(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-02
(45)【発行日】2025-05-14
(54)【発明の名称】レイアウト評価システムおよびレイアウト評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20250507BHJP
G06Q 10/10 20230101ALI20250507BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/10
(21)【出願番号】P 2024545288
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2022033272
(87)【国際公開番号】W WO2024052958
(87)【国際公開日】2024-03-14
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
(72)【発明者】
【氏名】三輪 剛久
(72)【発明者】
【氏名】榎本 嵩久
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/044680(WO,A1)
【文献】特開2021-056811(JP,A)
【文献】特開2016-115005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフィスのレイアウトを評価するレイアウト評価システムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行されるプログラムを記憶するメモリと、
前記プロセッサによって用いられる複数の導出式を格納する第1の記憶装置とを備え、
前記レイアウト評価システムの外部から、定性的な評価基準が与えられた場合において、前記プロセッサは、前記プログラムに従って、
前記第1の記憶装置に格納された前記複数の導出式から、前記評価基準に応じて、適当な1つ以上の導出式を選択し、
前記1つ以上の導出式に含まれている、前記オフィスに固有の情報を前記オフィスから取得し、
取得された前記オフィスに固有の情報を前記1つ以上の導出式に代入することにより、定量化された評価閾値を生成し、
生成された前記評価閾値を用いて、前記レイアウトが前記評価基準を満たすか否かを評価
し、
前記オフィスに固有の情報は、前記オフィスにおけるユーザの業務に関する業務情報、前記オフィスの各エリアに関するエリア情報、および前記オフィス内のユーザ数に関するユーザ情報の少なくとも1つを含み、
前記1つ以上の導出式は、前記オフィスに固有の情報に基づいて、前記オフィスのレイアウトが前記評価基準を満たしているときの期待値を、前記評価閾値として導出するように構成される、レイアウト評価システム。
【請求項2】
前記レイアウト評価システムの外部から与えられる前記評価基準が変更された場合において、前記プロセッサは、
前記評価基準の変更に応じて、前記複数の導出式から選択される前記1つ以上の導出式を変更し、
変更された前記1つ以上の導出式に含まれている、前記オフィスに固有の情報を前記オフィスから取得し、
取得された前記オフィスの固有の情報を、変更された前記1つ以上の導出式に代入することにより、前記評価閾値を再生成する、請求項1に記載のレイアウト評価システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記オフィス内にてユーザを管理する1つ以上の管理装置と通信することにより得られた情報に基づいて、前記オフィス内のユーザの行動を推定し、
推定されたユーザの行動に基づいて、前記オフィスの利用状況を分析し、
分析された前記利用状況と、前記評価閾値とを比較することにより、前記レイアウトが前記評価基準を満たすか否かを評価する、請求項1または2に記載のレイアウト評価システム。
【請求項4】
前記1つ以上の管理装置は、ユーザの行動予定を示すスケジュール情報を格納するように構成され、
前記プロセッサは、前記スケジュール情報を用いて、ユーザが滞在したエリアにおけるユーザの行動内容を推定する、請求項3に記載のレイアウト評価システム。
【請求項5】
前記オフィスの各エリアについて、単位時間あたりにユーザ同士のコミュニケーションが発生する回数を表したコミュニケーション発生率に関する情報を格納する第2の記憶装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
各エリアについて、複数のユーザが同時に滞在する時間帯、および、当該時間帯に滞在するユーザ数を推定し、
推定された前記時間帯および前記ユーザ数、ならびに、前記コミュニケーション発生率に基づいて、各エリアで発生したコミュニケーション量を推定する、請求項3に記載のレイアウト評価システム。
【請求項6】
ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが発生する回数を表したコミュニケーション発生率に関する情報を格納する第3の記憶装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
推定されたユーザの移動経路に基づいて、移動中の邂逅回数を推定し、
推定されたユーザの移動時間に基づいて、邂逅に費やした時間を推定し、
推定された前記邂逅回数および前記邂逅に費やした時間、ならびに前記コミュニケーション発生率に基づいて、邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定する、請求項3に記載のレイアウト評価システム。
【請求項7】
ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが発生する回数を表したコミュニケーション発生率に関する情報を格納する第3の記憶装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
各ユーザが所持するモバイル端末間で実行された近距離無線通信のログ情報を取得し、
前記ログ情報と前記コミュニケーション発生率とに基づいて、邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定する、請求項3に記載のレイアウト評価システム。
【請求項8】
前記1つ以上の管理装置は、前記オフィス内の各エリアへのユーザの入退出を管理する入退管理装置、前記オフィス内を監視するカメラ、および、各ユーザが所持するモバイル端末の少なくとも1つを含み、
前記プロセッサは、前記1つ以上の管理装置から得られた情報に基づいて、前記オフィス内における各ユーザの移動経路を推定する、請求項3に記載のレイアウト評価システム。
【請求項9】
オフィスのレイアウトを評価するレイアウト評価方法であって、
定性的な評価基準を
コンピュータにより受け付けるステップと、
第1の記憶装置に格納された複数の導出式から、前記評価基準に応じて、適当な1つ以上の導出式を
前記コンピュータにより選択するステップと、
選択された前記1つ以上の導出式に含まれている、前記オフィスに固有の情報を前記オフィスから
前記コンピュータにより取得するステップと、
取得された前記オフィスに固有の情報を前記1つ以上の導出式に代入することにより、定量化された評価閾値を
前記コンピュータにより生成するステップと、
生成された前記評価閾値を用いて、前記レイアウトが前記評価基準を満たすか否かを
前記コンピュータにより評価するステップとを備
え、
前記オフィスに固有の情報は、前記オフィスにおけるユーザの業務に関する業務情報、前記オフィスの各エリアに関するエリア情報、および前記オフィス内のユーザ数に関するユーザ情報の少なくとも1つを含み、
前記1つ以上の導出式は、前記オフィスに固有の情報に基づいて、前記オフィスのレイアウトが前記評価基準を満たしているときの期待値を、前記評価基準として導出するように構成される、レイアウト評価方法。
【請求項10】
前記1つ以上の導出式を選択するステップは、前記評価基準が変更されたことに応じて、前記複数の導出式から選択される前記1つ以上の導出式を変更するステップを含み、
前記オフィスに固有の情報を取得するステップは、変更された前記1つ以上の導出式に含まれている、前記オフィスに固有の情報を前記オフィスから取得するステップを含み、
前記評価閾値を生成するステップは、取得された前記オフィスの固有の情報を、変更された前記1つ以上の導出式に代入することにより、前記評価閾値を再生成するステップを含む、請求項9に記載のレイアウト評価方法。
【請求項11】
前記オフィス内にてユーザを管理する1つ以上の管理装置と通信することにより得られた情報に基づいて、前記オフィス内のユーザの行動を
前記コンピュータにより推定するステップと、
推定されたユーザの行動に基づいて、前記オフィスの利用状況を
前記コンピュータにより分析するステップとをさらに備え、
前記評価するステップは、分析された前記利用状況と、前記評価閾値とを比較することにより、前記レイアウトが前記評価基準を満たすか否かを評価するステップを含む、請求項9または10に記載のレイアウト評価方法。
【請求項12】
前記ユーザの行動を推定するステップは、
ユーザの行動予定を示すスケジュール情報を前記オフィスから取得するステップと、
取得された前記スケジュール情報を用いて、ユーザが滞在したエリアにおけるユーザの行動内容を推定するステップとを含む、請求項11に記載のレイアウト評価方法。
【請求項13】
前記ユーザの行動を推定するステップは、
前記オフィス内の各エリアについて、複数のユーザが同時に滞在する時間帯、および、当該時間帯に滞在するユーザ数を推定するステップと、
推定された前記時間帯および前記ユーザ数、ならびに、各エリアについて単位時間あたりにユーザ同士のコミュニケーションが発生する回数を表したコミュニケーション発生率に関する情報に基づいて、各エリアで発生したコミュニケーション量を推定するステップとを含む、請求項11に記載のレイアウト評価方法。
【請求項14】
前記ユーザの行動を推定するステップは、
推定されたユーザの移動経路に基づいて、移動中の邂逅回数を推定するステップと、
推定されたユーザの移動時間に基づいて、邂逅に費やした時間を推定するステップと、
推定された前記邂逅回数および前記邂逅に費やした時間、ならびに、ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが発生する回数を表したコミュニケーション発生率に関する情報に基づいて、邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定するステップとを含む、請求項11に記載のレイアウト評価方法。
【請求項15】
前記ユーザの行動を推定するステップは、
各ユーザが所持するモバイル端末間で実行された近距離無線通信のログ情報を取得するステップと、
前記ログ情報と、ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが発生する回数を表したコミュニケーション発生率に関する情報とに基づいて、邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定するステップとを含む、請求項11に記載のレイアウト評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オフィスのレイアウトを評価するレイアウト評価システムおよびレイアウト評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-115004号公報(特許文献1)には、複数の種類の業務が各ユーザによってそれぞれ遂行されるように構成される施設のオフィス計画支援システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されるオフィス計画支援システムでは、ユーザの主観調査結果を含む主観調査データと、ユーザの活動に対する客観調査結果を含む客観調査データとに基づいて、オフィス計画の計画要件が生成される。そして、計画要件に基づいて生成されたオフィス計画に基づいてユーザの行動を模擬するシミュレーションが実施される。ユーザの利用状況を模擬するシミュレーション結果に基づいて、オフィス計画の有効性が検証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1において、オフィス計画の計画要件は、主観調査データおよび客観調査データに基づいて生成されるものであり、オフィス計画支援システムの外部から与えられる評価基準については何ら考慮していない。
【0006】
その一方で、近年のワークスタイルの多様化に伴って、オフィスのレイアウトの評価基準においても多様化が進んでいる。例えば、ABW(Activity Based Working)やフリーアドレスのように、働く時間や場所を従業員が自由に選択することができるワークスタイルが普及しつつある。そのため、対象となるオフィスがこのようなワークスタイルに対応しているかどうかを評価するための評価基準が必要となる。ただし、このような評価基準は、数値化されておらず、定量的なものではないため、対象となるオフィスが評価基準を満たしているか否かについて客観的に評価することが難しいという課題がある。
【0007】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、オフィスのレイアウトの評価の客観性を担保することができるレイアウト評価システムおよびレイアウト評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るレイアウト評価システムは、オフィスのレイアウトを評価する。レイアウト評価システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行されるプログラムを記憶するメモリと、プロセッサによって用いられる複数の導出式を格納する第1の記憶装置とを備える。レイアウト評価システムの外部から、定性的な評価基準が与えられた場合において、プロセッサは、プログラムに従って、第1の記憶装置に格納された複数の導出式から、評価基準に応じて、適当な1つ以上の導出式を選択する。プロセッサは、1つ以上の導出式に含まれている、オフィスに固有の情報をオフィスから取得する。プロセッサは、取得されたオフィスに固有の情報を1つ以上の導出式に代入することにより、定量化された評価閾値を生成する。プロセッサは、生成された評価閾値を用いて、レイアウトが評価基準を満たすか否かを評価する。
【0009】
本開示の一態様に係るレイアウト評価システムは、定性的な評価基準を受け付けるステップと、第1の記憶装置に格納された複数の導出式から、評価基準に応じて、適当な1つ以上の導出式を選択するステップと、選択された1つ以上の導出式に含まれている、オフィスに固有の情報をオフィスから取得するステップと、取得されたオフィスに固有の情報を1つ以上の導出式に代入することにより、定量化された評価閾値を生成するステップと、生成された評価閾値を用いて、レイアウトが評価基準を満たすか否かを評価するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、オフィスのレイアウトの評価の客観性を担保することができるレイアウト評価システムおよびレイアウト評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るレイアウト評価システムの適用例を説明する図である。
【
図2】レイアウト評価システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図4】
図3に示した評価基準DBの一例を示す図である。
【
図5】
図1に示した導出式DBの一例を示す図である。
【
図6】オフィス情報DBから取得されるオフィス情報の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るレイアウト評価システムによる評価処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のステップS06の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】導出式DBから選択される導出式の一例を示す図である。
【
図11】オフィス情報DBから取得されるオフィス情報の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態3に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図13】作業推定部における推定処理を説明するための図である。
【
図14】実施の形態3に係るレイアウト評価システムにおける評価処理の手順を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態4に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図16】実施の形態4に係るレイアウト評価システムによる評価処理の手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図16のステップS07の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図18】実施の形態5に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図19】実施の形態5に係るレイアウト評価システムによる評価処理の手順を示すフローチャートである。
【
図20】
図19のステップS08の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図21】
図19のステップS09の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図22】実施の形態6に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図23】
図22に示したコミュニケーション量推定部の動作を説明するための図である。
【
図24】実施の形態6に係るレイアウト評価システムにおける評価処理の手順を示すフローチャートである。
【
図25】実施の形態7に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図26】実施の形態7に係るレイアウト評価システムにおける評価処理の手順を示すフローチャートである。
【
図27】実施の形態8に係るレイアウト評価システムの構成を示す図である。
【
図28】
図27に示した移動経路推定部の動作を説明するための図である。
【
図29】実施の形態8に係るレイアウト評価システムにおける評価処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0013】
実施の形態1.
<適用例>
図1は、実施の形態1に係るレイアウト評価システムの適用例を説明する図である。
【0014】
実施の形態1に係るレイアウト評価システム100は、対象となるオフィス110のレイアウトを評価するためのシステムである。オフィスのレイアウトとは、オフィスビルにおける作業エリアの配置を示す情報である。例えば、オフィスのレイアウトは、オフィスビルの各フロアに設けられた作業エリア(デスク、椅子、パーティションなど)の配置を示す。
【0015】
レイアウト評価システム100は、インターネット等の通信網NWを介してオフィス110および評価基準DB30と情報およびデータを遣り取りする。
【0016】
評価基準DB30は、オフィスのレイアウトの評価基準を示すデータを格納する。評価基準DB30に格納される評価基準には、ユーザによる作業エリアの選択、および、ユーザ同士のコミュニケーションの発生など、ユーザの生産性の観点に基づいて設定された様々な評価基準が含まれている。ただし、これらの評価基準は何れも数値化されておらず、定量的なものではない。
【0017】
レイアウト評価システム100は、評価基準DB30から与えられる評価基準に基づいて、対象となるオフィス110のレイアウトを評価する。評価基準は、生産性に対するニーズの変化に応じて、レイアウト評価システム100の利用者の意図とは関係なく変更される場合がある。そのため、レイアウト評価システム100は、評価基準の変更に対して柔軟に対応することが求められる。
【0018】
レイアウト評価システム100は、後述するように、定性的である評価基準から、対象のオフィス110の状態に基づいて、当該オフィス110のレイアウトを評価するのに適当な評価閾値を生成するように構成される。本明細書において「評価閾値」とは、対象となるオフィス110のレイアウトが当該評価基準を満たしているか否かを判定するために用いられる、定量化された閾値である。評価閾値は、対象となるオフィス110に固有の値を有している。レイアウト評価システム100は、この生成された評価閾値を用いることにより、オフィス110のレイアウトを客観的に評価することが可能となる。
【0019】
また、レイアウト評価システム100は、評価基準が変更された場合には、変更された評価基準から新たな評価閾値を生成するように構成される。これにより、レイアウト評価システム100は、生産性に対するニーズの変化にも柔軟な対応が可能となる。
【0020】
<レイアウト評価システムのハードウェア構成例>
図2は、レイアウト評価システム100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、レイアウト評価システム100は、オフィス110を含む外部の装置と通信する機能および演算機能を有する装置によって実現される。レイアウト評価システム100は、例えば、一般的なサーバによって実現され得る。
【0021】
レイアウト評価システム100は、CPU(Central Processing Unit)1と、RAM(Random Access Memory)2と、ROM(Read Only Memory)3と、I/F(Interface)装置4と、記憶装置5とを含んで構成される。CPU1、RAM2、ROM3、I/F装置4、および記憶装置5は、通信バス6を通じて各種データを遣り取りする。
【0022】
CPU1は、ROM3に格納されているプログラムをRAM2に展開して実行する。ROM3に格納されているプログラムには、レイアウト評価システム100によって実行される処理が記述されている。なお、
図2では、CPU1が単数である構成を例示しているが、レイアウト評価システム100は複数のCPUを有する構成としてもよい。
【0023】
I/F装置4は、オフィス110および評価基準DB30と信号やデータを遣り取りするための入出力装置である。I/F装置4は、オフィス110の状態を示す各種情報をオフィス110から受信する。また、I/F装置4は、評価基準を評価基準DB30から受信する。
【0024】
記憶装置5は、各種情報を記憶するストレージであって、対象となるオフィス110のレイアウトを評価するための各種情報を記憶する。各種情報には、評価閾値を生成するために用いられる導出式などが含まれる。
【0025】
<レイアウト評価システムの動作>
次に、
図3~
図8を参照して、実施の形態1に係るレイアウト評価システム100の動作について説明する。
【0026】
図3は、実施の形態1に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。レイアウト評価システム100は、対象となるオフィス110のレイアウトを評価する。
【0027】
図3に示すように、オフィス110は、入退管理装置40と、オフィス情報DB42とを備えている。入退管理装置40は、オフィス110の各作業エリアに対する従業員(以下、「ユーザ」とも称する)の入退室を管理するための装置である。入退管理装置40は、オフィス110内に設置されている。入退管理装置40は、各作業エリアの出入口付近に設けられたカードリーダを含んでいる。ユーザは、個人を特定可能なIDカードを所持しており、入口付近に設けられたカードリーダにIDカードを読み取らせることで、ドアを解錠して作業エリアに入ることができる。また、ユーザは、出口付近に設けられたカードリーダにIDカードを読み取らせることで、ドアを解錠して作業エリアから出ることができる。入退管理装置40は、各カードリーダが読み取ったIDカードの情報に基づいて、ログ情報を生成する。
【0028】
オフィス情報DB42には、オフィス110に関する情報(以下、「オフィス情報」とも称する)が格納される。オフィス情報DB42は、オフィス110内に設置されてもよいし、オフィス110の外部に設置されてもよい。オフィス情報には、オフィス110の躯体に関する情報および、オフィス110の各フロアのマップなどのレイアウトに関する情報などの建物に関する情報と、オフィス110内で作業するユーザ数、および、各ユーザの業務に関する情報(業務時間、業務内容など)などのユーザに関する情報とが含まれている。
【0029】
入退管理装置40およびオフィス情報DB42は、レイアウト評価システム100と通信可能に構成されている。入退管理装置40は、各作業エリアに対するユーザの入退室が記録されたログ情報を生成してレイアウト評価システム100へ送信する。オフィス情報DB42は、オフィス情報をレイアウト評価システム100へ送信する。
【0030】
レイアウト評価システム100において、ログ情報およびオフィス情報は、オフィス110内におけるユーザの行動(例えば、ユーザの移動経路およびユーザの位置情報など)を推定するために用いられる。オフィス情報はさらに、評価閾値を生成するために用いられる。
【0031】
オフィスでは、通常、各ユーザは、予め設定された作業エリアにて作業を行う。各ユーザの生産性を高めることができるように、オフィスには、作業内容ごとに適当な作業エリアを設置するとともに、ユーザが作業内容に応じて作業エリアを自由に選択できるようにすることが求められる。また、オフィスには、各ユーザが作業エリアに移動する際にユーザ同士のコミュニケーションを発生させることによって、ユーザ間の交流を支援することが期待されている。
【0032】
しかしながら、ユーザが作業内容に応じて作業エリアを選択できているか否か、および、ユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生しているか否かについては、定量的な評価基準が存在しない。また、ユーザが選択できる作業エリアの数、および、ユーザ同士のコミュニケーションの発生しやすさは、オフィスのレイアウト、ユーザ数および各ユーザの業務内容といったオフィスごとに固有の条件に左右されることから、複数のオフィス間で共通化された、定量的な評価基準を設定することは容易ではない。そのため、対象となるオフィスにおける各ユーザの主観に基づいて専ら評価することになり、客観的な評価を行うことができないことが懸念される。
【0033】
実施の形態1では、以下に説明するように、対象となるオフィス110において、「各ユーザが作業内容ごとに作業エリアを移動しているか」について客観的な評価を行うための仕組みを提供する。
【0034】
図3に示すように、レイアウト評価システム100は、評価閾値生成部10、導出式DB12、移動経路推定部14、滞在エリア判定部16、作業推定部18、エリア別利用分析部20、およびレイアウト評価部22を備える。これらの構成は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、レイアウト評価システム100のROM3に格納されるプログラムを実行するCPU1であってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA、ASIC、またはこれらを組み合わせたものなどで構成される。
【0035】
評価閾値生成部10は、評価基準DB30およびオフィス情報DB42と通信可能に構成されている。評価基準DB30は、オフィスのレイアウトの評価基準を示すデータを格納する。
図4は、
図3に示した評価基準DB30の一例を示す図である。
図4の例では、「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準が評価基準DB30に格納されている。
【0036】
図3に戻って、評価閾値生成部10には、評価基準DB30から評価基準が与えられると、導出式DB12およびオフィス情報DB42にアクセスすることにより、定性的な評価基準から評価閾値を生成するために必要な情報を取得する。上述したように、評価閾値とは、対象となるオフィス110のレイアウトが、評価基準DB30から与えられた評価基準を満たしているか否かを判定するために用いられる、定量化された閾値である。
【0037】
導出式DB12は、評価閾値を生成するために用いられる導出式が格納される。導出式DB12は「第1の記憶装置」の一実施例に対応する。
図5は、
図1に示した導出式DB12の一例を示す図である。
図5に示すように、導出式DB12には、導出式(1)~(3)が格納されている。
【0038】
導出式(1)~(3)は、オフィス110において、業務時間内に1ユーザが作業エリアを変更する回数の期待値を算出するための数式である。この期待値とは、作業内容ごとに作業エリアに移動することを実現するために、ユーザに対して要望される好適な作業エリアの変更回数に相当する。
【0039】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から、「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準に対応する評価閾値を導出するために、導出式(1)~(3)を選択する。評価閾値生成部10は、さらに、オフィス情報DB42から、評価閾値を生成するために必要なオフィス情報を取得する。
図6は、オフィス情報DB42から取得されるオフィス情報の一例を示す図である。
【0040】
図6に示すように、オフィス情報は、オフィス110における一般的なユーザの業務に関する業務情報を含んでいる。この業務情報では、所定の業務時間H内に行われる作業内容と、各作業内容が業務時間Hに占める時間の比率とが対応付けられている。
【0041】
具体的には、作業内容は、ユーザ同士のコミュニケーションが行われるコミュニケーション系作業A1と、アイデア出しなどリラックス状態で行われるリラックス系作業A2と、集中状態で行われる集中系作業A3との3つの系統に分類されている。業務時間H(H=5時間とする)において、これら3つの作業系統の時間比率は、A1:A2:A3=40%:20%:40%となっている。
【0042】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から選択した導出式(1)~(3)(
図5参照)と、オフィス情報DB42から取得した業務情報(
図6参照)とを用いて、評価閾値を生成する。
【0043】
具体的には、最初に、導出式(1)を用いて、作業A1,A2,A3の各々のコマ数が求められる。なお、1コマは1時間に相当する。業務時間Hが5時間の場合、業務時間H内の総コマ数は5となる。
【0044】
作業A1の時間比率は40%であるため、作業A1のコマ数をKA1とすると、1≦KA1≦2となる。作業A2の時間比率は20%であるため、作業A2のコマ数をKA2とすると、1≦KA2≦1となる。作業A3の時間比率は40%であるため、作業A3のコマ数をKA3とすると、1≦KA3≦2となる。
【0045】
次に、導出式(2)を用いて、作業内容の変更によって作業エリアの移動が発生する場合の5つコマの配列が求められる。作業エリアを移動する回数が1回となるときの5つのコマの配列をP0とすると、P0=0[通り]となる。移動回数が2回となるときの配列をP2とすると、P2=3!=6[通り]となる。移動回数が3回となるときの配列をP3とすると、P3=4!/2!=12[通り]となる。移動回数が4回となるときの配列をP4とすると、P4=5!/(2!×1!×2!)-P3-P2-P1=12[通り]となる。
【0046】
次に、導出式(3)を用いて、業務時間Hにおける作業エリアの変更回数の期待値αが求められる。
図5の例では、導出式(3)は、変更回数の期待値αとして、業務時間Hにおける作業エリアの変更回数の平均値を導出するように構成されている。導出式(3)の右辺には、上述した配列P
4,P
3,P
2,P
1および各配列の変更回数n(n=4,3,2,1)が代入される。これにより、期待値αは、(4×12+3×12+2×6+1×0)/(12+12+6+0)=3.2[回]が導出される。
【0047】
この期待値αは、オフィス110におけるユーザの業務情報(業務時間、作業内容および各作業内容の時間比率)に基づいて、業務時間内における1ユーザに対して要望される好適な作業エリアの変更回数を導出したものである。期待値αは、オフィス110のレイアウトが「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしているか否かを評価するための評価閾値に相当する。なお、上述した導出式(1)~(3)は、評価閾値を導出するための導出式の一例に過ぎず、他の導出式が用いられてもよい。
【0048】
このように評価閾値生成部10は、評価基準DB30から与えられた定性的な評価基準から、導出式およびオフィス110に固有の情報であるオフィス情報を選択し、選択された導出式およびオフィス情報を用いて、定量化された評価閾値を生成するように構成されている。したがって、生成された評価閾値は、オフィス情報が反映された、オフィス110に固有の値を有することになる。この評価閾値を用いることにより、オフィス110のレイアウトが評価基準を満たしているか否かを客観的に評価することが可能となる。
【0049】
図3に戻って、移動経路推定部14は、入退管理装置40から取得されるログ情報およびオフィス情報DB42から取得されるオフィス情報に基づいて、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。具体的には、移動経路推定部14は、ログ情報に含まれている各ユーザの作業エリアに対する入退出の時刻情報と、オフィス情報に含まれているフロアマップとから、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。
【0050】
滞在エリア判定部16は、移動経路推定部14により推定された各ユーザの移動経路と、オフィス情報とに基づいて、各ユーザが滞在した作業エリアを判定する。1ユーザの移動経路がフロアマップ上の少なくとも1つの作業エリアを含んでいる場合、滞在エリア判定部16は、当該ユーザが当該少なくとも1つの作業エリアに滞在したものと判定する。
【0051】
作業推定部18は、滞在エリア判定部16により判定された各ユーザが滞在した作業エリアと、各ユーザが作業エリアに滞在した時間とに基づいて、各ユーザが行った作業の内容を推定する。例えば、1ユーザが滞在した作業エリアが、集中系作業のために設けられた作業エリアである集中エリアを含んでいる場合、作業推定部18は、集中エリアにおける当該ユーザの滞在時間の長さに基づいて、当該ユーザの作業内容を推定する。具体的には、滞在時間の長さが予め定められた閾値時間を超えている場合には、作業推定部18は、当該ユーザが、集中エリアに滞在して集中系作業を行ったものと推定する。一方、滞在時間の長さが閾値時間に満たない場合には、作業推定部18は、当該ユーザが集中エリアを通過したに過ぎず、集中エリアでは作業を行っていないものと推定する。
【0052】
エリア別利用分析部20は、作業推定部18により推定された各ユーザの作業内容に基づいて、各作業エリアの利用状況を分析する。具体的には、エリア別利用分析部20は、作業エリアごとに、業務時間の各時間帯における利用ユーザ数、および、各ユーザの利用時間などを分析する。エリア別利用分析部20は、さらに、各ユーザの作業内容の推移から、各ユーザの作業エリアの移動回数を分析する。
【0053】
レイアウト評価部22は、評価閾値生成部10により生成された評価閾値を用いて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態1では、レイアウト評価部22は、評価閾値である、業務時間Hにおける作業エリアの変更回数の期待値αと、業務時間Hにおける作業エリアの移動回数の実績値とを比較する。この移動回数の実績値には、例えば、複数のユーザの作業エリアの移動回数の代表値を用いることができる。代表値は、複数のユーザの移動回数の平均値、最頻値、中央値などであってよい。
【0054】
移動回数の実績値が期待値αよりも小さい場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしていないと判定する。一方、移動回数の実績値が期待値α以上である場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしていると判定する。レイアウト評価部22は、I/F装置4(
図2参照)を介して評価結果を出力する。レイアウト評価システム100の利用者は評価結果を受け取ることができる。
【0055】
<処理フロー>
図7は、レイアウト評価システム100による評価処理の手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、レイアウト評価システム100は、対象のオフィス110から、オフィス110内の各作業エリアにおける入退室のログ情報を取得する(ステップS01)。ログ情報には、各ユーザの作業エリアに対する入退出の時刻情報が含まれている。
【0056】
次に、レイアウト評価システム100は、取得されたログ情報、および、オフィス110から取得したオフィス情報から、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する(ステップS02)。オフィス情報には、オフィス110のフロアマップが含まれている。
【0057】
次に、レイアウト評価システム100は、推定された各ユーザの移動経路と、オフィス情報とに基づいて、各ユーザが滞在した作業エリアを判定する(ステップS03)。
【0058】
次に、レイアウト評価システム100は、各ユーザが滞在した作業エリアと、各ユーザが作業エリアに滞在した時間とに基づいて、各ユーザの作業内容を推定する(ステップS04)。レイアウト評価システム100は、作業エリアの用途、および、ユーザが作業エリアに滞在した時間の長さに基づいて、当該ユーザの作業内容を推定する。
【0059】
次に、レイアウト評価システム100は、推定された各ユーザの作業内容に基づいて、各作業エリアの利用状況を分析する(ステップS05)。実施の形態1では、S05において、レイアウト評価システム100は、各ユーザの作業エリアの移動回数を分析する。
【0060】
次に、レイアウト評価システム100は、各作業エリアの利用状況の分析結果に基づいて、オフィス110のレイアウトを評価する(ステップS06)。
図8は、
図7のステップS06の処理の手順を示すフローチャートである。
【0061】
図8に示すように、まず。レイアウト評価システム100は、評価基準DB30から評価基準を取得する(ステップS10)。実施の形態1では、「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準が取得される。
【0062】
次に、レイアウト評価システム100は、取得された評価基準に対応する評価閾値を導出するために必要な導出式を、導出式DB12から選択する(ステップS11)。実施の形態1では、「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準に対応する評価閾値を導出するための導出式(1)~(3)(
図5参照)が選択される。
【0063】
次に、レイアウト評価システム100は、オフィス情報DB42から、評価閾値を生成するために必要なオフィス情報を取得する(ステップS12)。S12では、選択された導出式(1)~(3)に代入するオフィス情報(
図6参照)が取得される。
【0064】
次に、レイアウト評価システム100は、取得されたオフィス情報を導出式に代入することにより、評価閾値を生成する(ステップS13)。実施の形態1では、評価閾値として、業務時間における作業エリアの変更回数の期待値αが導出される。
【0065】
最後に、レイアウト評価システム100は、生成された評価閾値を用いて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態1では、レイアウト評価システム100は、評価閾値である、業務時間における作業エリアの変更回数の期待値αと、業務時間における作業エリアの移動回数の実績値とを比較する。レイアウト評価システム100は、比較結果に基づいて、オフィス110のレイアウトが「作業内容ごとに作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしているか否かを評価する。
【0066】
以上説明したように、実施の形態1に係るレイアウト評価システム100は、評価基準DB30から与えられた定性的な評価基準から、導出式、およびオフィス110に固有の情報であるオフィス情報を選択し、選択された導出式およびオフィス情報を用いて、定量化された評価閾値を生成するように構成されている。生成された評価閾値は、オフィス情報が反映された、オフィス110に固有の値を有している。この評価閾値を用いることにより、オフィス110のレイアウトが評価基準を満たしているか否かを客観的に評価することが可能となる。
【0067】
実施の形態2.
実施の形態2では、評価基準DB30から与えられる評価基準が変更された場合におけるレイアウト評価システム100における評価処理について説明する。
【0068】
図9は、評価基準DB30の一例を示す図である。
図9の例では、「作業内容ごとに適した作業エリアに移動して作業している」という評価基準が評価基準DB30に格納されている。当該評価基準は、
図3に示した評価基準とは、作業エリアの適性が追加されている点が異なる。
【0069】
評価閾値生成部10には、評価基準DB30から与えられる評価基準が変更されると、導出式DB12およびオフィス情報DB42に再びアクセスすることにより、定性的な評価基準から評価閾値を生成するために必要な情報を取得する。
図10は、導出式DB12から選択される導出式の一例を示す図である。
図10に示すように、導出式DB12には、導出式(1)~(5)が格納されている。
【0070】
導出式(1)~(5)は、オフィス110において、業務時間H内に1ユーザが、作業内容に応じて作業エリアを変更する回数の期待値を算出するための数式である。この期待値とは、作業内容ごとに適当な作業エリアに移動することを実現するために、ユーザに対して要望される好適な作業エリアの変更回数に相当する。
【0071】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から、「作業内容ごとに適した作業エリアに移動して作業している」という評価基準に対応する評価閾値を導出するために、導出式(1)~(5)を選択する。導出式(1)~(3)は
図5に示した導出式(1)~(3)と同じものである。導出式(4),(5)は、評価基準が変更されたことに応じて、新たに選択されたものである。
【0072】
評価閾値生成部10はさらに、オフィス情報DB42から、評価閾値を生成するために必要なオフィス情報を取得する。
図11は、オフィス情報DB42から取得されるオフィス情報の一例を示す図である。
図11に示されるオフィス情報は、
図6に示したオフィス情報とは、エリア情報およびユーザ情報が追加されている点が異なる。
【0073】
エリア情報とは、オフィス110の各作業エリアに関する情報である。エリア情報は、オフィス110の総座席数、ならびに、作業内容ごとの作業エリアの数および総座席数に関する情報を含んでいる。具体的には、オフィス110の総座席数Sは25席である。作業エリアは、コミュニケーション系作業A1のための作業エリアであるコミュニケーションエリア、リラックス系作業A2のための作業エリアであるリラックスエリア、および集中系作業A3のための作業エリアである集中エリアを含んでいる。コミュニケーションエリアは、オフィス110内に3か所あり、総座席数S2は10席である。リラックスエリアは、オフィス110内に4か所あり、総座席数S3は5席である。集中エリアは、オフィス110内に3か所あり、総座席数S1は10席である。
【0074】
ユーザ情報は、オフィス110内で作業する従業員数N(ユーザ数)に関する情報を含んでいる。
【0075】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から選択した導出式(1)~(5)(
図10参照)と、オフィス情報DB42から取得したオフィス情報(
図11参照)とを用いて、評価閾値を生成する。
【0076】
具体的には、最初に、導出式(1)~(3)を用いて、業務情報に基づいて、業務時間Hにおける作業エリアの変更回数の期待値αが求められる。
図5で説明したように、導出式(3)は、変更回数の期待値αとして、業務時間Hにおける作業エリアの変更回数の平均値を導出するように構成されている。
図11に示したオフィス情報から、期待値α=3.2[回]が導出される。
【0077】
次に、導出式(4)を用いて、ある作業エリアにおいて全座席が埋まっている確率が求められる。作業エリアAnの座席が埋まっている確率をQSnとすると、QSnは、オフィス110の全ての座席を全てのユーザが使用する組合せの総数SCNに対する、作業エリアAn以外の作業エリアの座席をユーザが使用する組合せの総数S-SnCN-Snの割合として求めることができる。なお、S-SnCN-Snは、作業エリアAnの座席が埋まっている状態で、作業エリアAn以外の作業エリアの座席を、残りのユーザが使用する組合せの総数を表している。
【0078】
次に、導出式(5)を用いて、業務時間Hにおいて、作業内容に応じて作業エリアが変更される回数の期待値βが求められる。導出式(5)は、変更回数の期待値βとして、期待値αに、各作業エリアの座席が埋まっていない確率を乗じた値を導出するように構成されている。導出式(5)の右辺には、上述した期待値α、作業エリアA1の座席が埋まっている確率QS1、作業エリアA2の座席が埋まっている確率QS2、および作業エリアA3の座席が埋まっている確率QS3が代入される。これにより、期待値βは、β=α{1-(QS1+QS2+QS3)}=3.0[回]が導出される。
【0079】
この期待値βは、オフィス110におけるエリア情報(各作業エリアの総座席数)、ユーザ数、および、ユーザの業務情報(業務時間、作業内容および各作業内容の時間比率)に基づいて、業務時間内における1ユーザに対して要望される好適な作業エリアの変更回数を導出したものである。期待値βは、オフィス110のレイアウトが「作業内容ごとに適した作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしているか否かを評価するための評価閾値に相当する。なお、上述した導出式(1)~(5)は、評価閾値を導出するための導出式の一例に過ぎず、他の導出式が用いられてもよい。
【0080】
このように評価閾値生成部10は、評価基準DB30から与えられる評価基準が変更された場合には、導出式およびオフィス110に固有の情報であるオフィス情報を新たに選択し、選択された導出式およびオフィス情報を用いて評価閾値を再生成するように構成される。したがって、評価基準の変更に応じて、評価閾値も変更されることになる。この変更された評価閾値を用いることにより、オフィス110のレイアウトが、変更された評価基準を満たしているか否かを客観的に評価することが可能となる。
【0081】
レイアウト評価部22は、評価閾値生成部10により新たに生成された評価閾値を用いて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態2では、レイアウト評価部22は、評価閾値である、業務時間Hにおける作業内容に応じて作業エリアを変更する回数の期待値βと、業務時間Hにおける作業エリアの移動回数の実績値とを比較する。この移動回数の実績値には、例えば、複数のユーザの作業エリアの移動回数の代表値を用いることができる。代表値は、複数のユーザの移動回数の平均値、最頻値、中央値などであってよい。
【0082】
移動回数の実績値が期待値βよりも小さい場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「作業内容ごとに適した作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしていないと判定する。一方、移動回数の実績値が期待値β以上である場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「作業内容ごとに適した作業エリアに移動して作業している」という評価基準を満たしていると判定する。レイアウト評価部22は、I/F装置4(
図2参照)を介して評価結果を出力する。レイアウト評価システム100の利用者は評価結果を受け取ることができる。
【0083】
以上説明したように、実施の形態2に係るレイアウト評価システム100は、評価基準DB30から与えられる評価基準が変更された場合には、導出式およびオフィス110に固有の情報であるオフィス情報を新たに選択し、選択された導出式およびオフィス情報を用いて評価閾値を再生成するように構成される。したがって、生産性に対するニーズの変化に応じて評価基準が変更された場合においても、レイアウト評価システム100は、評価基準の変更に対して柔軟に対応することができる。
【0084】
実施の形態3.
実施の形態3では、オフィス110の各作業エリアがその利用目的に合わせて利用されているかを評価する手法について説明する。この評価には、各ユーザの作業内容を適当に推定することが求められる。実施の形態3では、以下に説明するように、予め登録されたスケジュール情報を利用して、各ユーザの作業内容を推定するものとする。
【0085】
図12は、実施の形態3に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。実施の形態3に係るレイアウト評価システム100の構成は、
図3に示した実施の形態1に係るレイアウト評価システム100の構成と基本的に同じである。
【0086】
図12に示すように、オフィス110は、スケジュールDB44をさらに備えている。スケジュールDB44は、各ユーザの作業予定であるスケジュール情報を格納する。実施の形態3に係るレイアウト評価システム100では、作業推定部18は、スケジュールDB44から取得したスケジュール情報と、滞在エリア判定部16による滞在エリアの判定結果とに基づいて、各ユーザが行った作業の内容を推定するように構成される。
【0087】
図13は、作業推定部18における推定処理を説明するための図である。
図13には、スケジュールDB44から取得した1人のユーザ(従業員Aとする)のある1日のスケジュール情報と、従業員Aが当日に滞在した作業エリアを判定した結果とが示されている。スケジュール情報には、予め登録された時間帯ごとの作業内容に関する情報が含まれている。滞在エリア判定結果は、滞在エリア判定部16が、従業員Aの当日の移動経路およびオフィス情報(フロアマップなど)から判定したものである。滞在エリア判定結果には、従業員Aが滞在した作業エリア、および作業エリアに滞在した時間帯に関する情報が含まれている。
【0088】
例えば、スケジュール情報において、9:00~10:00の時間帯には「打合せ」が登録されている。滞在エリア判定結果では、同時間帯の滞在エリアは、コミュニケーションエリアである「会議室」となっている。この場合、作業推定部18は、9:00~10:00の時間帯における従業員Aの作業内容が、ユーザ同士のコミュニケーションが行われるコミュニケーション系作業であると推定する。
【0089】
また、スケジュール情報において、14:00~15:00の時間帯には「打合せ」が登録されている。滞在エリア判定結果では、同時間帯の滞在エリアは、リラックスエリアである「カフェスペース」となっている。この場合、作業推定部18は、14:00~15:00の時間帯における従業員Aの作業内容が、アイデア出しなどリラックス状態で行われるリラックス系作業であると推定する。
【0090】
作業推定部18は、上述した方法により、ユーザごとに、スケジュール情報および滞在エリア判定結果に基づいて、業務時間の各時間帯における作業内容を推定する。
【0091】
エリア別利用分析部20は、作業推定部18により推定された各ユーザの作業内容に基づいて、各作業エリアの利用状況を分析する。上述したように、エリア別利用分析部20は、作業エリアごとに、業務時間の各時間帯における利用ユーザ数、および、各ユーザの利用時間などを分析する。エリア別利用分析部20はさらに、各ユーザの作業内容の推定結果から、各ユーザの作業エリアの利用目的を分析する。
【0092】
レイアウト評価部22は、エリア別利用分析部20による分析結果から、各作業エリアについて、作業エリアがその利用目的に合わせて利用されているか否かを評価する。
図13の例では、コミュニケーションエリアである「会議室」はコミュニケーション系作業のために利用され、かつ、リラックスエリアである「カフェスペース」はリラックス系作業のために利用されている。したがって、レイアウト評価部22は、コミュニケーションエリアおよびリラックスエリアの各々が、その利用目的に合った利用がなされていると評価する。
【0093】
図14は、実施の形態3に係るレイアウト評価システム100における評価処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態3に係るレイアウト評価システム100は、
図7と同じS01~S06の処理を実行する。
図14に示すフローチャートは、このうちのステップS04の処理の手順を示したものである。
【0094】
図14に示すように、まず、レイアウト評価システム100は、各ユーザが滞在した作業エリアの判定結果から、各ユーザが作業エリアに滞在した時間を取得する(ステップS20)。
【0095】
次に、レイアウト評価システム100は、取得された滞在時間の長さに基づいて、ユーザが滞在エリアにおいて作業を行ったか否かを判定する(ステップS21)。S21では、レイアウト評価システム100は、滞在時間の長さが閾値時間を超えている場合、ユーザが滞在エリアにおいて作業を行ったものと判定する。一方、滞在時間の長さが閾値時間に満たない場合には、レイアウト評価システム100は、ユーザが滞在エリアを通過したに過ぎず、滞在エリアでは作業を行っていないものと判定する。
【0096】
次に、レイアウト評価システム100は、オフィス110のスケジュールDB44から、各ユーザのスケジュール情報を取得する(ステップS22)。スケジュールDB44には、
図13に示したように、ユーザごとに、業務時間内の各時間帯における作業内容が登録されている。
【0097】
次に、レイアウト評価システム100は、ユーザが滞在した作業エリア、および当該作業エリアに滞在した時間帯と、当該ユーザのスケジュールとに基づいて、当該ユーザの作業内容を推定する(ステップS23)。
【0098】
各ユーザの作業内容が推定されると、レイアウト評価システム100は、
図7と同じS05により、推定された各ユーザの作業内容に基づいて、各作業エリアの利用状況を分析する。実施の形態3では、レイアウト評価システム100は、各作業エリアについて、ユーザがその作業エリアを利用した目的が分析される。そして、レイアウト評価システム100は、
図7と同じS06により、各作業エリアの利用状況の分析結果に基づいて、オフィス110のレイアウトを評価する。レイアウト評価システム100は、作業エリアごとに、ユーザの利用目的の分析結果と、作業エリアの本来の利用目的とを比較することにより、作業エリアがその利用目的に合わせて利用されているかを評価する。
【0099】
以上説明したように、実施の形態3に係るレイアウト評価システム100によれば、対象のオフィス110にて予め登録されている各ユーザのスケジュール情報を利用することにより、各ユーザの滞在エリアの判定結果およびスケジュール情報から、作業エリアにおける各ユーザの作業内容を推定することができる。これによると、各ユーザの作業内容が具体化されるため、作業エリアがその利用目的に合わせて利用されているかを評価することが可能となる。
【0100】
実施の形態4.
実施の形態4では、「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準が与えられた場合のレイアウト評価システム100における評価処理について説明する。
【0101】
図15は、実施の形態4に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。実施の形態4に係るレイアウト評価システム100は、
図3に示した実施の形態1に係るレイアウト評価システム100とは、コミュニケーション発生率DB24およびコミュニケーション量推定部26を備える点が異なる。
【0102】
コミュニケーション発生率DB24は、各作業エリアにおけるコミュニケーション発生率を格納する。本明細書において「作業エリアにおけるコミュニケーション発生率」とは、作業エリアにおいて、単位時間(例えば1時間)あたりにユーザ同士のコミュニケーションが発生する回数で表される。コミュニケーション発生率DB24は「第2の記憶装置」の一実施例に対応する。
【0103】
作業エリアにおけるコミュニケーション発生率は、作業エリアに滞在するユーザ数によって異なる。具体的には、作業エリアに滞在するユーザ数が多くなるに従って、作業エリアにおけるコミュニケーション発生率は高くなる。例えば、コミュニケーションエリアにおけるコミュニケーション発生率は、ユーザ数が2人のときには2.0[回/h]となり、ユーザ数が3人のときには5.5[回/h]となり、ユーザ数が4人のときには10.0[回/h]となる。
【0104】
また、作業エリアにおけるコミュニケーション発生率は、作業エリアの用途によっても異なる。資料作成などの集中系作業が行われる作業エリアのコミュニケーション発生率は、コミュニケーションエリアにおけるコミュニケーション発生率よりも相対的に低くなる。例えば、集中エリアにおけるコミュニケーション発生率は、ユーザ数が2人のときには0.007[回/h]となり、ユーザ数が3人のときには0.01[回/h]となり、ユーザ数が4人のときには0.013[回/h]となる。
【0105】
なお、上述した各作業エリアにおける滞在ユーザ数とコミュニケーション発生率との関係は、予め実験またはシミュレーションによって求めることができる。
【0106】
評価閾値生成部10には、評価基準DB30から評価基準が与えられる。実施の形態4では、評価基準DB30から「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準が評価閾値生成部10から与えられたものとする。
【0107】
評価閾値生成部10は、評価基準DB30から評価基準が与えられると、導出式DB12、オフィス情報DB42およびコミュニケーション発生率DB24にアクセスすることにより、評価基準から評価閾値を生成するために必要な情報を取得する。具体的には、評価閾値生成部10は、導出式DB12から、「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準に対応する評価閾値を導出するために、導出式を選択する。評価閾値生成部10はさらに、オフィス情報DB42から、当該評価閾値を生成するために必要なオフィス情報を取得するとともに、コミュニケーション発生率DB24から各作業エリアのコミュニケーション発生率に関する情報を取得する。オフィス情報には、オフィス110の各作業エリアの面積、座席数および座席の配置に関する情報が含まれている。
【0108】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から選択した導出式と、オフィス情報DB42から取得したオフィス情報と、コミュニケーション発生率DB24から取得した各作業エリアのコミュニケーション発生率とを用いて、評価閾値を生成する。具体的には、評価閾値生成部10は、評価閾値として、各作業エリアにおいて発生するコミュニケーション量の期待値を導出する。コミュニケーション量の期待値は、各作業エリアの面積、座席数、および座席の配置などを考慮して導出することができる。
【0109】
コミュニケーション量推定部26は、滞在エリア判定部16による各ユーザの滞在エリアの判定結果、作業推定部18による各ユーザの作業内容の推定結果、および各作業エリアのコミュニケーション発生率に基づいて、各作業エリアにおいて発生したコミュニケーション量を推定する。
【0110】
具体的には、コミュニケーション量推定部26は、1つの作業エリアに各ユーザが滞在した時間帯、および、当該作業エリアでの各ユーザの作業内容に基づいて、当該作業エリアで同じ時間帯に作業を行ったユーザ数を求める。そして、コミュニケーション量推定部26は、コミュニケーション発生率DB24から取得した、当該作業エリアにおけるコミュニケーション発生率とユーザ数との関係を参照することにより、ユーザ数に基づいて当該時間帯に発生したコミュニケーション量を推定する。
【0111】
例えば、滞在エリア判定部16による判定結果および作業推定部18による推定結果に基づいて、13:00~15:00の時間帯において、コミュニケーションエリアで4人が作業していたことが判定された場合には、当該時間帯に発生したコミュニケーション量は、10.0×2=20.0[回]と推定される。
【0112】
レイアウト評価部22は、評価閾値生成部10により生成された評価閾値を用いて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態4では、レイアウト評価部22は、評価閾値である、各作業エリアにて発生するコミュニケーション量の期待値と、コミュニケーション量推定部26により求められた、各作業エリアにて発生したコミュニケーション量の推定値とを比較する。
【0113】
各作業エリアにおいてコミュニケーション量の推定値がコミュニケーション量の期待値よりも小さい場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしていないと判定する。一方、各作業エリアにおいてコミュニケーション量の推定値がコミュニケーション量の期待値以上である場合には、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしていると判定する。レイアウト評価部22は、I/F装置4(
図2参照)を介して評価結果を出力する。レイアウト評価システム100の利用者は評価結果を受け取ることができる。
【0114】
<処理フロー>
図16は、実施の形態4に係るレイアウト評価システム100による評価処理の手順を示すフローチャートである。
図16に示すフローチャートは、
図7に示したフローチャートに対し、ステップS07の処理を追加したものである。
【0115】
レイアウト評価システム100は、
図7と同じS01~S05の処理を実行することにより、オフィス110内の各作業エリアの利用状況を分析する。レイアウト評価システム100は、作業エリアごとに、業務時間の各時間帯における利用ユーザ数、および、各ユーザの利用時間などを分析する。
【0116】
次に、レイアウト評価システム100は、各作業エリアにて発生したコミュニケーション量を推定する(ステップS07)。
図17は、
図16のステップS07の処理の手順を示すフローチャートである。
図17に示すように、まず、レイアウト評価システム100は、作業エリアごとに、コミュニケーション発生率、各ユーザの滞在時間、および各ユーザの作業内容の推定結果を取得する(ステップS30)。
【0117】
次に、レイアウト評価システム100は、取得された情報に基づいて、各時間帯において、作業エリアにおいて発生したコミュニケーション量を推定する(ステップS31)。S31では、レイアウト評価システム100は、各作業エリアにおけるコミュニケーション発生率とユーザ数との関係を参照することにより、同じ時間帯に作業エリアに滞在したユーザ数に基づいて、当該時間帯に発生したコミュニケーション量を推定する。
【0118】
図16に戻って、レイアウト評価システム100は、評価閾値と、各作業エリアにおけるコミュニケーション量の推定値とに基づいて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態4では、レイアウト評価システム100は、評価閾値である、各作業エリアにおけるコミュニケーション量の期待値と、各作業エリアにおけるコミュニケーション量の推定値とを比較する。レイアウト評価システム100は、比較結果に基づいて、オフィス110のレイアウトが「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしているか否かを評価する。
【0119】
以上説明したように、実施の形態4に係るレイアウト評価システム100は、各作業エリアにおけるコミュニケーション発生率を予め設定し、このコミュニケーション発生率を用いて、評価閾値を生成するとともに、各作業エリアにおいて発生したコミュニケーション量を推定するように構成されている。これによると、オフィス110のレイアウトが「各作業エリアにおいてユーザ同士のコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしているか否かを客観的に評価することが可能となる。
【0120】
実施の形態5.
実施の形態5では、「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準が与えられた場合のレイアウト評価システム100における評価処理について説明する。
【0121】
図18は、実施の形態5に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。実施の形態5に係るレイアウト評価システム100は、
図15に示した実施の形態4に係るレイアウト評価システム100とは、邂逅判定部28を備える点が異なる。
【0122】
邂逅判定部28は、移動経路推定部14により推定されたオフィス110内における各ユーザの移動経路に基づいて、オフィス110内におけるユーザ同士の邂逅を判定するように構成される。具体的には、邂逅判定部28は、ユーザが作業エリアを変更するためにオフィス110内を移動しているときのユーザ同士の邂逅を判定する。
【0123】
例えば、ユーザAが2つの作業エリア間を移動するときの移動経路と、同時刻におけるユーザBが2つの作業エリア間を移動するときの移動経路とが交差している場合、邂逅判定部28は、ユーザAとユーザBとの邂逅が発生していると判定する。この場合、邂逅判定部28は、ユーザAの移動中における邂逅人数を1人とカウントする。
【0124】
あるいは、ユーザAの移動経路と、同時刻におけるユーザBの移動経路およびユーザCの移動経路とが交差している場合には、邂逅判定部28は、ユーザAの移動中における邂逅人数を2人とカウントする。このように邂逅判定部28は、ユーザAの移動経路と他のユーザの移動経路とが交差している回数を、ユーザAの邂逅人数としてカウントする。
【0125】
コミュニケーション量推定部26は、邂逅判定部28による判定結果を用いて、邂逅時におけるコミュニケーション量を推定する。具体的には、コミュニケーション量推定部26は、コミュニケーション発生率DB24から、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を取得する。本明細書において「邂逅時におけるコミュニケーション発生率」とは、ユーザ同士の邂逅時においてユーザ同士のコミュニケーションが発生する回数で表される。
【0126】
邂逅時におけるコミュニケーション発生率は、邂逅人数と邂逅に費やした時間とに応じて設定することができる。例えば、邂逅人数が1人である場合には、邂逅に費やした時間が予め定められた第1の閾値時間(例えば2分)以上であるとき、邂逅時にコミュニケーションが発生したと判断して、コミュニケーション発生率は1[回]に設定される。
【0127】
邂逅人数が2人である場合には、邂逅に要した時間が第1の閾値時間(2分)以上第2の閾値時間(例えば5分)未満であるときには、2人のうちの一方とコミュニケーションが発生したものの、他方とはコミュニケーションが発生していないと判断して、コミュニケーション発生率は1[回]に設定される。邂逅に要した時間が第2の閾値時間(5分)以上であるときには、2人の何れともコミュニケーションが発生したと判断して、コミュニケーション発生率は2[回]に設定される。
【0128】
ここで、邂逅に費やした時間は、2つの作業エリア間を移動するときにかかる標準時間T1と、実際にユーザが当該2つの作業エリア間を移動するときにかかった実績時間T2との偏差(T2-T1)で表すことができる。邂逅時にコミュニケーションが発生した場合には、移動にかかる実績時間T2が標準時間T1よりも長くなるため、偏差(T2-T1)を邂逅に費やした時間とみなしている。偏差(T2-T1)が大きくなるに従ってコミュニケーションの発生回数が多くなるように、邂逅時におけるコミュニケーション率が設定されている。コミュニケーション発生率DB24は「第3の記憶装置」の一実施例に対応する。
【0129】
コミュニケーション量推定部26は、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を参照することにより、ユーザごとに、移動中における邂逅人数と、邂逅に費やした時間である偏差(T2-T1)とに基づいて、邂逅時におけるコミュニケーション量を推定する。
【0130】
評価閾値生成部10には、評価基準DB30から「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準が与えられると、導出式DB12、オフィス情報DB42およびコミュニケーション発生率DB24にアクセスすることにより、評価基準から評価閾値を生成するために必要な情報を取得する。具体的には、評価閾値生成部10は、導出式DB12から、「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準に対応する評価閾値を導出するために、導出式を選択する。評価閾値生成部10はさらに、オフィス情報DB42から、当該評価閾値を生成するために必要なオフィス情報を取得するとともに、コミュニケーション発生率DB24から邂逅時におけるコミュニケーション発生率に関する情報を取得する。オフィス情報には、オフィス110のフロアマップに関する情報が含まれている。
【0131】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から選択した導出式と、オフィス情報DB42から取得したオフィス情報と、コミュニケーション発生率DB24から取得した邂逅時におけるコミュニケーション発生率とを用いて、評価閾値を生成する。評価閾値生成部10は、評価閾値として、邂逅時において発生するコミュニケーション量の期待値を導出する。
【0132】
レイアウト評価部22は、評価閾値生成部10により生成された評価閾値を用いて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態4では、レイアウト評価部22は、評価閾値である、邂逅時におけるコミュニケーション量の期待値と、コミュニケーション量推定部26により推定された、邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値とを比較する。
【0133】
邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値が期待値よりも小さい場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしていないと判定する。一方、邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値が期待値以上である場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「ユーザ同士の邂逅時コミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしていると判定する。レイアウト評価部22は、I/F装置4(
図2参照)を介して評価結果を出力する。レイアウト評価システム100の利用者は評価結果を受け取ることができる。
【0134】
<処理フロー>
図19は、実施の形態5に係るレイアウト評価システム100による評価処理の手順を示すフローチャートである。
図19に示すフローチャートは、
図7に示したフローチャートに対し、ステップS08,S09の処理を追加したものである。
【0135】
レイアウト評価システム100は、
図7と同じS01~S05の処理を実行することにより、オフィス110内の各作業エリアの利用状況を分析すると、続いて、ユーザ同士の邂逅を判定する(ステップS08)。
図20は、
図19のステップS08の処理の手順を示すフローチャートである。
【0136】
図20に示すように、まず、レイアウト評価システム100は、複数のユーザの移動経路に関する情報を取得する(ステップS40)。移動経路情報は、ユーザが移動した経路および移動した時刻に関する情報を含んでいる。
【0137】
次に、レイアウト評価システム100は、複数のユーザの移動経路に関する情報に基づいて、ユーザ同士の邂逅を判定する(ステップS41)。S41では、レイアウト評価システム100は、複数のユーザの移動経路が交差している回数に基づいて、移動中における各ユーザの邂逅人数をカウントする。
【0138】
図19に戻って、レイアウト評価システム100は、続いて、邂逅時におけるコミュニケーション量を推定する(ステップS09)。
図21は、
図19のステップS09の処理の手順を示すフローチャートである。
【0139】
図21に示すように、まず、レイアウト評価システム100は、コミュニケーション発生知るDB24から、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を取得する。レイアウト評価システム100はさらに、ユーザごとに、移動にかかった実績時間T2、および移動中における邂逅人数の判定結果を取得する(ステップS50)。
【0140】
次に、レイアウト評価システム100は、移動にかかった実績時間T2と標準時間T1との偏差(T2-T1)を求める。そして、レイアウト評価システム100は、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を参照することにより、移動中における邂逅人数と、偏差(T2-T1)とに基づいて、邂逅時のコミュニケーション量を推定する(ステップS51)。
【0141】
図20に戻って、レイアウト評価システム100は、評価閾値と、邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値とに基づいて、オフィス110のレイアウトを評価する(ステップS06)。レイアウト評価システム100は、評価閾値である、邂逅時におけるコミュニケーション量の期待値と、邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値とを比較する。レイアウト評価システム100は、比較結果に基づいて、オフィス110のレイアウトが「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしているか否かを評価する。
【0142】
以上説明したように、実施の形態5に係るレイアウト評価システム100は、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を予め設定し、このコミュニケーション発生率を用いて、評価閾値を生成するとともに、ユーザ同士の邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定するように構成される。これによると、オフィス110のレイアウトが「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしているか否かを客観的に評価することが可能となる。
【0143】
実施の形態6.
実施の形態5では、各ユーザの移動経路に関する情報からユーザ同士の邂逅を判定し、その判定結果に基づいて邂逅時のコミュニケーション量を推定する構成について説明した。実施の形態6では、邂逅時のコミュニケーション量を推定するための別の構成について説明する。
【0144】
図22は、実施の形態6に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。実施の形態6に係るレイアウト評価システム100の構成は、
図15に示した実施の形態4に係るレイアウト評価システム100の構成と同じである。ただし、実施の形態6に係るレイアウト評価システム100は、実施の形態4に係るレイアウト評価システム100とは、コミュニケーション量推定部26の動作が異なる。
【0145】
図22に示すように、実施の形態6に係るレイアウト評価システム100では、コミュニケーション量推定部26は、オフィス110内でユーザが所持しているモバイル端末46を利用して、ユーザ同士の邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定するように構成されている。
【0146】
図23は、
図22に示したコミュニケーション量推定部26の動作を説明するための図である。
図23に示すように、コミュニケーション量推定部26は、各ユーザが所持しているモバイル端末46と通信接続されている。モバイル端末46は、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイスなどである。
【0147】
各モバイル端末46には、すれ違い通信アプリ460がインストールされている。すれ違い通信アプリ460は、他のユーザが所持するモバイル端末46との間で、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信方式を用いて無線通信を行うように構成されている。すれ違い通信アプリ460は、他のモバイル端末46との間で無線通信を行った場合には、その無線通信の履歴を示す通信ログ情報をすれ違いログDB462に記憶する。通信ログ情報は、通信開始時刻、通信終了時刻、および通信時間に関する情報を含んでいる。
【0148】
コミュニケーション量推定部26は、各モバイル端末46のすれ違いログDB462から通信ログ情報を取得する。コミュニケーション量推定部26はさらに、コミュニケーション発生率DB24から、邂逅時におけるコミュニケーション発生率に関する情報を取得する。
【0149】
上述したように、「邂逅時におけるコミュニケーション発生率」とは、ユーザ同士の邂逅時においてユーザ同士のコミュニケーションが発生する回数で表される。実施の形態6では、邂逅時におけるコミュニケーション発生率は、モバイル端末46間で無線通信が行われた時間(通信時間)に応じて設定されている。例えば、通信時間が予め定められた閾値時間(例えば2分)以上である場合、邂逅時におけるコミュニケーション発生率は1[回]に設定される。
【0150】
コミュニケーション量推定部26は、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を参照することにより、モバイル端末46から取得したすれ違いログDB462から通信ログ情報に基づいて、当該モバイル端末46を所持しているユーザのコミュニケーション量を推定する。例えば、ユーザAが所持するモバイル端末46が、ユーザBが所持するモバイル端末46と3分間無線通信を行っていた場合には、コミュニケーション量推定部26は、ユーザAおよびユーザBの邂逅時におけるコミュニケーション量が1[回]であると推定する。
【0151】
評価閾値生成部10には、評価基準DB30から「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準が与えられると、導出式DB12、オフィス情報DB42およびコミュニケーション発生率DB24にアクセスすることにより、評価基準から評価閾値を生成するために必要な情報を取得する。具体的には、評価閾値生成部10は、導出式DB12から、「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準に対応する評価閾値を導出するために、導出式を選択する。評価閾値生成部10はさらに、オフィス情報DB42から、当該評価閾値を生成するために必要なオフィス情報を取得するとともに、コミュニケーション発生率DB24から邂逅時におけるコミュニケーション発生率に関する情報を取得する。オフィス情報には、オフィス110のフロアマップに関する情報が含まれている。
【0152】
評価閾値生成部10は、導出式DB12から選択した導出式と、オフィス情報DB42から取得したオフィス情報と、コミュニケーション発生率DB24から取得した邂逅時におけるコミュニケーション発生率とを用いて、評価閾値を生成する。評価閾値生成部10は、評価閾値として、邂逅時において発生するコミュニケーション量の期待値を導出する。
【0153】
レイアウト評価部22は、評価閾値生成部10により生成された評価閾値を用いて、オフィス110のレイアウトを評価する。実施の形態6では、レイアウト評価部22は、評価閾値である、邂逅時に発生するコミュニケーション量の期待値と、コミュニケーション量推定部26により推定された、邂逅時に発生したコミュニケーション量の推定値とを比較する。邂逅時に発生したコミュニケーション量の推定値には、例えば、複数のユーザの邂逅時のコミュニケーション量の代表値を用いることができる。代表値は、複数のユーザのコミュニケーション量の平均値、最頻値、中央値などであってよい。
【0154】
邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値が期待値よりも小さい場合、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしていないと判定する。一方、邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値が期待値以上である場合には、レイアウト評価部22は、オフィス110のレイアウトが、「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしていると判定する。レイアウト評価部22は、I/F装置4(
図2参照)を介して評価結果を出力する。レイアウト評価システム100の利用者は評価結果を受け取ることができる。
【0155】
<処理フロー>
図24は、実施の形態6に係るレイアウト評価システム100における評価処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態6に係るレイアウト評価システム100は、
図16と同じS01~S07の処理を実行する。
図24に示すフローチャートは、このうちのステップS07の処理の手順を示したものである。
【0156】
図24に示すように、まず、レイアウト評価システム100は、コミュニケーション発生率DB24から、邂逅時におけるコミュニーション発生率に関する情報を取得する。上述したように、邂逅時におけるコミュニケーション発生率は、モバイル端末46間の通信時間に応じて設定されている。レイアウト評価システム100はさらに、モバイル端末46間で行われた無線通信の実績時間に関する情報を取得する(ステップS60)。
【0157】
次に、レイアウト評価システム100は、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を参照することにより、モバイル端末46間で行われた無線通信の実績時間に基づいて、邂逅時のコミュニケーション量を推定する(ステップS61)。
【0158】
次に、レイアウト評価システム100は、
図16と同じS06において、評価閾値と、邂逅時におけるコミュニケーション量の推定値を比較することにより、オフィス110のレイアウトを評価する。
【0159】
以上説明したように、実施の形態6に係るレイアウト評価システム100は、各ユーザが所持しているモバイル端末46間の近距離無線通信の通信時間を用いて、邂逅時におけるコミュニケーション発生率を予め設定し、このコミュニケーション発生率を用いて、評価閾値を生成するとともに、ユーザ同士の邂逅時に発生したコミュニケーション量を推定するように構成される。これによると、オフィス110のレイアウトが「ユーザ同士の邂逅時にコミュニケーションが適当に発生している」という評価基準を満たしているか否かを客観的に評価することが可能となる。
【0160】
実施の形態7.
実施の形態1では、オフィス110内に設置された入退管理装置40から送信される、各作業エリアに対するユーザの入退室が記録されたログ情報を用いて、オフィス110内におけるユーザの移動経路を推定する構成について説明した。実施の形態7および8では、ユーザの移動経路を推定するための別の構成について説明する。
【0161】
図25は、実施の形態7に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。実施の形態7に係るレイアウト評価システム100の構成は、
図3に示した実施の形態1に係るレイアウト評価システム100の構成と基本的に同じである。ただし、実施の形態7に係るレイアウト評価システム100は、実施の形態1に係るレイアウト評価システム100とは、移動経路推定部14の動作が異なる。
【0162】
図25に示すように、オフィス110は、入退管理装置40に代えて、複数の監視カメラ48を備えている。複数の監視カメラ48は、オフィス110内の作業エリアおよび通路などに分散して設置されている。複数の監視カメラ48は、作業エリアに入室するユーザ、作業エリアから退室するユーザ、および、通路を移動するユーザを撮影するように構成されている。監視カメラ48により撮影された画像データは、レイアウト評価システム100へ送信される。
【0163】
移動経路推定部14は、監視カメラ48から送信される画像データおよびオフィス情報DB42から取得されるオフィス情報に基づいて、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。具体的には、移動経路推定部14は、画像データに含まれている各ユーザの作業エリアに対する入退出の時刻情報と、オフィス情報に含まれているフロアマップから、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。
【0164】
<処理フロー>
図26は、実施の形態7に係るレイアウト評価システム100における評価処理の手順を示すフローチャートである。
図26に示すフローチャートは、
図7に示したフローチャートにおけるステップS01の処理を、ステップS10の処理を置き換えたものである。
【0165】
図26に示すように、レイアウト評価システム100は、まず、対象のオフィス110から、オフィス110内に設置された複数の監視カメラ48により撮影された画像データを取得する(ステップS10)。画像データには、ユーザが作業エリアに入室した時刻、ユーザが作業エリアから退室した時刻、ユーザが作業エリアを移動した時刻などの情報が含まれている。
【0166】
次に、レイアウト評価システム100は、取得された画像データ、および、オフィス110から取得したオフィス情報から、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する(ステップS02)。オフィス情報には、オフィス110のフロアマップが含まれている。
【0167】
次に、レイアウト評価システム100は、
図7と同じS03~S06の処理を実行する。レイアウト評価システム100は、ユーザの移動経路の推定結果に基づいて、ユーザが滞在した作業エリアを判定するとともに、滞在した作業エリアにおけるユーザの作業内容を推定する。そして、レイアウト評価システム100は、推定結果に基づいて各作業エリアの利用状況を分析し、分析された利用状況から、オフィス110のレイアウトが評価基準を満たしているか否かを評価する。
【0168】
実施の形態8.
図27は、実施の形態8に係るレイアウト評価システム100の構成を示す図である。実施の形態8に係るレイアウト評価システム100の構成は、
図3に示した実施の形態1に係るレイアウト評価システム100の構成と基本的に同じである。ただし、実施の形態8に係るレイアウト評価システム100は、実施の形態1に係るレイアウト評価システム100とは、移動経路推定部14の動作が異なる。
【0169】
図27に示すように、オフィス110は、入退管理装置40に代えて、複数の空調機50および複数のモバイル端末46を備えている。複数の空調機50は、オフィス110内の複数の作業エリアおよび通路にそれぞれ設置されている。複数のモバイル端末46は、複数のユーザがそれぞれ持している。モバイル端末46は、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイスなどである。
【0170】
移動経路推定部14は、オフィス110内に設置された空調機50および各ユーザが所持しているモバイル端末46を利用して、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。
図28は、
図27に示した移動経路推定部14の動作を説明するための図である。
図28に示すように、移動経路推定部14は、複数の空調機50および複数のモバイル端末46と通信接続されている。空調機50は、通信センサ500および通信ログDB502を有している。モバイル端末46は、通信アプリ464および通信ログDB466を有している。
【0171】
通信センサ500と通信アプリ464とは、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信方式を用いて無線通信を行うように構成されている。通信センサ500は、モバイル端末46の通信アプリ464との間で無線通信を行った場合には、その無線通信の履歴を示す通信ログ情報を通信ログDB502に記憶する。通信アプリ464は、空調機50の通信センサ500との間で無線通信を行った場合には、その無線通信の履歴を示す通信ログ情報を通信ログDB466に記憶する。
【0172】
移動経路推定部14は、空調機50の通信ログDB502およびモバイル端末46の通信ログDB466から通輪ログ情報を取得する。移動経路推定部14は、取得された通信ログ情報、および、オフィス情報DB42から取得されるオフィス情報に基づいて、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。具体的には、移動経路推定部14は、通信ログ情報から、各ユーザが作業エリアに入室した時刻、作業エリアから退出した時刻、および通路を移動した時刻などの情報を取得する。そして、移動経路推定部14は、取得された情報と、オフィス情報に含まれているフロアマップから、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する。
【0173】
<処理フロー>
図29は、実施の形態8に係るレイアウト評価システム100における評価処理の手順を示すフローチャートである。
図29に示すフローチャートは、
図7に示したフローチャートにおけるステップS01の処理を、ステップS11の処理を置き換えたものである。
【0174】
図29に示すように、レイアウト評価システム100は、まず、対象のオフィス110から、オフィス110内に設置された空調機50およびモバイル端末46の通信ログ情報を取得する(ステップS11)。通信ログ情報には、ユーザが作業エリアに入室した時刻、ユーザが作業エリアから退室した時刻、ユーザが作業エリアを移動した時刻などの情報が含まれている。
【0175】
次に、レイアウト評価システム100は、取得された通信ログ情報、および、オフィス110から取得したオフィス情報から、オフィス110内における各ユーザの移動経路を推定する(ステップS02)。
【0176】
次に、レイアウト評価システム100は、
図7と同じS03~S06の処理を実行する。レイアウト評価システム100は、ユーザの移動経路の推定結果に基づいて、ユーザが滞在した作業エリアを判定するとともに、滞在した作業エリアにおけるユーザの作業内容を推定する。そして、レイアウト評価システム100は、推定結果に基づいて各作業エリアの利用状況を分析し、分析された利用状況から、オフィス110のレイアウトが評価基準を満たしているか否かを評価する。
【0177】
以上説明したように、実施の形態7および8に係るレイアウト評価システム100によれば、オフィス110内に既存の通信機器(モバイル端末46および空調機50など)の近距離無線通信の履歴を利用して、各ユーザの移動経路を推定することができる。これによると、オフィス110内のユーザの行動に関する情報を取得するためのコストを低減することができる。したがって、レイアウト評価システム100を安価に構築することができる。
【0178】
なお、上記実施の形態1~8を適宜、組み合わせてもよいことはいうまでもない。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0179】
1 CPU、2 RAM、3 ROM、4 I/F装置、5 記憶装置、10 評価閾値生成部、12 導出式DB、14 移動経路推定部、16 滞在エリア判定部、18 作業推定部、20 エリア別利用分析部、22 レイアウト評価部、24 コミュニケーション発生率DB、26 コミュニケーション量推定部、28 邂逅判定部、30 評価基準DB、40 入退管理装置、42 オフィス情報DB、44 スケジュールDB、46 モバイル端末、48 監視カメラ、50 空調機、100 レイアウト評価システム、110 オフィス。