(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】車両のパネル構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20250508BHJP
【FI】
B62D25/20 E
(21)【出願番号】P 2021076162
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】成田 周平
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕士
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/078990(JP,A1)
【文献】特表2006-502047(JP,A)
【文献】特開2019-098908(JP,A)
【文献】特開2019-195949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0175210(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014010652(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対面する第1パネルと第2パネルとを備え、これら第1パネルと第2パネルとの間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に介設される隔壁を備え、
前記隔壁は、
前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第1隔壁本体と、
前記第2パネルから前記第1パネルに向かって延びる第2隔壁本体と、
前記第1隔壁本体と前記第2隔壁本体との間及び前記第1隔壁本体と前記第2パネルとの間に設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成され、
前記第1隔壁本体は、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって伸びる隔壁主部と、その先端から前記第2パネルに沿って伸びるフランジ部とを備え、
前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体は各々、前記
第1パネルと前記第2パネルとの両パネルのパネル面に沿った方向に対向する対向面を備え、
前記減衰部材は、前記第1隔壁本体のフランジ部と前記第2パネルとの間に設けられるとともに、前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体の前記対向面同士の間に設けられている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項2】
互いに対面する第1パネルと第2パネルとを備え、これら第1パネルと第2パネルとの間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に介設される隔壁を備え、
前記隔壁は、
前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第1隔壁本体と、
前記第2パネルから前記第1パネルに向かって延びる第2隔壁本体と、
前記第1隔壁本体と前記第2隔壁本体との間にのみ設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成され、
前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体は各々、前記
第1パネルと前記第2パネルとの両パネルのパネル面に対して傾いた面であって互いに対向する対向面を備え、
前記減衰部材は、前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体の前記対向面同士の間に設けられている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のパネル構造において、
前記対向面は、前記パネル面に対して45°傾いている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項4】
請求項2に記載の車両のパネル構造において、
前記第1隔壁本体は、前記第1パネルとは別体の第1パーツが、当該第1パネルに組付けられることにより構成されており、
前記第2隔壁本体は、前記第2パネルとは別体の第2パーツが、当該第2パネルに組付けられることにより構成されており、
前記第1、第2パーツは、前記対向面の傾き角度が互いに異なる前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体を形成するための複数種類の第1、第2パーツから選定された一組の第1、第2パーツからなる、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項5】
請求項2及び3の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記第1隔壁本体は、前記第2パネル側に向かって膨出するように前記第1パネルに一体形成された膨出部からなり、
前記第2隔壁本体は、前記第1パネル側に向かって膨出するように前記第2パネルに一体形成された膨出部からなる、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項6】
互いに対面する第1パネルと第2パネルとを備え、これら第1パネルと第2パネルとの間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、
前記第1パネルと前記第2パネルとの間に介設される隔壁を備え、
前記隔壁は、第1モード隔壁部と第2モード隔壁部とを含み、
前記第1モード隔壁部は、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第1隔壁本体と、前記第1隔壁本体と前記第2パネルとの間に設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成され、
前記第2モード隔壁部は、前記第2パネルから前記第1パネルに向かって延びる第2隔壁本体と、両パネルのパネル面に沿った方向に互いに対向するように、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第3隔壁本体と、前記第2隔壁本体及び前記第3隔壁本体の対向面同士の間に設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成されている、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
前記第1パネルは、車両の車内側に位置し、前記第2パネルは、車両の車外側に位置する、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の車両のパネル構造において、
当該パネル構造は、フロアパネル、ダッシュパネル、ルーフパネル、及びドアパネルのうちの何れかのパネル構造である、ことを特徴とする車両のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外側に位置する外壁パネルと車内側に位置する内壁パネルとの間に、密閉中空層(中間層)が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の一部を上記のような二重壁パネルで構成することにより、車外から車室内への騒音の侵入を抑制する研究が進んでいる。二重壁パネルは、遮音性能を高める上で有効な手段と言えるが、そもそも中空構造であるために剛性の確保が難しい。
【0003】
そのため、車両への適用に際しては、遮音性能の確保とともに、十分な剛性を確保することが一つの課題とされる。例えば、このような課題の解決手段の一つとして、特許文献1のような技術が開示されている。この文献1には、二重壁パネルからなる、車両のフロア構造が開示されている。具体的には、フロアを構成する、上板部と下板部との間の中空層を複数の空間(セル)に仕切る隔壁(リブ)を設けることで、中空層を確保しつつパネル剛性の向上を図ったフロア構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来のフロア構造によると、中空層を確保しつつパネル剛性の向上を図ることが可能となる。しかし、このフロア構造によると、例えばタイヤを介して下板部に振動が伝わると、当該振動がさらに隔壁を介して上板部に伝達され、この上板部の振動による放射音が車室内に侵入する。そのため、例えば、ロードノイズのような比較的低周波域の騒音が車室内へ侵入し易くなることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、二重壁パネルからなる、車両のパネル構造において、パネル剛性の向上を図りながら高い遮音性能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る、車両のパネル構造は、互いに対面する第1パネルと第2パネルとを備え、これら第1パネルと第2パネルとの間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に介設される隔壁を備える。前記隔壁は、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第1隔壁本体と、前記第2パネルから前記第1パネルに向かって延びる第2隔壁本体と、前記第1隔壁本体と前記第2隔壁本体との間及び前記第1隔壁本体と前記第2パネルとの間に設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成され、前記第1隔壁本体は、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって伸びる隔壁主部と、その先端から前記第2パネルに沿って伸びるフランジ部とを備え、前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体は各々、前記第1パネルと前記第2パネルとの両パネルのパネル面に沿った方向に対向する対向面を備え、前記減衰部材は、前記第1隔壁本体のフランジ部と前記第2パネルとの間に設けられるとともに、前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体の前記対向面同士の間に設けられている。
【0008】
このパネル構造によれば、第1パネルと第2パネルとの間に隔壁が介設されているため、中空層を確保しつつ当該隔壁によってパネルの剛性を確保できる。しかも、隔壁には減衰部材が設けられているため、例えば、タイヤ等からの第2パネルに振動が入射した場合でも、振動減衰効果により、第2パネルから第1パネルへの振動伝播が抑制される。すなわち、第2パネルの振動による当該第2パネルと第1パネルとの相対変位により減衰部材が剪断変形することで、振動エネルギーの一部又は全部が熱エネルギーに変換されて消失し、第2パネルから第1パネルへの振動伝播が抑制される。具体的には、前記パネル面に沿った方向(前記パネル面の面内方向)の振動成分については、第1隔壁本体と第2パネル面との間に設けられた減衰部材が剪断変形することにより振動減衰効果が得られる。また、前記パネル面と直交する方向(前記パネル面の面外方向)の振動成分については、第1隔壁本体及び第2隔壁本体の対向面同士の間に設けられた減衰部材が剪断変形することにより振動減衰効果が得られる。そのため、振動の方向に拘わらず、第2パネルから第1パネル(第1パネルから第2パネル)への振動伝播を抑制することが可能となる。これより、隔壁を介して第2パネルから第1パネルへと振動が伝播し、第2パネルが振動してその放射音(ノイズ)が車室内に侵入するという現象が防止又は抑制される。
【0009】
従って、既述のパネル構造によれば、二重壁パネルからなる、車両のパネル構造において、パネル剛性の向上を図りながら高い遮音性能を確保することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の一局面に係る、車両のパネル構造は、互いに対面する第1パネルと第2パネルとを備え、これら第1パネルと第2パネルとの間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に介設される隔壁を備える。前記隔壁は、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第1隔壁本体と、前記第2パネルから前記第1パネルに向かって延びる第2隔壁本体と、前記第1隔壁本体と前記第2隔壁本体との間にのみ設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成され、前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体は各々、前記第1パネルと前記第2パネルとの両パネルのパネル面に対して傾いた面であって互いに対向する対向面を備え、前記減衰部材は、前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体の前記対向面同士の間に設けられているのが好適である。この場合、前記対向面は、前記パネル面に対して45°傾いている構成とすることができる。
【0011】
このパネル構造の場合も、第1パネルと第2パネルとの間に隔壁が介設されているため、中空層を確保しつつ当該隔壁によってパネルの剛性を確保できる。しかも、隔壁には減衰部材が設けられているため、例えば、タイヤ等からの第2パネルに振動が入射した場合でも、振動減衰効果により、第2パネルから第1パネルへの振動伝播が抑制される。すなわち、第2パネルの振動による当該第2パネルと第1パネルとの相対変位により減衰部材が剪断変形することで、振動エネルギーの一部又は全部が熱エネルギーに変換されて消失し、第2パネルから第1パネルへの振動伝播が抑制される。このパネル構造は、第1隔壁本体及び第2隔壁本体の対向面同士の間にのみ減衰部材が設けられた構造であるが、パネル面の面内方向及び面外方向のいずれの方向の振動によっても減衰部材を剪断変形させることができる。そのため、第1隔壁本体と第2隔壁本体との間にのみ減衰部材が設けられたシンプルな構成で、振動の方向に拘わらず振動減衰効果を享受することが可能となる。
【0012】
この場合に、前記第1隔壁本体は、前記第1パネルとは別体の第1パーツが、当該第1パネルに組付けられることにより構成されており、前記第2隔壁本体は、前記第2パネルとは別体の第2パーツが、当該第2パネルに組付けられることにより構成されており、前記第1、第2パーツは、前記対向面の傾き角度が互いに異なる前記第1隔壁本体及び前記第2隔壁本体を形成するための複数種類の第1、第2パーツから選定された一組の第1、第2パーツからなる。
【0013】
減衰部材は、効率良く剪断変形するように設けられているのが理想的である。つまり、前記対向面の傾き角度は、振動の方向に応じて、効率良く剪断変形するように設定されているのが理想的であり、その角度は、車体における二重壁パネルが設置される場所や車体
の具体的な構造によって相違する。この点、上記構成によれば、第1、第2パネルを共通化しながら、これらに組付けられる前記第1、第2パーツを変更するだけで、前記対向面の傾き角度の異なる複数種類の二重壁パネルを製造することが可能となる。
【0014】
既述のパネル構造において、前記第1隔壁本体は、前記第2パネル側に向かって膨出するように前記第1パネルに一体形成された膨出部からなり、前記第2隔壁本体は、前記第1パネル側に向かって膨出するように前記第2パネルに一体形成された膨出部からなる構成であってもよい。
【0015】
この構造によれば、第1パネルや第2パネルの製造工程において、第1隔壁本体や第2隔壁本体をプレス加工により当該第1パネル及び第2パネルに一工程で形成することが可能となる。そのため、二重壁パネルの生産性の向上に寄与する。
【0016】
なお、本発明の他の一局面に係る、車両のパネル構造は、互いに対面する第1パネルと第2パネルとを備え、これら第1パネルと第2パネルとの間に密閉された中空層が形成された二重壁パネルからなる、車両のパネル構造であって、前記第1パネルと前記第2パネルとの間に介設される隔壁を備える。前記隔壁は、第1モード隔壁部と第2モード隔壁部とを含む。前記第1モード隔壁部は、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第1隔壁本体と、前記第1隔壁本体と前記第2パネルとの間に設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成され、前記第2モード隔壁部は、前記第2パネルから前記第1パネルに向かって延びる第2隔壁本体と、両パネルのパネル面に沿った方向に互いに対向するように、前記第1パネルから前記第2パネルに向かって延びる第3隔壁本体と、前記第2隔壁本体及び前記第3隔壁本体の対向面同士の間に設けられた、接着材料からなる減衰部材とで構成されている。
【0017】
このパネル構造によれば、第1パネルと第2パネルとの間に隔壁が介設されているため、中空層を確保しつつ当該隔壁によってパネルの剛性を確保できる。しかも、隔壁には減衰部材が設けられているため、例えば、タイヤ等から第2パネルに振動が入射した場合でも、振動減衰効果により、第2パネルから第1パネルへの振動伝播が抑制される。この場合、パネル面に沿った方向(前記パネル面の面内方向)の振動成分については、第1モード隔壁部の減衰部材が剪断変形することにより振動減衰効果が得られる。また、前記パネル面と直交する方向(前記パネル面の面外方向)の振動成分については、第2モード隔壁部の減衰部材が剪断変形することより振動減衰効果が得られる。そのため、振動の方向に拘わらず、第2パネルから第1パネル(第1パネルから第2パネル)への振動伝播を抑制することができる。
【0018】
従って、既述のパネル構造によれば、二重壁パネルからなる、車両のパネル構造において、パネル剛性の向上を図りながら高い遮音性能を確保することが可能となる。
【0019】
なお、上述した車両のパネル構造において、前記第1パネルは、車両の車内側に位置し、前記第2パネルは、車両の車外側に位置する。
【0020】
この構造によれば、車外側の第2パネルから車内側の第1パネルへの振動伝播が効果的に抑制されるため、車両の遮音性能が向上する。
【0021】
また、上述した車両のパネル構造は、フロアパネル、ダッシュパネル、ルーフパネル、及びドアパネルのうちの何れかのパネル構造である。
【0022】
この構造によれば、車両の剛性を確保しながら、ロードノイズや走行音など、車外から車室内への騒音の侵入を効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る車両のパネル構造によれば、二重壁パネルからなる、車両のパネル構造において、パネル剛性の向上を図りながら高い遮音性能を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るパネル構造が適用された自動車の車体の斜視図である。
【
図2】フロアパネルを含む車体の部分断面図(
図1のII-II線に沿った断面図)である。
【
図3】フロアパネルを構成する二重壁パネル(第1実施形態)の斜視図である。
【
図4】前記二重壁パネルの部分断面図(
図3のIV-IV線に沿った部分の断面図)である。
【
図5】第2実施形態に係る二重壁パネルの部分断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る二重壁パネルの部分断面図である。
【
図7】第3実施形態に係る二重壁パネルの他の態様の部分断面図である。
【
図8】第4実施形態に係る二重壁パネルの部分断面図である。
【
図9】第5実施形態に係る二重壁パネルの模式平面図である。
【
図10】第5実施形態に係る二重壁パネルの部分断面図であって、(a)は、第1隔壁(隔壁前部)の部分の断面(
図9のXa-Xa線に沿った部分の断面図)であり、(b)は、第2隔壁47(隔壁右部)の部分の断面図(
図9のXb-Xb線に沿った部分の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0026】
[車体の構造]
図1は、本発明に係る車両のパネル構造が適用された自動車の車体の斜視図である。
図1において、符号1はエンジンルーム1(電気自動車の場合はモータルーム)を示し、符号2は車室を示している。エンジンルーム1と車室2との間には、車両を前後方向に仕切るダッシュパネル3が設けられている。ダッシュパネル3の車幅方向両側上部から各々車両前方に向かってエプロン4が延在し、エプロン4よりも下方であってかつ車幅方向内側には、ダッシュパネル3から各々車両前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5が設けられている。これらフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカンを介して車幅方向に延びるバンパビーム6が取付けられている。
【0027】
前記ダッシュパネル3の下部後端には、車室2の床面を形成するフロアパネル7が連設され、このフロアパネル7の車幅方向中央に、車室2内に膨出して車両の前後方向に延びるトンネル部8が設けられている。フロアパネル7の後端には、上下方向に延びるキックアップ部9が設けられ、当該キックアップ部9の後方にリヤフロア10が連設されている。
【0028】
前記ダッシュパネル3の車幅方向両端には、車両上下方向に延びるヒンジピラー11が各々設けられている。各ヒンジピラー11の下端部には、車両前後方向に延びるサイドシル12が連結され、ヒンジピラー11の上端部には、車両の後方かつ上方に傾斜して延びるフロントピラー13が連結されている。
【0029】
フロントピラー13の後端部には、車両前後方向に延びるルーフサイドレール14が連結され、このルーフサイドレール14の後端部に、車両の後方かつ下方に傾斜して延びるリヤピラー15が連結されている。
【0030】
ルーフサイドレール14の前後方向中間部とサイドシル12の前後方向中間部とは、上下方向に延びるセンタピラー16で連結されている。そして、ヒンジピラー11、フロントピラー13、ルーフサイドレール14、センタピラー16及びサイドシル12で囲まれたフロントドア開口部17が形成され、このフロントドア開口部17に、図外のフロントドアが開閉可能に組み込まれている。
【0031】
また、ルーフサイドレール14の後部とサイドシル12の後部とが、中間ピラー19およびリヤホイールハウス部20で上下方向に連結されている。そして、センタピラー16、ルーフサイドレール14、中間ピラー19、リヤホイールハウス部20及びサイドシル12で囲まれたリヤドア開口部21が形成され、このリヤドア開口部21に、図外のリヤドアが開閉可能に組み込まれている。
【0032】
また、左右のフロントピラー13の上端部に亘って車幅方向に延びるフロントヘッダ22が連結されるとともに、左右のリヤピラー15の上端部に亘って車幅方向に延びるリヤヘッダ23が連結されている。そして、フロントヘッダ22、リヤヘッダ23および左右のルーフサイドレール14で囲まれた空間にルーフパネル24が組み込まれている。
【0033】
図2は、車体の主に下部、すなわちフロアパネル7を含む車体の部分断面図(
図1のII-II線断面図)である。
【0034】
前記トンネル部8は、断面門形状の本体部30と、その左右両側の下方部から各々車幅方向外側に向かって突出する側方突出部32とを備えている。側方突出部32は、前後方向に延びる断面矩形(当例では長方形又は正方向)の閉断面構造を有しており、本体部30に一体に形成されている。側方突出部32の内部の前後方向における複数箇所には、補強用の節部が設けられている。
【0035】
トンネル部8の下方の開口部分はトンネルカバー36で覆われている。これらトンネル部8及びトンネルカバー36により囲まれた空間に、排気管Ep(又はプロペラシャフト)が配設される。
【0036】
サイドシル12は、前後方向に延びる断面矩形(当例では長方形又は正方向)の閉断面構造を有している。サイドシル12の内部の前後方向における複数箇所には、側方からの衝突荷重に対する補強用の節部が設けられている。
【0037】
図2に示すように、サイドシル12の上面とトンネル部8における前記側方突出部32の上面とは、略同じ高さに設定されており、トンネル部8の左右両側において各々、サイドシル12の上面と側方突出部32の上面とに亘って、シートを支持するための図外のシート支持フレームが水平に取付けられている。
【0038】
フロアパネル7は、トンネル部8の左右両側において各々、サイドシル12の内側面12aと側方突出部32の外側面32aとの間に組み込まれている。
図2では明示されていないが、互いに向かい合うこれらの内側面12a及び外側面32aは、上側から下側に向かって若干先窄まり(テーパ状)に形成されており、フロアパネル7は、これら内側面12aと外側面32aとの間のスペースに上側から嵌め込まれている。
【0039】
フロアパネル7は、二重壁パネル、すなわち、互いに対向する内壁と外壁との間に密閉中空層が形成されたパネルで構成されている。
図3は、フロアパネル7を構成する二重壁パネル40(第1実施形態)を示す斜視図である。
【0040】
図2及び
図3に示すように、二重壁パネル40は、上下方向に扁平かつ一定厚みを有した、前後方向に細長い平面視長方形の中空パネルである。二重壁パネル40は、外壁42、内壁43、周壁44及び隔壁45を備えている。
【0041】
各壁42~45は各々、一定の厚みを有した剛性を有する板状部材からなり、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、若しくは、CFRPやGFRP等の繊維強化樹脂で形成されている。
【0042】
二重壁パネル40のうち、外壁42は、フロアパネル7のうち車外側の壁面(下面)を形成する部分であり、内壁43は、フロアパネル7のうち車内側の壁面(上面)を形成する部分である。これら外壁42と内壁43とは互いに平行に設けられている。当例では、内壁43が本発明の「第1パネル」に相当し、外壁42が本発明の「第2パネル」に相当する。
【0043】
周壁44は、フロアパネル7の外周壁面を形成する部分である。当例では、周壁44は、外壁42の周縁部に一体形成されている。つまり、外壁42と周壁44とは上向きに開口する箱形の形状を成すように一体に形成されている。そして、内壁43が周壁44に接合されることにより、外壁42、内壁43及び周壁44により密閉された中空層Sが形成されている。なお、周壁44は、内壁43の周縁部に一体に形成されてもよいし、外壁42及び内壁43とは別体に形成されて当該外壁42及び内壁43に接合されていてもよい。
【0044】
隔壁45は、外壁42と内壁43との間に介設された、二重壁パネル40の補強部材である。隔壁45が設けられることで、二重壁パネル40の剛性が確保される。
【0045】
隔壁45は、
図3に示すように、前後方向に直線状に延在する第1隔壁46と、この第1隔壁46に対して直交方向に交差する2つの第2隔壁47とを含む。第1隔壁46は、車幅方向における外壁42(内壁43)の中央に配置され、第2隔壁47は、例えば外壁42(内壁43)を前後方向に3等分する位置に各々配置されている。これにより、二重壁パネル40の中空層Sが平面視長方形の6つのエリアSpに分割されている。
【0046】
第1隔壁46は、第2隔壁47が交差する位置を境にして、前後に並ぶ隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの3つの部分を含む。また、各第2隔壁47は、第1隔壁46の交差する位置を境にして、左右に並ぶ隔壁右部47a及び隔壁左部47bの2つの部分を含む。
【0047】
図4は、二重壁パネル40の部分断面図(
図3のIV-IV線に沿った部分の断面図)であり、第1隔壁46の隔壁前部46aの部分の断面を示している。
【0048】
図3及び
図4に示すように、隔壁前部46aは、各々剛体からなる内側隔壁本体50及び外側隔壁本体51と、減衰部材53、54とで構成されている。内側隔壁本体50及び外側隔壁本体51は、既述の各壁42~45と同じ材料で形成されており、例えば内側隔壁本体50は内壁43と同一材料で構成され、外側隔壁本体51は外壁42と同一材料で構成されている。なお、内側隔壁本体50は、本発明の「第1隔壁本体」に相当し、外側隔壁本体51は、本発明の「第2隔壁本体」に相当する。
【0049】
内側隔壁本体50は、内壁43に一体に設けられている。内側隔壁本体50、内壁43に一体成型されていてもよいし、内壁43とは別体に形成されて当該内壁43に接合されることにより一体化されていてもよい。
【0050】
内側隔壁本体50は、内壁43の下面から外壁42に向かって延びる隔壁主部501と、その先端から外壁42に沿って左方に延びるフランジ部502とを備える。隔壁主部501は、左右方向(車幅方向)に厚みを有する板状の形状であり、フランジ部502は、上下方向に厚みを有する板状の形状である。従って、内側隔壁本体50は、全体として断面L字型の形状を有している。
【0051】
フランジ部502と外壁42とは平行で、一定寸法の隙間G1を隔てて上下方向に対向している。そして、これらフランジ部502と外壁42の対向面同士の間に、接着材料からなる減衰部材53が充填されている。
【0052】
減衰部材53は、当例では、温度が20℃で、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が0.6~500MPaで、損失係数が0.2以上となる物性を備えた、例えば減衰ボンドである。減衰部材53としては、例えばスチレン-ブタジエンゴム等のゴムや、ポリエステル樹脂等のエラストマ樹脂を主成分としたものを適用することができる。これにより、内側隔壁本体50は、外壁42に対して、当該外壁42及び内壁43の対向面(以下、適宜パネル面と称す)に沿ったあらゆる方向、つまり、パネル面の面内方向(
図4中の白抜き矢印D1参照)の相対変位が許容されるように外壁42に固定されている。なお、
図4中の矢印D1は、パネル面の面内方向のうち左右方向のみを示している。
【0053】
外側隔壁本体51は、外壁42に一体に設けられている。外側隔壁本体51は、外壁42の上面から内壁43に向かって延びる、左右方向に厚みを有する板状の形状であり、内側隔壁本体50の右方に、当該内側隔壁本体50の隔壁主部501と平行に設けられている。
【0054】
外側隔壁本体51と隔壁主部501とは、左右方向に一定寸法の隙間G2を隔てて対向している。この隙間G2の寸法は、内側隔壁本体50のフランジ部502と外壁42との前記隙間G1と略同じである。
【0055】
そして、外側隔壁本体51と隔壁主部501との対向面同士の間に減衰部材54が充填されている。減衰部材54は、内側隔壁本体50のフランジ部502と外壁42との間に充填される前記減衰部材53と同じ減衰ボンドであるが、
図4に示すように、前記減衰部材53からは分離された状態(非連続)で設けられている。これにより、外側隔壁本体51は、内壁43に対して、隔壁主部501と外側隔壁本体51との対向面に沿ったあらゆる方向、つまり、当該対向面の面内方向(
図4中の矢印D2参照)の相対変位が許容されるように内側隔壁本体50に固定されている。なお、矢印D2は、当該対向面の面内方向のうち、パネル面に直交する方向(パネル面の面外方向)のみを示している。面外方向は、要するに外壁42と内壁43とが接近及び離間する方向である。
【0056】
以上は、第1隔壁46の隔壁前部46aの構造であるが、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの構造も隔壁前部46aと同じである。また、第2隔壁47(隔壁右部47a及び隔壁左部47b)の構造も、基本的には、第1隔壁46(隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46c)の構造と同じである。例えば
図3のQ-Q線に沿った隔壁右部47aの部分の断面構造は、
図4に示した隔壁前部46aの断面構造と基本的には同じとなる。従って、第1隔壁46の隔壁中部46b、隔壁後部46c、及び第2隔壁47(隔壁右部47a及び隔壁左部47b)の構造部分について、上記隔壁前部46aと同一部分については、当該隔壁前部46aと同一符号を用いて説明を行う。
【0057】
上記二重壁パネル40では、
図3に示すように、第1隔壁46の隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの各隔壁主部501は前後方向に連続している。つまり、各隔壁主部501は、第1隔壁46全体として共通に設けられている。一方、隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46c各々のフランジ部502及び外側隔壁本体51は、隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46cで互いに独立に設けられている。つまり、フランジ部502及び外側隔壁本体51は、
図3に示すように、それらの長手方向(前後方向)両端が、第2隔壁47や周壁44から切り離されている。
【0058】
第2隔壁47についても同様である。第2隔壁47の隔壁右部47a及び隔壁左部47bの各隔壁主部501は左右方向に連続している。一方、フランジ部502及び外側隔壁本体51は、隔壁右部47a及び隔壁左部47bで互いに独立に設けられている。つまり、フランジ部502及び外側隔壁本体51は、
図3に示すように、長手方向(左右方向)両端が、第1隔壁46や周壁44から切り離されている。
【0059】
[作用効果等]
既述のフロアパネル7は、車外側に位置する外壁42と車内2側に位置する内壁43との間に密閉中空層Sが形成された二重壁パネル40で構成されている。この二重壁パネル40は、既述の通り、内壁43と外壁42との間に隔壁45が介設されている。そのため、中空層Sを確保しつつ十分な剛性が確保される。
【0060】
しかも、隔壁45には減衰部材53、54が設けられているため、タイヤ等からの振動が外壁42に伝わった場合でも、減衰部材53、54の振動減衰効果により、隔壁45を伝って内壁43に振動が伝播することが抑制される。つまり、外壁42が振動し、当該外壁42と内壁43とが相対的に変位すると、この相対変位により減衰部材53、54が剪断変形し、振動エネルギーの一部又は全部が熱エネルギーへと変換されて消失する。その結果、内壁43から外壁42への振動伝播が抑制される。そのため、隔壁45が設けられていることによる弊害、すなわち、隔壁45を介して外壁42から内壁43へ振動が伝播し、内壁43の振動による放射音(ノイズ)が車室2内に侵入するという現象が効果的に抑制される。例えば、ロードノイズのような比較的低周波域(主に500Hz以下)の騒音が車室内へ侵入することが効果的に抑制される。
【0061】
従って、上記フロアパネル7(二重壁パネル40)の構造によれば、パネル剛性の向上を図りながら、高い遮音性能を確保することができる。
【0062】
特に、隔壁45(第1隔壁46、第2隔壁47)は、内壁43から外壁42に向かって伸びる内側隔壁本体50と、外壁42から内壁43に向かって延びる外側隔壁本体51とを含み、さらに、内側隔壁本体50は、内壁43から外壁42に向かって伸びる隔壁主部501と、その先端から外壁42に沿って伸びるフランジ部502とを備えている。そして、内側隔壁本体50のフランジ部502と外壁42との間に減衰部材53が充填され、内側隔壁本体50の隔壁主部501と外側隔壁本体51の対向面同士の間に減衰部材54が充填されている。
【0063】
このような隔壁45(第1隔壁46、第2隔壁47)の構造によると、外壁42に伝わる振動のうち、パネル面の面内方向(
図4中の矢印D1)の振動成分については、内側隔壁本体50(フランジ部502)と外壁42との間の減衰部材53が剪断変形する。一方、前記振動のうち、パネル面の面外方向(
図4中の矢印D2)の振動成分については、内側隔壁本体50と外側隔壁本体51との間の減衰部材54が剪断変形する。そのため、上記フロアパネル7(二重壁パネル40)の構造によると、振動の方向に拘わらず振動減衰効果を享受することが可能であり、遮音性能の向上に大きく寄与すると言える。
【0064】
なお、
図4に示すように、上記二重壁パネル40は、内壁43の下面から内側隔壁本体50の先端(下端)までの寸法h1が、外壁42の上面から外側隔壁本体51の先端(上端)までの寸法h2よりも大きく設定されている。つまり、内側隔壁本体50を含む、内壁43側の断面係数が、外側隔壁本体51を含む外壁42側の断面係数に比して大きくなるように二重壁パネル40が構成されている。従って、上記二重壁パネル40の構造によれば、内壁43側のパネル剛性、つまり乗員等を支持する側のパネル剛性を高めることができ、フロアパネル7(二重壁パネル40)の耐久性向上に寄与する。
【0065】
[二重壁パネルの第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る二重壁パネル40Aの部分断面図であり、第1実施形態の
図4に対応する断面図、すなわち、第1隔壁46(隔壁前部46a)の部分の断面図である。
【0066】
図5に示すように、第2実施形態でも、隔壁前部46a(第1隔壁46)は、内側隔壁本体50、外側隔壁本体51及び減衰部材54で構成されており、この点で、第1実施形態の隔壁前部46aと構成が共通する。
【0067】
しかし、第2実施形態では、内側隔壁本体50は、内壁43の下面から外壁42に向かって垂直に延びる隔壁主部501と、その先端から、斜め方向に延びる傾斜部503とを備えている。傾斜部503は、前記パネル面に対して所定角度θだけ傾斜しており、当例では、例えばθ=45°だけ傾斜している。
【0068】
また、外側隔壁本体51も、一定寸法の隙間G3を隔てて前記傾斜部503と平行となるように、外壁42から内壁43に向かって斜め方向に延びている。そして、内側隔壁本体50の傾斜部503と外側隔壁本体51との対向面同士の間に減衰部材54が充填されている。
【0069】
この構成により、第2実施形態では、内側隔壁本体50と外側隔壁本体51との相対的な変位を、外側隔壁本体51(傾斜部503)と外側隔壁本体51との対向面の面内方向(
図5中の矢印D3参照)の変位に変換して、減衰部材54を剪断変形させるように構成されている。なお、
図5中の矢印D3は、前記対向面の面内方向のうち左右の方向のみを示している。
【0070】
以上は、第1隔壁46の隔壁前部46aの構造であるが、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの構造も隔壁前部46aと同じである。また、第2隔壁47(隔壁右部47a及び隔壁左部47b)の構造も、基本的には、第1隔壁46(隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46c)の構造と同じである。
【0071】
以上のような第2実施形態の二重壁パネル40Aによると、内側隔壁本体50及び外側隔壁本体51の対向面同士の間にのみ減衰部材54が設けられた構造であるが、パネル面の面内方向及び面外方向のいずれの方向の振動によっても減衰部材54を剪断変形させることができる。そのため、内側隔壁本体50と外側隔壁本体51との間にのみ減衰部材54が設けられたシンプルな構成で、振動の方向に拘わらず振動減衰効果を享受することが可能となる。従って、隔壁45の構造を簡素化すること、ひいては二重壁パネル40の生産性の向上や低廉化に寄与する。
【0072】
[二重壁パネルの第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る二重壁パネル40Bの部分断面図であって、
図5に対応した断面図である。第3実施形態の二重壁パネル40Bは、第2実施形態の変形例として位置づけられる。
【0073】
図6に示すように、内側隔壁本体50は、外壁42に向かって膨出するように、内壁43に一体に形成された膨出部504によって構成され、また、外側隔壁本体51は、内壁43に向かって膨出するように、外壁42に一体に形成された膨出部511によって構成されている。
【0074】
内側隔壁本体50(膨出部504)及び外側隔壁本体51(膨出部511)は、前後方向に延在する断面矩形の形状を有している。内側隔壁本体50の下端面504aと、外側隔壁本体51の上端面511aとは一定寸法の隙間G3を隔てて対向しており、これらの端面504a、511aは、パネル面に対して所定角度θ(θ=45°)だけ傾斜している。そして、内側隔壁本体50の下端面504aと、外側隔壁本体51の上端面511aとの間に減衰部材54が充填されている。
【0075】
以上は、第1隔壁46の隔壁前部46aの構造であるが、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの構造も隔壁前部46aと同じである。また、第2隔壁47(隔壁右部47a及び隔壁左部47b)の構造も、基本的には、第1隔壁46(隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46c)の構造と同じである。
【0076】
第3実施形態の二重壁パネル40Bの構造によれば、外壁42及び内壁43の製造過程で、プレス加工によって内側隔壁本体50や外側隔壁本体51を容易に形成することができるため、二重壁パネル40の生産性の向上に寄与する。また、内側隔壁本体50及び外側隔壁本体51が膨出部504、511で形成されているために強度面でも有利であり、フロアパネル7(二重壁パネル40)の耐久性向上にも寄与する。
【0077】
なお、
図6の二重壁パネル40Bでは、内側隔壁本体50(膨出部504)及び外側隔壁本体51(膨出部511)の断面形状は矩形であるが、例えば、
図7に示すように、内側隔壁本体50及び外側隔壁本体51は、所定角度θ(θ=45°)だけ傾斜した傾斜面504b、511bを備えた、断面三角形の形状であってもよい。
【0078】
[二重壁パネルの第4実施形態]
図8は、第4実施形態に係る二重壁パネル40Cの部分断面図であって、
図5に対応した断面図である。第4実施形態の二重壁パネル40Cも、第2実施形態の変形例として位置づけられる。
【0079】
第4実施形態では、内壁43に内壁側パーツ60Aが組付けられることにより、当該内壁側パーツ60Aにより内側隔壁本体50が形成され、外壁42に外壁側パーツ60Bが組付けられることにより、外壁側パーツ60Bにより外側隔壁本体51が形成されている。すなわち、内壁側パーツ60Aが本発明の「第1パーツ」に相当し、外壁側パーツ60Bが本発明の「第2パーツ」に相当する。当例では、外壁42、内壁43及び各パーツ60A、60Bは、鋼板等の金属材料で形成されており、各パーツ60A、60Bは、例えば溶接により外壁42及び内壁43に接合されている。なお、各パーツ60A、60Bの組付手段は溶接に限定されない。
【0080】
内壁側パーツ60Aは、隔壁主部501及び傾斜部503に対応する第1面部61及び第2面部62を備えた断面V字型の板状パーツであり、第1面部61の末端部分で内壁43に接合されている。また、外壁側パーツ60Bは、外側隔壁本体51に相当する第1面部65と、第2面部66とを備えた断面V字型の板状パーツであり、第2面部66を外壁42に重ねた状態で、当該第2面部で外壁42に接合されている。
【0081】
この構成により、内壁43に内側隔壁本体50が、外壁42に外側隔壁本体51が各々設けられている。そして、内側隔壁本体50の傾斜部503(内壁側パーツ60Aの第2面部62)と、外側隔壁本体51(外壁側パーツ60Bの第1面部65)との間に減衰部材54が充填されている。
【0082】
以上は、第1隔壁46の隔壁前部46aの構造であるが、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの構造も隔壁前部46aと同じである。また、第2隔壁47(隔壁右部47a及び隔壁左部47b)の構造も、第1隔壁46(隔壁前部46a、隔壁中部46b及び隔壁後部46c)の構造と同じである。
【0083】
第4実施形態の二重壁パネル40Cの構造によると、内側隔壁本体50の傾斜部503と外側隔壁本体51との対向面の角度(パネル面に対する前記角度θ)を所望の角度に設定した二重壁パネル40Cを合理的に生産することが可能となる。
【0084】
つまり、二重壁パネル40Cに伝わる振動の方向は、車体における二重壁パネルの設置場所や車体の具体的な構造等によって相違する。そのため、振動方向に応じて、効率良く減衰部材54が剪断変形するように、前記角度θを設定するのが理想的である。例えば、パネル面の面内方向の振動成分が支配的な場合には、前記角度θを相対的に小さく設定することで減衰部材54を効率良く剪断変形させることができる。他方、パネル面と直交する方向(パネル面の面外方向)の振動成分が支配的な場合には、前記角度θを相対的に大きく設定することで減衰部材54を効率良く剪断変形させることができる。従って、車体における二重壁パネル40Cの設置場所や車体の具体的な構造等、振動特性に応じて前記角度θを最適化するのが理想的である。
【0085】
この点について、第4実施形態の二重壁パネル40Cの構成によれば、前記角度θが互いに異なる複数種類のパーツ60A、60Bから所望角度θを実現できる一組のパーツ60A、60Bを選定し、当該パーツ60A、60Bを外壁42及び内壁43に組込むことにより、外壁42及び内壁43を共通化しながら、前記角度θの異なる複数種類の二重壁パネル40Cを合理的に製造することができる。
【0086】
この場合、各パーツ60A、60Bは、プレス加工により容易に製造でき、また、内壁側パーツ60Aにおける第1面部61と第2面部62との成す角度α、及び外壁側パーツ60Bにおける第1面部65と第2面部66との成す角度βを適宜変更するだけで、前記角度θが異なる各パーツ60A、60Bを容易に製造できる。
【0087】
なお、内側隔壁本体50や外側隔壁本体51を構成する各パーツ60A、60Bの具体的な材質や形状等は、
図8に示すものに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0088】
[二重壁パネルの第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係る二重壁パネル40Dの模式平面図である。また、
図10(a)、(b)は、二重壁パネル40Dの部分断面図であって、
図10(a)は、第1隔壁46の隔壁前部46aの部分の断面(
図9のXa-Xa線に沿った部分の断面図)であり、
図10(b)は、第2隔壁47の隔壁右部47aの部分の断面図(
図9のXb-Xb線に沿った部分の断面図)である。第5実施形態の二重壁パネル40Dは、第1実施形態の変形例として位置づけられる。
【0089】
第1実施形態では、第1隔壁46及び第2隔壁47の何れもが、パネル面の面内方向(
図4中の矢印D1)の振動成分により剪断変形する減衰部材53と、主にパネル面と直交する方向(パネル面の面外方向/
図4中の矢印D2)の振動成分より剪断変形する減衰部材54とを有していた。これに対して、第5実施形態の二重壁パネル40Dでは、第1隔壁46は、パネル面の面内方向(矢印D1)の振動成分により剪断変形する減衰部材53のみを備え、第2隔壁47は、パネル面と直交する方向(パネル面の面外方向/矢印D2)の振動成分より剪断変形する減衰部材54のみを備えた構成となっている。
【0090】
具体的には、
図10(a)に示すように、隔壁前部46a(第1隔壁46)は、内壁43の下面から外壁42に向かって延びる隔壁主部501と、その先端から外壁42に沿って左右方向に延びるフランジ部502とを備えた断面逆T字型の内側隔壁本体50を有している。そして、内側隔壁本体50のフランジ部502と外壁42との間に減衰部材53が充填されている。以上は、第1隔壁46の隔壁前部46aの構造であるが、隔壁中部46b及び隔壁後部46cの構造も隔壁前部46aと同じである。
【0091】
また、
図10(b)に示すように、隔壁右部47a(第2隔壁47)は、内壁43の下面から外壁42に向かって延びる内側隔壁本体50(本発明の「第3隔壁本体」に相当する)と、内側隔壁本体50の前方に隣接する位置において外壁42から内壁43に向かって延びて、前記内側隔壁本体50と平行に設けられる外側隔壁本体51とを有している。そして、内側隔壁本体50と外側隔壁本体51との間に減衰部材54が充填されている。以上は、第2隔壁47の隔壁右部47aの構造であるが、隔壁左部47bの構造も隔壁前部46aと同じである。
【0092】
なお、当例では、第1隔壁46(隔壁前部46a、隔壁中部46b、隔壁後部46c)が、本発明の「第1モード隔壁部」に相当し、第2隔壁47(隔壁右部47a、隔壁左部47b)が、本発明の「第2モード隔壁部」に相当する。
【0093】
第5実施形態の二重壁パネル40Dでは、パネル面の面内方向(矢印D1)の振動成分については、主に第1隔壁46の減衰部材53が剪断変形し、当該減衰部材53による振動減衰効果により、外壁42から内壁43への振動伝播が抑制される。一方、パネル面に直交する方向(矢印D2)の振動成分については、主に第2隔壁47の減衰部材54が剪断変形し、当該減衰部材54による振動減衰効果により、外壁42から内壁43への振動伝播が抑制される。従って、第1実施形態の二重壁パネル40と同様に、振動の方向に拘わらず、外壁42から内壁43へと振動伝播が効果的に抑制される。
【0094】
なお、当例では、既述の通り、第1隔壁46が、本発明の「第1モード隔壁部」として構成され、第2隔壁47が、本発明の「第2モード隔壁部」として構成されているが、逆の構成であってもよく、適宜変更可能である。
【0095】
[変形例等]
以上説明した実施形態のフロアパネル7(二重壁パネル40、40A~40D)の構造は、本発明に係る車両のパネル構造の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも可能である。
【0096】
(1)第1実施形態の二重壁パネル40では、
図3に示すように、第1隔壁46及び第2隔壁47の各々両端は周壁44に繋がっており(連続しており)、第1隔壁46と第2隔壁47とはこれらが交差する位置で互いに繋がっている(連続している)。しかし、第1隔壁46及び第2隔壁47の各々両端は、周壁44から切り離されていれもよい。同様に、第1隔壁46と第2隔壁47との交差部分は互いに切り離されていれもよい。この点は、他の実施形態の二重壁パネル40A~40Dについても同じである。
【0097】
(2)第1実施形態の二重壁パネル40では、隔壁45は、前後方向に延在する第1隔壁46と車幅方向に延在する第2隔壁47とからなる格子状である。しかし、隔壁45は、これに限定されるものではない。例えば、隔壁45は、平面視で二重壁パネル40の対角線上に位置するように設けられていてもよい。この点は、他の実施形態の二重壁パネル40A~40Dについても同じである。
【0098】
(3)実施形態では、フロアパネル7を二重壁パネル40、40A~40Dにより構成した例について説明したが、例えばダッシュパネル3、リヤフロア10、ルーフパネル24、図外のフロントドア及びリヤドアを、既述の二重壁パネル40、40A~40Dに準じた構造の二重壁パネルにより構成するようにしてもよい。これらの構造によれば、車両の剛性を確保しながら、ロードノイズや走行音など、車外から車室2内への騒音の侵入を効果的に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
2 車室
3 ダッシュパネル
7 フロアパネル
8 トンネル部
10 リヤフロア
12 サイドシル
24 ルーフパネル
40、40A,40B、40C、40D 二重壁パネル
42 外壁(第1パネル)
43 内壁(第2パネル)
44 周壁
45 隔壁
46 第1隔壁
47 第2隔壁
50 内側隔壁本体(第1隔壁本体)
51 外側隔壁本体(第2隔壁本体)
501 隔壁主部
502 フランジ部
53、54 減衰部材
S 中空層