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特許7675471拡散障壁層を具備する集積構造体及びこれを含む電子素子
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  • 特許-拡散障壁層を具備する集積構造体及びこれを含む電子素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】拡散障壁層を具備する集積構造体及びこれを含む電子素子
(51)【国際特許分類】
   H10D 8/60 20250101AFI20250502BHJP
   H10D 8/01 20250101ALI20250502BHJP
【FI】
H10D8/60 F
H10D8/01 S
H10D8/60 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024192207
(22)【出願日】2024-10-31
【審査請求日】2024-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2023-0151913
(32)【優先日】2023-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516172857
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション キョンサン ナショナル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ホン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ド ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ス ヨン
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2017-0014870(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/293735(US,A1)
【文献】韓国登録特許第1732943(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0000107(KR,A)
【文献】特開2020-123612(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093206(WO,A1)
【文献】Priyanka Kurari et al.,High performance W/n-Si Schottky diode using black phosphorous as an interlayer,2019 IEEE International Conference on Electron Devices and Solid-State Circuits,米国,IEEE,2019年06月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 8/60
H10D 8/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型シリコンまたはp型SOI(Silicon-on-insulator)基板と、
前記基板と離間して金属または金属化合物を含む導電層と、
前記基板と前記導電層との間に設けられ、p型半導体性物質を含む拡散障壁層と、
を含み、
前記基板及び前記拡散障壁層は、直接接触してファンデルワールス結合を形成し、
前記拡散障壁層は前記基板から前記導電層への電子(electron)の注入を遮り、前記導電層から前記基板への正孔(hole)の注入を行う
ことを特徴とする集積構造体。
【請求項2】
前記拡散障壁層は、単層(monolayer)である
請求項1に記載の集積構造体。
【請求項3】
前記拡散障壁層の厚さは、0.1~10Åである
請求項1に記載の集積構造体。
【請求項4】
前記拡散障壁層は、遷移金属ダイカルコゲナイド物質を含む
請求項1に記載の集積構造体。
【請求項5】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、一般式MXで表され、
前記Mは、遷移金属元素であって、Mo、W、Nb、V、Ta、Ti、Zr、Hf、Tc、Re、Ru、Co、Pd、Pt、Cu、Ga、In、Sn、Ge、Pbまたはこれらの中から選択される2以上の組み合わせを含み、
前記Xは、カルコゲン(chalcogen)元素であって、S、Se、Teまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含む
請求項4に記載の集積構造体。
【請求項6】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、ZrS、ZrSe、HfS、HfSe、NbSe、ReSe、PdTeまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含む
請求項4に記載の集積構造体。
【請求項7】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質の結晶構造は、平面方向に六方晶(hexagonal)構造である
請求項4に記載の集積構造体。
【請求項8】
前記金属は、Ti、Ni、Cr/Au、Ag及びこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含む
請求項1に記載の集積構造体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の集積構造体を含む
ことを特徴とする電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散障壁層を具備する集積構造体に関し、詳しくは、金属-半導体界面における界面欠陷を減少させるための拡散障壁層を具備する集積構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
人工知能及びモノのインターネット(IoT、Internet of Things)融合技術の具現のために、低電力駆動が可能であり、且つ知能化された半導体シナプス素子の開発が全世界的に盛んに進められている。特に、ポストコロナ時代を迎えて実感型非対面産業と国家安全網の高度化のためには、自律的に情報を収集して学習及び判断してこれを実行するための自律制御装置が必要である。また、ビッグデータの分析、自律走行自動車などを含めた第4次産業に多く活用されている人工知能技術は、ディープラーニングアルゴリズムの演算に最適化された人工知能半導体として、NPU(Neural Processing Unit、神経網処理装置)の必要性が台頭しており、既存のCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)中心のコンピューティング半導体の大部分が人工知能半導体であるNPUに切り替えられることと見込まれているから、大容量の情報を高速・低電力動作で処理可能な駆動性能を持つ高度の半導体開発の重要性は一層強化されている。
【0003】
金属-半導体界面は、電子の注入と電流の出力に直接的な影響を与えることができ、半導体素子の性能を決める要素の一つであって、電極などとして用いられる金属物質と半導体チャンネルとの間の界面、特に、物質(原子)の拡散(diffusion)、相互混合(intermixing)などによって形成される金属-半導体界面の欠陷を減らす技術は必須である。さらに、過去と異なり現在の半導体工程技術がサブナノ(sub-1nm)水準に近接するに伴い、超微細スケールでの準理想的界面設計は今後の超微細化及び高集積化半導体の限界を克服するために非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述した問題を解決するために案出されたもので、超微細化及び高集積化半導体の限界を克服するために、金属-半導体界面の欠陷の制御が可能な集積構造体及びこれを含む電子素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を達成するために本発明の好ましい態様による集積構造体は、シリコンまたはSOI(Silicon-on-insulator)基板と、前記基板と離間して金属または金属化合物を含む導電層と、前記基板と前記導電層との間に設けられる拡散障壁層と、を含むことができる。
【0006】
前記基板及び前記拡散障壁層は、直接接触してファンデルワールス結合を形成することができる。
【0007】
前記拡散障壁層は、p型半導体性物質を含むことができる。
【0008】
前記拡散障壁層は、単層(monolayer)であってもよい。
【0009】
前記拡散障壁層の厚さは、0.1~10Åであってもよい。
【0010】
前記拡散障壁層は、遷移金属ダイカルコゲナイド物質を含むことができる。
【0011】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、一般式MXで表され、前記Mは、遷移金属元素であって、Mo、W、Nb、V、Ta、Ti、Zr、Hf、Tc、Re、Ru、Co、Pd、Pt、Cu、Ga、In、Sn、Ge、Pbまたはこれらの中から選択される2以上の組み合わせを含み、前記Xは、カルコゲン(chalcogen)元素であって、S、Se、Teまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含んでもよい。
【0012】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、ZrS、ZrSe、HfS、HfSe、NbSe、ReSe、PdTeまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含んでもよい。
【0013】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質の結晶構造は、平面方向に六方晶(hexagonal)構造であってもよい。
【0014】
前記金属は、Ti、Ni、Cr/Au、Ag及びこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含んでもよい。
【0015】
前記導電層および前記基板の物質(原子)の移動が遮られることを特徴とする。
【0016】
前記基板から前記導電層への電子(electron)の注入が遮られることを特徴とする。
【0017】
前記導電層から前記基板への正孔(hole)の注入が行われることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記したいずれか一つに記載の集積構造体を含む電子素子であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、本発明の好ましい実施形態による集積構造体は、シリコンまたはSOI(Silicon-on-insulator)基板と、これと離間して金属または金属化合物を含む導電層と、これらの間に設けられた拡散障壁層とを含むことができる。前記基板及び前記拡散障壁層は、直接接触してファンデルワールス結合を形成することができる。前記拡散障壁層は、基板と導電層との間の物質(原子)の移動を遮断して基板格子内への金属原子の拡散を遮断することができ、また前記導電層から基板方向への正孔注入を制御することができるので、超微細化及び高集積化半導体の限界を克服するために金属-半導体界面欠陷を制御することができる。
【0020】
本発明の効果は、前述したものに制限されなく、明細書の全般の記載から通常の技術者に明確に理解できるものの、明らかに言及されていない他の効果も含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態による集積構造体の断面で拡散障壁層の駆動模式図である。
図2】本発明の一実施形態による集積構造体に対して金属-半導体界面の断面を撮影した透過電子顕微鏡(TEM)の結果、EDS基盤元素マッピングの結果及び各構成要素の元素情報分析の結果である。
図3】本発明の一実施形態による集積構造体に対して金属-拡散障壁層-半導体界面の断面を示した模式図であって、金属-拡散障壁層-半導体界面の断面を撮影した透過電子顕微鏡(TEM)の結果、EDS基盤元素マッピングの結果である。
図4】本発明の一実施形態による集積構造体に対して、(a)、(c)金属-半導体界面のエネルギーダイヤグラム及びC-Vグラフであり、(b)、(d)金属-拡散障壁層-半導体界面のエネルギーダイヤグラム及びC-Vグラフである。
図5】本発明の一実施形態による集積構造体に対して、(a)集積構造体を具備する電子素子の模式図であり、拡散障壁層の有無による(b)I-Vグラフであり、(c)On/Off比及び(d)最大移動度(Max mobility)を示した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳しく説明する。本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付の図面と一緒に詳しく後述する実施形態を参照すれば明確になる。本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、異なる多様な形態で具現でき、ただ本実施形態は本発明の開示を完全にするとともに、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものに過ぎず、本発明は請求範囲の範疇によって定義されるだけである。明細書の全般に亘って同一の構成要素に同じ符号を付してある。
他の定義がなければ、本明細書で使われるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解されることができる意味で使われることができる。また、一般的に使われる辞典上に定義されているような用語は明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。本明細書で使われた用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。本明細書で、単数型は文言で特に言及されない限り複数型も含む。
本明細書で使われる「含む(comprises)」及び/または「含んでいる(comprising)」と言及された構成要素、段階、動作及び/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0023】
拡散障壁層を具備する集積構造体
図1は、本発明の一実施形態による拡散障壁層20を具備する集積構造体100の断面を示した模式図である。
【0024】
図1に示したように、集積構造体100は、シリコンまたはSOI(Silicon-on-insulator)基板10と、これと離間して金属または金属化合物を含む導電層30と、これらの間に設けられた拡散障壁層20と、を含むことができる。拡散障壁層20は、薄膜であって、基板10と導電層30との間の物質(原子、電子、正孔など)の移動、例えば、導電層30から基板10への金属原子の移動を遮断する役割を果たすことができる。
【0025】
基板10は、半導体物質であって、シリコンまたはSOI(Silicon-on-insulator)基板であってもよく、詳しくは、p型半導体物質であってp型シリコンであってもよい。基板10は、更にドーパント(dopant)でドーピングされた物質を用いることもできるが、これに限定されるものではない。
【0026】
導電層30は、金属または金属化合物を含むことができる。前記金属または金属化合物は、Ti、Ni、Cr/Au、Ag及びこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含む金属元素を含むことができ、金属電極(metal electrode)、金属配線(metal interconnection)などの電子素子用に適用されるのに適する種類の金属元素を含む種類のものであれば限定されることなく使用可能である。
【0027】
基板10と拡散障壁層20は直接的に接触してバンデルバルス力(vdW、van der Waals force)によるファンデルワールス結合を形成することができる。具体的に、基板10の表面のシリコン格子と拡散障壁層20との接合は、バンデルバルス力による結合で形成されることができる。各層の原子は互いに交差されて混合若しくは浸透されないながら各界面を物理的に明らかに区分させるもの、すなわち基板10と拡散障壁層20との間にバンデルバルスギャップ(van der Waals gap)を形成するものであってもよい。特に、拡散障壁層20の製造過程において、具体的に、転写(transfer)工程、より具体的に、湿式転写(wet transfer)工程の適用により表面の物理的損傷が最小化されるとともに、均一な(uniform)厚さの拡散障壁層20が形成されることができる。基板10の表面にファンデルワールス結合によって形成された拡散障壁層20が設けられることで、基板10表面の反応性の高いダングリングボンド(dangling bond)が除去され、基板10固有の物性が保存することができるので、高集積素子の具現に有利に適用され得る。
【0028】
拡散障壁層20と導電層30も直接接触を形成することができるが、これら2つの間の界面は理想的にはバンデルバルス(vdW)結合が形成されることができるが、実際にはバンデルバルス(vdW)結合を形成することができずに拡散障壁層20中に導電層30の金属原子の拡散による相互混合(intermixing)領域を含むこともできる。
【0029】
拡散障壁層20を通じて基板10及び導電層30の物質(原子)の移動/拡散を制御することができ、これによって、電子(electron)の注入を制御することができる。従来の直接接触を形成する金属-半導体界面では金属電極を形成する通常の蒸着方法によって金属原子がシリコン結晶内に拡散(diffusion)または浸透(penetration)して異種元素の相互混合(intermixing)の欠陷が形成されることがある。しかし、本発明による集積構造体は、拡散障壁層20を具備することで、導電層30から基板10格子内への方向に(例えば、金属→Siの方向)金属原子が拡散することを遮断することができる。よって、金属原子がシリコン基板結晶内に拡散して相互混合(intermixing)の結合を形成することと、シリコンと金属の化合物であるシリサイド(Silicide)を形成することを抑制して界面欠陥の密度を減少させることで基板10から導電層30への逆方向(例えば、Si→金属方向)の電子(electron)の注入を遮断する効果を奏することができる。これにより、基板10と導電層30との間の界面での接触抵抗が減少し、トラップ密度が減少して、ショットキー障壁の高さが減少することができる。よって、拡散障壁層20を通じて電子素子のリーク電流を減らして整流特性を極大化して準理想的界面を形成することができるようになるので、電気的特性の改善効果を奏することができる。
【0030】
また、拡散障壁層20を通じて導電層30から基板10への方向に正孔(hole)の注入を制御することができる。具体的に、拡散障壁層20を通じて導電層30の金属から基板10への方向に(例えば、金属→Si方向)の正孔(hole)注入の効率を向上させて、素子の駆動性能であるON/OFF比を100倍以上向上させることできる。これは拡散障壁層20の適用によって、シリコン(Si)格子内への金属原子の浸透による金属誘起ギャップ状態(Metal induced gap state)の形成を抑制されて、金属/半導体界面でのフェルミレベルピニング(Fermi level pinning)現象なしに電圧駆動によるフェルミレベルを自在に制御し得る。その結果、このような原因によって、正孔注入を邪魔する要素を根本的に取り除いて、正孔注入の効率向上ができるものと説明できる。
【0031】
特に、正孔(hole)注入の効率を高めるために、拡散障壁層20を単層(monolayer)で形成することができ、一つ以上の層が繰り返して積層されて2層以上の多層(multilayer)で形成される場合は、正孔(hole)注入の効率が低下する恐れがあるので望ましくない。正孔(hole)注入の効率を高める単層の拡散障壁層20の厚さは、ナノ乃至サブナノスケール以下の薄い(shallow)厚さを有することができ、1nm以下で極めて薄くてもよく、薄い厚さを有し、かつ優れた特性を維持することができる。拡散障壁層20の厚さは、0.1~10Åであってもよく、具体的に、0.3~9Å、より具体的に、0.5~8Åであってもよい。一実施形態において、拡散障壁層20の厚さは7Åであってもよいが、これに限定されるものではない。このような拡散障壁層20は、微細線幅を有する高集積素子の具現に有利に適用され得る。
【0032】
また、拡散障壁層20は、約10-2Ω・cm以下、具体的に約10-4~10-2Ω・cmの低い比抵抗(resistivity)値を有してもよい。拡散障壁層20が低い比抵抗を有するので金属や半金属(semimetal)に類似した水準の優れた電気伝導度を有してもよい。ただし、拡散障壁層20の厚さが極めて薄い場合、例えば1nm以下の場合には半導体水準の比抵抗値を有してもよい。
【0033】
拡散障壁層20は半導体性物質であって、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD、Transition Metal Dichalcogenide)物質を含むことができる。遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、2次元結晶構造を持ち、優れた拡散防止特性を有することができ、非常に薄い厚さで形成されることができるなど、多様な長所を有することができる。前記遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、ドーピングなしにn型またはp型半導体特性を有する物質であってもよく、特に、前記遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)はp型半導体特性を有する物質であることができる。ドーピング特性を強化するためにはカルコゲン原子層での原子置換工程が更に行われてもよい。
【0034】
p型半導体特性を有する前記遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)層は、p型シリコン基板10と接触することで、シリコン基板10の表面にあるシリコンダングリングボンド(Si dangling bonds)が空気中の酸素原子と化学結合して形成される絶縁体である二酸化シリコン(SiO)を抑制することができるとともに、導電層30の蒸着工程時、導電層30の金属原子が直接シリコン格子内に拡散することと、シリサイド(Silicide)が形成されることを抑制することができるので、シリコン基板の不均質性の問題を基本的に遮断することができる。これにより、シリコンバンドの構造における金属誘起ギャップ状態(Metal induced gap state)の形成を遮断することで、その結果、フェルミレベルピニング(Fermi level pinning)現象を抑制することができる。
【0035】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、一般式MXで表され、ここでMは遷移金属元素であって、例えば、Mo、W、Nb、V、Ta、Ti、Zr、Hf、Tc、Re、Ru、Co、Pd、Pt、Cu、Ga、In、Sn、Ge、Pbまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含むことができ、Xは、カルコゲン(chalcogen)元素であって、S、Se、Teまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含むことができる。具体的に、前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、ZrS、ZrSe、HfS、HfSe、NbSe、ReSe、PdTeまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含むことができる。より具体的に、前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質は、MoS、MoSe、WS、WSeまたはこれらの中で選択される2以上の組み合わせを含むことができ、一実施形態においてWSeを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質の結晶構造(crystal structure)は、遷移金属であるMとカルコゲン元素であるXとの間に共有結合をしており、これを基盤として平面方向に六方晶(hexagonal)構造を有するようになる。更なる相変化段階若しくはドーピング段階によって結晶構造を変化させてもよい。
【0037】
また、拡散障壁層20として前記遷移金属ダイカルコゲナイド物質を具備する場合、層の外へ延びるダングリングボンド(dangling bond)が不在するので、基板10上に形成される際に基板10固有の物性が保存することができ、高集積素子の具現に有利に適用可能である。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態による集積構造体に対して金属-半導体界面の断面を撮影した透過電子顕微鏡(TEM)の結果、その断面に対する元素マッピングの結果及びEDS分析の結果である。
【0039】
図2を参照すれば、WSe拡散障壁層を具備しないで金属(Ni)電極が基板と直接接触する集積構造体は、金属原子がシリコン結晶内へ拡散(diffusion)または浸透(penetration)して基板との界面層(interfacial layer)で金属元素(Ni)と酸素(O)元素が同時に存在することを確認することができ、これによって異種元素の混合による相互混合(intermixing)領域を形成したことが分かる。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態による集積構造体に対して、金属-拡散障壁層-半導体界面の断面を示した模式図であって、金属-拡散障壁層-半導体界面の断面を撮影した透過電子顕微鏡(TEM)の結果及びその断面に対するEDS元素マッピングの結果である。
【0041】
図3を参照すれば、WSe拡散障壁層を具備してSi/WSe界面が構築されて金属(Ag)が積層された集積構造体は、金属原子がシリコン結晶内へ拡散(diffusion)または浸透(penetration)できなかったので、相互混合(intermixing)領域が形成されていないことを確認することができる。
【0042】
以下、本発明を実施例及び比較例を利用してより詳細に説明する。しかし、下記の実施例及び比較例は本発明の例証のためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0043】
製造例1:WSe 薄膜の合成方法
二セレン化タングステン(WSe)を合成するために、2つの加熱ゾーン(heating zone)が具備された化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)の装備を使用する。まず、基板として二酸化シリコン(SiO)を用い、セレニウム(Se、99.5%、Sigma-Aldrich社製)粉末480mgが盛られた石英ボートを左側の加熱ゾーン(heating zone)に配置し、NaCl(99%、Sigma-Aldrich社製)40mg及び酸化タングステン(WOx、99.9%、Sigma-Aldrich社製)240mgの混合粉末が盛られた石英ボートを右側の加熱ゾーン(heating zone)に配置した。その後、二つの石英ボートの間隔は40cmに設定した状態で、各加熱ゾーンの温度を左側ゾーンは870℃、右側ゾーンは640℃にして10分間WSeを成長させた。この時、キャリアガスとしてAr/Hガスの流量は100/20sccmであり、合成段階で工程圧力は1~100Torrに最適化した。
【0044】
製造例2:湿式転写(wet transfer)方法を用いてSi/WSe 界面形成
前記製造例1の方法で製造された二酸化シリコン(SiO)基板に成長されたWSe薄膜の上にPMMA(Poly(methyl methacrylate))高分子溶液をコーティングした。PMMAコーティング後、製造されたPMMA/WSe/SiOを3wt%のKOH溶液に浸漬させてPMMA/WSe層とSiO基板とを分離した。一方、露光工程によってパターニングされたシリコン(Si)基板を製造した。剥離されたPMMA/WSe層を露光工程によってパターニングされたp型シリコン(Si)基板の上で移送(transfer)し、アセトンを用いてPMMAおよび感光液(PR)を除去した。これによって、湿式転写(wet transfer)方法を用いてシリコン(Si)基板上に設けられるWSe薄膜を製造し、これによってバンデルバルス(vdW)結合が形成されたSi/WSe界面を用意した。
【0045】
実施例:バンデルバルス力(vdW)によって結合されたSi/WSe 界面を含むショットキーダイオード及びトランジスター
前記製造例2の方法で製造されたSi/WSe界面を含めてショットキーダイオード(Schottky diode)及びシリコン(Si)チャンネルトランジスターを製作した。Si/WSe界面を含む基板上に金属電極パターニング(patterning)のための露光工程を進行した後、電子ビーム蒸発法(e-beam evaporator)で金属電極を蒸着した。この時、前記金属電極として用いられるための金属は、Ti、Ni、Cr/Au及びAgを用いた。次いで、露光工程で進行したパターン化された感光液をアセトンを用いて除去するリフトオフ(lift-off)方法で金属電極を形成することでショットキーダイオードを製作した。
【0046】
一方、Siチャンネルトランジスターは、SOI(Siliconon Insulator)ウェハを用いたバックゲート(back gating)構造で製作した。チャンネル長さ10μm、幅2μmであるSiチャンネル上に前記製造例2の方法で製造されたSi/WSe界面を形成し、その上に電子ビーム蒸発法(e-beamevaporator)でNi電極を蒸着することでNi電極の真下にWSe層を接合させた。ここで、WSe/Ni界面は、理想的にはバンデルバルス(vdW)結合で形成されることができるが、実際の工程などのイシューによってバンデルバルス(vdW)結合を形成することができずにWSe層の表面が損傷してWSe層中へのNi原子の拡散による相互混合(intermixing)領域を含んでもよい。露光工程によってチャンネルをパターニング後、プラズマを用いた乾式酸化法で軽くSOIウェハの表面を酸化させた後、前述したリフトオフ(lift-off)方法と同様な方法を用いて金属(Ni)電極を形成した。
【0047】
比較例:Si/WSe 界面を含まないショットキーダイオード及びトランジスターの製造
前記製造例2の方法で製造されたSi/WSe界面を含まないことを除き、実施例と同一の方法を用いてショットキーダイオード(Schottky diode)及びシリコン(Si)チャンネルトランジスターを製造した。
【0048】
試験例:バンデルバルス(vdW)結合されたSi/WSe 界面を含むショットキーダイオード及びトランジスターの測定
[ショットキー障壁]
金属/半導体界面でのWSe界面形成による金属/半導体界面欠陥の減少効果を分析するために、ショットキー(Schottky)ダイオードの電気的特性分析を行った。具体的に、I-V整流特性、ショットキー(Schottky)障壁の高さ(Schottky barrier height、SBH)、及び界面トラップ密度(Dit)を計算してWSe界面層挿入効果を立証した。I-V整流特性は、電圧(V)を-2V~2Vに印加して電流(I)の結果を得た。ショットキーダイオードの電流は、一般に下記式1によって決められることができる。
【0049】
[数1]
I=I[exp(qV/ηkT)-1]...(1)
【0050】
前記式1中、qは電荷量、Vは印加電圧、ηは理想係数(ideality factor)、kはボルツマン(Boltzmann)定数、Tは温度である。また、I(飽和電流)は、下記式2の通りである。
【0051】
[数2]
=AAexp(-qφ0/kT)...(2)
【0052】
前記式2中、Aはダイオード面積、Aはリチャードソン(Richardson)定数、Tは温度、qは電荷量、kはボルツマン(Boltzmann)定数、φ0はショットキー障壁の高さ(SBH、Schottky barrier height)である。これによって、飽和電流(I)を構成する変数は、温度(T)とショットキー障壁の高さ(φ0)であることが分かる。これを利用して常温(RT、25℃)~75℃まで10℃の間隔で7個の温度地点で飽和電流を測定してショットキー障壁の高さを計算した。実際にショットキーダイオードの電流流れは、低いSBHによって流れる電流に支配的に決まるので、ショットキー障壁の高さを補正する障壁の高さの不均質性(Barrier Height Inhomogeneities(BHI))モデルを通じて修正計算されることができる。
【0053】
[電荷トラップ密度Dit
電荷トラップは、主に界面欠陷によって発生するので、トラップ密度の変化を通じて界面欠陷の変化を間接的に類推することができる。さらに、界面のトラップは電荷を捕獲及び放出するのでC-V(Capacitance-Voltage)及びG-V(Conductance-Voltage)の測定を行うことでトラップ密度の変化を定量的に計算した。C-V及びG-Vの測定は、100kHzから1MHzまで100kHzの単位で周波数を固定し、-2Vから2Vまで交流電圧を印加してキャパシタンス(capacitance)とコンダクタンス(conductance)の変化を得た。トラップ密度Ditは下記式3によって定量的に表すことができる。
【0054】
[数3]
it=(2.5/Aq)(G/ω)peak...(3)
【0055】
前記式3中、Aはダイオード面積、qは電荷量、Gはコンダクタンス(Conductance)、ωは各振動数である。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態による集積構造体に対して、(a)、(c)金属-半導体界面のエネルギーダイヤグラム及びC-Vグラフであり、(b)、(d)金属-拡散障壁層-半導体界面のエネルギーダイヤグラム及びC-Vグラフである。
【0057】
図4(a)及び図4(c)を参照すれば、直接接触を形成する金属-半導体界面では、金属電極を形成する一般的な蒸着方法によって、金属原子がシリコン結晶内へ拡散(diffusion)または浸透(penetration)して異種元素の相互混合(intermixing)の欠陷が形成されることができる。このような相互混合(intermixing)の欠陷によってシリコン(Si)基板固有の(intrinsic)物性が変形されてシリコン(Si)バンドギャップ内の金属誘起ギャップ状態(MIGS、metal-inducedgapstate)が形成され、これはゲートを介した静電気駆動時フェルミレベルピニング(Fermilevelpinning)現象を引き起こすという問題が発生する恐れがある。このため、金属-半導体界面の接触抵抗が増加して出力電流が低下し、これを具備する素子の駆動電圧は増加するようになるので、これによる界面のストレスが増大されて素子の劣化につながることができる。
【0058】
一方、図4(b)及び図4(d)に示したように、基板と金属との間に拡散障壁層(WSe)の挿入による効果としてショットキー障壁(Schottky barrier)高さの減少と界面トラップ密度Ditの減少を確認した。キャパシタンス(Capacitance)-電圧(Voltage)の測定結果、WSe挿入後トラップ密度Ditが10倍以上減少して欠陷の密度が減少することを確認した。また、Ni、Ti、Au/Cr、Agなどの電極として使用可能な多様な金属でも前記結果と同様に密度の減少を確認した。
【0059】
図5は、本発明の一実施形態による集積構造体に対して、(a)集積構造体を具備する電子素子(Si p-MOS)の模式図であり、拡散障壁層の有無による(b)I-Vグラフであり、(c)On/Off比及び(d)最大移動度(Max mobility)に対する統計結果を示した結果である。
【0060】
図5に示したように、SOI(silicon on insulator)基板にWSe及び金属積層構造物として電極が形成されたSi素子であり、ドレーン(drain)電圧印加時、金属/WSe電極を介して注入された正孔電荷がシリコンチャンネル(Si channel)を介して伝送されて駆動されることを確認することができる。
【0061】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明がその技術的思想や要旨を変更することなく他の具体的な形態で実施される。したがって、前述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではない。
【符号の説明】
【0062】
100 集積構造体
10 基板
20 拡散障壁層
30 導電層
【要約】
【課題】金属-半導体界面における界面欠陷を減少させるための拡散障壁層を具備する集積構造体を提供すること。
【解決手段】シリコンまたはSOI(Silicon-on-insulator)基板と、基板と離間して金属または金属化合物を含む導電層と、基板と導電層との間に設けられる拡散障壁層と、を含み、基板及び拡散障壁層は、直接接触してファンデルワールス結合を形成する。拡散障壁層は、基板と導電層との間の物質(原子)移動を遮断して基板格子内の金属原子の拡散を遮断することができ、また導電層から基板方向への正孔注入を制御することができるので、超微細化及び高集積化半導体の限界を克服するために金属-半導体界面欠陷を制御することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5