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  • 特許-放射線検出器 図1
  • 特許-放射線検出器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20250508BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20250508BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/42 500S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021104829
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2023003636
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八野 悠里
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 浩
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-020099(JP,A)
【文献】特開2011-069992(JP,A)
【文献】特開2013-072646(JP,A)
【文献】特開2020-127620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0126742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板と、前記基板の撮像面に形成された半導体素子と、を有する放射線検出部と、
前記放射線検出部を支持する支持部材と、
前記撮像面と対向する前面部と、前記放射線検出部を挟んで前記前面部と対向する背面部とを備える、前記放射線検出部を収容する筐体と、
前記支持部材を挟んで前記放射線検出部からの信号を読み出す読出回路が設けられた回路基板と、
前記放射線検出部と前記回路基板を接続するフレキシブルプリント基板と、
前記支持部材と前記回路基板との間の少なくとも前記回路基板に重なる位置、及び前記回路基板と前記背面部との間の少なくとも前記回路基板に重なる位置に設けられた、前記回路基板の振動を抑制する緩衝部材と、
を備える放射線検出器。
【請求項2】
前記支持部材は、発泡体で形成されている請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
記支持部材と前記放射線検出部との間に緩衝部材が設けられている請求項1又は請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記放射線検出部と前記支持部材との間に設けられた放射線遮蔽部材を備え
記放射線遮蔽部材と前記支持部材との間に緩衝部材が設けられている請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記回路基板からの信号を処理するインターフェース基板を更に備え
記支持部材と前記インターフェース基板との間に緩衝部材が設けられている請求項1から4のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記回路基板からの信号を処理するインターフェース基板を更に備え
記インターフェース基板と前記背面部との間に緩衝部材が設けられている請求項1から5のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記放射線検出部からの信号に基づき画像データを生成する機能と、放射線が照射されたことを検出する機能とを有する請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記緩衝部材は、剛性体である請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記緩衝部材は、弾性体である請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記緩衝部材は、発泡体である請求項1から請求項のうちいずれか一に記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線(以下、X線とも称す)画像の撮影にフラットパネルディテクター(FPD)と称される軽量薄型の放射線検出器が利用されている。
市場においてFPDのさらなる軽量化は依然として要望されている。FPDを構成する部品の中で重量比の割合が高い部品に、ガラス基板や樹脂基台があり、これらの部品を軽量化することは、FPDを軽量化することにつながる。軽量化を実現するためにTFT(薄膜トランジスタ(thin film transistor))は、ガラス基板から薄いフィルム状のフレキシブル基板上に形成されガラス分の重量が軽くされている。基台は樹脂成型からより軽量な素材である発泡剤で形成する技術が確立されており、従来のFPDより、さらなる軽量化が達成できる状況にある。
【0003】
特許文献1にあっては、放射線検出器を持ち運ぶ際の振動に起因する帯電を防止することを目的に、電子カセッテの筐体における天板に取り付けられた放射線検出器の当該天板に取り付けられている面とは反対側の面に、筐体の天板とは反対側の面に支持された導電性ゴムを取り付ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-048169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブル基板のTFTを採用した構成は、従来のガラス基板のTFTを採用した構成よりも軽量であるが剛性は低く、振動に弱い。そのためTFTの信号線と基台間の距離が振動により変動すると、その空間に形成される寄生容量が変動し、画像やX線の照射を検出するX線検出部にノイズが重畳し、画像品質の劣化、X線の照射の誤検知が発生してしまう。
【0006】
本発明の課題は、放射線検出器の軽量性を保ちつつ、効果的に振動を抑制することで、画像品質の劣化を防ぎ、X線の照射の検出精度を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る放射線検出器は、可撓性を有する基板と、前記基板の撮像面に形成された半導体素子と、を有する放射線検出部と、
前記放射線検出部を支持する支持部材と、
前記撮像面と対向する前面部と、前記放射線検出部を挟んで前記前面部と対向する背面部とを備える、前記放射線検出部を収容する筐体と、
前記支持部材を挟んで前記放射線検出部からの信号を読み出す読出回路が設けられた回路基板と、
前記放射線検出部と前記回路基板を接続するフレキシブルプリント基板と、
前記支持部材と前記回路基板との間の少なくとも前記回路基板に重なる位置、及び前記回路基板と前記背面部との間の少なくとも前記回路基板に重なる位置に設けられた、前記回路基板の振動を抑制する緩衝部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放射線検出器の軽量性を保ちつつ、効果的に振動を抑制することで、画像品質の劣化を防ぎ、X線の照射の検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る放射線検出器の断面模式図である。
図2】回路基板及びその上下緩衝部材、並びに支持部材の積層構造を示すための後面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように本発明の一実施形態の放射線検出器100は、筐体の前面部1と、放射線検出部(フレキシブル基板のTFT)2と、放射線遮蔽部材3と、支持部材(基台)4と、回路基板5と、インターフェース基板6と、制御基板7と、筐体の背面部8と、フレキシブルプリント基板9とを備える。尚、前面部1と放射線検出部2との間には緩衝材が設けられている。
放射線検出器100の横方向をX、縦方向をY、前後方向をZとして図示する。
図1に示すようにZ方向に、前面部1、放射線検出部2、放射線遮蔽部材3、支持部材4、回路基板5(インターフェース基板6、制御基板7)、背面部8が積層して配置されている。
【0012】
回路基板5には、放射線検出部からの信号を読み出す読出回路が設けられている。放射線検出部2と回路基板5はフレキシブルプリント基板9により接続されている。フレキシブルプリント基板9は、放射線検出部2と回路基板5との接続導線パターンがプリントされており、放射線検出部2から回路基板5にY軸回りに曲げられて引き回されている。
【0013】
放射線検出部2は、可撓性を有する基板21と、当該基板21の撮像面22に形成された半導体素子23と、を有する。放射線検出部2は、XY面上に二次元状に配列され、放射線を検出するための複数の放射線検出素子を備える。放射線検出素子は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の半導体素子である。放射線検出素子は、放射線の被照射量に応じた電荷を発生させる。TFT(薄膜トランジスタ(thin film transistor))で構成されたスイッチ素子が放射線検出素子に一対一に接続され同じくXY面上に二次元状に配列されている。かかるスイッチ素子のオン・オフのタイミング制御により、Y方向の各列の放射線検出素子の検知アナログ信号がY方向に延在する信号線を通して回路基板5上の各読出回路に送出される。
【0014】
各読出回路が対応する信号線から入力された電荷の量に基づいてアナログ信号値を生成する。
各読出回路から出力されるアナログ信号値が順次にインターフェース基板6に送出される。インターフェース基板6は、回路基板5からの信号を処理する。インターフェース基板6は、回路基板5からのアナログ信号値を所定のデジタルの信号値に変換して制御基板7に送出する。
【0015】
制御基板7上に実装された制御回路が放射線画像撮影を制御し、回路基板5の読出回路が読み出しインターフェース基板6がA/D変換した信号値に基づいて放射線画像の画像データを生成する。すなわち、当該制御回路は、放射線検出部2からの信号に基づき画像データを生成する機能を有する。
また、制御回路は放射線画像撮影を制御するため、放射線検出部2からの信号に基づき放射線が照射されたことを検出する機能を有する。被写体を挟んで放射線検出部2に対向配置された放射線発生装置から放射線が放射線検出部2に向けて照射されるタイミングと同期して、放射線検出部2からの信号に基づき放射線が照射されたことを検出する機能を有する。尚、放射線が照射されたことを検出する素子を、画像データを生成する放射線検出素子とは別に設けても良い。
【0016】
放射線検出部2の可撓性を有する基板は、樹脂フィルムによって構成される。放射線検出部2には、上記放射線検出素子及びTFTを含む半導体素子23の層上にシンチレーターが含まれているものであってもよい。
支持部材4は発泡体で板状に形成されており、放射線検出部2を平面状の定型に支持する。
筐体は、撮像面22と対向する前面部1と、放射線検出部2を挟んで前面部1と対向する背面部8とを備え、放射線検出部2を収容する。
放射線遮蔽部材3は、例えば鉛やモリブデン、タングステンのシートにより構成される。
【0017】
本実施形態のようにフレキシブル基板のTFT及び発泡基台を採用した構成は、従来のガラス基板のTFT及び樹脂基台を採用した構成よりも軽量であるが剛性は低く、振動に弱い。そのためTFTの信号線と基台間の距離が振動により変動すると、その空間に形成される寄生容量が変動し、画像やX線検出部にノイズが重畳し、画像品質の劣化、上述のX線の照射の誤検知が発生してしまう。
本発明者らの研究により、フレキシブル基板のTFT及び発泡基台を採用した構成において、X線の照射を検出するための検出信号へのノイズの影響を低減し検出精度を向上するには、放射線検出部2から読出回路を有した回路基板5へ延設されるフレキシブルプリント基板9と放射線検出部2との接続部位Bの振動を抑制することが効果的であることがわかった。
例えば、前面部1から大きな衝撃が加わると、この接続部位Bが振動してしまい、ノイズが発生する。
また、支持部材4を通じて背面部8側の回路基板5やインターフェース基板6、フレキシブルプリント基板9に振動が伝わり、回り込む形で、接続部位Bを振動させてしまい、その結果ノイズが発生する。
【0018】
振動を抑制するために本実施形態の放射線検出器100は、緩衝部材C11,C12,C21,C22,C31,C32の全部又は一部を選択的に備える。緩衝部材C11と緩衝部材C12は同一層であり、双方を設置する場合にはその間の緩衝部材C13も含めて連続した一枚の緩衝部材としてもよい。緩衝部材C21と緩衝部材C22は同一層であり、双方を設置する場合にはその間の緩衝部材C23も含めて連続した一枚の緩衝部材としてもよい。緩衝部材C31と緩衝部材C32は同一層であり、双方を設置する場合にはその間の緩衝部材C33も含めて連続した一枚の緩衝部材としてもよい。さらに他の範囲に緩衝部材を延設してよい。
【0019】
緩衝部材C11-C13は、支持部材4と放射線検出部2との間に設けられている。
緩衝部材C21-C23,C31-C33は、支持部材4と背面部8の間に設けられている。そのうち緩衝部材C21-C23は、支持部材4と回路基板5・インターフェース基板6との間に設けられている。緩衝部材C31-C33は、回路基板5・インターフェース基板6と背面部8の間に設けられている。
緩衝部材は、支持部材4と放射線検出部2との間、及び支持部材4と背面部8との間の少なくとも一方に設けられる。
また、緩衝部材は、支持部材4と放射線検出部2との間、及び、支持部材4と背面部8との間に設けられていてもよい。振動をより抑制することができる。
【0020】
放射線遮蔽部材3が放射線検出部2と支持部材4との間に設けられている。
緩衝部材C11-C13は、放射線遮蔽部材3と支持部材4との間に設けられている。軽量性のためにこの層に配置する緩衝部材を、緩衝部材C11-C13に限定する場合、緩衝部材C11及び緩衝部材C12のいずれか一方又は双方に限定する場合がある。これらの場合でも、放射線遮蔽部材3が介在することで局所的に配置された緩衝部材が放射線検出部2に直接当たらない。これにより、放射線検出部2の局所的変形を抑え、これを原因とした画像ムラの発生を抑えることができる。
【0021】
図2に、回路基板5及びその上下緩衝部材、並びに支持部材4の積層構造を示すための後面側から見た斜視図を示す。
振動を効果的に抑制するために、緩衝部材C21のように、緩衝部材は支持部材4と回路基板5との間の、Z方向に見て少なくとも回路基板5に重なる位置に設けられているとよい。
さらに緩衝部材C22のように、緩衝部材は支持部材4とインターフェース基板6との間に設けられているとよい。
【0022】
また、緩衝部材C31のように、緩衝部材は回路基板5と背面部8との間の、Z方向に見て少なくとも回路基板5に重なる位置に設けられているとなおよい。
さらに緩衝部材C32のように、緩衝部材はインターフェース基板6と背面部8との間に設けられているとよい。
【0023】
顕著に軽量性を保ちつつ、効果的に振動を抑制することで検出精度を向上するには、緩衝部材C11に限定して設ける構成や、緩衝部材C21に限定して設ける構成を実施するとよい。接続部位Bの振動を効果的に抑制することで、検出信号へノイズ影響を低減し検出精度を向上することができる。
【0024】
緩衝部材C11-C13,C21-C23,C31-C33は、ポリカーボネイト、ABS樹脂、炭素繊維強化樹脂、発泡金属で成型した板等の剛性体とすることができる。
また、緩衝部材C11-C13,C21-C23,C31-C33は、エチレンプロピレン、クロロプレン、スチレン系・オフィレン系・ポリウレタン系エラストマー等の弾性体とすることができる。
また、緩衝部材C11-C13,C21-C23,C31-C33は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等による発泡体とすることができる。
特に緩衝部材C11-C13に関しては剛性体とすることで、放射線遮蔽部材3と支持部材4との間の距離を保持するスペーサーとして機能させ、寄生容量の変化を抑制することができる。
【0025】
以上説明したように本実施形態の放射線検出器100によれば、軽量なフレキシブル基板のTFT(2)及び発泡基台(4)を採用しつつも、適所に限定して緩衝部材を配置することで検出精度に影響する振動を効果的に抑制することができる。したがって、放射線検出器100の軽量性を保ちつつ、効果的に振動を抑制することで、画像品質の劣化を防ぎ、X線の照射の検出精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0026】
C11-C13,C21-C23,C31-C33 緩衝部材
1 前面部
2 放射線検出部
3 放射線遮蔽部材
4 支持部材(基台)
5 回路基板(読出回路)
6 インターフェース基板
7 制御基板
8 背面部
9 フレキシブルプリント基板
100 放射線検出器
図1
図2