(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】シャーシダイナモメータ及びシャーシダイナモメータの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20250508BHJP
【FI】
G01M17/007 A
(21)【出願番号】P 2024518353
(86)(22)【出願日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2023033498
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】桑原 惇
(72)【発明者】
【氏名】神山 泰
(72)【発明者】
【氏名】琴尾 浩介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳司
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-175289(JP,A)
【文献】国際公開第2022/255237(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059380(WO,A1)
【文献】特開昭63-117237(JP,A)
【文献】特開2009-162627(JP,A)
【文献】特開2019-203869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における4つのタイヤを載置する4つのローラを有するシャーシダイナモメータであって、
前記4つのタイヤは前輪側タイヤ対及び後輪側タイヤ対を含み、前記前輪側タイヤ対及び前記後輪側タイヤ対のうち一方が第1種タイヤ対として規定され、他方が第2種タイヤ対として規定され、
前記第1種タイヤ対は左右に配置される第1種左タイヤと第1種右タイヤとを含み、
前記第2種タイヤ対は左右に配置される第2種左タイヤと第2種右タイヤとを含み、
前記4つのローラは、前記第1種左タイヤを載置する第1種左ローラと、前記第1種右タイヤを載置する第1種右ローラと、前記第2種左タイヤを載置する第2種左ローラと、前記第2種右タイヤを載置する第2種右ローラとを含み、
前記シャーシダイナモメータは、
前記第1種左タイヤの基準方向に対する角度である左タイヤ切れ角度を示す左操舵角情報と、前記第1種右タイヤの前記基準方向に対する角度である右タイヤ切れ角度を示す右操舵角情報とを検出する操舵角検出機構と、
前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報に基づき、前記車両の走行状態に適合するように、前記4つのローラそれぞれを回転駆動するローラ駆動制御処理を実行するローラ駆動制御機構とを備え
、
前記車両の走行状態は、操舵旋回状態及び直進状態を含み、
前記ローラ駆動制御機構は、旋回判定処理を実行する操舵モデルコントローラを含み、
前記ローラ駆動制御処理は前記旋回判定処理を含み、
前記旋回判定処理は、前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報に基づき比較用旋回半径を算出し、前記比較用旋回半径と判定用旋回半径との比較結果に基づき、前記車両の走行状態が前記操舵旋回状態であるか前記直進状態であるかを判定する処理である、
シャーシダイナモメータ。
【請求項2】
請求項
1記載のシャーシダイナモメータであって、
前記ローラ駆動制御機構は、前記4つのローラに対応する4つのローラ駆動指令に基づき、前記4つのローラを回転駆動するローラ駆動処理を実行するローラ駆動機構を含み、
前記操舵モデルコントローラは、前記4つのローラ駆動指令を出力するローラ制御処理を実行し、
前記ローラ駆動制御処理は前記ローラ駆動処理及び前記ローラ制御処理を含む、
シャーシダイナモメータ。
【請求項3】
請求項
2記載のシャーシダイナモメータであって、
前記操舵モデルコントローラは、前記旋回判定処理によって前記車両の走行状態が
前記操舵旋回状態であると判定された旋回判定時に旋回制御処理を実行し、
前記ローラ制御処理は前記旋回制御処理を含み、
前記旋回制御処理は、
(a) 前記4つのタイヤそれぞれの操舵旋回半径である4つの操舵旋回半径を算出するステップと、
(b) 前記4つのローラそれぞれの回転速度である4つのローラ回転速度を測定するステップと、
(c) 前記4つの操舵旋回半径及び前記4つのローラ回転速度に基づき、前記4つのローラに対応する4つの制御目標速度を算出するステップと、
(d) 前記4つの制御目標速度に基づき前記4つのローラ駆動指令を出力するステップとを含む
シャーシダイナモメータ。
【請求項4】
請求項
2記載のシャーシダイナモメータであって、
前記操舵モデルコントローラは、前記旋回判定処理によって前記車両の走行状態が
前記直進状態であると判定された直進判定時に直進制御処理を実行し、
前記ローラ制御処理は前記直進制御処理を含み、
前記直進制御処理は、
(a) 前記4つのローラに対応する4つの制御目標速度を同一の共通速度に設定するステップと、
(b) 前記4つの制御目標速度に基づき前記4つのローラ駆動指令を出力するステップとを含む、
シャーシダイナモメータ。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記操舵角検出機構は、
前記第1種左タイヤにおける測定対象領域を検出対象として、前記第1種左タイヤにおける前記左タイヤ切れ角度を検出して前記左操舵角情報を得る左側変位センサと、
前記第1種右タイヤにおける測定対象領域を検出対象として、前記第1種右タイヤにおける前記右タイヤ切れ角度を検出して前記右操舵角情報を得る右側変位センサとを含む、
シャーシダイナモメータ。
【請求項6】
請求項
1から請求項
4のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記操舵角検出機構は、
前記操舵モデルコントローラと、
前記車両のステアリング操作時におけるハンドル角度を検出して、検出したハンドル角度を示すハンドル角度情報を得るハンドル角度センサと、
複数種の角度ペア情報を有する操舵角変換テーブルとを含み、前記複数種の角度ペア情報は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種の左タイヤ旋回角度及び複数種の右タイヤ旋回角度が示された情報であり、前記複数種の左タイヤ旋回角度はそれぞれ前記左タイヤ切れ角度に対応し、前記複数種の右タイヤ旋回角度はそれぞれ前記右タイヤ切れ角度に対応し、
前記操舵モデルコントローラは前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報を認識する操舵角認識処理を実行し、
前記操舵角認識処理は、前記操舵角変換テーブルを参照して、前記複数種の左タイヤ旋回角度及び前記複数種の右タイヤ旋回角度のうち、前記ハンドル角度情報が示すハンドル角度に対応する左タイヤ旋回角度及び右タイヤ旋回角度を選択し、選択した左タイヤ旋回角度及び右タイヤ旋回角度を示す情報を前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報として認識する処理である、
シャーシダイナモメータ。
【請求項7】
請求項1から請求項
4のいずれかに記載のシャーシダイナモメータであって、
前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報に基づき、前記第1種左ローラ及び前記第1種右ローラそれぞれを旋回駆動するローラ旋回処理を実行するローラ旋回機構をさらに備え、
前記ローラ旋回処理は、前記第1種左ローラと前記第1種左タイヤとの左側位置関係、及び前記第1種右ローラと前記第1種右タイヤとの右側位置関係がそれぞれ所定の位置関係になるように、前記第1種左ローラ及び前記第1種右ローラそれぞれを旋回駆動する処理である、
シャーシダイナモメータ。
【請求項8】
車両における4つのタイヤを載置する4つのローラを有するシャーシダイナモメータの制御方法であって、
前記4つのタイヤは前輪側タイヤ対及び後輪側タイヤ対を含み、前記前輪側タイヤ対及び前記後輪側タイヤ対のうち一方が第1種タイヤ対として規定され、他方が第2種タイヤ対として規定され、
前記第1種タイヤ対は左右に配置される第1種左タイヤと第1種右タイヤとを含み、
前記第2種タイヤ対は左右に配置される第2種左タイヤと第2種右タイヤとを含み、
前記4つのローラは、前記第1種左タイヤを載置する第1種左ローラと、前記第1種右タイヤを載置する第1種右ローラと、前記第2種左タイヤを載置する第2種左ローラと、前記第2種右タイヤを載置する第2種右ローラとを含み、
前記4つのローラは、4つのローラ駆動指令に基づき回転駆動され、
前記シャーシダイナモメータは、
前記第1種左タイヤの基準方向に対する角度である左タイヤ切れ角度を示す左操舵角情報と、前記第1種右タイヤの前記基準方向に対する角度である右タイヤ切れ角度を示す右操舵角情報とを検出する操舵角検出機構を備え、
前記シャーシダイナモメータの制御方法は、
(X) 前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報に基づき比較用旋回半径を算出し、前記比較用旋回半径と判定用旋回半径との比較結果に基づき、前記車両の走行状態が操舵旋回状態であるか直進状態であるかを判定する旋回判定処理を実行するステップと、
(Y) 前記ステップ(X)によって前記車両の走行状態が
前記操舵旋回状態であると判定された旋回判定時に、旋回制御処理を実行するステップと備え、
前記ステップ(Y)で実行される前記旋回制御処理は、
(a) 前記4つのタイヤそれぞれの操舵旋回半径である4つの操舵旋回半径を算出するステップと、
(b) 前記4つのローラそれぞれの回転速度である4つのローラ回転速度を測定するステップと、
(c) 前記4つの操舵旋回半径及び前記4つのローラ回転速度に基づき、前記4つのローラそれぞれの制御目標速度である4つの制御目標速度を算出するステップと、
(d) 前記4つの制御目標速度に基づき前記4つのローラ駆動指令を出力するステップとを含む、
シャーシダイナモメータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の各種走行試験に用いられるシャーシダイナモメータ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャーシダイナモメータは、車両(自動車)の走行試験を行う際に用いられており、主要構成要素としてローラ装置を含んでいる。
【0003】
従来のシャーシダイナモメータとして、例えば、特許文献1に開示されたシャーシダイナモメータがある。
【0004】
特許文献1で開示された従来のシャーシダイナモメータは、試験車両となる四輪駆動車が予め設定された操舵角及び試験速度で路上を旋回走行する状態をシミュレートしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に代表される従来のシャーシダイナモメータは、ローラを旋回させるローラ旋回機構を有していないため、車両の走行状態が操舵旋回状態であった場合に、ローラ旋回機構の挙動を想定することなく行われている。
【0007】
このため、従来のシャーシダイナモメータは、操舵旋回状態を含む車両の走行試験を精度良く行えないという問題点があった。
【0008】
本開示は上記問題点を解決するためになされたもので、操舵旋回状態を含む車両の走行状態に適合して、車両の走行試験を精度良く行うことができるシャーシダイナモメータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るシャーシダイナモメータは、車両における4つのタイヤを載置する4つのローラを有するシャーシダイナモメータであって、前記4つのタイヤは前輪側タイヤ対及び後輪側タイヤ対を含み、前記前輪側タイヤ対及び前記後輪側タイヤ対のうち一方が第1種タイヤ対として規定され、他方が第2種タイヤ対として規定され、前記第1種タイヤ対は左右に配置される第1種左タイヤと第1種右タイヤとを含み、前記第2種タイヤ対は左右に配置される第2種左タイヤと第2種右タイヤとを含み、前記4つのローラは、前記第1種左タイヤを載置する第1種左ローラと、前記第1種右タイヤを載置する第1種右ローラと、前記第2種左タイヤを載置する第2種左ローラと、前記第2種右タイヤを載置する第2種右ローラとを含み、前記シャーシダイナモメータは、前記第1種左タイヤの基準方向に対する角度である左タイヤ切れ角度を示す左操舵角情報と、前記第1種右タイヤの前記基準方向に対する角度である右タイヤ切れ角度を示す右操舵角情報とを検出する操舵角検出機構と、前記左操舵角情報及び前記右操舵角情報に基づき、前記車両の走行状態に適合するように、前記4つのローラそれぞれを回転駆動するローラ駆動制御処理を実行するローラ駆動制御機構とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示のシャーシダイナモメータにおけるローラ駆動制御機構は、左操舵角情報及び右操舵角情報に基づきローラ駆動制御処理を実行するため、車両の走行状態が操舵旋回状態であっても、車両の走行試験を精度良く行うことができる。
【0011】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態のシャーシダイナモメータに関し、車両の載置後の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態のシャーシダイナモメータにおける変位センサ及びその周辺を模式的に示す説明図である。
【
図3】
図2のA-A断面を模式的に示す説明図である。
【
図4】ローラ旋回機構の構成を模式的に示す説明図である。
【
図5】タイヤに設けられた距離測定領域の内容を模式的に示す説明図である。
【
図6】本実施の形態の変位センサによる角度測定情報の取得方法を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ駆動制御機構の構成を模式的に示す説明図である。
【
図8】本実施の形態のシャーシダイナモメータにおけるローラ旋回機構の駆動系を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図7で示した操舵モデルコントローラによる制御動作を示すフローチャート(その1)である。
【
図10】
図7で示した操舵モデルコントローラによる制御動作を示すフローチャート(その2)である。
【
図11】旋回判定処理の処理内容を示す説明図である。
【
図12】車両の走行状態を模式的に示す説明図である。
【
図13】本実施の形態におけるローラ旋回機構の旋回制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態>
(全体構成)
図1は本実施の形態のシャーシダイナモメータ1に関し、車両60の載置後の構成を模式的に示す斜視図である。なお、
図1にXYZ直交座標系を示している。
【0014】
図1に示すように、4つのローラ装置2のローラ対20上に車両60の4つのタイヤ6が載置される。各ローラ装置2は、車両60のタイヤ6を載置するローラ対20を有している。さらに、車両60に対する試験を行う際は、図示しない車両固定手段によって、車両60が4つのローラ装置2のローラ対20上に載置された状態で固定される。
【0015】
床面50上において、車両60の前方(+Y方向)にX方向を長手方向、Z方向を短手方向とした矩形状の画像シミュレータ62が設けられる。シミュレーション補助部材である画像シミュレータ62は、車両60から視覚認識可能な全景色を表示する表示機能を有している。
【0016】
また、車両60は図示しない外界センサを有しても良い。外界センサとして、コーナーセンサ等に利用されるレーダ及びライダー(LiDAR)やサイドカメラ(サイド電子ミラー)等が考えられる。
【0017】
シャーシダイナモメータ1は、必要に応じて車両60のタイヤ6の操舵角情報や画像シミュレータ62等を用い、必要に応じて車両60の上記外界センサからの情報を受け、車両60に対する走行試験を行う。走行試験には、車両60のタイヤ6を旋回されるタイヤ旋回動作と、タイヤ旋回動作に併せてローラ対20を旋回されるローラ旋回動作とを伴う試験が含まれる。
【0018】
(車両60の用語規定について)
本明細書において、車両60のタイヤ6を第1種タイヤ対と第2種タイヤ対とに分類している。以下で述べる実施の形態では、車両60の4つのタイヤ6に関し、前輪側タイヤ対及び後輪側タイヤ対のうち、前輪側タイヤ対を第1種タイヤ対と規定し、後輪側タイヤ対を第2種タイヤ対と規定している。
【0019】
したがって、第1種タイヤ対は左右に配置される第1種左タイヤと第1種右タイヤとを含んでおり、前輪側のタイヤ6Lが第1種左タイヤとなり、前輪側のタイヤ6Rが第1種右タイヤとなる。
【0020】
同様に、第2種タイヤ対は左右に配置される第2種左タイヤと第2種右タイヤとを含んでおり、後輪側のタイヤ6Lが第2種左タイヤとなり、後輪側のタイヤ6Rが第2種右タイヤとなる。
【0021】
4つのローラは、第1種左タイヤである前輪側左タイヤを載置する第1種左ローラと、第1種右タイヤである前輪側右タイヤを載置する第1種右ローラと、第2種左タイヤである後輪側左タイヤを載置する第2種左ローラと、第2種右タイヤである後輪側右タイヤを載置する第2種右ローラとに分類される。
図1では4つのローラとして4つのローラ対20が示されている。
【0022】
(変位センサ7の構成)
図2は本実施の形態のシャーシダイナモメータ1における変位センサ7及びその周辺を模式的に示す説明図である。同図にXYZ直交座標系を記している。後述するように、変位センサ7は操舵角検出機構の第1の態様の主要構成要素となる。
【0023】
旋回台32Lを有するローラ旋回機構3L(左側旋回機構)は、第1種左ローラとなるローラ対20(前方ローラ20F+後方ローラ20B)を左側旋回対象物として、ローラ旋回方向R2に沿って左側旋回対象物を旋回させる左側ローラ旋回動作を実行する。なお、旋回台32Lは左側ローラ旋回動作時にローラ旋回方向R2に沿って旋回する。
【0024】
同様に、旋回台32Rを有するローラ旋回機構3R(右側旋回機構)は、第1種右ローラとなるローラ対20(前方ローラ20F+後方ローラ20B)を右側旋回対象物として、ローラ旋回方向R2に沿って右側旋回対象物を旋回させる右側ローラ旋回動作を実行する。なお、旋回台32Rは右側ローラ旋回動作時にローラ旋回方向R2に沿って旋回する。
【0025】
図2では第1種左ローラ上に第1種左タイヤであるタイヤ6Lが載置され、第1種右ローラ上に第1種右タイヤであるタイヤ6Rが載置されている状態を示している。
【0026】
左側変位センサ7Lは、タイヤ6Lにおける後述する距離測定領域90を検出対象として、タイヤ6Lの固定基準方向(前後方向;Y方向)に対する角度(操舵角)である左タイヤ切れ角度を検出して左操舵角情報S7Lを得ている。すなわち、左操舵角情報S7Lは角度変位量として、左側変位センサ7Lで検出された左タイヤ切れ角度を示している。なお、タイヤ角度検出範囲37Lは左側変位センサ7Lによる検出範囲を示している。
【0027】
同様に、右側変位センサ7Rは、タイヤ6Rにおける距離測定領域90を検出対象として、タイヤ6Rの固定基準方向に対する角度である右タイヤ切れ角度を検出して右操舵角情報S7Rを得ている。右操舵角情報S7Rは角度変位量として、右側変位センサ7Rによって検出された右タイヤ切れ角度を示している。タイヤ角度検出範囲37Rは右側変位センサ7Rによる検出範囲を示している。
【0028】
なお、本実施の形態で用いるタイヤ6の固定基準方向は、ローラ旋回動作によって変化しない。このように、本実施の形態ではタイヤ切れ角度用の基準方向として固定基準方向を採用している。
【0029】
左側変位センサ7Lは旋回台32Lの外部領域に固定配置され、右側変位センサ7Rは旋回台32Rの外部領域に固定配置される。すなわち、左側変位センサ7Lは、左側旋回機構による左側ローラ旋回動作の実行時に移動しない位置に固定配置されるため、左側旋回対象物に含まれない。同様に、右側変位センサ7Rは、右側旋回機構による右側ローラ旋回動作の実行時に移動しない位置に固定配置されるため、右側旋回対象物に含まれない。
【0030】
図3は
図2のA-A断面を模式的に示す説明図である。
図3にXYZ直交座標系を記している。同図に示すように、タイヤ6(タイヤ6L)は、下方に測定対象領域として距離測定領域90を有しており、距離測定領域90内に直線方向(
図3ではY方向)に沿って複数の測定ポイント9が設けられる。複数の測定ポイント9は左側変位センサ7Lによって認識可能な特徴を有している。左側変位センサ7Lによって認識可能な特徴として、例えば、凸部等、様々な形状が考えられる。
【0031】
左側変位センサ7Lは、左側変位センサ7L(の検出点)から複数の測定ポイント9それぞれまでの複数の(センサ・タイヤ間)測定距離を検出して距離情報を得る距離検出機能を有している。なお、右側変位センサ7Rも左側変位センサ7Lと同様、
図3で示した断面構成及び距離検出機能を有していることは勿論である。
【0032】
図4はローラ旋回機構3の構成を模式的に示す説明図である。同図に示すローラ旋回機構3は左側旋回機構(ローラ旋回機構3L)及び右側旋回機構(ローラ旋回機構3R)それぞれに共通の構造である。ローラ旋回機構3Lは、ローラ旋回機構3L及びローラ旋回機構3Rを総称して単に「ローラ旋回機構3」と称する場合がある。
【0033】
ローラ旋回機構3は旋回構造体31(ローラ装置2)、旋回軸受34、基台36、及び旋回用モータ42(42L,42R)を主要構成要素として含んでいる。旋回構造体31は旋回台32(32L,32R)及び旋回ベッド35を含み、ローラ対20を有するローラ装置2と一体化されている。ローラ旋回機構3は、
図3では図示を省略している後述するモータドライブ装置19及びエンコーダ55を構成要素として含んでいる。
【0034】
旋回用モータ42は速度制御が可能なギヤ付モータである。旋回用モータ42の先端にはギヤが取り付けられ、基台36の外周に取り付けられたギヤ(図示せず)とかみ合わせている。したがって、旋回用モータ42の回転により、旋回ベッド35を旋回させることができる。
【0035】
旋回軸受34は旋回可能に旋回ベッド35を支持しており、旋回軸受34の中心を旋回中心として、旋回用モータ42の動力で旋回ベッド35を旋回させている。旋回ベッド35の回転に伴い、旋回構造体31が回転する。
【0036】
このように、ローラ旋回機構3は、旋回用モータ42によって旋回される旋回構造体31を有している。したがって、ローラ旋回機構3Lは、旋回用モータ42Lの動力で旋回構造体31を旋回させることにより、
図2に示すように、旋回台32Lがローラ旋回方向R2に沿って旋回する。同様に、ローラ旋回機構3Rは、旋回用モータ42Lの動力で旋回構造体31を旋回させることにより、
図2に示すように、旋回台32Rがローラ旋回方向R2に沿って旋回する。
【0037】
以下、左側変位センサ7L及び右側変位センサ7Rを総称する場合は単に「変位センサ7」と称し、左操舵角情報S7L及び右操舵角情報S7Rを総称する場合は単に「操舵角情報S7」と称する場合がある。
【0038】
図5はタイヤ6に設けられた距離測定領域90(測定対象領域)の内容を模式的に示す説明図である。同図に示すように、距離測定領域90内において複数の測定ポイント9として8つの測定ポイント91~98が設けられる。8つの測定ポイント91~98は複数の測定ポイントの一例であり、測定ポイントの数が8つに限定されないことは勿論である。
【0039】
図6は変位センサ7による操舵角情報S7の取得方法を示すフローチャートである。以下、
図5及び
図6を参照して操舵角情報S7の取得内容を説明する。
【0040】
まず、ステップST1において、測定ポイント座標演算処理を実行する。測定ポイント座標演算処理は、以下の部分ステップST1-1及びST1-2を含んでいる。
【0041】
ステップST1-1は、「変位センサ7から測定ポイント91~98それぞれへの距離を測定距離L91~L98として得る」部分ステップである。変位センサ7は、変位センサ7から測定ポイント91~98までの距離を検出して、測定距離L91~L98を得ている。このように、変位センサ7は、変位センサ7から複数の測定ポイント(測定ポイント91~98)それぞれまでの複数の測定距離(測定距離L91~L98)を得る距離検出機能を有している。
【0042】
ステップST1-2は、「測定距離L91~L98から測定ポイント91~98の水平面(XY平面)上における座標位置を測定座標C91~C98として得る」部分ステップである。
【0043】
このように、部分ステップST1-1及びST1-2を含む測定ポイント座標演算処理(ST1)を実行することにより、複数の測定ポイントである測定ポイント91~98における測定座標C91~C98を複数の測定座標として得ることができる。
【0044】
次に、ステップST2において、ステップST1で取得した、各々が座標位置を示す測定座標C91~C98に基づき、回帰線であるタイヤ用近似直線を求める。このタイヤ用近似直線がタイヤ6の方向を示す直線となる。
【0045】
その後、ステップST3において、予め準備した基準方向とタイヤ用近似直線との間に形成される角度から、タイヤ切れ角度を得る。なお、本実施の形態では、基準方向として、車両60の前後方向である直進方向(Y方向)等を示す固定基準方向が採用されている。したがって、ローラ旋回機構3Lで得られたタイヤ切り角度が左タイヤ切れ角度となり、ローラ旋回機構3Rで得られたタイヤ切れ角度が右タイヤ切れ角度となる。
【0046】
そして、ステップST4において、変位センサ7は、ステップST3で算出されたタイヤ切れ角度を示す操舵角情報S7を出力する。すなわち、操舵角情報S7は角度変位量としてタイヤ切れ角度を示している。
【0047】
このように、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、距離検出機能を有する変位センサ7を用いて、タイヤ6に設けられた距離測定領域90(測定対象領域)を検出対象として、角度変位量であるタイヤ切れ角度を求めることができる。
【0048】
したがって、左側変位センサ7Lは第1種左タイヤの基準方向に対する角度である左タイヤ切れ角度を示す左操舵角情報S7Lを検出し、右側変位センサ7Rは第1種右タイヤの前記基準方向に対する角度である右タイヤ切れ角度を示す右操舵角情報S7Rを検出する。
【0049】
(シャーシダイナモメータ1のローラ駆動制御機構)
図7は本実施の形態のシャーシダイナモメータ1におけるローラ駆動制御機構の構成を模式的に示す説明図である。同図に示すように、ローラ駆動制御機構はダイナモ制御装置75、左側変位センサ7L、右側変位センサ7R及びハンドル角度センサ5を含む制御系とローラ駆動機構DM1とを主要構成要素として含んでいる。
【0050】
ローラ駆動機構DM1は、モータドライブ装置26L、26R、27L及び27R、前輪左ローラ駆動用モータ58L、前輪右ローラ駆動用モータ58R、後輪左ローラ駆動用モータ68L、後輪右ローラ駆動用モータ68R、エンコーダ59L,59R,69L及び69Rを主要構成要素として含んでいる。
【0051】
図7に示すように、上述した制御系とローラ駆動機構DM1との組合せがシャーシダイナモメータ1におけるローラ駆動制御機構となる。
【0052】
ローラ駆動制御機構は、左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rに基づき、車両60の走行状態に適合するように、4つのローラそれぞれを回転駆動するローラ駆動制御処理を実行する。
【0053】
なお、ローラ駆動制御処理は、後述するように、操舵角認識処理、旋回判定処理、ローラ駆動処理及びローラ制御処理を含んでいる。
【0054】
ダイナモ制御装置75は操舵モデルコントローラ22、接点P1~P4、及び操舵角変換テーブルT1を主要構成要素として含んでいる。
【0055】
操舵モデルコントローラ22は後述する旋回判定処理及びローラ制御処理を実行する。なお、ローラ制御処理は後述する旋回制御処理及び直進制御処理を含んでいる。
【0056】
接点P1~P4は切替信号SXを受け、切替信号SXが“H”のとき、接点P1,P3を有効にし、接点P2,P4を無効にする。一方、切替信号SXが“L”のとき、接点P1,P3を無効にし、接点P2,P4を有効にする。
【0057】
操舵角検出機構の第1の態様は、左側変位センサ7L及び右側変位センサ7Rを含む構成となる。
【0058】
左側変位センサ7Lは、第1種左タイヤにおける距離測定領域90(測定対象領域)を検出対象として、第1種左タイヤにおける左タイヤ切れ角度を検出して左操舵角情報S7Lを得る。
【0059】
右側変位センサ7Rは、第1種右タイヤにおける距離測定領域90(測定対象領域)を検出対象として、第1種右タイヤにおける右タイヤ切れ角度を検出して右操舵角情報S7Rを得る。
【0060】
操舵角検出機構の第1の態様を用いる場合、切替信号SXは“L”となり、接点P2,P4が有効とされる。したがって、接点P2を介して左操舵角情報S7Lがそのまま左操舵角情報S1Lとして操舵モデルコントローラ22に取り込まれ、接点P4を介して右操舵角情報S7Rがそのまま右旋回情報S1Rとして操舵モデルコントローラ22に取り込まれる。
【0061】
操舵角検出機構の第2の態様は、操舵モデルコントローラ22と操舵角変換テーブルT1とハンドル角度センサ5とを含む構成となる。操舵モデルコントローラ22は操舵角検出機構の第2の態様として採用される場合、後述する操舵角認識処理を実行する。
【0062】
ハンドル角度センサ5は、車両60のステアリング操作時におけるハンドル角度を検出して、検出したハンドル角度を示すハンドル角度情報S5を得る。
【0063】
操舵角変換テーブルT1は複数種の角度ペア情報を有しており、複数種の角度ペア情報は、複数種のハンドル角度に対応する形式で複数種の左タイヤ旋回角度及び複数種の右タイヤ旋回角度が示された情報であり、複数種の左タイヤ旋回角度はそれぞれ左タイヤ切れ角度に対応し、複数種の右タイヤ旋回角度はそれぞれ右タイヤ切れ角度に対応している。なお、操舵角変換テーブルT1は、例えば、特開2022-175289号公報(
図7,
図13)で開示された操舵角変換テーブルT1に対応する。
【0064】
操舵モデルコントローラ22は、ハンドル角度情報S5を受け、ハンドル角度情報S5に基づき操舵角変換テーブルT1から、左操舵角情報S1L及び右旋回情報S1Rを取得する操舵角認識処理を実行する。操舵角認識処理はローラ駆動制御処理に含まれる処理であり、操舵角検出機構として第2の態様を採用する場合にのみ実行される。
【0065】
操舵角検出機構の第2の態様を用いる場合、切替信号SXは“H”となり、接点P1,P3が有効とされる。したがって、操舵モデルコントローラ22は接点P1,P3を介して操舵角変換テーブルT1とアクセスすることができる。
【0066】
操舵角認識処理は、操舵角変換テーブルT1を参照して、複数種の左タイヤ旋回角度及び複数種の右タイヤ旋回角度のうち、ハンドル角度情報S5が示すハンドル角度に対応する左タイヤ旋回角度及び右タイヤ旋回角度を選択し、選択した左タイヤ旋回角度及び右タイヤ旋回角度を示す情報を左操舵角情報S1L及び右旋回情報S1Rとして取得する処理である。
【0067】
上述した操舵角認識処理の実行によって、操舵角変換テーブルT1において選択された左タイヤ旋回角度を示す情報が左操舵角情報S1Lとして、接点P1を介して操舵モデルコントローラ22に取り込まれ、操舵角変換テーブルT1において選択された右タイヤ旋回角度を示す情報が右操舵角情報S1Rとして、接点P3を介して操舵モデルコントローラ22に取り込まれる。
【0068】
このように、本実施の形態の操舵角検出機構は第1の態様または第2の態様を採用することにより、第1種左タイヤの基準方向(Y方向)に対する角度である左タイヤ切れ角度に対応する左タイヤ旋回角度を示す左操舵角情報S1Lと、第1種右タイヤの基準方向に対する角度である右タイヤ切れ角度に対応する右タイヤ旋回角度を示す右旋回情報S1Rとを検出することができる。
【0069】
なお、
図7で示すダイナモ制御装置75は、操舵角検出機構の第1及び第2の態様を選択的に使用する構成であるが、操舵角検出機構の第1及び第2の態様のうち少なくとも一つを使用できる構成であれば、操舵モデルコントローラ22の制御下でローラ駆動制御処理を実行することができる。
【0070】
図8は本実施の形態のシャーシダイナモメータ1におけるローラ旋回機構3の駆動系を模式的に示す説明図である。
【0071】
同図に示すように、シャーシダイナモメータ1は、旋回コントローラ15とローラ旋回機構3とを含んでいる。ローラ旋回機構3はモータドライブ装置19(19L,19R)、旋回用モータ42(42L,42R)及びエンコーダ55を主要構成要素として含んでいる。なお、旋回コントローラ15はダイナモ制御装置75内の構成要素となっている。ただし、
図8では、
図7で示した操舵角検出機構の第1及び第2の態様、操舵モデルコントローラ22等の図示を省略している。
【0072】
図8に示すように、旋回コントローラ15は、操舵角検出機構から操舵角情報S1(左操舵角情報S1L+右操舵角情報S1R)を受け、操舵角情報S1が示すタイヤ切れ角度に対応する操舵角度を求める。
【0073】
そして、旋回コントローラ15は、求めた操舵角度を指示する操舵角指示情報SGをモータドライブ装置19に出力する。モータドライブ装置19は、操舵角指示情報SGが指示する操舵角度に合致する旋回角度でのローラ旋回動作を指示する駆動制御信号S19を旋回用モータ42に出力する。なお、モータドライブ装置19は、エンコーダ55からエンコーダ情報S55をフィードバック信号として受信している。エンコーダ情報S55には旋回構造体31の基準方向に対する旋回角度の測定値が含まれる。
【0074】
したがって、モータドライブ装置19Lによって旋回用モータ42Lが駆動されることにより、ローラ旋回機構3L(左側旋回機構)は、第1種左ローラをローラ旋回方向R2に沿って旋回させる左側ローラ旋回動作を実行する。同様に、モータドライブ装置19Rによって旋回用モータ42Rが駆動されることにより、ローラ旋回機構3R(左側旋回機構)は、第1種右ローラをローラ旋回方向R2に沿って旋回させる右側ローラ旋回動作を実行する。
【0075】
図9及び
図10は、
図7で示した操舵モデルコントローラ22による制御動作を示すフローチャートである。以下、
図9及び
図10を参照して操舵モデルコントローラ22による制御動作を説明する。
【0076】
まず、ステップST10において、外部機器70からの運転開始を示す操舵運転指令信号S70の受信をトリガとしてシャーシダイナモメータ1の操舵運転が開始する。
【0077】
ステップST11において、操舵モデルコントローラ22及び旋回コントローラ15を含むコントローラが待機状態に設定される。
【0078】
その後、ステップST12において、車両60の操舵運転が開始される。すなわち、シャーシダイナモメータ1上の車両60が走行状態となる。
【0079】
次に、ステップST13において、変位センサ7(左側変位センサ7L+右側変位センサ7R)の使用の有無が確認され、変位センサ7を使用する場合(YES)はステップST14に移行し、変位センサ7を使用しない場合(NO)はステップST15に移行する。
【0080】
ステップST13がYESの場合に実行されるステップST14において、操舵角検出機構の第1の態様(左側変位センサ7L+右側変位センサ7R)が採用される。したがって、“L”の切替信号SXによって接点P1~P4のうち、接点P2,P4が有効となり、接点P1,P3が無効となる。
【0081】
その結果、左側変位センサ7Lで検出された左操舵角情報S7Lがそのまま左操舵角情報S1Lとして、右側変位センサ7Rで検出された右操舵角情報S7Rがそのまま右操舵角情報S1Rとして、操舵モデルコントローラ22に取り込まれる。
【0082】
このように、操舵角検出機構の第1の態様が採用されると、旋回コントローラ15は、左操舵角情報S7L及び右操舵角情報S7Rを左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rとして取得することができる。
【0083】
ステップST13がNOの場合に実行されるステップST15において、操舵角検出機構の第2の態様(操舵モデルコントローラ22+操舵角変換テーブルT1+ハンドル角度センサ5)が採用される。したがって、“H”の切替信号SXによって接点P1~P4のうち、接点P1,P3が有効となり、接点P2,P4が無効となる。
【0084】
その結果、ハンドル角度情報S5に基づき、操舵角変換テーブルT1内で選択された左タイヤ旋回角度を示す情報が左操舵角情報S1Lとして、操舵角変換テーブルT1内で選択された右タイヤ旋回角度を示す情報が右操舵角情報S1Rとして、操舵モデルコントローラ22に取り込まれる。
【0085】
このように、操舵角検出機構の第2の態様が採用されると、旋回コントローラ15は、操舵角認識処理が実行することにより、左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rを取得することができる。
【0086】
ステップST14またはステップST15の実行後に実行されるステップST16において、操舵モデルコントローラ22及び旋回コントローラ15を含むコントローラが駆動状態に設定される。
【0087】
操舵モデルコントローラ22は操舵モデル主要ルーチンSMに含まれるステップST17~ST23の処理とステップST24~ST26の処理と実行する。
【0088】
ステップST17において、操舵モデルコントローラ22は、車両60の走行状態が直進状態か旋回状態かを判定する旋回判定処理を実行する。
【0089】
以下、旋回判定処理について詳述する。
図11は旋回判定処理の処理内容を示す説明図である。
図11にXYZ直交座標系を記している。操舵モデルコントローラ22は左操舵角情報S1Lに基づき左操舵角θlを認識し、右操舵角情報S1Rに基づき右操舵角θrを認識している。なお、
図11では前輪側タイヤ対が第1種タイヤ対として旋回する車両60を示している。
【0090】
また、車両60のホイールベースWL、前輪トレッドTf、後輪トレッドTbは予め認識されている。また、判定用旋回半径(m)として最大旋回半径Rmaxが予め設定されている。最大旋回半径Rmaxは例えば200~500(m)の範囲で設定される。
【0091】
したがって、以下の式(1)を適用して左操舵角θlから比較用後輪左半径Rbl0を求め、以下の式(2)を適用して右操舵角θrから比較用後輪右半径Rbr0を求めることができる。
【0092】
【0093】
【0094】
上述した比較用後輪左半径Rbl0及び比較用後輪右半径Rbr0がそれぞれ比較用旋回半径(m)となる。
【0095】
そして、操舵モデルコントローラ22は、{|Rbl0|>Rmax}または{|Rbr0|>Rmax}の場合は直進状態と判定し、{|Rbl0|≦Rmax}かつ{|Rbr0|≦Rmax}の場合は操舵旋回状態と判定する。
【0096】
このように、操舵モデルコントローラ22はステップST17において、左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rに基づき、比較用旋回半径(Rbl0,Rbr0)を算出し、比較用旋回半径と判定用旋回半径(Rmax)との比較結果に基づき、車両60の走行状態が操舵旋回状態であるか直進状態であるかを判定する旋回判定処理を実行している。
【0097】
そして、ステップST18において、操舵旋回状態と判定された場合(YES)はステップST19に移行し、直進状態と判定された場合(NO)はステップST24に移行する。
【0098】
ステップST18でYESの場合に、ステップST19~ST26(ST24を除く)を含む旋回制御処理が実行され、ステップST18でNOの場合に、ステップST24~ST26を含む直進制御処理が実行される。
【0099】
図12は車両60の走行状態を模式的に示す説明図である。
図12にXYZ直交座標系を記している。以下、
図12を参照して旋回制御処理について説明する。
【0100】
まず、ステップST19において、操舵旋回中心C0を決定する。操舵旋回中心C0は、後輪基準線BL上において、後輪中心点PBから{(Rbl0+Rbr0)/2}の距離に存在する。なお、後輪基準線BLは後輪タイヤ6,6の中心を結びX方向に沿って延びる線であり、後輪中心点PBは後輪基準線BL上において後輪6,6の中心となる点である。
【0101】
その後、ステップST20において、4つのタイヤ6それぞれの操舵旋回中心C0からの操舵旋回半径(m)を求める。4つの操舵旋回半径は、後輪左半径Rbl、後輪右半径Rbr、前輪左半径Rfl、及び前輪右半径Rfrを含んでいる。
【0102】
まず、比較用旋回半径(Rbl0,Rbr0)に基づき以下の式(3)を適用することにより、後輪左半径Rblを求める。
【0103】
【0104】
次に、式(3)で求めた後輪左半径Rblから以下の式(4)を適用して後輪右半径Rbrを求める。
【0105】
【0106】
その後、式(3)で求めた後輪左半径Rblから以下の式(5)を適用して前輪左半径Rflを求める。
【0107】
【0108】
次に、式(4)で求めた後輪右半径Rbrから以下の式(6)を適用して前輪右半径Rfrを求める。
【0109】
【0110】
このように、ステップST20において、式(3)~式(6)を適用することにより、4つのタイヤ6それぞれの操舵旋回中心C0からの操舵旋回半径を求めることができる。
【0111】
そして、ステップST21において、4つのローラそれぞれの回転速度を測定する。4つのローラの回転速度(km/h)は、前輪左測定速度Mfl、前輪右測定速度Mfr、後輪左測定速度Mbl、後輪右測定速度Mbrを含んでいる。
【0112】
図7に示すように、エンコーダ59Lから前輪左ローラ駆動用モータ58Lのエンコーダ情報S59Lがモータドライブ装置26Lにフィードバックされ、モータドライブ装置26Lは、エンコーダ情報S59Lに基づき、第1種左ローラの前輪左測定速度Mflを示す前輪左モータ速度情報PV1Lを操舵モデルコントローラ22にフィードバックする。したがって、操舵モデルコントローラ22は前輪左モータ速度情報PV1Lを参照することにより、第1種左ローラの回転速度(Mfl)を認識することができる。
【0113】
エンコーダ59Rから前輪右ローラ駆動用モータ58Rのエンコーダ情報S59Rがモータドライブ装置26Rにフィードバックされ、モータドライブ装置26Rは、エンコーダ情報S59Rに基づき前輪右測定速度Mfrを示す前輪右モータ速度情報PV1Rを操舵モデルコントローラ22にフィードバックする。したがって、操舵モデルコントローラ22は前輪右モータ速度情報PV1Rを参照することにより、第1種右ローラの回転速度(Mfr)を認識することができる。
【0114】
エンコーダ69Lから後輪左ローラ駆動用モータ68Lのエンコーダ情報S69Lがモータドライブ装置27Lにフィードバックされ、モータドライブ装置27Lは、エンコーダ情報S69Lに基づき、第2種左ローラの後輪左測定速度Mblを示す後輪左モータ速度情報PV2Lを操舵モデルコントローラ22にフィードバックする。したがって、操舵モデルコントローラ22は後輪左モータ速度情報PV2Lを参照することにより、第2種左ローラの回転速度(Mbl)を認識することができる。
【0115】
エンコーダ69Rから後輪右ローラ駆動用モータ68Rのエンコーダ情報S69Rがモータドライブ装置27Rにフィードバックされ、モータドライブ装置27Rは、エンコーダ情報S69Rに基づき、第2種右ローラの後輪右測定速度Mbrを示す後輪右モータ速度情報PV2Rを操舵モデルコントローラ22にフィードバックする。したがって、操舵モデルコントローラ22は後輪右モータ速度情報PV2Rを参照することにより、第2種右ローラの回転速度(Mbr)を認識することができる。
【0116】
その後、ステップST22において、基準速度Vd(km/h)と基準旋回半径Rd(m)とを算出する。基準速度Vdは以下の式(7)から求められ、基準旋回半径Rdは以下の式(8)から求められる。
【0117】
【0118】
【0119】
次に、ステップST23において、ステップST22で得られた基準速度Vd及び基準旋回半径Rdに基づき、4つのローラそれぞれの制御目標速度(km/h)を算出する。4つの制御目標速度は、前輪左目標速度Vfl、前輪右目標速度Vfr、後輪左目標速度Vbl、後輪右目標速度Vbrを含んでいる。
【0120】
前輪左目標速度Vflは前輪左半径Rflを以下の式(9)に適用することにより算出され、前輪右目標速度Vfrは前輪右半径Rfrを以下の式(10)に適用することにより算出される。
【0121】
【0122】
【0123】
同様に、後輪左目標速度Vblは後輪左半径Rblを以下の式(11)に適用することにより算出され、後輪右目標速度Vbrは後輪右半径Rbrを以下の式(12)に適用することにより算出される。
【0124】
【0125】
【0126】
ステップST23の後に実行されるステップST25において、操舵モデルコントローラ22は、互いに異なる速度となる4つの制御目標速度(km/h)で4つのローラを回転駆動すべくモータトルクを分配する。
【0127】
その後、ステップST26において、ステップST25によるモータトルクの分配内容に沿って、操舵モデルコントローラ22は4つのローラ駆動指令を出力する。
【0128】
4つのローラ駆動指令には、前輪左モータトルク指令SL1L、前輪右モータトルク指令SL1R、後輪左モータトルク指令SL2L、及び後輪右モータトルク指令SL2Rが含まれる。
【0129】
操舵モデルコントローラ22は前輪左モータトルク指令SL1Lをモータドライブ装置26Lに出力する。モータドライブ装置26Lは、前輪左モータトルク指令SL1Lに従い前輪左目標速度Vflに達成するように前輪左ローラ駆動用モータ58Lを駆動する。その結果、前輪左ローラ駆動用モータ58Lによって第1種左ローラは前輪左目標速度Vflで回転駆動される。モータドライブ装置26Lによる前輪左ローラ駆動用モータ58Lの駆動処理の際、エンコーダ59Lからのエンコーダ情報S59Lがモータドライブ装置26Lにフィードバックされる。
【0130】
操舵モデルコントローラ22は前輪右モータトルク指令SL1Rをモータドライブ装置26Rに出力する。モータドライブ装置26Rは、前輪右モータトルク指令SL1Rに従い前輪右目標速度Vfrに達成するように前輪右ローラ駆動用モータ58Rを駆動する。その結果、前輪右ローラ駆動用モータ58Rによって第1種右ローラは前輪右目標速度Vfrで回転駆動される。モータドライブ装置26Rによる前輪右ローラ駆動用モータ58Rの駆動処理の際、エンコーダ59Rからのエンコーダ情報S59Rがモータドライブ装置26Rにフィードバックされる。
【0131】
操舵モデルコントローラ22は後輪左モータトルク指令SL2Lをモータドライブ装置27Lに出力する。モータドライブ装置27Lは、後輪左モータトルク指令SL2Lに従い後輪左目標速度Vblに達成するように後輪左ローラ駆動用モータ68Lを駆動する。その結果、後輪左ローラ駆動用モータ68Lによって第2種左ローラは後輪左目標速度Vblで回転駆動される。モータドライブ装置27Lによる後輪左ローラ駆動用モータ68Lの駆動処理の際、エンコーダ69Lからのエンコーダ情報S69Lがモータドライブ装置27Lにフィードバックされる。
【0132】
操舵モデルコントローラ22は後輪右モータトルク指令SL2Rをモータドライブ装置27Rに出力する。モータドライブ装置27Rは、後輪右モータトルク指令SL2Rに従い後輪右目標速度Vbrに達成するように後輪右ローラ駆動用モータ68Rを駆動する。その結果、後輪右ローラ駆動用モータ68Rによって第2種右ローラは後輪右目標速度Vbrで回転駆動される。モータドライブ装置27Rによる後輪右ローラ駆動用モータ68Rの駆動処理の際、エンコーダ69Rからのエンコーダ情報S69Rがモータドライブ装置27Rにフィードバックされる。
【0133】
このように、操舵モデルコントローラ22は、最終的に4つのローラ駆動指令(SL1L、SL1R、SL2L、及びSL2R)を出力するローラ制御処理として旋回制御処理を実行する。
【0134】
なお、ステップST22の変形例として、基準速度Vd及び基準旋回半径Rd算出用の式(7)及び式(8)の内容を車両60の諸元に応じて適宜変更する態様も考えられる。
【0135】
次に、ステップST18でNOの場合に実行されるステップST24~ST26を含む直進制御処理を説明する。
【0136】
ステップST24において、4つのローラそれぞれの制御目標速度(km/h)を同一の共通速度に設定する。すなわち、前輪左目標速度Vfl、前輪右目標速度Vfr、後輪左目標速度Vbl及び後輪右目標速度Vbrは同一の共通速度に設定される。
【0137】
ステップST24の後に実行されるステップST25において、操舵モデルコントローラ22は、4つの制御目標速度で4つのローラを回転駆動すべくモータトルクを分配する。
【0138】
その後、ステップST26において、ステップST25によるモータトルクの分配内容に沿って、操舵モデルコントローラ22は4つのローラ駆動指令を出力する。
【0139】
このように、操舵モデルコントローラ22は、最終的に4つのローラ駆動指令(SL1L、SL1R、SL2L、及びSL2R)を出力するローラ制御処理として直進制御処理を実行する。
【0140】
上述したように、操舵モデルコントローラ22は、車両60の走行状態が操舵旋回状態であると判定された旋回判定時におけるローラ制御処理として、ステップST19~ST26(ステップST24を除く)を含む旋回制御処理を実行している。
【0141】
一方、操舵モデルコントローラ22は、車両60の走行状態が直進状態であると判定された直進判定時におけるローラ制御処置として、ステップST24~ST26を含む直進制御処理を実行している。このように、操舵モデルコントローラ22の制御下で実行されるローラ制御処理は旋回制御処理及び直進制御処理を含んでいる。
【0142】
そして、ローラ制御処理に応答して、ローラ駆動機構DM1は、4つのローラに対応する4つのローラ駆動指令(SL1L、SL1R、SL2L、及びSL2R)に基づき、対応する4つのローラを回転駆動するローラ駆動処理を実行する。
【0143】
図13は、旋回コントローラ15の制御下で行うローラ旋回機構3の旋回制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0144】
同図を参照して、ステップST31において、第1の態様または第2の態様の操舵角検出機構を用いて操舵角情報S1を受信する。操舵角情報S1は左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rを含んでいる。
【0145】
その後、ステップST32において、旋回コントローラ15は、ステップST31で求めた操舵角度(左操舵角度,右操舵角度)を指示する操舵角指示情報SGをモータドライブ装置19に出力する。
【0146】
そして、ステップST33において、モータドライブ装置19が旋回用モータ42に駆動制御信号S19を出力するモータ制御により、ローラ旋回機構3にローラ旋回動作を実行させる。
【0147】
この際、ローラ旋回機構3によるローラ旋回動作は、操舵角指示情報SGが指示する操舵角度に対応する旋回角度で旋回構造体31が旋回するように実行される。
【0148】
このように、ローラ旋回制御部である旋回コントローラ15は操舵角指示情報SGを出力することにより、
図13で示すローラ旋回処理を実行している。このローラ旋回処理は、ローラ対20とタイヤ6とが所定の位置関係になるように、ローラ旋回機構3にローラ旋回動作を実行させる処理となる。
【0149】
なお、ローラ旋回機構3はローラ旋回機構3L及びローラ旋回機構3Rを含んでおり、モータドライブ装置19はローラ旋回機構3L用のモータドライブ装置19Lとローラ旋回機構3R用のモータドライブ装置19Rとを含んでいる。また、旋回用モータ42はローラ旋回機構3L用の旋回用モータ42Lとローラ旋回機構3R用の旋回用モータ42Rを含んでいる。
【0150】
したがって、ローラ旋回機構3Lによるローラ旋回処理によって、第1種左ローラと第1種左タイヤとの左側位置関係が所定の位置関係になるように、第1種左ローラを旋回駆動することできる。
【0151】
同様に、ローラ旋回機構3Rによるローラ旋回処理によって、第1種右ローラと第1種右タイヤとの右側位置関係が所定の位置関係になるように、第1種右ローラを旋回駆動することできる。
【0152】
なお、
図13で示したステップST31~ST33を含む旋回コントローラ15の制御下で行われる処理は、
図9及び
図10で示したステップST10~ST26を含む操舵モデルコントローラ22の制御下で行われる処理と並行して実行される。
【0153】
(効果)
本実施の形態1のシャーシダイナモメータ1は、
図7で示すダイナモ制御装置75、左側変位センサ7L、右側変位センサ7R、ハンドル角度センサ5及びローラ駆動機構DM1を含むローラ駆動制御機構を有している。
【0154】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1におけるローラ駆動制御機構は、操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rに基づき、車両60の走行状態(操舵旋回状態,直進状態)に適合するように、4つのローラそれぞれを回転駆動するローラ駆動制御処理を実行する。なお、前述したように、ローラ駆動制御処理は、操舵角認識処理、旋回判定処理、ローラ駆動処理及びローラ制御処理(旋回制御処理、直進制御処理)を含んでいる。
【0155】
したがって、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、車両60の走行状態が操舵旋回状態であっても、車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0156】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1における操舵モデルコントローラ22は、
図10で示したステップST17,ST18を含む旋回判定処理を実行することにより、車両60の走行状態が操舵旋回状態であるか直進状態であるか精度良く判定することができる。
【0157】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、車両60の操舵旋回状態と直進状態とで処理内容を変えてローラ制御処理を実行することにより、車両60の走行試験を精度良く行うことができる。
【0158】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、4つのローラ駆動指令を出力するローラ制御処理を実行する操舵モデルコントローラ22と、4つのローラ駆動指令に基づき4つのローラを回転駆動するローラ駆動処理を実行するローラ駆動機構DM1とを備えている。
【0159】
このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、操舵モデルコントローラ22の制御下及びローラ駆動機構DM1の駆動下で、車両60の走行状態に適合して、4つのローラを精度良く回転駆動することができる。
【0160】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1における操舵モデルコントローラ22は、ステップST19~ST26(ST24を除く)を含む旋回制御処理を実行することにより、車両60の操舵旋回状態に適合して、4つのローラを精度良く回転駆動するための4つのローラ駆動指令を出力することができる。
【0161】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1における操舵モデルコントローラ22は、ステップST24~ST26を含む直進制御処理を実行することにより、車両60の直進状態に適合して、4つのローラを精度良く回転駆動するための4つのローラ駆動指令を比較的簡単に出力することができる。
【0162】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、左側変位センサ7L及び右側変位センサ7Rを操舵角検出機構の第1の態様として利用している。
【0163】
左側変位センサ7Lは、第1種左タイヤに設けられた測定対象領域(距離測定領域90)を検出対象としているため、精度の高い左タイヤ切れ角度を検出することができる。同様に、右側変位センサ7Rは、第1種右タイヤに設けられた測定対象領域を検出対象としているため、精度の高い右タイヤ切れ角度を検出することができる。
【0164】
その結果、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、操舵角検出機構の第1の態様を用いることにより、車両60の走行状態が操舵旋回状態であっても、車両60の走行試験をより精度良く行うことができる。
【0165】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、ハンドル角度センサ5、操舵角変換テーブルT1及び操舵モデルコントローラ22による操舵角認識処理を、操舵角検出機構の第2の態様として利用している。
【0166】
したがって、シャーシダイナモメータ1における操舵モデルコントローラ22は、ハンドル角度情報S5に基づき、操舵角変換テーブルT1を参照して操舵角認識処理を実行することができる。このため、本実施の形態のシャーシダイナモメータ1は、タイヤ6の膨らみ等の外乱ノイズが発生しても、左タイヤ切れ角度及び右タイヤ切れ角度に対応する正確な左タイヤ旋回角度及び右タイヤ旋回角度を示す情報を、左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rとして認識することができる。
【0167】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1におけるローラ旋回機構3は、上述した左側及び右側位置関係がそれぞれ所定の位置関係になるように、左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rに精度良く同期したローラ旋回処理を実行することができる。
【0168】
なお、左側位置関係は上述した第1種左ローラ及び第1種左タイヤに関する位置関係であり、右側位置関係は上述した第1種右ローラ及び第1種右タイヤに関する位置関係である。
【0169】
(シャーシダイナモメータ1の制御方法)
本実施の形態では、シャーシダイナモメータ1の制御方法として
図9及び
図10で示した処理手順を実行している。
【0170】
すなわち、本実施の形態におけるシャーシダイナモメータ1の制御方法は、以下のステップ(X)及び(Y)を含んでいる。
【0171】
ステップ(X)…左操舵角情報S1L及び右操舵角情報S1Rに基づき比較用旋回半径(m)を算出し、比較用旋回半径と判定用旋回半径(m)との比較結果に基づき、車両60の走行状態が操舵旋回状態であるか直進状態であるかを判定する旋回判定処理を実行する。
【0172】
なお、比較用旋回半径として例えば式(1)で求めた比較用後輪左半径Rbl0や式(2)で求めた比較用後輪右半径Rbr0が考えられる。また、判定用旋回半径として上述した最大旋回半径Rmaxが考えられる。ステップ(X)は
図10のステップST17,ST18に相当する処理となる。
【0173】
ステップ(Y)…ステップ(X)によって車両60の走行状態が操舵旋回状態であると判定された旋回判定時に、旋回制御処理を実行する。
【0174】
ステップ(Y)は、
図10で示した、ステップST24除くステップST17~ST26の処理に対応する。
【0175】
上述したステップ(Y)の旋回制御処理は以下のステップ(a)~(d)を含んでいる。
【0176】
ステップ(a)…4つのタイヤ60それぞれの操舵旋回半径である4つの操舵旋回半径(m)を算出する。
【0177】
なお、4つの操舵旋回半径は、上述した式(3)を適用して算出される後輪左半径Rbl、上述した式(4)を適用して算出される後輪右半径Rbr、上述した式(5)を適用して算出される前輪左半径Rfl、上述した式(6)を適用して算出される前輪右半径Rfrを含んでいる。
【0178】
ステップ(b)…4つのローラそれぞれの回転速度である4つのローラ回転速度(km/h)を測定する。
【0179】
なお、4つのローラ回転速度は、前輪左測定速度Mfl、前輪右測定速度Mfr、後輪左測定速度Mbl、及び後輪右測定速度Mbrを含んでいる。
【0180】
ステップ(c)…4つの操舵旋回半径及び4つのローラ回転速度に基づき、4つのローラそれぞれの制御目標速度である4つの制御目標速度(km/h)を算出する。
【0181】
なお、4つの制御目標速度は、前輪左目標速度Vfl、前輪右目標速度Vfr、後輪左目標速度Vbl、及び後輪右目標速度Vbrを含んでいる。
【0182】
ステップ(d)…4つのタイヤ目標速度に基づき4つのローラ駆動指令をローラ駆動機構DM1に出力する。
【0183】
なお、4つのローラ駆動指令は、前輪左モータトルク指令SL1L、前輪右モータトルク指令SL1R、後輪左モータトルク指令SL2L、及び後輪右モータトルク指令SL2Rを含んでいる。
【0184】
ステップ(a)は
図10のステップST20に対応する処理であり、ステップ(b)は
図10のステップST21に対応する処理である。また、ステップ (c)は
図10のステップST22,ST23に対応する処理であり、ステップ (d)は
図10のステップST25,ST26に対応する処理である。
【0185】
本実施の形態のシャーシダイナモメータ1の制御方法は、上述したステップ(a)~(d)を含むステップ(Y)の旋回制御処理を実行して4つのローラ駆動指令をローラ駆動機構DM1に出力することにより、車両60の操舵旋回状態に適合して、4つのローラを回転駆動するための4つのローラ駆動指令を精度良く出力することができる。
【0186】
<その他>
なお、本実施の形態では、第1種タイヤ対を前輪側タイヤ対とし、第2種タイヤ対を後輪側タイヤ対としたが、第1種タイヤ対を後輪側タイヤ対とし、第2種タイヤ対を前輪側タイヤ対として、左操舵角θl及び右操舵角θrの検出対象を後輪側タイヤ対とし、ローラ旋回機構3及び変位センサ7を後輪側に設ける等の変形構成も可能である。
【0187】
また、上述した実施の形態では、車両60のタイヤ6を載置する「ローラ」として、ツインローラ構成のローラ対20を示したが、ローラ対20に替えてシングルローラ構成の単体のローラを用いても良い。
【0188】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0189】
1 シャーシダイナモメータ
3,3L,3R ローラ旋回機構
5 ハンドル角度センサ
6,6L,6R タイヤ
7 変位センサ
7L 左側変位センサ
7R 右側変位センサ
9,91~98 測定ポイント
15 旋回コントローラ
19,19L,19R,26L,26R,27L,27R モータドライブ装置
20 ローラ対
20B 後方ローラ
20F 前方ローラ
22 操舵モデルコントローラ
32,32L,32R 旋回台
42,42L,42R 旋回用モータ
55,59L,59R,69L,69R エンコーダ
58L 前輪左ローラ駆動用モータ
58R 前輪右ローラ駆動用モータ
60 車両
68L 後輪左ローラ駆動用モータ
68R 後輪右ローラ駆動用モータ
75 ダイナモ制御装置
DM1 ローラ駆動機構
T1 操舵角変換テーブル
【要約】
本開示は、車両の走行状態に適合して、車両の走行試験を精度良く行うことができるシャーシダイナモメータを得ることを目的とする。そして、本開示のシャーシダイナモメータ(1)における操舵モデルコントローラ(22)は、左操舵角情報(S1L)と右操舵角情報(S1R)とを用いて算出された比較用旋回半径と判定用旋回半径との比較結果に基づき、車両(60)の走行状態が操舵旋回状態であるか直進状態であるかを判定する旋回判定処理を実行する。そして、操舵モデルコントローラ(22)は、操舵旋回状態の判定時に実行するローラ制御処理として旋回制御処理を実行する。旋回制御処理は、車両(60)の操舵旋回状態に適合するように、4つのローラを回転駆動するための4つのローラ駆動指令をローラ駆動機構(DM1)に出力する処理である。