(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】アクチュエータ制御装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/32 20060101AFI20250508BHJP
F16H 63/38 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
F16H61/32
F16H63/38
(21)【出願番号】P 2022069566
(22)【出願日】2022-04-20
【審査請求日】2024-06-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 聡子
(72)【発明者】
【氏名】中山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】原田 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】宮野 遥
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088995(JP,A)
【文献】特開2009-162309(JP,A)
【文献】特開2002-349705(JP,A)
【文献】特開2017-227307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/32
F16H 63/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源(40)を有するアクチュエータ(10)と、
複数の谷部(211、212)および前記谷部を隔てる山部(215)が形成されているディテント部材(21)、および、前記アクチュエータにより出力軸(15)が駆動されることで前記谷部間を移動可能である係合部材(26)を有するディテント機構(20)と、
を備える駆動システム(1)において、前記アクチュエータを駆動し前記係合部材を移動させることでシフトレンジの切り替えを制御するアクチュエータ制御装置であって、
前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御部(75)と、
前記係合部材を目標レンジに応じた目標谷部に移動させるとき、センサ情報に基づいて前記係合部材が前記山部を乗り越えたことを判定する位置判定部(73)と、
前記係合部材が前記山部を乗り越えたと判定されたタイミングである山越え判定タイミングにて、前記係合部材が前記目標レンジに対応する目標レンジ範囲に到達したと推定可能であるレンジ判定部(74)と、
を備え、
前記駆動源と前記出力軸との間に設けられている遊びの合計は、前記山部の頂点とレンジ判定範囲との間の角度より大きく、前記山部の頂点と前記谷部の最底部との間の角度より小さく形成されており、
前記位置判定部は、前記出力軸の角度変化量が急変判定閾値以上である場合、前記係合部材が前記山部を乗り越えたと判定するアクチュエータ制御装置。
【請求項2】
前記駆動源と前記出力軸との間には、減速機構(42)が設けられており、
前記減速機構の被駆動トルクは、前記ディテント機構にて前記係合部材を前記谷部側に移動させるトルクより大きい請求項1に記載のアクチュエータ制御装置。
【請求項3】
駆動源(40)を有するアクチュエータ(10)と、
複数の谷部(211、212)および前記谷部を隔てる山部(215)が形成されているディテント部材(21)、および、前記アクチュエータにより出力軸(15)が駆動されることで前記谷部間を移動可能である係合部材(26)を有するディテント機構(20)と、
を備える駆動システム(1)において、前記アクチュエータを駆動し前記係合部材を移動させることでシフトレンジの切り替えを制御するアクチュエータ制御装置であって、
前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御部(75)と、
前記係合部材を目標レンジに応じた目標谷部に移動させるとき、センサ情報に基づいて前記係合部材が前記山部を乗り越えたことを判定する位置判定部(73)と、
前記係合部材が前記山部を乗り越えたと判定されたタイミングである山越え判定タイミングにて、前記係合部材が前記目標レンジに対応する目標レンジ範囲に到達したと推定可能であるレンジ判定部(74)と、
を備え、
前記駆動源と前記出力軸との間に設けられている遊びの合計は、前記山部の頂点とレンジ判定範囲との間の角度より大きく、前記山部の頂点と前記谷部の最底部との間の角度より小さく形成されており、
前記駆動源と前記出力軸との間には、減速機構(42)が設けられており、
前記減速機構の被駆動トルクは、前記ディテント機構にて前記係合部材を前記谷部側に移動させるトルクより大きく、
前記駆動制御部は、前記係合部材が前記山部を乗り越えたと判定された後に前記駆動源をオフにし、前記目標谷部の谷底に到達する手前の坂の途中で前記係合部材を停止させるアクチュエータ制御装置。
【請求項4】
前記レンジ判定部は、前記山越え判定タイミングにて、現在のレンジが前記目標レンジであると判定し、
前記駆動制御部は、前記山越え判定タイミングにて、前記アクチュエータを停止させる停止制御を開始する請求項1~
3のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置。
【請求項5】
前記レンジ判定部は、前記山越え判定タイミングからレンジ判定待機時間が経過した後に現在のレンジが前記目標レンジであると判定し、
前記駆動制御部は、前記山越え判定タイミングから停止移行時間が経過した後に前記アクチュエータを停止させる停止制御を開始する請求項1~
3のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置。
【請求項6】
前記レンジ判定部は、前記山越え判定タイミングから、前記出力軸の位置を検出可能な位置センサ(55)の検出値がレンジ判定待機量変化した後に現在のレンジが前記目標レンジであると判定し、
前記駆動制御部は、前記山越え判定タイミングから前記位置センサの検出値が停止移行量変化した後に前記アクチュエータを停止させる停止制御を開始する請求項1~
3のいずれか一項に記載のアクチュエータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機のシフトレンジ切替機構を電気的に制御するシフトバイワイヤシステムが知られている。例えば特許文献1では、ディテントローラが目標シフトレンジに応じた凹部の中心に嵌まり合っているときの遊びの範囲内にて停止するように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、油圧によりシフトレンジを切り替えているため、ディテントローラを谷位置に確実に落とす必要がある。例えばP、notPを切り替えるブレーキバイワイヤシステムのように油圧機構が不要である場合、ディテントローラが谷底まで落ちていなくても、機能を満足させられる場合がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、応答性を向上可能なアクチュエータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアクチュエータ制御装置(60)は、駆動源(40)を有するアクチュエータ(10)と、ディテント機構(20)と、を備える駆動システム(1)において、アクチュエータを駆動し係合部材を移動させることでシフトレンジの切り替えを制御する。ディテント機構は、ディテント部材(21)、および、係合部材(26)を有する。ディテント部材は、複数の谷部(211、212)、および、谷部を隔てる山部(215)が形成されている。係合部材は、アクチュエータにより出力軸(15)が駆動されることで谷部間を移動可能である。
【0007】
アクチュエータ制御装置は、駆動制御部(75)と、位置判定部(73)と、レンジ判定部(74)と、を備える。駆動制御部は、アクチュエータの駆動を制御する。位置判定部は、係合部材を目標レンジに応じた目標谷部に移動させるとき、センサ情報に基づいて係合部材が山部を乗り越えたことを判定する。レンジ判定部は、係合部材が山部を乗り越えたと判定されたタイミングである山越え判定タイミングにて、係合部材が目標レンジに対応する目標レンジ範囲に到達したと推定可能である。
第1の態様および第2の態様では、駆動源と出力軸との間に設けられている遊びの合計は、山部の頂点とレンジ判定範囲との間の角度より大きく、山部の頂点と谷部の最底部との間の角度より小さく形成されている。
第1の態様では、位置判定部は、出力軸の角度変化量が急変判定閾値以上である場合、係合部材が山部を乗り越えたと判定する。
第2の態様では、駆動源と出力軸との間には、減速機構(42)が設けられており、減速機構の被駆動トルクは、ディテント機構にて係合部材を谷部側に移動させるトルクより大きい。駆動制御部は、係合部材が山部を乗り越えたと判定された後に駆動源をオフにし、目標谷部の谷底に到達する手前の坂の途中で係合部材を停止させる。
これにより、シフトレンジを切り替える際、速やかにレンジ判定を行うことができ、応答性を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態によるパークロックシステムを示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態による電動アクチュエータを示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態による制御装置を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態による切替処理を説明するフローチャートである。
【
図5】第1実施形態による切替処理を説明する模式図およびタイムチャートである。
【
図6】第2実施形態による切替処理を説明するフローチャートである。
【
図7】第2実施形態による切替処理を説明する模式図およびタイムチャートである。
【
図8】第3実施形態による切替処理を説明するフローチャートである。
【
図9】第4実施形態による切替処理を説明する模式図およびタイムチャートである。
【
図10】第5実施形態による切替処理を説明するフローチャートである。
【
図11】第5実施形態による切替処理を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明によるアクチュエータ制御装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態を
図1~
図5に示す。
図1に示すように、電動アクチュエータ10は、パークロックシステム1に適用される。パークロックシステム1は、電動アクチュエータ10、ディテント機構20、および、パーキングロック機構30を備える。電動アクチュエータ10は、回転式であって、例えばブラシ付きDCモータおよび減速ギア機構等から構成される。電動アクチュエータ10は、出力軸15を回転させることで、ディテント機構20を駆動する。
【0011】
ディテント機構20は、ディテントプレート21、および、ディテントスプリング25等を有し、電動アクチュエータ10から出力された回転駆動力を、パーキングロック機構30へ伝達する。
【0012】
ディテントプレート21は、出力軸15に固定され、電動アクチュエータ10により駆動される。ディテントプレート21のディテントスプリング25側には、2つの谷部211、212、および、谷部211、212を隔てる山部215が設けられる。
【0013】
付勢部材であるディテントスプリング25は、弾性変形可能な板状部材であり、先端にディテントローラ26が設けられる。ディテントスプリング25は、ディテントローラ26をディテントプレート21の回動中心側に付勢する。
【0014】
ディテントプレート21に所定以上の回転力が加わると、ディテントスプリング25が弾性変形し、ディテントローラ26が谷部211、212間を移動する。ディテントローラ26が谷部211、212のいずれかに嵌まり込むことで、ディテントプレート21の揺動が規制され、パーキングロック機構30の状態が固定される。
【0015】
パーキングロック機構30は、パーキングロッド31、円錐体32、パーキングレバー33、軸部34、および、パーキングギア35を有する。パーキングロッド31は、略L字形状に形成され、一端311側がディテントプレート21に固定される。パーキングロッド31の他端312側には、円錐体32が設けられる。円錐体32は、他端312側にいくほど縮径するように形成される。ディテントローラ26がPレンジに対応する谷部211に嵌まり込む方向にディテントプレート21が回転すると、円錐体32が矢印Pの方向に移動する。
【0016】
パーキングレバー33は、円錐体32の円錐面と当接し、軸部34を中心に揺動可能に設けられる。パーキングレバー33のパーキングギア35側には、パーキングギア35と噛み合い可能な凸部331が設けられる。ディテントプレート21の回転により、円錐体32が矢印P方向に移動すると、パーキングレバー33が押し上げられ、凸部331とパーキングギア35とが噛み合う。一方、円錐体32が矢印notP方向に移動すると、凸部331とパーキングギア35との噛み合いが解除される。
【0017】
パーキングギア35は、図示しないドライブシャフトと接続しており、パーキングレバー33の凸部331と噛み合い可能に設けられる。パーキングギア35と凸部331とが噛み合うと、ドライブシャフトの回転が規制される。シフトレンジがP以外のレンジであるnotPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングレバー33によりロックされず、ドライブシャフトの回転は、パーキングロック機構30により妨げられない。また、シフトレンジがPレンジのとき、パーキングギア35はパーキングレバー33によってロックされ、ドライブシャフトの回転が規制される。
【0018】
以下適宜、Pレンジのときにディテントローラ26が嵌まり込む谷部211を「P谷」、notPレンジのときにディテントローラ26が嵌まり込む谷部212を「notP谷」、谷部211、212の谷底を「最底部」とする。
【0019】
図2に示すように、電動アクチュエータ10は、モータ40、減速機構42、ケース51、および、基板カバー57等を有する。モータ40は、モータ軸がケース51の底面と略平行になるように基板カバー57上に横置きされている。
【0020】
減速機構42は、ウォームギア43、ヘリカルギア44、中間ギア45、ドリブンプレート46およびドリブンシャフト47を有する。ウォームギア43は、モータ40のモータ軸と一体に回転する。ヘリカルギア44は、ウォームギア43および中間ギア45の大径部と噛み合う。中間ギア45は大径部および小径部を有し、大径部はヘリカルギア44と噛み合い、小径部はドリブンプレート46と噛み合う。
【0021】
ドリブンプレート46とドリブンシャフト47とは、一体に形成されているが、別体としてもよい。ドリブンシャフト47と出力軸15とは、スプライン軸継手にて接続されている。これにより、モータ40の回転は、ウォームギア43、ヘリカルギア44、中間ギア45、ドリブンプレート46およびドリブンシャフト47を経由し、出力軸15に伝達される。
【0022】
ケース51は、例えば樹脂等で形成され、ドリブンシャフト47と対応する箇所に筒部54が形成されている。筒部54は、ドリブンシャフト47側に開口する筒状に形成されており、端面にてドリブンシャフト47と当接可能に設けられている。ドリブンシャフト47と筒部54とが当接することで、筒部54はドリブンシャフト47の軸方向の荷重を受ける。
【0023】
ドリブンシャフト47には、図示しないセンサマグネットが設けられている。また、筒部54の内側であって、ドリブンシャフト47と対向する箇所には、位置センサ55(
図3参照)が設けられている。本実施形態では、ドリブンシャフト47を「センサ軸」とし、位置センサ55により出力軸15の回転位置を検出している。基板カバー57は、ケース51に固定されており、内部に図示しない基板が設けられている。基板には、制御装置60を構成する各種電子部品が実装されている。
【0024】
図3に示すように、制御装置60は、駆動回路61、および、制御部70等を有する。駆動回路61は、図示しない駆動素子を有する。制御部70は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部50における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0025】
制御部70は、要求シフトレンジを取得して目標レンジを設定し、ディテントローラ26が目標レンジに応じた谷部211、212に位置するように、電動アクチュエータ10の駆動を制御する。制御部70は、機能ブロックとして、信号取得部71、回転演算部72、位置判定部73、レンジ判定部74、および、駆動制御部75等を有する。信号取得部71は、位置センサ55からの位置検出信号、図示しない上位ECU等からの要求シフトレンジに係る信号、モータ40の電流、電圧、温度等に係るセンサ信号等を取得する。
【0026】
回転演算部72は、位置センサ55の検出値に基づき、ドリブンシャフト47の回転角であるセンサ角度θs、および、ドリブンシャフト47の回転数であるセンサ回転数Nsを演算する。センサ角度θsおよびセンサ回転数Nsは、ガタが詰まった状態にてドリブンシャフト47と出力軸15とが一体に回転している場合、出力軸15に係る値とみなせる。
【0027】
位置判定部73は、ディテント機構20におけるディテントローラ26の位置を判定する。レンジ判定部74は、現在のシフトレンジを判定する。駆動制御部75は、駆動回路61の駆動素子のオンオフ作動を制御することで、モータ40の駆動を制御する。
【0028】
図5の上段は、モータ40と出力軸15との遊びを模式的に示しており、紙面左右方向を回転方向とみなし、ディテントローラ26が谷部211、212を移動する様子を表している。なお、実際には、出力軸15と一体に回転するディテントプレート21が回転することで、ディテントローラ26が谷部211、212間を移動する。本実施形態では、位置センサ55はドリブンシャフト47の回転を検出する箇所に設けられているが、煩雑になることを避けるため、
図5等では出力軸15の回転位置を検出するものとして記載した。また、モータ等の動作を一点鎖線の矢印で示した。
【0029】
また、モータ軸と出力軸15との間の遊びの合計をガタG、山部215の頂点とnotPレンジ範囲の頂点側とのなす角を中間レンジ角度θb1、山部215とPレンジ範囲の頂点側とのなす角を中間レンジ角度θb2とする。notPレンジ範囲は、パーキングロック機構30を確実に解除可能な範囲に設定され、Pレンジ判定範囲はパーキングロック機構30を確実に作動可能な範囲に設定される。また、山部215の頂点と谷部211、212との間の角度を山谷間角度θmvとする。
図5では、谷部211側の山谷間角度θmvの記載を省略した。山谷間角度θmvは、Pレンジ側とnotPレンジ側とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
本実施形態の電動アクチュエータ10は、PレンジとnotPレンジとを切り替えるパークロックシステム1に適用されており、油圧機構を備えていない。そのため、ディテントローラ26を必ずしも谷底まで落とし込まなくても、パーキングロック機構30を適切に機能させることができる。
【0031】
また本実施形態では、ガタGが中間レンジ角度θb1、θb2より大きく、山谷間角度θmvより小さく形成されている。そのため、ディテントローラ26が山部215を越えた後、ガタGの範囲内で出力軸15が回転することで、出力軸15はPレンジ範囲内またはnotPレンジ範囲内となる。そこで本実施形態では、ディテントローラ26が山部215を越えたと判定された場合、レンジが切り替わったと判定する。
【0032】
本実施形態の切替処理を
図4のフローチャートに基づいて説明する。
図4等の処理は、制御部70にて所定の周期で実行される。以下、ステップS101等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
【0033】
S101では、制御部70は、駆動モードがスタンバイモードか否か判断する。駆動モードがスタンバイモードでないと判断された場合(S101:NO)、S106へ移行する。駆動モードがスタンバイモードであると判断された場合(S101:YES)、S102へ移行する。
【0034】
S102では、制御部70は、目標レンジが切り替わったか否か判断する。目標レンジが切り替わっていないと判断された場合(S102:NO)、スタンバイモードを継続する。目標レンジが切り替わったと判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。S103では、位置判定部73は山越え判定フラグFmjをオフにする。S104では、制御部70は、駆動モードを切替モードとする。S105では、駆動制御部75は、モータ40への通電をオンにする。
【0035】
S106では、制御部70は、駆動モードが切替モードか否か判断する。駆動モードが切替モードでないと判断された場合(S106:NO)、S111へ移行する。駆動モードが切替モードであると判断された場合(S106:YES)、S107へ移行する。
【0036】
S107では、位置判定部73は、山越え判定フラグFmjがオンか否か判断する。制御部70は、ディテントローラ26が山部215を越えたか否かを本処理とは別途の位置判定処理にて判定しており、ディテントローラ26が山部215を越えたと判断された場合、山越え判定フラグFmjがオンされる。
【0037】
ディテントローラ26が山部215を越えると、ディテントスプリング25のスプリング力にて出力軸15が先行するため、負荷トルクが反転し、ガタGが反対側に一気に詰まるため、位置センサ55の検出値が急峻に変動する。そこで本実施形態では、センサ角度θsの前回値と今回値との差の絶対値である角度変化量Δθが急変判定閾値θth以上である場合、ディテントローラ26が山部215を乗り越えたと判定し、山越え判定フラグFmjをオンにする。なお、山越え判定は、ここで例示した以外の方法で行ってもよい。
【0038】
山越え判定フラグFmjがオフであると判断された場合(S107:NO)、ディテントローラ26は山上り中であって、現在の駆動状態を継続する。山越え判定フラグFmjがオンであると判断された場合(S107:YES)、S108へ移行する。制御部70は、S108にて駆動モードを停止モードとし、S109にてモータ40への通電をオフにする。停止モードでは、逆起電力を還流させることでブレーキ力を発生させる。また、S110にて、レンジ判定部74は、現在のレンジを目標レンジとする。
【0039】
駆動モードが切替モードでないと判断された場合(S106:NO)に移行するS111では、制御部70は、駆動モードが停止モードか否か判断する。駆動モードが停止モードでないと判断された場合(S111:NO)、S112以降の処理をスキップする。駆動モードが停止モードであると判断された場合(S111:YES)、S112へ移行する。
【0040】
S112では、制御部70は、停止モード移行から停止判定時間Xstが経過したか否か判断する。停止判定時間Xstが経過していないと判断された場合(S112:NO)、停止モード移行からの経過時間を計時する停止制御カウンタをインクリメントする。停止判定時間Xstが経過したと判断された場合(S112:YES)、S113へ移行し、駆動モードをスタンバイモードとする。また、停止制御カウンタをリセットする。
【0041】
本実施形態の切替処理を
図5のタイムチャートに基づいて説明する。ここでは、目標レンジをnotPレンジとし、PレンジからnotPレンジへの切り替えを例に説明する。
図5では、上段にディテント機構20の駆動状態を示す模式図、下段にタイムチャートを示した。また、タイムチャートでは、共通時間軸を横軸とし、上側から、駆動モード、通電量、回転角度、出力軸角速度、山越え判定フラグFmj、レンジ判定を示す。
【0042】
角度について、位置センサ55の検出値に基づくセンサ角度θsを実線、モータ40の挙動に応じたモータ角度θmを二点鎖線で示し、ギア比換算によりスケールを揃えている。また、ディテントローラ26が谷部211の最底部にあるときのモータ角度を「P」、谷部212の最底部にあるときのモータ角度を「notP」、Pレンジ側の駆動限界を「P壁」、notPレンジ側の駆動限界を「P壁」とした。
図7等も同様である。
【0043】
時刻x10にて、目標シフトレンジがPレンジからnotPレンジに切り替わると、駆動モードがスタンバイモードから切替モードに変更され、モータ40が駆動される。モータ40が駆動されると、ガタが進行方向側に詰まった状態にて、ディテントローラ26は山部215の頂上に向かって移動する。また、レンジ判定をPレンジから中間レンジとする。
【0044】
時刻x11にて、ディテントローラ26が山部215を乗り越えると、トルクが逆向きとなりガタが反対側に一気に詰まる。本実施形態では、ガタGが中間レンジ角度θb1より大きく形成されているため、ガタGの範囲にて出力軸15が動くことで、notPレンジ範囲に到達する。
【0045】
ディテントローラ26が山部215を越えたと判定されたタイミングである時刻x12にて、山越え判定フラグFmjをオンにし、レンジ判定をnotPレンジとする。また、駆動モードを停止モードとし、モータ40への通電をオフにする。停止モード開始から停止判定時間Xstが経過した時刻x13にて、駆動モードをスタンバイモードとする。なお本実施形態のように、被駆動トルクが比較的大きい場合、山部215から谷部212へ向かう途中にてモータ40がオフされると、ディテントローラ26は谷底まで落ちず、下り坂の途中で停止する。
【0046】
本実施形態では、センサ軸であるドリブンシャフト47と出力軸15との間にスプラインガタが存在しているため、ディテントローラ26が山部215を越えてガタが反転することで、センサ角度θsが急変する。この急変を検出することで、ディテントローラ26が山部215を越えたことを判定可能である。また本実施形態では、ガタGが中間レンジ角度θb1、θb2より大きく形成されているため、ディテントローラ26が山部215を越えれば、ガタGの範囲で出力軸15が移動することで、目標レンジ範囲に入る。そこで、ディテントローラ26が山部215を越えることでのセンサ角度θsの急変が検出された時点で、目標レンジに切り替わったと判定可能である。これにより、速やかにレンジ判定を行うことができる。
【0047】
また、電動アクチュエータ10の被駆動トルクが大きいため、ディテントローラ26は、notPレンジ範囲内であって、谷部212の最底部よりも山部215側にて停止する。これにより、ディテントローラ26を谷底まで移動させる場合と比較し、切替角度が小さいため、応答性を向上可能である。
【0048】
以上説明したように、制御装置60は、モータ40を有する電動アクチュエータ10と、ディテント機構20と、を備えるパークロックシステム1において、モータ40を駆動しディテントローラ26を移動させることでシフトレンジの切り替えを制御する。
【0049】
ディテント機構20は、ディテントプレート21、および、ディテントローラ26を有する。ディテントプレート21は、複数の谷部211、212および谷部211、212を隔てる山部215が形成される。ディテントローラ26は、電動アクチュエータ10により出力軸15が駆動されることで谷部211、212間を移動可能である。
【0050】
制御装置60の制御部70は、駆動制御部75と、位置判定部73と、レンジ判定部74と、を備える。駆動制御部75は、モータ40の駆動を制御する。位置判定部73は、ディテントローラ26を目標レンジに応じた目標谷部に移動させるとき、センサ情報に基づいてディテントローラ26が山部215を乗り越えたことを判定する。本実施形態のセンサ情報は、位置センサ55からの情報であるが、例えば電流センサ等、位置センサ55以外の情報に基づいて山越え判定を行ってもよい。
【0051】
レンジ判定部74は、ディテントローラ26が山部215を乗り越えたと判定されたタイミングである山越え判定タイミングにて、ディテントローラ26が目標レンジに対応する目標レンジ範囲に到達したと推定可能である。これにより、シフトレンジを切り替える際、速やかにレンジ判定を行うことができる。
【0052】
レンジ判定部74は、山越え判定タイミングにて、現在のレンジが目標レンジであると判定する。駆動制御部75は、山越えタイミングにて、モータ40を停止させる停止制御を開始する。これにより、ディテントローラ26が谷底に到達する前にレンジ判定するため、応答性を向上することができる。
【0053】
モータ40と出力軸15との間に設けられている遊びの合計であるガタGは、山部215の頂点とレンジ判定範囲との間の角度より大きく、山部215の頂点と谷部211、212の最底部との間の角度より小さい。ガタGを山部215の頂点とレンジ判定範囲との間の角度より大きく形成することで、ディテントローラ26が山部215を乗り越えたとき、ガタGの範囲内で出力軸15が回転し、ディテントローラ26をレンジ判定範囲内まで移動可能であるため、ディテントローラ26の山越えタイミングにて適切にレンジ判定を行うことができる。また、ガタGを山谷間角度θmvより小さく形成することで、ディテントローラ26の山越え時に、ガタGの範囲内で出力軸15が回転しても、ディテントローラ26は谷底まで到達しないため、ディテント機構20における衝突力および異音を抑制することができる。
【0054】
モータ40と出力軸15との間には、減速機構42が設けられている。減速機構42の被駆動トルクは、ディテント機構20におけるディテントローラ26を谷部211、212側へ移動させるトルクより大きい。これにより、ディテントローラ26は谷底に吸い込まれることなく、ガタ詰め状態にて谷底の手前で停止するため、切替角度が低減され、応答性を向上可能である。また、ディテントローラ26を谷底以外の箇所にて停止させるための通電が不要であり、消費電力を抑制することができる。さらにまた、モータ40への通電をオフしたときのディテントローラ26の揺動を抑制することができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図6および
図7に示す。第2実施形態および第3実施形態は、切替処理が上記実施形態と異なるので、この点を中心に説明する。本実施形態の切替処理を
図6のフローチャートに基づいて説明する。S201~S207の処理は、
図4中のS101~S107の処理と同様である。
【0056】
山越え判定フラグFmjがオンであると判断された場合(S207:YES)に移行するS208では、位置判定部73は、山越え判定フラグがオンされてから停止移行時間Xssが経過したか否か判断する。停止移行時間Xssは、ディテントローラ26が山部215を乗り越えてから停止制御へ移行するまでの時間に応じて設定される。停止移行時間Xssが経過したと判断された場合(S208:YES)、S211へ移行する。停止移行時間Xssが経過していないと判断された場合(S208:NO)、山越え判定フラグFmjがオンされてからの経過時間を計時する停止移行カウンタをインクリメントし、S209へ移行する。
【0057】
S209では、レンジ判定部74は、山越え判定フラグがオンされてからレンジ判定待機時間Xrが経過したか否か判断する。レンジ判定待機時間Xrは、ディテントローラ26が山部215を越えてからレンジ判定を行うまでの時間であって、停止移行時間Xssより短く設定される。すなわち、Xr<Xssである。レンジ判定待機時間Xrが経過していないと判断された場合(S209:NO)、山越え判定フラグFmjがオンされてからの経過時間を計時するレンジ判定カウンタをインクリメントする。レンジ判定待機時間Xrが経過したと判断された場合(S209:YES)、S210へ移行し、現在のレンジを目標レンジとする。
【0058】
停止移行時間Xssが経過したと判断された場合(S208:YES)に移行するS211、S212では、制御部70は、駆動モードを停止モードとし、モータ40への通電をオフにする。S213~S215の処理は、
図4中のS111~S113の処理と同様である。
【0059】
本実施形態の切替処理を
図7のタイムチャートに基づいて説明する。時刻x20~時刻x21までの処理は、
図5中の時刻x10~時刻x11と同様である。時刻x22にて、山越え判定フラグFmjがオンになると、レンジ判定カウンタおよび停止移行カウンタでの計時が開始される。
【0060】
時刻x23にて、レンジ判定待機時間Xrが経過すると、レンジ判定をnotPレンジとする。時刻x24にて、停止移行時間Xssが経過すると、停止モードに移行する。停止モード移行後の処理は、
図5と同様である。本実施形態では、第1実施形態と比較し、停止移行時間Xssの分、ディテントローラ26が谷底側へ移動した位置にて停止する。
【0061】
本実施形態では、レンジ判定部74は、山越え判定タイミングからレンジ判定待機時間Xrが経過した後に現在のレンジが目標レンジであると判定する。駆動制御部75は、山越え判定タイミングから停止移行時間Xssが経過した後にモータ40を停止させる停止制御を開始する。これにより、確実に目標レンジ範囲への切り替えを行うことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態を
図8に基づいて説明。本実施形態の切替処理を
図8のフローチャートに基づいて説明する、S301~S307は、
図4中のS101~S107の処理と同様である。
【0063】
山越え判定フラグFmjがオンされると判断された場合(S308:YES)に移行するS308では、制御部70は、山越え判定フラグFmjがオンであると判定された初回のセンサ角度θsを山越え角度θomとして記憶する。山越え角度θomが既に記憶されている場合は、その値を保持する。
【0064】
S309では、制御部70は、現在のセンサ角度θsである現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値が停止移行角度θssより大きいか否か判断する。停止移行角度θssは、ディテントローラ26を停止させる停止位置に基づいて設定される。現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値が停止移行角度θssより大きいと判断された場合(S309:YES)、S312へ移行する。現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値が停止移行角度θss以下であると判断された場合(S309:NO)、S310へ移行する。
【0065】
S310では、レンジ判定部74は、現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値がレンジ判定待機角度θrより大きいか否か判断する。レンジ判定待機角度θrは、レンジ判定を行うレンジ判定位置に応じて設定される。現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値がレンジ判定待機角度θr以下であると判断された場合(S310:NO)、S311をスキップする。現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値がレンジ判定待機角度θrより大きいと判断された場合(S310:YES)、S311へ移行し、現在のレンジを目標レンジとする。
【0066】
現在角度θiと山越え角度θomとの差の絶対値が停止移行角度θssより大きいと判断された場合(S309:YES)に移行するS312、S313では、制御部70は、駆動モードを停止モードとし、モータ40への通電をオフにする。S314~S316の処理は、
図4中のS111~S113の処理と同様である。
【0067】
本実施形態では、レンジ判定のタイミングおよび停止モードへの移行タイミングを、経過時間に替えてセンサ角度θsに基づいて判定している点を除き、タイムチャートは第2実施形態と略同様である。
【0068】
本実施形態では、レンジ判定部74は、山越え判定タイミングから、出力軸15の位置を検出可能な位置センサ55の検出値がレンジ判定待機角度θr変化した後に現在のレンジが目標レンジであると判定する。位置センサ55は、出力軸15の位置を直接的に検出するものに限らず、出力軸15と接続されるシャフトやギア比等で換算可能な検出対象を検出するものも含む。駆動制御部75は、山越え判定タイミングから位置センサ55の検出値が停止移行角度θss変化した後にモータ40を停止させる停止制御を開始する。これにより、確実に目標レンジ範囲への切り替えを行うことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態を
図9に示す。
図9は、上段にディテント機構20の駆動状態を示す模式図、下段にタイムチャートを示しており、タイムチャートにおいて回転角度が省略されている点を除き、項目等は
図5と同様である。また、切替処理は第1実施形態と同様である。
【0070】
本実施形態では、ガタGは、山部215と谷部211、212の谷底とのなす角である山谷間角度θmvよりも大きく設けられている。時刻x30にて目標シフトレンジがPレンジからnotPレンジに切り替わると、モータ40が駆動され、ガタが進行方向に詰まった時刻x31にて出力軸15の駆動が開始される。
【0071】
時刻x32にて、ディテントローラ26が山部215を乗り越えると、ガタGの範囲で出力軸15が動くことで、ディテントローラ26が谷部212の最底部まで落とし込まれる。このとき、ガタが反対側に詰まる前にディテントローラ26が谷底に落ちるので、電動アクチュエータ10の内部での衝撃や衝突音の発生を防ぐことができる。また、ディテントローラ26が山部215を乗り越えてから停止制御開始までの間、モータ軸がガタGの範囲内で回転する。ディテントローラ26が山部215を乗り越えたと判定された時刻x33から、停止判定時間Xstが経過する時刻x34までの間、停止制御を行う。
【0072】
本実施形態では、モータ40と出力軸15との間に設けられている遊びの合計は、山部215の頂点と谷部211、212の最底部との間の角度である山谷間角度θmv以上となるように形成されている。これにより、ディテントローラ26が山部215を越えたときに電動アクチュエータ10の内部にて生じる衝撃力および異音を抑制することができる。また、山越えタイミングにて停止制御を開始しても、ディテントローラ26を谷部211、212の最底部にて停止させることができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
(第5実施形態)
第5実施形態を
図10および
図11に示す。本実施形態のディテント機構20は、第4実施形態と同様、ガタGが山谷間角度θmvより大きく形成されている。本実施形態の切替処理を
図10のフローチャートに基づいて説明する。S401~S410の処理は、
図4中のS101~S110の処理と同様である。
【0074】
駆動モードが切替モードでないと判断された場合(S406:NO)に移行するS411では、制御部70は、駆動モードが停止モードか否か判断する。駆動モードが停止モードであると判断された場合(S411:YES)、S412へ移行し、停止モードでないと判断された場合(S411:NO)、S415へ移行する。
【0075】
S412の処理は、
図4中のS112の処理と同様であり、停止判定時間Xstが経過していないと判断された場合(S412:NO)、停止制御カウンタをインクリメントする。停止判定時間Xstが経過したと判断された場合(S412:YES)、S413へ移行し、駆動モードをガタ詰めモードとする。また、停止制御カウンタをリセットする。
【0076】
駆動モードが停止モードでないと判断された場合(S411:NO)に移行するS415では、制御部70は、駆動モードがガタ詰めモードか否か判断する。駆動モードがガタ詰めモードでないと判断された場合(S415:NO)、S416以降の処理をスキップする。駆動モードがガタ詰めモードであると判断された場合(S415:YES)、S416へ移行する。
【0077】
S416では、制御部70は、ガタ詰め制御が完了したか否か判断する。ガタ詰め制御が完了していないと判断された場合(S416:NO)、S417へ移行し、モータ40への通電をオンにし、ガタ詰め制御を行う。ガタ詰め制御中である場合は、その状態を継続する。ガタ詰め制御では、次回切替時の応答性を向上すべく、レンジ切替時とはモータ40を反対方向に駆動し、現在のレンジがnotPレンジであればPレンジ側、現在のレンジがPレンジであればnotPレンジ側にガタを詰めておく。ガタ詰め制御が完了したと判断された場合(S416:YES)、S418へ移行し、駆動モードをスタンバイモードとし、S419にてモータ40への通電をオフにする。
【0078】
本実施形態の切替制御を
図11のタイムチャートに基づいて説明する。
図11では、共通時間軸を横軸とし、上段から、駆動モード、通電量、回転角度、出力軸角速度、山越え判定フラグFmj、レンジ判定を示す。
【0079】
時刻x40にて、目標シフトレンジがPレンジからnotに切り替わると、駆動モードがスタンバイモードから切替モードに変更され、モータ40が駆動される。ここでは、前回の切替時にガタ詰め制御がされているので、モータ40の駆動開始と略同時に出力軸15も駆動され、ディテントローラ26が山部215の頂点に向かって移動する。また、レンジ判定をPレンジから中間レンジとする。
【0080】
時刻x41にて、ディテントローラ26が山部215を乗り越えると、トルクが逆向きとなり、ガタGの範囲にて出力軸15が動くことで、ディテントローラ26が谷部212の谷底まで移動する。時刻x42では、山越え判定フラグFmjをオンにし、駆動モードを停止モードに変更し、モータ40への通電をオフにする。
【0081】
停止モード開始から停止判定時間Xstが経過した時刻x43では、駆動モードをガタ詰めモードに変更し、切替時とは反対方向にモータ40を駆動するように通電する。これにより、出力軸15は、ガタGの範囲内にて、次回切替時の進行方向側であるPレンジ側に寄せられる。時刻x44では、ガタ詰め制御を完了し、モータ40への通電をオフにする。
【0082】
本実施形態では、レンジ切替終了後、モータ40と出力軸15との遊びの範囲内にて、モータ40を切替時とは反対方向に駆動するガタ詰め制御を行う。これにより、応答性を向上可能である。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0083】
実施形態では、パークロックシステム1が「駆動システム」、電動アクチュエータ10が「アクチュエータ」、ディテントプレート21が「ディテント部材」、ディテントローラ26が「係合部材」、モータ40が「駆動源」、制御装置60が「アクチュエータ制御装置」に対応する。また、センサ回転数Nsが「駆動変化率」に対応する。また、レンジ判定待機角度θrが「レンジ判定待機量」、停止移行角度θssが「停止移行量」に対応し、ガタ詰め制御が「戻し制御」に対応する。
【0084】
(他の実施形態)
上記実施形態では、減速機構は、ウォームギア、ヘリカルギアおよび中間ギア等によって構成されている。他の実施形態では、減速機構の構成や減速段数は、上記実施形態と異なっていてもよい。上記実施形態では、駆動源は、ブラシ付きDCモータである。他の実施形態では、駆動源は、ブラシ付きDCモータ以外のモータであってもよいし、ソレノイド等であってもよい。上記実施形態では電動アクチュエータは回転式であるが、他の実施形態では直動式のものであってもよい。
【0085】
上記実施形態では、電動アクチュエータはパークロックシステムに適用される。他の実施形態では、電動アクチュエータをパークロックシステム以外の車載システム、または、車載以外の駆動システムに適用してもよい。
【0086】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0087】
1・・・パークロックシステム(駆動システム)
10・・・電動アクチュエータ(アクチュエータ)
15・・・出力軸
20・・・ディテント機構 21・・・ディテントプレート(ディテント部材)
221、222・・・谷部 215・・・山部
26・・・ディテントローラ(係合部材)
40・・・モータ(駆動源) 55・・・位置センサ
60・・・制御装置(アクチュエータ制御装置)
73・・・位置判定部 74・・・レンジ判定部
75・・・駆動制御部