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特許7676320蒸発排出制御システムにおける炭化水素ブリード排出を低減するための吸着剤材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-02
(45)【発行日】2025-05-14
(54)【発明の名称】蒸発排出制御システムにおける炭化水素ブリード排出を低減するための吸着剤材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20250507BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20250507BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20250507BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20250507BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20250507BHJP
【FI】
B01J20/18 B ZAB
B01J20/28 Z
B01D53/92 352
B01D53/04 111
B01D53/92 280
F02M25/08 311D
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021561962
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020026830
(87)【国際公開番号】W WO2020214445
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】62/836,121
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524318674
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ モバイル エミッションズ カタリスツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】BASF Mobile Emissions Catalysts LLC
【住所又は居所原語表記】33 Wood Avenue South, Iselin, New Jersey 08830, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】アルデン,ライフ
(72)【発明者】
【氏名】リュッティンガー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】チン,スティーブン,ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】ラパドゥラ,ゲラルド,ディオメデ
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマド
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0107701(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0316538(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
B01D53/34-53/73
B01D53/74-53/85
B01D53/92
B01D53/96
B01D53/02-53/12
F02B47/00-47/06
F02B47/00-47/06
F02M25/00-25/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素吸着剤構造体であって、
20~600の範囲のシリカ対アルミナ比を有するゼオライトを含み、
前記ゼオライトは三次元細孔ネットワークを有し、
前記ゼオライトのミクロ細孔の平均細孔幅が、4.5~6.7Åである、
炭化水素吸着剤構造体。
【請求項2】
前記シリカ対アルミナ比が、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500である、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項3】
前記ゼオライトが、5マイクロメートル~50マイクロメートル、10マイクロメートル~25マイクロメートル、または15マイクロメートル~20マイクロメートルの平均d90粒子サイズを特徴とする形態である、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項4】
前記ゼオライトが、AEI、BEA、BEC、CHA、EMT、FAU、FER、MFI、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトを含む、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項5】
前記ゼオライトが、BEAゼオライトを含む、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項6】
前記ゼオライトが、MFIゼオライトを含む、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項7】
前記炭化水素吸着剤構造体が、基材およびその上に形成された炭化水素吸着剤コーティングを備え、前記炭化水素吸着剤コーティングが、前記ゼオライトを含む、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項8】
前記基材が、セラミックモノリスを含む、請求項7に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項9】
前記基材上の前記炭化水素吸着剤コーティングの積載が、0.5g/in~2.0g/in、0.5g/in~1g/in、または1g/in~2g/inの範囲である、請求項7に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項10】
前記炭化水素吸着剤コーティングの厚さが、500マイクロメートル未満である、請求項7に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項11】
前記炭化水素吸着剤コーティングが、結合剤を含む、請求項7に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項12】
前記結合剤が、スチレン/アクリルコポリマーを含む、請求項11に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項13】
前記結合剤が、前記炭化水素吸着剤コーティングの総重量に基づいて、5重量%~50重量%、5重量%~30重量%、または5重量%~15重量%の量で存在する、請求項12に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項14】
前記炭化水素吸着剤コーティングが、活性炭素をさらに含む、請求項7に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項15】
前記炭化水素吸着剤構造体が、モノリシック体の形態であり、前記ゼオライトの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が、前記モノリシック体を形成する、請求項1に記載の炭化水素吸着剤構造体。
【請求項16】
吸着剤容積を備えるブリード排出スクラバであって、少なくとも1つの吸着剤容積が、請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備える、ブリード排出スクラバ。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備える、吸気システム。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備える、キャビン空気浄化システム。
【請求項19】
蒸発排出制御キャニスターであって、
前記蒸発排出制御キャニスター内またはその外部に配置された1つ以上の吸着剤容積と、
前記蒸発排出制御キャニスターの前記吸着剤容積内に含まれ、それに流体結合された少なくとも1つのブリード排出スクラバと、を備え、各ブリード排出スクラバが、請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備える、蒸発排出制御キャニスター。
【請求項20】
各々が請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備える複数のブリード排出スクラバを備え、前記ブリード排出スクラバのうちの1つ以上が、前記蒸発排出制御キャニスターのそれぞれの吸着剤容積内に含まれる、請求項19に記載の蒸発排出制御キャニスター。
【請求項21】
前記複数のブリード排出スクラバの各々が、直列構成、並列構成、またはそれらの組み合わせで、前記蒸発排出制御キャニスター内の他のブリード排出スクラバまたは他の吸着剤容積と流体配備される、請求項20に記載の蒸発排出制御キャニスター。
【請求項22】
前記ブリード排出スクラバが、3.5L以下、3.0L以下、2.5L以下、または2.0L以下のキャニスター容積を有する蒸発排出制御キャニスターシステムに組み込まれる、請求項19に記載の蒸発排出制御キャニスター。
【請求項23】
前記ブリード排出スクラバまたは前記炭化水素吸着剤構造体の容積が、4dL未満である、請求項22に記載の蒸発排出制御キャニスター。
【請求項24】
前記ゼオライトの前記ミクロ細孔の少なくとも一部が、0.01mL/g超の細孔体積を示す、請求項22に記載の蒸発排出制御キャニスター。
【請求項25】
蒸発排出制御システムであって、
燃料貯蔵用の燃料タンクと、
前記燃料タンクから燃料を受容し、消費するように適合されたエンジンと、
前記エンジンに流体結合された蒸発排出制御キャニスターシステムであって、
蒸発排出制御キャニスターに流体結合された少なくとも1つのブリード排出スクラバを備える、蒸発排出制御キャニスターシステムと、を備え、前記少なくとも1つのブリード排出スクラバが、吸着剤容積を備え、前記吸着剤容積が、請求項1~15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備える、蒸発排出制御システム。
【請求項26】
複数のブリード排出スクラバをさらに備え、前記複数のブリード排出スクラバの各々が、直列構成、並列構成、またはそれらの組み合わせで、前記蒸発排出制御キャニスターシステム内の他のブリード排出スクラバまたは他の吸着剤容積と流体配備される、請求項25に記載の蒸発排出制御システム。
【請求項27】
蒸発排出制御システムであって、
燃料貯蔵用の燃料タンクと、
前記燃料タンクから燃料を受容し、消費するように適合されたエンジンと、
前記エンジンに流体結合された蒸発排出制御キャニスターシステムであって、
蒸発排出制御キャニスターに流体結合された少なくとも1つのブリード排出スクラバを備える蒸発排出制御キャニスターシステムと、を備え、前記ブリード排出スクラバが、吸着剤容積を備え、前記吸着剤容積が、20~600の範囲のシリカ対アルミナ比を有するゼオライトを含む少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造体を備え、
前記ゼオライトは三次元細孔ネットワークを有し、
前記ゼオライトのミクロ細孔の平均細孔幅が、4.5~6.7Åである、蒸発排出制御システム。
【請求項28】
複数のブリード排出スクラバをさらに備え、前記複数のブリード排出スクラバの各々が、直列構成、並列構成、またはそれらの組み合わせで、前記蒸発排出制御キャニスターシステム内の他のブリード排出スクラバまたは他の吸着剤容積と流体配備される、請求項27に記載の蒸発排出制御システム。
【請求項29】
ゼオライトであって、前記ゼオライトの総細孔体積の少なくとも90%を占めるミクロ細孔を含み、
前記ゼオライトは三次元細孔ネットワークを有し、
前記ミクロ細孔が、4.5~6.7Åであり
前記ゼオライトが、水素(H)またはアンモニウム(NH )イオン交換され、
前記ゼオライトが、100超、150超、または200超である前記ゼオライトのシリカ対アルミナ比を有する、ゼオライト。
【請求項30】
前記ゼオライトが、5マイクロメートル~50マイクロメートルの平均d90粒子サイズを特徴とするゼオライト粒子の形態である、請求項29に記載のゼオライト。
【請求項31】
前記ゼオライトが、AEI、BEA、BEC、CHA、EMT、FAU、FER、MFI、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトを含む、請求項29に記載のゼオライト。
【請求項32】
前記ゼオライトが、BEAゼオライトを含む、請求項29に記載のゼオライト。
【請求項33】
前記ゼオライトが、MFIゼオライトを含む、請求項29に記載のゼオライト。
【請求項34】
スラリーであって、
結合剤と、
請求項29~33のいずれか一項に記載のゼオライトと、を含む、スラリー。
【請求項35】
請求項29~33のいずれか一項に記載のゼオライトを含む吸着剤粒子を含む、吸着剤床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月19日に出願された米国仮特許出願第62/836,121号の優先権の利益を主張し、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、概して、炭化水素排出制御システム、デバイス、およびそれらで使用するための組成物に関する。より具体的には、本開示は、炭化水素吸着コーティング組成物でコーティングされた基材、蒸発排出制御システム構成要素、ならびに自動車両エンジンおよび燃料システムからの炭化水素の蒸発排出を制御するための蒸発排出制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
内燃エンジンを動力源とする自動車両の燃料システムからのガソリン燃料の蒸発損失は、炭化水素による大気汚染の主な潜在的原因である。蒸発排出は、車両の排気システムから生じない排出と定義される。車両の蒸発排出全体の主な原因は、燃料システムおよび吸気システムから生じる炭化水素燃料蒸気である。燃料システムから排出される燃料蒸気を吸着するために活性炭素を用いるキャニスターシステムは、そのような蒸発排出を制限するために使用される。現在、すべての車両は、蒸発排出を制御するための燃料蒸気キャニスターを有する。活性炭素は、自動車の蒸発排出制御技術で使用される標準的な吸着剤材料であり、典型的には、炭化水素を一時的に吸着するための吸着剤材料として活性炭素を利用する。
【0004】
多くの燃料蒸気キャニスターは、昼間温度サイクルの高温側の間に炭素床から逃げる燃料蒸気を捕捉するための追加の制御デバイスも含む。そのような排出物の現在の制御デバイスは、圧力降下の理由から、炭素含有ハニカム吸着剤のみを含む。そのようなシステムでは、吸着された燃料蒸気は、キャニスターシステムを新鮮な周囲空気でパージし、活性炭素から燃料蒸気を脱着することによって、活性炭素から定期的に除去され、それによって燃料蒸気をさらに吸着するために炭素を再生する。
【0005】
炭化水素排出の許容量に関する厳格な規制の制定によって、使用されていない期間であっても、自動車両からの炭化水素排出量を漸次厳しく制御することが要求されている。そのような期間中(すなわち、駐車中)、車両の燃料システムは、暖かい環境に晒されることがあり、その結果、燃料タンク内の蒸気圧が上昇し、結果として、燃料が大気へと蒸発して損失する可能性がある。
【0006】
前述のキャニスターシステムには、容量および性能に関して一定の制限がある。例えば、パージ用空気は、吸着剤容積に吸着されたすべての燃料蒸気を脱着せず、大気に排出され得る残留炭化水素(「ヒール」)をもたらす。本明細書で使用される場合、「ヒール」という用語は、キャニスターがパージまたは「クリーン」状態にあるときに吸着剤材料上に一般に存在する残留炭化水素を指し、吸着剤の吸着容量の低減をもたらし得る。
【0007】
一方、ブリード排出は、吸着剤材料から脱出する排出を指す。ブリードは、例えば、吸着と脱着との間の平衡が、吸着よりも脱着に著しく有利な場合に、発生する可能性がある。そのような排出は、車両が数日間にわたって昼間の温度変化に晒された際に発生する可能性があり、これは、一般的に「昼間呼吸損失(diurnal breathing loss)」と呼ばれる。特定の規制は、キャニスターシステムからのこれらの昼間呼吸損失(DBL)排出が非常に低いレベルに維持されることが望ましいとしている。例えば、2012年3月22日の時点で、カリフォルニアの低排出車両規制(LEV-III)では、2001年以降のモデルの自動車両に関してキャニスターのDBL排出は、ブリード排出試験手順(BETP)に従って20mgを超えない必要がある。
【0008】
DBL排出に関するより厳しい規制によって、特にパージ量が低減された車両(すなわち、ハイブリッド車両)で使用するために、改善された蒸発排出制御システムの開発が引き続き促進される。そうでなければ、そのような車両は、パージ頻度がより少ないことに起因して高いDBL排出を生成することがあり、それは、より低い総パージ量およびより高い残留炭化水素ヒールに等しい。したがって、低量および/または低頻度のパージサイクルにも関わらず、DBL排出量が少ない蒸発排出制御システムを有することが望ましい。さらに、様々な条件下で潜在的な蒸発排出量をさらに低減しながら、所要スペースおよび重量を低減するための高効率の蒸発排出制御システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
以下では、本開示の様々な態様の簡略化された概要を提示し、そのような態様の基本的な理解を提供する。本概要は、本開示の広範な大要ではない。本開示の主要または重要な要素を特定することも、本開示の特定の実施形態の一切の範囲または特許請求の一切の範囲を線引きすることも意図していない。当該概要の唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、本開示の一部の概念を簡略化された形態で提示することである。
【0010】
本開示の一態様では、炭化水素吸着剤構造(例えば、車両内の蒸発排出を低減するように適合され得る)は、少なくとも20のシリカ対アルミナ比を有するゼオライトを含む。ゼオライトの反復可能なTGAブタン吸着は、2重量%超である。
【0011】
いくつかの実施形態では、シリカ対アルミナ比は、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、または少なくとも500である。いくつかの実施形態では、シリカ対アルミナ比は、20~600の範囲である。いくつかの実施形態では、ゼオライトの反復可能なTGAブタン吸着は、3重量%超、4重量%超、または5重量%超である。いくつかの実施形態では、ゼオライトのミクロ細孔の平均細孔幅は、20Å未満である。いくつかの実施形態では、ゼオライトの平均細孔幅は、2.0~6.7Åである。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約5マイクロメートル~約50マイクロメートル、約10マイクロメートル~約25マイクロメートル、または約15マイクロメートル~約20マイクロメートルの平均d90粒子サイズを特徴とする形態である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、AEI、BEA、BEC、CHA、EMT、FAU、FER、MFI、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、BEAゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、MFIゼオライトを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤構造は、基材およびその上に形成された炭化水素吸着剤コーティングを備え、炭化水素吸着剤コーティングは、ゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、基材は、セラミックモノリスを含む。いくつかの実施形態では、基材上の炭化水素吸着剤コーティングの積載は、約0.5g/in~約2.0g/in、0.5g/in~約1g/in、または約1g/in~約2g/inの範囲である。いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤コーティングの厚さは、約500マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤コーティングは、結合剤を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、スチレン/アクリルコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、炭化水素吸着剤コーティングの総重量に基づいて、約5重量%~約50重量%、約5重量%~約30重量%、または約5重量%~約15重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤コーティングは、活性炭素をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤構造は、モノリシック体の形態であり、ゼオライトの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%がモノリシック体を形成する。
【0015】
本開示の別の態様では、ブリード排出スクラバ(例えば、蒸発排出制御キャニスターシステムでの使用に適合され得る)は、吸着剤容積を備え、少なくとも1つの吸着剤容積は、本明細書に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備える。
【0016】
本開示の別の態様では、吸気システム(例えば、車両内の蒸発排出を低減するように適合され得る)は、本明細書に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備える。
【0017】
本開示の別の態様では、キャビン空気浄化システム(例えば、車両内の蒸発排出を低減するように適合され得る)は、本明細書に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備える。
【0018】
本開示の別の態様では、蒸発排出制御キャニスターは、蒸発排出制御キャニスター内またはその外部に配置された1つ以上の吸着剤容積と、蒸発排出制御キャニスターの吸着剤容積内に含まれ、それに流体結合された少なくとも1つのブリード排出スクラバとを備え、各ブリード排出スクラバは、本明細書に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備える。いくつかの実施形態では、蒸発排出制御キャニスターは、複数のブリード排出スクラバを備え、その各々が、本明細書に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備える。ブリード排出スクラバのうちの1つ以上は、蒸発排出制御キャニスターのそれぞれの吸着剤容積内に含まれ得る。いくつかの実施形態では、複数のブリード排出スクラバの各々は、直列構成、並列構成、またはそれらの組み合わせで、蒸発排出制御キャニスター内の他のブリード排出スクラバまたは他の吸着剤容積と流体配備される。いくつかの実施形態では、1つ以上のブリード排出スクラバは、3.5L以下、3.0L以下、2.5L以下、または2.0L以下のキャニスター容積を有する蒸発排出制御キャニスターシステムでの使用に適合されるか、またはそれに組み込まれる。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバまたは炭化水素吸着剤構造の容積は、4dL未満である。いくつかの実施形態では、ゼオライトのミクロ細孔の少なくとも一部は、0.01mL/g超の細孔体積を示す。
【0019】
本開示の別の態様では、蒸発排出制御システムは、燃料貯蔵用の燃料タンクと、燃料タンクから燃料を受容し、消費するよう適合されたエンジンと、エンジンに流体結合された蒸発排出制御キャニスターシステムとを備え、蒸発排出制御キャニスターシステムは、蒸発排出制御に流体結合された少なくとも1つのブリード排出スクラバを備え、少なくとも1つのブリード排出スクラバは、吸着剤容積を備え、吸着剤容積は、本明細書に記載の少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備える。いくつかの実施形態では、蒸発排出制御システムは、複数のブリード排出スクラバをさらに備え、複数のブリード排出スクラバの各々は、直列構成、並列構成、またはそれらの組み合わせで、蒸発排出制御キャニスターシステム内の他のブリード排出スクラバまたは他の吸着剤容積と流体配備される。
【0020】
本開示の別の態様では、蒸発排出制御システムは、燃料貯蔵用の燃料タンクと、燃料タンクから燃料を受容し、消費するよう適合されたエンジンと、エンジンに流体結合された蒸発排出制御キャニスターシステムとを備え、蒸発排出制御キャニスターシステムは、蒸発排出制御キャニスターに流体結合された少なくとも1つのブリード排出スクラバを備え、ブリード排出スクラバは、吸着剤容積を備え、吸着剤容積は、少なくとも20のシリカ対アルミナ比を有するゼオライトを含む少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備え、ゼオライトの反復可能なTGAブタン吸着は、2重量%超である。
【0021】
いくつかの実施形態では、蒸発排出制御システムは、複数のブリード排出スクラバをさらに備え、複数のブリード排出スクラバの各々は、直列構成、並列構成、またはそれらの組み合わせで、蒸発排出制御キャニスターシステム内の他のブリード排出スクラバまたは他の吸着剤容積と流体配備される。
【0022】
本開示の別の態様では、ゼオライトは、ゼオライトの総細孔体積の少なくとも約90%を占めるミクロ細孔を含む。ミクロ細孔は、20Å未満の細孔幅を有し、水素(H)またはアンモニウム(NH )イオン交換され、約100超、約150超、または約200超であるゼオライトのシリカ対アルミナ比を有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約5マイクロメートル~約50マイクロメートルの平均d90粒子サイズを特徴とするゼオライト粒子の形態である。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、AEI、BEA、BEC、CHA、EMT、FAU、FER、MFI、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、BEAゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、MFIゼオライトを含む。
【0023】
本開示の別の態様では、スラリーは、結合剤、および本明細書に記載のゼオライトを含む。
【0024】
本開示の別の態様では、吸着剤床は、本明細書に記載のゼオライトを含む吸着剤粒子を含む。
【0025】
本開示の別の態様では、蒸発排出制御キャニスターシステムでの使用に適合されるか、またはそれに組み込まれるブリード排出スクラバは、吸着剤容積を備える。いくつかの実施形態では、吸着剤容積は、少なくとも20のシリカ対アルミナ比を有するゼオライトを含む少なくとも1つの炭化水素吸着剤構造を備え、ゼオライトの反復可能なTGAブタン吸着は2重量%超である。
【0026】
いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、3.5L以下、3.0L以下、2.5L以下、または2.0L以下のキャニスター容積を有する蒸発排出制御キャニスターシステムでの使用に適合されるか、またはそれに組み込まれる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、20Å未満の細孔幅を有するミクロ細孔を含み、ミクロ細孔の少なくとも一部は、0.01mL/g超の細孔体積を示す。いくつかの実施形態では、ゼオライトの平均細孔幅は、2.0~6.7Åである。
【0028】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤構造は、基材上に形成された炭化水素吸着剤コーティングを備える。いくつかの実施形態では、基材は、セラミックモノリスである。
【0029】
本明細書で使用される場合、「吸着剤」および「吸着剤材料」という用語は、その構造内のガス分子、イオン、または他の種に付着することができる材料を指す。特定の材料には、粘土、金属有機骨格体、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭素、分子ふるい炭素、ゼオライト(例えば、分子ふるいゼオライト)、ポリマー、樹脂、およびその上にガス吸着剤材料が担持されたこれらの成分のいずれか、または他の成分(例えば、本明細書に記載の吸着物質の様々な実施形態など)が挙げられるが、それらに限定されない。特定の吸着剤材料は、特定の種に優先的または選択的に付着することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「吸着容量」という用語は、吸着剤材料が特定の動作条件(例えば、温度および圧力)下で吸着することができる化学種の量の作業能力を指す。吸着容量の単位は、mg/gの単位で与えられる場合、吸着物質1グラム当たりの吸着ガスのミリグラムに対応する。
【0031】
また、本明細書で使用される場合、「粒子」という用語は、各々が0.1μm~50mmの範囲の最大寸法を有する材料の離散的な部分の集合を指す。粒子の形態は、結晶性、半結晶性、またはアモルファスであり得る。本明細書に開示されるサイズ範囲は、特に明記しない限り、平均値(mean)/平均値(average)または中央値のサイズであり得る。粒子は球形である必要はなく、当業者によって理解されるような、立方体、円筒形、円盤、または任意の他の好適な形状の形態であり得ることにも留意されたい。粒子の種類は、「粉末状」および「顆粒状」であり得る。
【0032】
また、本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、吸着剤材料がその上に、またはその中に形成、堆積、または置かれる(例えば、ウォッシュコートの形態で)材料(例えば、セラミック、金属、半金属、半金属酸化物、金属酸化物、ポリマー、紙ベース、パルプ/半パルプ製品ベースなど)を指す。
【0033】
また、本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、基材に適用された材料の薄い付着性コーティングを指す。ウォッシュコートは、特定の固形物含有量(例えば、10~50重量%)の吸着剤粒子を含有するスラリーを調製することによって形成され得、次いで、それを基材上にコーティングし、乾燥させる。特定の実施形態では、基材は、多孔質であり得、ウォッシュコートは、細孔の外側および/または内側に堆積され得る。
【0034】
また、本明細書で使用される場合、「モノリス」という用語は、特定の材料の単一の単位ブロックを指す。単一の単位ブロックは、例えば、レンガ、ディスク、またはロッドの形態であり得、ガスフロー/分配を増加させるためのチャネルを含み得る。特定の実施形態では、複数のモノリスを一緒に配備して、所望の形状を形成し得る。特定の実施形態では、モノリスは、各々が正方形、六角形、または別の他の形状を有する複数の並列なチャネルを有するハニカム構造を有し得る。特定の実施形態では、ハニカム構造を有する複数のモノリスを一緒に積み重ね得る。モノリスは、その上に吸着剤材料が形成される基材として使用され得る。
【0035】
また、本明細書で使用される場合、「分散剤」という用語は、固体粒子を流体媒体中で懸濁状態に維持するのに役立ち、流体媒体中の粒子の凝集または沈降を阻害または低減する化合物を指す。
【0036】
また、本明細書で使用される場合、「結合剤」という用語は、コーティング、層、またはフィルムに含まれると、コーティング、層、またはフィルムの一方の外表面から反対側の外表面までの連続した、または実質的に連続した構造の形成を促進し、コーティング、層、またはフィルム内に均一または半均一に分布し、コーティング、層、またはフィルムが形成された表面への接着および表面とコーティング、層、またはフィルムとの間の粘着を促進する材料を指す。
【0037】
また、本明細書で使用される場合、「ストリーム」または「フロー」という用語は、固体(例えば、粒子状物質)、液体(例えば、蒸気)、および/または気体混合物を含有し得る任意の流動ガスを広く指す。
【0038】
本明細書で考察されるように、表面積は、「BET表面積」と称される、DIN ISO9277:2003-05(DIN 66131の改訂版である)に従って、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法によって決定される。比表面積は、0.05~0.3p/pの相対圧力範囲でのマルチポイントBET測定によって決定される。
【0039】
また、本明細書で使用される場合、測定量に関連して使用される「約」という用語は、測定を行い、測定の目的および測定機器の精度に相応なレベルの注意を払う当業者によって予想されるような、その測定量の通常の変動を指す。例えば、「約」が値を修飾する場合、値が±1%変動する可能性があることを意味すると解釈してもよい。
【0040】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本開示は、添付の図面の図において、限定としてではなく、例として図示される。
【0042】
図1A】第1の実施形態に従って提供されるブリード排出スクラバの断面図である。
図1B】第2の実施形態に従って提供されるブリード排出スクラバの断面図である。
図1C】第3の実施形態に従って提供されるブリード排出スクラバの断面図である。
図2】一実施形態に従って提供される蒸発排出制御キャニスターおよびブリード排出スクラバを備える蒸発排出制御システムの概略図である。
図3】特定の実施形態による、ブリード排出スクラバの流体結合配備を図示する。
図4A】本明細書で考察される異なる吸着剤材料の細孔幅の関数としての細孔体積を図示するプロットである。
図4B】本明細書で考察される異なる吸着剤材料の細孔幅の関数としての累積細孔体積を図示するプロットである。
図5】本明細書で考察される異なる吸着剤材料の分圧の関数としての吸着ブタンの量を図示するプロットである。
図6】炭素吸着剤と比較した様々なゼオライトのブタン吸着性能を図示するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書に記載の実施形態は、炭化水素吸着剤およびそれを組み込んだブリード排出スクラバに関し、これらは、炭化水素排出制御システムで利用され得る。特定の実施形態は、ゼオライトベースの炭化水素吸着剤の使用に関する。
【0044】
2グラム未満のg-総ブタン作業能力(BWC)を有する炭化水素スクラバを備えたキャニスターでも、状況によっては、CARB LEV IIIブリード排出試験手順(BETP試験)に合格し得ることが見出されている。スクラバのg-総BWCは、50%のブタン濃度で測定されるが、BETP試験中にスクラバが晒される燃料蒸気(例えば、ブタン)の濃度は、0.5%ほどである。したがって、蒸発排出制御用途で使用される標準的な活性炭素吸着剤材料と比較した場合、0.5%ブタンで比較的高いブタン吸着容量を有する吸着剤を使用して、この規制を満たすことができる。これは、吸着剤材料のブタン等温線を測定することによって確認でき、これは、ブタン分圧の関数として材料のブタン吸着容量を定量化する。
【0045】
本開示の特定の実施形態は、BETP試験性能を改善する吸着剤材料に関する。そのような材料は、メソ細孔およびミクロ細孔を含むが、低濃度でブタンを吸着する、サイズ(例えば、20Å未満の幅)の小さなミクロ細孔がかなりの量存在するという点で標準的な材料とは異なる。したがって、そのような材料は、スクラバがBETP試験中に晒される濃度で高いブタン吸着容量を有するであろう。この材料の測定されたブタン等温曲線は、ブタン分圧が<0.5%まで急激に上昇し、次いで横ばいになり、その後完全に平坦になるであろう。結晶構造に本質的に存在するミクロ細孔を有するゼオライト材料は、そのような材料の1つの可能な例のカテゴリーである。さらに、ゼオライトの細孔は、それらの疎水性を増加させるために(例えば、シランまたはアルキル基で)化学的に修飾することができ、それは、水などのより極性のある種の存在下で、燃料蒸気に見られる脂肪族炭化水素に対するそれらの優先的吸着を増加させるであろう。
【0046】
ブリード排出スクラバの実施形態
本開示の特定の実施形態は、蒸発排出制御キャニスターシステムでの使用に適合されたブリード排出スクラバに関する。特定の実施形態による、ブリード排出スクラバ(本明細書では「スクラバ」とも称される)は、本明細書に記載のコーティングされた基材などの炭化水素吸着剤構造を備える吸着剤容積を備え得る。図1Aは、ブリード排出スクラバ1の実施形態を図示し、コーティングされた基材2aは、その上に炭化水素吸着剤コーティングが形成されたひだ状形態の構造化媒体である。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材2aは、コーティングされたモノリスである。図1Bは、コーティングされた基材2bが、その上に炭化水素吸着剤コーティングが形成された発泡体である実施形態を図示する。一実施形態では、発泡体は、1インチ当たり約10個超の細孔を有する。いくつかの実施形態では、発泡体2bは、1インチ当たり約20個超の細孔を有する。いくつかの実施形態では、発泡体は、1インチ当たり約15~約40個の細孔を有する。一実施形態では、発泡体は、ポリウレタンから構成される。いくつかの実施形態では、発泡体は、網状ポリウレタンを含む。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、ポリエーテルまたはポリエステルポリウレタンである。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、その上に複数の積み重ねられたコーティングが形成された基材を備え得る。例えば、いくつかの実施形態では、コーティングは、同じタイプの吸着剤材料、異なる吸収材料、または交互の吸収材料のものであり得る。いくつかの実施形態では、基材は、コーティングに含有されるのと同じ炭化水素吸着剤から少なくとも部分的に形成され得る(例えば、部分的にゼオライト基材またはその上に1つ以上のゼオライトコーティングが形成された完全なゼオライト基材)。
【0047】
図1Cは、コーティングされた基材2cがその上に炭化水素吸着剤コーティング形成された押し出し媒体である実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、押し出し媒体は、ハニカム(例えば、モノリシックハニカム構造)である。ハニカムの全体的な形状は、円形、円筒形、または正方形を含むがそれらに限定されない任意の好適な幾何学的形状であり得る。さらに、ハニカム吸着剤のセルは、任意の幾何学的形状であり得る。正方形の断面セルを有する正方形ハニカム、または波形のらせん状に巻かれたハニカムなどのフロースルーパッセージのための均一な断面積のハニカムは、ある範囲の断面積を有する隣接するパッセージ、およびつまりは同等にパージされないパッセージを提供する直角のマトリックスにおいて正方形の断面セルを有する円形ハニカムに比べて、良好な性能を発揮し得る。一切の理論に拘束されることなく、ハニカム面全体のセル断面積がより均一であるほど、吸着サイクル中およびパージサイクル中の両方でスクラバ内のフローの分布がより均一になるため、スクラバからの昼間呼吸損失(DBL)排出が低くなると考えられる。
【0048】
驚くべきことに、本明細書で開示されるコーティングモノリスを組み込むブリード排出スクラバは、いくつかの実施形態では、競合モノリスよりも低いブタン作業能力(BWC)を有し得るが、それでもなお、低パージ条件下において、蒸発排出制御キャニスターからの炭化水素排出を効果的に制御することが見出された。
【0049】
いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、2グラム未満のg-総ブタン作業能力(BWC)を有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.3グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.2グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.4グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.5グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.75グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.0グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.25グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.75グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.9グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.95グラム~1.999グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約1.9グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約1.75グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約1.5グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約1.25グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約1.0グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約0.75グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約0.5グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1グラム~約0.3グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.75グラム~約1.5グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.75グラム~約1.25グラムのg-総BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.75グラム~約1.0グラムのg-総BWCを有する。本明細書で使用される場合、「g-総BWC」は、標準的な試験条件(例えば、ASTM D5228)下で吸着されたブタンの総質量を指す。
【0050】
いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、3g/dL未満の有効ブタン作業能力(BWC)を有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.1g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.25g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.5g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約0.75g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.25g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.75g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.75g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約2dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約2.25g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約2.5g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約2.75g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.0g/dL~約2.5g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.0g/dL~約2.25g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5g/dL~約2g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5g/dL~約1.75g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.25g/dL~3g/dL未満の有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.25g/dL~約2.5g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.25g/dL~約2.25g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5g/dL~約2.5g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.5g/dL~約2.25g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.75g/dL~約2.5g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約1.75g/dL~約2.25g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約2g/dL~約2.5g/dLの有効BWCを有する。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、約2g/dL~約2.25g/dLの有効BWCを有する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「有効ブタン作業能力」は、g-総BWCを有効吸着剤容積で割ったものを指す。有効吸着剤容積は、ボイド、エアギャップ、および他の非吸着性容積を補正する。
【0052】
キャニスターの実施形態
特定の実施形態では、本明細書に開示されるコーティングされた基材および/またはスクラバは、蒸発排出制御キャニスターの構成要素として使用され得る。一実施形態では、蒸発排出制御キャニスターは、吸着剤容積と、蒸発排出制御キャニスターをエンジンに接続するための燃料蒸気パージ管と、燃料タンクを蒸発排出制御キャニスターにベントするための燃料蒸気入口導管と、蒸発排出制御キャニスターを大気にベントし、かつパージ空気を蒸発排出制御キャニスターに入れるためのベント導管と、本明細書に記載のブリード排出スクラバと、を備える。ブリード排出スクラバは、蒸発排出制御キャニスターと流体連通し得る。いくつかの実施形態では、蒸発排出制御キャニスターは、蒸発排出制御システムの構成要素として使用され得る。したがって、蒸発排出制御キャニスターおよびスクラバのさらなる非限定的な実施形態は、そのような蒸発排出制御システムを参照して本明細書に記載される。
【0053】
特定の実施形態では、キャニスターは、複数の吸着剤容積を備えることができ、それらの各々は、異なる吸着剤またはその中に吸着剤を含むデバイスを含み得る。吸着剤容積のより多くのいくつかは、そこに含まれる1つ以上の吸着剤材料が、並列、直列、または両方の組み合わせで流体結合されるように、互いに流体結合され得る。
【0054】
蒸発排出制御システムの実施形態
特定の実施形態では、蒸発排出制御システムは、燃料貯蔵用の燃料タンクと、燃料を消費するように適合されたエンジン(例えば、内燃エンジンまたはハイブリッドエンジン)と、吸着剤容積を備える蒸発排出制御キャニスターと、蒸発排出制御キャニスターをエンジンに接続する燃料蒸気パージ管と、燃料タンクを蒸発排出制御キャニスターにベントするための燃料蒸気入口導管と、蒸発排出制御キャニスターを大気にベントし、かつパージ空気を蒸発排出制御キャニスターシステムに入れるためのベント導管と、本明細書に記載のブリード排出スクラバと、を備える。ブリード排出スクラバは、蒸発排出制御キャニスターと流体連通し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、蒸発排出制御システムは、燃料蒸気による吸着剤容積の連続的な接触を可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、蒸発排出制御システムは、燃料蒸気入口導管から蒸発排出制御キャニスターを通り、ブリード排出スクラバに向かい、ベント導管に行く燃料蒸気フローパス、およびベント導管からブリード排出スクラバを通り、蒸発排出制御キャニスターに向かい、かつ燃料蒸気パージ管に向かう相互空気フローパスによって画定することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、燃料タンクからの蒸発排出は、エンジン停止中に蒸発排出制御システムによって吸着される。燃料タンクからブリードする燃料蒸気は、キャニスターシステム中の吸着剤によって除去することができ、その結果、大気中に放出される燃料蒸気の量が低減される。エンジンの動作時に、大気がパージストリームとしてキャニスターシステムおよびブリード排出スクラバに導入される。次いで、炭化水素吸着剤によって以前に吸着された炭化水素は、脱着され、パージラインを介して燃焼するためにエンジンに再循環され得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、蒸発排出制御システムの蒸発排出制御キャニスターは、成形された熱可塑性オレフィンなどの造形された平面材料によって少なくとも部分的に画定された三次元中空内部空間またはチャンバーを備える。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバは、蒸発排出制御キャニスターの吸着剤容積内に配置される。他の実施形態では、ブリード排出スクラバは、蒸発排出制御キャニスターと流体連通している別個のキャニスター中に配置される。いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバが別個のキャニスターに配置される実施形態による蒸発排出制御システムは、図2に図示される。
【0058】
図2は、本開示の特定の実施形態による蒸発排出制御システム30を概略的に図示する。蒸発排出制御システム30は、燃料貯蔵用の燃料タンク38(燃料入口44を有する)と、燃料を消費するように適合され、燃料ライン40を介して燃料タンク38に結合されたエンジン32(内燃エンジンまたはハイブリッドエンジンであり得る)と、蒸発排出制御キャニスター46と、ブリード排出スクラバ1と、を備える。エンジン32は、例えば、信号リード36を介して制御装置34によって制御されるエンジンであり得る。いくつかの実施形態では、エンジン32は、ガソリン、エタノール、および/または他の揮発性炭化水素ベースの燃料を燃焼させる。制御装置34は、別個の制御装置であり得るか、またはエンジン制御モジュール(ECM)、パワートレイン制御モジュール(PCM)、もしくは任意の他の車両制御装置の一部を形成し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、蒸発排出制御キャニスター46は、吸着剤容積48と、蒸発排出制御キャニスター46をエンジン32に接続する燃料蒸気パージ管66と、燃料タンク38を蒸発排出制御キャニスター46にベントするための燃料蒸気入口導管42と、蒸発排出制御キャニスター46を大気にベントし、かつパージ空気を蒸発排出制御システム30に入れるためのベント導管56、59、60と、を備える。
【0060】
蒸発排出制御システム30は、燃料蒸気入口導管42から吸着剤容積48を通り、ベント導管56を通ってブリード排出スクラバ1に向かい、ベント導管59、60に行く燃料蒸気フローパスによって、およびベント導管60、59からブリード排出スクラバ58を通り、ベント導管56を通って吸着剤容積48に向かいかつ燃料蒸気パージ管66に向かう相互空気フローパスによってさらに画定される。ブリード排出スクラバ1は、1つ以上の吸着剤容積を備え、一部またはすべては、本明細書に記載の炭化水素吸着に適合されたコーティングされた基材のいずれかを含む。
【0061】
燃料タンク38から蒸発した炭化水素を含有する燃料蒸気は、燃料タンク38から、蒸発蒸気入口導管42を通ってキャニスター46内の吸着剤容積48を通ることができる。いくつかの実施形態では、吸着剤容積48に加えて吸着剤容積が存在し得、吸着剤容積48と直列または並列に接続され得る。蒸発排出制御キャニスター46は、任意の好適な材料から形成され得る例えば、ナイロンなどの成形熱可塑性ポリマーが典型的には使用される。
【0062】
燃料タンク38のガソリンの温度が上昇するにつれて、燃料蒸気圧は上昇する。蒸発排出制御システム30がなければ、燃料蒸気は、未処理で大気に放出されることになるであろう。しかしながら、本開示によれば、燃料蒸気は、蒸発排出制御キャニスター46によって、および蒸発排出制御キャニスター46の下流に配置されたブリード排出スクラバ1(またはいくつかの実施形態では、追加のブリード排出スクラバ)によって処理される。
【0063】
ベントバルブ62が開いており、パージバルブ68が閉じているとき、燃料蒸気は、圧力下で、燃料タンク38から、蒸発蒸気入口導管42、キャニスター蒸気入口50を通り、蒸発排出制御キャニスター46内に含まる吸着剤容積48を通って順次流れる。続いて、吸着剤容積48によって吸着されなかった燃料蒸気は、ベント導管開口部54およびベント導管56を介して蒸発排出制御キャニスター46から流出する。次いで、燃料蒸気は、さらなる吸着のためにブリード排出スクラバ1に入る。ブリード排出スクラバ1を通過した後、残りの一切の燃料蒸気は、導管59、ベントバルブ62、およびベント導管60を介してブリード排出スクラバ1を出る。
【0064】
徐々に、蒸発排出制御キャニスター46およびブリード排出スクラバ1の吸着剤容積の両方に含まれる炭化水素吸着剤材料は、燃料蒸気から吸着された炭化水素を積載するようになる。炭化水素吸着剤材料が炭化水素で飽和されるとき、燃料タンク38から排出された燃料蒸気を制御するための炭化水素吸着剤を継続して使用するために、炭化水素を脱着しなければならない。エンジン動作中、エンジン制御装置34は、信号リード64および70それぞれを介して、バルブ62および68に開くように命令し、大気とエンジン32との間に空気フローパスウェイを作り出す。パージバルブ68を開くことによって、清浄な空気をブリード排出スクラバ1に引き込み、続いて大気から、ベント導管60、59、および56を介して、蒸発排出制御キャニスター46に引き込むことができる。清浄な空気、またはパージ空気は、清浄な空気ベント導管60を通って、ブリード排出スクラバ1を通り、ベント導管56を通って、ベント導管開口部54を通って、蒸発排出制御キャニスター46に流入する。清浄な空気は、ブリード排出スクラバ1および排出制御キャニスター46内に含まれる炭化水素吸着剤を通過および/または通って流れ、各容積内の飽和炭化水素吸着剤から炭化水素を脱着する。次いで、パージ空気および炭化水素のストリームは、パージ開口出口52、パージライン66、およびパージバルブ68を通って、蒸発排出制御キャニスター46を出る。パージ空気および炭化水素は、パージライン72を通ってエンジン32に流れ、続いてそこで炭化水素が燃焼される。
【0065】
図2は、蒸発排出制御キャニスター46の外部に配置されたブリード排出スクラバ1を図示する。他の実施形態では、ブリード排出スクラバ1は、蒸発排出制御キャニスター46内、例えば、吸着剤容積48内に配設され得る。他の実施形態では、蒸発排出制御システム30は、蒸発排出制御キャニスター46の1つ以上の吸着剤容積内か、蒸発排出制御キャニスター46の外側であるが、蒸発排出制御キャニスター46と流体連通しているか、または両方の組み合わせに含まれ得る複数のブリード排出スクラバを含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバ1の吸着剤容積(および任意の追加の吸着剤容積)は、体積希釈剤を含み得る。体積希釈剤の非限定的な例としては、スペーサー、不活性ギャップ、発泡体、繊維、スプリング、モノリス内のチャネル、モノリスの構造的非吸着剤材料、またはそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。さらに、蒸発排出制御キャニスター46は、システム内のどこにでも空の容積を含み得る。本明細書で使用される場合、「空の容積」という用語は、吸着剤を一切含まない容積を指す。そのような容積は、エアギャップ、発泡体スペーサー、スクリーン、またはそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない任意の非吸着剤を含み得る。
【0067】
図3は、特定の実施形態による、ブリード排出スクラバのための流体結合配備を図示する。蒸発排出制御キャニスター302、312、および322の各々はそれぞれ、複数の吸着剤容積304、314、および324を含む。ブリード排出スクラバ304、314、および324はそれぞれ、吸着剤容積304、314、および324内に配設される。ブリード排出スクラバ304は、直列配備で流体結合される。ブリード排出スクラバ314は、並列配備で流体結合される。ブリード排出スクラバ324は、直列および並列の組み合わせで流体結合され、ブリード排出スクラバ324Aおよび324Bの並列結合は、ブリード排出スクラバ324Cと直列である。
【0068】
いくつかの実施形態では、ブリード排出スクラバのうちの1つ以上は、そのそれぞれの蒸発排出制御キャニスターの外部に配置され得るが、その中に配設されたブリード排出スクラバのうちの1つ以上、またはその中に配設された別のデバイスもしくは吸着剤容積に流体結合され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のブリード排出スクラバは、単一の吸着剤容積内に(例えば、互いに直列に)配設され得る。
【0069】
基材
特定の実施形態では、炭化水素吸着剤は、基材上に配設される。ブリード排出スクラバなどのコーティングされた基材を含む物品は、いくつかの実施形態では、蒸発排出制御システムの一部であり得る。一般に、基材は、三次元であり、円筒と同様の長さおよび直径および容積を有する。形状は必ずしも円筒に一致する必要はない。長さは、入口端および出口端によって画定される軸方向の長さである。直径は、最大断面長さであり、例えば、形状が円筒と正確に一致しない場合は、最大断面である。1つ以上の実施形態では、基材は、本明細書で以下に記載するモノリスである。
【0070】
いくつかの実施形態では、モノリスは、パッセージがそこを通る流体フローに対して開かれるように、基材の入口面または出口面からそこを通って延びる微細な平行なガスフローパッセージを有するタイプのものであり得る。本質的に直線のパスであり得るか、またはそれらの流体入口からそれらの流体出口へのパターン化されたパス(例えば、ジグザグ、ヘリンボーンなど)であり得るパッセージは、パッセージを通って、流れるガスが吸着剤材料と接触するように、ウォッシュコートとして吸着剤材料がコーティングされる壁によって画定される。モノリスのフローパッセージは、壁が薄いチャネルであり、これは、台形、長方形、正方形、三角形、正弦波、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状およびサイズであり得る。そのような構造は、断面の平方インチ当たり約60~約900以上のガス入口開口部(すなわち、平方インチ当たりのセル)を含み得る。モノリシック基材は、例えば、金属、セラミック、プラスチック、紙、含浸紙などから構成され得る。いくつかの実施形態では、基材は、セラミックモノリスである。
【0071】
いくつかの実施形態では、基材は、発泡体、モノリシック材料、不織布、織物、シート、紙、ねじれたらせん、リボン、押し出し形態の構造媒体、巻かれた形態の構造媒体、折り畳まれた形態の構造媒体、ひだ状形態の構造媒体、波形形態の構造媒体、注入形態の構造媒体、結合形態の構造媒体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0072】
一実施形態では、基材は、押し出し媒体である。いくつかの実施形態では、押し出し媒体は、ハニカムである。ハニカムは、円形、円筒形、または正方形を含むがそれらに限定されない任意の幾何学的形状であり得る。さらに、ハニカム基材のセルは、任意の幾何学的形状であり得る。
【0073】
一実施形態では、基材は、発泡体である。いくつかの実施形態では、発泡体は、1インチ当たり約10個超の細孔を有する。いくつかの実施形態では、発泡体は、1インチ当たり約20個超の細孔を有する。いくつかの実施形態では、発泡体は、1インチ当たり約15~約40個の細孔を有する。いくつかの実施形態では、発泡体は、ポリウレタンである。いくつかの実施形態では、発泡体は、網状ポリウレタンである。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、ポリエーテルまたはポリエステルである。いくつかの実施形態では、基材は、不織布である。
【0074】
いくつかの実施形態では、基材は、プラスチックである。いくつかの実施形態では、基材は、熱可塑性ポリオレフィンである。いくつかの実施形態では、基材は、ガラスまたは無機充填剤を含有する熱可塑性ポリオレフィンである。いくつかの実施形態では、基材は、ポリプロピレン、ナイロン-6、ナイロン-6,6、芳香族ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフタルアミド、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、ポリエステル、およびポリウレタンからなる群から選択されるプラスチックである。
【0075】
炭化水素吸着剤コーティング
特定の実施形態では、炭化水素吸着剤は、炭化水素を可逆的に吸着することができる材料を含む。そのような材料としては、例えば、活性炭素、ゼオライト、金属有機骨格体、金属酸化物、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤は、ゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、アルミノシリケート材料またはシリカ-アルミノホスフェート材料であり得る。ゼオライトは、国際ゼオライト協会によって指定された3文字のコードによって識別され得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトとしては、例えば、AEI、AFT、AFX、BEA、BEC、CHA、DDR、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、GME、HEU、KFI、LEV、LTA、LTL、MAZ、MEL、MFI、MFS、MOR、MTN、MTT、MTW、MWW、NES、OFF、PAU、RHO、SFW、TON、UFI、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ゼオライトとしては、例えば、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM-5ゼオライト、オフレタイト、ベータゼオライト、フェリエライト、フォージャサイト、菱沸石、モルデンタイト、クリノプチロライト、シリカライト、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、高いシリカ対アルミナ比を有するベータゼオライトである。
【0077】
特定の実施形態では、炭化水素吸着剤は、例えば、活性炭素粒子と混合されたゼオライト粒子などの吸着剤材料の組み合わせを含む。活性炭素は、合成活性炭素であり得るか、または木材、泥炭、ココナッツ殻、リグナイト、石油ピッチ、石油コークス、石炭タールピッチ、フルーツピット、ナッツ、貝殻、おがくず、木粉、合成ポリマー、天然ポリマー、およびそれらの組み合わせに基づき得るか、もしくはそれらに由来し得る。
【0078】
特定の実施形態では、ゼオライトは、ミクロ細孔およびメソ細孔を含む。ミクロ細孔は、20Å未満の幅を有する細孔に対応する。いくつかの実施形態では、細孔は、2.0Å~6.7Å、または4.0Å~6.5Åの幅を有する。いくつかの実施形態では、ミクロ細孔は、ゼオライトの総細孔体積の70%、80%、90%、またはそれ以上を占める。
【0079】
いくつかの実施形態では、ゼオライトのシリカ対アルミナ比は、約100超、約150超、約200超、または約250超である。
【0080】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、ゼオライト粒子の形態である。ゼオライト粒子は、約5マイクロメートル~約50マイクロメートル、約10マイクロメートル~約25マイクロメートル、または約15マイクロメートル~約20マイクロメートルの平均d90粒子サイズを特徴とし得る。
【0081】
特定の実施形態では、吸着剤のBET表面積は、約20m/g~約5,000m/g、またはそれ以上である。特定の実施形態では、吸着剤のBET表面積は、約20m/g~約4,000m/g、約20m/g~約3,000m/g、約20m/g~約2,500m/g、約20m/g~約2,000m/g、約20m/g~約1,000m/g、約20m/g~約500m/g、約20m/g~約300m/g、約100m/g~約5,000m/g、約100m/g~約4,000m/g、約100m/g~約3,000m/g、約100m/g~約2,500m/g、約100m/g~約2,000m/g、約100m/g~約1,000m/g、約100m/g~約500m/g、約100m/g~約300m/g、約300m/g~約5,000m/g、約300m/g~約4,000m/g、約300m/g~約3,000m/g、約300m/g~約2,500m/g、約300m/g~約2,000m/g、約300m/g~約1,000m/g、約300m/g~約500m/g、約750m/g~約5,000m/g、約750m/g~約4,000m/g、約750m/g~約3,000m/g、約750m/g~約2,500m/g、約750m/g~約2,000m/g、約750m/g~約1,000m/g、約1,200m/g~約5,000m/g、約1,200m/g~約4,000m/g、約1,200m/g~約3,000m/g、約1,200m/g~約2,500m/g、約1,500m/g~約5,000m/g、約1,750m/g~約5,000m/g、約2,000m/g~約5,000m/g、約2,500m/g~約5,000m/g、約3,000m/g~約5,000m/g、約3,500m/g~約5,000m/g、または約4,000m/g~約5,000m/gである。
【0082】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤は、基材上にウォッシュコートされるスラリーとして調製される。いくつかの実施形態では、基材への炭化水素吸着剤の積載は、1g/in未満である。いくつかの実施形態では、積載は、0.5g/in~1g/in、または0.75g/in~1g/in3である。いくつかの実施形態では、積載は、1g/in超である。いくつかの実施形態では、積載は、1g/in~1.25g/in、1.25g/in~1.5g/in、1.5g/in~1.75g/in、または1.75g/in~2g/inである。
【0083】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤のコーティング厚さは、50マイクロメート超および約500マイクロメートル未満、400マイクロメートル未満、300マイクロメートル未満、200マイクロメートル未満、または100マイクロメートル未満である。
【0084】
いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、2.0L以下の容積を有する蒸気キャニスター(例えば、1.9Lの蒸気キャニスター)での使用に対応できる寸法を有する。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、2.0L超の容積を有するキャニスター(例えば、3.5Lの蒸気キャニスター)での使用に対応できる寸法を有する。
結合剤
【0085】
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤は、基材への炭化水素吸着剤の接着を促進するのに役立ち得る結合剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、それ自体と架橋して、改善された接着性を提供し得る。結合剤の存在は、炭化水素吸着剤の完全性を向上させ、基材への接着性を改善し、自動車両で経験する振動条件下での構造的安定性を提供し得る。
【0086】
結合剤は、耐水性を改善し、接着性を改善するための添加剤も含み得る。スラリーの配合物に使用するのに典型的な結合剤としては、以下の有機ポリマー;アルミナ、シリカ、またはジルコニアのゾル;アルミニウム、シリカ、またはジルコニウムの無機塩、有機塩、および/または加水分解生成物;アルミニウム、シリカ、またはジルコニウムの水酸化物;シリカに加水分解可能な有機シリケート;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、結合剤は、ジルコニウム塩(例えば、酢酸ジルコニウム)を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、有機ポリマーである。有機ポリマーは、熱硬化性または熱可塑性ポリマーであり得、プラスチックまたはエラストマーであり得る。結合剤は、例えば、アクリル/スチレンコポリマーラテックス、スチレン-ブタジエンコポリマーラテックス、ポリウレタン、またはそれらの任意の混合物であり得る。ポリマー結合剤は、当技術分野で既知の好適な安定剤および老化防止剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、結合剤は、ラテックスとしてスラリー(例えば、水性スラリー)に導入される熱硬化性エラストマーポリマーである。
【0087】
好適な結合剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブタジエンコポリマー、塩素化ゴム、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン-ジエンエラストマー、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルハリド)、ポリアミド、セルロース系ポリマー、ポリイミド、アクリル、ビニルアクリル、スチレンアクリル、ポリビニルアルコール、熱可塑性ポリエステル、熱硬化性ポリエステル、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフィド)、フッ素化ポリマー、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド、ポリ(ビニルフルオリド)、クロロ/フルオロコポリマー、例えば、エチレンクロロトリフルオロ-エチレンコポリマー、ポリアミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル/スチレンアクリルコポリマーラテックス、およびシリコーンポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態では、ポリマー結合剤は、アクリル/スチレンアクリルコポリマーラテックス、例えば、疎水性スチレン-アクリルエマルジョンを含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、アクリル/スチレンコポリマーラテックス、スチレン-ブタジエンコポリマーラテックス、ポリウレタン、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、結合剤は、アクリル/スチレンコポリマーラテックスおよびポリウレタン分散剤を含む。
【0089】
特定の実施形態では、結合剤、または結合剤の混合物は、乾燥されて基材上に堆積された場合の炭化水素吸着剤の総重量に基づいて、約5重量%~約50重量%で存在する。特定の実施形態では、ポリマー結合剤は、約5重量%~約30重量%、約10重量%~約30重量%、約15重量%~約30重量%、約5重量%~約25重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約10重量%~約20重量%、または約15重量%~約20重量%で存在する。
【0090】
いくつかの実施形態では、有機結合剤は、低いガラス転移温度を有し得る。転移温度は、従来、当技術分野で既知の方法による示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。低い転移温度を有する例示的な疎水性スチレン-アクリルエマルジョン結合剤は、RHOPLEX(商標)P-376である。いくつかの実施形態では、結合剤は、約0℃未満の転移温度を有する。約0℃未満の転移温度を有する例示的な結合剤は、RHOPLEX(商標)NW-1715Kである(RHOPLEX(商標)ブランドの製品は、Dowから入手可能である)。いくつかの実施形態では、結合剤は、アルキルフェノールエトキシレート(APEO)を含まない、超低ホルムアルデヒドのスチレン化アクリルエマルジョンである。そのような例示的な結合剤の1つは、Joncryl(登録商標)2570である。いくつかの実施形態では、結合剤は、脂肪族ポリウレタン分散剤である。そのような例示的な結合剤の1つは、Joncryl(登録商標)FLX 5200である(Joncryl(登録商標)ブランドの製品は、BASFから入手可能である)。
【0091】
さらなる例示的な添加剤
いくつかの実施形態では、炭化水素吸着剤は、増粘剤、分散剤、界面活性剤、殺生物剤、抗酸化剤などの追加の添加剤を含有し得、これらは、基材上に炭化水素吸着剤を形成する前にスラリーに添加され得る。増粘剤は、例えば、比較的低い表面積の基材上に十分な量のコーティングを達成することを可能にする。増粘剤はまた、分散粒子の立体障害によってスラリーの安定性を増加させることによる二次的な役割も果たし得る。それはまた、コーティング表面の結合を促すこともできる。例示的な増粘剤は、キサンタンガム増粘剤またはカルボキシメチルセルロース増粘剤を含む。Kelzan(登録商標)CC(CP Kelcoから入手可能)は、そのような例示的なキサンタン増粘剤の1つである。
【0092】
いくつかの実施形態では、分散剤は、結合剤と組み合わせて使用される。分散剤は、アニオン性、カチオン性、または非イオン性であり得、炭化水素吸着剤の重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%の量で利用され得る。好適な分散剤としては、ポリアクリレート、アルコキシレート、カルボキシレート、ホスフェートエステル、スルホネート、タウレート、スルホスクシネート、ステアレート、ラウレート、アミン、アミド、イミダゾリン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、分散剤は、酸上のプロトンの多くがナトリウムで置き換えられている低分子量ポリアクリル酸である。いくつかの実施形態では、分散剤は、ポリカルボン酸アンモニウム塩である。いくつかの実施形態では、分散剤は、疎水性コポリマー顔料分散剤である。例示的な分散剤は、Tamol(商標)165A(Dow Chemicalの商標)である。スラリーのpHを増加させるか、またはアニオン性分散剤を単独で添加すると、スラリー混合物に十分な安定性を提供することができるが、増加したpHおよびアニオン性分散剤の両方を使用すると改善された結果を得ることができる。いくつかの実施形態では、分散剤は、Surfynol(登録商標)420(Air Products and Chemicals,Inc)などの非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、分散剤は、Dispex(登録商標)Ultra PX 4575(BASF)などのアクリルブロックコポリマーである。
【0093】
いくつかの実施形態では、消泡剤として作用することができる界面活性剤を使用することが好ましい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、低分子の非アニオン性分散剤である。例示的なオイルおよびシリコーンを含まない消泡界面活性剤は、Rhodoline(登録商標)999(Solvay)である。別の例示的な界面活性剤は、炭化水素と、Foammaster(登録商標)NXZ(BASF)などの非イオン性界面活性剤とのブレンドである。
【0094】
例示的実施例
以下の実施例は、本開示の理解を助けるために記載されており、当然のことながら、本明細書に記載され、特許請求される実施形態を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者の理解の範囲内にあるであろう、現在知られているか、または後に開発されるすべての均等物の置換を含む、実施形態のそのような変形、および配合の変更または実験計画のわずかな変更は、本明細書に組み込まれる実施形態の範囲内にあるとみなされるべきである。
【0095】
実施例1:ゼオライトでコーティングされたモノリスの調製
298.8gの水を実施例5(下記)のゼオライト3と混合し、その組み合わせをRoss高剪断ミキサーで完全に混合した。次いで、得られた懸濁液を、d90粒子サイズが17.8ミクロンになるまでEiger連続ミルで粉砕した。次いで、50.59gの30%酢酸ジルコニウム溶液および2滴のオクタノールを混合して、最終的なスラリーを形成した。
【0096】
29×100mm(円筒の幅×長さ)の円筒形セラミックモノリス基材(1平方インチ当たり230セル)を、スラリーに浸漬した。55psigの圧力で動作するエアナイフを使用してチャネルを清浄にすることによって、過剰なスラリーを除去した。基材を110℃で1時間乾燥させ、次いで300℃で3時間、空気中で焼成した。基材上のコーティングの最終的な積載は、1.76g/inであった。
【0097】
比較例1
29x100mm(円筒の直径x長さ)および1平方インチ当たり200セルの市販の押し出し炭素ベースのブリード排出トラップを以下に記載するように試験した。炭素含有量を強熱減量(LOI)によって31.8重量%であると決定した。モノリスの総重量は、約28gであった。この炭素含有量を使用して、以下の実施例2で測定された細孔体積をプロットした。
【0098】
実施例2:細孔サイズ分布の測定
窒素の細孔サイズ分布および表面積の分析をMicromeritics TriStar 3000シリーズ機器で実行した。試験される材料を、Micromeritics SmartPrep脱気装置で、合計6時間脱気した(乾燥窒素のフローの下で、300℃まで2時間上昇させ、次いで300℃で4時間保持した)。窒素BET表面積を、.08~0.20の5つの分圧点を使用して決定した。窒素の細孔サイズを、BJH計算および33個の脱着点を使用して決定した。
【0099】
図4Aは、ベータゼオライト(実施例5からのゼオライト3)対市販のモノリス炭素の細孔サイズ分布を示し、図4Bは、対応する累積細孔サイズ分布を示す。このグラフでは、ゼオライト3に存在する比較的少量のメソ細孔が見られるが、それでもなおかなりの量のミクロ細孔を有する。
【0100】
実施例3:ブタン等温線の測定
ブタン等温線測定は、ブタンの分圧の関数として、試料材料中のブタンの吸着量を測定する。ブタンを真空にした試料に徐々に導入し、平衡に到達させ、吸着された質量を測定する。この実施例に使用した手順は次のとおりである:約0.1gの材料試料を120℃の真空下で960分間脱気し、3Flex高分解能ハイスループット表面特性分析装置を使用してブタン等温線を測定した。使用する吸着性試験ガスはブタンであり、使用する埋め戻しガスは窒素である。分析中、水および不凍剤混合物の循環浴で298Kの温度を維持した。低圧ドーズ量は、0.000000100p/pまで0.5cc/gおよび0.001p/pまで3.0cc/gである。0.001p/pまで30秒の平衡間隔を使用し、残りの等温線には10秒の平衡間隔を使用する。
【0101】
図5は、ゼオライト3対市販のモノリス炭素のブタン等温線を示す。このプロットでは、両方の材料が、サイズ29x100mmおよび35x150mm(円筒の直径x長さ)の両方のスクラバに吸着されたブタンの総量を示すようにサイズ設定されている(曲線510:市販の29x100mmのスクラバ、曲線520:ゼオライト3 29x100mmのスクラバ、曲線530:市販の35x150mmのスクラバ、曲線540:ゼオライト3 29x100mmのスクラバ)。このプロットは、ゼオライト3でコーティングされた35x150mmのスクラバでさえ、市販のモノリス炭素よりもはるかに低い高ブタン濃度でのブタン吸着容量を有するが、なおも比較例と比較して、BETP試験中に典型的に経験する低濃度での比較的高いブタン吸着容量を有することを示す。
【0102】
低いブタン濃度では、ブタンは、吸着剤材料の非常に小さなミクロ細孔にのみ吸着する。より高いブタン濃度では、ブタンは、より大きなメソ細孔にも吸着する。理論に拘束されることを望まないが、より大きなメソ細孔への吸着は、これらの材料がかなりの量のミクロ細孔およびメソ細孔の両方を含有するため、ブタン等温曲線が材料の低濃度のブタンから高濃度に継続的に上昇する理由を説明すると考えられる。
【0103】
実施例4:ブタン吸着容量の測定
29×100mm(円筒の直径x長さ)の円筒形試料を、垂直方向に配向された円筒形試料セル内に置いた。次いで、45分間、134mL/分(10g/時間のブタンフロー)の1:1のブタン/N試験ガスフロー量で、試料セルに積載した。フローの方向は、試料セルの底部から頂部へと上向きであった。試料セルからの出口フローのガス組成をFID(水素炎イオン化検出器)によってモニターした。
【0104】
45分のブタン吸着ステップの後、試料セルを同じフロー方向で10分間、100mL/分においてNでパージした。次いで、試料を10L/分の空気フローで反対方向(上から下)において15分間脱着した。次のステップでは、ガス組成を134mL/分の0.5%ブタン/N(1時間当たり0.1gのブタン)の混合物に切り替え、積載ステップを反復した。上記のFIDを使用して破過曲線を記録し、流れるブタンの累積質量に対してシグナルをプロットした。
【0105】
相対的な有効ブタン吸着容量は、試料を通過するブタンの破過が発生する時間と相関し得る。ブタンの破過点は、試料セルからのブタンの出口濃度が飽和濃度の25%に達した点と任意に定義した。表1は、50%ブタンおよび0.5%ブタンの両方での実施例1対比較例1のブタン破過点で吸着されたブタンの量を比較する。吸着されるブタンの量をブタンのフロー量に基づいて計算する。この試験によって、実施例1は、比較実施例1と比較して、50%ブタンでわずか19.3%の相対ブタン吸着容量を有するが、0.5%ブタンでは70.5%の相対ブタン吸着容量を有し、低濃度においてその比較的高い吸着容量を示す。
【表1】
【0106】
実施例5:湿気の存在下でのブタン吸着の測定
この試験プロトコルは、試料材料が湿気の存在下で繰り返し吸着および脱着するブタンの量を測定する。この試験の結果は、蒸発排出制御用途のキャニスタースクラバで使用される吸着剤材料の相対的な性能を予測するために使用され得るが、これは、これらの材料が主に低濃度の軽質炭化水素蒸気を繰り返し吸着および脱着する必要があり、湿気が存在する周囲条件に晒されるためである。一切の特定の理論に拘束されることを望まないが、存在する水分子は、ゼオライトの吸着部位についてブタンと競合し、したがって材料の吸着容量を乾燥条件下でのその性能と比較して、減少させるであろう。
【0107】
この実施例に使用される手順は次のとおりである:約15mgの試験材料の試料をTA Instruments Q50熱重量分析(TGA)ユニットに積載し、42℃で2時間、湿潤窒素でパージする。50mL/分のガスフローは、2つの別個のガスフローを単一の制御されたストリームに組み合わせるガスミキサーによって供給され、次いで機器によって50mL/分に制限される。第1の窒素フローストリームは、20℃に保持された水バブラーを介して43mL/分で流れ、最後に50mL/分のフロー量で試料に42℃で27%の一定の湿度レベルを送達する。第2のフローストリームは、7mL/分で乾燥窒素を送達する。2時間のパージ後、バルブを切り替え、その結果、7mL/分の第2のフローは、試料に達する前に43mL/分の湿潤窒素フローと混合した後、50mL/分で0.5%ブタンに希釈される乾燥窒素中の3.5%ブタンのストリームを送達する。試料に0.5%ブタンフローを3時間積載し、次いでブタンを含まない湿潤窒素フローを復元して、試料を25分間脱着させる。このようにして、試料にブタンが積載され、合計3サイクルパージする。試料温度を42℃で一定に保ち、試料の質量を、試験全体を通して測定する。
【0108】
ゼオライト吸着剤材料の典型的な試験では、ブタンの吸着による試料の質量の重量パーセント増加(重量%)として得られる吸着されたブタンの量は、第2および第3の吸着サイクルよりも第1の吸着サイクル中の方が高くなる。第2および第3の吸着サイクル中の質量増加は、典型的には、同様である。これは、25分の脱着ステップで比較的一定量のブタンを脱着し、ブタンの材料を完全に脱着するには十分に長くないためである。場合によっては、吸着速度が遅いため、第1の吸着サイクル後に試料がブタンで完全に飽和しない。
【0109】
この手順を使用して、ゼオライトの15の試料を試験した。2つの比較炭素試料も試験し、参照用に含めた。両方の比較炭素とも、炭化水素吸着剤コーティングで使用される活性炭素材料である。図6の棒グラフおよび以下の表2は、結果、ならびに試験したゼオライトのいくつかの重要な物理的特性を示し、これは、ブタン吸着性能に相関し得る。棒グラフは、(a)第1の吸着サイクル中に吸着されたブタンの相対量、ならびに(b)すべての場合で互いに数パーセントポイント以内であった第2および第3の吸着サイクルの平均を示す。この値は、本明細書では「反復可能なTGAブタン吸着」と称される。キャニスタースクラバ用途でこの方法によって試験された材料の良好な性能に関する最も重要な指標は、反復可能なTGAブタン吸着の高い値である。この値は、高い吸着容量、ならびに効率的な積載およびパージ速度の両方を考慮に入れている。列挙したこれらの材料の物理的材料特性から、高いシリカ対アルミナ比(SAR)を含む、いくつかの物理的特性がこの測定基準によって高性能と相関し得ると見ることができる。一切の特定の理論に拘束されることを望まないが、これは、ブタンがゼオライト構造の結晶マトリックス中のシリコーン吸着部位に吸着することを好むためである。ゼオライトはまた、ブタンを吸着するのに十分な大きさの細孔サイズを有する三次元細孔ネットワークを有さなければならない。参考までに、ブタンの動的直径は、4.5Åである。細孔サイズが小さいと、ブタンをその中に入れて、脱着させするのを容易にしない。
【0110】
一切の特定の理論に拘束されることを望まないが、ゼオライトの均一な細孔サイズはまた、この同じサイズ排除原理による燃料蒸気の老化の結果としてのヒール形成の主な原因であると考えられている燃料蒸気のより大きな揮発性成分(例えば、イソオクタン、キシレン)の吸着を可能にしないため、ヒールビルドの観点からキャニスタースクラバ用途においても利点を表し得る。また、ゼオライトのイオン形態は、アンモニウム(NH+)形態よりもプロトン(H+)形態であることが好ましい。一切の特定の理論に拘束されることを望まないが、これは、プロトンがアンモニウムイオンよりもゼオライトの細孔内で占めるスペースが少ないためである。アンモニウム形態のゼオライトは、材料を550℃で6時間、空気中で焼成することによって、プロトン形態に変換することができる。
【0111】
これらの結果に基づいて、ゼオライト3は、キャニスタースクラバ用途における例示的な性能材料であると予測されると見ることができる。この材料はまた、上記の前の実施例で使用されるゼオライト材料でもある。
【表2】
【表3】
【0112】
前述の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、特定の材料、寸法、プロセスパラメータなどの多数の特定の詳細が記載されている。特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な様式で組み合わせることができる。本明細書で使用される「例」または「例示的」という語は、例、実例、または例示として機能することを意味する。本明細書において「例」または「例示的」と記載される任意の態様または設計は、必ずしも他の態様または設計より好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示的」という語の使用は、概念を具体的な形で提示することを意図している。本出願で使用される場合、「または」という用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することが意図されている。すなわち、別途指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、「XがAまたはBを含む」は、自然な包括的組み合わせのいずれかを意味することが意図されている。つまり、XがAを含み、XがBを含み、またはXがAとBの両方を含む場合、「XがAまたはBを含む」は、上記の例のいずれにおいても満たされる。さらに、本明細書で考察される材料および方法を記載する文脈(特に以下の請求項の文脈)における「a」、「an」、「the」という用語、および同様の指示語の使用は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。
【0113】
本明細書での値の範囲の記載は、本明細書で別途指示がない限り、単に範囲内に含まれる各別個の値を個々に参照する簡略法として機能することを意図し、各別個の値は、本明細書で個々に記載されたように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。
【0114】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、「実施形態」、または「いくつかの実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの句が本明細書全体の様々な箇所に出現することは、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0115】
上記の説明は例示を意図したものであり、限定を意図したものではないことを理解されるべきである。上記の説明を読んで理解すると、当業者においては他の多くの実施形態が自明となるであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲に照らして決定されるべきである。本明細書で提供される任意およびすべての例または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、材料および方法をよりよく説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、一切の請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であると示すものと解釈されるべきではない。
【0116】
本明細書に開示される実施形態は特定の実施形態を参照して記載されるが、これらの実施形態は、本開示の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に対して様々な変形および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある変形および変更を含むことが意図され、上記の実施形態は、限定ではなく例示の目的で提示される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6