(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】クレーン機種選定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20250508BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
G06Q50/08
B66C13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020183537
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三谷 友鷹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 伸広
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-239050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B66C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の空間占有態様と、前記建造物の周囲領域の地形と、吊荷としての資材の吊り上げ時の空間占有態様と、を認識する第1計画支援処理要素と、
前記第1計画支援処理要素により認識された前記建造物の空間占有態様と、前記建造物の周囲領域に含まれる
前記建造物が立っている地面の高さを基準としたクレーンが配置される場所の地面の高さ、または前記地面の高さおよび仮想空間において前記クレーンが配置される地面の水平方向に対する傾斜角度としての指定箇所の地形と、前記資材の空間占有態様と、に基づき、
前記クレーンが前記指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、前記建造物の上端と前記資材の下端との間隔が閾値以上になるような地上揚程を有するという第1指定条件を含む指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する機種選定支援処理要素と、
前記機種選定支援処理要素による判定結果に関する情報を出力インターフェースに出力させる第2計画支援処理要素と、
を備えている
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設作業計画支援装置において、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記建造物の空間占有態様および前記指定箇所の空間座標値に基づき、クレーンが前記指定箇所に配置され、かつ、前記アタッチメントの姿勢が前記指定姿勢である状態で、前記建造物を包含するような作業半径を有するという第2指定条件をさらに含む前記指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、前記資材の周囲の空間余裕をさらに認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記建造物の空間占有態様、前記建造物の周囲領域に含まれる指定箇所の地形および前記資材の空間占有態様に加えて、前記空間余裕に基づき、前記第1指定条件の充足性を判定する
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、前記資材の質量をさらに認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記資材の質量以上の定格荷重を有しているという第3指定条件をさらに含む前記指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、前記資材の質量をさらに認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記資材の質量に対応しているフックを有しているという第4指定条件をさらに含む前記指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定することを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の建設作業計画支援装置において、
前記機種選定支援処理要素が、前記指定条件を満たす機種のクレーンおよび前記指定箇所の組み合わせの有無を判定し、
前記第2計画支援処理要素が、前記機種選定支援処理要素により前記指定条件を満たす機種のクレーンおよび前記指定箇所の組み合わせが存在すると判定された場合、当該機種のクレーンおよび当該指定箇所の組み合わせに関する情報を出力インターフェースに出力させる
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、入力インターフェースを通じて入力された前記指定箇所を認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記指定箇所について前記指定条件を満たす機種のクレーンが存在しないと判定した場合、前記指定条件を満たす機種のクレーンおよび新たな前記指定箇所の組み合わせの有無を判定する
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【請求項8】
請求項1~7のうちいずれか1項に記載の建設作業計画支援装置において、
前記第2計画支援処理要素が、前記建造物の空間占有態様と、前記資材の吊り上げ時の
空間占有態様と、を前記出力インターフェースに出力させ、
前記第1計画支援処理要素が、前記出力インターフェースに接しているユーザにより入力インターフェースを通じて入力された前記指定箇所または前記指定箇所の地形を認識する
ことを特徴とする建設作業計画支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業現場の状況に応じて機種のクレーンを選定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レンタル会社等の各拠点からレンタルされる建設機械の稼動時間又は貸出時間を収集可能な管理コンピュータを用いて上記各拠点における建設機械の配備計画を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。クレーン分野について生産性および安全性の向上のため、BIM(Buliding Information Modeling)が採用されている。施工段階において、施工に必要な重機の選定およびクレーンなどの建設機械の揚重計画が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機種のクレーンおよび/または配置場所の選定作業は建設作業計画者の経験に依存している。このため、建設作業計画者の経験によっては、作業現場の状況に鑑みて不適当な機種のクレーンが選定されてしまい、実際の作業に際して支障が生じる可能性がある。また、作業内容に鑑みて過度に大型のクレーンが選定された場合、当該クレーンの仕様が適当する作業現場に当該クレーンが配備される時期が遅くなり、建設作業が遅延するまたは建設作業期間が制限される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、作業現場の状況に鑑みて適当な機種のクレーンの選定作業の容易化を図りうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建設作業計画支援装置は、
建造物の空間占有態様と、前記建造物の周囲領域の地形と、吊荷としての資材の吊り上げ時の空間占有態様と、を認識する第1計画支援処理要素と、
前記第1計画支援処理要素により認識された前記建造物の空間占有態様と、前記建造物の周囲領域に含まれる前記建造物が立っている地面の高さを基準としたクレーンが配置される場所の地面の高さ、または前記地面の高さおよび仮想空間において前記クレーンが配置される地面の水平方向に対する傾斜角度としての指定箇所の地形と、前記資材の空間占有態様と、に基づき、前記クレーンが前記指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、前記建造物の上端と前記資材の下端との間隔が閾値以上になるような地上揚程を有するという第1指定条件を含む指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する機種選定支援処理要素と、
前記機種選定支援処理要素による判定結果に関する情報を出力インターフェースに出力させる第2計画支援処理要素と、
を備えている。
【0007】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、指定条件を満たす機種のクレーンの有無の判定結果に関する情報が選択的に出力インターフェースを通じて建設作業計画者等のユーザに対して提供される。該当機種のクレーンの有無は、あらかじめ定められた複数の機種のクレーンにより構成される機種群の中において判定される。指定条件に含まれている「第1指定条件」は、クレーンが建造物の周囲領域における指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、当該建造物の上端と吊荷である資材の下端との間隔が閾値以上になるような地上揚程を有するという条件である。このため、クレーンが指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、高さ方向について建造物と資材との干渉を回避しながら、当該資材を建造物の資材置場から吊り上げるまたは当該資材を建造物の資材置場に吊り下げる観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業、ひいてはクレーンを用いた建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0008】
本発明の構成要素(ハードウェア資源)が情報を「認識する」とは、当該情報を受信すること、当該情報を記憶装置から読み出すこと、受信情報および/または読み出し情報に基づく演算処理を実行することにより当該情報を予測、決定または推定すること、当該情報を記憶装置に格納することなど、当該情報を後続の演算処理において利用可能な形態で準備するあらゆる情報処理を包含する概念である。
【0009】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記建造物の空間占有態様および前記指定箇所の空間座標値に基づき、クレーンが前記指定箇所に配置され、かつ、前記アタッチメントの姿勢が前記指定姿勢である状態で、前記建造物を包含するような作業半径を有するという第2指定条件をさらに含む前記指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する
ことが好ましい。
【0010】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、指定条件に含まれている「第2指定条件」は、クレーンが建造物の周囲領域における指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、当該建造物を包含するような作業半径を有するという条件である。このため、クレーンが指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、資材を建造物の資材置場の上方に水平方向に移動させるまたは資材を建造物の資材置場の上方から水平方向に移動させる観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業、ひいてはクレーンを用いた建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0011】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、前記資材の周囲の空間余裕をさらに認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記建造物の空間占有態様、前記建造物の周囲領域に含まれる指定箇所の地形および前記資材の空間占有態様に加えて、前記空間余裕に基づき、前記第1指定条件の充足性を判定する
ことが好ましい。
【0012】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、建造物の空間占有態様、クレーンが配置される指定箇所の地形および資材の空間占有態様に加えて、空間余裕(例えば、フック巻上限界距離、スリング長さなど)が勘案された形で第1指定条件を満たす機種のクレーンのユーザによる選定作業が可能になる。
【0013】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、前記資材の質量をさらに認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記資材の質量以上の定格荷重を有しているという第3指定条件をさらに含む前記指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する
ことが好ましい。
【0014】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、指定条件に含まれている「第3指定条件」は、資材の質量以上の定格荷重を有するという条件である。このため、クレーンが指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、資材を安定に吊り上げる観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業、ひいてはクレーンを用いた建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0015】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、前記資材の質量をさらに認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記資材の質量に対応しているフックを有しているという第4指定条件をさらに含む前記指定条件を満たす機種のクレーンの有無を判定する
ことが好ましい。
【0016】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、指定条件に含まれている「第4指定条件」は、資材の質量に応じたフックを有しているという条件である。このため、クレーンが指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、資材をフックに安定に吊り上げる観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業、ひいてはクレーンを用いた建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0017】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記機種選定支援処理要素が、前記指定条件を満たす機種のクレーンおよび前記指定箇所の組み合わせの有無を判定し、
前記第2計画支援処理要素が、前記機種選定支援処理要素により前記指定条件を満たす機種のクレーンおよび前記指定箇所の組み合わせが存在すると判定された場合、当該機種のクレーンおよび当該指定箇所の組み合わせに関する情報を出力インターフェースに出力させる
ことが好ましい。
【0018】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、指定条件を満たす機種のクレーンおよび当該クレーンが配置される指定箇所の組み合わせが存在する場合、当該組み合わせに関する情報が出力インターフェースに出力される。これにより、資材を建造物の資材置場から吊り上げる等の観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業および当該クレーンの配置計画を含む建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0019】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記第1計画支援処理要素が、入力インターフェースを通じて入力された前記指定箇所を認識し、
前記機種選定支援処理要素が、前記第1計画支援処理要素により認識された前記指定箇所について前記指定条件を満たす機種のクレーンが存在しないと判定した場合、前記指定条件を満たす機種のクレーンおよび新たな前記指定箇所の組み合わせの有無を判定する
ことが好ましい。
【0020】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、資材を建造物の資材置場から吊り上げる等の観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業および当該クレーンの配置計画を含む建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0021】
本発明の建設作業計画支援装置において、
前記第2計画支援処理要素が、前記建造物の空間占有態様と、前記資材の吊り上げ時の空間占有態様と、を前記出力インターフェースに出力させ、
前記第1計画支援処理要素が、前記出力インターフェースに接しているユーザにより入力インターフェースを通じて入力された前記指定箇所または前記指定箇所の地形を認識する
ことが好ましい。
【0022】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、出力インターフェースを通じて建造物および吊荷としての資材のそれぞれの空間占有態様をユーザに認識させ、当該ユーザに入力インターフェースを通じてクレーンの配置箇所を指定させることができる。このため、資材を建造物の資材置場から吊り上げる等の観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業および当該クレーンの配置計画を含む建設計画作成作業の容易化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
(建設作業計画支援装置の構成)
建設作業計画支援装置を構成する建設作業計画支援サーバ20は、端末装置40とネットワークを介して相互通信可能に接続されている一または複数のサーバにより構成されている。
【0025】
建設作業計画支援サーバ20は、第1計画支援処理要素21と、第2計画支援処理要素22と、機種選定支援処理要素24と、BIMデータベース28と、を備えている。BIMデータベース28は、建設作業計画支援サーバ20を構成するサーバとは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。
【0026】
第1計画支援処理要素21、第2計画支援処理要素22および機種選定支援処理要素24のそれぞれは、単一のまたは複数の演算処理装置(CPU、シングルプロセッサコア、マルチプロセッサコアなど)により構成されている。当該演算処理装置が記憶装置(メモリ、ハードディスクなど)に格納されているデータおよびプログラム(コンピュータソフトウェア)を読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって演算処理を実行する機能を有している。
【0027】
端末装置40は、例えばスマートホン、タブレット端末およびノートパソコンなどの携帯可能な情報処理装置により構成されている。端末装置40は、端末入力インターフェース41と、端末出力インターフェース42と、端末制御装置44と、を備えている。端末入力インターフェース41は、手動操作式のキーおよび/またはボタン、ならびに必要に応じて音声認識装置により構成されている。端末出力インターフェース42は、画像表示装置および必要に応じて音声出力装置により構成されている。端末入力インターフェース41および端末出力インターフェース42がタッチパネルにより構成されていてもよい。端末制御装置44は、演算処理装置(CPU、シングルプロセッサコア、マルチプロセッサコアなど)により構成されている。当該演算処理装置が記憶装置(メモリ、ハードディスクなど)に格納されているデータおよびプログラム(コンピュータソフトウェア)を読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって演算処理を実行する機能を有している。
【0028】
(クレーンの構成)
図2に示されている一の機種としての移動式のクレーン10は、下部走行体11と、上部旋回体12と、ブーム起伏装置121と、ジブ起伏装置122と、ブーム141と、ジブ142と、を備えている。下部走行体11および上部旋回体12により「クレーン本体」が構成されている。ブーム141(第1アタッチメント要素)およびジブ142(第2アタッチメント要素)により「アタッチメント14」が構成されている。BIMデータベース
28に登録されているクレーンは、実際のクレーン10よりも構造が簡素化されていてもよい。
【0029】
クレーン10の種類、仕様およびアタッチメント14には様々なものが含まれている。クレーン10は、クローラクレーンではなく、ホイールクレーン(タイヤ走行するクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、オールテレーンクレーン)などの異なる移動式クレーンであってもよく、ジブクレーン、クライミングクレーンまたはタワークレーンなどの固定式クレーンであってもよい。クレーン10が、タワークレーンのほか、ラフィングクレーンまたは固定ジブクレーンであってもよい。ジブ142が省略され、クレーン10が、ブーム141をアタッチメント14として備えていてもよい。ブーム141が、テレスコ(登録商標)(伸縮)ブームのほか、ラチスブームであってもよい。
【0030】
クレーン10に対して位置および姿勢が固定されている実機座標系は、下部走行体11に対する上部旋回体12の旋回軸線に平行なz軸と、上部旋回体12の前後方向に平行なx軸と、z軸およびx軸のそれぞれに直交するy軸と、により定義されている。クレーン10の構成要素の位置および/または姿勢を説明するために実機座標系が適宜参照される。
【0031】
下部走行体11は、例えば、原動機の動力をクローラおよび/またはホイールに伝達することにより当該クローラおよび/またはホイールが接している地面に対して移動する機能を有している。上部旋回体12は、下部走行体11の上側にあって下部走行体11に対して旋回可能に連結されている。上部旋回体12は、クレーン10の前後方向のバランスをとるためのカウンタウエイト120と、キャブ124(運転室)と、を備えている。
【0032】
ブーム141は、左右一対のブームフットピン1410(フットピン)のそれぞれを介して、上部旋回体12の左右両側に対して起伏可能に取り付けられる。ブーム141は、パイプが組み合わされたラチス構造を有するラチスブームであってもよく、箱形構造を有する伸縮ブームであってもよい。
【0033】
ブーム141がラチスブームである場合、ブーム141の長手方向に垂直なブーム141の断面形状は、略四角形である。ブーム141は、左右の側面1411と、背面1412と、腹面1413と、を有している。ブーム141の左右の側面1411のそれぞれは、左方向(+y方向)および右方向(-y方向)のそれぞれに向いている。ブーム141の背面1412は、当該ブーム141が起こされた状態においてブーム141の後方向(-x方向)に向いている。ブーム141の腹面1413は、この状態においてブーム141の前方向(+x方向)に向いている。
【0034】
ブーム141が箱型構造の伸縮ブームである場合、ブーム141の長手方向に対してブーム141の断面形状は、略四角形である。この場合、当該断面における腹面1413に相当する輪郭線は略半円形状または略円弧状であってもよい。ブーム141がラチスブームである場合、ブーム141を構成するパイプには、主柱1414と、縦材1415と、横材(図示略)と、斜材1416と、がある。主柱1414は、ブーム141の四角形断面の4つの隅角部分に配置され、ブーム141の長手方向に延在しているパイプである。縦材1415は、側面1411を構成し、ブーム141の長手方向および横方向Yのそれぞれに直交する方向に延在している。図示しない横材は、背面1412および腹面1413を構成し、左右方向に延在しているパイプである。斜材1416は、ブーム141の表面を構成し、主柱1414、縦材1415および横材のそれぞれに対して傾斜する方向に延在している。
【0035】
ブーム141の背面1412の左右のそれぞれには、左右一対のブームバックストップ1210のそれぞれが取り付けられている。ブームバックストップ1210(バックストップ)は、ブーム141の回転を制限し、ひいては、上部旋回体12に対するブーム141の後方向への回転を制限する。ブームバックストップ1210の上端部は、ブーム141に接触可能であってもよく、ブーム141に接続されていてもよい。ブームバックストップ1210の下端部は、上部旋回体12に接触可能であってもよく、上部旋回体12に接続されていてもよい。ブームバックストップ1210の上端部および下端部のうち少なくとも一方の端部は、当該端部と隣り合う構造物(ブーム141または上部旋回体12)に対して連結されている。ブームバックストップ1210は、ばねにより伸縮可能であってもよく、油圧により伸縮可能であってもよく、ばねおよび油圧により伸縮可能であってもよい。ジブバックストップ1220も同様である。
【0036】
上部旋回体12に対してブーム141をクレーン本体または上部旋回体12に対して起伏させるためのブーム起伏装置121は、マスト1211と、ブームガイライン1212(ガイライン)と、上部スプレッダ1213と、下部スプレッダ1214と、ブーム起伏ロープ1215と、を備えている。
【0037】
マスト1211は、上部旋回体12に起伏可能に取り付けられ、ブーム141よりも後方向に配置される。マスト1211は、左右の(2本の)主柱と、左右の主柱どうしをつなぐ部材と、を備えている。
【0038】
ブームガイライン1212(ガイライン)は、マスト1211の先端部(上部旋回体12に取り付けられる側とは反対側)とブーム141の先端部とに接続される。ブームガイライン1212は、リンク部材(ガイリンク)およびロープ(ガイロープ)の少なくともいずれかを有する部材である(後述するジブガイライン1223およびストラットガイライン1224も同様)。ブームガイライン1212は、左右に(2本)設けられ、ブーム141およびマスト1211のそれぞれの左右部分に取り付けられる。
【0039】
上部スプレッダ1213は、複数のシーブを有する装置であり、マスト1211の先端部に配置される。下部スプレッダ1214は、複数のシーブを有する装置であり、上部旋回体12の後方向端部に配置される。ブーム起伏ロープ1215は、下部スプレッダ1214および上部スプレッダ1213に掛けられている。このため、ブーム起伏ロープ1215が、ウインチ(図示略)により巻き取られまたは繰り出されると、下部スプレッダ1214と上部スプレッダ1213との間隔が変化する。その結果、マスト1211は、上部旋回体12に対して起伏する。マスト1211とブーム141とがブームガイライン1212で接続されているので、上部旋回体12に対してマスト1211が起伏すると、上部旋回体12に対してブーム141が起伏する。
【0040】
ジブ142は、左右一対のジブフットピン1420(フットピン)のそれぞれを介して、ブーム141の左右両側に対して起伏可能または回動可能に連結されている。ジブ142は、ブーム141を介して、クレーン本体または上部旋回体12に対して起伏可能である。ジブ142は、ラチス構造を有するラチスジブでもよく、箱形構造を有してもよい。
【0041】
ブーム141と同様に、ジブ142は、左右の側面1421と、背面1422と、腹面1423と、を有している。ブーム141と同様に、ジブ142を構成するパイプには、主柱1424と、縦材1425と、横材(図示略)と、斜材1426と、が含まれている。
【0042】
ジブ142の背面1422の左右両側のそれぞれに、左右一対のジブバックストップ1220が取り付けられている。ジブバックストップ1220(バックストップ)は、ジブ142の回転を制限し、ひいてはブーム141に対するジブ142の後方向への回転を制限する。ジブバックストップ1220の長手方向の一端は、ジブ142に接続されてもよく、ジブ142に接触可能でもよい。ジブバックストップ1220の長手方向の他端(ジブ142に接続される側とは反対側の端)は、ブーム141の先端部に接触可能でもよく、ブーム141の先端部に接続されてもよい。ジブバックストップ1220の一端および他端の少なくともいずれかの端部は、この端部と隣り合う構造物(ジブ142またはブーム141)に接続されている。
【0043】
ブーム141に対してジブ142を回動させるためのジブ起伏装置122は、フロントストラット1221と、リアストラット1222と、ジブガイライン1223(ガイライン)と、ストラットガイライン1224(ガイライン)と、ジブ起伏ロープ1226と、を備えている。ストラット1221、1222は、ブーム141の先端部に対して起伏可能であり、ジブ142よりも後方向に配置されている。フロントストラット1221は、ブーム141の先端部に起伏可能に取り付けられていてもよく、ジブ142の基端部に起伏可能に取り付けられていてもよい。フロントストラット1221は、ラチス構造を有していてもよく、箱形構造を有していてもよい。これは、リアストラット1222についても同様である。フロントストラット1221の先端部には、複数のシーブが設けられる。これは、リアストラット1222についても同様である。リアストラット1222は、ブーム141の先端部に起伏可能に取り付けられている。リアストラット1222は、フロントストラット1221よりも、下方向および後方向のうち少なくともいずれか一方に配置されている。
【0044】
ストラットは、1本のみ設けられていてもよく、3本以上設けられていてもよい。リアストラット1222にバックストップ(リアストラットバックストップ1225)が取り付けられているが、フロントストラット1221にバックストップが取り付けられていてもよい。
【0045】
ジブガイライン1223(ガイライン)は、フロントストラット1221の先端部とジブ142の先端部とに接続される。左右一対のジブガイライン1223は、ジブ142およびフロントストラット1221のそれぞれの左側および右側のそれぞれに取り付けられている。
【0046】
ストラットガイライン1224(ガイライン)は、リアストラット1222の先端部とブーム141とに接続されている。左右一対のストラットガイライン1224は、リアストラット1222およびブーム141のそれぞれの左側および右側のそれぞれに取り付けられている。
【0047】
ジブ起伏ロープ1226は、フロントストラット1221およびリアストラット1222のそれぞれの先端部のシーブに掛けられている。このため、ジブ起伏ロープ1226が、図示しないウインチにより巻き取られまたは繰り出されると、リアストラット1222の先端部とフロントストラット1221の先端部との間隔が変わる。この結果、フロントストラット1221が、ブーム141に対して起伏する。フロントストラット1221とジブ142とがジブガイライン1223で接続されているので、ブーム141に対してフロントストラット1221が起伏すると、ブーム141に対してジブ142が起伏する。
【0048】
キャブ124の内部に配置されている操作レバーおよびペダルなどにより構成されている実機操作機構が、当該キャブ124の内部に搭乗したオペレータにより操作されることにより、クレーン10の動作が制御される。遠隔操作装置を構成する操作レバーおよびペダルなどにより構成されている遠隔操作機構がオペレータにより操作されることにより、クレーン10の動作が遠隔制御されてもよい。クレーン10は、例えば、油圧ポンプ、油圧アクチュエータ、およびコントロールバルブなどを備えている油圧回路により構成されている駆動機構104によって駆動される。
【0049】
クレーン10は、主巻フック161と、補巻フック162と、主巻フック161を巻き上げるための主巻ワイヤロープ163と、補巻フック162を巻き上げるための補巻ワイヤロープ164と、をさらに備えている。主巻ワイヤロープ163および補巻ワイヤロープ164のそれぞれが別個のウインチ(図示略)により巻き上げられるまたは巻き下げられることにより主巻フック161および補巻フック162のそれぞれが昇降される。
【0050】
図3に示されているように、クレーン10は、実機制御装置100、センサ群101、実機操作機構102および駆動機構104を備えている。これらの構成は、ある機種のクレーン10が選定され、かつ、作業現場に実際に配置される当該機種のクレーン10(実機)が備えている構成である。
【0051】
実機操作機構102は、上部旋回体12の一部を構成するキャブ124(運転室)に搭載されている。実機操作機構102は、実機入力インターフェース1021および実機出力インターフェース1022を備えている。実機入力インターフェース1021は、下部走行体11の移動動作、下部走行体11に対する上部旋回体12の旋回動作など、クレーン10を操作するための操作レバーおよび操作ボタンなどにより構成されている。実機出力インターフェース1022は、画像表示装置のほか、音響出力装置により構成されている。操作レバーおよび操作ボタン、ならびに、画像表示装置等は、キャブ124の内部においてオペレータが座るシートの周囲に配置されている。
【0052】
センサ群101は、ブームフットピン1410まわりのブーム141の仰角(または起伏角)および方位を測定するためのセンサ、ジブフットピン1420まわりのジブ142の回動角(または起伏角)および方位を測定するためのセンサ、吊荷用のワイヤに生じる張力およびワイヤの繰り出し長さを測定するためのセンサ、ならびに、下部走行体11に対する上部旋回体12の旋回角度を測定するためのセンサなどにより構成されている。ブーム141がラチスブームである場合、当該ブーム141の延在長さを測定するためのセンサは省略される。
【0053】
駆動機構104は、実機入力インターフェース1021を構成する実機操作レバー等の操作態様に応じて、下部走行体11の移動、下部走行体11に対する上部旋回体12の旋回、ブーム141およびジブ142のそれぞれの起伏および/または伸縮、ウインチによるワイヤロープ163、164の巻き取りまたは繰り出し等を実現するためのアクチュエータおよび力伝達機構等により構成されている。
【0054】
(機能)
前記構成の建設作業計画支援サーバ20の機能について
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
端末装置40において端末入力インターフェース41を通じて指定アプリ(アプリケーションソフトウェア)が起動されるなどの指定操作があったことに応じて、クレーンの作業条件を指定するための画面が端末制御装置44によって端末出力インターフェース42に出力される(
図4/STEP402)。当該画面の出力のため、端末装置40と建設作業計画支援サーバ20(サーバ)とが相互通信してもよい。
【0056】
端末制御装置44により、端末入力インターフェース41を通じて入力された指定作業条件が認識される(
図4/STEP404)。指定作業条件が、BIMデータベース28に登録されている複数の建設計画のうち一の建設計画を指定するための計画名称または地域名称などにより特定される。当該作業条件が端末装置40から送信され、建設作業計画支援サーバ20において第1計画支援処理要素21により受信される(
図4/矢印X1)。第1計画支援処理要素21により、当該作業条件に合致する建設計画に応じたBIMデータとして、建造物の空間占有態様、当該建造物を含む地域の地形および資材の空間占有態様がBIMデータベース28から検索または認識される(
図4/STEP210)。
【0057】
端末制御装置44における端末入力インターフェース41を通じた指定作業条件の入力(
図4/STEP404参照)が省略され、建設作業計画支援サーバ20において第1計画支援処理要素21によりあらかじめ定められている指定作業条件に応じたBIMデータが認識されてもよい。
【0058】
BIMデータとしての地域の地形は、仮想空間座標系におけるX座標値(経度)およびY座標値(緯度)の組み合わせ、または、X-Y平面を構成するメッシュ(例えば正方形状)ごとのZ座標値(標高または海抜)により定義されている。BIMデータとしての建造物の空間占有態様は、
図5に示されている建造物Bの地面からの高さH
1(仮想空間座標系におけるZ座標値の範囲)および
図6に示されている建造物Bの水平方向におけるサイズ(仮想空間座標系におけるX座標値の範囲およびY座標値の範囲)により定義されている。同様に、BIMデータとしての資材の空間占有態様は、
図5に示されている資材Wの高さH
2(仮想空間座標系におけるZ座標値の範囲)および
図6に示されている資材Wの水平方向におけるサイズ(仮想空間座標系におけるX座標値の範囲およびY座標値の範囲)により定義されている。
【0059】
仮想空間における実機座標系のz軸方向は、仮想空間座標系のZ軸方向に対して平行であってもよく、傾斜していてもよい。すなわち、仮想空間においてクレーン10が配置される指定箇所の地面が水平方向に対して傾斜していてもよい。この場合、当該傾斜角度が勘案されたうえで、機種選定支援処理要素24により各機種のクレーンについて指定条件の充足性が判定される。
【0060】
第2計画支援処理要素22により、BIMデータが建設作業計画支援サーバ20から端末装置40に対して送信される(
図4/矢印X2)。これに応じて、端末制御装置44により当該BIMデータに応じた仮想作業現場を表わす3次元画像が端末出力インターフェース42に出力される(
図4/STEP410)。端末入力インターフェース41を通じて仮想作業現場を表わす3次元画像の視点の位置が任意に調節されてもよい。
【0061】
端末入力インターフェース41を通じて、仮想空間においてクレーンが配置される指定箇所が入力される(
図4/STEP412)。例えば、端末出力インターフェース42に出力されている仮想作業現場を表わす3次元画像において建造物の周囲の地面の一箇所が端末入力インターフェース41を構成するマウスポインティング装置におけるクリック操作により指定されることにより、当該箇所が指定箇所または指定エリアとして端末制御装置44により認識される。
【0062】
当該指定箇所が端末装置40から送信され、建設作業計画支援サーバ20において第1計画支援処理要素21により受信される(
図4/矢印X3)。第1計画支援処理要素21により、当該指定箇所の地形がBIMデータに基づいて認識される(
図4/STEP212)。指定箇所の地形は、
図4に示されているように、仮想空間において建造物Bが立っている地面の高さを基準とした、クレーン10が配置される場所の地面の高さH
0により定義されている。建造物Bの周囲領域における地面の高さH
0は、建造物Bが立っている地面の高さを基準として低い場合は正値、同じ場合は0、高い場合は負値として定義されている。端末入力インターフェース41を通じてユーザにより地面の高さH
0が指定されてもよい。
【0063】
機種選定支援処理要素24により、指定条件を満たす機種のクレーンの有無が判定される(
図4/STEP214)。指定条件には、第1指定条件が含まれている。「第1指定条件」は、クレーン10が指定箇所に配置され、かつ、アタッチメント14が指定姿勢にある状態で、建造物の上端と資材の下端との間隔が閾値以上になるような地上揚程を有するという条件である。例えば、
図5に示されているように、ブーム141の水平面に対する傾斜角度θ
1およびジブ142の水平面に対する傾斜角度θ
2によりアタッチメント14の指定姿勢が定義されている状態について考察する。クレーン10の地上揚程は、当該クレーン10が配置されている指定箇所の地面の高さH
0、建造物Bの高さH
1、建造物Bの上端と資材Wの下端との高さ方向の間隔C
1、資材Wの高さH
2および資材Wの上端とフック161との高さ方向の間隔C
2(スリング長さ)の和H
0+H
1+C
1+H
2+C
2により表わされる。地上揚程が「最大地上揚程」であってもよい。この場合、角度θ
1がブーム141の最大起伏角度に相当し、かつ、角度θ
2がジブ142の最大起伏角度に相当する。
【0064】
この状態で、地面からジブフットピン1420までの高さH、ブーム141の長さL1、ジブ142の長さL2およびフック巻上限界距離Q、ならびに、建造物Bの上端と資材Wの下端との間隔C1の閾値C1thに基づき、第1指定条件が関係式(01)により表わされる。ブーム141が伸縮する場合はその最大長さL1がクレーンの諸元として勘案される。同様に、ジブ142が伸縮する場合はその最大長さL2がクレーンの諸元として勘案される。
【0065】
H+L1sinθ1+L2sinθ2-Q≧H0+H1+C1th+H2+C2 ‥(01)。
【0066】
閾値C1th、資材Wの高さH2および資材Wの上端とフック161との間隔C2、および、フック巻上限界距離Qのそれぞれは、端末入力インターフェース41を通じて入力されることにより、あるいは、BIMデータベース28から検索されることにより、第1計画支援処理要素21により認識されてもよい。間隔C2および/またはフック巻上限界距離Qは「空間余裕」に該当する。
【0067】
フック巻上限界距離Qは、端末入力インターフェース41を通じて入力されることにより、あるいは、BIMデータベース28から検索されることにより第1計画支援処理要素21により認識された資材Wの質量または最大質量に応じて、第1計画支援処理要素21により可変に認識されてもよい。
【0068】
指定条件には、第2指定条件がさらに含まれている。「第2指定条件」は、クレーン10が指定箇所に配置され、かつ、アタッチメント14の姿勢が指定姿勢である状態で、建造物を包含するような作業半径を有するという条件である。例えば、
図6に示されているように、上部旋回体12の旋回中心軸線を中心とし、当該中心からアタッチメント14の先端またはジブポイントピンまでの間隔Dを半径とする円形領域に、資材置場P
Wが含まれていることが第2指定条件に相当する。
【0069】
上部旋回体12の旋回中心軸線(~指定箇所の位置)からジブフットピン1420までの水平方向の間隔d、ブーム141の長さL1、ジブ142の長さL2およびフック巻上限界距離Q、ならびに、上部旋回体12の旋回中心軸線と資材置場との水平方向の間隔D0に基づき、第2指定条件が関係式(02)により表わされる。
【0070】
D=d+L1sinθ1+L2sinθ2≧D0 ‥(02)。
【0071】
第2計画支援処理要素22により、機種選定支援処理要素24による判定結果が建設作業計画支援サーバ20から送信され、端末装置40により受信される(
図4/矢印X4)。端末制御装置44により、当該判定結果が肯定的であるか否定的であるかが判定される(
図4/STEP414)。当該判定結果が否定的である場合(
図4/STEP414‥2)、当該判定結果、すなわち、該当する機種のクレーンが存在しないと判定された旨の通知が端末制御装置44により端末出力インターフェース42に出力される(
図4/STEP418)。その後、再び、仮想空間においてクレーン10が配置される指定箇所の再入力が可能になる(
図4/STEP412参照)。
【0072】
その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図4/STEP414‥1)、該当する一または複数の機種のクレーンに関する情報が端末制御装置44により端末出力インターフェース42に出力される(
図4/STEP416)。
【0073】
さらに、端末出力インターフェース42に情報が出力された機種のクレーンが、端末入力インターフェース41を通じて一定時間以内に指定されたか否かが端末制御装置44により判定される(
図4/STEP420)。当該判定結果が否定的である場合(
図4/STEP420‥NO)、仮想空間においてクレーン10が配置される指定箇所の再入力が可能になる(
図4/STEP412参照)。
【0074】
その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図4/STEP420‥YES)、指定された機種に関する情報が、端末制御装置44により端末装置40から送信され、建設作業計画支援サーバ20により受信される(
図4/矢印X5)。これに応じて、第2計画支援処理要素22により、指定箇所に当該指定機種のクレーンが配置された建設作業計画が認識される(
図4/STEP216)。この際、BIMデータベース28に登録されている当該機種の配備可能なクレーンの台数が「1」だけ減じられてもよい。配備可能なクレーンの台数が限られているにもかかわらず、複数の指定箇所または複数の建設作業現場に各種のクレーンを配置する計画を作成する際に有効である。
【0075】
第2計画支援処理要素22により、当該建設作業計画に関する情報が、建設作業計画支援サーバ20から送信され、端末装置40により受信される(
図4/矢印X6)。これに応じて、端末制御装置44により、端末出力インターフェース42に出力される(
図4/STEP422)。例えば、BIMデータに応じた仮想作業現場を表わす2次元画像または3次元画像に、指定箇所に配置されたクレーン10が重畳または追加された画像が端末出力インターフェース42に出力される(
図4/STEP410)。端末入力インターフェース41を通じてクレーン10を含む仮想作業現場を表わす3次元画像の視点の位置が任意に調節されてもよい。
【0076】
(作用効果)
前記機能を発揮する建設作業計画支援サーバ20によれば、指定条件を満たす機種のクレーンの有無に関する情報が選択的に端末出力インターフェース42を通じて建設作業計画者等のユーザに対して提供される(
図4/STEP214→‥STEP416、STEP418参照)。該当機種のクレーンの有無は、あらかじめBIMデータベース28に登録されている複数の機種のクレーンにより構成される機種群の中において判定される。
【0077】
前記のように、指定条件に含まれている「第1指定条件」は、クレーン10が建造物Bの周囲領域における指定箇所に配置され、かつ、アタッチメント14が指定姿勢にある状態で、当該建造物Bの上端と吊荷である資材Wの下端との間隔C
1が閾値C
1th以上になるような地上揚程を有するという条件である(
図5および関係式(01)参照)。また、指定条件に含まれている「第2指定条件」は、クレーン10が建造物Bの周囲領域における指定箇所に配置され、かつ、アタッチメントが指定姿勢にある状態で、当該建造物Bの資材置場を包含するような作業半径Dを有するという条件である(
図6および関係式(02)参照)。
【0078】
このため、この状態で、高さ方向について建造物Bと資材Wとの干渉を回避しながら、当該資材を建造物Bの資材置場PWから吊り上げるまたは当該資材Wを建造物Bの資材置場PWに吊り下げ、かつ、資材Wを建造物の資材置場PWの上方に水平方向に移動させるまたは資材Wを建造物Bの資材置場PWの上方から水平方向に移動させる観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業、ひいてはクレーンを用いた建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0079】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、建設作業計画支援装置が端末装置40とネットワークを介して相互通信機能を有する建設作業計画支援サーバ20により構成されていたが、他の実施形態として建設作業計画支援装置が端末装置40の端末制御装置44により構成されていてもよい。すなわち、端末制御装置44が、第1計画支援処理要素21、第2計画支援処理要素22および機種選定支援処理要素24としての機能を有していてもよい。
端末装置40と建設作業計画支援サーバ20との相互通信回数は変更されてもよい(
図4/矢印X1~X6参照)。例えば、端末装置40から建設作業計画支援サーバ20への送信X1およびX3が単一の送信にまとめられ、建設作業計画支援サーバ20から端末装置40への別個の送信X2およびX4(または送信X2、X4およびX6)が単一の送信にまとめられてもよい。この場合、送信X5が省略されてもよい。また、端末装置40から建設作業計画支援サーバ20への送信X3が、複数の指定条件のそれぞれが指定されるごとの複数の送信に分割されてもよい。
【0080】
前記実施形態では、指定条件に第1指定条件および第2指定条件が含まれていたが、指定条件に第1指定条件のみが含まれていてもよい。
【0081】
クレーン10が資材Wの質量以上の定格荷重を有しているという「第3指定条件」が指定条件に含まれていてもよい。資材Wの質量に対応しているフックを有しているという「第4指定条件」が指定条件に含まれていてもよい。この場合、第1計画支援処理要素21により、端末入力インターフェース41を通じて入力された、あるいは、BIMデータベース28に登録されている資材Wの質量が認識される。例えば、120tの吊荷Wを吊る場合に、吊れるフック161、162として150tフックおよび200tフックが該当し、150tフックが選択された場合、130tまでは2本掛け、それ以上は3本掛けということになるので、2本掛けが選択される。選定されたフックに対応する巻き掛け数が指定数であることが第4指定条件に含まれていてもよい。
【0082】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、クレーン10が指定箇所に配置され、かつ、アタッチメント14が指定姿勢にある状態で(
図4参照)、資材Wを安定に吊り上げる観点から適当な機種のクレーン10のユーザによる選定作業、ひいてはクレーン10を用いた建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0083】
機種選定支援処理要素24が、指定条件を満たす機種のクレーンおよび指定箇所の組み合わせの有無を判定し、第2計画支援処理要素22が、機種選定支援処理要素24により指定条件を満たす機種のクレーンおよび指定箇所の組み合わせが存在すると判定された場合、当該機種のクレーンおよび当該指定箇所の組み合わせに関する情報を端末出力インターフェース42に出力させてもよい。この場合、第1計画支援処理要素21が、端末入力インターフェース41を通じて入力された指定箇所を認識し、機種選定支援処理要素24が、第1計画支援処理要素21により認識された指定箇所について指定条件を満たす機種のクレーンが存在しないと判定した場合、指定条件を満たす機種のクレーンおよび新たな指定箇所の組み合わせの有無を判定してもよい。
【0084】
これにより、例えば、
図7に示されているように、建造物Bの周囲における第1周辺領域A
1では地面の高さH
0等に鑑みて、機種T
1およびT
3のクレーンが指定条件を満たす適当なクレーンであり、建造物Bの周囲における第1周辺領域A
1とは別の第2周辺領域A
2では地面の高さH
0等に鑑みて、機種T
3およびT
5のクレーンが指定条件を満たす適当なクレーンであることを示す情報が端末出力インターフェース42に出力されうる。
【0085】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、資材Wを建造物Bの資材置場から吊り上げる等の観点から適当な機種のクレーンのユーザによる選定作業および当該クレーンの配置計画を含む建設計画作成作業の容易化が図られる。
【0086】
第1計画支援処理要素21が、建造物Bの空間占有態様と、建造物Bの周囲領域の地形と、資材Wの吊り上げ時の空間占有態様と、の時系列を認識し、機種選定支援処理要素24が、第1計画支援処理要素21により認識された当該時系列に基づき、指定条件を満たす機種のクレーンの時系列的な有無を判定し、第2計画支援処理要素22が、機種選定支援処理要素24による指定条件を満たす機種のクレーンの時系列的な有無に関する判定結果を端末出力インターフェース42に出力させてもよい。
【0087】
当該構成の建設作業計画支援装置によれば、仮想空間においてクレーン10が指定箇所に配置され、かつ、アタッチメント14が指定姿勢にある状態が時系列的に変化する場合でも、高さ方向について建造物Bと資材Wとの干渉を回避しながら、当該資材Wを吊り上げる等の観点から適当な機種のクレーンの時系列のユーザによる選定作業、ひいてはクレーンを用いた時系列的な建設計画作成作業の容易化が図られる。
【符号の説明】
【0088】
10‥クレーン、11‥下部走行体、12‥上部旋回体、14‥アタッチメント、20‥建設作業計画支援装置、21‥第1計画支援処理要素、22‥第2計画支援処理要素、24‥機種選定支援処理要素、28‥BIMデータベース、40‥端末装置、41‥端末入力インターフェース、42‥端末出力インターフェース、44‥端末制御装置、100‥実機制御装置、101‥センサ群、102‥実機操作機構、104‥駆動機構、124‥キャブ(運転室)、141‥ブーム、142‥ジブ、1021‥実機入力インターフェース、1022‥実機出力インターフェース。