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特許7676148グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチド共役環状ペプチドチロシンチロシンコンジュゲート及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-02
(45)【発行日】2025-05-14
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチド共役環状ペプチドチロシンチロシンコンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20250507BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20250507BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20250507BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20250507BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20250507BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250507BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250507BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20250507BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20250507BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/605 ZNA
C07K14/575
A61K47/65
A61K38/22
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P5/50
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020559562
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2019053384
(87)【国際公開番号】W WO2019207505
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】62/662,313
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2018/029284
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】カマチョ,ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ケース,マーティン エー.
(72)【発明者】
【氏名】チ,エレン
(72)【発明者】
【氏名】エダヴェタル,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ノーキー,リサ
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,マーク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ソンマオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユエ-メイ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-531713(JP,A)
【文献】特表2009-504681(JP,A)
【文献】特表2007-525495(JP,A)
【文献】特表2012-502888(JP,A)
【文献】特表2008-521869(JP,A)
【文献】特表2013-506628(JP,A)
【文献】Peptides,2013年,Vol.39,pp.6-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00-19/00
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状PYYペプチドに結合したグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、前記GLP-1融合ペプチドが、配列番号56~59からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するGLP-1ペプチド、配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む任意選択の第1のリンカーペプチド、配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヒンジ-Fc領域ペプチド、及び環状PYYペプチドに結合したシステイン残基及び配列番号93~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第2のリンカーペプチドを含み、
前記環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、
【化1】
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化2】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClでアシル化され、
は、G又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化3】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClでアシル化され、
11は、D又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化4】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClでアシル化され、
22は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化5】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClでアシル化され、
23は、S又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化6】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClでアシル化され、
26は、A又はHであり、
30は、L、Wであるか、又は存在せず、
(但し、Z30は、qが1である場合にのみ存在しない)、
34は、
【化7】
であり、
35は、
【化8】
であり、
式Iが、Z、Z、Z11、Z22、又はZ23のうちの少なくとも1つにアシル化リシン(K)残基を含み、前記アシル化リシン残基が、前記第2のリンカーペプチドの前記システイン残基に共有結合で反応的にコンジュゲートされている、コンジュゲート。
【請求項2】
前記環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、又は5であり、
nは、1、2、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が不在の場合にのみ1であり得る)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CHBrで任意選択でアシル化されており、
は、G又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CHBrで任意選択でアシル化されており、
11は、D又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CHBrで任意選択でアシル化されており、
22は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CHBrで任意選択でアシル化されており、
23は、S又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CHBrで任意選択でアシル化されており、
26は、A又はHであり、
30は、Lであり、
34は、
【化9】
であり、
35は、
【化10】
である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記環状PYYペプチドが、配列番号1~54からなる群から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、若しくは34から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である、請求項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
式I中のZ11がリシンである、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記第2のリンカーペプチドが、配列番号93、94、95、106又は111のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
環状PYYペプチドに結合しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、前記GLP-1融合ペプチドが、配列番号113~224及び267~274からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、若しくは34から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はその薬学的に許容される塩であ、前記GLP-1融合ペプチドのアミノ酸残基287~289の間のシステイン残基が、化学リンカーを介して、前記環状PYYペプチドのアミノ酸残基11におけるリシン残基(K11)と共有結合で連結している、コンジュゲート。
【請求項8】
環状PYYペプチドに結合しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチド(GF)を含むコンジュゲートであって、配列番号225~262からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はその薬学的に許容される塩を含み前記GLP-1融合ペプチドが、配列番号56~59からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するGLP-1ペプチド、配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む任意選択の第1のリンカーペプチド、配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するヒンジ-Fc領域ペプチド、及び環状PYYペプチドに結合したシステイン残基及び配列番号93~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第2のリンカーペプチドを含む、コンジュゲート。
【請求項9】
前記環状PYYペプチドのリシン残基の側鎖に導入された求電子剤を、前記GLP-1融合ペプチドの前記第2のリンカーペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、それにより、前記環状PYYペプチドと前記GLP-1融合ペプチドとの間に共有結合性連結を生じさせることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンジュゲートを生成する方法。
【請求項10】
前記GLP-1融合ペプチドの前記第2のリンカーペプチドの前記システイン残基が、前記GLP-1融合ペプチドを過剰なアザホスフィン還元剤と接触させることによって還元され、前記還元されたシステイン残基が前記求電子剤と反応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アザホスフィン還元剤が、1,3,5-トリアザ-7-ホスファトリシクロ[3.3.1.1]デカン(PTA)又はその誘導体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、それを必要としている対象における疾患又は障害を治療又は予防する方法で用いるためのものであり、
前記疾患又は障害が、肥満、I型又はII型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/若しくは脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに/又は湿疹であり、
前記方法が、前記それを必要としている対象に有効量の前記医薬組成物を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、それを必要としている対象における食物摂取又は体重のうちの少なくとも1つを減少させる方法で用いるためのものであり、
前記方法が、前記それを必要としている対象に有効量の前記医薬組成物を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項12に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、それを必要としている対象におけるY2受容体活性及び/又はGLP-1受容体活性を調節する方法で用いるためのものであり、
前記方法が、それを必要としている対象に有効量の前記医薬組成物を投与することを含む医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が、注射により投与される、請求項13~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含むキットであって、注射用デバイスを更に含む、キット。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む医薬組成物を生成する方法であって、前記コンジュゲートを薬学的に許容される担体と組み合わせて前記医薬組成物を得ることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年4月25日に出願された国際出願第PCT/US2018/029284号及び2018年4月25日に出願された米国特許仮出願第62/662,313号に対する優先権を主張するものである。各開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、神経ペプチドY2受容体及びGLP-1受容体の調節因子である、新規グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)融合ペプチド共役環状ペプチドチロシンチロシン(PYY)コンジュゲートを目的とする。本発明はまた、医薬組成物及びその使用方法に関する。新規GLP-1融合ペプチド共役環状PYYコンジュゲートは、とりわけ、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、及び脂質異常症などの疾患及び障害を予防する、治療する、又は寛解させるのに有用である。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「PRD3465 Sequence Listing」のASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された、2019年4月2日の作成日で、409kbのサイズを有する配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される情報と、ファイル名「PRD3465 Sequence Listing」でEFS-Webを介して電子的に提出された配列表との間で、配列番号225~262の構造に関して何らかの不一致がある場合は、本明細書の情報が優先される。
【背景技術】
【0004】
神経ペプチドY(NPY)受容体は、各受容体サブタイプに対して異なる親和性を有する「NPYファミリー」と呼ばれる、密接に関連するペプチドアゴニスト群によって活性化される。NPY、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、及び膵臓ポリペプチド(PP)の、長さ36個全てのアミノ酸は、NPY受容体ファミリーのアゴニストである。NPYは、神経伝達物質であり、合成され、共貯蔵(co-stored)され、ノルエピネフリン及びエピネフリンと共に放出される。NPYは、ヒト及びげっ歯類の中枢神経系(CNS)中の最も豊富かつ広範に分布したペプチドのうちの1つであり、摂食及びストレスに関連する脳の領域で発現される。末梢神経系では、NPY含有ニューロンは主に交感神経性である。PYYは、腸内分泌細胞によって主に合成され、放出される。内皮セリン-プロテアーゼ、ジ-ペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)によるNPY及びPYYの切断によって、NPY受容体ファミリーのY2及びY5サブタイプの選択的リガンドであるNPY3-36及びPYY3-36が生成される。PPは、主に、インスリン、グルカゴン、又はソマトスタチンを貯蔵するものとは異なる膵島細胞に見られる。
【0005】
5つの異なるNPY受容体がこれまでに特定されており、そのうちの4つは、ヒトの生理機能に関連するものとして理解される。受容体Y1、Y2、及びY5は、NPY及びPYYに優先的に結合し、他方、Y4受容体はPPに優先的に結合する。Y2及びY5受容体はまた、NPY3-36及びPYY3-36によって強力に活性化される。概して、NPYファミリーのリガンドは、NPY受容体イソ型のそれぞれに対して可変選択性を有し、PYY3-36は、Y2イソ型に対して中程度から強固な選択性を有することが以前に報告されている。これらの受容体のそれぞれは、百日咳毒素感受性Gαiを介してアデニル酸シクラーゼの阻害に結合される。
【0006】
PYYは、食物に応じて内分泌腺L-細胞から分泌され、特に脂肪摂取後に分泌される。PYY1-36は、空腹状態で優勢であり、PYY3-36は、ヒトにおいて食後に見られる主な形態であり、血漿濃度は、消費されるカロリー数と負の相関関係にある。PYY3-36は、ヒト、サル、ラット、ウサギ、及びマウスにおいて食物摂取を減少させることが実証されている(Batterham et al.,Nature 418(6898):650-4(2002);Batterham et al.,N Engl J Med 349(10):941-8(2003);Challis et al.,Biochem Biophys Res Commun 311(4):915-9(2003))。PYY3-36の食欲減退効果は、この受容体における優先的結合及びY2欠損マウスにおける摂食の効能の喪失に基づいて、Y2が媒介していると考えられる(Batterham et al.,Nature 418(6898):650-4(2002))。PYY3-36を弓内注射すると、ラット及びマウスにおいて食物摂取が減少し(Batterham et al.,Nature 418(6898):650-4(2002))、これは、視床下部Y2受容体の会合がこれらの効果を媒介している可能性があることを示唆している。摂食に対する急性効果は、ob/obマウス、DIOマウス、及びZucker fa/faマウスの体重に対する用量依存的効果に変換されることも示されている(Pittner et al.,Int J Obes Relat Metab Disord 28(8):963-71(2004))。加えて、PYY3-36は、DIOげっ歯類においてインスリン媒介グルコース処理及びインスリン感受性を改善することも示されている(Vrang et al.,Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 291(2):R367-75(2006))。肥満手術の結果、循環PYY免疫反応性が増大し(le Roux et al.,Ann Surg 243(1):108-14(2006))、これは、術後の体重減少において役割を果たすように思われる。
【0007】
食欲及び食物摂取の制御におけるその役割、並びに哺乳動物の胃腸管におけるその抗分泌及び吸収促進効果を考慮すると、PYY3-36は、肥満及び関連病態、並びに多くかの胃腸障害の治療に有効であり得る。しかしながら、PYY3-36自体の治療剤としての治療的有用性は、その迅速な代謝及び結果として生じる短い循環半減期によって制限される(Torang et al.,Am.J.Physiol.Regul.Integr.Comp.Physiol.310:R866-R874(2016))。
【0008】
インクレチンホルモンGLP-1及びその受容体(GLP1R)の活性化は、グルコース依存性インスリン分泌の刺激(Kreymann et al.,Lancet 2:1300-1304(1987))、並びにグルカゴン分泌(Gutniak et al.,N Engl J Med 326:1316-1322(1992))、胃排出(Wettergren et al.Digestive Diseases Sciences 38:665-673(1993))及び食物摂取(Flint et al.,JCI 101:515-520(1998))の阻害を含む、ヒトにおけるグルコース代謝及びエネルギーバランスにおいて多くの有益な効果を有する。GLP1Rアゴニストはまた、2型糖尿病患者における心血管及び微小血管予後(Marso et al.,N Engl J Med 375(4):311-322(2016))並びに腎臓病(Mann et al.,N Engl J Med 377(9):839-848(2017)のリスクを有意に減少させることが示されている。GLP-1は、短い半減期を特徴とし、これが、GLP-1を潜在的な治療薬として使用することを非実用的なものにしている。循環半減期は、ジペプチジルペプチダーゼIV(Zhu,L.et al.,JBC 278:22418-22423(2003))及び中性エンドペプチダーゼ(Hupe-Sodmann et al.,Regul Pept 58(3):149-156(1995))によるタンパク質分解のされやすさ、並びに腎臓濾過(Ruiz-Grande et al.,Can J Physiol Pharmacol 68(12):1568-1573(1990))の両方によって制限される。
【0009】
したがって、それぞれPYY3-36及び/又はGLP-1に比べて改善された代謝安定性及び薬物動態プロファイルを有するPYYアナログ若しくはその誘導体及び/又はGLP-1アナログ若しくはその誘導体を得ることが望ましい。インビボでの半減期が長いこのような誘導体は、より長い作用持続時間でのY2及び/又はGLP-1受容体の調節を提供し、これによって、当該誘導体はこのような調節を必要とする対象の治療薬として好適なものになる。
【0010】
前述の議論は、単に、当該技術分野が直面する問題の性質のより良い理解を提供するために提示されているものであり、いかなる意味でも先行技術の容認として解釈されるべきではなく、本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参照が本出願の「先行技術」を構成することを容認するものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
全般的な一態様では、本発明は、神経ペプチドY2受容体及びGLP-1受容体の調節因子である新規グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)融合共役環状ペプチドチロシンチロシン(PYY)コンジュゲートに関する。
【0012】
環状PYYペプチドに結合したグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、当該GLP-1融合ペプチドが、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド、第1のリンカーペプチド、ヒンジ-Fc領域ペプチド、及び第2のリンカーペプチドを含み、当該第1のリンカーが、任意選択で、存在しない、コンジュゲートが、本明細書に提供される。
【0013】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり:
【0014】
【化1】
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、
は、G又はKであり、
11は、D又はKであり、
22は、A又はKであり、
23は、S又はKであり、
26は、A又はHであり、
30は、L、Wであるか、又は存在せず、
(但し、Z30は、qが1である場合にのみ存在しない。)、
34は、
【0015】
【化2】
であり、
35は、
【0016】
【化3】
であり、
当該誘導体は、アミド化、アシル化、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は2つ以上のプロセスによって修飾された式Iの化合物である。
【0017】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0018】
【化4】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
は、G又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0019】
【化5】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
11は、D又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0020】
【化6】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
22は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0021】
【化7】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
23は、S又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0022】
【化8】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
26は、A又はHであり、
30は、Lであり、
34は、
【0023】
【化9】
であり、
35は、
【0024】
【化10】
である。
【0025】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、又は5であり、
nは、1、2、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が不在の場合にのみ1であり得る。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
は、G又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
11は、D又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
22は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
23は、S又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
26は、A又はHであり、
30は、Lであり、
34は、
【0026】
【化11】
であり、
35は、
【0027】
【化12】
である。
【0028】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、配列番号1~54からなる群から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である。特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、配列番号24、25、27、28、29、30、33、又は34から選択される。
【0029】
特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、環状PYYペプチドのリシン残基において、環状PYYペプチドに共有結合で連結している。特定の実施形態では、式I中のZ、Z、Z11、Z22、及びZ23のうちの1つだけがリシンであり、当該リシンは、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドにおけるシステイン残基に共有結合で連結している。
【0030】
特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドのGLP-1ペプチドは、配列番号56~59からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドの第1のリンカーペプチドは、配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドのヒンジ-Fc領域ペプチドは、配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドは、配列番号91~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第2のリンカーペプチドは、配列番号93、94、95、106、又は111のアミノ酸配列を含む。
【0031】
また、環状PYYペプチドに共役しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、当該GLP-1融合ペプチドが、配列番号113~224及び267~274からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、当該環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、又は34から選択されるアミノ酸配列を含む、コンジュゲートも提供される。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、配列番号113又は配列番号136のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、配列番号113又は配列番号136のアミノ酸残基287~289の間のシステイン残基、好ましくは配列番号113又は配列番号136のシステイン残基288は、環状PYYペプチドの残基7、9、11、22、又は23におけるリシン残基、好ましくは環状PYYペプチドのリシン残基11に直接又は化学リンカーを介して共有結合で連結している。
【0032】
また、環状PYYペプチドに共役しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、配列番号225~262からなる群から選択される配列又はその薬学的に許容される塩を含むコンジュゲートも提供される。
【0033】
また、本発明のコンジュゲートの生成方法も提供される。当該方法は、環状PYYペプチドの側鎖、好ましくは環状PYYペプチドのリシン残基の側鎖に導入された求電子剤、好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミドを、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチド(例えば、カルボキシ末端リンカーペプチド)のシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、それにより、当該環状PYYペプチドと当該GLP-1融合ペプチドとの間に共有結合性連結を生じさせることを含む。
【0034】
また、本発明のコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物も提供される。
【0035】
また、それを必要としている対象における疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、当該疾患又は障害が、肥満、I型又はII型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/若しくは脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに/又は湿疹である、方法も提供される。当該方法は、それを必要としている対象に、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0036】
また、それを必要としている対象における食物摂取又は体重のうちの少なくとも1つを減少させる方法も提供される。当該方法は、それを必要としている対象に、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0037】
また、それを必要としている対象における、Y2受容体活性又はGLP-1受容体活性を調節する方法も提供される。当該方法は、それを必要としている対象に、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0038】
特定の実施形態では、医薬組成物は、注射により投与される。
【0039】
また本発明の化合物を含むキットであって、好ましくは、リラグルチド及び注射用デバイスを更に含む、キットも提供される。
【0040】
また、本発明の医薬組成物の生成方法も提供される。当該方法は、コンジュゲートを薬学的に許容される担体と組み合わせて医薬組成物を得ることを含む。
【0041】
本発明の更なる態様、特徴、及び利点は、「発明の詳細な説明」及び「特許請求の範囲」を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
図1A】GLP-1融合ペプチド部分のエクスビボにおけるヒト血漿安定性を示す。図1Aは、37℃で7日間、ヒト血漿中でインキュベートした、GLP-1融合ペプチドGF32(配列番号144)(▲)、GF36(148)(△)、GF33(145)(▼)、GF39(151)(▽)、GF34(146)
【数1】
、GF35(147)(●)、GF37(149)(○)、GF40(152)(◇)、及びデュラグルチド対照(◆)のエクスビボにおけるヒト血漿安定性を示すグラフを示す。
図1B】GLP-1融合ペプチド部分のエクスビボにおけるヒト血漿安定性を示す。図1Bは、デュラグルチド対照(◇)と共に、37℃で7日間、エクスビボでヒト血漿中においてインキュベートした、GF40(配列番号152)(▲)及びGF34(配列番号146)(●)、並びにこれらの対応するGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート配列番号248(△)及び配列番号262(○)、並びに別のGLP-1融合ペプチドGF41(配列番号153)(▼)のエクスビボにおけるヒト血漿安定性を示すグラフを示す。
図2A】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図2Aは、デュラグルチド、化合物1(GF1(配列番号113))(0.3nmol/kg)、及び化合物2(配列番号225)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける食物摂取(図2A)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、化合物1(黒四角)、又は化合物2(黒丸)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図2B】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図2Bは、デュラグルチド、化合物1(GF1(配列番号113))(0.3nmol/kg)、及び化合物2(配列番号225)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける体重減少率(図2B)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、化合物1(黒四角)、又は化合物2(黒丸)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図3A】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図3Aは、デュラグルチド、化合物3(GF24(配列番号136))(0.3nmol/kg)、及び化合物4(配列番号229)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける食物摂取(図3A)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、化合物3(黒四角)、又は化合物4(黒丸)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図3B】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図3Bは、デュラグルチド、化合物3(GF24(配列番号136))(0.3nmol/kg)、及び化合物4(配列番号229)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける体重減少率(図3B)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、化合物3(黒四角)、又は化合物4(黒丸)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図4A】DIOマウスにおけるIPGTTを示す。図4Aは、0.3nmol/kg及び1.0nmol/kgのデュラグルチド、化合物4(配列番号229)、及び化合物2(配列番号225)で処理したDIOマウスにおける経時的なグルコースレベルのグラフを示す。ビヒクル(黒丸)、デュラグルチド(白/黒四角)、化合物4(白/黒三角)、又は化合物2(白/黒円、点線)を皮下注射することによってマウスに投与した。全ての化合物を0.3又は1.0nmol/kgで投与した。18時間の絶食後、腹腔内耐糖能試験(IGPTT)のために1g/kgデキストロースをマウスに投与した。
図4B】DIOマウスにおけるIPGTTを示す。図4Bは、0.3nmol/kg及び1.0nmol/kgのデュラグルチド、化合物4(配列番号229)、及び化合物2(配列番号225)で処理したDIOマウスにおけるベースラインに対する正味のAUCのグラフを示す。ビヒクル(黒丸)、デュラグルチド(白/黒四角)、化合物4(白/黒三角)、又は化合物2(白/黒円、点線)を皮下注射することによってマウスに投与した。全ての化合物を0.3又は1.0nmol/kgで投与した。18時間の絶食後、腹腔内耐糖能試験(IGPTT)のために1g/kgデキストロースをマウスに投与した。
図5A】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図5Aは、デュラグルチド、GF41(配列番号153)(0.3nmol/kg)、及びGF40(配列番号152)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける食物摂取(図5A)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、配列番号153(黒四角)、又は配列番号152(黒丸)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図5B】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図5Bは、デュラグルチド、GF41(配列番号153)(0.3nmol/kg)、及びGF40(配列番号152)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける体重減少率(図5B)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、配列番号153(黒四角)、又は配列番号152(黒丸)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図6A】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図6Aは、デュラグルチド及びGF19(配列番号131)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける食物摂取(図6A)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、又は配列番号131(黒四角)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図6B】DIOマウスにおける食物摂取及び体重の減少を示す。図6Bは、デュラグルチド及びGF19(配列番号131)(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける体重減少率(図6B)のグラフを示す。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、又は配列番号131(黒四角)を皮下注射することによってマウスに投与し、体重及び食物摂取を3日間記録した。
図7A】DIOマウスにおけるIPGTTを示す。図7Aは、0.3nmol/kgのデュラグルチド、化合物4(配列番号229)、及び化合物3(GF24(配列番号136))で処理したDIOマウスにおける経時的なグルコースレベルのグラフを示す。ビヒクル(黒丸)、デュラグルチド(白四角)、化合物4(白丸)、又は化合物3(黒四角、点線)を皮下注射することによってマウスに投与した。全ての化合物を0.3nmol/kgで投与した。18時間の絶食後、腹腔内耐糖能試験(IGPTT)のために1g/kgデキストロースをマウスに投与した。
図7B】DIOマウスにおけるIPGTTを示す。図7Bは、0.3nmol/kgのデュラグルチド、化合物4(配列番号229)、及び化合物3(GF24(配列番号136))で処理したDIOマウスにおけるベースラインに対する正味のAUCのグラフを示す。ビヒクル(黒丸)、デュラグルチド(白四角)、化合物4(白丸)、又は化合物3(黒四角、点線)を皮下注射することによってマウスに投与した。全ての化合物を0.3nmol/kgで投与した。18時間の絶食後、腹腔内耐糖能試験(IGPTT)のために1g/kgデキストロースをマウスに投与した。
図8A】DIOマウスにおける単回投与後の食物摂取及び体重変化に対する化合物4(配列番号229)又はデュラグルチドの曝露応答分析を示す。図8Aは、体重変化率(図8B)のグラフを示す。白四角は、デュラグルチドについて観察された個々のデータを表す。黒四角は、化合物4について観察された個々のデータを表す。曲線は、デュラグルチド(灰色曲線)及び化合物4(黒色曲線)についての曝露応答非線形回帰に基づく最良当てはめ曲線を表す。灰色の縦線は、全ての分析試験において、0.3nmol/kgのデュラグルチド平均(±標準偏差)3日目HGE濃度を表す:≒0.32(±0.15)nM。
図8B】DIOマウスにおける単回投与後の食物摂取及び体重変化に対する化合物4(配列番号229)又はデュラグルチドの曝露応答分析を示す。図8Bは、体重変化率(図8B)のグラフを示す。白四角は、デュラグルチドについて観察された個々のデータを表す。黒四角は、化合物4について観察された個々のデータを表す。曲線は、デュラグルチド(灰色曲線)及び化合物4(黒色曲線)についての曝露応答非線形回帰に基づく最良当てはめ曲線を表す。灰色の縦線は、全ての分析試験において、0.3nmol/kgのデュラグルチド平均(±標準偏差)3日目HGE濃度を表す:≒0.32(±0.15)nM。
図9A】反復(4、Q3D)皮下(SC)投与後9日目(投与前)及び12日目(投与前)における、過体重のカニクイザルにおけるカロリー摂取に対する影響について化合物4(黒色記号)又はデュラグルチド(白四角)の曝露応答分析を示す。活性GLP-1濃度を、リガンド結合アッセイ(LBA)(図9A)によって測定した。曲線は、デュラグルチド(灰色曲線)及び化合物4(黒色曲線)についての曝露応答非線形回帰に基づく最良当てはめ曲線を表す。0.0074mg/kgで投与された化合物4からのデータは、曝露応答分析には含めず、グラフにのみ含める。毎日のカロリー摂取変化率%をベースラインに対して計算し、これを-2~0日目の平均として定義した。
図9B】反復(4、Q3D)皮下(SC)投与後9日目(投与前)及び12日目(投与前)における、過体重のカニクイザルにおけるカロリー摂取に対する影響について化合物4(黒色記号)又はデュラグルチド(白四角)の曝露応答分析を示す。活性GLP-1濃度を、LC-MS/MS HEアッセイ(図9B)によって測定した。曲線は、デュラグルチド(灰色曲線)及び化合物4(黒色曲線)についての曝露応答非線形回帰に基づく最良当てはめ曲線を表す。0.0074mg/kgで投与された化合物4からのデータは、曝露応答分析には含めず、グラフにのみ含める。毎日のカロリー摂取変化率%をベースラインに対して計算し、これを-2~0日目の平均として定義した。
図10A】ビヒクル、デュラグルチド(0.3nmol/kg)、又は配列番号140(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける食物摂取(FI)(グラム)(図10A)を示す。試験の1日前にDIOマウスの体重を測定し、体重別にグループ分けした。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、又は配列番号140(黒四角)を皮下注射(2mL/kg)することによってマウスに投与し、BW及びFIを次の3日間記録した。
図10B】ビヒクル、デュラグルチド(0.3nmol/kg)、又は配列番号140(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける体重(BW)の変化%(図10B)を示す。試験の1日前にDIOマウスの体重を測定し、体重別にグループ分けした。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、又は配列番号140(黒四角)を皮下注射(2mL/kg)することによってマウスに投与し、BW及びFIを次の3日間記録した。
図11A】ビヒクル、デュラグルチド(0.3nmol/kg)、配列番号131(0.3nmol/kg)、又は配列番号251(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける食物摂取(FI)(グラム)(図11A)を示す。試験の1日前にDIOマウスの体重を測定し、体重別にグループ分けした。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、配列番号131(黒四角)、又は配列番号251(黒丸)を皮下注射(2mL/kg)することによってマウスに投与し、BW及びFIを次の3日間記録した。
図11B】ビヒクル、デュラグルチド(0.3nmol/kg)、配列番号131(0.3nmol/kg)、又は配列番号251(0.3nmol/kg)で処理したDIOマウスにおける体重(BW)の変化%(図11B)を示す。試験の1日前にDIOマウスの体重を測定し、体重別にグループ分けした。ビヒクル(白丸)、デュラグルチド(白四角)、配列番号131(黒四角)、又は配列番号251(黒丸)を皮下注射(2mL/kg)することによってマウスに投与し、BW及びFIを次の3日間記録した。
図12】GLP-1ペプチド(配列番号58)を異なる長さの第1のリンカーペプチド(N末端リンカーペプチド)と比較したヒトGLP-1R一次スクリーニングアッセイの結果を示すグラフを示す。最も長い第1のリンカーペプチド(配列番号67)(▼)を含有する配列番号171が最も強力であり、続いて、より短い第1のリンカーペプチドを有するGLP-1融合ペプチド、すなわち、第1のリンカーペプチド配列番号64を有する配列番号169(▲)及び第1のリンカーペプチド配列番号74を有する配列番号168(■)であった。GLPペプチドとヒンジ-Fcペプチドとの間に介在する第1のリンカーペプチドを有さない配列番号167(●)が、最も微力であった。GLP-1ペプチド(◆)をアッセイ対照として含めた。
【発明を実施するための形態】
【0043】
背景技術において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいかなる発明に対しても先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0044】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意すべきである。
【0046】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0047】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、直列の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した特定の実施形態に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0048】
本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」あるいはこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって充足される。
【0049】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、また機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外しないことを示すことも理解されたい。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0050】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、GLP-1ペプチド、リンカーペプチド、ヒンジ-Fc領域ペプチド、環状PYY3-36ペプチド配列)に関連する、「同一の」又は「同一性」パーセントという用語は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して又は本開示を考慮して当該技術分野において既知の方法を使用した目視検査によって測定したときに、比較し、一致が最大になるようにアラインメントした場合、同一であるか、又は指定の割合の同一であるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。
【0051】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブシーケンス座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0052】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(一般的に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)によって行うことができる。
【0053】
配列同一性パーセント及び配列類似性を求めるのに好適なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)及びAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)に記載されている。BLAST分析を行うソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。
【0054】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0055】
本明細書で使用される場合、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物」とは、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0056】
本発明の方法に関して用語「投与」は、本発明のコンジュゲート若しくは化合物、又はその形態、組成物、若しくは医薬を使用することにより、本明細書に記載の症候群、障害、又は疾患を治療的又は予防的に予防する、治療する、又は寛解させる方法を意味する。このような方法は、有効量の当該コンジュゲート、化合物、その形態、組成物、若しくは医薬を、組み合わせ形態で、治療過程における異なる時点で又は同時に投与することを含む。本発明の方法は、既知の治療的処置レジメンを全て包含するものとして理解されるものである。
【0057】
用語「有効量」は、研究者、獣医師、医師、又はその他の臨床医が探求している生物学的又は医学的反応を組織系、動物、又はヒトにおいて惹起する(治療される症候群、障害若しくは疾患、又は、治療される症候群、障害若しくは疾患の症状を予防する、治療する、又は寛解させることを含む)活性コンジュゲート、化合物、又は薬剤の量を意味する。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに、直接的又は間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物を包含するものとする。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「共役/結合した」は、2つ以上の物体を一緒に接合又は接続することを指す。化学化合物又は生物学的化合物を指す場合、共役/結合したとは、2つ以上の化学化合物又は生物学的化合物間の共有結合による接続を指し得る。非限定的な例として、本発明のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)融合ペプチドを目的の環状PYYペプチドと結合させて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを形成することができる。特定の実施形態では、本発明のGLP-1融合ペプチドは、少なくとも1つのリンカーを通して本発明の環状PYYペプチドと共有結合で結合され得る。GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートは、GLP-1融合ペプチドを環状PYYペプチドにコンジュゲートさせるように設計された特定の化学反応を通して形成され得る。例として、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートは、コンジュゲーション反応を通して形成することができる。コンジュゲーション反応は、例えば、求電子基(例えば、ブロモアセトアミド又はマレイミド)を、目的のペプチド(例えば、GLP-1融合ペプチド)におけるシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させることを含み得る。求電子基は、例えば、環状PYYペプチドのアミノ酸残基の側鎖に導入することができる。求電子基とスルフヒドリル基との反応により、共有チオエーテル結合が形成される。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチドリンカー」又は「リンカーペプチド」は、GLP-1ペプチドをヒンジ-Fc領域ペプチドに連結させるか、又はヒンジ-Fc領域ペプチドを環状PYYペプチドに連結させて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを形成する、1つ又は2つ以上のアミノ酸を含有する化学モジュールを指す。GLP-1融合ペプチドは、例えば、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドを含み得る。
【0061】
本明細書で使用するとき、用語「化学リンカー」は、環状PYYペプチドをGLP-1融合ペプチドに連結させるアミノ酸を全く含有しない化学モジュールを指す。特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、化学リンカーを含む。環状PYYペプチドのための化学リンカーとしては、例えば、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、アシル基を含有するリンカー、PEG及び埋め込まれた複素環からなるハイブリッドリンカー、並びに炭化水素鎖を挙げることができるが、これらに限定されない。化学リンカーは、例えば、まず環状PYYペプチドに共有結合で接続させ、次いで、GLP-1融合ペプチド、好ましくはGLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドに共有結合で接続させてよい。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「コンジュゲート」は、別の薬学的活性部分(例えば、環状PYYペプチド)に共有結合で結合したペプチド(例えば、GLP-1融合ペプチド)を指す。「コンジュゲートされる」という用語は、本発明のペプチドが、直接的に又はリンカーを介して間接的に、別の薬学的活性部分、好ましくは治療用ペプチドに共有結合で連結される又は共有結合で接続されることを指す。非限定的な例として、ペプチドは、本発明のGLP-1融合ペプチドであってよく、他の薬学的活性部分は、目的の環状PYYペプチドなどの治療用ペプチドであってよい。
【0063】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0064】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)融合ペプチド
全般的な一態様では、本発明は、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドに関する。GLP-1融合ペプチドは、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド、第1のリンカーペプチド(例えば、アミノ(N)-末端リンカー)、ヒンジ-Fc領域ペプチド、及び第2のリンカーペプチド(例えば、カルボキシ(C)-末端リンカー)を含む。
【0065】
グルカゴン様ペプチド-1又はGLP-1変異体ペプチド
グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)は、腸内で合成され、食物摂取に応答して放出されるインスリン分泌促進物質である。それは、主に、GLP-1-(7-37)及びGLP-1-(7-36)NHの2つの形態で分泌され、これらはいずれも膵臓β細胞上の特異的GLP-1受容体(GLP-1R)に結合し、グルコース刺激インスリン分泌を増強する。
【0066】
多くのGLP-1アナログ及び誘導体が既知であり、本明細書では「GLP-1変異体」と呼ぶ場合がある。これらのGLP-1変異体ペプチドは、アメリカドクトカゲの毒にみられるペプチドであるエキセンディンを含み得る。これらのエキセンディンは、天然のGLP-1との配列相同性を有しており、GLP-1受容体に結合し、GLP-1(7-37)に起因する活性に対するシグナル伝達カスケード応答を開始させることができる。
【0067】
GLP-1及びGLP-1変異体ペプチドは、様々な方法で作用することが示されており、これには、インスリン放出の刺激、グルカゴン分泌の低下、胃排出の阻害、及びグルコース利用の増強を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
GLP-1Rは、7回膜貫通ヘテロ三量体Gタンパク質共役受容体のクラスBファミリーに属し、膵島のα-、β-、及びδ-細胞、心臓、腎臓、胃、腸、迷走神経の神経節神経、並びに視床下部及び脳幹を含む中枢神経系(CNS)のいくつかの領域を含むがこれらに限定されない広範囲の組織で発現する。GLP-1Rは、細胞内カルシウム、アデニル酸シクラーゼ、及びホスホリパーゼCを増加させ、PKA、PKC、PI-3K、Epac2、及びMAPKシグナル伝達経路を活性化させるGα、Gα、Gα、及びGα(Montrose-Rafizadeh et al.,Endocrinology 140:1132-40(1999);Hallbrink et al.,Biochim Biophys Acta 1546:79-86(2001))に結合し得る(Drucker et al.,PNAS 84:3434-8(1987);Wheeler et al.,Endrocrinology 133:57-62(1993);及びHolz et al.,JBC 270:17749-57(1995))。
【0069】
第1の構成要素を含むGLP-1融合ペプチドであって、当該第1の構成要素がGLP-1又はGLP-1変異体ペプチドである、融合ペプチドが本明細書に提供される。本明細書で使用するとき、用語「GLP-1ペプチド」、「GLP-1変異体ペプチド」、「GLP-1ペプチド変異体」、及び「GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド」は互換的に使用される。GLP-1又はGLP-1変異体ペプチドは、表1に提供される配列のうちの1つを含み得る。GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド配列は、以下の基準:(i)発現収率、(ii)インビトロ安定性、(iii)インビトロ効力、(iv)環状PYYペプチドとの化学コンジュゲーション後のインビトロ効力の保持、(v)セリンキシロシル化又はセリンキシロシル化の可能性の欠如、及び(vi)GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの特性(例えば、インビボ安定性及びインビボ効力(すなわち、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド及び環状PYYペプチドが、それぞれ、GLP-1及びY2受容体に対するアゴニスト活性を有することができるかどうか))のうちの少なくとも1つに基づいて選択してよい。
【0070】
GLP-1融合ペプチドの第1の構成要素を構成するGLP-1又はGLP-1変異体ペプチドは、天然のGLP-1に十分な相同性及び機能性を有するペプチドを包含することが意図される。GLP-1又はGLP-1変異体ペプチドは、膵臓のβ-細胞においてGLP-1受容体に結合することができるように設計され、その結果、天然のGLP-1が膵臓のβ-細胞上のGLP-1受容体に結合したときと同じシグナル伝達経路が生じ、同じ又は類似のインスリン分泌活性を呈する。
【0071】
【表1】
【0072】
第1のリンカーペプチド:アミノ末端リンカー(N末端リンカー)
第2の構成要素を含むGLP-1融合ペプチドであって、当該第2の構成要素が第1のリンカーペプチド(すなわち、アミノ末端リンカーペプチド)である、融合ペプチドが、本明細書に提供される。第1のリンカーペプチドは、表2に提供される配列のうちの1つを含み得る。第1のリンカーペプチド配列は、以下の基準:(i)発現収率、(ii)インビトロ効力、(iii)インビトロ安定性、(iv)セリンキシロシル化又はセリンキシロシル化の可能性の欠如、及び(v)GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの特性(例えば、インビボ安定性及びインビボ効力(すなわち、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド及び環状PYYペプチドが、それぞれ、GLP-1及びY2受容体に対するアゴニスト活性を有することができるかどうか))のうちの少なくとも1つに基づいて選択してよい。
【0073】
特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、第1のリンカーペプチドである第2の構成要素を含まない。
【0074】
【表2】
【0075】
ヒンジ-Fc領域ペプチド
特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、第3の構成要素を含み、当該第3の構成要素は、ヒンジ-Fc領域ペプチドである。ヒンジ-Fc領域ペプチドは、FcRn受容体の再生に加えて、分子量の増加及び糸球体濾過の減少によって治療用ペプチドの循環半減期をより長くすることができる。特定の実施形態では、ヒンジ-Fc領域ペプチドは、ヒトIgG4 Fc領域に由来していてよい。ヒトIgG4 Fc領域は、他のIgGサブタイプと比較して、FcγR及び補体因子に結合する能力が低減されている。好ましくは、Fc領域は、エフェクター機能を排除する置換を有するヒトIgG4 Fc領域を含有する。したがって、GLP-1融合ペプチドは、以下の置換のうちの1つ又は2つ以上を含有する修飾されたヒトIgG4 Fc領域を有するFc領域を更に含む:残基233におけるグルタミン酸の代わりにプロリンを使用、残基234におけるフェニルアラニンの代わりにアラニン又はバリンを使用、及び残基235におけるロイシンの代わりにアラニン又はグルタミン酸を使用(EU番号付け、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.U.S.Dept.of Health and Human Services,Bethesda,Md.,NIH Publication no.91-3242(1991))。残基297(EU番号付け)においてAsnの代わりにAlaを使用することによって、IgG4 Fc領域におけるN連結グリコシル化部位を除去することは、残留エフェクター活性が排除されることを確実にする別の方法である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明のGLP-1融合ペプチドは、単量体又は二量体として存在する。好ましい実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、二量体として存在する。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは二量体として存在し、当該二量体はホモ二量体である、すなわち、当該二量体は、同じ配列を有する2つのGLP-1融合ペプチドを含む。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは二量体として存在し、当該二量体はヘテロ二量体である、すなわち、当該二量体は、異なる配列を有する2つのGLP-1融合ペプチドを含む。
【0077】
好ましくは、本発明のGLP-1融合ペプチドは、ジスルフィド結合及び様々な非共有結合相互作用によって互いに接合された二量体として存在する。したがって、本発明の抗体に有用なFc部分は、重鎖二量体形成を安定させ、半IgG4 Fc鎖の形成を防止する、228(EU番号付け)における位置でのプロリンに対するセリンなどの置換を含有するヒトIgG4 Fc領域であり得る。特定の実施形態では、ヒンジジスルフィドのN末端にアミノ酸の天然の配列が含まれ得る。ヒトIgG4のx線結晶構造は、これらのアミノ酸が、空間内において上流構造を逆の配向にする傾向のある構造を形成し得ることを示唆している。このような傾向は、GLP-1融合ペプチドなどの上流エレメントの空間的分離を維持するのに有利である。他の実施形態では、ヒンジジスルフィドのN末端の天然のアミノ酸を省略してもよい。
【0078】
特定の実施形態では、ヒトPAA Fcに融合しているハイブリッドヒトIgG2aヒンジを使用して、GLP-1融合ペプチドの効力及び安定性に対する影響を調べた。
【0079】
別の実施形態では、重鎖のC末端Lys残基は、組換えにより生成されたモノクローナル抗体に一般的に見られるように除去される。
【0080】
ヒンジ-Fc領域ペプチドは、表3に提供される配列のうちの1つを含み得る。ヒンジ-Fc領域ペプチド配列は、以下の基準:(i)インビトロ安定性、(ii)インビトロ効力、(iii)GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの特性(例えば、インビボ安定性及びインビボ効力(すなわち、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド及び環状PYYペプチドが、それぞれ、GLP-1及びY2受容体に対するアゴニスト活性を有することができるかどうか))のうちの少なくとも1つに基づいて選択してよい。
【0081】
【表3】
【0082】
ヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドであって、ヒンジ-Fc領域ペプチドと、当該ヒンジ-Fc領域ペプチドのアミノ末端に接続された第1のリンカーペプチド及び当該ヒンジ-Fc領域ペプチドのカルボキシ末端に接続された第2のリンカーペプチドのうちの少なくとも1つと、を含むヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドが、本明細書に提供される。ヒンジ-Fc領域ペプチドは、例えば、配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列であってよく、第1のリンカーペプチドは、例えば、配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列であってよく、第2のリンカーペプチドは、例えば、配列番号91~112からなる群から選択されるアミノ酸配列であってよい。特定の実施形態では、ヒンジ-Fc領域ペプチドは、配列番号84を含み、第1のリンカーペプチドは、配列番号60を含む。特定の実施形態では、ヒンジ-Fc領域ペプチドは、配列番号84を含み、第2のリンカーペプチドは、配列番号93、94、95、106、又は111を含む。特定の実施形態では、ヒンジ-Fc領域ペプチドは、配列番号84を含み、第1のリンカーペプチドは、配列番号60を含み、第2のリンカーペプチドは、配列番号93、94、95、106、又は111を含む。
【0083】
第2のリンカーペプチド:カルボキシ末端リンカー(C末端リンカー)
第4の構成要素を含むGLP-1融合ペプチドであって、当該第4の構成要素が第2のリンカーペプチド(すなわち、カルボキシ末端リンカーペプチド)である、融合ペプチドが、本明細書に提供される。第2のリンカーペプチドは、表4に提供される配列のうちの1つを含み得る。第2のリンカーペプチド配列は、以下の基準:(i)発現収率、(ii)インビトロ効力、(iii)インビトロ安定性、(iv)セリンキシロシル化又はセリンキシロシル化の可能性の欠如、(v)コンジュゲーション収率、及び(vi)GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの特性(例えば、インビボ安定性及びインビボ効力(すなわち、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド及び環状PYYペプチドが、それぞれ、GLP-1及びY2受容体に対するアゴニスト活性を有することができるかどうか))のうちの少なくとも1つに基づいて選択してよい。
【0084】
加えて、第2のリンカーペプチド配列は、環状PYYペプチドに特異的で有効にコンジュゲートする能力に基づいて選択してよい。この文脈において、特異性とは、融合タンパク質の任意の他の部分におけるコンジュゲーションよりも、第2のリンカーのC末端領域における遺伝子操作を受けたシステイン残基において優先的にコンジュゲートすることを指す。特異性を最大化するストラテジーの例としては、(i)スルフヒドリル側鎖の求核性を増大させ、その反応性を強化するために、遺伝子操作を受けたシステイン残基に隣接するアミノ酸を導入すること、(ii)チオール-求電子性コンジュゲーションにおける選択性の強化が既に実証されているアミノ酸配列に、遺伝子操作を受けたシステイン残基を含めること、及び(iii)コンジュゲーションのための反応性チオールを特異的に遊離させるために、カチオン性又はアニオン性ジスルフィド還元剤をそれぞれ静電的に誘引するアニオン性又はカチオン性側鎖を有するアミノ酸を組み込むことが挙げられる。コンジュゲーション効率を最大化するストラテジーの例としては、(i)第2のリンカーペプチドの相互静電反発力を生じさせるために、第2のリンカーペプチドの任意の部分に、アニオン性又はカチオン性のいずれかの同電荷を導入し、それによって、遺伝子操作を受けたシステイン残基間のジスルフィド形成を低減すること、(ii)リンカーの剛性を強化するアミノ酸を組み込むこと、(iii)リンカーの柔軟性を増大させるアミノ酸を組み込むこと、及び(iv)静電的に環状PYYペプチドを効率的にコンジュゲートさせるアニオン性又はカチオン性側鎖を有するアミノ酸を組み込むことが挙げられる。
【0085】
【表4】
【0086】
GLP-1融合ペプチド
上記のように第1、第2、第3、及び第4の構成要素を含むGLP-1融合ペプチドであって、当該第2の構成要素が任意選択で、存在していなくてもよい、GLP-1融合ペプチドが本明細書に提供される。第1の構成要素は、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチドであり、第2の構成要素は、第1のリンカーペプチドであり、第3の構成要素は、ヒンジ-Fc領域ペプチドであり、第4の構成要素は、第2のリンカーペプチドである。GLP-1融合ペプチドは、表5に提供される配列のうちの1つを含み得る。GLP-1融合ペプチド配列は、以下の基準:(i)発現収率、(ii)インビトロ効力、(iii)インビトロ安定性、(iv)セリンキシロシル化の欠如、(v)コンジュゲーション収率、及び(vi)GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの特性(例えば、インビボ安定性及びインビボ効力(すなわち、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド及び環状PYYペプチドが、それぞれ、GLP-1及びY2受容体に対するアゴニスト活性を有することができるかどうか))のうちの少なくとも1つに基づいて選択してよい。
【0087】
【表5-1】
【0088】
【表5-2】
【0089】
【表5-3】
【0090】
【表5-4】
【0091】
【表5-5】
【0092】
【表5-6】
【0093】
【表5-7】
【0094】
【表5-8】
【0095】
【表5-9】
【0096】
【表5-10】
【0097】
【表5-11】
【0098】
【表5-12】
【0099】
環状PYYペプチド
PYY3-36は、食物摂取を阻害するためにY2受容体のアゴニストとして作用する、遠位腸内のL細胞によって分泌される内因性ホルモンである。食欲及び食物摂取の制御におけるその役割、並びに哺乳動物の胃腸管におけるその抗分泌及び吸収促進効果を考慮すると、PYY3-36は、肥満及び関連病態、並びに多くの胃腸障害の治療に有効であり得る。しかしながら、PYY3-36自体の治療剤としての治療的有用性は、その迅速な代謝及び短い循環半減期によって制限される。したがって、本発明は、概して、PYY3-36ペプチドの半減期を延長し、インビボでのペプチドの代謝を低減する、修飾されたPYY3-36コンジュゲートを目的とする。
【0100】
本発明の特定の実施形態では、修飾されたPYY3-36ペプチドは、環状PYYペプチドである。「環状PYYペプチド」、「環状PYY3-36アナログ」、及び「環状PYY3-36ペプチドアナログ」という用語は、互換的に使用され得る。本発明のコンジュゲートにおいて使用することができる環状PYYペプチドの例は、2017年10月26日に出願された米国特許出願第15/794,231号及び2017年10月26日に出願された米国特許出願第15/794,171号に記載されており、両出願の内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「NTSC-PYY」という用語は、PYYのN末端~側鎖環状アナログを説明することを意図している。
【0102】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。本発明の分子を説明する際の便宜上、様々なアミノ酸の従来の及び非従来的な略語(単一及び3文字コードの両方)及び機能部分が使用される。これらの略語は当業者にはよく知られているが、明確にするために、以下に列記する:A=Ala=アラニン;R=Arg=アルギニン;N=Asn=アスパラギン;D=Asp=アスパラギン酸;βA=βAla=ベータ-アラニン;C=Cys=システイン;hC=hCys=ホモシステイン;E=Glu=グルタミン酸;Q=Gln=グルタミン;G=Gly=グリシン;H=His=ヒスチジン;I=Ile=イソロイシン;L=Leu=ロイシン;K=Lys=リシン;Nle=ノルロイシン;F=Phe=フェニルアラニン;P=Pro=プロリン;S=Ser=セリン;T=Thr=スレオニン;W=Trp=トリプトファン;Y=Tyr=チロシン、及びV=Val=バリン。
【0103】
便宜上、本発明のNTSC-PYYペプチドを命名する際に使用されるアミノ酸残基の番号付け規則は、hPYY3-36のものに従う。hPYY3-36の対応する位置における天然の残基に対して、NTSC-PYYペプチドに導入された特定のアミノ酸置換は、適切なアミノ酸コードと、それに続く置換の位置とによって示される。したがって、NTSC-PYYペプチドにおける「S4」は、hPYY3-36の対応する天然のlys4残基がセリンに置換されているペプチドを指す。同様に、NTSC-PYYペプチドにおける「hC31」は、hPYY3-36の対応する天然のval31残基がホモシステインに置換されているペプチドを指す。NTSC-PYYペプチド内で生じる更なるアミノ酸置換は、この規則に従って記載され、当業者によってこのようなものとして認識されるであろう。
【0104】
また便宜上、本発明のNTSC-PYYペプチドに使用される命名法は、環(cycle)に含まれるN末端残基から出発して、左から右方向に、それらの間の連結基と共に環に含まれるアミノ酸残基を組み込む。全ての場合において、環のN末端アミノ酸残基は、そのα-アミノ官能基を介して連結基に連結し、これは次に、NTSC-PYYペプチドの31位のアミノ酸の側鎖残基に接続する。したがって、「シクロ-(I3-m-COPhCH-hC31)」は、Ile3のα-アミノ官能基がメタ-トルイル酸残基でアシル化され、そのメチル基が、チオエーテル結合を介してhCys31残基の側鎖に更に連結されている、NTSC-PYYペプチドの環を説明するために使用される。同様に、「シクロ-(K4-CO(CHNHCOCH-hC31)」は、天然のIle3残基が欠失しており、そのlys4の(ここではN末端の)α-アミノ官能基が3-アセトアミドプロパノイル基によりアシル化され、そのアセトアミドメチレン炭素が、チオエーテル結合を介してhCys31残基の側鎖に接続されている、NTSC-PYYペプチドの環を説明するために使用される。
【0105】
更なる誘導体化のために便利な機能性ハンドルを提供するために、hPYY3-36配列の様々な位置にリシン残基を組み込んでよい。間接的にGLP-1融合ペプチドに結合されるように、リシン残基を修飾してよい。GLP-1融合ペプチドへの間接的共役において、環状PYYペプチドをGLP-1融合ペプチドに結合させる化学リンカーを含むように、リシン残基を修飾してよい。当業者であれば、関連するオルソロガスもそのように効果的に使用することができ、本明細書において企図されることを認識するであろう。
【0106】
「K(PEG24-AcBr)」という用語は、その側鎖ε-アミノ基が、その1-カルボン酸官能基を介して、N-ブロモアセチル-75-アミノ-4,7,10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46,49,52,55,58,61,64,67,70,73-テトラコサオキサペンタヘプタコンタン酸によってアシル化されているリシニル残基を表す。
【0107】
「K(PEG12-AcBr)」という用語は、その側鎖ε-アミノ基が、その1-カルボン酸官能基を介して、N-ブロモアセチル-39-アミノ-4,7,10,13,16,19,22,25,28,31,34,37-ドデカオキサノナトリアコンタン酸によってアシル化されているリシニル残基を表す。
【0108】
「K(PEG6-AcBr)」という用語は、その側鎖ε-アミノ基が、その1-カルボン酸官能基を介して、N-ブロモアセチル-3-[(17-アミノ-3,6,9,12,15-ペンタオキサヘプタデカ-1-イル)オキシ]-プロパン酸によってアシル化されているリシニル残基を表す。
【0109】
「K(PEG8-トリアゾリル-CHCHCO-PEG4-AcBr)」という用語は、その側鎖ε-アミノ基が、その1-カルボン酸官能基を介して、27-[4-[2-[3-[2-[2-[3-(N-ブロモアセチルアミノ)プロポキシ]エトキシ]エトキシ]プロピルアミノカルボニル]エチル]テトラゾール-1-イル]-4,7,10,13,16,19,22,25-オクタオキサヘプタコサン酸によってアシル化されているリシニル残基を表す。
【0110】
本発明の化合物/コンジュゲートの多くは、配列のC末端残基と、Y36と、その隣接する残基R35との間に還元アミド結合を組み込む。この還元アミド連結は、「psi-(R35,Y36)」という用語により表される。
【0111】
本発明の特定の配列を含む様々なアミノ酸残基は、メチル化されているα-アミノ基を含む。したがって、「N-Me-Q34」又は「N-Me-R35」という用語は、それぞれ、配列の34位におけるα-N-メチル化グルタミン及び配列の35位におけるα-N-メチル化アルギニンを表す。
【0112】
配列の説明において「N-Me-Q34,psi-(R35,Y36)」という用語は、34位におけるα-メチルグルタミン残基、並びに残基R35とY36との間の還元アミド結合の両方を含む配列を指す。
【0113】
同様に、配列の説明において「N-Me-R35,psi-(R35,Y36)」という用語は、35位におけるα-メチルアルギニン残基、並びにこの残基とY36との間の還元アミド結合の両方を含む配列を指す。
【0114】
環状PYYペプチドの例を表6に提供する。
【0115】
【表6-1】
【0116】
【表6-2】
【0117】
本明細書において、ヒトPYY3-36(hPYY3-36)に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を示す、N末端~PYYの側鎖環状アナログも提供する。2つのアナログ間の配列同一性を求める方法の例として、2つのペプチド
【0118】
【化13】
(配列番号1)とhPYY3-36
【0119】
【化14】
(配列番号55)とをアラインメントする。hPYY(3-36)に対するアナログの配列同一性は、アラインメントされた残基の総数から異なる残基の数を減じて(すなわち、アラインメントされた同一残基の数)、hPYY3-36における残基の総数で除することによって求められる。この例では、異なる残基は、置換K11と交換されたD11であり、その後hC31と交換されたV31、そして最後に脱カルボニル化されたR35が続く。したがって、この例では、配列同一性は、(34-3)/34×100である。
【0120】
コンジュゲート
別の全般的な態様では、本発明は、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドが、GLP-1又はGLP-1変異体ペプチド又は環状PYYペプチド単独と比較して延長された/増加した半減期を有するように、部位特異的に環状PYYペプチドに共有結合でコンジュゲートされた本発明のGLP-1融合ペプチドを含むコンジュゲートに関する。本発明はまた、医薬組成物及びその使用方法に関する。このコンジュゲートは、とりわけ、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、耐糖能障害)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/若しくは脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに湿疹などの疾患又は障害を予防する、治療する又は緩解させるのに有用である。
【0121】
特定の実施形態では、本発明のGLP-1融合ペプチドは、環状PYYペプチドにコンジュゲートすることができる少なくとも1つのシステイン残基を含む。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、配列番号113~224及び267~274からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、GLP-1融合体は、配列番号113又は136から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのシステイン残基は、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドに含まれる。特定の実施形態では、システイン残基は、配列番号113又は配列番号136のGLP-1融合ペプチドの残基287と289との間に位置し、好ましくは、システイン残基は、GLP-1融合体の残基288に位置する。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、環状PYYペプチドの残基7、9、11、22、又は23におけるリシン残基、好ましくはリシン残基11に共有結合で連結している。特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、環状PYYペプチドに直接、又は環状PYYペプチド上の化学リンカーを介して環状PYYペプチドに間接的に共有結合で連結している。
【0122】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、化学リンカーを含み得る。化学リンカーは、GLP-1融合ペプチドを環状PYY化学リンカーにコンジュゲートさせるために、化学的に修飾されてもよい(例えば、求電子性基をリンカーに付加してもよい)。化学リンカーとしては、例えば、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、アシル基を含有するリンカー、PEG及び埋め込まれた複素環からなるハイブリッドリンカー、又は炭化水素鎖を挙げることができるが、これらに限定されない。PEGリンカーは、例えば、2~24のPEG単位を含み得る。
【0123】
本発明のGLP-1融合ペプチドを本発明の環状PYYペプチドとコンジュゲートさせる方法は、当該技術分野において既知である。簡潔に述べると、本発明のGLP-1融合ペプチドを還元剤(例えば、1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA))で還元し、(例えば、脱塩クロマトグラフィによって)精製し、(例えば、コンジュゲーションを可能にする条件下で還元GLP-1融合ペプチドを提供することによって)環状PYYペプチドとコンジュゲートさせることができる。コンジュゲーション反応中、環状PYYペプチドの求電子性脱離基が置換され、GLP-1融合ペプチドと環状PYYペプチドとの間に共有結合が形成されて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートが形成される。コンジュゲーション反応後、コンジュゲートは、イオン交換クロマトグラフィ又は疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって、タンパク質A吸着の最終精製工程により精製することができる。特定の実施形態では、本発明のGLP-1融合ペプチドは、HIC方法を利用して還元前に精製することができる。コンジュゲーション方法のより詳細な説明については、例えば、実施例2を参照されたい。
【0124】
環状PYYペプチドに結合したグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)-融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、当該GLP-1融合ペプチドが、GLP-1ペプチド、第1のリンカーペプチド、ヒンジ-Fc領域ペプチド、及び第2のリンカーペプチドを含み、当該第1のリンカーが、任意選択で、存在しないコンジュゲートが本明細書に提供される。
【0125】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり:
【0126】
【化15】
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、
は、G又はKであり、
11は、D又はKであり、
22は、A又はKであり、
23は、S又はKであり、
26は、A又はHであり、
30は、L、W、存在せず、
(但し、Z30は、qが1である場合にのみ存在しない。)、
34は、
【0127】
【化16】
であり、
35は、
【0128】
【化17】
であり、
当該誘導体は、アミド化、アシル化、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は2つ以上のプロセスによって修飾された式Iの化合物である。
【0129】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0130】
【化18】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
は、G又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0131】
【化19】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
11は、D又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0132】
【化20】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHI、-C(O)CHCl、又は-C(O)CHBrで置換され、
22は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0133】
【化21】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
23は、S又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0134】
【化22】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
26は、A又はHであり、
30は、L、W、存在せず、
(但し、Z30は、qが1である場合にのみ存在しない。)、
34は、
【0135】
【化23】
であり、
35は、
【0136】
【化24】
であり、
Xは、求電子基であり、X求電子基のBr、Cl、又はIは、コンジュゲーション反応において置換されて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを形成する。
【0137】
特定の実施形態では、環状PYYペプチドは、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、又は5であり、
nは、1、2、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が不在の場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
【0138】
【化25】
で置換され、
は、G又はKであり、
11は、D又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0139】
【化26】
-C(O)CHBr、で置換され、
又は
22は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
【0140】
【化27】
で置換され、
23は、S又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
【0141】
【化28】
で置換され、
26は、A又はHであり、
30は、Lであり、
34は、
【0142】
【化29】
であり、
35は、
【0143】
【化30】
であり、
Brは、コンジュゲーション反応において置換されて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを形成する。
【0144】
特定の実施形態では、コンジュゲートは、環状PYYペプチドにコンジュゲートしているGLP-1融合ペプチドを含み、当該環状PYYペプチドは、配列番号1~54からなる群から選択される。好ましい実施形態では、コンジュゲートは、環状PYYペプチドにコンジュゲートしているGLP-1融合ペプチドを含み、当該環状PYYペプチドは、配列番号24、25、27、28、29、30、33、又は34から選択される。
【0145】
特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドは、リシン残基上の化学リンカーを介して環状PYYペプチドのリシン残基において当該環状PYYペプチドに共有結合で連結している。化学リンカーは、例えば、C(O)CH2、ポリエチレングリコール(PEG)8-トリアゾリル-CH2CH2CO-PEG4、2~24個のPEG単位のPEG鎖、アシル基を含有するリンカー、又は2~10個の炭素原子を含有するアルキル鎖から選択されるリンカーを含み得る。
【0146】
本発明の実施形態によるGLP-1融合ペプチドは、当該技術分野において既知の方法を使用して、環状PYYペプチドのアミノ酸残基4、7、9、10、11、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、30、又は31などの、環状PYYペプチドの1つ又は2つ以上のアミノ酸位置で環状PYYペプチドにコンジュゲートされ得る。アミノ酸残基の番号付けは、hPYY3-36のものに従う。特定の実施形態では、式I中のZ、Z、Z11、Z22、及びZ23のうちの1つだけがリシンであり、当該リシンは、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドにおけるシステイン残基に共有結合で連結している。好ましい実施形態では、本発明の実施形態によるGLP-1融合ペプチドは、環状PYYペプチドの残基11において環状PYYペプチドにコンジュゲートされ、残基11はリシンである。別の好ましい実施形態では、ブロモアセトアミド又はマレイミドなどの求電子剤は、環状PYYペプチドの残基11におけるリシンのアミノ側鎖などの環状PYYペプチドの側鎖に導入され、当該求電子剤の反応部位が、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基と特異的に反応し、好ましくは、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドは、配列番号93、94、95、106、又は111であり、それにより、環状PYYペプチドとGLP-1融合ペプチドとの間に共有結合性連結が生じる。より好ましくは、環状PYYペプチドは、配列番号24、25、27、28、29、30、33、又は34から選択される。一実施形態では、求電子剤は、環状PYYの側鎖上に直接導入される。別の実施形態では、求電子剤は、化学リンカーを介して間接的に環状PYYの側鎖に導入される。
【0147】
特定の実施形態では、GLP-1融合ペプチドの第2のリンカーペプチドのシステイン残基は、GLP-1融合ペプチドを過剰なアザホスフィン還元剤と接触させることによって還元され、それにより、還元されたシステイン残基が求電子剤と反応する。アザホスフィン還元剤は、1,3,5-トリアザ-7-ホスファトリシクロ[3.3.1.1]デカン(PTA)又はその誘導体である。
【0148】
また、本発明のコンジュゲートを含み、薬学的に許容される担体を更に含む、医薬組成物も提供される。
【0149】
GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの非限定例を表7に提供する。
【0150】
【表7】
【0151】
半減期延長部分
GLP-1融合ペプチドに加えて、本発明のコンジュゲートは、例えば共有結合性相互作用を介して、薬学的活性部分(例えば、環状PYYペプチド)の半減期を延長するための1つ又は2つ以上の他の部分を組み込んでもよい。例示的な他の半減期延長部分としては、アルブミン、アルブミン変異体、アルブミン結合タンパク質、及び/又はドメイン、トランスフェリン、並びにそれらの断片及びアナログが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のコンジュゲートに組み込むことができる更なる半減期延長部分としては、例えば、所望の特性のための、PEG5000又はPEG20,000などのポリエチレングリコール(PEG)分子、ポリリシン、オクタン、炭水化物(デキストラン、セルロース、オリゴ糖、又は多糖類)が挙げられる。これらの部分は、タンパク質足場コード配列との直接融合体であってもよく、標準的なクローニング及び発現技術によって生成されてもよい。あるいは、周知の化学結合方法を用いて、組換えにより及び化学的に生成された本発明のコンジュゲートにその部分を結合させることができる。
【0152】
周知の方法を用いて、システイン残基を分子のC-末端に組み込み、PEG基をシステインに結合させることによって、PEG部分を、例えば、本発明のペプチド分子に付加してもよい。
【0153】
更なる部分を組み込んだ本発明のペプチド分子を、いくつかの周知のアッセイによって、官能性について比較することができる。例えば、目的の治療用ペプチドの生物学的又は薬物動態的活性は、単独で又は本発明によるコンジュゲートにおいて、既知のインビトロ又はインビボアッセイを使用してアッセイし、比較することができる。
【0154】
医薬組成物
別の全般的な態様では、本発明は、本発明のコンジュゲート及び化合物、並びに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される担体と一緒に本発明のコンジュゲートを含む生成物を意味する。本発明のコンジュゲート及び化合物、並びにそれらを含む組成物は、本明細書で言及される治療用途のための薬剤の製造にも有用である。
【0155】
本明細書で使用するとき、用語「担体」は、あらゆる賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、バッファー、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソーム封入体、又は医薬製剤で使用するための技術分野では公知の他の材料を指す。担体、賦形剤又は希釈剤の特性は、特定の用途の投与経路によって決まる点は理解されよう。本明細書で使用するころの「医薬上許容できる担体」という用語は、本発明による組成物の効果又は本発明による組成物の生物活性を妨げない無毒性材料を指す。特定の実施形態によれば、本開示を考慮して、コンジュゲートされたペプチド医薬組成物での使用に好適ないずれの薬学的に許容される担体を本発明で使用してもよい。
【0156】
本発明において使用するための薬学的に許容される酸性/アニオン性の塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グリセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、及びトリエチオジドが挙げられるが、これらに限定されない。また、有機酸又は無機酸としては、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、シュウ酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サッカリン酸又はトリフルオロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
薬学的に許容され得る塩基性/カチオン性の塩としては、アルミニウム、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トロメタン、又は「TRIS」としても知られる)、アンモニア、ベンザチン、t-ブチルアミン、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、シクロへキシルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リチウム、L-リシン、マグネシウム、メグルミン、N-メチル-D-グルカミン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、ナトリウム、トリエタノールアミン、又は亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態では、約0.001mg/mL~約100mg/mL、約0.01mg/mL~約50mg/mL、又は約0.1mg/mL~約25mg/mLの量で本発明のコンジュゲートを含む医薬製剤が提供される。医薬製剤は、約3.0~約10、例えば、約3~約7、又は約5~約9のpHを有し得る。製剤は、緩衝系、防腐剤、等張化剤、キレート剤、安定化剤、及び界面活性剤から選択される少なくとも1つの成分を更に含み得る。
【0159】
薬学的に許容可能な担体を有する薬学的活性成分の製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば21st edition(2005)及びそれ以降の任意の改訂版)にあるように、当該技術分野において既知である。追加成分の非限定的な例としては、緩衝剤、希釈剤、溶媒、張度調節剤、防腐剤、安定剤、及びキレート剤が挙げられる。1つ又は2つ以上の薬学的に許容される担体が、本発明の医薬組成物の製剤化において使用され得る。
【0160】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は液体製剤である。液体製剤の好ましい例は、水性製剤、すなわち、水を含む製剤である。液体製剤は、溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ゲルなどを含んでいてよい。水性製剤は、典型的には、少なくとも50%w/wの水、又は少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は少なくとも95%w/wの水を含む。
【0161】
一実施形態では、医薬組成物は、例えば注射デバイス(例えば、注射器又は注入ポンプ)を介して注射することができる注射剤として製剤化され得る。注射によると、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内に送達され得る。
【0162】
別の実施形態では、医薬組成物は、固体製剤、例えば、そのまま使用することができるか、又は医師若しくは患者が使用前に溶媒及び/若しくは希釈剤を添加する、凍結乾燥又は噴霧乾燥組成物である。固体剤形としては、圧縮錠剤及び/又はコーティング錠剤などの錠剤、並びにカプセル剤(例えば、硬又は軟ゼラチンカプセル)を挙げることができる。医薬組成物はまた、例えば、サッシェ、糖衣錠、粉末、顆粒、トローチ、又は再構成用の粉末の形態であってもよい。
【0163】
剤形は即時放出であってもよく、その場合、当該剤形は、水溶性若しくは分散性担体を含んでいてよく、又は遅延放出、持続放出、若しくは調節放出であってもよく、その場合、当該剤形は、胃腸管における剤形の溶解速度を制御する非水溶性ポリマーを含んでいてよい。
【0164】
他の実施形態では、医薬組成物は、鼻腔内、頬内、又は舌下に送達され得る。
【0165】
水性製剤のpHは、pH3~pH10であり得る。本発明の一実施形態では、製剤のpHは約7.0~約9.5である。本発明の別の実施形態では、製剤のpHは約3.0~約7.0である。
【0166】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物は緩衝剤を含む。緩衝剤の非限定的な例としては、アルギニン、アスパラギン酸、ビシン、シトレート、リン酸一水素二ナトリウム、フマル酸、グリシン、グリシルグリシン、ヒスチジン、リシン、マレイン酸、リンゴ酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、コハク酸塩、酒石酸、トリシン、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、及びこれらの混合物が挙げられる。緩衝液は、個々に又は凝集体中に、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば、約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的な緩衝剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0167】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物は防腐剤を含む。防腐剤の非限定的な例としては、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、ブチル4-ヒドロキシベンゾエート、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロヘキシジン、クロルフェネシン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチル4-ヒドロキシベンゾエート、イミド尿素、メチル4-ヒドロキシベンゾエート、フェノール、2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、プロピル4-ヒドロキシベンゾエート、デヒドロ酢酸ナトリウム、チオメロサール、及びこれらの混合物が挙げられる。防腐剤は、個々に又は凝集体中に、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的な防腐剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0168】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物は、等張剤を含む。等張剤の非限定的な例としては、塩(塩化ナトリウムなど)、アミノ酸(グリシン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、及びスレオニンなど)、アルジトール(グリセロール、1,2-プロパンジオールプロピレングリコールなど)、1,3-プロパンジオール、及び1,3-ブタンジオールなど)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、並びにこれらの混合物が挙げられる。等張剤の別の例としては、糖が挙げられる。糖の非限定的な例は、例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、アルファ及びベータ-HPCD、可溶性澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、単糖類、二糖類、又は多糖類であり得る。等張剤の別の例は糖アルコールであり、「糖アルコール」という用語は、少なくとも1つの-OH基を有するC(4-8)炭化水素として定義される。糖アルコールの非限定的な例としては、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールが挙げられる。等張剤は、個々に又は凝集体中に、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的な等張剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0169】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物はキレート剤を含む。キレート剤の非限定的な例としては、クエン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、及びこれらの混合物が挙げられる。キレート剤は、個々に又は凝集体中に、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的なキレート剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0170】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物は安定剤を含む。安定剤の非限定的な例としては、1つ又は2つ以上の凝集阻害剤、1つ又は2つ以上の酸化阻害剤、1つ又は2つ以上の界面活性剤、及び/又は、1つ又は2つ以上のプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0171】
本発明の別の実施形態では、医薬組成物は安定剤を含み、当該安定剤は、カルボキシ-/ヒドロキシセルロース及びそれらの誘導体(HPC、HPC-SL、HPC-L、及びHPMCなど)、シクロデキストリン、2-メチルチオエタノール、ポリエチレングリコール(PEG 3350など)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、塩(塩化ナトリウムなど)、硫黄含有物質、例えばモノチオグリセロール)、又はチオグリコール酸である。安定剤は、個々に又は凝集体中に、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的な安定剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0172】
本発明の更なる実施形態では、医薬組成物は、1つ又は2つ以上の界面活性剤、好ましくは界面活性剤、少なくとも1つの界面活性剤、又は2つの異なる界面活性剤を含む。「界面活性剤」という用語は、水溶性(親水性)部分及び脂溶性(親油性)部分から構成される任意の分子又はイオンを指す。界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び/又は双性イオン性界面活性剤から選択され得る。界面活性剤は、個々に又は凝集体中に、約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的な界面活性剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0173】
本発明の更なる実施形態では、医薬組成物は、1つ又は2つ以上のプロテアーゼ阻害剤、例えば、EDTA、及び/又はベンズアミジン塩酸(HCl)を含む。プロテアーゼ阻害剤は、個々に又は凝集体中に、約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的なプロテアーゼ阻害剤の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0174】
本発明の医薬組成物は、組成物の保管中のポリペプチド凝集体の形成を減少させるのに十分な量のアミノ酸塩基を含み得る。「アミノ酸塩基」という用語は、1つ又は2つ以上のアミノ酸(メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リシン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニンなど)、又はこれらのアナログを指す。任意のアミノ酸は、その遊離塩基形態又はその塩形態のいずれかで存在し得る。アミノ酸塩基の任意の立体異性体(すなわち、L、D、又はこれらの混合物)が存在し得る。アミノ酸塩基は、個々に又は他のアミノ酸塩基と組み合わせて、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し得る。これらの具体的なアミノ酸塩基の各1つを含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。
【0175】
本発明のコンジュゲートの薬学的に許容される塩としては、無機又は有機の酸又は塩基から形成される、従来の非毒性の塩又は第四級アンモニウム塩が挙げられる。かかる酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、ドデシル硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩及び酒石酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミノ塩などの有機塩基との塩、並びにアルギニンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。更に、塩基性の窒素含有基は、例えばハロゲン化アルキルによって第四級化されていてもよい。
【0176】
本発明の医薬組成物は、その意図する目的を実現する任意の手段によって投与することができる。例としては、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、口内又は眼内投与が挙げられる。経口経路により投与してもよい。非経口投与に適する製剤としては、水溶性形態の活性コンジュゲートの水溶液、例えば、水溶性の塩、酸性溶液、アルカリ性溶液、デキストロース水溶液、等張炭水化物溶液、及びシクロデキストリン包接錯体が挙げられる。特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは末梢に投与される。
【0177】
本発明はまた、薬学的に許容される担体を本発明のコンジュゲートのいずれかと混合することを含む、医薬組成物の作製方法も包含する。加えて、本発明は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される担体を本発明のコンジュゲートのいずれかと混合することによって作製される医薬組成物を含む。
【0178】
更に、本発明のコンジュゲートは、1つ又は2つ以上の結晶多形又は非晶質結晶形を有していてもよく、これも本発明の範囲に含まれることが意図される。加えて、コンジュゲートは、例えば水(すなわち、水和物)又は一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成してもよい。本明細書で使用されるとき、用語「溶媒和物」は、本発明のコンジュゲートと1つ又は2つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、水素結合など、イオン結合及び共有結合の度合いの変化を伴う。特定の場合では、例えば1つ又は2つ以上の溶媒分子が結晶質固体の結晶格子に組み込まれているとき、この溶媒和物を単離することができるようになる。用語「溶媒和物」は、溶液相溶媒和物と、単離可能な溶媒和物の両方を包含するものとする。好適な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート、メタノレートなどが挙げられる。
【0179】
本発明は、本発明のコンジュゲートの多形体及び溶媒和物をその範囲内に包含することを意図する。したがって、本発明の治療方法における「投与」という用語には、本発明のコンジュゲート、又は具体的に開示されていなくとも、明らかに本発明の範囲内に含まれる結晶多形又はその溶媒和物を用いて、本明細書に記載の症候群、障害、又は疾患を治療する、寛解させる、又は予防する手段が含まれる。
【0180】
別の実施形態では、本発明は、薬剤として使用するための本発明のコンジュゲートに関する。
【0181】
本発明の範囲内には、本発明のコンジュゲートのプロドラッグが含まれる。一般的には、そのようなプロドラッグは、インビボで必要なコンジュゲートに容易に変換可能な、コンジュゲートの機能的誘導体である。したがって、本発明の治療方法において、用語「投与」は、具体的に開示されるコンジュゲートを用いた、又は具体的に開示されなくてもよいが、患者への投与後にインビボで特定のコンジュゲートに転換するコンジュゲートを用いた、記載される様々な障害の治療を包含するものとする。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に関する従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」(Ed.H.Bundgaard、Elsevier,1985)に記載されている。
【0182】
更に、本発明の範囲内で、任意の元素が、特に本発明のコンジュゲートに関して言及される場合、天然に存在するか又は合成により生成されたかのいずれか、また自然存在比であるか又は同位体濃縮形態のいずれかで、当該元素の全ての同位体及び同位体の混合物を含むものとすることが意図される。例えば、水素への言及には、その範囲内にH、H(D)、及びH(T)が含まれる。同様に、炭素及び酸素への言及には、それらの範囲内に12C、13C及び14C、並びに16O及び18Oがそれぞれ含まれる。同位体は、放射性同位体であってもよく、又は非放射性同位体であってもよい。本発明の放射性標識コンジュゲートは、H、11C、18F、122I、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Br、及び82Brからなる群から選択される放射性同位体を含んでもよい。好ましくは、放射性同位体は、H、11C、及び18Fからなる群から選択される。
【0183】
本発明のいくつかのコンジュゲートは、アトロプ異性体として存在していてもよい。アトロプ異性体は、単結合の周りの回転が障害されることにより生じる立体異性体であり、回転に対する立体歪みによる障壁が、配座異性体の単離を可能にする程度に十分高いものである。かかる配座異性体及びその混合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0184】
本発明によるコンジュゲートが少なくとも1つの立体中心を有する場合、それに応じて、当該コンジュゲートは、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。かかる異性体及びその混合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0185】
本発明によるコンジュゲートの調製プロセスにより立体異性体の混合物が生じた場合、これらの異性体は、分取クロマトグラフィなどの従来の技術により分離することができる。コンジュゲートをラセミ体として調製してもよく、又は個々のエナンチオマーをエナンチオ特異的合成若しくは分割のいずれかにより調製してもよい。コンジュゲートは、例えば、(-)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸などの光学活性の酸と共に塩を形成することによりジアステレオマー対を形成した後、分別結晶化及び遊離塩基の再生を行うなどの標準的な方法により、その構成要素であるエナンチオマーに分割することができる。コンジュゲートはまた、ジアステレオマーのエステル又はアミドを形成した後、クロマトグラフィ分離を行い、キラル補助基を除去することにより、分割することもできる。あるいは、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)又はSFCを介して、キラルカラムを使用して、コンジュゲートを分割することもできる。場合によっては、1H NMRスペクトルにおいて複雑な多重項及びピーク積分をもたらす、1H NMRにより観察可能なコンジュゲートの回転異性体が存在し得る。
【0186】
本発明のコンジュゲートを調製するプロセスのいずれかの間、関連する分子のいずれかにおける感受性基又は反応性基を保護することが必要である及び/又は望ましい場合がある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973、及びT.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991(それらのそれぞれは、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されるものなど、従来の保護基の手段によって達成され得る。保護基は、好都合な後続段階において、当該技術分野で既知の方法を用いて除去することができる。
【0187】
使用方法
本発明は、それを必要としている対象における、Y2受容体媒介症候群及び/又はGLP-1受容体媒介症候群、障害、又は疾患を予防する、治療する、又は寛解させる方法であって、当該それを必要としている対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を目的とする。
【0188】
本発明は、それを必要とする対象における、障害、疾患、若しくは病態、又は当該障害、疾患、若しくは病態の任意の1つ又は2つ以上の症状を予防する、治療する、その発症を遅延させる、又は寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法も提供する。
【0189】
特定の実施形態によれば、疾患障害、又は病態は、肥満、I型又はII型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、耐糖能障害)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/若しくは脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに/又は湿疹から選択される。
【0190】
特定の実施形態によれば、治療有効量は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を実現するのに十分である治療量を指す:(i)治療される疾患、障害、若しくは病態、又はそれに関連する症状の重症度を低減する、又は寛解させること、(ii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の期間を短縮すること、(iii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の進行を防止すること、(iv)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の退縮を生じさせること、(v)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の進行又は発症を予防すること、(vi)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の再発を防止すること、(vii)治療される疾患、障害、若しくは病態、又はそれに関連する症状を有する対象の入院を減少させること、(viii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状を有する対象の入院期間を短縮させること、(ix)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状を有する対象の生存率を高めること、(xi)治療される対象の疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状を阻害又は軽減すること、及び/又は(xii)別の治療の予防又は治療効果を強化又は改善すること。
【0191】
治療有効量又は用量は、治療される疾患、障害又は病態、投与手段、標的部位、対象の生理学的状態(例えば、年齢、体重、健康状態を含む)、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び、治療が予防的なものであるか治療的なものであるか、などの様々な因子によって異なり得る。治療用量は、安全性及び効能を最適化するために最適に漸増される。
【0192】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語は全て、疾患、障害、又は病態に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善又は逆転を指すものであり、これは対象において必ずしも認識されるとは限らないが、対象において認識可能な場合もある。「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語はまた、疾患、障害、又は病態の退縮を生じる、その進行を防止する、又は少なくともその進行を遅らせることを指す場合もある。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、若しくは病態に関連する1つ又は2つ以上の症状の緩和、進行若しくは発症の予防、又はその期間の短縮を指す。具体的な実施形態では、「治療する」、「治療する」、及び「治療」は、疾患、障害、又は病態の再発の防止を指す。具体的な実施形態では、「治療する」、「治療する」、及び「治療」は、疾患、障害、又は病態を有する対象の生存率の向上を指す。具体的な実施形態では、「治療する」、「治療する」、及び「治療」は、対象における疾患、障害、又は病態の消失を指す。
【0193】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における、肥満、又は肥満の任意の1つ又は2つ以上の症状を予防する、治療する、その発症を遅延させる、又は寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0194】
一実施形態では、本発明は、それを必要としている対象における体重を減少させる方法であって、当該それを必要としている対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、医薬組成物、形態、若しくは医薬のいずれかの投与前の対象の体重に対して、又は本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、医薬、若しくは組み合わせのいずれも投与されていない対照対象と比較して、対象の体重は、例えば、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約5%、約2%~約3%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、又は約45%~約50%減少する。
【0196】
いくつかの実施形態では、体重の低減は、約1週間、約2週間、約3週間、約1ヶ月間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、約1年間、約1.5年間、約2年間、約2.5年間、約3年間、約3.5年間、約4年間、約4.5年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、又は約20年間維持される。
【0197】
本発明は、それを必要としている対象における、症候群、障害、若しくは疾患、又は当該症候群、障害、若しくは疾患のいずれか1つ又は2つ以上の症状を予防する、治療する、その発症を遅延させる、又は寛解させる方法であって、当該症候群、障害、又は疾患が、肥満、I型若しくはII型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、耐糖能障害)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/又は脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに湿疹から選択され、当該方法が、それを必要としている対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0198】
本明細書で使用される場合、メタボリックシンドロームは、高血糖(例えば、高空腹時血糖)、高血圧、異常コレステロールレベル(例えば、低HDLレベル)、異常トリグリセリドレベル(例えば、高トリグリセリド)、太いウエストライン(すなわち、腹囲)、腹部領域の脂肪の増加、インスリン抵抗性、耐糖能障害、高いC反応性タンパク質レベル(すなわち、前炎症状態)、及び血漿プラスミノゲン活性化因子阻害剤-1及びフィブリノーゲンレベル(すなわち、血栓状態)の任意の1つ又は2つ以上を有する対象を指す。
【0199】
本発明は、それを必要とする対象における、食物摂取を低減する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象の食物摂取は、本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、薬剤、若しくは組み合わせのいずれかの投与前の対象の食物摂取に対して、又は本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、薬剤、若しくは組み合わせのいずれも受けていない対照対象と比較して、例えば、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約5%、約2%~約3%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、又は約45%~約50%低減される。
【0200】
いくつかの実施形態では、食物摂取の低減は、約1週間、約2週間、約3週間、約1ヶ月間、約2ヶ月間、約3ヶ月間、約4ヶ月間、約5ヶ月間、約6ヶ月間、約7ヶ月間、約8ヶ月間、約9ヶ月間、約10ヶ月間、約11ヶ月間、約1年間、約1.5年間、約2年間、約2.5年間、約3年間、約3.5年間、約4年間、約4.5年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、又は約20年間維持される。
【0201】
本発明は、それを必要とする対象における糖化ヘモグロビン(A1C)を低減する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象のA1Cは、本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、薬剤、若しくは組み合わせのいずれかの投与前の対象のA1Cに対して、又は本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、薬剤、若しくは組み合わせのいずれも受けていない対照対象と比較して、例えば、約0.001%~約0.01%、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約0.3%、約0.3%~約0.4%、約0.4%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約1.5%、約1.5%~約2%、約2%~約2.5%、約2.5%~約3%、約3%~約4%、約4%~約5%、約5%~約6%、約6%~約7%、約7%~約8%、約8%~約9%、又は約9%~約10%低減される。
【0202】
他の実施形態では、それを必要とする対象における空腹時血糖レベルを低減する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。空腹時血糖レベルは、本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、薬剤、若しくは組み合わせのいずれかの投与前の対象の空腹時血糖レベルに対して、又は本明細書に記載の本発明のコンジュゲート、化合物、組成物、形態、薬剤、若しくは組み合わせのいずれも受けていない対照対象と比較して、約140~約150mg/dL未満、約140~約130mg/dL未満、約130~約120mg/dL未満、約120~約110mg/dL未満、約110~約100mg/dL未満、約100~約90mg/dL未満、又は約90~約80mg/dL未満まで低減され得る。
【0203】
本発明は、それを必要としている対象におけるY2受容体活性及びGLP-1受容体活性を調節する方法であって、それを必要としている対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。本明細書で使用される場合、「調節する」とは、受容体活性を増加又は減少させることを指す。
【0204】
いくつかの実施形態では、有効量の本発明のコンジュゲート若しくは化合物、又はその形態、組成物、若しくは薬剤は、それを必要とする対象に、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、又は1日8回投与される。他の実施形態では、有効量の本発明のコンジュゲート若しくは化合物、又はその形態、組成物、若しくは薬剤は、それを必要とする対象に、2日に1回、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、又は1ヶ月に4回投与される。
【0205】
本発明の別の実施形態は、それを必要とする対象における、疾患、障害、若しくは症候群、又は当該疾患、障害、若しくは症候群のいずれかの1つ又は2つ以上の症状を予防する、治療する、その発症を遅延させる、又は寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、併用療法で、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、併用治療薬は、第2の治療薬である。特定の実施形態では、併用療法は、外科療法である。
【0206】
本明細書で使用するとき、用語「併用される」は、対象への2つ以上の治療薬の投与との関連において、複数の治療薬の使用を指す。
【0207】
本明細書で使用されるとき、併用療法は、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート若しくは化合物、又はその形態、組成物、若しくは薬剤と同時に、1つ若しくは2つ以上の追加の治療薬、又は1つ若しくは2つ以上の外科療法を施すことを指す。いくつかの実施形態では、1つ若しくは2つ以上の追加の治療薬又は外科療法は、有効量の本発明のコンジュゲートと同日に施され得、他の実施形態では、1つ若しくは2つ以上の追加の治療薬又は外科療法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は化合物と同じ週又は同じ月に施され得る。
【0208】
本発明はまた、それを必要とする対象における、本明細書に記載の疾患、障害、症候群、又は症状のいずれかを、併用療法を用いて予防する、治療する、その発症を遅延させる、又は寛解させることも企図し、当該併用療法は、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を、以下の治療薬のうちの任意の1つ又は2つ以上と組み合わせて投与することを含む:ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤(例えば、シタグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチンなど);GLP-1受容体アゴニスト(例えば、エキセナチド及びリキシセナチドなどの、短時間作用型GLP-1受容体アゴニスト;中間作用型GLP-1受容体アゴニスト(例えば、リラグルチド);長期放出型エクセナチド、アルビグルチド、デュラグルチドなどの長時間作用型GLP-1受容体アゴニスト;ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害剤(例えば、カナグリフォジン、ダパグリフォジン、エンパグリフォジンなど);胆汁酸封鎖剤(例えば、コレセベラムなど);ドーパミン受容体アゴニスト(例えば、ブロモクリプチン急速放出);ビグアニド(例えば、メトホルミンなど);インスリン;オキシントモジュリン;スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、グリベンクラミド、グリボルヌリド、グリソキセピド、グリクロピラミド、トラザミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、カブタミドなど);及びチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、ロベグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、ネトグリタゾン、リボグリタゾン、トログリタゾンなど)。いくつかの実施形態では、追加の治療薬の用量は、本発明のコンジュゲート又は化合物と組み合わせて与えられる場合に低減される。いくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲート又は化合物と組み合わせて使用される場合、追加の治療剤は、それぞれが単独で使用される場合よりも低い用量で使用され得る。
【0209】
本発明は、それを必要とする対象における、本明細書に記載の疾患、障害、症候群、又は症状のいずれかを、併用療法を用いて予防する、治療する、その発症を遅延させる、又は寛解させることを企図し、当該併用療法は、それを必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート、化合物、又は医薬組成物を、外科療法と組み合わせて施すことを含む。特定の実施形態では、外科療法は、肥満手術(例えば、Roux-en-Y胃バイパス手術などの胃バイパス手術;スリーブ胃切除術;調節可能な胃バンド手術;十二指腸スイッチを伴う胆すい消化回避術;胃内バルーン;胃縫縮術、及びこれらの組み合わせ)であり得る。
【0210】
1つ若しくは2つ以上の追加の治療薬又は外科療法が、有効量の本発明のコンジュゲート又は化合物と同日に投与される実施形態では、本発明のコンジュゲート又は化合物は、追加の治療薬又は外科療法の前、後、又は同時に投与され得る。「併用される」という用語の使用は、治療が対象に投与される順序を限定しない。例えば、第1の治療薬(例えば、本明細書に記載される組成物)を、対象への第2の治療薬の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、それと同時に、又はその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与することができる。
【0211】
実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0212】
実施形態1は、環状PYYペプチドに結合したグルカゴン様ペプチド(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、当該GLP-1融合ペプチドが、GLP-1ペプチド、第1のリンカーペプチド、ヒンジ-Fc領域ペプチド、及び第2のリンカーペプチドを含み、当該第1のリンカーが、任意選択で、存在しない、コンジュゲートである。
【0213】
実施形態2は、当該環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
【0214】
【化31】
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、
は、G又はKであり、
11は、D又はKであり、
22は、A又はKであり、
23は、S又はKであり、
26は、A又はHであり、
30は、L、Wであるか、又は存在せず、
(但し、Z30は、qが1である場合にのみ存在しない。)、
34は、
【0215】
【化32】
であり、
35は、
【0216】
【化33】
であり、
当該誘導体が、アミド化、アシル化、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は2つ以上のプロセスによって修飾された式Iの化合物である、実施形態1に記載のコンジュゲートである。
【0217】
実施形態3は、当該環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0218】
【化34】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
は、G又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0219】
【化35】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
11は、D又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0220】
【化36】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
22は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0221】
【化37】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
23は、S又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【0222】
【化38】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである。)、
-C(O)CHBr、-C(O)CHI、又は-C(O)CHClで置換され、
26は、A又はHであり、
30は、Lであり、
34は、
【0223】
【化39】
であり、
35は、
【0224】
【化40】
であり、
Xは、求電子基であり、X求電子基のBr、Cl、又はIは、コンジュゲーション反応において置換されて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを形成する、実施形態2に記載のコンジュゲートである。
【0225】
実施形態4は、当該環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、又は5であり、
nは、1、2、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が不在の場合にのみ1であり得る。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
は、G又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
11は、D又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
22は、A又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
23は、S又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、
-C(O)CHBrで置換されており、
26は、A又はHであり、
30は、Lであり、
34は、
【0226】
【化41】
であり、
35は、
【0227】
【化42】
であり、
Brは、コンジュゲーション反応において置換されて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを形成する、実施形態2に記載のコンジュゲートである。
【0228】
実施形態5は、当該環状PYYペプチドが、配列番号1~54からなる群から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である、実施形態1又は2に記載のコンジュゲートである。
【0229】
実施形態6は、当該環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、若しくは34から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である、実施形態5に記載のコンジュゲートである。
【0230】
実施形態7は、当該GLP-1融合ペプチドが、当該環状PYYペプチドのリシン残基において当該環状PYYペプチドに共有結合で連結している、実施形態1~6のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0231】
実施形態8は、当該環状PYYペプチドが、化学リンカーを含む、実施形態7に記載のコンジュゲートである。
【0232】
実施形態9は、当該化学リンカーが、C(O)CH、ポリエチレングリコール(PEG)-トリアゾリル-CHCHCO-PEG、2~24個のPEG単位のPEG鎖、アシル基を含有するリンカー、及び2~10個の炭素原子を含有するアルキル鎖からなる群から選択される1つを含む、実施形態8に記載のコンジュゲートである。
【0233】
実施形態10は、式I中のZ、Z、Z11、Z22、及びZ23のうちの1つだけがリシンであり、当該リシンが、当該GLP-1融合ペプチドの当該第2のリンカーペプチドのシステイン残基に共有結合で連結している、実施形態7~9のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0234】
実施形態11は、式I中のZ11がリシンである、実施形態10に記載のコンジュゲートである。
【0235】
実施形態12は、当該GLP-1ペプチドが、配列番号56~59からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0236】
実施形態13は、当該GLP-1ペプチドが、配列番号57のアミノ酸配列を含む、実施形態12に記載のコンジュゲートである。
【0237】
実施形態14は、当該第1のリンカーペプチドが、配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0238】
実施形態15は、当該第1のリンカーペプチドが、配列番号60のアミノ酸配列を含む、実施形態14に記載のコンジュゲートである。
【0239】
実施形態16は、当該ヒンジ-Fc領域ペプチドが、配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0240】
実施形態17は、当該ヒンジ-Fc領域ペプチドが、配列番号84又は配列番号85のアミノ酸配列を含む、実施形態16に記載のコンジュゲートである。
【0241】
実施形態18は、当該第2のリンカーペプチドが、配列番号93~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0242】
実施形態19は、当該第2のリンカーペプチドが、配列番号93、94、95、106、又は111のアミノ酸配列を含む、実施形態18に記載のコンジュゲートである。
【0243】
実施形態20は、環状PYYペプチドに共役しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、当該GLP-1融合ペプチドが、配列番号113~224及び267~274からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、当該環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、又は34から選択されるアミノ酸配列を含む、コンジュゲートである。
【0244】
実施形態21は、当該GLP-1融合ペプチドが、配列番号113のアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載のコンジュゲートである。
【0245】
実施形態22は、当該GLP-1融合ペプチドが、配列番号136のアミノ酸配列を含む、実施形態20に記載のコンジュゲートである。
【0246】
実施形態23は、当該GLP-1融合ペプチドの残基287~289のシステイン残基が、当該環状PYYペプチドの残基7、9、11、22、又は23におけるリシン残基に共有結合で連結している、実施形態21又は22に記載のコンジュゲートである。
【0247】
実施形態24は、当該システイン残基が、当該GLP-1融合ペプチドの残基288に存在する、実施形態23に記載のコンジュゲートである。
【0248】
実施形態25は、当該リシン残基が、当該環状PYYペプチドの残基11に存在する、実施形態20~24のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0249】
実施形態26は、当該GLP-1融合ペプチドが、当該環状PYYペプチドにおける化学リンカーを介して当該環状PYYペプチドに共有結合で連結している、実施形態20~25のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0250】
実施形態27は、当該化学リンカーが、C(O)CH、ポリエチレングリコール(PEG)8-トリアゾリル-CHCHCO-PEG4、2~24個のPEG単位のPEG鎖、アシル基を含有するリンカー、又は2~10個の炭素原子を含有するアルキル鎖からなる群から選択される、実施形態26に記載のコンジュゲートである。
【0251】
実施形態28は、環状PYYペプチドに共役しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、配列番号225~262からなる群から選択される配列又はその薬学的に許容される塩を含むコンジュゲートである。
【0252】
実施形態29は、当該GLP-1融合ペプチドが単量体である、実施形態1~28のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0253】
実施形態30は、当該GLP-1融合ペプチドが二量体である、実施形態1~28のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0254】
実施形態31は、実施形態1~30のいずれか1つに記載のコンジュゲートを生成する方法であって、当該環状PYYペプチドの側鎖、好ましくは当該環状PYYペプチドのリシン残基のアミノ側鎖に導入された求電子剤、好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミドを、当該GLP-1融合ペプチドの当該第2のリンカーペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、それにより、当該環状PYYペプチドと当該GLP-1融合ペプチドとの間に共有結合性連結を生じさせることを含む、方法である。
【0255】
実施形態32は、当該GLP-1融合ペプチドの当該第2のリンカーペプチドのシステイン残基が、当該GLP-1融合ペプチドを過剰なアザホスフィン還元剤と接触させることによって還元され、それにより、還元されたシステイン残基が当該求電子剤と反応する、実施形態31に記載の方法である。
【0256】
実施形態33は、当該アザホスフィン還元剤が、1,3,5-トリアザ-7-ホスファトリシクロ[3.3.1.1]デカン(PTA)又はその誘導体である、実施形態32に記載の方法である。
【0257】
実施形態34は、実施形態1~30のいずれか1つに記載のコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物である。
【0258】
実施形態35は、それを必要としている対象における肥満を治療又は予防する方法であって、当該それを必要としている対象に有効量の実施形態34に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法である。
【0259】
実施形態36は、当該それを必要としている対象に有効量の医薬組成物を投与することによって、当該医薬組成物の投与前の当該対象の体重と比較して、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、又は約20%~約25%体重が減少する、実施形態35に記載の方法である。
【0260】
実施形態37は、それを必要としている対象における疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、当該疾患又は障害が、肥満、I型又はII型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/若しくは脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに/又は湿疹であり、当該方法が、当該それを必要としている対象に有効量の実施形態34に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法である。
【0261】
実施形態38は、当該疾患又は障害が、肥満である、実施形態37に記載の方法である。
【0262】
実施形態39は、当該疾患又は障害が、I型糖尿病である、実施形態37に記載の方法である。
【0263】
実施形態40は、当該疾患又は障害が、II型糖尿病である、実施形態37に記載の方法である。
【0264】
実施形態41は、当該疾患又は障害が、メタボリックシンドロームである、実施形態37に記載の方法である。
【0265】
実施形態42は、当該疾患又は障害が、腎疾患である、実施形態37に記載の方法である。
【0266】
実施形態43は、当該疾患又は障害が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、実施形態37に記載の方法である。
【0267】
実施形態44は、当該疾患又は障害が、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、実施形態37に記載の方法である。
【0268】
実施形態45は、それを必要としている対象における食物摂取又は体重のうちの少なくとも1つを減少させる方法であって、当該それを必要としている対象に有効量の実施形態34に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法である。
【0269】
実施形態46は、当該それを必要としている対象に有効量の医薬組成物を投与することによって、当該医薬組成物の投与前の当該対象の食物摂取と比較して、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、又は約45%~約50%食物摂取が減少する、実施形態45に記載の方法である。
【0270】
実施形態47は、それを必要としている対象におけるY2受容体活性及びGLP-1受容体活性を調節する方法であって、当該それを必要としている対象に、有効量の実施形態34に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法である。
【0271】
実施形態48は、当該医薬組成物が、注射により投与される、実施形態35~47のいずれか1つに記載の方法である。
【0272】
実施形態49は、当該注射が、皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内に送達される、実施形態48に記載の方法である。
【0273】
実施形態50は、当該医薬組成物が、第2の治療薬と組み合わせて投与される、実施形態35~49のいずれか1つに記載の方法である。
【0274】
実施形態51は、当該医薬組成物が、それを必要としている対象に毎日、毎週、又は毎月投与される、実施形態35~50のいずれか1つに記載の方法である。
【0275】
実施形態52は、当該医薬組成物が、1日に1回、2回、3回、4回、5回、又は6回投与される、実施形態51に記載の方法である。
【0276】
実施形態53は、当該医薬組成物が、1週間に1回、2回、3回、4回、5回、又は6回投与される、実施形態51に記載の方法である。
【0277】
実施形態54は、当該医薬組成物が、1ヶ月に1回、2回、3回、又は4回投与される、実施形態51に記載の方法である。
【0278】
実施形態55は、実施形態1~30のいずれか1つに記載のコンジュゲート又は実施形態34の医薬組成物を含むキットであって、好ましくは、注射デバイスを更に含む、キットである。
【0279】
実施形態56は、実施形態1~30のいずれか1つに記載のコンジュゲートを含む医薬組成物を生成する方法であって、当該コンジュゲートを薬学的に許容される担体と組み合わせて医薬組成物を得ることを含む、方法である。
【0280】
実施形態57は、単離されたヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドであって、好ましくは配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒンジ-Fc領域ペプチドと、好ましくは配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1のリンカーペプチドであって、任意選択で、欠損している、第1のリンカーペプチドと、配列番号91~112から選択されるアミノ酸配列を含む第2のリンカーペプチドと、を含み、当該第1のリンカーペプチドが、当該ヒンジ-Fc領域ペプチドのアミノ末端に接続され、当該第2のリンカーペプチドが、当該ヒンジ-Fc領域ペプチドのカルボキシ末端に接続されている、ヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドである。
【0281】
実施形態58は、当該ヒンジ-Fc領域ペプチドが、配列番号84のアミノ酸配列を含む、実施形態57に記載の単離されたヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドである。
【0282】
実施形態59は、当該第1のリンカーペプチドが、配列番号60のアミノ酸配列を含む、実施形態57又は58に記載の単離されたヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドである。
【0283】
実施形態60は、当該第2のリンカーペプチドが、配列番号93、94、95、106、又は111のアミノ酸配列を含む、実施形態57~59のいずれか1つに記載の単離されたヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドである。
【0284】
実施形態61は、当該第2のリンカーペプチドにおいて標的ペプチドに共有結合で連結している当該ヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドを含むコンジュゲートである。
【0285】
実施形態62は、当該標的ペプチドが、式Iによって表される環状PYYペプチド又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり:
【0286】
【化43】
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z30が存在しない場合にのみ1である。)、
BRIDGEは、-Ph-CH-S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CHS-、-SCHC(O)NH-、
-(OCHCHNHC(O)CHS、-NHC(O)-、又は-CHS-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、
は、G又はKであり、
11は、D又はKであり、
22は、A又はKであり、
23は、S又はKであり、
26は、A又はHであり、
30は、L、Wであるか、又は存在せず、
(但し、Z30は、qが1である場合にのみ存在しない。)、
34は、
【0287】
【化44】
であり、
35は、
【0288】
【化45】
であり、
当該誘導体が、アミド化、アシル化、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は2つ以上のプロセスによって修飾された式Iの化合物である、実施形態61に記載のコンジュゲートである。
【0289】
実施形態63は、ヒンジ-Fc領域プラットフォームペプチドと標的ペプチドとのコンジュゲートを生成する方法であって、第2のリンカーペプチドと当該標的ペプチドとの間に共有結合性連結を生じさせることを含む、方法である。
【実施例
【0290】
合成
本発明の化合物又はコンジュゲートは、当業者に既知の全般的な合成法に従って合成することができる。以下の合成の説明は、例示目的のためのものであり、決して本発明の限定を意図するものではない。
【0291】
本発明のNTSC環状PYY(NTSC-PYY)アナログ又は誘導体は、自動化されたペプチド合成装置、従来のベンチ合成、又は両方のアプローチの組み合わせを使用して、Merrifield(J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2154(1963))に概説されているとおり、アミノ酸間の連続するペプチド連結を形成するための様々な既知の従来の手順によって合成することができ、優先的に固相ペプチド合成(SPPS)により行われる。ペプチド合成のための従来の手順は、1つのアミノ酸残基の遊離アミノ基(その他の反応性官能基は好適に保護されている)と別のアミノ酸の遊離カルボキシル基(その反応性官能基も好適に保護されている)との間の縮合を伴う。ペプチド結合形成に典型的に利用される縮合剤の例としては、1-ヒドロキシベンズトリアゾール(HOBT)又はエチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma Pure)を有する又は有しないジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2-(1H-7-アザベンズトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2-(6-クロロ-1H-ベンズトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)ブロモ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP)などが挙げられる。
【0292】
自動化されたペプチド合成方法は、Yu(J.Org.Chem.,57:4781-4784(1992))に記載され、より最近では、Palasek(J.Pept.Sci.,13:143-148(2007))によって精緻化されたとおり、室温(rt)又は高温で、好ましくは、マイクロ波加熱の適用を通して実行してよい。
【0293】
本発明の化合物(C末端アミド)は、好適な保護されたN-α-FMOC保護されたアミノ酸のカルボキシ末端が、好適な結合剤を使用して従来の固相樹脂上に結合される、N-α-FMOC(9-フルオロエニルメチルオキシカルボニル)保護されたアミノ酸方法論を用いて、好便に調製することができる。好適な従来の市販の固相樹脂としては、RinkアミドMBHA樹脂、RinkアミドAM樹脂、Tentagel S RAM Resin、FMOC-PAL-PEG PS樹脂、SpheriTide Rinkアミド樹脂、ChemMatrix Rink樹脂、Sieberアミド樹脂、TG Sieber樹脂などが挙げられる。次いで、樹脂結合されたFMOC-アミノ酸は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)又は1-メチル-2-ピロリドン(NMP)のいずれか中の20%ピペリジンへの曝露によって脱保護されてもよく、その処理は、FMOC保護基を選択的に除去する役割を果たす。次いで、追加のFMOC保護されたアミノ酸は、続いて順次結合及び脱保護され、それによって所望の樹脂結合された、保護されたペプチドを生成する。特定の場合では、FMOC脱保護条件に耐えるペプチド配列中の別のアミンに対して直交反応性保護基を利用することが必要なことがある。4-メチルトリチル(Mtt)又は4-メトキシトリチル(Mmt)といった保護基は、いずれも1%トリフルオロ酢酸(TFA)/ジクロロメタン(DCM)処理によって除去可能であるか、又は好ましくはアリルオキシカルボニル(alloc;Pd(PPh(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))/PhSiH(フェニルシラン)処理により除去可能)、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロへクス-1-イリデン)エチル(Dde;2~3%ヒドラジン/DMFで処理することによって除去可能)、及び1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロへクス-1-イリデン)-3-メチルブチル(ivDde;2~3%ヒドラジン/DMFで処理することによって除去可能)が、そのような場合に効果的に使用され得る。
【0294】
従来のペプチド合成方法論では、アルファアミノ酸の反応性側鎖は、概して、結合及び脱保護プロトコルに対してそれらを不活性にするために、好適な保護基で合成を通して保護される。アミノ酸側鎖のための複数の保護基が当該技術分野において既知であるが、本明細書では、以下の保護基が最も好ましい:セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びチロシンにはtert-ブチル(t-Bu);アスパラギン、グルタミン、システイン、ホモシステイン、及びヒスチジンにはトリチル(Trt);トリプトファン及びリシンのε-アミノ基にはtert-ブチルオキシカルボニル(Boc);並びにアルギニンには2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)。これらの保護基は、高濃度のトリフルオロ酢酸(TFA)などの強酸処理の際に除去される。
【0295】
SPPSが完了すると、樹脂結合され側鎖保護されたペプチドは、脱保護され、トリイソプロピルシラン(TIPS)、水、フェノール、及びアニソールなどの様々な組み合わせのカルボカチオンスカベンジャと共に、主に(TFA)からなる切断カクテルを使用して、樹脂から同時に切断される。次いで、ペプチド/カクテル濾液を冷エーテルで沈殿させることにより、粗固体ペプチドを単離する。Sieber樹脂に結合している保護されたペプチドの特別な場合では、保護されたペプチドの樹脂からの切断は、側鎖の脱保護を引き起こすことなく、DCM中1~2% TFAで繰り返し処理する際に有利に行われ得る。単離されたら、保護されたペプチドの更なる操作は、溶液相反応において行われてもよい。最後に、保護されたペプチドは、切断カクテルを用いた別個の処理を使用して、全体的に脱保護され、上記のように沈殿されてもよい。次いで、このようにして得られた粗ペプチドを、アセトニトリル又はエタノールなどの有機共溶媒を含有する主に水性溶媒系中に低濃度(約<4mg/mL)で溶解する。溶液のpHを>5に上昇させると、次にペプチドは分子内環化反応を経て、本発明の対応する粗NTSC PYYアナログを形成する。このように形成されたNTSC PYYアナログは、当該技術分野において概ね既知の精製技術を使用して精製することができる。本明細書で使用されるペプチド精製の好ましい方法は、逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)である。次いで、精製されたペプチドは、液体クロマトグラフィ/質量分析(LC/MS)によって特定される。
【0296】
本発明の環状PYYペプチドを生成するための全般的なスキーム及び方法は、2017年10月26日に出願された米国特許出願第15/794,231号及び2017年10月26日出願された米国特許出願第15/794,171号に記載されている。両出願の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0297】
本明細書に記載の以下の実施例及び実施形態は例示の目的のみであって、それらを考慮した様々な修正又は変更が当業者に提示され、本出願の趣旨及び範囲、並びに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用される全ての発行物、特許、及び特許出願は、全ての目的においてそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0298】
実施例1:一過的にトランスフェクトされた哺乳動物細胞由来のグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドの発現及び精製
合成された遺伝子断片を、様々な設計のエンドヌクレアーゼ制限酵素を使用してpCDNA3.1由来の哺乳動物発現ベクターにクローニングすることにより、GLP-1融合ペプチド用のDNAコンストラクトを生成した。合成された遺伝子断片は、融合タンパク質の以下の構成要素(N末端からC末端まで):GLP-1ペプチド又はGLP-1変異体ペプチド、第1のリンカーペプチド、ヒンジ-Fc領域ペプチド、及び環状PYYペプチドにコンジュゲートするためのCysを含有する第2のリンカーペプチドのうちの1つ又は全てをコードしているDNA配列を含むように設計した。
【0299】
製造者の推奨に従って、融合タンパク質発現コンストラクトの精製プラスミドDNAでExpiCHO-S(商標)細胞(ThermoFisher Scientific(Waltham,MA)、カタログ番号A29127)を一過的にトランスフェクトすることにより、GLP-1融合タンパク質を当該細胞中で発現させた。簡潔に述べると、ExpiCHO-S(商標)細胞を、37℃、8% CO及び125RPMに設定した振盪インキュベータ内で、ExpiCHO(商標)発現培地(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A29100)中懸濁状態で維持した。細胞を継代し、6.0×10細胞/mLに希釈し、細胞生存率を98%以上で維持した。一過性トランスフェクションは、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientificカタログ番号A29131)を使用して行った。トランスフェクトされる希釈細胞1mLごとに1マイクログラムのプラスミドDNAを使用し、OptiPRO(商標)SFM複合体化培地に希釈した。ExpiFectamine(商標)CHO試薬を、1:3比(v/v、DNA:試薬)で使用し、OptiPRO(商標)にも希釈した。希釈したDNA及びトランスフェクション試薬を1分間組み合わせ、DNA/脂質複合体を形成させ、次いで細胞に添加した。一晩インキュベートした後、ExpiCHO(商標)フィード及びExpiFectamine(商標)CHOエンハンサを細胞に添加した。細胞を37℃で5日間振盪しながら培養した後、培養上清を収集した。
【0300】
一過的にトランスフェクトされたExpiCHO-S(商標)細胞からの培養上清を、遠心分離(30分、6000rpm)を通して清澄化した後、濾過(0.2μ PES膜、Corning(Corning,NY))によって収集した。最初に、Pall Centramate Tangential Flow Filtrationシステムを使用して、大規模トランスフェクション(5~20リットル)を10倍濃縮した。10×DPBS(pH7.2)を上清に添加して、1×最終濃度にした後、AKTA FPLCクロマトグラフィシステムを使用して、樹脂1mL当たり約20mgのタンパク質の相対濃度で、平衡化した(DPBS、pH7.2)HiTrap MabSelect SureプロテインAカラム(GE Healthcare;Little Chalfont,United Kingdom)に充填した。充填した後、カラムを10カラム体積のDPBS(pH7.2)で逐次洗浄した。場合によっては、20カラム体積の100mMトリス、2.5M NaCl、50mMカプリル酸ナトリウム(pH9)及び10カラム体積のDPBS(pH7.2)の追加の洗浄を含めた。タンパク質を、10カラム体積の0.1M酢酸ナトリウム(Na)(pH3)で溶出した。タンパク質画分は、20%の溶出画分体積の2.0M Tris(pH7)を入れたチューブに溶出することによって直ちに中和した。ピーク画分をプールし、必要に応じて、追加のトリスを用いてpHを約7に調整した。精製したタンパク質を濾過し(0.2μ)、BioTek Synergy(商標)HTM分光光度計で280nmにおける吸光度によってその濃度を求めた。精製タンパク質の品質を、SDS-PAGE及び分析サイズ排除HPLC(Dionex(商標)HPLCシステム)により評価した。内毒素レベルを比濁LALアッセイ(Pyrotell(登録商標)-T、Associates of Cape Cod;FALMOUTH,MA)を用いて測定した。
【0301】
あるいは、製造者の推奨に従って、融合タンパク質発現コンストラクトの精製プラスミドDNAでExpi293F(商標)細胞(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A14527)を一過的にトランスフェクトすることにより、GLP-1融合タンパク質を当該細胞中で発現させた。簡潔に述べると、Expi293F(商標)細胞を、37℃、8% CO及び125RPMに設定した振盪インキュベータ内で、Expi293F(商標)発現培地(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A1435101)中懸濁状態で維持した。細胞を継代し、2.5×10細胞/mLに希釈し、細胞生存率を95%以上で維持した。一過性トランスフェクションは、ExpiFectamine(商標)293トランスフェクションキット(ThermoFisher Scientificカタログ番号A14525)を使用して行った。トランスフェクトされる希釈細胞1mLごとに1マイクログラムのプラスミドDNAを使用し、OptiMEM(商標)SFM複合体化培地に希釈した。ExpiFectamine(商標)293試薬を、1:2.6比(v/v、DNA:試薬)で使用し、OptiMEM(商標)に希釈し、室温で5分間インキュベートした。希釈したDNA及びトランスフェクション試薬を20分間合わせ、DNA/脂質複合体を形成させ、次いで、細胞に添加した。一晩インキュベートした後、Expi293(商標)フィード及びExpiFectamine(商標)293エンハンサを細胞に添加した。細胞を37℃で4日間、振盪しながら培養した後、培養上清を収集した。
【0302】
一過的にトランスフェクトされたExpi293(商標)細胞からの培養上清を、遠心分離(30分、6000rpm)を通して清澄化した後、濾過(0.2μ PES膜、Corning)によって収集した。10×DPBS(pH7.2)をこの上清に添加して、1×最終濃度にした後、AKTA FPLCクロマトグラフィシステムを使用して、樹脂1mL当たり約20mgのタンパク質の相対濃度で、平衡化した(DPBS、pH7.2)HiTrap MabSelect SureプロテインAカラム(GE Healthcare)に充填した。充填後、カラムを10カラム体積のDPBS、pH7.2で洗浄した。タンパク質を、10カラム体積の0.1M酢酸Na(pH3)で溶出した。タンパク質画分は、20%の溶出画分体積の2.0M Tris(pH7)を入れたチューブに溶出することによって直ちに中和した。ピーク画分をプールし、必要に応じて、追加のトリスを用いてpHを約5.5に調整した。精製したタンパク質を濾過し(0.2μ)、BioTek Synergy(商標)HTM分光光度計で280nmにおける吸光度によってその濃度を求めた。精製タンパク質の品質を、SDS-PAGE及び分析サイズ排除HPLC(Dionex(商標)HPLCシステム)により評価した。内毒素レベルを比濁LALアッセイ(Pyrotell(登録商標)-T、Associates of Cape Cod)を用いて測定した。
【0303】
ポリグリシンリンカーである配列番号61のアミノ酸配列を含む第1のリンカーペプチドを有するGLP-1融合タンパク質は、低レベルで発現し、精製収率が低かった。したがって、GLP-1融合タンパク質を遺伝子操作する際に、第1のリンカーペプチドにポリグリシンを使用することは、この実験では好ましくなかった。
【0304】
配列番号100のアミノ酸配列を含む第2のリンカーペプチドを有するGLP-1融合タンパク質は、切断され、質量分析により分析したときに予想分子量ではないと判定された。したがって、GLP-1融合タンパク質を遺伝子操作する際に、配列番号100の第2のリンカーペプチドを使用することは、この実験では好ましくなかった。
【0305】
更に、GLP-1融合ペプチドコンストラクトを調製するとき、タンパク質分解の負担の可能性を回避するために、ヒンジ-Fc領域ペプチド(すなわち、ヒトIgG4)のカルボキシ末端リシンを最終コンストラクトから欠失させた。
【0306】
実施例2:GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの生成
GLP-1融合タンパク質の還元
方法A
精製GLP-1融合タンパク質は、組換えタンパク質と、各リンカーに少なくとも1つのシステイン残基を含有する遺伝子操作を受けた第2のリンカーペプチドとの混合物であり、そのシステイン残基は、他のシステインにジスルフィド結合しているか、又はサイトゾル若しくは増殖培地中の外因性システイン残基に分子内でジスルフィド結合しているかのいずれかである。このような異種GLP-1融合タンパク質溶液(トリスOAc中5~12mg/mL、pH5.4~6.4)に、過剰量のホスフィン還元試薬1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA、15~40当量)を添加し、続いて、100mM EDTA(最終濃度1~2mM)を添加した。得られた反応混合物を、標的システイン残基の還元が完了するまで室温で穏やかに撹拌した(4~16時間)。遊離システイン及び残りのPTAを、脱塩クロマトグラフィによって除去した。
【0307】
方法B
異種GLP-1融合タンパク質溶液(トリスOAc中5~15mg/mL、pH5.0~6.5)に、過剰量のホスフィン還元試薬トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP、4~25当量)を添加し、続いて、100mM EDTA(最終濃度1mM)を添加した。得られた反応混合物を室温で一晩穏やかに撹拌し、次いで、トリスOAc(pH7.0)で平衡化した脱塩カラムに適用した。完全に還元されたGLP-1融合タンパク質(ヒンジのジスルフィド結合が切断)を、デヒドロアスコルビン酸(DHAA、10当量)で2時間処理した後、還元されたGLP-1融合ペプチドを酸化して、完全に脱キャッピングされた第2のリンカーペプチドにおいて遺伝子操作されたシステインを有する完全GLP-1融合ペプチドを得た。
【0308】
GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの調製
トリスOAc中還元GLP-1融合ペプチドの溶液((3~10mg/mL、pH5.5)を、脱イオン水中環状PYYペプチド(2.6~3.0当量、10~15mg/mL)の溶液に添加した。反応性チオールを金属触媒酸化から保護するために、EDTAの濃度が1mMになるまで、100mMのEDTA溶液を反応混合物に添加した。トリス緩衝液(1M、pH9.1)を滴下することによって、反応溶液のpHをpH8.0~8.2まで上昇させた。反応を室温で3~7時間、次いで、5℃で18時間進行させた。LCMSは、コンジュゲーションが完了し、GLP-1融合環状PYYペプチドコンジュゲートの形成が95%超であったことを示した。この反応物をプロテインA精製に直接供して、過剰な環状PYYペプチドを除去するか、又は(残存する反応性環状PYYペプチドをキャッピングするために)5当量のシステインを添加することによりクエンチした。得られた粗コンジュゲートを、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製した直後、プロテインAで吸着させた。コンジュゲートを溶出(酢酸ナトリウム、pH3.5)し、続いて、トリス緩衝液でpH7~7.5まで中和して、最終生成物を得た。あるいは、HICで精製されたコンジュゲートは、HIC精製の前に行われた場合、更なるプロテインAポリッシングなしにPD-10カラムによって所望の緩衝液に交換することができる。
【0309】
コンジュゲーション反応はまた、低温(5℃)で実施してもよく、LCMSによりモニタリングしてもよい(約48時間)。
【0310】
場合によっては、GLP-1融合タンパク質の第2のリンカーペプチドにおける反応性システインを、ブロモアセトアミドによってキャッピングして、安定したチオエーテル結合を形成させる。これらのアセトアミド修飾GLP-1融合タンパク質を、以下のとおり調製した:GLP-1融合タンパク質溶液(トリスOAc中5約12mg/mL、pH5.4~6.4)に、過剰量のホスフィン還元試薬1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA、15~20当量)を添加し、続いて、100mM EDTA(最終濃度1~2mM)を添加した。得られた反応混合物を、室温で18時間穏やかに撹拌した。15~20当量のブロモアセトアミドをGLP-1融合ペプチド溶液に添加し、反応混合物のpH値をトリス緩衝液(1M、pH9.1)によりpH7.5~8.1に調整した。2時間後、反応混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製した直後、プロテインAポリッシングを行った。
【0311】
表8は、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの単離収率を提供する。GLP-1融合ペプチド64(GF64)と同様に第1のリンカーペプチドがAPリンカーであり、GLP-1融合ペプチド8(GF8)と同様に第2のリンカーペプチドがGAリンカーであった場合、GLP-1共役環状PYYペプチドコンジュゲートの単離収率が不十分であったことが観察された。
【0312】
【表8】
【0313】
実施例3:GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの特性評価
(i)疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、(ii)LC-ESIMSによるインタクトな質量測定、(iii)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用して、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの分析的特性評価を実施した。GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの分析的特性評価の結果及びコンジュゲーション方法を表9に示す。
【0314】
【表9】
【0315】
実施例4:インビトロアッセイ
キットの指示書に従って、Lance競合cAMPイムノアッセイ(Perkin Elmer(Waltham,Massachusetts))を使用して細胞内cAMPを測定する細胞ベースのアッセイにおいて、機能活性及びインビトロ効力についてコンジュゲートをスクリーニングした。マウス又はヒトGLP-1R又はNPY2受容体(Y2R)を安定的に発現するクローンHEK293細胞をアッセイで使用した。GLP1Rを発現している細胞を解凍し、HBSS、5mM HEPES、0.1%BSA、0.5mM IBMXに懸濁させた。細胞をキットの抗cAMP抗体と混合し、384ウェル白色opti-plate内においてHBSS、5mM HEPES、0.1%BSAで連続希釈したコンジュゲートに添加した。室温で10分間インキュベートした後、イムノアッセイ検出混合物を添加した。アッセイプレートをEnvisionプレートリーダー(励起320nm、発光615nm及び665nm)においてTR-FRETアッセイとして読み取り、データを使用して、Prism統計ソフトウェア(GraphPad Software San Diego)を使用して化合物のEC50値を計算した。
【0316】
Y2R受容体における化合物の活性を求めるために、Y2Rを発現しているHEK293細胞を、10%ウシ胎児血清、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び600ug/mL G418を補給したDMEM高グルコース培地(Cellgro)中で培養し、G418を含まない培地中で384ウェルプレートにて一晩プレーティングした。アッセイの日に、細胞増殖培地を細胞から取り出し、5mM HEPES、500uM IBMX、及びHBSS中0.1%BSA中の6μLのコンジュゲート(2×)を添加した。次に、フォルスコリン(2×、5uM最終濃度)及びLANCE cAMP抗体(1:100)を含有する刺激緩衝液6μLを細胞に添加した。室温で25分間インキュベートした後、12μμLの検出混合物を添加し、LANCE cAMPイムノアッセイにおいてcAMP濃度を定量した。
【0317】
データ解析
Envisionプレートリーダーからのデータは、(615nm/665nm)x10,000として計算された相対蛍光単位(RFU)として表した。全ての試料は3つ組で測定された。各ウェル内の未知のcAMP濃度は、各プレート内に含まれる既知のcAMP濃度の参照標準から補間された。EC50、Log(EC50)、HillSlope(nH)、最大値、最小値などのパラメータは、非線形加重最小二乗法アプリケーションを使用して4-Pモデルで当てはめた対数化合物濃度に対するcAMP濃度値をプロットすることによって得られた。
【0318】
【表10】
【0319】
【表11】
【0320】
配列番号135、134、146、及び176のGLP-1Rの効力の、配列番号238、242、262、253、及び241との比較は、エキセンディン4(1-39)(配列番号58)を有するGLP-1融合ペプチドが、PYYペプチドとのコンジュゲーション後にGLP-1R効力を失ったことを示した。これらの結果に基づいて、エキセンディン4(1-39)(配列番号58)を有するGLP-1融合ペプチドを用いた試験は、この実験では好ましくなかった。
【0321】
ヒトNPY2R一次スクリーニングアッセイ:インビトロでGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートのNPY2R効力をスクリーニングするために使用した方法は、ヒトNPY2R Gi-タンパク質共役受容体の調節を通してアデニル酸シクラーゼによって生成されたフォルスコリン誘導性cAMPの阻害を測定するように設計された細胞ベースのアッセイであった。ヒトNPY2RでトランスフェクトされたCHO-K1細胞(DiscoverX)におけるフォルスコリン誘導性cAMP生成は、PYYアナログ及び対照によるNPY2Rの活性化によって用量依存的に減少し、FRETベースの競合cAMPイムノアッセイにおいて測定された。
【0322】
細胞を冷凍保存から取り出し、37℃の水浴中で解凍し、40mLの1×DPBS(pH7.2)(Gibco)に添加し、セルストレイナーで濾過した。細胞を450×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞ペレットを、0.125×10細胞/mLの密度で、DMEM/高グルコース、10% HIFBS、1% Pen/Strep、1 %L-グルタミン、1%ピルビン酸Naに再懸濁させた。最終5000細胞/ウェルになるように、コラーゲンでコーティングされた白色384ウェルプレートに40μL/ウェルで細胞を分注し、37℃、5% COで16~24時間インキュベートした。アッセイプレート中の細胞を、80μL/ウェルの1×DPBSを添加することによって2回洗浄し、上清をデカントした。1×HBSS、5mM HEPES、0.002mMフォルスコリン、0.1%BSA、0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)でサンプル及び対照の希釈物を調製し、20μL/ウェルの各サンプルを指定ウェルに添加し、室温で30分間、振盪しながらインキュベートした。次いで、20μL/ウェルのcAMP検出試薬混合物を各アッセイプレートに添加し、室温で2~24時間、振盪しながらインキュベートした。プレートリーダーでプレートを読み取った。全てのサンプルを4連で測定した。R環境内で非線形加重最小二乗法アプリケーションを使用して4-Pモデルで当てはめたlog化合物濃度にわたる生のLANCE cAMP値をプロットすることによって、データを分析した。
【0323】
ヒトGLP-1R一次スクリーニングアッセイ:インビトロでGLP-1融合タンパク質及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートのGLP-1R効力をスクリーニングするために使用した方法は、ヒトGLP-1R Gs-タンパク質共役受容体の調節を通してcAMP生成を測定するように設計された細胞ベースのアッセイであった。GLP-1融合ペプチド及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートによるGLP-1Rの濃度依存性活性化に続いて、ヒトGLP-1RでトランスフェクトされたHEK細胞中のcAMP蓄積をTRFRETベースの競合cAMPアッセイで測定した。
【0324】
ヒトGLP-1RでトランスフェクトされたHEK細胞をアッセイの日に解凍し、1×HBSS、5mM HEPES、0.1%BSA、及び1mM IBMXに0.5×10細胞/mLで再懸濁させ、10μLを384ウェルプレートの各ウェルに添加した(5000細胞/ウェル)。サンプルを1×HBSS、5mM HEPES、0.1%BSAで希釈し、10μL/ウェルでアッセイプレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。cAMP検出試薬を20μL/ウェルで添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした後、プレートリーダーで読み取った。全てのサンプルを4連で測定した。R環境内で非線形加重最小二乗法アプリケーションを使用して4-Pモデルで当てはめたlog化合物濃度にわたる生のLANCE cAMP値をプロットすることによって、データを分析した。
【0325】
実施例5:GLP-1融合ペプチド及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYコンジュゲートにおけるキシロース分析
サンプル調製:ペプチドマッピング用のサンプルを調製するために、各タンパク質分子(1mg/mL):GLP-1融合ペプチド共役環状PYYコンジュゲート(配列番号244)、GF40(配列番号152)、及びGF34(配列番号146)を、pH8.0で緩衝された8Mグアニジン/HClで1:4希釈した。これらのサンプルに、最終濃度が25mMに達するまで1M DTT(Sigma 43816-10ML、BioUltra)のアリコートを添加し、次いで、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。ヨードアセトアミド(Sigma、A3221-10VL)又はN-メチルマレイミド(NEM)(Sigma、E3876)のいずれかを使用してアルキル化を実施した。新たに調製した1Mアルキル化剤を約50mMに達するまで添加し、サンプルを暗所において室温で60分間インキュベートした。次いで、反応混合物(Sigma 43816-10ML、BioUltra)400uLごとに1M DTT 15μLを添加することによって、アルキル化反応をクエンチした。50mMトリス、1mM CaCl(pH=8.0)中で、製造元のプロトコルに従って、Zeba Spin脱塩カラム(Thermo、カタログ#89833)を使用してサンプルを脱塩した。50mM酢酸(凍結乾燥トリプシンと共に供給)中で再構成した1μg/μLのトリプシン1μLを添加した後、37℃で4時間、トリプシン(Promegaシークエンシンググレード、V511A)でサンプルを消化した。消化されたタンパク質の60μLのアリコートに100% TFA 0.6μLを添加することにより、トリプシン消化をクエンチした。サンプルをマイクロバイアル瓶に再懸濁させ、LC/MS分析のために4℃に設定したオートサンプラーに入れた。
【0326】
液体クロマトグラフィ及び質量分析:0.1mL/分の流速でAgilent Infinity 1290 UHPLC(Agilent Technologies、部品番号:G1330B、G4226A、G4220A、G4212A)を使用して、Agilent AdvanceBio Peptide Map Micro Bore Rapid Resolution Column(1×150mm、2.7μm、部品番号863600-911)に2μg(~10μL)の消化されたタンパク質を注入した。カラム温度を65℃で維持した。質量分析グレードHPLC溶媒(0.1%ギ酸及びB:0.1%ギ酸中100% ACN)をVWR(部品番号:LC452-1、LC441-1)から購入した。タンパク質分解ペプチドを、0.1% FA中2%から40%までACNの50分間の勾配を用いてカラムから溶出した。3.5kVの正の噴霧電圧、20(任意単位)のシースガス、7(任意単位)の補助ガス、299℃のイオン移動管、及び100℃の蒸発器を用いて、加熱した電子スプレーイオン化プローブ(HESI)を介してカラム溶出液をOrbitrap Q-Exactive質量分析計(Thermofisher Scientific)に導入した。フルMSスキャンで観察された上位5個の多量に存在するペプチドイオンを連続的に解離させることによって、データ依存的取得法を実施した。Orbitrap検出、70,000分解能、質量範囲150~2000m/z、自動利得制御(AGC)目標1.0e6、最長注入時間50ミリ秒に設定したプリカーサスキャンで質量分析を行った。1マイクロスキャンスペクトルをプロファイルモードで取得した。プリカーサの決定基準は、モノアイソトピックプリカーサ選択ペプチドであり、電荷状態:2~7、ダイナミックエクスクルージョン:6.0秒、及びプリカーサ強度閾値5e4であった。コリジョンセルに送られた1.6m/zの単離幅を有する四重極によってプリカーサペプチドを単離した。正規化された衝突エネルギー28(任意単位)の結果を、ペプチドイオンの高エネルギー衝突解離(HCD)に使用した。オービトラップ設定を用いた質量分析のためにオービトラップに移したプロダクトイオンは、17,500の分離電力、200~2000m/z範囲、AGC標的5e5、最長注入時間100ミリ秒、重心モードで取得されたスペクトル1マイクロスキャンである。
【0327】
データ分析:LC-MS/MSの生データを、Byonicソフトウェア(バージョン2.15.7)(Protein Metrics)を使用してデータベース検索に付した。以下のパラメータをデータ検索のために使用した:プリカーサイオン質量公差、8 ppm;プロダクトイオン質量公差、HCDスペクトルについては20ppm;可変修飾としては、システインカルバミドメチル化、又はN-メチルマレイミド(NEM)、システインDTT付加体形成、存在する場合はシステインペプチドYY(PYY)コンジュゲートが含まれ、アスパラギン、セリンキシロースの脱アミノ化、並びにByonicグリカンライブラリから得られた78の哺乳動物O-結合グリカンのセリン及びスレオニンO-グリコシル化が挙げられる。全ての検索のために、最大2つの欠失した切断を有する完全トリプシン特異性検索を選択した。タンパク質偽発見率(FDR)を1%に設定した。タンパク質データベースは、各タンパク質のアミノ酸配列を含有していた。全てのByonic検索結果を、Bylogicソフトウェア(バージョン2.15.296)(Protein Metrics)で処理し、ペプチドを、最大プリカーサm/z誤差8ppm及びXIC面積ウインドウ2分で、最小Byonicスコア15、最大アルトランスコア/プライマリランクスコア0.99でフィルタリングした。リンカー領域を構成するアイソフォームの全てのペプチドXICピーク面積を考慮することによって、セリンキシロシル化レベルを報告した。次いで、各セリン残基におけるキシロシル化を、総XICピーク面積の合計分率として計算した。また、MaxQuantソフトウェアバージョン1.6.1(MaxPlank Institute)のAndromeda検索エンジンを使用してデータベース検索を実行して、PTM部位局在化確率を得た。完全に環化されたPYY及びトリプシンにより切断されたPYY構造に対応する質量を、BIOVIA描画ソフトウェアを使用して得た。データを表12に報告する。
【0328】
【表12】
リンカーのセリンにおけるキシロース修飾:部位の同定及び修飾レベル
ND=MS/MSにより検出されず、NQ=定量されず;NA=リンカーのセリン位置は分子には適用できない、**番号:配列番号:括弧は、配列番号152の部位番号を示す。
【0329】
表12は、目的のピーク/ピーク(推定修飾、すなわち、セリンキシロシル化)に基づくXIC%を、以下の等式に従って、部位特異的キシロシル化に寄与する全ての種の合計に対して正規化した、Bylogicにおけるピーク積分を使用して同定及び定量された部位特異的キシロシル化をまとめる。
【0330】
修飾のXIC%=(修飾ペプチドのXIC/ペプチド対応物のΣXIC)×100
調べた3つの分子は全て、GLP-1ペプチド及びヒンジ-Fc領域ペプチドを接続する同じ第1のリンカーペプチドAS(GS)からなる。しかしながら、配列番号152(GF40)にみられるGLP-1融合ペプチドと配列番号244及び146(GF34)の両方にみられるGLP-1融合ペプチドとの差に起因して、表12に示すように、配列番号152における3つのセリン残基の位置は、配列番号244及び146とは異なる。ペプチドの分析によって、配列番号244及び146のSer-41、Ser-46、Ser-51における3つの部位特異的セリン残基キシロシル化事象、及び配列番号152のSer-33におけるセリン残基キシロシル化事象が証明された。部位特異的キシロシル化の定量は、ほとんどのキシロシル化ペプチド種が逆相液体クロマトグラフィ中に同時溶出したので、限定的にしか実現できなかった。例えば、配列番号244では、Ser-41は約9%であり、一方、Ser-46及びSer-51は約7%であった。同様に、配列番号146の3つの部位は全て、約5%でキシロシル化された。配列番号152のキシロシル化は、約0.1%とより少ない程度で発生することが見出された。
【0331】
治療用タンパク質のGSリンカー領域は、キシロシル化を受けやすく、キシロシル化レベルはリンカー長に基づいて変化することが示されている(Wen et al.,「The propensity for xylosylation in(GS) linkers occurs when n>2,」Anal.Chem.85:4805-12(2013);Sphar et al.,Protein Sci.22:1739-53(2013),Sphar et al.,mAbs 6:904-14(2014))。3つ全ての分子にみられる第1のリンカーペプチド、AS(GS)リンカーは、全て又はいくつかのセリン残基においてキシロシル化を示し、これらのデータに基づいて、GLP-1融合ペプチドコンストラクトを調製する際に、セリンを含有する第1のリンカーペプチドを使用することは、この実験では好ましくなかった。
【0332】
実施例6:GLP-1融合ペプチドのエクスビボにおけるヒト血漿安定性
ナトリウムヘパリン抗凝固剤を含む4人の健常ヒトドナー由来の新鮮な全血を、安定性サンプルを準備する日に受け取った。新鮮な全血を、3500RPMで15分間遠心分離することによって血漿のために処理し、次いで、血漿を単離した。4人全てのドナー由来の血漿を合わせ、0.2μフィルターを通して濾過し、37℃に加温した。20nMのGLP-1融合ペプチド及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYコンジュゲート二重アゴニスト(DA)アナログでサンプルをスパイクし、ゼロ時間サンプルを直ちに収集し、分析するまで-80℃で保存した。サンプルを37℃でインキュベートし、指定の時点で収集し、分析するまで-80℃で保存した。分析の日に、ゼロ時間及びその後の時点のサンプルを解凍し、機能性細胞ベースのバイオアッセイにおいて一緒に分析した。
【0333】
ヒト血漿サンプル中の生物活性GLP-1融合ペプチド及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYコンジュゲートDAアナログのレベルを検出及び定量するために使用した方法は、ヒトGLP-1R Gタンパク質共役受容体の調節を通してcAMP生成を測定するように設計された細胞ベースのバイオアッセイであった。GLP-1融合タンパク質及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートによるGLP-1Rの濃度依存性活性化に続いて、ヒトGLP-1RでトランスフェクトされたHEK細胞中のcAMP蓄積をTRFRETベースの競合cAMPアッセイで測定した。ヒトGLP-1RでトランスフェクトされたHEK細胞をアッセイの日に解凍し、1×HBSS、5mM HEPES、0.1%BSA、及び1mM IBMXに0.5×10細胞/mLで再懸濁させ、10μLを384ウェルプレートの各ウェルに添加した(5000細胞/ウェル)。安定性サンプルを解凍し、1×HBSS、5mM HEPES、0.1%BSA、5mM EDTA、プロテアーゼ阻害剤から構成されるアッセイ緩衝液中で20%血漿に希釈し、その後の希釈は、20%正常ヒト血漿を含むアッセイ緩衝液で行った。20%正常ヒト血漿を含むアッセイ緩衝液中で、各化合物について既知の濃度の参照標準を調製した。標準及びサンプルを各アッセイプレートに10μL/ウェルで添加し、室温で30分間インキュベートした。cAMP検出試薬を20μL/ウェルで添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした後、プレートリーダーで読み取った。
【0334】
全てのサンプルを4連で測定した。対数変換された濃度、非線形当てはめ、Log v.応答(可変勾配)を用いて化合物の参照標準曲線を作成し、EC10及びEC90値を、定量的アッセイの上限及び下限として求めた。各化合物についての安定性サンプルの濃度を、対応する参照標準曲線から外挿した。各安定性サンプルの生物活性残存率を、対応するゼロ時間サンプルに対して求め、168時間の時間経過にわたって、出発血漿濃度の%として報告した。%出発血漿濃度=[安定性サンプルの平均]/[ゼロ時間の平均]×100。
【0335】
結果:GLP-1融合ペプチド配列番号144(GF32)、148(GF36)、145(GF33)、151(GF39)、146(GF34)、147(GF35)、149(GF37)、152(GF40)、及びデュラグルチド対照を、37℃で7日間、エクスビボでヒト血漿中においてインキュベートし、インビトロGLP-1R cAMP機能アッセイで機能的安定性を測定した(図1A)。GLP-1ペプチド配列番号58(エキセンディン4(1-39))を有するGLP-1融合タンパク質が最も高い安定性を示し、続いて、配列番号57((A8G、G22E、R36G)GLP-1(7-37))及びデュラグルチド対照であり、配列番号56((A8S、A30E)GLP-1(7-36))の安定性が最も低かった。これらの結果に基づいて、GLP-1ペプチド配列番号56を有するFc融合タンパク質を用いた試験は、この実験では好ましくなかった。
【0336】
GLP-1融合ペプチド配列番号152(GF40)及び146(GF34)、並びにこれらの対応するGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート配列番号248及び262、並びに別のGLP-1融合ペプチド配列番号153(GF41)を、デュラグルチド対照と共に、37℃で7日間、エクスビボでヒト血漿中においてインキュベートした。インビトロGLP-1R cAMP機能アッセイで機能安定性を測定した(図1B)。GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートの安定性は、対応するコンジュゲートしていない融合タンパク質と同等であり、これは、PYYペプチドのコンジュゲーションがGLP-1ペプチドの安定性に影響を与えなかったことを示す。GLP-1融合ペプチド配列番号146(GF34)及びGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート配列番号262が、最高の安定性を有し、配列番号152(GF40)、248、及び153(GF41)は、デュラグルチド対照と同様の安定性を有した。
【0337】
実施例7:インビボにおけるマウス安定性アッセイ
方法
LCMS法:抗ヒトFc抗体を使用して免疫親和性捕捉によって血漿サンプルを処理した後、トリプシンで消化し、トリプル四重極質量分析計で逆相LC-MS/MS分析によって分析した。GLP-1のN末端におけるペプチド、すなわち、GLPD30についてはHGE(HGEGTFTSDVSSYLEEQAAK(配列番号263)、GLPD31についてはHGEGTFTSDLSK(配列番号264)を、活性GLP1を含有する分子の代用としてモニタリングした。Fcに位置するペプチド、すなわち、VVS(VVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号265))を、総Fcレベルの代用としてモニタリングした。環状PYYペプチドに位置するペプチド、YYA(YYASLR(配列番号266))を、PYYレベルの代用としてモニタリングした。較正標準曲線及び品質管理サンプルを、血漿中の参照標準をスパイクすることによって調製し、試験サンプルと同時に同じ手順を使用して処理した。
【0338】
結果
マウスにおける投与72時間後のインタクトなGLP-1融合ペプチド部分N末端の血漿曝露レベルをLCMSアッセイで測定し、Fcレベルに対するHGE N末端GLP-1融合ペプチド部分配列レベルのパーセントとして報告した(FcのHGE%)。表13の結果は、AP反復を含む配列番号62及び66の第1のリンカーペプチドが、GA反復を含む配列番号60の第1のリンカーペプチドよりも少なかったことを示す。これらの結果に基づいて、AP反復を含む第1のリンカーペプチドを有するGLP-1融合ペプチドを用いた試験は、この実験では好ましくなかった。
【0339】
【表13】
BQL=定量限界未満
【0340】
DIOマウスにおける急性及び亜慢性の薬力学試験
これらの試験で使用した全てのげっ歯類は、Janssen R&D(Spring House,PA)において、Institutional Animal Care & Use Committee(IACUC)によって承認されたプロトコルに従って維持した。動物を、食物及び水に自由にアクセスできる標準的な温度及び湿度条件で、12時間明/12時間暗サイクルで飼育した(特に断りのない限り)。個々に飼育した20週齢の雄DIO(15週間60% kcal%高脂肪食)C57BL/6Tマウス(Taconic Laboratory)を使用した。動物を、体重に基づいて群に無作為化した。腹腔内(IP)耐糖能試験(IPGTT)については、ビヒクル、デュラグルチド(Eli Lilly;Myoderm(Norristown,PA)から購入)、又は化合物1~4(それぞれ配列番号113、配列番号225、配列番号136、配列番号229)をマウスに投与した(n=8/群)。24時間後(一晩絶食後)、マウスにデキストロース(1g/kg)をIP投与した。One Touch Ultra glucometer(LifeScan)を用いて指定の時点で血中グルコースを測定し、血漿インスリン(Meso Scale Discovery)を0及び10分で測定した。急性食物摂取(FI)及び体重減少(WL)試験については、個々に飼育したDIOマウスに、ビヒクル、デュラグルチド、又は化合物を投与し、食物及び体重を3日間にわたって測定した(n=8/群)。データを図2A~2B、3A~3B、及び4A~4Bに示す。図2A~2B、図3A~3B、及び図4A~4Bのデータは、GLP-1融合ペプチドが望ましいGLP-1Rの効能を有し、環状PYYペプチド配列番号27とコンジュゲートしたときに効能が向上したことを示す。図5A~5B及び図6A~6Bのデータから、GLP-1融合ペプチドの上方ヒンジがGLP-1Rの効力に寄与すると判定された。
【0341】
実施例8:カニクイザルを用いたインビボ試験
方法
効能試験
ランイン(run-in)及びビヒクル処理中に測定したベースライン(0日目前3日間の平均)食物摂取量(主要、加重80%)及び体重(副次的、加重20%)に基づいて、サルを選択し、化合物処理について群に無作為化した。試験は、順化/トレーニング2週間、3日ごと(Q3D)のビヒクル処理3週間、及びベースラインの食物摂取測定、処理(5回、Q3D)12日間、及び休薬2週間の9週間にわたった。動物にビヒクルを7回投与し、試験物品のうちの1つ(投与体積0.5mL/kg)をおよそ午前8時にQ3Dで5回投与した。各群の用量は以下のとおりであった:デュラグルチド(0.0125mg/kg、n=11)、化合物4(高用量;0.0148mg/kg、n=11)、化合物4(低用量;0.0074mg/kg、n=6)。カロリー摂取は毎日測定し、体重はQ3Dで測定した。
【0342】
曝露応答分析
2つの分析方法を使用して、カニクイザルのインビボ血漿サンプルから化合物4及びデュラグルチドの濃度を測定した。
【0343】
カニクイザルにおける化合物4及びデュラグルチドのリガンド結合アッセイ(LBA)曝露分析は、Meso Scale Discovery(MSD)Sector Imager S600(Meso Scale Diagnostics(Rockville,MD USA))を使用して、目的にかなった電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)法によって実施した。化合物4及びデュラグルチドの両方について活性GLP-1を測定するためのフォーマットは、以下のように記載される:アナライトを、GLP-1 N末端(7-17)特異的mAb(ビオチン-抗GLP1(7-37、7-36、アミド、遊離NT)mAb)で捕捉し、抗ヒトFc特異的mAb(SulfoTag-R10)で検出した。1/F2標準曲線重み付けを用いた5パラメータロジスティックフィットを使用して、Watson LIMS(商標)ソフトウェア(Thermo Fischer Scientific(Waltham,MA USA))において、生データ回帰を実施した。
【0344】
分子の個々の部分の定量のために、ボトムアップトリプシンアッセイによって、カニクイザルにおける化合物4及びデュラグルチドのLC-MS/MS分析も行った。トリプシンアッセイでは、抗ヒトFc抗体による免疫親和性捕捉を使用して血漿サンプルからアナライトを精製し、続いて、トリプシンで消化し、SCIEX Triple Quad(商標)5500 LC-MS/MS System(CIEX(Concord,Ontario,Canada))で逆相LC-MS/MSにより分析した。安定な同位体[13C6、15N4-アルギニン]及び[13C6、15N2-リシン]標識ヒトIgG4(Sigma、カタログ番号MSQC7)を内部標準として使用し、免疫親和性捕捉工程の開始時に添加した。その活性にはHGEペプチドが必須であるため、GLP-1のN末端のペプチド、すなわち、HGE(HGEGTFTSDVSSYLEEQAAK)(配列番号263)を、活性GLP-1を含有する分子の代用としてモニタリングした。
【0345】
結果
本出願の実施形態による二重アゴニストは、環状PYYペプチドに共有結合で連結しているGLP-1融合(GF)ペプチドを含有する。二重アゴニストは、第1のリンカーペプチド(N末端リンカーペプチド)を通してヒンジ-Fc領域に融合している組み換えグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)ペプチド又はGLP-1変異体ペプチドと、組換えGLP-1融合(GF)ペプチドの第2のリンカーペプチド(C末端リンカーペプチド)内に含有される標的システインに化学的にコンジュゲートしている環状PYYペプチドとから構成される。二重アゴニストの各構成要素は、各受容体における効力、安定性、翻訳後修飾、コンジュゲーション生成収率、及び生物物理的特性が挙げられるが、これらに限定されない、いくつかの重要なパラメータに基づいて経験的に選択した。
【0346】
GLP-1ペプチド変異体配列番号57をGLP-1ペプチド変異体として選択した。GLP-1ペプチド-1変異体配列番号56は、インビボにおいてそれほど強力ではなく、エクスビボにおけるヒト血漿安定性試験(図1A)において安定性が低かったため、この実験では好ましくなかった。GLP-1ペプチド変異体配列番号58は、予想外なことに、環状PYYペプチドにコンジュゲートしたときにGLP-1Rの効力を失い(表11)(例えば、配列番号135、134、146、及び176のGLP-1Rの効力を参照)、配列番号238、242、262、253、及び241は、エキセンディン4(1-39)(配列番号58)を有するGLP-1融合ペプチドが、一部のPYYペプチドとのコンジュゲーション後にGLP-1Rの効力を失った又は有意に低下したことを示した。これらの結果に基づいて、エキセンディン4(1-39)(配列番号58)を有するGLP-1融合ペプチドを用いた試験は、この実験では好ましくなかった。GLP-1ペプチド変異体配列番号58は、更に、易NG脱アミド化モチーフを含有する。配列番号59は、第1のリンカーペプチド中の第1のアミノ酸がグリシンであったとき、GLP-1ペプチド/第1のリンカーペプチド界面で易NG脱アミド化モチーフを形成した。更に、GLP-1ペプチド配列番号59を含有するGF28(配列番号140)は、食物摂取(FI)及び体重(BW)の変化%の両方について、デュラグルチドよりも効力が低かった(それぞれ、図10A及び図10B)。
【0347】
配列番号60は、第1のリンカーペプチド(N末端リンカーペプチド)として選択された。第1のペプチドリンカー、配列番号61を含有するGLP-1融合タンパク質は、低い発現及び精製収率を有しており、所望の量のGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを生成するためのこの実験では好ましくなかった。AP反復を含有する第1のリンカーペプチドは、第2の末端ペプチドがGA反復であった場合には不十分な収率を有し(例えば、実施例2及び表8を参照)、配列番号60と比較してインビボにおける安定性が低かった(例えば、表13を参照)。これらの結果に基づいて、AP反復リンカーを用いた試験は、この実験では好ましくなかった。リンカーを短くした結果、効力が低下した(例えば、異なる長さの第1のリンカーペプチドを有する同じGLP-1ペプチド(配列番号58)を含むGLP-1融合ペプチドの効力を比較する、図5の配列番号152、図10A~10Bの配列番号140、及び図12を参照)。したがって、これらの結果に基づいて、より短いリンカーを用いた試験は、この実験では好ましくなかった。キシロシル化されるセリン残基の性質に基づいて、セリン含有リンカーの使用は、この実験では好ましくなかった(例えば、表12を参照)。
【0348】
GLP-1変異体ペプチド、配列番号57、第1のリンカーペプチド、配列番号60、及びヒンジ-Fc領域ペプチド、配列番号84を含有していたGLP-1融合ペプチド、GF19(配列番号131)は、食物摂取(FI)及び体重(BW)の変化%の両方についてデュラグルチドと同等の効力を示した(例えば、それぞれ図6A及び図6Bを参照)。
【0349】
GLP-1融合ペプチドGF1(配列番号113、化合物1)、GF19(配列番号131)、及びGF24(配列番号136、化合物3)は全て、食物摂取及び体重変化%についてデュラグルチドと同等の効能を示した(例えば、それぞれ図2A~2B、図6A~6B、及び図3A~3Bを参照)。GF1(配列番号113、化合物1)及びGF24(配列番号136、化合物3)も、耐糖能に対してデュラグルチドと同等の効能を示した(図4A~4B及び図7A~7B)。
【0350】
しかしながら、環状PYYペプチド(配列番号27)をGF19(配列番号131)の第2のリンカーペプチド、配列番号92にコンジュゲートさせることによって、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート、配列番号251を作製した場合、デュラグルチドと比較して、食物摂取又は体重変化%について更なる薬理作用は存在しなかった(それぞれ図11A及び図11B)。追加の第2のリンカーペプチドを試験したが、少なくとも以下の理由から、この実験では好ましくなかった:(a)配列番号95は、第1のリンカーペプチドがAP反復であったときに低い生成収率を有し、(b)配列番号100は、組み換え発現中に切断され、(c)ヒンジFc領域ペプチドのC末端にPYYペプチドコンジュゲーションの標的システインを含む、第2のリンカーペプチドを有さないヒンジFc領域ペプチドは、タンパク質発現中に切断され、これは、PYYペプチドコンジュゲーションしやすいインタクトなタンパク質を生成するために第2のリンカーペプチドが必要であったことを示し、(d)第2のリンカーペプチドを含有するセリンは、キシロシル化される可能性を有し、(e)より短い第2のリンカーペプチドは、より低い純度で、より低い効率にてコンジュゲートした。
【0351】
第2のリンカーペプチド、配列番号94を有するGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート、配列番号225(化合物2)は、FI及びBW変化%の両方についてデュラグルチドよりも有意に高い効力を示した(例えば、それぞれ図2A及び2Bを参照)が、それにより、驚くべきことに、高濃度液体製剤中において4℃で2週間保管している間に有意にタンパク質が失われた。第2のリンカーペプチド、配列番号93を有する同等のGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート、配列番号229は、4℃及び40℃で2週間保管している間、高濃度液体製剤中で安定であり、タンパク質レベルを維持していた(表14)。第2のリンカーペプチドが、これら2つの分子間の唯一の差異であり、したがって、配列番号93をこの実験における第2のリンカーペプチドとして選択した。
【0352】
【表14】
【0353】
長い半減期を有する剤に必要なインビボ安定性を付与し、効力を保持しながらGLP-1融合タンパク質に連結できるようにするために、環状PYYペプチド機能活性にはいくつかの修飾が必要である。合成ペプチド化学を用いて、これらの修飾を組み込む環状PYYペプチドを作製し、当該環状PYYペプチドを、GLP-1融合ペプチドに化学的にコンジュゲートさせて、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートを生成した。
【0354】
環状PYYペプチドを選択してGLP-1融合ペプチドにコンジュゲートさせて、PYYペプチドの効力及び安定性の改変を調査及び比較した。PYYペプチドを環化させて、ペプチド骨格に沿ったタンパク質分解の複数の部位を安定化させた。
【0355】
環状PYYペプチドを選択して、GLP-1融合ペプチドにコンジュゲートさせて、環状PYYペプチドのN末端結合からC末端結合までの間隔及びサイズ、並びに効力及び安定性に対する効果について調べた。これらの環状PYYペプチドは、環内の炭素数が様々であり、N末端をC末端に選択的に連結させるために使用したシステイン及びホモシステインの位置も異なっていた。例えば、次を参照:
a)hCys31に連結しているβA2 配列番号25、
b)Cys30に連結しているβA2 配列番号28及び29、
c)Cys30に連結しているG2 配列番号27及び30、
d)hCys31に連結しているγAba2 配列番号34。
【0356】
35位で置換されたN-Meアルギニン(N-MeR35)(配列番号27、28、33、及び34)及び35位と36位との間の還元アミド結合(psi35,36)(配列番号24、25、29、及び30)を、環状PYYペプチド中の36位におけるアミド化されたC末端チロシンを安定化させ、効力を保持する能力について比較した(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2018/0117170号を参照)。特定の場合では、N-Me35修飾の結果、psi35,36修飾と比較して効力が低下した(例えば、米国特許公開第2018/0117170号)、表3を参照、これは、psi35,36修飾を有する配列番号102が、N-Me35修飾を有する配列番号122よりもヒトY2受容体に対して約12倍強力であったことを示す)。
【0357】
予想外なことに、環状PYYペプチド、配列番号27を含有する、GLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲート、配列番号229におけるN-MeR35修飾の効力は、環状PYYペプチド、配列番号30を含有する配列番号232のpsi35,36修飾と比較して同等以上であった(表11)。
【0358】
構成要素の組み合わせによって商品コストが下がり、試薬の調達が容易になったと判定されたことに加えて、効力及び安定性に基づいて、環状PYYペプチド、配列番号27をこの実験におけるPYYペプチドとして選択した。C末端付近の30位でシステインに連結しているN末端における天然アミノ酸グリシンは、環状PYYペプチドをGLP-1融合ペプチドとコンジュゲートさせたときに試験した任意の環状PYYペプチドについて達成された最高レベルの効力及び安定性と同等の効力及び安定性を有していた。環状PYYペプチド配列番号27が十分な効力及び安定性を有していたので、31位のホモシステインよりも30位のシステインを選択した。したがって、より高価でありあまり容易に入手することができない非天然アミノ酸は、この実験では必要なかった。36位におけるC末端アミド化チロシンを安定化させるために使用したN-MeR35は、費用がかかるpsi35,36修飾よりも安価でありより容易に入手可能な試薬である。これは、特別な構成要素の必要性を排除し、同じ安定性及び効力を提供する。
【0359】
加えて、PEGスペーサーは効力に必要ではなく、また、予想外なことに、PEGスペーサーはインビボにおけるPYY安定性にも必要ではなかったと判定された。PEGスペーサーを有するmAb-環状PYYペプチドコンジュゲートは、インビボ安定性を増大させたと判定されていたので、これは予想外であった(例えば、米国特許出願公開第2018/0117170号、表4を参照、これは、投与48時間後に採取したマウス由来の血液サンプル中の全ヒトmAbレベルの量に対するインタクトな化合物の残存率を示す。12×PEGスペーサを含有する化合物1は、48時間で90.8%残存しており、6×PEGスペーサを含有する化合物2は、48時間で65.6%残存しており、PEGスペーサーを有さない化合物3は、48時間で51%しか残存していなかった)。この結果、商品の製造コストを増加させるであろうPEG構成要素の必要性が排除された。
【0360】
2つの安定な環状PYYペプチド配列番号27が付加されたGLP-1融合ペプチド配列番号136を含有していた配列番号229を、この実験におけるGLP-1融合ペプチド共役環状PYYペプチドコンジュゲートとして選択した。配列番号229は、FI及びBWの両方について、配列番号136(GLP1Rのみ会合)に比べてY2R会合から更なる薬力学的効能を示し(図3A~3B)、それと共に、耐糖能に対してはデュラグルチド及び配列番号136と同等のGLP1Rの効力を示した(図4A~4B及び7A~7B)。
【0361】
FI及びBWに対するデュラグルチド及び配列番号229(化合物4)の効果をDIOマウスで比較した。利用可能な試験の積分曝露応答非線形回帰分析に基づいて(化合物4についての6つの試験及びデュラグルチドについての7つの試験;用量0.03~1.0nmol/kg)、3日目に臨床的に関連する活性GLP-1(HGE)曝露をもたらす用量(0.3nmol/kgを単回皮下投与)で、化合物4は、活性を同じにしたGGLP1(HGE)曝露でのFI及びBWの低下において(図8A~8B)、コンジュゲートの環状PYYペプチドによるY2R会合を介して、デュラグルチドに対して更なる薬理作用を示した。0.3nmol/kg(単回SC投与)のデュラグルチドの同じHGE濃度では、化合物4(配列番号229)による曝露応答非線形回帰に基づいて、計算されたFI及びBW変化%は、それぞれ、デュラグルチドよりも約2.1及び1.5倍大きかった。
【0362】
過体重カニクイザルにおいて、個々のPK及びカロリー摂取ベースの曝露応答分析(図9A~9B)は、臨床的に関連するデュラグルチド曝露(T2DM患者における1.5mgのQW SC投与後に定常状態のCtrough及びCmaxを包囲する1~2nM)[Geiser et al.,Clin Pharmacokinet 55(5):(2016)])において、化合物4は、活性を同じにしたGLP-1曝露でデュラグルチドと比較して約1.7倍~2倍(95%信頼区間:1.3~3.3、リガンド結合アッセイ[LBA]に基づくPK、図9A)又は約1.5~1.6倍(95%信頼区間:1.0~2.8、LC-MS/MS HEに基づくPK、図9B)大きくカロリー摂取率が低下することを示唆し、これは、化合物4の環状PYYペプチドからの更なる薬理作用を実証するものであった。
【0363】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本説明によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0364】
引用した全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0365】
本発明の例示的なGLP-1融合環状PYYペプチドコンジュゲートとしては、以下が挙げられる:
【0366】
配列番号225
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0367】
【化46】
【0368】
配列番号226
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0369】
【化47】
【0370】
配列番号227
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,psi-(R35,Y36)]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0371】
【化48】
【0372】
配列番号228
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,psi-(R35,Y36)]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0373】
【化49】
【0374】
配列番号229
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0375】
【化50】
【0376】
配列番号230
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0377】
【化51】
【0378】
配列番号231
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,psi-(R35,Y36)]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0379】
【化52】
【0380】
配列番号232
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,psi-(R35,Y36)]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0381】
【化53】
【0382】
配列番号233
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0383】
【化54】
【0384】
配列番号234
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0385】
【化55】
【0386】
配列番号235
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0387】
【化56】
【0388】
配列番号236
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0389】
【化57】
【0390】
配列番号237
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0391】
【化58】
【0392】
配列番号238
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0393】
【化59】
【0394】
配列番号239
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0395】
【化60】
【0396】
配列番号240
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0397】
【化61】
【0398】
配列番号241
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0399】
【化62】
【0400】
配列番号242
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0401】
【化63】
【0402】
配列番号243
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0403】
【化64】
【0404】
配列番号244
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-hC31),K(PEG24Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0405】
【化65】
【0406】
配列番号245
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0407】
【化66】
【0408】
配列番号246
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0409】
【化67】
【0410】
配列番号247
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0411】
【化68】
【0412】
配列番号248
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0413】
【化69】
【0414】
配列番号249
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-E30),S4,K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0415】
【化70】
【0416】
配列番号250
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-E30),S4,K(Ac)11,psi-(R35,Y36)]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0417】
【化71】
【0418】
配列番号251
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0419】
【化72】
【0420】
配列番号252
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0421】
【化73】
【0422】
配列番号253
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(gAba2-COCH-hC30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0423】
【化74】
【0424】
配列番号254
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0425】
【化75】
【0426】
配列番号255
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0427】
【化76】
【0428】
配列番号256
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0429】
【化77】
【0430】
配列番号257
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0431】
【化78】
【0432】
配列番号258
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0433】
【化79】
【0434】
配列番号259
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,psi-(R35,Y36)]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0435】
【化80】
【0436】
配列番号260
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(βA2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0437】
【化81】
【0438】
配列番号261
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36単量体コンジュゲート
構造:
【0439】
【化82】
【0440】
配列番号262
名称:GLP-1融合体-[シクロ-(G2-COCH-C30),K(Ac)11,N-Me-R35]-PYY2-36ホモ二量体コンジュゲート
構造:
【0441】
【化83】

以下の態様を包含し得る。
[1] 環状PYYペプチドに結合したグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、前記GLP-1融合ペプチドが、GLP-1ペプチド、第1のリンカーペプチド、ヒンジ-Fc領域ペプチド、及び第2のリンカーペプチドを含み、前記第1のリンカーが、任意選択で欠損している、コンジュゲート。
[2] 前記環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
【化84-1】
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z 30 が存在しない場合にのみ1である)、
BRIDGEは、-Ph-CH -S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CH S-、-SCH C(O)NH-、
-(OCH CH NHC(O)CH S、-NHC(O)-、又は-CH S-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、
は、G又はKであり、
11 は、D又はKであり、
22 は、A又はKであり、
23 は、S又はKであり、
26 は、A又はHであり、
30 は、L、Wであるか、又は存在せず、
(但し、Z 30 は、qが1である場合にのみ存在しない)、
34 は、
【化84-2】
であり、
35 は、
【化84-3】
であり、
前記誘導体が、アミド化、アシル化、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は2つ以上のプロセスによって修飾された式Iの化合物である、上記[1]に記載のコンジュゲート。
[3] 前記環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
nは、1、2、3、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z 30 が存在しない場合にのみ1である)、
BRIDGEは、-Ph-CH -S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CH S-、-SCH C(O)NH -、-(OCH CH NHC(O)CH S、-NHC(O)-、又は-CH S-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化84-4】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CH Br、-C(O)CH I、又は-C(O)CH Clで置換され、
は、G又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化84-5】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CH Br、-C(O)CH I、又は-C(O)CH Clで置換され、
11 は、D又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化84-6】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CH Br、-C(O)CH I、又は-C(O)CH Clで置換され、
22 は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化84-7】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CH Br、-C(O)CH I、又は-C(O)CH Clで置換され、
23 は、S又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、任意選択で、
【化84-8】
(式中、iは、0~24の整数であり、X=Br、I、又はClである)、
-C(O)CH Br、-C(O)CH I、又は-C(O)CH Clで置換され、
26 は、A又はHであり、
30 は、Lであり、
34 は、
【化84-9】
であり、
35 は、
【化84-10】
である、上記[2]に記載のコンジュゲート。
[4] 前記環状PYYペプチドが、式Iによって表されるか、又はその誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり、
式中、
pは、0又は1であり、
mは、0、1、2、3、又は5であり、
nは、1、2、又は4であり、
qは、0又は1であり(但し、qは、Z 30 が不在の場合にのみ1であり得る)、
BRIDGEは、-Ph-CH -S-、-トリアゾリル-、-NHC(O)CH S-、-(OCH CH NHC(O)CH S、-NHC(O)-、又は-CH S-であり、
は、K、A、E、S、又はRであり、
は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CH Brで置換されており、
は、G又はKであり、当該Kのアミノ側鎖は、-C(O)CH Brで置換されており、
11 は、D又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CH Brで置換されており、
22 は、A又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CH Brで置換されており、
23 は、S又はKであり、前記Kのアミノ側鎖は、-C(O)CH Brで置換されており、
26 は、A又はHであり、
30 は、Lであり、
34 は、
【化84-11】
であり、
35 は、
【化84-12】
である、上記[2]に記載のコンジュゲート。
[5] 前記環状PYYペプチドが、配列番号1~54からなる群から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である、上記[2]に記載のコンジュゲート。
[6] 前記環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、若しくは34から選択されるか、又はその薬学的に許容される塩である、上記[5]に記載のコンジュゲート。
[7] 前記GLP-1融合ペプチドが、前記環状PYYペプチドのリシン残基において前記環状PYYペプチドに共有結合で連結している、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[8] 式I中のZ 、Z 、Z 11 、Z 22 、及びZ 23 のうちの1つだけがリシンであり、前記リシンが、前記GLP-1融合ペプチドの前記第2のリンカーペプチドにおけるシステイン残基に共有結合で連結している、上記[7]に記載のコンジュゲート。
[9] 式I中のZ 11 がリシンである、上記[8]に記載のコンジュゲート。
[10] 前記GLP-1ペプチドが、配列番号56~59からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[11] 前記第1のリンカーペプチドが、存在し、かつ配列番号60~83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[12] 前記ヒンジ-Fc領域ペプチドが、配列番号84~90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[13] 前記第2のリンカーペプチドが、配列番号93~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[14] 前記第2のリンカーペプチドが、配列番号93、94、95、106又は111のアミノ酸配列を含む、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
[15] 環状PYYペプチドに共役しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、前記GLP-1融合ペプチドが、配列番号113~224及び267~274からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記環状PYYペプチドが、配列番号24、25、27、28、29、30、33、若しくは34から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はその薬学的に許容される塩である、コンジュゲート。
[16] 前記GLP-1融合ペプチドのアミノ酸残基287~289の間のシステイン残基、好ましくはシステイン残基288が、化学リンカーを介して、前記環状PYYペプチドの残基7、9、11、22、又は23におけるリシン残基、好ましくは前記環状PYYペプチドのリシン残基11と共有結合で連結している、上記[15]に記載のコンジュゲート。
[17] 環状PYYペプチドに共役しているグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)融合ペプチドを含むコンジュゲートであって、配列番号225~262からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はその薬学的に許容される塩である、コンジュゲート。
[18] 前記環状PYYペプチドの側鎖、好ましくは前記環状PYYペプチドのリシン残基の側鎖に導入された求電子剤、好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミドを、前記GLP-1融合ペプチドの前記第2のリンカーペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、それにより、前記環状PYYペプチドと前記GLP-1融合ペプチドとの間に共有結合性連結を生じさせることを含む、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載のコンジュゲートを生成する方法。
[19] 前記GLP-1融合ペプチドの前記第2のリンカーペプチドの前記システイン残基が、前記GLP-1融合ペプチドを過剰なアザホスフィン還元剤と接触させることによって還元され、前記還元されたシステイン残基が前記求電子剤と反応する、上記[18]に記載の方法。
[20] 前記アザホスフィン還元剤が、1,3,5-トリアザ-7-ホスファトリシクロ[3.3.1.1]デカン(PTA)又はその誘導体である、上記[19]に記載の方法。
[21] 上記[1]~[17]のいずれか一項に記載のコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
[22] それを必要としている対象における疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、前記疾患又は障害が、肥満、I型又はII型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、並びに管理されていないコレステロール及び/若しくは脂質レベルに関連する高血圧及び心血管危険因子などの他の心血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに/又は湿疹であり、前記方法が、前記それを必要としている対象に有効量の上記[21]に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[23] それを必要としている対象における食物摂取又は体重のうちの少なくとも1つを減少させる方法であって、前記それを必要としている対象に有効量の上記[21]に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[24] それを必要としている対象におけるY2受容体活性及び/又はGLP-1受容体活性を調節する方法であって、前記それを必要としている対象に有効量の上記[21]に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
[25] 前記医薬組成物が、注射により投与される、上記[22]~[24]のいずれか一項に記載の方法。
[26] 上記[1]~[17]のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含むキットであって、好ましくは、注射用デバイスを更に含む、キット。
[27] 上記[1]~[17]のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む医薬組成物を生成する方法であって、前記コンジュゲートを薬学的に許容される担体と組み合わせて前記医薬組成物を得ることを含む、方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
【配列表】
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