(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 12/00 20250101AFI20250508BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250508BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250508BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250508BHJP
H10D 8/50 20250101ALI20250508BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250508BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20250508BHJP
H01L 21/322 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
H10D12/00 101P
H10D30/66 101T
H10D12/00 103S
H10D30/66 201A
H10D30/66 101H
H10D30/01 301H
H10D84/80 203D
H10D30/66 103Q
H10D8/50 C
H10D8/50 J
H10D62/10 101D
H10D62/10 101V
H10D30/01 301A
H01L21/265 602C
H01L21/322 L
H01L21/265 F
H10D84/80 101A
(21)【出願番号】P 2024508223
(86)(22)【出願日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2023010080
(87)【国際公開番号】W WO2023176887
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2022040938
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 美佐稀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 尚
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竣太郎
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/029285(WO,A1)
【文献】特開2020-205408(JP,A)
【文献】特開2018-125537(JP,A)
【文献】特開2022-015861(JP,A)
【文献】特開2015-170724(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138218(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135448(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0081923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 12/00
H10D 30/66
H10D 30/01
H10D 84/80
H10D 8/50
H10D 62/10
H01L 21/265
H01L 21/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面および裏面を有する半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられた第1導電型のバッファ領域と、
を備え、
前記バッファ領域は、ドーピング濃度の1または複数の濃度ピークを含む濃度ピーク群を有し、
前記濃度ピーク群は、
前記半導体基板の深さ方向において、前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記裏面側に設けられた第1濃度ピーク
と、
前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられた副ピーク群と、
を含み、
前記半導体基板は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークの深さ位置と同じか、前記第1濃度ピークの深さ位置よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられた、水素の原子密度のピークである第1水素ピークを含
み、
前記副ピーク群は、水素以外の予め定められた第1ドーパントを有する1または複数の濃度ピークを含む
半導体装置。
【請求項2】
前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+15cm
-3以上、1.0E+16cm
-3以下である
請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記副ピーク群の前記1または複数の濃度ピークよりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられる
請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1濃度ピークのドーパントは、前記水素である
請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1濃度ピークのドーパントは、前記第1ドーパントである
請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1濃度ピークのドーパントは、前記水素および前記第1ドーパントである
請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークの深さは、0.5μm以上、10.0μm以下である
請求項
1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークのうち、前記半導体基板の深さ方向において、最も前記半導体基板の前記裏面側の第2濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の前記裏面から3.0μm以上である
請求項
1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークのうち、前記半導体基板の深さ方向において、最も前記半導体基板の前記おもて面側の濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の前記裏面から10.0μm以下である
請求項
1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1ドーパントがリンである
請求項
1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体基板は、前記半導体基板の深さ方向において、前記副ピーク群の前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記おもて面側の濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に第2水素ピークを有する
請求項
1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記副ピーク群の前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記おもて面側の濃度ピークと前記ドリフト領域との間に設けられる
請求項
11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1水素ピークの原子密度は、1.0E+17cm
-3以上、1.0E+19cm
-3以下である
請求項1
から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1水素ピークの深さ位置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記半導体基板の前記裏面から0μmより大きく、10.0μm未満である
請求項1
から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板の前記おもて面に設けられたエッジ終端構造部を備える
請求項1
から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域の上端から前記半導体基板の前記裏面側に向けてドーピング濃度を積分した積分濃度が、前記バッファ領域において臨界積分濃度に達する
請求項1
から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記積分濃度が前記臨界積分濃度に達する深さ位置よりも、前記半導体基板の前記裏面側に設けられる
請求項
16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられ、第1導電型または第2導電型のドーピング濃度の濃度ピークを有する裏面側領域を備える
請求項1
から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記裏面側領域の前記濃度ピークよりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられる
請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記裏面側領域の前記濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられる
請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項21】
ダイオード部を備え、
前記ダイオード部は、前記裏面側領域として第1導電型のカソード領域を備える
請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記カソード領域の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+18cm
-3以上、1.0E+20cm
-3以下である
請求項
21に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記カソード領域のドーピング濃度の濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記半導体基板の前記裏面から0μmより大きく、1.0μm未満である
請求項
21に記載の半導体装置。
【請求項24】
トランジスタ部を備え、
前記トランジスタ部は、前記裏面側領域として、第2導電型のコレクタ領域を有する
請求項
18に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記コレクタ領域の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+15cm
-3以上、1.0E+18cm
-3以下である
請求項
24に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記コレクタ領域のドーピング濃度の濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記半導体基板の前記裏面から0μmより大きく、0.5μm未満である
請求項
24に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記半導体装置は、トランジスタ部およびダイオード部を有するRC-IGBTである
請求項1
から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項28】
おもて面および裏面を有する半導体基板に第1導電型のドリフト領域を形成する段階と、
前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に第1導電型のバッファ領域を形成する段階と、
を備え、
前記バッファ領域は、ドーピング濃度の1または複数の濃度ピークを含む濃度ピーク群を有し、
前記濃度ピーク群は、
前記半導体基板の深さ方向において、前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記裏面側に設けられた第1濃度ピーク
と、
前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられた副ピーク群と、
を含み、
前記半導体基板は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークの深さ位置と同じか、前記第1濃度ピークの深さ位置よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられた、水素の原子密度のピークである第1水素ピークを含
み、
前記副ピーク群は、水素以外の予め定められた第1ドーパントを有する1または複数の濃度ピークを含む
半導体装置の製造方法。
【請求項29】
前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に、第1導電型または第2導電型のドーピング濃度の濃度ピークを有する裏面側領域を形成する段階を備える
請求項
28に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項30】
前記裏面側領域を形成する段階の後に、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられた1または複数の濃度ピークを含む副ピーク群を形成するために、水素以外の予め定められた第1ドーパントを前記半導体基板にイオン注入する段階を備える
請求項
29に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項31】
前記裏面側領域を形成する段階の後であって、前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の前に、前記半導体基板をレーザアニールする段階を備えない
請求項
30に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項32】
前記裏面側領域を形成する段階の後であって、前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の前に、前記半導体基板をレーザアニールする段階を備える
請求項
30に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項33】
前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の後に、前記半導体基板をレーザアニールする段階と、
前記第1水素ピークを形成するために、前記半導体基板に水素をイオン注入する段階と、
前記水素をイオン注入した後に前記半導体基板を熱アニールする段階と、
を備える請求項
30から32のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項34】
前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の後に、前記第1水素ピークを形成するために、前記半導体基板に水素をイオン注入する段階と、
前記水素をイオン注入した後に前記半導体基板を熱アニールする段階と、
を備え、
前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の後であって、前記半導体基板に水素をイオン注入する段階の前に、前記半導体基板をレーザアニールする段階を含まない
請求項
30から32のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「FS層」に「プロトンがドープされたプロトン層」を有する半導体装置が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特許第5817686号
特許文献2 国際公開2018/179798号
【解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の電気的特性を改善することが好ましい。
【一般的開示】
【0004】
本発明の第1の態様においては、おもて面および裏面を有する半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられた第1導電型のバッファ領域と、を備える半導体装置を提供する。前記バッファ領域は、ドーピング濃度の1または複数の濃度ピークを含む濃度ピーク群を有してよい。前記濃度ピーク群は、前記半導体基板の深さ方向において、前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記裏面側に設けられた第1濃度ピークを含んでよい。前記半導体基板は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークの深さ位置と同じか、前記第1濃度ピークの深さ位置よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられた、水素の原子密度のピークである第1水素ピークを含んでよい。
【0005】
前記半導体装置において、前記濃度ピーク群は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられた副ピーク群を含んでよい。前記副ピーク群は、水素以外の予め定められた第1ドーパントを有する1または複数の濃度ピークを含んでよい。
【0006】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+15cm-3以上、1.0E+16cm-3以下であってよい。
【0007】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記副ピーク群の前記1または複数の濃度ピークよりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられてよい。
【0008】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1濃度ピークのドーパントは、前記水素であってよい。
【0009】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1濃度ピークのドーパントは、前記第1ドーパントであってよい。
【0010】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1濃度ピークのドーパントは、前記水素および前記第1ドーパントであってよい。
【0011】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークの深さは、0.5μm以上、10.0μm以下であってよい。
【0012】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークのうち、前記半導体基板の深さ方向において、最も前記半導体基板の前記裏面側の第2濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の前記裏面から3.0μm以上であってよい。
【0013】
前上記いずれかの前記半導体装置において、記副ピーク群における前記1または複数の濃度ピークのうち、前記半導体基板の深さ方向において、最も前記半導体基板の前記おもて面側の濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の前記裏面から10.0μm以下であってよい。
【0014】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1ドーパントがリンであってよい。
【0015】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記半導体基板は、前記半導体基板の深さ方向において、前記副ピーク群の前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記おもて面側の濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に第2水素ピークを有してよい。
【0016】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第2水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記副ピーク群の前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記おもて面側の濃度ピークと前記ドリフト領域との間に設けられてよい。
【0017】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1水素ピークの原子密度は、1.0E+17cm-3以上、1.0E+19cm-3以下であってよい。
【0018】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1水素ピークの深さ位置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記半導体基板の前記裏面から0μmより大きく、10.0μm未満であってよい。
【0019】
上記いずれかの前記半導体装置は、前記半導体基板の前記おもて面に設けられたエッジ終端構造部を備えてよい。
【0020】
上記いずれかの前記半導体装置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域の上端から前記半導体基板の前記裏面側に向けてドーピング濃度を積分した積分濃度が、前記バッファ領域において臨界積分濃度に達してよい。
【0021】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記積分濃度が前記臨界積分濃度に達する深さ位置よりも、前記半導体基板の前記裏面側に設けられてよい。
【0022】
上記いずれかの前記半導体装置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられ、第1導電型または第2導電型のドーピング濃度の濃度ピークを有する裏面側領域を備えてよい。
【0023】
前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記裏面側領域の前記濃度ピークよりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられてよい。
【0024】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記第1水素ピークは、前記半導体基板の深さ方向において、前記裏面側領域の前記濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられてよい。
【0025】
上記いずれかの前記半導体装置は、ダイオード部を備えてよい。前記ダイオード部は、前記裏面側領域として第1導電型のカソード領域を備えてよい。
【0026】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記カソード領域の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+18cm-3以上、1.0E+20cm-3以下であってよい。
【0027】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記カソード領域のドーピング濃度の濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記半導体基板の前記裏面から0μmより大きく、1.0μm未満であってよい。
【0028】
上記いずれかの前記半導体装置は、トランジスタ部を備えてよい。前記トランジスタ部は、前記裏面側領域として、第2導電型のコレクタ領域を有してよい。
【0029】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記コレクタ領域の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+15cm-3以上、1.0E+18cm-3以下であってよい。
【0030】
上記いずれかの前記半導体装置において、前記コレクタ領域のドーピング濃度の濃度ピークの深さ位置は、前記半導体基板の深さ方向において、前記半導体基板の前記裏面から0μmより大きく、0.5μm未満であってよい。
【0031】
上記いずれかの前記半導体装置は、トランジスタ部およびダイオード部を有するRC-IGBTであってよい。
【0032】
本発明の第2の態様においては、おもて面および裏面を有する半導体基板に第1導電型のドリフト領域を形成する段階と、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に第1導電型のバッファ領域を形成する段階と、を備える半導体装置の製造方法を提供する。前記バッファ領域は、ドーピング濃度の1または複数の濃度ピークを含む濃度ピーク群を有してよい。前記濃度ピーク群は、前記半導体基板の深さ方向において、前記1または複数の濃度ピークのうち最も前記半導体基板の前記裏面側に設けられた第1濃度ピークを含んでよい。前記半導体基板は、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークの深さ位置と同じか、前記第1濃度ピークの深さ位置よりも前記半導体基板の前記裏面側に設けられた、水素の原子密度のピークである第1水素ピークを含んでよい。
【0033】
前記半導体装置の製造方法は、前記半導体基板の深さ方向において、前記ドリフト領域よりも前記半導体基板の前記裏面側に、第1導電型または第2導電型のドーピング濃度の濃度ピークを有する裏面側領域を形成する段階を備えてよい。
【0034】
上記いずれかの前記半導体装置の製造方法は、前記裏面側領域を形成する段階の後に、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1濃度ピークよりも前記半導体基板の前記おもて面側に設けられた1または複数の濃度ピークを含む副ピーク群を形成するために、水素以外の予め定められた第1ドーパントを前記半導体基板にイオン注入する段階を備えてよい。
【0035】
上記いずれかの前記半導体装置の製造方法は、前記裏面側領域を形成する段階の後であって、前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の前に、前記半導体基板をレーザアニールする段階を備えなくてよい。
【0036】
上記いずれかの前記半導体装置の製造方法は、前記裏面側領域を形成する段階の後であって、前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の前に、前記半導体基板をレーザアニールする段階を備えてよい。
【0037】
上記いずれかの前記半導体装置の製造方法は、前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の後に、前記半導体基板をレーザアニールする段階と、前記第1水素ピークを形成するために、前記半導体基板に水素をイオン注入する段階と、前記水素をイオン注入した後に前記半導体基板を熱アニールする段階と、を備えてよい。
【0038】
上記いずれかの前記半導体装置の製造方法は、前記副ピーク群を形成するために、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の後に、前記第1水素ピークを形成するために、前記半導体基板に水素をイオン注入する段階と、前記水素をイオン注入した後に前記半導体基板を熱アニールする段階と、を備えてよい。前記半導体装置の製造方法は、前記半導体基板に前記第1ドーパントをイオン注入する段階の後であって、前記半導体基板に水素をイオン注入する段階の前に、前記半導体基板をレーザアニールする段階を含まなくてよい。
【0039】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2A】半導体装置100の変形例を示す上面図の一例である。
【
図2C】半導体装置100の変形例のb-b'断面を示す。
【
図3A】バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の一例を示す。
【
図3B】バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。
【
図3C】バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。
【
図3D】バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。
【
図3E】バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。
【
図4A】半導体基板10におけるドーピング濃度分布の一例を示す。
【
図4B】変形例である半導体基板10におけるドーピング濃度分布の一例を示す。
【
図5】アニール温度に応じた活性化度合いの違いを説明するための図である。
【
図6】比較例であるバッファ領域520のドーピング濃度の分布の一例である。
【
図7A】半導体装置100の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図7B】半導体装置100の製造工程の変形例を示すフローチャートである。
【
図7C】半導体装置100の製造工程の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0042】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0043】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0044】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0045】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0046】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0047】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をND、アクセプタ濃度をNAとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はND-NAとなる。本明細書では、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する場合がある。
【0048】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥を水素ドナーと称する場合がある。また、本明細書では、水素ドナーを形成するためにイオン注入される水素をドーパントと称する場合がある。
【0049】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0050】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。本明細書では、N型領域のドーピング濃度をドナー濃度と称する場合があり、P型領域のドーピング濃度をアクセプタ濃度と称する場合がある。
【0051】
また、ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。
【0052】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0053】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。本明細書では、SI単位系を採用する。本明細書において、距離や長さの単位がcm(センチメートル)で表されることがある。この場合、諸計算はm(メートル)に換算して計算してよい。10のべき乗の数値表示について、例えば1E+16の表示は、1×1016を示し、1E-16の表示は、1×10-16を示す。
【0054】
図1Aは、半導体装置100の上面図の一例を示す。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70を備える半導体チップである。
【0055】
トランジスタ部70は、半導体基板10の裏面側に設けられたコレクタ領域22を半導体基板10の上面に投影した領域である。コレクタ領域22については後述する。トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。本例では、トランジスタ部70はIGBTである。なお、トランジスタ部70は、MOSFET等の他のトランジスタであってもよい。
【0056】
本図においては、半導体装置100のエッジ側であるチップ端部周辺の領域を示しており、他の領域を省略している。例えば、本例の半導体装置100のY軸方向の負側の領域には、エッジ終端構造部が設けられてよい。エッジ終端構造部は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。なお、本例では、便宜上、Y軸方向の負側のエッジについて説明するものの、半導体装置100の他のエッジについても同様である。
【0057】
半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10は、シリコン基板である。なお、本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。半導体基板10は、後述の通り、おもて面21および裏面23を有する。
【0058】
本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21において、ゲートトレンチ部40と、ダミートレンチ部30と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ウェル領域17とを備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。
【0059】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15およびウェル領域17の上方に設けられている。また、ゲート金属層50は、ゲートトレンチ部40およびウェル領域17の上方に設けられている。
【0060】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。エミッタ電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。ゲート金属層50の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。エミッタ電極52およびゲート金属層50は、互いに分離して設けられる。
【0061】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、層間絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上方に設けられる。層間絶縁膜38は、
図1Aでは省略されている。層間絶縁膜38には、コンタクトホール54、コンタクトホール55およびコンタクトホール56が貫通して設けられている。
【0062】
コンタクトホール55は、ゲート金属層50とトランジスタ部70内のゲート導電部とを接続する。コンタクトホール55の内部には、タングステン等で形成されたプラグ金属層が形成されてもよい。
【0063】
コンタクトホール56は、エミッタ電極52とダミートレンチ部30内のダミー導電部とを接続する。コンタクトホール56の内部には、タングステン等で形成されたプラグ金属層が形成されてもよい。
【0064】
接続部25は、エミッタ電極52またはゲート金属層50等のおもて面側電極と接続される。一例において、接続部25は、ゲート金属層50とゲート導電部との間に設けられる。接続部25は、エミッタ電極52とダミー導電部との間にも設けられている。接続部25は、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料である。本例の接続部25は、N型の不純物がドープされたポリシリコン(N+)である。接続部25は、酸化膜等の絶縁膜等を介して、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられる。
【0065】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21側において、予め定められた延伸方向に延伸した複数のトレンチ部の一例である。ゲートトレンチ部40は、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分41と、2つの延伸部分41を接続する接続部分43を有してよい。
【0066】
接続部分43は、少なくとも一部が曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分41の端部を接続することで、延伸部分41の端部における電界集中を緩和できる。ゲートトレンチ部40の接続部分43において、ゲート金属層50がゲート導電部と接続されてよい。
【0067】
ダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面21側において、予め定められた延伸方向に延伸した複数のトレンチ部の一例である。ダミートレンチ部30は、エミッタ電極52と電気的に接続されたトレンチ部である。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。本例のダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面21においてI字形状を有するが、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板10のおもて面21においてU字形状を有してよい。即ち、ダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分と、2つの延伸部分を接続する接続部分を有してよい。
【0068】
本例のトランジスタ部70は、2つのゲートトレンチ部40と2つのダミートレンチ部30を繰り返し配列させた構造を有する。即ち、本例のトランジスタ部70は、1:1の比率でゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30を有している。例えば、トランジスタ部70は、2本の延伸部分41の間に1本のダミートレンチ部30を有する。
【0069】
但し、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は本例に限定されない。ゲートトレンチ部40の比率がダミートレンチ部30の比率よりも大きくてよく、ダミートレンチ部30の比率がゲートトレンチ部40の比率よりも大きくてよい。ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30の比率は、2:3であってもよく、2:4であってもよい。また、トランジスタ部70は、全てのトレンチ部をゲートトレンチ部40として、ダミートレンチ部30を有さなくてもよい。
【0070】
ウェル領域17は、後述するドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられた第2導電型の領域である。ウェル領域17は、半導体装置100のエッジ側に設けられるウェル領域の一例である。ウェル領域17は、一例としてP+型である。ウェル領域17は、ゲート金属層50が設けられる側の活性領域の端部から、予め定められた範囲で形成される。ウェル領域17の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート金属層50側の一部の領域は、ウェル領域17に形成される。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の延伸方向の端の底は、ウェル領域17に覆われてよい。
【0071】
コンタクトホール54は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の各領域の上方に形成される。コンタクトホール54は、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。このように、層間絶縁膜には、1又は複数のコンタクトホール54が形成されている。1又は複数のコンタクトホール54は、延伸方向に延伸して設けられてよい。
【0072】
メサ部71は、半導体基板10のおもて面21と平行な面内において、トレンチ部に隣接して設けられたメサ部である。メサ部とは、隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた半導体基板10の部分であって、半導体基板10のおもて面21から、各トレンチ部の最も深い底部の深さまでの部分であってよい。各トレンチ部の延伸部分を1つのトレンチ部としてよい。即ち、2つの延伸部分に挟まれる領域をメサ部としてよい。
【0073】
メサ部71は、トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30またはゲートトレンチ部40の少なくとも1つに隣接して設けられる。メサ部71は、半導体基板10のおもて面21において、ウェル領域17と、エミッタ領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15とを有する。メサ部71では、エミッタ領域12およびコンタクト領域15が延伸方向において交互に設けられている。
【0074】
ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21側に設けられた第2導電型の領域である。ベース領域14は、一例としてP-型である。ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21において、メサ部71のY軸方向における両端部に設けられてよい。なお、
図1Aは、当該ベース領域14のY軸方向の一方の端部のみを示している。
【0075】
エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い第1導電型の領域である。本例のエミッタ領域12は、一例としてN+型である。エミッタ領域12のドーパントの一例はヒ素(As)である。エミッタ領域12は、メサ部71のおもて面21において、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に延伸して設けられてよい。エミッタ領域12は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。
【0076】
また、エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接している。
【0077】
コンタクト領域15は、ベース領域14の上方に設けられ、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。本例のコンタクト領域15は、メサ部71のおもて面21に設けられている。コンタクト領域15は、メサ部71を挟んだ2本のトレンチ部の一方から他方まで、X軸方向に設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。本例のコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40と接する。コンタクト領域15は、コンタクトホール54の下方にも設けられている。
【0078】
図1Bは、
図1Aにおけるa-a'断面の一例を示す。a-a'断面は、トランジスタ部70において、エミッタ領域12を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、a-a'断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上方に形成される。
【0079】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN-型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
【0080】
バッファ領域20は、ドリフト領域18よりも半導体基板10の裏面23側に設けられた第1導電型の領域である。本例のバッファ領域20は、一例としてN型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、第2導電型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。なお、バッファ領域20は、省略されてよい。
【0081】
裏面側領域60は、半導体基板10においてドリフト領域18よりも裏面23側に設けられる。裏面側領域60は、第1導電型または第2導電型のドーピング濃度の濃度ピークを有する。本例の裏面側領域60は、第2導電型のドーピング濃度の濃度ピークを有する。本例のトランジスタ部70は、裏面側領域60としてコレクタ領域22を有する。本例の裏面側領域60の上端は、バッファ領域20の下端と接している。なお、本明細書において、上端とは半導体基板10の深さ方向におけるおもて面21側の端部を指し、下端とは半導体基板10の深さ方向における裏面23側の端部を指してよい。上端および下端は、重力方向または半導体装置100の実装時における方向に限定されない。
【0082】
コレクタ領域22は、トランジスタ部70において、バッファ領域20の下方に設けられる。コレクタ領域22は、第2導電型を有する。本例のコレクタ領域22は、一例としてP+型である。
【0083】
コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面23に形成される。コレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。コレクタ電極24の材料は、エミッタ電極52の材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0084】
ベース領域14は、ドリフト領域18の上方に設けられる第2導電型の領域である。ベース領域14は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。ベース領域14は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0085】
エミッタ領域12は、ベース領域14の上方に設けられる。エミッタ領域12は、ベース領域14とおもて面21との間に設けられる。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、ダミートレンチ部30と接してもよいし、接しなくてもよい。
【0086】
蓄積領域16は、ドリフト領域18よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる第1導電型の領域である。本例の蓄積領域16は、一例としてN+型である。但し、蓄積領域16が設けられなくてもよい。
【0087】
蓄積領域16は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。蓄積領域16は、ダミートレンチ部30に接してもよいし、接しなくてもよい。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16のイオン注入のドーズ量は、1.0E+12cm-2以上、1.0E+13cm-2以下であってよい。また、蓄積領域16のイオン注入ドーズ量は、3.0E+12cm-2以上、6.0E+12cm-2以下であってもよい。蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、トランジスタ部70のオン電圧を低減できる。
【0088】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、おもて面21に設けられる。各トレンチ部は、おもて面21からドリフト領域18まで設けられる。エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられる領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通したものに含まれる。
【0089】
ゲートトレンチ部40は、おもて面21に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0090】
ゲート導電部44は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んでメサ部71側で隣接するベース領域14と対向する領域を含む。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0091】
ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、おもて面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミートレンチ部30は、おもて面21において層間絶縁膜38により覆われる。
【0092】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上方に設けられる。本例の層間絶縁膜38は、おもて面21と接して設けられる。層間絶縁膜38の上方には、エミッタ電極52が設けられている。層間絶縁膜38には、エミッタ電極52と半導体基板10とを電気的に接続するための1又は複数のコンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール55およびコンタクトホール56も同様に、層間絶縁膜38を貫通して設けられてよい。層間絶縁膜38は、BPSG(Boro‐phospho Silicate Glass)膜であってもよいし、BSG(borosilicate glass)膜であってもよいし、PSG(Phosphosilicate glass)膜であってもよいし、HTO膜であってもよいし、これらの材料を積層したものであってもよい。層間絶縁膜38の膜厚は、例えば1.0μmであるが、これに限定されない。
【0093】
第1ライフタイム制御領域151は、トランジスタ部70に設けられてよい。但し、第1ライフタイム制御領域151は、省略されてよい。第1ライフタイム制御領域151は、半導体基板10の内部に不純物を注入すること等により意図的にライフタイムキラーが形成された領域である。一例において、第1ライフタイム制御領域151は、半導体基板10にヘリウムを注入することで形成される。第1ライフタイム制御領域151を設けることにより、ターンオフ時間を低減し、テイル電流を抑制することにより、スイッチング時の損失を低減することができる。
【0094】
ライフタイムキラーは、キャリアの再結合中心である。ライフタイムキラーは、格子欠陥であってよい。例えば、ライフタイムキラーは、空孔、複空孔、これらと半導体基板10を構成する元素との複合欠陥、または転位であってよい。また、ライフタイムキラーは、ヘリウム、ネオンなどの希ガス元素、または、白金などの金属元素などでもよい。格子欠陥の形成には電子線が用いられてよい。
【0095】
ライフタイムキラー濃度とは、キャリアの再結合中心濃度である。ライフタイムキラー濃度は、格子欠陥の濃度であってよい。例えばライフタイムキラー濃度とは、空孔、複空孔などの空孔濃度であってよく、これらの空孔と半導体基板10を構成する元素との複合欠陥濃度であってよく、または転位濃度であってよい。また、ライフタイムキラー濃度とは、ヘリウム、ネオンなどの希ガス元素の化学濃度としてもよく、または、白金などの金属元素の化学濃度としてもよい。
【0096】
第1ライフタイム制御領域151は、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10の中心よりも裏面23側に設けられる。本例の第1ライフタイム制御領域151は、バッファ領域20に設けられる。本例の第1ライフタイム制御領域151は、XY平面において半導体基板10の全面に設けられており、マスクを使用せずに形成できる。第1ライフタイム制御領域151は、XY平面において半導体基板10の一部に設けられてもよい。第1ライフタイム制御領域151を形成するための不純物のドーズ量は、0.5E+10cm-2以上、1.0E+13cm-2以下であっても、5.0E+10cm-2以上、5.0E+11cm-2以下であってもよい。
【0097】
第1ライフタイム制御領域151は、裏面23側からの注入により形成されてよい。これにより、半導体装置100のおもて面21側への影響を回避できる。例えば、第1ライフタイム制御領域151は、裏面23側からヘリウムを照射することにより形成される。ここで、第1ライフタイム制御領域151がおもて面21側からの注入により形成されているか、裏面23側からの注入により形成されているかは、SR法またはリーク電流の測定によって、おもて面21側の状態を取得することで判断できる。
【0098】
図2Aは、半導体装置100の変形例を示す上面図の一例である。
図2Aにおいては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。
図2Aにおいては、半導体装置100の一部の部材のみを示しており、一部の部材は省略している。
【0099】
半導体基板10は、上面視において端辺105を有する。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺105を有する。
図2Aにおいては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺105と平行である。
【0100】
半導体基板10には活性部120が設けられている。活性部120は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10のおもて面21と裏面23との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部120の上方には、エミッタ電極52が設けられているが
図2Aでは省略している。
【0101】
活性部120には、IGBT等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80の少なくとも一方が設けられている。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70およびダイオード部80を備えるRC-IGBTである。
図2Aの例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、半導体基板10のおもて面21における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、交互に配置されている。他の例では、活性部120には、トランジスタ部70およびダイオード部80の一方だけが設けられていてもよい。
【0102】
本図においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0103】
ダイオード部80は、半導体基板10の裏面23と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の裏面23には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域85も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域85の裏面23には、コレクタ領域22が設けられている。
【0104】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド112を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺105の近傍に配置されている。端辺105の近傍とは、上面視における端辺105と、エミッタ電極52との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0105】
ゲートパッド112には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド112は、活性部120のゲートトレンチ部40のゲート導電部44に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド112とゲートトレンチ部40とを接続するゲート配線を備える。本図においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0106】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線130と、活性側ゲート配線131とを有している。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、ゲート金属層50の一例である。外周ゲート配線130は、上面視において活性部120と半導体基板10の端辺105との間に配置されている。本例の外周ゲート配線130は、上面視において活性部120を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線130に囲まれた領域を活性部120としてもよい。また、外周ゲート配線130は、ゲートパッド112と接続されている。外周ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0107】
活性側ゲート配線131は、活性部120に設けられている。活性部120に活性側ゲート配線131を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド112からの配線長のバラツキを低減できる。
【0108】
活性側ゲート配線131は、活性部120のゲートトレンチ部と接続される。活性側ゲート配線131は、半導体基板10の上方に配置されている。活性側ゲート配線131は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0109】
活性側ゲート配線131は、外周ゲート配線130と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線131は、Y軸方向の略中央で一方の外周ゲート配線130から他方の外周ゲート配線130まで、活性部120を横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線131により活性部120が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0110】
また、半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部、または、活性部120に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0111】
エッジ終端構造部140は、半導体基板10のおもて面21に設けられる。エッジ終端構造部140は、上面視において、活性部120と端辺105との間に設けられる。本例のエッジ終端構造部140は、外周ゲート配線130と端辺105との間に配置されている。エッジ終端構造部140は、半導体基板10のおもて面21側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部140は、活性部120を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0112】
図2Bは、
図2Aにおける領域Aの拡大図である。領域Aは、トランジスタ部70およびダイオード部80を含む領域である。ダイオード部80は、半導体基板10の裏面23側に設けられたカソード領域82を半導体基板10の上面に投影した領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15およびウェル領域17を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。
【0113】
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に、半導体基板10のおもて面21においてU字形状を有してよい。即ち、ダミートレンチ部30は、延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分31と、2つの延伸部分31を接続する接続部分33を有してよい。
【0114】
本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は互いに分離して設けられる。本例のトランジスタ部70は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界に位置する境界部90を含む。但し、半導体装置100は、境界部90を備えなくてよい。
【0115】
境界部90は、トランジスタ部70に設けられ、ダイオード部80と隣接する領域である。境界部90は、コンタクト領域15を有する。本例の境界部90は、エミッタ領域12を有さない。一例において、境界部90のトレンチ部は、ダミートレンチ部30である。本例の境界部90は、X軸方向における両端がダミートレンチ部30となるように配置されている。
【0116】
コンタクトホール54は、ダイオード部80において、ベース領域14の上方に設けられる。コンタクトホール54は、境界部90において、コンタクト領域15の上方に設けられる。いずれのコンタクトホール54も、Y軸方向両端に設けられたウェル領域17の上方には設けられていない。
【0117】
メサ部91は、境界部90に設けられている。メサ部91は、半導体基板10のおもて面21において、コンタクト領域15を有する。本例のメサ部91は、Y軸方向の負側において、ベース領域14およびウェル領域17を有する。
【0118】
メサ部81は、ダイオード部80において、隣り合うダミートレンチ部30に挟まれた領域に設けられる。メサ部81は、半導体基板10のおもて面21において、コンタクト領域15を有する。本例のメサ部81は、Y軸方向の負側において、ベース領域14およびウェル領域17を有する。
【0119】
エミッタ領域12は、メサ部71に設けられているが、メサ部81およびメサ部91には設けられなくてよい。コンタクト領域15は、メサ部71およびメサ部91に設けられているが、メサ部81には設けられなくてよい。
【0120】
図2Cは、半導体装置100の変形例のb-b'断面を示す。本図は、
図2Bのb-b'断面に相当する。本例の半導体装置100は、第1ライフタイム制御領域151および第2ライフタイム制御領域152を備える。但し、半導体装置100は、第1ライフタイム制御領域151または第2ライフタイム制御領域152の一方を備えなくてよいし、第1ライフタイム制御領域151および第2ライフタイム制御領域152の両方を備えなくてもよい。本例の半導体装置100は、裏面側領域60として、コレクタ領域22およびカソード領域82を備える。
【0121】
コンタクト領域15は、メサ部91において、ベース領域14の上方に設けられる。コンタクト領域15は、メサ部91において、ダミートレンチ部30に接して設けられる。他の断面において、コンタクト領域15は、メサ部71のおもて面21に設けられてよい。
【0122】
蓄積領域16は、トランジスタ部70およびダイオード部80に設けられる。本例の蓄積領域16は、トランジスタ部70およびダイオード部80の全面に設けられる。但し、蓄積領域16は、ダイオード部80に設けられなくてもよい。
【0123】
カソード領域82は、ダイオード部80において、バッファ領域20の下方に設けられる。コレクタ領域22とカソード領域82との境界は、トランジスタ部70とダイオード部80との境界である。即ち、本例の境界部90の下方には、コレクタ領域22が設けられている。
【0124】
第1ライフタイム制御領域151は、トランジスタ部70およびダイオード部80の両方に設けられる。これにより、本例の半導体装置100は、ダイオード部80におけるリカバリーを速めて、スイッチング損失をさらに改善できる。第1ライフタイム制御領域151は、他の実施例の第1ライフタイム制御領域151と同様の方法により形成されてよい。
【0125】
第2ライフタイム制御領域152は、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10の中心よりもおもて面21側に設けられる。本例の第2ライフタイム制御領域152は、ドリフト領域18に設けられる。第2ライフタイム制御領域152は、トランジスタ部70およびダイオード部80の両方に設けられる。第2ライフタイム制御領域152は、おもて面21側から不純物を注入することにより形成されてもよく、裏面23側から不純物を注入することにより形成されてもよい。第2ライフタイム制御領域152は、ダイオード部80と境界部90に設けられ、トランジスタ部70の一部には設けられなくてもよい。
【0126】
第2ライフタイム制御領域152は、第1ライフタイム制御領域151の形成方法のうち、任意の方法で形成されてよい。第1ライフタイム制御領域151および第2ライフタイム制御領域152を形成するための元素およびドーズ量などは、同一であっても異なっていてもよい。
【0127】
図3Aは、バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の一例を示す。バッファ領域20は、濃度ピーク群200を含む。本例の半導体基板10は、第1水素ピーク101を有する。実線のグラフは、半導体基板10におけるドーピング濃度の濃度分布を示す。一点鎖線のグラフは、濃度ピーク群200を形成するための第1ドーパントのドーパント原子密度220を示す。破線のグラフは、水素の原子密度の分布を示す。ドーパント原子密度220および水素の原子密度の分布は、SIMS等の元素分析手法を用いて測定されてよい。
【0128】
濃度ピーク群200は、ドーピング濃度の1または複数の濃度ピークを含む。本例の濃度ピーク群200は、半導体基板10の深さ方向において、裏面23から近い順に、第1濃度ピーク201、第2濃度ピーク202、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204の4つの濃度ピークを有する。濃度ピーク群200は、2つの濃度ピークを有してもよいし、3つの濃度ピークを有してもよいし、4つの濃度ピークを有してもよいし、5つ以上の濃度ピークを有してもよい。本例の濃度ピーク群200は、第1濃度ピーク201と副ピーク群210とを有する。
【0129】
第1濃度ピーク201は、半導体基板10の深さ方向において、濃度ピーク群200の1または複数の濃度ピークのうち最も半導体基板10の裏面23側に設けられる。深さ位置D1は、半導体基板10の深さ方向における、第1濃度ピーク201の裏面23からの深さである。本例の第1濃度ピーク201は、水素のイオン注入によって形成されるが、リン等のN型のドーパントのイオン注入によって形成されてもよい。
【0130】
第1濃度ピーク201のドーピング濃度は、副ピーク群210の1または複数の濃度ピークのドーピング濃度よりも大きくてよい。本例の第1濃度ピーク201は、第2濃度ピーク202、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204よりもドーピング濃度が大きい。第1濃度ピーク201のドーピング濃度は、裏面側領域60の濃度ピークのドーピング濃度よりも小さくてよい。第1濃度ピーク201のドーピング濃度は、1.0E+15cm-3以上、1.0E+17cm-3以下であってよい。
【0131】
副ピーク群210は、半導体基板10の深さ方向において、第1濃度ピーク201よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる。副ピーク群210は、第1濃度ピーク201以外の1または複数の濃度ピークを含んでよい。本例の副ピーク群210は、第2濃度ピーク202、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204の3つの濃度ピークを含む。副ピーク群210は、水素以外の予め定められた第1ドーパントのイオン注入によって形成された1または複数の濃度ピークを含んでよい。本例の第1ドーパントはリンであるが、N型のドーパントであればこれに限定されない。
【0132】
第1水素ピーク101は、水素の原子密度のピークである。第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、第1濃度ピーク201の深さ位置D1と同じか、第1濃度ピーク201の深さ位置D1よりも半導体基板10の裏面23側に設けられる。第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、副ピーク群210の1または複数の濃度ピークよりも半導体基板10の裏面23側に設けられてよい。第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、裏面側領域60の濃度ピークよりも半導体基板10のおもて面21側に設けられてよい。
【0133】
深さ位置Ph1は、半導体基板10の深さ方向における、第1水素ピーク101の裏面23からの深さである。本例の第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、第1濃度ピーク201の深さ位置D1と同じである。即ち、深さ位置Ph1は、深さ位置D1と等しい。深さ位置Ph1は、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10の裏面23から0μmより大きく、10.0μm未満であってよい。第1水素ピーク101の深さ位置Ph1は、0μmより大きくてよく、3.0μm未満であってよく、5.0μm未満であってよく、1.0μm未満であってよい。
【0134】
半導体基板10は、格子欠陥を備えてよい。格子欠陥は、電荷キャリア(電子または正孔)の移動度またはライフタイムを低減することがある。電荷キャリアの移動度またはライフタイムを、単に移動度またはライフタイムと称する場合がある。第1水素ピーク101の原子密度は、格子欠陥により低下した移動度を、低下した値よりも高い値に回復することができる程度に設定されてよい。第1水素ピーク101の原子密度は、格子欠陥により低下した移動度を、結晶状態における値に回復することができる程度に設定されてよい。第1水素ピーク101の原子密度は、格子欠陥により低下したライフタイムを、低下した値よりも高い値に回復することができる程度に設定されてよい。第1水素ピーク101の原子密度は、格子欠陥により低下したライフタイムを、結晶状態における値に回復することができる程度に設定されてよい。
【0135】
第1水素ピーク101の原子密度は、半導体基板10の深さ方向において、裏面23から深さ位置Ph1まで増加した後、おもて面21に向けて徐々に減少してよい。第1水素ピーク101の原子密度は、1.0E+16cm-3以上、1.0E+20cm-3以下であってよく、1.0E+17cm-3以上、1.0E+19cm-3以下であってよい。
【0136】
第1濃度ピーク201のドーパントは、第1水素ピーク101を形成するためにイオン注入された水素である。水素は、水素のイオン注入により生成された1以上の格子間原子(本例ではシリコン)または1以上の空孔と結合し、水素ドナーを形成する。格子間原子および空孔は、格子欠陥の一例である。即ち、第1濃度ピーク201は、水素ドナーのドーピング濃度のピークであってよい。本例の第1濃度ピーク201は、半導体基板10の深さ方向において、第1水素ピーク101と略等しい位置に設けられる。本例では、第1濃度ピーク201のドーパントが第1ドーパントではないので、第1濃度ピーク201は、第1ドーパントのドーパント原子密度220のピークと重複していなくてよい。第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、コレクタ領域22の濃度ピークと、第2濃度ピーク202との間に設けられてよい。
【0137】
副ピーク群210における1または複数の濃度ピークの深さは、0.5μm以上、10.0μm以下であってよい。副ピーク群210における1または複数の濃度ピークの深さは、1.0μm以上、5.0μm以下であってよい。
【0138】
副ピーク群210における1または複数の濃度ピークのうち、半導体基板10の深さ方向において、最も半導体基板10の裏面23側の第2濃度ピーク202の深さ位置D2は、半導体基板10の裏面23から3.0μm以上であってよい。本例の半導体装置100は、3.0μm以上の深さ位置に副ピーク群210を有する場合であっても、第1水素ピーク101を設けることにより、格子欠陥により低下した移動度またはライフタイムを回復することができる。
【0139】
副ピーク群210における1または複数の濃度ピークのうち、半導体基板10の深さ方向において、最も半導体基板10のおもて面21側の濃度ピークの深さ位置(本例では深さ位置D4)は、半導体基板10の裏面から10.0μm以下であってよい。深さ位置D4は、半導体基板10の深さ方向における、第4濃度ピーク204の裏面23からの深さ位置である。第4濃度ピーク204の深さ位置D4は、10.0μm以下であってよい。第4濃度ピーク204の深さ位置D4は、裏面23から半導体基板10の基板厚の10%以上、20%以下の深さ位置に設けられてよい。
【0140】
なお、第3濃度ピーク203の深さ位置D3は、半導体基板10の深さ方向において、第2濃度ピーク202の深さ位置D2と第4濃度ピーク204の深さ位置D4との間である。第3濃度ピーク203の深さ位置D3は、半導体基板10の深さ方向において、深さ位置D2および深さ位置D4と等距離であってよい。第3濃度ピーク203の深さ位置D3は、半導体基板10の深さ方向において、深さ位置D4よりも深さ位置D2に近接してよく、深さ位置D2よりも深さ位置D4に近接してもよい。
【0141】
副ピーク群210における1または複数の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+15cm-3以上、1.0E+16cm-3以下であってよい。副ピーク群210のドーピング濃度は、半導体基板10の深さ方向において、裏面23に近づくにつれて、徐々に大きくなってよい。第2濃度ピーク202のドーピング濃度は、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204のドーピング濃度よりも大きくてよい。第3濃度ピーク203のドーピング濃度は、第4濃度ピーク204のドーピング濃度よりも大きくてよい。
【0142】
本例の副ピーク群210のドーピング濃度の谷は、第1ドーパントのドーパント原子密度220と実質的に等しくてよい。実質的に等しいとは、ドーピング濃度がドーパント原子密度の90%以上100%以下の範囲にあることであってよい。副ピーク群210のドーピング濃度のピークの大きさも、ドーパント原子密度220のピークと略等しくてよい。即ち、第2濃度ピーク202、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204は、それぞれドーパント原子密度220のピークと実質的に等しい大きさのドーピング濃度を有してよい。但し、副ピーク群210のドーピング濃度は、活性化の条件等に応じて、ドーパント原子密度220と異なっていてもよい。
【0143】
コレクタ領域22は、裏面側領域60の一例である。コレクタ領域22のドーピング濃度の濃度ピークの深さ位置Dcは、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10の裏面23から0μmより大きく、0.5μm未満であってよい。コレクタ領域22の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+15cm-3以上、1.0E+18cm-3以下であってよい。なお、本例では、裏面側領域60がコレクタ領域22である場合について説明しているものの、裏面側領域60がカソード領域82であってもよい。
【0144】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の深さ方向において、副ピーク群210よりも裏面23側に第1水素ピーク101を有することにより、水素が格子欠陥におけるダングリングボンドを終端する等して、半導体基板10の格子欠陥により低下した移動度またはライフタイムを回復することができる。これにより、半導体基板10の移動度を改善し、ライフタイムの低下を抑制することで、半導体装置100の電気特性を向上することができる。
【0145】
ここで、水素以外の第1ドーパントは、活性化の際に半導体基板10の酸素濃度または炭素濃度の影響を受けにくい。本例の半導体装置100は、副ピーク群210を第1ドーパントのイオン注入により形成することで、半導体基板10における酸素濃度または炭素濃度の影響が少ないバッファ領域20を提供することができる。本例の半導体装置100は、FZ法(フローティングゾーン)で形成した半導体基板10よりも酸素濃度または炭素濃度の高いCZ法(チョクラルスキー法)またはMCZ法(磁場印加チョクラルスキー法)で形成した半導体基板10を用いた場合であっても、酸素濃度または炭素濃度の影響を抑制することができる。
【0146】
なお、半導体基板10には、第1ドーパントとしてイオン注入されたリンとは別に、リンまたはアンチモンが残留していてもよい。半導体基板10には、ボロンがリンおよびアンチモンよりも低いドーピング濃度でドープされていてもよい。
【0147】
図3Bは、バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。本例では、副ピーク群210の谷のドーピング濃度が
図3Aの実施例と相違する。本例では、
図3Aの実施例と相違する点について特に説明する。なお、本例では、裏面側領域60がコレクタ領域22である場合について説明しているものの、裏面側領域60がカソード領域82であってもよい。
【0148】
本例の副ピーク群210のドーピング濃度の谷は、第1ドーパントのドーパント原子密度220よりも高い。副ピーク群210のドーピング濃度のピークの大きさは、ドーパント原子密度220のピークと略等しくてよい。即ち、第2濃度ピーク202、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204は、それぞれドーパント原子密度220のピークと略等しい大きさのドーピング濃度を有してよい。
【0149】
本例の半導体装置100は、第1水素ピーク101を備えることで半導体基板10の格子欠陥により低下した移動度またはライフタイムを回復している。また、半導体装置100は、半導体基板10に第1水素ピーク101を形成することに加えて、半導体基板10に酸素または炭素が存在することにより、半導体基板10のドーピング濃度が増加してよい。例えば、半導体中に存在する空孔(V)または格子間原子(本例では格子間シリコン)、酸素(O)、炭素(C)および水素(H)の少なくとも2種類以上の要素が結合した複合欠陥の形成により水素ドナーが形成されて、ドーピング濃度の谷部における値が、第1ドーパントのドーピング濃度の谷部における値に加算されてよい。
【0150】
図3Cは、バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。本例では、第1濃度ピーク201と略同一の位置にドーパント原子密度220のピークが形成されている点で
図3Bの実施例と相違する。なお、本例の半導体装置100は、裏面側領域60としてカソード領域82を備えるが、コレクタ領域22を備えてもよい。本例では、
図3Bの実施例と相違する点について特に説明する。
【0151】
第1濃度ピーク201のドーパントは、第1水素ピーク101を形成するためのイオン注入された水素および第1ドーパントである。即ち、第1濃度ピーク201は、イオン注入された水素がドナー化した水素ドナーのドーピング濃度と、イオン注入された第1ドーパントがドナー化したドナーのドーピング濃度の足し合わせのピークであってよい。本例の第1濃度ピーク201は、半導体基板10の深さ方向において、第1水素ピーク101およびドーパント原子密度220のピークと略等しい位置に設けられる。本例のドーパント原子密度220は、濃度ピーク群200の4つのドーピング濃度のピークに対応した深さ位置に、4つのピークを有する。
【0152】
カソード領域82は、裏面側領域60の一例である。カソード領域82のドーピング濃度の濃度ピークの深さ位置Dkは、半導体基板10の深さ方向において、半導体基板10の裏面23から0μmより大きく、1.0μm未満であってよい。カソード領域82の濃度ピークのドーピング濃度は、1.0E+18cm-3以上、1.0E+20cm-3以下であってよい。なお、本例では、裏面側領域60がカソード領域82である場合について説明しているものの、裏面側領域60がコレクタ領域22であってもよい。
【0153】
図3Dは、バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。本例では、第1水素ピーク101の深さ位置が
図3Bの実施例と相違する。本例では、
図3Bの実施例と相違する点について特に説明する。なお、本例の半導体装置100は、裏面側領域60としてカソード領域82を備えるが、コレクタ領域22を備えてもよい。
【0154】
第1濃度ピーク201のドーパントは、第1ドーパントである。即ち、第1濃度ピーク201と対応する深さ位置に、ドーパント原子密度220のピークが形成されている。本例のドーパント原子密度220は、濃度ピーク群200の4つのドーピング濃度のピークに対応した深さ位置に、4つのピークを有する。
【0155】
一方、第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、第1濃度ピーク201と離間して設けられてよい。第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、裏面側領域60の濃度ピークよりも半導体基板10の裏面23側に設けられてよい。即ち、第1濃度ピーク201の深さ位置D1は、第1水素ピーク101の深さ位置Ph1よりも大きくてよい。また、第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、第1濃度ピーク201の半値幅よりも外側となるように第1濃度ピーク201と離れて配置されてよい。
【0156】
図3Eは、バッファ領域20におけるドーピング濃度の濃度分布の変形例を示す。本例では、半導体基板10が第1水素ピーク101および第2水素ピーク102を有する点で
図3Bの実施例と相違する。本例では、
図3Bの実施例と相違する点について特に説明する。なお、本例では、裏面側領域60がカソード領域82である場合について説明しているものの、裏面側領域60がコレクタ領域22であってもよい。
【0157】
第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、第1水素ピーク101よりも半導体基板10のおもて面21側に設けられる。第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、副ピーク群210の1または複数の濃度ピークのうち最も半導体基板10のおもて面21側の濃度ピークよりも半導体基板10のおもて面21側に設けられてよい。即ち、本例の第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、第4濃度ピーク204よりもおもて面21側に設けられる。第2水素ピーク102の深さ位置Ph2は、第4濃度ピーク204の深さ位置D4よりも大きくてよい。
【0158】
なお、第2水素ピーク102は、最もおもて面21側に位置する第1ドーパントのピーク(本例では第4濃度ピーク204)より裏面23側にあってもよい。すなわち、最もおもて面21側に位置する第1ドーパントのピークが、第2水素ピーク102よりもおもて面21側に位置してもよい。
【0159】
第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、副ピーク群210の1または複数の濃度ピークのうち最も半導体基板10のおもて面21側の濃度ピークとドリフト領域18との間に設けられてよい。即ち、本例の第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、第4濃度ピーク204とドリフト領域18との間に設けられる。第2水素ピーク102を設けることで、レーザアニールの届きにくい、裏面23からより離れた領域の格子欠陥を結晶状態に回復しやすくなる。
【0160】
第2水素ピーク102の原子密度は、第1水素ピーク101の原子密度よりも小さくてよい。第2水素ピーク102の原子密度は、1.0E+14cm-3以上、1.0E+19cm-3以下であってよく、1.0E+15cm-3以上、1.0E+18cm-3以下であってよい。第2水素ピーク102の深さ位置Ph2は、5.0μm以上であってよく、8.0μm以上であってよく、10.0μm以上であってよい。第2水素ピーク102の深さ位置Ph2は、20.0μm以下であってよく、15.0μm以下であってよく、10.0μm以下であってよい。なお、ドーピング濃度の濃度分布は、点線で示すように、第2水素ピーク102に対応するドーピング濃度の追加ピーク205を有してもよい。追加ピーク205は、第4濃度ピーク204よりも低くてよい。追加ピーク205は、省略されてもよい。
【0161】
図4Aは、半導体基板10におけるドーピング濃度分布の一例を示す。本図においては第1水素ピーク101の原子密度の分布を合わせて示している。また、本図では、ドリフト領域18の上端からの積分濃度を合わせて示している。
【0162】
本明細書では、ドリフト領域18の上端から半導体基板10の特定の位置まで、半導体基板10の深さ方向に沿ってドーピング濃度を積分した値を、積分濃度と称する。コレクタ電極24とエミッタ電極52との間に順バイアス電圧を印加すると、ベース領域14の下面からドリフト領域18にわたって、深さ方向に空乏層が広がる。印加電圧を増加して、空乏層における電界強度の最大値が臨界電界強度に達すると、アバランシェ降伏が発生する。アバランシェ降伏が発生するときの空乏層の裏面23側の端部を特定位置とする場合に、ドリフト領域18の上端から特定位置までドーピング濃度を積分した積分濃度を、臨界積分濃度Ncと称する。
【0163】
なお、半導体装置100において、コレクタ電極24とエミッタ電極52との間に順バイアス電圧が印加されるとは、ゲートがオフの状態において、コレクタ電極24の電位がエミッタ電極52の電位よりも高いことを指す。半導体装置100にアバランシェ降伏が発生すると、コレクタ電極24とエミッタ電極52間にアバランシェ電流が流れ、コレクタ電極24とエミッタ電極52間の電圧VCEの増加が止まる。この場合、空乏層は、積分濃度が臨界積分濃度Ncに達する位置PNcよりも裏面23側には広がらなくなる。
【0164】
半導体基板10の深さ方向において、ドリフト領域18の上端から半導体基板10の裏面23側に向けてドーピング濃度を積分した積分濃度が、バッファ領域20において臨界積分濃度に達してよい。本例では、半導体基板10の深さ方向において、ドリフト領域18の上端から第2濃度ピーク202までの積分濃度が、臨界積分濃度Nc以上であってよい。臨界積分濃度Ncに達する位置PNcは、第2濃度ピーク202の深さ位置D2に一致してよい。即ち、ベース領域14の下面側から広がる空乏層は、第2濃度ピーク202によって止められてよい。但し、ベース領域14の下面側から広がる空乏層は、第1濃度ピーク201、第3濃度ピーク203または第4濃度ピーク204等の他の濃度ピークによって止められてもよい。
【0165】
第1水素ピーク101は、半導体基板10の深さ方向において、積分濃度が臨界積分濃度Ncに達する深さ位置よりも、半導体基板10の裏面23側に設けられてよい。即ち、第1水素ピーク101は、空乏層を止めるバッファ領域20の濃度ピークよりも裏面23側に設けられてよい。本例の第1水素ピーク101は、第2濃度ピーク202よりも裏面23側に設けられる。
【0166】
臨界積分濃度Ncに達する位置PNcとバッファ領域20のピーク位置(本例では第2濃度ピーク202の深さ位置D2)は一致しなくてもよい。臨界積分濃度Ncに達する位置PNcは、第1濃度ピーク201と第2濃度ピーク202との間に位置してよく、第2濃度ピーク202と第3濃度ピーク203との間に位置してよく、第3濃度ピーク203と第4濃度ピーク204との間に位置してよい。
【0167】
図4Bは、変形例である半導体基板10におけるドーピング濃度分布の一例を示す。本例の半導体基板10は、第2水素ピーク102を有する点で、
図4Aの実施例と相違する。即ち、本例の半導体装置100は、
図3Eの実施例に相当する。
【0168】
第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、第1水素ピーク101よりもおもて面21側に設けられる。半導体基板10の深さ方向において、第1水素ピーク101と第2水素ピーク102との間には、第1ドーパントのピークが1つ以上設けられてよい。本例の半導体装置100は、半導体基板10の深さ方向において、第1水素ピーク101と第2水素ピーク102との間に、第2濃度ピーク202、第3濃度ピーク203および第4濃度ピーク204が設けられる。
【0169】
第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、積分濃度が臨界積分濃度Ncに達する深さ位置よりも、半導体基板10のおもて面21側に設けられてよい。即ち、第2水素ピーク102は、空乏層を止めるバッファ領域20の濃度ピークよりもおもて面21側に設けられてよい。本例の第2水素ピーク102の原子密度は、第1水素ピーク101の原子密度よりも低い。但し、第2水素ピーク102の原子密度は、第1水素ピーク101の原子密度と同一であってよく、第1水素ピーク101の原子密度よりも大きくてよい。
【0170】
第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、最もおもて面21側に位置する第1ドーパントのピークよりもおもて面21側に設けられてよい。本例の第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、第4濃度ピーク204よりもおもて面21側に設けられる。但し、第2水素ピーク102は、半導体基板10の深さ方向において、最もおもて面21側に位置する第1ドーパントのピークよりも裏面23側に設けられてよい。言い換えると、半導体基板10の深さ方向において、最もおもて面21側に位置する第1ドーパントのピークは、第2水素ピーク102よりもおもて面21側に位置してよい。
【0171】
図5は、アニール温度に応じた活性化度合いの違いを説明するための図である。縦軸は、SR測定によるキャリア濃度である。ドーパント原子密度220は、アニール前のリンの原子密度を示す。実線のグラフChは、900℃の高温で30分、半導体基板10をアニールした後のリンのドーピング濃度を示す。一点鎖線のグラフClは、450℃の低温で5時間、半導体基板10をアニールした後のリンのドーピング濃度を示す。
【0172】
比較的高温でアニールしたグラフChの方が、低温でアニールしたグラフClよりも、ドーピング濃度が高くなっており、より活性化されていることが分かる。つまり、バッファ領域20のアニールに用いられるような温度(例えば、450℃)ではドーパントの活性化、あるいは移動度やライフタイムの回復が不十分な場合がある。一方、おもて面21側の構造を形成した後に、半導体基板10を高温でアニールすることは、微細化した半導体装置100の製造プロセスを考慮すると困難な場合がある。例えば、タングステンなどの高温で溶融してしまう材料をおもて面21側に用いる場合には、裏面23側の構造を形成するために高温でアニールすることが困難である。
【0173】
これに対して、半導体装置100が第1水素ピーク101を有する場合、半導体基板10を高温でアニールしなくとも、水素が移動度およびライフタイムの回復に寄与する。これにより、バッファ領域20の活性化だけでなく移動度およびライフタイムの回復を実現することができる。
【0174】
図6は、比較例であるバッファ領域520のドーピング濃度の分布の一例である。バッファ領域520は、第1濃度ピーク501、第2濃度ピーク502、第3濃度ピーク503および第4濃度ピーク504の4つの濃度ピークを有する。但し、バッファ領域520は、水素の濃度ピークを有さない。そのため、バッファ領域520のドーピング濃度の谷の領域において十分に活性化または回復がされておらず、ドーピング濃度がドーパント原子密度510よりも低下している。活性化または回復が不十分な場合、キャリアの移動度が低下して半導体装置の電気特性が悪化する場合がある。また、レーザアニールによる活性化が困難な領域では、格子欠陥が残留する場合がある。
【0175】
図7Aは、半導体装置100の製造工程の一例を示すフローチャートである。ステップS100において、半導体装置100のおもて面21側の構造を形成する。また、ステップS100においては、おもて面21側の構造を形成した後に、半導体基板10の裏面23側を研削して、半導体基板10の厚みを、要求される耐圧に応じて調整してよい。
【0176】
ステップS102において、半導体基板10の裏面23側から裏面側領域60を形成するためのドーパントをイオン注入する。裏面側領域60は、半導体基板10の裏面23の全面に形成されてよい。半導体基板10の深さ方向において、ドリフト領域18よりも半導体基板10の裏面23側に、裏面側領域60がドーピング濃度の濃度ピークを有するようにイオン注入されてよい。裏面側領域60がコレクタ領域22の場合、ドーパントはボロンであってよい。裏面側領域60がカソード領域82の場合、ドーパントはリンであってよい。裏面側領域60がコレクタ領域22およびカソード領域82の両方を含む場合、コレクタ領域22とカソード領域82のドーパントをそれぞれの領域に分けてイオン注入してよい。
【0177】
コレクタ領域22を形成するためのイオンのドーズ量は、1.0E+12/cm2以上であってよく、1.0E+15/cm2以下であってよい。カソード領域82を形成するためのイオンのドーズ量は、1.0E+14/cm2以上であってよく、1.0E+16/cm2以下であってよい。
【0178】
ステップS104において、副ピーク群210の第1ドーパントをイオン注入する。第1濃度ピーク201のドーパントが第1ドーパントを含む場合、副ピーク群210に加えて、第1濃度ピーク201に対応する深さ位置にも第1ドーパントをイオン注入してよい。本例では、裏面側領域60を形成するためのドーパントをイオン注入した後に、副ピーク群210の第1ドーパントをイオン注入しているが、副ピーク群210の第1ドーパントをイオン注入した後に裏面側領域60のドーパントをイオン注入してもよい。
【0179】
ステップS106において、半導体基板10の裏面23側から半導体基板10をレーザアニールする。即ち、副ピーク群210を形成するために、半導体基板10に第1ドーパントをイオン注入する段階(ステップS104)の後に、半導体基板10をレーザアニールする。本例では、赤外線(IR)レーザを用いて半導体基板10をレーザアニールするが、これに限定されない。IRレーザは、780nmよりも大きな波長を有するレーザであってよく、一例において1064nmの波長を有してよい。
【0180】
ステップS108において、第1水素ピーク101を形成するための水素を半導体基板10にイオン注入する。水素は、半導体基板10の裏面23側からイオン注入されてよい。ステップS108においては、第1水素ピーク101を形成するための水素に加えて、第2水素ピーク102を形成するための水素をイオン注入してもよい。
【0181】
ステップS110において、水素をイオン注入した後に、半導体基板10を熱アニールする。半導体基板10の水素をイオン注入した後に熱アニールすることによって、水素が半導体基板10の深さ方向に拡散して、バッファ領域20のドーパントを活性化させやすくなる。熱アニールとは、炉の中で半導体装置100を加熱する炉アニールであってよい。熱アニールの温度は、300℃以上、500℃以下であってよく、350℃以上、450℃以下であってよい。例えば、熱アニールの温度は、370℃である。熱アニールの時間は5時間であってよい。
【0182】
ステップS112において、裏面側電極を形成する。裏面側電極は、コレクタ電極24であってよく、カソード電極であってもよい。例えば、裏面側電極は、スパッタ法により形成される。裏面側電極は、アルミニウム層、チタン層およびニッケル層等が積層された積層電極であってよい。このような工程で、半導体装置100を製造することができる。
【0183】
ここで、IRレーザを用いたレーザアニールでは、裏面側領域60などのバッファ領域20よりも浅い領域を活性化させることが困難な場合がある。本例の半導体装置100は、第1水素ピーク101を備えており、水素が基板中の残留欠陥と相互作用して残留欠陥をドナー化することができる。これにより、グリーンレーザのレーザアニールを省略した場合であっても、熱アニールで裏面側領域60を活性化することができる。
【0184】
本例では、裏面側領域60を形成する段階(ステップS102)の後であって、副ピーク群210を形成するために、半導体基板10に第1ドーパントをイオン注入する段階(ステップS104)の前に、半導体基板10をレーザアニールする段階を備えなくてよい。このように、裏面側領域60を形成するために専用のレーザアニール(例えば、グリーンレーザによるレーザアニール)工程を用いなくとも、第1水素ピーク101形成した後の熱アニールによって、裏面側領域60を活性化することができる。
【0185】
なお、半導体基板10の裏面23側に第1ライフタイム制御領域151などの他の領域を形成する場合は、適宜これらの領域を形成するための工程が追加されてよい。
【0186】
図7Bは、半導体装置100の製造工程の変形例を示すフローチャートである。本例では、裏面側領域60を形成するために半導体基板10をレーザアニールする点で
図7Aの実施例と相違する。本例では、
図7Aの実施例と相違する点について特に説明する。
【0187】
ステップS103において、半導体基板10をレーザアニールする。即ち、本例では、裏面側領域60を形成する段階(ステップS102)の後であって、副ピーク群210を形成するために、半導体基板10に第1ドーパントをイオン注入する段階(ステップS104)の前に、半導体基板10をレーザアニールする段階を備える。本例では、グリーンレーザを用いて半導体基板10をレーザアニールするが、これに限定されない。ステップS102において、裏面側領域60を形成するためのドーパントをイオン注入した後に、半導体基板10をレーザアニールすることにより、裏面側領域60が形成される深さ位置を選択的に活性化することができる。
【0188】
裏面側領域60のアニールに用いられるグリーンレーザの種類は、特に限定されない。裏面側領域60のアニールに用いられるレーザは、固体レーザであるYAG2ωレーザ(波長532nm)であってよいが、これに限定されない。
【0189】
なお、裏面側領域60を形成するための段階は、裏面側領域60を形成するための熱アニールを含まなくてよい。即ち、裏面側領域60における欠陥の回復およびドーパントの活性化がレーザアニールのみによって実現されてよい。但し、裏面側領域60における欠陥の回復およびドーパントの活性化は、レーザアニールに加えて、熱アニールも併用して実現されてもよい。
【0190】
ここで、バッファ領域20のより深い領域(例えば、裏面23から3μm以上)を活性化させるためにはエネルギー密度を上げる必要があるものの、半導体基板10の溶融閾値を越えてしまうので、レーザアニールによってバッファ領域20を活性化することが困難な場合がある。本例の半導体装置100は、第1水素ピーク101を備えており、水素によって残留欠陥をドナー化することができる。これにより、より深い領域のバッファ領域20を活性化させることができる。
【0191】
図7Cは、半導体装置100の製造工程の変形例を示すフローチャートである。本例では、副ピーク群210を形成するためのレーザアニール工程を備えない点で
図7Bの実施例と相違する。本例では、
図7Bの実施例と相違する点について特に説明する。
【0192】
本例では、副ピーク群210を形成するために、半導体基板10に第1ドーパントをイオン注入する段階(ステップS104)の後に、第1水素ピーク101を形成するために、半導体基板10に水素をイオン注入する段階(ステップS108)を備える。ステップS110において、水素をイオン注入した後に半導体基板10を熱アニールする。即ち、半導体基板10に第1ドーパントをイオン注入する段階(ステップS104)の後であって、半導体基板10に水素をイオン注入する段階(ステップS108)の前に、半導体基板10をレーザアニールする段階を含まない。即ち、副ピーク群210を形成するためのIRレーザを用いたレーザアニールが不要である。IRレーザを用いたレーザアニールを省略する場合、第1水素ピーク101に加えて、副ピーク群210よりもおもて面21側に第2水素ピーク102を形成することで、さらに活性化しやすくしてもよい。
【0193】
このように、第1水素ピーク101または第2水素ピーク102を形成することにより、バッファ領域20を活性化しやすくなるので、レーザアニールを省略して熱アニールでバッファ領域20を活性化することができる。本例では、ステップS103において、裏面側領域60を形成するためにグリーンレーザで半導体基板10をレーザアニールしているが、このレーザアニール工程を省略してもよい。
【0194】
以上の通り、本例の製造方法では、グリーンレーザおよびIRレーザを選択的に使用して、裏面側領域60とバッファ領域20の両方を活性化することができる。レーザアニールを省略するか否かは、バッファ領域20の1または複数のピークの深さに応じて決定してよく、形成する水素ピークの条件に応じて決定してもよい。製造する半導体装置100の構成に応じて、適当な製造方法を選択して、製造工程を簡略化することができる。
【0195】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0196】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0197】
10・・・半導体基板、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・ウェル領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・おもて面、22・・・コレクタ領域、23・・・裏面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、30・・・ダミートレンチ部、31・・・延伸部分、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・接続部分、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・延伸部分、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・接続部分、44・・・ゲート導電部、50・・・ゲート金属層、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、55・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・裏面側領域、70・・・トランジスタ部、71・・・メサ部、80・・・ダイオード部、81・・・メサ部、82・・・カソード領域、85・・・延長領域、90・・・境界部、91・・・メサ部、100・・・半導体装置、101・・・第1水素ピーク、102・・・第2水素ピーク、105・・・端辺、112・・・ゲートパッド、120・・・活性部、130・・・外周ゲート配線、131・・・活性側ゲート配線、140・・・エッジ終端構造部、151・・・第1ライフタイム制御領域、152・・・第2ライフタイム制御領域、200・・・濃度ピーク群、201・・・第1濃度ピーク、202・・・第2濃度ピーク、203・・・第3濃度ピーク、204・・・第4濃度ピーク、205・・・追加ピーク、210・・・副ピーク群、220・・・ドーパント原子密度、501・・・第1濃度ピーク、502・・・第2濃度ピーク、503・・・第3濃度ピーク、504・・・第4濃度ピーク、510・・・ドーパント原子密度、520・・・バッファ領域