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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】繊維複合材料を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20250502BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20250502BHJP
   B29C 70/50 20060101ALI20250502BHJP
   B29C 43/46 20060101ALI20250502BHJP
   B29C 43/28 20060101ALI20250502BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
B29C70/16
B29C70/50
B29C43/46
B29C43/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021549827
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 US2020018040
(87)【国際公開番号】W WO2020176263
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】62/811,585
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】オキーフ、サラ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】バンク、デイヴィッド エイチ.
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0114198(US,A1)
【文献】特表2018-532014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291164(US,A1)
【文献】特開平08-209482(JP,A)
【文献】特開2010-159049(JP,A)
【文献】特開2006-289819(JP,A)
【文献】特開2017-113987(JP,A)
【文献】特開2004-162055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
B29B15/08-15/14
B29C70/00-70/88
B32B 1/00-43/00
C08J 5/04-5/10;5/24
D03D 1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグ製品を製造するためのプロセスであって、
(a)速硬化性樹脂組成物を提供するステップと、
(b)剥離基材のシートの片側の表面上にステップ(a)からの前記樹脂のフィルムを形成するステップと、
(c)様々な繊維面積重量の断面厚さを有する繊維織物基材のシートを提供するステップと、
(d)ステップ(c)の前記繊維織物基材のシートの少なくとも片側の前記表面を、ステップ(b)の樹脂フィルムの前記シートの樹脂側と接触させて、前記樹脂が前記繊維織物基材と接触するようにするステップと、
(e)ニップロールアセンブリ装置を用いて、前記樹脂フィルムに対向する前記剥離基材のシートのもう片方の側の表面に圧力を加えて、前記繊維織物基材に前記速硬化性樹脂組成物を含浸させ、可変繊維面積重量繊維織物基材の幅全体に樹脂の均一な含浸を得るステップと、
(f)ステップ(e)の前記速硬化性樹脂組成物を含浸させた前記繊維織物基材が、前記樹脂を少なくとも部分的に硬化させて、プリプレグ製品を形成することを可能にするステップと、
を含み、
前記速硬化性樹脂組成物は、
第1のエポキシ成分としてオキサゾリドンを含有する固体エポキシ樹脂と、
第2のエポキシ成分と、
可溶性潜在触媒と、
潜在性硬化剤の総重量に基づいて、粒子の少なくとも35重量パーセントが、2μm未満の平均粒子サイズを有する粒子分布を有する前記潜在性硬化剤と
を含有するエポキシ樹脂組成物を含み、
前記ニップロールアセンブリ装置は、互いに回転接触している少なくとも第1、第2、および第3のニップローラの組み合わせを含むSラップ圧縮ロールアセンブリを備え、
前記第2のニップローラが、前記第1および第3のニップローラの間に挟まれた位置に配設され、第1のニップギャップおよび第2のニップギャップを提供し、
ステップ(e)において、前記ニップロールアセンブリ装置は、前記第1および第2のニップギャップを調整し、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の低繊維面積重量部分に剥離紙を加え、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の供給速度を0.305m/分~0.610m/分に設定することにより、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の幅に均一な圧力を加える、プロセス。
【請求項2】
前記繊維織物基材が、炭素繊維織物基材である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(f)の前記速硬化性樹脂組成物を含浸させた前記繊維織物基材を、前記樹脂を少なくとも部分的に硬化させてプリプレグ製品を形成するのに十分な温度で加熱する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記温度が、100℃~130℃である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記繊維織物基材が、繊維面積重量ハイブリッド炭素繊維ブロードグッドである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
繊維強化複合物品を製造するためのプロセスであって、
(A)請求項1に記載のプロセスによって作られた樹脂含浸織物プリプレグを提供することと、
(B)ステップ(A)の前記含浸織物プリプレグを硬化させて、繊維強化複合物品を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項7】
炭素繊維強化複合材料を作るためのプロセスであって、
(a)速硬化性樹脂組成物を提供するステップと、
(b)剥離基材のシートの片側の表面上にステップ(a)からの前記樹脂のフィルムを形成するステップと、
(c)様々な繊維面積重量の断面厚さを有する繊維織物基材のシートを提供するステップと、
(d)ステップ(c)の前記繊維織物基材のシートの少なくとも片側の前記表面を、ステップ(b)の樹脂フィルムの前記シートの前記樹脂と接触させるステップと、
(e)ニップロールアセンブリ装置を用いて、前記樹脂フィルムに対向する前記剥離基材のシートのもう片方の側の表面に圧力を加えて、前記繊維織物基材に前記速硬化性樹脂組成物を含浸させて、可変繊維面積重量繊維織物基材の幅全体に樹脂の均一な含浸を得るステップと、
(f)ステップ(e)の速硬化性樹脂組成物を含浸させた前記繊維織物基材を部分的に硬化させて、プリプレグ製品を形成することを可能にするステップと、
(g)ステップ(f)の前記プリプレグ製品を硬化させて、硬化炭素繊維強化複合材料を形成するステップと、
を含み、
前記速硬化性樹脂組成物は、
第1のエポキシ成分としてオキサゾリドンを含有する固体エポキシ樹脂と、
第2のエポキシ成分と、
可溶性潜在触媒と、
潜在性硬化剤の総重量に基づいて、粒子の少なくとも35重量パーセントが、2μm未満の平均粒子サイズを有する粒子分布を有する前記潜在性硬化剤と
を含有するエポキシ樹脂組成物を含み、
前記ニップロールアセンブリ装置は、互いに回転接触している少なくとも第1、第2、および第3のニップローラの組み合わせを含むSラップ圧縮ロールアセンブリを備え、
前記第2のニップローラが、前記第1および第3のニップローラの間に挟まれた位置に配設され、第1のニップギャップおよび第2のニップギャップを提供し、
ステップ(e)において、前記ニップロールアセンブリ装置は、前記第1および第2のニップギャップを調整し、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の低繊維面積重量部分に剥離紙を加え、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の供給速度を0.305m/分~0.610m/分に設定することにより、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の幅に均一な圧力を加える、プロセス。
【請求項8】
前記硬化させるステップ(g)の温度が、140℃~155℃である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記硬化させるステップ(g)の硬化時間が、3分~5分である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
様々な繊維面積重量の断面厚さを有する繊維織物基材の少なくとも1枚のシートと、剥離基材のシートに剥離可能に取り付けられた速硬化性樹脂組成物のフィルムを含有する前記剥離基材のシートを少なくとも1枚と、を含む複数のシート部材を受容するためのニップロールアセンブリ装置であって、
前記ニップロールアセンブリ装置は、請求項1に記載のプリプレグ製品を製造するためのプロセスのために使用されるものであり、
前記ニップロールアセンブリ装置が、互いに回転接触している少なくとも第1、第2、および第3のニップローラの組み合わせを含むSラップ圧縮ロールアセンブリを備え、
前記第2のニップローラが、前記第1および第3のニップローラの間に挟まれた位置に配設され、第1のニップギャップおよび第2のニップギャップを提供し、
前記ニップロールアセンブリ装置は、前記第1および第2のニップギャップを調整し、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の低繊維面積重量部分に剥離紙を加え、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の供給速度を0.305m/分~0.610m/分に設定することにより、前記可変繊維面積重量繊維織物基材の幅に均一な圧力を加え
前記第2のローラが、前記樹脂フィルムの側に対向する前記剥離基材のシートの片側の表面全体に均一な圧力を提供して、前記繊維織物基材に前記速硬化性樹脂組成物を含浸させ、かつ可変繊維面積重量の繊維織物基材の幅全体に前記樹脂の均一な含浸を得るように変更された直径を含み、
前記速硬化性樹脂組成物は、
第1のエポキシ成分としてオキサゾリドンを含有する固体エポキシ樹脂と、
第2のエポキシ成分と、
可溶性潜在触媒と、
潜在性硬化剤の総重量に基づいて、粒子の少なくとも35重量パーセントが、2μm未満の平均粒子サイズを有する粒子分布を有する前記潜在性硬化剤と
を含有するエポキシ樹脂組成物を含む、ニップロールアセンブリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維複合材料を製造するためのプロセスに関し、より具体的には、本発明は、様々な繊維面積重量を有する炭素繊維エポキシ樹脂複合材料を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、最初に繊維または織物にエポキシ樹脂配合物などの樹脂配合物を含浸させることによってプリプレグ構造を形成し、次いで含浸させたプリプレグ構造を硬化させて炭素繊維複合材料を形成することによって炭素繊維複合材料を製造することが知られている。炭素繊維エポキシ複合材料は、例えば、自動車部品の製造を含む多くの用途に使用可能である。自動車用途では、織物の全幅で繊維面積重量(FAW)が変化し得る、連続的に位置合わせされた織物で炭素繊維エポキシ複合材料を作成する必要がある。自動車用途で有用であるためには、含浸繊維または織物は、(1)5分未満で圧縮成形および硬化され、(2)高いガラス転移温度を維持し、(3)内部離型剤を使用して、高い強度性と剛性を達成し、金型から硬化部品を簡単に剥離できるようにする必要がある。
【0003】
これまで、EP2692783B1およびEP3216496A1に開示された方法などの織物を含浸するために使用される含浸方法は、均一なFAWを伴うプリプレグで実施されており、既知の方法は、プリプレグの強化層の特異な厚さを想定している。既知の含浸方法を使用すると、問題が発生する。すなわち、そのような既知の含浸方法が、(様々な厚さの)様々な繊維面積重量の織物、つまり、高面積重量部分および低面積重量部分の両方を有する織物に樹脂を含浸させるために使用されると、問題が発生する。例えば、既知の含浸方法が様々な繊維面積重量の織物に使用されると、織物の高面積重量部分が歪むか、または織物の低面積重量部分に樹脂が注入されなくなる。通常、可変炭素繊維面積重量編組構造の織物は、織物の中心に高繊維面積重量(例えば、588グラム/平方メートル(g/m))を有し、織物の端部に低繊維面積重量(例えば、520g/m)を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭素織物にエポキシ樹脂配合物を含浸させる方法またはプロセスであって、前述の歪みの問題なしに、エポキシ樹脂を含浸させた炭素織物からプリプレグを調製することによって炭素繊維が、可変炭素繊維面積重量編組構造を有する、方法またはプロセスを提供することが望ましいであろう。
【0005】
本発明の一実施形態は、プリプレグ製品を製造するための本発明のプロセスを対象としており、当該プロセスは、(a)速硬化性樹脂組成物を提供するステップと、(b)剥離基材のシートの片側の表面上にステップ(a)からの樹脂のフィルムを形成するステップと、(c)様々な繊維面積重量の断面厚さを有する繊維織物基材のシートを提供するステップと、(d)ステップ(c)の繊維織物基材のシートの少なくとも片側の表面を、ステップ(b)の樹脂フィルムのシートの樹脂と接触させるステップと、(e)樹脂フィルムに対向する剥離基材のシートのもう片方の側の表面に圧力を加えて、繊維織物基材に速硬化性樹脂組成物を含浸させるステップと、(f)ステップ(e)の速硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維織物基材を部分的に硬化させて、プリプレグ製品を形成するステップと、を含む。
【0006】
別の実施形態では、本発明のプロセスは、エポキシ樹脂を様々な繊維面積重量を有する炭素織物に含浸させることと、次いで、エポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維織物からプリプレグを形成することと、を含む。
【0007】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明のプロセスは、目標平均膜厚(例えば、540グラム/m)を使用して、可変繊維面積重量炭素繊維構造を有する織物をプリプレグ化し、かつ剥離紙を望ましい場所(低繊維面積重量)に添加することによって圧力を均等にし、織物を歪ませることなく含浸に必要な均一な圧力(例えば、織物の幅12インチ(30.48センチメートル(cm))にわたって)を生じさせる。
【0008】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、樹脂含浸プリプレグ製品を製造するためのニップロールアセンブリ装置を含む。
【0009】
本発明は、幅全体で厚さが変化する単層(あらゆる繊維角度が同じプリプレグ内に含まれる)のブロードグッドプリプレグを利用して、不均一な直径を伴う複雑な断面の管状形状を成形する。
【0010】
有利には、本発明のプロセスによって製造されたプリプレグを成形して、管状の不均一な直径の部品などの複雑な断面を伴う成形繊維強化複合構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、以下に説明する図3に示すプリプレグなどのプリプレグ製品を形成するために使用可能なSニップローラシステム装置の概略図の斜視図である。
図2図2は、図1の2-2線に沿った断面図である。
図3図3は、図1の装置を用いて炭素繊維織物基材にエポキシ樹脂を含浸させて形成された「ダンベル」形状のプリプレグ製品の拡大断面図である。
図4図4は、炭素繊維織物基材にエポキシ樹脂を含浸させて形成された別の成形プリプレグ製品の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「ブロードグッド」は、特にリボン、バンド、またはトリミングと区別して、標準またはより広い幅で織られた生地に対して繊維産業で使用される用語であり、これには通常、幅が18インチ(450ミリメートル)を超える織物が含まれる。
【0013】
「注入」、「含浸」および「プリプレグ化」は、本明細書では、繊維材料と接触する樹脂組成物に関して交換可能に使用され、本明細書では、樹脂組成物を繊維材料の本体に流して、繊維材料を樹脂組成物で充填、浸透、または飽和させることを意味する。
【0014】
広い範囲の実施形態では、本発明のプリプレグ製品を製造するためのプロセスは、様々な繊維面積重量の断面厚さを有する繊維織物基材に、速硬化性樹脂組成物を含浸させることと、樹脂含浸繊維織物基材の水平軸に沿って変化する圧力を加えることと、速硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維織物基材を部分的に硬化させて、プリプレグ製品を形成することと、を含む。
【0015】
本発明のプロセスにおいて有用な速硬化性樹脂組成物は、例えば、速硬化性エポキシ樹脂システム、配合物、または組成物を含み得る。1つの好ましい実施形態では、例えば、WO2017/066056に記載の速硬化性エポキシ樹脂組成物を、本発明のプロセスで使用することができる。本発明で有用な速硬化性エポキシ樹脂組成物は、プリプレグまたは複合物品を形成するための繊維材料への樹脂のより均一な注入を提供するエポキシ樹脂組成物を含む。
【0016】
WO2017/066056に記載されているように、本発明で有用な速硬化性エポキシ樹脂組成物は、第1のエポキシ成分としてオキサゾリドンを含有する固体エポキシ樹脂と、第2のエポキシ成分と、可溶性潜在触媒と、硬化剤の総重量に基づいて、粒子の少なくとも35重量パーセント(重量%)が、2ミクロン(μm)未満の平均粒子サイズを有する粒子分布を有する潜在性硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物を含む。所望の粒子分布を有する潜在性硬化剤を使用することにより(例えば、粒子の少なくとも35パーセント(%)が2μm未満の直径を有する)、繊維材料へのエポキシ樹脂組成物のより均一な注入を達成することができる。そして、これは、より速い硬化速度を有するエポキシ樹脂組成物を提供し、よって、成形サイクル時間を短縮し、それにより、プリプレグから成形された物品および部品が調製され得る速度を増加させる。
【0017】
1つの一般的な実施形態では、注入用に選択されたエポキシ樹脂組成物は、摂氏0度(℃)~15℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することが望ましい。これらのTgレベルでは、有利には、エポキシ樹脂組成物は、プリプレグ内の空隙(例えば、気泡のポケット)を最小化および低減しながら、繊維材料に迅速に注入することができる。
【0018】
上記のエポキシ配合物は、有利に、(1)比較的速い硬化速度でのプリプレグ(例えば、150℃で3分で硬化可能)を提供し、(2)低度~無視できる粘着性の炭素繊維プリプレグを提供し、(3)貯蔵寿命の長いプリプレグ(例えば、23℃で40日以上、および-20℃で少なくとも1年)を提供し、(4)例えば、100℃を超える高いTg(開始)と例えば、140℃を超えるTg(ピーク損失係数)と、を有する最終硬化繊維強化複合材料を提供する。上記のエポキシ樹脂システムを使用することの別の利点は、外部の離型剤を使用せずに樹脂が硬化可能であることである。
【0019】
上記のエポキシ樹脂組成物が調製されると、エポキシ樹脂組成物は、本発明のプロセスに従って、トウまたは織物(例えば、炭素繊維織物のロール)の形態で繊維材料に注入されて、プリプレグを形成し得る。本発明の実施形態による上記のエポキシ樹脂組成物は、多種多様な異なる強化繊維と組み合わせることができる。本発明で使用される織物の繊維は、例えば、炭素繊維、グラファイト繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、天然繊維(玄武岩、麻、海草、干し草、亜麻、わら、ジュートまたはココナッツなど)を含み得る。1つの好ましい実施形態では、使用される炭素繊維は、織物の形態であってもよく、不揃い、編み、不織、多軸(例えば、圧着されていない織物)、編組、または任意の他の適切なパターンの形態であってもよい。織物は、プリプレグ形成の条件下で熱的および化学的に安定である(例えば、エポキシ樹脂組成物の硬化)必要があり、織物は、織物の注入プロセスで使用するために選択された樹脂と相容性がある必要がある。
【0020】
1つの好ましい実施形態では、プリプレグ製品を製造するための本発明のプロセスは、(a)速硬化性樹脂組成物を提供するステップと、(b)剥離基材のシートの片側の表面上にステップ(a)からの樹脂のフィルムを形成するステップと、(c)様々な繊維面積重量の断面厚さを有する繊維織物基材のシートを提供するステップと、(d)ステップ(c)の繊維織物基材のシートの少なくとも片側の表面を、ステップ(b)の樹脂フィルムのシートの樹脂と接触させるステップと、(e)樹脂フィルムに対向する剥離基材のシートのもう片方の側の表面に圧力を加えて、繊維織物基材に速硬化性樹脂組成物を含浸させるステップと、(f)ステップ(e)の速硬化性樹脂組成物を含浸させた繊維織物基材を部分的に硬化させて、プリプレグ製品を形成するステップと、を含む。
【0021】
概して、本発明のプリプレグを調製するプロセスは、上記のステップ(a)からの上記の速硬化性樹脂組成物のフィルムまたはシートをシート材料の片側の表面上に形成することを含む。例えば、このステップ(b)は、エポキシ樹脂などの樹脂組成物をシート材料上に押し出して、シート材料上にフィルム樹脂コーティングを形成することによって達成することができる。結果として得られるフィルム樹脂の厚さは、製造される最終プリプレグ製品に応じて変化し得る。例えば、1つの一般的な実施形態では、それに限定されないが、厚さは、FAW材料の場合、0.0119インチ(0.03cm)~0.0125インチ(0.032cm)であり得る。一般に、フィルム樹脂の厚さは、樹脂が、一実施形態において、プリプレグ複合材料の少なくとも30重量%~50重量%、別の実施形態では、35重量%~45重量%であるような厚さであり得る。好ましい実施形態では、フィルム樹脂の厚さは、プリプレグ複合材料の少なくとも40重量%であり得、繊維基材は、プリプレグ複合材料の少なくとも60重量%であり得る。
【0022】
シート材料は、剥離フィルムまたは紙であり得、プロセスの接触ステップ(プリプレグ化)中に、エポキシ樹脂組成物のフィルムコーティングがそこから繊維材料に転写される。フィルムまたは紙を含むシート材料は、例えば、離型剤でコーティングされた紙のシートまたはTelfon材料のシートなどから作製することができる。1つの一般的な実施形態では、それに限定されないが、シート材料の厚さの厚さは、一実施形態では、0.007インチ(0.018cm)~0.009インチ(0.023cm)であり得る。
【0023】
エポキシ樹脂組成物のフィルムがシート材料上に堆積された後、フィルム樹脂コーティングを施したシート材料をチルロールに通してエポキシ樹脂組成物を冷却することができる。次いで、冷却されたエポキシ樹脂組成物を含むシート材料を、即時使用または将来の使用のためにロールに巻くことができる。1つの好ましい実施形態では、エポキシ樹脂組成物がフィルムとしてコーティングされている剥離紙またはフィルムは、エポキシ樹脂組成物を冷却するステップに続いて、後で使用するためにロールに巻き戻すことができる。
【0024】
プロセスの一実施形態では、エポキシ樹脂組成物フィルムコーティングを有するシート材料を、上記のステップ(c)から、上記の繊維織物基材または繊維材料(例えば、NCF、編組、または一方向織物)の表面と接触させることができる。次いで、繊維材料およびエポキシ樹脂組成物フィルムコーティングを有するシート材料に、接触ステップの後または接触ステップ中に圧力をかけて、エポキシ樹脂を繊維材料に注入することができる。
【0025】
当技術分野で知られている標準的な従来のプリプレグラインおよびプリプレグラインのための補助機器は、接触ステップおよびその後のまたは同時の含浸ステップに使用することができる。本発明のプロセスで使用されるプリプレグラインは、例えば、(1)巻き戻しステーションと、(2)加熱されたテーブル(絶縁体パッド付き)と、(3)Sラップ圧縮ローラと、(4)速度を制御するためのプルローラと、を含む任意の既知のプリプレグラインであり得る。
【0026】
1つの好ましい実施形態では、繊維材料のシートは、エポキシ樹脂組成物のフィルムコーティングが堆積されている2つのシート材料の間に挟むことができ、エポキシ樹脂組成物でコーティングされた繊維材料およびシート材料は、それぞれの供給ロールから連続テープとして提供することができる。本発明プロセスの接触ステップは、Sラップニップ圧縮ロールシステム装置を使用して、異なる基材のシートを形成し、かつシートをともに圧縮するために使用される上記のフィルム形成機器で実施することができる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、装置は、様々な繊維面積重量を有する所望の繊維織物基材を収容するように変更される。加えて、装置は、様々な繊維面積重量を有する繊維織物基材の厚さに沿って均一な圧力を提供するように変更される。
【0027】
図1および図2を参照すると、本発明で使用される、Sラップ圧縮ローラの好ましい変更された実施形態が示されており、概して参照番号10で示され、上部ニップローラ11、中間ニップローラ12、および下部ニップローラ13などの一連のニップローラを含む。一実施形態では、挟まれた材料は、方向矢印Aで示されるようにローラシステム10に給送される。挟まれた材料は、方向回転矢印BおよびC(図2に図示)によって示されるような方向にローラシステム10を通過/回転する。そして、注入された繊維材料は、方向矢印Dで示されるように、ローラシステム10を出る。
【0028】
Sラップ圧縮ローラの好ましい変更された実施形態では、中央ニップローラ12は、中間部12cと一体である縁部12aおよび12bによって示されるように寸法が変化する。概して、ニップローラ部材12の形状は、中間バー部によってともに接合され、かつそれと一体にされた2つの円筒形部材として説明することができ、または、簡単に言えば、ニップローラ部材12は、図1に示されるように、部材12を正面斜視図で見たとき、「ダンベルウェイト」または「ダンベル型」部材12の形状であり得る。中間ローラ12は、一定の直径および長さの通常のニップローラの縁部に所定の厚さの1つ以上の剥離紙を使用し、ニップローラ12の縁部12aおよび12bの直径を所望の直径に「増やす」して、樹脂含浸繊維織物を収容するためのニップローラ12の好ましい形状を提供することで、作成可能である。
【0029】
ダンベル型ローラ、すなわち、ニップローラ11と13との間に配設された中間ニップローラ12は、第1のギャップ14および第2のギャップ15を提供し、これにより、供給フィルム21に所望の圧力をかけることができる(図2に図示)。
【0030】
挟まれた材料(すなわち、樹脂と繊維材料の組み合わせシート)を一緒にするための接触ステップの後、挟まれた材料は、エポキシ樹脂組成物を繊維材料の両方の表面に押し込む一対のニップロールに通過させることができる。本発明のプリプレグは、挟まれた材料に圧力を加えることにより、繊維材料(または炭素繊維織物基材)にエポキシ樹脂組成物を注入(または含浸)させることによって製造することができる。1つの好ましい実施形態では、圧力を加えるこのステップ(e)は、炭素繊維織物基材に速硬化性エポキシ樹脂組成物を含浸(または注入)させるために実行されるステップである。別の実施形態では、可変繊維面積重量領域を有する繊維織物基材に、速硬化性樹脂組成物を含浸させて、可変繊維面積重量複合材料の幅全体で均一な含浸を得る。繊維材料への樹脂の含浸に関する「均一な含浸」は、本明細書において、所定のレベルの含浸が、低繊維面積重量領域および高繊維面積重量領域において含む可変繊維面積重量複合材料の全幅にわたって同じであることを意味する。
【0031】
様々な繊維面積重量を有する上記の炭素繊維織物基材に上記のエポキシ樹脂組成物を含浸させるプロセスにおいて、上記のニップローラシステムを使用して、所望の含浸させた繊維織物を提供してプリプレグを形成することができる。本発明のプロセスの含浸ステップは、例えば、速硬化性エポキシ樹脂組成物の2枚のフィルムの中間に配設された炭素繊維織物基材をニップローラシステムに(図1の矢印Aによって示されるように)給送することを含み、樹脂の上部シートの樹脂は、繊維織物基材の上面に接触し、樹脂の下部シートの樹脂は、繊維織物基材の下側面に接触する。次いで、速硬化性エポキシ樹脂組成物を含浸させた炭素繊維織物基材は、ローラシステムを出る(図1の矢印Dによって示されるように)。
【0032】
図3を参照すると、繊維の織物32に注入された樹脂マトリックス31を含む、概して参照番号30で示される成形プリプレグが示されている。図3に示されるプリプレグは、図1に示されるSラップローラシステム10を通して処理された結果のプリプレグである。上部剥離紙シート33および下部剥離紙シート34は、それぞれ、上層33と下層34との間にプリプレグ30を挟んで配設されている。プリプレグ30は、概して参照番号40Aによって示される縁部と、概して参照番号40Bによって示される縁部とを含み、両方とも、概して参照番号50によって示される中間部と一体である。図3に示されるように、縁部40Aおよび40Bは、中間部50よりも圧縮されている。
【0033】
図4を参照すると、繊維の織物62に注入された樹脂マトリックス61を含む、概して参照番号60によって示される成形プリプレグの別の実施形態が示されている。上部剥離紙シート63および下部剥離紙シート64は、それぞれ、上層63と下層64との間にプリプレグ60を挟んで配設されている。プリプレグ60は、概して参照番号70Aによって示される縁部と、概して参照番号70Bによって示される縁部とを含み、両方とも、概して参照番号80によって示される中間部と一体である。図4に示すように、中間部80は、縁部70Aおよび70Bよりも圧縮されている。図4に示されるプリプレグはまた、プリプレグ60の中間部80の形状を提供するために、ローラシステムに修正された中間ニップローラ(図示せず)を提供する、上部ニップローラ、中間ニップローラ、および下部ニップローラなどの一連のニップローラ(図示せず)を有する別の代替Sラップローラシステム(図示せず)を通して処理された結果のプリプレグであり得る。
【0034】
一実施形態では、注入プロセスは、エポキシ樹脂組成物の粘度をさらに低下させることができるように、高温で実施することができ、したがって、加熱ステップは、エポキシ樹脂組成物の繊維材料への迅速な注入を容易にすることができる。例えば、挟まれた材料は、加熱に供され、繊維材料とエポキシ樹脂組成物との組み合わせを加熱されたプレート上に通してエポキシ樹脂組成物を加熱することにより、エポキシ樹脂組成物の温度を上昇させることができる。しかしながら、温度は、エポキシ樹脂組成物の望ましくないレベルの硬化が起こるほど、長時間にわたってあまり高温であってはならない。例えば、含浸ステップ(e)の間に、繊維材料へのエポキシ樹脂組成物の注入は、一実施形態では100℃~130℃、別の実施形態では100℃~125℃、さらに別の実施形態では110℃~120℃の範囲の温度で実施することができる。エポキシ樹脂組成物を繊維材料に注入するための上記の加熱は、加熱されたテーブルおよび加熱されたニップロールを使用して実施することができる。
【0035】
上記の範囲外の温度範囲も使用できることを認識されたい。ただし、より高いまたはより低い注入温度を使用するには、通常、注入プロセスが実施される機械速度を調整する必要がある。例えば、約120℃を超える温度では、エポキシ樹脂組成物の望ましくない架橋を回避するためにエポキシ樹脂組成物が高温にさらされる時間を短縮するために、より高い機械速度で注入プロセスを実施する必要があり得る。同様に、所望のレベルの注入を得て、それによってプリプレグ内の空隙を減少させるために、より低い注入温度の使用は、通常、エポキシ樹脂組成物を繊維材料に注入するためのより低い機械速度を必要とする。1つの好ましい実施形態では、エポキシ樹脂組成物は、上記の範囲の温度で繊維材料に塗布することができ、そして、エポキシ樹脂組成物は、圧力によって繊維材料内に凝固させることができる。例えば、繊維材料と樹脂の組み合わせに及ぼす圧力は、組み合わせを1つ以上の対のニップローラに通すことによって加えることができる。
【0036】
好ましい実施形態では、繊維材料とエポキシ樹脂組成物との組み合わせは、組み合わせを加熱されたプレートに通し、続いて組み合わせを第2のニップに通してエポキシ樹脂組成物を繊維材料にさらに注入して、樹脂注入プリプレグを形成するというさらなるステップに供することができる。次いで、プリプレグは、例えば、材料をチルロールまたはチルプレートに通すことによって冷却することができる。冷却後、プリプレグは将来の使用のために供給ロールに巻くことができる。
【0037】
上記のように、注入ステップは、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させるために高温で実施することができる。さらに、注入されたエポキシ樹脂組成物は、プリプレグ中のエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度を上昇させるために、部分硬化ステップ(前進)に供することができる。その後、プリプレグは、必要に応じてパッケージ化、保管、または出荷され得る。前述のように、いくつかの実施形態では、プリプレグを前進ステップに供してエポキシ樹脂のTgを上昇させ、それによってプリプレグの粘着性を低下させることが望ましい場合もある。
【0038】
別の好ましい実施形態では、含浸ステップ(e)の間、圧縮ローラの「ニップロール」動作を使用することができる。標準的なプリプレグラインの圧縮ローラの「ニップロール」動作中に、プリプレグのより薄い部分に追加の圧力を加える必要がある。ニップギャップは、この領域で見られる歪みを低減するために、最も厚い部分を収容するように設定されている。所定の厚さ(例えば、0.008インチ(0.02cm)の厚さ)を伴う剥離紙の一部分を、ブロードグッドのより薄い領域において、中間ローラ(3つのローラで2つのニップギャップを可能にするSラップ動作)に加えることができる。剥離紙の使用は、厚さの変化にもかかわらず均一な圧力を可能にし、エポキシ樹脂を炭素繊維織物基材に最適に注入して、歪みを最小限に抑えたプリプレグを形成する。
【0039】
本発明の含浸プロセスの条件は変わる場合があり、例えば、使用される織物のタイプ、使用される織物のサイズ、使用される織物のFAW、ならびに製造されるプリプレグ製品の設計および寸法を含む様々な要因に依存し得る。本発明のプロセスの実例として、それによって限定されないが、1つの特定の実施形態では、ブロードグッド炭素繊維織物シートが、2枚の剥離紙の各々の片側に堆積されたエポキシ樹脂フィルムの2枚のシートの間に給送されて、樹脂が織物に接触する。組み合わされたシートは、Sラップニップロールアセンブリ装置に給送され、注入またはプリプレグ化ステップは、例えば、以下のように実施される。
【0040】
(1)ニップ温度範囲は、例えば、一実施形態では100℃~130℃、別の実施形態では100℃~125℃、およびさらに別の実施形態では110℃~120℃であり得る。
【0041】
(2)テーブル温度範囲は、一実施形態では100℃~130℃、別の実施形態では100℃~125℃、およびさらに別の実施形態では110℃~120℃であり得る。
【0042】
(3)上部ロールと中間ロールとの間、および下部ロールと中間ロールとの間の第1のニップギャップは、概して、図1の参照番号14で示され、一実施形態では、0.022インチ~0.026インチ(0.056cm~0.066cm)であり得る。
【0043】
(4)上部ロールと中間ロールとの間、および下部ロールと中間ロールとの間の第2のニップギャップは、概して、図1の参照番号15で示され、一実施形態では、0.022インチ~0.025インチ(0.056cm~0.064cm)であり得る。
【0044】
(5)ニップロールシステムへの供給材料の速度は、一実施形態では、1.0ft/分~2.4ft/分(0.305m/分~0.732m/分)、別の実施形態では、1.0ft/分~2.0ft/分(0.305m/分~0.610m/分)、さらに別の実施形態では、1.5ft/分~2.0フft/分(0.457m/分~0.610m/分)であり得る。
【0045】
プロセスで使用される剥離紙は、一実施形態では、例えば、0.007インチ(0.018cm)~0.009インチ(0.023cm)の厚さを有し得る。当技術分野で知られている任意の標準的な剥離紙を本発明で使用することができる。剥離紙を使用することで、処理中の材料が金属ローラに付着しないようにすることができる。あるいは、厚さの変化を考慮するように圧縮ローラを変更することもできる。例えば、金属ローラに剥離紙を追加する代わりに、金属ローラは、厚さの変化を補償するように機械加工することができる。
【0046】
本発明において有用なパラメータは、「固定」パラメータ、すなわち、織物および樹脂シートの一連の処理工程を通して変化しないパラメータであり得る。例えば、上記のニップ温度およびテーブル温度は固定パラメータにすることができる。本発明を例示するために、これに限定されないが、一実施形態では、0.023インチ~0.026インチ(0.058cm~0.066cm)のニップギャップ範囲、剥離紙の追加、および1.8ft/分(0.549m/分)のより遅い速度を使用して、本発明の実用性を実証することができる。ニップ温度およびテーブル温度は、本発明のプロセス全体を通して固定されたままであり得る。
【0047】
ステップ(e)の速硬化性エポキシ樹脂組成物を含浸させた繊維織物基材がニップローラシステムを出ると、含浸された織物は部分的に硬化して、プリプレグ製品を形成することができる。その後、製造されたプリプレグをコアに巻き上げることができ、次いで、プリプレグのロールを保管場所に転送するか(上記のように、プリプレグは保管中安定している)、またはプリプレグを成形プロセスで使用することができる。
【0048】
本発明のプロセスによって製造されたプリプレグは、有益なことに、低い粘着性を示し、すなわち、プリプレグは容易に取り扱い可能であり、また、プリプレグは、ロールで使用または保管した場合、室温で互いに密着しない。
【0049】
本発明のプロセスを使用すると、プリプレグは、有利なことに、過剰架橋されず、すなわち、プリプレグは20℃未満のTgを有するので、プリプレグは、プリプレグにおける空隙の生成などの問題を呈しない。高いプリプレグ化温度で注入を使用して処理されるプリプレグは、20℃を超えるTgを有する望ましくない「過度に加熱された」プリプレグをもたらす可能性があり、それは、望ましくない表面品質を呈し得、硬直して、作業が困難になる可能性がある。
【0050】
1つの広範な実施形態では、本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記のように製造されたプリプレグを完全に硬化させることによって形成された完全に硬化した複合材料である。例えば、広範な実施形態では、炭素繊維強化複合材料を製造するためのプロセスは、(A)上記のプロセスによって作られた樹脂含浸繊維プリプレグを提供するステップと、(B)ステップ(A)の含浸された織物プリプレグを硬化させて、繊維強化複合物品を形成するステップと、を含む。
【0051】
一実施形態では、プリプレグを完全に硬化させるための硬化ステップ(または前進ステップ)は、プリプレグを140℃~155℃の温度で3分~5分の硬化時間で加熱することによって実施することができる。
【0052】
本発明の目的の1つは、複合材料の幅に沿って可変断面を有する繊維強化複合材料(例えば、炭素繊維強化複合材料)を製造することである。例えば、1つの好ましい実施形態では、繊維強化複合材料は、直径に沿って可変断面を有する管状部材であり得る。本発明のFAWを有する炭素繊維強化複合材料の製造は、これまで、従来技術の方法を使用して可能ではなかった。有利なことに、本発明の炭素繊維複合材料は、現在、自動車用複合材料、例えば、内装および外装部品を製造するために使用することができ、そのような部品は、異なる形状、サイズ、および寸法である。例えば、1つの好ましい実施形態では、本発明の炭素繊維複合材料を使用して、自動車のステアリングコラムで使用可能な複合部品を製造することができる。
【実施例
【0053】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての部および割合は、特に指示がない限り重量である。
【0054】
以下の発明例(Inv.Ex.)および比較例(Comp.Ex.)で使用される様々な原料を、以下の表Iで説明する。
【表1】
【0055】
実施例1および2ならびに比較例A~C
VORAFUSE(商標)P6300樹脂システムおよびA&Pが提供する炭素繊維ハイブリッドブロードグッドを使用してプリプレグを製造するために、従来のプリプレグの製造に使用される標準的なプリプレグ化条件で、実験的なプリプレグラインを使用した。これにより、外側(薄い領域)での注入が不十分になり、かつ外観/歪みレベルに関連する中央(厚い領域)で歪みが発生した。材料は、評価尺度(以下に説明)に従って判定したとき、材料が許容可能な主観的な目に見える外観に達したときにのみテストした。次いで、ニップギャップをプリプレグの平均厚さに設定した(Comp.Ex.B)。最初の試行でも同様の結果が見られた(Comp.Ex.A)。次ぐいで、剥離紙を中間ローラに追加して、材料の幅全体で可変繊維面積重量を補正し、ニップギャップを開いて材料の最も厚い部分に設定した(Comp.Ex.C)。これによって、(Comp.Ex.A)および(Comp.Ex.B)と比較して、わずかな改善が示された。追加の圧力および時間のために、注入および歪みを改善する温度で、ニップギャップを減少させ、速度を低下させた(Inv.Ex.1)。このレベルの許容性および歪みは許容可能であり、材料を、より低いFAW領域およびより高いFAW領域の両方でテストした。最後の工程では、歪みをさらに減少させるために、ニップギャップをわずかに開いた(Inv.Ex.2)。これにより、外観レベルがさらに向上し、材料を再度テストした。ただし、材料の独自性により、材料は目的の部品の方向でテストし(水平対垂直の事前テスト)、したがって貯蔵弾性率の差異が予想された(テストの方向により多くの繊維が走っている)。
【表2】
【0056】
サンプルの「外観/歪みレベル」を示す評価尺度を策定し、サンプルがさらにテストを受けるために必要な基準に、サンプルが合格するかどうかを判定した。評価尺度には、「1」~「4」の数値評価レベルが含まれ、「1」は許容可能性が最も低くであり、「4」は許容可能性が最も高い。評価レベル1~4の詳細な説明については、表IVに説明されている。サンプルをさらにテストするには、外観/歪みの評価レベルが3のサンプルが必要である。
【表3】

図1
図2
図3
図4