(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20250508BHJP
【FI】
H02K3/50 A
(21)【出願番号】P 2021112693
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】横山 有成
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153198(JP,A)
【文献】特開2014-176211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と共に回転するロータと、
前記ロータの外周に設けられ、巻線を巻回して形成されるコイルを周方向に複数配列するステータと、
前記巻線の端部に接合されるバスバーと、を備え、
前記バスバーは、前記ステータの軸方向の端面から突出する前記巻線の端部に対し前記端部の延伸方向へ折り曲げられて接合されて
おり、
前記巻線の端部は、前記ステータの端面から軸方向へ延伸しており、
前記バスバーは、長尺な平板状に形成された接合部と、前記接合部において前記巻線の端部の延伸方向に折り曲げて折り返された曲折部とを有し、
前記巻線の端部は、前記曲折部に達していない、
回転機械。
【請求項2】
前記バスバーは、前記巻線の端部を覆うように配置され、前記巻線を径方向に挟んで設けられる、
請求項
1記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械として、例えば、特開2019-170137号公報に記載されるように、ステータのコイルをバスバーに接合するモータが知られている。バスバーは、コイルを外部機器と電気的に接合する部品として機能する。このバスバーは、コイルの巻線と接合される接合部と外部機器と接合される端子部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したモータは、その用途によって小型化を図ることが求められる場合がある。ところが、バスバーの構造によって小型化が難しいという問題がある。すなわち、
図5に示すように、ステータ101を軸方向から見た場合、コイルの巻線102が軸方向に引き出され、周方向に所定の間隔で配置される。各巻線102には、バスバー端子103が接合されている。バスバー端子103は、巻線102を挟み込むように周方向へ折り曲げられ、ヒュージング、抵抗溶接などにより加圧されて巻線102と接合される。このとき、
図6に示すように、巻線102を挟むようにバスバー端子103を両側から加圧すると、バスバー端子103が周方向へ延びるように変形し、隣接するバスバー端子103の距離L1が狭まることとなる。このため、バスバー端子103同士の接触を避けるために、距離L1を十分な長さに設定する必要がある。従って、ステータ101を小径化してモータを小型化することが困難となる。
【0005】
そこで、小型化が図れる回転機械の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る回転機械は、回転軸と共に回転するロータと、ロータの外周に設けられ、巻線を巻回して形成されるコイルを周方向に複数配列するステータと、巻線の端部に接合されるバスバーとを備え、バスバーは、ステータの軸方向の端面から突出する巻線の端部に対し端部の延伸方向へ折り曲げられて接合されている。この回転機械によれば、バスバーが巻線の端部の延伸方向へ折り曲げられて巻線に接合されている。これにより、バスバーと巻線の接合時にバスバーがステータの周方向へ延びて変形することが抑制される。このため、隣り合うバスバーの接合部同士の距離を狭く設定することができ、ステータの小径化を図ることができる。従って、回転機械の小型化を図ることができる。
【0007】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、巻線の端部は、ステータの端面から軸方向へ延伸していてもよい。
【0008】
また、本開示の一態様に係る回転機械において、バスバーは、巻線の端部を覆うように配置され、巻線を径方向に挟んで設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る発明によれば、回転機械の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る回転機械のステータの構成概要を示す図である。
【
図2】
図1の回転機械のステータを側方から見た図である。
【
図3】
図1の回転機械のバスバーの接合部の説明図である。
【
図4】
図1の回転機械のバスバーの接合部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る回転機械のステータの構成概要図であり、軸方向からステータを見た図である。
図2は、ステータを側方から見た図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る回転機械1は、ステータ2及びロータ3を備えて構成される。回転機械1は、例えば電動機であり、電気エネルギの供給によりロータ3を回転させて機械的エネルギを発生させる。ロータ3は、回転軸31と一体に形成され、回転軸31と共に回転軸線Aを中心に回転する。ステータ2は、回転軸線Aを中心に回転する磁界を発生させ、ロータ3を回転させる。ステータ2は、図示しないハウジングに収容されており、ハウジングに対して回転及び移動しないように固定されている。回転軸31は、ハウジングに設けられるベアリングなどにより軸受けされ、回転軸線Aを中心に回転可能に取り付けられている。
【0014】
ステータ2は、筒状を呈し、内側にロータ3を配置させロータ3の外周を覆うように設けられている。ステータ2は、周方向に配列される複数のコイル22を有している。コイル22は、図示しないコアに巻線22aを巻回して形成されている。巻線22aは、金属製の導線であり、コイル22から軸方向へ向けて引き出されている。引き出された巻線22aの端部には、バスバーの接合部41がそれぞれ接合されている。接合部41は、バスバーを巻線22aと接合するための金属製の端子である。
図1及び
図2において、バスバーの接合部41のみ図示しており、バスバー全体の図示は省略している。例えば、一つのバスバーにおいて、複数の接合部41が形成され、複数の巻線22aと接合される。バスバーは、接合部41を通じてコイル22と接合され、スター結線(Y結線)やデルタ結線(三角結線)などの三相交流回路の一部を構成する。バスバーは、結線の態様によって異なる形状に形成される。
【0015】
なお、本実施形態では、ステータ2の軸方向の端面から巻線22aの端部が引き出され軸方向に沿って延伸している。つまり、コイル22から引き出された巻線22aの端部が軸方向に向けて延在している。しかし、これによらず、巻線22aの端部は、ほぼ軸方向に延在していてもよい。例えば、巻線22aの端部は、周方向又は径方向に傾いて延在していてもよい。また、巻線22aの端部は、終端が折り畳まれていてもよい。例えば、巻線22aの端部の終端を180度折り返してもよく、その折り返した部分にバスバーの接合部41が接合されていてもよい。
【0016】
図3及び
図4は、バスバーの接合部の説明図である。
図3は
図1のIII-IIIにおいて接合部を側方から見た図であり、
図4は複数の接合部を軸方向から見た図である。
【0017】
図3に示すように、バスバーの接合部41は、巻線22aの端部に対し巻線22aの延伸方向へ折り曲げて接合されている。ここでは、巻線22aが軸方向へ延在しており、接合部41は軸方向へ折り曲げて接合されている。軸方向とは、ロータ3の回転軸線Aと平行な方向である。
図3では、上下方向が軸方向となっている。接合部41は、バスバーの本体部から延びており、例えば長尺な平板状に形成される。接合部41は、巻線22aと平行に配置され、巻線22aの延伸方向に折り曲げて折り返すことによりフック形状とされる。そして、接合部41は、曲折部41aで巻線22aの端部を覆い、巻線22aを径方向に挟み込んで設けられている。曲折部41aは、接合部41において折り曲げられた部分である。接合部41は、曲折部41aでU字状又は180度に折り返されている。また、バスバーは、曲折部41aの両側へ延びる部位が、巻線22aの端部の延伸方向を向いている。
【0018】
本開示では、ステータ2の軸方向の端面から、巻線22aの端部が突出している。そして、突出した巻線22aの端部が周方向へ沿って配列されている。また、巻線22aの端部には、バスバーの接合部41が取り付けられている。これらの配列された巻線22aの端部及び接合部41については、絶縁性を担保するため、互いにある程度離間して配置されている。つまり、隣り合う巻線22aの端部及び接合部41の間をある程度離隔することで、絶縁距離を確保している。
【0019】
接合部41と巻線22aの接合は、例えばヒュージング又は抵抗溶接によって行われる。例えば、接合部41は、巻線22aの端部を覆うように巻線22aを挟み込んで配置される。このとき、接合部41は、巻線22aをステータ2の径方向に挟み込んだ状態とされる。
図3では、左右方向が径方向となっている。そして、巻線22a及び接合部41は、図示しない二つの電極によって径方向から挟まれるように加圧される。そして、巻線22a及び接合部41は、電極間の通電によって加熱される。これにより、熱カシメによって巻線22aと接合部41が接合される。
【0020】
この接合により、巻線22a及び接合部41は変形する。すなわち、巻線22a及び接合部41は径方向に押し潰され、接合部41の曲折部41aが軸方向へ延出する。しかしながら、接合時の変形により、接合部41が周方向へほとんど延び出ることはない。このため、巻線22aと接合部41との接合時において、接合部41の変形により、接合部41が隣接する接合部41へ接近することが抑制される。つまり、
図4に示すように、隣接する接合部41と接合部41との距離Lは、巻線22aと接合部41との接合時における接合部41の変形によって狭まることが抑制される。従って、接合部41と接合部41との間の距離Lを小さく設定しても絶縁距離を確保することができ、ステータ2の小径化を図ることができる。これにより、回転機械1の小型化を図ることができる。
【0021】
なお、ステータ2及び回転機械1が長軸化するおそれもあるが、径方向と軸方向のどちらのサイズ制約が強いかは適用する製品によって異なる。本実施形態に係る回転機械1においては、径方向のサイズ制約の強い場合に有益である。
【0022】
以上説明したように、本実施形態に係る回転機械1によれば、バスバーが巻線22aの端部の延伸方向へ折り曲げられて巻線22aに接合されている。これにより、バスバーの接合部41と巻線22aの接合時に接合部41がステータ2の周方向へ変形することが抑制される。このため、隣り合う接合部41同士の距離Lを狭く設定しても変形により接触することが避けられる。従って、ステータ2の小径化を図ることができ、回転機械1の小型化を図ることができる。
【0023】
これに対し、バスバーの接合部41を巻線22aの端部に対し巻線22aと交差する方向に折り曲げて巻線22aに接合する場合、ステータ2の小径化が難しく、回転機械1の小型化を図ることが困難となる。すなわち、巻線22aと接合部41の接合時に接合部41が周方向へ延び出すように変形し、接合部41同士の間を狭く設定することができないからである(
図6参照)。つまり、隣り合うバスバーとの絶縁距離を確保するため、バスバー同士の間をある程度離隔する必要があるからである。また、バスバーの接合部41を巻線22aの端部に対し径方向へ折り曲げて巻線22aに接合する場合も、ステータ2の小径化が難しく、回転機械1の小型化を図ることが困難となる。この場合、巻線22aと接合部41の接合時に接合部41が径方向へ延び出すように変形し、ステータ2を径方向へ大きくせざるを得ないからである。そこで、本実施形態に係る回転機械1では、バスバーの接合部41を巻線22aの延伸方向へ折り曲げて巻線22aに接合している。これにより、隣り合う接合部41同士の距離Lを狭く設定することができ、ステータ2の小径化及び回転機械1の小型化を図ることができるのである。
【0024】
さらに言えば、巻線22aの端部の延伸方向と交差するようにバスバーを接合する場合、バスバーが周方向へ延伸することになる。この場合、周方向に隣り合う巻線22aの端部及びバスバーの距離を確保するためには、本実施形態と比べて、巻線22aの端部及びバスバーを広い領域に分散させる必要がある。これに対し、本実施形態に係る回転機械1では、熱カシメの実施の有無によらずステータ2の小径化に寄与することができる。
【0025】
また、本実施形態に係る回転機械1によれば、バスバーの接合部41が軸方向へ折り曲げて巻線22aに接合されているため、接合部41周辺において径方向及び周方向の接合スペースが広がることとなる。従って、電極などの接合ツールを軸方向から接合位置までアクセスしやすくなり、接合作業がしやすくなる。
【0026】
なお、以上のように本開示の実施形態に係る回転機械1について説明したが、本開示の回転機械は、上述したものに限られるものではない。本開示の回転機械は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形態様で実施することができる。
【0027】
例えば、上述した実施形態に係る回転機械1では、ステータ2が六つのコイル22と十二個の巻線22aの端部を有するものであったが、コイル22と巻線22aの端部がそれ以外の個数であるステータを用いてもよい。
【0028】
また、上述した実施形態に係る回転機械1では、電動機に適用する場合について説明したが、回転機械1は、ステータ及びロータを有する発電機、モータジェネレータなど電動機以外の回転機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 回転機械
2 ステータ
3 ロータ
22 コイル
22a 巻線
31 回転軸
41 接合部(バスバー)
41a 曲折部
A 回転軸線
L 距離