IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7676983プレコート剤、画像形成方法、および画像形成装置
<>
  • 特許-プレコート剤、画像形成方法、および画像形成装置 図1
  • 特許-プレコート剤、画像形成方法、および画像形成装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】プレコート剤、画像形成方法、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20250508BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250508BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20250508BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20250508BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20250508BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20250508BHJP
   C09D 125/04 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
C09D167/00
B41J2/01 123
B41J2/01 129
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
C09D4/02
C09D5/00 D
C09D11/30
C09D125/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021101021
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000284
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小玉 大典
(72)【発明者】
【氏名】植村 直子
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 秀和
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201034(JP,A)
【文献】特開2020-097643(JP,A)
【文献】特開2003-012971(JP,A)
【文献】特開2016-117807(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102443316(CN,A)
【文献】特開2010-076330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 167/00
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 4/02
C09D 5/00
C09D 11/30
C09D 125/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性線硬化型インクを用いる画像形成方法において、前記活性線硬化型インクが付与される前の記録媒体の表面に付与されるプレコート剤であって、
結晶性樹脂と、活性線重合性化合物と、を含む、
プレコート剤。
【請求項2】
前記結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のプレコート剤。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂を含む、請求項2に記載のプレコート剤。
【請求項4】
前記結晶性樹脂の含有量は、前記プレコート剤の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプレコート剤。
【請求項5】
前記活性線重合性化合物の含有量は、前記プレコート剤の全質量に対して80質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプレコート剤。
【請求項6】
前記活性線重合性化合物は、(メタ)アクリレートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプレコート剤。
【請求項7】
前記活性線重合性化合物は、単官能の化合物を含み、前記単官能の化合物の含有量は、前記プレコート剤の全質量に対して50質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプレコート剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプレコート剤を、記録媒体の表面に付与する工程と、
前記プレコート剤が付与された前記表面に第1活性線を照射する工程と、
前記プレコート剤が付与された前記表面に活性線硬化型インクを付与する工程と、
前記活性線硬化型インクが付与された前記表面に第2活性線を照射する工程と、を有する、
画像形成方法。
【請求項9】
前記活性線硬化型インクはゲル化剤を含む、請求項8に記載の画像形成方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプレコート剤を、記録媒体の表面に付与するプレコート剤付与部と、
前記プレコート剤が付与された前記表面に第1活性線を照射する第1活性線照射部と、
前記プレコート剤が付与された前記表面に活性線硬化型インクを付与するインク付与部と、
前記活性線硬化型インクが付与された前記表面に第2活性線を照射する第2活性線照射部と、を有する、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレコート剤、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
版を用いないデジタル印刷を可能とするインクジェット法は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。
【0003】
インクジェット法による画像形成方法に用いるインクとして、活性線重合性化合物を含む活性線硬化型インクが知られている。活性線硬化型インクは、活性線が照射されると、活性線重合性化合物の重合により硬化して、色材を記録媒体に強固に付着させる。この硬化膜を形成していくことで、所望の画像を形成することができる。
【0004】
一方で、上記画像形成方法において、活性線硬化型インクを紙などのインクを吸収する記録媒体の表面に付与すると、インクの一部が着弾後に、記録媒体に吸収されることによるインクの染みこみにより、インクの液滴径を所定の大きさに制御することが難しい。そのため、着弾後のインクに活性線を照射して硬化させても、画像内に濃度ムラが生じるなどの理由により、良好な画像品質を有する画像が得られにくくなることがあった。
【0005】
上記のような、インクが記録媒体に吸収されることによる、インクの染みこみを抑制する方法として、活性線硬化型インクが付与される前の記録媒体の表面に、プレコート剤を付与する方法が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1では、少なくともゲル化剤を含有し、色材を含有しないプレコート剤を印字して下部印字層を形成した後、下部印字層の上に、色材を含有するインクジェットインクを印字して上部印字層を形成し、酸素濃度が10%以下の雰囲気下で、活性線を照射して上部印字層および下部印字層を一括で硬化させる方法が開示されている。特許文献1によれば、上記方法により、上部印字層の硬化伸縮度合を下部印字層と同等にすることができるため、上部印字層及び下部印字層の間の密着性を向上させることができたとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-11381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載されたプレコート剤を記録媒体に付与して硬化させると、ゲル化剤の結晶がプレコート剤の硬化膜表面に配向し、プレコート剤の表面に付与されたインクの濡れ性が低下してしまい、インクのはじきが生じることがあった。特に、少ないインク液滴量で形成される高精細な画像では、上記インクのはじきにより、細線の細りや欠けが生じてしまうため、インクのはじきによる画像品質の低下が、インク液滴量が多い画像よりも視認されやすくなることがあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インクのはじきを抑制し、高精細な画像における細線の細りや欠けを抑制することができる、プレコート剤および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施の形態に係るプレコート剤は、活性線硬化型インクを用いる画像形成方法において、前記活性線硬化型インクが付与される前の記録媒体の表面に付与されるプレコート剤であって、結晶性樹脂と、活性線重合性化合物と、を含む。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、上記プレコート剤を、記録媒体の表面に付与する工程と、上記プレコート剤が付与された上記表面に第1活性線を照射する工程と、上記プレコート剤が付与された上記表面に活性線硬化型インクを付与する工程と、上記活性線硬化型インクが付与された上記表面に第2活性線を照射する工程と、を有する。
【0012】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施の形態に係る画像形成装置は、上記プレコート剤を、記録媒体の表面に付与するプレコート剤付与部と、前記プレコート剤が付与された前記表面に第1活性線を照射する第1活性線照射部と、前記プレコート剤が付与された前記表面に活性線硬化型インクを付与するインク付与部と、前記活性線硬化型インクが付与された前記表面に第2活性線を照射する第2活性線照射部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、インクのはじきを抑制し、高精細な画像における細線の細りや欠けを抑制することができる、プレコート剤および画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成方法を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0016】
1.プレコート剤
本発明の一実施の形態に係るプレコート剤は、後述する活性線硬化型インク(以下、単に「インク」と称する。)が付与される前の記録媒体の表面に付与され、結晶性樹脂と、活性線硬化型化合物と、を含む。
【0017】
1-1.結晶性樹脂
本発明において、「結晶性」樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)により、得られる吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピークを有する樹脂と定義される。なお、本明細書において、「明確な吸熱ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0018】
上述のように、プレコート剤は、活性線硬化型インクが付与される前の紙などのインクを吸収する記録媒体の表面に付与することで、吸収性記録媒体の内部にインクの染みこみを制御しようとするものである。
【0019】
しかしながら、従来のプレコート剤では、プレコート剤を記録媒体に付与した後、インクを付与する前に、プレコート剤が記録媒体に吸収されてしまい、記録媒体表面にプレコート剤を残存させることができず、インクの記録媒体への染みこみを制御することができないことがあった。
【0020】
記録媒体への吸収を抑制するプレコート剤として、特許文献1のように、ゲル化剤を含ませたプレコート剤が知られている。
【0021】
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載されたゲル化剤を含むプレコート剤を用いたとき、ゲル化剤が結晶化することで、プレコート剤の粘度を高めて、プレコート剤が記録媒体に吸収されることを抑制することができた。これにより、プレコート剤を記録媒体に染みこませずに、記録媒体上に残存させることで、インクの染みこみを抑制することができた。しかしながら、プレコート剤とインクとを硬化させた後、プレコート剤の硬化膜表面に配向するゲル化剤の表面エネルギーが低いため、プレコート剤に対するインクの濡れ性が低下してしまうことがあった。これにより、インクがプレコート剤の表面上で予想以上に広がらず、インクのはじきが発生してしまうことがあった。上記インクのはじきのより、インクにより形成される画像の発色性や濃度の均一性が低下してしまうことがあった。
【0022】
特に、少ない液適量で形成される細線画像などの高精細な画像では、上記インクのはじきにより、細線が広がらずに細りが生じてしまうことや、細線の一部が欠けてしまうことがあった。細線画像などの高精細な画像は、インク液滴量が少ないため、インク液滴量を多くして形成される通常の画像よりも、上記細線の細りや欠けによる、画像品質の低下が視認されやすくなることがあった。
【0023】
そこで、本発明者らは、結晶化によってプレコート剤を増粘させて、記録媒体に吸収させにくくするゲル化剤の機能を有し、かつ、プレコート剤に対するインクの濡れ性の低下を抑制することができるものを、プレコート剤に含ませることで、インクの染みこみを制御しつつ、インクのはじきを抑制することができると考えた。
【0024】
本発明者らの検討により、結晶性樹脂は、プレコート剤中で結晶化することができるため、プレコート剤の粘度を高めることができるとわかった。これにより、プレコート剤が記録媒体に吸収されにくくすることができ、記録媒体上にプレコート剤を残存させやすくして、インクの染みこみを制御することができることがわかった。
【0025】
さらに、本発明者らが鋭意検討したところ、プレコート剤に、結晶性樹脂を含ませることで、インクのはじきを抑制して、細線画像の細りや、欠けの発生を抑制することができることを見出した。これについて、理由は定かではないが、結晶性樹脂を含むことでプレコート剤の表面エネルギーを高めることができるとともに、結晶性樹脂と、インクに含まれる活性線重合性化合物との相互作用により、これらの親和性を高めることができるためであると、考えられる。上記考えのもと、本発明者らの検討が検討したところ、ゲル化剤を含まない従来のプレコート剤よりも、プレコート剤に対するインクの濡れ性の低下を抑制して、インクのはじきを抑制できることがわかった。
【0026】
また、従来のプレコート剤は、記録媒体に過度にプレコートが浸透してしまうため、インクとの相互作用が相対的に弱くなり、インク層との密着性が低下してしまうため、記録媒体を折り曲げたとき、インクにより形成された画像がプレコート剤に追従しきれず、画像の剥がれや、割れが生じてしまうことがあった。
【0027】
さらに、上述のように、ゲル化剤を含むプレコート剤に対するインクの濡れ性は低くなるため、プレコート剤の表面とインクとの密着性が低下するおそれがある。上記密着性が低下すると、記録媒体を折り曲げたとき、インクにより形成された画像がプレコート剤に追従しきれず、画像の剥がれや、割れが生じてしまうことがあった。
【0028】
本発明者らの検討によると、本発明に係るプレコート剤は、結晶性樹脂を含むことで、インクの染みこみを抑制しつつ、プレコート剤に対するインクの濡れ性の低下を抑制することで、プレコート剤の表面とインクとの密着性を高めることができるとわかった。これにより、記録媒体の折り曲げ時における画像の剥がれや割れを抑制することができることがわかった。
【0029】
結晶性樹脂の融点(Tm)は、40℃以上100℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。40℃以上であると、プレコート剤を記録媒体に付与したとき、結晶性樹脂の一部が溶融して、プレコート剤が記録媒体に吸収されることをより抑制することができる。また、プレコート剤を付与した記録媒体、および、プレコート剤とインクとを付与した記録媒体の保管状態において、記録媒体どうしが付着するブロッキングの発生をより抑制することができる。また、プレコート剤は、プレコート剤を加熱して、結晶性樹脂を溶融させてから付与されるため、100℃以下であると、プレコート剤をより低い温度でプレコート剤を記録媒体に付与することができる。
【0030】
結晶性樹脂の融点(Tm)は、例えば、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて求めることができる。測定は、昇降速度10℃/minで室温(25℃)から150℃まで昇温し、5分間150℃で等温保持する1回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで150℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、および、昇降速度10℃/minで0℃から150℃まで昇温する2回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行う。上記測定は、結晶性樹脂の試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行う。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用する。上記測定において、1回目の昇温過程により得られた吸熱曲線から解析を行い、結晶性樹脂由来の吸熱ピークのトップ温度を結晶性樹脂の融点(Tm)とする。
【0031】
結晶性樹脂の再結晶化温度(Rc)は、例えば、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて求めることができる。測定は、昇降速度10℃/minで室温(25℃)から100℃まで昇温し、1分間100℃で等温保持する昇温過程、冷却速度0.1℃/minで100℃から0℃まで冷却する冷却過程をこの順に経る測定条件によって行う。上記測定は、結晶性樹脂の試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行う。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用する。上記測定において、冷却過程により得られた発熱曲線から解析を行い、結晶性樹脂由来の発熱ピークのトップ温度を結晶性樹脂の再結晶化温度(Rc)とする。
【0032】
プレコート剤における、結晶性樹脂の含有量は、特に限定されないが、プレコート剤の全質量に対して、1質量%以上12質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上9質量%以下であることがさらに好ましい。結晶性樹脂の含有量が、1質量%以上であると、記録媒体に付与されたプレコート剤中で結晶性樹脂が結晶化することによって、プレコート剤の粘度が増加し、プレコート剤が記録媒体に吸収されにくくなる。これにより、記録媒体の表面にプレコート剤を残存させやすくして、プレコート剤の表面に付与されるインクの染みこみを抑制することができる。また、結晶性樹脂の含有量が3質量%以上であると、プレコート剤の粘度をさらに増加させて、記録媒体への吸収をより抑制することができる。そのため、プレコート剤の表面にインクを付与して画像(例えばベタ画像)を形成したとき、画像内の発色性および濃度の均一性をより高めることができる。
【0033】
また、結晶性樹脂の上記含有量が12質量%以下であると、プレコート剤の粘度を過度に増加させすぎずに、プレコート剤の流動性を高め、プレコート剤を記録媒体上に、より均一に付与しやすくすることができる。結晶性樹脂の上記含有量が10質量%以下であると、プレコート剤の流動性をさらに高めることができる。これらの理由により、結晶性樹脂の含有量が上記範囲にあると、プレコート剤の表面にインクを付与して画像(例えばベタ画像)を形成したとき、画像内においてインクの染みこみを抑制しつつ、インクのはじきを抑制することができるため、画像内の発色性および濃度の均一性をより高めることができる。また、プレコート剤を記録媒体上に、より均一に付与することができるため、インクのはじきをより抑制でき、細線の細りをより十分に抑制することができる。
【0034】
また、結晶性樹脂の含有量が10質量%以下であることで、過度に結晶化することによる、プレコート剤の機械強度の低下をより抑制することができるため、記録媒体の折り曲げによる硬化したプレコート剤の割れをより抑制することができ、硬化したプレコート剤の割れによる画像の剥がれをより抑制することができる。
【0035】
本実施の形態において、プレコート剤に含まれる結晶性樹脂は、上記定義した通りであれば、特に限定されず、公知の結晶性樹脂を使用できる。上記結晶性樹脂の例には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂が含まれる。結晶性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、インクのはじきをより抑制する観点から、上記結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0036】
結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性樹脂の中でも、インクに含まれる活性線重合化合物との親和性がより高い。そのためプレコート剤の表面に付与されたインクと、プレコート剤との密着性を高めて、インクの濡れ性の低下を抑制し、インクのはじきをより抑制することができる。
【0037】
結晶性ポリエステル樹脂は2価以上のアルコール(多価アルコール成分)と、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)との重縮合反応によって得ることができる。
【0038】
多価アルコール化合物とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物である。多価アルコール成分の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール(1,2―ヘキサンジオール、1,6―ヘキサンジオール)、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオール、およびこれらのエステル化合物、ヒドロキシカルボン酸誘導体などが含まれる。
【0039】
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、上記多価アルコール化合物は、2価の脂肪族アルコールであることが好ましく、2価の直鎖型脂肪族アルコールであることがより好ましい。なお、上記多価アルコール化合物は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
多価カルボン酸化合物とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上有する化合物であり、多価カルボン酸化合物のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができる。多価カルボン酸成分の例には、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、メサコン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸、およびこれらのアルキルエステル、酸無水物、酸塩化物などを挙げることができる。
【0041】
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、上記多価カルボン酸化合物は、2価の脂肪族カルボン酸であることが好ましい。なお、上記多価カルボン酸化合物は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのモノマーにおける上記多価アルコール化合物と上記多価カルボン酸化合物との割合は、多価カルボン酸化合物のカルボキシ基[COOH]の当量に対する、多価アルコール化合物のヒドロキシ基[OH]の当量で1/2以上2以下であることが好ましく、2/3以上3/2以下であることがより好ましい。多価カルボン酸化合物のカルボキシ基[COOH]の当量に対する、多価アルコール化合物のヒドロキシ基[OH]の当量が、上記範囲にあると、結晶性ポリエステル樹脂の分子量を所望の範囲に調整することができる
【0043】
また、具体的な結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸化合物および多価アルコール化合物の組合せの例には、1,12-ドデカンジオール(炭素数12)およびコハク酸(炭素数4)、1,12-ドデカンジオール(炭素数12)およびセバシン酸(炭素数10)、エチレングリコール(炭素数2)およびセバシン酸(炭素数10)、1,6-ヘキサンジオール(炭素数6)およびセバシン酸(炭素数10)、1,6-ヘキサンジオール(炭素数6)およびデカンジカルボン酸(炭素数12)、1,9-ノナンジオール(炭素数9)およびデカンジカルボン酸(炭素数12)、エチレングリコール(炭素数2)およびドデカンジカルボン酸(炭素数14)などが含まれる。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常5000以上50000以下を取り得るが、7000以上30000以下であることが好ましく、10000以上25000以下であることがより好ましい。5000以上であることで、プレコート剤の粘度をより高めて、プレコート剤が記録媒体に吸収されずに、記録媒体表面に残存させやすくすることができ、50000以下であると、結晶性樹脂の融点を低くして、プレコート剤を記録媒体に付与しやすくすることができる。
【0045】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC装置(HLC-8120GPC、東ソー株式会社製)およびカラム(TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ-M3連、東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/分で流して行う。上記キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出することができる。
【0046】
インクのはじきをより十分に抑制する観点から、結晶性ポリエステル樹脂は、スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂がスチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂を含むことで、インク中の活性線重合性化合物との親和性をより高めることができる。その理由は定かではないが、スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂を構成するスチレン系モノマーが有する、芳香環が形成する立体構造の内部に、インクに含まれる活性線重合性化合物を補足することができるため、プレコート剤とインクとの密着性を十分に高めることができると考えられる。そのため、プレコート剤がスチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂を含むとき、インクのはじきをより抑制することができ、細線画像の細りや欠けを抑制することができる。
【0047】
スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂から構成される結晶性ポリエステルセグメントとスチレン-アクリル系共重合体から構成されるスチレン-アクリルセグメントとが、両反応性化合物を介して結合した樹脂をいう。結晶性ポリエステルセグメントは、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂のうち、結晶性ポリステル樹脂に由来する構造単位の集合をいう。スチレン-アクリルセグメントとは、スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂のうち、スチレンアクリルに由来する構造単位の集合をいう。
【0048】
上記スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂は、あらかじめ用意した結晶性ポリエステル樹脂の存在下でスチレン-アクリル樹脂を生成する重合反応を行うか、あらかじめ用意したスチレン-アクリル樹脂の存在下で結晶性ポリエステル樹脂を生成する重合反応を行うことによっても得ることができる。
【0049】
上記両反応性化合物は、結晶性ポリエステルセグメントとスチレン-アクリルセグメントの両方と反応し得る置換基と、重合性不飽和基とを有する化合物である。両反応性化合物の例には、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などが含まれる。
【0050】
スチレン-アクリル系共重合体を構成する成分である、スチレン系モノマーは、スチレン構造を含み、かつラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するモノマーである。スチレン系モノマーの例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、3,4-ジクロロスチレン、これらの誘導体などが含まれる。これらスチレン系モノマーは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、アクリル酸、メタクリル酸などのように、両反応性化合物としても作用し得る(メタ)アクリル酸系モノマーを使用するときは、スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂の合成時に、上記(メタ)アクリル酸系モノマーとは別に両反応性化合物を使用する必要はない。
【0051】
上記スチレンアクリル系共重合体を構成する成分である、(メタ)アクリル酸系モノマーは、(メタ)アクリル基を含有し、かつラジカル重合を行うことができるエチレン性不飽和結合を有するモノマーである。上記アクリル酸系モノマーの例には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、β-ヒドロキシアクリル酸エチル、γ-アミノアクリル酸プロピル、およびエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールなどの2価のアルコールのジアクリレート、ペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンなどの3価以上のアルコールのジメタクリレートまたはトリメタクリレートなどが含まれる。また、メタクリル酸系化合物の例には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどが含まれる。これら、(メタ)アクリル酸系モノマーは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
スチレンアクリル系共重合体の合成には他の重合性化合物を使用することもできる。使用できる他の重合性化合物の例には、単官能ビニル系モノマー、多官能ビニル系モノマーなどが含まれる。上記単官能ビニル系モノマーの例には、無水マレイン酸、ビニル酢酸などの酸モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N-ビニルピロリドンなどが含まれる。
【0053】
上記多官能ビニル系モノマーの例には、ブタジエン、ジビニルベンゼン、などが含まれ る。
【0054】
上記スチレンアクリル系共重合体は、上記モノマーの重合に過酸化物、過硫化物、アゾ化合物等の通常用いられる任意の重合開始剤を添加し、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、懸濁重合法、分散重合法等の公知の重合手法により重合することにより得ることができる。重合時において、分子量を調整することを目的として、アルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステル等の通常用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂のうち、スチレン-アクリル重合セグメントを有する割合を示す、スチレン-アクリル変性率は、結晶性ポリエステル樹脂の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく。40質量%以下であると、スチレン-アクリル変性による結晶性の低下をより抑制させて、結晶性ポリエステル樹脂が結晶化しやすくなる。これにより、プレコート剤が記録媒体に吸収されることを抑制して、記録媒体表面に残存しやすくなり、インクの染みこみを抑制することができる。上記観点から、スチレン-アクリル変性率は、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%30質量%以下であることがさらに好ましい。スチレン-アクリル変性率が0.1質量%以上であると、プレコート剤とインクとの親和性を高めて、インクのはじきをより抑制することができる。
【0056】
上記スチレンアクリル変性率は、具体的には、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、ポリエステルセグメントとなる未変性のポリエステル樹脂を構成するモノマーと、スチレンアクリル系重合体セグメントとなる芳香族系ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、これらを結合させるための両反応性化合物を合計した全質量に対する、芳香族系ビニルモノマー、および(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの質量の割合から求めることができる。
【0057】
1-2.活性線重合性化合物
活性線重合性化合物は、活性線の照射により重合および架橋して硬化する化合物である。したがって、本実施の形態において、活性線重合性化合物を含むプレコート剤は、活性線の照射により硬化する。
【0058】
上記活性線重合性化合物の例には、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、またはそれらの混合物が含まれる。これらのうち、上記活性線重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。なお、上記活性線重合性化合物は、単官能および多官能のいずれであってもよいし、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーおよびこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0059】
上記活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのうち、上記活性線は、紫外線および電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0060】
ラジカル重合性化合物は、分子内にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有し、単官能または多官能の化合物である。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
【0061】
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0062】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。上記単官能の(メタ)アクリレートは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレート、
ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、ならびにこれらの変性物などが含まれる。上記変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)(メタ)アクリレート、およびプロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)(メタ)アクリレートが含まれる。上記多官能の(メタ)アクリレートは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
カチオン重合性化合物は、分子中にカチオン重合性基を有し、単官能または多官能の化合物である。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0065】
単官能のエポキシ化合物の例には、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイドなどが含まれる。
【0066】
多官能のエポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種類または2種類以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
【0067】
単官能のビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどが含まれる。
【0068】
多官能のビニルエーテル化合物の例には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
【0069】
単官能のオキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタンおよび3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが含まれる。
【0070】
多官能のオキセタン化合物の例には、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、およびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
【0071】
ラジカル重合性化合物は、基材およびインクとの密着性を高めて、インクのはじきをより抑制する観点から、芳香族構造または脂環式構造、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)、プロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)を有することが好ましい。記録媒体に付与したプレコート剤の塗膜の柔軟性を向上させる観点からは、ラジカル重合性化合物は、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)、プロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)を有することが好ましい。
【0072】
活性線重合性化合物の、プレコート剤の全質量に対する含有量は、特に限定されないが、70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。70質量%以上であると、プレコート剤をより十分に硬化させることができ、99質量%以下であると、後述する結晶性樹脂、重合開始剤、重合禁止剤などを、より十分にプレコート剤に含ませることができる。
【0073】
活性線重合性化合物は、単官能の化合物を、プレコート剤の全質量に対して50質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90量%以下であることがより好ましい。単官能の化合物は、多官能の化合物に比べ、架橋構造を形成しない。そのため、単官能の化合物の含有量が50質量%以上であると、記録媒体の表面にプレコート剤を付与して硬化させたとき、プレコート剤の可塑性を高めて、記録媒体の折り曲げに対する追従性を高めることができる。これにより、プレコート剤の表面で密着するインク画像も、プレコート剤とともに追従しやすくなり、インクの画像がプレコート剤から剥がれることや、割れることを、より抑制することができる。また、95質量%以下であると、硬化後のプレコート剤の弾性率を高めて、出力画像のブロッキング性を抑制することができる。
【0074】
1-3.その他の成分
(重合開始剤)
本実施の形態において、プレコート剤は、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤は、活性線の照射により、上述の活性線重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。例えば、プレコート剤がラジカル重合性化合物を有するときは、ラジカル重合性化合物を有するときは、重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができ、上記活性線硬化型インクがカチオン重合性化合物を有するときは、重合開始剤は光カチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。なお、電子線の照射によりプレコート剤を硬化させるときなど、重合開始剤がなくてもプレコート剤が十分に硬化できるときは、重合開始剤は不要である。
【0075】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0076】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0077】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0078】
カチオン系の重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C 、PF 、AsF 、SbF 、CFSO 塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
【0079】
重合開始剤の含有量は、活性線(例えば紫外線)の照射によってプレコート剤が十分に硬化し、記録媒体の表面への塗布性を低下させない範囲であれば、特に限定されない。例えば、重合開始剤の含有量は、プレコート剤の全質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
(重合禁止剤)
本実施の形態において、プレコート剤は、重合禁止剤を含んでもよい。
【0081】
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチルアルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムなどが含まれる。
【0082】
上記重合禁止剤の含有量は、特に限定されないが、プレコート剤の全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0083】
(界面活性剤)
本実施の形態において、プレコート剤は、表面張力を調整するための界面活性剤を含んでもよい。
【0084】
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類を含むアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類を含むノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類および第四級アンモニウム塩類を含むカチオン性界面活性剤、シリコーン系の界面活性剤、ならびにフッ素系の界面活性剤が含まれる。
【0085】
界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インクの全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0086】
(ゲル化剤)
本実施の形態において、プレコート剤は、ゲル化剤を含んでもよい。上記ゲル化剤は、後述する活性線硬化型インクに含まれるゲル化剤と同様のものを用いることができる。
【0087】
ゲル化剤の含有量は、特に限定されないが、プレコート剤の全質量に対して1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましい。1質量%未満であると、プレコート剤に対するインクの濡れ性の低下をより十分に抑制して、インクのはじきをより十分に抑制することができる。
【0088】
1-4.プレコート剤の物性
プレコート剤の80℃における粘度は、3mPa・s以上20mPa・s未満であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s未満であることがより好ましい。上記粘度が上記範囲にあると、インクジェット方式における安定した射出性が得られる。また、25℃における粘度は1000mPa・s以上が好ましい。1000mPa・s以上であれば、プレコート剤が着弾時に記録媒体に吸収されにくくなり、記録媒体表面にプレコート剤が残存しやすくなる。
【0089】
上記粘度は、レオメータによって測定することができる。例えば、上記プレコート剤を100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°))によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。上記粘度は、得られた温度変化曲線から、40℃における粘度を読み取ることで、求めることができる。
【0090】
2.活性線硬化型インク
本実施の形態におけるプレコート剤の表面に付与される活性線硬化型インクは、活性線重合性化合物を含み、活性線の照射により活性線重合性化合物が重合および架橋して硬化するインクである。
【0091】
2-1.活性線重合性化合物
本実施の形態では、活性線硬化型インクに含まれる活性線重合性化合物は、上述のプレコート剤に含まれる活性線重合性化合物を含んでもよい。
【0092】
また、上記活性線重合性化合物の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下とすることがより好ましく、50質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。
【0093】
2-2.ゲル化剤
本実施の形態において、活性線硬化型インクは、ゲル化剤を含むことが好ましい。ゲル化剤は、常温では固体であるが、加熱すると液体となることにより、上記活性線硬化型インクを温度変化に応じてゾルゲル相転移させることができる有機物である。
【0094】
また、上記ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ここで、ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却していったときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、例えば、レオメータ MCR300(Anton Paar社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0095】
上記ゲル化剤がインク中で結晶化すると、板状に結晶化した上記ゲル化剤およびワックスによって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という)。カードハウス構造が形成されると、液体の活性線重合性化合物が上記空間内に保持されるため、インクが付着して形成されたドットがより染みこみにくくなり、インクのピニング性をより高めることができる。インクのピニング性が高まると、インクがプレコート剤の表面に付与されて形成された液滴が過度に濡れ広がることを抑制することができる。
【0096】
本実施の形態において、プレコート剤の表面に付与される活性線硬化型インクが、ゲル化剤を含むとき、インクと、結晶性樹脂を含むプレコート剤との親和性(密着性)をより十分に高めることで、インクのはじきをより十分に抑制して、細線画像の細りや欠けをより抑制することができる。
【0097】
ゲル化剤の例には、ジペンタデシルケトン、ジヘプタデシルケトン、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジミリスチルケトン、ラウリルミリスチルケトン、ラウリルパルミチルケトン、ミリスチルパルミチルケトン、ミリスチルステアリルケトン、ミリスチルベヘニルケトン、パルミチルステアリルケトン、パルミチルベヘニルケトンおよびステアリルベヘニルケトン等の脂肪族ケトンワックス;パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ベヘニル、ステアリン酸パルミチル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸ステアリル、エルカ酸ステアリル、リノール酸ステアリル、オレイン酸ベヘニルおよびリノール酸アラキジル等の脂肪族エステルワックス;N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド、N-(2-エチルヘキサノイル)-L-グルタミン酸ジブチルアミド等のアミド化合物;1,3:2,4-ビス-O-ベンジリデン-D-グルシトール等のジベンジリデンソルビトール類;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、およびホホバエステル等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、および水素化ワックス等の鉱物系ワックス;硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体等の変性ワックス;ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸,ラウリン酸、オレイン酸、およびエルカ酸等の高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシステアリン酸;12-ヒドロキシステアリン酸誘導体;ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等のN-置換脂肪酸アミド;N,N’-エチレンビスステアリルアミド、N,N’-エチレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、およびN,N’-キシリレンビスステアリルアミド等の特殊脂肪酸アミド;ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミン;ステアリルステアリン酸、オレイルパルミチン酸、グリセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル化合物;ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸等のショ糖脂肪酸エステル;ポリエチレンワックス、α-オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックス等の合成ワックス;重合性ワックス;ダイマー酸;ダイマージオール等が含まれる。これらのワックスは、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
これらのうち、インクのピニング性をより高める観点からは、脂肪族ケトンワックス、脂肪族エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドが好ましく、ケト基またはエステル基を挟んで両側に配置された炭素鎖の炭素数がいずれも9以上25以下である脂肪族ケトンワックスまたは脂肪族エステルワックスがより好ましい。
【0099】
上記ゲル化剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、活性線硬化型インクの全質量に対して1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、活性線硬化型インクの全質量に対して2質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。
【0100】
2-3.その他成分
(重合禁止剤)
上記活性線硬化型インクは、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤は、上述のプレコート剤に含むことができる重合禁止剤と同様の化合物を用いることができる。
【0101】
上記重合禁止剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、活性線硬化型インクの全質量に対して0.05質量%以上0.2質量%以下とすることができる。
【0102】
(色材)
上記活性線硬化型インクは、色材を含むことができる。色材には、顔料および染料が含まれる。活性線硬化型インクの分散安定性をより高め、かつ耐候性が高い画像を形成する観点からは、色材は顔料であることが好ましい。顔料の例には、有機顔料および無機顔料が含まれる。染料の例には、各種の油溶性染料が含まれる。
【0103】
上記顔料は、形成すべき画像の色などに応じて用いることができ、例えば、カラーインデックスに記載される赤またはマゼンタ顔料、黄顔料、緑顔料、青またはシアン顔料および黒顔料から選択することができる。
【0104】
顔料または染料の含有量は、特に限定されないが、活性線硬化型インクの全質量に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。顔料または染料の含有量が、活性線硬化型インクの全質量に対して0.1質量%以上であると、得られる画像の発色が十分となる。顔料または染料の含有量がインクの全質量に対して20質量%以下であると、インクの粘度が高まりすぎず、インクの適度な流動性を得ることができる
【0105】
(分散剤)
上記活性線硬化型インクは、顔料を分散させる分散剤を含んでもよい。分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートなどが含まれる。
【0106】
分散剤の含有量は、顔料の全質量に対して10質量%以上200質量%以下であることが好ましく、20質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が顔料の全質量に対して10質量%以上であると、顔料の分散安定性が高まり、分散剤の含有量が顔料の全質量に対して200質量%以下であると、インクジェットヘッドからのインクの吐出性が安定しやすくなる。
【0107】
(定着樹脂)
上記活性線硬化型インクは、塗膜の耐擦性およびブロッキング耐性をより高めるため、定着樹脂を含んでもよい。
【0108】
定着樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、およびアルキド樹脂などが含まれる。
【0109】
定着樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、活性線重合性化合物の全質量に対して1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0110】
(界面活性剤)
上記活性線硬化型インクは、界面活性剤を含んでもよい。
【0111】
界面活性剤は、インクの表面張力を調整して、付与後のインクの基材に対する濡れ性を調整したり、隣接する液滴間の合一を抑制したりすることができる。
【0112】
界面活性剤の例には、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、およびパーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤などが含まれる。
【0113】
界面活性剤の含有量は、活性線硬化型インクの全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0114】
上記活性線硬化型インクは、上記成分以外に、必要に応じて、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤などを含んでもよい。
【0115】
2-4.活性線硬化型インクの物性
【0116】
上記活性線硬化型インクがゲル化剤を含むとき、上記活性線硬化型インクの80℃における粘度は、3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることがより好ましい。これにより、インクジェットヘッドにおいて、インクを加熱してインクを射出する際の射出性を高めることができる。
【0117】
また、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点から、上記活性線硬化型インクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。これにより、プレコート剤が記録媒体に吸収されることを抑制して、記録媒体表面に残存しやすくなるため、インクの染みこみをより抑制することができる。
【0118】
上記活性線硬化型インクがゲル化剤を含まないとき、上記活性線硬化型インクの40℃における粘度は、3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることがより好ましい。上記粘度が上記範囲にあると、インクジェットヘッドからのインクの射出性をより高めることができる。また、25℃における粘度は1000mPa・s以上が好ましい。1000mPa・s以上であれば、プレコート剤が着弾時に記録媒体に吸収されにくくなり、記録媒体表面にプレコート剤が残存しやすくなる。
【0119】
2-5.活性線硬化型インクの調製方法
活性線硬化型インクは、上述した活性線重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、色材と、任意のその他の成分とを、加熱下において混合することにより調製することができる。この際、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。なお、顔料を含有するインクを調製する際は、顔料、活性線重合性化合物を含む顔料分散液を調製し、その後、顔料分散液と他の成分とを混合することが好ましい。顔料分散液は、分散剤をさらに含んでもよい。
【0120】
上記顔料分散液は、活性線重合性化合物に顔料を分散して調製することができる。顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカーなどを用いて行えばよい。このとき、分散剤を添加してもよい。
【0121】
2-6.記録媒体
本実施の形態において、記録媒体は、その表面にプレコート剤を付与することができれば特に制限されず、吸収性記録媒体、非吸収性および低吸収性記録媒体を用いることができる。本発明では、吸収性記録媒体を用いたときに顕著な効果を奏する。
【0122】
上記吸収性記録媒体の例には、普通紙、上質紙、アート紙またはコート紙などの塗工された印刷用紙などが含まれる。
【0123】
上記非吸収性および低吸収性記録媒体の例には、フィルムが含まれる。上記フィルムには、公知のプラスチックフィルムが含まれる。上記プラスチックフィルムの例には、ポリエステル(PET)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ナイロン(NY)フィルム、ポリスチレン(PS)フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリアクリル酸(PAA)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、およびポリ乳酸フィルムなどの生分解性フィルムなどが含まれる。
【0124】
3.画像形成方法
図1に示されるように、本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、上記プレコート剤を、記録媒体の表面に付与する工程(工程S1)と、上記プレコート剤が付与された上記表面に第1活性線を照射する工程(工程S2)と、上記プレコート剤が付与された上記表面に活性線硬化型インクを付与する工程(工程S3)と、上記活性線硬化型インクが付与された上記表面に第2活性線を照射して上記活性線硬化型インクを硬化させる工程(工程S4)と、を有する。
【0125】
3-1.プレコート剤を記録媒体の表面に付与する工程(工程S1)
本工程では、記録媒体の表面にプレコート剤を付与する。
【0126】
プレコート剤を付与する方法は、特に限定されない。プレコート剤を付与する方法の例には、スプレー塗布、ノズルやスリットを用いたスパイラル塗布、ディッピング塗布、ロールコーター塗布、グラビア塗布、フレキソ塗布、インクジェット方式での塗布などの公知の液体塗布方法が含まれる。これらのうち、塗布性の観点から、プレコート剤は、ロールコーター塗布方法を用いて記録媒体の表面全体に付与されることが好ましい。
【0127】
活性線硬化型インクを記録媒体に付与する前に、プレコート剤を付与することで、記録媒体の内部にインクが浸透することを抑制し、インクの染みこみを抑制することができる。
【0128】
プレコート剤の付与量は、記録媒体に対して、0.1g/m以上5.0g/m以下であることが好ましく、0.3g/m以上3.0g/m以下であることがより好ましい。上記プレコート剤の付与量が0.1g/m以上であると、プレコート剤が記録媒体に吸収されることを抑制し、記録媒体表面に十分に残存することができるため、インクの染みこみをより抑制することができる。また、上記プレコート剤の付与量が5.0g/m以下であると、活性線の照射時に速やかに硬化させることができるので、記録媒体の内部にプレコート剤が浸透することを抑制できる。
【0129】
3-2.第1活性線を照射する工程(工程S2)
本工程では、工程S1でプレコート剤が付与された記録媒体の表面に、第1活性線を照射する。
【0130】
第1活性線の種類は、特に限定されない。第1活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのうち、上記活性線は、紫外線または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0131】
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載されているように、プレコート剤の表面に活性線硬化型インクを付与した後に、活性線を照射する方法を用いると、活性線が、インクの下層にあるプレコート剤まで十分に届かないことができないことがあった。そのため、流動性を有するプレコート剤の表面において、インク液滴の広がりが抑制され、細線画像の細りを十分に抑制できないことがあった。また、上記理由により、インク液量の多い画像を形成したときにおいても、画像内の発色性および濃度の均一性をより十分に高めることができないことがあった。
【0132】
そこで、本発明者らは、活性線硬化型インクを付与する前に、プレコート剤に活性線を照射することで、プレコート剤の硬化性を高めようと考えた。しかしながら、特許文献1に記載のプレコート剤を硬化させると、ゲル化剤の結晶がプレコート剤の硬化膜表面に配向した状態でインクが付与されるため、インクのはじきが顕著に生じてしまうことがあった。そのため、細線画像の細りや欠けが生じ、インク液量が多い画像においても、発色性や面内均一性が低下してしまうことがあった。
【0133】
本実施の形態に係る画像形成方法では、活性線硬化型インクを付与する前に、上述したプレコート剤に第1活性線を照射することにより、プレコート剤に含まれる活性線重合化合物を重合させる。これにより、記録媒体上のプレコート剤が増粘して流動性が低下するため、インクがプレコート剤に捕捉されることを抑制して、後述する工程S3で付与される活性線硬化型インクが、細線画像の細りをより抑制するのに十分な流動性を得ることができる。また、上述した結晶性樹脂を含むプレコート剤を硬化させることにより、インクの液適量が多い画像を形成したときにおいても、インクのはじきを抑制しつつ、画像内の発色性および濃度の均一性をより高めることができる。
【0134】
上記観点から、本工程では、プレコート剤に第1活性線を照射して硬化させることが好ましい。
【0135】
なお、本実施の形態では、本工程を経ずに、工程S1の後に、後述する活性線硬化型インクを付与する工程(工程S3)を実施してもよい。
【0136】
3-3.活性線硬化型インクを付与する工程(工程S3)
本工程では、記録媒体上で第1活性線を付与されたプレコート剤の表面に活性線硬化型インクを付与する。
【0137】
活性線硬化型インクを付与する方法は、特に限定されない。活性線硬化型インクを付与する方法の例には、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット法などの公知の方法が含まれる。本実施の形態では、活性線硬化型インクを、インクジェットヘッドから吐出して、上記プレコート剤の表面に付与する、インクジェット法を用いることが好ましい。
【0138】
インクジェット法で使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0139】
活性線硬化型インクの液滴の吐出性を高める観点から、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクを40以上120℃以下に加熱して、上記加熱された活性線硬化型インクを吐出することが好ましい。
【0140】
本工程において、活性線硬化型インクは、インクのピニング性を向上させ、細線画像の細りや欠けを抑制する観点から、ゲル化剤を含むことが好ましい。
【0141】
上記活性線硬化型インクがゲル化剤を含むときは、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクの温度を、活性線硬化型のゲル化温度より10℃以上40℃未満高い温度に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクの温度をゲル化温度+10℃以上にすることで、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面で活性線硬化型インクがゲル化することがなく、活性線硬化型インクを良好に射出することができる。また、インクジェットヘッド内の活性線硬化型インクの温度を活性線硬化型インクのゲル化温度+40℃未満とすることで、インクジェットヘッドの熱的負荷を小さくすることができる。特に、ピエゾ素子を用いたインクジェットヘッドでは、熱的負荷による性能低下が生じやすいため、活性線硬化型インクの温度を上記範囲内とすることが特に好ましい。
【0142】
このとき、活性線硬化型インクのピニング性を高めるために、記録媒体の表面温度をゲル化剤のゲル化温度の付近またはそれ以下としてもよい。
【0143】
なお、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。
【0144】
活性線硬化型インクを付与して、ベタ画像を形成する場合、吐出するインクの液滴量は、2pL以上30pL以下であることが好ましく、5pL以上20pL以下であることがより好ましい。5pL以上であることで、画像の発色性および面内の濃度均一性を十分に高めることができる。20pL以下であることで、過剰に液滴が付与されることによる画像の濃度ムラを抑制することができる。
【0145】
活性線硬化型インクを付与して、細線画像を形成する場合、吐出するインクの液滴量は、1pL以上15pL以下であることが好ましく、3pL以上10pL以下であることがより好ましい。2pL以上であることで、細線の細りや欠けをより抑制することができる。10pL以下であることで、過剰に液滴が付与されることによる細線の滲みをより抑制することができる。
【0146】
3-4.第2活性線を照射する工程(工程S4)
本工程では、工程S3で記録媒体に付与された、活性線硬化型インクに第2活性線を照射して、活性線硬化型インクを硬化させる。これにより、活性線硬化型インクを硬化させると同時に、プレコート剤の硬化性をさらに高めることができる。
【0147】
第2活性線の種類は、特に限定されない。第2活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。これらのうち、上記活性線は、紫外線または電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。また、第2活性線は、第1活性線と異なる種類であってもよいし、同じ種類であってもよい。
【0148】
4.画像形成装置
図2は、本発明の実施の形態に係るインクジェット用の画像形成装置100の例示的な構成を示す模式図である。
【0149】
本発明の一実施の形態に係る画像形成装置100は、記録媒体110と、記録媒体110の表面にプレコート剤を付与するプレコート剤付与部120と、プレコート剤が付与された記録媒体110の表面に第1活性線を照射する第1活性線照射部130と、プレコート剤が付与された記録媒体の表面に活性線硬化型インクを付与するインク付与部140と、プレコート剤および活性線硬化型インクが付与された記録媒体110の表面に第2活性線を照射するための第2活性線照射部150と、を有する。
【0150】
図2では、基材の搬送方向(図中矢印方向)に沿って上流側から、プレコート剤付与部120、第1活性線照射部130、インク付与部140および第2活性線照射部150がこの順に配置されている。
【0151】
プレコート剤付与部120は、活性線硬化型インクの液滴が着弾される記録媒体110上の領域よりも広い領域に、プレコート剤を付与できる構成であればよい。たとえば、プレコート剤付与部120は、塗布ローラー121にプレコート剤を供給するディスペンサー122と、供給されたプレコート剤をフィルム状に塗布する塗布ローラー121と、を含む構成とすることができる。なお、プレコート剤付与部120では、バーコーターを用いる方法やインクジェット法などを用いてもよい。
【0152】
第1活性線照射部130は、記録媒体110の搬送方向における、インク付与部140より上流側に配置され、記録媒体110のプレコート剤が付与されている面に向けて活性線を照射する。これにより、プレコート剤に含まれる活性線重合化合物を重合させて、プレコート剤を増粘させることができるため、インクがプレコート剤に染みこむことを抑制して、細線画像の細りをより抑制するのに十分な流動性を得ることができる。
【0153】
第1活性線の種類は、上述した、画像形成方法における第1活性線と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0154】
インク付与部140は、本実施の形態ではインクジェット法により画像を形成するインク付与部であり、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の活性線硬化型組成物(インクジェットインク)をノズル141から吐出して、記録媒体110の表面に形成されたプレコート層上に付与させるためのインクジェットヘッド142Y、142M、142Cおよび142Kを有する。インクジェットヘッド142Y、142M、142Cおよび142Kは、上記各色の活性線硬化型インクを、記録媒体110の表面に形成されたプレコート層上のうち形成されるべき画像に応じた位置に付与して、画像を形成する。
【0155】
第2活性線照射部150は、記録媒体110の搬送方向における、インク付与部140より下流側に配置され、記録媒体110のプレコート剤および活性線硬化型インクが付与されている面に向けて活性線を照射する。これにより、第2活性線照射部150は、記録媒体110の表面に付与されたプレコート剤および活性線硬化型インクに活性線を照射して、プレコート剤および活性線硬化型インクを硬化させる。
【0156】
第2活性線の種類は、上述した、画像形成方法における第2活性線と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0157】
また、以上の説明では、インクジェット法により記録媒体の表面に付与されたプレコート剤の表面に画像を形成しているが、画像の形成方法は特に限定されず、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの公知の方法を使用することができる。
【実施例
【0158】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0159】
1.結晶性ポリエステルの合成
(結晶性ポリエステル樹脂C1の合成)
下記の原料単量体を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れた後、170℃に加熱し溶解させることにより結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(C1)は、重量平均分子量(Mw)が22000、融点(Tm)が76.8℃、再結晶化温度(Rc)が70.0℃であった。
【0160】
ドデカンジカルボン酸 103.0質量部
エチレングリコール 24.7質量部
【0161】
なお、本実施例における、各重量平均分子量(Mw)は、「HLC-8120」(東ソー社製)およびカラムとして「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー社製)を有するGPC装置と、標準ポリスチレン試料から求められた検量線とを用いて求めた値である。
【0162】
また、本実施例における、各融点(Tm)は示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて、温度の昇降速度を10℃/min、昇温範囲を25℃から150℃まで、降温範囲を150℃から0℃までとする昇温・冷却条件によって測定された値である。
【0163】
また、本実施例において、再結晶化温度(Rc)は、各融点(Tm)は示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて、温度の昇降速度を10℃/min、昇温範囲を25℃から100℃まで、降温範囲を100℃から0℃までとする昇温・冷却条件によって測定された値である。
【0164】
(結晶性ポリエステル樹脂C2の合成)
下記の結晶性ポリエステルセグメントの原料単量体を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
コハク酸 50.0質量部
1,12-ドデカンジオール 112.0質量部
【0165】
次いで、攪拌下で、下記のスチレンアクリルセグメントの原料化合物を上記で得られた溶液に90分間かけて滴下し、60分間撹拌した後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合化合物を除去した。なお、このとき除去された化合物量は、上記樹脂の原料化合物の比に対してごく微量であった。
【0166】
両反応性化合物を含む、下記スチレン-アクリルセグメントの原料化合物及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
【0167】
スチレン(St) 22.5質量部
2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA) 7.0質量部
アクリル酸(AA) 70.0質量部
重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 7.0質量部
【0168】
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。次いで、200℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂(C2)を得た。このとき得られた結晶性ポリエステル樹脂(C2)は、重量平均分子量(Mw)が15000、融点(Tm)が71.0℃、再結晶化温度(Rc)が65.8℃、スチレン-アクリル変性率が38.0質量%であった。
【0169】
2.プレコート剤の調製
(プレコート剤P1の調製)
48.0質量部のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、15.0質量部のトリプロピレングリコールジアクリレートと、15.0質量部の3PO-変性トリメチロールプロパントリアクリレートと、10.0質量部の2-フェノキシエチルアクリレートと、10.0質量部のイソボニルアクリレートと、1.0質量部の結晶性ポリエステルC1と、5.0質量部の光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製(「Irgacure」は同社の登録商標))と、熱重合禁止剤(Irgastab UV10、BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標))と、をステンレスビーカーに入れ、100℃で1時間撹拌した。その後、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過することによりプレコート剤P1を得た。
【0170】
(プレコート剤P2~P10の調製)
各成分の配合を表1に示される量に変更した以外は、プレコート剤P1と同様にして、プレコート剤P2~P10を得た。
【0171】
(プレコート剤P11の調製)
46.0質量部のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、15.0質量部のトリプロピレングリコールジアクリレートと、15.0質量部の3PO-変性トリメチロールプロパントリアクリレートと、10.0質量部の2-フェノキシエチルアクリレートと、10.0質量部のイソボニルアクリレートと、3.0質量部のゲル化剤(ベヘニン酸、ルナックBA、花王株式会社製(「ルナック」は同社の登録商標))と、5.0質量部の光重合開始剤(Irgacure819、BASF社製(「Irgacure」は同社の登録商標))と、熱重合禁止剤(Irgastab UV10、BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標))と、をステンレスビーカーに入れ、100℃で1時間撹拌した。その後、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過することによりプレコート剤P11を得た。
【0172】
(プレコート剤P12の調製)
ポリエチレングリコール#400ジアクリレートを49.0質量部に変更し、ゲル化剤を添加しなかったこと以外は、プレコート剤P11と同様にして、プレコート剤P12を得た。
【0173】
【表1】
【0174】
3.顔料分散液の調製
20.0質量部のシアン顔料(Lionol Blue FG-7400-G、トーヨーカラー株式会社製)と、6.5質量部の分散剤「BYKJET-9151」(BYK社製、「BYKJET」は同社の登録商標)と、73.2質量部の活性線重合性化合物と、0.3質量部の重合禁止剤(Irgastab UV10、BASF社製)と、ジルコニアビーズ「YTZボール」(0.3mm、株式会社ニッカトー製)と、を100mLのポリ容器に入れ、ペイントシェーカーにて3時間分散した後、ジルコニアビーズを取り除き、顔料分散液を得た。
【0175】
4.活性線硬化型インクの調製
(活性線硬化型インクAの調製)
10質量部のシアン顔料分散液と、44.9質量部のポリエチレングリコール#400ジアクリレートと、25.0質量部の4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートと、15.0質量部の3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレートと、6.0質量部の重合開始剤(Irgacure819、BASF社製)と、1.0質量部の重合禁止剤(Irgastab UV10、BASF社製)と、をステンレスビーカーに入れ、これを105℃で45分間撹拌した。その後、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過することにより活性線硬化型インクAを得た。
【0176】
(活性線硬化型インクBの調製)
1.0質量部のゲル化剤(ベヘニン酸、ルナックBA、花王株式会社製)を添加し、ポリエチレングリコール#400ジアクリレートの添加量を43.9質量部に変更した以外は、活性線硬化型インクAと同様の方法で調製した。
【0177】
5.画像形成方法
以下、上述した画像形成装置100と同様の構成を有する画像形成装置を用いて実験1~16を行った。
【0178】
(実験1)
プレコート剤P1を、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェットヘッドを有するシングルパスのインクジェット画像形成装置に装填し、上記インクジェットヘッドの温度を80℃に設定した。なお、上記インクジェットヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数1024ノズル(512ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ600dpi)のピエゾヘッドである。
【0179】
プレコート剤P1の吐出量が、PETフィルム上で2.0g/mになるように調整した後、プレコート剤P1を液滴速度約6m/sで上質紙(CFペーパー、コニカミノルタ株式会社製)上に射出し、120mm×120mmサイズの画像形成を行い、プレコート剤P1のベタ画像を得た。なお、プレコート剤P1のベタ画像の形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。
【0180】
(実験2~9、13、15および17)
用いたプレコート剤を、表2に示されるように変更した以外は、実験1と同様にしてプレコート剤P2~P9、P11、P12のベタ画像を得た。
【0181】
(実験10)
プレコート剤P1を、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェットヘッドを有するシングルパスのインクジェット画像形成装置に装填し、上記インクジェットヘッドの温度を80℃に設定した。なお、上記インクジェットヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数1024ノズル(512ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ600dpi)のピエゾヘッドである。
【0182】
プレコート剤P1の吐出量が、PETフィルム上で2.0g/mになるように調整した後、プレコート剤P1を液滴速度約6m/sでコート紙上に射出し、120mm×120mmサイズの画像形成を行い、プレコート剤P2のベタ画像を得た。その後、コート紙の搬送部でコート紙を搬送し、インクジェットヘッドよりも下流側に配置したLEDランプ(Phoseon Technology社製、395nm、水冷LED)から350mL/cmの紫外線を照射して、プレコート剤P1のベタ画像解像度:600dpi×600dpi)を得た。なお、プレコート剤P1のベタ画像の形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。
【0183】
(実験11、12、14、および16)
用いたプレコート剤を、表2に示されるように変更した以外は実験10と同様にしてプレコート剤P2、P10、P11のベタ画像を得た。
【0184】
[評価方法]
(細線再現性)
上記画像形成装置を用いて、活性線硬化型インクAの吐出量を、1滴の液適量が3.0pLとなるように調整し、液滴速度約6m/sで射出した。そして、上記実験1~12、15~17で得たプレコート剤のベタ画像を形成したコート紙の温度が45℃になるように設定した、搬送部でコート紙を搬送し、インクジェットヘッドよりも下流側に配置したLEDランプ(Phoseon Technology社製、波長395nm、水冷LED)から500mJ/cmの紫外線を照射して、2dotの細線インク画像(解像度:600dpi×600dpi)を得た。なお、インク画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。また、実験13および実験14では、活性線硬化型インクAの代わりに、活性線硬化型インクBを用いて、上記操作を行った。
【0185】
実験1~17で得られた細線インク画像について、光学顕微鏡(倍率50倍、株式会社キーエンス製)にて観察を行い、以下の基準に沿って評価した。
◎:細線に細りや欠けが確認されない
〇:細線に一部、細りが確認された
×:細線の線が途切れていた。
【0186】
(ベタ画像の発色性および面内均一性)
上記画像形成装置を用いて、活性線硬化型インクAの吐出量を、1滴の液適量が5.0pLとなるように調整し、液滴速度約6m/sで射出した。そして、上記プレコート画像1~12、15~17を付与したコート紙の温度が45℃になるように設定した、搬送部でコート紙を搬送し、インクジェットヘッドよりも下流側に配置したLEDランプ(Phoseon Technology社製、波長395nm、水冷LED)から500mJ/cmの紫外線を照射して、100mm×100mmのインクのベタ画像(解像度:600dpi×600dpi)を得た。なお、インク画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。また、実験13および実験14では、活性線硬化型インクAの代わりに、活性線硬化型インクBを用いて、上記操作を行った。
【0187】
得られたインクのベタ画像について、表面の濃度状態を目視で観察を行い、以下の基準に沿って評価した。
◎:画像表面に濃度ムラがなく、十分に濃度が出ている(発色性が良好である)
〇:画像表面に濃度ムラが若干みられるが、十分に濃度が出ている
△:画像表面に濃度ムラが若干みられ、やや濃度が低いが、品質上問題ない程度である
×:画像表面に濃淡ムラがはっきりみられ、濃度が低い
【0188】
(画像割れおよび剥がれ)
上記インクのベタ画像について、画像面を切り出して、画像面が外側になるように180°に山折りした後、500gのアルミブロックを上から置き30秒間静置した。その後、山折り部を開いて、折り目の状態を上記光学顕微鏡(50倍)で観察して、以下の基準に沿って評価した。
◎:画像の折り目にひびも割れが確認されない
〇:画像の折り目に細かいひびが確認されるが、画像の剥がれが確認されない。
△:画像の折り目に大きなひびが確認され、一部、細かな画像剥がれが確認されるが、品質上問題ない程度である
×:画像の折り目に沿って、画像が完全に剥がれている。
【0189】
実験1~17について、各評価の結果を表2に示した。
【0190】
【表2】
【0191】
実験1~14では、細線再現性、ベタ画像の発色性および面内均一性、および画像割れの評価において、いずれも良好であった。細線再現性、および、ベタ画像の発色性および面内均一性については、結晶性樹脂を含むプレコート剤を用いることで、インクのはじきを抑制することができたため良好になったと考えられる。また、画像割れについては、プレコート剤が結晶性樹脂を含むことで、プレコート剤とインクとの密着性を高めて、プレコート剤からの画像の剥がれを抑制することができたと考えられる。
【0192】
また、実験10~12、14では、インクを付与する前に、プレコート剤を硬化させることで、さらに細線再現性を良好にすることができた。これは、硬化させたプレコート剤の表面に付与された活性線硬化型インクが流動性を得て、液滴を広がらせることができたため、細線画像の細りをより抑制することができたと考えられる。
【0193】
一方で、実験15、16では、細線再現性、ベタ画像の発色性および面内均一性、および画像割れの評価が低下した。これは、プレコート剤がゲル化剤を含むことで、表面に配向したゲル化剤により、インクのプレコート剤に対する濡れ性が低下し、インクのはじきが発生したためであると考えられる。さらに、実験16では、インクを付与する前に、プレコート剤を硬化させることで、さらに上記評価が低下した。これは、硬化したプレコート剤の表面にゲル化剤の結晶が配向した状態で、インクが付与されたため、インクのはじきが顕著に生じてしまったためであると考えられる。
【0194】
また、実験17では、プレコート剤がゲル化剤、結晶性樹脂のいずれも含まないため、プレコート剤が記録媒体に染みこむことを抑制しきれず、インクの記録媒体への染みこんでしまい、細線再現性、ベタ発色性および面内均一性が低下したと考えられる。また、プレコート剤が記録媒体に染みこんでしまうため、インクとの密着性を十分に向上しきれないため、画像割れが低下したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明のプレコート剤を用いることにより、インクのはじきを抑制して、細線画像の細りや欠けを抑制することができる。そのため、本発明は、例えば、活性線硬化型インクを用いた画像形成方法に有用である。
【符号の説明】
【0196】
100 画像形成装置
110 記録媒体
120 プレコート剤付与部
121 塗布ローラー
122 ディスペンサー
130 第1活性線照射部
140 インク付与部
141 ノズル
142 インクジェットヘッド
150 第2活性線照射部
図1
図2