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特許7676746金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法
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  • 特許-金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20250508BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250508BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
B32B15/085 Z
B32B27/32 Z
H01G4/32 511L
H01G4/32 511Z
H01G4/32 551B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020164895
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056903
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】石渡 忠和
(72)【発明者】
【氏名】石田 立治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優哉
(72)【発明者】
【氏名】奥山 佳宗
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-143874(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045482(WO,A1)
【文献】特開2015-201610(JP,A)
【文献】特開2020-132882(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221781(WO,A1)
【文献】特開2018-137446(JP,A)
【文献】特開平11-286071(JP,A)
【文献】特開2004-111774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H01G 4/30
H01G 4/32
C23C 2/00 - 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンフィルムと、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムであって、
前記ポリプロピレンフィルムは、面配向係数ΔPが0.010~0.016であり、
前記ポリプロピレンフィルムを構成する樹脂中の総灰分が50ppm以下であり、
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、25℃での伸長率を0%とすると、100℃での伸長率が0%以上1.8%以下であり、120℃での伸長率が0%以上2.3%以下であり、130℃での伸長率が0%以上2.7%以下であり、
コンデンサ用である、金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、30℃から100℃までの伸長勾配が、0.010%/℃以上0.030%/℃以下である、請求項1に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱して取得される、温度と伸長率との関係を示すグラフにおいて、変曲点の温度が130℃以上である、請求項1又は2に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
厚さが0.8μm以上3.5μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
巻回された請求項1~のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するか、又は、請求項1~のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有する、フィルムコンデンサ。
【請求項6】
ポリプロピレンフィルムと、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法であって、
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得る金属層積層工程と、
前記金属層積層工程で得られた金属層一体型ポリプロピレンフィルムを、100℃以上130℃以下の温度で加熱する加熱工程と、
を備える、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層一体型ポリプロピレンフィルム、フィルムコンデンサ、及び金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、高い耐電圧性や低い誘電損失特性等の優れた電気特性を有し、且つ、高い耐湿性を有する。そのため、広く電子機器や電気機器に用いられている。具体的には、例えば、高電圧コンデンサ;コンバーター、インバーター等の電力変換回路のフィルター用コンデンサや平滑用コンデンサ等に使用されるフィルムとして利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-273991号公報
【文献】国際公開第2020/045482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、熱収縮する特性を有している。例えば特許文献1のように、金属層を積層する前のポリプロピレンフィルムの熱収縮率を小さくするためには、なるべく熱収縮しないポリプロピレンフィルムを製造し得る原料樹脂を選択する必要がある。原料樹脂の選択の幅が狭くなるといった問題がある。
【0005】
また、熱収縮率の小さいポリプロピレンフィルム(金属層を積層する前のポリプロピレンフィルム)を得るためには、その製造条件、例えば、キャストシートの製造条件(例えば、原料樹脂の溶融温度、キャスト温度等)や、キャストシートを延伸してポリプロピレンフィルムを形成する際の延伸処理条件(例えば、延伸時の温度、延伸倍率、ニップ圧等))の条件が、非常に限定的なものとなり、その他の品質(例えば、絶縁破壊強度などの電気特性)との両立(バランス)が困難になる場合があり得る。また、ポリプロピレンフィルムの熱収縮率を小さくするための原料樹脂の選択も、他の特性(例えば、耐電圧特性等)を犠牲にすることになる場合もあり得る。
【0006】
また、特許文献2には、金属層を積層する前のポリプロピレンフィルムの熱収縮率と、金属層を積層した後の金属層一体型ポリプロピレンフィルムの熱収縮率とを所定の範囲内に設定することによって、メタリコン電極の剥離を抑制する技術が開示されている。
【0007】
これに対して、本発明者が検討したところ、ポリプロピレンフィルムは、そのコンデンサを作製する過程で、金属層を形成する工程、および、その後の巻回工程、エージング工程、メタリコン溶射工程等において、ポリプロピレンフィルムに熱履歴が少なからず加わるため、たとえポリプロピレンフィルムの熱収縮率を小さくしたとしても、それで得られた金属層一体型ポリプロピレンフィルムを利用してフィルムコンデンサを形成し、さらにフィルムコンデンサが高温雰囲気下に晒された時に、素子形状が変化し、巻回層間のギャップが変わったり、素子の扁平カーブ部の歪・シワ入りすることによって、耐電圧性及び絶縁性が低下しやすくなり、高電圧を負荷した際に、ショートが発生しやすくなるという問題が生じることを知得した。本発明者は、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの高温下での伸長率に着目し、蒸着工程の後の金属化フィルムに、後工程(エージング工程)以上の熱(熱履歴)を、予め与えることによって、安定した熱-機械特性を有するフィルムを得ることを試みた。
【0008】
このような状況下、本発明は、100℃以上の高温下で高い電圧を負荷してもショートしない特性をフィルムコンデンサに対して付与できる、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ポリプロピレンフィルムと、ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムにおいて、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、100℃、120℃、及び130℃における各伸長率が、それぞれ0%以上の特定の範囲に設定されることにより、高温雰囲気下における高い耐電圧性及び高い絶縁性を有するフィルムコンデンサが得られることを見出した。すなわち、本発明では、特許文献2に記載された熱収縮ではなく、伸長率を0%以上の所定範囲に設定する(すなわち、熱収縮しない)ことにより、前記の課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
項1. ポリプロピレンフィルムと、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムであって、
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、25℃での伸長率を0%とすると、100℃での伸長率が0%以上1.8%以下であり、120℃での伸長率が0%以上2.3%以下であり、130℃での伸長率が0%以上2.7%以下である、金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
項2. 前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、30℃から100℃までの伸長勾配が、0.010%/℃以上0.030%/℃以下である、項1に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
項3. 前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱して取得される、温度と伸長率との関係を示すグラフにおいて、変曲点の温度が130℃以上である、項1又は2に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
項4. 厚さが0.8μm以上3.5μm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
項5. コンデンサ用である、項1~4のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
項6. 巻回された項1~5のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを有するか、又は、項1~5のいずれか1項に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムが複数積層された構成を有する、フィルムコンデンサ。
項7. ポリプロピレンフィルムと、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法であって、
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得る金属層積層工程と、
前記金属層積層工程で得られた金属層一体型ポリプロピレンフィルムを、100℃以上130℃以下の温度で加熱する加熱工程と、
を備える、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、100℃以上の高温下で高い電圧を負荷してもショートしない特性をフィルムコンデンサに対して付与できる、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムを利用したフィルムコンデンサ、及び金属層一体型ポリプロピレンフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】金属層一体型ポリプロピレンフィルムを説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンフィルムと、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する金属層一体型ポリプロピレンフィルムである。本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MD(Machine Direction)の方向(流れ方向、あるいは長手方向とも言う)に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、25℃での伸長率を0%とすると、100℃での伸長率が0%以上1.8%以下であり、120℃での伸長率が0%以上2.3%以下であり、130℃での伸長率が0%以上2.7%以下であることを特徴とする。本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、当該特徴を備えることにより、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを利用してフィルムコンデンサを形成した場合に、100℃以上の高温下で高い電圧を負荷してもショートしない特性をフィルムコンデンサに対して付与できる。以下、本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムについて詳述する。
【0014】
なお、本明細書において、数値範囲の「~」とは、以上と以下とを意味する。即ち、α~βという表記は、α以上β以下、或いは、β以上α以下を意味し、範囲としてα及びβを含む。
【0015】
また、本明細書において、メタリコン電極とは、金属層一体型ポリプロピレンフィルムが積層された側面に設けられ、内部電極としての金属層に電気的に接続された外部電極をいう。
【0016】
前記の通り、本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、25℃での伸長率を0%とすると、100℃での伸長率が0%以上1.8%以下であり、120℃での伸長率が0%以上2.3%以下であり、130℃での伸長率が0%以上2.7%以下に設定されている。すなわち、本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムにおいては、金属層を形成する前のポリプロピレンフィルムの高温環境における特性ではなく、ポリプロピレンフィルムに金属層が形成された金属層一体型ポリプロピレンフィルムの高温環境(100℃、120℃、及び130℃)における伸長率が0%以上の特定範囲に設定されている。伸長率が0%以上であるから、本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、高温環境において熱収縮はしない。当該金属層一体型ポリプロピレンフィルムから形成されたフィルムコンデンサは、高温環境に晒された場合にも特にコンデンサ巻き方向(フィルムのMDに相当)の熱伸長/収縮といった熱変化がし難くなっており、結果として、巻回層間のギャップが変わったり、扁平型の素子においては、その扁平カーブ部の歪やシワ入りがなくなることので、高温環境下、高い電圧を負荷しても、コンデンサは、ショート破壊し難くなる。
【0017】
本実施形態の金属層一体型ポリプロピレンフィルムにおいて、前記の各温度における伸長率を備えさせるためには、例えば、後述の製造方法のように、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを所定条件で熱処理する方法を採用することが好ましい。熱処理の具体的な方法については、後述する金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法の欄で詳述する。
【0018】
本発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、前記100℃での伸長率は、好ましくは0~1.7%、より好ましくは0~1.5%、さらに好ましくは0~1%である。また、前記120℃での伸長率は、好ましくは0~2.2%、より好ましくは0~2%、さらに好ましくは0~1.9%である。また、前記130℃での伸長率は、好ましくは0~2.6%、より好ましくは0~2.5%、さらに好ましくは0~2.4%である。
【0019】
<金属層一体型ポリプロピレンフィルムの温度と伸長率との関係>
これら各温度における伸縮率は、熱-機械測定装置(TMA)を用い、金属層一体型ポリプロピレンフィルムについて、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱して、温度と伸長率との関係を示すグラフを取得して測定される値である。より詳細には、実施例に記載の方法による。
【0020】
また、本発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本実施形態の金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱した場合に、30℃から100℃までの伸長勾配(すなわち平均線膨張係数)は、好ましくは0.010~0.030%/℃、より好ましくは0.020~0.025である。当該伸長勾配は、前記の<金属層一体型ポリプロピレンフィルムの温度と伸長率との関係>に記載の方法によって取得されるグラフに基づいて特定することができる。
【0021】
また、本発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本実施形態の金属層一体型ポリプロピレンフィルムに2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱して取得される、温度と伸長率との関係を示すグラフにおいて、変曲点の温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上である。当該変曲点の温度は、例えば160℃以下、150℃以下である。当該変曲点は、前記の<金属層一体型ポリプロピレンフィルムの温度と伸長率との関係>に記載の方法によって取得されるグラフに基づいて特定することができる。なお、当該変曲点は、前記のグラフにおいて、昇温開始温度25℃から最初に表れる変曲点を意味している。すなわち、当該変曲点よりも低温側には、変曲点が存在していない。
【0022】
本実施形態において、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの厚さは、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは1.6μm以上、さらに好ましくは1.7μm以上、特に好ましくは1.8m以上である。また、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、好ましくは3.5μm以下より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.9μm以下、特に好ましくは2.8μm以下である。
【0023】
前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムの厚さは、シチズンセイミツ社製の紙厚測定器MEI-11を用いて100±10kPaで測定したこと以外、JIS-C2330に準拠して測定した値をいう。より詳細には、実施例に記載の方法による。
【0024】
以下では、金属層を積層した後の製品としての金属層一体型ポリプロピレンフィルムが備えるポリプロピレンフィルムについて説明する。すなわち、以下では、金属層を積層する前であるのか、それとも、金属層を積層した後であるのかについて、特段に明記せずに、「ポリプロピレンフィルム」というときは、特段の断りがない限り、金属層を積層した後のポリプロピレンフィルムを意味することとして説明する。
【0025】
前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは1.8μm以上である。また、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、好ましくは3.5μm以下、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.9μm以下、特に好ましくは2.8μm以下である。
【0026】
前記ポリプロピレンフィルムの厚さが3.0μm以下であると、コンデンサ素子としたときの単位体積当たりの静電容量を大きくすることができるため、コンデンサ用として好適に使用できる。また、フィルムの製膜安定性の観点、及び、工程通過性(ハンドリング性)の観点から、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは0.8μm以上とすることができる。
この点について、以下に詳細に説明する。
【0027】
ポリプロピレンフィルムは、厚さが薄いほど、単位体積当たりの静電容量を大きくできる。より具体的に説明すると、静電容量Cは、誘電率ε、電極面積S、誘電体厚さd(ポリプロピレンフィルムの厚さd)を用いて、以下のように表される。
C=εS/d
ここで、フィルムコンデンサの場合、電極の厚さは、ポリプロピレンフィルム(誘電体)の厚さと比較して3桁以上薄いため、電極の体積を無視すると、コンデンサの体積Vは、以下のように表される。
V=Sd
従って、上記2つの式より、単位体積当たりの静電容量C/Vは、以下のように表される。
C/V=ε/d2
上記式から分かるように、単位体積当たりの静電容量(C/V)は、ポリプロピレンフィルム厚さの自乗に反比例する。また、誘電率εは、使用する材料により決まる。そうすると、材料を変更しない限りは、厚さを薄くすること以外で単位体積当たりの静電容量(C/V)を向上させることはできないことが分かる。
なお、電極面積は、単位体積当たりの静電容量(C/V)に影響しない。この点について以下に説明する。
【0028】
同じ材料、同じ厚さのフィルムを巻回してコンデンサを作製する場合を想定する。例えば、ターン数(巻き数)を増やして、10倍長く(電極面積を10倍大きく)巻いたとする。そうすると、静電容量は10倍になるが、体積も10倍になるので単位体積当たりの静電容量(C/V)は、電極面積が変化しても変わらない。
上記説明は、理解を容易にするために理想化している。つまり、実際には、例えば、フィルム間にわずかな空隙が存在する場合があることや、電極端でのフリンジ効果の影響があること等により、面積に応じて単位体積当たりの静電容量(C/V)の値に多少の変化が見られる場合はある。しかしながら、一般的には、単位体積当たりの静電容量(C/V)は、ポリプロピレンフィルム厚さによって決まるということが理解できる。
【0029】
以上より、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、絶縁性及び/あるいは耐電圧性が担保される範囲内で、なるべく薄くすることが好ましい。そこで、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、3.0μm以下であることが好ましい。
一方で、ポリプロピレンフィルムの厚さが薄くなると、ハンドリング性が極まて悪くなるため、製膜およびコンデンサの作製作業が極めて難しくなり、工程通過性が悪化する傾向にある。さらにその上、薄いがが故に、製膜工程においても、破れ(破断)等が発生し、製膜が不安定になりやすい。そこで、前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、0.8μm以上であることが好ましい。
【0030】
本発明および本明細書における前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムの厚さから、金属層の厚さ(膜抵抗から換算される金属層の厚さ)を引くことにより得られるものとして規定している。
金属層一体型ポリプロピレンフィルム中の金属層の厚さは0.1~10nmが好ましい。金属層の厚さが0.1~10nmである場合、金属層一体型ポリプロピレンフィルムの厚さと前記ポリプロピレンフィルムの厚さは、本実施例に記載の測定方法では、同程度の値を示す。
【0031】
前記ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸フィルムである二軸延伸には、同時二軸延伸、逐次二軸延伸などがあるが、いずれでも構わない。ポリプロピレンフィルムは、二軸延伸を施すことによって、分子が極めて強く配向し、力学特性、熱特性、電気特性なの諸物性が向上及び/あるいは安定化し、工業用途に好ましく用いられる。しかしその一方、二軸延伸フィルムは、ある一定の熱(高温)にさらされると、配向が緩和して無配向状態に戻ろうとする作用が働き、いわゆる(熱)収縮が発生する。
【0032】
前記ポリプロピレンフィルムは、面配向係数ΔPが0.010~0.016であることが好ましく、0.011~0.0155であることがより好ましく、0.0115~0.015であることがさらに好ましい。
【0033】
前記ポリプロピレンフィルムの面配向係数ΔPが前記範囲内にあると、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるため好ましい。
【0034】
<面配向係数ΔP>
本明細書において、「面配向係数ΔP」とは、光学的複屈折測定により求めたポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する複屈折値ΔNyz及びΔNxzの値から算出される面配向係数ΔP(ただし、ΔP=(ΔNyz+ΔNxz)/2)をいう。
本明細書において、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNyz」とは、光学的複屈折測定により求められる厚さ方向に対する複屈折値ΔNyzをいう。より具体的には、フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸とすると、y軸方向の三次元屈折率からz軸方向の三次元屈折率を差し引いた値が、複屈折値ΔNyzとなる。
【0035】
また、本明細書において、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNxz」とは、光学的複屈折測定により求められる厚さ方向に対する複屈折値ΔNxzをいい、より具体的には、x軸(遅相軸)方向の三次元屈折率からz軸方向の三次元屈折率を差し引いた値が、複屈折値ΔNxzとなる。
【0036】
本実施形態では、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNyz」を測定するために、具体的には、大塚電子株式会社製、位相差測定装置 RE-100を用いる。レタデーション(位相差)の測定は傾斜法を用いて行う。より具体的には、フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸とする。x軸を傾斜軸として、0°~50°の範囲でz軸に対して10°ずつ傾斜させたときの各レタデーション値を求める。得られたレタデーション値から、非特許文献「粟屋裕、高分子素材の偏光顕微鏡入門,105~120頁 、2001年」に記載の方法を用いて、厚さ方向(z軸方向)に対するy軸方向の複屈折ΔNyzを計算する。まず、各傾斜角φに対し、測定されたレタデーション値Rを、傾斜補正が施された厚さdで割ったR/dを求める。φ=10°、20°、30°、40°、50°のそれぞれのR/dについて、φ=0°のR/dとの差を求め、それらをさらにsin2r(r:屈折角)で割ったものを、それぞれのφにおける複屈折ΔNzyとし、正負の符号を逆にして複屈折値ΔNyzとする。φ=20°、30°、40°、50°におけるΔNyzの平均値として、複屈折値ΔNyzを算出する。なお、例えば、逐次延伸法において、MD方向(流れ方向)の延伸倍率よりも、TD方向(幅方向)の延伸倍率が高い場合、TD方向が遅相軸(x軸)となり、MD方向がy軸となる。また、ポリプロピレンを用いる場合、ポリプロピレンについての、各傾斜角における屈折角rの値は、前記文献の109頁に記載されているものを用いる。
【0037】
また、本実施形態では、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNxz」は、傾斜角φ=0°で測定された上記レタデーション値Rを、厚さdで割った値より、前述で求めたΔNzyを除算し、複屈折値ΔNxzを算出する。
【0038】
前記ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を含んでおり、特にその構成材料は限定されない。
【0039】
前記ポリプロピレン樹脂の含有量は、ポリプロピレンフィルム全体に対して(ポリプロピレンフィルム全体を100質量%としたときに)、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。前記ポリプロピレン樹脂の含有量の上限は、ポリプロピレンフィルム全体に対して、例えば、100質量%、98質量%等である。前記ポリプロピレン樹脂は、一種のポリプロピレン樹脂を単独で含むものであってもよく、二種以上のポリプロピレン樹脂を含むものであってもよい。前記ポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
【0040】
ここで、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種以上である場合、含有量の多い方のポリプロピレン樹脂を、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。また、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が一種である場合、当該ポリプロピレン樹脂を、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。
【0041】
以下、本明細書において、主成分であるか否かを特に明記せずに「ポリプロピレン樹脂」というときは、特段の断りがない限り、主成分としてのポリプロピレン樹脂と、主成分以外のポリプロピレン樹脂との両方を意味する。例えば、「前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましい。」と記載されている場合、主成分としてのポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいことと、主成分以外のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいこととの両方を意味する。
【0042】
前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましく、25万以上40万以下であることがより好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であると、樹脂流動性が適度となる。その結果、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、厚み均一性が良好で薄い延伸フィルムを作製することが容易となる。また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの力学特性、熱-機械特性、延伸成形性等の観点からも重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記Mwが25万以上33万未満のポリプロピレン樹脂と上記Mwが33万以上45万以下のポリプロピレン樹脂を併用することが好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnは、30000以上53000以下であることが好ましく、33000以上52000以下であることがより好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂のz平均分子量Mzは、500000以上2100000以下であることが好ましく、700000以上1700000以下であることがより好ましい。
【0043】
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]は、5以上12以下であることが好ましく、5以上11以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)]が5以上12以下であると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸プロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布[(z平均分子量Mz)/(数平均分子量Mn)]は、10以上70以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましく、15以上50以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本明細書において、前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、z平均分子量(Mz)、及び、分子量分布(Mw/Mn、及び、Mz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定した値である。より具体的には、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機のHLC-8121GPC-HT(商品名)を使用して測定した値である。GPCカラムとして、東ソー株式会社製の3本のTSKgel GMHHR-H(20)HTを連結して使用する。カラム温度を140℃に設定して、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/10分の流速で流して、MwとMnの測定値を得る。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成して、測定値をポリスチレン値に換算して、Mw、Mn及びMzを得る。ここで、標準ポリスチレンの分子量Mの底10の対数を、対数分子量(「Log(M)」)という。
【0045】
前記ポリプロピレン樹脂は、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(以下、「微分分布値差DM」ともいう)が、-5%以上14%以下であることが好ましく、-4%以上12%以下であることがより好ましく、-4%以上10%以下であることがさらに好ましい。
なお、「対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(微分分布値差DM)が、-5%以上14%以下である」とは、前記ポリプロピレン樹脂の有するMwの値より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としての対数分子量Log(M)=4.5の成分と、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値としてのLog(M)=6.0前後の成分とを比較したときに、差分が正の場合は低分子量成分の方が多く、差分が負の場合は高分子量成分の方が多いと理解できる。
【0046】
つまり、例えば、分子量分布Mw/Mnが5~12である場合を例にすると、分子量分布Mw/Mnが5~12であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。そこで、樹脂流動性、延伸成形性、厚み均一性の観点から、前記ポリプロピレン樹脂は、分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、微分分布値差が-5%以上14%以下となるようにポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0047】
前記微分分布値は、GPCを用いて、次のようにして得た値である。GPCの示差屈折(RI)検出計によって得られる、時間に対する強度を示す曲線(一般には、「溶出曲線」ともいう)を使用する。標準ポリスチレンを用いて得た検量線を使用して、時間軸を対数分子量(Log(M))に変換することで、溶出曲線をLog(M)に対する強度を示す曲線に変換する。RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、強度を示す曲線の全面積を100%とすると、対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることができる。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得る。したがって、「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読みとる。
【0048】
前記ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm])は、98.0%未満であることが好ましく、97.5%以下であることがより好ましく、97.4%以下であることがさらに好ましく、97.0%以下であることが特に好ましい。また、前記メソペンタッド分率は、94.0%以上であることが好ましく、94.5%以上であることがより好ましく、95.0%以上がさらに好ましい。メソペンタッド分率が前記数値範囲内であると、適度に高い立体規則性によって樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性および長期間に渡る耐電圧性が向上する一方、キャスト原反シートを成形する際の適度な固化(結晶化)速度によって所望の延伸性を得ることができる。
【0049】
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。本明細書において、メソペンタッド分率([mmmm])は、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT-NMR)、JNM-ECP500を利用して測定した値をいう。観測核は、13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、ポリプロピレン樹脂を溶解する溶媒にはo-ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。
【0050】
前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、96.0%以上であることが好ましく、より好ましくは97.0%以上である。また、前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、99.5%以下であることが好ましく、より好ましくは99.0%以下である。ここで、ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。前記ヘプタン不溶分(HI)が、96.0%以上99.5%以下であると、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、高温下での耐電圧性が向上する。一方、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適度となり、適度の延伸性を有する。
【0051】
前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1.0~8.0g/10minであることが好ましく、1.5~7.0g/10minであることがより好ましく、2.0~6.0g/10minであることがさらに好ましい。
【0052】
前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種類以上である場合、主成分のポリプロピレン樹脂は、少なくとも重量平均分子量Mwが25万以上34.5万未満であり、MFRが4~8g/10minであることが好ましい。また、前記ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が二種類以上である場合、主成分以外のポリプロピレン樹脂は、少なくとも重量平均分子量Mwが34.5万以上45万以下であり、MFRが1g/10min以上4g/10min未満(更に好ましくは1g/10min以上3.9g/10min以下)であることが好ましい。
【0053】
前記ポリプロピレン樹脂は、一般的に公知の重合方法を用いて製造することができる。前記重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法を例示できる。
【0054】
重合は、1つの重合反応機を用いる単段(一段)重合であってもよく、2つ以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、重合は、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して行ってもよい。
【0055】
重合の際の触媒には、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、前記ポリプロピレン樹脂を得ることができる限り特に限定されない。前記触媒は、助触媒成分やドナーを含んでもよい。触媒や重合条件を調整することによって、分子量、分子量分布、立体規則性等を制御することができる。
【0056】
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布等は、樹脂混合(ブレンド)により調整することができる。例えば、互いに分子量や分子量分布の異なるもの2種類以上の樹脂を混合する方法が挙げられる。一般的には、主樹脂に、それより平均分子量が高い樹脂、又は、低い樹脂を、樹脂全体を100質量%とすると、主樹脂が55質量%以上90質量%以下である2種のポリプロピレン混合系が、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましい。
【0057】
なお、前記の混合調整方法を採用する場合、平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いても構わない。この場合、主樹脂と添加樹脂のMFRの差は、1~30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から好ましい。
【0058】
樹脂混合する方法としては、特に制限はないが、主樹脂と添加樹脂の重合粉、又は、ペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、主樹脂と添加樹脂の重合粉、又は、ペレットを、混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法が挙げられる。
【0059】
前記ミキサーや前記混練機は、特に制限されない。前記混練機は、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでもよい。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
【0060】
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練物が得られれば、混練温度は特に制限されない。一般的には、200℃から300℃の範囲であり、樹脂の劣化を抑制する観点から、230℃から270℃が好ましい。また、樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズしてもよい。これにより、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることができる。
【0061】
ポリプロピレン原料樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、50ppm以下であることが好ましい。
【0062】
前記総灰分(ポリプロピレン原料樹脂中に含まれる総灰分)は、極性をもった低分子成分の生成を抑制しつつコンデンサとしての電気特性を向上させるために、5ppm以上35ppm以下が好ましく、5ppm以上30ppm以下がより好ましく、10ppm以上25ppm以下がさらに好ましい。
【0063】
前記ポリプロピレンフィルムは、添加剤を含んでもよい。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤であって、本発明の効果を阻害しないことを限度に、特に制限されない。
【0064】
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。前記無機フィラーとしては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。前記ポリプロピレン樹脂は、前記添加剤を、前記ポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で含めてもよい。
【0065】
前記金属層は、前記金属層一体型ポリプロピレンフィルムをコンデンサとして使用する際に、電極として機能する。前記金属層に用いられる金属としては、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、それらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛、アルミニウムが好ましい。
【0066】
次に、本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、以下に説明する金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法で製造されていることが好ましいが、以下に説明する金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法で製造されていなくてもよい。
【0067】
本実施形態に係る金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造方法は、
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得る金属層積層工程と、
前記金属層積層工程で得られた金属層一体型ポリプロピレンフィルムを、100℃以上130℃以下の温度で加熱する加熱工程と、
を備える。
【0068】
前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための延伸前のキャスト原反シートは、次のようにして作製することができる。ただし、本実施形態に係るキャスト原反シートの製方法は、以下に記載の方法に限定されない。
【0069】
まず、樹脂ペレット、ドライ混合された樹脂ペレット、又は、予め溶融混練して作製した樹脂ペレットを押出機に供給して、加熱溶融する。
溶融混練の温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、ポリプロピレン樹脂の場合、加熱溶融時の押出機設定温度は、220~280℃が好ましく、230~270℃がより好ましい。また、加熱溶融時の樹脂温度は、220~280℃が好ましく、230~270℃がより好ましい。加熱溶融時の樹脂温度は、押出機に挿入された温度計にて測定される値である。
なお、加熱溶融時の押出機設定温度、樹脂温度は、使用する樹脂の物性も考慮して選択する。なお、加熱溶融時の樹脂温度を前記数値範囲内にすることにより、樹脂の劣化を抑制することもできる。
【0070】
次に、Tダイを用いて溶融樹脂をシート状に押し出し、少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることで、未延伸のキャスト原反シートを成形する。
前記金属ドラムの表面温度(押し出し後、最初に接触する金属ドラムの温度)は、50~100℃であることが好ましく、より好ましくは、60~95℃である。前記金属ドラムの表面温度は、使用する樹脂の物性等に応じて決定することができる。
【0071】
前記キャスト原反シートの厚さは、前記ポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、通常、0.05mm~2mmであることが好ましく、0.1mm~1mmであることがより好ましい。
【0072】
本実施形態に係るポリプロピレンフィルムは、次のようにして好適に作製することができる。ただし、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムの作製方法は、以下に記載の方法に限定されない。
【0073】
前記ポリプロピレンフィルムは、前記樹脂キャスト原反シートに延伸処理を行って製造することができる。延伸は、縦及び横に二軸に配向せしめる二軸延伸が好ましく、延伸方法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法のどちらでも構わないが、逐次二軸延伸方法が好ましい。逐次二軸延伸方法としては、例えば、まず、キャスト原反シートを100~170℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通してMD方向(流れ方向、縦方向)に3~7倍に延伸する。MD方向延伸時の温度は、100~170℃が好ましく、120~160℃がより好ましくい。また、MD方向延伸時の延伸倍率は3~7倍が好ましく、4~6倍がより好ましい。MD方向に延伸した後、当該シートをテンターに導いて、TD方向(横方向、幅方向)に、3~11倍に延伸する。TD方向における延伸の際の温度は155~170℃が好ましい。その後、2~10倍に緩和、熱固定を施す。以上により、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。
【0074】
前記ポリプロピレンフィルムには、金属層積層工程などの後工程において、接着特性を高める目的で、延伸及び熱固定工程終了後に、オンライン又はオフラインにてコロナ放電処理を行ってもよい。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとして空気、炭酸ガス、窒素ガス、又は、これらの混合ガスを用いて行うことが好ましい。
【0075】
以上のようにしてポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【0076】
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層して金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得る金属層積層工程について説明する。ただし、本実施形態に係る工程Bは、以下に記載の工程に限定されない。
【0077】
金属層積層工程では、コンデンサとして加工するために、前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層し、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを得る。
【0078】
前記ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属層を積層する方法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法を例示することができる。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
【0079】
前記真空蒸着法における蒸着条件として、冷却ロールの温度は、-23℃-19℃以下が好ましく、-22℃以上-19℃以下がより好ましく、-22℃以上―18℃以下に調整することがさらに好ましい。蒸着の際に、フィルムを冷却ロールにて、冷やすことで、蒸着熱による熱負け(熱劣化、熱変形)を抑制することができる。
【0080】
前記真空蒸着法において、蒸発源の温度は、通電量で制御する。前記真空蒸着法における蒸着条件として、蒸発源への通電量は、650A以上であることが好ましく、700A以上であることがより好ましく、800A以上であることがさらに好ましい。前記通電量を多くすると(蒸発源の温度を高めに設定すれば)、炉の温度が上がり、金属の蒸発量が増えることからより効率的に蒸着を施すことができる。前記通電量は、ポリプロピレンフィルムの熱負けを防止する観点から、900A以下であることが好ましく、850A以下であることがより好ましい。
【0081】
前記真空蒸着法において、金属層の厚さは、膜抵抗で制御する。前記真空蒸着法における蒸着条件として、膜抵抗は、アルミニウム膜の場合、20Ω/sq以下であることが好ましく、17Ω/sq以下であることがより好ましい。亜鉛膜の場合、5Ω/sq以下であることが好ましく、4Ω/sq以下であることがより好ましい。前記膜抵抗が小さいということは、金属層の厚さが厚いことを意味する。前記膜抵抗は、自己回復性(セルフヒーリング性)の観点から、アルミニウム膜の場合、1Ω/sq以上であることが好ましく、5Ω/sq以上であることがより好ましい。亜鉛膜の場合、1Ω/sq以上であることが好ましく、2Ω/sq以上であることがより好ましい。なお、自己回復性とは、ポリプロピレンフィルムに欠陥部分が生じた場合等に、印加エネルギーやコンデンサ自身が持っているエネルギーにより蒸着層の金属が瞬時に蒸散してコンデンサの機能が回復することをいい、金属層が厚いとセルフヒーリング性に劣る傾向にある。
前記金属層の厚さ(膜抵抗)は、蒸着ライン速度と蒸発源の温度(全記載の通電量)とにより調整することができる。
【0082】
蒸着により金属層を積層する際のマージンパターンは、特に限定されるものではないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点から、フィッシュネットパターンないしはTマージンパターンといった、いわゆる特殊マージンを含むパターンをフィルムの片方の面上に施すことが好ましい。保安性が高まり、コンデンサの破壊、ショートの防止、などの点からも効果的である。
【0083】
マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法が、何ら制限無く使用することができる。
【0084】
次に、金属層積層工程で得られた金属層一体型ポリプロピレンフィルムを、100℃以上130℃以下の温度で加熱する加熱(熱処理)工程を行う。当該工程を行うことにより、金属層一体型ポリプロピレンフィルムのそれまでに受けた熱履歴をキャンセルすることで、フィルムコンデンサに形成された後、高温環境に晒されても、コンデンサ巻き方向の熱伸長/収縮といった熱変化がし難くなり、結果として、巻回層間のギャップが変わったり、扁平型の素子においては、その扁平カーブ部の歪やシワ入りがなくなることので、高温環境下、高い電圧を負荷しても、コンデンサは、ショート破壊し難くなることで、100℃以上の高温下で高い電圧を負荷してもショートしない特性をフィルムコンデンサに対して付与できる。加熱工程の好ましい具体例は、以下の通りである。加熱(熱処理)工程としては、バッチ式であっても、ロール・ツー・ロール方式であってもどちらでも構わない。作業効率(時間)の観点からは、ロール・ツー・ロール方式で、加熱(熱処理)することが好ましい。バッチ式は、例えば、コンデンサを形成するために所望の幅に断裁した、あるいは、断裁前の金属層一体型ポリプロピレンフィルムロール(巻取)を、所定の温度に設定した恒温槽内に静置し、所定時間加熱処理を施す。恒温槽は、例えば一般的な熱風(送風)方式の恒温槽の他、誘導加熱方式、赤外線方式など、制限なく使用することが可能である。加熱時間は、本発明に係る伸長率を達成できれば制限はないが、ロール径が大きければ(巻き長が長ければ)、それだけ長時間の加熱処理を有する。ロール径にもよるが、一般的には、5分から6時間程度、作業効率の観点から、なるべく短く例えば、1時間程度以下とするのが良い。熱処理時間の短時間化の観点からは、ロール・ツー・ロール方式が好ましく採用される。ロールから巻き出したフィルムを連続的に加熱炉(ゾーン)に導き、炉からできてきたフィルムを巻き取ることによって、加熱処理を施す。加熱炉(ゾーン)は、送風方式、赤外線方式などのいずれでも構わない。また、加熱炉に代えて、複数の加熱ロールによる接触加熱方式でも良い。処理速度は、本発明に係る伸長率を達成できれば制限はなく、加熱ゾーン長にも依存する。一般的には、長さ数m~十数m程度の熱風加熱ゾーンを複数設けたパートを、巻き出したフィルムを1分間から5分間かけて通過させ、巻き取ることによって加熱処理を施そう事が効果的である。
【0085】
本実施形態の金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、従来公知の方法で積層するか、巻回してフィルムコンデンサとすることができる。
【実施例
【0086】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部及び%はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0087】
[実施例1-5及び比較例1-4]
<金属層一体型ポリプロピレンフィルムの製造>
酸化防止剤としてイルガノックス1010を5000ppm添加したポリプロピレン樹脂(重量平均分子量:30万、分子量分布:6、メソペンッド分率:96.5%)を、押出機に供給し、樹脂温度250℃の温度で溶融した後、Tダイを用いて押出し、表面温度を92℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させ、厚さ約125μmのキャスト原反シートを作製した。引き続きこの未延伸キャスト原反シートを140℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、直ちに室温まで冷却した後、ついでテンターにて165℃の温度で横方向に10倍に延伸して、非常に薄い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0088】
次に、蒸着装置(アルバック社製、製品名:巻取式真空蒸着装置EWE-060)を用い、金属膜の表面抵抗率が20Ω/□になるよう、得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムにアルミニウム金属層を形成して金属層一体型ポリプロピレンフィルム(熱処理前)を得た。このとき、オイルマージン法により、スリット後に、図1のような金属電極3が、フィルム幅方向一方の端部にフィルムの長手方向に連続した絶縁マージン4(絶縁溝部:幅方向の長さ1mm)を設けて形成されるように金属蒸着を行った。
【0089】
次に、金属層一体型ポリプロピレンフィルム(熱処理前)をスリットしたのち、表1に記載の各条件(温度、バッチ又はロール・ツー・ロール、時間)で熱処理を施し、全幅60mmの金属層一体型ポリプロピレンフィルム(熱処理後)を得た。金属層一体型ポリプロピレンフィルムの厚さは、後述の方法で測定された値であり、それぞれ表1に記載のとおりであった。なお、比較例1では金属層一体型ポリプロピレンフィルムを熱処理しなかった。また、比較例2では、金属層を形成する前の二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて、100℃、10分間バッチで熱処理したが、金属層一体型ポリプロピレンフィルムを熱処理しなかった。
【0090】
<金属層一体型ポリプロピレンフィルムの厚みの測定>
温度23±2℃、湿度50±5%RHの環境下で、シチズンセイミツ株式会社製 紙厚測定器 MEI-11(測定圧100kPa、降下速度3mm/秒、測定端子φ=16mm、測定力20.1N)を用いた。シワや空気が入らないようにして金属層一体型ポリプロピレンフィルムを10枚重ねたサンプルに対し、5回測定を行い、5回の平均値を10で除して、厚みを算出した。
【0091】
<フィルムコンデンサの製造>
得られた金属層一体型ポリプロピレンフィルムをそれぞれ2枚用いて、相合わせた。株式会社皆藤製作所製自動巻取機3KAW-N2型を用い、相合わせた金属層一体型ポリプロピレンフィルムを、巻き取り張力250g、接圧880g、巻き取り速度4m/sにて、1137ターン巻回を行った。素子巻きした素子は、荷重5.9kg/cm2でプレスしながら120℃にて15時間熱処理を施した。その後、素子端面に亜鉛金属を溶射した。溶射条件としては、フィード速度15mm/s、溶射電圧22V、溶射圧力0.3MPaとし、厚さ0.7mmになるよう溶射を行った。こうして扁平型フィルムコンデンサを得た。扁平型フィルムコンデンサの端面にリード線をはんだ付けした。その後、扁平型フィルムコンデンサをエポキシ樹脂で封止した。エポキシ樹脂の硬化は、90℃で2.5時間加熱した後、さらに、120℃で2.5時間加熱して行った。出来上がったフィルムコンデンサの静電容量は、75μFであった。
【0092】
<金属層一体型ポリプロピレンフィルムの温度と伸長率との関係>
セイコーインスツルメンツ株式技社製熱-機械測定装置(TMA)・TMA/SS6000型を用い、石英引張プローブにて、幅4mm、長さ25mmの短冊形にサンプリングした金属層一体型ポリプロピレンフィルムについて、MDの方向に2MPaの静荷重を加えた状態で、25℃から10℃/分の昇温速度で加熱して、温度と伸縮率(TMA(%))との関係を示すグラフを取得した。また、得られたグラフについて、100℃、120℃、及び130℃における伸縮率(%)(25℃における伸縮率を0%とする)、30℃から100℃までの伸長勾配(平均膨張率)と、変曲点(昇温開始から最初に表れる変曲点)の温度を読み取った。測定条件を以下にまとめる。
測定装置:セイコーインスツルメンツ株式会社製 TMA/SS6000型
測定プローブ:石英引張プローブ
測定モード:Fモード(荷重制御モード)
静荷重:2MPa
初期チャック間距離:15mm
測定温度範囲:25℃~165℃
昇温速度:10℃/min
データサンプリングタイム:0.5sec
【0093】
<高温環境における耐電圧性(ショート発生の有無)の評価>
以下の手順により、高温環境におけるフィルムコンデンサの耐電圧性を評価した。結果を表1に示す。まず、150℃環境においてフィルムコンデンサに480Vdc/μm(2.5μm厚のフィルムコンデンサに対して直流1200V)の電圧を10分間付与した。除電した後、次に、日置電機株式会社製デジタル超絶縁微小電流計DMS8104型を用いてフィルムコンデンサの絶縁抵抗値(直流500V印加後の1分間値)を室温にて測定し、以下の基準により耐電圧性(ショート発生の有無)を評価した。結果を表1に示す。
A:抵抗値が0.05MΩ(測定下限値)以上(抵抗値が表示されれるない)であり、ショートしていないと判定された。
C:抵抗値が0.05MΩ(測定下限値)を下回り(抵抗値が表示されない)、ショートしていると判定された。
【0094】
<高温環境における絶縁性の評価>
以下の手順により、高温環境におけるフィルムコンデンサの絶縁性を評価した。結果を表1に示す。まず、150℃環境においてフィルムコンデンサに480Vdc/μm(2.5μm厚のフィルムコンデンサに対して直流1200V)の電圧を10分間付与した(耐電圧性試験)。除電した後、次に、日置電機株式会社製デジタル超絶縁微小電流計DMS8104型を用いてフィルムコンデンサの絶縁抵抗値(直流500V印加後の1分間値)を室温にて測定し、以下の基準により絶縁性を評価した。結果を表1に示す。
A:抵抗値が1GΩ以上であった。
C:抵抗値が1GΩを下回った。
【0095】
【表1】
【符号の説明】
【0096】
1 金属層一体型ポリプロピレンフィルム
2 ポリプロピレンフィルム
3 金属電極
3a 金属層
3b 電極取り出し部
4 絶縁マージン
図1