(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】安全装置
(51)【国際特許分類】
F16P 3/14 20060101AFI20250508BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
F16P3/14
G08B21/02
(21)【出願番号】P 2023163996
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022175785
(32)【優先日】2022-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 麻人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】笹田 一也
(72)【発明者】
【氏名】勝村 龍郎
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 俊郎
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0141238(US,A1)
【文献】特開2017-019003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16P 1/00-7/02
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器に安全動作をさせるための安全装置であって、
人の存在を判定したい対象範囲を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像データを取得する取得部と、
前記画像データに基づいて、前記対象範囲における人の存在を判定する判定部と、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への警告及び前記対象機器の非常停止のうち少なくとも1つを実行させるための判定信号を出力する出力部と、を備え、
前記安全装置は可搬であって、不使用時に前記対象機器から取り外し可能であ
り、
前記対象機器は設備機器であって、
前記対象範囲は前記設備機器から所定の範囲で定められ、
前記安全装置は稼働中の前記設備機器に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、少なくとも前記設備機器の非常停止を実行させるための判定信号を出力する、安全装置。
【請求項2】
対象機器に安全動作をさせるための安全装置であって、
人の存在を判定したい対象範囲を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像データを取得する取得部と、
前記画像データに基づいて、前記対象範囲における人の存在を判定する判定部と、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への警告及び前記対象機器の非常停止のうち少なくとも1つを実行させるための判定信号を出力する出力部と、を備え、
前記安全装置は可搬であって、不使用時に前記対象機器から取り外し可能であ
り、
前記対象機器は車両であって、
前記対象範囲は前記車両から所定の範囲で定められ、
前記安全装置は移動中の前記車両に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への第1の警告を実行させるための判定信号を出力し、
前記第1の警告の後で前記車両が停止していない場合に、第2の警告を実行させるための判定信号を出力する、安全装置。
【請求項3】
対象機器に安全動作をさせるための安全装置であって、
人の存在を判定したい対象範囲を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像データを取得する取得部と、
前記画像データに基づいて、前記対象範囲における人の存在を判定する判定部と、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への警告及び前記対象機器の非常停止のうち少なくとも1つを実行させるための判定信号を出力する出力部と、を備え、
前記安全装置は可搬であって、不使用時に前記対象機器から取り外し可能であ
り、
前記対象機器は設備機器であって、
前記対象範囲は、前記撮影部によって撮影された画像の範囲から選択される任意の範囲に調整され、
前記安全装置は稼働中の前記設備機器に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、調整された前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、少なくとも前記設備機器の非常停止を実行させるための判定信号を出力する、安全装置。
【請求項4】
対象機器に安全動作をさせるための安全装置であって、
人の存在を判定したい対象範囲を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像データを取得する取得部と、
前記画像データに基づいて、前記対象範囲における人の存在を判定する判定部と、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への警告及び前記対象機器の非常停止のうち少なくとも1つを実行させるための判定信号を出力する出力部と、を備え、
前記安全装置は可搬であって、不使用時に前記対象機器から取り外し可能であ
り、
前記対象機器は車両であって、
前記対象範囲は、前記撮影部によって撮影された画像の範囲から選択される任意の範囲に調整され、
前記安全装置は移動中の前記車両に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、
調整された前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への第1の警告を実行させるための判定信号を出力し、
前記第1の警告の後で前記車両が停止していない場合に、第2の警告を実行させるための判定信号を出力する、安全装置。
【請求項5】
複数の人の画像を含む学習データを用いて生成された機械学習モデルを記憶する記憶部を備え、
前記判定部は、前記機械学習モデルを用いて、前記対象範囲における人の存在を判定する、請求項
1から4のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項6】
前記取得部、前記判定部及び前記出力部は、前記撮影部と通信可能なシングルボードコンピュータで構成されている、請求項
1から4のいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記対象範囲に人が存在しないと判定された場合に信号を出力しない、請求項
1から4のいずれか一項に記載の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造設備などにおいて、安全な作業のために、作業中の人の立ち入りなどを検知する安全装置が用いられることがある。例えば製造設備において、製品を製造するための設備機器が非常停止機能を有する安全装置を内蔵していることがある。また、例えば特許文献1及び特許文献2は人を区別して検出する人検出センサを備え、人検出状態の報知を行う作業機械の状態の監視装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181510号公報
【文献】特開2014-183497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の安全装置は、設備機器又は作業機械といった対象機器の一部として備えられていた。そのため、対象機器の状態を把握しやすい一方で、対象機器から切り離して動作することはできない。また、製造設備などにおいて設備機器の移動又は再配置などがあった場合に、さらなる安全対策のため、人の立ち入りを検知する追加の安全装置が必要な場合がある。しかし、従来、安全装置だけの追加はできなかった。
【0005】
本開示の目的は、汎用性の高い安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る安全装置は、
対象機器に安全動作をさせるための安全装置であって、
人の存在を判定したい対象範囲を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された画像データを取得する取得部と、
前記画像データに基づいて、前記対象範囲における人の存在を判定する判定部と、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への警告及び前記対象機器の非常停止のうち少なくとも1つを実行させるための判定信号を出力する出力部と、を備え、
前記安全装置は可搬であって、不使用時に前記対象機器から取り外し可能である。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
複数の人の画像を含む学習データを用いて生成された機械学習モデルを記憶する記憶部を備え、
前記判定部は、前記機械学習モデルを用いて、前記対象範囲における人の存在を判定する。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記取得部、前記判定部及び前記出力部は、前記撮影部と通信可能なシングルボードコンピュータで構成されている。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記出力部は、前記対象範囲に人が存在しないと判定された場合に信号を出力しない。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記対象機器は設備機器であって、
前記対象範囲は前記設備機器から所定の範囲で定められ、
前記安全装置は稼働中の前記設備機器に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、少なくとも前記設備機器の非常停止を実行させるための判定信号を出力する。
【0011】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記対象機器は車両であって、
前記対象範囲は前記車両から所定の範囲で定められ、
前記安全装置は移動中の前記車両に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、
前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への第1の警告を実行させるための判定信号を出力し、
前記第1の警告の後で前記車両が停止していない場合に、第2の警告を実行させるための判定信号を出力する。
【0012】
(7)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記対象機器は設備機器であって、
前記対象範囲は、前記撮影部によって撮影された画像の範囲から選択される任意の範囲に調整され、
前記安全装置は稼働中の前記設備機器に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、調整された前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、少なくとも前記設備機器の非常停止を実行させるための判定信号を出力する。
【0013】
(8)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記対象機器は車両であって、
前記対象範囲は、前記撮影部によって撮影された画像の範囲から選択される任意の範囲に調整され、
前記安全装置は移動中の前記車両に通信可能に接続されて使用され、
前記出力部は、
調整された前記対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への第1の警告を実行させるための判定信号を出力し、
前記第1の警告の後で前記車両が停止していない場合に、第2の警告を実行させるための判定信号を出力する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、汎用性の高い安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る安全装置を備える安全システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る安全装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る安全装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る安全装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る安全装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る安全装置が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る安全装置10を備える安全システム1のブロック図である。また、
図2は、本実施形態に係る安全装置10の構成例を示す図である。
図2では、ケース50に収納される安全装置10の外観及び構成要素の配置が示されている。
【0018】
安全装置10は、対象機器30に安全動作をさせるための装置であって、人の立ち入りなどを検知して、警告及び安全措置の少なくとも1つが実行されるように動作する。ここで、対象機器30は、製品を製造するための設備機器であってよいし、作業に用いられる作業機械であってよく、特定の機器に限定されない。つまり、本実施形態に係る安全装置10は、様々な機器に安全動作をさせるために用いられる。詳細については後述するが、安全装置10は例えばプレス機などの設備機器で使用されてから、製造設備外に移動して、例えばフォークリフトなどの作業機械に取り付けられて使用されてよい。
【0019】
図1に示すように、安全装置10は対象機器30とともに安全システム1を構成する。安全システム1は、さらに安全装置10の使用者とのインターフェースとして機能する入出力装置20を備えてよい。入出力装置20の具体例については後述するが、入出力装置20の一部が安全装置10に含まれる構成であってよい。ここで、安全装置10の使用者は、対象機器30の使用者であり得る。例えば安全装置10が作業機械である車両で使用される場合に、使用者は車両の運転者であり得る。
【0020】
安全装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、撮影部14と、バッテリー15と、を備える。制御部13は、取得部131と、判定部132と、出力部133と、を備える。通信部11と、記憶部12と、制御部13(取得部131、判定部132及び出力部133)とは、ハードウェア構成として、例えばシングルボードコンピュータ40で構成されていてよい。シングルボードコンピュータ40は、小型のコンピュータ装置であって、具体例として「ラズベリーパイ(登録商標)」などであり得る。シングルボードコンピュータ40は、撮影部14と通信可能に接続されて、撮影部14とともにバッテリー15で駆動されてよい。
【0021】
通信部11は、入出力装置20及び対象機器30と通信する通信インターフェースを含む。入出力装置20及び対象機器30と通信する通信インターフェースは、例えばUSB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを含んでよい。また、通信部11は、さらに有線又は無線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んで構成されてよい。
【0022】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータ及びプログラムを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0023】
本実施形態において、記憶部12は、複数の人の画像を含む学習データを用いて生成された機械学習モデルを記憶する。機械学習モデルは、判定部132によって読みだされて、対象範囲における人の存在を判定すること(人の認識処理)で用いられる。
【0024】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、安全装置10の全体の動作を制御する。本実施形態において、制御部13は、シングルボードコンピュータ40のCPU(Central Processing Unit)で実現される。
【0025】
ここで、安全装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。安全装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、制御部13を取得部131、判定部132及び出力部133として機能させる。
【0026】
取得部131は撮影部14によって撮影された画像データを取得する。また、取得部131は対象機器30からのデータを取得する。対象機器30からのデータは、対象機器30の状態を示すデータを含んでよい。対象機器30の状態は、例えば対象機器30が車両である場合に、車両が停止しているか、どの方向に進んでいるかなどの運転状態を含んでよい。また、取得部131は入出力装置20からのデータを取得してよい。入出力装置20からのデータは、例えば使用者からの指示であってよい。使用者からの指示は、例えば入出力装置20がマウス又はキーボードである場合に、安全装置10の動作を開始又は終了することなどを含んでよい。
【0027】
判定部132は、取得部131によって取得された画像データに基づいて、対象範囲における人の存在を判定する。ここで、対象範囲は、安全装置10が使用される対象機器30に応じて定められる。例えば対象機器30が設備機器である場合に、対象範囲は、設備機器から所定の範囲(一例として設備機器の中心から半径2mの円の範囲)で定められてよい。例えば対象機器30が車両である場合に、対象範囲は、車両から所定の範囲で定められてよいし、車両の先頭部分から進行方向に向かって所定の範囲(一例として1m以内)で定められてよい。判定部132は、このような対象範囲の画像を含む画像データに基づいて、人の認識処理を実行する。判定部132は、人を認識した場合に、画像データを記憶部12に記憶させてよい。
【0028】
判定部132で実行される人の認識処理は、公知の手法を用いてよい。本実施形態において、人を認識するために、複数の人の画像を含む学習データを用いて生成された機械学習モデルが用いられるが、機械学習の手法は限定されない。例えばニューラルネットワークなどを用いて機械学習モデルが生成されてよい。機械学習モデルは、判定部132が人の認識処理を実行する前に生成されて、記憶部12に記憶されればよい。機械学習モデルは、安全装置10によって生成されてよいし、安全装置10とは別のコンピュータによって生成され、通信部11を介して取得され、記憶部12に記憶されてよい。
【0029】
出力部133は、判定部132によって対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への警告及び対象機器30の非常停止のうち少なくとも1つを実行させるための判定信号を出力する。判定信号は、使用者への警告を実行させる場合に、入出力装置20の一部であるランプ22及びブザー23(
図2参照)を作動させる制御信号であってよい。また、判定信号は、対象機器30の非常停止を実行させるための停止信号(割り込み信号)であってよい。消費電力低減のために、出力部133は、対象範囲に人が存在しないと判定された場合に信号を出力しなくてよい。詳細について後述するが、出力部133は、対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への第1の警告を実行させるための判定信号を出力できる。また、出力部133は、第1の警告の後で、第2の警告を実行させるための判定信号を出力できる。また、出力部133は、対象範囲に人が存在すると判定された場合に、設備機器の非常停止を実行させるための判定信号を出力することができる。
【0030】
撮影部14は、人の存在を判定したい対象範囲を含む範囲を撮影する。撮影部14は、例えばカメラであってよい。カメラは、赤外線カメラを含んでよい。撮影部14は、制御部13によって動作を制御されて、撮影した画像の画像データを制御部13に出力する。
【0031】
バッテリー15は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、撮影部14と、を動作させるための電力を供給する。本実施形態のように、安全装置10が一部の入出力装置20(ディスプレイ21、ランプ22及びブザー23)を含む場合に、バッテリー15はこれらの装置にも電力を供給する。バッテリー15は、例えば二次電池であるモバイルバッテリーであるが、持ち運び可能で必要な電力供給が可能であれば特定の種類に限定されない。
【0032】
入出力装置20は、例えばディスプレイ21、ランプ22及びブザー23などの出力装置を含む。ディスプレイ21はLCD(Liquid Crystal Display)であってよい。ディスプレイ21には、撮影部14によって撮影された画像が表示されてよい。また、ランプ22は光源がLED(Light Emitting Diode)であってよい。また、入出力装置20は、例えばマウス及びキーボードなどの入力装置を含む。入出力装置20は、例示したこれらの装置に限定されず、他の種類の装置を含み得る。また、上記のように、入出力装置20の一部が安全装置10に含まれる構成であってよく、本実施形態に係る安全装置10は、ディスプレイ21、ランプ22及びブザー23を含む。また、マウス及びキーボードなどは、必要な場合にだけ安全装置10に接続されてよい。
【0033】
対象機器30は、設備機器又は作業機械である。設備機器は、例えばプレス機など、製造設備で用いられる機器である。作業機械は、例えば車両など、作業に用いられる機器である。車両は、例えばフォークリフト、トラック、クレーン車、ショベルカーなどを含んでよい。安全装置10は、対象機器30と通信可能であるように有線又は無線で接続される。対象機器30が車両である場合に、安全装置10は対象機器30に取り付けられてよい。
【0034】
対象機器30は、対象機器通信部31と、対象機器制御部32と、を備えてよい。対象機器通信部31は、安全装置10と通信する通信インターフェースを含む。対象機器通信部31は、通信部11と同様の構成であってよい。また、対象機器制御部32は、対象機器30の全体の動作を制御する。対象機器制御部32は、制御部13と同様に、1つ以上のプロセッサである。対象機器制御部32は、対象機器通信部31を介して、対象機器30の動作の状態を示す信号を出力できる。また、対象機器制御部32は、対象機器通信部31を介して停止信号を取得した場合に、対象機器30の非常停止を実行する。
【0035】
図2に示すように、本実施形態に係る安全装置10の構成要素はケース50に収納されており、ケース50ごと持ち運びが可能である。持ち運ぶ場合に、ケース50を閉じることができるため、安全装置10が備える電子機器を埃又は雨滴などから保護することができる。安全装置10は、例えばケーブルを用いて対象機器30に接続される。また、対象機器30に取り付けられる場合には、例えば設置スペース又は撮影スペースに応じて、開いた状態でケース50ごと取り付けられてよいし、閉じた状態で取り付けられてよい。安全装置10が閉じた状態で対象機器30に取り付けられる場合などに、一部の構成要素(例えば撮影部14など)がケーブルでつながれた状態でケース50の外に配置されてよい。
図2の例では、開いた状態のケース50の一方にバッテリー15が設けられ、他方にシングルボードコンピュータ40、撮影部14、ディスプレイ21、ランプ22及びブザー23が設けられている。撮影の対象範囲がケース50の一部で隠されることがないように、撮影部14は収納部分の左右方向において中央付近に位置することが好ましい。安全装置10は、1つの対象機器30についての使用が終了した場合に、ケース50ごと別の対象機器30まで持ち運ばれて、別の対象機器30と接続されて人検知を実行できる。このように、本実施形態に係る安全装置10は可搬であって、不使用時に対象機器30から取り外し可能である。ここで、安全装置10の構成要素は持ち運ぶ場合にのみケース50に収納されてよい。つまり、対象機器30に取り付けられて使用される場合に、安全装置10の構成要素がケース50から取り出された上で、対象機器30に取り付けられてよい。
【0036】
以下、安全装置10が実行する、人の立ち入りを検知するための処理が説明される。上記のように安全装置10は様々な対象機器30を対象とするため、いくつかの実施例について説明する。
【0037】
(実施例1)
安全装置10は、対象機器30の機能を利用せずに、単体で使用者に警告することが可能である。この使用方法は、対象機器30の種類によらず、実行することができる。
図3は、実施例1での安全装置10の処理を示すフローチャートである。
【0038】
取得部131は、撮影部14によって撮影された画像データを取得する(ステップS1)。
【0039】
判定部132は、取得部131によって取得された画像データに基づいて、対象範囲における人の存在を判定する(ステップS2)。安全装置10は、対象範囲に立ち入った人が存在しなければ(ステップS2のNo)、ステップS1の処理に戻る。
【0040】
安全装置10は、判定部132が対象範囲で人を認識した場合に(ステップS2のYes)、警告を実行する(ステップS3)。警告は、出力部133がランプ22及びブザー23を作動させる制御信号を出力することによって実行される。ランプ22の点灯及びブザー23からの音によって、使用者は対象範囲への人の立ち入りを認識して、対象機器30を手動で停止させるなどの対応をとることが可能である。
【0041】
(実施例2)
安全装置10は、対象機器30の状態を把握して、使用者に2段階の警告することが可能である。この使用方法は、動作の状態を示す信号を出力可能な対象機器30に対して実行することができ、特に対象機器30が車両などの作業機械である場合に適している。例えば安全装置10は移動中の車両に通信可能に接続されて使用され、この使用方法を実行する。
図4は、実施例2での安全装置10の処理を示すフローチャートである。
【0042】
取得部131は、撮影部14によって撮影された画像データを取得する(ステップS11)。判定部132は、取得部131によって取得された画像データに基づいて、対象範囲における人の存在を判定する(ステップS12)。安全装置10は、対象範囲に立ち入った人が存在しなければ(ステップS12のNo)、ステップS11の処理に戻る。
【0043】
安全装置10は、判定部132が対象範囲で人を認識した場合に(ステップS12のYes)、第1の警告を実行する(ステップS13)。第1の警告は、出力部133がランプ22を作動させる制御信号を出力することによって実行される。ランプ22の点灯又は点滅によって、使用者が対象範囲への人の立ち入りを認識した場合に、対象機器30を停止させるなどの対応をとることが可能である。対象機器30の停止は、対象機器30が車両である場合にブレーキをかけることに対応する。
【0044】
第1の警告の後で、取得部131は対象機器30からのデータを取得する(ステップS14)。対象機器30からのデータは、対象機器30の動作状態を示すものであって、特に停止しているか否かを示すものである。安全装置10は、対象機器30が停止していると判定する場合に(ステップS15のYes)、一連の処理を終了する。
【0045】
安全装置10は、対象機器30が停止していないと判定する場合に(ステップS15のNo)、第2の警告を実行する(ステップS16)。第2の警告は、出力部133がランプ22及びブザー23を作動させる制御信号を出力することによって実行される。ランプ22の点灯及びブザー23からの音によって、使用者に対してより強く警告することができる。そして、安全装置10はステップS15の処理に戻る。
【0046】
(実施例3)
安全装置10は、対象機器30と連動することが可能である。この使用方法は、双方向で通信可能な対象機器30に対して実行することができ、特に対象機器30が設備機器である場合に適している。例えば安全装置10は稼働中の設備機器に通信可能に接続されて使用され、この使用方法を実行する。
図5は、実施例3での安全装置10の処理を示すフローチャートである。
【0047】
取得部131は対象機器30からのデータを取得する(ステップS21)。対象機器30からのデータは、対象機器30の動作状態を示すものであって、特に動作を開始したか否かを示すものである。安全装置10は、対象機器30の動作開始に連動して、初期状態判定を実行する。安全装置10は、停止中(スリープ状態を含む)であっても対象機器30の動作開始に連動してアクティブ状態となり、初期状態を判定する処理を行う。安全装置10が対象機器30に連動してアクティブ状態となることによって、手動によって動作させる場合に生じるスイッチの入れ忘れを防止できる。初期状態判定は例えば対象機器30に設けられた扉又は柵の状態を把握する扉センサが動作しているか、対象機器30との通信状態が正常であるかを確認するものであってよい。初期状態が正常でない場合に(ステップS22のNo)、安全装置10はリセットして、ステップS21の処理に戻る。
【0048】
安全装置10は、初期状態が正常である場合に(ステップS22のYes)、人の認識を開始する。取得部131は、撮影部14によって撮影された画像データを取得する(ステップS23)。判定部132は、取得部131によって取得された画像データに基づいて、対象範囲における人の存在を判定する(ステップS24)。安全装置10は、対象範囲に立ち入った人が存在しなければ(ステップS24のNo)、ステップS23の処理に戻る。ここで、判定部132は、扉センサの状態を含めて人の認識を行うことができる。例えば、対象範囲の境界である扉又は柵が開いた状態である場合のみ、対象範囲における人の存在を判定してよい。つまり、扉センサによって扉又は柵が閉じていることが確認できれば、対象範囲に立ち入った人が存在しないと判定することができる。このことによって、対象範囲の外の人について誤検出することを回避することができる。
【0049】
安全装置10は、判定部132が対象範囲で人を認識した場合に(ステップS24のYes)、非常停止処理を実行する(ステップS25)。非常停止処理は、出力部133が少なくとも設備機器の非常停止を実行させるための判定信号(停止信号)を出力する処理である。非常停止処理では、さらに出力部133がランプ22及びブザー23を作動させる制御信号を出力してよい。対象機器30の対象機器制御部32は、対象機器通信部31を介して停止信号を取得した場合に、対象機器30の非常停止を実行する。そのため、この使用方法では、人の立ち入りに対して素早く対象機器30を停止させることが可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る安全装置10は、対象機器30を特定の機器に限定することなく、汎用性が高い。
【0051】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0052】
例えば安全装置10は入出力装置20としてプロジェクターを備えてよい。プロジェクターで地面又は壁に「進入禁止」などのメッセージを投影することによって、さらに強く警告することができる。
【0053】
例えば安全装置10は各種のセンサを備えてよい。例えばガスセンサを備える場合に、安全装置10は有毒ガスを検知した場合に警告する機能を有してよい。また、例えばガスセンサを備える場合に、安全装置10は酸素濃度が低下した場合に警告する機能を有してよい。また、例えば温度センサを備える場合に、安全装置10は気温又は使用者の体温が上昇した場合に警告する機能を有してよい。
【0054】
例えば安全装置10は複数の撮影部14を備えてよい。複数の撮影部14は異なる方向を撮影してよい。また、検知された人は、ディスプレイ21に方向の違いによって色分けされて示されてよい。また、安全装置10が複数であって連動してよい。
【0055】
例えば安全装置10はさらなる小型化のために、
図2に例示した構成要素の一部を省略したり、一部を他の部品で置き換えたりしてよい。例えば安全装置10は、対象機器30によって、ディスプレイ21、ランプ22及びブザー23の少なくとも1つを省略する構成であってよい。すなわち、対象機器30がディスプレイ21、ランプ22及びブザー23の少なくとも1つを有する場合に、安全装置10は対象機器30が有するものを利用して、対応する構成要素を省略した構成としてよい。また、例えば安全装置10は、ディスプレイ21に代えて、外部に用意されるディスプレイ21と接続するための接続部材(映像ケーブルなど)を備える構成であってよい。安全装置10は、通常時にランプ22又はブザー23による警告を行い、確認が必要な場合にのみ、接続部材をつなげたディスプレイ21に画像を表示させてよい。安全装置10は、ディスプレイ21を備えないことによって、大幅に小型化が可能になる。
【0056】
また、本実施形態に係る安全装置10は対象範囲を調整できる機能を有することが好ましい。上記のように、対象範囲は、デフォルトとして、例えば対象機器30の中心から半径2mの円の範囲などと定められる。ここで、例えば対象機器30が車両である場合に、いわゆる死角において重点的に人の存在を判定したいことがある。例えば対象機器30が設備機器である場合に、設備機器のうち接触すると危険な可動部分の周囲において重点的に人の存在を判定したいことがある。このような要求に対応できるように、対象範囲が使用者によって調整可能であることが好ましい。
【0057】
調整機能を有する安全装置10は、入出力装置20を使用して、撮影部14によって撮影した範囲の中からさらに限定的な範囲を任意に選択して人の存在を判定したい対象範囲としてよい。このとき、任意に選択された範囲(調整された対象範囲)を用いて、判定部132は人の存在の判定を行う。使用者は、例えばディスプレイ21に出力された撮影画像からマウスなどを使用して限定的な範囲を選択してよい。また、タブレットなどが使用される場合に、使用者は、タッチ又はスワイプ操作で限定的な範囲を選択してよい。調整機能を有する安全装置10は、例えば
図3の処理を実行する場合に、ステップS1とステップS2との間において、使用者に限定的な範囲を選択させて調整された対象範囲を定める処理を実行してよい。対象範囲を調整できることによって、例えば製造設備で用いられる場合に安全通路内の人を確実に判定の対象外とすることができ、不要な非常停止又は警告の発生を防止することができる。以下に、対象機器30が設備機器である場合及び車両である場合のそれぞれについて、さらに処理の詳細が説明される。
【0058】
対象機器30を設備機器とする場合に、調整機能を有する安全装置10は、稼働中の設備機器に通信可能に接続されて使用される。安全装置10は、例えば
図5の処理を実行する場合に、ステップS23とステップS24との間において、使用者に限定的な範囲を選択させて、撮影部14によって撮影された画像の範囲から選択される任意の範囲に対象範囲を調整する処理を実行してよい。出力部133は、調整された対象範囲に人が存在すると判定された場合に、少なくとも設備機器の非常停止を実行させるための判定信号を出力する。
【0059】
対象機器30を車両とする場合に、調整機能を有する安全装置10は、移動中の車両に通信可能に接続されて使用される。安全装置10は、例えば
図4の処理を実行する場合に、ステップS11とステップS12との間において、使用者に限定的な範囲を選択させて、撮影部14によって撮影された画像の範囲から選択される任意の範囲に対象範囲を調整する処理を実行してよい。出力部133は、調整された対象範囲に人が存在すると判定された場合に、使用者への第1の警告を実行させるための判定信号を出力する。また、出力部133は、第1の警告の後で車両が停止していない場合に、第2の警告を実行させるための判定信号を出力する。
【符号の説明】
【0060】
1 安全システム
10 安全装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
14 撮影部
15 バッテリー
20 入出力装置
21 ディスプレイ
22 ランプ
23 ブザー
30 対象機器
31 対象機器通信部
32 対象機器制御部
40 シングルボードコンピュータ
50 ケース
131 取得部
132 判定部
133 出力部