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特許7677674内部に空間を有する断熱性および軽量性を付与した粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】内部に空間を有する断熱性および軽量性を付与した粒子
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/101 20060101AFI20250508BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20250508BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20250508BHJP
   C01F 7/021 20220101ALI20250508BHJP
【FI】
C04B35/101
C04B35/622 040
C04B38/08 D
C01F7/021
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024074974
(22)【出願日】2024-05-02
【審査請求日】2024-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391062333
【氏名又は名称】山川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】川上 学
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ 有也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-261273(JP,A)
【文献】特開2014-084239(JP,A)
【文献】特開平11-092241(JP,A)
【文献】特開2002-104814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/101
C04B 35/622
C04B 38/08
C01F 7/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する粒子であって、
前記粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、
前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含前記粒子のうち目開き5mmのふるいを通過し目開き1mmのふるいを通過しない粒径1-5mmの粒子をJIS R 2205に規定される煮沸法に従って測定して得られる見かけ気孔率が14%~60%である、略球形の粒子。
【請求項2】
前記粒子の熱伝導率は、0.23W/m・K以下である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.5重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
1500℃以上の耐火度を有する、請求項1に記載の粒子。
【請求項5】
前記気孔率が、14%~39%である、請求項1に記載の粒子。
【請求項6】
請求項1の粒子を骨材として含む断熱材又は耐火物。
【請求項7】
前記粒子の粒径は、0.05~10mmである、請求項1に記載の粒子。
【請求項8】
窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料を溶融させる工程と、溶融物を風砕する工程とを含む、内部に空間を有する略球形の粒子の製造方法であって、前記粒子のうち目開き5mmのふるいを通過し目開き1mmのふるいを通過しない粒径1-5mmの粒子をJIS R 2205に規定される煮沸法に従って測定して得られる見かけ気孔率が14%~60%である、粒子の製造方法
【請求項9】
前記窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料はアルミドロスを含む原料である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記内部に空間を有する粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む粒子である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
さらに焼成工程を含む、請求項8~10に記載のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する略球形の粒子であって、前記粒子のうち目開き5mmのふるいを通過し目開き1mmのふるいを通過しない粒径1-5mmの粒子をJIS R 2205に規定される煮沸法に従って測定して得られる見かけ気孔率が14%~60%である、粒子の製造におけるアルミドロスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に空間を有する粒子に関する。より具体的には、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む粒子である。さらに具体的には、内部に空間を有する断熱性および軽量性を付与した粒子である。
【背景技術】
【0002】
一般に中空粒子は、熱伝導率が低いことがわかっている。また、この中空粒子の材料として酸化アルミニウムを使用している例が確認されている(例えば、大平洋ランダム社製の中空球電融アルミナBL)。
また、アルミの精錬の際に発生するアルミドロスは、国内で年間40万t発生している。このアルミドロスに水が触れるとアンモニアガスや水素ガスが発生するため、有効利用や保管が難しい。このため、アルミドロスのほとんどは産業廃棄物として処理されることが多い。アルミドロスの活用の例としてアルミドロスを用いた酸窒化アルミニウム質耐火物の製造方法が知られている(特開昭61-261273号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-261273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸化アルミニウムを含む中空粒子は、さほど熱伝導率が低くないため、第1の課題として、さらに熱導電率が低い粒子が必要であった。
また、上記特許文献1は、酸窒化アルミニウム質インゴットを作成しているのみであり、インゴットの内部に空間を有するようなものではない。このため、第2の課題として、耐火物に軽量化や断熱性の付与を目的とする場合、内部に空間を有する酸窒化アルミニウムを含む軽量な粒子が必要であった。
よって、本開示は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む内部に空間を有する粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、内部に空間を有する粒子であって、前記粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む、粒子を提供する。
【0006】
本開示はまた、上記の粒子を骨材として含む断熱材又は耐火物を提供する。
【0007】
本開示はまた、アルミドロスの溶融物又はアルミドロスと酸化アルミニウムとの混合溶融物を風砕して得られる、内部に空間を有する粒子を提供する。
【0008】
本開示はまた、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料を溶融させる工程と、溶融物を風砕する工程とを含む、内部に空間を有する粒子の製造方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する粒子の製造におけるアルミドロスの使用を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有することにより、断熱効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の粒子の光学顕微鏡写真である。
図2】実施例1の粒子のSEM写真である。
図3】実施例1の粒子(未焼成)、実施例1-1の(焼成)粒子、コランダム(主成分:酸化アルミニウム)及び酸窒化アルミニウムのX線回折パターンを示す。
図4】実施例1、5、7、比較例1及び2の粒子の熱伝導率を表したグラフである。
図5】実施例1~7及び比較例1の粒子の見かけ気孔率を表したグラフである。
図6】実施例1~5、比較例1及び2の粒子の熱膨張率を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の粒子>
本開示の内部に空間を有する粒子(本明細書において、単に「本開示の粒子」ともいう)は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。
【0013】
本開示の粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する構造をしているので、全体として熱伝導率が低く、断熱性が高い。また、内部に空間を有する構造をしていることから、粒子自体の密度が低く、軽量化を目的とする材料の原料にも使用できる。例えば軽量断熱材又は耐火物の骨材としても使用できる。
本開示の粒子は、粒子の内部に少なくとも1つの空間を含む。空間は、開気孔と閉気孔の組合わせでも閉気孔のみでもよい。本開示において、開気孔は、本開示の粒子の内部空間が粒子表面の開口部を介して外部と接続していることをいい、閉気孔は、本開示の粒子の内部空間が閉空間であり、外部と接続していないことをいう。本開示の粒子は、内部空間として少なくとも1つの閉気孔を有することが好ましい。
本開示の粒子の表面は、粒子全体としての形状が、略球形である限り、平滑であっても凹凸を有していてもよい。
【0014】
酸窒化アルミニウムは、AlONという化学式で表される化合物であり、酸化アルミニウム(Al2O3)と窒化アルミニウム(AlN)の固溶体であり得る。
本開示において、酸窒化アルミニウムは、酸化アルミニウムの粉体と窒化アルミニウムの粉体とを混合溶融させた固溶体でもよく、酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとを含む混合物を溶融させた固溶体でもよい。1つの実施形態において、酸窒化アルミニウムは、酸化アルミニウムと窒化アルミニウムとを含むアルミドロスを溶融させて固溶体として得る。この実施形態によれば、産業廃棄物として処理されることが多いアルミドロスを有効活用できるので、環境的及び経済的に有用である。アルミドロスに関しては後述する。
【0015】
酸化アルミニウムは、Al2O3という化学式で表される化合物であり、αアルミナ、βアルミナ、γアルミナという結晶系が存在し得る。本開示においては、酸化アルミニウムはαアルミナ(コランダム型)を50重量%以上、例えば60重量%以上、より具体的には70重量%以上、より具体的には80重量%以上、より具体的には90重量%以上含んでいてもよい。
【0016】
本開示の粒子の熱伝導率は、例えば0.24W/m・K以下であり得、より具体的には0.23W/m・K以下であり得、より具体的には0.23W/m・K~0.10W/m・Kであり得、より具体的には0.22W/m・K~0.12W/m・Kであり、より具体的には0.21W/m・K~0.14W/m・Kである。
熱伝導率は、その値が低いほど、物質内部で熱が伝わりにくくなるので、熱伝導率の低い粒子は、断熱性が向上する。
本開示の粒子の熱伝導率は、公知の方法で測定すればよく、当業者は適宜選択することができる。例えば、ホットディスク法(ISO/CD 2207-2)、プロープ法(JIS R 2616)、熱流計法(ASTM E1530)及びレーザーフラッシュ法(JIS R 1611)などが挙げられる。1つの実施形態においては、熱伝導率はホットディスク法で決定される。
ホットディスク法を簡単に説明すると、ステンレス製円筒に供試物を充填し、ヘラで供試物を均し、端面を平滑にし、測定用センサーを設置し、その上にステンレス製円筒を下段のステンレス製円筒と合うように置き、上段のステンレス製円筒に供試物を充填し、ヘラで均し、端面を平滑にした後、熱伝導率の測定を行う方法である。詳しくは、ISO/CD 2207-2を参照。
本開示の粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有することにより、(例えば、酸化アルミニウムの中空粒子と比べて)低い熱伝導率を示す。
本開示の粒子のかさ密度は、例えば0.50~1.50g/cmであり、より具体的には0.60~1.40g/cmであり、より具体的には0.70~1.30g/cmであり、より具体的には0.80~1.20g/cmであり、より具体的には0.85~1.15g/cmである。本開示の粒子は、かさ密度が前記範囲内であれば、軽量断熱材又は耐火物の骨材として適切に使用できる。
【0017】
本開示の粒子の酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対する酸窒化アルミニウムの割合は、粒子に期待する断熱効果を重視して決定してもよい。断熱効果を重視する場合、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対する酸窒化アルミニウムの割合は、0.1重量%~90重量%であり、好ましくは0.5重量%~90重量%であり、さらに好ましくは1.0重量%~90重量%であり、さらに好ましくは3.0重量%~90重量%であり、さらに好ましくは5.0重量%~90重量%であり、さらに好ましくは10重量%~90重量%である。
【0018】
本開示の粒子における酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対する酸窒化アルミニウムの割合は、粒子に期待する耐火効果を重視して決定してもよい。耐火効果を重視する場合、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対する酸窒化アルミニウムの割合は、0.1重量%~63重量%が好ましく、0.1重量%~45重量%がさらに好ましく、1.0~45重量%が特に好ましく、3.0~45重量%が最も好ましい。
【0019】
本開示の粒子において、酸窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムの含有率は、例えば50重量%以上であり得、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上である。
【0020】
本開示の粒子は例えば略球状であり得る。略球状であることにより、例えば、断熱材や耐火材中に骨材として本開示の粒子をより密に充填することができる結果、より高い断熱性又は耐火性を達成できる。
本開示の粒子の粒径は、特に限定されないが、断熱性骨材や耐熱性骨材の分野では、例えば0.05~10mmであり得、より具体的には0.1~7mmであり、より具体的には0.2~5mmであり、より具体的には0.5~5mmであり、より具体的には0.5~2mmである。また、本開示の粒子の粒径には、幅があり、その幅の範囲内であれば粒径がどのような分布あってもよい。
本開示の粒子の粒径は、後述する風砕により、大きさを調節することが可能である。
【0021】
本開示の粒子の耐火度は、該粒子が溶融しない温度とすることができ、例えば1500℃以上であり得、好ましくは1600℃以上であり得る。
耐火度の他の測定方法として、例えばゼーゲルコーン耐火度などが挙げられる。
ゼーゲルコーン耐火度は、SK~で表される。例えば1500℃であればSK18となる。また、1600℃であれば、SK26となる。
耐火度は溶融温度(融点)から推測可能であることが特開2013-18657号公報に記載されている。
【0022】
本開示の粒子の熱膨張率は、公知の方法で測定すればよく、例えばTMA法又はレーザー干渉法により測定することができる。1つの実施形態においては、本開示の粒子の熱膨張率はTMA法により測定される。
TMA法を簡単に説明すると、試料を容器に充填し、絶縁管でふたをして、1500℃で30分間加熱し、熱膨張による変位量を測定して熱膨張率を求める方法である。詳しくは、後述する実施例を参照。
本開示の粒子は、耐火効果を重視する場合、1500℃で測定した場合の熱膨張率が例えば-2.0%~2.0%であり、-1.5%~1.5%の範囲内であることが好ましい。残存線変化率では、-2.0%~2.0%の範囲内であることが好ましい。
【0023】
本開示の粒子の見かけ気孔率は、例えば7%~60%であり、好ましくは、20%~60%であり、さらに好ましくは、30%~60%である。
見かけ気孔率は、例えばJIS R 2205などの公知の方法で測定することができる。1つの実施形態においては、本開示の粒子の見かけ気孔率はJIS R 2205の煮沸法により測定される。
JIS R 2205の煮沸法によれば、見かけ気孔率は、簡潔には、(1)試料を恒温器中で乾燥し、恒量に達した時の質量を乾燥質量W1(g)とし、(2)乾燥させた試料を3時間以上煮沸し、室温まで冷却し、これを飽水試料とし、(3)飽水試料を針金で水中に懸垂したまま秤量し、針金の質量を引いたものを水中質量W2(g)とし、(4)水中から取り出した試料を、湿布で水滴を除去した後に秤量して飽水質量W3(g)とし、これらの値を用いて次の式:(W3-W1)/(W3-W2)×100%に従って算出する。詳しくはJIS R 2205を参照すればよい。
本開示の粒子では、見かけ気孔率が高いほど、本開示の粒子の内部の空間の体積が大きくなり、粒子中に気体をより多く含むことができるため、熱伝導率がより低くなり、好ましい。
【0024】
本開示の粒子のかさ密度は、例えば1.6g/cm3以下であり、より具体的には1.4g/cm3以下であり、より具体的には1.3g/cm3以下であり、より具体的には1.2g/cm3以下である。下限は特に限定されないが、例えば0.5 g/cm3以上で、より具体的には0.7 g/cm3以上である。
本開示の粒子のかさ密度は、例えばJIS R 1628などの公知の方法で測定することができる。1つの実施形態においては、本開示の粒子のかさ密度はJIS R 1628に従って測定されるタップかさ密度である。
JIS R 1628によれば、タップかさ密度は、簡潔には、(1)質量及び容積が既知の測定容器に、適切にサンプリングした試料をすり切りまで充填し、容器のタップ衝撃による試料の質量変化が0.3%以下になるまで充填及びすり切りを繰り返した後、測定容器を含む試料の質量を量り、該質量から測定容器の質量を減算して得られる試料の質量を、測定容器の容積で除算して算出する。詳しくは、JIS R 1628を参照すればよい。
本開示の粒子は、かさ密度が低いほど、粒子の内部の空間の体積がより大きくなり、粒子内部に気体をより多く含むことができるため、熱伝導率がより低くなり、好ましいが、低すぎると脆くなる。
【0025】
本開示の粒子は、発明の効果を損わない限り他の物質を含んでもよい。他の物質の例としてSi(ケイ素)、Mg(マグネシウム)Fe(鉄)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、K(カリウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)などやこれら元素の化合物などが挙げられる。例えば化合物の例として、酸化物、窒化物などが挙げられる。
【0026】
別の観点から本開示の粒子は、アルミドロスの溶融物又はアルミドロスと酸化アルミニウムとの混合溶融物を風砕して得られることを特徴とする。
アルミドロスと酸化アルミニウムとの溶融混合物は、例えば0重量%を超え100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超え100重量%未満の酸化アルミニウムとの溶融混合物であり得、より具体的には1重量%以上100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超えて99重量%以下の酸化アルミニウムとの溶融混合物であり得、より具体的には1重量%以上100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超え99重量%以下の酸化アルミニウムとの溶融混合物であり得、より具体的には10重量%以上100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超え90重量%以下の酸化アルミニウムとの溶融混合物であり得、より具体的には30重量%以上100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超え70重量%以下の酸化アルミニウムとの溶融混合物であり得、より具体的には50重量%以上100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超え50重量%以下の酸化アルミニウムとの溶融混合物であり得る。
本実施形態の粒子は、例えば、下記の製造方法により得ることができる。
【0027】
<断熱材と耐火物>
本開示の断熱材又は耐火物は、上記の本開示の粒子を骨材として含むことを特徴とする。
なお、本開示の粒子の構成成分及びその質量比などの詳細については、上記のとおりである。
【0028】
耐火物とは、例えば、JIS R 2001によると「1500℃以上の定形耐火物および最高使用温度が800℃以上の不定形耐火物、耐火モルタル並びに耐火断熱れんが」のことをいう。
本開示の粒子の、断熱材又は耐火物中の含有量は、断熱材や耐火物の全重量を100重量%として例えば30重量%以上であり得、より具体的には40重量%以上であり、より具体的には50重量%以上であり、より具体的には60重量%以上である。
本開示の断熱材又は耐火物は、骨材の他に、断熱材又は耐火物の種類に応じて、当該分野において公知の結合材及び/又は充填材及び/又は増粘剤及び/又は硬化剤などの他の物質を含んでもよい。他の物質の例として、珪石、溶融シリカ、焼ボーキサイト、礬土頁岩、アンダルサイト、電融ムライト、シャモット、硬質粘度、ろう石、ジルコンサンド、ハデライト、電融ジルコニア、電融マグネシア、クロム鉱、電融マグネシアクロム、合成ドロマイト、天然ドロマイト、電融スピネル、マグネシア、黒鉛、炭化珪素、窒化珪素、消石灰、仮焼アルミナ、糖蜜、粘土、水ガラス、酸化鉄、塩化カルシウム、酸化クロム、樹脂、シリコン、水、パルプ廃液、CMC、フェノール樹脂、デキストリン、無定形シリカ(例えば、マイクロシリカ、シリカフラワー、ヒュームドシリカ、ホワイトカーボンなど)、燐酸アルミ、燐酸ナトリウム、水硬性アルミナ、アルミナセメント、ホウ酸、金属ファイバーなどが挙げられる。断熱キャスタブルを含む本開示の断熱材又は耐火材は、公知の製造方法における中空アルミナなどの骨材の成分を本開示の粒子に置換することで、製造することができる。例えば、特開2013-18657号などに記載の断熱キャスタブルの製造方法を利用することができる。
【0029】
本開示の耐火物又は断熱材の見かけ気孔率は、例えばJIS R2205などの公知の方法で測定できる。1つの実施形態においては、本開示の耐火物又は断熱材の見かけ気孔率はJIS R 2205により測定される。
【0030】
本開示の耐火物又は断熱材の線熱膨張率は、例えばJIS R 2554など公知の方法で測定できる。1つの実施形態においてはJIS R 2554により測定される。
JIS R 2554によれば、線熱膨張率は、簡潔には、作成した試験片の焼成前の長さl0を測定し、試験片の焼成後の長さl1を測定して、次の式:(l1-l0)/l0×100[%]に従って算出する。詳しくはJIS R 2554を参照すればよい。
【0031】
本開示の耐火物又は断熱材の乾燥曲げ強度及び乾燥圧縮強度は、例えばJIS R 2553などの公知の方法で測定できる。1つの実施形態においては、JIS R 2553により測定される。
JIS R 2553によれば、乾燥曲げ強度及び乾燥圧縮強度は、簡潔には次の通りである:作成した試料を成形型に詰め、温度20±3℃と湿度80%以上で24時間養生し、脱型して試験片を得る。試験片を養生後直ちに温度110℃±5℃で24時間以上乾燥させ、その後一定の条件下で焼成する。焼成した試験片の寸法(幅b及び厚さd)を測定する。試験片を成形したときの側面の中央に均一速度で加重を加え、その最大荷重Wを求め、次の式(3×W×l)/(2×b×d) (l:用いた曲げ強度試験機の支持用ロールの中心距離(100mm))に従って算出する。また、乾燥曲げ強度の測定の直後に試験片の半切について、試験片を成形したときの両側面を加圧面として加圧板を用いて均一速度で試験片の中央部に加圧して最大荷重Wを求め、次の式W/(40×b)に従って算出する。詳しくはJIS R 2553を参照すればよい。
【0032】
本開示の耐火物又は断熱材の乾燥かさ密度は、例えばJIS R 2655などの公知の方法で測定できる。1つの実施形態においては、JIS R 2655により測定される。
JIS R 2655によれば、耐火物又は断熱材の乾燥かさ密度は、簡潔には、作成した試験片を、乾燥冷却した後、直ちに質量Wを0.5gまで量り、試験片の寸法(長さL、幅M及び厚さT)を各辺のほぼ中点を結んだ線の長さとして測定し、次の式:W/(L×M×T)に従って算出する。詳しくはJIS R 2655を参照すればよい。
【0033】
<内部に空間を有する粒子の製造方法>
1つの観点から、本開示は、内部に空間を有する粒子の製造方法に関する。
本開示の製造方法は、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料を溶融させる工程と、溶融物を風砕する工程とを含むことを特徴とする。
なお、本開示の粒子の形状、構成成分及びその質量比などの詳細については、上記のとおりである。
【0034】
窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料は、全体として、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含んでいればよく、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを共に含む原料であってもよいし、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを別々に含む原料であってもよいし、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムを共に含む原料と窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムの少なくとも一方を含む原料との組合せであってもよい。窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを共に含む原料は、例えばアルミドロスを含む原料であり得、より具体的にはアルミドロスであり得る。アルミドロスを含む原料は、本発明の効果を損なわない限り他の物質を含んでもよい。
1つの実施形態において、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料は、アルミドロスを含む原料である。別の1つの実施形態において、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料は、アルミドロスである。別の1つの実施形態において、窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料は、アルミドロスと酸化アルミニウムとからなる。
【0035】
窒化アルミニウムは、AlNで表される化合物であり、酸化アルミニウムとともに溶融させることにより酸窒化アルミニウムを生成し得る。
【0036】
酸化アルミニウムは、Al2O3で表される化合物であり、アルミニウムを酸化することで生成し得る。
【0037】
本開示において、アルミドロスを含む原料は、アルミドロスと酸化アルミニウムとからなる場合、1重量%以上で100重量%未満のアルミドロスと0重量%を超えて99重量%以下の酸化アルミニウムとを含み、好ましくは、5重量%以上で95重量%未満のアルミドロスと5重量%を超えて95重量%以下の酸化アルミニウムとを含み、特に好ましくは、10重量%以上で90重量%未満のアルミドロスと10重量%を超えて90重量%以下の酸化アルミニウムとを含み、最も好ましくは、30重量%以上で70重量%未満のアルミドロスと30重量%を超えて70重量%以下の酸化アルミニウムとを含む。
【0038】
アルミドロスは、アルミニウム材料の製造工程中の熔解過程で発生する副生成物であり、金属アルミニウム、アルミ酸化物、アルミ窒化物、合金添加元素の酸化物、ドロス処理中に添加されるハロゲン化物等を主成分とする物質である。本発明に使用するアルミドロスは、窒化アルミニウムを含む混合物である。
アルミドロスの種類としては、生ドロス、一次搾りドロス及び二次搾りドロスなどがある。本発明においては、窒化アルミニウムを含むものであればいずれも使用できる。
アルミニウム材料の製造工程中に発生するアルミドロスは、アルミニウム材料の製造方法の違いにより成分組成が変化するため、本開示の粒子の成分組成を均質化するには、同一の製造方法により発生するアルミドロスを使用するか、又は異なる製造方法で発生するアルミドロスを混合することにより組成が調整されたアルミドロス混合物を使用することができる。
本発明に使用するアルミドロス中のアルミニウム及び/又はアルミニウム化合物(Al2O3及びAlN)の合計の割合は、60%重量以上であり、好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは、80重量%以上である。
アルミドロスに含まれ得る元素は、Al(アルミニウム)以外に、Si(ケイ素)、Mg(マグネシウム)Fe(鉄)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、K(カリウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)などが挙げられる。また、これらの元素は、元素単体で存在してもよいし、化合物として存在してもよい。
【0039】
アルミドロスに含まれるアルミニウムとアルミニウム化合物(Al2O3及びAlN)の比は、例えば、金属Al 5~80重量%、Al2O3 15~55重量%、AlN 3~25重量%である。この元素比は例示であるため、これに限定されるものではない。
原料中のアルミドロスの使用割合は、0重量%~100重量%であり得、例えば1重量%~100重量%であり、好ましくは10重量%~100重量%であり、より好ましくは30重量%~100重量%であり、より好ましくは50重量%~100重量%である。
原料としてアルミドロスの割合を増やして使用する場合、産業廃棄物として処理されることが多いアルミドロスを有効活用できるので、環境的及び経済的に有用である。
【0040】
本開示の粒子の製造において原料としてのアルミドロスの使用量が、70重量%以下であれば、本開示の粒子は耐火物の骨材として使用できる。
後述する焼成過程を経た粒子であれば、原料としてのアルミドロスの使用量が、70重量%以上でも、本開示の粒子は耐火物の骨材として使用できる。
【0041】
本開示において、酸化アルミニウムは、アルミニウムを酸化した酸化アルミニウムを用いてもよく、アルミドロスに含まれる酸化アルミニウムを用いてもよく、酸窒化アルミニウムを酸化することで得られる酸化アルミニウムを用いてもよい。アルミドロスを用いて酸化アルミニウムを得る場合は、産業廃棄物として処理されることが多いアルミドロスを有効活用できるので、環境的及び経済的に有用である。
【0042】
酸化アルミニウムは、必要な量の酸化アルミニウムを含んでいればよく、組成物の形態で、酸化アルミニウムを含む原料として用いられてもよい。酸化アルミニウムの含有割合としては、例えば50重量%以上であり、より具体的には60重量%以上であり、より具体的には、70重量%以上である。例えばエスパール (登録商標、山川産業株式会社)などの酸化アルミニウム(アルミナ)系骨材を、酸化アルミニウムを含む原料として用いることができる。
酸化アルミニウムを原料として使用する場合の使用割合は、0重量%を超え100重量%未満であり得、例えば0重量%を超えて99重量%以下であり、より具体的には0重量%を超えて90重量%以下であり、より具体的には0重量%を超えて70重量%以下であり、より具体的には、0重量%を超えて50重量%以下である。
本開示の方法の用いる原料には、発明の効果を損なわない限り、他の物質、例えば、SiO2、Fe2O3、CaO、MgO、K2O、TiO2などを含んでいてもよい。
【0043】
本開示の方法で用いる溶融方法は、特に限定されず、火炎溶融法、電気溶融法、レーザー照射による溶融法、プラズマによる溶融法などが挙げられる。1つの実施形態においては、電気溶融法である。
溶融工程における反応炉は、特に限定されず、アーク炉、るつぼ炉、誘導電気炉(高周波炉、低周波炉等)、抵抗式電気炉、反射炉、回転炉、真空溶解炉、キュポラ炉などが挙げられる。1つの実施形態においては、アーク炉である。
溶融工程における溶融温度は、原料中の酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムが溶融する温度まで上げればよく、例えば1800℃以上であり、より具体的には1900℃以上であり、好ましくは、2000℃以上である。
溶融工程における溶融時間は、原料中の酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムが十分に溶融する時間であればよく、例えば5分以上であり、好ましくは、10分以上であり、さらに好ましくは、20分以上である。
本開示の溶融工程において、原料が2種類以上ある場合、事前に原料を混合して投入してもよいし、原料ごとに投入してもよい。また、原料ごとに投入する場合、先に投入した原料が溶融されていても溶融されていなくてもよい。
本開示の溶融工程おける気体の雰囲気下は、特に限定されないが、窒素雰囲気下、酸素雰囲気下、酸素を含む気体の雰囲気下(例えば空気下)などが挙げられる。本発明においては、酸素を含む気体の雰囲気下での溶融が好ましく、空気下での溶融が特に好ましい。
【0044】
本開示において、風砕とは、溶融物を落下させ、落下中の溶融物に、気流を吹き付けて、溶融物を微細化と同時に急冷して微小粒子として造粒することである。 気流の吹き付け角度は、特に限定されないが、例えば斜め上方(具体的には45°上方)~斜め下方(具体的には45°下方)の範囲内であり得、より具体的には45°上方~15°下方の範囲内、より具体的には30°上方~水平(落下軸に対して90°)の範囲内であり得る。
吹き付け方法は、特に限定されず、気流を一定の流速で吹き付けられればよく、圧縮空気を吹き付けるのが好ましい。気流の吹きつけ速度は、例えば20m/s~180m/sであり、より具体的には40m/s~160m/sであり、より具体的には60m/s~140m/sであり、より具体的には80m/s~120m/sである。気流の温度は、特に限定されないが、例えば0℃~50℃であり、具体的には、10℃~40℃である。
溶融物を風砕した後、粒子を更に急冷してもよいし、急冷しなくてもよい。急冷する方法は、例えば水に浸漬させる方法である。
【0045】
本開示の製造方法は、本開示の粒子の製造に使用することができる。
【0046】
本開示の製造方法は、風砕により得られた粒子を焼成する焼成工程をさらに含んでもよい。
焼成の方法は、特に限定されないが、大気焼成法などが挙げられる。本発明おいては、大気焼成法が好ましい。
焼成温度は、1200℃以上であり、好ましくは1300℃以上であり、さらに好ましくは、1400℃以上であり、特に好ましくは、1500℃以上である。
本発明の焼成時間は、焼成温度に応じて決定すればよい。本発明においては、焼成温度が1200℃以上であれば例えば4時間以上、好ましくは8時間以上であり得、1300℃以上であれば例えば1時間以上、好ましくは2時間以上であり得、焼成温度が1400℃以上であれば例えば15分以上、好ましくは30分以上であり得る。
【0047】
<粒子の製造におけるアルミドロスの使用>
更に別の観点から、本開示は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する粒子の製造におけるアルミドロスの使用に関する。
酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する粒子の構成成分などの詳細については、上記<本開示の粒子>において説明したとおりである。アルミドロスについては、上記<本開示の粒子>において説明したとおりである。
本開示のアルミドロスの使用は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する粒子の製造における使用であれば具体的な使用方法及び使用態様は問わないが、好ましくは上記した本開示の粒子の製造における使用であり、より好ましくは上記した本開示の製造方法における使用である。
【0048】
以下に本願発明の具体的な態様を示す。
[項1]
内部に空間を有する粒子であって、
前記粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、
前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む粒子。
[項2]
前記粒子の熱伝導率は、0.23W/m・K以下である、項1に記載の粒子。
[項3]
前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.5重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む、項1又は項2に記載の粒子。
[項4]
前記粒子は略球形を有する項1~項3のいずれか1項に記載の粒子。
[項5]
1500℃以上の耐火度を有する、項1~項4のいずれか1項に記載の粒子。
[項6]
前記粒子の見かけ気孔率は、7%~60%である、項1~項5のいずれか1項に記載の粒子。
[項7]
項1~項6のいずれか1項に記載の粒子を骨材として含む断熱材又は耐火物。
[項8]
アルミドロスの溶融物又はアルミドロスと酸化アルミニウムとの溶融混合物を風砕造粒して得られる、内部に空間を有する粒子。
[項9]
窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料を溶融させる工程と、溶融物を風砕する工程とを含む、内部に空間を有する粒子の製造方法。
[項10]
前記窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む原料はアルミドロスを含む原料である、項9に記載の製造方法。
[項11]
前記内部に空間を有する粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む粒子である、項9又は項10に記載の製造方法。
[項12]
さらに焼成工程を含む、項9~11のいずれか1項に記載の製造方法。
[項13]
酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、内部に空間を有する粒子の製造におけるアルミドロスの使用。
【実施例
【0049】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
アルミドロスの測定
以下の実施例で用いた原料のアルミドロスを、蛍光X線分析装置(PrimusII 株式会社リガク)を用いたFP法により分析した。その結果を表1に示した。
【表1】
【0051】
この蛍光X線分析は、F(フッ素)より原子番号が大きい元素が測定できるため、原料のアルミドロスは、上記の元素が表1の割合で含まれていることがわかった。ただし、アルミドロスの成分は、表1に限定されるものではない。
表中のAlには、少なくともアルミニウム、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムが含まれている。
【0052】
内部に空間を有する粒子の作製
〔実施例1〕
アルミドロス(成分は表1を参照)5kgをアーク溶解炉(研究室用アーク炉 ALF-3型、(株)アンド―工業所)に投入し、アルミドロスが溶融するまで加熱し、アルミドロスの溶融後、その温度(約2000℃(チノー製デジタル放射温度計 IR-AHS2で測定))で20分間加熱した。その後、アーク溶解炉を傾けてアルミドロス溶融物を流出させ、その溶出物の落下中に圧縮空気供給装置(エンジンコンプレッサ PDS265S、北越工業(株))を用いて圧縮空気を溶出物に対して垂直に空気量7.5m/min及び吹出圧力0.4Mpa(速度80~120m/s)で吹き付けることにより風砕させ、粒子を得た。
【0053】
光学顕微鏡による外観の観察
実施例1で得られた粒子の外観に関して光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープ VHX-6000、(株)キーエンス)を用いて外観観察を行った。この結果を図1に示す。図1から理解できるように、得られた粒子は丸みを帯びている粒子であることがわかった。黒色のスケールバーは0.5mmである。丸みを帯びた粒子を得られたのは、圧縮空気により微細化された溶融物が表面張力により凝集した結果であると考えられる。
【0054】
SEMによる外観の観察
実施例1で得られた粒子の外観に関してSEM(走査電子顕微鏡 JSM-IT700HR、日本電子(株))を用いて観察を行った。この結果を図2に示す。白色のスケールバーは200μmである。粒子の表面には開口部があり、その開口部は、粒子の大きさに比べ非常に小さく、粒子内部から生じたように見えることから、粒子の内部に空間があることが示唆された。粒子の内部の空間は、原料に含まれる酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムから酸窒化アルミニウムが生成される際に窒素ガスが発生することが原因で生ずると考えられる。
【0055】
〔実施例1-1〕
実施例1で得られた粒子1kgを、ニッカトー製アルミナ焼成用容器に入れ、高温雰囲気炉(PART-3、株式会社セイシン企業)を用いて、1550℃で30分間焼成することにより、焼成した粒子を得た。焼成の前後において、粒子の形状に変化はなかった。
【0056】
エックス線解析法(XRD)による粒子の同定
実施例1及び実施例1-1で得られた粒子をXRF用粉砕器(高速振動試料粉砕機 TI-100、(株)CMT科学)にて粉砕し、X線回折装置(デスクトップX線開設装置MiniFlexII、(株)リガク)を用いて、CuKα線(1.5418Å)を使用しXRD解析を行った。この結果を図3に、それぞれ符号「3」(実施例1)及び「4」(実施例1-1)として示した。また、コランダム(主成分:酸化アルミニウム)と酸窒化アルミニウムのX線回折パターンを図3に、それぞれ符号「5」(コランダム)及び「6」(酸窒化アルミニウム)として示した。さらに、表2に実施例1及び実施例1-1の粒子における酸化アルミニウムと酸窒化アルミニウムの比率を両成分の合計重量に対して示した。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1と実施例1-1の粒子のX線回折パターンには、酸化アルミニウムと酸窒化アルミニウムのそれぞれのピークが検出された。この結果から、実施例1と実施例1-1の粒子は、酸化アルミニウムと酸窒化アルミニウムを含む混合物であることがわかった。
実施例1の粒子は、酸窒化アルミニウムの割合が高いことがわかった。これは、原料中に含まれる窒化アルミニウムが酸化アルミニウムと固溶体(酸窒化アルミニウム)を形成した結果であると考えられる。
実施例1-1の粒子は、酸化アルミニウムの割合が高いことがわかった。これは、焼成により、焼成前の粒子に含まれていた酸窒化アルミニウム中の窒化アルミニウムの窒素が脱離し、酸素と残ったアルミニウムが反応して酸化アルミニウムを生成した結果であると考えられる。
【0059】
内部に空間を有する粒子の作製
〔実施例2〕
アルミドロスの代わりに、アルミドロスと酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L(成分比は以下の表3に後述)、山川産業株式会社)とを重量比70:30の割合で投入すること以外は、実施例1と同様にして内部に空間を有する粒子を得た。
【0060】
【表3】
【0061】
〔実施例3〕
アルミドロスの代わりに、アルミドロスと酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L、山川産業株式会社)とを重量比50:50の割合で投入すること以外は、実施例1と同様にして内部に空間を有する粒子を得た。
【0062】
〔実施例4〕
アルミドロスの代わりに、アルミドロスと酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L、山川産業株式会社)とを重量比30:70の割合で投入すること以外は、実施例1と同様にして内部に空間を有する粒子を得た。
【0063】
〔実施例5〕
アルミドロスの代わりに、アルミドロスと酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L、山川産業株式会社)とを重量比10:90の割合で投入すること以外は、実施例1と同様にして内部に空間を有する粒子を得た。
【0064】
〔実施例6〕
アルミドロスの代わりに、アルミドロスと酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L、山川産業株式会社)とを重量比5:95の割合で投入すること以外は、実施例1と同様にして内部に空間を有する粒子を得た。
【0065】
〔実施例7〕
アルミドロスの代わりに、アルミドロスと酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L、山川産業株式会社)とを重量比1:99の割合で投入すること以外は、実施例1と同様にして内部に空間を有する粒子を得た。
【0066】
〔比較例1〕
アルミドロスの代わりに酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料(エスパール#35L、山川産業株式会社)を投入すること以外は、実施例1と同様にして粒子を得た。
【0067】
〔比較例2〕
粒子の比較例として、酸窒化アルミニウムを含まない中空球電融アルミナBL(大平洋ランダム株式会社)を用意した。
【0068】
熱伝導率の測定(ホットディスク法)
実施例1、5及び7並びに比較例1及び2の粒子を目開き600μmのふるいにかけ、通過した粒子をさらに425μmのふるいにかけてふるい上に残存した粒子を取得した(以下、「425μm単一粒度粒子」又は「供試物」と呼ぶ)。供試物をφ50×50Hのステンレス製円筒に充填し、ヘラで均して端面を平滑にした。平滑にした端面に測定用センサーを設置した。センサーの上に別の同型円筒を下段の円筒と整合するように置いた。上段の円筒に供試物を充填し、ヘラで均して端面を平滑にした後、ホットディスク法熱物性測定装置TPS-1500(京都電子工業株式会社)を用いて熱伝導率の測定を行った。その結果を表4と図4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
原料に窒化アルミニウムを含まない比較例1及び2の粒子の熱伝導率は、それぞれ0.2596 W/m・K及び0.2562 W/m・Kであり、実施例1、5及び7の粒子の熱伝導率と比べて高かった。このことから、本開示の粒子は、内部に空間を有し、かつ、酸窒化アルミニウムを含むことでその熱伝導率が低下していると考えられる。
よって、本開示の粒子は、既に断熱煉瓦用及び軽量耐火物用として販売されており、断熱耐火物として特開2013-18657号公報に使用例が記載されている比較例2の粒子(中空球電融アルミナBL)より低い熱伝導率を有する。
【0071】
見かけ気孔率の測定
実施例1~7及び比較例1の粒子を目開き5mmのふるいにかけ、通過した粒子をさらに1mmのふるいにかけてふるい上に残存した粒子を取得した(1-5mmの粒子とも呼ぶ)。1-5mmの粒子をJIS R 2205の煮沸法に従い、その乾燥質量W1(g)、水中質量W2(g)、及び飽水質量W3(g)を測定し、これらの値から見かけ気孔率((W3-W1)/(W3-W2)×100%)を算出した。その結果を表5と図5に示した。
【0072】
【表5】
【0073】
表5から、原料中のアルミドロスの割合(したがって、原料中の窒化アルミニウムの割合)が低くなると見かけ気孔率も低下する傾向が観察された(実施例1~7)。原料に窒化アルミニウムを含まない比較例1は見かけ気孔率が0である(すなわち、内部に空間を有さない)ことがわかった。このことから、本開示の粒子は、窒化アルミニウムに由来する窒素ガスに起因して粒子内部に空間を有すると考えられる。
【0074】
熱膨張率の測定
実施例1~5、比較例1及び比較例2で得られた粒子から上記のとおり425μm単一粒度粒子を取得した(以下供試物ともいう)。供試物を、外径8mm、内径5mm、長さ21mmのHB(ムライト)保護管の底に9×9×t1のSSA-S(酸化アルミニウム)板を貼り付けた容器(試料容器)に充填した。容器に、厚さ1mmの絶縁管で蓋をして、1500℃で30分間の加熱時の熱膨張率をTMA(ThermoPlus TMA8310 株式会社リガク)を用いて測定した。その結果を表6と図6に示した。
【0075】
【表6】
【0076】
実施例1の粒子の熱膨張率が2.26%と最も高い値となり、比較例1の粒子の熱膨張率が0%と最も低い値となった。原料中のアルミドロスの割合が高いほど熱膨張率が高いので、アルミドロスの溶融により生成される酸窒化アルミニウムが熱膨張率に関わっていると考えられる。
実施例4及び5の粒子の膨張率は比較例2の粒子の膨張率とほぼ同程度だった。このことから、熱伝導率及び熱膨張率の観点で、少なくとも実施例4及び5の粒子は、耐火物の骨材として利用可能である。
【0077】
〔実施例1-2〕
実施例1で得られた粒子を1200℃で8時間焼成すること以外は、実施例1-1と同様にして焼成した粒子を得た。
【0078】
〔実施例1-3〕
実施例1で得られた粒子を1300℃で120分間焼成すること以外は、実施例1-1と同様にして、焼成した粒子を得た。
〔実施例1-4〕
実施例1で得られた粒子を1400℃で30分間焼成すること以外は、実施例1-1と同様にして、焼成した粒子を得た。
【0079】
実施例1、1-2、1-3及び1-4で得られた粒子から425μm単一粒度粒子を取得した(以下供試物ともいう)。供試物を外径8mm、内径5mm、長さ21mmのHB(ムライト)保護管の底に9×9×t1のSSA-S板を貼り付けた容器(試料容器)に充填した。容器に、厚さ1mmの絶縁管で蓋をして、1500℃で30分間の加熱時の熱膨張率をTMA(ThermoPlus TMA8310 株式会社リガク)を用いて測定した。その結果を表7に示した。
【0080】
【表7】
【0081】
表から、焼成により熱膨張率が低下したことがわかった。この低下は、焼成前の粒子に含まれていた酸窒化アルミニウム中の窒化アルミニウムの窒素が、焼成により脱離し、酸素と残ったアルミニウムが反応して酸化アルミニウムを生じたからであると考えられる。
また、焼成温度が高いと、焼成時間が短時間であっても熱膨張率が低い粒子が得られた。このことから、温度が高いほど、酸窒化アルミニウムが酸化アルミニウムに変換する反応が進行しやすいと考えられる。
なお、実施例1-2~1-4の粒子はいずれも実施例1-1の粒子との間で形状の変化は見られなかった。
【0082】
かさ密度の測定
実施例1、5、7、比較例1及び2で得られた粒子から上記のとおり425μm単一粒度粒子を取得した(以下、供試物ともいう)。JIS R 1628に従って、供試物を、質量及び容積が既知の測定容器に、所定のすり切り状態まで充填して、所定体積の供試物の質量を測定してかさ密度を求めた。得られたかさ密度を表8に示した。
【表8】
【0083】
酸化アルミニウムを含むが窒化アルミニウムを含まない原料を用いて作製した比較例1の粒子のかさ密度は、1.89 g/cm3である。一方、実施例1、5及び7の粒子のかさ密度はそれぞれ1.08 g/cm3、0.90 g/cm3及び1.06 g/cm3あり、およそ1.0±0.1 g/cm3の範囲内にある。このため、本開示の粒子は、密度が比較的低い粒子として得られることがわかった。これは、おそらく、原料中の酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムから酸窒化アルミニウムが生成される際に発生する窒素に起因して、粒子が内部に空間を有するためと考えられる。
また、比較例2の粒子のかさ密度と実施例1、5及び7の粒子のかさ密度を比較すると同程度であることがわかった。
【0084】
上述したとおり、比較例2の粒子として使用した中空電融アルミナBLは、断熱煉瓦用や軽量耐火物用に販売され、断熱耐火物としての使用例も示されている。ここで、実施例1、5及び7の粒子と比較例2の粒子との間で熱伝導率を比較すると、実施例1、5及び7の粒子の方が低い熱伝導率を有している。また、実施例1、5及び7の粒子と比較例2の粒子はかさ密度が同程度である。さらに、1500℃における熱膨張率が1.5%以下であれば耐火物の骨材としての使用に適切である。このため、本開示の粒子は断熱材及び耐火物の骨材として使用に適切であることがわかった。
【0085】
<断熱キャスタブルの製造>
〔実施例8〕
実施例1で得られた粒子を用いて当該分野の公知の方法で断熱キャスタブルを製造した。製造した断熱キャスタブルを用いてJIS R2553に定められた試験片を得た。得られた試験片について、JIS R 2554に従って、試験片の焼成前の長さl0及び焼成後の長さl1を測定して、線熱膨張率((l1-l0)/l0×100)を算出した。また、得られた試験片を110℃の雰囲気下で24時間乾燥させた。乾燥させた試験片について、JIS R2205の煮沸法に従い、その乾燥質量W1(g)、水中質量W2(g)及び飽水質量W3(g)を測定し、これらの値を用いて見かけ気孔率((W3-W1)/(W3-W2)×100%)を算出した。また、JIS R 2553に従い、焼成した試験片について、寸法(幅b及び厚さd)を測定し、曲げ試験時の最大荷重W及び圧縮試験時の最大荷重Wを求め、乾燥曲げ強度((3×W×l)/(2×b×d))及び乾燥圧縮強度(W/(40×b))を算出した。実施例8の測定結果を表9に示した。
【表9】
【0086】
見かけ気孔率の結果から実施例8の断熱キャスタブルは断熱性があることがわかった。
【0087】
〔実施例9〕
実施例1-1で得られた粒子を用いて当該分野の公知の方法で断熱キャスタブルを製造した。製造した断熱キャスタブルを用いてJIS R2553に定められた試験片を得た。得られた試験片について、JIS R 2554に従って、試験片の焼成前の長さl0及び焼成後の長さl1を測定して、線熱膨張率((l1-l0)/l0×100)を算出した。また、得られた試験片を110℃の雰囲気下で24時間乾燥させた。乾燥冷却させた試験片について、JIS R 2655に従い、直ちに質量W及び寸法(長さL、幅M及び厚さT)を測定して、乾燥かさ密度(W/(L×M×T))を算出した。また、JIS R 2553に従い、焼成した試験片について、寸法(幅b及び厚さd)を測定し、曲げ試験時の最大荷重W及び圧縮試験時の最大荷重Wを求め、乾燥曲げ強度((3×W×l)/(2×b×d))及び乾燥圧縮強度(W/(40×b))を算出した。
【0088】
〔比較例3〕
実施例1-1で得られた粒子の代わりに中空電融アルミナBL(大平洋ランダム株式会社)を用いること以外は実施例9と同様にして、試験片を得て、各パラメータを求めた。
【0089】
実施例9の断熱材と比較例3の断熱材の測定結果を表10に示した。
【表10】
【0090】
実施例9の断熱キャスタブルの試験片の乾燥曲げ強度、乾燥圧縮強度、乾燥かさ密度の値は、比較例3の断熱キャスタブルの試験片と同程度であった。また、1500℃における線熱膨張率が1.5%未満なので、実施例9の断熱キャスタブルには、耐火性があることがわかった。この結果は、ゼーゲルコーン耐火度で表すと少なくともSK18以上となる。
【符号の説明】
【0091】
3:実施例1の粒子のXRDデータのスペクトル、4:実施例1-1の粒子のXRDデータのスペクトル、5:酸化アルミニウムのXRDデータの標準スペクトル、6:酸窒化アルミニウムのXRDデータの標準スペクトル
【要約】
【課題】酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む内部に空間を有する粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、内部に空間を有する粒子であって、前記粒子は、酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムを含み、前記酸窒化アルミニウムと酸化アルミニウムの合計に対して0.1重量%~90重量%の酸窒化アルミニウムを含む粒子を提供する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6