IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マキタの特許一覧

<>
  • 特許-動力工具 図1
  • 特許-動力工具 図2
  • 特許-動力工具 図3
  • 特許-動力工具 図4
  • 特許-動力工具 図5
  • 特許-動力工具 図6
  • 特許-動力工具 図7
  • 特許-動力工具 図8
  • 特許-動力工具 図9
  • 特許-動力工具 図10
  • 特許-動力工具 図11
  • 特許-動力工具 図12
  • 特許-動力工具 図13
  • 特許-動力工具 図14
  • 特許-動力工具 図15
  • 特許-動力工具 図16
  • 特許-動力工具 図17
  • 特許-動力工具 図18
  • 特許-動力工具 図19
  • 特許-動力工具 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20250502BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20250502BHJP
【FI】
B25F5/02
B24B23/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021138296
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032269
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】川上 高弘
(72)【発明者】
【氏名】江藤 優
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 史佳
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第03921752(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0224621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0051303(US,A1)
【文献】国際公開第2010/052881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00-5/02;
B24B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体の側面に、サイドハンドルを取り付けてなる動力工具であって、
前記サイドハンドルは、前記工具本体を挟んだ左右2カ所で前記サイドハンドルに設けた操作部により、前記工具本体に対して位置決め可能に取り付けられていると共に、
各前記操作部は、前記工具本体に対して前記サイドハンドルを位置決めする第1の位置と、前記位置決めを解除する第2の位置とに移動可能な操作部材と、
前記操作部材を前記第1の位置に付勢する付勢手段とをそれぞれ含んでおり、
前記サイドハンドルは、両端に設けた腕部が前記工具本体の両側面に対して回転可能に設けられて、各前記腕部と前記工具本体との間に、回転方向で互いに係合する係合部が設けられると共に、前記操作部は、各前記腕部にそれぞれ設けられて、
各前記操作部材は、前記第1の位置では、前記腕部の撓みを規制して前記腕部側の係合部と前記工具本体側の係合部との係合を維持させて前記サイドハンドルを回転方向に位置決めし、前記第2の位置では、前記腕部の撓みを許容して前記腕部側の係合部と前記工具本体側の係合部との係合を解除して前記サイドハンドルの回転を許容することを特徴とする動力工具。
【請求項2】
前記工具本体の左右に、前記サイドハンドルの各前記腕部を回転可能に支持する取付部材がそれぞれ設けられ、各前記操作部材は、前記第1の位置では前記取付部材と係止して前記腕部の撓みを規制し、前記第2の位置では前記取付部材との係止が解除されて前記腕部の撓みを許容することを特徴とする請求項に記載の動力工具。
【請求項3】
前記腕部側の係合部と前記工具本体側の係合部との何れか一方の前記係合部に、他方の前記係合部を押圧する押圧手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力工具。
【請求項4】
工具本体の側面に、サイドハンドルを取り付けてなる動力工具であって、
前記サイドハンドルは、前記工具本体を挟んだ左右2カ所の両端に、左右方向を軸線とする一対の筒部を有し、各前記筒部に設けた操作部により、前記工具本体に対して位置決め可能に取り付けられていると共に、
各前記操作部は、前記筒部内に設けられ、前記工具本体に設けた被係合部に係合する係合位置と前記被係合部に係合しない非係合位置とに左右方向へ移動可能な係合部材と、前記筒部内に設けられて前記係合部材を前記係合位置に付勢する付勢手段と、前記筒部内に突出して前記係合部材に係合する偏心ピンを備えた操作部材とをそれぞれ含み、
各前記操作部材の回転操作で前記偏心ピンを介して各前記係合部材を前記非係合位置に移動可能であり、
各前記係合部材には、前記筒部の内面に係合して前記係合部材を前記サイドハンドルの回転方向で前記筒部と一体とする回転規制部材が設けられていることを特徴とする動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリッシャやグラインダ等の動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリッシャやグラインダ等の動力工具には、作業者が把持するためのサイドハンドルが設けられている。サイドハンドルは、工具本体の側面に取り付けられている。例えば特許文献1には、工具本体の左右の側面に、ループ状のサイドハンドルの左右両端をネジによって回転可能に取り付けた電動工具が開示されている。サイドハンドルには、回転操作によってサイドハンドルの端部を工具本体に対してロックする位置と、ロックを解除する位置とに回転操作可能なロックノブが設けられている。ロックノブを解除位置に回転操作すると、サイドハンドルの角度を調整でき、ロックノブをロック位置に回転操作すると、サイドハンドルを調整した角度で固定可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2001/19228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のサイドハンドルは、ドライバ等のツールを用いることなくサイドハンドルの角度調整(位置決め)が行える。しかし、ロックノブは1箇所にのみ設けられているため、サイドハンドルに外力が加わると偶発的に角度が変わってしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、サイドハンドルの位置決めを高い信頼性で行うことができる動力工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、工具本体の側面に、サイドハンドルを取り付けてなる動力工具であって、
前記サイドハンドルは、前記工具本体を挟んだ左右2カ所で前記サイドハンドルに設けた操作部により、前記工具本体に対して位置決め可能に取り付けられていると共に、
各前記操作部は、前記工具本体に対して前記サイドハンドルを位置決めする第1の位置と、前記位置決めを解除する第2の位置とに移動可能な操作部材と、
前記操作部材を前記第1の位置に付勢する付勢手段とをそれぞれ含んでおり、
前記サイドハンドルは、両端に設けた腕部が前記工具本体の両側面に対して回転可能に設けられて、各前記腕部と前記工具本体との間に、回転方向で互いに係合する係合部が設けられると共に、前記操作部は、各前記腕部にそれぞれ設けられて、
各前記操作部材は、前記第1の位置では、前記腕部の撓みを規制して前記腕部側の係合部と前記工具本体側の係合部との係合を維持させて前記サイドハンドルを回転方向に位置決めし、前記第2の位置では、前記腕部の撓みを許容して前記腕部側の係合部と前記工具本体側の係合部との係合を解除して前記サイドハンドルの回転を許容することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の別構成は、工具本体の側面に、サイドハンドルを取り付けてなる動力工具であって、
前記サイドハンドルは、前記工具本体を挟んだ左右2カ所の両端に、左右方向を軸線とする一対の筒部を有し、各前記筒部に設けた操作部により、前記工具本体に対して位置決め可能に取り付けられていると共に、
各前記操作部は、前記筒部内に設けられ、前記工具本体に設けた被係合部に係合する係合位置と前記被係合部に係合しない非係合位置とに左右方向へ移動可能な係合部材と、前記筒部内に設けられて前記係合部材を前記係合位置に付勢する付勢手段と、前記筒部内に突出して前記係合部材に係合する偏心ピンを備えた操作部材とをそれぞれ含み、
各前記操作部材の回転操作で前記偏心ピンを介して各前記係合部材を前記非係合位置に移動可能であり、
各前記係合部材には、前記筒部の内面に係合して前記係合部材を前記サイドハンドルの回転方向で前記筒部と一体とする回転規制部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、サイドハンドルの位置決めを高い信頼性で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のグラインダの斜視図である。
図2】実施例1のグラインダの側面図である。
図3】実施例1のグラインダの正面図である。
図4図2のA-A線拡大断面図である。
図5】右側から見た操作部の分解斜視図である。
図6】左側から見た操作部の分解斜視図である。
図7】実施例2のグラインダの一部斜視図である。
図8】実施例2のグラインダの一部側面図である。
図9】実施例2のグラインダの一部正面図である。
図10図9のB-B線拡大断面図である。
図11】左側から見た操作部の分解斜視図である。
図12】右側から見た操作部の分解斜視図である。
図13】操作ツマミを回転させてロックを解除した状態のB-B線拡大断面図である。
図14】実施例3のグラインダの一部斜視図である。
図15】実施例3のグラインダの一部側面図である。
図16】実施例3のグラインダの一部正面図である。
図17】右側から見た操作部の分解斜視図である。
図18】左側から見た操作部の分解斜視図である。
図19図15のC-C線拡大断面図である。
図20】操作板を回転させてロックを解除した状態のC-C線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、操作部は、工具本体を挟んで左右2カ所に設けられていてもよい。
この構成によれば、ループ状のサイドハンドルの位置決めを操作性よく行うことができる。
本開示の一実施形態において、各操作部は、工具本体に対してサイドハンドルを位置決めする第1の位置と、位置決めを解除する第2の位置とに移動可能な操作部材と、操作部材を第1の位置に付勢する付勢手段とをそれぞれ含んでいてもよい。
この構成によれば、操作部材を第2の位置に移動させてサイドハンドルの位置決めを行った後、操作部材の押し込みを解除すれば、付勢手段によって操作部材が自動的に第1の位置へ復帰してサイドハンドルの回転がロックされる。従って、2つの操作部材があっても操作性は良好となる。
本開示の一実施形態において、サイドハンドルは、両端に設けた腕部が工具本体の両側面に対して回転可能に設けられて、各腕部と工具本体との間に、回転方向で互いに係合する係合部が設けられると共に、操作部は、各腕部にそれぞれ設けられていてもよい。そして、各操作部材は、第1の位置では、腕部の撓みを規制して腕部側の係合部と工具本体側の係合部との係合を維持させてサイドハンドルを回転方向に位置決めし、第2の位置では、腕部の撓みを許容して腕部側の係合部と工具本体側の係合部との係合を解除してサイドハンドルの回転を許容するものであってもよい。
この構成によれば、腕部の撓みを利用したサイドハンドルの位置決めが簡単に行える。
本開示の一実施形態において、工具本体の左右に、サイドハンドルの各腕部を回転可能に支持する取付部材がそれぞれ設けられ、各操作部材は、第1の位置では取付部材と係止して腕部の撓みを規制し、第2の位置では取付部材との係止が解除されて腕部の撓みを許容するものであってもよい。
この構成によれば、操作部材の簡単な移動でサイドハンドルの回転ロックとその解除との切り替えが可能となる。
本開示の一実施形態において、腕部側の係合部と工具本体側の係合部との何れか一方の係合部に、他方の係合部を押圧する押圧手段が設けられていてもよい。
この構成によれば、位置決め状態でのサイドハンドルのがたつきが抑えられる。
【0010】
本開示の一実施形態において、各操作部は、工具本体に設けた被係合部に係合する係合位置と被係合部に係合しない非係合位置とに移動可能な係合部材と、係合部材を係合位置に付勢する付勢手段と、係合部材に係合する偏心ピンを備えた操作部材とをそれぞれ含み、各操作部材の回転操作で偏心ピンを介して各係合部材を非係合位置に移動可能であってもよい。
この構成によれば、操作部材の簡単な回転操作でサイドハンドルの位置決めを解除することができる。
本開示の一実施形態において、各係合部材には、サイドハンドルの端部に係合して回転方向で一体となる回転規制部材が設けられていてもよい。
この構成によれば、係合部材とサイドハンドルとを回転方向で容易に一体化することができる。
本開示の一実施形態において、各操作部は、工具本体に設けた被係合部に係合する係合位置と被係合部に係合しない非係合位置とに移動可能な係合部材と、係合部材を非係合位置に付勢する付勢手段と、非係合位置で係合部材と当接する操作部材とを含むものであってもよい。そして、係合部材と操作部材との互いの当接面には、回転方向で互いに噛み合う噛合位置と、回転方向で噛み合わずに端面同士が当接する非噛合位置とに切替可能なカムがそれぞれ形成されて、操作部材の回転操作により、非噛合位置で係合部材を係合位置に移動させ、噛合位置で係合部材を非係合位置に移動させるものであってもよい。
この構成によれば、操作部材の簡単な回転操作でサイドハンドルの位置決めを行うことができる。
本開示の一実施形態において、サイドハンドルは、左右の向きを逆にしても工具本体に取り付け可能であってもよい。
この構成によれば、サイドハンドルの向きを気にせずに組み付けでき、組み付けしやすくなる。
【実施例1】
【0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、動力工具の一例であるグラインダを示す斜視図である。図2はグラインダの側面図、図3はグラインダの正面図である。
グラインダ1は、図示しないモータを収容して前後方向に延びる本体ハウジング2を有する。本体ハウジング2の前側には、スピンドル4を下向きに突出するギヤハウジング3が組み付けられている。スピンドル4の下端には、円盤状の先端工具(例えば砥石)5が直交状に装着されている。本体ハウジング2の後部には、細径のグリップ部6が形成されている。グリップ部6の後端には、電源となるバッテリパック7が装着されている。
ギヤハウジング3の左右の側面には、図4及び図5に示すように、サイドハンドル20の取付部10,10が突設されている。各取付部10は、側面視が円形の筒状で、外端面には、内側カム面11,11が形成されている。内側カム面11は、放射方向に延びる複数の山形のカム歯12,12・・を、周方向に等間隔で備えている。各取付部10の中心には、有底の受け孔13が形成されている。受け孔13の中心には、ネジ孔14が同軸で形成されている。
【0012】
各取付部10には、連結ボルト15がそれぞれ固定されている。各連結ボルト15は、軸部の中間部位に大径部16を備え、大径部16の内側(取付部10側)がネジ部17となっている。大径部16は、取付部10の受け孔13に嵌合する径を有している。大径部16の軸方向の長さは、受け孔13の軸方向の深さよりも大きくなっている。連結ボルト15の外側(取付部10との反対側)には、頭部18が設けられている。頭部18には、二面幅部19が形成されている。
連結ボルト15は、二面幅部19を工具等で把持すると、ネジ部17を取付部10のネジ孔14にねじ込むことができる。すると、大径部16が受け孔13の底部に当接した位置で固定される。この状態で大径部16の左右外側半分と頭部18とは、内側カム面11から左右外側へ突出する。
【0013】
サイドハンドル20は、正面視が逆U字状に形成されている。サイドハンドル20は、左右方向に延びる横断面円形のハンドル部21と、ハンドル部21の左右両端から下向きに延びる一対の腕部22,22とを備えている。腕部22,22の下部が、取付部10,10へ取り付けられている。以下、腕部22の取付構造を説明するが、左右対称であるため、右側の腕部22を中心に説明する。
図6にも示すように、腕部22の下部には、左右方向の厚みが上部よりも小さい薄肉部23が左寄りに形成されている。薄肉部23の左側面の下端には、左側へ突出する側面視円形の筒部24が形成されている。筒部24の左端面には、外側カム面25が形成されている。外側カム面25は、内側カム面11と同様に、放射方向に延びる複数の山形のカム歯26,26・・を、周方向に等間隔で備えている。筒部24の中心は、受け孔13と略同径の貫通孔27となっている。貫通孔27に連結ボルト15が頭部18から貫通されて、外側カム面25は、内側カム面11と互いに当接した状態でカム歯12,26同士が回転方向で互いに係合するようになっている。
【0014】
薄肉部23の右側面で前後方向の中央には、上下方向に延びて底面が平坦な内側凹部28が形成されている。内側凹部28内に貫通孔27が開口している。内側凹部28内で前後方向の中央には、貫通孔27の上側と連通して上下方向に延びる横断面半円状の内側半円溝29が形成されている。腕部22の右側面で前後方向の中央には、内側半円溝29の上端と連通する切欠き30が形成されている。内側凹部28の前後で薄肉部23には、筒部24の上側で上下方向に延びる角孔31,31が左右方向に貫通形成されている。貫通孔27の前後で薄肉部23には、左右方向に一対の保持孔32,32が貫通形成されている。保持孔32には、右側にコイルバネ33が、左側にボール34がそれぞれ収容されている。
【0015】
薄肉部23の右側面には、抑え蓋35が取り付けられている。抑え蓋35は、側面視が薄肉部23と同形状で、上端には、切欠き30に係合する係合片36が形成されている。係合片36の下側で抑え蓋35の左側面には、前後一対の係止爪37,37が形成されている。係止爪37,37は、上下方向に延びて薄肉部23の角孔31,31を貫通している。各係止爪37の左端部には、薄肉部23の左側面に係合する返し38が形成されている。
係止爪37,37の間で抑え蓋35の左側面には、上下方向に延びる外側凹部39が形成されている。外側凹部39は、薄肉部23の内側凹部28と対向している。外側凹部39には、係合片36も含めて上下方向に延びる半円状の外側半円溝40が形成されている。外側半円溝40は、薄肉部23の内側半円溝29と対向している。
外側半円溝40の下端には、有底孔41が形成されている。有底孔41は、連結ボルト15の同軸上にあって、頭部18を収容可能となっている。
抑え蓋35は、係合片36を切欠き30に合わせて係止爪37,37を角孔31,31に貫通させることで薄肉部23に組み付けられる。この状態で薄肉部23と抑え蓋35との間には、内側凹部28と外側凹部39とが対向し、内側半円溝29と外側半円溝40とが対向して下面に開口する収容空間42が上下方向に形成される。コイルバネ33,33の右端は、抑え蓋35の左側面に当接して左側のボール34,34を内側カム面11に押圧させる。
【0016】
腕部22の下端には、操作部45が設けられている。操作部45は、取付部10に対する腕部22の回転ロック及び回転ロックの解除を可能とするものである。
操作部45は、操作プレート46と、コイルバネ47とを備えている。
操作プレート46は、内側凹部28と外側凹部39とに跨がって嵌合する帯板である。操作プレート46の中間部には、連結ボルト15の頭部18が遊挿する逃がし孔48が形成されている。逃がし孔48の上側には、逃がし孔48よりも小径のロック孔49が連通して形成されている。ロック孔49は、連結ボルト15の軸部よりも大径で且つ頭部18よりも小径となっている。
操作プレート46は、逃がし孔48が連結ボルト15の同軸上に位置する上スライド位置と、ロック孔49が連結ボルト15の同軸上に位置する下スライド位置とにスライド可能となっている。上スライド位置では、逃がし孔48が連結ボルト15の頭部18と干渉しないため、薄肉部23と共に右方向への撓みが許容される。下スライド位置では、ロック孔49が頭部18と干渉するため、薄肉部23と共に右方向への撓みが規制される。
操作プレート46の上端には、係止突起50が設けられている。操作プレート46の下端は、収容空間42から下方へ突出している。下端には、右側へ折曲される操作片51が形成されている。
【0017】
コイルバネ47は、操作プレート46の上側で内側半円溝29と外側半円溝40とに跨がって上下方向に配置されている。コイルバネ47の上端は、切欠き30の上面に当接している。コイルバネ47の下端は、操作プレート46の係止突起50に係止している。よって、操作プレート46は、コイルバネ47により、常態では下スライド位置に付勢される。
【0018】
以上の如く構成されたグラインダ1において、左右の操作部45,45の操作プレート46,46が下スライド位置にある場合、サイドハンドル20に回転方向の力が加わると、各腕部22では、外側カム面25のカム歯26が内側カム面11のカム歯12と干渉して薄肉部23が左右外側へ撓もうとする。しかし、下スライド位置にあって薄肉部23と左右方向の移動が一体となる操作プレート46が連結ボルト15の頭部18に当接するため、操作プレート46及び薄肉部23の左右外側への移動が規制される。よって、サイドハンドル20の回転はロックされる。このとき、各腕部22のコイルバネ33,33は、ボール34,34を内側カム面11に押圧させるため、回転ロック状態での腕部22のがたつきが抑えられる。
【0019】
一方、サイドハンドル20の角度を調整する場合、左右の操作部45,45において操作プレート46,46の操作片51,51を同時に上方へ押し込む。すると、操作プレート46,46は、図4に二点鎖線で示すように上スライド位置にスライドする。このため、操作プレート46,46の逃がし孔48,48は、頭部18,18の同軸上へ移動する。よって、操作プレート46,46及び薄肉部23,23の左右外側への移動規制は解除される。
この状態でサイドハンドル20を回転させると、内側カム面11,11のカム歯12と外側カム面25,25のカム歯26とが干渉する。この干渉により、薄肉部23,23は、図4に二点鎖線で示すように、操作プレート46及び抑え蓋35と共に左右外側へ撓む。よって、外側カム面25,25のカム歯26が内側カム面11,11のカム歯12を乗り越えることできる。従って、図2に二点鎖線で示すように、サイドハンドル20を任意の角度に回転させることができる。角度が決まって操作片51,51の押し込みを解除すると、操作プレート46,46が下スライド位置に復帰するため、再びサイドハンドル20の回転はロックされる。
但し、左右何れか一方の操作プレート46の操作片51を押し込んで薄肉部23の移動規制を解除しても、他方の薄肉部23は移動規制されたままであるため、サイドハンドル20の回転ロックは維持される。
【0020】
このように、上記実施例1のグラインダ1において、サイドハンドル20は、サイドハンドル20に設けた2カ所の操作部45,45により、ギヤハウジング3(工具本体)に対して角度調整(位置決め)可能に取り付けられている。
この構成により、サイドハンドル20の角度調整をツールレスで簡単に行えると共に、角度調整後は不意に角度が変わってしまうおそれが生じにくくなる。よって、サイドハンドル20の角度調整を高い信頼性で行うことができる。
特に、操作部45,45は、ギヤハウジング3を挟んで左右2カ所に設けられているので、ループ状のサイドハンドル20の角度調整を操作性よく行うことができる。
【0021】
各操作部45は、ギヤハウジング3に対してサイドハンドル20の回転をロックする下スライド位置(第1の位置)と、回転ロックを解除する上スライド位置(第2の位置)とに移動可能な操作プレート46(操作部材)と、操作プレート46を下スライド位置に付勢するコイルバネ47(付勢手段)とをそれぞれ含んでいる。
よって、操作プレート46,46を上スライド位置に移動させてサイドハンドル20の角度調整を行った後、操作プレート46,46の押し込みを解除すれば、コイルバネ47,47によって操作プレート46,46が自動的に下スライド位置へ復帰してサイドハンドル20の回転がロックされる。従って、2つの操作プレート46,46があっても操作性は良好となる。
【0022】
サイドハンドル20は、両端に設けた腕部22,22がギヤハウジング3の両側面に対して回転可能に設けられて、各腕部22とギヤハウジング3との間に、回転方向で互いに係合する内側カム面11及び外側カム面25(係合部)が設けられている。そして、操作部45は、各腕部22にそれぞれ設けられて、各操作プレート46は、下スライド位置では、腕部22の撓みを規制して腕部22側の外側カム面25とギヤハウジング3側の内側カム面11との係合を維持させてサイドハンドル20の回転をロックする。一方、各操作プレート46は、上スライド位置では、腕部22の撓みを許容して腕部22側の外側カム面25とギヤハウジング3側の内側カム面11との係合を解除してサイドハンドル20の回転を許容する。
よって、腕部22,22の撓みを利用したサイドハンドル20の角度調整が簡単に行える。
【0023】
ギヤハウジング3の左右に、サイドハンドル20の各腕部22を回転可能に支持する連結ボルト15(取付部材)がそれぞれ設けられ、各操作プレート46は、下スライド位置では連結ボルト15と係止して腕部22の撓みを規制し、上スライド位置では連結ボルト15との係止が解除されて腕部22の撓みを許容する。
よって、操作プレート46の簡単な上下移動でサイドハンドル20の回転ロックとその解除との切り替えが可能となる。
腕部22側の外側カム面25に、内側カム面11を押圧するコイルバネ33及びボール34(押圧手段)が設けられている。
よって、回転ロック状態でのサイドハンドル20のがたつきが抑えられる。
【0024】
なお、実施例1において、操作プレートのスライド方向は、腕部に沿った上下方向に限らない。操作プレートは、腕部と交差する前後方向や斜め方向にスライドさせてサイドハンドルの回転ロックとその解除とを行うことができる。
操作プレートは、直線状にスライドさせて第1の位置と第2の位置とを切り替える構造に限らない。例えば操作プレートを、腕部内で上端に設けた支点を中心に前後へ揺動可能に設け、連結ボルトの頭部と同軸にロック孔が位置する前後一方の揺動位置(第1の位置)と、頭部と同軸に逃がし孔が位置する前後他方の揺動位置(第2の位置)とを切り替える構造も採用できる。よって、付勢手段はトーションスプリングや板バネ等も採用できる。
薄肉部は、サイドハンドルの腕部と別体であってもよい。
抑え蓋は、薄肉ヒンジ等によって腕部と一体に設けてもよい。
取付部材は、連結ボルトに限らず、ピン等の部材を採用してもよい。
【実施例2】
【0025】
次に、本開示の他の実施例を説明する。但し、実施例1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
図7は、サイドハンドルが取り付けられるギヤハウジングの上側部分を示す一部斜視図である。図8は一部側面図、図9は一部正面図である。
このグラインダ1Aにおいても、ギヤハウジング3の左右の側面には、図10図11に示すように、取付部10A,10Aが設けられている。取付部10Aは、側面視円形の凹部で、中心には、ネジ孔55が形成されている。ネジ孔55の周囲には、ネジ孔55を中心とした径方向に延びる複数の係合溝56,56・・が、取付部10Aの周方向に等間隔をおいて形成されている。
サイドハンドル20Aは、ギヤハウジング3の上側を回り込むループ状で、両端には、取付部10A,10Aと同軸上に位置する一対の筒部57,57が設けられている。但し、サイドハンドル20Aは、左右対称でなく、左端部58は、筒部57の上面から上向きに連結され、右端部59は、筒部57の下面から右側へ延びた後、筒部57の右外側を通って上方へ湾曲状に形成されている。よって、サイドハンドル20Aは、左右非対称形となっている。右端部59には、筒部57の軸線と同軸に貫通する透孔60が形成されている。透孔60は、後述する六角穴付きボルト83の操作用である。
【0026】
筒部57,57には、操作部45A,45Aが設けられている。操作部45Aは、図10及び図11図12に示すように、連結ボルト61と、係合板62と、コイルバネ63と、操作ノブ75とを含んでいる。以下、操作部45Aは左右対称であるため、左側の操作部45Aを主として説明する。
連結ボルト61は、軸部の右端にネジ部64を、左端部に円形板状の頭部65を備えている。頭部65の中心には、ネジ孔66と、ネジ孔66を中心とした同心円上に、ねじ込み操作用の一対の小孔67,67が形成されている。連結ボルト61は、筒部57内で取付部10Aのネジ孔55にねじ込まれる。
筒部57の左側面には、右側面の開口よりも小径で、連結ボルト61の頭部65が嵌合する円形孔68が形成されている。筒部57の正面には、円形の嵌合孔69が形成されている。筒部57の内周面には、右端部から左側へ直線状に切り込まれる3つのガイド溝70,70・・が、上下及び後方に形成されている。
【0027】
係合板62は、筒部57内で連結ボルト61に貫通されている。係合板62の左端部には、筒部57の内周面に摺接する円形のフランジ部71が形成されている。フランジ部71の右側で係合板62の周面には、上下及び後方へ向けて突出する3本のピン72,72・・が設けられている。各ピン72は、筒部57に設けたガイド溝70に係合している。よって、係合板62は、筒部57内で回転を規制された状態で連結ボルト61に沿って左右方向に移動可能となる。係合板62の右側面には、放射方向に延びる複数の係合歯73,73・・が、周方向に等間隔をおいて形成されている。係合歯73は、周方向の断面が山形で、取付部10Aの係合溝56と同じ数及び配置となっている。
コイルバネ63は、連結ボルト61の頭部65と係合板62との間で連結ボルト61の軸部に貫通されている。よって、係合板62は、コイルバネ63により、係合歯73が係合溝56に係合する右スライド位置に付勢される。
【0028】
操作ノブ75は、筒部57の嵌合孔69へ回転可能に嵌合している。操作ノブ75は、正面視が円形で、後面には、偏心位置で後方へ突出する偏心ピン76が設けられている。偏心ピン76の先端は、係合板62のフランジ部71の右側に位置している。操作ノブ75の前面には、ツマミ77が設けられている。ツマミ77は、操作ノブ75の前面から前方へ延びた後、偏心ピン76と逆の偏心側へ突出するL字板となっている。
筒部57の左側で連結ボルト61の頭部65には、ストッパ板78が固定されている。ストッパ板78は、頭部65よりも大径の円形部79と、円形部79の前端から前方へ突出した後、右側へ折曲する平面視L字状の帯板部80とを有する。円形部79の中央には、透孔81が形成されている。帯板部80の正面には、横長の四角孔82が形成されている。
円形部79は、左側から透孔81を貫通させた六角穴付きボルト83によって筒部57の左側から頭部65のネジ孔66に固定される。すると、筒部57は、ストッパ板78の円形部79によって左外側へ抜け止めされる。このとき帯板部80は、四角孔82にツマミ77を貫通させて操作ノブ75に前方から当接する。よって、操作ノブ75は、前方へ抜け止めされる。
【0029】
以上の如く構成されたグラインダ1Aにおいて、左右の操作部45A,45Aの操作ノブ75,75が、図10に示すように、ツマミ77,77が横向きとなる第1の回転位置にあると、偏心ピン76,76が取付部10A側に位置する。すると、係合板62,62は、係合歯73が係合溝56に係合する内スライド位置に付勢される。よって、左右の筒部57,57は、取付部10A,10Aに係合する係合板62,62を介して回転が規制されるため、サイドハンドル20Aの回転はロックされる。
【0030】
サイドハンドル20Aの角度を変える場合は、図13に示すように、左右の操作ノブ75,75を、それぞれツマミ77,77が上向きとなる第2の回転位置に回転させる。すると、取付部10A寄りに位置していた偏心ピン76,76が回転して下方へ移動する。よって、係合板62,62は、偏心ピン76,76の外側への移動量だけコイルバネ63,63の付勢に抗して外側へ移動する。この外スライド位置では、係合歯73が係合溝56から離間して筒部57,57の回転規制が解除されるため、図8に二点鎖線で示すように、サイドハンドル20Aを任意の角度に回転させることができる。
サイドハンドル20Aの回転後、左右の操作ノブ75,75を、再び第1の回転位置にさせる。すると、係合板62,62は、コイルバネ63,63の付勢により内スライド位置へ移動する。よって、筒部57,57の回転が規制されてサイドハンドル20Aの回転がロックされる。なお、係合板62が取付部10A側へ移動した際、係合歯73と係合溝56との位相が合わなくても、サイドハンドル20Aを前後何れかへ回転させると、係合歯73が係合溝56と係合する位相で係合板62は内スライド位置に移動できる。
但し、左右何れかの操作ノブ75のみを第2の回転位置に回転させて係合板62を外スライド位置に移動させ、筒部57の回転規制を解除しても、反対側の筒部57は回転規制されているため、サイドハンドル20Aの回転ロックは維持される。
【0031】
このように、上記実施例2のグラインダ1Aにおいて、サイドハンドル20Aは、サイドハンドル20Aに設けた2カ所の操作部45A,45Aにより、ギヤハウジング3に対して所定角度で回転ロック可能に取り付けられている。
この構成により、サイドハンドル20Aの角度調整をツールレスで簡単に行えると共に、角度調整後は不意に角度が変わってしまうおそれが生じにくくなる。よって、サイドハンドル20Aの角度調整を高い信頼性で行うことができる。
特に、操作部45A,45Aは、ギヤハウジング3を挟んで左右2カ所に設けられているので、ループ状のサイドハンドル20Aの角度調整を操作性よく行うことができる。
【0032】
各操作部45Aは、ギヤハウジング3に設けた係合溝56(被係合部)に係合する内スライド位置(係合位置)と係合溝56に係合しない外スライド位置(非係合位置)とに移動可能な係合板62(係合部材)と、係合板62を係合位置に付勢するコイルバネ63(付勢手段)と、係合板62に係合する偏心ピン76を備えた操作ノブ75(操作部材)とをそれぞれ含み、各操作ノブ75の回転操作で偏心ピン76を介して各係合板62を外スライド位置に移動可能としている。
よって、操作ノブ75の簡単な回転操作でサイドハンドル20Aの回転ロックを解除することができる。
各係合板62には、サイドハンドル20Aの筒部57(端部)に係合して回転方向で一体となるピン72(回転規制部材)が設けられている。
よって、係合板62とサイドハンドル20Aとを回転方向で容易に一体化することができる。
【0033】
なお、上記実施例2において、操作ノブは筒部の前面に限らず、筒部の後面又は上面等に設けてもよい。ツマミの形状や偏心ピンの位置も適宜変更可能である。第1の回転位置及び第2の回転位置とツマミの向きとの関係も適宜変更できる。
コイルバネは、取付部と係合板との間に配置して係合板を外スライド位置に付勢して、係合板に操作ノブの偏心ピンを当接させてもよい。この場合、操作ノブの回転操作によりコイルバネの付勢に抗して偏心ピンが係合板を内スライド位置に移動させることになる。
係合板の形状は、上記例に限定されない。係合歯の数や形状は取付部の係合溝の数や形状に合わせて変更できる。係合板と筒部との回転方向の一体化も、ピン等の突起を筒部の内面に設け、係合板の外周に突起が係合する溝を設けて行ってもよい。
但し、上記例の係合板のように、筒部との回転方向での一体化と取付部に対するスライドとを係合板のみで可能としなくてもよい。例えば筒部と係合板との間に別部材を設けて係合板の回転規制を行ってもよい。
筒部は、サイドハンドルと別体であってもよい。
【実施例3】
【0034】
図14は、サイドハンドルが取り付けられるギヤハウジングの上側部分を示す一部斜視図である。図15は一部側面図、図16は一部正面図である。
このグラインダ1Bにおいても、取付部10B,10Bは、ギヤハウジング3の左右の側面にそれぞれ形成されている。各取付部10Bは、図17に示すように、側面視が円形状に凹設されている。各取付部10Bには、放射方向に延びる複数の係合凹部85,85・・が、周方向に等間隔をおいて形成されている。
サイドハンドル20Bも、実施例2と同様に、ギヤハウジング3の上側を回り込むループ状である。サイドハンドル20Bの両端には、取付部10B,10Bと同軸上に位置する一対の有底筒部86,86が設けられている。
サイドハンドル20Bも、実施例2と同じ左右非対称形である。ここでは右端部59が、有底筒部86の上面から上向きに連結され、左端部58が、有底筒部86の下面から左側へ延びた後、有底筒部86の左外側を通って上方へ湾曲状に形成されている。
【0035】
有底筒部86,86は、互いに開口を左右外側へ向けて配置されている。各有底筒部86の底面には、図18に示すように、取付部10Bの係合凹部85と同様に放射方向に延びる複数の係合孔87,87・・が、周方向に等間隔をおいて形成されている。この係合孔87は、係合凹部85と数及び配置は同じである。
各有底筒部86の底面中心には、左右外側へ突出するネジボス88が形成されている。ネジボス88の先端は、有底筒部86の開口面よりも外側へ突出している。左側の有底筒部86の外端部には、後半分が前半分よりも高くなる段差が形成されて、後半分の上下にストッパ面89,89が前向きに形成されている。右側の有底筒部86の外端部には、前半分が後半分よりも高くなる段差が形成されて、前半分の上下にストッパ面89,89が後向きに形成されている。
【0036】
有底筒部86,86には、操作部45B,45Bが設けられている。操作部45Bは、図19にも示すように、係合板90と、コイルバネ91と、操作板92とを含んでいる。以下、操作部45Bは左右対称であるため、右側の操作部45Bを主として説明する。
係合板90は、有底筒部86内でネジボス88に貫通される内側貫通孔93を有した円板状である。係合板90の左側面には、左側へ突出する複数の係合片94,94・・が形成されている。係合片94は、内側貫通孔93を中心として放射方向に延び、周方向に等間隔をおいて配置されている。各係合片94は、有底筒部86の各係合孔87に係合して係合板90を有底筒部86内で回転規制している。各係合片94は、各係合孔87を貫通すると取付部10Bの各係合凹部85に係合可能となっている。係合片94の内側で係合板90の左側面には、内側貫通孔93と同心のリング溝95が形成されている。
【0037】
係合板90の右側面には、一対の内側カム96,96が形成されている。内側カム96,96は、右側面視で内側貫通孔93を中心とした左回転方向へ向かうに従って徐々に右側へ突出する半円の螺旋形状を有している。各内側カム96のリード角は同じで、右端面は、互いに同じ高さの平坦面となっている。よって、内側カム96,96は、高低が互い違いとなる。
コイルバネ91は、係合板90の左側でネジボス88に外装されている。コイルバネ91は、係合片94の内側で右端を係合板90のリング溝95に嵌合させ、左端を有底筒部86の底面に当接させている。よって、係合板90は、ネジボス88に沿って右方向へ付勢される。
【0038】
操作板92は、有底筒部86と同じ外径を有する円板状である。操作板92の中心には、ネジボス88に貫通される外側貫通孔97が形成されている。操作板92の左側面には、一対の外側カム98,98が形成されている。外側カム98,98は、左側面視で外側貫通孔97を中心とした左回転方向へ向かうに従って徐々に左側へ突出する半円の螺旋形状を有している。各外側カム98のリード角は同じで、左端面は、互いに同じ高さの平坦面となっている。よって、外側カム98,98は、高低が互い違いとなる。
外側カム98,98は、回転規制される係合板90の内側カム96,96と右側面視での右回転方向で互いに噛合可能となっている。この噛合位置では、係合板90は、コイルバネ91の付勢により、操作板92寄りの外スライド位置となる。噛合位置から外側カム98,98が右側面視で180°未満で左回転すると、内側カム96,96と端面同士で当接して互いに噛み合わない状態となる。この非噛合位置では、係合板90は、コイルバネ91の付勢に抗して操作板92から離れる内スライド位置となる。
【0039】
操作板92の左側面で外周縁寄りには、突起99が設けられている。突起99は、操作板92が有底筒部86の右端部に当接した状態で、段差の低い後半分側に位置し、操作板92の回転方向で上下のストッパ面89,89に当接可能となっている。図17図19に示すように、突起99が下側のストッパ面89に当接する操作板92の第1の回転位置では、外側カム98,98は、内側カム96,96に対する非噛合位置となる。一方、図20に示すように、突起99が上側のストッパ面89に当接する操作板92の第2の回転位置では、外側カム98,98は、内側カム96,96に対する噛合位置となる。
操作板92の右側面には、ツマミ部100が設けられている。ツマミ部100は、外側カム98,98同士の合わせ面と平行な直径方向に形成されている。
操作板92は、ツマミ部100の中央でワッシャ101を介してネジ102をネジボス88の先端にねじこむことで回転可能に取り付けられる。すると、係合板90がコイルバネ91の付勢によって操作板92側へ押圧され、内側カム96,96を外側カム98,98に当接させる。
【0040】
以上の如く構成されたグラインダ1Bにおいて、図19に示すように、操作部45B,45Bの操作板92,92の第1の回転位置では、前述のように、左右の外側カム98,98は、内側カム96,96との噛合位置となる。よって、係合板90,90は、コイルバネ91,91の付勢に抗して内スライド位置へ移動する。すると、係合板90,90の各係合片94は、有底筒部86,86の各係合孔87を貫通して取付部10B,10Bの各係合凹部85に係合する。このため有底筒部86,86の回転が規制されてサイドハンドル20Bはロック状態となる。
ここから操作板92,92を互いに逆方向に回転させて第2の回転位置とすると、図20に示すように、左右の外側カム98,98は、内側カム96,96との噛合位置となる。よって、係合板90,90は、コイルバネ91,91の付勢により外スライド位置へ移動する。すると、係合板90,90の各係合片94は、取付部10B,10Bの各係合凹部85から離間する。但し、有底筒部86,86の各係合孔87には係合しているため、係合板90,90自体の回転規制は行われる。よって、有底筒部86,86の回転規制が解除され、図15に二点鎖線で示すように、サイドハンドル20Bを任意の角度に回転させることができる。
【0041】
サイドハンドル20Bの角度を決めると、再び操作板92,92を第1の回転位置まで回転させる。すると、前述のように係合板90,90が内スライド位置へそれぞれ移動して各係合片94を各係合凹部85に係合させるため、サイドハンドル20Bの回転はロックされる。
但し、左右何れかの操作板92を第2の回転位置に回転させて係合板90を外スライド位置に移動させ、有底筒部86の回転規制を解除しても、反対側の有底筒部86は回転規制されているので、サイドハンドル20Bの回転ロックは維持される。
サイドハンドル20Bは、操作部45Bが全て有底筒部86に設けられているので、左右の向きを逆にしても取付部10B,10Bに取り付けることができる。
【0042】
このように、上記実施例3のグラインダ1Bにおいて、サイドハンドル20Bは、サイドハンドル20Bに設けた2カ所の操作部45B,45Bにより、ギヤハウジング3に対して所定角度で回転ロック可能に取り付けられている。
この構成により、サイドハンドル20Bの角度調整をツールレスで簡単に行えると共に、角度調整後は不意に角度が変わってしまうおそれが生じにくくなる。よって、サイドハンドル20Bの角度調整を高い信頼性で行うことができる。
特に、操作部45B,45Bは、ギヤハウジング3を挟んで左右2カ所に設けられているので、ループ状のサイドハンドル20Bの角度調整を操作性良く行うことができる。
【0043】
各操作部45Bは、ギヤハウジング3に設けた係合凹部85(被係合部)に係合する内スライド位置(係合位置)と係合凹部85に係合しない外スライド位置(非係合位置)とに移動可能な係合板90(係合部材)と、係合板90を外スライド位置に付勢するコイルバネ91(付勢手段)と、外スライド位置で係合板90と当接する操作板92(操作部材)とを含み、係合板90と操作板92との互いの当接面には、回転方向で互いに噛み合う噛合位置と、回転方向で噛み合わずに端面同士が当接する非噛合位置とに切替可能な内側カム96及び外側カム98(カム)がそれぞれ形成されて、操作板92の回転操作により、非噛合位置で係合板90を内スライド位置に移動させ、噛合位置で係合板90を外スライド位置に移動させる。
よって、操作板92の簡単な回転操作でサイドハンドル20Bの角度調整を行うことができる。
サイドハンドル20Bは、左右の向きを逆にしてもギヤハウジング3に取り付け可能である。
よって、サイドハンドル20Bの向きを気にせずに組み付けでき、組み付けしやすくなる。
【0044】
なお、上記実施例3において、係合凹部、係合孔、係合片の数及び配置は上記例に限定されない。
コイルバネは、係合片の内側でなく外側を囲むように配置してもよい。
内側カム及び外側カムの形状は、半円状のものを一対配置する上記例に限らない。半周以上周回する1つのカム同士を互いに噛合及び非噛合可能に設けてもよい。
操作板は、ツマミ形状でなくレバー形状としてもよい。
有底筒部は、サイドハンドルと別体であってもよい。
有底筒部の端部に設ける段差と、操作板に設ける突起との位置は左右逆にしてもよい。どちらも同じ側に設けて操作板の回転方向を左右で同じにしてもよい。
【0045】
そして、各実施例に共通して、サイドハンドルは、正面視が逆U字状となる形態に限らない。左右に膨らむ半円状等でもよい。全体が金属製でもよいし、全体が樹脂製でもよい。
サイドハンドルの位置決めは、角度調整に限らない。サイドハンドルの取付位置を所定方向にスライドさせて固定するような場合も含まれる。
操作部の位置も適宜変更できる。操作部は、3カ所以上設けることもできる。
動力工具は、DC工具でなく、商用電源を用いるAC工具であってもよい。
動力工具は、グラインダに限らない。ポリッシャやサンダ等の他の研削・研磨工具、丸鋸、カッタ等の切断工具等であっても、本開示は適用可能である。よって、動力工具は、電動工具に限らない。エア工具やエンジン工具等であっても、本開示は採用可能である。
よって、サイドハンドルの取付位置は、ギヤハウジングに限らない。モータハウジングでもよいし、他のハウジングでもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B・・グラインダ、2・・本体ハウジング、3・・ギヤハウジング、4・・スピンドル、10,10A,10B・・取付部、11・・内側カム面、15,61・・連結ボルト、20,20A,20B・・サイドハンドル、22・・腕部、23・・薄肉部、25・・外側カム面、35・・抑え蓋、45,45A,45B・・操作部、46・・操作プレート、48・・逃がし孔、49・・ロック孔、51・・操作片、56・・係合溝、57・・筒部、62,90・・係合板、73・・係合歯、75・・操作ノブ、85・・係合凹部、86・・有底筒部、87・・係合孔、92・・操作板、96・・内側カム、98・・外側カム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20