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特許7676911解析支援方法、該プログラムおよび解析支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】解析支援方法、該プログラムおよび解析支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/27 20200101AFI20250508BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250508BHJP
【FI】
G06F30/27
G06N20/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021074799
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169033
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】目良 貢
(72)【発明者】
【氏名】本田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇勝
(72)【発明者】
【氏名】松村 広隆
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮島 陽一
(72)【発明者】
【氏名】西原 剛史
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-194414(JP,A)
【文献】特開2018-142272(JP,A)
【文献】特開2020-194242(JP,A)
【文献】特開2008-009548(JP,A)
【文献】特開2019-184597(JP,A)
【文献】特開2020-184171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G06N 3/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行される解析支援方法であって
所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング工程とを備え、
前記スパースモデリングには、エラスティックネット(Elastic net)が用いられ
前記エラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータを入力して設定する入力設定工程と
前記複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を選定し、前記選定したモデル用画像を前記良好な解析値と対応付けて所定数だけ複製することによって前記所定数の複製画像を生成する複製工程とをさらに備え
前記スパースモデリング工程で用いる複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値には、前記複製工程で生成した前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した前記複数の良好な解析値が含まれる、
解析支援方法。
【請求項2】
前記データ取得工程で取得した複数のモデル用画像は、互いに異なる複数の時点における時系列な複数の画像である、
請求項1記載の解析支援方法。
【請求項3】
前記スパースモデリング工程は、前記時系列な複数のモデル用画像を一括に用いたスパースモデリングによって1個の前記解析モデルを求める、
請求項に記載の解析支援方法。
【請求項4】
表示を行う表示工程をさらに備え、
前記表示工程は、
前記スパースモデリング工程で求めた解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、
前記各画素の各画素値それぞれについて、複数の画素値と前記解析値の増減に影響を与える程度の大きさに応じた複数のカテゴリとを互いに対応付けたカテゴリ対応関係に基づいて当該画素値に対応するカテゴリに変換し、前記複数のカテゴリと互いに異なる複数の表示態様とを互いに対応付けた表示対応関係に基づいて前記変換したカテゴリに対する表示態様を選定することによって、
各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換し、
前記変換した表示用解析ツール画像を表示する、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の解析支援方法。
【請求項5】
表示を行う表示工程をさらに備え、
前記表示工程は、
前記スパースモデリング工程で求めた解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、
前記各画素の各画素値それぞれについて、複数の画素値と、前記解析値の増減に影響を与える程度の大きさに応じた複数のカテゴリそれぞれの互いに異なる複数の表示態様と、を互いに対応付けたカテゴリ表示対応関係に基づいて表示態様を選定することによって、
各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換し、
前記変換した表示用解析ツール画像を表示する、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の解析支援方法。
【請求項6】
時系列な複数の解析画像を取得する解析画像取得工程をさらに備え、
前記表示工程は、前記表示用解析ツール画像を重畳させながら、前記解析画像取得工程で取得した時系列な複数の解析画像を順次に表示する、
請求項もしくは請求項を引用する請求項、または、請求項もしくは請求項を引用する請求項に記載の解析支援方法。
【請求項7】
前記モデル用画像は、前記解析対象における互いに異なる複数の箇所それぞれでの各画像、または、前記複数の箇所それぞれでの各画像を順次に連結した連結画像を含み、
前記スパースモデリング工程は、前記解析モデルを、前記複数のモデル用画像を前記複数の箇所ごとに用いたスパースモデリングによって前記複数の箇所ごとに複数個求め、または、前記解析モデルを、前記複数のモデル用画像としての複数の連結画像を用いたスパースモデリングによって1個求め、
前記表示工程は、前記複数の箇所での各表示用解析ツール画像を1画面で表示する、
請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の解析支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング工程とを実行させるための解析支援プログラムであって
前記スパースモデリングには、エラスティックネット(Elastic net)が用いられ
前記エラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータを入力して設定する入力設定工程と
前記複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を選定し、前記選定したモデル用画像を前記良好な解析値と対応付けて所定数だけ複製することによって前記所定数の複製画像を生成する複製工程とをさらに備え
前記スパースモデリング工程で用いる複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値には、前記複製工程で生成した前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した前記複数の良好な解析値が含まれる
解析支援プログラム。
【請求項9】
所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得部と、
前記データ取得部で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング部とを備え、
前記スパースモデリングには、エラスティックネット(Elastic net)が用いられ
前記エラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータを入力して設定する入力設定部と
前記複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を選定し、前記選定したモデル用画像を前記良好な解析値と対応付けて所定数だけ複製することによって前記所定数の複製画像を生成する複製部とをさらに備え
前記スパースモデリング部で用いる複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値には、前記複製部で生成した前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した前記複数の良好な解析値が含まれる、
解析支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパースモデリングを用いた解析対象の解析を支援する解析支援方法、解析支援プログラムおよび解析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械学習は、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の深層学習の開発により、様々な分野に応用され、利用されつつある。このような機械学習では、通常、その機械学習モデルの機械学習に比較的大量な学習データが必要であるため、学習データの収集が1つのネック(障害)になっている。一方、スパースモデリング(Sparse Modeling、疎生モデリング)は、比較的小数のサンプルデータから目的に応じて潜在価値を引き出すことに優れていることから、注目されている。このスパースモデリングは、多数の説明変数のなかから、取捨選択により、目的変数の説明に本質的に必要な説明変数を選択してモデルを構築するモデル推定法である。このようなスパースモデリングは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された機械学習装置は、互いに異なるスパースモデリング手法を用いて、産業活動に用いる学習モデルにおける特定の目的変数と複数の説明変数候補とを前記スパースモデリング手法の入力データとして、前記複数の説明変数候補のそれぞれについて前記特定の目的変数を説明するための説明変数としての個別重要度をそれぞれ取得するスパースモデリング処理部と、前記説明変数候補のそれぞれの複数の前記個別重要度に基づいて前記説明変数候補のそれぞれについての総合重要度を算出し、前記総合重要度に基づいて前記複数の説明変数候補の中から前記学習モデルの説明変数を選択する選択部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-144690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、商品開発では、商品やその試作品、あるいは、これらの設計を解析する必要がある。解析には、実際の商品や試作品を用いた実験(試験)の実施も重要であるが、近年のコンピュータの進展により、コンピュータによるシミュレーションが使われることが多くなってきている。このシミュレーションでは、モデルを作成する必要がある。モデルを適切に作成するためには、商品や試作品等に生じた現象の要因(原因因子)を見つけ出すことが重要となるが、この要因の抽出が難しい。
【0006】
前記特許文献1に開示された機械学習装置は、産業活動に用いる学習モデルを生成するが、前記産業活動の具体的な説明の記載が無い。前記特許文献1には、機械学習装置は、複数の成形機を統括管理に備えられ、成形機から得られた各種データに基づき、成形機の異常検知、成形機の動作条件の最適化、または、成形機による処理結果(例えば、成形品の品質要素)を予測する、と記載され(例えばその[0012]段落)、前記各種データは、成形機1の外部に設けられた各種測定装置により測定された成形品の寸法や形状等に関する測定結果等である、と記載されており(例えばその[0015]段落)、画像の利用は、開示も示唆もない。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、画像を用いて要因(原因因子)を抽出できる解析支援方法、解析支援プログラムおよび解析支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる解析支援方法は、所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得工程と、前記データ取得工程で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング工程とを備える。好ましくは、上述の解析支援方法において、前記モデル用画像は、全画素の各画素値を成分とするベクトルで表され、前記解析モデルは、全画素それぞれを説明変数とする線形回帰モデルである。好ましくは、上述の解析支援方法において、前記解析対象は、構造体であり、前記モデル用画像は、前記構造体の断面を単色で塗り潰した画像であり、前記解析目的は、前記構造体の強度である。好ましくは、前記構造体は、車両である。
【0009】
このような解析支援方法は、スパースモデリングを用いるので、複数のモデル用画像から解析目的に応じた要因(原因因子)を抽出できる。
【0010】
他の一態様では、上述の解析支援方法において、前記スパースモデリングには、エラスティックネット(Elastic net)が用いられ、前記エラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータを入力して設定する入力設定工程をさらに備える。好ましくは、上述の解析支援方法において、0<エラスティックネット混合比率パラメータ≦0.1である。
【0011】
このような解析支援方法は、エラスティックネット混合比率パラメータを入力して設定できるので、解析結果を見易く調整できる(解析結果の見え易さ(視認性)を変更できる)。
【0012】
他の一態様では、これら上述の解析支援方法において、前記複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を選定し、前記選定したモデル用画像を前記良好な解析値と対応付けて所定数だけ複製することによって前記所定数の複製画像を生成する複製工程をさらに備え、前記スパースモデリング工程で用いる複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値には、前記複製工程で生成した前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した前記複数の良好な解析値が含まれる。
【0013】
このような解析支援方法は、複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を所定数だけ複製して前記複数のモデル用画像に加え、前記良好な解析値のモデル用画像で増大した前記複数のモデル用画像でスパースモデリングを実施するので、前記良好な解析値付近の解析精度を向上した解析モデルを求めることができる。
【0014】
他の一態様では、これら上述の解析支援方法において、前記データ取得工程で取得した複数のモデル用画像は、互いに異なる複数の時点における時系列な複数の画像である。
【0015】
このような解析支援方法は、複数のモデル用画像が時系列な複数の画像であるので、時間を変数に持つ解析対象を解析でき、特に経時変化する解析対象を解析できる。
【0016】
他の一態様では、上述の解析支援方法において、前記スパースモデリング工程は、前記時系列な複数のモデル用画像を一括に用いたスパースモデリングによって1個の前記解析モデルを求める。
【0017】
このような解析支援方法は、時系列な複数のモデル用画像を一括に用いるので、各時点を平均した平均的な解析モデルを求めることができ、各時点を平均的に捉えたい解析目的に適している。
【0018】
他の一態様では、これら上述の解析支援方法において、表示を行う表示工程をさらに備え、前記表示工程は、前記スパースモデリング工程で求めた解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、前記各画素の各画素値それぞれについて、複数の画素値と前記解析値の増減に影響を与える程度の大きさに応じた複数のカテゴリとを互いに対応付けたカテゴリ対応関係に基づいて当該画素値に対応するカテゴリに変換し、前記複数のカテゴリと互いに異なる複数の表示態様とを互いに対応付けた表示対応関係に基づいて前記変換したカテゴリに対する表示態様を選定することによって、各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換し、前記変換した表示用解析ツール画像を表示する。他の一態様では、これら上述の解析支援方法において、表示を行う表示工程をさらに備え、前記表示工程は、前記スパースモデリング工程で求めた解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、前記各画素の各画素値それぞれについて、複数の画素値と、前記解析値の増減に影響を与える程度の大きさに応じた複数のカテゴリそれぞれの互いに異なる複数の表示態様と、を互いに対応付けたカテゴリ表示対応関係に基づいて表示態様を選定することによって、各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換し、前記変換した表示用解析ツール画像を表示する。好ましくは、上述の解析支援方法において、前記解析画像を取得する解析画像取得工程をさらに備え、前記表示工程は、前記解析画像取得工程で取得した解析画像と前記表示用解析ツール画像とを重畳して表示する。好ましくは、上述の解析支援方法において、前記複数のカテゴリは、5個以下である。好ましくは、上述の解析支援方法において、前記モデル用画像は、全画素の各画素値を成分とするベクトルで表され、前記解析モデルは、全画素それぞれを説明変数とする線形回帰モデルであり、前記スパースモデリング工程で求めた解析モデルに基づく各画素の各画素値は、各説明変数の各係数(重み)であり、前記複数のカテゴリは、前記解析値を増加させる第1カテゴリおよび前記解析値を減少させる第2カテゴリの2個であり、前記カテゴリ対応関係は、正(プラス)の画素値を前記第1カテゴリに対応させ、負(マイナス)の画素値を前記第2カテゴリに対応させた対応関係であり、前記表示対応関係は、前記第1カテゴリを第1画素値(例えば第1色等)に対応させ、前記第2カテゴリを前記第1画素値とは異なる第2画素値(例えば前記第1色とは異なる第2色等)に対応させた対応関係である。
【0019】
解析ツール画像をそのまま表示してもよいが、上記解析支援方法は、解析ツール画像を、解析値の増減に影響を与える程度の大きさ(レベル)に応じた複数のカテゴリ別の表示態様で描画した表示用解析ツール画像に変換し、この表示用解析ツール画像を表示するので、解析値の増減に影響を与える程度の大きさを容易に弁別して視認できる。
【0020】
他の一態様では、これら上述の解析支援方法において、時系列な複数の解析画像を取得する解析画像取得工程をさらに備え、前記表示工程は、前記表示用解析ツール画像を重畳させながら、前記解析画像取得工程で取得した時系列な複数の解析画像を順次に表示する。好ましくは、上述の解析支援装置において、前記時系列な複数の解析画像は、前記時系列な複数のモデル用画像における前記互いに異なる複数の時点と同一な時間間隔で並ぶ。
【0021】
このような解析支援方法は、表示用解析ツール画像を重畳させながら時系列な複数の解析画像を順次に表示するので、解析画像における要因の画素を容易に視認できる。
【0022】
他の一態様では、上述の解析支援方法において、前記モデル用画像は、前記解析対象における互いに異なる複数の箇所それぞれでの各画像、または、前記複数の箇所それぞれでの各画像を順次に連結した連結画像を含み、前記スパースモデリング工程は、前記解析モデルを、前記複数のモデル用画像を前記複数の箇所ごとに用いたスパースモデリングによって前記複数の箇所ごとに複数個求め、または、前記解析モデルを、前記複数のモデル用画像としての複数の連結画像を用いたスパースモデリングによって1個求め、前記表示工程は、前記複数の箇所での各表示用解析ツール画像を1画面で表示する。
【0023】
本発明の他の一態様にかかる解析支援プログラムは、コンピュータに、所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得工程と、前記データ取得工程で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング工程とを実行させるための解析支援プログラムである。
【0024】
本発明の他の一態様にかかる解析支援装置は、所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング部とを備える。
【0025】
これら解析支援プログラムおよび解析支援装置は、スパースモデリングを用いるので、複数のモデル用画像から解析目的に応じた要因(原因因子)を抽出できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる解析支援方法、解析支援プログラムおよび解析支援装置は、画像を用いて要因(原因因子)を抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態における解析支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】各対応関係を説明するための図である。
図3】前記解析支援装置の動作を示すフローチャートである。
図4】一例として、解析対象を説明するための図である。
図5】一例として、モデル用データセットを説明するための図である。
図6】一例として、前記解析支援装置の精度を説明するための図である。
図7】一例として、解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して表示した表示画面を説明するための図である。
図8】他の一例として、他の解析対象におけるモデル用データセット、精度および表示画面を説明するための図である。
図9】他の一例として、さらに他の解析対象におけるモデル用データセット、精度および表示画面を説明するための図である。
図10】一例として、時系列スパースモデリングにおけるモデル用データセットを説明するための図である。
図11】一例として、時系列な各解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して表示した表示画面を示す図である。
図12】一例として、時系列な各解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して時系列に順次に表示する場合における、3[ms]での表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0029】
実施形態における解析支援装置は、スパースモデリングを用いた解析対象の解析を支援する装置である。この解析支援装置は、所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求める解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を取得するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を用いたスパースモデリングによって前記解析モデルを求めるスパースモデリング部とを備える。以下、このような解析支援装置ならびにこれに実装される解析支援方法および解析支援プログラムについて、より具体的に説明する。
【0030】
図1は、実施形態における解析支援装置の構成を示すブロック図である。図2は、各対応関係を説明するための図である。図2Aは、カテゴリ対応関係を示し、図2Bは、表示対応関係を示し、図2Cは、変形形態として、これらカテゴリ対応関係と表示対応関係とを合わせたカテゴリ表示対応関係を示す。
【0031】
実施形態における解析支援装置Dは、例えば、図1に示すように、制御処理部1と、入力部2と、表示部3と、インターフェース部(IF部)4と、記憶部5とを備える。
【0032】
入力部2は、制御処理部1に接続され、例えばモデル生成開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば、解析対象の名称や後述のエラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータα等の、解析支援装置Dの稼働を行う上で必要な各種データを解析支援装置Dに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。なお、解析支援装置Dは、画像を扱うので、入力部2は、画像を読み込むスキャナ装置を含んでもよい。表示部3は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、入力部2から入力されたコマンドやデータ、および、解析画像や、解析支援装置Dによって生成された解析モデルや、後述の表示用解析ツール画像等を表示する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置等である。
【0033】
なお、入力部2および表示部3は、タッチパネルにより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部2は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置である。このタッチパネルでは、表示部3の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示部3に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として解析支援装置Dに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い解析支援装置Dが提供される。
【0034】
IF部4は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部4は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であってもよい。
【0035】
記憶部5は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、解析支援装置Dの各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、入力部2やIF部4を介して解析モデルを求めるためのモデル用データセットを取得するデータ取得処理プログラムや、前記データ取得処理プログラムで取得したモデル用データセットを用いたスパースモデリングによって解析モデルを求めるスパースモデリングプログラム(解析モデル生成プログラム)や、入力部2で、エラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータαの入力を受け付けて設定する入力設定プログラムや、モデル用データセットにおける一部の後述のモデル用画像およびその解析値を複製する複製処理プログラムや、入力部2やIF部4を介して解析対象の解析画像を取得する解析画像取得プログラムや、表示部3で表示を行う表示処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば、前記解析対象の名称、前記エラスティックネット混合比率パラメータα、モデル用データセット、解析画像、後述のカテゴリ対応関係情報および後述の表示対応関係情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部5は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部5は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部5は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置を備えて構成されてもよい。
【0036】
記憶部5は、モデル用データセットを記憶するモデル用データ記憶部51と、解析画像、後述の解析ツール画像および後述の表示用解析ツール画像を記憶する解析画像記憶部52と、カテゴリ対応関係情報を記憶するカテゴリ対応関係情報記憶部53と、表示対応関係情報を記憶する表示対応関係情報記憶部54とを機能的に備える。
【0037】
前記解析モデルは、所定の解析対象の解析画像から、解析目的に応じた所定の解析値を求めるモデルであり、本実施形態では、スパースモデリングによって求められる。前記解析対象は、任意であってよく、前記解析目的は、任意であってよい。例えば、目的に応じた機能を達成するための重要な部位(部材)が解析対象とされる。好ましくは、前記解析対象は、構造体であり、前記解析目的は、前記構造体の強度である。好ましくは、前記構造体は、例えば航空機(例えば飛行機やヘリコプターやドローン等)、ロケット、ミサイル、船舶および車両(例えば自動車や鉄道車両等)等の移動体、例えば塔や橋梁や建物等の構築物、ならびに、例えば建設機械や生産機械等の機械等である。より具体的には、一例では、前記構造体は、フレーム構造の場合における車両のフレームシャシー、あるいは、フレーム構造の場合における車両のボディ、あるいは、モノコック構造の場合のモノコックボディ等である。
【0038】
前記モデル用データセットは、前記解析モデルを求めるための複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに対応した複数の解析値を含む。
【0039】
前記カテゴリ対応関係情報は、スパースモデリングを用いて求めた解析モデルに基づく複数の画素値と前記解析値の増減に影響を与える程度の大きさ(レベル)に応じた複数のカテゴリとを互いに対応付けたカテゴリ対応関係を表す情報である。前記カテゴリ対応関係は、予め適宜に定義される。
【0040】
前記表示対応関係情報は、前記複数のカテゴリと互いに異なる複数の表示態様とを互いに対応付けた表示対応関係を表す情報である。前記表示対応関係は、予め適宜に定義される。
【0041】
制御処理部1は、解析支援装置Dの各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、スパースモデリングを用いた解析対象の解析を支援するための回路である。制御処理部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1は、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11、データ取得処理部12、スパースモデリング部(解析モデル生成部)13、入力設定処理部14、複製処理部15、解析画像取得処理部16および表示処理部17を機能的に備える。
【0042】
制御部11は、解析支援装置Dの各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、解析支援装置Dの全体制御を司るものである。
【0043】
データ取得処理部12は、入力部2やIF部4を介して解析モデルを求めるためのモデル用データセットを取得するものである。より具体的には、例えば、入力部2としてのスキャナ装置に、解析モデルを求めるためのモデル用画像が配置され、入力部2で読み込みの指示を受け付けると、データ取得処理部12は、前記スキャナ装置でモデル用画像を読み込み、この読み込んだモデル用画像の解析値の入力を促すメッセージを表示部3に表示し、入力部2で解析値を受け付けると、前記読み込んだモデル用画像と前記受け付けた解析値とを対応付けてモデル用データセットにおける1個のデータとしてモデル用データ記憶部51に記憶する。このような処理が複数回繰り返され、これによってデータ取得処理部12は、複数のモデル用画像、および、前記複数のモデル用画像それぞれに1対1で対応した複数の解析値を含むモデル用データセットを取得し、この取得したモデル用データセットをモデル用データ記憶部51に記憶する。あるいは、例えば、モデル用データセットを記憶した、例えばUSBメモリやSDカード(登録商標)等の記憶媒体がIF部4に装着され、入力部2で読み込みの指示を受け付けると、データ取得処理部12は、前記記憶媒体からIF部4を介してモデル用データセットを読み込み、この読み込んだモデル用データセットをモデル用データ記憶部51に記憶する。あるいは、例えば、モデル用データセットを記録した、例えばCD-R(Compact Disc Recordable)やDVD-R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記録媒体がドライブ装置に装着され、前記ドライブ装置がIF部4に装着され、入力部2で読み込みの指示を受け付けると、データ取得処理部12は、前記記録媒体から前記ドライブ装置およびIF部4を介してモデル用データセットを読み込み、この読み込んだモデル用データセットをモデル用データ記憶部51に記憶する。あるいは、例えば、モデル用データセットを生成するコンピュータやモデル用データセットを管理するサーバ装置がIF部4で通信可能に接続され、入力部2で読み込みの指示を受け付けると、データ取得処理部12は、前記コンピュータやサーバ装置からIF部4を介してモデル用データセットを読み込み(ダウンロードし)、この読み込んだモデル用データセットをモデル用データ記憶部51に記憶する。
【0044】
スパースモデリング部(解析モデル生成部)13は、データ取得処理部12で取得したモデル用データセットを用いたスパースモデリングによって解析モデルを求めるものである。
【0045】
より具体的には、まず、モデル用画像は、次式1で示すように、全画素の各画素値xを成分とするベクトルx_で表される。jは、個々の画素に整数の連番で順次に割り当てられた画素番号である(j=1、2、・・・、p、全画素数p個)。モデル画像の解析値は、目的変数yとなる。なお、記載では、”x”の真下に”_”を記載できないので、式中における”_”を真下に持つ”x”を、機作の都合上、”x_”と記載することとする。以下、他も同様に記載される。
【0046】
【数1】
【0047】
N組のデータを持つモデル用データセット{(y、xij)|i=1、2、・・・、N}において、解析モデルyは、一例では、次式2で示すように全画素それぞれを説明変数xとする線形回帰モデルである。
【0048】
【数2】
【0049】
簡単化のために、N次元目的変数ベクトルy_は、平均が0に基準化され、各N次元説明変数ベクトルx_は、平均が0で、ノルムが1に基準化される(式3-5)。これにより、一般性を失うことなくβ=0とすることができる。次式3-1~式3-4のように定義すると、式2は、次式4で表される。
【0050】
【数3】
【0051】
【数4】
【0052】
この式4に対し、正則化最小二乗法を適用することによってβ_をデータ(モデル用データセットの各データ)から推定する問題は、次式5や次式6のように表され、式5は、一般にラッソ回帰(L正則化Lasso回帰)と呼称され、式6は、一般にリッジ回帰(L正則化Ridge回帰)と呼称される。
【0053】
【数5】
【0054】
【数6】
【0055】
ここで、Lagrange(ラグランジュ)の未定乗数法により、λ>0をLagrange乗数として、式5は、次式7の制約なし最小化問題に、式6は、次式8の制約なし最小化問題に、それぞれ等価に書き換えできる。この正則化法では、λは、正則化パラメータと呼称される。
【0056】
【数7】
【0057】
【数8】
【0058】
式5のラッソ回帰では、調整パラメータt>0の値が小さければβ_の成分のうち”0”に成る個数が多くなってスパースな解(疎な解)が得られ、逆に十分に大きければ通常の最小二乗法による解に近くなる。一方、式6のリッジ回帰では、一般的にスパースな解は得られずβ_の全ての成分が残る。そこで、式7および式8のバランス取りができるようにパラメータαを用いて、式7および式8は、次式9のように拡張される。
【0059】
【数9】
【0060】
式9は、Elastic net(エラスティックネット)と呼称され、リッジ回帰とラッソ回帰のバランスを(1-α):αに分配するパラメータα(0≦α≦1)は、エラスティックネット混合比パラメータと呼称される。
【0061】
スパースモデリング部13は、モデル用データセットを用いて式9を適宜な解法、例えば座標降下法(Coordinate Descent Algorithm)等で解くことによってβを求める。これによって線形回帰モデルの各説明変数xの係数βが求められ、解析モデルyが求められる。
【0062】
入力設定処理部14は、入力部2で、エラスティックネットにおけるエラスティックネット混合比率パラメータαの入力を受け付けて設定するものである。一般に、このパラメータαは、解析対象によりフィットするように調整するハイパーパラメータとして利用されるが、本実施形態では、このパラメータαの変更により、解析結果の見易さが調整できる。解析対象により、好ましくは、0<α≦0.1であり、あるいは、0<α≦0.01程度である。スパースモデリング部13は、入力設定処理部14でエラスティックネット混合比率パラメータαが設定され、記憶部5に記憶されている場合には、この設定されたエラスティックネット混合比率パラメータαの値を式9に用いる。一方、入力設定処理部14でエラスティックネット混合比率パラメータαが設定されていない場合には、スパースモデリング部13は、記憶部5に記憶されているデフォルト値(例えばα=0.01等)を式9に用いる。
【0063】
複製処理部15は、モデル用データセットにおける一部のモデル用画像およびその解析値を複製するものである。より具体的には、複製処理部15は、モデル用データセットにおける複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を選定し、この選定したモデル用画像を前記良好な解析値と対応付けて所定数だけ複製することによって所定数の複製画像を生成し、前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した複数の解析値(前記良好な解析値)をモデル用データ記憶部51に記憶する。前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した複数の解析値(前記良好な解析値)が生成された場合には、スパースモデリング部13で用いるモデル用データセットには、複製処理部15で生成した前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した前記複数の良好な解析値が含まれる。すなわち、スパースモデリング部13は、複製処理部15で生成した前記所定数の複製画像および前記所定数の複製画像それぞれに対応した前記複数の良好な解析値をモデル用データセットのデータとしてモデル用データセットに加え、この加えた後のモデル用データセットを用いて式9を解くことによって解析モデルを求める。
【0064】
前記良好な解析値は、例えば最上位値や最上位値から1%以内の各値や最上位値から3%以内の各値や最上位値から5%以内の各値等で、適宜に設定される。
【0065】
解析画像取得処理部16は、入力部2やIF部4を介して解析対象の解析画像を取得し、この取得した解析画像を解析画像記憶部52に記憶するものである。
【0066】
表示処理部17は、表示部3で表示を行うものである。より具体的には、表示処理部17は、解析ツール画像を、カテゴリ対応関係情報記憶部53に記憶されたカテゴリ対応関係情報で表されたカテゴリ対応関係および表示対応関係情報記憶部54に記憶された表示対応関係情報で表された表示対応関係に基づいて表示用解析ツール画像に変換し、この変換した表示用解析ツール画像を表示部3に表示する。より詳しくは、前記解析ツール画像は、スパースモデリング部13で求めた解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る画像である。解析モデルyに基づく各画素値は、本実施形態では、線形回帰モデルにおける各説明変数xの各係数βである。すなわち、画素番号jの説明変数xにおけるその係数βが解析ツール画像における画素番号jの画素値βとなる。表示処理部17は、まず、このような各画素値βの各画素から成る解析ツール画像における前記各画素の各画素値それぞれβについて、カテゴリ対応関係に基づいて当該画素値βに対応するカテゴリに変換する。前記カテゴリの個数は、任意であってよいが、多数になると表示用解析ツール画像が見難くなり、解析値に影響する箇所の判定がし難くなるので、好ましくは、5個以下であり、例えば、良いレベルのカテゴリー、やや良いレベルのカテゴリー、普通レベルのカテゴリー、やや悪いレベルのカテゴリーおよび悪いレベルのカテゴリー等である。本実施形態では、前記複数のカテゴリは、前記解析値を増加させる第1カテゴリ(画素値(係数β)>0)および前記解析値を減少させる第2カテゴリ(画素値(係数β)<0)の2個である。この例では、カテゴリ対応関係は、図2Aに示すように、画素値(係数β)>0(正の画素値β)を第1カテゴリに対応させ、画素値(係数β)<0(負の画素値β)を第2カテゴリに対応させた対応関係である。そして、表示処理部17は、このように各画素値βが対応のカテゴリに変換された解析ツール画像における前記各画素の各カテゴリそれぞれについて、表示対応関係に基づいて当該カテゴリに対応する表示態様を選定する。これによって前記解析ツール画像は、各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換される。上述の2個の第1および第2カテゴリの例では、表示対応関係は、図2Bに示すように、前記第1カテゴリを第1画素値(例えば第1色等)に対応させ、前記第2カテゴリを前記第1画素値とは異なる第2画素値(例えば前記第1色とは異なる第2色等)に対応させた対応関係である。本実施形態では、一例として、前記第1色は、赤色とされ、前記第2色は、青色とされる。したがって、この例では、解析ツール画像における正の画素値βを持つ画素は、表示用解析ツール画像では、赤色の画素(解析値を増加させる影響を与える画素)となり、解析ツール画像におけるβ=0を持つ画素は、表示用解析ツール画像では、黒色の画素(解析値に影響しない画素)となり、解析ツール画像における負の画素値βを持つ画素は、表示用解析ツール画像では、青色の画素(解析値を減少させる影響を与える画素)となり、表示用解析ツール画像は、赤色、黒色および青色のいずれかを持つ各画素から成る画像となる。
【0067】
なお、上述では、画素値をカテゴリに変換し、カテゴリを表示態様に変換したが、図2Aに示すカテゴリ対応関係と図2Bに示す表示対応関係とを合わせた、図2Cに示すカテゴリ表示対応関係を用いることによって、表示処理部17は、解析ツール画像を表示用解析ツール画像に変換してもよい。前記カテゴリ表示対応関係は、図2Cに示すように、複数の画素値と、前記解析値の増減に影響を与える程度の大きさに応じた複数のカテゴリそれぞれの互いに異なる複数の表示態様と、を互いに対応付けた対応関係である。
【0068】
そして、表示処理部17は、解析画像取得処理部16で取得した解析画像と表示用解析ツール画像とを重畳して表示部3に表示する。
【0069】
これら制御処理部1、入力部2、表示部3、IF部4および記憶部5は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。
【0070】
次に、本実施形態の動作について説明する。図3は、前記解析支援装置の動作を示すフローチャートである。図4は、一例として、解析対象を説明するための図である。図4Aは、車両のボンネット部分の斜視図であり、図4Bは、0BLでの要部断面図であり、図4Cは、一例として、0BLおよび4BLでのモデル用画像を示す。図5は、一例として、モデル用データセットを説明するための図である。図6は、一例として、前記解析支援装置の精度を説明するための図である。図6の横軸は、CAEで解析されたHICであり、その縦軸は、実施形態における解析支援装置Dで解析されたHICである。図7は、一例として、解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して表示した表示画面を説明するための図である。図7Aは、解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して表示した表示画面を示し、図7Bは、前記表示画面のうちの前記解析画像のみを示し、図7Cは、前記表示画面のうちの、前記表示用解析ツール画像における第1カテゴリーに対応する赤色画素のみを示し、図7Dは、前記表示画面のうちの、前記表示用解析ツール画像における第2カテゴリーに対応する青色画素のみを示す。図8は、他の一例として、他の解析対象におけるモデル用データセット、精度および表示画面を説明するための図である。図9は、他の一例として、さらに他の解析対象におけるモデル用データセット、精度および表示画面を説明するための図である。図8Aおよび図9Aは、モデル用データセットを示し、図8Bおよび図9Bは、前記解析支援装置の精度を説明するための図であり、図8Cおよび図9Cは、解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して表示した表示画面を示す。図8Bおよび図9Bの横軸は、CAEで解析されたHICであり、それらの縦軸は、実施形態における解析支援装置Dで解析されたHICである。
【0071】
このような構成の解析支援装置Dは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部1には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部11、データ取得処理部12、スパースモデリング部13、入力設定処理部14,複製処理部15、解析画像取得処理部16および表示処理部17が機能的に構成される。
【0072】
図3において、解析支援の開始の指示を入力部2で受け付けると、解析支援装置Dは、制御処理部1のデータ取得処理部12によって、入力部2やIF部4を介して解析モデルを求めるためのモデル用データセットを取得し、モデル用データ記憶部51に記憶する(S1、データ取得工程)。
【0073】
一例では、図4Aに示すように、自動車VCのボンネット上におけるフロントアッパーの部分にいわゆる頭部インパクタIPが入射角50度で衝突した際におけるボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBの形状を解析する場合では、モデル用画像MPとして、図4Bに示す自動車VCのボンネット周りの断面から解析対象のボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBを抜き出した、例えば図4Cに示すような断面画像MPが生成され、このモデル用画像MPとしての断面画像MPの解析値として頭部障害値(HIC、Head Impact Criteria)が用いられる。ボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBは、頭部インパクタIPが衝突したときに衝撃力を吸収する部材と想定される重要な部位である。前記モデル用画像MPは、解析対象のボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBそれぞれの断面LBI、LGBを単色で塗り潰して表したボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBの断面の画像である。図4Cに示す例では、解析対象のボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBそれぞれの各断面LBI、LGBが白で表され、その他が背景として黒で表され、モデル用画像は、白と黒との2値化画像となっている。本実施形態では、前記モデル用画像MPは、前記解析対象における互いに異なる複数の箇所それぞれでの各画像を含む。図4に示す例では、0BLラインの箇所および4BLラインの箇所の2箇所である。前記0BLラインは、自動車VCの幅方向における中央位置を通る前後方向に延びる中央線であり、前記4BLは、0BLラインから400[mm]だけ車幅方向離れた前記中央線に平行な線である。頭部インパクタIPは、0BL上でフロントアッパーに衝突する。4BLラインの箇所は、ヘッドライトに近接する部分であるため、頭部インパクタIPの衝突による0BLラインでの解析対象に与える影響と4BLラインでの解析対象に与える影響とが相違すると予想されるため、これらが選択された。このようなモデル用画像MPおよびその解析値(頭部障害値)が、例えば図5に示すように、モデル用データセットとしてCAEにより複数用意された。前記CAE(Computer Aided Engineering)は、例えば、「河野勝人他、”衝突安全開発におけるCAEの進化”、マツダ技報、No.30(2012)、151-155」に開示されており、大略、非線形解析ソフトLS-DYNA(LSTC-Livemore Software Technology Crop.)による大規模有限要素モデルのシミュレーションである。このようなモデル用データセットが処理S1では、取得される。なお、上述では、モデル用データセットの各データは、CAEで生成されたが、実物で頭部インパクト試験を実施して断面の撮像とHICの実測とを行い、前記撮像した画像を画像処理により2値化することによって生成されてもよく、あるいは、CAEによるデータと試験によるデータとの混合であってもよい。
【0074】
次に、解析支援装置Dは、制御処理部1の入力設定処理部14によって、エラスティックネット混合比率パラメータαを入力設定するか否かを問い合わせるメッセージを表示部3に表示し、前記パラメータαの入力を入力部2で受け付けたか否かを判定する(S2)。この判定の結果、前記パラメータαの入力を受け付けた場合(Yes)には、入力設定処理部14は、入力部2で受け付けた前記パラメータαを、スパースモデリングで用いる前記パラメータαとして設定し、記憶部5に記憶し(S3、入力設定工程)、次に、処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記パラメータαの入力を受け付けない場合(例えば予め設定された所定の時間の間、入力がない場合、No)には、解析支援装置Dは、次に、処理S4を実行する。
【0075】
この処理S4では、解析支援装置Dは、制御処理部1の複製処理部15によって、モデル用データセットの一部を複製するか否かを問い合わせるメッセージを表示部3に表示し、複製の指示および複製数の入力を入力部2で受け付けたか否かを判定する。この判定の結果、前記複製の指示および複製数の入力を受け付けた場合(Yes)には、複製処理部15は、モデル用データセットにおける複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を選定し、この選定したモデル用画像を前記良好な解析値と対応付けて、入力部2で受け付けた複製数だけ複製することによって前記複製数の複製画像を生成し、前記複製数の複製画像および前記複製数の複製画像それぞれに対応した複数の解析値(前記良好な解析値)をモデル用データ記憶部51に記憶し(S5、複製工程)、次に、処理S6を実行する。一方、前記判定の結果、前記複製の指示および複製数の入力を受け付けない場合(No)には、解析支援装置Dは、次に、処理S6を実行する。おな、前記処理S4では、モデル用データセットのうちの複製する上位割合の入力が受け付けられ、モデル用データセットのうち、前記受け付けた上位割合に含まれるモデル用画像およびその解析値が複製されてもよい。あるいは、前記処理S4では、複製の際の前記所定数(複製個数)の入力が受け付けられ、前記受け付けた所定数で複製されてもよい。
【0076】
次に、解析支援装置Dは、制御処理部1のスパースモデリング部13によって、処理S1でデータ取得処理部12で取得したモデル用データセットを用いたスパースモデリングによって解析モデルを求め、記憶部5に記憶する(S6、スパースモデリング工程)。処理S5でモデル用データセットが複製されている場合には、この複製のデータも解析モデルを求めるためもモデル用データセットに含まれる。
【0077】
この際に、本実施形態では、スパースモデリング部13は、前記解析モデルを、前記複数のモデル用画像を前記複数の箇所ごとに用いたスパースモデリングによって前記複数の箇所ごとに複数個求める。図4および図5に示す例では、0BLラインの箇所および4BLラインの箇所それぞれについて各解析モデルが求められる。なお、0BLラインのモデル用画像と4BLラインのモデル用画像とを順次に1つの連結した連結画像をモデル用画像として扱うことで1個の解析モデルが求められてもよい。すなわち、説明変数のベクトルは、0BLラインのモデル用画像の各画素および4BLラインのモデル用画像の各画素を成分とする。
【0078】
このようなスパースモデリングによる解析モデルで求めたHICは、図6に示すように、CAEで求めたHICと良好に相関しており(R=0.9187)、スパースモデリングにより、良好な解析モデルが生成できている。したがって、実施形態における解析支援装置Dは、画像を用いて要因(原因因子)の抽出が可能となっていることが分かる。HICは、小さいほど良好な解析値であり、図6に示す例では、良好なHICを持つデータが10倍に複製され、この複製したデータもスパースモデリングによる解析モデルの生成に用いられている。特に、図6に示す○で囲った部分FA1では、このスパースモデリングによる解析モデルで求めたHICは、バラツキの少ない状態で、CAEで求めたHICと相関している。このため、このスパースモデリングによる解析モデルは、HICでボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBを解析する上で有用である。
【0079】
次に、解析支援装置Dは、制御処理部1によって、解析を実施するか否かを問い合わせるメッセージを表示部3に表示し、解析実施の指示を入力部2で受け付けたか否かを判定する。この判定の結果、前記解析実施の指示の入力を受け付けた場合(Yes)には、解析支援装置Dは、次に、処理S8を実行し、一方、前記判定の結果、前記解析実施の指示の入力を受け付けない場合(No)には、解析支援装置Dは、本処理を終了する。
【0080】
この処理S8では、解析支援装置Dは、制御処理部1の解析画像取得処理部16によって、入力部2やIF部4を介して解析画像を取得し、解析画像記憶部52に記憶する。
【0081】
次に、解析支援装置Dは、制御処理部1の表示処理部17によって、処理S6でスパースモデリング部13によって求めた解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、カテゴリ対応関係情報記憶部53に記憶されているカテゴリ対応関係情報で表されるカテゴリ対応関係および表示対応関係情報記憶部54に記憶されている表示対応関係情報で表される表示対応関係に基づいて表示用解析ツール画像に変換し、処理S8で解析画像取得処理部16によって取得した解析画像と前記表示用解析ツール画像とを重畳して表示部3に表示する(S9)。本実施形態では、表示処理部17は、前記複数の箇所(上述の例では0BLラインの箇所および4BLラインの箇所)での各表示用解析ツール画像を1画面で表示する。その一例の表示画面SC1が図7Aに示されている。ここで、上述のように、解析値を増加させる第1カテゴリは、赤色で表示され、解析値を減少させる第2カテゴリは、青色で表示されるため、表示画面SC1は、これら赤色画素および青色画素を含むが、作図の都合上、図7Aに示す表示画面SC1は、モノトーンとなるため、図7Aでは、赤色画素および青色画素を明瞭に図示することが難しい。このため、図7には、前記表示画面SC1のうちの解析画像PAのみが図7Bに示され、前記表示画面SC1のうちの、前記表示用解析ツール画像における第1カテゴリーに対応する赤色画素のみで形成した赤色画素画像PRが図7Cに示され、前記表示画面SC1のうちの、前記表示用解析ツール画像における第2カテゴリーに対応する青色画素のみで形成した青色画素画像PBが図7Dに示されている。図7Aに示す表示画面SC1は、これら図7Bないし図7Dそれぞれに示す解析画像PA、赤色画素画像PRおよび青色画素画像PBを重ねた画像で形成されている。
【0082】
解析画像と表示用解析ツール画像とを重畳して表示部3に表示するので、設計者等のユーザは、赤色画素と重畳している解析対象の部分がHICの増加(HICの劣化)に寄与することを視認でき、青色画素と重畳している解析対象の部分がHICの減少(HICの良化)に寄与することを視認でき、解析画像から視覚で要因(原因因子)を抽出可能となる。このため、ユーザは、前記重畳表示から、解析対象の各部分とHIC(解析値)との関連性を視認でき、解析対象の改良部分の示唆を受けることができる。例えば、青色画素を通る形状にボンネットインナーBIやグリルブラケットGBを設計すると、HICが改善すると推定(予測)できる。特に、本実施形態では、HICが増加する第1カテゴリーとHICが減少する第2カテゴリーとの2個のカテゴリーで表示用解析ツール画像を生成しているので、ユーザは、HICの良化に寄与する領域とHICの劣化に寄与する領域との境界を見出し易くなる。2個のカテゴリーにより、曖昧さも消え、ノイズに対しロバストにできる。本実施形態では、エラスティックネット混合比率パラメータαを入力して設定できるので、スパースの程度(疎度)を調整できるから(赤色画素および青色画素の各個数を調整できるから)、前記重畳表示の解析結果を見易く調整できる(解析結果の見え易さ(視認性)を変更できる)。
【0083】
そして、解析支援装置Dは、制御処理部1によって、解析を継続するか否かを問い合わせるメッセージを表示部3に表示し、解析継続の指示を入力部2で受け付けたか否かを判定する。この判定の結果、前記解析継続の指示の入力を受け付けた場合(Yes)には、解析支援装置Dは、処理を、処理S8に戻し、一方、前記判定の結果、前記解析継続の指示の入力を受け付けない場合(No)には、解析支援装置Dは、本処理を終了する。
【0084】
上述の図5ないし図7に示す例では、頭部インパクタIPをフロントアッパー部分に衝突させた場合であるが、他の例として、頭部インパクタIPをフロントアッパーとボンネット前方の間の部分に衝突させた場合を図8に示し、頭部インパクタIPをボンネット後方の部分に衝突させた場合を図9に示す。図8Aに示すモデル用データセットを用いたスパースモデリングによって求めた解析モデルのHICは、図8Bに示すように、CAEで求めたHICと良好に相関しており(R=0.9354)、図9Aに示すモデル用データセットを用いたスパースモデリングによって求めた解析モデルのHICは、図9Bに示すように、CAEで求めたHICと良好に相関している(R=0.9781)。いずれの場合も、スパースモデリングにより、良好な解析モデルが生成できている。これら3個の各場合を相互に比較することで、頭部インパクタIPの衝突場所とHIC(解析値)との関係が解析できる。
【0085】
以上説明したように、実施形態における解析支援装置Dならびにこれに実装された解析支援方法および解析支援プログラムは、画像を用いて要因(原因因子)を抽出できる。
【0086】
上記解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、エラスティックネット混合比率パラメータαを入力して設定できるので、解析結果を見易く調整できる(解析結果の見え易さ(視認性)を変更できる)。
【0087】
上記解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、複数のモデル用画像のなかから良好な解析値に対応したモデル用画像を所定数だけ複製して前記複数のモデル用画像に加え、前記良好な解析値のモデル用画像で増大した前記複数のモデル用画像でスパースモデリングを実施するので、前記良好な解析値付近の解析精度を向上した解析モデルを求めることができる。
【0088】
解析ツール画像をそのまま表示してもよいが、上記解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、解析ツール画像を、解析値の増減に影響を与える程度の大きさ(レベル)に応じた複数のカテゴリ別の表示態様で描画した表示用解析ツール画像に変換し、この表示用解析ツール画像を表示するので、解析値の増減に影響を与える程度の大きさを容易に弁別して視認できる。
【0089】
上記解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、複数の箇所での各表示用解析ツール画像を1画面で表示するので、複数の箇所それぞれを相互に比較できる。
【0090】
なお、上述の実施形態において、モデル用データセットにおける複数のモデル用画像は、互いに異なる複数の時点における時系列な複数の画像であってもよい。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、前記複数のモデル用画像が時系列な複数の画像であるので、時間を変数に持つ解析対象を解析でき、特に経時変化する解析対象を解析できる。例えば頭部インパクト試験の場合では、頭部インパクタIPの衝突時だけでなく、その後も解析できる。前記時系列な複数の画像は、例えば24[fps]や30[fps]や60[fps]等のいわゆる動画における各フレームの各画像であってよく、あるいは、所定のサンプリング間隔で撮像された各静止画であってよい。
【0091】
図10は、一例として、時系列スパースモデリングにおけるモデル用データセットを説明するための図である。図10Aは、時系列な複数のモデル用画像を含むモデル用データセットを示し、図10Bは、その解析値である頭部インパクタIPの速度のグラフである。図10Bの横軸は、経過時間[ms]であり、その縦軸は、速度[m/s]である。図11は、一例として、時系列な各解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して表示した表示画面を示す図である。図11Aは、前記パラメータα=1の場合を示し、図11Bは、前記パラメータα=0.01の場合を示す。図12は、一例として、時系列な各解析画像に表示用解析ツール画像を重畳して時系列に順次に表示する場合における、3[ms]での表示画面を示す図である。
【0092】
例えば、モデル用データセットは、図10に示す、1[ms]ごとの0[ms]から22[ms]までの各モデル用画像と前記各モデル用画像それぞれに対応付けられた頭部インパクタIPの速度[m/s]とを含むデータである。
【0093】
この場合では、スパースモデリング部13は、時系列スパースモデリングを実行する。例えば、スパースモデリング部13は、前記時系列な複数のモデル用画像を一括に用いたスパースモデリングによって1個の解析モデルを求める。上述の例では、モデル用データセット{(y、xij)|i=1、2、・・・、N}において、N=23(フレーム数)であり、yは、i番目のフレームの頭部インパクタの速度であり、xijは、i番目のフレームの各画素値である。これら23フレームの各画像および各画像それぞれに対応する頭部インパクタPIの各速度を用いたスパースモデリングにより各βが求められ、解析モデルが求められる。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、時系列な複数のモデル用画像を一括に用いるので、各時点を平均した平均的な解析モデルを求めることができ、各時点を平均的に捉えたい解析目的に適している。
【0094】
このような時系列スパースモデリングによって求めた解析モデルに基づく表示用解析ツール画像と時系列な解析画像とを1[ms]ごとの各時点で重畳した表示画面の一例が図11に示されている。この場合では、解析画像取得処理部16は、時系列な複数の解析画像を取得し、これらを解析画像記憶部52に記憶する。好ましくは、解析画像取得処理部16は、時系列な複数のモデル用画像における互いに異なる複数の時点と同一な時間間隔で並ぶ時系列な複数の解析画像を取得し、これらを解析画像記憶部52に記憶する。図10に示す例では、画像サイズ144×100であり、スパースモデリングによる解析モデルには、14400次元のうち、前記パラメータα=1の場合では149次元が残り、前記パラメータα=0.01の場合では886次元が残っている。このため、図11Aでは、149画素が赤色画素または青色画素で表示され、図11Bでは、886画素が赤色画素または青色画素で表示されている。図11に示す表示画面を参照することによって、ユーザは、各時点の様子を視覚によって相互に比較でき、どの時点でボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBのいずれで頭部インパクタIPの減速に寄与しているか解析できる。
【0095】
図11に示す例では、表示処理部17は、解析画像取得処理部16で取得した時系列な複数の解析画像全てを表示用解析ツール画像と重畳して1画面SC4、SC5で表示部3に表示するが、表示処理部17は、表示用解析ツール画像を重畳させながら、解析画像取得処理部16で取得した時系列な複数の解析画像を順次に表示部3に表示してもよい。すなわち、表示処理部17は、前記時系列な複数の解析画像を動画として表示してもよい。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、表示用解析ツール画像を重畳させながら時系列な複数の解析画像を順次に表示するので、解析画像における要因の画素を容易に視認できる。
【0096】
図12には、動画表示のうち、時点3[ms]における表示画面SC6の一例が示されている。図12に示す表示画面SC6は、第1動画表示領域AR1と、第1速度グラフ表示領域AR2と、第2動画表示領域AR3と、第2速度グラフ表示領域AR4とを備える。前記第1動画表示領域AR1は、第1表示用解析ツール画像を重畳させながら第1解析対象の第1解析画像を動画で表示する領域である。前記第1速度グラフ表示領域AR2は、第1解析対象での頭部インパクタIPの速度グラフを表示する領域である。前記第2動画表示領域AR3は、第2表示用解析ツール画像を重畳させながら、第1解析対象とは異なる第2解析対象の第2解析画像を動画で表示する領域である。前記第2速度グラフ表示領域AR4は、第2解析対象での頭部インパクタIPの速度グラフを表示する領域である。前記第1表示用解析ツール画像は、第1解析対象のための解析モデルに基づく表示用解析ツール画像であり、前記第2表示用解析ツール画像は、第2解析対象のための解析モデルに基づく表示用解析ツール画像である。第1および第2速度グラフに表示されている「☆」のマークは、表示画面SC6の時点3[ms]を表している。図12に示す例では、第1解析対象におけるグリルブラケットGBの形状が第2解析対象におけるグリルブラケットGBの形状と異なっている。複数の解析対象を1画面に表示することで、いずれの解析対象では、どの時点でボンネットインナーBIおよびグリルブラケットGBのいずれで頭部インパクタIPの減速に寄与しているか相互比較で解析できる。図12に示す例では、第1解析対象では、グリルブラケットGBにおける○で囲む部分PT1が頭部インパクタIPの減速に影響しており、第2解析対象では、グリルブラケットGBにおける○で囲む部分PT2が頭部インパクタIPの減速に影響している。
【0097】
あるいは、例えば、モデル用データセットは、解析対象を互いに異なる複数の方向から観測した複数の時系列な複数のモデル用画像を含み、時系列スパースモデリングにおいて、スパースモデリング部13は、各時点それぞれについて各方向の各画像を順次に連結した連結画像をモデル用画像とすることによって時系列な複数のモデル用画像(時系列な複数の連結画像)を生成し、前記時系列な複数のモデル用画像(時系列な複数の連結画像)を一括に用いたスパースモデリングによって1個の解析モデルを求めてもよい。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、解析対象を複数の方向から観測した複数の時系列な複数のモデル用画像を用いるので、多面的に解析対象を解析でき、このような解析目的に適している。
【0098】
例えば、解析対象が前方、側方および上方から観測され、モデル用データセットは、前方から解析対象を観測することによって生成された第1の時系列な複数のモデル用画像と、側方から解析対象を観測することによって生成された第2の時系列な複数のモデル用画像と、上方から解析対象を観測することによって生成された第3の時系列な複数のモデル用画像を含み、前記複数の時点ごとに、各解析値を含む。モデル用データセット{(y、xij)|i=1、2、・・・、N}において、Nは、前記複数の時点の個数(フレームの個数)であり、yは、i番目のフレームの解析値であり、xijは、i番目のフレームにおける連結画像の各画素値である。これら複数の各時点の各連結画像および各時点それぞれに対応する各解析値を用いたスパースモデリングにより各βが求められ、解析モデルが求められる。解析画像取得処理部16は、各方向から撮像した各方向の時系列な複数の解析画像を取得し、これらを解析画像記憶部52に記憶する。そして、表示処理部17は、解析画像取得処理部16で取得した各方向の時系列な複数の解析画像から、各時点それぞれについて各方向の各画像を順次に連結することによって、時系列な複数の連結画像を生成し、これら複数の連結画像全てを、解析モデルの各βに基づく表示用解析ツール画像と重畳して1画面で表示部3に表示する。あるいは、表示処理部17は、表示用解析ツール画像を重畳させながら、これら時系列な複数の連結画像に表示部3に表示する。
【0099】
あるいは、例えば、モデル用データセットは、解析対象を同一条件で複数回試行した複数の時系列な複数のモデル用画像を含み、時系列スパースモデリングにおいて、スパースモデリング部13は、前記解析モデルを、前記時系列な複数のモデル用画像を複数の時点ごとに用いたスパースモデリングによって前記複数の時点ごとに複数個求めてもよい。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、各時点ごとに複数のモデル用画像を用いるので、各時点ごとの解析モデルを求めることができ、各時点ごとに解析したい解析目的に適している。
【0100】
モデル用データセット{(y、xij)|i=1、2、・・・、N}において、Nは、試行回数であり、yは、当該時点でのi番目の試行の解析値であり、xijは、当該時点でのi番目の試行におけるモデル用画像における各画素値である。複数の各時点それぞれについて、当該時点での各試行における各モデル用画像および各モデル用画像それぞれに対応する各解析値を用いたスパースモデリングにより各βが求められ、当該時点での解析モデルが求められる。例えば、解析対象を同一条件で5回試行した場合において、モデル用データセットは、5個(5組)の第1ないし第5の時系列な複数のモデル用画像を含む。スパースモデリング部13は、例えば第1時点の解析モデルを求める場合では、第1の時系列な複数のモデル用画像、第2の時系列な複数のモデル用画像、第3の時系列な複数のモデル用画像、第4の時系列な複数のモデル用画像および第5の時系列な複数のモデル用画像それぞれから第1時点の各モデル用画像を抽出し、これら抽出した第1時点での各モデル用画像および第1時点の各モデル用画像それぞれに対応した各解析値を用いたスパースモデリングによって第1時点の解析モデルを求める。他の時点も同様である。
【0101】
この場合では、表示処理部17は、前記複数の時点それぞれについて、当該時点の解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、カテゴリ対応関係に基づいて当該画素値に対応するカテゴリに変換し、表示対応関係に基づいて前記変換したカテゴリに対する表示態様を選定することによって、各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換し、前記複数の時点それぞれの複数の表示用解析ツール画像を順次に表示する。あるいは、表示処理部17は、前記複数の時点それぞれについて、当該時点の解析モデルに基づく各画素値の各画素から成る解析ツール画像を、カテゴリ表示対応関係に基づいて表示態様を選定することによって、各表示態様の各画素から成る表示用解析ツール画像に変換し、前記複数の時点それぞれの複数の表示用解析ツール画像を順次に表示する。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、各時点ごとの表示用解析ツール画像を順次に表示するので、解析値の増減に影響を与える程度の大きさを容易に弁別して視認できる。
【0102】
解析画像取得処理部16は、時系列な複数のモデル用画像における互いに異なる複数の時点と同一な時間間隔で並ぶ時系列な複数の解析画像を取得し、解析画像記憶部52に記憶する。そして、表示処理部17は、前記複数の時点それぞれについて、順次に、当該時点の表示用解析ツール画像を重畳させながら、解析画像取得処理部16で取得した当該時点の解析画像を表示してよい。このような解析支援装置D、解析支援方法および解析支援プログラムは、各時点ごとの表示用解析ツール画像を重畳させながら各時点ごとの解析画像を順次に表示するので、各時点ごとに、解析画像における要因の画素を容易に視認できる。
【0103】
時系列スパースモデリングでは、互いに異なる複数の時点における時系列な複数のモデル用画像および前記複数のモデル用画像それぞれに対応する複数の解析値から、解析目的に応じて適宜にモデル用データセット{(y、xij)|i=1、2、・・・、N}が生成され、解析モデルが生成されてよく、上述の例に限定するものではない。
【0104】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0105】
D 解析支援装置
1 制御処理部
2 入力部
3 表示部
4 インターフェース部(IF部)
5 記憶部
11 制御部
12 データ取得処理部
13 スパースモデリング部(解析モデル生成部)
14 入力設定処理部
15 複製処理部
16 解析画像取得処理部
17 表示処理部
51 モデル用データ記憶部
52 解析画像記憶部
53 カテゴリ対応関係情報記憶部
54 表示対応関係情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12