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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20250502BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20250502BHJP
【FI】
F24F7/08 101J
F24F7/007 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023576286
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2022002670
(87)【国際公開番号】W WO2023144886
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】桑名 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】安田 真海
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-323582(JP,A)
【文献】特開2020-134094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/08
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項10】
前記給気風路に前記給気用送風機を備える給気部と、前記排気風路に前記排気用送風機を備える排気部と、がそれぞれ別体として構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室内空気の条件に基づいて換気を行う換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第一種換気は、給気用送風機および排気用送風機を有する換気装置において、給気用送風機によって室外から室内へ導入される給気と、排気用送風機によって室内から室外へ排出される排気と、が行われる換気である。第一種換気において、給気と排気との間で熱交換を行う熱交換型換気装置を用いることで、換気を行いながら空気調和機で使用されるエネルギを低減することができる。
【0003】
事務所ビルなどでは、室内に存在する人数の増減に対応して、室内の空気の汚れの度合いは大きく異なる。一般に、室内の空気の汚れは、空気質によって表される。空気質の一例は、室内での最大濃度が規定される炭酸ガス(CO2)等のガスの濃度、微小粒子状物
質等の粉塵の濃度等である。通常、事務所ビルなどの換気設計は、室内の在室率が100%である状態で室内の炭酸ガス濃度が一定値以下となるように設計されている。しかしながら、実際の室内の在室率は、文献などの調査によると60%から70%であることがほとんどである。
【0004】
また、熱交換型換気装置は、例えば壁面に設置されたリモートコントローラによって換気風量が一定の風量に固定された状態で使用されていることが多い。このため、多人数が室内に存在する場合には、室内の空気が汚れるという問題がある。また、早朝および夜間の時間帯に少人数しか室内に存在しない場合または人が存在しない場合において過剰換気を行うことは、空気調和負荷の増大となり、省エネルギの観点において好ましくない。
【0005】
そこで、特許文献1には、室内の炭酸ガスを検知する炭酸ガスセンサを備え、室内の炭酸ガスの濃度に基づいて給気風量および排気風量のうち少なくとも排気風量を多流量の第1ノッチおよび少流量の第2ノッチのうちのいずれかに制御する熱交換型換気装置が開示されている。
【0006】
熱交換型換気装置は、ダクトを通じて室内と熱交換型換気装置との間、および熱交換型換気装置と室外との間を繋ぐことで換気をするための風路を構成することが一般的である。また、これらのダクトは、途中で複数の室内につなぐために分岐させたり、複数のダクトを集合させて大きな1つのダクトにしたりする場合がある。
【0007】
これらのダクトによる風路は、熱交換型換気装置から室内までの距離および熱交換型換気装置から室外までの距離、ダクトの管径、曲がりの回数、接続するグリルまたはフードなどの部材によって様々な圧力損失になり得る。このため、室外から室内へ給気するための給気風路と室内から室外へ排気するための排気風路とで圧力損失の大きさが異なる場合は大いに存在する。
【0008】
そこで、熱交換型換気装置は、設置者またはユーザによる指示に従って任意に給気用送風機と排気用送風機とを独立して出力変更し、給気風量と排気風量とを独立して任意に調整できることが望ましい。以下では、設置者またはユーザは、ユーザ等と称される。このような熱交換型換気装置によれば、ユーザ等は、上述の給気風路と排気風路とで圧力損失の大きさが異なる場合であっても給気風量と排気風量とを同じ風量にすることができる。また、給気風量と排気風量とをあえてアンバランスにすることで、室内を意図的にプラス圧またはマイナス圧にすることもでき、部屋の用途にあわせて換気することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-159208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、炭酸ガス濃度に基づいて、給気風量を一定とした状態のまま、排気風量のノッチを変更するように制御することが可能であるが、この場合には、給気風量は変更することができない。つまり、特許文献1に記載の技術では、給気風量および排気風量を独立して任意に設定することができないという問題があった。また、特許文献1に記載の技術で給気風量および排気風量を独立して任意に設定することができたとしても、炭酸ガス濃度に基づいて予め定められた排気風量に変更されてしまい、任意に設定した給気風量および排気風量の関係を維持することができないという問題があった。この問題は、炭酸ガス濃度だけではなく、空気質の値に基づいて給気風量および排気風量を任意に設定する場合も同様である。
【0011】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザ等が給気風量および排気風量を独立して任意に設定することができ、任意に設定した給気風量および排気風量の関係を維持したまま空気質の値に応じて給気風量および排気風量を制御することができる換気装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の換気装置は、屋外から室内に向かう空気の流れである給気流が通る給気風路と、室内から屋外に向かう空気の流れである排気流が通る排気風路と、給気風路に設けられる給気用送風機と、排気風路に設けられる排気用送風機と、室内の空気の汚れの程度を示す空気質を検知する空気質センサと、給気用送風機および排気用送風機の風量を制御する制御部と、を備える。制御部は、外部から設定された、給気用送風機の風量を指定する給気風量指定値と、排気用送風機の風量を指定する排気風量指定値と、の差異を示す情報である風量差異値に従った運転が指示された場合に、給気用送風機および排気用送風機のうち一方の第1送風機については、空気質センサで検知された空気質の値に応じた第1風量を空気質の値と風量との関係を定めた風量設定情報から取得し、第1風量で第1送風機を制御し、第1送風機ではない第2送風機については、第1送風機の第1風量と風量差異値とを用いて第2風量を算出し、第2風量で第2送風機を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る換気装置は、ユーザ等が給気風量および排気風量を独立して任意に設定することができ、任意に設定した給気風量および排気風量の関係を維持したまま空気質の値に応じて給気風量および排気風量を制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1にかかる換気装置の構成の一例を模式的に示す断面図
図2】熱交換素子の構成の一例を示す斜視図
図3】実施の形態1に係る換気装置に設けられるリモコンのハードウェア構成の一例を示すブロック図
図4】実施の形態1に係る換気装置に設けられる制御部の機能構成の一例を示すブロック図
図5】風量設定情報の一例を示す図
図6】上限切換閾値および下限切換閾値の一例を示す図
図7】給気風量、排気風量および風量差分と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図
図8】風量差異値を設けた場合の給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図
図9】給気風量、排気風量および風量差分と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図
図10】風量差異値を設けた場合の給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図
図11】風量設定情報の一例を示す図
図12】風量設定情報の一例を示す図
図13】風量設定情報の一例を示す図
図14】風量低下優先モードにおける給気風量および排気風量の設定と、風量差分と、の一例を示す図
図15】風量低下優先モードにおける給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図
図16】実施の形態1に係る換気装置に設けられる制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図
図17】風量低下優先モードが選択された場合の換気装置の風量制御方法の手順の一例を示すフローチャート
図18】風量差異優先モードが選択された場合の換気装置の風量制御方法の手順の一例を示すフローチャート
図19】風量自動制御モードでの制御処理の手順の一例を示すフローチャート
図20】風量自動制御モードを実施する前の風量設定情報の一例を示す図
図21】風量自動制御モードを実施する際の風量設定情報の一例を示す図
図22】風量差異値が排気風量に対する給気風量の比で表される場合の炭酸ガス濃度と給気風量および排気風量との関係の一例を示す図
図23】風量差異値を設けた場合の給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図
図24】実施の形態3にかかる換気装置の構成の一例を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の実施の形態に係る換気装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる換気装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。換気装置1は、筐体11と、給気用送風機12と、排気用送風機13と、熱交換素子14と、給気エアフィルタ15と、排気エアフィルタ16と、炭酸ガスセンサ17と、リモートコントローラ18と、制御部19と、を備える。
【0017】
筐体11は、換気装置1の外郭をなす箱状の構造を有する。筐体11は、一例では直方体状である。筐体11は、一例では板金によって構成される。筐体11は、天井裏52に隠蔽された状態で設置されている。図1においては、室内51が換気対象であり、室内51の天井53の上の領域が、筐体11が配置される天井裏52である。以下では、室内51の空気は、室内空気と称される。
【0018】
筐体11は、筐体11の長手方向の一端面10aにおいて設けられる外気吸込口111および排気吐出口112を有する。筐体11は、筐体11の長手方向において一端面10aと対向する他端面10bにおいて設けられる給気吐出口113および室内空気吸込口114を有する。外気吸込口111は、屋外の空気である外気(Outdoor Air:OA)を筐体11の内部に取り込む開口である。給気吐出口113は、外気を筐体11の内部から外部に吐出する開口である。給気吐出口113から吐出され、室内51へと導かれる空気は、給気(Supply Air:SA)とも称される。室内空気吸込口114は、室内51から導
かれる空気を筐体11の内部に取り込む開口である。室内空気吸込口114から取り込まれる空気は、還気(Return Air:RA)とも称される。排気吐出口112は、還気を筐
体11の内部から外部に吐出する開口である。排気吐出口112から吐出される空気は、排気(Exhaust Air:EA)とも称される。
【0019】
筐体11は、内部に、給気風路115と排気風路116とを有する。給気風路115は、外気吸込口111と給気吐出口113とを結び、給気用送風機12によって形成される屋外から室内51に向かう空気の流れである給気流が通る風路である。つまり、給気風路115は、外気OAを室内51へ給気するための風路である。給気風路115は、外気吸込口111と熱交換素子14との間に形成される外気熱交換前風路115aと、熱交換素子14と給気吐出口113との間に形成される外気熱交換後風路115bと、熱交換素子14内の給気風路である素子内給気風路115cと、を有する。
【0020】
排気風路116は、室内空気吸込口114と排気吐出口112とを結び、排気用送風機13によって形成される室内51から屋外へ向かう空気の流れである排気流が通る風路である。つまり、排気風路116は、室内空気である還気RAを屋外へ排気するための風路である。排気風路116は、室内空気吸込口114と熱交換素子14との間に形成される室内空気熱交換前風路116aと、熱交換素子14と排気吐出口112との間に形成される室内空気熱交換後風路116bと、熱交換素子14内の排気風路である素子内排気風路116cと、を有する。給気風路115と排気風路116とは、熱交換素子14において交差している。
【0021】
筐体11は、給気風路115と排気風路116とを仕切る仕切壁117a,117b,117c,117dを内部に有する。そして、給気風路115と排気風路116とは、筐体11の内部で、熱交換素子14および仕切壁117a,117b,117c,117dによって仕切られている。具体的には、外気熱交換後風路115bと室内空気熱交換後風路116bとは、熱交換素子14および仕切壁117aにより仕切られている。外気熱交換前風路115aと室内空気熱交換前風路116aとは、熱交換素子14および仕切壁117bにより仕切られている。外気熱交換前風路115aと室内空気熱交換後風路116bとは、熱交換素子14および仕切壁117cにより仕切られている。そして、外気熱交換後風路115bと室内空気熱交換前風路116aとは、熱交換素子14および仕切壁117dにより仕切られている。
【0022】
筐体11は、仕切壁117dに設けられる開口を開閉する開閉部である風路切換ダンパ118を備える。開口は、外気熱交換後風路115b内の給気用送風機12よりも上流側の領域、すなわち外気熱交換後風路115bにおける熱交換素子14と給気用送風機12との間の領域と、室内空気熱交換前風路116aと、を連通する。
【0023】
給気用送風機12は、給気風路115に設けられ、給気流を形成する。図1の例では、給気用送風機12は、外気熱交換後風路115b内で給気吐出口113と連結される。給気用送風機12は、給気用送風機12を駆動する給気用モータ12aを内部に有する。
【0024】
排気用送風機13は、排気風路116に設けられ、排気流を形成する。図1の例では、排気用送風機13は、室内空気熱交換後風路116b内で排気吐出口112と連結される。排気用送風機13は、排気用送風機13を駆動する排気用モータ13aを内部に有する。
【0025】
給気用モータ12aおよび排気用モータ13aは、後述する制御部19による制御に対応して回転速度が変化する。
【0026】
熱交換素子14は、給気風路115と排気風路116との間に設置され、給気流と排気流との間で連続的に熱交換を行う。熱交換素子14は、給気流と排気流との間で顕熱、すなわち温度を交換する顕熱交換器であってもよいし、給気流と排気流との間で顕熱および潜熱、すなわち温度と湿度とを交換する全熱交換器であってもよい。ここでは、熱交換素子14が全熱交換器である場合を例に挙げる。
【0027】
図2は、熱交換素子の構成の一例を示す斜視図である。熱交換素子14は、互いに間隔が設けられて積層された複数のシート材141と、複数のシート材141の間隔を保持する間隔保持部材142と、を備える。熱交換素子14は、シート材141と間隔保持部材142とを積層させた積層体である。シート材141は、平坦に加工された板状部材である。間隔保持部材142は、波形の凹凸が施されたシート状部材である。シート材141と間隔保持部材142とは、互いに接合されている。つまり、熱交換素子14は、シート材141上に間隔保持部材142を接着したコルゲートシートを積層させた積層体である。
【0028】
間隔保持部材142は、波形の折り目の方向が互いに交差するように向きを異ならせた間隔保持部材142aと間隔保持部材142bとを含む。なお、ここでは、間隔保持部材142aおよび間隔保持部材142bの波形の折り目の方向は互いに直交する場合が示されている。間隔保持部材142aと間隔保持部材142bとは、積層方向に交互に配置される。間隔保持部材142bとシート材141との間に形成される空間は、給気流SFが通過する素子内給気風路115cである。間隔保持部材142aとシート材141との間に形成される空間は、排気流EFが通過する素子内排気風路116cである。熱交換素子14には、複数の素子内給気風路115cと複数の素子内排気風路116cとが形成されている。
【0029】
素子内給気風路115cの構成部材である間隔保持部材142bと、素子内排気風路116cの構成部材である間隔保持部材142aと、は、シート材141の厚さ方向にシート材141を介して交互に積層され、素子内給気風路115cと素子内排気風路116cとは互いに独立している。これによって、熱交換素子14は、給気風路115の素子内給気風路115cを流れる空気と、排気風路116の素子内排気風路116cを流れる空気との間で熱および湿度を交換する全熱交換が可能となる。
【0030】
図1に戻り、給気エアフィルタ15は、熱交換素子14よりも上流側の給気風路115、すなわち外気熱交換前風路115aに設けられる。給気エアフィルタ15は、外気OAに含まれる塵埃の目詰まりによる熱交換素子14の性能低下を防止するために、熱交換素子14に吸い込まれる外気OAの塵埃を取り除くエアフィルタである。給気エアフィルタ15は、外気熱交換前風路115aに着脱自在に設置される。
【0031】
排気エアフィルタ16は、熱交換素子14よりも上流側の排気風路116、すなわち室内空気熱交換前風路116aに設けられる。排気エアフィルタ16は、還気RAに含まれる塵埃の目詰まりによる熱交換素子14の性能低下を防止するために、熱交換素子14に吸い込まれる還気RAの塵埃を取り除くエアフィルタである。排気エアフィルタ16は、室内空気熱交換前風路116aに着脱自在に設置される。
【0032】
炭酸ガスセンサ17は、室内51の炭酸ガス(CO2)濃度を検知するセンサであり、
排気風路116に設けられる。炭酸ガスセンサ17は、室内空気の汚れの程度を示す空気質を検知する空気質センサの一例である。一例では、炭酸ガスセンサ17は、熱交換素子14よりも上流の排気風路116、すなわち室内空気熱交換前風路116aに設置される。このように、実施の形態1では、室内空気熱交換前風路116aを流れる室内空気である還気RAの炭酸ガス濃度を検知することで、室内51の炭酸ガス濃度を検知している。炭酸ガスセンサ17で検知された炭酸ガス濃度は、通信線31を介して制御部19に入力される。
【0033】
リモートコントローラ18は、換気装置1が設けられる室内51の換気に関する、ユーザ等によって行われる設定を制御部19に指示する外部機器の一例である。以下では、リモートコントローラ18は、リモコンと称される。リモコン18は、有線または無線の通信線31によって制御部19と接続される。
【0034】
リモコン18は、換気装置1の換気動作等の各種制御についての指令を受け付ける。リモコン18は、ユーザ等から受け付けた各種指令を、制御部19に送信する。一例では、リモコン18では、換気装置1における、運転のオンと運転のオフとの切り換え、換気風量の切り換え、換気モードの切り換え、運転タイマの設定等を含む運転設定が可能になっている。また、実施の形態1では、リモコン18では、換気装置1の給気用送風機12と排気用送風機13との間に風量差異を付けるための設定である風量差異設定も可能である。風量差異設定は、任意の風量ポイントにおける給気風量および排気風量の指定値の組み合わせである一対の風量指定値と、風量差異を付ける送風機の選択と、を含む。一対の風量指定値に代えて、任意の風量ポイントにおける給気用送風機12と排気用送風機13との間の風量指定値の差分である風量差異値としてもよい。また、風量差異を付ける送風機の選択に代えて、基準となる送風機の選択としてもよい。基準となる送風機は、給気用送風機12および排気用送風機13のうち、風量差異を付ける送風機ではない送風機である。風量差異設定の指示については、後述する。実施の形態1では、換気モードは、任意の風量で換気する風量固定モードと、室内空気の炭酸ガス濃度に基づいて換気風量を自動で切り換える風量自動制御モードと、を含む。
【0035】
図3は、実施の形態1に係る換気装置に設けられるリモコンのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。リモコン18は、プロセッサ181と、メモリ182と、通信インタフェース183と、入力部184と、表示部185と、を備える。プロセッサ181と、メモリ182と、通信インタフェース183と、入力部184と、表示部185と、は、バス186を介して接続される。
【0036】
プロセッサ181は、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ18
1は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)であってもよい。リモコン18の各機能は、プロセッサ181と、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、内蔵メモリであるメモリ182に格納される。
【0037】
メモリ182は、不揮発性または揮発性の半導体メモリであって、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)またはEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。なお、メモリ182には、換気装置1への通電が断電された場合でも、記憶された情報が消去されないように、不揮発性の記憶装置が使用されることが望ましい。
【0038】
通信インタフェース183は、リモコン18の外部の機器、ここでは制御部19との接続インタフェースである。通信インタフェース183は、リモコン18との間で情報の送受信を行う。
【0039】
入力部184は、ユーザ等との間の入力インタフェースである。表示部185は、ユーザ等に情報を表示する表示装置である。ユーザが入力部184を介して操作を行うことによって、運転設定および風量差異設定が行われる。風量差異設定では、風量差異を付ける送風機の選択と、一対の風量指定値と、が設定される。表示部185は、一例では、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)である。
【0040】
図1に戻り、制御部19は、リモコン18からの指示に従って、通信線31を介して接続される給気用送風機12および排気用送風機13の運転を制御して換気運転を制御する。一例では、制御部19は、リモコン18から換気モードとして定められた風量で換気する風量固定モードでの運転が指示された場合には、指示された風量となるように給気用送風機12および排気用送風機13を動作させる。他の例では、制御部19は、リモコン18から室内51の炭酸ガス濃度に基づいて換気風量を切り換える風量自動制御モードでの運転が指示された場合には、炭酸ガスセンサ17で検知された炭酸ガス濃度の値に対応する給気風量および排気風量となるように給気用送風機12および排気用送風機13を動作させる。これらの場合において、風量差異設定の指示をリモコン18から受けた場合には、指示に従って、風量差異を付ける送風機に対して、基準となる送風機の風量に風量差異値を加味した風量を設定する。
【0041】
具体的には、制御部19は、給気用送風機12の風量を指定した給気風量指定値と、排気用送風機13の風量を指定した排気風量指定値と、の差異を示す情報である風量差異値に従った運転が指示された場合に、風量差異を付ける送風機に対して、基準となる送風機の風量に風量差異値を加味した風量を設定する。制御部19は、給気用送風機12および排気用送風機13のうち一方の基準となる送風機については、炭酸ガスセンサ17で検知された炭酸ガス濃度の値に応じた第1風量を、予め定められた空気質の値である炭酸ガス濃度の値と風量との関係を定めた風量設定情報から取得し、第1風量で基準となる送風機を制御する。制御部19は、基準となる送風機ではない風量差異を付ける送風機については、基準となる送風機の第1風量と風量差異値とを用いて第2風量を算出し、第2風量で風量差異を付ける送風機を制御する。基準となる送風機は、第1送風機に対応し、風量差異を付ける送風機は、第2送風機に対応する。
【0042】
図1に示されるように、炭酸ガスセンサ17を筐体11の内部に設置し、制御部19を筐体11の近くに配置することで、炭酸ガスセンサ17と制御部19とを接続する通信線31の長さを短くすることができ、施工コストを低減することができる。
【0043】
制御部19の機能の詳細について説明する。図4は、実施の形態1に係る換気装置に設けられる制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部19は、空気質情報取得部191と、風量設定情報記憶部192と、運転制御部193と、を有する。
【0044】
空気質情報取得部191は、炭酸ガスセンサ17から換気対象の室内空気の空気質の値である炭酸ガス濃度の値を取得し、炭酸ガス濃度の値を運転制御部193に出力する。
【0045】
風量設定情報記憶部192は、風量設定情報を記憶する。風量設定情報は、炭酸ガス濃度と給気用送風機12および排気用送風機13の風量との間の関係を示す情報を含む。風量設定情報は、給気用送風機12および排気用送風機13の風量の上限値および下限値を含んでいてもよい。風量設定情報は、風量固定モードで換気装置1が運転される場合に、指示に対応する給気用送風機12および排気用送風機13の風量が運転制御部193によって参照される。また、風量設定情報は、風量自動制御モードで換気装置1が運転される場合に、基準となる送風機についての風量が運転制御部193によって参照される。
【0046】
通常、室内51の空気質の値を定められた基準値以下とするために、空気質の一例である炭酸ガス濃度が高くなるほど、給気用送風機12および排気用送風機13の風量出力が大きくなるように設定される。図5は、風量設定情報の一例を示す図である。風量設定情報は、室内空気の炭酸ガス濃度と、各送風機の風量出力と、風量ノッチと、を対応付けた情報である。ここでは、炭酸ガス濃度を16段階に分け、各段階の炭酸ガス濃度に対して給気用送風機12および排気用送風機13の風量出力を設定している。この図で、風量出力は、給気用送風機12および排気用送風機13の最大出力を100%とした場合の出力の割合を示している。また、この図で、「SA」は、給気用送風機12の風量出力を示し、「EA」は、排気用送風機13の風量出力を示す。また、「SA-EA」は、給気用送風機12の風量出力と排気用送風機13の風量出力との差分である風量差分を示している。ただし、図5では、風量差分が「0」である場合を示している。
【0047】
図5の例では、換気装置1は、1番風量の少ない弱風量で運転するFS(Fan Speed)1ノッチ運転から最も風量の多い強風量で運転するFS16ノッチ運転までの16段階の風量で運転可能とされている。なお、図5は、一例であり、風量ノッチは、16段階以外であってもよい。
【0048】
運転制御部193は、運転制御部193が換気装置1の換気風量を変更するか否かを判定するために予め定められた「切換閾値」である、「上限切換閾値」と、「下限切換閾値」とを予め記憶している。上限切換閾値は、炭酸ガス濃度がこの値以上となっても換気風量を変更しない換気風量の上限値である。下限切換閾値は、炭酸ガス濃度がこの値以下となっても換気風量を変更しない換気風量の下限値である。図6は、上限切換閾値および下限切換閾値の一例を示す図である。この図において、横軸は炭酸ガス濃度を示し、縦軸は給気用送風機12および排気用送風機13の風量を示している。図6は、図5の風量設定情報をグラフにしたものである。給気用送風機12の風量曲線はSAで示され、排気用送風機13の風量曲線はEAで示されている。図6に示されるように、炭酸ガス濃度がC1以下では、風量は最小値である「min」で一定となり、炭酸ガス濃度がC2以上では、風量は最大値である「max」で一定となる。C1が下限切換閾値となり、C2が上限切換閾値となる。そして、C1とC2との間で、風量が最小値から最大値となるように段階的に切換閾値が設定されることになる。
【0049】
上限切換閾値と下限切換閾値との差分を15等分にすることによって、図5に示されるように、16段階の風量ノッチの切換閾値をそれぞれ設定することができる。すなわち、制御部19は、室内空気の炭酸ガス濃度の異なる複数の閾値を用いることによって、換気装置1の換気風量を段階的に切り換え可能となる。
【0050】
なお、上限切換閾値および下限切換閾値は、風量設定情報記憶部192の風量設定情報に記憶されていてもよい。上限切換閾値および下限切換閾値は、必要なときに、換気装置1の設置環境に合わせて、リモコン18等の外部機器から任意の値に変更可能である。上限切換閾値および下限切換閾値は、変更される場合には、風量設定情報記憶部192に上書きされる。
【0051】
図4に戻り、運転制御部193は、リモコン18からの換気装置1に関する設定の指示を受信し、設定の指示に従って、給気用送風機12および排気用送風機13の動作を制御する。上記したように、換気モードには、風量固定モードと風量自動制御モードとがあるので、各モードの概要について説明する。
【0052】
風量固定モードは、リモコン18から風量固定モードの指示を受けた場合に実行される。指示には、図5の16段階の風量ノッチのうちの1つの風量ノッチが含まれている。運転制御部193は、指示に含まれる風量ノッチに対応する給気風量および排気風量を風量設定情報から取得し、取得した給気風量および排気風量で給気用送風機12および排気用送風機13を動作させるように制御する。
【0053】
風量自動制御モードは、リモコン18から風量自動制御モードの指示を受けた場合に実行される。風量自動制御モードが選択され、風量差異設定がなされていない場合には、運転制御部193は、炭酸ガスセンサ17で検知した室内空気の炭酸ガス濃度の値に応じた給気風量および排気風量を風量設定情報から取得し、取得した給気風量および排気風量に基づいて給気用送風機12および排気用送風機13を制御する。すなわち、運転制御部193は、炭酸ガスセンサ17での検知結果である炭酸ガス濃度の値に応じて、風量設定情報に基づいて給気用送風機12および排気用送風機13の風量を制御する。
【0054】
運転制御部193は、リモコン18から風量差異設定がなされると、風量差異を付ける送風機の風量が、基準となる送風機の風量に比して設定された風量差異値となるように、給気用送風機12および排気用送風機13の運転を制御する。つまり、運転制御部193は、炭酸ガスセンサ17で検知した室内空気の炭酸ガス濃度の値に応じた、基準となる送風機の風量を風量設定情報から取得し、取得した風量で基準となる送風機を動作させるように制御する。また、運転制御部193は、基準となる送風機の風量と、風量差異設定から得られる風量差異値と、から風量差異を付ける送風機の風量を算出し、算出した風量で風量差異を付ける送風機を動作させるように制御する。
【0055】
ユーザ等はリモコン18等の外部機器から、任意の風量ポイントにおいて一対の風量指定値と、風量差異を設ける送風機と、を任意に設定することができる。この場合の風量差異値は、任意の風量ポイントにおける給気用送風機12の風量指定値と排気用送風機13の風量指定値との差分となる。また、上記したように、一対の風量指定値に代えて、任意の風量ポイントにおける風量差異値とすることもでき、風量差異を設ける送風機に代えて、基準となる送風機とすることもできる。なお、風量ポイントは、給気用送風機12および排気用送風機13で運転可能な風量の内、ユーザ等が設定したい風量を指す。
【0056】
一例では、「給気風量指定値S1>排気風量指定値E1」と設定することで換気対象とする室内51を正圧に保ち、他の部屋からの空気の侵入を抑制したまま換気することができる。また、「給気風量指定値S1<排気風量指定値E1」と設定することで対象とする室内51を負圧に保ち、換気対象とする部屋から他の部屋への空気漏洩を抑制したまま換気することができる。
【0057】
ここでは、風量差異値Dは、次式(1)で定義されるように、給気風量指定値S1と排気風量指定値E1との風量差であるとする。一例では、風量差異値は、図5に示される風量設定情報の例の16段階の風量ノッチの内、目標であるユーザ等によって設定される任意の風量ポイントに最も近い風量となる風量ノッチに設定される。任意の風量ポイントが風量設定情報の風量と一致しない場合には、任意の風量ポイントから1段階差の範囲内の風量ノッチに風量差異値が設定される。
風量差異値D=給気風量指定値S1-排気風量指定値E1 ・・・(1)
【0058】
ここで、ユーザ等が一対の風量指定値または風量差異値を任意に設定していた場合の風量自動制御モードについて説明する。ここでは、リモコン18からの風量差異設定に、一対の風量指定値と、風量差異を付ける送風機と、が含まれるものとする。運転制御部193は、リモコン18から風量差異設定を受けると、一対の風量指定値から(1)式を用いて風量差異値Dを算出する。また、運転制御部193は、一対の風量指定値および風量差異値と、風量差異を付ける送風機と、を記憶する。運転制御部193、風量差異を付ける送風機ではない送風機、すなわち基準とする送風機については、風量設定情報に基づいて動作を制御する。また、運転制御部193は、風量差異を付ける送風機については、基準とする送風機の風量と、風量差異値と、を用いて風量を算出し、算出した風量となるように風量差異を付ける送風機の動作を制御する。なお、換気動作をしている間に、炭酸ガス濃度は変化する。炭酸ガス濃度が変化した後も、同様に、基準となる送風機については、炭酸ガス濃度に応じた風量設定情報から得られる風量に基づいて制御を行い、風量差異を付ける送風機については、基準となる送風機の風量と、風量差異値と、を用いて風量を算出することになる。つまり、風量設定情報における炭酸ガス濃度の風量設定情報における段階が変化したとしても、風量差異値を維持した状態で換気装置1の運転が継続されることになる。
【0059】
風量差異を付ける送風機が排気用送風機13である場合には、基準となる送風機は給気用送風機12となる。運転制御部193は、給気用送風機12については、炭酸ガス濃度に応じた給気風量を風量設定情報から取得して、取得した給気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、風量設定情報に予め設定されている炭酸ガス濃度に応じた給気用送風機12の給気風量SAと、風量差異値Dと、を用いて、排気用送風機13の排気風量EAを算出する。この場合には、排気風量EAは、次式(2)で算出される。そして、運転制御部193は、算出した排気風量EAで排気用送風機13の制御を行う。
排気風量EA=給気風量SA-風量差異値D ・・・(2)
【0060】
風量差異を付ける送風機が給気用送風機12である場合には、基準となる送風機は排気用送風機13となる。運転制御部193は、排気用送風機13については、炭酸ガス濃度に応じた排気風量を風量設定情報から取得して、取得した排気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、風量設定情報に予め設定されている炭酸ガス濃度に応じた排気用送風機13の排気風量EAと、風量差異値Dと、を用いて、給気用送風機12の給気風量SAを算出する。この場合には、給気風量SAは、次式(3)で算出される。そして、運転制御部193は、算出した給気風量SAで給気用送風機12の制御を行う。
給気風量SA=排気風量EA+風量差異値D ・・・(3)
【0061】
図7は、給気風量、排気風量および風量差分と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図である。この図では、室内空気の炭酸ガス濃度と、実動作時の各送風機の風量と、の関係が示されている。実動作時の各送風機の風量の単位は、1時間当たりの送風量(m3/h)
である。風量差分「SA-EA」には、給気風量SAと排気風量EAとの差分であり、「100」が入力されている。風量差分「SA-EA」は、風量差異値と一致している。
【0062】
図7において、給気風量SAを基準とした場合には、給気風量SAの各風量ノッチの数値は、風量設定情報で予め設定された数値である。各風量ノッチの排気風量EAの値が、(2)式を用いて運転制御部193によって算出される。一例では、風量ノッチが「16」である場合には、図7の給気風量SAの「500」は予め風量設定情報に記憶されているものであり、運転制御部193は、給気用送風機12を給気風量SAが「500」となるように制御する。また、運転制御部193は、基準となる給気用送風機12の給気風量SAの「500」と、風量差異値の「100」と、を用いて、(2)式から排気風量EA「400」を算出する。そして、運転制御部193は、算出した排気風量EA「400」となるように排気用送風機13を制御する。
【0063】
図7において、排気風量EAを基準とした場合には、排気風量EAの各風量ノッチの数値は、風量設定情報で予め設定された数値である。各風量ノッチの給気風量SAの値が、(3)式を用いて運転制御部193によって算出される。一例では、風量ノッチが「16」である場合には、図7の排気風量EAの「400」は予め風量設定情報に記憶されているものであり、運転制御部193は、排気用送風機13を排気風量EAが「400」となるように制御する。また、運転制御部193は、基準となる排気用送風機13の排気風量EAの「400」と、風量差異値の「100」と、を用いて、(3)式から給気風量SA「500」を算出する。そして、運転制御部193は、算出した給気風量SA「500」となるように給気用送風機12を制御する。
【0064】
図8は、風量差異値を設けた場合の給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図である。図8は、図7をグラフにしたものである。給気用送風機12の風量曲線はSAで示され、排気用送風機13の風量曲線はEAで示されている。図8に示されるように、炭酸ガス濃度の全範囲において、給気風量SAは、排気風量EAよりも風量差異値Dだけ大きくなっている。つまり炭酸ガス濃度の全範囲において、風量差異値Dが維持されている。
【0065】
上記した例では、風量差異値Dが(1)式で定義される場合を示していたが、次式(4)で定義されるように、排気風量指定値E1と給気風量指定値S1との風量差としてもよい。
風量差異値D=排気風量指定値E1-給気風量指定値S1 ・・・(4)
【0066】
風量差異を付ける送風機が排気用送風機13である場合には、基準となる送風機は給気用送風機12となる。運転制御部193は、給気用送風機12については、炭酸ガス濃度に応じた給気風量を風量設定情報から取得して、取得した給気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、炭酸ガス濃度に応じた風量設定情報に予め設定されている給気用送風機12の給気風量SAと、風量差異値Dと、を用いて、排気用送風機13の排気風量EAを算出する。この場合には、排気風量EAは、次式(5)で算出される。そして、運転制御部193は、算出した排気風量EAで排気用送風機13の制御を行う。
排気風量EA=給気風量SA+風量差異値D ・・・(5)
【0067】
風量差異を付ける送風機が給気用送風機12である場合には、基準となる送風機は排気用送風機13となる。運転制御部193は、排気用送風機13については、炭酸ガス濃度に応じた排気風量を風量設定情報から取得して、取得した排気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、炭酸ガス濃度に応じた風量設定情報に予め設定されている排気用送風機13の排気風量EAと、風量差異値Dと、を用いて、給気用送風機12の給気風量SAを算出する。この場合には、給気風量SAは、次式(6)で算出される。そして、運転制御部193は、算出した給気風量SAで給気用送風機12の制御を行う。
給気風量SA=排気風量EA-風量差異値D ・・・(6)
【0068】
なお、上記した例では、風量差異を付ける送風機の風量は、基準となる送風機の風量と風量差異値との差分、あるいは基準となる送風機の風量と風量差異値との和としていた。しかし、風量差異を付ける送風機の風量は、任意に変更することが可能である。風量差異値が(1)式で定義され、基準となる送風機が給気用送風機12である場合には、給気用送風機12は、炭酸ガス濃度に応じた風量設定情報に予め設定されている給気風量で制御される。また、風量差異を付ける送風機である排気用送風機13は、αを定数として次式(7)によって算出される風量で制御されてもよい。
排気風量EA=給気風量SA-風量差異値D×α×給気風量SA ・・・(7)
【0069】
(7)式でαが正の場合には、給気風量と排気風量との差分は、給気風量が大きくなれば大きくなり、給気風量が小さくなれば小さくなる。
【0070】
図9は、給気風量、排気風量および風量差分と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図である。この図では、室内空気の炭酸ガス濃度と、各送風機の風量出力と、の関係が示されている。図9では、基準となる送風機が給気用送風機12であるとする。また、風量差異値Dを「20」とし、αを「0.01」として、排気風量EAを算出した例が示されている。
【0071】
図10は、風量差異値を設けた場合の給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図である。図10は、図9をグラフにしたものである。この図において、横軸は炭酸ガス濃度を示し、縦軸は送風機の風量を示している。給気用送風機12の風量曲線はSAで示され、排気用送風機13の風量曲線はEAで示されている。図9および図10に示されるように、炭酸ガス濃度が増加し、給気風量SAが増えるにしたがって、給気風量SAと排気風量EAとの風量差分が増大している。
【0072】
また、基準となる送風機が排気用送風機13である場合には、排気用送風機13は、風量設定情報に予め設定されている炭酸ガス濃度に応じた排気風量で制御される。また、風量差異を付ける送風機である給気用送風機12は、次式(8)によって算出される風量で制御されてもよい。
給気風量SA=排気風量EA+風量差異値D×α×排気風量EA ・・・(8)
【0073】
さらに、風量差異値が(4)式で定義される場合も、同様の考え方で風量差異を付ける送風機の風量を算出することができる。
【0074】
以上のように、運転制御部193は、給気用送風機12および排気用送風機13のうち一方の基準となる送風機については、風量設定情報で予め設定された風量である基準風量で制御し、基準となる送風機ではない風量差異を付ける送風機については、基準となる送風機の基準風量および風量差異値を用いて算出される風量で制御する。基準となる送風機および風量差異を付ける送風機は、風量差異設定でユーザ等によって設定されることが通常であるが、ユーザ等によって設定されていない場合には、基準となる送風機および風量差異を付ける送風機は、予め定められた送風機としてもよい。
【0075】
なお、ユーザ等は、風量差異設定を行う際に、風量設定情報における16段階のどの風量ノッチの位置で、給気風量指定値S1および排気風量指定値E1、または風量差異値を設定してもよい。通常は16段階の内の1つの風量ノッチで最大の給気風量指定値と最大の排気風量指定値との風量差異値が設定される。つまり、運転制御部193は、16段階の内の任意の1か所の風量ノッチで設定された風量差異値を、他の段階においても適用して制御を行う。
【0076】
また、ユーザ等は、風量設定情報における16段階の風量ノッチの内の複数の風量ノッチで風量差異値を設定することもある。風量差異値が設定された風量ノッチを設定ノッチと称するものとすると、この場合には、運転制御部193は、室内空気の炭酸ガス濃度が属する風量ノッチに最も近い設定ノッチの風量差異値を使用して、制御を行う。
【0077】
図11から図13は、風量設定情報の一例を示す図である。ここでは、給気風量を基準とする場合を例に挙げる。このため、図11では、排気風量EAおよび風量差分SA-EAの値は入力されていない。なお、図11から図13では、風量差分SA-EAの値は、風量差異値Dを示しているものとする。リモコン18からユーザ等によって風量差異設定が行われたものとする。ここでは、風量ノッチ4と風量ノッチ13とに対して、風量差異値の設定が行われ、図12に示されるようになったものとする。すなわち、設定ノッチである風量ノッチ4の風量差分SA-EAには、風量差異値「120」が入力され、設定ノッチである風量ノッチ13の風量差分SA-EAには、風量差異値「100」が入力される。
【0078】
上記したように、運転制御部193は、室内空気の炭酸ガス濃度が属する風量ノッチに最も近い設定ノッチの風量差異値を使用して、制御を行うものである。図13に示されるように、風量ノッチ1から風量ノッチ8までは、設定ノッチである風量ノッチ4に最も近いため、風量ノッチ4に設定された風量差異値「120」が使用される。また、風量ノッチ9から16までは、設定ノッチである風量ノッチ13に最も近いため、風量ノッチ13に設定された風量差異値「100」が使用される。なお、室内空気の炭酸ガス濃度の風量ノッチと、2つの設定ノッチと、の差が同じである場合には、2つの設定ノッチの内どちらの設定ノッチを使用してもよい。
【0079】
ここまでの制御では、いずれも各送風機の風量を決定するにあたり、風量の差分を付けることを最優先としている。つまり、図7図9および図13に示されるように、どの炭酸ガス濃度においても、給気風量と排気風量とには風量差分が付けられている。このように、どの炭酸ガス濃度においても風量差異を付けるモードを風量差異優先モードとする。
【0080】
また、給気風量と排気風量とに風量差異を付けることよりも、風量を下限値側まで落として省エネルギ性を確保することを優先することも可能である。このような給気風量と排気風量との風量差分を解消し、風量を下限値まで落とすモードを風量低下優先モードとする。
【0081】
風量低下優先モードが設定された場合には、給気用送風機12および排気用送風機13の内、風量の低い側に設定された送風機の風量が下限値に達した場合に、風量差分を保持することよりも、風量を低下することを優先する。このため、運転制御部193は、風量差分を減らして、給気用送風機12および排気用送風機13の風量が下限値に落ちるまで、風量を低下させる。つまり、運転制御部193は、給気用送風機12および排気用送風機13のいずれかが風量の下限値に達した場合に、風量差異値を維持せず、他方の送風機の風量が下限値に達するように制御する。
【0082】
図14は、風量低下優先モードにおける給気風量および排気風量の設定と、風量差分と、の一例を示す図である。ここでは、排気風量EAを基準にしており、排気風量EAが風量設定情報で規定される値となる。また、排気風量EAの方が給気風量SAよりも小さくなるように設定されている。図14において、排気風量EAが下限値である25%に達するまでは、排気風量EAと風量差異値Dとを用いて給気風量SAが算出される。
【0083】
この図に示されるように、炭酸ガス濃度が1500ppm以上から排気風量EAおよび給気風量SAがともに低下していく。炭酸ガス濃度が850ppm以上899ppm以下となると、排気風量EAは下限値である25%に達する。運転制御部193は、排気風量が下限値に到達したことを検知し、炭酸ガス濃度が849ppm以下となると、風量差異値Dを維持することなく、給気風量SAを低下させる。ここでは、風量差分SA-EAを「5」として給気風量SAを30%とする。さらに炭酸ガス濃度が低下し、799ppm以下となると、風量差分SA-EAを「0」として給気風量を下限値の25%とする。これによって、給気用送風機12の風量も最低値とすることができる。
【0084】
図15は、風量低下優先モードにおける給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図である。図15は、図14の風量設定情報をグラフにしたものである。この図において、横軸は炭酸ガス濃度を示し、縦軸は送風機の風量を示している。給気用送風機12の風量曲線はSAで示され、排気用送風機13の風量曲線はEAで示されている。図15でも、排気風量EAが下限値に到達した後、給気風量SAと排気風量EAとの風量差分SA-EAは、風量差異値Dよりも小さくなり、給気風量SAが下限値に到達している様子が示されている。
【0085】
風量差異優先モードと風量低下優先モードとは、リモコン18から風量差異設定で設定することができる。つまり、風量差異設定で、風量自動制御モードのときに、風量差異優先モードとするか風量低下優先モードとするかを選択することができる。なお、設定がない場合には、風量差異優先モードおよび風量低下優先モードの内いずれか一方であると定めてもよい。
【0086】
図16は、実施の形態1に係る換気装置に設けられる制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部19は、プロセッサ201と、メモリ202と、通信インタフェース203と、を備える。プロセッサ201と、メモリ202と、通信インタフェース203と、は、バス204を介して接続される。
【0087】
プロセッサ201は、CPUである。プロセッサ201は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSPであってもよい。制御部19の各機能は、プロセッサ201と、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述され、内蔵メモリであるメモリ202に格納される。
【0088】
メモリ202は、不揮発性または揮発性の半導体メモリであって、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROMまたはEEPROM(登録商標)である。メモリ202は、換気装置1を動作させるためのプログラム、風量設定情報等を記憶する。なお、メモリ202には、換気装置1への通電が断電された場合でも、記憶された情報が消去されないように、不揮発性の記憶装置が使用されることが望ましい。
【0089】
通信インタフェース203は、リモコン18または図示しない外部機器との間で通信を行って情報の送受信を行う。
【0090】
プロセッサ201は、メモリ202に記憶されているプログラムを、バス204を介して読み出して実行し、換気装置1全体の処理と制御とを司る。図4に示される制御部19の機能は、プロセッサ201を使用して実現される。
【0091】
メモリ202は、プロセッサ201のワーク領域として使用される。また、メモリ202には、ブートプログラム、通信プログラム、後述する風量制御方法を実行する風量制御プログラム等のプログラムが記憶されている。上記した風量制御方法が実行される場合には、プロセッサ201は、メモリ202に風量制御プログラムをロードして各種処理を実行する。
【0092】
つぎに、制御部19における換気装置1の風量制御方法について、風量低下優先モードが選択された場合と、風量差異優先モードが選択された場合と、に分けて説明する。
【0093】
図17は、風量低下優先モードが選択された場合の換気装置の風量制御方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、運転制御部193は、給気用送風機12および排気用送風機13の風量を炭酸ガス濃度ごとに規定した風量設定情報と、風量の上限値および下限値と、を読み込む(ステップS11)。
【0094】
ついで、運転制御部193は、リモコン18から設定された風量差異設定から風量差異値と、風量差異を付ける送風機と、を読み込む(ステップS12)。風量差異設定が一対の風量指定値を含む場合には、運転制御部193は、一対の風量指定値から風量差異値を算出する。また、風量差異設定に風量差異を付ける送風機ではなく基準となる送風機が設定されている場合には、運転制御部193は、基準となる送風機を読み込む。運転制御部193は、風量差異設定を風量設定情報記憶部192に記憶してもよい。
【0095】
その後、運転制御部193は、運転設定で運転開始の指示を受けたかを判定する(ステップS13)。運転開始の指示を受けていない場合(ステップS13でNoの場合)には、処理がステップS12に戻る。また、運転開始の指示を受けている場合(ステップS13でYesの場合)には、運転制御部193は、運転設定で風量自動制御モードが選択されたかを判定する(ステップS14)。風量自動制御モードが選択されていない場合(ステップS14でNoの場合)には、運転制御部193は、風量固定モードで給気用送風機12および排気用送風機13を運転させる(ステップS15)。すなわち、運転制御部193は、運転設定で選択された風量ノッチを固定したまま給気用送風機12および排気用送風機13を運転させる。このとき運転制御部193は、選択された風量ノッチに対応する給気用送風機12および排気用送風機13の風量を風量設定情報から取得し、取得した風量で給気用送風機12および排気用送風機13を制御する。
【0096】
ステップS14で風量自動制御モードが選択されている場合(ステップS14でYesの場合)には、運転制御部193は、炭酸ガス濃度に従って風量自動制御モードで給気用送風機12および排気用送風機13を運転させる(ステップS16)。すなわち、運転制御部193は、炭酸ガス濃度に従って給気用送風機12および排気用送風機13の風量を可変にする。このとき、運転制御部193は、風量差異優先モードである場合には、風量差異値を用いて給気用送風機12および排気用送風機13の風量に差異を設けて運転させ、風量低下優先モードである場合には、風量差異値をキャンセルして給気用送風機12および排気用送風機13を運転させる。
【0097】
その後、運転制御部193は、給気用送風機12および排気用送風機13のいずれか一方が風量の下限値に達したかを判定する(ステップS17)。給気用送風機12および排気用送風機13のいずれか一方が風量の下限値に達していない場合(ステップS17でNoの場合)には、運転制御部193は、風量差異値を変更しないまま風量差異優先モードで給気用送風機12および排気用送風機13を運転させる(ステップS18)。
【0098】
給気用送風機12および排気用送風機13のいずれか一方が風量の下限値に達した場合(ステップS17でYesの場合)には、運転制御部193は、風量差異値をキャンセルし、いずれの送風機も風量が下限値となるように、風量を下げて運転する風量低下優先モードで制御を行う(ステップS19)。
【0099】
ステップS15,S18またはS19の後、運転制御部193は、運転設定で運転停止の指示を受けたかを判定する(ステップS20)。運転停止の指示を受けていない場合(ステップS20でNoの場合)には、ステップS14に処理が戻る。また、運転停止の指示を受けた場合(ステップS20でYesの場合)には、運転制御部193は、給気用送風機12および排気用送風機13の運転を停止し(ステップS21)、処理が終了する。
【0100】
図18は、風量差異優先モードが選択された場合の換気装置の風量制御方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS11からステップS18までは、図17の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0101】
ステップS17で給気用送風機12および排気用送風機13のいずれか一方が風量の下限値に達した場合(ステップS17でYesの場合)には、運転制御部193は、風量差異値を維持するように、炭酸ガス濃度が下がっても、もう一方の送風機の風量は下限値まで低下させない風量差異優先モードで制御を行う(ステップS19A)。その後は、図17のステップS20以降の処理が実行される。
【0102】
ここで、図17および図18の換気装置1の風量制御方法のステップS16における風量自動制御モードでの制御処理について説明する。図19は、風量自動制御モードでの制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。まず、空気質情報取得部191は、空気質センサである炭酸ガスセンサ17から室内51の空気質の値である炭酸ガス濃度の値を取得する(ステップS31)。ついで、運転制御部193は、風量差異優先モードであるかを判定する(ステップS32)。
【0103】
風量差異優先モードである場合(ステップS32でYesの場合)には、運転制御部193は、風量設定情報を参照し、炭酸ガス濃度の値に対応する基準となる送風機の風量を取得し、取得した風量で基準となる送風機を制御する(ステップS33)。運転制御部193は、風量差異を付ける送風機について、基準となる送風機の風量と風量差異値とから風量を算出し、算出した風量で風量差異を付ける送風機を制御する(ステップS34)。その後、図17および図18のステップS17に処理が戻る。
【0104】
ステップS32で風量差異優先モードではない場合(ステップS32でNoの場合)、すなわち風量低下優先モードである場合には、運転制御部193は、風量差異値をキャンセルし、いずれの送風機も風量が下限値となるように、風量を下げて運転する(ステップS35)。すなわち、風量が下限値に達した送風機ではない他方の送風機について、風量差異値をキャンセルして、下限値になるまで風量を下げるように運転を制御する。その後、図17および図18のステップS17に処理が戻る。
【0105】
つぎに、換気装置1における風量自動制御モードでの換気風量の制御例について説明する。図20は、風量自動制御モードを実施する前の風量設定情報の一例を示す図である。一例では、この風量設定情報は、風量固定モードで使用されるものである。風量設定情報は、上限切換閾値と下限切換閾値との間を複数段階に区切り、各段階に対して給気風量および排気風量を設定したものである。一例では、上記したように風量設定情報記憶部192に記憶されている上限切換閾値と下限切換閾値との間を15等分して、炭酸ガス濃度を16段階に分類する。ここでは、上限切換閾値は1500ppmとして設定され、下限切換閾値は750ppmとして設定されていたものとする。各段階に給気風量および排気風量が設定される。なお、図20では、風量ノッチが「1」のときの室内空気の炭酸ガス濃度は「799ppm以下」とされているが、上記のように上限切換閾値と下限切換閾値との間を15等分すると、「750ppm以上799ppm以下」となる。しかし、炭酸ガス濃度の値が750ppm以下の場合も制御対象に含まれるため、図では、「799ppm以下」と表記している。
【0106】
リモコン18からの風量差異設定によって、風量差異を付ける送風機に排気用送風機13が設定され、風量差異値に100[m3/h]が設定されるものとする。図21は、風
量自動制御モードを実施する際の風量設定情報の一例を示す図である。この図に示されるように、基準となる送風機は、給気用送風機12となるので、給気風量SAには、図20の風量が設定されている。また、風量差分SA-EAには、炭酸ガス濃度の全体にわたって風量差異値である「100」が設定される。風量差異を付ける送風機である排気用送風機13の排気風量EAは算出によって求められるため、ここでは示されていない。
【0107】
風量自動制御モードにおいては、炭酸ガスセンサ17は、空気質情報取得部191の制御によって、室内空気の炭酸ガス濃度を検知するためのセンシング動作を開始する。このとき、炭酸ガスセンサ17が室内空気の炭酸ガス濃度の検知を短時間で安定して行えるように、換気装置1は最大風量である強風量で換気運転を行うことが好ましい。なお、炭酸ガスセンサ17による室内空気の炭酸ガス濃度の検知が可能であれば、換気装置1の換気風量は強風量に限定されない。その後、空気質情報取得部191は、炭酸ガスセンサ17から室内空気の炭酸ガス濃度の値を取得する。
【0108】
図1に示されるように、換気装置1は、天井裏52に室内51から隠蔽されて設置されているため、換気装置1の運転を停止した場合には換気装置1の内部に風が流れなくなる。この結果、室内空気熱交換前風路116aに設置された炭酸ガスセンサ17で室内空気の炭酸ガス濃度の値を正確に検知することができない。そこで、換気装置1の運転モードが風量自動制御モードに設定されている間中においては、換気装置1、特に排気用送風機13を弱風量で連続運転させることで、常に室内空気熱交換前風路116aに風が流れる状態とすることができる。これによって、常に炭酸ガスセンサ17で室内空気の炭酸ガス濃度を正確に検知することができる。
【0109】
このように、運転モードとして風量自動制御モードが選択された場合には、上記のような弱風量で換気装置1を連続運転させることにより、常に炭酸ガスセンサ17で室内空気の炭酸ガス濃度を正確に検知することが可能となる。
【0110】
図21の排気風量EAに算出した結果を入力したものが図7である。上記したように、排気風量EAは、基準の送風機となる給気用送風機12の給気風量SAと風量差異値とから算出される値である。この例では、排気風量EAは、(2)式に従って算出され、給気風量SAの値よりも「100」低い値となっている。
【0111】
なお、上記した例では、風量自動制御モードの場合には、弱風量で換気装置1を連続運転させる場合を示したが、他の条件で換気装置1を運転させてもよい。一例では、炭酸ガスセンサ17で検知される室内空気の炭酸ガス濃度の値が700ppm未満の低濃度である場合には、換気装置1を連続運転ではなく間欠運転で定期的に運転させて、炭酸ガスセンサ17が間欠的に室内51の炭酸ガス濃度の値を検知してもよい。この場合も、間欠的に室内空気熱交換前風路116aに風が流れるため、間欠的に炭酸ガスセンサ17で室内空気の炭酸ガス濃度の値を正確に検知することができる。
【0112】
また、室内空気の炭酸ガス濃度に基づいて換気風量が段階的に変更される場合について説明したが、換気風量の変更形態はこれに限定されない。換気装置1における換気風量の変更形態は、室内空気の炭酸ガス濃度に対して換気風量が無段階に変わる形態とされてもよい。
【0113】
この場合には、炭酸ガスセンサ17で検知された室内空気の炭酸ガス濃度の値自体が、室内空気の炭酸ガス濃度の閾値に対応する。換気装置1は、室内空気の炭酸ガス濃度と換気風量との相関関係に基づいて、室内空気の炭酸ガス濃度に対して換気風量を無段階に変更する制御を行ってもよい。
【0114】
実施の形態1では、換気装置1は、給気風路115に設けられる給気用送風機12と、排気風路116に設けられる排気用送風機13と、室内51の空気質の濃度を検知する炭酸ガスセンサ17と、風量差異を付ける送風機および一対の風量指定値を設定する外部機器と、炭酸ガスセンサ17での空気質の濃度値に応じて給気用送風機12および排気用送風機13の風量を制御する制御部19と、を備える。制御部19は、給気用送風機12および排気用送風機13の内の一方の基準となる送風機については、風量設定情報で予め設定された風量である基準風量で制御する。また、制御部19は、他方の送風機については、基準風量と、一対の風量指定値から求められる風量差異値と、を用いて算出される風量で制御する。これによって、ユーザ等が給気風量および排気風量を独立して任意に設定することができ、任意に設定した給気風量および排気風量の関係を維持したまま空気質に応じて給気風量および排気風量を制御することができるという効果を奏する。
【0115】
実施の形態2.
実施の形態1では、風量差異値は、(1)式または(4)式で定義されるものである場合を例に挙げた。すなわち、風量差異値は、給気風量指定値S1と排気風量指定値E1との差分値または排気風量指定値E1と給気風量指定値S1との差分値であった。実施の形態2では、風量差異値が差分値を用いるものではない場合を例に挙げる。
【0116】
実施の形態2に係る換気装置1の構成は、実施の形態1で説明したものと同様であるので、その説明を省略する。以下では、実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0117】
実施の形態2では、風量差異値Dは、次式(9)で定義されるように、排気風量指定値E1に対する給気風量指定値S1の比とされる。
風量差異値D=給気風量指定値S1/排気風量指定値E1 ・・・(9)
【0118】
風量差異を付ける送風機が排気用送風機13である場合には、基準となる送風機は給気用送風機12となる。運転制御部193は、給気用送風機12については、炭酸ガス濃度に応じた給気風量を風量設定情報から取得して、取得した給気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、風量設定情報に予め設定されている炭酸ガス濃度に応じた給気用送風機12の給気風量SAと、風量差異値Dと、を用いて、排気用送風機13の排気風量EAを算出する。この場合には、排気風量EAは、次式(10)で算出される。
排気風量EA=給気風量SA/風量差異値D ・・・(10)
【0119】
風量差異を付ける送風機が給気用送風機12である場合には、基準となる送風機は排気用送風機13となる。運転制御部193は、排気用送風機13については、炭酸ガス濃度に応じた排気風量を風量設定情報から取得して、取得した排気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、風量設定情報に予め設定されている炭酸ガス濃度に応じた排気用送風機13の排気風量EAと、風量差異値Dと、を用いて、給気用送風機12の給気風量SAを算出する。この場合には、給気風量SAは、次式(11)で示される。
給気風量SA=排気風量EA×風量差異値D ・・・(11)
【0120】
図22は、風量差異値が排気風量に対する給気風量の比で表される場合の炭酸ガス濃度と給気風量および排気風量との関係の一例を示す図である。図22には、室内空気の炭酸ガス濃度と、給気風量SAおよび排気風量EAと、の関係が示されている。風量差分SA-EAは、給気風量SAと排気風量EAとの差分を示している。風量比SA/EAは、排気風量に対する給気風量の比を示しており、風量差異値Dに対応している。また、図22では、リモコン18から、風量差異値として、あるノッチにおける排気風量EAに対する給気風量SAの比率が「1.11」となるように設定が指示されたものとする。
【0121】
図22において、給気風量SAを基準とした場合には、給気風量SAの各風量ノッチの数値は、風量設定情報で予め設定された数値である。各風量ノッチの排気風量EAの値が(10)式を用いて運転制御部193によって算出される。一例では、風量ノッチが「16」である場合には、図22の給気風量SAの「500」は予め風量設定情報に記憶されているものであり、運転制御部193は、給気用送風機12を給気風量SAが「500」となるように制御する。また、運転制御部193は、基準となる給気用送風機12の給気風量SAの「500」と、風量差異値の「1.11」と、を用いて、(10)式から排気風量EA「450」を算出する。そして、運転制御部193は、算出した排気風量EA「450」となるように排気用送風機13を制御する。
【0122】
なお、運転制御部193は、排気風量EAに対する給気風量SAの比が1.11となる給気風量SAと排気風量EAとの差分を風量差異値Dとして算出してもよい。つまり、排気風量EAに対する給気風量SAの比が1.11となる風量差分を風量差異値Dとしてもよい。この場合には、図22の風量差分SA-EAが、風量差異値Dに対応する。一例では、風量ノッチが「16」である場合には、運転制御部193は、基準となる給気用送風機12の給気風量SA「500」と、風量差分SA-EA「50」と、を用いて、(2)式から排気風量EA「450」を算出する。
【0123】
図22において、排気風量EAを基準とした場合には、排気風量EAの各風量ノッチの数値は、風量設定情報で予め設定された数値である。各風量ノッチの給気風量SAの値が、(11)式を用いて運転制御部193によって算出される。一例では、風量ノッチが「16」である場合には、図22の排気風量EAの「450」は予め風量設定情報に記憶されているものであり、運転制御部193は、排気用送風機13を排気風量EAが「450」となるように制御する。また、運転制御部193は、基準となる排気用送風機13の排気風量EAの「450」と、風量差異値の「1.11」と、を用いて、(11)式から給気風量SA「500」を算出する。そして、運転制御部193は、算出した給気風量SA「500」となるように給気用送風機12を制御する。
【0124】
なお、運転制御部193は、排気風量EAに対する給気風量SAの比が1.11となる給気風量SAと排気風量EAとの差分を風量差異値Dとして算出してもよい。つまり、排気風量EAに対する給気風量SAの比が1.11となる風量差分を風量差異値Dとしてもよい。この場合には、図22の風量差分SA-EAが、風量差異値Dに対応する。一例では、風量ノッチが「16」である場合には、運転制御部193は、基準となる排気用送風機13の排気風量EA「450」と、風量差分SA-EA「50」と、を用いて、(3)式から給気風量SA「500」を算出する。
【0125】
上記した例では、風量差異値Dが(9)式で定義される場合を示していたが、次式(12)で定義されるように、風量差異値Dは、給気風量指定値S1に対する排気風量指定値E1の比としてもよい。
風量差異値D=排気風量指定値E1給気風量指定値S1 ・・・(12)
【0126】
風量差異を付ける送風機が排気用送風機13である場合には、基準となる送風機は給気用送風機12となる。運転制御部193は、給気用送風機12については、炭酸ガス濃度に応じた給気風量を風量設定情報から取得して、取得した給気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、炭酸ガス濃度に応じた風量設定情報に予め設定されている給気用送風機12の給気風量SAと、風量差異値Dと、を用いて、排気用送風機13の排気風量EAを算出する。この場合には、排気風量EAは、次式(13)で算出される。そして、運転制御部193は、算出した排気風量EAで排気用送風機13の制御を行う。
排気風量EA=給気風量SA×風量差異値D ・・・(13)
【0127】
風量差異を付ける送風機が給気用送風機12である場合には、基準となる送風機は排気用送風機13となる。運転制御部193は、排気用送風機13については、炭酸ガス濃度に応じた排気風量を風量設定情報から取得して、取得した排気風量で制御を行う。また、運転制御部193は、炭酸ガス濃度に応じた風量設定情報に予め設定されている排気用送風機13の排気風量EAと、風量差異値Dと、を用いて、給気用送風機12の給気風量SAを算出する。この場合には、給気風量SAは、次式(14)で算出される。そして、運転制御部193は、算出した給気風量SAで給気用送風機12の制御を行う。
給気風量SA=排気風量EA風量差異値D ・・・(14)
【0128】
図23は、風量差異値を設けた場合の給気風量および排気風量と炭酸ガス濃度との関係の一例を示す図である。図23は、図22をグラフにしたものである。図23において、横軸は炭酸ガス濃度を示し、縦軸は、送風機の風量を示している。この図に示されるように、給気風量と排気風量との差分値は、炭酸ガス濃度が高くなるほど、より具体的には基準となる送風機の風量が大きくなるほど大きくなることがわかる。
【0129】
実施の形態2によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0130】
実施の形態3.
図24は、実施の形態3にかかる換気装置の構成の一例を模式的に示す断面図である。以下では、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。実施の形態3の換気装置1Aは、炭酸ガスセンサ17が室内51に設けられる点が、実施の形態1のものと異なっている。このように、炭酸ガスセンサ17を室内51に設ける構成とすることによって、換気装置1Aは、実施の形態1の換気装置1と異なり、換気装置1Aの換気運転が停止していても室内空気の炭酸ガス濃度を正確に検知することができる。
【0131】
図24では、炭酸ガスセンサ17を室内51に設ける場合を示したが、室内空気の炭酸ガス濃度を検知することができるものであれば、換気装置1A以外の機器から炭酸ガス濃度を取得してもよい。すなわち、炭酸ガスセンサ17は、換気装置1A以外の機器に設けられる炭酸ガスセンサであり、換気装置1A以外の機器から通信によって炭酸ガスセンサ17で検知した炭酸ガス濃度の値を換気装置1Aの制御部19が取得してもよい。換気装置1A以外の機器の一例は、炭酸ガスセンサを備える空気調和機、炭酸ガスセンサを備えるファンヒータ等であるが、炭酸ガスセンサを備える任意の機器とすることができる。ただし、この場合には、換気装置1Aの制御部19は、換気装置1A以外の機器から炭酸ガス濃度を取得するため通信部を備える。この場合にも、換気装置1Aは、換気装置1Aの換気運転が停止していても室内空気の炭酸ガス濃度および外気の炭酸ガス濃度を正確に検知できる。
【0132】
実施の形態3では、炭酸ガスセンサ17を室内51に配置した。これによって、換気装置1Aの換気運転が停止していても室内空気の炭酸ガス濃度を正確に検知することができるという効果を有する。
【0133】
また、換気装置1Aは、換気装置1Aの換気運転が停止していても室内空気の炭酸ガス濃度を正確に検知することが可能である。このため、実施の形態1に係る換気装置1のように室内空気の炭酸ガス濃度を正確に検知するセンシング動作のために必要な換気運転の連続運転または間欠運転が、実施の形態3にかかる換気装置1Aでは不要となる。これによって、換気装置1Aは、換気運転の時間のさらなる削減が可能であり、換気装置1Aの省エネルギ効果を増加させることができる。また、換気装置1Aは、外気負荷の低減により、換気装置1Aの換気対象空間を空気調和するエアコンディショナ等の他の空気調和機の省エネルギ効果を増加させることができる。
【0134】
なお、上述した実施の形態では、換気装置1,1Aが熱交換素子14を備える熱交換型換気装置である場合について説明したが、換気装置1,1Aは、熱交換素子14を備えていない換気装置であってもよい。すなわち、換気装置1,1Aは、換気機能を有していればよく、熱交換型換気装置に限定されない。
【0135】
また、上述した実施の形態では、炭酸ガスセンサ17が空気質センサである例を挙げて説明したが、空気質センサは炭酸ガスセンサ17に限定されない。空気質センサは、炭酸ガスセンサ17、粉塵濃度を測定する粉塵センサ、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)ガスを検知するVOCガスセンサ、臭気物質を検知する臭気センサ、一酸化炭素(CO)を検知するCOセンサ、および室内51の在室人数を検知する在人数知センサの群から選択される1つ以上のセンサとすることができる。
【0136】
さらに、上記した実施の形態では、熱交換型換気装置の例を示したが、給気と排気とを同時に行う第一種換気を行うものであればよい。一例では、上記したように、給気風路115に給気用送風機12を備える給気部と、排気風路116に排気用送風機13を備える排気部と、が1つの筐体11に一体となって構成される換気装置であってもよいし、給気部と排気部とがそれぞれ別体として構成される換気装置であってもよい。すなわち、換気装置1,1Aが、給気部を収容する筐体と、排気部を収容する筐体と、を備えていてもよい。この場合の換気装置1,1Aは、給気部が給気装置であり、排気部が排気装置である換気システムと見なすこともできる。
【0137】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0138】
1,1A 換気装置、11 筐体、12 給気用送風機、12a 給気用モータ、13
排気用送風機、13a 排気用モータ、14 熱交換素子、15 給気エアフィルタ、16 排気エアフィルタ、17 炭酸ガスセンサ、18 リモートコントローラ(リモコン)、19 制御部、31 通信線、51 室内、52 天井裏、53 天井、111 外気吸込口、112 排気吐出口、113 給気吐出口、114 室内空気吸込口、115 給気風路、115a 外気熱交換前風路、115b 外気熱交換後風路、115c 素子内給気風路、116 排気風路、116a 室内空気熱交換前風路、116b 室内空気熱交換後風路、116c 素子内排気風路、117a,117b,117c,117d 仕切壁、118 風路切換ダンパ、141 シート材、142,142a,142b
間隔保持部材、191 空気質情報取得部、192 風量設定情報記憶部、193 運転制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24