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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】凝集剤の投与方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20250502BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20250502BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
C02F1/44 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020116046
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022013970
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡島 康信
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0056412(US,A1)
【文献】特表2010-513009(JP,A)
【文献】特開2004-290897(JP,A)
【文献】特開平04-215887(JP,A)
【文献】特開2018-034077(JP,A)
【文献】特開2008-168199(JP,A)
【文献】特開2009-233511(JP,A)
【文献】特開平06-178979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧と、現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧との差を、累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始することを特徴とする凝集剤の投与方法。
【請求項2】
ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧と、現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧との差を第2の時点から第1の時点までの時間で除した値を累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始することを特徴とする凝集剤の投与方法。
【請求項3】
ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第1のろ過抵抗値とし、
現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第2のろ過抵抗値とし、
第1のろ過抵抗値と第2のろ過抵抗値との差を累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始することを特徴とする凝集剤の投与方法。
【請求項4】
ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第1のろ過抵抗値とし、
現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第2のろ過抵抗値とし、
第1のろ過抵抗値と第2のろ過抵抗値との差を第2の時点から第1の時点までの時間で除した値を累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始することを特徴とする凝集剤の投与方法。
【請求項5】
ろ過工程において、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量が第3の閾値未満になった場合、ろ過槽内への凝集剤の投与を停止することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の凝集剤の投与方法。
【請求項6】
ろ過膜を備え且つ外部から供給される被処理水が流入するろ過槽と、ろ過槽に隣接し且つろ過槽から溢流した被処理水が流入する監視槽とを有する処理槽において、ろ過膜を用いて被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程において、ろ過槽から溢流した被処理水が監視槽に流入するとともに、監視槽の被処理水の一部がろ過槽に送られ、膜間差圧が第6の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始し、
凝集剤の投与開始後に所定時間が経過したら、凝集剤の投与を停止し、
所定時間とは、ろ過膜が浸漬されているろ過槽の実滞留時間に、循環比に1を加えた値を乗じた時間であり、
実滞留時間とは、ろ過槽の所定の投与位置に投与された凝集剤がろ過槽から監視槽を流れてろ過槽の元の投与位置に戻ってくるまでに要する時間であり、
循環比とは、循環量を、外部からろ過槽に供給される被処理水の流入量で除した値であり、
循環量とはろ過槽から監視槽に流れる被処理水の時間当りの流量であることを特徴とする凝集剤の投与方法。
【請求項7】
ろ過膜を備えたろ過槽と、ろ過槽に隣接し且つ外部から供給される被処理水およびろ過槽から溢流した被処理水が流入する監視槽とを有する処理槽において、ろ過膜を用いて被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程において、ろ過槽から溢流した被処理水が監視槽に流入するとともに、監視槽の被処理水の一部がろ過槽に送られ、膜間差圧が第6の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始し、
凝集剤の投与開始後に所定時間が経過したら、凝集剤の投与を停止し、
所定時間とは、ろ過膜が浸漬されているろ過槽の実滞留時間に、循環比に1を加えた値を乗じた時間であり、
実滞留時間とは、ろ過槽の所定の投与位置に投与された凝集剤がろ過槽から監視槽を流れてろ過槽の元の投与位置に戻ってくるまでに要する時間であり、
循環比とは、循環量を、外部から監視槽に供給される被処理水の流入量で除した値であり、
循環量とはろ過槽から監視槽に流れる被処理水の時間当りの流量であることを特徴とする凝集剤の投与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過膜で被処理水をろ過して水処理を行う際、被処理水に投与する凝集剤の投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水処理としては、例えば、膜分離活性汚泥法が知られている。膜分離活性汚泥法では、図7に示すように、ろ過槽101内に膜分離装置102を設けた処理装置103が用いられる。
【0003】
膜分離装置102は、ケーシング104内に並べられた複数の膜エレメント105と、膜エレメント105の下方から散気を行う散気装置106とを有している。
【0004】
膜エレメント105はろ板の表裏両面にろ過膜を溶着したものであり、ろ過膜を一次側から二次側へ透過した透過水(処理水)は透過水取出し流路107を通ってろ過槽101の外部に送り出される。また、廃水等の被処理水108が供給流路109からろ過槽101内に供給され、凝集剤110が凝集剤投与流路111からろ過槽101内の被処理水108に投与される。
【0005】
これによると、被処理水108を供給流路109からろ過槽101内に供給し、膜エレメント105でろ過槽101内の被処理水108をろ過することにより、被処理水108を汚泥と透過水とに固液分離し、透過水を透過水取出し流路107からろ過槽101の外部に取り出す。この際、散気装置106で散気を行うことにより、膜エレメント105のろ過膜の表面が洗浄される。
【0006】
また、凝集剤110を凝集剤投与流路111からろ過槽101内の被処理水108に投与することにより、凝集剤110が汚泥表面に吸着するとともに難分解性物質等の有機物を吸着するため、膜エレメント105のろ過膜の膜閉塞を防止することができる。
【0007】
尚、上記のような処理装置103は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-163388
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、凝集剤110をろ過槽101内の被処理水108に投与する際、凝集剤110の投与を開始する最適なタイミングが明確ではないため、凝集剤110の投与を開始する最適なタイミングが早過ぎて、凝集剤110が過剰に投与されたり、あるいは、凝集剤110の投与を開始する最適なタイミングが遅過ぎて、凝集剤110の投与量が不足する虞がある。
【0010】
また、凝集剤110の投与を開始した後、凝集剤110の投与を停止する最適なタイミングが明確ではないため、凝集剤110の投与を停止する最適なタイミングが遅過ぎて、凝集剤110が過剰に投与されたり、あるいは、凝集剤110の投与を停止する最適なタイミングが早過ぎて、凝集剤110の投与量が不足する虞がある。
【0011】
本発明は、凝集剤の投与を最適なタイミングで開始することができ、凝集剤の投与開始後、凝集剤の投与を最適なタイミングで停止することができる凝集剤の投与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本第1発明は、ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧と、現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧との差を、累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始するものである。
【0013】
これによると、膜負荷指数が大きくなるほど、被処理水中に含まれるファウラント(溶解性有機物等)の量が多くなり、又は、ファウラントがろ過膜面に付着した際の透過比抵抗が大きくなる。このため、ろ過膜を透過する際の透過抵抗が増大し、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。
【0014】
逆に、膜負荷指数が小さくなるほど、被処理水中に含まれるファウラントの量が少なくなり、又は、ファウラントがろ過膜面に付着した際の透過比抵抗が小さくなる。このため、ろ過膜を透過する際の透過抵抗が減少し、ろ過膜にかかる負荷が小さくなる。
このように、ろ過工程時の膜負荷指数に基づいてろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、この膜負荷指数を指標として凝集剤の投与を開始するため、凝集剤の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0016】
本第発明は、ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧と、現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧との差を第2の時点から第1の時点までの時間で除した値を累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始するものである。
【0017】
本第発明は、ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第1のろ過抵抗値とし、
現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第2のろ過抵抗値とし、
第1のろ過抵抗値と第2のろ過抵抗値との差を累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始するものである。
【0018】
本第発明は、ろ過膜を用いてろ過槽内の被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数と定義し、
現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第1のろ過抵抗値とし、
現処理サイクルの1つ前の処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点での膜間差圧を膜面積当りで且つ時間当りの膜ろ過水量で除した値を、第2のろ過抵抗値とし、
第1のろ過抵抗値と第2のろ過抵抗値との差を第2の時点から第1の時点までの時間で除した値を累積付加抵抗と定義し、
膜負荷指数が第1の閾値以上になり、且つ、累積付加抵抗が第2の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始するものである。
【0019】
これによると、膜負荷指数が大きくなるほど、被処理水中に含まれるファウラント(溶解性有機物等)の量が多くなり、又は、ファウラントがろ過膜面に付着した際の透過比抵抗が大きくなる。このため、ろ過膜を透過する際の透過抵抗が増大し、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。
【0020】
逆に、膜負荷指数が小さくなるほど、被処理水中に含まれるファウラントの量が少なくなり、又は、ファウラントがろ過膜面に付着した際の透過比抵抗が小さくなる。このため、ろ過膜を透過する際の透過抵抗が減少し、ろ過膜にかかる負荷が小さくなる。
【0021】
このように、ろ過工程時の膜負荷指数に基づいてろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができる。
【0022】
また、ろ過休止工程においてろ過膜の下方から散気を行うことにより、ろ過膜の膜面に付着したファウラントを除去し、ろ過膜を洗浄することができる。
【0023】
この際、累積付加抵抗が大きくなるほど、現処理サイクルの1つ前の処理サイクル(以下、前回処理サイクルと称する)のろ過休止工程においてろ過膜から除去されたファウラントの除去量が少なく、ろ過膜の洗浄効果が低くなる。このため、現処理サイクルのろ過工程開始時において、ろ過膜に付着したまま残留しているファウラントの量が多くなり、ろ過膜の透過性が低下する。
【0024】
逆に、累積付加抵抗が小さくなるほど、前回処理サイクルのろ過休止工程においてろ過膜から除去されたファウラントの除去量が多く、ろ過膜の洗浄効果が高くなる。このため、現処理サイクルのろ過工程開始時において、ろ過膜に付着したまま残留しているファウラントの量が少なくなり、ろ過膜の透過性が維持される。
【0025】
これにより、累積付加抵抗に基づいて、前回処理サイクルのろ過休止工程におけるろ過膜の洗浄効果を客観的に評価することができる。
【0026】
このように、膜負荷指数と累積付加抵抗とを指標として凝集剤の投与を開始するため、凝集剤の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0027】
本第発明における凝集剤の投与方法は、ろ過工程において、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量が第3の閾値未満になった場合、ろ過槽内への凝集剤の投与を停止するものである。
【0028】
これによると、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量すなわちフラックス(ろ過流束)が減少するほど、ろ過膜にかかる負荷が小さくなり、上記膜ろ過水量が増大するほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。
【0029】
このように膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量を指標として凝集剤の投与を停止するため、凝集剤の投与開始後、凝集剤の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0037】
本第発明は、ろ過膜を備え且つ外部から供給される被処理水が流入するろ過槽と、ろ過槽に隣接し且つろ過槽から溢流した被処理水が流入する監視槽とを有する処理槽において、ろ過膜を用いて被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程において、ろ過槽から溢流した被処理水が監視槽に流入するとともに、監視槽の被処理水の一部がろ過槽に送られ、膜間差圧が第6の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始し、
凝集剤の投与開始後に所定時間が経過したら、凝集剤の投与を停止し、
所定時間とは、ろ過膜が浸漬されているろ過槽の実滞留時間に、循環比に1を加えた値を乗じた時間であり、
実滞留時間とは、ろ過槽の所定の投与位置に投与された凝集剤がろ過槽から監視槽を流れてろ過槽の元の投与位置に戻ってくるまでに要する時間であり、
循環比とは、循環量を、外部からろ過槽に供給される被処理水の流入量で除した値であり、
循環量とはろ過槽から監視槽に流れる被処理水の時間当りの流量であるものである。
【0038】
これによると、膜間差圧が大きくなるほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなるため、膜間差圧に基づいてろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、この膜間差圧を指標として凝集剤の投与を開始するため、凝集剤の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0041】
また、凝集剤の投与を開始してから所定時間が経過した後、ろ過槽内への凝集剤の投与を停止することで、凝集剤の投与開始後、凝集剤の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0042】
本第発明は、ろ過膜を備えたろ過槽と、ろ過槽に隣接し且つ外部から供給される被処理水およびろ過槽から溢流した被処理水が流入する監視槽とを有する処理槽において、ろ過膜を用いて被処理水をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して被処理水を処理する水処理における凝集剤の投与方法であって、
ろ過工程において、ろ過槽から溢流した被処理水が監視槽に流入するとともに、監視槽の被処理水の一部がろ過槽に送られ、膜間差圧が第6の閾値以上になった場合に、ろ過槽内への凝集剤の投与を開始し、
凝集剤の投与開始後に所定時間が経過したら、凝集剤の投与を停止し、
所定時間とは、ろ過膜が浸漬されているろ過槽の実滞留時間に、循環比に1を加えた値を乗じた時間であり、
実滞留時間とは、ろ過槽の所定の投与位置に投与された凝集剤がろ過槽から監視槽を流れてろ過槽の元の投与位置に戻ってくるまでに要する時間であり、
循環比とは、循環量を、外部から監視槽に供給される被処理水の流入量で除した値であり、
循環量とはろ過槽から監視槽に流れる被処理水の時間当りの流量であるものである。
【発明の効果】
【0052】
以上のように本発明によると、凝集剤の投与を最適なタイミングで開始することができ、凝集剤の投与開始後、凝集剤の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の第1~第5の実施の形態における水処理装置の模式図である。
図2】同、水処理装置を用いた凝集剤の投与方法であって、時刻に対する膜間差圧の変化を示すグラフである。
図3】同、水処理装置を用いた凝集剤の投与方法であって、時刻に対する透過性の変化を示すグラフである。
図4】本発明の第6~第10の実施の形態における水処理装置の模式図である。
図5】本発明の第11の実施の形態における水処理装置の模式図である。
図6】本発明の第12の実施の形態における水処理装置の模式図である。
図7】従来の水処理装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0055】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、1は有機物等を含む廃水2(被処理水の一例)を処理する処理槽である。この処理槽1は、ろ過槽3と、ろ過槽3に隣接する監視槽4とを有している。ろ過槽3と監視槽4とは溢流堰5を介して仕切られている。
【0056】
廃水2は供給流路7からろ過槽3に供給される。ろ過槽3に供給された廃水2は、溢流堰5を溢流することで、隣の監視槽4に流入する。監視槽4内にはポンプ8が設けられている。ポンプ8には、監視槽4内の廃水2をろ過槽3内に戻す戻り流路9が接続されている。
【0057】
ろ過槽3内には浸漬型の膜分離装置11が設置されている。膜分離装置11は、ケーシング12内に設けられた複数の膜エレメント13と、膜エレメント13の下方に設けられた散気装置14とを有している。
【0058】
膜エレメント13は、ろ板と、ろ板の表裏両面に溶着されたろ過膜とを有している。ろ過膜を一次側から二次側に透過した廃水2は、透過水16として、透過水取出し流路17を通って処理槽1の外部に送り出される。また、凝集剤19が凝集剤投与流路20からろ過槽3内の廃水2に投与される。
【0059】
上記のような処理槽1を用いて廃水2を膜分離活性汚泥法で処理する。この際、膜エレメント13を用いてろ過槽3内の廃水2をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して廃水2を処理する。
【0060】
ろ過工程では、廃水2を供給流路7からろ過槽3に供給し、膜分離装置11の散気装置14から散気を行いながら、膜エレメント13のろ過膜の二次側を減圧することにより、ろ過槽3内の廃水2の一部が、ろ過膜を透過し、透過水16として透過水取出し流路17から処理槽1の外部に送り出される。
【0061】
また、ろ過槽3内の廃水2は、溢流堰5を溢流して、隣の監視槽4内に流入する。さらに、ポンプ8を駆動することにより、監視槽4内の廃水2が戻り流路9を通ってろ過槽3内に戻される。また、ろ過休止工程では、散気装置14から散気を引き続き行いながら、膜エレメント13によるろ過を停止する。
上記のような処理サイクルを繰り返して廃水2を処理している際、凝集剤19を凝集剤投与流路20からろ過槽3内の廃水2に投与することにより、凝集剤19が廃水2中の活性汚泥に吸着し、粗大フロックが形成される。
このような凝集剤19の投与方法を以下に説明する。
【0062】
図2は、各処理サイクル毎の膜エレメント13の膜間差圧の変化を示したグラフであり、縦軸が膜間差圧、横軸が処理サイクルC1,C2,C3・・・を実施している時刻を示している。ここで、ろ過工程時の時間当たりの膜間差圧の増加量を膜負荷指数Aと定義する。すなわち、図2に示すように、ろ過工程を開始した直後の時間当たりの膜ろ過水量が安定した時点t1における膜間差圧p1と、ろ過工程を終了する直前の時点t2における膜間差圧p2との差(すなわちp2-p1)をΔpとし、上記両時点t1,t2間の時間をΔtとすると、上記膜負荷指数A[Pa/分]は、
A=Δp/Δt
という関係式で示される。
【0063】
尚、ろ過工程を開始した直後の時間当たりの膜ろ過水量が安定した時点t1とは、時間当たりの膜ろ過水量が予め設定された所定のフラックスに落ち着いた時点のことを意味する。
【0064】
そして、処理サイクルを複数回繰り返して行っている際、例えば図2に示すように、処理サイクルC3において、上記のようにして求められた膜負荷指数Aが所定の膜負荷指数A1(第1の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0065】
凝集剤19の投与開始時においては、凝集剤19を初期投与量D[mg/L]だけ投与する。尚、初期投与量Dは、
D=E1×exp(E2×F)
という関係式で示される。
ここで、E1,E2は定数であり、Fはろ過膜の単位膜面積当たりで且つ単位時間当たりの膜ろ過水量(すなわちフラックス[m/m/分]である。
【0066】
その後、膜負荷指数Aが目標膜負荷指数A2以下に低下すると、凝集剤19の投与量を初期投与量Dから所定割合低減させる。尚、目標膜負荷指数A2は所定の膜負荷指数A1よりも小さい数値に設定されている。
【0067】
その後、ろ過工程において、単位膜面積当たりで且つ単位時間当たりの膜ろ過水量F(フラックス)が所定の膜ろ過水量Fs(第3の閾値の一例)未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。
【0068】
上記のような凝集剤19の投与方法によると、膜負荷指数Aが大きくなるほど、廃水2中に含まれるファウラント(溶解性有機物等)の量が多くなり、又は、ファウラントがろ過膜面に付着した際の透過比抵抗が大きくなる。このため、膜エレメント13のろ過膜を透過する際の透過抵抗が増大し、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。
【0069】
逆に、膜負荷指数Aが小さくなるほど、廃水2中に含まれるファウラントの量が少なくなり、又は、ファウラントがろ過膜面に付着した際の透過比抵抗が小さくなる。このため、ろ過膜を透過する際の透過抵抗が減少し、ろ過膜にかかる負荷が小さくなる。
【0070】
このように、ろ過工程時の膜負荷指数Aに基づいて膜エレメント13のろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、この膜負荷指数Aを指標として凝集剤19の投与を開始するため、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0071】
また、ろ過工程時の膜ろ過水量Fが減少するほど、膜エレメント13のろ過膜にかかる負荷が小さくなり、膜ろ過水量Fが増大するほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。このように膜ろ過水量Fを指標として凝集剤19の投与を停止するため、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0072】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の凝集剤19の投与方法では、上記第1の実施の形態で示した膜負荷指数Aに加えて累積付加抵抗Bを指標にして、凝集剤19の投与を開始する。
【0073】
累積付加抵抗Bは以下のようにして求められる。
【0074】
図3は、ろ過膜の透過性の変化を示すグラフであり、縦軸が透過性(Permeability)、横軸が処理サイクルを実施している時刻を示している。透過性は以下の関係式で示される。
透過性=フラックス/膜間差圧
ここで、現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点T1での透過性を第1の透過性Prm1とする。また、現処理サイクルの1つ前の処理サイクル(以下、前回処理サイクルと称する)のろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点T2での透過性を第2の透過性Prm2とする。上記第1の透過性Prm1の逆数を第1の透過抵抗値とし、上記第2の透過性Prm2の逆数を第2の透過抵抗値とし、第2の時点T2から第1の時点T1までの時間をΔTとすると、累積付加抵抗Bは「第1の透過抵抗値と第2の透過抵抗値との差を第2の時点T2から第1の時点T1までの時間で除した値」として定義される。すなわち、累積付加抵抗Bは以下の関係式で示される。
B=(第1の透過抵抗値-第2の透過抵抗値)/ΔT
=(1/Prm1-1/Prm2)/ΔT
そして、膜負荷指数Aが所定の膜負荷指数A1(第1の閾値の一例)以上になり、且つ、上記のようにして求められた累積付加抵抗Bが所定の累積付加抵抗B1(第2の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0075】
凝集剤19の投与開始時においては、凝集剤19を初期投与量Dだけ投与し、その後、膜負荷指数Aが目標膜負荷指数A2以下に低下すると、凝集剤19の投与量を初期投与量Dから所定割合低減させる。
【0076】
その後、ろ過工程において、単位膜面積当たりで且つ単位時間当たりの膜ろ過水量Fが所定の膜ろ過水量Fs未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。
【0077】
上記のような凝集剤19の投与方法によると、ろ過工程時の膜負荷指数Aに基づいてろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができる。
【0078】
また、ろ過休止工程において、散気装置14で膜エレメント13の下方から散気を行っているため、ろ過膜の膜面に付着したファウラントを除去し、ろ過膜を洗浄することができる。
【0079】
この際、累積付加抵抗Bが大きくなるほど、前回処理サイクルのろ過休止工程においてろ過膜から除去されたファウラントの除去量が少なく、ろ過膜の洗浄効果が低くなる。このため、現処理サイクルのろ過工程開始時において、ろ過膜に付着したまま残留しているファウラントの量が多くなり、ろ過膜の透過性が低下する。
【0080】
逆に、累積付加抵抗Bが小さくなるほど、前回処理サイクルのろ過休止工程においてろ過膜から除去されたファウラントの除去量が多く、ろ過膜の洗浄効果が高くなる。このため、現処理サイクルのろ過工程開始時において、ろ過膜に付着したまま残留しているファウラントの量が少なくなり、ろ過膜の透過性が向上する。
【0081】
これにより、累積付加抵抗Bに基づいて、前回処理サイクルのろ過休止工程におけるろ過膜の洗浄効果を客観的に評価することができる。
【0082】
このように、膜負荷指数Aと累積付加抵抗Bとを指標として凝集剤19の投与を開始するため、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0083】
また、膜ろ過水量Fを指標として凝集剤19の投与を停止するため、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0084】
上記第2の実施の形態では、累積付加抵抗Bとして、第1の透過抵抗値と第2の透過抵抗値との差を第2の時点T2から第1の時点T1までの時間で除した値を用いて説明したが、第1の透過抵抗値と第2の透過抵抗値との差を累積付加抵抗Bとして定義してもよい。或いは、現処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第1の時点T1での膜間差圧と、前回処理サイクルのろ過工程の開始後における時間当たりの膜ろ過水量が安定した第2の時点T2での膜間差圧との差を第2の時点T2から第1の時点T1までの時間で除した値を、累積付加抵抗Bと定義してもよい。また、上記第1の時点T1での膜間差圧と上記第2の時点T2での膜間差圧との差を累積付加抵抗Bと定義してもよい。
【0085】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の凝集剤19の投与方法では、図1に示すように、監視槽4内の廃水2の水位を指標にして、凝集剤19の投与開始および投与停止を行う。
【0086】
ろ過工程において、ろ過槽3と監視槽4との間で廃水2を循環させながら、膜エレメント13を用いて廃水2をろ過する。
【0087】
例えば、供給流路7からろ過槽3に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]である場合、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの取出流量をQ[m/分]とし、監視槽4から戻り流路9を通ってろ過槽3に戻す廃水2の時間当りの流量を3Q[m/分]とし、その結果、ろ過槽3から溢流堰5を溢流して監視槽4に流出する廃水2の単位時間当りの流量が3Q[m/分]となるように調整している。
【0088】
このとき、監視槽4内の廃水2の水位は、予め設定された第1の水位L1(第4の閾値の一例)と第2の水位L2(第5の閾値の一例)との間に保たれる。尚、第2の水位L2は第1の水位L1よりも低水位である。
【0089】
その後、供給流路7からろ過槽3に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]から例えば2Q[m/分]に増加した場合、流入量の増加にろ過量の増加が追い付かず、監視槽4内の廃水2の水位が上昇する。
【0090】
このため、監視槽4内の廃水2の水位が第1の水位L1以上になった場合、透過水取出し流路17から取り出される膜ろ過水の取り出し量が供給流路7からろ過槽3に供給される廃水2の流入量を上回るように、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(フラックス)を設計上の最大膜ろ過水量(最大フラックス)まで引き上げてろ過を行う。このような膜ろ過水量の調整を行うことにより、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。
【0091】
従って、上記のように監視槽4内の廃水2の水位が第1の水位L1以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始することで、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。尚、この場合、上記最大膜ろ過水量は、一定の上限があるが、例えば上記流入量2Qよりも多い量に設定されている。
【0092】
上記のように膜ろ過水量を設計上の最大膜ろ過水量にしてろ過を続け、監視槽4内の廃水2の水位が低下して第2の水位L2未満になった場合、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(フラックス)を最大膜ろ過水量から元の取出流量Qに引き下げてろ過を行う。このような膜ろ過水量の調整を行うことにより、ろ過膜にかかる負荷が小さくなる。
【0093】
従って、上記のように監視槽4内の廃水2の水位が第2の水位L2未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止することで、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0094】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態の凝集剤19の投与方法では、膜エレメント13のろ過膜の膜間差圧および所定時間の経過を指標にして、凝集剤19の投与開始および投与停止を行う。所定時間の一例としては滞留時間Tsがある。滞留時間Tsは、実滞留時間×(循環比+1)で定義される。
【0095】
ここで、実滞留時間とは、図1の点線矢印で示すように、ろ過槽3の所定の投与位置23に投与された凝集剤19が、ろ過槽3から溢流堰5を越えて監視槽4に流入し、監視槽4から戻り流路9を通ってろ過槽3の元の投与位置23に戻ってくるまでに要する時間である。
【0096】
また、循環比とは、循環量を、時間当たりの廃水2の流入量で除した値(すなわち、循環量/時間当たりの廃水2の流入量)である。尚、上記廃水2の流入量とは供給流路7からろ過槽3に流入する廃水2の量である。また、循環量とはろ過槽3から溢流堰5を越えて監視槽4に流れる廃水2の時間当たりの流量である。
【0097】
ろ過工程において、ろ過槽3と監視槽4との間で廃水2を循環させながら膜エレメント13を用いて廃水2をろ過する。この際、例えば、供給流路7からろ過槽3に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量をQ[m/分]とし、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの流量をQ[m/分]とし、ろ過槽3から溢流堰5を溢流して監視槽4に流出する廃水2の単位時間当りの流量を3Q[m/分]とし、監視槽4から戻り流路9を通ってろ過槽3に流入する廃水2の時間当りの流量を3Q[m/分]とし、実滞留時間を70[分]とすると、循環量は3Q[m/分]、時間当たりの膜ろ過水量(すなわち、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの流量)はQ[m/分]となる。これにより、循環比は、3Q/Q=3となり、滞留時間Tsは、70×(3+1)=280[分]となる。
【0098】
ろ過工程において、膜エレメント13のろ過膜の膜間差圧が所定の膜間差圧(第6の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0099】
これによると、膜間差圧が大きくなるほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなるため、膜間差圧に基づいてろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、この膜間差圧を指標として凝集剤19の投与を開始するため、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0100】
このようにして凝集剤19の投与を開始した後、滞留時間Ts(所定時間の一例)が経過したら、ろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。これにより、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0101】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態の凝集剤19の投与方法では、膜エレメント13のろ過膜の膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(すなわちフラックス[m/m/分])を指標にして、凝集剤19の投与開始および投与停止を行う。
【0102】
すなわち、ろ過工程において、上記膜ろ過水量が予め設定された第1の膜ろ過水量(第7の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0103】
これによると、膜ろ過水量が増大するほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなるため、この膜ろ過水量を指標として凝集剤19の投与を開始することにより、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0104】
その後、ろ過工程において、膜ろ過水量が予め設定された第2の膜ろ過水量(第8の閾値の一例)未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。尚、第2の膜ろ過水量は第1の膜ろ過水量よりも少ない水量に設定されている。
【0105】
これによると、膜ろ過水量が減少するほど、ろ過膜にかかる負荷が小さくなるため、この膜ろ過水量を指標として凝集剤19の投与を停止することにより、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0106】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態の水処理装置を図4に基づいて説明する。尚、先述した第1~第5の実施の形態と同じ部材については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0107】
処理槽50は、ろ過槽3(好気槽)と、ろ過槽3に隣接する無酸素槽51(監視槽の一例)とを有している。ろ過槽3と無酸素槽51とは溢流堰5を介して仕切られている。無酸素槽51内にはポンプ8が設けられている。ポンプ8には、無酸素槽51内の廃水2をろ過槽3内に送る送り流路52が接続されている。
【0108】
廃水2は、供給流路7から無酸素槽51に供給され、ポンプ8によって、無酸素槽51から送り流路52を通ってろ過槽3内に送られた後、その一部が、ろ過槽3内から溢流堰5を溢流することで、無酸素槽51に戻される。
【0109】
ろ過槽3内には浸漬型の膜分離装置11が設置されている。
【0110】
上記のような処理槽50を用いて廃水2を膜分離活性汚泥法で処理する。この際、ろ過工程とろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して廃水2を処理する。
【0111】
ろ過工程では、廃水2を供給流路7から無酸素槽51に供給し、ポンプ8を駆動して、無酸素槽51内の廃水2を送り流路52からろ過槽3内に送り、膜分離装置11の散気装置14から散気を行いながら、膜エレメント13のろ過膜の二次側を減圧する。これにより、ろ過槽3内の廃水2の一部が、ろ過膜を透過し、透過水16として透過水取出し流路17から処理槽1の外部に送り出される。
【0112】
また、ろ過槽3内の廃水2は、溢流堰5を溢流して、隣の無酸素槽51に戻される。これにより、ろ過槽3と無酸素槽51との間で廃水2が循環し、廃水2中のアンモニア性窒素がろ過槽3内で硝化されて硝酸になり、その硝酸が無酸素槽51において脱窒されて窒素ガスになる。
【0113】
また、ろ過休止工程では、散気装置14から散気を引き続き行いながら、膜エレメント13によるろ過を休止する。
上記のような処理サイクルを繰り返して廃水2を処理している際、凝集剤19を凝集剤投与流路20からろ過槽3内の廃水2に投与することにより、凝集剤19が廃水2中の活性汚泥に吸着し、粗大フロックが形成される。
このような凝集剤19の投与方法としては、先述した第1の実施の形態と同様に、膜負荷指数Aが所定の膜負荷指数A1(第1の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。尚、凝集剤19の投与開始時においては、凝集剤19を初期投与量Dだけ投与する。
【0114】
その後、膜負荷指数Aが目標膜負荷指数A2以下に低下すると、凝集剤19の投与量を初期投与量Dから所定割合低減させる。尚、目標膜負荷指数A2は所定の膜負荷指数A1よりも小さい数値に設定されている。
【0115】
その後、ろ過工程において、単位膜面積当たりで且つ単位時間当たりの膜ろ過水量F(フラックス)が所定の膜ろ過水量Fs(第3の閾値の一例)未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。
【0116】
上記のような凝集剤19の投与方法によると、ろ過工程時の膜負荷指数Aに基づいて膜エレメント13のろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、この膜負荷指数Aを指標として凝集剤19の投与を開始するため、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0117】
また、膜ろ過水量Fを指標として凝集剤19の投与を停止するため、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0118】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態では、凝集剤19の投与方法としては、図4に示した水処理装置において、先述した第2の実施の形態と同様に、膜負荷指数Aおよび累積付加抵抗Bを指標にして、凝集剤19の投与を開始する。
【0119】
すなわち、膜負荷指数Aが所定の膜負荷指数A1(第1の閾値の一例)以上になり、且つ、累積付加抵抗Bが所定の累積付加抵抗B1(第2の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0120】
凝集剤19の投与開始時においては、凝集剤19を初期投与量Dだけ投与し、その後、膜負荷指数Aが目標膜負荷指数A2以下に低下すると、凝集剤19の投与量を初期投与量Dから所定割合低減させる。
【0121】
その後、ろ過工程において、単位膜面積当たりで且つ単位時間当たりの膜ろ過水量Fが所定の膜ろ過水量Fs未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。
【0122】
上記のような凝集剤19の投与方法によると、ろ過工程時の膜負荷指数Aに基づいて、ろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、累積付加抵抗Bに基づいて、前回処理サイクルのろ過休止工程におけるろ過膜の洗浄効果を客観的に評価することができる。
【0123】
このように、膜負荷指数Aと累積付加抵抗Bとを指標として凝集剤19の投与を開始するため、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0124】
また、膜ろ過水量Fを指標として凝集剤19の投与を停止するため、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0125】
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態では、凝集剤19の投与方法としては、図4に示した水処理装置において、先述した第3の実施の形態と同様に、無酸素槽51(監視槽)内の廃水2の水位を指標にして、凝集剤19の投与開始および投与停止を行う。
【0126】
ろ過工程において、ろ過槽3と無酸素槽51との間で廃水2を循環させながら、膜エレメント13を用いて廃水2をろ過する。
【0127】
例えば、供給流路7から無酸素槽51に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]である場合、無酸素槽51から送り流路52を通ってろ過槽3に送られる廃水2の単位時間当りの流量が4Q[m/分]とし、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの取出流量をQ[m/分]とし、ろ過槽3から溢流堰5を溢流して無酸素槽51に戻される廃水2の単位時間当りの流量が3Q[m/分]となるように調整している。
【0128】
このとき、無酸素槽51内の廃水2の水位は、予め設定された第1の水位L1(第4の閾値の一例)と第2の水位L2(第5の閾値の一例)との間に保たれる。尚、第2の水位L2は第1の水位L1よりも低水位である。
【0129】
その後、供給流路7から無酸素槽51に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]から例えば2Q[m/分]に増加した場合、流入量の増加にろ過量の増加が追い付かず、無酸素槽51内の廃水2の水位が上昇する。
【0130】
このため、無酸素槽51内の廃水2の水位が第1の水位L1以上になった場合、透過水取出し流路17から取り出される膜ろ過水の取り出し量が供給流路7から無酸素槽51に供給される廃水2の流入量を上回るように、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(フラックス)を設計上の最大膜ろ過水量(最大フラックス)まで引き上げてろ過を行う。このような膜ろ過水量の調整を行うことにより、ろ過膜にかかる負荷が大きくなる。
【0131】
従って、上記のように無酸素槽51内の廃水2の水位が第1の水位L1以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始することで、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。尚、この場合、上記最大膜ろ過水量は、一定の上限があるが、例えば上記流入量2Qよりも多い量に設定されている。
【0132】
上記のように膜ろ過水量を設計上の最大膜ろ過水量にしてろ過を続け、無酸素槽51内の廃水2の水位が低下して第2の水位L2未満になった場合、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(フラックス)を最大膜ろ過水量から元の取出流量Qに引き下げてろ過を行う。このような膜ろ過水量の調整を行うことにより、ろ過膜にかかる負荷が小さくなる。
【0133】
従って、上記のように無酸素槽51内の廃水2の水位が第2の水位L2未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止することで、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0134】
(第9の実施の形態)
第9の実施の形態では、凝集剤19の投与方法としては、図4に示した水処理装置において、先述した第4の実施の形態と同様に、膜エレメント13のろ過膜の膜間差圧および所定時間の経過を指標にして、凝集剤19の投与開始および投与停止を行う。所定時間の一例としては滞留時間Tsがある。滞留時間Tsは、実滞留時間×(循環比+1)で定義される。
【0135】
ここで、実滞留時間とは、図4の点線矢印で示すように、ろ過槽3の所定の投与位置23に投与された凝集剤19が、ろ過槽3内を循環し、ろ過槽3から溢流堰5を越えて無酸素槽51に流入し、無酸素槽51から送り流路52を通ってろ過槽3の元の投与位置23に戻ってくるまでに要する時間である。
【0136】
また、循環比とは、循環量/時間当たりの廃水2の流入量である。尚、上記廃水2の流入量とは供給流路7から無酸素槽51に流入する廃水2の量である。また、循環量とはろ過槽3から溢流堰5を越えて無酸素槽51に流れる廃水2の時間当たりの流量である。
【0137】
ろ過工程において、ろ過槽3と無酸素槽51との間で廃水2を循環させながら膜エレメント13を用いて廃水2をろ過する。この際、例えば、供給流路7から無酸素槽51に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量をQ[m/分]とし、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの流量をQ[m/分]とし、無酸素槽51から送り流路52を通ってろ過槽3に送られる廃水2の時間当りの流量を4Q[m/分]とし、ろ過槽3から溢流堰5を溢流して無酸素槽51に戻される廃水2の単位時間当りの流量を3Q[m/分]とし、実滞留時間を70[分]とすると、循環量は3Q[m/分]、時間当たりの膜ろ過水量(すなわち、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの流量)はQ[m/分]となる。これにより、循環比は、3Q/Q=3となり、滞留時間Tsは、70×(3+1)=280[分]となる。
【0138】
ろ過工程において、膜エレメント13のろ過膜の膜間差圧が所定の膜間差圧(第6の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0139】
これによると、膜間差圧が大きくなるほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなるため、膜間差圧に基づいてろ過膜にかかる負荷を客観的に評価することができ、この膜間差圧を指標として凝集剤19の投与を開始するため、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0140】
このようにして凝集剤19の投与を開始した後、滞留時間Ts(所定時間の一例)が経過したら、ろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。これにより、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0141】
(第10の実施の形態)
第10の実施の形態では、凝集剤19の投与方法としては、図4に示した水処理装置において、先述した第5の実施の形態と同様に、膜エレメント13のろ過膜の膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(すなわちフラックス[m/m/分])を指標にして、凝集剤19の投与開始および投与停止を行う。
【0142】
すなわち、ろ過工程において、上記膜ろ過水量が予め設定された第1の膜ろ過水量(第7の閾値の一例)以上になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を開始する。
【0143】
これによると、膜ろ過水量が増大するほど、ろ過膜にかかる負荷が大きくなるため、この膜ろ過水量を指標として凝集剤19の投与を開始することにより、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。
【0144】
その後、ろ過工程において、膜ろ過水量が予め設定された第2の膜ろ過水量(第8の閾値の一例)未満になった場合、凝集剤投与流路20からろ過槽3内への凝集剤19の投与を停止する。尚、第2の膜ろ過水量は第1の膜ろ過水量よりも少ない水量に設定されている。
【0145】
これによると、膜ろ過水量が減少するほど、ろ過膜にかかる負荷が小さくなるため、この膜ろ過水量を指標として凝集剤19の投与を停止することにより、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0146】
(第11の実施の形態)
第11の実施の形態を図5に基づいて説明する。尚、先述した第1~第10の実施の形態と同じ部材については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0147】
第11の実施の形態では、図5に示すように、処理槽1は先述した第1~第5の実施の形態の監視槽4や第6~第10の実施の形態の無酸素槽51を有しておらず、処理槽1内には浸漬型の膜分離装置11が設置されている。
【0148】
廃水2は供給流路7から処理槽1に供給される。また、凝集剤19は凝集剤投与流路20から処理槽1内の廃水2に投与される。
【0149】
上記のような処理槽1を用いて廃水2を膜分離活性汚泥法で処理する。この際、膜エレメント13を用いて処理槽1内の廃水2をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して廃水2を処理する。
【0150】
ろ過工程では、廃水2を供給流路7から処理槽1に供給し、膜分離装置11の散気装置14から散気を行いながら、膜エレメント13のろ過膜の二次側を減圧することにより、処理槽1内の廃水2の一部が、ろ過膜を透過し、透過水16として透過水取出し流路17から処理槽1の外部に送り出される。
【0151】
また、ろ過休止工程では、散気装置14から散気を引き続き行いながら、膜エレメント13によるろ過を停止する。
【0152】
上記のような処理サイクルを繰り返して廃水2を処理している際、凝集剤19を凝集剤投与流路20から処理槽1内の廃水2に投与することにより、凝集剤19が廃水2中の活性汚泥に吸着し、粗大フロックが形成される。
このような凝集剤19の投与方法を以下に説明する。
【0153】
例えば、供給流路7から処理槽1に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]である場合、膜エレメント13を透過して透過水取出し流路17から処理槽1の外部へ取り出される透過水16の単位時間当たりの取出流量がQ[m/分]となるように調整している。
【0154】
このとき、処理槽1内の廃水2の水位は、予め設定された第1の水位L1(第9の閾値の一例)と第2の水位L2(第10の閾値の一例)との間に保たれる。尚、第2の水位L2は第1の水位L1よりも低水位である。
【0155】
その後、供給流路7から処理槽1に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]から例えば2Q[m/分]に増加した場合、流入量の増加にろ過量の増加が追い付かず、処理槽1に流入する廃水2の流入量が透過水取出し流路17から処理槽1の外部へ取り出される透過水16の取り出し量を上回って、処理槽1内の廃水2の水位が上昇する。
【0156】
このため、処理槽1内の廃水2の水位が第1の水位L1以上になった場合、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(フラックス)を設計上の最大膜ろ過水量(最大フラックス)まで引き上げてろ過を行うと共に、凝集剤投与流路20から処理槽1内への凝集剤19の投与を開始する。このように、処理槽1内の廃水2の水位を指標として凝集剤19の投与を開始することで、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。尚、この場合、上記最大膜ろ過水量は、一定の上限があるが、例えば上記流入量2Qよりも多い量に設定されている。
【0157】
上記のように膜ろ過水量を設計上の最大膜ろ過水量にしてろ過を続けることにより、透過水取出し流路17から処理槽1の外部へ取り出される透過水16の取り出し量が処理槽1に流入する廃水2の流入量を上回り、処理槽1内の廃水2の水位が次第に低下する。そして、処理槽1内の廃水2の水位が第2の水位L2未満になった場合、凝集剤投与流路20から処理槽1内への凝集剤19の投与を停止すると共に、膜ろ過水量を最大膜ろ過水量から元の取出流量Qに戻す。
【0158】
このように、処理槽1内の廃水2の水位を指標として凝集剤19の投与を停止することで、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0159】
(第12の実施の形態)
第12の実施の形態は、先述した第11の実施の形態の変形例であって、図6に示すように、膜分離装置11は処理槽1の外部に設置されている。膜分離装置11はケーシング12内に設けられた複数の膜エレメント13を有している。尚、膜エレメント13は中空糸膜等のろ過膜を有している。
【0160】
処理槽1内の底部には、膜分離装置11の入口に廃水2を供給するポンプ66が設置され、ポンプ66と膜分離装置11の入口との間に、入口側流路67が接続されている。
【0161】
また、膜分離装置11の出口には、膜分離装置11内で濃縮された廃水2を処理槽1内に戻す出口側流路68が接続されている。
【0162】
上記のような処理槽1を用いて廃水2を膜分離活性汚泥法で処理する。この際、膜エレメント13を用いて処理槽1内の廃水2をろ過するろ過工程とろ過を休止するろ過休止工程とを1処理サイクルとし、この処理サイクルを繰り返して廃水2を処理する。
【0163】
ろ過工程では、廃水2を供給流路7から処理槽1に供給し、ポンプ66を駆動して、処理槽1内の廃水2を入口側流路67から膜分離装置11の入口に供給し、膜エレメント13のろ過膜の二次側を減圧することにより、廃水2の一部が、ろ過膜を透過し、透過水16として透過水取出し流路17から処理槽1の外部に送り出される。この際、ろ過膜を透過しなかった廃水2は、濃縮されて、出口側流路68から処理槽1内に戻される。
【0164】
また、ろ過休止工程では、膜エレメント13によるろ過を停止する。
【0165】
上記のような処理サイクルを繰り返して廃水2を処理している際、凝集剤19を凝集剤投与流路20から処理槽1内の廃水2に投与することにより、凝集剤19が廃水2中の活性汚泥に吸着し、粗大フロックが形成される。
【0166】
このような凝集剤19の投与方法を以下に説明する。
【0167】
例えば、供給流路7から処理槽1に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]である場合、透過水取出し流路17から取り出される透過水16の単位時間当たりの取出流量をQ[m/分]とし、処理槽1内から入口側流路67を通って膜分離装置11の入口に供給される廃水2の時間当りの流量を3Q[m/分]とし、その結果、膜分離装置11の出口から出口側流路68を通って処理槽1内に戻される廃水2の単位時間当りの流量が2Q[m/分]となるように調整している。
【0168】
このとき、処理槽1内の廃水2の水位は、予め設定された第1の水位L1(第9の閾値の一例)と第2の水位L2(第10の閾値の一例)との間に保たれる。尚、第2の水位L2は第1の水位L1よりも低水位である。
【0169】
その後、供給流路7から処理槽1に供給される廃水2の単位時間当たりの流入量がQ[m/分]から例えば2Q[m/分]に増加した場合、流入量の増加にろ過量の増加が追い付かず、処理槽1に流入する廃水2の流入量が透過水取出し流路17から処理槽1の外部へ取り出される透過水16の取り出し量を上回って、処理槽1内の廃水2の水位が上昇する。
【0170】
このため、処理槽1内の廃水2の水位が第1の水位L1以上になった場合、膜面積当たりで且つ時間当たりの膜ろ過水量(フラックス)を設計上の最大膜ろ過水量(最大フラックス)まで引き上げてろ過を行うと共に、凝集剤投与流路20から処理槽1内への凝集剤19の投与を開始する。このように、処理槽1内の廃水2の水位を指標として凝集剤19の投与を開始することで、凝集剤19の投与を最適なタイミングで開始することができる。尚、この場合、上記最大膜ろ過水量は、一定の上限があるが、例えば上記流入量2Qよりも多い量に設定されている。
【0171】
上記のように膜ろ過水量を設計上の最大膜ろ過水量にしてろ過を続けることにより、透過水取出し流路17から処理槽1の外部へ取り出される透過水16の取り出し量が処理槽1に流入する廃水2の流入量を上回り、処理槽1内の廃水2の水位が次第に低下する。そして、処理槽1内の廃水2の水位が第2の水位L2未満になった場合、凝集剤投与流路20から処理槽1内への凝集剤19の投与を停止すると共に、膜ろ過水量を最大膜ろ過水量から元の取出流量Qに戻す。
【0172】
このように、処理槽1内の廃水2の水位を指標として凝集剤19の投与を停止することで、凝集剤19の投与開始後、凝集剤19の投与を最適なタイミングで停止することができる。
【0173】
上記各実施の形態では、被処理水の一例として廃水2を挙げたが、廃水2以外の有機物等を含む水であってもよい。
【符号の説明】
【0174】
1 処理槽
2 廃水(被処理水)
3 ろ過槽
4 監視槽
19 凝集剤
23 所定の投与位置
51 無酸素槽(監視槽)
C1~C5 処理サイクル
L1 第1の水位(第4の閾値,第9の閾値)
L2 第2の水位(第5の閾値,第10の閾値)
Prm1 第1の透過性
Prm2 第2の透過性
T1 第1の時点
T2 第2の時点
p1,p2 膜間差圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7