(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】バッテリの搭載構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20250508BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20250508BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20250508BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20250508BHJP
H01M 50/207 20210101ALI20250508BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/298
H01M50/249
H01M50/244 A
H01M50/207
(21)【出願番号】P 2021095851
(22)【出願日】2021-06-08
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】茂田 佑樹
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147423(JP,A)
【文献】特開2000-108948(JP,A)
【文献】特開2014-022092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047419(US,A1)
【文献】特開2000-085377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/202
H01M 50/298
H01M 50/249
H01M 50/244
H01M 50/207
B60R 16/02
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下方に配設されるバッテリの搭載構造であって、
フロアパネルの少なくとも一部には、上方に膨出して、当該フロアパネルの下方に開口するように形成された凹部が延在し、
前記バッテリの筐体には、前記凹部に下方から嵌め合わせられる凸部が形成され、
前記凸部の表面には、前記凸部が延在する方向に延在する溝部が形成され、
前記溝部の内面と前記凹部の内面とにより、内部に配管又は配線を配設可能な配設スペースが形成され
、
前記溝部が延在する方向に垂直な断面において、少なくとも前記溝部を囲む溝壁部は、前記筐体の上面を構成する上壁部のうち前記溝壁部以外の部分よりも大きな厚さを有する、
搭載構造。
【請求項2】
前記溝部は、前記凸部の頂部に形成される、請求項1に記載の搭載構造。
【請求項3】
前記溝部は、当該溝部をその延在方向に仕切る第1壁部を備える、請求項1又は2に記載の搭載構造。
【請求項4】
前記溝部は、当該溝部をその幅方向に仕切る第2壁部を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、フロアパネルの下方に配置されたバッテリと、フロアパネルとバッテリの間に配置された弾性部材を備える車両のバッテリ搭載構造を開示している。バッテリ搭載構造は、弾性部材とバッテリとの間、及び、フロアパネルと弾性部材との間の少なくとも一方に、遮熱部材をさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両フロアパネルの下方にバッテリを配設した際に、車体剛性を高めるために、フロアパネルの例えばフロアトンネルに対応する部分に形成される凹部に、バッテリ筐体の凸部が嵌め合わされるバッテリの搭載構造では、フロアパネルとバッテリとの間に配管等を配設することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、フロアパネルとバッテリとの間に配管等を配設するための空間を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るバッテリの搭載構造では、フロアパネルの少なくとも一部には、上方に膨出して、当該フロアパネルの下方に開口するように形成された凹部が延在する。バッテリの筐体には、凹部に下方から嵌め合わせられる凸部が形成される。凸部の表面には、凸部が延在する方向に延在する溝部が形成され、溝部の内面と凹部の内面とにより、内部に配管又は配線を配設可能な配設スペースが形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロアパネルとバッテリとの間に配管等を配設するための空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るバッテリの搭載構造について説明するための図であり、車両におけるバッテリ、及び配管又は配線の配設関係を示す模式的部分側面図である。
【
図2】実施形態に係るバッテリの搭載構造における、バッテリの後方斜視図である。
【
図3】実施形態に係るバッテリの搭載構造について説明するための図であり、
図1のA-A線に沿った模式的部分断面図である。
【
図4】実施形態に係るバッテリの搭載構造における、フロアパネルの前方斜視図である。
【
図5】実施形態の変形例に係るバッテリの搭載構造における、バッテリの後方斜視図である。
【
図6】実施形態の変形例に係るバッテリの搭載構造における、
図3で示したバッテリの凸部の要部について説明するための、模式的部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るバッテリの搭載構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方を、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車両上下方向上方、下方をそれぞれ示す。なお、以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車両上下方向上方、下方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「上方」「下方」と称する。なお、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態に係るバッテリの搭載構造は、例えば
図1乃至
図3に示すように、電動モータ2により駆動する電気自動車である車両Vの、車両駆動用のバッテリ1の搭載構造に用いられる。図示した例では、車両Vの下方側にバッテリ1が配設される。例えば、バッテリ1の筐体10の側面に配設されたブラケット等の固定具を、サイドメンバ、クロスメンバ等の車体骨格部材に下方から締結固定し、フロアパネル4の下方にバッテリ1を配設してもよい。また、バッテリ1を図示しない平面視で枠状の形状を有するバッテリフレームに載置し、当該バッテリフレームを車体骨格部材に下方から締結固定してもよい。なお、バッテリ1と当該バッテリフレームとは、バッテリ1の筐体10の側面に配設されたブラケット等の固定具を介して固定されてもよい。
【0011】
また、車両Vの車両後方側には電動モータ2が配設され、車両前方側にはラジエータ3が配設され、電動モータ2とラジエータ3とは、配管を介して接続される。このため、配管の少なくとも一部はバッテリ1の上方を通るように配設される。なお、配管は例えば、電動モータ2を冷却するための冷却水が流通する冷却配管である。
【0012】
実施形態に係るバッテリの搭載構造では、
図2乃至6に示すように、フロアパネル4は凹部6を備え、バッテリ1は、筐体10と、凸部20と、溝部30と、配設スペース40と、を備える。
【0013】
フロアパネル4は、車両Vを車室内と車室外とに区分する板状の部材であり、例えば鋼等の金属から構成される。フロアパネル4の車室内側の面は、乗員が着座するための図示しない車両用シート等が所定の位置に設けられる。
【0014】
図3又は
図4に示すように、フロアパネル4の少なくとも一部には、上方に膨出して、当該フロアパネル4の下方に開口するように形成された凹部6が延在している。図示した例では、フロアパネル4の車幅方向における中央部の近傍を、車両前後方向に沿って屈曲することで、フロアパネル4の、フロアトンネルに対応する部分に車両前後方向に延在する凹部6が形成されている。なお、凹部6はフロアトンネルに対応する部分に形成されたものに限定されない。凹部6は、フロアパネル4において、例えば車両前後方向に対して斜めの方向や、車幅方向に延在するように形成されてもよい。また、図に例示した凹部6は車両前後方向に垂直な断面において台形の形状を備えるが、これに限定されず、例えば、略半円形、略矩形、多角形等の断面形状を適用してもよい。
【0015】
また、凹部6の内面6aには、配管又は配線(以下、被配設部材5という)が、図示しないブラケット等の固定具を介して、凹部6が延在する方向に延在するように配設されている。なお、配管は例えば前述の冷却配管の他、車両Vの図示しないホイルシリンダにブレーキ液を供給するブレーキ配管であってもよい。配線は例えば、車両Vが内蔵する装置同士を電気的に接続するワイヤーハーネスであってもよい。なお、
図4に示す例では、被配設部材5は凹部6の内面6aのうち、凹部6の上方側を構成する底部6bの内面に配設されている。
【0016】
フロアパネル4の下方にはバッテリ1が配設される。バッテリ1は、筐体10と、電池モジュール15と、を備える。
図2又は
図3に例示するように、筐体10はバッテリ1の外装部材であり、中空の方形箱形の形状を有し、複数の単電池を内蔵した電池モジュール15を収納する。例示した筐体10は、全体として車両上下方向の寸法が車両前後方向又は車幅方向の寸法に比べて小さい扁平形状を有する。なお、筐体10の形状は、バッテリ1の形状、寸法、又は車両における配設方法等に応じて、適宜設定することができる。
【0017】
筐体10は、アッパーケーシング11、及びロアーケーシング12を含む。アッパーケーシング11とロアーケーシング12とは、その周縁部において図示しないボルト等の締結具を介して締結される。なお、アッパーケーシング11とロアーケーシング12との接触部には、ゴム材料等で構成された図示しないシール部材が介在してもよい。バッテリ1は、筐体10の周縁部を図示しないボルト等の締結具を介して車体骨格部材に締結され、車両Vにおいて固定される。
【0018】
ロアーケーシング12は、上方が開口した有底箱形の部材であり、平面視で略矩形の形状を備える。ロアーケーシング12の底部には電池モジュール15が配設される。図示した例では、車幅方向に3列の電池モジュール15が配設されている。また、ロアーケーシング12の車両後方側の領域では、電池モジュール15が上下に2段以上積まれていてもよい。また、図に例示するように、複数の電池モジュール15同士を離間させるように、ロアーケーシング12の底部を区分する仕切り部を設けてもよい。このようにすることで、バッテリ1に外力が加わった際の電池モジュール15同士の接触を抑制することができる。なお、複数の電池モジュール15同士の間には、電池モジュール15同士を電気的に接続する、図示しないバスバ等の配線部材が配置されている。
【0019】
アッパーケーシング11は、平面視で略矩形の形状を備える板状の部材である。アッパーケーシング11でロアーケーシング12の車両上方の開口を閉じることにより、筐体10の内部が密閉される。このため、筐体10の上面を構成する上壁部13は、アッパーケーシング11により構成される。また、図に例示するように、アッパーケーシング11の車両後方側の領域には、ロアーケーシング12に配設された電池モジュール15の段数に応じて、車両前方側の領域よりも車両上方に向けて膨出する膨出部14が形成されてもよい。これにより、車両後方側により多くの電池モジュール15を配設することができ、バッテリ1を全体として薄型化し省スペース化しつつ、より多くの電池容量を確保することができる。
【0020】
図示した例では、凸部20は、アッパーケーシング11の車幅方向における中央部付近の領域を上方に膨出させて、車両前後方向に延在するように形成されている。凸部20は、フロアパネル4の下方にバッテリ1を配設したとき、フロアパネル4の凹部6に嵌合するように構成される。換言すれば、バッテリ1の筐体10には、フロアパネル4の凹部6に下方から嵌め合わせられる凸部20が形成される。図示した例では凸部20は車両前後方向に垂直な断面において台形の形状を備えるが、これに限定されない。凸部20の断面形状は、フロアパネル4に形成された凹部6の断面形状に応じて、適宜設定することができる。
【0021】
凸部20は、凹部6と嵌合した際に、凹部6が延在する方向に延在するように形成されてもよい。図に例示した凸部20はアッパーケーシング11の車両前方側端部から膨出部14の車両前方側端部にかけて延在し、凸部20の車両後方側端部と膨出部14の車両前方側端部とが接続されている。もっとも、例えば凹部6がフロアパネル4において車幅方向に延在するように形成されている場合には、凸部20は車幅方向に延在するように形成されてもよい。また、凸部20は、アッパーケーシング11の車両前方側端部よりも車両後方側の領域から、膨出部14の車両前方側端部よりも車両前方側の領域にかけて延在してもよい。即ち、凸部20は凹部6の少なくとも一部に嵌合するように構成されていてもよい。
【0022】
また、図示した例では、凸部20の上方側の壁部である頂部21には溝部30が形成されている。溝部30は車両前後方向に延在しており、車両前後方向に垂直な断面において略矩形の形状を備える。もっとも、溝部30の断面形状は略矩形に限定されず、例えば、略半円形や、略三角形、台形、その他の多角形等の形状を適用してもよい。
【0023】
また、溝部30は、溝部30が延在する方向に垂直な断面において、溝壁部31に囲まれている。図示した例では、溝部30は車両前後方向に延在しており、溝壁部31は側壁部32と底壁部33とを備える。側壁部32は、溝部30の延在方向を横切る方向である、溝部30の幅方向において、溝部30の両端部を構成する壁部であり、溝部30の延在方向に向けて延在する。底壁部33は溝部30の底面を構成する壁部であり、溝部30の延在方向に延在する。もっとも、溝壁部31は底壁部33を有さなくてもよく、例えば溝部30の断面形状が略三角形の場合には、溝部30は側壁部32によって囲まれることとなる。
【0024】
なお、溝部30が形成される位置は頂部21に限定されない。例えば、溝部30は凸部20の車幅方向側面において、車両前後方向に延在してもよい。即ち、凸部20の表面に、凸部20が延在する方向に延在する溝部30が形成されていればよい。また、図示した例では、溝部30は凸部20の車両前方側端部から車両後方側端部にかけて延在するが、これに限定されない。溝部30は、凸部20の表面において、凸部20が延在する方向に少なくとも一部が延在するように形成されていればよい。
【0025】
また、図示した例では頂部21の下方には筐体10の内部の空間である空間Sが形成される。空間Sには電池モジュール15や、電池モジュール15の容量、電圧、温度等を管理するコントローラ、スイッチ、リレー等の図示しない補機類を配設してもよい。
【0026】
配設スペース40は、溝部30の内面30aと凹部6の内面6aとによって形成される、内部に配管又は配線を配設可能な空間である。
図3に示す例では、配設スペース40は凸部20の頂部21に設けられた溝部30の内面30aと、凹部6の内面6aのうち車両上方側の面とによって構成され、車両前後方向に延在するが、これに限定されない。例えば、溝部30が凸部20の車幅方向側面に形成される場合には、配設スペース40は溝部30の内面30aと、凹部6の内面6aのうち車幅方向側方の面との間に形成されることとなる。また、配設スペース40の溝部30延在方向の寸法、溝部30幅方向の寸法、又は溝部30深さ方向の寸法は、配設される配管又は配線の数、断面形状、断面寸法等に応じて適宜設定することができる。なお、溝部30の深さ方向とは、溝部30延在方向、及び溝部30幅方向に垂直な方向をいう。
【0027】
実施形態に係るバッテリの搭載構造では、
図3に示すように、フロアパネル4とバッテリ1との間に、例えば発泡ウレタン等の発泡体から構成される弾性部材50を備えてもよい。この場合、弾性部材50はフロアパネル4の下面と、筐体10の上面のうち溝部30以外の領域との間に配設される。これにより、弾性部材50を配設した場合であってもより確実に配設スペース40を形成することができる。
【0028】
また、弾性部材50は、フロアパネル4と筐体10との間で、圧縮されることにより変形し弾性復元力が生じた状態である、圧縮状態で配設されている。そのため、弾性部材50は、フロアパネル4、及び筐体10の上面に密着するとともに、その弾性復元力でフロアパネル4及びバッテリ1にプリロードを付与している。これにより、例えば、フロアパネル4の下面、又は筐体10の上面に、剛性を向上させるための図示しないビードが形成され、フロアパネル4とバッテリ1との間に隙間が形成されやすい場合であっても、当該隙間に弾性部材50が介在することとなる。従って、弾性部材50を介して、フロアパネル4とバッテリ1との一体性をより確実に高めることができる。これにより、フロアパネル4及びバッテリ1の剛性を高め、ひいては車両Vの車体の剛性を高めることができる。
【0029】
図示した例では、弾性部材50は、筐体10の上面のうち溝部30以外の領域の全面と、フロアパネル4の下面との間に配設される。これにより、筐体10の上面に、広い面積で弾性部材50を配設することができ、より確実にフロアパネル4及びバッテリ1の剛性を高めることができる。なお、弾性部材50は、当該領域とフロアパネル4の下面との間において、部分的に配設されてもよい。これにより、より少量の弾性部材50で実施形態に係るバッテリの搭載構造を構成することができる。
【0030】
次に、フロアパネル4の下方にバッテリ1を取り付ける手順について説明する。
【0031】
例えば、バッテリ1は筐体10の側面に配設されたブラケット等の固定具を、車体骨格部材に下方から締結固定することで、フロアパネル4の下方に配設される。また、バッテリ1をバッテリフレームに載置し、当該バッテリフレームを車体骨格部材に下方から締結固定することで、フロアパネル4の下方にバッテリ1を配設してもよい。このとき、フロアパネル4に形成された凹部6に、バッテリ1の筐体10に形成された凸部20が下方から嵌め合わされ、固定される。これにより、
図3に示すように、凹部6の底部6bの内面と、凸部20の頂部21に設けられた溝部30の内面30aとの間には、配設スペース40が形成される。そして、凹部6の底部6b内面に設けられた被配設部材5は、当該配設スペース40に配設されることとなる。
【0032】
なお、弾性部材50をフロアパネル4と筐体10との間に配設する場合、予めフロアパネル4と筐体10との間に弾性部材50を介在させ、フロアパネル4の下方にバッテリ1を取り付ける。この場合、弾性部材50が圧縮状態となるように、バッテリ1をフロアパネル4の下面に所定の圧力で押し当て固定する。例えば、弾性部材50の初期厚さが5mm~15mmの場合に、圧縮後厚さが1.5mm~5mmになるように、弾性部材50を圧縮してもよい。なお、初期厚さとは、弾性部材50の圧縮されていない状態における厚さである。また、圧縮後厚さとは、弾性部材50の圧縮状態における厚さである。なお、弾性部材50はフロアパネル4の下面、又は筐体10の上面に予め接着等の接合手段により固定されていてもよい。
【0033】
なお、車両Vでは、フロアパネル4のうち凹部6が形成された領域以外の領域に、車両用シートに着座した乗員が足を置くためのスペースが設定される場合がある。そのような場合であっても、被配設部材5は凹部6の内面6aに配設されるため、フロアパネル4の下面のうち凹部6の内面6a以外の面に被配設部材5を配設する場合に比べ、フロアパネル4の当該スペースをより下方に位置させることができる。このため、車両Vにおいて車両用シートの座面をより下方に設定することができ、車高を低減し、又は車室を広く構成することができる。
【0034】
上述したようなアッパーケーシング11は、例えば成形材料を加圧成形することにより成形される。ある実施形態では、成形材料として、連続又は不連続なガラス繊維に樹脂を含侵させてシート状に成型したシートモールディングコンパウンド(以下、SMCという)を用いてもよい。例えば、所望の寸法に切断したSMC成形材料を金型内に複数積層して配置し、加熱及び加圧して成形することにより、アッパーケーシング11を成形することができる。よって、筐体10の上壁部13はSMCを加圧成形することにより構成されていてもよい。また、ある実施形態では、筐体10の上壁部13は射出成型により構成されてもよい。例えば、溶融状態の熱可塑性樹脂を金型内に注入し、冷却することにより、アッパーケーシング11を成形してもよい。
【0035】
このような方法でアッパーケーシング11を成形することにより、鉄、アルミニウム等の金属で構成された板材を、プレス成形等の手段により車幅方向中央近傍の領域を屈曲させ、アッパーケーシング11を構成する場合に比べ、以下に説明するような、より複雑な形状を得ることができる。
【0036】
溝部30は、溝部30をその延在方向に仕切る第1壁部34を備えるように成形されてもよい。
図5に示す例では、溝部30には、その幅方向両端部で車両前後方向に延在する側壁部32同士の間において、車幅方向に延在する第1壁部34が立設されている。また、第1壁部34の車幅方向両端部はそれぞれ、車幅方向左方の側壁部32、及び車幅方向右方の側壁部32に接続されている。なお、溝部30が第1壁部34と、後述する第2壁部35とを備える場合には、第1壁部34は側壁部32と第2壁部35との間に延在してもよい。図示した例では、溝部30は複数の第1壁部34を備えるが、第1壁部34の数は1つであってもよい。
【0037】
また、溝部30は、溝部30をその幅方向に仕切る第2壁部35を備えるように成形されてもよい。
図6に示す例では、側壁部32の間において車両前後方向に延在する第2壁部35が立設されている。また、第2壁部35は、凸部20の車両前方側端部から膨出部14の車両前方側端部にかけて延在してもよい。図示した例では、溝部30は1つの第2壁部35を備えるが、複数の第2壁部35が設けられていてもよい。
【0038】
なお、
図6に示す例では、配設スペース40は第2壁部35により溝部30幅方向に仕切られ、複数の配設スペース40a,40bが形成される。そして、複数の配設スペース40a,40bの各々には異なる種類の配線又は配管が配設されてもよい。例えば、配設スペース40aに冷却配管を配設し、配設スペース40bにワイヤーハーネスを配設してもよい。換言すれば、第2壁部35は、凹部6の内面6aに配設された複数の配管又は配線同士を仕切るように構成されてもよい。これにより、複数の配管又は配線同士の接触をより確実に抑制することができる。
【0039】
なお、第2壁部35の、基部35aとは反対側の縁部35bと、凹部6の内面6aとの間には弾性部材50が設けられてもよい。例えば、溝部30が
図6に示すような車両前後方向に延在する第2壁部35を備える場合には、第2壁部35の縁部35bにおいて車両前後方向に延在するように弾性部材50を設けることができる。これにより、筐体10の上面に、より広い面積で弾性部材50を配設することができる。そのため、より確実にフロアパネル4及びバッテリ1の剛性を高めることができる。
【0040】
なお、第1壁部34又は第2壁部35の、溝部30延在方向の寸法、溝部30幅方向の寸法、又は溝部30深さ方向の寸法は、配設される配管又は配線の数、断面形状、断面寸法等に応じて適宜設定することができる。
【0041】
また、溝部30が延在する方向に垂直な断面において、少なくとも溝部30を囲む溝壁部31は、筐体10の上面を構成する上壁部13のうち溝壁部31以外の部分よりも大きな厚さを有してもよい。例えば
図3に示すように、溝壁部31のうち側壁部32の厚さT1は、上壁部13のうち、凸部20以外の部分の厚さT2よりも大きくなるように構成されてもよい。
【0042】
以下、実施形態に係るバッテリの搭載構造の作用効果について説明する。
【0043】
(1)実施形態に係るバッテリの搭載構造は、フロアパネル4の下方に配設されるバッテリ1の搭載構造であって、フロアパネル4の少なくとも一部には、上方に膨出して、当該フロアパネル4の下方に開口するように形成された凹部6が延在し、バッテリ1の筐体10には、凹部6に下方から嵌め合わせられる凸部20が形成され、凸部20の表面には、凸部20が延在する方向に延在する溝部30が形成され、溝部30の内面30aと凹部6の内面6aとにより、内部に配管又は配線を配設可能な配設スペース40が形成されている。
【0044】
実施形態に係るバッテリの搭載構造によれば、車両Vのフロアパネル4の下方にバッテリ1を配設した際に、フロアパネル4の例えばフロアトンネルに対応する部分に形成される凹部6に、バッテリ1の筐体10の凸部20が下方から嵌め合わされる。このため、フロアパネル4と筐体10との一体性が高まり、車体の剛性が向上する。また、溝部30の内面30aと凹部6の内面6aとにより、内部に配管又は配線を配設可能な配設スペース40が形成される。例えば、当該配設スペース40が車両前後方向に延在する場合には、当該配設スペース40の内部には車両前後方向に延在する配管等を配設することができる。即ち、搭載構造によれば、車体の剛性を高めるとともに、フロアパネル4とバッテリ1との間に配管等を配設するための空間を確保することができる。
【0045】
なお、凹部6、凸部20、及び溝部30の各々は車両前後方向に延在していてもよい。このようにすることで、より大きな電池容量を確保するために、バッテリ1の車幅方向の寸法よりも車両前後方向の寸法の方が長くなるように構成した場合、即ち、車両前後方向が長手方向となり、車幅方向が短手方向となるようにバッテリ1を構成した場合であっても、バッテリ1の車両前後方向の剛性を高めることができる。ひいては、車体の前後方向の剛性をより確実に高めることができる
【0046】
(2)実施形態に係るバッテリの搭載構造では、溝部30は、凸部20の頂部21に形成される。
【0047】
このため、配設スペース40が、頂部21に形成された溝部30の内面30aと、凹部6のうち頂部21と対向する底部6bとの間に形成され、当該底部6bの内面に配管等を固定することができる。この場合、凹部6の内面6aに配管等を固定した状態で凹部6に対して下方から凸部20を嵌め合わせる際に、底部6b以外の内面に配管等を固定した場合よりも、凸部20が配管等に干渉し難い。従って、フロアパネル4の下方にバッテリ1をより容易に配設することができる。
【0048】
(3)実施形態に係るバッテリの搭載構造では、溝部30は、当該溝部30をその延在方向に仕切る第1壁部34を備える。
【0049】
このため、溝部30には、その幅方向に延在する壁部が形成される。これによって、溝部30周辺における、凸部20の幅方向の剛性が向上する。従って、より確実に車体の剛性を高めるとともに、フロアパネル4とバッテリ1との間に配管等を配設するための空間を確保することができる。
【0050】
(4)実施形態に係るバッテリの搭載構造では、溝部30は、当該溝部30をその幅方向に仕切る第2壁部35を備える。
【0051】
このため、溝部30には、その延在方向に向けて延在する壁部が形成される。これによって、溝部30周辺における、凸部20の延在方向の剛性が向上する。従って、より確実に車体の剛性を高めるとともに、フロアパネル4とバッテリ1との間に配管等を配設するための空間を確保することができる。
【0052】
(5)実施形態に係るバッテリの搭載構造では、溝部30が延在する方向に垂直な断面において、少なくとも溝部30を囲む溝壁部31は、筐体10の上面を構成する上壁部13のうち溝壁部31以外の部分よりも大きな厚さを有する。
【0053】
このため、筐体10の上壁部13のうち、溝壁部31を構成する部分の板厚は他の部分の板厚よりも厚く構成される。これにより、溝壁部31の剛性を高め、凸部20の剛性を向上させることができる。従って、より確実に車体の剛性を高めるとともに、フロアパネル4とバッテリ1との間に配管等を配設するための空間を確保することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、電気自動車を例にとって説明したが、実施形態に係るバッテリ搭載構造が、ハイブリッド車などにも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 バッテリ
4 フロアパネル
6 凹部
6a 内面
10 筐体
13 上壁部
20 凸部
21 頂部
30 溝部
30a 内面
31 溝壁部
34 第1壁部
35 第2壁部
40,40a,40b 配設スペース