(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-01
(45)【発行日】2025-05-13
(54)【発明の名称】配信サーバ、配信サーバの制御方法、及び配信サーバの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 8/24 20090101AFI20250502BHJP
【FI】
H04W8/24
(21)【出願番号】P 2025061638
(22)【出願日】2025-04-03
【審査請求日】2025-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】磯村 周平
(72)【発明者】
【氏名】根岸 宏明
(72)【発明者】
【氏名】盛下 泰暉
(72)【発明者】
【氏名】藤波 英輝
(72)【発明者】
【氏名】嶺岸 優司
(72)【発明者】
【氏名】宮地 武志
(72)【発明者】
【氏名】志村 俊輔
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-73081(JP,A)
【文献】特開2016-100668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバであって、
前記複数の通信装置から、前記基地局との間の通信方式に関する情報を取得する取得部と、
前記通信方式に関する情報に基づき、一の配信で前記更新用ソフトウェアを配信する前記通信装置の、前記通信方式ごとの比率を設定する設定部と、
前記基地局に、前記比率に基づいて設定される前記通信方式ごとの配信台数で、前記更新用ソフトウェアを配信する配信部と、
を備える配信サーバ。
【請求項2】
前記取得部は、前記通信方式に関する情報を、前記通信装置と所定のプロトコルで通信を行う管理サーバを介して取得する、
請求項1に記載の配信サーバ。
【請求項3】
前記配信部は、前記一の配信で前記基地局に配信可能な上限台数と前記比率とに基づいて取得される、前記通信方式ごとの前記配信台数で、前記基地局に前記更新用ソフトウェアを配信する、
請求項1に記載の配信サーバ。
【請求項4】
前記基地局との間の前記通信方式に関する情報は、カテゴリM1(Category M1)を含む、
請求項1に記載の配信サーバ。
【請求項5】
前記基地局との間の前記通信方式に関する情報は、NB-IoT(Narrow Band Internet of Things)を含む、
請求項1に記載の配信サーバ。
【請求項6】
基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバの制御方法であって、
コンピュータが、
前記複数の通信装置から、前記基地局との間の通信方式に関する情報を取得するステップと、
前記通信方式に関する情報に基づき、一の配信で前記更新用ソフトウェアを配信する前記通信装置の、前記通信方式ごとの比率を設定するステップと、
前記基地局に、前記比率に基づいて設定される前記通信方式ごとの配信台数で、前記更新用ソフトウェアを配信するステップと、
を実行する、配信サーバの制御方法。
【請求項7】
基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバの制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記複数の通信装置から、前記基地局との間の通信方式に関する情報を取得する機能と、
前記通信方式に関する情報に基づき、一の配信で前記更新用ソフトウェアを配信する前記通信装置の、前記通信方式ごとの比率を設定する機能と、
前記基地局に、前記比率に基づいて設定される前記通信方式ごとの配信台数で、前記更新用ソフトウェアを配信する機能と、
を実現させる、配信サーバの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配信サーバ、配信サーバの制御方法、及び配信サーバの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信装置には、不具合の修正や機能の追加のために自装置のファームウェア(ソフトウェアプログラム)の更新を無線経由で行う、FOTA(Firmware Over The Air)と呼ばれる技術が知られている。FOTAは、IoT(Internet of Things)デバイスに対しても行われ、例えば、特許文献1には、IoTデバイスに対してファームウェアを提供するファームウェア提供装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態に係る、基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバは、複数の通信装置から、基地局との間の通信方式に関する情報を取得する取得部と、通信方式に関する情報に基づき、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置の、通信方式ごとの比率を設定する設定部と、基地局に、比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信する配信部と、を備える。
【0005】
本発明の一実施形態に係る配信サーバにおいて、取得部は、通信方式に関する情報を、通信装置と所定のプロトコルで通信を行う管理サーバを介して取得してよい。
【0006】
本発明の一実施形態に係る配信サーバにおいて、配信部は、一の配信で基地局に配信可能な上限台数と比率とに基づいて取得される、通信方式ごとの配信台数で、基地局に更新用ソフトウェアを配信してよい。
【0007】
本発明の一実施形態に係る配信サーバにおいて、基地局との間の通信方式に関する情報は、カテゴリM1(Category M1)を含んでよい。
【0008】
本発明の一実施形態に係る配信サーバにおいて、基地局との間の通信方式に関する情報は、NB-IoT(Narrow Band Internet of Things)を含んでよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る、基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバの制御方法は、コンピュータが、複数の通信装置から、基地局との間の通信方式に関する情報を取得するステップと、通信方式に関する情報に基づき、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置の、通信方式ごとの比率を設定するステップと、基地局に、比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信するステップと、を実行する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る、基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバの制御プログラムは、コンピュータに、複数の通信装置から、基地局との間の通信方式に関する情報を取得する機能と、通信方式に関する情報に基づき、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置の、通信方式ごとの比率を設定する機能と、基地局に、比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信する機能と、を実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る配信システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、本発明の一実施形態を説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る配信サーバおよび通信装置の概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る通信装置及び配信サーバ間のシーケンスの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、図を用いて、本開示に係る発明(本発明ともいう)の一実施形態を説明する。なお、図は一例であって、本発明は図に示すものに限定されない。例えば、図示した配信サーバ(情報処理装置)、管理サーバ、基地局、通信装置(IoTデバイス)、コアネットワーク、データベースサーバの数、シーケンス図は一例であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
IoT向けの通信技術として、LPWA(Low Power Wide Area)が注目されている。LPWAは、低消費電力、長距離通信を実現する通信技術であり、屋内外の様々な場所に設置され、外部電源を備えず内蔵電池で駆動されるIoTデバイスに適している。LPWAに分類されるIoT向けの通信方式としては、例えば、LTE(Long Term Evolution)(登録商標)を拡張したカテゴリM1(Category M1)、NB-IoT(Narrow Band IoT)が挙げられる。これらカテゴリM1、NB-IoTのいずれも、LTEやWi-Fi(登録商標)と比較して、低消費電力で長距離通信が可能であるものの、通信帯域が狭く、通信速度が遅いという特徴がある。そのため、ファームウェアの更新用ソフトウェアのような、IoTデバイスが通常の動作で送受信するデータと比較して容量の大きいデータのダウンロードには時間を要し、通信帯域を長時間占有するという問題がある。したがって、一度に更新用ソフトウェアを配信する通信装置の台数に、上限を設ける運用がなされている。ここで、NB-IoTとカテゴリM1とでは、その通信帯域や通信速度の違いにより、同時にFOTAを行える通信装置の上限台数に差が生じている。具体的には、更新用ソフトウェアの同時配信が可能である台数が、カテゴリM1では数千台規模であるのに対し、NB-IoTでは数百台程度である。
【0014】
このように、通信方式によって更新用ソフトウェアを同時に配信できる台数に違いがあるものの、従来、FOTAを行う際に、通信装置の通信方式の違いが考慮されていない。したがって、FOTAの失敗率を低減するために、NB-IoTに対する上限台数で更新用ソフトウェアの配信が行われると、カテゴリM1のリソースが最大限に活用されず、非効率となっていた。これに対し、本開示の一実施形態によれば、セルに在圏するIoTデバイスの通信方式ごとに、FOTAを実行するIoTデバイスの台数を異ならせてよい。これにより、通信方式ごとのリソースを最大限に活用しつつ、安定したFOTAの実現が可能となる。
【0015】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る配信システムの構成例を示す図である。配信システム600は、通信装置200に対し、ファームウェアを更新するための更新用ソフトウェアを配信するシステムであってよい。ここで、「配信」とは、更新用ソフトウェアを通信装置200が取得可能な状態にすることを指してよい。例えば、配信部113は、通信装置200が更新用ソフトウェアをダウンロード可能な場所に格納し、当該場所についての情報(ダウンロード先のURL(Uniform Resource Locator))を通信装置200へ通知してよい。
【0016】
配信システム600は、配信サーバ100と、管理サーバ101と、データベースサーバ400と、基地局300(300A,300B)と、複数の通信装置200(200Aa,200Ab,…,200Ba,200Bb,…)と、移動通信ネットワーク500とを含んでよい。ここで、移動通信ネットワーク500は、基地局300と通信装置200とがデータをやり取りする無線アクセスネットワークと、コアネットワーク50とを含んでよい。なお、
図1において、それぞれ基地局300A,300Bに接続する通信装置200には、それぞれ同一の大文字の英字A,Bを付与し、通信装置間を区別する場合、小文字の英字a,b…を付与する。しかしながら、特に区別する必要がない場合、単に基地局300、通信装置200として説明する。
【0017】
通信装置200は、基地局300に接続され、各基地局300のセル内に存在(在圏)する各種IoTデバイスであってよい。なお、これ以降、通信装置200を、ガス(都市ガス、LPガス)、水道、電気等のスマートメータに設置され、メータの検針データ等を送信するIoTデバイスとして説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信装置200としては、橋や道路等のインフラ監視に用いられるIoTセンサや、ウェアラブルデバイスなどであってよい。
【0018】
通信装置200は、LPWAに分類されるIoT向けの通信方式であって、例えば、NB-IoT、カテゴリM1等に準拠するデバイスであってよい。1つの基地局300のセル内に存在する複数の通信装置200は、それぞれ、上述した複数の通信方式のいずれかで基地局300との間で通信を行ってよい。例えば、基地局300Aとの間の通信方式は、通信装置200AaがNB-IoT、通信装置200AbがカテゴリM1等のように異なってよい。
【0019】
配信サーバ100は、基地局300に接続する各通信装置200のファームウェアのバージョンを管理し、必要に応じて、各通信装置200のファームウェアを更新するための更新用ソフトウェアを送信する機能(FOTAを実行するための機能)を有してよい。なお、更新用ソフトウェアを提供する事業者と、配信する事業者とは異なっていてもよい。例えば、更新用ソフトウェアは、各通信装置200の製造業者によって提供され、基地局300を管理する通信事業者によって、配信サーバ100を介して各通信装置200へ配信されてもよい。
【0020】
管理サーバ101は、各通信装置200から送信された各スマートメータの検針値等を処理し、スマートメータの管理者へ必要なデータを受け渡す、IoT-PF(プラットフォーム)として機能してよい。管理サーバ101は、移動通信ネットワーク500を介して、通信装置200を遠隔制御してもよく、管理サーバ101は、管理者が待機する図示しない集中監視センタに接続されてよい。なお、管理サーバ101と配信サーバ100とは、同一のサーバとして設けられてもよいし、さらに複数のサーバにその機能が分散されてもよい。なお、管理サーバ101、配信サーバ100は、各実施形態において記載する機能を実現できる情報処理装置であればどのような装置であってもよく、例えば、サーバ装置、コンピュータ(限定でなく例として、デスクトップ、ラップトップ、タブレット等)、コミュニケーションプラットホーム等を含んでもよい。
【0021】
データベースサーバ400には、各通信装置200と基地局300とを関連付けるための各種データや、FOTAに係る処理に必要な各種の情報が格納されてよい。例えば、データベースサーバ400には、FOTAを行うべき通信装置200の情報が格納されてよい。なお、
図1では、データベースサーバ400を配信サーバ100とは別個に示してあるが、本発明はこれに限定されず、データベースサーバ400に格納されるデータは、例えば配信サーバ100の記憶部170に記憶されてもよい。また、データベースサーバ400は、格納するデータの種類ごと、また、データベースを管理する主体ごとに、別個に存在してもよい。
【0022】
コアネットワーク50は、図示しないMME(Mobility Management Entity:モビリティ管理エンティティ)、S-GW(Serving Gateway:サービング・ゲートウェイ)、P-GW(Packet Data Network Gateway:パケット・データ・ネットワーク・ゲートウェイ)、SCEF(Service Capability Exposure Function)等のノードを含んでよい。MMEは、通信装置200の位置管理、認証管理や、各ノード間のセッションの管理(すなわち、通信ベアラの管理)等を行う機能を有する。また、MMEは、通信装置200を呼び出す際に、基地局300へページングを送信する機能も有する。S-GWは、基地局300とコアネットワーク50との間で、ユーザパケットのルーティングや転送を行うゲートウェイとしての機能を有する。P-GWは、コアネットワーク50以降のIP通信網で使用可能な通信装置200のIP(Internet Protocol)アドレスを割り当て、そのIPアドレスによって、通信装置200と移動通信ネットワーク500の外部ネットワークとの通信を可能とするゲートウェイとしての機能を有する。なお、S-GWとP-GWとは、統合して1つのノードとして実現される場合もある。また、コアネットワーク50は、さらに、図示しないSCS(Service Capability Server)を含んでもよい。
【0023】
<実施形態>
図2を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
まず、配信サーバ100は、データベースサーバ400に格納された情報に基づき、FOTAを行うべき通信装置200の情報を取得してよい。FOTAを行うべき通信装置とは、例えば、機能の追加、脆弱性への対応、通信規格への準拠のための更新等で、ファームウェアの更新を要する通信装置であってよい。FOTAを行うべき通信装置の情報は、データベースサーバ400に例えばCSVデータファイル形式でリスト化されていてよい。なお、これ以降、FOTAを行うべき通信装置を、更新用ファームウェアの配信対象の通信装置とも称する。
【0025】
配信サーバ100は、更新用ソフトウェアの配信対象の通信装置200から、当該通信装置200が接続する基地局300を識別する識別情報を取得してよい。基地局を識別する識別情報とは、セルID(IDentifier:識別情報の一種)であってよい。セルIDは、基地局に一意に割り当てられ、基地局の通信範囲(セル)を一意に識別する番号であってよい。通信装置200は、基地局300への接続時に、接続先の基地局300のセルIDを、自装置の記憶部に記憶することができてよい。なお、配信サーバ100は、管理サーバ101に対して通信装置200のセルIDを要求してよい。管理サーバ101は、配信サーバ100の要求に応じて、通信装置200に対してセルIDの送信を要求し、通信装置200から取得したセルIDを、管理サーバ101に送信してよい。これにより、確実にセルIDを取得することができる。
【0026】
なお、通信装置200は、LwM2Mプロトコルを用いて、配信サーバ100との間でデータの送受信を行ってよい。LwM2Mでは、データの管理にリソースモデルという形式を用いているが、リソースモデルは、オブジェクト、オブジェクトインスタンス、リソースのツリー構造であり、各要素には番号が割り当てられる。本発明の一実施形態において、通信装置200の接続先の基地局300を識別するセルIDは、コネクティビティモニタリングオブジェクト「4」のリソース「8」に格納されてよい。したがって、配信サーバ100は、セルIDの送信を要求する際に、リソース「/4/0/8」を指定する命令を生成してよい。通信装置200は、配信サーバ100からリソース「/4/0/8」を指定する要求を受信すると、当該リソースに格納されているセルIDを読み出し、配信サーバ100へ送信してよい。なお、各通信装置200の接続先の基地局300を識別する方法は上述に限定されない。
【0027】
また、配信サーバ100は、複数の通信装置200から、基地局300との間の通信方式に関する情報を取得してよい。通信方式に関する情報とは、通信装置200が基地局300との間の通信に用いている通信方式を識別するための情報であってよい。通信方式とは、LPWAに準ずる通信方式であって、上述したNB-IoT、カテゴリM1等であってよい。なお、本発明の一実施形態において、通信方式は、NB-IoT、カテゴリM1に限定されるものではない。配信サーバ100は、管理サーバ101に対して通信装置200の通信方式に関する情報を要求してよい。管理サーバ101は、配信サーバ100の要求に応じて、通信装置200に対して通信方式に関する情報の送信を要求し、通信装置200から取得した通信方式に関する情報を、管理サーバ101に送信してよい。
【0028】
なお、本発明の一実施形態において、通信装置200の通信方式に関する情報は、コネクティビティモニタリングオブジェクト「4」のリソース「0」に、ネットワークベアラとして格納されてよい。したがって、配信サーバ100は、通信方式に関する情報の送信を要求する際に、リソース「/4/0/0」を指定する命令を生成してよい。通信装置200は、配信サーバ100からリソース「/4/0/0」を指定する要求を受信すると、当該リソースに格納されている情報(通信方式に関する情報)を読み出し、配信サーバ100へ送信してよい。
【0029】
図2(a)は、基地局200Aに接続する更新用ソフトウェアの配信対象の通信装置200(200Aa,200Ab,…)と、当該通信装置200の通信方式とを関連付けたテーブルの一例であってよい。テーブルTB10は、通信装置を一意に識別する通信装置IDに、当該通信装置IDを有する通信装置200の通信方式を関連付けて記憶してよい。なお
図2(a)では、簡単のため、それぞれのIDを、
図1における符号で示してある。例えば、テーブルTB10を参照すると、通信装置200Aaの通信方式はNB-IoTであり、通信装置200Abの通信方式はカテゴリM1である。なお、図は一例であって、通信装置200の通信方式を識別可能であれば、テーブルの形式はこれに限定されない。
【0030】
配信サーバ100は、複数の通信装置200から取得した通信方式に関する情報に基づき、通信方式ごとの通信装置200の台数を取得してよい。
図2(b)は、基地局300Aに接続する通信装置の、各通信方式の台数を格納したテーブルであってよい。例えば、テーブルTB11は、
図2(a)のテーブルTB10に基づいて取得され、各通信方式に、通信装置200の台数を関連付けて格納されてよい。テーブルTB11の例では、基地局300Aに接続する、更新用ソフトウェアの配信対象の通信装置200は、通信方式がカテゴリM1のものが70台、通信方式がNB-IoTのものが30台である。なお、テーブルTB11における数値は、説明を分かりやすくするための簡易的なものであって、本発明はこれに限定されない。
【0031】
配信サーバ100は、基地局300に接続する通信装置200台数に基づいて、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置の、通信方式ごとの比率を設定してよい。このことを、
図2(c)を用いて説明する。テーブルTB11より、カテゴリM1とNB-IoTとの比率は、「7:3」となってよい。したがって、配信サーバ100は、一回の配信で更新用ソフトウェアを配信する際の通信装置の台数を、カテゴリM1とNB-IoTとで「7:3」となるように設定してよい。そして、配信サーバ100は、上記の比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信してよい。すなわち、
図2(c)において、帯40が一回の配信台数を示すとすると、カテゴリM1の通信装置、NB-IoTの通信装置それぞれに、7:3の割合で更新用ソフトウェアが配信されてよい。
【0032】
上述の利点を説明する。例えば、テーブルTB11の状態において、基地局300Aに接続する通信装置200のうち、通信方式がカテゴリM1のものが20台、NB-IoTのものが12台であるとする。また、各通信方式で配信可能な台数の上限が、カテゴリM1であれば10台、NB-IoTであれば6台であるとする。このとき、従来では、FOTAの失敗を低減するため、NB-IoTの台数に合わせて、配信サーバ100による一回の配信可能台数が6台と設定され得る。この場合、合計32台の通信装置に対し、6台ずつ更新用ソフトウェアの配信が行われるとすると、配信の完了まで少なくとも6回の配信が必要となる。ここで、カテゴリM1は、NB-IoTより広帯域であり、配信可能台数は6台よりも多いにも関わらず、カテゴリM1の配信可能なリソースが十分に活用されていない。
【0033】
これに対し、本発明一実施形態によれば、通信方式に応じて更新用ソフトウェアが配信されてよい。したがって、1回目の配信で、カテゴリM1の上限台数10台を採用し、カテゴリM1とNB-IoTとで、それぞれ7台、3台分のFOTAが行われてよい。これにより、リソースを十分に活用してFOTAを実行することが可能となり、IoTデバイスのFOTAに要する時間を短縮することができる。
【0034】
また、配信サーバ100は、上述のように、一の配信で配信可能な上限台数と上述の比率とに基づいて、通信方式ごとの配信台数を設定してよい。これにより、更新用ソフトウェアの配信台数に制限がある場合でも、リソースを無駄にすることなくFOTAを行うことが可能となる。
【0035】
次に、
図3を用いて、本発明の一実施形態に係る配信サーバ100、通信装置200のハードウェア構成、機能構成について説明する。
【0036】
<配信サーバ>
(1)配信サーバのハードウェア構成
図3に、本発明の一実施形態による配信サーバ100のブロック図の一例を示す。配信サーバ100は、制御部110、通信部120、入出力部130及び記憶部170を備えてよい。
【0037】
記憶部170は、典型的には、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等各種の記録媒体により実現され、配信サーバ100が動作するうえで必要とする各種プログラム及びデータを記憶する機能を有してよい。
【0038】
制御部110は、典型的にはプロセッサであって、中央処理装置(CPU)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって実現されてよい。制御部110は、記憶部170に記憶されるプログラムを読み出し、読み出したプログラムに含まれるコード又は命令を実行することによって、各実施形態に示す機能、方法を実行してよい。制御部110は、集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって各実施形態に開示される各処理を実現してもよい。また、これらの回路は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、各実施形態に示す複数の処理を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。
【0039】
通信部120は、ネットワークアダプタ等のハードウェアや通信用ソフトウェア、及びこれらの組み合わせとして実装され、外部装置と各種データの送受信を行う。当該通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。例えば、配信サーバ100と通信装置200とは、OMA(Open Mobile Alliance)によって策定されたIoT向けのプロトコルであるLwM2M(Lightweight M2M)、MQTT(Message Queue Telemetry Transport)、及びCoAP(Constrained Application Protocol)等を用いて、データの送受信を行ってよい。通信部120は、配信サーバ100と各通信装置200の間で確立された通信ベアラを用いて、各種データの送受信を行ってよい。
【0040】
入出力部130は、配信サーバ100に対する各種操作を入力する入力装置、及び、配信サーバ100で処理された処理結果を出力する出力装置を含んでよい。入力装置は、例えば、タッチパネル、タッチディスプレイ、キーボード等のハードウェアキーや、マウス等のポインティングデバイス、カメラ(画像を介した操作入力)、マイク(音声による操作入力)を含む。出力装置は、制御部110で処理された処理結果を出力し、例えば、タッチパネル、スピーカ等を含む。入力装置、出力装置は、通信装置200を遠隔で監視するための図示しない集中監視センタに設置されて、監視者(管理者)からの操作を受け付けたり、監視者に対して各種情報を出力したりしてよい。
【0041】
配信サーバ100は、制御部110によって実現される機能として、取得部111、設定部112及び配信部113を備えてよい。取得部111は、更新用ソフトウェアの配信対象の通信装置200から、当該通信装置200が接続する基地局300を識別する識別情報(セルID)を取得してよい。また、取得部111は、複数の通信装置200から、基地局300との間の通信方式に関する情報を取得してよい。なお、取得部111は、識別情報を、通信装置200と所定のプロトコルで通信を行う管理サーバ101を介して取得してよい。ここで、所定のプロトコルとは、LwM2Mであってよい。
【0042】
設定部112は、取得部111が取得した、各通信装置200の通信方式に関する情報に基づき、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置200の、通信方式ごとの比率を設定してよい。
【0043】
配信部113は、基地局300に、比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信してよい。なお、配信部113は、一の配信で配信可能な上限台数と比率とに基づいて取得される、通信方式ごとの配信台数で、基地局300に更新用ソフトウェアを配信してよい。
【0044】
<通信装置>
次に、本発明の一実施形態に係る通信装置200について説明する。通信装置200は、制御部210、通信部220、入出力部230、及び記憶部270を備えてよい。通信装置200を構成する制御部210や通信部220は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することによって処理が実行されるソフトウェアもしくはモジュールであってもよい。または、通信装置200を構成する制御部210や通信部220は、回路もしくはチップ等のハードウェアであってもよい。
【0045】
通信部220は、所定の通信方式で基地局300との間で通信を行い、移動通信ネットワーク500を介して、配信サーバ100や管理サーバ101との間で各種データの送受信を行ってよい。例えば、通信部220は、所定の通信方式として、NB-IoT、カテゴリM1、LTE等に対応可能であってよい。
【0046】
制御部210は、例えばMPU(Micro Processing Unit)等で構成され、記憶部270に記憶されているプログラムを実行することにより、通信装置200を、NB-IoTやカテゴリM1等に準拠して動作させるための処理を実現してよい。
【0047】
また、制御部210は、移動通信ネットワーク500への接続(コアネットワーク50への登録)や、移動通信ネットワーク500との接続を解除するための各種処理を実行してよい。さらに、制御部210は、通信部220を介して、FOTAの更新用ソフトウェアをダウンロードしてよい。また、制御部210は、ダウンロードした更新用ソフトウェアを用いて、自装置のファームウェアを更新してよい。
【0048】
記憶部270は、通信装置200が動作するうえで必要とする各種プログラムや各種データを記憶する。記憶部270は、例えば、半導体メモリ(磁気メモリ、フラッシュメモリ等)を含んでよい。また、記憶部270は、制御部210に対する作業領域を提供するメモリ(RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等)を含んでよい。記憶部270は、自装置が接続する基地局300を一意に識別する基地局識別情報(セルID)271と、通信方式に関する情報(通信方式情報)272とを記憶してよい。
【0049】
入出力部230は、センサ等の外部装置とのインタフェースであって、例えば、Uバスインタフェース、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)インタフェース、SPI(Serial Peripheral Interface)インタフェース、I2Cインタフェース等を含んでよい。通信装置200は、入出力部230を介して接続されたセンサが検知したデータを、管理サーバ101等に送信してよい。
【0050】
<更新用ソフトウェアの配信処理>
本発明の一実施形態による更新用ソフトウェアの配信処理について、
図4を用いて説明する。
図4は、更新用ソフトウェアの配信処理(FOTA)の実行にあたる、配信サーバ100と通信装置200との間のシーケンス図である。なお、ここでは、基地局300Aに接続された、NB-IoTの通信装置200Aa、カテゴリM1の通信装置200Abを対象に説明する。また、配信サーバ100は、通信装置200Aa,200Abが基地局300Aに接続していることを、通信装置200Aa,200Abから取得したセルIDによって識別しているとする。
【0051】
通信装置200Aa,200Abは、管理サーバ101からの要求を受けて、管理サーバ101を介して、自装置の通信方式に関する情報を送信してよい(ステップS11,S12)。配信サーバ100は、更新用ソフトウェアの複数の通信装置200Aa,200Abから、基地局300Aとの間の通信方式に関する情報を取得してよい(ステップS13)。これにより、
図2(a)のテーブルTB10が取得されてよい。
【0052】
配信サーバ100は、複数の通信装置200Aa,200Abから取得した通信方式に関する情報に基づき、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置の、通信方式ごとの比率を設定してよい(ステップS14)。これにより、
図2(b)のテーブルTB11、
図2(c)の比率が設定されてよい。
【0053】
そして、配信サーバ100は、基地局300Aに、比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信してよい(ステップS15,S16,S17)。更新用ソフトウェアの配信は、FOTAを実行する旨を示すFOTA指令(配信通知)が、各通信装置200に送信されることによって行われてよい。なお、FOTA指令には、更新用ソフトウェアのダウンロード先に関する情報(URL)が含まれてよい。
【0054】
なお、通信装置200は、更新用ソフトウェアのダウンロードと、ダウンロードした更新用ソフトウェアを用いて、自装置のファームウェアを更新してよい。また、通信装置200Aa,200Abは、ファームウェアの更新が完了すると、FOTAが完了した旨を示す通知を配信サーバ100へ送信してよい。その後、1回目の配信で更新用ソフトウェアが未配信の通信装置200に対し、各通信方式に設定された比率による台数で、さらにFOTA指令が送信されてよい。
【0055】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上記実施の形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。例えば、配信サーバ100が備えるとして説明した各構成部は、複数のサーバによって分散されて実現されてもよい。また、配信サーバ100の機能として説明した処理は、通信装置200によって行われても良い。逆に、通信装置200によって行われるとした処理が、配信サーバ100や管理サーバ101によって行われてもよい。
【0056】
例えば、上述では、基地局の識別情報としてセルIDを一例に説明した。しかしながら、基地局の識別情報としては、ECGI(E-UTRAN Cell Global Identifier)が用いられてもよい。さらに、セルIDに加え、基地局300を提供する通信事業者に関する情報や、基地局300の設置地域に関する情報が、基地局300の識別に用いられてもよい。
【0057】
また、通信方式ごとの配信台数の比率が、所定の重み付けに応じて変更されてもよい。例えば、各通信装置200の制御部210は、自装置の通信品質に関する通信品質情報を取得し、通信部220を介して管理サーバ101へ送信してよい。通信品質情報は、例えば、RSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)等であってよいが、これらに限定されない。なお、通信装置200の制御部210は、通信部220が受信した電波の受信強度といった無線通信の状態に基づいて、通信品質情報を測定してよい。そして、配信サーバ100は、通信品質が良好でない通信方式に対しては、配信台数の比率を下げてもよい。これにより、FOTAが失敗する確率を低下することができる。
【0058】
また、例えば、通信方式を指定したFOTAが行われてもよい。例えば、NB-IoTの通信装置200のみにFOTAを実行することができてもよい。これにより、より柔軟なFOTAの実行が可能となる。
【0059】
配信サーバ100又は通信装置200の各機能部は、集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。また、各機能部は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、複数の機能部の機能を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。
【0060】
本開示の各実施形態のプログラムは、情報処理装置に読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよい。記憶媒体は、「一時的でない有形の媒体」に、プログラムを記憶可能である。プログラムは、例えば、ソフトウェアプログラムや情報処理装置プログラムを含む。情報処理装置としての配信サーバ100の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、配信サーバ100は、プロセッサがメモリ上にロードされたプログラムを実行することにより、取得部111、設定部112、及び配信部113として機能する。
【0061】
記憶媒体は適切な場合、1つ又は複数の半導体ベースの、又は他の集積回路(IC)(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向けIC(ASIC)等)、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)、ハイブリッド・ハード・ドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、光磁気ディスク、光磁気ドライブ、フロッピィ・ディスケット、フロッピィ・ディスク・ドライブ(FDD)、磁気テープ、固体ドライブ(SSD)、RAMドライブ、セキュア・デジタル・カードもしくはドライブ、任意の他の適切な記憶媒体、又はこれらの2つ以上の適切な組合せを含むことができる。記憶媒体は、適切な場合、揮発性、不揮発性、又は揮発性と不揮発性の組合せでよい。
【0062】
また、本開示の各実施形態は、プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。なお、本開示のプログラムは、例えば、JavaScript(登録商標)、Python等のスクリプト言語、C言語、Go言語、Swift(登録商標)、Koltin(登録商標)、Java(登録商標)等を用いて実装されてよい。
【0063】
以上説明した本開示の各態様によれば、5G以降のネットワーク技術に向けたIoTデバイスの監視や保守に係る技術を提供することにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0064】
100 配信サーバ(情報処理装置)
110 制御部
111 取得部
112 設定部
113 配信部
120 通信部
130 入出力部
170 記憶部
101 管理サーバ
200 通信装置(IoTデバイス)
210 制御部
220 通信部
230 入出力部
270 記憶部
271 基地局識別情報(セルID)
272 通信方式情報
300 基地局
500 移動通信ネットワーク
50 コアネットワーク
600 配信システム
【要約】
【課題】基地局に接続する複数の通信装置間で、FOTAを効率的かつ平等に行うこと。
【解決手段】基地局に接続する複数の通信装置に更新用ソフトウェアを配信する配信サーバは、複数の通信装置から、基地局との間の通信方式に関する情報を取得する取得部と、通信方式に関する情報に基づき、一の配信で更新用ソフトウェアを配信する通信装置の、通信方式ごとの比率を設定する設定部と、基地局に、比率に基づいて設定される通信方式ごとの配信台数で、更新用ソフトウェアを配信する配信部と、を備える。
【選択図】
図3