(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】FAM167Aを含むBCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤耐性を診断するためのバイオマーカーおよびFAM167Aをターゲットとする慢性骨髄性白血病の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20250508BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
G01N33/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2024552483
(86)(22)【出願日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2023002947
(87)【国際公開番号】W WO2023167544
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2025-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0027709
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521081975
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニヴァーシティ アール アンド ディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,テウ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0109811(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第112481376(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0142746(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147911(US,A1)
【文献】特開2018-130113(JP,A)
【文献】特表2015-526520(JP,A)
【文献】YANG, T. et al.,FAM167A is a key molecule to induce BCR-ABL-independent TKI resistance in CML via noncanonical NF-κB signaling activation,Journal of Experimental & Clincal Cancer Research,2022年,Vol.41, No.82,DOI: 10.1186/s13046-022-02298-1
【文献】ITO, Ikue et al.,Association of the FAM167A-BLK Region With Systemic Sclerosis,ARTHRITIS & RHEUMATISM,2010年,Vol.62, No.3,pp. 890-895,DOI: 10.1002/art.27303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FAM167Aタンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性を診断するためのバイオマーカー組成物。
【請求項2】
FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNAの発現レベルを測定する製剤を含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性を診断するための組成物。
【請求項3】
前記FAM167Aタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記FAM167Aタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、またはアプタマーを含む、請求項2に記載の慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を診断するための組成物。
【請求項4】
前記FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子のmRNAレベルを測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAに相補的に結合するセンスおよびアンチセンスプライマーまたはプローブを含む、請求項2に記載の慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を診断するための組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物を含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性診断用キット。
【請求項6】
前記キットは、RT-PCRキット、競合的RT-PCRキット、リアルタイムRT-PCRキット、DNAチップキット、マイクロアレイキット、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)キット、遺伝子チップキット、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットである、請求項5に記載の慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性
診断用キット。
【請求項7】
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;および
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルを、BCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルと比較する段階;
を含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を診断するための情報提供方法。
【請求項8】
(c)前記(a)段階の慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定されたFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルが、前記(b)段階のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより高い場合、BCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示すと判断する段階をさらに含む、請求項7に記載の慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を診断するための情報提供方法。
【請求項9】
前記生物学的試料は、血液、血漿、血清、尿、粘液、唾液、涙、喀痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引液、リンパ液、気道液、腸液、泌尿生殖器液、母乳、リンパ系体液、精液、脳脊髄液、気管系内体液、腹水、嚢胞性腫瘍体液、羊水液またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を診断するための情報提供方法。
【請求項10】
FAM167Aタンパク質
に特異的に結合する中和抗体を有効成分として含む、BCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性を示す慢性骨髄性白血病の予防または治療用医薬組成物。
【請求項11】
前記BCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す慢性骨髄性白血病は、
イマチニブまたはニロチニブ感受性を示す白血病に比べてNF-κB活性が増加したものである、請求項10に記載のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す慢性骨髄性白血病の予防または治療用医薬組成物。
【請求項12】
チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor,TKI)と併用投与されるものである、請求項10に記載のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す慢性骨髄性白血病の予防または治療用医薬組成物。
【請求項13】
前記TKIは、クリゾチニブ(crizotinib)、セリチニブ(ceritinib)、アレクチニブ(alectinib)、ブリグチニブ(brigatinib)、ボスチニブ(bosutinib)、ダサチニブ(dasatinib)、イマチニブ(imatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、ポナチニブ(ponatinib)、イブルチニブ(ibrutinib)、カボザンチニブ(cabozantinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、ラパチニブ(lapatinib)、バンデタニブ(vandetanib)、アファチニブ(afatinib)、オシメルチニブ(osimertinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、トファシチニブ(tofacitinib)、アキシチニブ(axitinib)、レンバチニブ(lenvatinib)、ニンテダニブ(
nintedanib)、パゾパニブ(pazopanib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ソラフェニブ(sorafenib)またはスニチニブ(sunitinib)を含む、請求項
12に記載のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す慢性骨髄性白血病の予防または治療用医薬組成物。
【請求項14】
FAM167Aタンパク質
に特異的に結合する中和抗体を有効成分として含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性阻害用医薬組成物。
【請求項15】
前記BCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す慢性骨髄性白血病は、
イマチニブまたはニロチニブ感受性を示す白血病に比べてNF-κB活性が増加したものである、請求項
14に記載の慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性阻害用医薬組成物。
【請求項16】
チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor,TKI
)と併用投与されるものであ
る、請求項
14に記載の慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性阻害用医薬組成物。
【請求項17】
前記TKIは、クリゾチニブ(crizotinib)、セリチニブ(ceritinib)、アレクチニブ(alectinib)、ブリグチニブ(brigatinib)、ボスチニブ(bosutinib)、ダサチニブ(dasatinib)、イマチニブ(imatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、ポナチニブ(ponatinib)、イブルチニブ(ibrutinib)、カボザンチニブ(cabozantinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、ラパチニブ(lapatinib)、バンデタニブ(vandetanib)、アファチニブ(afatinib)、オシメルチニブ(osimertinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、トファシチニブ(tofacitinib)、アキシチニブ(axitinib)、レンバチニブ(lenvatinib)、ニンテダニブ(nintedanib)、パゾパニブ(pazopanib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ソラフェニブ(sorafenib)またはスニチニブ(sunitinib)を含む、請求項
16に記載の慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性阻害用医薬組成物。
【請求項18】
(a)BCR-ABL非依存性
イマチニブ(imatinib)またはニロチニブ(nilotinib)耐性を示す細胞株または
ヒトを除いた動物モデルに候補物質を処理する段階;および
(b)前記候補物質が処理された細胞株または
ヒトを除いた動物モデルにおいてFAM167Aタンパク質の阻害の有無または前記タンパク質をコード化する遺伝子発現の阻害の有無を確認する段階;
を含む、BCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す
慢性骨髄性白血病の治療剤またはBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性阻害剤のスクリーニング方法。
【請求項19】
(c)前記候補物質がFAM167Aタンパク質を阻害するか、前記タンパク質をコード化する遺伝子発現を阻害する場合、前記候補物質をBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す
慢性骨髄性白血病の治療剤またはBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性阻害剤と判断する段階をさらに含む、請求項
18に記載のBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性を示す
慢性骨髄性白血病の治療剤またはBCR-ABL非依存性
イマチニブまたはニロチニブ耐性阻害剤のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FAM167Aを含むBCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor,TKI)耐性を診断するためのバイオマーカー組成物およびFAM167Aをターゲットとする慢性骨髄性白血病の予防または治療用組成物に関し、より詳細には、FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNAの発現レベルを確認することによって、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断する組成物、キット、方法とFAM167AをターゲットとしてBCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病の予防または治療用医薬組成物および慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害用医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia,CML)は、BCR-ABLフィラデルフィア染色体の特徴的なt(9;22)(q34;q11)相互転座(reciprocal translocation)により発生する。BCR-ABL融合遺伝子は、転座中にABL1の上方制御ドメインの損失によって構成的に活性のBCR-ABL腫瘍タンパク質をコード化する。イマチニブ(imatinib)のようなBCR-ABLターゲットチロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor,TKI)の開発は、CML患者の治療に革命を起こした。しかしながら、TKIに対する耐性は、成功したCML治療の主要な障害物として残っている。
【0003】
TKI耐性は、BCR-ABL依存性とBCR-ABL非依存性の2つの方式で発生する。BCR-ABL依存性耐性は、主にBCR-ABLキナーゼドメインの突然変異によって発生するが、このドメインに突然変異がない多くのCML患者もTKI耐性を示す。ニロチニブ(nilotinib)およびダサチニブ(dasatinib)のような第2世代TKIは、BCR-ABL依存性耐性疾患に効果的な治療法である。対照的に、BCR-ABL非依存性TKI耐性は、第2世代TKIで解決できない。信号経路活性の変化、後成遺伝学的調節因子の突然変異、微小環境の要因および白血病幹細胞の活性を含む様々な要因がBCR-ABL非依存性TKI耐性に潜在的な寄与因子であるが、このような種類の耐性の根本的な理由は、完全には理解されていなかった。したがって、基本メカニズムを識別し、効果的な治療法を開発することが主要な目標である。
【0004】
核因子-κB(NF-κB)ファミリーメンバーは、免疫反応、炎症およびがんに関連した様々な遺伝子を調節する誘導転写因子である。標準および非標準の2つの主要なNF-κB活性化信号経路がある。標準NF-κB経路は、主にκBタンパク質阻害剤(IκB)の分解とp50含有二量体の核転座を通じて活性化する。対照的に、非標準NF-κB経路の中心信号タンパク質は、NF-κB誘導キナーゼ(NF-κB-inducing kinase,NIK)である。非標準NF-κB活性化は、ユビキチン化依存性NIK分解の遮断を通したNIK蓄積に依存する。蓄積したNIKは、p100からp52への処理を誘導し、後にp52含有二量体の核転座が続く。NF-κB経路は、TKI耐性に寄与し、このような経路の阻害は、TKIに対するCMLの感受性を回復させる。しかしながら、TKI耐性CMLにおいてNF-κB経路の直接的な活性化と関連した要因は、まだ知られていない。
【0005】
このような背景下に、本発明者らは、NF-κBがイン・シリコ(in silico)活性化した転写因子の分析を通じてテストされたもののうち、最も高度で活性化した転写因子であり、BCR-ABL非依存性TKI耐性CML細胞において差次的遺伝子発現を担当することを明らかにした。また、本発明者らは、BCR-ABL非依存性TKI耐性があるCMLの非標準NF-κB経路で以前に特性化されなかったタンパク質であるFAM167Aの重要な機能を明らかにした。具体的には、FAM167Aの発現がBCR-ABL非依存性TKI耐性を有する患者のCD34+ CML細胞において高度で上方制御され(CML細胞株における結果と類似)、FAM167AがBCR-ABL非依存性TKI耐性を担当することを示す。FAM167Aの中和は、培養細胞およびマウス腫瘍モデルにおいてTKI耐性を逆転させた。
【0006】
このような知見は、BCR-ABL非依存性TKI耐性のメカニズムと関連して非標準NF-κB経路でFAM167Aに対する新規かつ重要な役割を説明し、TKI耐性CMLを克服するための有望なターゲットとして提示される。
【0007】
FAM167Aと関連して、非特許文献1は、CGAによって確認された全身性硬化症(systemic sclerosis)感受性遺伝子としてFAM167A-BLKを確認したことがあるが、BCR-ABL非依存性TKI耐性の診断およびTKI耐性CMLを治療するためのターゲットとしてFAM167Aの役割については知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Ota Y,Kuwana M.Updates on genetics in systemic sclerosis.Inflamm Regen.2021 Jun 15;41(1):17。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した課題を解決するために案出されたものであって、BCR-ABL非依存性TKI耐性の診断およびTKI耐性CMLを治療するための新規ターゲットを発掘し、前記ターゲットをバイオマーカーとして、CML患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性診断、BCR-ABL非依存性TKI耐性CMLの治療およびBCR-ABL非依存性TKI耐性を阻害する技術を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するために、本発明は、FAM167Aタンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor,TKI)耐性を診断するためのバイオマーカー組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNAの発現レベルを測定する製剤を含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断するための組成物およびキットを提供する。
【0012】
本発明において、前記FAM167Aタンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記FAM167Aタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、またはアプタマーを含んでもよい。
【0013】
本発明において、前記FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子のmRNAレベルを測定する製剤は、前記遺伝子のmRNAに相補的に結合するセンスおよびアンチセンスプライマーまたはプローブを含んでもよい。
【0014】
本発明において、前記キットは、RT-PCRキット、競合的RT-PCRキット、リアルタイムRT-PCRキット、DNAチップキット、マイクロアレイキット、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)キット、遺伝子チップキット、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットを含んでもよい。
【0015】
本発明は、また、以下の段階を含む慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断するための情報提供方法を提供する:
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;および
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルを、BCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルと比較する段階。
【0016】
本発明において、前記情報提供方法は、(c)前記(a)段階の慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定されたFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルが、前記(b)段階のBCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより高い場合、BCR-ABL非依存性TKIに耐性を示すと判断する段階をさらに含んでもよい。
【0017】
本発明において、前記生物学的試料は、血液、血漿、血清、尿、粘液、唾液、涙、喀痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引液、リンパ液、気道液、腸液、泌尿生殖器液、母乳、リンパ系体液、精液、脳脊髄液、気管系内体液、腹水、嚢胞性腫瘍体液、羊水液またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0018】
さらに、本発明は、FAM167Aタンパク質阻害剤;FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤;またはこれらの混合物を有効成分として含むBCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病の予防または治療用医薬組成物および慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害用医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明において、前記BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病は、TKI感受性を示す慢性骨髄性白血病に比べてNF-κB活性が増加することができる。
【0020】
本発明において、前記医薬組成物は、TKIと併用投与され得る。
【0021】
本発明において、前記TKIは、クリゾチニブ(crizotinib)、セリチニブ(ceritinib)、アレクチニブ(alectinib)、ブリグチニブ(brigatinib)、ボスチニブ(bosutinib)、ダサチニブ(dasatinib)、イマチニブ(imatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、ポナチニブ(ponatinib)、イブルチニブ(ibrutinib)、カボザンチニブ(c
abozantinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、ラパチニブ(lapatinib)、バンデタニブ(vandetanib)、アファチニブ(afatinib)、オシメルチニブ(osimertinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、トファシチニブ(tofacitinib)、アキシチニブ(axitinib)、レンバチニブ(lenvatinib)、ニンテダニブ(nintedanib)、パゾパニブ(pazopanib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ソラフェニブ(sorafenib)またはスニチニブ(sunitinib)を含んでもよい。
【0022】
本発明は、また、以下の段階を含むBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤またはBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤のスクリーニング方法を提供する:
(a)BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す細胞株または動物モデルに候補物質を処理する段階;および
(b)前記候補物質が処理された細胞株または動物モデルにおいてFAM167Aタンパク質の阻害の有無または前記タンパク質をコード化する遺伝子発現の阻害の有無を確認する段階。
【0023】
本発明において、前記スクリーニング方法は、(c)前記候補物質がFAM167Aタンパク質を阻害するか、または前記タンパク質をコード化する遺伝子発現を阻害する場合、前記候補物質をBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤またはBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤と判断する段階をさらに含んでもよい。
【0024】
しかも、本発明は、FAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物の治療学的有効量をBCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病患者に投与することを含む、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病の治療方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、FAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物の治療学的有効量をBCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病患者に投与することを含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性を阻害する方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、以下の段階を含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性の診断およびBCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病の治療方法を提供する:
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルが、BCR-ABL非依存性TKI耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより増加する場合、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断する段階;および
(c)前記(b)段階でBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断された患者にFAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物の治療学的有効量を投与する段階。
【0027】
また、本発明は、以下の段階を含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性の診断およびBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害方法を提供する:
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、
その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルが、BCR-ABL非依存性TKI耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより増加する場合、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断する段階;および
(c)前記(b)段階でBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断された患者にFAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物の治療学的有効量を投与する段階。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、BCR-ABLキナーゼドメインに突然変異がないBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLにおいてTKI耐性の指標として活用できる新規バイオマーカーとしてFAM167Aを発掘し、これを阻害する場合、TKI耐性が逆転することを確認したところ、これを用いて既存の第2世代TKIで治療されていないCML患者のTKI耐性を診断し、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCML患者のTKI耐性を逆転させることによって、TKI耐性患者を効果的に治療できる利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】
図1aは、CMLにおいてBCR-ABL非依存性TKI耐性に寄与する遺伝子の選択のための戦略を示す図である。
【
図1b】
図1bと
図1cは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1b)とニロチニブ(
図1c)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞の生存能を分析した結果を示す図であり、
図1dと
図1eは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1d)とニロチニブ(
図1e)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞においてアポトーシスを評価するためのアネキシンV染色細胞のフローサイトメトリー結果を示す図である。データは、3回(
図1b~
図1e)の独立実験(エラーバー、三重(
図1bおよび
図1c)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;***P<0.001。K562S:TKIに敏感なK562細胞株、K562R:BCR-ABLキナーゼドメイン突然変異がないTKI耐性K562細胞株。
【
図1c】
図1bと
図1cは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1b)とニロチニブ(
図1c)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞の生存能を分析した結果を示す図であり、
図1dと
図1eは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1d)とニロチニブ(
図1e)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞においてアポトーシスを評価するためのアネキシンV染色細胞のフローサイトメトリー結果を示す図である。データは、3回(
図1b~
図1e)の独立実験(エラーバー、三重(
図1bおよび
図1c)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;***P<0.001。K562S:TKIに敏感なK562細胞株、K562R:BCR-ABLキナーゼドメイン突然変異がないTKI耐性K562細胞株。
【
図1d】
図1bと
図1cは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1b)とニロチニブ(
図1c)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞の生存能を分析した結果を示す図であり、
図1dと
図1eは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1d)とニロチニブ(
図1e)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞においてアポトーシスを評価するためのアネキシンV染色細胞のフローサイトメトリー結果を示す図である。データは、3回(
図1b~
図1e)の独立実験(エラーバー、三重(
図1bおよび
図1c)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;***P<0.001。K562S:TKIに敏感なK562細胞株、K562R:BCR-ABLキナーゼドメイン突然変異がないTKI耐性K562細胞株。
【
図1e】
図1bと
図1cは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1b)とニロチニブ(
図1c)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞の生存能を分析した結果を示す図であり、
図1dと
図1eは、それぞれ表示された濃度のイマチニブ(
図1d)とニロチニブ(
図1e)で3日間処理した後、K562SおよびK562R細胞においてアポトーシスを評価するためのアネキシンV染色細胞のフローサイトメトリー結果を示す図である。データは、3回(
図1b~
図1e)の独立実験(エラーバー、三重(
図1bおよび
図1c)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;***P<0.001。K562S:TKIに敏感なK562細胞株、K562R:BCR-ABLキナーゼドメイン突然変異がないTKI耐性K562細胞株。
【
図1f】
図1fは、マイクロアレイおよびRNA-seq分析で検査したK562R細胞において上方制御および下方制御された遺伝子(倍数変化≧2)を示すベンダイアグラムである。
【
図1g】
図1gは、K562R細胞において差次的発現する遺伝子の発現レベルに対するヒートマップ分析を示す図である。
【
図1h】
図1hおよび
図1i~
図1kは、マイクロアレイおよびRNA-seq分析の両方で差次的発現する遺伝子調節に関与する転写因子(
図1h)および3個の対照群遺伝子(各グループは、500個の無作為に選択された遺伝子を含む)(
図1i~
図1k)のイン・シリコ(in silico)分析結果を示す図である。サイズと色は、転写因子と関連した遺伝子の数を示す。
【
図1i】
図1hおよび
図1i~
図1kは、マイクロアレイおよびRNA-seq分析の両方で差次的発現する遺伝子調節に関与する転写因子(
図1h)および3個の対照群遺伝子(各グループは、500個の無作為に選択された遺伝子を含む)(
図1i~
図1k)のイン・シリコ(in silico)分析結果を示す図である。サイズと色は、転写因子と関連した遺伝子の数を示す。
【
図1j】
図1hおよび
図1i~
図1kは、マイクロアレイおよびRNA-seq分析の両方で差次的発現する遺伝子調節に関与する転写因子(
図1h)および3個の対照群遺伝子(各グループは、500個の無作為に選択された遺伝子を含む)(
図1i~
図1k)のイン・シリコ(in silico)分析結果を示す図である。サイズと色は、転写因子と関連した遺伝子の数を示す。
【
図1k】
図1hおよび
図1i~
図1kは、マイクロアレイおよびRNA-seq分析の両方で差次的発現する遺伝子調節に関与する転写因子(
図1h)および3個の対照群遺伝子(各グループは、500個の無作為に選択された遺伝子を含む)(
図1i~
図1k)のイン・シリコ(in silico)分析結果を示す図である。サイズと色は、転写因子と関連した遺伝子の数を示す。
【
図1l】
図1lは、転写因子に対するエンリッチメントスコアを示す図であり、無作為に選択された遺伝子と比較して、差次的発現した遺伝子との関連性程度を示す。
【
図1m】
図1mのAは、K562SとK562Rの間で差次的発現する遺伝子のうち表示された転写因子によってターゲッティングされた遺伝子の割合を示す図であり、Bは、無作為に選択された500個の遺伝子のうちで表示された転写因子によってターゲッティングされた遺伝子の割合を示す図である。
【
図1n】
図1nは、K562SおよびK562R細胞と1μMイマチニブで24時間処理されたK562R細胞におけるNF-κBおよびAP-1ルシフェラーゼレポータ活性を示す図である。
【
図1o】
図1oは、K562SおよびK562R細胞と1μMイマチニブで24時間処理されたK562R細胞において7個の遺伝子のmRNAレベルに対する定量的逆転写PCR(qRT-PCR)分析結果を示す図である。IMA:イマチニブ。データは、3回(
図1nおよび
図1o)の独立実験(エラーバー、二重(
図1o)または三重(
図1lおよび
図1n)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側T検定;*P<0.05、**P<0.01。NS:有意性なし;K562S:TKI敏感K562細胞株;K562R:BCR-ABLキナーゼドメイン突然変異がないTKI耐性K562細胞株。
【
図2a】
図2aは、表示された遺伝子をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562S細胞および24時間1μMイマチニブで処理されたK562R細胞とK562R細胞におけるNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図である。
【
図2b】
図2bは、2日間イマチニブ(IMA、1μM)で処理するかまたは処理しなかった後、表示された遺伝子をコード化するプラスミドで形質感染されたK562S細胞の生存率を示す図である。データは、2回の独立実験(エラーバー、三重サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;***P<0.001。
【
図2c】
図2cのAは、SecretomePツール(http://www.cbs.dtu.dk/services/SecretomeP/)によるヒト、マウス、ラットおよびゼブラフィッシュFAM167AおよびHAタグヒトFAM167A分泌のイン・シリコ(in silico)予測を示す図であり、NNスコアが0.5以上のタンパク質は分泌されると予測される。
図2cのBは、K562R細胞の細胞溶解物および培養上清液においてFAM167Aの免疫ブロット分析結果を示す図である。培地は、対照群上清液に使用された。上清液タンパク質は、アセトン沈殿によって濃縮された。細胞質タンパク質であるErbinも、対照群として分析し、培養上清液に細胞質タンパク質がないことを確認した。データは、3回(
図2cのB)の独立実験を示す。
【
図2d】
図2dは、組換えFAM167Aで処理後、K562S細胞において24時間のNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2eは、抗FAM167A中和抗体で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2fは、50μg/mlのSN50、10ng/mlのLPSまたはこれら両方で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2gは、優性陰性NIK(NIK-DN)をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2hと
図2iは、K562SおよびK562R細胞においてNIK(
図2h)およびp100/p52(
図2i)に対する免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2e】
図2dは、組換えFAM167Aで処理後、K562S細胞において24時間のNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2eは、抗FAM167A中和抗体で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2fは、50μg/mlのSN50、10ng/mlのLPSまたはこれら両方で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2gは、優性陰性NIK(NIK-DN)をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2hと
図2iは、K562SおよびK562R細胞においてNIK(
図2h)およびp100/p52(
図2i)に対する免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2f】
図2dは、組換えFAM167Aで処理後、K562S細胞において24時間のNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2eは、抗FAM167A中和抗体で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2fは、50μg/mlのSN50、10ng/mlのLPSまたはこれら両方で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2gは、優性陰性NIK(NIK-DN)をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2hと
図2iは、K562SおよびK562R細胞においてNIK(
図2h)およびp100/p52(
図2i)に対する免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2g】
図2dは、組換えFAM167Aで処理後、K562S細胞において24時間のNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2eは、抗FAM167A中和抗体で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2fは、50μg/mlのSN50、10ng/mlのLPSまたはこれら両方で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2gは、優性陰性NIK(NIK-DN)をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2hと
図2iは、K562SおよびK562R細胞においてNIK(
図2h)およびp100/p52(
図2i)に対する免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2h】
図2dは、組換えFAM167Aで処理後、K562S細胞において24時間のNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2eは、抗FAM167A中和抗体で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2fは、50μg/mlのSN50、10ng/mlのLPSまたはこれら両方で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2gは、優性陰性NIK(NIK-DN)をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2hと
図2iは、K562SおよびK562R細胞においてNIK(
図2h)およびp100/p52(
図2i)に対する免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2i】
図2dは、組換えFAM167Aで処理後、K562S細胞において24時間のNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2eは、抗FAM167A中和抗体で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2fは、50μg/mlのSN50、10ng/mlのLPSまたはこれら両方で24時間処理した後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2gは、優性陰性NIK(NIK-DN)をコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図であり、
図2hと
図2iは、K562SおよびK562R細胞においてNIK(
図2h)およびp100/p52(
図2i)に対する免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2j】
図2jは、NF-κBプローブおよび抗p52抗体でスーパーシフト(supershift)を示すK562SおよびK562R細胞から分離した核抽出物の電気泳動移動度分析(EMSA)結果を示す図である。
【
図2k】
図2kは、100ng/ml組換えFAM167Aで処理し、NIK-DNをコード化するプラスミドの形質感染後24時間目にK562S細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図である。
【
図2l】
図2lは、2μg/mlの抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群で12時間処理した後、K562R細胞においてNIKの免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図2m】
図2mは、表示された濃度の組換えFAM167Aで12時間処理した後、K562SおよびK562R細胞においてp100/p52の免疫ブロット分析結果を示す図である。GAPDHは、内部標準(
図2h、
図2i
図2lおよび
図2m)に使用された。データは、3回(
図2a、
図2d~
図2gおよび
図2i~
図2m)または5回(
図2h)の独立実験を示す(エラーバー、三重(
図2a、
図2d~2gおよび
図2i~
図2m)または5個(
図2h)サンプルのs.d.)。独立標本両側t検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図3a】
図3aは、MycタグFAM167AおよびAlexa Fluor 488接合抗Myc抗体を使用したK562SおよびK562R細胞の表面FAM167A受容体(FAM167AR)染色結果を示す図である。
【
図3b】
図3bは、FAM167A受容体の識別のための実験設計を示す図である。
【
図3c】
図3cは、MycタグFAM167AおよびProtein G Sepharose(登録商標)ビーズに結合した抗Myc抗体を使用してK562R細胞から準備した免疫沈降サンプルの銀染色結果を示す図である。
【
図3d】
図3d~
図3hは、MS/MSスペクトルおよび
図3cから表示されたバンドのペプチド配列を示す図である。
【
図3e】
図3d~
図3hは、MS/MSスペクトルおよび
図3cから表示されたバンドのペプチド配列を示す図である。
【
図3f】
図3d~
図3hは、MS/MSスペクトルおよび
図3cから表示されたバンドのペプチド配列を示す図である。
【
図3g】
図3d~
図3hは、MS/MSスペクトルおよび
図3cから表示されたバンドのペプチド配列を示す図である。
【
図3h】
図3d~
図3hは、MS/MSスペクトルおよび
図3cから表示されたバンドのペプチド配列を示す図である。
【
図3i】
図3iは、K562R細胞においてFAM167AとDSG1間の免疫共沈降分析結果を示す図である。
【
図3j】
図3jは、K562SとK562R細胞および24時間1μMイマチニブで処理されたK562R細胞においてDSG1 mRNAレベルのqRT-PCR分析結果を示す図である。
【
図3k】
図3kは、K562SおよびK562R細胞においてDSG1発現の免疫ブロット分析を示す図である。
【
図3l】
図3lは、抗DSG1抗体を使用したK562SおよびK562R細胞の表面染色結果を示す図である。
【
図3m】
図3mは、K562SおよびK562R細胞においてDSG1発現の免疫蛍光顕微鏡分析写真を示す図である。Hoechst 33342を使用して核を視覚化した。スケールバー:10μm。GAPDHは、内部標準(
図3g)に使用された。IP:免疫沈降。MFI:平均蛍光強度。データは、3回(
図3a、
図3cおよび
図3e~3i)の独立実験(エラーバー、二重(
図3f)または三重(
図3aおよび
図3h)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;**P<0.01、***P<0.001。NS:有意ではない。
【
図3n】
図3nは、K562R細胞においてDSG1およびFAM167Aの免疫蛍光顕微鏡分析写真を示す図である。Hoechst 33342を使用して核を視覚化した。スケールバー:10μm。
【
図3o】
図3oは、FAM167Aをコード化するプラスミドの形質感染および表示された濃度の抗FAM167A中和抗体で処理した後24時間目にK562S細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性結果を示す図である。データは、2回(
図3nおよび
図3o)の独立実験(エラーバー、三重(
図3n)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;*P<0.05。
【
図4a】
図4aは、抗DSG1抗体と共に2個の異なるDSG1特異的shRNAをコード化する組換えレンチウイルスを使用してDSG1ノックダウンさせた後、K562R細胞の表面DSG1染色結果を示す図である。
【
図4b】
図4bは、2個の異なるDSG1特異的shRNAをコード化する組換えレンチウイルスを使用してDSG1ノックダウンさせた後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図である。
【
図4c】
図4cは、DSG1ノックダウン後、K562R細胞においてp100/p52の免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図4d】
図4dは、2μg/ml抗FAM167A中和抗体で処理するかまたは処理しなかった状態でDSG1またはDSG1とErbinをコード化するプラスミドの形質感染24時間後、K562R細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を示す図である。
【
図4e】
図4eは、K562S、K562Rおよび24時間1μMイマチニブで処理されたK562R細胞においてErbin mRNAのqRT-PCR分析結果を示す図である。
【
図4f】
図4fは、K562SおよびK562R細胞においてErbinに対する免疫ブロット分析結果を示す図である。データは、3回(
図4a、
図4eおよび
図4f)の独立実験(エラーバー、三重(
図4e)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;NS:有意ではない。
【
図4g】
図4gは、K562SおよびK562R細胞においてDSG1、ErbinおよびNIKの免疫共沈降分析結果を示す図である。
【
図4h】
図4hは、2μg/mlの抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群で3時間処理した後、K562R細胞においてDSG1およびNIKの免疫共沈降分析結果を示す図である。
【
図4i】
図4iは、2μg/mlの抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群と10μM MG132を3時間処理したK562R細胞からのNIK免疫沈降後、抗ユビキチン抗体を使用したNIKユビキチン化の免疫ブロット分析結果を示す図である。
【
図4j】
図4jのAは、K562SおよびK562R細胞においてDSG1、Erbin、NIK、TRAF3、CHIPおよびc-cblの免疫共沈降分析結果を示す図であり、Bは、抗DSG1および抗TRAF3抗体を使用してK562S細胞においてDSG1、NIKおよびTRAF3の免疫共沈降分析結果を示す図であり、Cは、抗DSG1および抗CHIP抗体を使用してK562S細胞においてDSG1、NIKおよびCHIPの免疫共沈降分析結果を示す図であり、Dは、抗DSG1および抗c-cbl抗体を使用してK562S細胞においてDSG1、NIKおよびc-cblの免疫共沈降分析結果を示す図である。GAPDHは、内部標準(
図4jのA)に使用された。データは、3回(
図4jのA~D)の独立実験を示す。
【
図4k】
図4kは、FAM167A誘導非標準NF-κB経路の概略図モデルを示す図である。GAPDHは、内部標準(
図4cおよび
図4g~
図4i)に使用された。Ub:ユビキチン化。データは、2回(
図4c)または3回(
図4b、
図4d、
図4g~
図4i)の独立実験(エラーバー、二重(
図4c)または三重(
図4b、
図4d、
図4gおよび
図4h)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図5a】
図5aは、FAM167A誘導非標準NF-κB経路の阻害を示す概略図である。
【
図5b】
図5bは、3日間イマチニブまたはニロチニブ(Nilo)で処理した後、NIK-DNをコード化するプラスミドで形質感染されたK562R細胞の生存率を示す図である。
【
図5c】
図5cは、抗FAM167A中和抗体2μg/mlまたはアイソタイプ対照群で3日間イマチニブまたはニロチニブの存在下に処理した後、K562R細胞の生存能の分析結果を示す図である。
【
図5d】
図5dは、イマチニブまたはニロチニブの存在下に3日間2μg/mlの抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群で処理した後、K562R細胞の細胞死滅集団を示す図である。データは、3回(
図5b~
図5d)の独立実験(エラーバー、三重(
図5b~
図5d)サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図6a】
図6aは、マウスモデルを示す実験スケジュールおよび概略図である。
【
図6b】
図6bと
図6cは、それぞれ抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群(2mg/kg/3日)があるかまたはない状態でビヒクルまたは10mg/kg/日のイマチニブで処理されたマウスで確立されたK562R腫瘍の体積とマウスの体重を示す図である。
【
図6c】
図6bと
図6cは、それぞれ抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群(2mg/kg/3日)があるかまたはない状態でビヒクルまたは10mg/kg/日のイマチニブで処理されたマウスで確立されたK562R腫瘍の体積とマウスの体重を示す図である。
【
図6d】
図6dは、治療10日目に各グループのマウスから収集した腫瘍写真を示す図であり、
図6eは、治療10日目の腫瘍重量を示す図である。
【
図6e】
図6dは、治療10日目に各グループのマウスから収集した腫瘍写真を示す図であり、
図6eは、治療10日目の腫瘍重量を示す図である。
【
図6f】
図6fは、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)染色、抗Ki-67および抗NIK抗体を使用した腫瘍切片の免疫組織化学的染色およびTUNEL染色結果を示す図である。スケールバー:100μm。データは、3回(
図6b~6f)の独立実験(エラーバー、5匹(
図6b、
図6c、
図6eおよび
図6f)マウスまたはサンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。NS:有意ではない。
【
図7】
図7は、24時間1μMイマチニブで処理されたKCL22S、KCL22RおよびKCL22R細胞においてFAM167A mRNAのqRT-PCR分析結果を示す図である。データは、3回の独立実験(エラーバー、三重サンプルのs.d.)を示す。独立標本両側t検定;**P<0.01、***P<0.001。
【
図8a】
図8aは、診断時点(n=12)および追跡観察時(n=11)にBCR-ABL突然変異がないイマチニブ耐性CML患者(R)、そして診断時点(n=10)および追跡観察時(n=12)にBCR-ABL突然変異があるイマチニブ耐性CML患者において、診断時点(n=26)および追跡観察時(n=26)にイマチニブ反応性CML患者(S)のCD34
+幹/前駆細胞においてFAM167A mRNA発現のqRT-PCR分析結果を示す図である。イマチニブ耐性とBCR-ABL突然変異状態は、追跡観察で決定された。FAM167Aのレベルは、GAPDHのレベルで正規化された。
【
図8b】
図8bは、フローサイトメトリーを通じて測定された、診断時点(n=8)および追跡観察時(n=8)にイマチニブ反応性CML患者と診断時点(n=10)および追跡観察時(n=7)にBCR-ABL突然変異がないイマチニブ耐性CML患者のCD34
+幹/前駆細胞においてDSG1(MFI)の相対的表面発現を示す図である。
【
図8c】
図8cは、BCR-ABL非依存性TKI耐性でFAM167A誘導された非標準NF-κB経路の関与を示す提案されたモデルである。独立標本両側t検定;*P<0.05、***P<0.001。NS:有意ではない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0031】
本発明において使用されるすべての技術用語は、別段の定義がない限り、本発明の関連分野における通常の当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、好ましい方法や試料が記載されているが、これと同様または同等のものも本発明の範疇に含まれる。
【0032】
前述したように、BCR-ABL非依存性TKI耐性は、第2世代TKIでも治療が不可能で、BCR-ABL非依存性TKI耐性CMLの診断および治療に活用できる新規のバイオマーカーの発掘が必要となる。
【0033】
これより、本発明では、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの非標準NF-κB経路で以前に特性化されていないタンパク質であるFAM167Aの重要な機能を明らかにし、FAM167Aの中和が培養細胞およびマウス腫瘍モデルにおいてTKI耐性を逆転させる効果を示すことを糾明し、FAM167AがTKI耐性CMLを克服するための有望なターゲットになり得ることを確認することによって、前述した問題の解決方案を模索した。
【0034】
したがって、本発明の第1態様は、FAM167Aタンパク質またはこれをコード化する遺伝子を含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor,TKI)耐性を診断するためのバイオマーカー組成物に関する。
【0035】
前記FAM167Aは、C8orf13とも知られており、FAM167(SEC)ファミリーに属する214個のアミノ酸タンパク質である。FAM167Aをコード化する遺伝子は、約1億4600万の塩基対で構成されたヒト染色体8にマッピングされる。ヒトにおいて前記FAM167Aタンパク質またはその断片は、NCBI Reference Sequence:NP_444509.2のアミノ酸を含んでもよいが、実質的に前記タンパク質と同一または相当する効能を示すアミノ酸配列であれば、制限なしに含んでもよい。前記FAM167Aタンパク質は、イソ型タンパク質(isoform)またはその前駆体も含んでもよい。本発明では、代表的なFAM167Aタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1に示した。
【0036】
MSVPQIHVEE VGAEEGAGAA APPDDHLRSL KALTEKLRLE TRRPSYLEWQ ARLEEHTWPF PRPAAEPQAS LEEGERGGQE PLLPLREAGQ HPPSARSASQ GARPLSTGKL EGFQSIDEAI AWLRKELTEM RLQDQQLARQ LMRLRGDINK LKIEHTCRLH RRMLNDATYE LEERDELADL FCDSPLASSF SLSTPLKLIG VTKMNINSRR FSLC(配列番号1)
【0037】
前記FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子のmRNAは、NCBI Reference Sequence:NM_053279.3のヌクレオチド配列を含んでもよいが、実質的に前記遺伝子と同一または相当する効能を示すヌクレオチド配列であれば、制限なしに含んでもよい。本発明では、代表的なFAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子のmRNA配列を配列番号2に示した。
【0038】
gagaattcac cggagctcgg ggaggcgagg cgggagccct gagctgaggc cgggcagcgc ggacccgcgc aggaggaggc ggcggggaca ccggcgagtc cccagcaggg cccctgggct cccggaaggg tctccagcca cctgcccttc ccgagaagag agagctctgg gccttcttcc tgccagtctg gtcttcgagt gcgttcagga cagatagacc ttggcacagg ctgccccgag attcctgcga cgctgtctgt tcctgccttc tgtggagcat ggcacccaca ggcttccagg acggatcata gacccgagcc tccaggaggg cgccctgtgc ggctcactgc gcggtccctc tcagctcccc tgccacccag cctctgaggc cggctcctgt
cccggaaatg ccctcgggca cctggatgag gccatcccag agcgggaccc aactgtgcca cccaccaagc ctccccctgc gccccccgtg ccctcgcatg tccggctgcc agggcagact gtagaatgtc tgtgccccag atccacgtgg aagaagtggg tgcagaagag ggggcgggag cagccgcacc acccgatgac cacctccgga gcctgaaggc cctcaccgag aaactgaggc tggagacccg caggccctcc tacctggaat ggcaggccag gctggaggag catacctggc ccttcccgag gccggctgcg gagccacagg cgagcttgga ggagggggag cgtggggggc aggagccctt gctccccctg agagaggctg ggcagcaccc
cccttctgcc aggagtgcca gccaaggtgc cagacccctg tccactggca agctggaagg ctttcagagc atcgatgaag ctatagcctg gctcaggaag gaactgacg
g agatgcggct gcaggaccag caactggcca gacagctcat gcgcctgcgt ggcgacatca acaagctgaa aatcgaacac acctgccgcc tccacaggag gatgctcaac gatgccacct acgagctgga ggagcgggat gagctggccg acctcttctg tgactcccct cttgcctcct ccttcagcct ctccacacca ctcaagctta ttggcgtgac caagatgaac atcaactctc ggaggttctc tctctgctga ggagccctca gactgggcgg aggggctgga
gcggagggct tgggctggag gggtgtcaga ggaagctgag gccaagttac tccagtgggt ctcccggagg caggggtccc tgggactggc gactcaaggg ccccaggacc tattcagtgg tgctctccca cccaggggcc ctgggtgtgg atgccagtgt ctctgtgact ggctcttgct tactacccaa agagctctgc agaagggccg ctccaaccaa gatgttaaag gagacctggg ttcccaccat aatccatccc tccacggtca cgttcctgtt tcctggaatc actggtgcta tgaactggga ttcccaaagg gaggcccccc aacaaagctg tcatttttgc agaaggctgt cccgcaaggg ccttggggga aattaggcat gtcagatgtg
cctgtctcac gtgctgttgc tgtcctctaa gtattgtctc aaattcaccc taagtacatg actcagcaac attgacaggg agctactagg aagggaaaat cgaaaggcat gacaaatggg cacttgggga cgcagcccca gtggctggca gccagtgtct ctggtgagcc tgacactata aggctgtgta aattgtaaat tctggcgtgt gctgggacat gtgatggggg cactagcgta gcttgggtgc aacaagcaca gatgtcccca ttgtctcccc tggccacatg catctccaaa gagcctcttc actgccaccc acaccccagg gtgacagcct gggagaccac tggtgactga accaggcagg tcctgaaagc attttccata actgaattct
cctgcagggg cgtgaccggg gcctcctggt ggattctggt ggtgtcacct tactgccctc tctggaaaga caatctaggg agcccagagg cccatcctga gcctcctctg agattttgtg cctgacctaa acaactagtt ttaataagac tgttactgat gtgttgttca cttgttagta actgattttt gtccaaatgc ggaagccact tgtgtaggtc aactacagtg cgtaggattt gattttaaga gtttctccct cccaacaggc ttgaggatca gcaagttaag accccagcag gttagggagg tcagtctggg gtcatacggc atggcagggg tccctcggcc agacccgtag aatcctgaga taaggagtgt ttctgacctt tggtgtcatc
tagtcgagtc ctctcattag taaaggagca aagtgaaacc tgggggagga gaaggacttc cctcaggttg cacagctgtt taggctatag aatattgatg tgtgaaacca ttattgataa tgcctagtag atcacatgtc aatgaacttg aaccccaaag atggtcgtga tgctttgcca aacccgcaca ctgccaaccc ctctactctc cacctcagcc cccacccaca tctcccagag tattgcaatt cagaacattt gggtcaaggt ggagcaaggc actgacagtg gccccacagg gcatgtgtca ctaatcactg tcccatg
gtc tacgcacggc atctggctgc tctgtctact gtgacttctt cctgtgtaat ctcagtgggg cccgtgtcca
cccacacatc gtgacccaca taggggagag gttgcttttc ttttgtgggc tgagagtagg acaatgcaaa tgaatgatct ctagtagaca gaaaagaact tggtctcttt tttaaaattt caaagagcca gaagttctat gcctccttca aagtaggcag aacaacgcag ccaagatcta ctgtctgcca tgctctgtgc aatgaagtct gcaggcctga ggaccatgta ctgctgtcct tcctcagagc tctgcacaaa cactgccaag tcctgaagac gcattccttt cctgccaacc tctttccaga taagcccttg aggtctcggg ctgacctaca cacacacaca cacacacaca cacacacacc cccacacaca cacacacgac agagaacatg
ccataaacat ccttgaaccc atgcaggaaa gcccatccca tattctgaaa aaatgccaaa ttaggttttt ctttcttttt ggaaatcagt cattacagta accgaaacca ttgggttcag cgaaaatgga aagatttagc tgaatgtagt cagtccaatt aagttggatg caactgagtg atttagttgc ttgggtaacc cagtgcttgc ttgctttctt cattctctgg gtggaaacta agatcaagac acatgtttgg ggataagtta aatgtctgag ctattttgct cggtttatcc taagagaact ttattatggg atgaggaggt gacccaagat gagaagtgga gggggacagc gatgttttct aaacatcgtc cagtgttgac tggcttcctt
actttgcaca gtgaacacaa ctaaccacat taattcagct ttgtgaagtc cctgctctct gtgggtctat gagtcagcag caacattggc ctaacctccg tcccagcctc ctggctcacc acatgtgtac agtgctgttt gcagttgtac tcattatcca tccatctctc tgccatcccc aagcatcgct gggtgtaaaa cgcaaactct ccaccgacac tgccatgcgt ggtcatgtct tgatgccttc aggggctcag tagctatcaa agaggcctgg agggcctggg caggcttgac gatgcctgac cgagttcaag acccacaccc tgtagcaata ccaagtgcta ttacataatc aatggacgat ttatactttt attttttatg attatttgtt
tctatattgc tgttagaaaa agtgaaataa aaatacttca aaagaagata tccatataaa aataaaa(配列番号2)
【0039】
前記バイオマーカータンパク質およびこれをコード化する遺伝子の具体的なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、公知のデータベースであるNCBIなどから確認することができる。
【0040】
本発明の用語「バイオマーカー」は、生物学的現象の存在と定量的または定性的に関連する分子を意味し、本発明のバイオマーカーは、BCR-ABL非依存性TKI耐性の有無を判断する基準となるタンパク質またはこれをコード化する遺伝子を指す。バイオマーカーは、ゲノムヌクレオチド配列、または発現したヌクレオチド配列(例えば、RNA、nRNA、mRNA、cDNAなど)、またはコード化したポリペプチドに由来することができる。この用語は、バイオマーカー配列に相補的またはそれにフランキングされた核酸配列、例えば、前記バイオマーカー配列を増幅させることができるプローブまたはプラ
イマー対に使用された核酸を含む。
【0041】
本発明において前記「発現(expression)」は、タンパク質または核酸が生成されることを意味する。「タンパク質」は、「ポリペプチド(polypeptide)」または「ペプチド(peptide)」と互換して使用され、例えば、自然状態のタンパク質において一般的に発見されるようにアミノ酸残基の重合体をいう。「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」または「核酸」は、一本鎖または二本鎖の形態からなるデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはリボヌクレオチド(RNA)を指す。他の制限がない限り、天然に生成されるヌクレオチドと同様の方法で核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知のアナログも含まれる。「mRNA」は、タンパク質合成過程で特定の遺伝子からアミノ酸配列を特定するリボソームに遺伝情報(遺伝子特異的塩基配列)を伝達するRNAを意味する。
【0042】
前記第1態様と関連して、本発明は、FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化するmRNAの発現レベルを測定する製剤を含む、慢性骨髄性白血病患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断するための組成物およびこれを含むキットを提供する。
【0043】
本発明において、用語「診断」は、特定の病気または疾患に対する個体(subject)の感受性(susceptibility)を判定すること、個体が特定の病気または疾患を現在有しているかどうかを判定すること、特定の病気または疾患にかかった個体の予後(prognosis)を判定すること、またはテラメトリックス(therametrics)(例えば、治療効能に関する情報を提供するために個体の状態をモニタリングすること)を含む。
【0044】
本発明において、用語「耐性」は、「抵抗性」とも言い、当該薬物に対して敏感に反応せず、薬物の効能が作用しないことを意味する。
【0045】
本発明において、「FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する製剤」とは、本発明のバイオマーカータンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを確認するために使用され得る分子を意味し、好ましくは、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、またはアプタマーであり得、または前記遺伝子のmRNAに相補的に結合するセンスおよびアンチセンスプライマーまたはプローブであり得るが、これに制限されない。
【0046】
本発明において、前記FAM167Aタンパク質の断片は、免疫原性断片であり得、好ましくは、前記タンパク質に対する抗体によって認識され得る1つ以上のエピトープ(epitope)を有している断片であり得る。
【0047】
本発明において、用語「抗体」とは、当該分野において公知の用語であり、抗原性部位に対して指示される特異的なタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、抗体は、前述したバイオマーカーに対して特異的に結合する抗体を意味し、このような抗体は、各遺伝子を通常の方法によって発現ベクターにクローニングして、前記バイオマーカー遺伝子によってコード化するタンパク質を得、得られたタンパク質から通常の方法によって製造することができる。ここには、前記タンパク質で作成され得る部分ペプチドも含まれ、本発明の部分ペプチドとしては、少なくとも7個のアミノ酸、好ましくは、9個のアミノ酸、より好ましくは、12個以上のアミノ酸を含む。本発明の抗体の形態は、特に制限されず、ポリクロナール抗体、モノクロナール抗体または抗原結合性を有するものであれば、その一部も本発明の抗体に含まれ、すべての免疫グロブリン抗体が含まれる。しかも、本発
明の抗体には、ヒト化抗体などの特殊抗体も含まれる。このような本発明のバイオマーカー遺伝子がコード化するタンパク質に対する抗体は、当業界における公知の方法で製造することができるすべての抗体が挙げられる。例えば、前述したバイオマーカーの検出に使用される抗体は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含んでもよい。前記抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab′)、F(ab′)2、Fvなどが挙げられるが、特にこれに制限されない。
【0048】
本発明において、用語「アプタマー」とは、一本鎖オリゴヌクレオチドを意味し、抗体と類似した機能を有し、化学的抗体(chemical antibody)とも呼ばれ、所定の標的分子に対する結合活性を有する核酸分子を指す。前記アプタマーは、その塩基配列によって様々な三次元構造を有することができ、抗原抗体反応のように特定の物質に対して高い親和力を有することができる。アプタマーは、所定の標的分子に結合することによって、所定の標的分子の活性を阻害することができる。
【0049】
本発明のアプタマーは、RNA、DNA、修飾(modified)核酸またはこれらの混合物であり得、その形態が直鎖状または環状(ring)であり得るが、これらに限定されない。前記3種のバイオマーカータンパク質それぞれに結合活性を有するアプタマーは、各塩基配列を参照して当該技術分野における通常の知識を有する者が公知の方法によって容易に製作することができる。
【0050】
本発明において、用語「プライマー」は、短い自由3′末端水酸化基(free 3′
hydroxyl group)を有する核酸配列で相補的な鋳型(template)と塩基対(base pair)を形成することができ、鋳型のコピーのための開始地点として機能する短い核酸配列を意味する。本発明では、前述したバイオマーカーポリヌクレオチドのセンスおよびアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅を実施し、所望の生成物の生成の有無を通じてCML患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断することができる。PCR条件、センスおよびアンチセンスプライマーの長さは、当業界に公知のものを基礎として変形することができる。
【0051】
本発明において、用語「プローブ(probe)」とは、mRNAと特異的結合を形成することができる短くは数塩基~長くては数百塩基に該当するRNAまたはDNAなどの核酸断片を意味し、標識(labeling)されていて、特定のmRNAの存在の有無を確認することができる。プローブは、オリゴヌクレオチドプローブ、単鎖DNA(single stranded DNA)プローブ、二本鎖DNA(double stranded DNA)プローブ、RNAプローブなどの形態で製作することができる。本発明では、前述したバイオマーカーポリヌクレオチドと相補的なプローブを用いてハイブリダイゼーションを実施し、ハイブリダイゼーションの有無を通じて慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断することができる。適当なプローブの選択およびハイブリダイゼーション条件は、当業界に公知のものを基礎として変形することができる。
【0052】
本発明のプライマーまたはプローブは、ホスホロアミダイト固体支持体方法またはその他広く公知の方法を使用して化学的に合成することができる。このような核酸配列は、また、当該分野に公知の多くの手段を用いて修飾させることができる。このような修飾の非制限的例としては、メチル化、キャップ化、天然ヌクレオチド1つ以上の同族体への置換、およびヌクレオチド間の修飾、例えば、非荷電性連結体(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロジアミデート、カルバマートなど)または荷電性連結体(例:ホスホロチオエート、ホスホロジチオアートなど)への修飾がある。
【0053】
本発明において用いられるバイオマーカー遺伝子の発現レベルを測定する製剤の塩基配列は、生物学的に均等活性を有する変異を考慮すると、バイオマーカー遺伝子に特異的に結合する配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むと解釈される。前記用語「実質的な同一性」は、特定の配列と任意の他の配列を最大限対応するように整列し(align)、当業界において通常用いられるアルゴリズムを用いて整列した配列を分析した場合に、最小60%の同一性、より具体的には、70%の同一性、さらに具体的には、80%の同一性、最も具体的には、90%の同一性を示す配列を意味する。
【0054】
本発明のキットは、RT-PCRキット、競合的RT-PCRキット、リアルタイムRT-PCRキット、DNAチップキット、マイクロアレイキット、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)キット、遺伝子チップキット、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)キット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットであり得るが、これに制限されるものではない。具体的な例として、前記キットは、RT-PCRを行うために必要な必須要素を含むキットであり得る。例えば、RT-PCRキットは、バイオマーカー遺伝子に対する特異的なそれぞれのプライマーの他にも、テストチューブまたは他の適切なコンテナ、反応緩衝液(pHおよびマグネシウム濃度は多様である)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、ジデオキシヌクレオチドddNTPs)、Taq-ポリメラーゼおよび逆転写酵素のような酵素、DNase、RNAse阻害剤、DEPC水(DEPC-water)、滅菌水などを含んでもよい。また、定量対照群に使用されるDNAまたはRNAに特異的なプライマー対を含んでもよい。
【0055】
本発明のキットには、核酸(例えば、トータルRNA)を抽出するためのキット、標識用蛍光物質、核酸増幅用酵素および培地、使用説明書などを含ませることができる。
【0056】
本発明のキットは、前記核酸が、例えば、固相に結合または付着した膵臓がんに対するバイオマーカー測定のためのデバイスである。固相の材質の例は、プラスチック、紙、ガラス、シリコンなどであり、加工の容易さから好ましい固相の材質は、プラスチックである。固相の形状は、任意であり、例えば、四角形、円形、矩形、フィルム型などである。
【0057】
前記キットは、データ分析または統計処理を行うことができるプログラムをさらに含んでもよい。前記プログラムは、遺伝子またはタンパク質の発現レベルを分析するものであり得る。前記データ分析または統計処理プログラムは、Skyline Software,ProteoWizard Software,SCIEX OS Software,SPSS Statistics Software,MedCalc Software,MultiQuant Software,MasterView SoftwareまたはCliquid Softwareの中から選択された1つ以上であり得るが、これに限定されない。
【0058】
前記第1態様と関連して、本発明は、また、CML患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断するためのキットの製造時に、FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNAの発現レベルを測定する製剤の用途に関する。
【0059】
本発明の第1態様による前述したすべての説明は、前記用途にも同一に適用されるところ、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0060】
本発明では、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す細胞において上方制御される、
以前に特性化されていないタンパク質であるFAM167Aを確認し、臨床サンプル分析結果でも、FAM167AがTKI治療後だけでなく、CML診断時点にも、BCR-ABL非依存性TKI耐性患者の細胞において上方制御されることを確認したところ、前記バイオマーカータンパク質を用いてCML患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断することができる。
【0061】
したがって、本発明の第2態様は、FAM167Aバイオマーカーを用いた、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断するための情報提供方法に関する。
【0062】
本明細書に使用された用語「情報提供方法(method for providing information)」とは、CML患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性の有無に関する情報を提供する方法であり、本発明によるバイオマーカータンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルがBCR-ABL非依存性TKI耐性がないCML、あるいは、TKI感受性CMLに比べて増加したとき、BCR-ABL非依存性TKI耐性に関する情報を獲得する方法を意味する。
【0063】
具体的には、本発明による慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を診断するための情報提供方法は、以下の段階を含んでもよい:
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;および
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルを、BCR-ABL非依存性TKI耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルと比較する段階。
【0064】
本発明の情報提供方法は、(c)前記(a)段階の慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定されたFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルが、前記(b)段階のBCR-ABL非依存性チロシンキナーゼ阻害剤耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより高い場合、BCR-ABL非依存性TKIに耐性を示すと判断する段階をさらに含んでもよい。
【0065】
本発明の情報提供方法において、前記慢性骨髄性白血病患者は、BCR-ABL非依存性TKIに耐性を診断しようとする対象であり、患者の対象は、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどの愛玩動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどのげっ歯類などの哺乳動物を含む意味と解釈される。
【0066】
本発明の情報提供方法において、分析のために使用される「生物学的試料」は、BCR-ABL非依存性TKI耐性がないCML患者、あるいは、TKI感受性CML患者と区別され得る、BCR-ABL非依存性TKI耐性診断に特異的なバイオマーカータンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNAレベルを確認できる生体試料を含む。例えば、前記生体試料は、BCR-ABL非依存性TKI耐性の有無を判別しようとするCML患者から分離したCD34+幹細胞/前駆細胞を含む生体試料を意味し得、例えば、血液、血漿、血清、尿、粘液、唾液、涙、喀痰、脊髄液、胸水、乳頭吸引液、リンパ液、気道液、腸液、泌尿生殖器液、母乳、リンパ系体液、精液、脳脊髄液、気管系内体液、腹水、嚢胞性腫瘍体液、羊水液またはこれらの組み合わせを含むが、これに制限されない。
【0067】
本発明の情報提供方法において、前記バイオマーカーの発現レベルは、FAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルで測定することができ、生物学的試料からタンパク質またはmRNAの分離は、公知の工程を用いて行うことができる。
【0068】
本発明において、用語「タンパク質レベル測定」とは、試料において前記バイオマーカータンパク質またはその断片の存在の有無と発現程度を確認する過程であり、前記タンパク質またはその断片に対して特異的に結合する抗体などを用いてタンパク質の量を確認することができる。このために分析方法としては、ウエスタンブロット(western blotting)、ELISA(enzyme linked immunosorbentassay)、放射免疫測定(RIA:radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radial immunodiffusion)、オクタロニー免疫拡散法(Ouchterlony immunodiffusion)、ロケット免疫電気泳動(rocket immunoelectrophoresis)、免疫組織化学的染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈降アッセイ(immunoprecipitation assay)、補体結合アッセイ(complement Fixation Assay)、免疫蛍光法(immunofluorescence)、免疫クロマトグラフィー法(immunochromatography)、質量分析法(mass spectrometry)、FACS分析(fluorescenceactivated cell sorter analysis)またはタンパク質チップ技術(protein chip technology)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0069】
本発明において、用語、「mRNAレベル測定」とは、試料において本発明のバイオマーカー遺伝子のmRNA存在の有無と発現程度を確認する過程であり、mRNAの量を測定することによって知ることが出来る。これのために分析方法としては、RT-PCR、競合的RT-PCR(competitive RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)、RNase保護法(RNase protection method)、ノーザンブロット法(northern blotting)、サザンブロット法(southern blotting)インシチュ(In situ)交雑法またはDNAチップ技術(DNA chip technology)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0070】
例えば、前記バイオマーカー遺伝子のmRNA発現レベルは、ハイブリダイゼーション法または遺伝子増幅方法で測定することができる。前記ハイブリダイゼーション法は、プローブを用いて遺伝子の存在を確認するものであり得る。
【0071】
本発明の情報提供方法がハイブリダイゼーション方式のうちマイクロアレイ方式で実施される場合、上記したプローブは、ハイブリダイゼーションアレイ要素(hybridizable array element)として用いられ、基質(substrate)上に固定化される。好ましい基質は、堅固性または半堅固性支持体であり、例えば、膜、フィルター、チップ、スライド、ウェハー、ファイバー、磁性ビーズまたは非磁性ビーズ、ゲル、チュービング、プレート、高分子、微小粒子および毛細管を含む。前記ハイブリダイゼーションアレイ要素は、前記基質上に配列され、固定化される。このような固定化は、化学的結合方法またはUVのような共有結合方法によって実施される。例えば、前記ハイブリダイゼーションアレイ要素は、エポキシ化合物またはアルデヒド基を含むように修飾されたガラス表面に結合してもよく、また、ポリリジンコーティング表面でUVによって結合してもよい。また、前記ハイブリダイゼーションアレイ要素は、リンカー(イェ:エチレングリコールオリゴマーおよびジアミン)を介して基質に結合してもよい。
【0072】
なお、本発明のマイクロアレイに適用される試料DNAは、標識(labeling)されてもよく、マイクロアレイ上のアレイ要素とハイブリダイゼーションされる。ハイブリダイゼーション条件は、多様に変更することができる。また、ハイブリダイゼーション程度の検出および分析は、標識物質によって多様に実施することができる。
【0073】
プローブの標識は、ハイブリダイゼーションの有無を検出するシグナルを提供することができ、これは、オリゴヌクレオチドに連結され得る。適切な標識は、蛍光団(例えば、フルオレセイン(fluorescein)、フィコエリトリン(phycoerythrin)、ローダミン、リサミン(lissamine)、そしてCy3とCy5(Pharmacia))、TdT(terminal deoxynucleotidyl transferase)、発色団、化学発光団、磁気粒子、放射能同位元素(P32またはS35)、質量標識、電子密集粒子、酵素(アルカリンホスファターゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼ)、補助因子、酵素に対する基質、重金属(例えば、金)、そして抗体、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニンとキレート基のような特定の結合パートナーを有するヘプテンを含むが、これに限定されるものではない。標識は、当業界において通常実施される様々な方法、例えば、ニックトランスレーション法(n
ick translation)、ランダムプライミング法(Multiprime DNA labelling systems booklet,“Amersham”(1989))およびカイネーション法(Maxam & Gilbert,Methods in Enzymology,65:499(1986))を通じて実施することができる。標識は、蛍光、放射能、発色測定、重量測定、X線回折または吸収、磁気、酵素活性、質量分析、結合親和性、ハイブリダイゼーション高周波、ナノクリスタルによって検出可能なシグナルを提供する。
【0074】
プローブを用いる場合、プローブをcDNA分子とハイブリダイゼーションさせる。本発明において、適切なハイブリダイゼーション条件は、最適化手続きによって一連の過程で決定することができる。このような手続きは、研究室で使用のためのプロトコルを樹立するために、当業者によって一連の過程で実施する。例えば、温度、成分の濃度、ハイブリダイゼーションおよび洗浄時間、緩衝液成分およびこれらのpHおよびイオン強度などの条件は、プローブの長さおよびGC量およびターゲットヌクレオチド配列などの様々な因子に依存する。
【0075】
ハイブリダイゼーション反応後に、ハイブリダイゼーション反応を通じて出るハイブリダイゼーションシグナルを検出する。ハイブリダイゼーションシグナルは、例えば、プローブに結合した標識の種類によって様々な方法で実施することができる。例えば、プローブが酵素によって標識された場合、この酵素の基質をハイブリダイゼーション反応結果物と反応させてハイブリダイゼーションの有無を確認することができる。用いられ得る酵素/基質の組み合わせは、ペルオキシダーゼ(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)とクルロロナフトール、アミノエチルカルバゾール、ジアミノベンジジン、D-ルシフェリン、ルシゲニン(ビス-N-メチルアクリジニウムニトラート)、レゾルフィンベンジルエーテル、ルミノール、アンプレックスレッド試薬(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)、HYR(p-phenylenediamine-HCl
and pyrocatechol)、TMB(tetramethylbenzidine)、ABTS(2,2’-Azine-di[3-ethylbenzthiazoline sulfonate])、o-フェニレンジアミン(OPD)およびナフトール/ピロニン;アルカリンホスファターゼとブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ナフトール-AS-B1-ホスフェート(naphthol-AS-B1-phosphate)およびECF基質;グルコースオキシダーゼとt-NBT(nitroblue tetrazolium)および
m-PMS(phenzaine methosulfate)などである。プローブが金粒子で標識された場合には、硝酸銀を用いて銀染色方法で検出することができる。
【0076】
本発明では、FAM167Aを中和すると、BCR-ABL非依存性TKI耐性がある細胞においてTKI感受性が回復し、マウス腫瘍モデルにおいてTKI耐性が逆転することを確認したところ、FAM167Aタンパク質バイオマーカーをターゲットとするBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLに対する治療剤およびBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤を提供することができる。
【0077】
したがって、本発明の第3態様は、FAM167Aタンパク質阻害剤;FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤;またはこれらの混合物を有効成分として含む、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCML予防または治療用医薬組成物およびCML患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害用医薬組成物に関する。
【0078】
本発明において、前記FAM167Aタンパク質阻害剤は、FAM167Aタンパク質の発現を減少させるか、機能または活性を減少させる製剤を含んでもよい。
【0079】
本発明において、前記FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤は、FAM167A遺伝子のmRNA発現を減少させる製剤を含んでもよい。
【0080】
前記FAM167Aタンパク質阻害剤は、FAM167タンパク質と結合し、非標準NF-κB活性を減少させるペプチドまたは化合物などであり得る。このような阻害剤は、タンパク質構造分析などの下記例示されたスクリーニング方法を通じて選定することができ、当業界に公知の方法を用いて設計することができる。
【0081】
具体的には、前記FAM167Aタンパク質阻害剤は、FAM167Aタンパク質に特異的に結合する低分子化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス(mimetics)、アプタマー、抗体および天然物から成る群から選択されるいずれか1つ以上を含んでもよいが、これに制限されない。
【0082】
前記FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤は、遺伝子自体に結合し、転写を妨害するか、遺伝子から転写したmRNAに結合し、mRNAの翻訳を妨害する阻害剤であり得る。例えば、前記遺伝子の発現阻害剤は、FAM167A遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、siRNAおよびshRNAから成る群から選択されるいずれか1つ以上を含んでもよいが、これに制限されない。
【0083】
本発明において、用語「siRNA」は、標的遺伝子のmRNAの切断を通じてRNA干渉現象を誘導する二本鎖RNAを意味し、標的遺伝子のmRNAのような配列を有するセンス配列のRNA鎖とこれと相補的な配列を有するアンチセンス配列のRNA鎖で構成される。
【0084】
前記siRNAは、試験管内で合成したsiRNA自体またはsiRNAをコードする塩基配列を発現ベクターに挿入して発現する形態を含んでもよい。
【0085】
本発明において、前記「ベクター」は、ポリペプチドをコード化するゲノム内に挿入された外部DNAを含む遺伝子コンストラクトを指す。
【0086】
本発明に関連したベクターは、前記遺伝子を阻害する核酸配列がゲノム内に挿入されたベクターであり、これらのベクターは、DNAベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、酵母ベクター、またはウイルスベクターを例示
することができる。
【0087】
また、前記アンチセンスは、FAM167A遺伝子またはその断片から転写するmRNA配列全体または一部と相補的な配列を有し、前記mRNAと結合して前記FAM167A遺伝子または断片の発現を阻害することができる。
【0088】
また、前記shRNA(short hairpin RNA)は、ヒトまたはマウスのshRNA共通塩基配列部位をターゲットとして通常の方法によって製作されたものを使用することができる。
【0089】
本発明において、前記BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病は、TKI感受性を示すCMLに比べてNF-κB活性が増加することができる。
【0090】
本発明において、前記医薬組成物は、TKIと併用投与され得る。
【0091】
本発明において、用語「併用投与」は、異なる成分が対象に一緒に投与されることを意味する。異なる成分が一緒に投与されるというのは、所望の治療効果を得るために、各成分を同じ時間に、または任意の順序で、または異なる時間に順次に投与することができることを意味する。
【0092】
したがって、本発明の医薬組成物は、TKIと同時に(simultaneous)、別々に(separate)または順次に(sequential)投与され得る。
【0093】
本発明において、前記TKIは、クリゾチニブ(crizotinib)、セリチニブ(ceritinib)、アレクチニブ(alectinib)、ブリグチニブ(brigatinib)、ボスチニブ(bosutinib)、ダサチニブ(dasatinib)、イマチニブ(imatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、ポナチニブ(ponatinib)、イブルチニブ(ibrutinib)、カボザンチニブ(cabozantinib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、ラパチニブ(lapatinib)、バンデタニブ(vandetanib)、アファチニブ(afatinib)、オシメルチニブ(osimertinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、トファシチニブ(tofacitinib)、アキシチニブ(axitinib)、レンバチニブ(lenvatinib)、ニンテダニブ(nintedanib)、パゾパニブ(pazopanib)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ソラフェニブ(sorafenib)またはスニチニブ(sunitinib)を含んでもよいが、これに制限されない。
【0094】
本発明において、用語「予防」および/または「治療」は、病気または病症の発症を抑制または遅延させるすべての行為、病気または病症状態を好転または有益に変更するすべての行為、および病気または病症の進行を遅延、中断または逆転させるすべての行為を意味する。
【0095】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤、崩解剤、甘味剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤、香味剤、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤から成る群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0096】
具体的には、担体、賦形剤および希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリ
ケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油を使用することができる。
【0097】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などがあり、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0098】
他の態様において、本発明の医薬組成物に含まれる担体は、イオン交換樹脂、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、各種リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物)、水、塩または電解質(例えば、プロタミンサルフェート、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウムおよび亜鉛塩)、架橋性シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系基質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアリレート、ワックス、ポリエチレングリコールまたは羊毛紙などを含むが、これに制限されない。
【0099】
非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射用エステルなどが使用され得る。坐剤の基材としては、ウィテプソール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0100】
本発明による医薬組成物は、非経口投与のための水溶性溶液で製造することができ、好ましくは、ハンクス溶液(Hank’s solution)、リンゲル溶液(Ringer’s solution)または物理的に緩衝された塩水のような緩衝溶液を使用することができる。水溶性注入(injection)懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのように懸濁液の粘度を増加させることができる基質を添加することができる。
【0101】
また、本発明の医薬組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、または保存剤などをさらに含んでもよい。
【0102】
本発明の医薬組成物は、全身または局所的に投与され得、このような投与のために、公知の技術で適切な剤形で製剤化することができる。例えば、経口投与時には、不活性希釈剤または食用担体と混合するか、硬質または軟質ゼラチンカプセルにシールするか、または錠剤に圧型して投与することができる。経口投与用の場合、活性化合物は、賦形剤と混合して、摂取型錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で使用され得る。
【0103】
本発明の医薬組成物の有効成分の有効量は、疾患の予防、抑制または軽減効果を達成するのに要求される量を意味する。したがって、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分および他の成分の種類および含有量、剤形の種類および患者の年齢、体重
、一般健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、同時使用される薬物を含む様々な因子によって調節することができる。
【0104】
前記第3態様と関連して、本発明は、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCML患者にFAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物を治療学的有効量で投与する段階を含むBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療方法およびBCR-ABL非依存性TKI耐性の阻害方法を提供する。
【0105】
本発明において、前記方法に使用されるFAM167Aタンパク質阻害剤またはFAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤およびこれの投与方法は、前述の通りであるので、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0106】
なお、前記BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCML患者の対象は、前記情報提供方法で説明された患者の対象と同一なので、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0107】
前記第3態様と関連して、本発明は、また、以下の段階を含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性の診断およびBCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病の治療方法を提供する:
【0108】
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルが、BCR-ABL非依存性TKI耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより増加する場合、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断する段階;および
(c)前記(b)段階でBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断された患者にFAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物の治療学的有効量を投与する段階。
【0109】
前記第3態様と関連して、本発明は、また、以下の段階を含む、慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性の診断およびBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害方法を提供する:
(a)慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料でFAM167Aタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルを測定する段階;
(b)前記(a)段階で測定された発現レベルが、BCR-ABL非依存性TKI耐性がない慢性骨髄性白血病患者から分離した生物学的試料で測定された同じタンパク質、その断片または前記タンパク質をコード化する遺伝子のmRNA発現レベルより増加する場合、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断する段階;および
(c)前記(b)段階でBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すものと診断された患者にFAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物の治療学的有効量を投与する段階。
【0110】
同様に、前記方法に使用されるFAM167Aタンパク質阻害剤またはFAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤およびその投与方法は、前述の通りであるので、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0111】
また、前記BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCML患者の対象は、前記情報提供方法で説明された患者の対象と同一なので、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0112】
本発明において、前記FAM167Aタンパク質阻害剤、FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤またはこれらの混合物は、TKIと併用投与され得、併用投与およびTKI種類などは、前記医薬組成物で説明されたものと同一なので、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0113】
前記第3態様と関連して、本発明は、また、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLを予防または治療するための薬剤の製造時に、またはCML患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性を阻害するための薬剤の製造時に、FAM167Aタンパク質阻害剤;FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤;またはこれらの混合物の用途を提供する。
【0114】
前記第3態様と関連して、本発明は、また、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病を予防または治療するための薬剤の製造時に、FAM167Aタンパク質阻害剤;FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤;またはこれらの混合物の用途に関する。
【0115】
前記第3態様と関連して、本発明は、また、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す慢性骨髄性白血病患者のBCR-ABL非依存性TKI耐性を阻害するための薬剤の製造時に、FAM167Aタンパク質阻害剤;FAM167Aタンパク質をコード化する遺伝子の発現阻害剤;またはこれらの混合物の用途に関する。
【0116】
本発明の第3態様による前述したすべての説明は、前記用途にも同一に適用されるところ、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0117】
本発明では、FAM167Aを中和すると、BCR-ABL非依存性TKI耐性がある細胞においてTKI感受性が回復し、マウス腫瘍モデルにおいてTKI耐性が逆転することを確認したところ、FAM167Aタンパク質バイオマーカーの阻害の有無によってBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤およびBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤と判断できる基準を提供する。
【0118】
したがって、本発明の第4態様は、FAM167Aバイオマーカーを用いた、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤またはBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤のスクリーニング方法に関する。
【0119】
具体的には、本発明のスクリーニング方法は、以下の段階を含んでもよい:
(a)BCR-ABL非依存性TKI耐性を示す細胞株または動物モデルに候補物質を処理する段階;および
(b)前記候補物質が処理された細胞株または動物モデルにおいてFAM167Aタンパク質の阻害の有無および/または前記タンパク質をコード化する遺伝子発現の阻害の有無を確認する段階。
【0120】
本発明において、前記候補物質は、通常の選定方式によってFAM167A遺伝子塩基配列においてmRNA、タンパク質への転写、翻訳を阻害する物質またはFAM167Aタンパク質の機能または活性を阻害する医薬としての可能性を有するものと推定されるか、または無作為的に選定された個別的な核酸、タンパク質、ペプチド、その他抽出物、天然物、化合物などになり得る。
【0121】
その後、候補物質が処理された細胞株または動物モデルから分離した生物学的試料で前記遺伝子の発現量、タンパク質のレベルまたは活性を測定することができ、測定結果、前記遺伝子の発現量、タンパク質のレベルまたは活性が減少することが測定されると、前記候補物質は、BCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤およびBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤と判断することができる。
【0122】
したがって、本発明のスクリーニング方法は、(c)前記候補物質がFAM167Aタンパク質を阻害するか、前記タンパク質をコード化する遺伝子発現を阻害する場合、前記候補物質をBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤またはBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤と判断する段階をさらに含んでもよい。
【0123】
本発明において、上記において遺伝子の発現量、タンパク質のレベルまたは活性を測定する方法は、当業界に公知の様々な方法を通じて実行することができ、前記情報提供方法で説明したものと同一なので、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0124】
本発明において、前記候補物質は、後のBCR-ABL非依存性TKI耐性を示すCMLの治療剤およびBCR-ABL非依存性TKI耐性阻害剤の開発過程でリード化合物(leading compound)として作用し、リード化合物がFAM167A遺伝子またはこれから発現するタンパク質の機能を抑制させる効果を示すことができるようにその構造を修飾させ、最適化することによって、新しいCMLの治療剤およびTKI耐性阻害剤を開発することができる。
【0125】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、以下で記述する特定の実施例および説明は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではない。本発明の範囲は、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【実施例】
【0126】
[実施例1]
TKI-耐性CML細胞において差次的発現する遺伝子およびこれを調節する転写因子の確認
1-1.細胞培養
ヒトCML細胞株K562Sは、韓国細胞株バンクから入手した。KCL22Sは、ATCC(American Type Culture Collection)から入手した。K562R細胞株は、K562SからTKIの濃度を徐々に増加させて細胞に処理することによって生成された。すべての細胞株は、加湿された細胞培養インキュベーターで37℃および5%CO2に維持され、10%ウシ胎児血清(HyClone)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンが補充されたRPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640培地(HyClone)で培養された。TKI耐性を維持するために、K562RおよびKCL22R細胞を1μMイマチニブが補充された培地で培養した。
【0127】
1-2.マイクロアレイおよびRNA-seq分析
BCR-ABLキナーゼドメインの突然変異を伴わないTKI耐性(すなわち、BCR-ABL非依存性TKI耐性)はよく知られていない。これによって、本発明者らは、TKI耐性CML細胞において差次的発現する遺伝子を確認し、BCR-ABL非依存性TKI耐性で潜在的な役割をする遺伝子を探そうとした(
図1a)。したがって、BCR-
ABLキナーゼドメインに突然変異がないTKI耐性CML細胞株であるK562R(
図1b~
図1e)を前記実施例1-1のように生成した後、TKI感受性K562S細胞、K562R細胞およびイマチニブで処理されたK562R細胞において遺伝子発現を分析し、分析方法による偽陽性を除去するために、マイクロアレイおよびRNAシーケンシング(RNA-seq)分析を全部行った。
【0128】
マイクロアレイおよびRNA-seq分析方法は、以下の通りである。トータルRNAは、TRI試薬(Molecular Research Center)で抽出した。マイクロアレイの場合、Illumina TotalPrep RNA増幅キット(Ambion)を使用してcDNAおよびビオチニル化したcRNAの合成を行った。標識されたcRNAをHuman HT-12 v4 Expression BeadChip(Illumina)にハイブリダイズし、アレイをBead Array Reader共焦点スキャナ(Illumina)でスキャンした。RNA-seqの場合、Illumina TruSeqプロトコルに従ってTruSeq Stranded mRNA LT Sample Prep Kit(Illumina)を使用してライブラリーを準備した。NovaSeq 6000システム(Illumina)を使用してペアエンドシーケンシング(paired-end sequencing)を行った。倍数変化≧2を示す遺伝子は、Multiple Experiment Viewerで生成されたヒートマップに差次的に表現され、表示されるものと定義される。
【0129】
K562SとK562Rの間で789個の差次的発現した(すなわち、倍数変化≧2)遺伝子が厳格に選択された(
図1fおよび
図1g)。
【0130】
1-3.イン・シリコ(in silico)分析
差次的発現した遺伝子を識別することに加えて、BCR-ABL非依存性耐性CML細胞において特異的に差次的発現した遺伝子を調節できる転写因子を確認しようとした。活性化した転写因子のイン・シリコ(in silico)分析のために、GeneCardsデータベース(https://www.genec ards.org/)から差次的に発現するか、無作為に選択された遺伝子プロモーターでそれぞれの結合部位と関連した転写因子に関する情報を得、プロットは、Cytoscapeを使用して生成した。転写因子のエンリッチメントスコアは、以下の等式を使用して計算した:
エンリッチメントスコア=(差次的に発現した遺伝子と関連した転写因子の割合)/(無作為に選択された遺伝子と関連した転写因子の割合)×(転写因子と関連した差次的に発現した遺伝子の数)。
【0131】
BCR-ABL非依存性TKI耐性CML細胞の差次的遺伝子発現に関与する転写因子のイン・シリコ(in silico)分析を通じてAP-1およびNF-κBが無作為に選択された遺伝子と比較して差次的発現した遺伝子の調節因子のうちで最も豊富な転写因子であることを明らかにした(
図1h~
図1m)。AP-1とNF-κBは、他の転写因子に比べて顕著に高いエンリッチメントスコアを示し、これらの2つの転写因子に対するスコアのみが平均から3標準偏差を外れた。
【0132】
1-4.ルシフェラーゼレポータ分析
TKI耐性細胞株においてAP-1とNF-κB活性の差異を確認するために、K562R細胞、K562S細胞およびイマチニブが処理されたK562R細胞においてAP-1およびNF-κBレポータアッセイを行い、TKI治療の効果を調査した。
【0133】
このために、K562SおよびK562R細胞は、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して文献[Park SG,Schulze-Luehrman
J,Hayden MS,Hashimoto N、Ogawa W,Kasuga
M,et al.The kinase PDK1 integrates T cell antigen receptor and CD28 coreceptor signaling to induce NF-kappaB and activate T cells.Nat Immunol.2009;10(2):158-66.]に記載のレニラルシフェラーゼ(Renilla luciferase)ベクターとNF-κB依存性レポータコンストラクト(pBIIx-luc)または文献[Zhang D,Zhang G,Hayden MS,Greenblatt MB,Bussey C,Flavell RA,et al.A toll-like receptor that prevents infection by uropathogenic bacteria.Science.2004;303(5663):1522-6.]に記載のAP-1依存性レポータコンストラクト(AP-1-luc)とその他プラスミドで同時形質感染させた後、各文献に示されているように処理した。形質感染24時間後、Dual-luciferase Reporter Assay Kit(Promega)を使用してルシフェラーゼ活性を測定し、レニラルシフェラーゼ活性に正規化した。
【0134】
結果は、AP-1でなく、NF-κB活性がK562S細胞よりもK562R細胞において有意にさらに高いことを示した。また、この活性は、イマチニブで処理されたK562R細胞において格別に高かったが、AP-1活性には、有意差がなかった(
図1n)。これは、NF-κBが遺伝子発現を調節することによって、BCR-ABL非依存性TKI耐性に寄与することを示唆する。また、K562R細胞において増加したNF-κB活性に関連した遺伝子を確認するために、K562S、K562Rおよびイマチニブで処理されたK562R細胞の遺伝子発現プロファイルデータを使用してパターンNF-κB活性と類似した発現様相を示した7個の差次的発現遺伝子(FAM167A、AIF1L、ACSS1、S100A4、LY6G6D、CYP11A1およびNR5A1)を選択した。
【0135】
1-5.定量的逆転写PCR(qRT-PCR)
選択された遺伝子の発現レベルを確認するために、qRT-PCRを行った。RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用してトータル細胞RNAを分離し、TOPscript RT Drymix(Enzynomics)としてcDNAを準備した。qRT-PCRは、Stratagene Mx3000P(Agilent Technologies)でSYBR Green qPCR 2x Premix(Enzynomics)を使用して行われた。結果は、GAPDHレベルに正規化された。qRT-PCRに使用されたプライマー配列は、表1に示し、qRT-PCR結果は、
図1oに示した。
【0136】
【0137】
[実施例2]
非標準NF-κB経路におけるFAM167A役割
2-1.選択された遺伝子のルシフェラーゼレポータ分析
選択された遺伝子をスクリーニングするために、表示された遺伝子をコード化するプラスミドで形質感染されたK562S細胞においてNF-κB活性をルシフェラーゼレポータ分析で確認した。前記プラスミドは、HAタグS100A4、CYP11A1、ACSS1、LY6G6D、NR5A1、AIF1LおよびFAM167AをMigR1ベクターにクローニングして製造した。
【0138】
7個の選択された遺伝子のうちで、FAM167Aのみが異所的に(ectopically)発現するとき、NF-κB活性を有意に増加させた(
図2a)。また、他の遺伝子と比較して、FAM167Aの異所性発現は、イマチニブの存在下でK562S細胞の生存力を増加させた(
図2b)。FAM167Aは、分泌に対する信号配列がないにもかかわらず、非古典的タンパク質の分泌を予測するSecretomeP(http://www.cbs.dtu.dk/services/SecretomeP/)を用いた生物情報学的分析でFAM167Aが高いスコア(NN-スコア=0.905)(
図2cのA)を有することを示した。
【0139】
2-2.細胞分画の準備および免疫ブロット分析
K562R細胞溶解物および培養上清液の免疫ブロット分析によりFAM167Aの分泌を分析した。
【0140】
細胞溶解物は、細胞をSDSサンプル緩衝液で沸かすことによって抽出された。培養上清液内タンパク質は、アセトンを用いた沈殿を通じて濃縮された後、SDSサンプル緩衝液で沸かすことによって抽出された。
【0141】
次に、免疫ブロット分析のために、タンパク質を8-15%ゲルでSDS(sodium dodecyl sulfate)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した後、ポリビニリデンジフルオライド(polyvinylidene difluoride)膜に移した。メンブレンは、指示されたように、抗FAM167A抗体(sc-393999,Santa Cruz Biotechnology)またはErbin抗体(NBP2-13968,Novus Biologicals)でプローブされた。分析結果、FAM167Aがこれらの細胞によって分泌されることを確認した(
図2cのB)。
【0142】
2-3.FAM167AのNF-κB活性化機能の確認
NF-κB活性化機能を直接テストするために、組換えFAM167Aタンパク質(MBS1363522,MyBioSource)とFAM167Aに特異的な中和抗体(sc-393999,Santa Cruz Biotechnology)を使用して細胞培養中にFAM167Aレベルをそれぞれ増加および減少させた後、NF-κBルシフェラーゼレポータ分析を行った。
【0143】
生物情報学的分析結果と一致して、可溶性組換えFAM167AでK562S細胞を処理すると、NF-κB活性が増加したのに対し(
図2d)、K562R細胞培養でFAM167Aを中和すると、NF-κB活性が減少した(
図2e)。これは、分泌されたFAM167Aタンパク質がNF-κB経路の誘導剤として機能することを示唆する。
【0144】
2-4.NF-κB活性化経路の確認
K562R細胞においてどんなNF-κB経路が活性化するかを決定するために、標準NF-κB経路を阻害するSN50(481480,Sigma-Aldrich)を処理するか、非標準NF-κB経路を抑制するNIK-DNを一過性発現させた後、NF-κBルシフェラーゼレポータ分析を行った。NIK-DNの一過性発現のために、文献[Park SG,Ryu HM,Lim SO,Kim YI,Hwang SB,Jung G.Interferon-gamma inhibits hepatitis
B virus-induced NF-kappaB activation through nuclear localization of NF-kappaB-inducing kinase.Gastroenterology.2005;128(7):2042-53.]に記載のpFLAG-NIK-DNを使用した。
【0145】
標準NF-κB経路を阻害するSN50処理は、K562R細胞においてNF-κB活性を有意に減少させなかったが、SN50処理は、NF-κB活性の追加LPS(lipopolysaccharide)刺激増加を遮断した(
図2f)。対照的に、非標準NF-κB経路を抑制する優性陰性NIK(NIK-DN)の一過性発現は、K562R細胞においてNF-κB活性を有意に減少させ、刺激されなかったK562S細胞において観察されたものと類似したレベルに減少させた(
図2g)。
【0146】
2-5.NIKおよびp100/p52に対する免疫ブロット分析
非標準NF-κB活性化は、ユビキチン化依存型NIK分解の遮断を通したNIK蓄積に依存し、蓄積されたNIKは、p100からp52への処理を誘導し、後にp52含有
二量体の核転座が続く。したがって、K562S細胞とK562R細胞においてNIKおよびp100/p52に対する免疫ブロット分析を通じてK562R細胞において非標準NF-κB経路が活性化するかを確認した。
【0147】
メンブレンは、指示されたように、抗NIK(4994,Cell Signaling Technology)、抗p100/p52((sc-7386 X,Santa
Cruz Biotechnology)およびGAPDH(sc-166574,Santa Cruz Biotechnology)抗体でプローブされた。GAPDHを内部標準として使用するImageJソフトウェアを使用して密度測定を行った。
【0148】
分析結果、p100をp52で処理するNIKのレベルおよび活性は、K562S細胞よりもK562R細胞においてさらに高かった(
図2hおよび
図2i)。
【0149】
2-6.電気泳動移動度分析(Electrophoretic mobility shift assay,EMSA)
核分画は、以下のように抽出された。まず、細胞を低張性緩衝液(10mM HEPES,pH7.9;10mM KCl;1.5mM MgCl2;0.5mM DTT;0.5mM PMSF)に懸濁させ、氷の上で15分間培養した。その後、0.05%Nonidet P-40を添加し、溶解物を25ゲージ針に5回通過させた。核を沈殿させるために、遠心分離(1000×g、5分、4℃)した後、上清液を収集し、高速遠心分離(16,000×g、5分、4℃)で分離した。生成された上清液は、細胞質分画として-80℃で保管された。細胞核を含むペレットを低張性緩衝液で洗浄し、高張性緩衝液(20mM HEPES,pH7.9;420mM NaCl;1.5mM MgCl2;25%グリセロール;0.2mM EDTA;0.5mM DTT;0.5mM PMSF;1μg/mLロイペプチン、1μg/mLアプロチニン、1μg/mLペプスタチンA)に懸濁した後、10分ごとにボルテックス(vortexing)しながら、氷で30分間培養した。核溶解物を遠心分離(16,000Хg、5分、4℃)した後、生成された上清液を核分画として-80℃で保管した。
【0150】
スーパーシフト分析のためには、核分画を結合緩衝液(5mM Tris,pH7.5;25mM KCl;0.5mM EDTA;2.5%グリセロール;0.5mM DTT;0.1μg/μlポリ(dI/dC)、0.5mg/ml BSA)で抗p52抗体(4882,Cell Signaling Technology)またはアイソタイプ(isotype)対照群(H9658,Sigma-Aldrich)と共に室温で20分間培養した後、室温で20分間ビオチニル化した二本鎖NF-κBプローブ(配列番号23:5’-AGTTGAGGGGACTTTCCCAGG-3’)と一緒に追加培養した。反応サンプルを6%非変性ポリアクリルアミドゲルを通じて分離し、ナイロンメンブレンに移した。メンブレン上のプローブは、LightShift Chemiluminescent EMSAキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して視覚化し、ImageJで定量化した。
【0151】
EMSAで行われたスーパーシフト分析でも、K562R細胞においてさらに高いNF-κB活性およびp52スーパーシフトレベルが現れた(
図2j)。
【0152】
2-7.FAM167Aの非標準NF-κB経路活性化効果の確認
前記結果に基づいて、FAM167Aが非標準NF-κB経路の活性化を担当するか否かを確認した。
【0153】
第一に、100ng/ml組換えFAM167Aで処理し、NIK-DNをコード化するプラスミドの形質感染後24時間目にK562S細胞においてNF-κBルシフェラー
ゼレポータ活性を確認した結果、興味深く、組換えFAM167Aによって刺激されたNF-κB活性は、NIK-DNの一過性発現がある細胞において減少した(
図2k)。
【0154】
第二に、2μg/mlの抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群で12時間処理した後、K562R細胞においてNIKの免疫ブロット分析を行った。前記結果と一致して、FAM167Aの中和は、K562R細胞のNIKレベルを非常に減少させた(
図2l)。
【0155】
最後に、表示された濃度の組換えFAM167Aで12時間処理した後、K562SおよびK562R細胞においてp100/p52の免疫ブロット分析を行った。組換えFAM167AでK562SおよびK562R細胞を処理すると、p100からp52への処理が増加した(
図2m)。
【0156】
したがって、前記データは、FAM167AがK562S細胞よりもK562R細胞においてさらに大きい程度で非標準NF-κB経路を活性化することを示す。
【0157】
[実施例3]
FAM167A結合受容体の確認
3-1.フローサイトメトリー
分泌されたFAM167Aの処理および中和が非標準NF-κB経路を効果的に調節することにより、FAM167Aに対する受容体が細胞表面で発現することができるという仮設をたてた。FAM167Aに対する潜在的受容体の発現を評価するために、まず、K562SおよびK562R細胞をMycタグ組換えFAM167Aで標識した後、蛍光染料結合抗Myc抗体染色およびフローサイトメトリーを行った。
【0158】
具体的には、表面受容体の染色のために、細胞をMycタグFAM167A(MyBioSource)と一緒に培養した後、Alexa Fluor 488接合抗Myc抗体(9B11,Cell Signaling Technology)で染色した。
【0159】
フローサイトメトリーおよび細胞分類は、Guava EasyCyte HT(Millipore)、FACSCanto II(BD Biosciences)またはFACSAria III(BD Biosciences)を使用して行われ、データは、FlowJoソフトウェア(TreeStar)で分析された。
【0160】
分析結果は、FAM167Aに対する受容体が細胞表面で発現し、K562R細胞のレベルがK562S細胞のレベルより高いことを示唆した(
図3a)。
【0161】
細胞表面で受容体の存在を確認した後、識別のために受容体を分離するために、タンパク質G Sepharose(登録商標)ビーズに結合したMyc-タグ組換えFAM167Aおよび抗Myc抗体を使用してK562R細胞において受容体を免疫沈降した(
図3b)。
【0162】
MycタグFAM167Aで免疫沈降されたタンパク質の銀染色は、Pierce Silver Stain Kit(24612,Thermo Fisher Scientific)を使用して行った。銀染色結果、FAM167Aなしに免疫沈降された対照群サンプルでも検出されたバックグラウンドと比較して2個の別個のバンドを示した(
図3c)。LC-MS/MS分析は、組換えFAM167Aで1つのバンド(約30kDa)を確認し、他のバンド(約120kDa)を公知の細胞接着分子であるDSG1で確認した(
図3d~
図3h)。
【0163】
3-2.K562R細胞溶解物を使用した免疫共沈降
細胞を溶解緩衝液(20mM Tris-HCl,pH8.0;150mM NaCl;1% Triton X-100;10%グリセロール;2mM EDTA;1μg/mlロイペプチン;1μg/ml;アプロチニン;1μg/mlペプスタチンA;0.1mM PMSF)で氷の上で30分間溶解させた。その後、溶解物を15分間15,000xgおよび4℃で遠心分離し、上清液を抗FAM167A(sc-393999,Santa Cruz Biotechnology)と一緒に回転しながら、4℃で培養した。Protein G Sepharose(登録商標)ビーズ(GE Healthcare)を添加し、4℃で回転しながら培養した。溶解緩衝液で4回洗浄した後、免疫沈降物をSDSサンプル緩衝液に沸かして溶出させた後、免疫ブロット分析を行った。バンド強度は、ImageJソフトウェアで分析した。
【0164】
これを通じて、FAM167AがDSG1に結合することを確認した(
図3i)。
【0165】
3-3.DSG1に対するqRT-PCRおよび免疫ブロット分析
DSG1の上方制御された表面発現がトータルDSG1タンパク質レベルの増加によって媒介されることを確認するために、DSG1 mRNAおよびタンパク質の発現をそれぞれqRT-PCRおよび免疫ブロット分析で測定した。qRT-PCRに使用されたプライマーの配列は、表2に示した。
【0166】
【0167】
興味深く、K562SとK562R細胞の間にmRNAやタンパク質の発現には、差異がなかった(
図3jおよび
図3k)。対照的に、DSG1の細胞表面発現は、K562R細胞においてさらに高かった(
図3aおよび
図3l)。
【0168】
3-4.免疫蛍光染色およびNF-kBルシフェラーゼレポータ分析
免疫蛍光染色のために、固定および透過性細胞を抗DSG1抗体(129204,R&D Systems)で染色した後、Alexa Fluor 488接合抗マウスIgG抗体(Invitrogen)で染色した。核は、Hoechst 33342(Sigma-Aldrich)染色で視覚化された。FV1000共焦点顕微鏡(Olympus)および一緒に提供されるFV10-ASWソフトウェアを使用して共焦点イメージを獲得した。
【0169】
また、FAM167Aをコード化するプラスミドの形質感染および表示された濃度の抗FAM167A中和抗体で処理した後24時間目にK562S細胞においてNF-κBルシフェラーゼレポータ活性を分析した。
【0170】
免疫蛍光染色結果およびNF-κBルシフェラーゼレポータ活性分析結果を通じて、DSG1がK562S細胞でなく、K562R細胞の表面に主に限定されていることを確認
した(
図3m)。また、FAM167Aは、主にK562R細胞の表面でDSG1と一緒に共局在化された(
図3n)。FAM167AがK562S細胞において異所的に発現したが、FAM167A誘導NF-κB活性化は、抗FAM167A中和抗体で処理し、非常に抑制され(
図3o)、これは、分泌されたFAM167Aが非標準NF-κB経路を活性化することを示す。総合すれば、このような結果は、DSG1がFAM167Aの受容体であり、その表面発現は、K562S細胞よりもK562R細胞においてさらに高いことを示す。
【0171】
[実施例4]
FAM167AのDSG1を通したNIKユビキチン化調節の確認
4-1.DSG1がノックダウンされたK562R細胞におけるNF-κB活性の確認
DSG1の表面発現は、K562S細胞よりもK562R細胞においてさらに高かったために(
図3aおよび3l)、K562R細胞においてDSG1ノックダウンが非標準NF-κB活性を減少させることができるという仮設をたてた。これをテストするために、K562R細胞にDSG1特異的shRNA短ヘアピンRNA(shRNA)コンストラクトをレンチウイルスで形質導入し、DSG1の発現をノックダウンさせた後(
図4a)、NF-κBルシフェラーゼレポータ分析およびp100/p52に対する免疫ブロット分析を行った。DSG1特異的shRNAレンチウイルス粒子(sc-35224-V)と対照群shRNAレンチウイルス粒子(sc-108080)は、Santa Cruz Biotechnologyから入手して使用した。
【0172】
予想とは異なって、DSG1ノックダウンは、K562R細胞においてNF-κB活性とp100のp52への処理を増加させた(
図4bおよび
図4c)。
【0173】
4-2.DSG1またはDSG1およびErbinが一過性発現した細胞におけるNF-κB活性の確認
抗FAM167A中和抗体を処理するかまたは処理しないK562R細胞においてDSG1とその相互作用タンパク質Erbinの一過性発現後、NF-κB活性を測定した。DSG1の一過性発現は、DSGをMigR1ベクターにクローニングしたプラスミドを使用して行い、Erbinの一過性発現は、pClneo-Myc-Erbin(Addgene)を使用して行った。
【0174】
NF-κB活性は、DSG1の一過性発現によって減少し、DSG1とErbinの両方の一過性発現によってさらに減少した(
図4d)。しかも、FAM167A-中和抗体の存在下にDSG1およびErbinの一過性発現は、NF-κB活性のさらなる減少をほとんど起こさなかった(有意ではない、p>0.05)(
図4d)。このようなデータは、DSG1とErbinが抑制するのに対し、FAM167Aは、同じ経路を介して非標準NF-κBを活性化することを示す。
【0175】
4-3.Erbinの発現レベルの確認
この経路の基本分子メカニズムをさらに調査するために、まず、K562SおよびK562R細胞においてErbinのmRNAおよびタンパク質発現レベルをそれぞれqRT-PCRと免疫ブロット分析で確認した。qRT-PCRに使用されたプライマー配列は、表3に示し、免疫ブロット分析には、抗Erbin抗体(NBP2-13968,Novus Biologicals)を使用した。
【0176】
【0177】
DSG1 mRNAおよびタンパク質レベルと同様に(
図3fおよび
図3g)、ErbinのmRNAおよびタンパク質レベルは、K562SおよびK562R細胞間に有意差がなかった(
図4eおよび
図4f)。
【0178】
4-4.免疫共沈降分析を通したErbinおよびNIK間の相互作用の確認
NIKが非標準NF-κB経路の核心構成要素であるから、DSG1、ErbinおよびNIK間の相互作用を調査するために免疫共沈降分析を行った。
【0179】
まず、細胞を溶解緩衝液(20mM Tris-HCl、pH8.0;150mM NaCl;1% Triton X-100;10%グリセロール;2mM EDTA;1μg/mlロイペプチン;1μg/ml;アプロチニン;1μg/mlペプスタチンA;0.1mM PMSF)で氷の上で30分間溶解させた。その後、溶解物を15分間15,000xgおよび4℃で遠心分離し、上清液を抗DSG1抗体(32-6000,Invitrogen)と共に回転しながら4℃で培養した。Protein G Sepharose(登録商標)ビーズ(GE Healthcare)を添加し、4℃で回転しながら培養した。溶解緩衝液で4回洗浄した後、免疫沈降物をSDSサンプル緩衝液に沸かして溶出させた後、免疫ブロット分析を行った。バンド強度は、ImageJソフトウェアで分析した。
【0180】
DSG1に対するErbinの結合がK562SおよびK562R細胞間に有意差がないが、DSG1に対するNIKの結合は、K562R細胞において減少したことを示した(
図4g)。FAM167AがDSG1に対するNIK結合の変化を起こすか否かをさらに決定するために、K562R細胞においてFAM167Aタンパク質を中和し、DSG1に対するNIKの結合を評価した。FAM167Aが中和したとき、増加した結合を観察することができた(
図4h)。
【0181】
4-5.免疫ブロット分析を通したNIKユビキチン化の確認
NIKは、ユビキチン化媒介分解を通じて調節されるので、K562R細胞においてFAM167A中和後、免疫ブロット分析を通じてNIKユビキチン化を調査しようとした。
【0182】
具体的には、2μg/mlの抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群と10μM MG132(474790,Sigma-Aldrich)を3時間処理したK562R細胞からのNIK免疫沈降後、抗ユビキチン抗体(sc-8017,Santa
Cruz Biotechnology)を使用したNIKユビキチン化を確認した。
【0183】
免疫ブロット分析は、FAM167Aが中和したとき、NIKのユビキチン化が増加したことを示した(
図4i)。NIKのユビキチン化は、DSG1およびErbinとの相
互作用の変化によって調節されると認められるが(
図4g~
図4i)、このようなタンパク質は、報告されたユビキチンリガーゼ機能がない。NIKユビキチン化に関与するリガーゼを確認するために、TRAF3、CHIPおよびc-cblを含む候補ユビキチンリガーゼ構成要素に対する免疫共沈降分析を行った。この際、使用された抗TRAF3抗体(4729)、抗CHIP抗体(2080)および抗c-cbl抗体(2747)Cell Signaling Technologyから購入した。免疫共沈降の分析結果、これらに対する相互作用を発見しなかった(
図4j)。
【0184】
全般的に、このような結果は、FAM167AがDSG1およびErbinに対するNIKの結合を調節することによって、非標準NF-κB経路を活性化するだけでなく、後続のユビキチン化を活性化することを示唆し、これは、非標準NF-κB活性とDSG1の細胞表面発現間の関係を説明することができる(
図4k)。
【0185】
[実施例5]
BCR-ABL非依存性TKI耐性におけるFAM167A役割の確認
5-1.TKI処理後の非標準NF-κB経路の抑制による細胞生存率の確認
FAM167AがBCR-ABL非依存性TKI耐性を担当するか否かを調査するために、まず、非標準NF-κB経路の役割を調査した。このために、3日間イマチニブ(sc-202180,Santa Cruz Biotechnology)またはニロチニブ(17050,BioVision)で処理した後、NIK-DNをコード化するプラスミドで形質感染されたK562R細胞の生存率を確認した。
【0186】
細胞生存能アッセイのために、K562SまたはK562R細胞を96ウェルプレートに播種し、発現コンストラクトで一過性形質感染前に指示されたように処理した。72時間後、WST試薬(DoGenBio)を使用して細胞生存率を測定した。
【0187】
NIK-DNの一過性発現によって非標準NF-κB経路を抑制すると、TKIがある場合、K562R細胞の生存力が効果的に減少した(
図5aおよび
図5b)。
【0188】
5-2.TKI処理後の抗FAM167A中和抗体処理による細胞生存率の確認
さらに、抗FAM167A中和抗体2μg/mlまたはアイソタイプ対照群で3日間イマチニブまたはニロチニブの存在下に処理した後、K562R細胞の生存率を確認するために、細胞生存能アッセイおよびアポトーシス分析を行った。
【0189】
アポトーシス分析のために、K562SまたはK562R細胞を6ウェルプレートに播種し、指示されたように処理した。72時間後、細胞をAnnexin V-APCアポトーシス検出キット(Thermo Fisher Scientific)を使用してAnnexin V-APCおよびプロピジウムヨージドで染色し、Guava EasyCyte HT細胞測定装置(Millipore)で分析した。
【0190】
細胞生存率(WSTアッセイで)およびアポトーシス(フローサイトメトリーで測定)の分析は、FAM167Aの中和がK562R細胞の生存能力を有意に減少させ(
図5aおよび
図5c)、TKIの存在下でアポトーシスを増加させたことを示した(
図5d)。したがって、非標準NF-κB経路のFAM167A媒介活性化は、TKI耐性に重要である。
【0191】
[実施例6]
生体内(in vivo)BCR-ABL非依存性TKI耐性におけるFAM167A役割の確認
K562R細胞をヌードマウスに皮下注射して確立されたマウス異種移植モデルを使用
して生体内(in vivo)TKI耐性に対するFAM167Aの効果を調査した。
【0192】
6-1.マウス異種移植モデルの確立
K562R細胞(1Х107)を50%(v/v)無血清マトリゲル(Corning)に懸濁し、6週齢の雌BALB/c(nu/nu)マウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍のサイズは、キャリパーで測定し、腫瘍体積は、標準公式(幅2×の長さ/2)を使用して計算した。腫瘍体積が100-200mm3に到達すると、マウスを無作為にグループに分け、10日間イマチニブ(10mg/kg/日、腹腔内)、抗FAM167A抗体またはアイソタイプ対照群(2mg/kg/3日、腹腔内)、またはビヒクル(食塩水、PBS)で処理した。すべての動物実験は、ソウル大学校動物実験委員会(SNU-210315-6)と光州科学技術院(GIST-2019-008)で承認したプロトコルに従って行われた。
【0193】
6-2.抗FAM167A中和抗体の処理によるCML治療効果の確認
抗FAM167A中和抗体またはアイソタイプ対照群(2mg/kg/3日)があるかまたはない状態でビヒクルまたは10mg/kg/日のイマチニブで処理されたマウスで確立されたK562R腫瘍の体積(
図6b)およびマウスの体重(
図6c)、治療10日目に各グループのマウスから収集した腫瘍のサイズ(
図6d)および重量(
図6e)を測定した。イマチニブ単独またはアイソタイプ対照群抗体とイマチニブの組み合わせと比較して、イマチニブとFAM167A中和(抗FAM167A中和抗体の腹腔内注射によって誘導される)で治療すると、体重損失なしに腫瘍成長が顕著に抑制された(
図6b~
図6e)。
【0194】
細胞レベルで腫瘍成長の差異に対する根拠を調査するために、免疫組織化学的染色を行った。固定およびパラフィン包埋腫瘍切片を標準手続を使用してヘマトキシリンおよびエオシン(HE)、抗Ki-67抗体(SP6,Abcam)および抗NIK抗体(Abcam)で染色した。TUNEL染色は、DeadEnd Colorimetric TUNEL System(Promega)で行われた。イメージは、Eclipse Ti倒立顕微鏡(Nikon)と共に提供されるNIS-Elementsソフトウェアでキャプチャーした。定量化は、ImageJソフトウェアを使用して行われた。各フィールドでKi-67+またはTUNEL+細胞の数を計数した。腫瘍細胞においてNIK発現を点数化し(強度:0=陰性、1=弱い、2=普通、3=強い)、Hスコアを次の等式を使用して計算した。
【0195】
Hスコア=1×(強度1の細胞の%)+2×(強度2の細胞の%)+3×(強度3の細胞の%)。
【0196】
HE染色を通じて腫瘍組織切片を分析した結果、FAM167A中和腫瘍において細胞密度がさらに低かった。さらなる免疫組織化学染色は、NIKおよび増殖マーカーKi-67の減少した発現と共に、アポトーシスマーカーTUNELの増加したレベルを示した(
図6f)。総合すれば、このようなデータは、FAM167Aを中和すると、BCR-ABL独立型TKI耐性がある細胞においてTKI感受性を回復することを示唆する。
【0197】
[実施例7]
BCR-ABL非依存性TKI耐性KCL22R細胞におけるFAM167A発現の確認
7-1.細胞培養
K562R細胞の他にも、BCR-ABL非依存性TKI耐性KCL22R細胞を調査した。KCL22SおよびKCL22Rは、ATCC(American Type Culture Collection)から入手した。すべての細胞株は、加湿された細
胞培養インキュベーターで37℃および5%CO2に維持され、10%ウシ胎児血清(HyClone)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンが補充されたRPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640培地(HyClone)で培養された。TKI耐性を維持するために、KCL22R細胞を1μMイマチニブが補充された培地で培養した。
【0198】
7-2.KCL22R細胞におけるFAM167Aレベルの確認
配列分析を通じてABL領域に突然変異がないことを確認した。また、FAM167AのmRNA発現レベルをqRT-PCRで確認した結果、KCL22R細胞は、KCL22S細胞よりさらに高いFAM167Aレベルを示し、KCL22R細胞のイマチニブ処理は、増加したFAM167A発現を示した(
図7)。
【0199】
[実施例8]
CML患者におけるFAM167A発現の確認
本研究結果の臨床的重要性を確認するために、qRT-PCRを通じてCML患者から分離したCD34+幹細胞/前駆細胞のFAM167Aレベルを分析した。
【0200】
8-1.一次ヒトサンプル
韓国の和順に位置する全南大学校病院でCML患者58人(表4に羅列された臨床病理学的特徴)から末梢血液または骨髄サンプルを採取した。サンプルは、診断当時とTKIで治療する前(診断)、TKIで治療した後の後続措置時(後続措置)に再び採取した。患者から分離した単核細胞は、追加使用前まで液体窒素に冷凍保管された。ヘルシンキ宣言により事前同意を得、すべての手続は、ソウル大学校臨床審査委員会(E2103/003-007)と光州科学技術院(20180629-BR-36-01-02)の承認を受けた。TKI反応者とTKI耐性患者は、ヨーロッパ白血病ネットワーク(European Leukemia Net)の指針に従って臨床的に分類された。CMLサンプルにおいてBCR-ABLの突然変異状態は、シーケンシング分析によって確認された。
【0201】
【0202】
1イマチニブ耐性は、European Leukemia Netのガイドラインに従って臨床的に分類される。2塩基配列分析でBCR-ABLの突然変異状態を確認する。CP:慢性期;AP:加速期;BP:芽球期。
【0203】
データは、FAM167Aの発現がイマチニブ反応性患者またはBCR-ABL依存性イマチニブ耐性患者(それぞれSおよびR突然変異)の細胞よりもBCR-ABL非依存性イマチニブ耐性患者(R、突然変異なし)の細胞においてさらに高かったことを示した
(
図8a)。また、FAM167Aレベルは、治療を受ける前(すなわち、診断時)にBCR-ABL非依存性イマチニブ耐性患者の細胞においてさらに高く、これは、FAM167Aの発現がCML患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性を予測することができることを示唆する。
【0204】
フローサイトメトリーは、また、DSG1の表面発現が治療前(診断)よりもイマチニブ治療後(追跡観察)に、BCR-ABL非依存性イマチニブ耐性患者の細胞においてさらに高いことを示した(
図8b)。総合的に、このような結果は、FAM167AおよびDSG1が非標準NF-κB経路の活性化を通じてCML患者においてBCR-ABL非依存性TKI耐性と関連があることを示唆する(
図8c)。
【0205】
統計分析
各実験の反復回数は、図面に表示された。データは、平均±標準偏差(s.d.)で表示される。両側独立標本スチューデントT検定(Two-tailed unpaired Student t-test)は、統計的有意性を決定するのに使用された。P値<0.05は、有意なものと見なされた(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0206】
この発明を支援した国家研究開発事業は、以下の通りである。
(1)[課題固有番号]1711130627
[課題番号]2021R1A2C3011211
[部署名]科学技術情報通信部
[課題管理(専門)機関名]韓国研究財団
[研究事業名]個人基礎研究(科学技術情報通信部)(R&D)
[研究課題名]ガンマヘルペスウイルス感染の神経炎症性疾患における役割糾明研究
[寄与率]1/2
[課題遂行機関名]ソウル大学校
[研究期間]2021.03.01~2022.02.28
(2)[課題固有番号]1711170880
[課題番号]2022M3A9I2017587
[部署名]科学技術情報通信部
[課題管理(専門)機関名]韓国研究財団
[研究事業名]源泉技術開発事業/バイオ・医療技術開発
[研究課題名]マルチオミックス基盤未来新種・変種インフルエンザ変異株対応プラットフォーム開発
[寄与率]1/2
[課題遂行機関名]ソウル大学校
[研究期間]2023.01.01~2023.12.31
【配列表】