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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】光非相反デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20250508BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20250508BHJP
   G02B 6/126 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
G02B27/28 A
G02B6/12 367
G02B6/126
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023015631
(22)【出願日】2023-02-03
(65)【公開番号】P2023172869
(43)【公開日】2023-12-06
【審査請求日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2022084877
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 大介
(72)【発明者】
【氏名】市川 正
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-240003(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101672987(CN,A)
【文献】特開2015-169833(JP,A)
【文献】特開2021-021833(JP,A)
【文献】特開平05-196830(JP,A)
【文献】特開2013-156517(JP,A)
【文献】特開2018-054933(JP,A)
【文献】特開2020-134845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02B 6/12,6/126
G02F 1/01,1/095
G02F 1/21-1/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの2×2型のカプラと、2つの前記カプラの間を接続する2つの導波路と、前記導波路に挿入された光非相反移相器と、を有し、前記光非相反移相器は、下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に設けられた導波路コアと、磁気光学材料層と、を有したマッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスであって、
前記光非相反移相器の前記導波路コアの側面の少なくとも一方に、前記導波路コアの線路方向に周期的な凹凸が設けら
2つの前記カプラと前記光非相反移相器との間のそれぞれの前記導波路にモード変換器が設けられ、前記光非相反移相器への光入力側の前記モード変換器が光を低次モードから高次モードへ変換し、前記光非相反移相器からの光出力側の前記モード変換器が光を高次モードから低次モードへ変換する、
ことを特徴とする光非相反デバイス。
【請求項2】
前記モード変換器は、
前記導波路の幅が拡大される幅広導波路と、
前記幅広導波路の前記光非相反移相器とは反対側に設けられ、幅が前記幅広導波路へ向けて拡大されると共に、最大幅が前記幅広導波路の幅に比し小さくされるテーパ導波路と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の光非相反デバイス。
【請求項3】
2つの2×2型のカプラと、2つの前記カプラの間を接続する2つの導波路と、前記導波路に挿入された光非相反移相器と、を有し、前記光非相反移相器は、下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に設けられた導波路コアと、磁気光学材料層と、を有したマッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスであって、
前記光非相反移相器の前記導波路コアの側面の少なくとも一方に、前記導波路コアの線路方向に周期的な凹凸が設けられ
前記光非相反デバイスは、TEモードで動作させるものであり、
前記磁気光学材料層は、前記下部クラッド層上であって、前記導波路コアの側面の一方に隣接した領域に、その側面に接して設けられていて、
前記磁気光学材料層は、前記導波路コアよりも厚い、
ことを特徴とする光非相反デバイス。
【請求項4】
前記磁気光学材料層は、前記導波路コアの側面のうち前記凹凸が設けられた方に隣接して設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の光非相反デバイス。
【請求項5】
前記下部クラッド層のうち前記磁気光学材料層の下部に当たる領域に溝が設けられており、
前記磁気光学材料層は、前記溝の底面上に設けられており、
前記溝の深さは、前記磁気光学材料層の厚さと前記導波路コアの厚さの差の1/2に設定されている、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光非相反デバイス。
【請求項6】
前記凹凸の周期に対する前記凹凸の凸部の幅の比は、0.2~0.9であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の光非相反デバイス。
【請求項7】
前記凹凸の凸部における前記導波路コアの幅に対する前記凹凸の深さの比は、0.2~0.3であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の光非相反デバイス。
【請求項8】
伝搬させる光は近赤外線であり、前記導波路コアの材料はSiであり、前記導波路コアの厚さは0.2~0.3μm、前記凹凸の凸部における前記導波路コアの幅は0.45~1.5μmである、ことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の光非相反デバイス。
【請求項9】
前記磁気光学材料層は、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンの少なくとも1つを含む
誘電層である、ことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の光非相反デバイス。
【請求項10】
前記テーパ導波路は、最小幅が0.4~0.65μmであり、最大幅が0.7~0.9μmであり、長さが1.0μm以上である、ことを特徴とする請求項2に記載の光非相反デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光サーキュレータや光アイソレータなどの光非相反デバイスとして、マッハ・ツェンダー干渉計型のものが知られている(特許文献1)。マッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスは、2×2カプラによって2本の導波路に分岐させたのち2×2カプラによって合流させる構成であって、2本の導波路に非相反移相器を挿入したものである。非相反移相器は、光の伝搬方向によって位相差が生じる移相器である。非相反移相器は磁気光学材料を用いることで実現できる。
【0003】
また、特許文献2、3には、非相反移相器を有した導波路型の光アイソレータが記載されており、導波路コアに周期的に配列された複数の孔を設け、伝搬特性を調整することが記載されている。
【0004】
非特許文献1には、マッハ・ツェンダー干渉計型のモノリシック集積化サーキュレータが記載されている。非特許文献1では、導波路コアの側壁や上面に磁気光学材料の層を設けた構造が示されている。
【0005】
非特許文献2には、導波路のクラッドに周期的な孔を設けてフォトニック結晶を構成し、フォトニック結晶によって光が向きを変える時の位相を制御することで非相反性を実現できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-302603号公報
【文献】特開2020-86250号公報
【文献】特開2020-134845号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】John Bowers, Caroline A. Ross, Optica Vol 6, No. 4, April 2019
【文献】Applied Optics, 9741, Vol. 54, No. 33, November 20 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1や非特許文献1では、90°の位相差を発生させるために必要な光導波路の長さが数mmとなり、光集積回路素子としては素子面積が大きくなってしまい、コストが高くなってしまうことが問題であった。
【0009】
また、非特許文献2は数値計算上の実現可能性が示されているだけで、実際に作製されたという報告はない。それは、光の波長よりも小さな穴を空けてフォトニック結晶を形成し、その穴にセラミックに近い物性の材料である磁気光学材料を充填することは容易でなく、著しく歩留まりが悪くなると考えられるためである。
【0010】
そこで本発明の目的は、マッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスの小型化、低コスト化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、2つの2×2型のカプラと、2つの前記カプラの間を接続する2つの導波路と、前記導波路に挿入された光非相反移相器と、を有し、前記光非相反移相器は、下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に設けられた導波路コアと、磁気光学材料層と、を有したマッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスであって、前記光非相反移相器の前記導波路コアの側面の少なくとも一方に、前記導波路コアの線路方向に周期的な凹凸が設けられている、ことを特徴とする光非相反デバイスである。
【0012】
本発明において、2つの前記カプラと前記光非相反移相器との間のそれぞれの前記導波路にモード変換器が設けられ、前記光非相反移相器への光入力側の前記モード変換器が光を低次モードから高次モードへ変換し、前記光非相反移相器からの光出力側の前記モード変換器が光を高次モードから低次モードへ変換してもよい。さらに、前記モード変換器は、前記導波路の幅が拡大される幅広導波路と、前記幅広導波路の前記光非相反移相器とは反対側に設けられ、幅が前記幅広導波路へ向けて拡大されると共に、最大幅が前記幅広導波路の幅に比し小さくされるテーパ導波路と、を有してもよい。また、前記テーパ導波路は、最小幅が0.4~0.65μmであり、最大幅が0.7~0.9μmであり、長さが1.0μm以上であってもよい。
【0013】
本発明において、前記光非相反デバイスは、TEモードで動作させるものであり、前記磁気光学材料層は、前記下部クラッド層上であって、前記導波路コアの側面の一方に隣接した領域に、その側面に接して設けられていて、前記磁気光学材料層は、前記導波路コアよりも厚くてもよい。また、前記磁気光学材料層は、前記導波路コアの側面のうち前記凹凸が設けられた方に隣接して設けられていてもよい。また、前記下部クラッド層のうち前記磁気光学材料層の下部に当たる領域に溝が設けられており、前記磁気光学材料層は、前記溝の底面上に設けられており、前記溝の深さは、前記磁気光学材料層の厚さと前記導波路コアの厚さの差の1/2に設定されていてもよい。
【0014】
また、本発明において、前記凹凸の周期に対する前記凹凸の凸部の幅の比は、0.2~0.9としてもよい。
【0015】
また、本発明において、前記凹凸の凸部における前記導波路コアの幅に対する前記凹凸の深さの比は、0.2~0.3としてもよい。
【0016】
また、本発明において、伝搬させる光は近赤外線であり、前記導波路コアの材料はSiであり、前記導波路コアの厚さは0.2~0.3μm、前記凹凸の凸部における前記導波路コアの幅は0.45~1.5μmであってもよい。
【0017】
また、本発明において、前記磁気光学材料層は、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンの少なくとも1つを含む誘電層であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光非相反効果が増大するため、光非相反移相器の導波路を短くすることができ、光非相反デバイスの小型化や低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の光非相反デバイスの構成を示した図。
図2】第1実施形態の光非相反デバイスの断面を示した図。
図3】第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の構成を示した図。
図4】第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の断面を示した図。
図5】凹凸の周期と非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図6】デューティ比と非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図7】凹凸の深さと非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図8】導波路コアの幅と非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図9】第2実施形態の光非相反デバイスの構成を示した図。
図10】第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した図。
図11】第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した図。
図12】凹凸の周期と非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図13】第3実施形態の光非相反デバイスの構成を示した図。
図14】第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した図。
図15】(A)および(B)は、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26における導波路コアの構成を示した図。
図16】凹凸の周期と非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図17】凹凸導波路の凸部における幅と非相反位相シフト量の関係を示したグラフ。
図18】幅広導波路の長さと透過率の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図を参照に説明する。
(第1実施形態)
図1、2は、実施形態1の光非相反デバイスの構成を示した図である。実施形態1の光非相反デバイスは、マッハ・ツェンダー干渉計型であり、導波路型であってTMモードで光を伝搬させる光集積回路である。図1は、実施形態1の光相反デバイスの平面図であり、図2は、図1におけるA-Aでの断面図である。図1に示すように、実施形態1の光非相反デバイスは、2×2の第1カプラ1と、同じく2×2の第2カプラ2と、第1カプラ1と第2カプラ2の2つの入出力ポート同士を接続する第1導波路3、第2導波路4と、第1導波路3、第2導波路4それぞれに挿入された第1光非相反移相器5、第2光非相反移相器6と、によって構成されている。
【0021】
第1カプラ1および第2カプラ2は、2×2の導波路型カプラである。第1カプラ1および第2カプラ2は、下部クラッド層10と、下部クラッド層10上に位置する導波路コア11と、導波路コア11を覆う上部クラッド層12と、を有している。導波路コア11は、線路方向に垂直な断面が矩形である。導波路コア11の厚さと幅は、光がTMモードで伝搬するように設定されている。また、第1カプラ1および第2カプラ2の導波路コア11は、図1に示すように、2本の平行に走る導波路コア11の一部を近接させた平面パターンである。下部クラッド層10および上部クラッド層12の材料は、SiO2などである。また、導波路コア11の材料は、Siなどである。
【0022】
第1カプラ1および第2カプラ2は、方向性結合器であり、一方の2つの入出力ポートのうち1つから入力された光は、分配されて他方の2つの入出力ポートから出力される。出力された2つの光は90°位相が異なる。
【0023】
第1導波路3および第2導波路4は、第1カプラ1の一方の2つの入出力ポートと、第2カプラ2の一方の2つの入出力ポートとを接続する導波路である。第1カプラ1と第2カプラ2がこのようにして直列に接続されることでマッハ・ツェンダー干渉計が構成されている。第1導波路3および第2導波路4は、第1カプラ1および第2カプラ2と同様に、下部クラッド層10と、下部クラッド層10上に位置する導波路コア11と、導波路コア11を覆う上部クラッド層12と、を有している。
【0024】
第1導波路3および第2導波路4の導波路コア11の平面パターンは、図1に示すように、第1カプラ1と第2カプラ2を結ぶ線(対称軸L)に対して線対称であって、その対称軸Lに直交する方向に蛇行するような平面パターンとなっている。線対称であるから、第1導波路3と第2導波路4の導波路長は等しくなっている。このような平面パターンとすることで、第1導波路3と第2導波路4の導波路コア11のうち対称軸Lに直交する方向に延びる区間は、光の伝搬方向が反転している領域となっている。
【0025】
第1光非相反移相器5、第2光非相反移相器6は、光の伝搬方向によって移相量が異なる光非相反性を有した移相器である。第1光非相反移相器5、第2光非相反移相器6は、第1導波路3、第2導波路4にそれぞれ挿入されている。その挿入位置は、対称軸Lに直交する方向に延びる区間である。つまり、第1光非相反移相器5と第2光非相反移相器6とで光の伝搬方向が反対となるようにしている。
【0026】
図3、4は、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の構成を示した図であり、図3は平面図、図4は断面図である。第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6は、図4に示すように、下部クラッド層10と、下部クラッド層10上に位置する導波路コア11と、導波路コア11の側面および上面を覆う磁気光学材料層13と、磁気光学材料層13および下部クラッド層10を覆う上部クラッド層12と、を有している。
【0027】
磁気光学材料層13は、実施形態1では導波路コア11の上面と側面の両方に接して覆うようにしているが、上面のみを覆うようにしてもよい。磁気光学材料層13の材料は、Fe、Co、Ni、Mnなどの磁性体を含む材料であり、たとえばYIGなどの磁性ガーネットである。磁気光学材料は、光の伝搬方向に応じて異なる伝搬定数を有する。そのため、光の伝搬方向によって異なる位相差を生じさせる。磁気光学材料層13の厚さは、たとえば、導波路コア11の厚さの0.5~2倍である。
【0028】
第1光非相反移相器5と第2光非相反移相器6の導波路長は、第1カプラ1側から光が入力された場合には-90°の位相差となり、第2カプラ2側から光が入力された場合(光の伝搬方向が反対となる場合)には90°の位相差となるように設定されている。第1光非相反移相器5と第2光非相反移相器6とで光の伝搬方向が反対となるため、第1光非相反移相器5と第2光非相反移相器6とで印加する磁場の方向が一方向で済む。そのため、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6を動作させるための磁場の形成が容易となり、たとえば磁石の配置が簡単になる。
【0029】
第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路コア11の両方の側面には、複数の凹部が導波路コア11の線路方向に周期的に設けられ、凹凸15を形成している。凹凸15によって導波路コア11の幅は、通常の幅の部分とそれよりも狭い部分が交互に繰り返している。なお、凹凸15は導波路コア11の両方の側面に設ける必要はなく、一方のみであってもよい。
【0030】
凹凸15の周期Tは、光の波長程度であれば任意である。たとえば、光の波長の0.5~1.5倍とすることができる。
【0031】
凹凸15のデューティ比D(凹凸15の凸部の幅を周期Tで割った値)は、0.2~0.9が好ましい。この範囲であれば、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の非相反位相シフトをより大きくすることができ、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路長をより短くすることができる。
【0032】
凹凸15の深さH(凹凸15の凹部底面から凸部上面までの幅)は、凸部における導波路幅をH0として、H/H0が0.2~0.3となるようにすることが好ましい。この範囲であれば、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の非相反位相シフトをより大きくすることができ、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路長をより短くすることができる。
【0033】
光の波長を近赤外線(たとえば1000~1600nm)とし、導波路コア11の材料をSiとする場合、導波路コア11の厚さは0.2~0.3μm、凹凸15の凸部における導波路コア11の幅は0.45~0.6μmとすることが好ましい。このような範囲とすることで、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の非相反位相シフトをより大きくすることができ、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路長をより短くすることができる。特に1550nm付近で効果が大きい。
【0034】
なお、第1実施形態では第1導波路3と第2導波路4の双方に第1光非相反移相器5、第2光非相反移相器6をそれぞれ挿入しているが、一方にのみ挿入してもよい。ただし、双方に挿入する方が移相量を大きくすることができ、導波路長をより短くすることができる。
【0035】
次に、第1実施形態の光非相反デバイスの動作について説明する。説明のため、第1カプラ1の2つの入出力ポートを第1ポート、第2ポートとし、第2カプラ2の入出力ポートの2つの入出力ポートを第3ポート、第4ポートとし、第1ポートと第4ポート、第2ポートと第3ポートがそれぞれクロスしているものとする。また、磁界は図1に示すように対称軸Lと平行に第2カプラ2から第1カプラ1に向かう方向に印加する。
【0036】
第1実施形態の光非相反デバイスでは、第1カプラ1の第1ポートに入力された光は、2つに分配されて第1導波路3と第2導波路4に入力される。このとき、第1導波路3と第2導波路4とでは伝搬する光に90°の位相差がある。さらに、第1導波路3と第2導波路4に挿入された第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6によって-90°の位相差が付与される。その結果、第1導波路3と第2導波路4とでは光の位相差が0°となる。よって、第2カプラ2はクロスの状態となり、第1導波路3と第2導波路4から第2カプラ2に入力された光は、第4ポートから出力される。
【0037】
一方、第2カプラ2の第4ポートに入力された光は、2つに分配されて第1導波路3と第2導波路4に入力される。このとき、第2導波路4と第1導波路3とでは伝搬する光に90°の位相差がある。さらに、第1導波路3と第2導波路4に挿入された第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6によって位相差が付与されるが、非相反作用によって-90°ではなく90°の位相差が付与される。その結果、第1導波路3と第2導波路4とでは位相差が180°となる。よって、第1カプラ1はストレートの状態となり、第1導波路3と第2導波路4から第1カプラ1に入力された光は、第2ポートから出力される。
【0038】
このように、第1ポートに入力された光は第4ポートから出力され、第4ポートに入力された光は第2ポートに出力されるので、第1実施形態の光非相反デバイスはサーキュレータとして動作する。また、第4ポートに入力された光は第1ポートに出力されないので、第2ポートを使用しなければアイソレータとして動作する。
【0039】
ここで、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路コア11の側面には、周期的な凹凸15が設けられている。そのため、凹凸15がフォトニック結晶として作用し、群速度遅延を引き起こす。ここで群速度遅延は、凹凸15を設けない通常の導波路コア11の場合に比べて光の群速度が遅くなる現象であり、光から見ると導波路が長くなったように見える現象である。したがって、群速度遅延によって短い導波路であっても長い導波路と同等の光学的効果が得られる。実施形態1では、この群速度遅延を利用して第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の実際の導波路を短くしつつ、光にとっては導波路が長くなったように振舞わせている。これにより第1実施形態の光非相反デバイス全体として短くして小型化することができ、低コスト化することができる。
【0040】
さらに、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路コア11を伝搬する光は、凹凸15が設けられているためフィッシュボーンモードで伝搬する。フィッシュボーンモードでは、凹凸15の凸部で光が強くなる特徴がある。そのため、凸部で光が反射する際に、凸部に接している磁気光学材料層13との相互作用が強くなり、磁気光学効果の影響を強く受ける。その結果、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の光非相反効果も大きくなり、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路長もより短くすることができる。
【0041】
以上のように、第1実施形態の光非相反デバイスでは、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路長を短くすることができるので、光非相反デバイスの小型化、低コスト化を図ることができる。
【0042】
次に、第1実施形態の光非相反デバイスに関する実験結果について説明する。
(実験1)
FDTDシミュレータを用い、第1光非相反移相器5の非相反位相シフト量をシミュレーションにより求めた。非相反位相シフト量は、順方向に光を単位長さ伝搬させたときと逆方向に光を単位長さ伝搬させたときの位相差とする。導波路コア11の幅は0.6μm、凹部の深さ0.15μm、凹凸15のデューティ比(凸部の幅/周期)は0.5とし、周期を変化させた。また、上部クラッド層12および下部クラッド層10はSiO2とし、導波路コア11はSiとし、磁気光学材料層13はCeYIGとした。また、印加する磁場の磁束密度Bは2000ガウスとした。
【0043】
図5は、凹凸15の周期(μm)と非相反位相シフト(rad/mm)の関係を示したグラフである。図5のように、周期が0.9~1.1μmで非相反位相シフト量は1380rad/mmとなった。一方、凹凸15を設けなかった場合、非相反位相シフト量は0.67rad/mmであった。この結果、凹凸15を設けることで非相反位相シフト量を1000倍以上にできることがわかり、第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6の導波路長を大幅に短縮できることがわかった。
(実験2)
凹凸15の周期を1μmとし、凹凸15のデューティ比を変化させ、実験1と同様にして非相反位相シフトを求めた。図6は、デューティ比と非相反位相シフト量の関係を示したグラフである。図6のように、デューティ比が0.2~0.9で非相反位相シフト量は大きくなり、最大で1568rad/mmであった。よって、デューティ比は0.2~0.9が好ましいことがわかった。
(実験3)
導波路コア11の幅0.6μm、凹凸15の周期1μm、デューティ比0.5とし、凹凸15の深さ(エッチング幅)を変化させ、実験1と同様にして非相反位相シフト量を求めた。図7は、凹凸15の深さと非相反位相シフト量の関係を示したグラフである。図7のように、エッチング幅が0.15μmのときに非相反位相シフト量のピークがあり、大きな非相反位相シフト量が得られた。この結果、エッチング幅/導波路コア11の幅は0.2~0.3が好ましいことがわかった。
(実験4)
凹凸15の周期1μm、デューティ比0.5とし、導波路コア11の幅を変化させ、実験1と同様にして非相反位相シフト量を求めた。凹凸15の凹部における導波路コア11の幅は0.3μmに固定した。図8は、導波路コア11の幅と非相反位相シフト量の関係を示したグラフである。図8のように、導波路コア11の幅が0.45~0.6μmで非相反位相シフト量が大きくなることがわかった。
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の光非相反デバイスの構成を示した図である。第2実施形態の光非相反デバイスは、第1実施形態の光非相反デバイスにおける第1光非相反移相器5および第2光非相反移相器6を、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26に替えたものであり、TEモードで光を伝搬させるものである。他の構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態では、磁界は垂直方向に印加する。
【0044】
図10、11は、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した図であり、図10は平面図、図11は断面図である。第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26は、図11に示すように、下部クラッド層210と、下部クラッド層210上に位置する導波路コア211と、磁気光学材料層213と、導波路コア211を覆う上部クラッド層212と、を有している。これらの各構成の材料は実施形態1と同様である。
【0045】
第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の導波路コア211の片方の側面には、複数の凹部が導波路コア211の線路方向に周期的に設けられ、凹凸215を形成している。なお、凹凸215は導波路コア211の片方の側面に設けるのではなく、両方に設けてもよい。
【0046】
下部クラッド層210は、導波路コア211の側面のうち凹凸215が設けられた方に隣接する領域に溝214が設けられている。
【0047】
磁気光学材料層213は、下部クラッド層210のうち溝214の底面上に設けられている。また、磁気光学材料層213は、導波路コア211の凹凸215に接している。磁気光学材料層213の厚さは、導波路コア211の厚さよりも大きい。たとえば、磁気光学材料層213の厚さは、導波路コア211の厚さの1.5~5倍である。磁気光学材料層213の幅は、たとえば厚さの1~5倍である。
【0048】
なお、実施形態2では、溝214および磁気光学材料層213は、凹凸215が設けられている側面の方に設けているが、凹凸215が設けられていない面一の側面の方に溝214および磁気光学材料層213を設けてもよい。ただし、光と磁気光学材料層213との相互作用をより強くし、非相反効果を大きくするためには、第2実施形態のように凹凸215が設けられている側に設けることが好ましい。
【0049】
溝214の深さは、磁気光学材料層213の厚さと導波路コア211の厚さの差の1/2に設定されている。そのため、磁気光学材料層213の厚さの中心線と導波路コア211の厚さの中心線は同一直線上である。すなわち、磁気光学材料層213は、垂直方向において導波路コア211に対し線対称に構成されている。なお、厳密に磁気光学材料層213の厚さと導波路コア211の厚さの差の1/2である必要はなく、後述の効果が得られる範囲で誤差は許容される。
【0050】
第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26における磁気光学材料層213、凹凸215は、対称軸Lに対して対称となるように配置されている。たとえば、第1ポートから入力された光の伝搬方向に対して、第1光非相反移相器25では左側の側面に凹凸215と磁気光学材料層213が配置され、第2光非相反移相器26では右側の側面に凹凸215と磁気光学材料層213が配置される。
【0051】
上部クラッド層212は、導波路コア211の側面のうち凹凸215の設けられていない方と、導波路コア211の上面とを覆うようにして設けられている。
【0052】
上記のように、第2実施形態では、溝214を設けて磁気光学材料層213の位置を下方に少し下げ、これによって垂直方向において導波路コア211に対し磁気光学材料層213が線対称となるように構成している。そのため、磁気光学材料層213の体積を十分に大きくすることができ、線対称であるため光学モードも安定に存在する。その結果、TEモードにおける非相反位相シフト量を大きくすることができ、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の導波路長を短くすることができる。
【0053】
以上、第2実施形態の光非相反デバイスによれば、TEモードで光を伝搬させる場合であっても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の導波路長を短くすることができるので、光非相反デバイスの小型化、低コスト化を図ることができる。
【0054】
次に、第2実施形態の光非相反デバイスに関する実験結果について説明する。
(実験5)
FDTDシミュレータを用い、第1光非相反移相器25の非相反位相シフトを実験1と同様にして求めた。図12は、凹凸215の周期(μm)と非相反位相シフト(rad/mm)の関係を示したグラフである。図12のように、周期が0.67μmで非相反位相シフトは3rad/mmとなった。一方、凹凸215を設けなかった場合は1.16rad/mmであった。よって、凹凸215を設けることで導波路長を大きく短縮できることがわかった。
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態の光非相反デバイスの構成を示した図である。第3実施形態の光非相反デバイスは、第2実施形態とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0055】
第3実施形態では、第1導波路3および第2導波路4の導波路コア211の平面パターンが、U字状にされており、導波路コア211の通常部分(下記凹凸導波路217及びモード変換器218を除く部分、以下「通常導波路216」という)の幅は、0.4~0.5μmにされている。第3実施形態では、磁界は、図13紙面の垂直方向又は左右方向に印加する。
【0056】
図14は、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した斜視図である。図14に示すように、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26では、磁気光学材料層213が導波路コア211の上面と両方の側面に接して覆っている。
【0057】
図15(A)は、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した平面図であり、図15(B)は、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の構成を示した側面図である。図15の(A)及び(B)に示すように、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26では、中間位置において、導波路コア211の両方の側面に、凹凸215が形成されている。導波路コア211の凹凸215位置は、凹凸導波路217にされており、凹凸導波路217では、凹部位置における幅狭部分と凸部位置における幅広部分とが交互に繰り返されている。また、凹凸導波路217の凹部位置における幅は、0.6μmが好ましく、凹凸導波路217の凸部位置における幅は、1.0~1.5μmであればよく、1.2~1.3μmが好ましい。さらに、凹凸215の深さは、0.3μmが好ましい。なお、凹凸215は導波路コア211の両方の側面に設けるのではなく、片方に設けてもよい。
【0058】
導波路コア211には、凹凸導波路217の両外側において、モード変換器218が形成されている。
【0059】
モード変換器218の凹凸導波路217側には、平面視矩形状の幅広導波路218Aが形成されており、幅広導波路218Aの幅は、凹凸導波路217の凸部位置における幅と同一が好ましく、幅広導波路218Aの長さは、1.0μm以上が好ましい。
【0060】
モード変換器218には、幅広導波路218Aの凹凸導波路217とは反対側において、平面視台形状のテーパ導波路218Bが形成されており、テーパ導波路218Bの幅は、幅広導波路218A側へ向かうに従い徐々に拡大されている。テーパ導波路218Bの最小幅は、通常導波路216の幅と同一にされており、テーパ導波路218Bの最大幅は、幅広導波路218Aの幅より小さくされている。また、テーパ導波路218Bの最小幅は、0.4~0.65μmが好ましく、テーパ導波路218Bの最大幅は、0.7~0.9μmが好ましく、テーパ導波路218Bの長さは、1.0μm以上が好ましい。
【0061】
上記の第3実施形態では、第1導波路3および第2導波路4において、通常導波路216に比しモード変換器218の幅広導波路218Aの幅が大きくされており、通常導波路216に幅広導波路218Aが不連続に接続されている。このため、通常導波路216と幅広導波路218Aとにおける光の実効屈折率の不連続(電磁波としてはインピーダンスのミスマッチ)により、通常導波路216を単一モード(一次モード、基本モード、低次モード)で伝搬されたTEモードの光が、幅広導波路218Aにおいて高次モード(特に二次モード)で励振される。これにより、通常導波路216における光のエネルギーが、一部を単一モードと結合されると共に、一部を高次モードと結合されることで、単一モードの光と高次モードの光とが干渉しながら空間的なビートを形成して、光の空間的な強度分布が変化する。したがって、光が、幅広の分布と幅狭の分布とを交互に繰り返して伝播して、フィッシュボーンモードで励振される(モード変換される)ことで、光の幅広分布部分が第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の凹凸導波路217の凸部位置の形状に近くされる。この結果、凹凸導波路217の凸部位置において、光が反射により磁気光学効果を効率的に受けることができて、光非相反効果を効率的に大きくできる。
【0062】
さらに、モード変換器218では、通常導波路216と幅広導波路218Aとの間にテーパ導波路218Bが設けられており、テーパ導波路218Bの幅が幅広導波路218A側へ向かうに従い徐々に拡大されている。このため、通常導波路216と幅広導波路218Aとにおける光の実効屈折率の不連続を緩和できて、光の反射及び散乱を低減できることで、光の損失を低減できる。但し、テーパ導波路218Bの最大幅が幅広導波路218Aの幅より小さくされることで、通常導波路216と幅広導波路218Aとの不連続を維持できて、幅広導波路218Aにおいて光を高次モードに変換できる。
【0063】
また、光が凹凸導波路217からモード変換器218を介して通常導波路216に伝播される際には、モード変換器218によって光をフィッシュボーンモードから単一モードに変換できる。
【0064】
以上、第3実施形態の光非相反デバイスによれば、TEモードで光を伝搬させる場合であっても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、第1光非相反移相器25および第2光非相反移相器26の導波路長を短くすることができるので、光非相反デバイスの小型化、低コスト化を図ることができる。
(実験6)
FDTDシミュレータを用い、第1光非相反移相器25の非相反位相シフト量を実験1と同様にして求めた。導波路コア11の厚さは0.2μm、通常導波路216の幅は0.5μm、テーパ導波路218Bの最大幅は0.9μm、テーパ導波路218Bの長さは1.5μm、幅広導波路218Aの幅は1.2μm、幅広導波路218Aの長さは1.0μm、凹凸215の深さは0.3μm、凹凸215のデューティ比(凸部の幅/周期)は0.4とし、凹凸215の周期を変化させた。
【0065】
図16は、凹凸215の周期(μm)と非相反位相シフト量(rad/mm)の関係を示したグラフである。図16のように、光の波長が1.25~1.65μmの広い範囲で非相反位相シフト量が大きくなることが確認された。光の波長が1.35~1.65μmの範囲では、非相反位相シフト量のピークが凹凸215の周期に比例している傾向がある。光の波長が1.25μmでは、1段高次のモードで非相反位相シフトが増大するため、凹凸215の周期が1.1μmで非相反位相シフト量がピークになる。
(実験7)
FDTDシミュレータを用い、第1光非相反移相器25の非相反位相シフト量を実験1と同様にして求めた。導波路コア11の厚さは0.2μm、通常導波路216の幅は0.5μm、テーパ導波路218Bの最大幅は0.9μm、テーパ導波路218Bの長さは1.5μm、幅広導波路218Aの幅は1.2μm、幅広導波路218Aの長さは1.0μm、凹凸215の深さは0.3μm、凹凸215のデューティ比(凸部の幅/周期)は0.3とし、凹凸導波路217の凸部における幅を変化させた。
【0066】
図17は、凹凸導波路217の凸部における幅(μm)と非相反位相シフト量(rad/mm)の関係を示したグラフである。図17のように、非相反位相シフト量を大きくするためには、凹凸導波路217の凸部における幅が1.0~1.5μmの範囲が最適である。
(実験8)
FDTDシミュレータを用い、第1光非相反移相器25の透過率を実験1と同様にして求めた。透過率は、一方の通常導波路216に入力される光のパワーで他方の通常導波路216から出力される光のパワーを除した値である。導波路コア11の厚さは0.2μm、通常導波路216の幅は0.4μm、テーパ導波路218Bの最大幅は0.9μm、テーパ導波路218Bの長さは1.5μm、幅広導波路218Aの幅は1.2μm、凹凸215の周期は1.0μm、凹凸215の深さは0.3μm、凹凸215のデューティ比(凸部の幅/周期)は0.5とし、幅広導波路218Aの長さを変化させた。
【0067】
図18は、幅広導波路218Aの長さ(μm)と透過率(transmittance)の関係を示
したグラフである。図18のように、幅広導波路218Aの長さが1.0μm未満で透過率が大きくなり、幅広導波路218Aの長さが1.0μm以上で透過率が小さくなる。透過率が大きい場合には凹凸導波路217を光が単一モードで伝播されており、透過率が小さい場合には凹凸導波路217を光がフィッシュボーンモードで伝播されている。この結果、幅広導波路218Aの長さが1.0μm以上であれば、モード変換器218が光を単一モードからフィッシュボーンモードに変換できることが分かった。
(付記)
(技術案1)
2つの2×2型のカプラと、2つの前記カプラの間を接続する2つの導波路と、前記導波路に挿入された光非相反移相器と、を有し、前記光非相反移相器は、下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に設けられた導波路コアと、磁気光学材料層と、を有したマッハ・ツェンダー干渉計型の光非相反デバイスであって、
前記光非相反移相器の前記導波路コアの側面の少なくとも一方に、前記導波路コアの線路方向に周期的な凹凸が設けられている、
ことを特徴とする光非相反デバイス。
(技術案2)
2つの前記カプラと前記光非相反移相器との間のそれぞれの前記導波路にモード変換器
が設けられ、前記光非相反移相器への光入力側の前記モード変換器が光を低次モードから高次モードへ変換し、前記光非相反移相器からの光出力側の前記モード変換器が光を高次モードから低次モードへ変換する、ことを特徴とする技術案1に記載の光非相反デバイス。
(技術案3)
前記モード変換器は、
前記導波路の幅が拡大される幅広導波路と、
前記幅広導波路の前記光非相反移相器とは反対側に設けられ、幅が前記幅広導波路へ向けて拡大されると共に、最大幅が前記幅広導波路の幅に比し小さくされるテーパ導波路と、
を有することを特徴とする技術案2に記載の光非相反デバイス。
(技術案4)
前記光非相反デバイスは、TEモードで動作させるものであり、
前記磁気光学材料層は、前記下部クラッド層上であって、前記導波路コアの側面の一方に隣接した領域に、その側面に接して設けられていて、
前記磁気光学材料層は、前記導波路コアよりも厚い、
ことを特徴とする技術案1から技術案3までのいずれかに記載の光非相反デバイス。
(技術案5)
前記磁気光学材料層は、前記導波路コアの側面のうち前記凹凸が設けられた方に隣接して設けられている、ことを特徴とする技術案4に記載の光非相反デバイス。
(技術案6)
前記下部クラッド層のうち前記磁気光学材料層の下部に当たる領域に溝が設けられており、
前記磁気光学材料層は、前記溝の底面上に設けられており、
前記溝の深さは、前記磁気光学材料層の厚さと前記導波路コアの厚さの差の1/2に設定されている、
ことを特徴とする技術案4または技術案5に記載の光非相反デバイス。
(技術案7)
前記凹凸の周期に対する前記凹凸の凸部の幅の比は、0.2~0.9であることを特徴とする技術案1から技術案6までのいずれかに記載の光非相反デバイス。
(技術案8)
前記凹凸の凸部における前記導波路コアの幅に対する前記凹凸の深さの比は、0.2~0.3であることを特徴とする技術案1から技術案7までのいずれかに記載の光非相反デバイス。
(技術案9)
伝搬させる光は近赤外線であり、前記導波路コアの材料はSiであり、前記導波路コアの厚さは0.2~0.3μm、前記凹凸の凸部における前記導波路コアの幅は0.45~1.5μmである、ことを特徴とする技術案1から技術案8までのいずれかに記載の光非相反デバイス。
(技術案10)
前記磁気光学材料層は、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンの少なくとも1つを含む誘電層である、ことを特徴とする技術案1から技術案9までのいずれかに記載の光非相反デバイス。
(技術案11)
前記テーパ導波路は、最小幅が0.4~0.65μmであり、最大幅が0.7~0.9μmであり、長さが1.0μm以上であることを特徴とする技術案3から技術案10までのいずれかに記載の光非相反デバイス。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、光サーキュレータや光アイソレータとして用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:第1カプラ
2:第2カプラ
3:第1導波路
4:第2導波路
5、25:第1光非相反移相器
6、26:第2光非相反移相器
10、210:下部クラッド層
11、211:導波路コア
12、212:上部クラッド層
13、213:磁気光学材料層
218:モード変換器
218A:幅広導波路
218B:テーパ導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18