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  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20250508BHJP
【FI】
G03G15/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021084124
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177698
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】種村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 真路
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-231964(JP,A)
【文献】特開2006-251362(JP,A)
【文献】特開2006-023417(JP,A)
【文献】特開2000-275988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤を用いて前記感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像手段と、
アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体と、
前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードと、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシとを備え、前記クリーニングブレード及び前記回転ブラシを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段と、
を備え、
前記回転ブラシの外周面が保持するトナー量を1.0g/m 以上4.0g/m 以下に制御し、
前記中間転写体の線速度と前記感光体の線速度とを下記の要件(1)に制御し、
前記中間転写体の線速度と前記二次転写手段の線速度とを下記の要件(2)に制御する、
画像形成装置。
要件(1):0.3≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
要件(2):0.3≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
【請求項2】
前記要件(1)が下記の要件(1’)である、請求項1に記載の画像形成装置。
要件(1’):0.5≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.2
【請求項3】
前記要件(2)が下記の要件(2’)である、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
要件(2’):0.5≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.2
【請求項4】
前記中間転写体の前記表面層が海島構造を有し、
前記海島構造が、前記アクリル系樹脂を含む海相と、前記フッ素含有ポリエーテルを含む島相とを有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記フッ素含有ポリエーテルがパーフルオロポリエーテルを含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナーの体積平均粒径が7.0μm以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トナーの体積平均粒径が5.8μm以下である、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
トナーを含む現像剤を用いて前記感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像工程と、
アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体の表面に前記トナー像を一次転写する一次転写工程と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写工程と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードと、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシとを用い、前記クリーニングブレード及び前記回転ブラシを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング工程と、
を有し、
前記回転ブラシの外周面が保持するトナー量が1.0g/m 以上4.0g/m 以下であり、
前記中間転写体の線速度と前記感光体の線速度とが下記の要件(1)を満足し、
前記中間転写体の線速度と前記二次転写工程に用いる二次転写手段の線速度とが下記の要件(2)を満足する、
画像形成方法。
要件(1):0.3≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
要件(2):0.3≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置、画像形成方法及び中間転写ユニットを提供する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基層と表面層とを有し、表面層がその厚み方向においてマトリックス-ドメイン構造を有し、マトリックスが結着樹脂を含み、ドメインがパーフルオロポリエーテルを含み、超微小硬度計によって測定される微小硬度が50MPa以上である電子写真用中間転写体が開示されている。
特許文献2には、基層及び表面層を有し、表面層が結着樹脂及びパーフルオロポリエーテルを含有し、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンとメチルエチルケトンを1:1(質量基準)で混合した溶剤に25℃で24時間浸漬後の表面層10mmあたりのパーフルオロポリエーテルの抽出量が0.10mg以上5.00mg以下である電子写真用中間転写体が開示されている。
特許文献3には、板状の樹脂基材と、樹脂基材の少なくとも一つの辺部を覆う被覆層であって、ダイヤモンドライクカーボンと窒化チタン、シリコンチタン、タングステンチタン、炭化チタン及び炭窒化チタンから成る群から選ばれる少なくとも一つとを含有する繋ぎ層と、繋ぎ層を覆いダイヤモンドライクカーボンからなる表面層と、を有する被覆層と、を具えたクリーニングブレードが開示されている。
特許文献4には、被クリーニング部材に接触する接触面における、クリーニングブレードの長手方向の両端部にテトラヘドラルアモルファスカーボンの処理層を有するクリーニングブレードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-231964号公報
【文献】特開2015-028614号公報
【文献】特開2018-072468号公報
【文献】特開2019-061151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施形態は、中間転写体の線速度と感光体の線速度とが要件(1)を満足しない画像形成装置、又は、中間転写体の線速度と二次転写手段の線速度とが要件(2)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤を用いて前記感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像手段と、
アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体と、
前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを備え、前記クリーニングブレードを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段と、
を備え、
前記中間転写体の線速度と前記感光体の線速度とを下記の要件(1)に制御する、画像形成装置。
要件(1):0.3≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
<2> さらに、前記中間転写体の線速度と前記二次転写手段の線速度とを下記の要件(2)に制御する、<1>に記載の画像形成装置。
要件(2):0.3≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
<3> 感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤を用いて前記感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像手段と、
アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体と、
前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを備え、前記クリーニングブレードを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段と、
を備え、
前記中間転写体の線速度と前記二次転写手段の線速度とを下記の要件(2)に制御する、画像形成装置。
要件(2):0.3≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
<4> さらに、前記中間転写体の線速度と前記感光体の線速度とを下記の要件(1)に制御する、<3>に記載の画像形成装置。
要件(1):0.3≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
<5> 前記要件(1)が下記の要件(1’)である、<1>、<2>又は<4>に記載の画像形成装置。
要件(1’):0.5≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.2
<6> 前記要件(2)が下記の要件(2’)である、<2>、<3>又は<4>に記載の画像形成装置。
要件(2’):0.5≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.2
<7> 前記中間転写体の前記表面層が海島構造を有し、前記海島構造が、前記アクリル系樹脂を含む海相と、前記フッ素含有ポリエーテルを含む島相とを有する、<1>~<6>のいずれか1項に記載の画像形成装置。
<8> 前記フッ素含有ポリエーテルがパーフルオロポリエーテルを含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の画像形成装置。
<9> 前記中間転写体クリーニング手段がさらに、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシを備え、前記回転ブラシの外周面が保持するトナー量を1.0g/m以上4.0g/m以下に制御する、<1>~<8>のいずれか1項に記載の画像形成装置。
<10> 前記トナーの体積平均粒径が7.0μm以下である、<1>~<9>のいずれか1項に記載の画像形成装置。
<11> 前記トナーの体積平均粒径が5.8μm以下である、<10>に記載の画像形成装置。
<12> 感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
トナーを含む現像剤を用いて前記感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像工程と、
アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体の表面に前記トナー像を一次転写する一次転写工程と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写工程と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを用い、前記クリーニングブレードを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング工程と、
を有し、
前記中間転写体の線速度と前記感光体の線速度とが下記の要件(1)を満足する、画像形成方法。
要件(1):0.3≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
<13> 感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
トナーを含む現像剤を用いて前記感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像工程と、
アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体の表面に前記トナー像を一次転写する一次転写工程と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写工程と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを用い、前記クリーニングブレードを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング工程と、
を有し、
前記中間転写体の線速度と前記二次転写工程に用いる二次転写手段の線速度とが下記の要件(2)を満足する、画像形成方法。
要件(2):0.3≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
<14> アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体と、
前記中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを備え、前記クリーニングブレードを前記中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段と、
を備える、中間転写ユニット。
【発明の効果】
【0006】
<1>、<7>、<8>、<10>又は<11>によれば、要件(1)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<2>によれば、要件(2)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<3>、<7>、<8>、<10>又は<11>によれば、要件(2)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<4>によれば、要件(1)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<5>によれば、要件(1’)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<6>によれば、要件(2’)を満足しない画像形成装置に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<9>によれば、中間転写体クリーニング手段が備える回転ブラシが保持するトナー量が1.0g/m未満又は4.0g/m超である場合に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成装置が提供される。
<12>によれば、要件(1)を満足しない画像形成方法に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成方法が提供される。
<13>によれば、要件(2)を満足しない画像形成方法に比べて、中間転写体の転写維持性に優れる画像形成方法が提供される。
<14>によれば、中間転写体の転写維持性に優れる中間転写ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る画像形成装置が備える中間転写体の一例を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置が備えるクリーニングブレードの一例を示す概略斜視図である。
図3】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0009】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0012】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体と、感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、トナーを含む現像剤を収容し、現像剤を用いて感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像手段と、中間転写体と、トナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、クリーニングブレードを中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段と、を備える。
【0014】
本実施形態に係る画像形成装置において、中間転写体は、アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体である。
本実施形態に係る画像形成装置において、中間転写体クリーニング手段は、中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを備え、当該クリーニングブレードを中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段である。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置では、感光体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、トナーを含む現像剤を用いて感光体の表面に形成された静電荷像を現像しトナー像を形成する現像工程と、中間転写体の表面にトナー像を一次転写する一次転写工程と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写工程と、クリーニングブレードを中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0016】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段;トナー像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングする感光体クリーニング手段;トナー像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段;等をさらに備えていてもよい。本実施形態に係る画像形成装置は、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。
【0017】
本開示は、画像形成装置及び画像形成方法として、第一実施形態と第二実施形態とを提供する。本開示において、第一実施形態と第二実施形態とに共通する事項を述べる場合は、単に「本実施形態」という。
【0018】
第一実施形態は、中間転写体の線速度と感光体の線速度とを下記の要件(1)に制御する。中間転写体の線速度と、感光体の線速度とは、どちらが速くてもよい。
要件(1):0.3≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
【0019】
第一実施形態において感光体が複数個ある場合、複数個の感光体それぞれについて、中間転写体の線速度と感光体の線速度とが要件(1)に制御される。
【0020】
第二実施形態は、中間転写体の線速度と二次転写手段の線速度とを下記の要件(2)に制御する。中間転写体の線速度と、二次転写手段の線速度とは、どちらが速くてもよい。
要件(2):0.3≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.5
【0021】
本実施形態において線速度とは、回転部材の外周の移動速度を指し、単位はmm/秒である。
感光体の線速度は、20mm/秒以上800mm/秒以下が好ましい。
中間転写体の線速度は、20mm/秒以上800mm/秒以下が好ましい。
二次転写手段の線速度は、20mm/秒以上800mm/秒以下が好ましい。
【0022】
以下、「|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100」を式(1)といい、「|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100」を式(2)という。
【0023】
従来、トナー付着を抑制した中間転写体として、パーフルオロポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体が知られている。この中間転写体は、使用につれて表面層が徐々に摩耗することで、トナーの付着しにくさが維持される。
ただし、中間転写体は一般的に、画像形成部と非画像形成部との間、及び、幅方向(回転方向に直交する方向)の中央部と端部との間で摩耗ムラが生じることがある。特に、中間転写体のクリーニングブレードとして、表面層を設けていないゴム製ブレードを用いた場合に顕著である。中間転写体の外周面に摩耗ムラが発生すると、中間転写体から記録媒体への転写性にムラが発生してしまう。
これに対して本実施形態は、パーフルオロポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体を備えた画像形成装置において、中間転写体のクリーニングブレードとして、表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを用い、且つ、中間転写体の線速度と感光体の線速度とを要件(1)に制御することにより、又は、中間転写体の線速度と二次転写手段の線速度とを要件(2)に制御することにより、中間転写体の転写性にムラが発生することを抑制し、長期にわたる転写維持性に優れる。
【0024】
要件(1)は、中間転写体と感光体との間に適度な線速度の差があることを意味する。
式(1)の値が0.3未満であると、中間転写体表面に付着した放電生成物の除去が困難であり、長期にわたって使用した場合に中間転写体の転写性にムラが発生することがある。
式(1)の値が1.5超であると、線速度差に起因する中間転写体上の画像伸びの補正が困難であり、長期にわたって使用した場合に中間転写体の転写性にムラが発生することがある。
【0025】
要件(2)は、中間転写体と二次転写手段との間に適度な線速度の差があることを意味する。
式(2)の値が0.3未満であると、中間転写体表面に付着した放電生成物の除去が困難であり、長期にわたって使用した場合に中間転写体の転写性にムラが発生することがある。
式(2)の値が1.5超であると、線速度差に起因する中間転写体上の画像伸びの補正が困難であり、長期にわたって使用した場合に中間転写体の転写性にムラが発生することがある。
【0026】
第一実施形態は、中間転写体の線速度と二次転写手段の線速度との関係を制限するものではないが、中間転写体の線速度と二次転写手段の線速度とを要件(2)に制御することが好ましい。
第二実施形態は、中間転写体の線速度と感光体の線速度との関係を制限するものではないが、中間転写体の線速度と感光体の線速度とを要件(1)に制御することが好ましい。
【0027】
本実施形態において、要件(1)は、下記の要件(1’)が好ましい。
要件(1’):0.5≦|中間転写体の線速度-感光体の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.2
【0028】
本実施形態において感光体が複数個ある場合、複数個の感光体それぞれについて、要件(1’)が好ましい。
【0029】
本実施形態において、要件(2)は、下記の要件(2’)が好ましい。
要件(2’):0.5≦|中間転写体の線速度-二次転写手段の線速度|/中間転写体の線速度×100≦1.2
【0030】
第一実施形態は、中間転写体の線速度と感光体の線速度とを制御する制御部を備える。この制御部は、二次転写手段の線速度を制御する制御部でもあることが好ましい。
第二実施形態は、中間転写体の線速度と二次転写手段の線速度とを制御する制御部を備える。この制御部は、感光体の線速度を制御する制御部でもあることが好ましい。
【0031】
以下、本実施形態が備える中間転写体と中間転写体クリーニング手段とを詳細に説明する。
【0032】
[中間転写体]
図1は、中間転写体の一例を示す概略斜視図である。図1に図示された中間転写体50は、無端のベルト状部材である。中間転写体は、これに限られず、ロール状であってもよい。
【0033】
図1に図示された中間転写体50は、基層52と、表面層54とを有する。表面層54は、中間転写体50の外周面を構成する層である。
【0034】
中間転写体50の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。
本実施形態において体積抵抗率(Ω・cm)の測定は下記のとおり行う。
測定環境は、温度22℃且つ相対湿度55%である。試料を測定環境に24時間以上置き、調温調湿を行う。抵抗測定機は微小電流計(Advantest社製R8430A)、プローブはURプローブ(三菱ケミカル(株)製)である。印加電圧1kV、印加時間5秒間、荷重1kgfである。測定点は、中間転写体の周方向に等間隔で6点、中間転写体の幅方向に中央部及び両端部の3点、合計18点である。18点の測定値を算術平均する。
【0035】
中間転写体50は、その表面において超微小硬度計によって測定される微小硬度が50MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることが更に好ましい。微小硬度は、超微小硬度計(エリオニクス(株)製、商品名ENT-1100)と稜角115°のダイヤモンド製三角圧子とを使用し、50mgの荷重で測定する。
【0036】
基層52は、樹脂に導電剤を含有させた半導電性のフィルム又はシートであることが好ましい。
【0037】
樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルホン、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステルが挙げられる。基層の強度と耐久性の観点から、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンが好ましい。樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;アルミニウム、ニッケル等の金属;酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化チタン、酸化イットリウム等の金属酸化物;チタン酸カリウム、塩化カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリエーテル、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等のイオン導電性高分子;などが挙げられる。導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
基層52の導電剤としては、カーボンブラックが好ましい。導電剤として用いるカーボンブラックの平均一次粒径は、10nm以上40nm以下が好ましい。
【0040】
導電剤の含有量は、導電剤の種類によるが、導電剤としてカーボンブラックを用いた場合、樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下が好ましい。
【0041】
基層52の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下であることが好ましい。
【0042】
基層52は、酸化防止剤、架橋剤、難燃剤、着色剤、界面活性剤、分散剤、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
基層52の厚さは、30μm以上150μm以下が好ましい。
【0044】
表面層54は、アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する。本開示において「アクリル系樹脂」とは、樹脂の重合成分の50モル%以上がアクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上である樹脂を意味する。
【0045】
アクリル系樹脂を合成する単量体として、例えば、下記のアクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
(i)ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリレート。
(ii)ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、アルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート及びビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のメタクリレート。
【0046】
フッ素含有ポリエーテルは、例えば、アルキレンエーテル(メチレンエーテル、エチレンエーテル、プロピレンエーテル等)を繰り返し単位として有するオリゴマー又はポリマーにおいて、水素原子がフッ素原子に置換されたオリゴマー又はポリマーである。
【0047】
フッ素含有ポリエーテルとしてはパーフルオロポリエーテルが好ましい。パーフルオロポリエーテルは、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位として有するオリゴマー又はポリマーを指す。パーフルオロアルキレンエーテルとしては、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、パーフルオロプロピレンエーテル等が挙げられる。具体的には、ダイキン工業のデムナム(商品名)、デュポン社のクライトックス(商品名)、ソルベイソレクシス社のフォンブリン(商品名)が挙げられる。
【0048】
パーフルオロポリエーテルは、繰り返し単位1:-O-CF-CF-及び繰り返し単位2:-O-CF-の少なくともいずれかを繰り返し単位として有するオリゴマー又はポリマーが好ましい。繰り返し単位1の繰り返し数及び繰り返し単位2の繰り返し数は、それぞれ独立に0以上100以下が好ましい。パーフルオロポリエーテルが繰り返し単位1及び繰り返し単位2の両方を有する場合、パーフルオロポリエーテルは、ブロック共重合体でもよくランダム共重合体でもよい。
【0049】
パーフルオロポリエーテルは、表面層54においてアクリル系樹脂と結合又は結合に近い状態を形成する反応性官能基、又は、表面層54においてアクリル系樹脂と結合又は結合に近い状態を形成しない非反応性官能基を有する分子でもよい。
反応性官能基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基、オキシシラニル基が挙げられる。当該反応性官能基を有するパーフルオロポリエーテルとしては、例えば、ソルベイソレクシス社のFluorolink MD500、Fluorolink MD700、Fluorolink 5101X、Fluorolink 5113X、Fluorolink AD1700、Fluorolink S10、ダイキン工業社のオプツールDACが挙げられる。
非反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、トリフルオロメチル基、メチル基が挙げられる。当該非反応性官能基を有するパーフルオロポリエーテルとしては、ソルベイソレクシス社のFluorolink D10H、Fluorolink D4000、Fomblin Z15、ダイキン工業社のデムナムS-20、デムナムS-65、デムナムS-200が挙げられる。
【0050】
パーフルオロポリエーテルの重量平均分子量は、100以上9000以下が好ましく、より好ましくは100以上8000以下である。
【0051】
表面層54に含まれるフッ素含有ポリエーテルの含有量は、表面層54の全質量に対して、5質量%以上70質量%以下が好ましく、10質量%以上60質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
【0052】
表面層54に含まれるパーフルオロポリエーテルの含有量は、表面層54の全質量に対して、10質量%以上70質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
【0053】
表面層54は、パーフルオロポリエーテルを分散させるための分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、パーフロオロアルキル鎖と炭化水素に親和性のある部位を有する化合物、つまり、親フッ素と嫌フッ素の両親媒性界面活性剤、両親媒性ブロックコポリマー、両親媒性グラフトコポリマーが好ましい。分散剤としては、下記の(a)及び(b)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0054】
(a)フルオロアルキル基を有するビニルモノマーと、アクリレート又はメタクリレートとを共重合させて得られるブロック共重合体。具体的には、日油(株)製のモディパーF200、F210、F2020、F600、FT-600が挙げられる。
【0055】
(b)フルオロアルキル基を有するアクリレート又はメタクリレートと、ポリメチルメタクリレートを側鎖に有するメタクリレートマクロモノマーとを共重合させて得られる櫛型グラフト共重合体。具体的には、東亜合成(株)製のアロンGF-150、GF-300、GF-400が挙げられる。
【0056】
表面層54に含まれる分散剤の含有量は、表面層54の全質量に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、5質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0057】
表面層54は、アクリル系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。その他の樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
表面層54は、導電剤を含むことが好ましい。導電剤としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化チタン、酸化イットリウム等の金属酸化物;ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;アルミニウム、ニッケル等の金属;チタン酸カリウム、塩化カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリエーテル、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等のイオン導電性高分子;などが挙げられる。導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
表面層54の導電剤としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化チタン、酸化イットリウム等の金属酸化物が好ましい。導電剤の含有量は、導電剤として金属酸化物を用いた場合、樹脂100質量部に対して5質量部以上30質量部以下が好ましい。
【0060】
表面層54は、酸化防止剤、架橋剤、難燃剤、着色剤、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
表面層54の厚さは、表面層54の耐摩耗性の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、中間転写体50の耐屈曲性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0062】
表面層54は、海島構造を有することが好ましい。表面層54の海島構造は、アクリル系樹脂を含む海相と、フッ素含有ポリエーテル(好ましくはパーフルオロポリエーテル)を含む島相とを有することが好ましい。本形態において、アクリル系樹脂を含む連続相が海相であり、フッ素含有ポリエーテル(好ましくはパーフルオロポリエーテル)を含む分散相が島相である。本実施形態において、連続相である海相と分散相である島相とを有する構造を海島構造という。
【0063】
表面層54の断面において島相の平均径は、30nm以上3000nm以下であることが好ましく、100nm以上1000nm以下であることがより好ましい。
【0064】
表面層54の断面において島相の面積割合は、1%以上50%以下であることが好ましく、3%以上30%以下であることがより好ましい。
【0065】
海島構造の確認、島相の寸法及び面積の測定は、下記の方法により行う。
(1)表面層の断面の画像撮影
クライオミクロトーム法により表面層を厚さ方向に切って、表面層の切片試料を作製する。切片試料を走査型電子顕微鏡により撮像する。
【0066】
(2)海相と島相との区別
海島構造の海相と島相とは、色の濃淡で区別できる。色の濃淡により、海島構造の有無並びに海相及び島相の有無を確認する。
【0067】
(3)島相の平均径と面積割合
画像内において4μm四方の領域を無作為に10領域選択し、合計160μmを観察する。表面層の厚さが4μmに満たない場合は、観察面積が合計160μmとなるように、観察する領域数を増やす。
観察する領域に見出されるすべての島相の長径(μm)を計測し、その算術平均を島相の平均径(μm)とする。長径とは、輪郭線上の2点を結ぶすべての直線のうち最も長い直線の長さである。
観察する領域に見出されるすべての島相の面積を計測し、表面層の総面積(つまり160μm)に対する島相の総面積の割合を算出し、島相の面積割合(%)とする。
【0068】
中間転写体50は、基層52及び表面層54以外の層を有していてもよい。例えば、基層52と表面層54との間に金属層又は金属酸化物層を有していてもよい。
【0069】
中間転写体50を製造する方法としては、例えば、基層52となる管状部材を用意する第一の工程と、管状部材上に表面層54を形成する第二の工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0070】
第一の工程によって用意される管状部材は、樹脂及び導電剤を含有する樹脂組成物を溶融し、ダイスからベルト状に押し出して固化させた押出成形品;樹脂及び導電剤を含有する樹脂組成物を溶融し、ベルト状の金型に入れて固化させた射出成形品;樹脂、樹脂前駆体又は単量体と導電剤とを含有する液体組成物を芯体に塗布し固化させた塗布成形品;などのいずれでもよい。
【0071】
第二の工程は、例えば、アクリル系樹脂又は単量体とフッ素含有ポリエーテルとを含有する液体組成物を管状部材の外周面に塗布し固化させる工程;アクリル系樹脂又は単量体とフッ素含有ポリエーテルとを含有する液体組成物を芯体に塗布し固化させて管状フィルムを作製し、管状フィルムを管状部材に積層する工程;などである。液体組成物を固化させるために、成分の種類に応じて、乾燥、加熱、電子線照射又は紫外線照射を行ってもよい。
【0072】
表面層54を形成するための液体組成物には、重合開始剤、分散剤、導電剤などを添加してもよい。
【0073】
[中間転写体クリーニング手段]
中間転写体クリーニング手段は、例えば、ハウジングと、クリーニングブレードと、回収したトナーを収容する容器とを有する。中間転写体クリーニング手段はさらにほかの部材又は機構を有していてもよい。
【0074】
図2は、中間転写体クリーニング手段が備えるクリーニングブレードの一例を示す概略斜視図である。図2に図示されたクリーニングブレード60は、板状の部材である。クリーニングブレード60は、例えば金属製の軸を介して、中間転写体クリーニング手段のハウジングに接続されている。
【0075】
クリーニングブレード60において、長辺61及びその周辺領域が中間転写体に接触する接触部である。ta-C層62は、テトラへドラルアモルファスカーボン層を示しており、クリーニングブレード60において長辺61を覆うように、つまり、中間転写体に接触する接触部の表面に存在している。クリーニングブレード60は、中間転写体に接触しない領域の表面にもテトラへドラルアモルファスカーボン層を有していてもよい。
【0076】
クリーニングブレード60は、ポリウレタンゴム、ポリイミドゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、プロピレンゴム、ブタジエンゴム等の弾性部材を基材とし、弾性部材の表面の一部にta-C層62を有する。
【0077】
クリーニングブレード60の基材としてはポリウレタンゴムが好ましい。ポリウレタンゴムは一般的に、ポリイソシアネートとポリオールとを重合して合成される。ポリウレタンゴムはハードセグメントとソフトセグメントとを有していることが好ましい。
【0078】
クリーニングブレード60の厚さは、1mm以上7mm以下が好ましい。
【0079】
ta-C層62の層厚は、0.05μm以上0.3μm以下が好ましく、0.1μm以上0.2μm以下がより好ましい。
【0080】
ta-C層62は、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)又は物理蒸着(PVD:physical vapor deposition)によって形成することができる。ta-C層62は、具体的には、マイクロ波プラズマCVD、直流プラズマCVD、高周波プラズマCVD、有磁場プラズマCVD、イオンビームスパッタ法、イオンビーム蒸着法、反応性プラズマスパッタ法、アンバランスドマグネトロンスパッタ法などによって形成することができる。これらの蒸着法において用いられる原料ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、エチレン、ベンゼン、アセチレン等の炭化水素ガス;塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロルエタン等のハロゲン化炭素;メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類;アセトン、ジフェニルケトン等のケトン類;一酸化炭素、二酸化炭素;これらの含炭素ガスにN、H、O、HO、Ar等を混合したガス;などが挙げられる。上記の蒸着法の中でも、アークプラズマ源を用いたイオンビーム蒸着法である、フィルター型カソーディック真空アーク(FCVA:Filtered Cathodic Vacuum Arc)によってta-C層62を形成することが好ましい。
【0081】
クリーニングブレード60は、ta-C層62以外の層を有していてもよい。例えば、基材とta-C層62との間に、ta-C層62の定着性を向上させる目的で、金属層又は金属酸化物層を有していてもよい。
【0082】
中間転写体に対するクリーニングブレード60の接触圧は、0.5gf/mm以上5.0gf/mm以下が好ましい。クリーニングブレード60の接触幅(中間転写体の回転方向に沿った接触長)は、5μm以上100μm以下が好ましい。クリーニングブレード60の接触角は、5°以上30°以下が好ましい。
【0083】
中間転写体クリーニング手段は、クリーニングブレード60のほかにクリーニング部材としてさらに、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシを備えることが好ましい。回転ブラシの外周面を構成する導電繊維が中間転写体の外周面に接触し、中間転写体の外周面の残留トナーを除去及び回収する。
【0084】
回転ブラシは、回転ブラシに電荷が蓄積することを抑制する目的で導電繊維を配する。回転ブラシに配される導電繊維としては、導電性素材からなる繊維(例えば、炭素繊維):非導電性繊維に導電剤(例えば、カーボンブラック、金属、金属酸化物、導電性樹脂)を被覆した又は練り込んだ繊維;が挙げられる。非導電性繊維としては、天然セルロース繊維、レーヨンなどの再生セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリビニル繊維などが挙げられる。
回転ブラシに配される導電繊維の直径は、5μm以上200μm以下が好ましい。
【0085】
回転ブラシの外周面は、円筒状に配された導電繊維によって構成されている。回転ブラシの導電繊維の先端を回転ブラシの外周面とみなしたとき、画像形成装置が運転されている間において、回転ブラシの外周面が保持する単位面積当たりトナー量は、1.0g/m以上4.0g/m以下に制御されることが好ましい。
【0086】
回転ブラシの外周面が保持するトナー量が1.0g/m以上であると、トナー及び外添剤によって中間転写体の表面の劣化層を研磨でき、中間転写体の転写性にムラが発生することを抑制する。この観点から、回転ブラシの外周面が保持するトナー量は、1.5g/m以上がより好ましく、2.0g/m以上が更に好ましい。
回転ブラシの外周面が保持するトナー量が4.0g/m以下であると、ブラシから中間転写体へのトナー固着を抑制でき、中間転写体の転写性にムラが発生することを抑制する。この観点から、回転ブラシの外周面が保持するトナー量は、3.5g/m以下がより好ましく、3.0g/m以下が更に好ましい。
【0087】
回転ブラシの外周面が保持するトナー量は、回転ブラシと中間転写体との接触時間、回転ブラシが中間転写体に接触するときの接触圧などによって制御される。
本実施形態は、回転ブラシの外周面が保持するトナー量を制御する制御部を備えることが好ましい。
【0088】
導電繊維を円筒状に配した回転ブラシの毛足長さは、2mm以上10mm以下が好ましい。
【0089】
中間転写体クリーニング手段は、脂肪酸金属塩を中間転写体の表面に供給する供給機構を備えることが好ましい。当該供給機構は、例えば、固体の脂肪酸金属塩と、固体の脂肪酸金属塩及び中間転写体の外周面に接触して回転する回転ブラシと、を備えている。
【0090】
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸の、カルシウム、バリウム、銅、アルミニウム、マグネシウム等の金属塩;二塩基性ステアリン酸鉛:オレイン酸の、亜鉛、マグネシウム、鉄、コバルト、銅、カルシウム等の金属塩;ラウリン酸の、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム等の金属塩;パルミチン酸の、アルミニウム、カルシウム等の金属塩;カプリル酸鉛、カプロン酸鉛、リノール酸亜鉛、リノール酸コバルト、リシノール酸カルシウム、リシノレイン酸亜鉛、リシノレイン酸カドミウム;などが挙げられる。中でも、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0091】
脂肪酸金属塩の供給装置は、脂肪酸金属塩(特にはステアリン酸亜鉛)を、中間転写体の外周面に対してその単位面積当たり10μg/cm以上500μg/cm以下の供給量で供給することが好ましい。
【0092】
中間転写体と中間転写体クリーニング手段とは、組み合わされて中間転写ユニットを構成する。すなわち、中間転写ユニットは、アクリル系樹脂及びフッ素含有ポリエーテルを含有する表面層を有する中間転写体と、中間転写体に接触する接触部の表面にテトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを備え、クリーニングブレードを中間転写体に接触させて残留トナーを除去する中間転写体クリーニング手段と、を備える。
上記の中間転写ユニットにおいて、中間転写体の好ましい形態及び中間転写体クリーニング手段の好ましい形態は先に述べたとおりである。
【0093】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明するが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0094】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して着脱されるプロセスカートリッジであってもよい。
【0095】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写ベルトクリーニング装置(中間転写体クリーニング手段の一例)30が備えられている。
【0096】
中間転写ベルトクリーニング装置30は、中間転写ベルト20の外周面に接触するクリーニングブレードを備えている。クリーニングブレードが、トナー画像を記録媒体に転写した後も走行を続ける中間転写ベルト20の外周面に接触し、中間転写ベルト20の外周面に残留したトナーを除去する。
【0097】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0098】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエローの画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0099】
第1のユニット10Yは、感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが順に配置されている。
【0100】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。
【0101】
二次転写ロール(二次転写手段の一例)26は、中間転写ベルト20の外側に配置され、支持ロール24に対向した位置に設けられている。二次転写ロール26には、二次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)が接続されている。
【0102】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0103】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー像として現像され可視化される。
【0104】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0105】
感光体1Y上のイエローのトナー像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用し、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
【0106】
第2ユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0107】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、支持ロール24と、二次転写ロール26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0108】
制御部40は、感光体1Y、1M、1C及び1Kのそれぞれの線速度と、中間転写ベルト20の線速度と、二次転写ロール26の線速度とを制御する。
【0109】
制御部40は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ、及び入出力インターフェース(I/O)を備え、各構成がバスを介して相互に通信可能に接続されている。
CPUは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPUは、ROM又はストレージからプログラムを読み出し、RAMを作業領域としてプログラムを実行する。CPUは、ROM又はストレージに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。ROMは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0110】
トナー画像を記録紙Pに転写した後の中間転写ベルト20は、走行を続け、中間転写ベルトクリーニング装置30が備えるクリーニングブレードと接触する。中間転写ベルト20上に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーニング装置30で除去されて回収される。
【0111】
トナー像が転写された記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0112】
トナー像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
【0113】
[現像剤]
本実施形態において用いる現像剤は、トナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0114】
トナーは、例えば、トナー粒子と外添剤とを含む。
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と着色剤と離型剤とその他添加剤とを含む。トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ等の金属酸化物粒子が挙げられる。外添剤の表面は、疎水化処理が施されていることが好ましい。
【0115】
トナーの体積平均粒径は、高精細な画像を形成する観点から、7.0μm以下が好ましく、6.5μm以下がより好ましく、5.8μm以下が更に好ましい。トナーの体積平均粒径は、トナーの凝集を抑制する観点から、2.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましく、4.0μm以上が更に好ましい。
トナーの粒径が小さいほど、中間転写体から記録媒体への転写ムラが出現しやすいところ、本実施形態の画像形成装置によれば、体積平均粒径が比較的小さいトナー(例えば、体積平均粒径7.0μm以下のトナー)を使用しても、中間転写体の転写性のムラを抑えることができる。
【0116】
トナーの体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。
【0117】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;などが挙げられる。
【0118】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【実施例
【0119】
以下、実施例を例示することで本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。「PFPE」はパーフルオロポリエーテルを意味する。「Mw」は重量平均分子量を意味する。
合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0120】
<実施例1>
[中間転写体の作製]
-基層形成用液体組成物の調製-
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリアミック酸のN-メチル-2-ピロリドン溶液(イミド転化後の固形分濃度18%)に、イミド転化後の固形分100部に対し、カーボンブラック粒子(製品名「FW200」、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)を22部になるよう添加し、混合及び攪拌し、基層形成用液体組成物を得た。
【0121】
-基層となる管状部材の作製-
外径278mm且つ長さ600mmのアルミニウム製円筒体を用意した。アルミニウム製円筒体を回転させ、中央部の幅500mmにディスペンサーを介して基層形成用液体組成物を吐出した。アルミニウム製円筒体を水平の姿勢に保ち、140℃で30分間加熱乾燥させ、次いで、最高温度が320℃となるように120分間加熱し、アルミニウム製円筒体上にポリイミド製の管状部材を作製した。
【0122】
-表面層形成用液体組成物の調製-
下記の材料を攪拌式ホモジナイザー(アズワン社製)で混合分散したのち、さらに分散装置ナノマイザー(吉田機械興業社製)により分散を行い、分散液を得た。
【0123】
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 8.0部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 17.0部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 5.0部
・メチルエチルケトン 43.0部
・エチレングリコール 15.0部
・アンチモンドープ酸化スズ粒子(石原産業社製、SN-100P) 4.0部
・光重合開始剤(BASF社製、イルガキュア184) 2.0部
・分散剤(東亜合成社製、GF-300(固形分濃度25%)) 63.0部
・PFPE(ソルベイソレクシス社製、MD700(Mw1700)) 21.0部
【0124】
-表面層の形成-
アルミニウム製円筒体上の管状部材の外周面に、表面層形成用液体組成物を、固化後の厚さ4μmになるよう塗布し、温度70℃で3分間加熱し乾燥させた。次いで、アルミニウム製円筒体を回転させながら、低高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製、出力160W)から紫外線を積算光量500mJ/cmになるまで照射し表面層を固化させ、表面層4μmの中間転写ベルトを得た。
【0125】
-無端ベルトの作製-
基層と表面層との積層体をアルミニウム製円筒体から抜き取り、幅363mmに裁断し、中間転写体として無端ベルトを得た。中間転写体は、幅363mm、基層の厚さ80μm、表面層の厚さ4μmであった。
表面層を厚さ方向に切った切片試料を走査型電子顕微鏡で観察し、表面層が海島構造を有することを確認した。
【0126】
[クリーニングブレードの作製]
-クリーニングブレード本体の作製-
第一のポリカプロラクトンポリオール(株式会社ダイセル製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)と、第二のポリカプロラクトンポリオール(株式会社ダイセル製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)とを、ポリオール成分のソフトセグメント材料として用いた。2つ以上のヒドロキシ基を含むアクリル樹脂(綜研化学(株)製、アクトフローUMB-2005B)を、ハードセグメント材料として用いた。ソフトセグメント材料とハードセグメント材料とを質量比80:20の割合で混合した。
ソフトセグメント材料とハードセグメント材料との混合物100部に対して、イソシアネート化合物として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMT)を6.26部加え、温度70℃の窒素雰囲気下で3時間反応させた。次いで、イソシアネート化合物をさらに34.3部加え、温度70℃の窒素雰囲気下で3時間反応させて、プレポリマーを得た。次いで、プレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した。次いで、プレポリマー100部に対して、1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比60:40)を7.14部加え、3分間気泡が入らないように充分に混合した。この混合物をクリーニングブレード金型に注入して、クリーニングブレード本体を得た。
【0127】
-テトラへドラルアモルファスカーボン層の形成-
クリーニングブレード本体における中間転写体との接触部に、まず接着層として金属酸化物層(具体的には酸化チタン層)を、真空蒸着法により形成した。
次いで、島津製作所製のFCVA装置を用い、黒鉛のバキュームアーク放電により炭素プラズマを発生させ、そこからイオン化した炭素を抽出し堆積させるFCVAによって、テトラヘドラルアモルファスコーティングを行った。成膜温度は40℃以上80℃以下、成膜速度は1.5nm/秒とした。
テトラへドラルアモルファスカーボン層を有するクリーニングブレードを、SUS製支持部材に接着した。
【0128】
[感光体の作製]
-下引層の形成-
下記の材料を混合して攪拌を行い、2時間還流を行った。次いで、トルエンを減圧留去し、135℃で2時間焼き付けを行い、シランカップリング剤によって表面改質された酸化亜鉛を得た。
【0129】
・酸化亜鉛(商品名:MZ300、テイカ社製) 100部
・シランカップリング剤:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランの10質量%トルエン溶液 10部
・トルエン 200部
【0130】
下記の材料Aを混合して30分間攪拌し、下記の材料Bを添加し、サンドミルにて3時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を得た。下引層形成用塗布液を浸漬塗布法にて、肉厚1mmのアルミニウム基材の外周面に塗布し、温度180℃で30分間の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を形成した。
【0131】
-材料A-
・表面改質した酸化亜鉛 33部
・ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製) 6部
・下記構造式(AK-1)で表される化合物 1部
・メチルエチルケトン 25部
-材料B-
・ブチラール樹脂(商品名:エスレックBM-1、積水化学工業社製) 5部
・シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製) 3部
・レベリング剤:シリコーンオイル(商品名:SH29PA、東レ・ダウコーニング社製) 0.01部
【0132】
【化1】
【0133】
-電荷発生層の形成-
下記の材料を、容量100mLのガラス瓶中に、直径1.0mmのガラスビーズと共に充填率50%で入れて、ペイントシェーカーを用いて2.5時間分散処理し、電荷発生層形成用塗布液を得た。電荷発生層形成用塗布液を、下引層上に浸漬塗布し、温度100℃で5分間の乾燥を行い、厚さ0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0134】
・電荷発生材料:ヒドロキシガリウムフタロシアニン。Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型。600nmから900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長820nm、平均粒径0.12μm、最大粒径0.2μm、BET比表面積60m/g。
・結着樹脂:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)
・n-酢酸ブチル
ヒドロキシガリウムフタロシアニンと塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の混合比を55体積%:45体積%とし、電荷発生層形成用塗布液の固形分量を6質量%とした。上記の体積割合は、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの比重を1.606g/cm、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂の比重を1.35g/cmとして計算した。
【0135】
-電荷輸送層の形成-
下記の材料を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を得た。電荷輸送層形成用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、温度150℃で40分間の乾燥を行い、厚さ34μmの電荷輸送層を形成した。以上の工程を経て、感光体を得た。
【0136】
・結着樹脂:下記構造式(PC-1)で表されるビスフェノールポリカーボネート樹脂(構造単位の重合比25:75、粘度平均分子量5万) 60部
・ブタジエン系電荷輸送材料:下記構造式(CT1A)で表される化合物 8部
・ベンジジン系電荷輸送材料:下記構造式(CT2A)で表される化合物 32部
・4フッ化エチレン樹脂粒子(体積平均粒子径200nm) 8部
・フッ素含有分散剤GF400(東亜合成社製) 0.3部
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:下記構造式(HP-1)で表される化合物
3.2部
・テトラヒドロフラン 340部
【0137】
【化2】
【0138】
[画像形成装置の設定]
中間転写体、中間転写体クリーニングブレード及び感光体を富士ゼロックス社製の電子写真方式画像形成装置Versant 180 Pressに組み込んだ。この画像形成装置の中間転写体クリーニング装置には、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシと、ステアリン酸亜鉛を中間転写体の表面に供給する供給機構とをさらに組み込んだ。
そして、中間転写体、感光体及び二次転写手段のそれぞれの線速度を表1に示すとおりに設定した。また、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシのトナー保持量を表1に示すとおりに設定した。
この画像形成装置の現像装置には、富士ゼロックス社製のシアン色現像剤(トナーの体積平均粒径5.8μm)、マゼンタ色現像剤(トナーの体積平均粒径5.8μm)、イエロー色現像剤(トナーの体積平均粒径5.8μm)、黒色現像剤(トナーの体積平均粒径5.8μm)を充填した。
【0139】
[転写ムラの評価]
温度28℃且つ相対湿度85%の環境下、A4サイズの上質紙(富士ゼロックス社製C2紙)に画像密度5%のハーフトーン画像を2万枚出力した。次いで、A3サイズのエンボス紙(特種東海製紙株式会社製レザック66、連量175kg)に黒色のベタ画像を出力し、画像抜けの有無を目視で観察し、下記のとおり分類した。
G1:A3全面で画像抜け未発生
G2:2箇所以下で画像抜け発生
G3:5箇所以下で画像抜け発生
G4:A3全面で画像抜け発生
【0140】
<実施例2~5、比較例1~4>
中間転写体、感光体及び二次転写手段のそれぞれの線速度、又は、導電繊維を円筒状に配した回転ブラシのトナー保持量をそれぞれ表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして画像形成装置を設定し、転写ムラの評価を行った。
【0141】
【表1】
【符号の説明】
【0142】
50 中間転写体、52 基層、54 表面層
60 クリーニングブレード、61 長辺、62 ta-C層
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写ベルトクリーニング装置(中間転写体クリーニング手段の一例)
40 制御部
P 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2
図3