(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】3軸荷重計測システム、3軸荷重計測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01L 5/16 20200101AFI20250508BHJP
【FI】
G01L5/16
(21)【出願番号】P 2021033788
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】岸 啓補
(72)【発明者】
【氏名】小幡 光一
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-274573(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159512(WO,A1)
【文献】特開2007-71559(JP,A)
【文献】特開昭61-90895(JP,A)
【文献】特開2010-112864(JP,A)
【文献】特開2016-31262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0219417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26、
5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の荷重がかかる
蓋部と、
前記蓋部と嵌合される身部と、を備える筐体と、
前記身部に設けられ、前記
蓋部に
荷重がかかることで前記蓋部と前記身部とが嵌合した際に、前記蓋部と接触することにより自身にかかる荷重の荷重値を計測する少なくとも3個の1軸荷重センサと、
変換行列を用いて、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値から前記
蓋部にかかる荷重の荷重値を算出する算出部と、
を備え、
前記1軸荷重センサの各々は、前記
蓋部と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて前記
蓋部と接触するように設けられ、
前記変換行列は、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値を前記
蓋部にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である、
3軸荷重計測システム。
【請求項2】
前記1軸荷重センサの各々は、前記対象物の大きさに応じた配置間隔で設けられる、
請求項1に記載の3軸荷重計測システム。
【請求項3】
前記
蓋部にかかる荷重の荷重値の真値と、当該荷重が前記
蓋部にかけられた際に前記1軸荷重センサの各々によって計測される荷重値とに基づき、前記変換行列を推定する推定部、
をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の3軸荷重計測システム。
【請求項4】
前記推定部は、外部装置によって前記
蓋部に荷重がかけられる場合、前記外部装置に設定される荷重値を前記真値とする、
請求項3に記載の3軸荷重計測システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記真値を取得する際にのみ前記
蓋部に設けられる3軸荷重センサに対して荷重がかけられる場合、前記3軸荷重センサが検出する荷重値を前記真値とする、
請求項3に記載の3軸荷重計測システム。
【請求項6】
算出部が、
対象物の荷重がかかる蓋部と、前記蓋部と嵌合される身部と、前記身部に設けられる少なくとも3個の1軸荷重センサとを備える筐体において、前記蓋部に荷重がかかることで前記蓋部と前記身部とが嵌合した際に、前記蓋部と接触することにより自身にかかる荷重の荷重値を計測する少なくとも3個の1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値から
、変換行列を用いて前記
蓋部にかかる荷重の荷重値を算出する過程、
を含み、
前記1軸荷重センサの各々は、前記
蓋部と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて前記
蓋部と接触するように設けられ、
前記変換行列は、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値を前記
蓋部にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である、
3軸荷重計測方法。
【請求項7】
コンピュータを、
対象物の荷重がかかる蓋部と、前記蓋部と嵌合される身部と、前記身部に設けられる少なくとも3個の1軸荷重センサとを備える筐体において、前記蓋部に荷重がかかることで前記蓋部と前記身部とが嵌合した際に、前記蓋部と接触することにより自身にかかる荷重の荷重値を計測する少なくとも3個の1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値から
、変換行列を用いて前記
蓋部にかかる荷重の荷重値を算出する算出手段、
として機能させ、
前記1軸荷重センサの各々は、前記
蓋部と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて前記
蓋部と接触するように設けられ、
前記変換行列は、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値を前記
蓋部にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3軸荷重計測システム、3軸荷重計測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の挙動を検知するヒューマンセンシングの分野において、各種センサを用いたセンシングが行われている。例えば、ベッド上における臥位や座席における座位、立位といった人間の状態に関する情報の取得において、荷重センサが用いられる場合がある。荷重センサには、例えば、1軸のみの荷重値を取得する1軸荷重センサ、3軸の荷重値を取得する3軸荷重センサ、3軸の荷重値と各軸周りのモーメントを取得する6軸荷重センサ等がある。
【0003】
一般的に、取得する情報量(軸数)が多くなるほど荷重センサの価格は高くなる。また、例えば体重計等に利用されている1軸荷重センサの起歪体に比べ、3軸荷重センサや6軸荷重センサの起歪体は複雑な形状である。そのため、軸数が多い荷重センサを用いた製品ほど製造コストが高くなり得る。また、荷重の計測対象の大きさによっては、同種の荷重センサが複数必要となる場合があり、この場合も製造コストが高くなり得る。
このように、軸数が多い荷重センサを用いた製品ほど、製造コストが高くなる。そのため、軸数が多く価格が高い荷重センサを用いた製品(技術)を一般に普及させることは困難である。
そこで、軸数が少ない荷重センサを複数組み合わせることで、軸数が多い荷重センサと同様の機能を実現する取り組みがなされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、複数の1軸荷重センサを組み合わせることで、3軸の荷重値を取得する技術が開示されている。即ち、当該技術では、複数の1軸荷重センサを組み合わせて3軸荷重センサと同様の機能を実現している。
【0005】
また、下記特許文献2には、複数の3軸荷重センサを組み合わせることで、3軸の荷重値及び各軸周りのモーメントの計6軸の情報を取得する技術が開示されている。即ち、当該技術では、複数の3軸荷重センサを組み合わせて6軸荷重センサと同様の機能を実現している。
【0006】
このように、軸数が少なく価格が安い荷重センサを複数組み合わせて用いることで、製造コストを抑えつつ、軸数が多い荷重センサと同様の機能を実現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-116546号公報
【文献】特開2020-85810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、荷重センサの方向が既知であることが前提となっている。例えば、荷重センサが取り付けられている角度が既知である必要がある。荷重センサが配置される角度は予め設定される角度である。設定された角度と、荷重センサが実際に取り付けられた角度に誤差があると、3軸の荷重値の算出に誤差が生じ得る。そのため、荷重センサは、設定された角度で正確に取り付けられる必要があり、荷重センサの取り付けに高い加工精度が求められる。求められる加工精度が高くなるほど荷重センサの取り付けに必要な工数が増えるため、製造コストが高くなってしまう。
【0009】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、荷重センサの取り付けに求められる加工精度を抑えることで製造コストを抑えることが可能な3軸荷重計測システム、3軸荷重計測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る3軸荷重計測システムは、対象物の荷重がかかる蓋部と、前記蓋部と嵌合される身部と、を備える筐体と、前記身部に設けられ、前記蓋部に荷重がかかることで前記蓋部と前記身部とが嵌合した際に、前記蓋部と接触することにより自身にかかる荷重の荷重値を計測する少なくとも3個の1軸荷重センサと、変換行列を用いて、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値から前記蓋部にかかる荷重の荷重値を算出する算出部と、を備え、前記1軸荷重センサの各々は、前記蓋部と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて前記蓋部と接触するように設けられ、前記変換行列は、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値を前記蓋部にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である。
【0011】
本発明の一態様に係る、3軸荷重計測方法は、算出部が、対象物の荷重がかかる蓋部と、前記蓋部と嵌合される身部と、前記身部に設けられる少なくとも3個の1軸荷重センサとを備える筐体において、前記蓋部に荷重がかかることで前記蓋部と前記身部とが嵌合した際に、前記蓋部と接触することにより自身にかかる荷重の荷重値を計測する少なくとも3個の1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値から、変換行列を用いて前記蓋部にかかる荷重の荷重値を算出する過程、を含み、前記1軸荷重センサの各々は、前記蓋部と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて前記蓋部と接触するように設けられ、前記変換行列は、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値を前記蓋部にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、対象物の荷重がかかる蓋部と、前記蓋部と嵌合される身部と、前記身部に設けられる少なくとも3個の1軸荷重センサとを備える筐体において、前記蓋部に荷重がかかることで前記蓋部と前記身部とが嵌合した際に、前記蓋部と接触することにより自身にかかる荷重の荷重値を計測する少なくとも3個の1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値から、変換行列を用いて前記蓋部にかかる荷重の荷重値を算出する算出手段、として機能させ、前記1軸荷重センサの各々は、前記蓋部と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて前記蓋部と接触するように設けられ、前記変換行列は、前記1軸荷重センサの各々によって計測された荷重値を前記蓋部にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、荷重センサの取り付けに求められる加工精度を抑えることで製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る3軸荷重計測システムの装置構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る荷重部10の装置構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る基盤部20の装置構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る1軸荷重センサの計測値の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る1軸荷重センサと配置の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る1軸荷重センサと配置の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る1軸荷重センサと配置の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る3軸荷重計測システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係るデータセットの取得方法の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る3軸荷重計測システムにおけるデータセット取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態に係る3軸荷重計測システムにおける荷重算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態に係る変形例における3軸荷重計測システムの装置構成の一例を示す図である。
【
図13】本実施形態に係る変形例における3軸荷重計測システムの装置構成の一例を示す図である。
【
図14】本実施形態に係る3軸荷重計測システムの具体例の一例を示す図である。
【
図15】本実施形態に係る3軸荷重計測システムの適用例の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、図面には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0016】
<1.3軸荷重計測システムの装置構成>
図1から
図7を参照して、本実施形態に係る3軸荷重計測システムの装置構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る3軸荷重計測システムの装置構成の一例を示す図である。
図1に示すように、3軸荷重計測システム1は、例えば蓋部10及び身部20を備える箱型の装置である。
【0017】
(1)蓋部10
蓋部10は、対象物の荷重がかかる部(以下、「荷重部10」とも称される)である。例えば、3軸荷重計測システム1は、面11に対して対象物が接するように使用される。そのため、面11は、対象物の荷重Fがかかる面(以下、「荷重面11」とも称される)である。
【0018】
ここで、
図2を参照して、荷重部10の装置構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る荷重部10の装置構成の一例を示す図である。
図2には、
図1に示した荷重部10における荷重面11の反対側にある面12(Z軸の負方向から見た面)が示されている。面12は、身部20に設けられる1軸荷重センサと接触する面(以下、「接触面12」とも称される)である。
【0019】
図2に示すように、接触面12には、接触板13、接触板14、接触板15が設けられる。接触板13~15は、身部20に設けられる1軸荷重センサと接触する板である。接触板13~15の各々は、蓋部10と身部20とが嵌合された際に、身部20に設けられる1軸荷重センサと接触するように設けられる。例えば、接触板13~15の各々は、各々が接触させられる1軸荷重センサと対応する位置に設けられる。又、接触面12において接触板13~15が配置される各々の位置は傾斜を有し、当該傾斜は、身部20において1軸荷重センサが設けられる位置の傾斜に合わせて設定される。
【0020】
蓋部10が上述の構成であることにより、荷重部10の面11に対して荷重がかけられると、接触板13~15の各々と接触している1軸荷重センサの各々に対して、面11にかけられた荷重に対応する荷重がかかる。
【0021】
蓋部10には、身部20に設けられる1軸荷重センサと同じ数だけ、接触板が設けられる。本実施形態の身部20には、少なくとも3個の1軸荷重センサが設けられる。よって、本実施形態の蓋部10には、少なくとも3個の接触板が設けられる。
なお、蓋部10に設けられる接触版の数は、少なくとも3個以上かつ身部20に設けられる1軸荷重センサの数と同数であれば、その数は特に限定されない。
【0022】
(2)身部20
身部20は、各種部品が設けられる基盤を有する部(以下、「基盤部20」とも称される)である。
【0023】
ここで、
図3を参照して、基盤部20の装置構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る基盤部20の装置構成の一例を示す図である。
図3には、
図1に示した基盤部20をZ軸の正方向から見た面21が示されている。面21は、身部20において各種部品が設けられる面(以下、「基盤面21」とも称される)である。
図3に示すように、基盤面21には、制御装置22、1軸荷重センサ23、1軸荷重センサ24、及び1軸荷重センサ25が設けられる。制御装置22と1軸荷重センサ23~25の各々は、有線通信又は無線通信によって通信可能に接続されている。
【0024】
制御装置22は、3軸荷重計測システム1の動作全般を制御する装置である。制御装置22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
【0025】
1軸荷重センサ23~25は、1軸の荷重値を計測するセンサ装置である。1軸荷重センサ23~25は、荷重部10にかかる荷重により自身にかかる荷重の荷重値を計測する。1軸荷重センサ23~25の各々は、計測した荷重値を制御装置22へ送信する。
【0026】
1軸荷重センサ23~25の各々は、荷重部10と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて荷重部10と接触するように設けられる。
例えば、1軸荷重センサ23~25の各々は、基盤面21に対して、互いに異なる傾斜で設けられる。具体的に、基盤面21において1軸荷重センサ23~25の各々が配置される位置の面に傾斜を持たせ、それぞれの面に1軸荷重センサが配置される。
なお、1軸荷重センサが設けられる位置の傾斜の度合(角度)の大きさは、各1軸荷重センサが互いに異なる方向を向く角度であれば特に限定されない。例えば、1軸荷重センサ23~25が互いに異なる方向を向いていれば、それぞれの1軸荷重センサが設けられている面と基準面とのなす角度の大きさはそれぞれ同じであってもよい。
【0027】
以下、本実施形態では、
図3に示すように、3軸荷重計測システム1が3個の1軸荷重センサを備える例について説明するが、軸荷重計測システム1が備える1軸荷重センサの数は、少なくとも3個以上であれば、その数は特に限定されない。
【0028】
ここで、
図4を参照して、1軸荷重センサの計測値について説明する。
図4は、本実施形態に係る1軸荷重センサと荷重の関係の一例を示す図である。以下、1軸荷重センサの荷重を検出する検出面に対して垂直である主軸方向の成分を主軸成分Nとする。また、1軸荷重センサが計測する荷重の荷重値は、計測値Lとする。
図4には、一例として、1軸荷重センサ23の計測値の一例が示されている。対象物の荷重Fが荷重部10にかかったことに伴い、
図4に示すように1軸荷重センサ23の荷重を検出する検出面231に対して、傾斜θ
1を有する荷重F
1がかかったとする。1軸荷重センサの計測値は、検出面に対して垂直である主軸方向の成分である主軸成分Nに反応する。即ち、1軸荷重センサ23の計測値は、主軸成分N
1に反応する。
よって、検出面231に荷重F
1がかかった際に1軸荷重センサ23が計測する計測値L
1は、以下の(1)式に示すように、主軸方向と荷重方向の内積で表される。なお、以下の(1)式におけるkは、単位変換係数である。単位変換係数kは、1軸荷重センサ23が計測した電流値(A)を力の大きさ(N)に変換するための係数である。
【0029】
【0030】
なお、1軸荷重センサ24の計測値L2及び1軸荷重センサ25の計測値L3も同様にして、上記の(1)式のように表される。
【0031】
ここで、
図5から
図7を参照して、基盤部20における1軸荷重センサ23~25の配置について説明する。
図5~
図7は、本実施形態に係る1軸荷重センサの配置の一例を示す図である。
【0032】
図5は、3個の1軸荷重センサ23~25の配置の全体像を示す図である。
図5に示すように、1軸荷重センサ23~25は、それぞれ傾斜を有するように設けられる。この時、各1軸荷重センサは、各1軸荷重センサの主軸方向ベクトル(N
1~N
3)が同一平面上に存在しないように配置される。
【0033】
図6は、
図5におけるX軸の正方向から見た1軸荷重センサ23の配置を示す図である。
図6には、一例として、1軸荷重センサ23における傾斜の一例が示されている。
図6に示すように、例えば、1軸荷重センサ23は、傾斜角度θ
11を有するように基盤面21に配置される。1軸荷重センサ24及び1軸荷重センサ25の場合も同様に、それぞれ傾斜角度θ
12(不図示)、傾斜角度θ
13(不図示)を有するように配置される。なお、傾斜角度θ
11~θ
13は、任意の角度でよく、所定の角度を意図的に設定する必要はない。
【0034】
図7は、
図5におけるX軸の正方向から見た1軸荷重センサ23~25の配置の全体像を示す図である。
図7に示すように、1軸荷重センサ23~25は、それぞれ傾斜(傾斜角度θ
11~θ
13)を有するように設けられる。この時、各1軸荷重センサは、各1軸荷重センサの主軸方向ベクトル(N
1~N
3)が同一平面上に存在しないように配置される。また、
図7に示すように各1軸荷重センサは、1軸荷重センサ23と1軸荷重センサ24との間の角度がθ
21、1軸荷重センサ24と1軸荷重センサ25との間の角度がθ
22、1軸荷重センサ25と1軸荷重センサ23との間の角度がθ
23となるように配置される。なお、角度θ
21~θ
23は、任意の角度でよく、所定の角度を意図的に設定する必要はない。
【0035】
ここで、1軸荷重センサをn個(n≧3)用いる場合、上述した(1)式は、以下の(2)式で表される。なお、(2)式において、Lnは1軸荷重センサnの計測値、knは1軸荷重センサnの変換係数、Nnは1軸荷重センサnの主軸ベクトルを示す。
【0036】
【0037】
また、主軸ベクトルNnは、以下の(3)式のように行列Mで表される。
【0038】
【0039】
上述した(3)式のように主軸ベクトルNnを行列Mで表すことにより、3軸荷重計測システム1にかかる荷重Fと1軸荷重センサの計測値Lの関係は、行列Mと荷重ベクトルFの積によって以下の(4)式で表される。
【0040】
【0041】
なお、本実施形態のように3個の1軸荷重センサを用いる場合、上述した(3)式と(4)式は、それぞれ以下の(5)式と(6)式のように表すことができる。
【0042】
【0043】
【0044】
上述した(4)式より、3軸荷重計測システム1にかかる荷重Fは、1軸荷重センサの計測値Lと行列Mの逆行列M-1とにより算出可能である。従来のように、(4)式を用い荷重Fを算出する場合、各1軸荷重センサの主軸成分Nの取得が必要となる。しかしながら、主軸成分Nを取得するためには、1軸荷重センサが取り付けられた角度が既知の情報として必要となる。この場合、特許文献1や特許文献2の技術のように、各1軸荷重センサが予め設定された角度にて高精度に取り付けられる必要があり、製造コストの増加に影響してしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、1軸荷重センサが取り付けられた角度を既知の情報として用いることなく、3軸荷重計測システム1にかかる荷重Fの荷重値を算出することを可能とする。
例えば、3軸荷重計測システム1は、本実施形態では、荷重値が既知である荷重Fを荷重部10にかけた際に、各1軸荷重センサによって計測される計測値L(荷重値)と、既知の荷重Fの荷重値とのデータセットを予め取得しておく。
3軸荷重計測システム1は、荷重値が未知である荷重Fが3軸荷重計測システム1にかけられた際に各1軸荷重センサが計測する荷重値に近い荷重値を含むデータセットを用いて、上述した(4)式より逆行列M-1を推定する。
そして、3軸荷重計測システム1は、推定した逆行列M-1と各1軸荷重センサが計測した計測値Lを用いて、(4)式より荷重Fの荷重値を算出する。(4)式では、逆行列M-1によって、各1軸荷重センサが計測した計測値Lが3軸荷重計測システム1にかかる荷重Fに変換される。即ち、逆行列M-1は、計測値Lを荷重Fに変換する行列(以下、「変換行列」とも称される)である。
【0046】
このように、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1は、各1軸荷重センサの計測値を変換行列によってキャリブレーションすることで、1軸荷重センサが取り付けられた角度を既知の情報として用いることなく、3軸荷重計測システム1にかかる荷重Fの荷重値を算出する。
【0047】
<2.3軸荷重計測システムの機能構成>
以上、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1の装置構成について説明した。
続いて、
図8から
図11を参照して、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1の機能構成について説明する。
図8は、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1の機能構成の一例を示す図である。
図8に示すように、3軸荷重計測システム1は、通信部110、データ取得部120、推定部130、算出部140、出力処理部150、及び記憶部160を備える。通信部110、データ取得部120、推定部130、算出部140、出力処理部150、及び記憶部160の機能は、例えば、3軸荷重計測システム1がハードウェアとして備える制御装置22によって実現される。
【0048】
(1)通信部110
通信部110は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部110は、有線通信又は無線通信によって3軸荷重計測システム1に接続される外部装置と通信を行い、各種情報の送受信を行う。
【0049】
(2)データ取得部120
データ取得部120は、各種情報を取得する機能を有する。例えば、データ取得部120は、変換行列の推定に用いられるデータセットを取得する。データ取得部120は、取得したデータセットを記憶部160に書き込んで記憶させる。
なお、データ取得部120は、データセットとして取得する既知の荷重の荷重値を、変換行列の推定における真値として取得する。
【0050】
データセットの取得方法の一例として、既知の荷重ベクトルを3軸荷重計測システム1の各1軸荷重センサに加える方法と、適当な荷重を3軸荷重センサと3軸荷重計測システム1の各1軸荷重センサに加える方法がある。
【0051】
まず、既知の荷重ベクトルを3軸荷重計測システム1の各1軸荷重センサに加える方法について説明する。
当該方法では、例えば、3軸荷重計測システム1をアングルバイス等の固定装置に固定した上で、3軸荷重計測システム1に対してフォースゲージ等の圧縮試験機(外部装置の一例)で既知の荷重を与える。アングルバイスは、角度を指定して姿勢を保持する器具である。また、圧縮試験機は、鉛直方向に与えられた数値で荷重を掛けることを可能とする実験機器である。
【0052】
当該方法の場合、データ取得部120は、圧縮試験機によって与えられる既知の荷重の荷重値を真値として取得する。データ取得部120は、例えば、通信部110を介した通信によって、圧縮試験機や、ユーザによって既知の荷重の荷重値が入力されたユーザ端末等から既知の荷重の荷重値を取得する。そして、データ取得部120は、取得した既知の荷重の荷重値と、1軸荷重センサ23~25の各々が計測した計測値を1組のデータセットとして取得し、記憶部160に書き込んで記憶させる。
【0053】
ユーザは、データ取得部120が1組のデータセットを取得するごとに、アングルバイスの水平角度及び垂直角度を変化させ、それぞれの角度において圧縮試験機によって3軸荷重計測システム1に荷重を掛ける。この時、圧縮試験機によってかけられる荷重の荷重値も変化させてよい。これにより、データ取得部120は、複数のデータセットを大量に取得することができる。データ取得部120によって取得されるデータセットの数が多いほど、後述する推定部130による推定の精度を向上することができる。
【0054】
続いて、
図9を参照して、適当な荷重を3軸荷重センサと3軸荷重計測システム1の各1軸荷重センサに加える方法について説明する。
図9は、本実施形態に係るデータセットの取得方法の一例を示す図である。
【0055】
図9に示すように、例えば、3軸荷重計測システム1の荷重部10の荷重面11に対して、3軸荷重センサ30を固定して設ける。この状態で3軸荷重センサ30に対して荷重を加えると、3軸荷重センサ30と3軸荷重計測システム1の荷重部10に対して同じ力がかかる。荷重部10にかかった荷重は、基盤部20の1軸荷重センサ23~25の各々にもかかる。
3軸荷重センサ30は、ケーブル40によって、基盤部20の制御装置22と接続されている。3軸荷重センサ30が計測した計測値は、ケーブル40を介して制御装置22へ送信される。これにより、データ取得部120は、3軸荷重センサ30が計測した計測値を取得することができる。
【0056】
当該方法の場合、データ取得部120は、3軸荷重センサが計測する計測値を荷重の荷重値の真値として取得する。そして、データ取得部120は、3軸荷重センサが計測した荷重の荷重値と、1軸荷重センサ23~25の各々が計測した計測値を1組のデータセットとして取得し、記憶部160に書き込んで記憶させる。
【0057】
ユーザは、データ取得部120が1組のデータセットを取得するごとに、3軸荷重センサ30に加える荷重の方向と大きさを変化させる。これにより、データ取得部120は、複数のデータセットを大量に取得することができる。データ取得部120によって取得されるデータセットの数が多いほど、後述する推定部130による推定の精度を向上することができる。
【0058】
なお、当該方法において、3軸荷重センサ30は、あくまでデータセットを取得するために一時的に3軸荷重計測システム1に設けられ、データセットの取得後には3軸荷重計測システム1から取り外される。他の3軸荷重計測システム1のデータセットを取得する際には、同一の3軸荷重センサ30を使い回してよい。また、3軸荷重計測システム1は、3軸荷重センサ30が取り付けられたまま製品として出荷されるものではない。よって、本実施形態では、3軸荷重計測システム1の製造において、3軸荷重センサ30はデータセットの取得に最低限必要な台数だけ用意されればよいため、3軸荷重センサ30の用意にかかるコストを抑えることができる。
【0059】
データセットを取得するためのいずれの方法においても、3軸荷重計測システム1に力を加える作業を機械によって自動化することが可能である。例えば、ロボットアームを用いることで、後述する推定部130における変換行列の推定方法に適した、十分にランダムなデータセットを取得することが可能である。
【0060】
また、3軸荷重計測システム1は、実運用において、実際の利用状況により近い状況にて取得されたデータセットを用いてキャリブレーションを行うことで、キャリブレーションの精度即ち荷重の算出の精度をより高めることができる。そのため、データセットの取得は、3軸荷重計測システム1の実際の利用状況を想定した状況にて取得されることが望ましい。
【0061】
また、データ取得部120は、荷重部10にかけられた荷重の算出に用いられる、1軸荷重センサ23~25の各々が計測した計測値を取得する。
データ取得部120は、取得した計測値を記憶部160に書き込んで記憶させる。
【0062】
(3)推定部130
推定部130は、変換行列を推定する機能を有する。変換行列は、1軸荷重センサ23~25の各々によって計測された荷重値の計測値Lを、荷重部10にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である。
【0063】
例えば、推定部130は、データ取得部120によって取得された計測値に基づき、当該計測値により近い値を含むデータセットを記憶部160から取得する。推定部130は、記憶部160から取得したデータセットを用いて、変換行列を推定する。推定後、推定部130は、推定した変換行列を算出部140へ出力する。なお、推定部130は、推定した変換行列を、推定に用いたデータセットに対応付けて、記憶部160に書き込んで記憶させてもよい。
【0064】
具体的に推定部130は、取得したデータセットに含まれる、荷重部10にかけられた荷重の荷重値の真値と、当該荷重が荷重部10にかけられた際に1軸荷重センサ23~25の各々によって計測された荷重値を用いて、変換行列を推定する。
既知の荷重ベクトルを3軸荷重計測システム1の各1軸荷重センサに加える方法によって取得されたデータセットを用いる場合、推定部130は、荷重部10に荷重をかける外部装置に設定された荷重値を真値として用いる。また、適当な荷重を3軸荷重センサと3軸荷重計測システム1の各1軸荷重センサに加える方法によって取得されたデータセットを用いる場合、推定部130は、真値を取得する際にのみ荷重部10に設けられる3軸荷重センサ30が検出した荷重値を真値として用いる。
【0065】
推定部130は、例えば、RANSAC(Random Sample Consensus)やLMedS等のロバスト推定や機械学習といった統計的手法によって、変換行列を推定する。
【0066】
(4)算出部140
算出部140は、荷重部10にかかる荷重の荷重値を算出する機能を有する。例えば、算出部140は、変換行列を用いて、荷重部10にかかる荷重の荷重値を算出する。具体的に、算出部140は、推定部130が推定した変換行列(逆行列M-1)と、1軸荷重センサ23~25の各々によって計測された荷重値(計測値L)を用いて、上述した(4)式より、荷重部10にかかる荷重Fの荷重値を算出する。
【0067】
(5)出力処理部150
出力処理部150は、各種情報の出力を行う機能を有する。例えば、出力処理部150は、1軸荷重センサ23~25によって計測された計測値や、算出部140によって算出された荷重部10にかかる荷重Fの荷重値を、3軸荷重計測システム1に接続された外部装置(例えばサーバ装置等)へ送信する。
【0068】
(6)記憶部160
記憶部160は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部160は、例えば、データ取得部120によって取得されたデータセットを記憶する。また、記憶部160は、推定部130によって推定された変換行列をデータセットに対応付けて記憶してもよい。
【0069】
記憶部160は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0070】
<3.処理の流れ>
本実施形態に係る3軸荷重計測システム1の機能構成について説明した。
続いて、
図10及び
図11を参照して、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1における処理の流れについて説明する。
【0071】
(1)データセット取得処理
図10を参照して、本実施形態に係るデータセット取得処理について説明する。
図10は、本実施形態に係る3軸荷重計測システムにおけるデータセット取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0072】
図10に示すように、まず、3軸荷重計測システム1のデータ取得部120は、データセットの取得のために荷重部10にかけられた荷重Fの荷重値を、真値として取得する(ステップS101)。
次いで、データ取得部120は、当該荷重Fが荷重部10にかけられた際に1軸荷重センサ23~25の各々が計測した計測値を取得する(ステップS102)。
そして、データ取得部120は、取得した真値と計測値を1組のデータセットとして、記憶部160に書き込んで記憶させる(ステップS103)。
【0073】
なお、データ取得部120は、複数のデータセットを取得する場合には、ステップS101からステップS103の処理を複数回繰り返し行ってもよい。
【0074】
(2)荷重算出処理
図11を参照して、本実施形態に係る荷重算出処理について説明する。
図11は、本実施形態に係る3軸荷重計測システムにおける荷重算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
図11に示すように、まず、3軸荷重計測システム1のデータ取得部120は、荷重値の算出対象である荷重が荷重部10にかけられた際に1軸荷重センサ23~25の各々が計測した計測値を取得する(ステップS201)。
【0076】
次いで、3軸荷重計測システム1の推定部130は、データ取得部120が取得した計測値により近い値を含むデータセットを記憶部160から取得する(ステップS202)。
次いで、3軸荷重計測システム1の推定部130は、記憶部160から取得したデータセットを用いて、変換行列を推定する(ステップS203)。
【0077】
そして、3軸荷重計測システム1の算出部140は、データ取得部120によって取得された計測値と、推定部130によって推定された変換行列を用いて、荷重部10にかけられた荷重の荷重値を算出する(ステップS204)。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1は、荷重部10と、少なくとも3個の1軸荷重センサ23~25と、算出部140とを備える。
荷重部10は、対象物の荷重がかかる部である。
少なくとも3個の1軸荷重センサ23~25は、荷重部10にかかる荷重により自身にかかる荷重の荷重値を計測する。なお、1軸荷重センサ23~25の各々は、荷重部10と接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて荷重部10と接触するように設けられる。
算出部140は、変換行列を用いて、1軸荷重センサ23~25の各々によって計測された荷重値から荷重部10にかかる荷重の荷重値を算出する。なお、変換行列は、1軸荷重センサ23~25の各々によって計測された荷重値を荷重部10にかかる荷重の3軸方向の荷重値に変換する行列である。
【0079】
かかる構成により、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1は、1軸荷重センサが取り付けられた角度を既知の情報として用いることなく、3軸荷重計測システム1にかかる荷重Fの荷重値を算出することができる。そのため、本実施形態では、1軸荷重センサ23~25は、基盤部20に対して設定された角度で正確に取り付けられる必要がない。これにより、1軸荷重センサの取り付けに高い加工精度が求められないため、従来のように1軸荷重センサの取り付けに高い加工精度が求められる場合と比較して、荷重センサの取り付けに必要な工数を抑えることができる。
【0080】
よって、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1は、荷重センサの取り付けに求められる加工精度を抑えることで製造コストを抑えることを可能とする。
【0081】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。
続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0082】
上述の実施形態では、3軸荷重計測システム1に必要な3個の1軸荷重センサが、全て1つの基盤部20に対して設けられる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、1つの1軸荷重センサのみが設けられた基盤部20と当該基盤部20に対応する荷重部10のセットを少なくとも3つ用意することで、上述した実施形態における3軸荷重計測システム1と同様の機能を実現してもよい。
【0083】
例えば、対象物の大きさが
図1に示した3軸荷重計測システム1の筐体よりも大きく、当該3軸荷重計測システム1を1つのみ用いた計測が困難である場合に、本変形例は有効である。この場合、1つの1軸荷重センサのみが設けられた基盤部20と当該基盤部20に対応する荷重部10とを1組のセットとし、複数のセットが対象物の大きさに応じた配置間隔で設けられる。なお、
図1に示した3軸荷重計測システム1を複数用いることで、当該3軸荷重計測システム1を1つのみ用いた計測が困難な対象物に対応することは可能である。
【0084】
しかしながら、
図1に示した3軸荷重計測システム1を複数用いる場合、対象物を支えるために少なくとも3個の3軸荷重計測システム1が必要となる。この場合、少なくとも9個の1軸荷重センサを用いることになる。
一方、本変形例に示すセットを複数用いる場合、対象物を支えるために少なくとも3個のセットが必要となる。この場合、少なくとも3個の1軸荷重センサを用いることになる。
【0085】
よって、対象物の大きさが
図1に示した3軸荷重計測システム1の筐体よりも大きく、当該3軸荷重計測システム1を1つのみ用いた計測が困難である場合、当該3軸荷重計測システム1を複数用いるよりも本変形例に示すセットを複数用いる方が、1軸荷重センサの数が少なくて済む。よって、本変形例に示すセットを複数用いることでコストを抑えることができる。
【0086】
ここで、
図12及び
図13を参照して、本変形例の具体例について説明する。
図12及び
図13は、本実施形態に係る変形例における3軸荷重計測システムの装置構成の一例を示す図である。
図12は対象物がベッドであり、
図13は対象物が椅子である例が示されている。
【0087】
図12と
図13に示すように、変形例における3軸荷重計測システム1Aは、筐体60A~60Dを備える。筐体60A~60Dは、それぞれ、荷重部61A~61Dと基盤部62A~62Dが嵌合された装置である。
【0088】
基盤部62A~62Dには、それぞれ1つずつ1軸荷重センサ(不図示)が設けられている。各1軸荷重センサは、荷重部61A~61Dと接触する面が他の1軸荷重センサとは異なる方向を向いて荷重部10と接触するように設けられる。各1軸荷重センサの向きは、例えば、基盤部62A~62Dにおける1軸荷重センサが配置される面の傾斜を調整することで、それぞれ異なるように調整される。また、各1軸荷重センサの向きは、例えば、筐体60A~60Dを配置する向きを調整することでそれぞれ異なるように調整されてもよい。
【0089】
図12に示すベッド50が有する4本の脚は、それぞれ荷重部61A~61Dの上にのせられている。また、
図13に示す椅子70が有する4本の脚も同様に、それぞれ荷重部61A~61Dの上にのせられている。これにより、変形例における3軸荷重計測システム1Aは、各筐体60A~60Dが計測した荷重値の計測値に基づき、上述の実施形態における3軸荷重計測システム1と同様にして、対象物の荷重を算出することができる。
【0090】
なお、
図12及び
図13に示す3軸荷重計測システム1Aでは、各基盤部62A~62Dに設けられている制御装置の内、いずれかの制御装置にて各筐体60A~60Dによって計測された計測値に基づく荷重値の算出が行われてもよい。また、3軸荷重計測システム1Aは、サーバ等の外部装置(不図示)を別途備え、当該外部装置にて各筐体60A~60Dによって計測された計測値に基づく荷重値の算出が行われてもよい。
【0091】
<5.具体例>
以上、本発明の実施形態の変形例について説明した。
続いて、
図14を参照して、本発明の実施形態に係る具体例について説明する。
図14は、本実施形態に係る3軸荷重計測システムの具体例の一例を示す図である。
図14には、
図1に示した3軸荷重計測システム1の荷重部10に対して、約1.5kgの荷重をかけた際のキャリブレーションの結果が示されている。
図14に示すグラフの縦軸は荷重(g)を示し、横軸は経過時間(sec)を示す。また、
図14に示す実線のグラフは3軸荷重計測システム1が算出した荷重の推定値の時系列変化を示し、破線のグラフは荷重の真値の時系列変化を示している。
図14に示す各グラフより、3軸荷重計測システム1は、一部の時間を除いて、真値と大きな誤差が生じることなく荷重値の推定を行うことができている。
【0092】
<6.適用例>
以上、本発明の実施形態の具体例について説明した。
続いて、
図15を参照して、本発明の適用例について説明する。
図15は、本実施形態に係る3軸荷重計測システム1の適用例の一例を示す図である。
図15には、3軸荷重計測システム1がベッドセンシングシステム1000に適用される例が示されている。なお、ベッドセンシングシステム1000に適用される3軸荷重計測システムは、変形例にて説明した3軸荷重計測システム1Aであってもよい。
【0093】
図15に示すように、ベッドセンシングシステム1000は、ベッド1001の各脚の下に設けられた複数の3軸荷重計測システム1、無線通信装置1002、アクセスポイント1003、サーバ1004、クラウドサーバ1005、及びユーザ端末1006を備える。
【0094】
ベッド1001は、例えば医療現場向けのベッドや、介護現場向けのベッドや、一般ヘルスケア向けのベッドであるが、かかる例に限定されない。
無線通信装置1002は、無線通信を行う装置である。無線通信装置1002が用いる無線通信規格は、例えば、無線LANである。具体的な無線LANの規格は、例えばWi-Fi(登録商標)である。また、無線通信装置1002が用いる無線通信規格は、LPWA(Low Power Wide Area)であってもよい。具体的なLPWAの規格は、例えばZETA(ゼタ)である。なお、無線通信装置1002が用いる無線通信規格は、無線LAN(Wi-Fi)やLPWA(ZETA)に限定されない。
無線通信装置1002とアクセスポイント1003との間は、無線通信によって接続されている。アクセスポイント1003とサーバ1004との間、サーバ1004とクラウドサーバ1005との間、クラウドサーバ1005とユーザ端末1006との間は、例えばインターネットによって接続されている。
【0095】
図15に示すように、複数の3軸荷重計測システム1は、それぞれベッド1001の各脚の下に設けられている。複数の3軸荷重計測システム1は、例えば、ベッド1001に寝ている人の体位が変化した際の荷重を算出する。当該人は、例えば、医療現場であれば患者であり、介護現場であれば被介護者である。
各3軸荷重計測システム1が算出した荷重を示す情報(以下、「荷重情報」とも称される)は、無線通信装置1002へ送信される。
【0096】
無線通信装置1002は、各3軸荷重計測システム1から受信した荷重情報を、アクセスポイント1003を介して、サーバ1004へ送信する。
サーバ1004は、無線通信装置1002から受信した荷重情報をクラウドサーバ1005へ送信する。
【0097】
クラウドサーバ1005は、サーバ1004から受信する荷重情報を蓄積する。クラウドサーバ1005は、ユーザ端末1006から要求があった場合には、蓄積している荷重情報をユーザ端末1006へ送信する。
【0098】
ユーザ端末1006は、ユーザが用いる端末である。ユーザは、例えば医師である。医師は、例えば、ユーザ端末1006を用いて、クラウドサーバ1005に蓄積された患者の荷重情報を参照する。医師は、参照した荷重情報を、例えばベッド1001に寝ている患者の挙動や姿勢の推定に応用することができる。
【0099】
以上、本発明の適用例について説明した。なお、上述した実施形態における3軸荷重計測システム1が備える構成の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0100】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1、1A 3軸荷重計測システム
10、61A~61D 荷重部(蓋部)
11 荷重面
12 接触面
13~15 接触板
20、62A~62D 基盤部(身部)
21 基盤面
22 制御装置
23~25 1軸荷重センサ
30 3軸荷重センサ
40 ケーブル
50 ベッド
60A~60D 筐体
70 椅子
110 通信部
120 データ取得部
130 推定部
140 算出部
150 出力処理部
160 記憶部
1000 ベッドセンシングシステム
1001 ベッド
1002 無線通信装置
1003 アクセスポイント
1004 サーバ
1005 クラウドサーバ
1006 ユーザ端末