(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-02
(45)【発行日】2025-05-14
(54)【発明の名称】コーティングシステム、この種のコーティングシステムを有する電極プレート、それを製造するための方法、および燃料電池、電解槽、またはレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20250507BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20250507BHJP
H01M 8/021 20160101ALI20250507BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20250507BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20250507BHJP
【FI】
H01M8/0228
C23C26/00 C
H01M8/021
H01M8/10 101
H01M8/18
(21)【出願番号】P 2024518872
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 DE2022100476
(87)【国際公開番号】W WO2023078490
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】102021128468.6
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マーティン シュトゥンプフ
(72)【発明者】
【氏名】ロミーナ ベヒシュテット
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ ヴェーゲナー
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラウス ドブレニツキ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】イェーヴァンティ フィヴェカナンタン
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-524364(JP,A)
【文献】特表2019-512148(JP,A)
【文献】特開2021-068539(JP,A)
【文献】特開2022-108128(JP,A)
【文献】特開2006-156386(JP,A)
【文献】特開2022-029088(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0017914(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0282484(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0151255(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114006003(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106920977(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
H01M 8/18
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極プレート(2、2’)を形成するために金属基板(2a)をコーティングするためのコーティングシステム(1)であって、金属酸化物で作製された少なくとも1つのトップコート(1a)と、前記トップコート(1a)を支える少なくとも1つの中間コート(1b)と、1つまたは複数の前記中間コート(1b)を支えるベースコート(1c)と、を備え、
-前記ベースコート(1c)は、チタンまたはチタンニオブ合金またはクロムから形成され、
-前記少なくとも1つの中間コート(1b)は、窒化チタンニオブおよび/または炭化チタンニオブおよび/または炭窒化チタンニオブおよび/または炭化チタンおよび/または窒化チタンおよび/または炭化クロムおよび/または炭窒化クロムおよび/または任意選択的に第1のドーパントでドープした均一な酸化インジウムスズおよび/または第2のドーパントでドープした均一な酸化スズから形成され、
-前記トップコート(1a)は、
a)酸化インジウムスズであって、前記酸化インジウムスズは、炭素、窒素、ホウ素、フッ素、水素、リン、硫黄、塩素、臭素、アルミニウム、ケイ素、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、アンチモン、ハフニウム、タンタル、およびタングステンを含む群からの少なくとも1つの元素を有する第3のドーパントを任意選択的に含む、酸化インジウムスズ、または
b)ドープされた酸化スズであって、前記酸化スズは、第4のドーパントとして、ニオブ、タンタル、アンチモン、およびフッ素を含む群からの元素のうちの少なくとも1つを有する、酸化スズ、
のいずれかのナノファイバー(6)のネットワークから形成される、コーティングシステム(1)。
【請求項2】
前記第1のドーパントは、前記第3のドーパントに相当し、前記第2のドーパントは、前記第4のドーパントに相当する、請求項1に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項3】
前記酸化インジウムスズ中の前記第1のドーパントおよび/または前記第3のドーパントの元素の濃度は、0超~20原子%の範囲である、請求項1または2に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項4】
前記酸化スズ中の前記第2のドーパントおよび/または前記第4のドーパントの元素の濃度は、0超~20原子%の範囲である、請求項
1に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項5】
酸化インジウムスズから作製された前記トップコート(1a)は、70~90原子%の範囲のインジウム含有量を有する、請求項
1に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項6】
前記ベースコート(1c)は、1~300nmの範囲のコート厚を有する、請求項
1に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの中間コート(1b)は、0.1μm~3.0μmの範囲のコート厚を有する、請求項
1に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項8】
前記トップコート(1a)は、0.01μm~15μmの範囲のコート厚を有する、請求項
1に記載のコーティングシステム(1)。
【請求項9】
金属基板(2a)と、請求項
1に記載のコーティングシステム(1)と、を備える電極プレート(2、2’)、特にバイポーラプレートであって、
金属基板(2a)、
ベースコート(1c)、
1つまたは複数の中間コート(1b)、および
トップコート(1a)
の順の電極プレート(2、2’)構造を有する、電極プレート(2、2’)。
【請求項10】
前記金属基板(2a)は、鋼から形成されている、請求項9に記載の電極プレート(2、2’)。
【請求項11】
請求項9または10に記載の少なくとも1つの電極プレート(2、2’)を備える燃料電池(10)、特に酸素-水素燃料電池、または電解槽、またはレドックスフロー電池。
【請求項12】
少なくとも1つの高分子電解質膜(7)を備える、請求項11に記載の燃料電池(10)。
【請求項13】
請求項9に記載の電極プレート(2、2’)を製造するための方法であって、前記方法は、
前記金属基板(2a)を提供する工程と、
前記金属基板(2a)の表面上に前記ベースコート(1c)を形成する工程と、
前記ベースコート(1c)上に前記少なくとも1つの中間コート(1b)を形成する工程と、
前記少なくとも1つの中間コート(1b)の、前記ベースコート(1c)から遠い側の上に前記トップコート(1a)を形成する工程と、を含み、
前記コーティングシステム(1)は、非反応性スパッタリングによって前記金属基板(2a)上に形成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物から作製される少なくとも1つのトップコートを備える電極プレートを形成するための、金属基板をコーティングするためのコーティングシステムに関する。本発明は、金属基板を備える電極プレート、そのようなコーティングシステム、およびそれを製造するための方法にさらに関する。さらに、本発明は、少なくとも1つのそのような電極プレートを備える燃料電池、電解槽、またはレドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池または電解槽のためのバイポーラプレートは、独国特許出願公開第10058337号明細書からすでに公知であり、このバイポーラプレートでは、金属酸化物から作製される導電性かつ耐食性の保護コーティングは、金属シートの少なくとも片面に形成されている。金属酸化物は、特に、スズ、亜鉛、およびインジウムを含む群からの元素または合金の酸化物から形成される。導電性を確保し、アルミニウム、クロム、銀、ホウ素、フッ素、アンチモン、塩素、臭素、リン、モリブデン、および炭素を含む群からの少なくとも1つの元素からなるドーパントは、金属酸化物中に存在し得る。使用される金属シートは、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、クロムめっきステンレス鋼、チタン、チタン合金、および鉄含有化合物から作製された金属シートであり、その金属シートは、元素のスズ、亜鉛、ニッケル、およびクロムのうちの少なくとも1つのコーティングを有してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、電極プレートのための改善されたコーティングシステムを提供すること、および、そのような電極プレートを提供することである。さらに、本発明の目的は、電極プレートを製造するための方法を提供すること、および、少なくとも1つのそのような電極プレートを有する燃料電池、電解槽、またはレドックスフロー電池を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本目的は、電極プレートを形成するために金属基板をコーティングするためのコーティングシステムによって達成され、そのコーティングシステムは、金属酸化物で作製された少なくとも1つのトップコートと、トップコートを支える少なくとも1つの中間コートと、1つまたは複数の中間コートを支えるベースコートと、を含み、
-ベースコートは、チタンまたはチタンニオブ合金またはクロムから形成され、
-少なくとも1つの中間コートは、窒化チタンニオブおよび/または炭化チタンニオブおよび/または炭窒化チタンニオブおよび/または炭化チタンおよび/または窒化チタンおよび/または炭化クロムおよび/または炭窒化クロムおよび/または任意選択的に第1のドーパントでドープした均一な酸化インジウムスズおよび/または第2のドーパントでドープした均一な酸化スズから形成され、
-トップコートは、
a)酸化インジウムスズであって、酸化インジウムスズは、炭素、窒素、ホウ素、フッ素、水素、リン、硫黄、塩素、臭素、アルミニウム、ケイ素、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、アンチモン、ハフニウム、タンタル、およびタングステンを含む群からの少なくとも1つの元素を有する第3のドーパントを任意選択的に含む、酸化インジウムスズ、または
b)ドープされた酸化スズであって、酸化スズは、第4のドーパントとして、ニオブ、タンタル、アンチモン、およびフッ素を含む群からの元素のうちの少なくとも1つを有する、酸化スズ、
のいずれかのナノファイバーのネットワークから形成される。
【0005】
コーティングシステムは、高い長期安定性と同時に高電気伝導性を有し、貴金属を使用しないため低コストであることを特徴とする。加えて、コーティングシステムにより、電極プレート、特にバイポーラプレートの金属のベース材料または基材のための優れた防食性が確保される。酸化インジウムスズはまた、以下では略語でITOと称される。
【0006】
コーティングシステムは、好ましくは、PVDプロセスもしくはCVDプロセス(PVD:Physical Vapor Deposition(物理蒸着)、CVD:Chemical Vapor Deposition(化学蒸着))またはPACVDプロセス(PACVD:Plasma-assisted Chemical Vapor Deposition(プラズマ支援化学蒸着))を使用して形成される。
【0007】
ナノファイバーは、最大200nmの直径および最大1000nmの長さを有する、細長い構造または棒状構造である。ナノファイバーは、先細であってもよい。
【0008】
ナノファイバーのネットワークからトップコートを形成するために、本明細書では“3D ITO-nanowire networks as transparent electrode for all terrain substrate”,Qiang Li et al.,Scientific Reports(2019)9:4983の文献を参照する。以下を参照のこと: https://doi.org/10.1038/s41598-019-41579-2
【0009】
出願人はまた、蒸着速度が40Å/minの非反応性スパッタリング技術を使用して、濃度が90:10原子%のIn2O3:SnO2からなるターゲットから、燃料電池、電解槽、およびレドックスフロー電池用のITOナノファイバーを製造することもできた。温度およびSnO2含有量は、ITOナノファイバーの製造において主要な成長因子である。ターゲットから蒸発して基材上に堆積する原子によって成長が起こる。成長のための温度範囲は、150°C~500°Cである。温度を上げると、平均ファイバー長およびファイバーの平均直径が増加し、近傍距離が減少し、単位面積当たりのファイバーの数が増加する。SnO2含有量は、好ましくは、最大で30原子%である。ナノファイバーの平均長および平均直径の増大は、蒸着時間に依存する。ITOナノファイバーは、好ましくは、薄くて密なITO層の上で成長する。
【0010】
そのようなナノファイバーの製造はまた、ドープされた酸化スズを基盤とすることも可能である。
【0011】
第1のドーパントは、好ましくは、第3のドーパントに相当し、第2のドーパントは、好ましくは、第4のドーパントに相当する。
【0012】
酸化インジウムスズ中の第1のドーパントおよび/または第3のドーパントの元素の濃度は、特に0超~20原子%の範囲、好ましくは、0.5~20原子%の範囲である。
【0013】
酸化スズ中の第2のドーパントおよび/または第4のドーパントの元素の濃度は、特に0超~20原子%の範囲、好ましくは、0.5~20原子%の範囲である。
【0014】
この場合、70~90原子%の範囲のインジウム含有量を有する酸化インジウムスズから作製されるトップコートが特に好ましい。75~85原子%の範囲のインジウム含有量は、電気伝導性のレベルが高く、特に好ましい。
【0015】
ベースコートは、特に、金属基板と少なくとも1つの中間コートとの間の接着促進材として使用される。さらに、ベースコートは、導電性酸化物を形成しており、したがってバイポーラプレートの金属基板にガルバニック腐食防止を提供する。ベースコートは、好ましくは、1nm~300nmの範囲のコート厚を有する。
【0016】
特に、中間コートもまた、ベースコートとトップコートとの間の接着促進材として使用される。さらに、選択に応じて、少なくとも1つの中間コートもまた、導電性酸化物を形成することができ、したがってベースコートおよび電極プレートの金属基板にガルバニック腐食防止を提供することができる。少なくとも1つの中間コートはまた、水素に対する障壁を提供し、したがって水素が金属基板に対して浸透して金属基板を損傷させることがない。個々の中間コートのコート厚は、好ましくは、0.1~3.0μmの範囲で選択される。しかしながら、2つ以上の中間コートが存在してもよい。
【0017】
トップコートは、ベースコートおよび1つまたは複数の中間コートを機械的に保護し、かつ腐食から保護する。トップコートは、特に、0.01~15μmの範囲、特に0.1~3μmの範囲のコート厚を有する。
【0018】
ベースコートと、少なくとも1つの中間コートと、トップコートと、を備える本発明によるコーティングシステムは、好ましくは、0.1~20μmの範囲の総厚を有する。
【0019】
特に、金属基板、好ましくは鋼、特にオーステナイト鋼またはオーステナイトステンレス鋼から作製される金属基板をコーティングするための以下のコーティングシステムは、電極プレートを形成するために有利であることが判明している。
【0020】
実施例1:
ベースコート:TiNb コート厚:100nm
中間コート:TiNbN コート厚:300nm
トップコート:インジウム含有量が80体積%の酸化インジウムスズナノファイバー
コート厚:100nm
【0021】
実施例2:
ベースコート:TiNb コート厚:100nm
1.中間コート:TiNbN コート厚:200nm
2.中間コート:均一な酸化インジウムスズ コート厚:200nm
トップコート:インジウム含有量が90体積%の酸化インジウムスズナノファイバー
コート厚:100nm
【0022】
実施例3:
ベースコート:TiNb コート厚:100nm
1.中間コート:TiNbCN コート厚:200nm
2.中間コート:TiNbN コート厚:200nm
トップコート:ドープした酸化スズナノファイバー
コート厚:100nm
【0023】
本目的は、
金属基板、
ベースコート、
1つまたは複数の中間コート、および
トップコート
の順の電極プレート構造を有する本発明による金属基板およびコーティングシステムを備える電極プレートについて達成される。
【0024】
好ましくは、電極プレートは、好ましくは鋼から作製される、特にオーステナイト鋼またはステンレス鋼から作製される、金属基板または金属キャリアプレートを備える。あるいは、基板は、チタンまたはチタン合金またはアルミニウムまたはアルミニウム合金または亜鉛または亜鉛合金またはスズ合金または銅または銅合金またはニッケルまたはニッケル合金または銀または銀合金またはクロムまたはクロム合金で形成されてもよい。
【0025】
キャリアプレートは、シングルパーツまたはマルチパーツとして設計することができる。特に、電極プレートは、バイポーラプレートとして設計されている。
【0026】
本発明によれば、本発明による電極プレートを製造するための方法は、以下の工程:
金属基板を提供する工程と、
金属基板の表面上にベースコートを形成する工程と、
ベースコート上に少なくとも1つの中間コートを形成する工程と、
少なくとも1つの中間コートの、ベースコートから離れる方向に面する側の上にトップコートを形成する工程と、を含み、
コーティングシステムは、非反応性スパッタリングによって金属基板上に形成される。
これは、連続生産規模で費用効果よく行うことができ、ナノファイバーの製造にもまた使用することができる蒸着プロセスである。
【0027】
本目的は、本発明による少なくとも1つの電極プレートを備える、燃料電池、特に酸素-水素燃料電池について、または、特に水から水素および酸素を製造するための電解槽について、または、特に少なくとも1つの有機電解質を含むレドックスフロー電池についてさらに達成される。燃料電池は、好ましくは、少なくとも1つの高分子電解質膜を備える。
【0028】
試験では、コーティングシステムは、pH3の0.5mM H2SO4電解質+0.1ppm HF中の苛酷な燃料電池条件下、装置外でAg/AgClに対して少なくとも最大1.4Vの安定性を呈し、したがって、貴金属コーティングに匹敵する。この電気化学的負荷(上記パラメータを参照)の前後の接触抵抗は、100N/cm2の接触圧および24°Cの測定温度で、3mOhm・cm2未満である。
【0029】
腐食電流は、Ag/AgClに対して最大1.0Vの関連する燃料電池印加電位下、10-7A/cm2未満である。コーティングまたは基板での腐食は、Ag/AgClに対して少なくとも最大1.4Vまで光学的にまたは顕微鏡的に検出されなかった。DIN準拠の材料番号1.4404のステンレス鋼基板を基板として使用した。
【0030】
試験では、コーティングシステムは、pH4のH2SO4電解質中の苛酷な電気分解条件下、装置外でNHE(normal hydrogen electrode(標準水素電極))に対して少なくとも最大2.2Vの安定性を呈した。この電気化学的負荷(上記パラメータを参照)の前後の接触抵抗は、100N/cm2の接触圧および24°Cの測定温度で、3mOhm・cm2未満である。
【0031】
コーティングまたは基板での腐食は、NHEに対して少なくとも最大2.2Vまで光学的にまたは顕微鏡的に検出されなかった。DIN準拠の材料番号1.4404のステンレス鋼基板を基板として使用した。
【0032】
図1~
図4は、本発明によるコーティングシステム、バイポーラプレートの形式の、コーティングシステムを使用して形成された電極プレート、および燃料電池を、一例として説明することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】コーティングシステムを含むバイポーラプレートの図である。
【
図2】複数の燃料電池を備える燃料電池システムの概略図である。
【
図3】一例として示したコーティングシステムの断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、コーティングシステム1を有するバイポーラプレートの形式の電極プレート2を示し、プレートは、本明細書では、オーステナイト系ステンレス鋼で作製された金属基板2aまたは金属キャリアプレートを有する。バイポーラプレートは、開口部4を有する流入領域3aと、燃料電池にプロセスガスを供給し、燃料電池から反応生成物を除去するために使用されるさらなる開口部4’を有する出口領域3bと、を有する。バイポーラプレートはまた、両側にガス分配構造5を有し、ガス分配構造5は、高分子電解質膜7(
図2参照)との接触のために設けられる。
【0035】
図2は、複数の燃料電池10を備えた燃料電池システム100の概略図である。それぞれの燃料電池10は、両側にバイポーラプレートの形式の隣接電極プレート2、2’を有する高分子電解質膜7を備える。
図1と同じ参照符号は、同一の要素を示す。
【0036】
図3は、
図1によるコーティングシステム1の断面を示す。トップコート1a、中間コート1b、およびベースコート1cが存在することがわかり得る。ベースコート1cは、バイポーラプレート2の基板2aに面して設けられている、コーティングシステム1の側面Bに配置されている。トップコート1aは、電極プレート2の基板2aから離れる方向に面して設けられている、コーティングシステム1の側面Aに配置されている。あるいは、コーティングシステム1はまた、複数の中間コート1bを有してもよい。
【0037】
図4は、本明細書では酸化インジウムスズで作製されたナノファイバー6のネットワークで作製されたトップコート1aの表面の走査電子顕微鏡写真を示す。
【符号の説明】
【0038】
1 コーティングシステム
1a トップコート
1b 1つまたは複数の中間コート
1c ベースコート
2、2’ 電極プレート
2a 金属基板
3a 流入領域
3b 出口領域
4、4’ 開口部
5 ガス分配構造
6 ナノファイバー
7 高分子電解質膜
10 燃料電池
100 燃料電池システム
A 基板2aから離れる方向に対向するコーティングシステム1の側面
B 基板2aに対向する、コーティングシステム1の側面