
モノリス基材の物理的又は化学的性質に関して、特別な制限は適用されない。よって、特にウォッシュコート層でコーティングされるのに適している限り、任意のモノリス基材を使用してよい。モノリス基材は、ウォールフローモノリス基材又はフロースルーモノリス基材であることが好ましい。
【0013】
モノリス基材がフロースルー基材である場合、フロースルーモノリス基材がハニカムモノリス基材であることが好ましい。
【0014】
モノリス基材がウォールフロー基材である場合、ウォールフローモノリス基材は、その入口端と出口端とで交互に塞がれた隣接チャネルを有するハニカムモノリス基材であることが好ましい。
【0015】
上述のように、モノリス基材の物理的又は化学的性質に関して、特別な制限は適用されない。よってモノリスは、任意の適した材料で構成されていてよい。モノリス基材は、セラミック及び/又は金属モノリス基材であることが好ましく、好ましくは、モノリス基材は、コーディエライト及び/又はシリコンカーバイド、好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくは、モノリス基材は、コーディエライト及び/又はシリコンカーバイドからなり、好ましくはコーディエライトからなる。
【0016】
ゼオライト材料は、任意の考えられる手段によってモノリス基材上に担持してよい。ゼオライト材料は、ウォッシュコート層として又はその成分として、モノリス基材上に担持されることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料であって、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでいるゼオライト材料に関するものであり、ここでXは3価の元素を表し、ゼオライト材料は骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして1種以上の希土類元素を含有し、そしてゼオライト材料は、希土類元素含有ゼオライト材料を400~1,000℃の範囲の温度で水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである。
【0018】
ゼオライト材料は、希土類元素含有ゼオライト材料を500~980℃の範囲、好ましくは600~960℃の範囲、より好ましくは700~940℃の範囲、より好ましくは800~920℃の範囲、及びより好ましくは850~900℃の範囲の温度で水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものであることが好ましい。
【0019】
水熱処理の期間に関して、特別な制限は適用されない。ゼオライト材料は、希土類元素含有ゼオライト材料を、0.5~72時間の範囲、好ましくは1~48時間の範囲、より好ましくは2~24時間の範囲、より好ましくは3~20時間の範囲、より好ましくは4~16時間の範囲、より好ましくは5~12時間の範囲、及びより好ましくは6~8時間の範囲の期間、水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものであることが好ましい。
【0020】
ゼオライト材料は、1~25体積%のHO、好ましくは3~20体積%、より好ましくは5~15体積%、より好ましくは7~13体積%、及びより好ましくは9~11体積%のHOを含有する雰囲気中で、希土類元素含有ゼオライト材料を水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものであることが好ましい。
【0021】
ゼオライト材料が、1~25体積%のHOを含有する雰囲気中で希土類元素含有ゼオライト材料を水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである場合、ゼオライト材料は、空気を含有する雰囲気中、好ましくは空気中で、希土類元素含有ゼオライト材料を水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものであることが好ましい。
【0022】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又は本明細書に開示するAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料の、SiO:Xモル比に関して、特別な制限は適用されない。コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料におけるSiO:Xモル比は、6~200の範囲、好ましくは8~100の範囲、より好ましくは10~50の範囲、より好ましくは13~30の範囲、より好ましくは15~25の範囲、より好ましくは17~23の範囲、及びより好ましくは19~21の範囲であることが好ましい。
【0023】
さらに、コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又は本明細書に開示するAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料のXに関して、特別な制限は適用されない。コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料のXが、Al、B、In、Ga、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料のXが、Alであることが特に好ましい。
【0024】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料の、骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の希土類元素の有効イオン半径は、1.3オングストローム以下、好ましくは1.25オングストローム以下、より好ましくは1.2オングストローム以下、より好ましくは1.15オングストローム以下、より好ましくは1.1オングストローム以下、より好ましくは1.05オングストローム以下、より好ましくは1.0オングストローム以下、より好ましくは0.95オングストローム以下、より好ましくは0.9オングストローム以下、及びより好ましくは0.88オングストローム以下であることが好ましい。
【0025】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料の1種以上の希土類元素は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、好ましくはPr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、より好ましくはSm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、より好ましくはYb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくは、1種以上の希土類元素はY及び/又はYbであり、好ましくはYである。
【0026】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料の、イオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の希土類元素は、+2及び/又は+3の酸化状態、好ましくは+3の酸化状態であることが好ましい。
【0027】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料の1種以上の希土類元素は、ゼオライト材料中に、ゼオライト材料に含有されているSiOの100質量%に基づいて、0.1~7質量%の範囲、好ましくは0.3~5質量%の範囲、より好ましくは0.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは0.7~4質量%の範囲、より好ましくは0.9~3.5質量%の範囲、より好ましくは1.1~3質量%の範囲、より好ましくは1.3~2.5質量%の範囲、より好ましくは1.5~2.2質量%の範囲、及びより好ましくは1.6~2質量%の範囲の量で含有されていることが好ましい。
【0028】
元素として計算された1種以上の希土類元素(RE)の、コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料に含有されるXに対するモル比RE:Xは、0.1~2の範囲、好ましくは0.15~1.2の範囲、より好ましくは0.18~0.8の範囲、より好ましくは0.2~0.5の範囲、より好ましくは0.22~0.35の範囲、より好ましくは0.24~0.3の範囲、及びより好ましくは0.26~0.28の範囲であることが好ましい。
【0029】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料は、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択される1種以上の遷移金属元素Mを、骨格構造のイオン交換部位で対イオンとしてさらに含有することが好ましく、好ましくは1種以上の遷移金属元素は、Fe、Cu、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、より好ましくは、Fe、Cu及びPd(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択され、より好ましくは、ゼオライト材料は、Fe及び/又はCu、好ましくはCuをさらに含有する。
【0030】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料が、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択される1種以上の遷移金属元素Mを、骨格構造のイオン交換部位で対イオンとしてさらに含有する場合、イオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の遷移金属元素Mは、+2及び/又は+3の酸化状態、好ましくは+2の酸化状態であることが好ましい。
【0031】
さらに、コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料が、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択される1種以上の遷移金属元素Mを、骨格構造のイオン交換部位で対イオンとしてさらに含有する場合、1種以上の遷移金属元素Mは、ゼオライト材料中に、ゼオライト材料に含有されているSiOの100質量%に基づいて、0.5~10質量%の範囲、好ましくは0.8~7質量%の範囲、より好ましくは1~5質量%の範囲、より好ましくは1.2~3.5質量%の範囲、より好ましくは1.5~3質量%の範囲、より好ましく1.8~2.8質量%の範囲、より好ましくは2~2.6質量%の範囲、及びより好ましくは2.2~2.4質量%の範囲の量で含有されていることが好ましい。
【0032】
さらに、コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料が、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択される1種以上の遷移金属元素Mを、骨格構造のイオン交換部位で対イオンとしてさらに含有する場合、元素として計算された1種以上の希土類元素Mの、ゼオライト材料に含有されるXに対するモル比M:Xは、0.01~3の範囲、好ましくは0.05~2の範囲、より好ましくは0.1~1.5の範囲、より好ましくは0.3~1の範囲、より好ましくは0.4~0.8の範囲、より好ましくは0.45~0.6の範囲、及びより好ましくは0.48~0.5の範囲であることが好ましい。
【0033】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料は、SSZ-39、SAPO-18及びSIZ-8(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択される1種以上のゼオライトを含むことが好ましく、好ましくはゼオライト材料はSSZ-39を含み、より好ましくはゼオライト材料はSSZ-39である。
【0034】
コーティングされたモノリス基材のゼオライト材料、又はAEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料の骨格は、実質的にリンを含有しないことが好ましく、好ましくは、ゼオライト材料は、実質的にリン及び/又はリン含有化合物を含有しない。
【0035】
さらに、本発明は、AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含み、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでいる、コーティングされたモノリス基材の製造方法に関するものであり、ここでXは3価元素を表し、該方法は、
(1) AEI型骨格構造を有し、その骨格構造がSiO及びXを含んでいるゼオライト材料を提供する工程、
(2) 任意に、工程(1)で提供されたゼオライト材料を、H及び/又はNH 、好ましくはNH を用いる1つ以上のイオン交換手順に供する工程、
(3) 工程(1)で提供されたゼオライト材料又は工程(2)で得られたゼオライト材料を、1種以上の希土類元素を用いる1つ以上のイオン交換手順に供する工程、
(4) 任意に、工程(3)で得られたゼオライト材料を、1種以上の遷移金属元素Mを用いた1つ以上のイオン交換手順に供する工程、及び
(5) 工程(3)又は(4)により得られたゼオライト材料をモノリス基材上に提供する工程であって、そのゼオライト材料がウォッシュコート層として又はウォッシュコート層の成分として、モノリス基材上に好ましくは提供される、提供する工程
を含む。
【0036】
モノリス基材は、ウォールフローモノリス基材又はフロースルーモノリス基材であることが好ましい。
【0037】
モノリス基材がフロースルー基材である場合、フロースルーモノリス基材はハニカムモノリス基材であることが好ましい。
【0038】
モノリス基材がウォールフロー基材である場合、ウォールフローモノリス基材は、入口端と出口端とで交互に塞がれた隣接チャネルを有するハニカムモノリス基材であることが好ましい。
【0039】
モノリス基材はセラミック及び/又は金属モノリス基材であることが好ましく、より好ましくは、モノリス基材は、コーディエライト及び/又はシリコンカーバイド、好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくは、モノリス基材は、コーディエライト及び/又はシリコンカーバイドからなり、好ましくはコーディエライトからなる。
【0040】
工程(1)で提供されるゼオライト材料のSiO:Xモル比に関して、特別な制限は適用されない。工程(1)で提供されるゼオライト材料におけるSiO:Xモル比は、6~200の範囲、より好ましくは8~100の範囲、より好ましくは10~50の範囲、より好ましくは13~30の範囲、より好ましくは15~25の範囲、より好ましくは17~23の範囲、及びより好ましくは19~21の範囲であることが好ましい。
【0041】
Xは、Al、B、In、Ga及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。XはAlであることが特に好ましい。
【0042】
工程(3)において、1種以上の希土類元素は、Y、La、Ce、Sm、及びYbからなる群(これらの2種以上の組み合わせを含む)から、より好ましくはY、La、Sm、及びYbからなる群(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくは、1種以上の希土類元素は、Y及び/又はYb、好ましくはYである。
【0043】
工程(3)において、イオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の希土類元素が、+3の酸化状態であることが好ましい。
【0044】
工程(1)で提供されるAEI型骨格構造を有するゼオライト材料は、SSZ-39、SAPO-18及びSIZ-8(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択される1種以上のゼオライトを含むことが好ましく、より好ましくは、ゼオライト材料はSSZ-39を含み、より好ましくは、ゼオライト材料はSSZ-39である。
【0045】
工程(1)で提供されるゼオライト材料の骨格は、実質的にリンを含有しないことが好ましく、より好ましくは、工程(1)で提供されるゼオライト材料は、実質的にリン及び/又はリン含有化合物を含有しない。
【0046】
1種以上の遷移金属元素Mは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくは、1種以上の遷移金属元素Mは、Fe、Cu、Pd及びPt(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択され、より好ましくは、Fe、Cu及びPd(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択され、より好ましくは、1種以上の遷移金属元素Mは、Fe及び/又はCu、好ましくはCuである。
【0047】
1種以上の遷移金属元素Mは、+2の酸化状態であることが好ましい。
【0048】
さらに、本発明は、本明細書に開示する実施形態のいずれか1つの方法によって得ることができる及び/又は得られたものであるコーティングされたモノリス基材に関する。
【0049】
さらに、本発明は、燃焼エンジン、好ましくはディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンからの排気ガスを処理するための排気処理システムに関し、排気処理システムは、本明細書に開示する実施形態のいずれか1つによるコーティングされたモノリス基材又は希土類元素含有ゼオライト材料を含む。
【0050】
さらに、本発明は、本明細書に開示する実施形態のいずれか1つによるコーティングされたモノリス基材又は希土類元素含有ゼオライト材料の使用方法であって、分子ふるいとして、吸着剤として、イオン交換のために、触媒又はその前駆体として、及び/又は触媒担体又はその前駆体として、好ましくは触媒又はその前駆体として及び/又は触媒担体又はその前駆体として、より好ましくは触媒又はその前駆体として、より好ましくは窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のための触媒として;COの貯蔵及び/又は吸着のために;NHの酸化のために、特にディーゼルシステムにおけるNHスリップの酸化のために;NOの分解のために;流動接触分解(FCC)プロセスにおける添加剤として;及び/又は有機転換反応、好ましくはアルコールのオレフィンへの転換、及びより好ましくはメタノールのオレフィンへの(MTO)触媒反応における触媒として;より好ましくは、窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のために、そしてより好ましくは、燃焼エンジン、好ましくはディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス中の窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のために、使用する方法に関する。
【0051】
単位バール(abs)は10Paの絶対圧力を表し、そして単位オングストロームは10-10mの長さを表す。
【0052】
本発明を、以下に示す従属的参照及び後方参照から得られる以下の実施形態の一式及び実施形態の組み合わせによってさらに説明する。特に、実施形態の範囲が言及される各場合において、例えば、「実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法」などの用語の文脈において、この範囲のすべての実施形態は当業者に明確に開示される、すなわち、この用語の表現は、「実施形態1、2、3及び4のいずれか1つに記載の方法」と同義であるとして、当業者に理解されることに留意されたい。さらに、以下の実施形態の一式は、保護の範囲を決定する特許請求の範囲の一式ではなく、本発明の一般的及び好ましい側面に向けられた説明の好適に構成された部分を表すものであることが明示的に留意される。
【0053】
1. AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含み、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでいる、コーティングされたモノリス基材であって、ここでXが3価の元素を表し、ゼオライト材料が骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして1種以上の希土類元素を含有し、そしてゼオライト材料がモノリス基材上に担持されている、コーティングされたモノリス基材。
【0054】
2. モノリス基材が、ウォールフローモノリス基材又はフロースルーモノリス基材である、実施形態1に記載のコーティングされたモノリス基材。
【0055】
3. フロースルーモノリス基材が、ハニカムモノリス基材である、実施形態2に記載のコーティングされたモノリス基材。
【0056】
4. ウォールフローモノリス基材が、その入口端と出口端とで交互に塞がれた隣接チャネルを有するハニカムモノリス基材である、実施形態2に記載のコーティングされたモノリス基材。
【0057】
5. モノリス基材がセラミック及び/又は金属モノリス基材であり、好ましくは、モノリス基材がコーディエライト及び/又はシリコンカーバイド、好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくは、モノリス基材がコーディエライト及び/又はシリコンカーバイドからなり、好ましくはコーディエライトからなる、実施形態1から4のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材。
【0058】
6. ゼオライト材料が、ウォッシュコート層として又はその成分として、モノリス基材上に担持される、実施形態1から5のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材。
【0059】
7. AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料であって、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでおり、Xが3価の元素を表し、ゼオライト材料が骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして1種以上の希土類元素を含有し、そしてゼオライト材料が、希土類元素含有ゼオライト材料を400~1,000℃の範囲の温度で水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、ゼオライト材料。
【0060】
8. ゼオライト材料が、希土類元素含有ゼオライト材料を500~980℃の範囲、好ましくは600~960℃の範囲、より好ましくは700~940℃の範囲、より好ましくは800~920℃の範囲、及びより好ましくは850~900℃の範囲の温度で水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、実施形態7に記載のゼオライト材料。
【0061】
9. ゼオライト材料が、希土類元素含有ゼオライト材料を、0.5~72時間の範囲、好ましくは1~48時間の範囲、より好ましくは2~24時間の範囲、より好ましくは3~20時間の範囲、より好ましくは4~16時間の範囲、より好ましくは5~12時間の範囲、及びより好ましくは6~8時間の範囲の期間、水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、実施形態7又は8に記載のゼオライト材料。
【0062】
10. ゼオライト材料が、1~25体積%のHO、好ましくは3~20体積%、より好ましくは5~15体積%、より好ましくは7~13体積%、及びより好ましくは9~11体積%のHOを含有する雰囲気中で、希土類元素含有ゼオライト材料を水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、実施形態7から9のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0063】
11. ゼオライト材料が、空気を含有する雰囲気中で希土類元素含有ゼオライト材料を水熱処理することを含む方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、実施形態10に記載のゼオライト材料。
【0064】
12. ゼオライト材料におけるSiO:Xモル比が、6~200の範囲、好ましくは8~100の範囲、より好ましくは10~50の範囲、より好ましくは13~30の範囲、より好ましくは15~25の範囲、より好ましくは17~23の範囲、及びより好ましくは19~21の範囲である、実施形態1から11のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0065】
13. Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、Xが好ましくはAlである、実施形態1から12のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0066】
14. ゼオライト材料の骨格構造のイオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の希土類元素の有効イオン半径が、1.3オングストローム以下、好ましくは1.25オングストローム以下、より好ましくは1.2オングストローム以下、より好ましくは1.15オングストローム以下、より好ましくは1.1オングストローム以下、より好ましくは1.05オングストローム以下、より好ましくは1.0オングストローム以下、より好ましくは0.95オングストローム以下、より好ましくは0.9オングストローム以下、及びより好ましくは0.88オングストローム以下である、実施形態1から13のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0067】
15. 1種以上の希土類元素が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、好ましくはPr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、より好ましくはSm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、より好ましくはYb、Lu、Y、及びSc(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択され、より好ましくは、1種以上の希土類元素がY及び/又はYb、好ましくはYである、実施形態1から14のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0068】
16. イオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の希土類元素が、+2及び/又は+3の酸価状態、好ましくは+3の酸化状態である、実施形態1から15のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0069】
17. 1種以上の希土類元素が、ゼオライト材料中に、ゼオライト材料に含有されているSiOの100質量%に基づいて、0.1~7質量%の範囲、好ましくは0.3~5質量%の範囲、より好ましくは0.5~4.5質量%の範囲、より好ましくは0.7~4質量%の範囲、より好ましくは0.9~3.5質量%の範囲、より好ましくは1.1~3質量%の範囲、より好ましくは1.3~2.5質量%の範囲、より好ましくは1.5~2.2質量%の範囲、及びより好ましくは1.6~2質量%の範囲の量で含有されている、実施形態1から16のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0070】
18. 元素として計算された1種以上の希土類元素(RE)の、ゼオライト材料に含有されるXに対するモル比RE:Xが、0.1~2の範囲、好ましくは0.15~1.2の範囲、より好ましくは0.18~0.8の範囲、より好ましくは0.2~0.5の範囲、より好ましくは0.22~0.35の範囲、より好ましくは0.24~0.3の範囲、及びより好ましくは0.26~0.28の範囲である、実施形態1から17のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0071】
19. ゼオライト材料が、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択される1種以上の遷移金属元素Mを、骨格構造のイオン交換部位で対イオンとしてさらに含有し、好ましくは1種以上の遷移金属元素が、Fe、Cu、Pd及びPt(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から、より好ましくは、Fe、Cu及びPd(これらの2種以上の組み合わせを含む)からなる群から選択され、より好ましくは、ゼオライト材料がFe及び/又はCu、好ましくはCuをさらに含有する、実施形態1から18のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0072】
20. イオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の遷移金属元素Mが、+2及び/又は+3の酸化状態、好ましくは+2の酸化状態である、実施形態19に記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0073】
21. 1種以上の遷移金属元素Mが、ゼオライト材料中に、ゼオライト材料に含有されているSiOの100質量%に基づいて、0.5~10質量%の範囲、好ましくは0.8~7質量%の範囲、より好ましくは1~5質量%の範囲、より好ましくは1.2~3.5質量%の範囲、より好ましくは1.5~3質量%の範囲、より好ましく1.8~2.8質量%の範囲、より好ましくは2~2.6質量%の範囲、及びより好ましくは2.2~2.4質量%の範囲の量で含有される、実施形態19又は20に記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0074】
22. 元素として計算された1種以上の希土類元素Mの、ゼオライト材料に含有されるXに対するモル比M:Xが、0.01~3の範囲、好ましくは0.05~2の範囲、より好ましくは0.1~1.5の範囲、より好ましくは0.3~1の範囲、より好ましくは0.4~0.8の範囲、より好ましくは0.45~0.6の範囲、及びより好ましくは0.48~0.5の範囲である、実施形態19から21のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0075】
23. AEI型骨格構造を有するゼオライト材料が、SSZ-39、SAPO-18及びSIZ-8(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択される1種以上のゼオライトを含み、好ましくはゼオライト材料がSSZ-39を含み、より好ましくはゼオライト材料がSSZ-39である、実施形態1から22のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0076】
24. ゼオライト材料の骨格が実質的にリンを含有しない、好ましくはゼオライト材料が実質的にリン及び/又はリン含有化合物を含有しない、実施形態1から23のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又はゼオライト材料。
【0077】
25. AEI型骨格構造を有する希土類元素含有ゼオライト材料を含み、そのゼオライト材料の骨格構造がSiO及びXを含んでいる、コーティングされたモノリス基材の製造方法であって、Xが3価元素を表し、以下の工程、
(1) AEI型骨格構造を有し、その骨格構造がSiO及びXを含んでいるゼオライト材料を提供する工程、
(2) 任意に、工程(1)で提供されたゼオライト材料を、H及び/又はNH 、好ましくはNH を用いる1つ以上のイオン交換手順に供する工程、
(3) 工程(1)で提供されたゼオライト材料又は工程(2)で得られたゼオライト材料を、1種以上の希土類元素を用いる1つ以上のイオン交換手順に供する工程、
(4) 任意に、工程(3)で得られたゼオライト材料を、1種以上の遷移金属元素Mを用いた1つ以上のイオン交換手順に供する工程、及び
(5) 工程(3)又は(4)により得られたゼオライト材料をモノリス基材上に提供する工程であって、そのゼオライト材料がウォッシュコート層として又はウォッシュコート層の成分として、モノリス基材上に好ましくは提供される、提供する工程
を含む、方法。
【0078】
26. モノリス基材がウォールフローモノリス基材又はフロースルーモノリス基材である、実施形態25に記載の方法。
【0079】
27. フロースルーモノリス基材がハニカムモノリス基材である、実施形態26に記載の方法。
【0080】
28. ウォールフローモノリス基材が、入口端と出口端とで交互に塞がれた隣接チャネルを有するハニカムモノリス基材である、実施形態26に記載の方法。
【0081】
29. モノリス基材がセラミック及び/又は金属モノリス基材であり、好ましくは、モノリス基材がコーディエライト及び/又はシリコンカーバイド、好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくは、モノリス基材がコーディエライト及び/又はシリコンカーバイドからなり、好ましくはコーディエライトからなる、実施形態25から28のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
30. 工程(1)で提供されるゼオライト材料におけるSiO:Xモル比が、6~200の範囲、好ましくは8~100の範囲、より好ましくは10~50の範囲、より好ましくは13~30の範囲、より好ましくは15~25の範囲、より好ましくは17~23の範囲、及びより好ましくは19~21の範囲である、実施形態25から29のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
31. Xが、Al、B、In、Ga、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、Xが好ましくはAlである、実施形態25から30のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
32. 工程(3)において、1種以上の希土類元素が、Y、La、Ce、Sm、及びYbからなる群(これらの2種以上の組み合わせを含む)から、好ましくはY、La、Sm、及びYbからなる群(これらの2種以上の組み合わせを含む)から選択され、より好ましくは、1種以上の希土類元素がY及び/又はYb、好ましくはYである、実施形態25から31のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
33. 工程(3)において、イオン交換部位で対イオンとして含有される1種以上の希土類元素が、+3の酸化状態である、実施形態25から32のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
34. 工程(1)で提供されるAEI型骨格構造を有するゼオライト材料が、SSZ-39、SAPO-18及びSIZ-8(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択される1種以上のゼオライトを含み、好ましくはゼオライト材料がSSZ-39を含み、より好ましくはゼオライト材料がSSZ-39である、実施形態25から33のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
35. 工程(1)で提供されるゼオライト材料の骨格が実質的にリンを含有せず、好ましくは、工程(1)で提供されるゼオライト材料が実質的にリン及び/又はリン含有化合物を含有しない、実施形態25から34のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
36. 1種以上の遷移金属元素Mが、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd及びPt(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択され、好ましくは、1種以上の遷移金属元素Mは、Fe、Cu、Pd及びPt(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択され、より好ましくは、Fe、Cu及びPd(これらの2種以上の混合物を含む)からなる群から選択され、より好ましくは、1種以上の遷移金属元素Mは、Fe及び/又はCu、好ましくはCuである、実施形態25から35のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
37. 1種以上の遷移金属元素Mが、+2の酸化状態である、実施形態25から36のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
38. 実施形態25から37のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる及び/又は得られたものである、コーティングされたモノリス基材。
【0091】
39. 燃焼エンジン、好ましくはディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンからの排気ガスを処理するための排気処理システムであって、実施形態1から24及び38のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又は希土類元素含有ゼオライト材料を含む、排気処理システム。
【0092】
40. 実施形態1から24及び38のいずれか1つに記載のコーティングされたモノリス基材又は希土類元素含有ゼオライト材料の使用方法であって、分子ふるいとして、吸着剤として、イオン交換のための、触媒又はその前駆体として、及び/又は触媒担体又はその前駆体として、好ましくは触媒又はその前駆体として及び/又は触媒担体又はその前駆体として、より好ましくは触媒又はその前駆体として、より好ましくは窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のための触媒として;COの貯蔵及び/又は吸着のための;NHの酸化のための、特にディーゼルシステムにおけるNHスリップの酸化のための;NOの分解のための;流動接触分解(FCC)プロセスにおける添加剤として;及び/又は有機転換反応、好ましくはアルコールのオレフィンへの転換、及びより好ましくはメタノールのオレフィンへの(MTO)触媒反応における触媒として;より好ましくは、窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のための、そしてより好ましくは、燃焼エンジン、好ましくはディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス中の窒素酸化物NOの選択的触媒還元(SCR)のための、使用方法。
【0093】
図面の説明
図1は、温度の関数としてのNO転化率であり、未使用の及び800℃でエージングしたCu-Y-AEI及びCu-CHA触媒における、実施例1及び比較例2それぞれからの、実施例2で試験した結果を示す。反応条件:500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のHO、残部N;GHSV=80,000/h-1
【0094】
図2は、NO転化率(a)及びNO収率(b)であり、900℃でエージングしたCu-Y-AEI及びCu-CHA触媒における、実施例1及び比較例2それぞれからの、実施例2で試験した結果を示す。反応条件:500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のHO、残部N;GHSV=80,000/h-1
【0095】
図3は、XRDパターンを示し、未使用の及び900℃でエージングしたCu-Y-AEI及びCu-CHA触媒における、実施例1及び比較例2それぞれからの、実施例2でエージングした結果を示す。
【0096】
図4は、27Al MAS NMRスペクトルであり、未使用の及び900℃でエージングしたCu-Y-AEI及びCu-CHA触媒における、実施例1及び比較例2それぞれからの、実施例2でエージングした結果を示す。
【0097】
図5は、250℃での時間の関数としてのNO転化率であり、Cu-AEI、Cu-Y-AEI、及びCu-CHA触媒について、比較例1、実施例1、及び比較例2それぞれからの、実施例2でSOの存在下で試験した結果を示す。反応条件:500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のCO、5%のHO、50ppmのSO、GHSV=80,000/h-1
【実施例
【0098】
触媒の特徴
参考例1: 触媒材料中のカチオン含有量の決定
触媒中のカチオン含有量を誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES、Optima2000DV、米国)により決定した。
【0099】
参考例2: ゼオライト材料のX線回折パターンの決定
X線回折計(Rigaku D-Max Rotaflex)で、Cu Kα線(λ=1.5418Å)を用いて2~50°の2θ範囲、及び5°/分の走査速度で、X線回折(XRD)分析を行った。JASCO V550スペクトロメータで190~800nmの範囲でUV-Vis拡散反射スペクトルを記録した。
【0100】
参考例3: ゼオライト材料の27Al MAS NMRスペクトルの決定
全固体NMR実験を行った。スピン速度14kHzで4mmのMAS NMRプローブを用いて、AgilentDD2-500MHzスペクトロメータ上130.2MHzで、27Al MAS NMRスペクトルを取得した。π/12のフリップ角、及び1sパルス遅延の400回の走査に対して27Al MAS NMRスペクトルを蓄積した。化学シフトは1%Al(NO水溶液を基準とした。
【0101】
参考例4: Na-SSZ-39の調製
a) N,N-ジエチル-cis-2,6-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド(DMPOH)の提供
使用材料:
cis-2,6-ジメチルピペリジン(Sigma-Aldrich Reagent Co.,Ltd.) 40g
ヨードエタン(99%、Aladdin Chemical Co.,Ltd.) 222g
カリウムバイカーボネート(KHCO、AR、99.5%、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.) 71g
メタノール(Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.) 110g
ジエチルエーテル(AR、99.5%、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.) 1,000g
アニオン交換樹脂(Amberlite IRN-78、OH型、Thermofisher) 300g
cis-2,6-ジメチルピペリジン、ヨードエタン及び過剰のKHCOをメタノール溶媒の存在下で反応させた後、70℃で4日間還流することにより、N,N-ジエチル-cis-2,6-ジメチルピペリジンヨージドを合成した。KHCOを濾過し、次いで溶媒及び過剰のヨードエタンを回転蒸発によって除去した。生成物をエーテルで洗浄した。分子構造を、H及び13C核磁気共鳴(NMR)を用いて検証した。アニオン交換樹脂を用いて生成物をヨージド型からヒドロキシド型(DMPOHとして表す)に変換した。
【0102】
b) 骨格型AEIを有するゼオライト材料の調製
使用材料:
ナトリウムアルミネート(NaAlO、AR、99%、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.) 0.038g
脱イオン水 4.4g
上記の(aによる)DMPOH溶液;水中0.23M 10g
ナトリウムヒドロキシド(NaOH、AR、96%、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.) 0.55g
コロイダルシリカ(水中40質量%のSiO、Sigma-Aldrich Reagent Co.,Ltd.) 2.95g
AEI種(上記比較例1により調製) 0.02g
【0103】
NaAlOを脱イオン水に溶解し、次いでDMPOH溶液を添加した。室温で2時間撹拌した後、NaOHを導入し、次いでコロイダルシリカ及びAEI種を添加した。これにより、以下のモル組成を有する合成混合物が得られた:
1.0のSiO:0.0083のAl:0.35のNaO:0.12のDMPOH:44のHO:0.017のAEIゼオライト種
【0104】
SiO:Alの比は120:1であった。室温で10分間撹拌した後、前記合成混合物をテフロン(登録商標)内張りオートクレーブ炉に移し、そして140℃で3日間結晶化させた。ろ過、洗浄、乾燥、及び550℃で4時間のか焼後、生成物が得られ、XRD解析により骨格型AEIを有するゼオライト材料(Si/Al=10)と指定した。
【0105】
実施例1:銅を担持したAEI骨格構造を有するイットリウム含有ゼオライト材料の調製
参考例4から得たAEI構造のNa-SSZ-39を、0.5MのNHNO水溶液で80℃でNH-型に交換した後、ろ過し、空気流中で乾燥及びか焼して、H-AEIを得た。H-AEIを0.002MのY(NO水溶液(pH=3.5)で180℃で12時間イオン交換した。その後、ゼオライトスラリーを濾過し、脱イオン水で洗浄し、そして110℃で乾燥させた。Y-AEIを0.016MのCu(CHCOO)水溶液で50℃で4時間イオン交換することにより、Cuを導入した。その後、ゼオライトスラリーを濾過し、脱イオン水で洗浄し、110℃で12時間乾燥させた。続いて、試料をマッフル炉中、550℃で5時間、2℃/分の加熱速度でか焼した。
【0106】
得られた触媒は2.3Cu-1.8Y-AEIと表され、それぞれICPにより決定されたCu及びYの含有量が示された。
【0107】
比較例1: 銅を担持したAEI骨格構造を有する市販のゼオライト材料の調製
参考例4から得たAEI構造のNa-SSZ-39を、0.5MのNHNO水溶液で80℃でNH-型に交換した後、ろ過、空気流中で乾燥及びか焼して、H-AEIを得た。H-AEIを0.01MのCu(CHCOO)水溶液で50℃で4時間イオン交換することにより、Cuを導入した。その後、ゼオライトスラリーを濾過し、脱イオン水で洗浄し、そして110℃で12時間乾燥させた。続いて、試料をマッフル炉中、550℃で5時間、2℃/分の加熱速度でか焼した。
【0108】
得られた触媒は3.0Cu-AEIと表され、ICPにより決定されたCuの含有量が示された。
【0109】
比較例2: 銅を担持したCHA骨格構造を有する市販のゼオライト材料の調製
比較のため、有機テンプレート合成から得られた従来の市販のNa-SSZ-13ゼオライト(Si/Al=15、WO2015/185625Aの実施例1に記載の手順に従って調製されたもの)を、実施例1の手順によりアンモニウム及び銅で連続的にイオン交換したが、銅を担持する前に希土類元素を担持せずに、2.5質量%の銅を有するSSZ-13を得た。
【0110】
実施例2: NOの選択的触媒還元における触媒試験
反応試験に先立ち、すべての触媒粉末を2MPaでペレット化し、それから粉砕及びふるい分けして、40~60メッシュの粒子を得た。
【0111】
試験では、触媒試料を未使用の状態及びエージングした状態で試験した。エージングのため、それぞれの試料を800℃で、10%HO/空気中で16時間水熱エージングした。或いは、それぞれの試料を900℃で、10%HO/空気中で7時間エージングした。
【0112】
NH-SCR活性の測定は、NO、NH、C、O、SOCO、HO、及びNを所望の濃度で混合するための8チャネルのガス供給システムを有するマイクロ固定床石英反応器(内径6mm)中で行った。典型的には、反応ガス混合物は、500ppmのNO、500ppmのNH、10%のO、5%のHO、50ppmのSO(必要に応じて)及び残部Nを含有した。総流量は240ml/分であり、これはガス時空間速度(GHSV)約80,0000h-1に相当した。NO、NO、及びNOの含有量は、化学発光分析計(ECO Physics、スイス)及び赤外吸収分光計(Sick Maihak、ドイツ)を使用して連続的に監視した。分析計のアンモニア転化による誤差を避けるため、リン酸溶液を含有するアンモニアトラップを上流に設置した。各温度でSCR反応が定常状態に達したときにすべてのデータを取得した。
【0113】
Cu-AEI及びCu-Y-AEIの水熱安定性
比較例1からの未使用のCu-AEIは、比較例2からのベンチマークのCu-CHAよりも、低温及び高温で良好なSCR性能を示した(図1参照)。Cu-AEIのNO転化率は、全反応温度窓で90%を超えていた。希土類YのCu-AEIへの添加は低温及び高温でNO転化率を低下させるが、Cu-AEIは高温で依然としてベンチマークのCu-CHAよりも高いNO転化率を示す。800℃でエージングした後、エージングしたCu-AEIは、低温で低いSCR活性を示した。しかし、エージングした2.3Cu-1.8Y-AEIは、全体を通してベンチマークのCu-CHAよりも良い性能を示した。
【0114】
図1に示す結果に基づくと、Cu-AEIはエージングの前後の両方でCu-CHAよりもはるかに良好であることに留意しなければならない。よってCu-CHAとは対照的に、NH-SCRにおけるNOの転換性能を考慮すると、Cu-AEIの水熱安定化は全く必要ない。
【0115】
しかし、図2から分かるように、900℃での水熱エージング後、Cu-AEI上のNO転化率は、Cu-CHAに比べて大幅に低下した。図3及び図4から分かるように、Cu-CHA及びCu-AEIのX線回折パターンを未使用の状態及び900℃での水熱エージング後で比較すると、前述した活性の低下は、材料の骨格構造の崩壊によるものである。この発見は、800℃での広範な水熱エージングの後でさえ、図1に示されたCu-CHAと比較すると高い材料の熱安定性を考えると、非常に予想外であった。
【0116】
しかしながら、極めて驚くべきことに、実施例1に係る材料にイットリウムを含ませることにより、水熱老化による前述の急激な崩壊を防止できることが分かった。よって図3のX線回折パターンから分かるように、実施例1からのCu-Y-AEI材料は、900℃での同じ条件下での水熱エージング後でもその構造を維持していた。図427Al MAS NMRスペクトルから分かるように、900℃での厳しい水熱エージングの後でも、骨格AlはCu-Y-AEI中に維持されるが、Cu-AEI中に骨格Alは維持されない。さらに、図2から分かるように、前記材料は高いNO転化活性を示し、これは高温でCu-CHAよりも明らかに優れている。このように、Cu-CHAとは異なり、Cu-AEIの触媒活性は800℃のような高温での水熱エージング後でも熱分解を受けないが、900℃のようなさらに高温での骨格構造の崩壊は、イットリウムをゼオライト材料中にイオン交換することによって効果的に防止できることが予想外にも判明した。
【0117】
Cu-Y-AEIのSO耐性
図5は、SOの存在下で実施例2で試験した比較例1、実施例1、及び比較例2からのCu-AEI、Cu-Y-AEI、及びCu-CHA触媒それぞれにおけるSO被毒の影響を示す。図5から、SOの存在下250℃で、Cu-Y-AEIは22時間運転後に76%という試験触媒の中で最高のNO転化率を有することが明らかである。SO耐性能力は、2.3Cu-1.8Y-AEI>Cu-AEI>2.5Cu-CHA(FR0287)である。
【0118】
しかし特に、試験手順の開始時に極めて驚くべきことに判明したのは、Cu-Y-AEI試料が1時間を超える試験中に全く阻害を示さなかったのに対し、他のすべての試料が、ガス流へのSOの添加開始直後に、既にSO被毒による触媒活性の正味の減少を示したことである(図5の囲み領域を参照)。このように、NH-SCRにおいてCu-Y-AEIを用いると、SO被毒の影響が実質的に遅延することが、全く予想外にも判明した。
【0119】
引用した先行技術:
- Zhao,Z.et al.,Appl.Catal.B:Environ.2017,217,421-428
- Wang,J.et al.,Ind.Eng.Chem.Res.2016,55,1174-1182
- Iwasaki,M.et al.,Chem.Commun.2011,47,3966-3968
- Shu,Y.et al.,Top Catal 2015,58,334-342
- Zhao,Z.et al.,Catal.Sci.Technol.2019,9,241-251
図1
図2
図3
図4
図5