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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】触覚提示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20250508BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20250508BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20250508BHJP
   H02N 2/04 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
G06F3/01 560
H02K7/14 Z
H02K7/116
H02N2/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021134536
(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公開番号】P2023028681
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390001421
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】亀▲崎▼ 允啓
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 裴之
(72)【発明者】
【氏名】服部 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅野 重樹
【審査官】桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-149005(JP,A)
【文献】特開2013-008250(JP,A)
【文献】国際公開第2021/155689(WO,A1)
【文献】特開2018-010582(JP,A)
【文献】南澤 孝太 Kouta Minamizawa,「ハプティックインタラクション」特集 Special Issue on Haptic Interaction,日本バーチャルリアリティ学会論文誌 第13巻 第1号 Transactions of the Virtual Reality Society of Japan,日本,特定非営利活動法人日本バーチャルリアリティ学会 The Virtual Reality Society of Japan,第13巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
H02K 7/14
H02K 7/116
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの入力信号に応じて、使用者の皮膚に触覚を提示する触覚提示装置において、
前記皮膚に剪断力を提示する剪断力提示機構を備え、
前記剪断力提示機構は、前記皮膚が接触した状態でスライド可能な接触面と、前記接触面を動作させるモータとを備え、
前記接触面は、前記モータにより回転するベルトからなり、当該ベルトと前記皮膚との間に発生する摩擦力を前記剪断力として提示し、
前記ベルトは、前記接触面内で直交2軸方向にそれぞれ独立して回転可能に配置され、これら各方向で独立して前記剪断力を連続的に提示可能な編目状のループ構造をなすことを特徴とする触覚提示装置。
【請求項2】
使用者の指部に装着される指装着体により、外部からの入力信号に応じて前記指部に触覚を提示する触覚提示装置において、
前記指装着体は、前記指部の装着状態で前記指部の表側に配置されるカバーと、当該カバーに対向配置されるとともに、前記装着状態で指腹部が接触し、当該指腹部に剪断力を提示する剪断力提示機構とを備え、
前記剪断力提示機構は、前記指腹部が接触した状態でスライド可能な接触面と、前記接触面を動作させるモータとを備え、
前記接触面は、前記モータにより回転するベルトからなり、当該ベルトと前記指腹部との間に発生する摩擦力を前記剪断力として提示し、
前記ベルトは、前記接触面内で直交2軸方向にそれぞれ独立して回転可能に配置され、これら各方向で独立して前記剪断力を連続的に提示可能な編目状のループ構造をなすことを特徴とする触覚提示装置。
【請求項3】
前記指装着体は、前記指腹部に接触力を提示する接触力提示機構を更に備え、
前記カバー及び前記剪断力提示機構は、相互に離間接近するように相対移動可能に配置され、
前記接触力提示機構は、前記カバー及び前記剪断力提示機構を相対移動させるアクチュエータを含み、これらカバー及び剪断力提示機構で前記指部を挟み込むことで、前記接触力を提示することを特徴とする請求項記載の触覚提示装置。
【請求項4】
前記指装着体は、前記指腹部に曲面上の接触状態を提示する曲面提示機構を含み、
前記曲面提示機構は、前記カバーに対して前記剪断力提示機構を傾斜移動させるアクチュエータを含み、前記剪断力提示機構の傾斜角度を変化させることで、曲面上での前記指腹部の接触状態を模擬することを特徴とする請求項記載の触覚提示装置。
【請求項5】
前記カバー及び前記剪断力提示機構は、前記指部の表裏方向に相対移動可能に配置され、
前記指装着体には、前記相対移動をさせるアクチュエータが設けられ、
前記アクチュエータは、前記カバーに対して前記剪断力提示機構の並進移動と傾斜移動を選択的に行えるように構成され、前記並進移動により前記指腹部に接触力を提示する接触力提示機構と、前記傾斜移動により前記指腹部に曲面上の接触状態を提示する曲面提示機構として機能することを特徴とする請求項記載の触覚提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部で検出した触覚情報を使用者に提示する触覚提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時において、人間が仮想現実端末(VR端末)等を利用し、遠隔地からのオペレータの操作により、ロボットに所定の作業をさせる遠隔操作ロボットの必要性が高まっている。しかしながら、遠隔操作ロボットに正確な作業を行わせるためには、種々の問題がある。すなわち、遠隔操作ロボットからオペレータに与えられる情報が音声と映像のみの場合が多く、遠隔操作ロボットに正確に作業させるために必要不可欠となる触感に関する触覚情報が、オペレータに十分に提示できていない事が挙げられる。ここで、人間が実際に作業する場合には、物体に触れることで様々な情報を得ながら自己の動作選択を行うことにより、正確な作業を行う事が可能となる。このため、遠隔ロボット操作においても、ロボットが捉える触覚情報は、適切な動作選択を行う上で極めて重要であり、ロボットが取得した触感をオペレータに適切に伝達できる触覚提示装置が必要不可欠となる。
【0003】
このような触覚提示装置としては、従来、種々のものが提案されており、例えば、電気的刺激を利用して所望の触覚を提示するもの(特許文献1参照)や、ピン集合体の動作によって操作者の指に剪断力を付与するもの(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-10582号公報
【文献】特開2017-84337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の触覚提示装置は、使用者の指部に接触する電極を通じて使用者に電気的刺激を付与する構造であることから、利用に抵抗を感じる使用者もおり、実際の取得時と同様な物理的な力の作用により触覚提示を行える装置のニーズがある。そこで、前記特許文献2の触覚提示装置にあっては、物理的な力による触覚提示を行うものの、ロボットが把持する物体の滑り状態を対象にした触感提示のみの使用に限定される他、装置全体の小型化や軽量化が行い難い構造となっている。すなわち、特許文献2の触覚提示装置は、指の腹部の直交方向に延びるピン集合体をスライドさせる構造であるため、指の腹部よりも下方に広い部材収容空間が必要となり、上下幅広のサイズになり易い。その他、ピン集合体のスライドが一定方向の一定範囲に限定されてしまい、ロボットが検知した触覚情報を正確に提示することができない。つまり、この触覚提示装置では、並進2軸方向に剪断力を連続的して提示できないばかりか、指腹部を押圧する方向の接触力の提示もできない。ここで、並進2軸方向の連続的な剪断力と、指腹部の押圧方向の接触力の提示を行うことにより、より人間の感覚に近くなり、ロボットが接触する物体に対する人間の特定精度の向上に資する。例えば、人間が物体の形状や材質を特定する際には、物体に触れながら連続的に情報を取得する必要があるが、特許文献2のような触覚提示装置では、限定された方向のみの断片的な触感情報の提示のため、物体特定の精度が低くなってしまい、精度の高いロボットの遠隔操作には限界がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、部品点数を削減による小型化、軽量化を図りつつ、電気的刺激を利用せずに連続的な触覚情報を提示可能な触覚提示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、外部からの入力信号に応じて、使用者の皮膚に触覚を提示する触覚提示装置において、前記皮膚に剪断力を提示する剪断力提示機構を備え、前記剪断力提示機構は、前記皮膚が接触した状態でスライド可能な接触面と、前記接触面を動作させるモータとを備え、前記接触面は、前記モータにより回転するベルトからなり、当該ベルトと前記皮膚との間に発生する摩擦力を前記剪断力として提示する、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の剪断力提示機構は、平面状のベルトと、その回転機構のみで構成することができ、装置全体の小型化や軽量化を図りつつ、連続した剪断力を機械的に使用者に提示可能となる。
【0009】
また、接触力提示機構を併用することで、ロボットが検知した並進2軸方向の連続的な剪断力と、皮膚の押圧方向に作用する接触力とを同時に提示可能となり、使用者に対し、実際の物体の接触状況により即した触感提示を行うことができる。これにより、物体特定とハンドリングに重要な滑りと硬さに関する情報が適切に使用者に伝達され、精度の高いロボットの遠隔操作に資することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る触覚提示装置の動作制御に関する概略構成を表すブロック図である。
図2】(A)は、前記触覚提示装置の指装着部の試作品を使用者の指に装着した状態の写真であり、(B)は、前記指装着部の概略斜視図である。
図3】剪断力提示機構の動作部の概略平面図である。
図4】第1の変形例に係る指装着部の側面視における概念図である。
図5】第1の変形例の接触力提示機構の平面視における概念図である。
図6】(A)~(C)は、第1の変形例の接触力提示機構及び曲面提示機構の作用を説明するための概念図である。
図7】曲面提示機構による曲面提示を説明するための概念図である。。
図8】(A)~(C)は、第2の変形例の接触力提示機構及び曲面提示機構の作用を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係る触覚提示装置の動作制御に関する概略構成を表すブロック図が示されている。この図において、前記触覚提示装置10は、使用者により遠隔操作されるロボットRのセンサSにより取得した触覚情報を使用者の指部に提示する装置である。この触覚提示装置10は、使用者の指部に装着され、使用者にセンサSからの触覚情報を提示可能に動作する指装着体11と、当該触覚情報に対応するセンサSからの入力信号に基づいて、指装着体11の動作制御を行う制御部12とを備えている。
【0013】
ここで、前記触覚情報としては、指腹部における皮膚面に沿う並進2方向に作用する剪断力と、当該皮膚面を押す垂直方向に作用する接触力とがある。
【0014】
前記指装着体11は、図2に示されるように、指部Fの装着状態でその表側に配置されるカバー14と、カバー14に対向配置されるとともに、指部Fの装着状態で指腹部が接触し、当該指腹部に剪断力を提示する剪断力提示機構15と、剪断力提示機構15の四隅から図2(B)中上方に向かってそれぞれ延びるとともに、カバー14を上下に摺動可能に支持する支軸16と、カバー14と剪断力提示機構15の間で繋がって、指腹部に接触力を提示する接触力提示機構17とを備えている。
【0015】
この指装着体11は、カバー14と剪断力提示機構15との間に形成された空間に指先が挿入され、カバー14と剪断力提示機構15により使用者の指部Fの表裏両側を挟み込むように、指部Fの第1関節から先の先端部分に装着される。
【0016】
前記カバー14は、特に限定されるものではないが、指部Fが接触する内面部分が湾曲面状をなし、当該内面部分に適宜クッション材(図示省略)等が設けられたブロック体からなる。
【0017】
前記剪断力提示機構15は、図2(B)に示されるように、指腹部に直交2軸方向の剪断力を作用させるように動作する動作部21と、動作部21の構成部品を内部に収容した状態で支持する枠体状の土台22とからなる。
【0018】
前記動作部21は、図3に示されるように、同図中上下方向となるY軸方向に延びて回転可能に配置される同図中左右一対の第1の回転軸24と、これら第1の回転軸24にそれぞれ取り付けられた第1のローラ25と、各第1のローラ25に掛け回されるとともに、同図中左右方向となるX軸方向に延びる第1のベルト26と、同図中左側の第1の回転軸24に歯車Gを介して接続され、当該第1の回転軸24を回転させる第1のモータ27と、X軸方向に延びて回転可能に配置された同図中上下一対の第2の回転軸29と、これら第2の回転軸29にそれぞれ取り付けられた第2のローラ30と、各第2のローラ30に掛け回されるとともに、Y軸方向に延びる第2のベルト31と、同図中上側の第2の回転軸29に歯車Gを介して接続され、当該第2の回転軸29を回転させる第2のモータ32とを備えている。
【0019】
前記第1及び第2のローラ25、30は、第1及び第2のベルト26、31との間で所定の摩擦力を発生可能な材質によって形成されており、これにより、第1及び第2のモータ27、32の駆動による第1及び第2の回転軸24、29の回転に伴い、第1及び第2のベルト26、31が回転運動するようになっている。
【0020】
前記第1及び第2のベルト26、31は、特に限定されるものではないが、それぞれ、ポリテトラフルオロエチレン製の複数の帯材からなる。これら第1及び第2のベルト26、31は、互いに直交する方向に延び、ほぼ同一平面上で互い違いに表出するように交差する編み込み状態で、それぞれスライド可能に配置される。つまり、それぞれ複数存在する第1及び第2のベルト26、31は、上下(表裏)互い違いに交差しながら、千鳥格子状に編み込まれたように配置される。
【0021】
これら第1及び第2のベルト26、31は、第1及び第2のモータ27、32が同時若しくはいずれか一方の駆動により、図3中矢印に示されるように、X軸及びY軸の2軸方向同時に、若しくはいずれか1軸方向に回転可能となる。ここで、指装着体11が使用者の指部Fに装着された際に、その指腹部が第1及び第2のベルト26、31の表面に接触するようになっており、これら各ベルト26、31の駆動による指腹部との摩擦力により、並進2方向の連続的な剪断力を指腹部に付与することが可能になる。このような編目状のループ構造をなす第1及び第2のベルト26、31が表出する面は、使用者の指腹部の皮膚が接触した状態でスライド可能な接触面となる。
【0022】
前記第1及び第2のモータ27、32は、制御部12(図1参照)によってそれぞれ駆動制御され、第1及び第2のベルト26、31の回転速度を変化させることで、各方向の剪断力の大きさが調整される。
【0023】
前記接触力提示機構17は、図2(B)に示されるように、カバー14及び剪断力提示機構15の左右両側に繋がるアクチュエータ34と、カバー14及び剪断力提示機構15の間に配置される付勢部材35とを備えている。
【0024】
前記アクチュエータ34は、その両端側がカバー14及び剪断力提示機構15に固定される形状記憶合金(SMA)からなるワイヤが採用され、このワイヤは、カバー14及び剪断力提示機構15の左右両側の間のそれぞれ複数箇所に設けられる。当該ワイヤは、通電による発熱により収縮力が作用する公知のものが適用され、制御部12(図1参照)から電流が供給される。従って、制御部12で制御される電流の大きさによって、ワイヤの収縮力が変化する。これに伴い、支軸17を摺動しながら上昇する剪断力提示機構15におけるカバー14に対する並進移動量が変化し、カバー14及び剪断力提示機構15の相対距離が変化する。これにより、剪断力提示機構15に接触する指部Fの圧迫力(押付力)が変化し、剪断力提示機構15の接触面に指腹部が接触する接触力を可変にすることができる。つまり、初期状態として、指部Fへの接触力が作用しないカバー14及び剪断力提示機構15の相対距離から、アクチュエータ34への電流制御を行って当該相対距離を変化させることにより、指腹部に作用する接触力を調整可能となる。
【0025】
なお、アクチュエータ34としては、剪断力提示機構15に対してカバー14を離間接近させる動力を付与できる限り、種々の機器、装置、システム等を採用することができる。
【0026】
前記付勢部材19は、カバー14及び剪断力提示機構15の間に位置する各支軸16の外周に巻回されたコイルばねからなる。このコイルばねは、カバー14及び剪断力提示機構15の接近方向の並進移動に伴い圧縮し、前記ワイヤの通電停止により元の長さに復元する際に、接触力がゼロとなる前述の初期状態に戻るように付勢されている。
【0027】
前記制御部12は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータ等によって構成され、指装着体11と一体的若しくは別体として配置される。この制御部12では、ロボットR側からの入力信号に基づき、ロボットRにより検知された触覚情報を使用者の指部Fに提示できるように、剪断力提示機構15の各モータ27、32の駆動指令を行うとともに、アクチュエータ34に所定の大きさの電流を供給するようになっている。
【0028】
次に、前記実施形態の構造の接触力提示機構17に代えて新たな接触力提示機構を採用した各変形例について説明する。なお、以下の説明において、前記実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0029】
(第1の変形例)
第1の変形例における接触力提示機構37は、図4に示されるように、剪断力提示機構15の下側に配置される。この接触力提示機構37は、図5に示されるように、土台38と、土台38に内蔵されたアクチュエータ39とを備えている。
【0030】
前記アクチュエータ39は、土台の複数箇所に内蔵された複数のバルーンからなり、剪断力提示機構15に接触可能に表出しており、剪断力提示機構15の全体を下方から支持するように配置される。また、当該各バルーンは、制御部12により作動が制御されるポンプ(図示省略)からの給気により、それぞれ独立して膨張させることができる。従って、各バルーンへの給気量を一定にし、各バルーンの膨張量を相互に同一にすることで、図6(A)に示されるように、剪断力提示機構15全体がカバー14に向かって同図中上方に並進移動しながら接近させることができる。ここで、各バルーンの各膨張量に応じて、カバー14及び剪断力提示機構15の相対距離を変化させることができ、前記実施形態のように指腹部への接触力の調整が可能になる。
【0031】
加えて、各バルーンの膨張量を相違させることで、図6(B)、(C)に示されるように、カバー14に対して剪断力提示機構15を傾斜させることができる。ここで、前記各バルーンの膨張量の差を変化させることで、剪断力提示機構15の傾斜角度を変化させることができる。これにより、図7に示されるように、ロボットRが同図下の曲面Cに接触する際に、対応する同図上のように、その曲面Cの状況をも使用者に提示することが可能になる。
【0032】
(第2の変形例)
第2の変形例における接触力提示機構42は、図8に示されるように、前記実施形態に対し、支軸16の代わりに、カバー14及び剪断力提示機構15の各周縁部分の複数箇所の間に、アクチュエータ43を設けてなる。
【0033】
ここでのアクチュエータ43は、圧電素子を用いた超音波リニアアクチュエータが用いられ、その可動部が剪断力提示機構15の周縁部分に球面軸受(図示省略)を介して取り付けられる。各アクチュエータ43は、制御部12により駆動が独立して制御されるようになっており、図8(A)に示されるように、その進退量を全域同一にすることで、剪断力提示機構15全体をカバー14に向かって並進移動させながら接近させることができ、その際の進退量に応じて接触力の調整が可能になる。更に、同図(B)、(C)に示されるように、アクチュエータ43の進退量を設置領域毎に変化させることで、カバー14に対して剪断力提示機構15の傾斜移動させることもできる。ここで、第1の変形例と同様に、前記設置領域毎の進退量の差を変化させることで、カバー14に対する剪断力提示機構15の傾斜角度を変化させることができる。
【0034】
以上のように、各変形例のアクチュエータ34、43は、カバー14に対して剪断力提示機構15の並進移動と傾斜移動を選択的に行えるように構成される。従って、第1及び第2の変形例の接触力提示機構37、42は、前記並進移動により指腹部に接触力を提示する他に、前記傾斜移動により指腹部に曲面上の接触状態を提示する曲面提示機構としても機能することになる。
【0035】
なお、本発明における剪断力提示機構15は、前述の使用態様に限らず、使用者の所定部位の皮膚に剪断力を付与する限り、種々の態様での使用が可能となる。
【0036】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 触覚提示装置
11 指装着体
14 カバー
15 剪断力提示機構
17 接触力提示機構
26 第1のベルト(接触面)
27 第1のモータ
31 第2のベルト(接触面)
32 第2のモータ
34 アクチュエータ
37 接触力提示機構(曲面提示機構)
39 アクチュエータ
42 接触力提示機構(曲面提示機構)
43 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8