(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】二重特異性抗PSMA×抗CD28抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20250508BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250508BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20250508BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250508BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250508BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250508BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250508BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250508BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250508BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250508BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P13/08
A61P35/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2020570940
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 US2019038460
(87)【国際公開番号】W WO2019246514
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-15
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリス・スココス
(72)【発明者】
【氏名】ジャネール・ウェイト
(72)【発明者】
【氏名】エリカ・ウルマン
(72)【発明者】
【氏名】アイナー・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】エリック・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ラウリック・ハーバー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ディー・ヤンコーポラス
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/014001(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/023761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/46
A61K 39/395
A61P 13/08
A61P 35/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/13
C12N 15/62
C12N 15/63
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトPSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗原結合分子であって、
前記第1の抗原結合ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(D1-HCDR1、D1-HCDR2、およびD1-HCDR3)と、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、
前記第2の抗原結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVR内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(D2-HCDR1、D2-HCDR2、およびD2-HCDR3)と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCVR内に含まれる3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む、
上記二重特異性抗原結合分子。
【請求項2】
D1-HCDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;D1-HCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み;D1-HCDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;および、LCDR3は配列番号24のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項3】
D2-HCDR1は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;D2-HCDR2は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;D2-HCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;および、LCDR3は配列番号24のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項4】
D1-HCDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;D1-HCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み;D1-HCDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含み;
D2-HCDR1は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;D2-HCDR2は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;D2-HCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含み;ならびに
LCDR1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;および、LCDR3は配列番号24のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項5】
第1の抗原結合ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含み;および
第2の抗原結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVRと、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCVRとを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項6】
第1の重鎖およびジスルフィド結合によって相互連結された対になる軽鎖であって、前記第1の重鎖は、HCVRと、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む重鎖定常領域とを含み、且つ、前記対になる軽鎖は、LCVRと、軽鎖定常領域とを含み、ここで、前記第1の重鎖および対になる軽鎖は第1の抗原結合ドメインを含む、前記第1の重鎖および対になる軽鎖;ならびに
第2の重鎖およびジスルフィド結合によって相互連結された対になる軽鎖であって、前記第2の重鎖は、HCVRと、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む重鎖定常領域とを含み、且つ、前記対になる軽鎖は、LCVRと、軽鎖定常領域とを含み、ここで、前記第2の重鎖および対になる軽鎖は第2の抗原結合ドメインを含む、前記第2の重鎖および対になる軽鎖、
を含む、二重特異性抗体である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項7】
第1の重鎖または第2の重鎖は、両方ではないが、H435R(EU番号付け)修飾およびY436F(EU番号付け)修飾を含むCH3ドメインを含む、請求項6に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項8】
第1の重鎖の重鎖定常領域および第2の重鎖の重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプである、請求項6または7に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項9】
第1の重鎖の重鎖定常領域および第2の重鎖の重鎖定常領域は、IgG4アイソタイプである、請求項6または7に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項10】
第1の重鎖は、配列番号81のアミノ酸配列を含み、その対になる軽鎖は、配列番号83のアミノ酸配列を含み;および、第2の重鎖は、配列番号82のアミノ酸配列を含み、対になる軽鎖は、配列番号83のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項11】
ヒトCD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトPSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗原結合分子であって、
前記第1の抗原結合ドメインは、配列番号26または配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(D1-HCDR1、D1-HCDR2、およびD1-HCDR3)と、配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含み、ならびに
前記第2の抗原結合ドメインは、配列番号34のアミノ酸配列を含むHCVR内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(D2-HCDR1、D2-HCDR2、およびD2-H
CDR3)と、配列番号42のアミノ酸配列を含むLCVR内に含まれる3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む、
上記二重特異性抗原結合分子。
【請求項12】
D1-HCDR1は、配列番号28または配列番号60のアミノ酸配列を含み;D1-HCDR2は、配列番号30または配列番号62のアミノ酸配列を含み;D1-HCDR3は、配列番号32または配列番号64のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み;および、LCDR3は配列番号48のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項13】
D2-HCDR1は、配列番号36のアミノ酸配列を含み;D2-HCDR2は、配列番号38のアミノ酸配列を含み;D2-HCDR3は、配列番号40のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号44のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号46のアミノ酸配列を含み;および、LCDR3は配列番号48のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項14】
D1-HCDR1、D1-HCDR2、およびD1-HCDR3は、それぞれ、配列番号28、30、および32、または配列番号60、62、および64のアミノ酸配列を含み;
D2-HCDR1、D2-HCDR2、およびD2-HCDR3は、それぞれ、配列番号36、38、および40のアミノ酸配列を含み;ならびに
LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれ、配列番号44、46、および48のアミノ酸配列を含む、
請求項11に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項15】
第1の抗原結合ドメインは、配列番号26または配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)と
、配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)とを含み;および
第2の抗原結合ドメインは、配列番号34のアミノ酸配列を含むHCVRと、配列番号42のアミノ酸配列を含むLCVRとを含む、
請求項11~14のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項16】
第1の重鎖およびジスルフィド結合によって相互連結された対になる軽鎖であって、前記第1の重鎖は、HCVRと、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む重鎖定常領域とを含み、且つ、前記対になる軽鎖は、LCVRと、軽鎖定常領域とを含み、ここで、前記第1の重鎖および対になる軽鎖は第1の抗原結合ドメインを含む、前記第1の重鎖および対になる軽鎖;ならびに
第2の重鎖およびジスルフィド結合によって相互連結された対になる軽鎖であって、前記第2の重鎖は、HCVRと、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む重鎖定常領域とを含み、且つ、前記対になる軽鎖は、LCVRと、軽鎖定常領域とを含み、ここで、前記第2の重鎖および対になる軽鎖は第2の抗原結合ドメインを含む、前記第2の重鎖および対になる軽鎖、
を含む、二重特異性抗体である、
請求項11~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項17】
第1の重鎖または第2の重鎖は、両方ではないが、H435R(EU番号付け)修飾およびY436F(EU番号付け)修飾を含むCH3ドメインを含む、請求項16に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項18】
第1の重鎖の重鎖定常領域および第2の重鎖の重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプである、請求項16または17に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項19】
第1の重鎖の重鎖定常領域および第2の重鎖の重鎖定常領域は、IgG4アイソタイプである、請求項16または17に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項20】
前記抗原結合分子が:
(a)1×10
-12M~1×10
-6MのEC
50値で、CD28を発現するヒトT細胞に結合する;
(b)ヒトCD28を発現するヒト細胞、およびカニクイザルCD28を発現するカニクイザル細胞に結合する;
(c)インビトロでヒトおよびカニクイザル末梢血単核細胞(PBMC)の増殖を誘発する;
(d)ヒト全血におけるサイトカイン放出およびCD25上方調節を誘発する;または
(e)ヒト前立腺細胞のT細胞媒介性細胞傷害を誘発する、
請求項1~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項24】
(a)請求項1~20のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子、(b)請求項22に記載の核酸分子、(c)請求項23に記載の発現ベクター、または(d)請求項1~20のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子の、第1の抗原結合ドメインのHCVRをコードする核酸分子を含む発現ベクター、第2の抗原結合ドメインのHCVRをコードする核酸分子を含む発現ベクター、並びに第1および第2の抗原結合ドメインのLCVRをコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項25】
PSMAを発現する癌を治療する方法において使用するための、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
癌は、前立腺癌である、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
方法は、第2の治療
薬を対象に投与することをさらに含む、
または、放射線療法をさらに含む、請求項25または26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記第2の治療
薬は、抗腫瘍剤
、抗体薬物複合体、抗腫瘍剤と複合化された二重特異性抗体、チェックポイント阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記第2の治療薬は、チェックポイント阻害剤である、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記チェックポイント阻害剤は、PD-1またはCTLA4を標的とする、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
チェックポイント阻害剤は、PD-1を標的とし、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、およびセミプリマブからなる群から選択される、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
チェックポイント阻害剤は、CTLA4を標的とし、イピリムマブである、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記第2の治療薬が、ヒトCD3に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトPSMAに結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体である、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
二重特異性抗原結合分子の産生を可能にする条件下で請求項24に記載の宿主細胞を培養すること、および産生された二重特異性抗原結合分子を回収することを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子を産生する方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法で産生した二重特異性抗原結合分子と、好適な担体を含む薬学的組成物を製剤化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2018年6月21日に出願された米国仮特許出願第62/688,227号、2018年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/781,930号、2018年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/781,980号、および2019年3月8日に出願された米国仮特許出願第62/815,878号に関し、それらの優先権を主張する。前述の出願の内容全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年6月20日に作成された上記のASCIIコピーは、10367WO01_118003-45220_SL.TXTという名前であり、サイズは48,690バイトである。
【0003】
本発明はまた、CD28およびPSMAなどの標的分子に結合する二重特異性抗原結合分子、ならびにそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
CD28は、T細胞の表面上で発現されるI型膜貫通タンパク質であり、これはホモ二量体として組み立てられた単一の細胞外Ig-V様ドメインを有する。CD28は、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)タンパク質の受容体であり、抗原提示細胞(APC)上で発現されるCD80またはCD86によって活性化される。CD28のCD80またはCD86への結合は、T細胞の活性化および生存に重要な共刺激シグナルを提供する。T細胞受容体(TCR)に加えてCD28を介したT細胞刺激は、様々なインターロイキンの産生に強力なシグナルを提供する。CD28は、TCR活性化後、NFκB転写因子によって制御される経路などの細胞シグナルを増強する。CD28共シグナルは、T細胞の分化、増殖、サイトカイン放出、および細胞死などの効果的なT細胞活性化に重要である。
【0005】
抗CD28抗体は、T細胞の活性化を含む治療目的のために提案されている。1つの特定の抗CD28抗体であるTGN1412(抗CD28スーパーアゴニスト)が、臨床試験で使用された。TGN1412は、サイトカインストームを誘発したが、これは毒性学またはエクスビボでのヒトPBMC研究では予測されなかった。2006年には、6人の健康なボランティアに、0.1mg/kgの用量でTGN1412(抗CD28スーパーアゴニスト)を静脈内投与した。2時間以内に、6人の患者全員が、重大な炎症反応(サイトカインストーム)を有した。16時間以内に、全ての患者が多臓器不全に陥った。対象をコルチコステロイドで治療したところ、サイトカインレベルは、2~3日以内に正常レベルに戻った。第1相試験(CRSに関連)での0.1mg/kgの開始用量は、カニクイザルにおける50mg/kgの無毒性量(NOAEL)の500倍量に基づいた(非特許文献1)。
【0006】
カニクイザルの毒性学研究では、ヒトにおいて観察されたサイトカイン応答を予測することができなかった。
【0007】
PSMA(前立腺特異的膜抗原)/FOLH1は、「十分に特徴付けられた」腫瘍標的である。PSMAは、前立腺癌において過剰発現されるII型膜貫通型糖タンパク質である。グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GPC)としても知られている。正常なヒトの前立腺では、PSMAは、前立腺管を取り巻く上皮の細胞質および頂端側に関連している。前立腺組織の異形成および/または腫瘍性形質転換は、PSMAの頂端膜から管の管腔表面への移動をもたらす。PSMAは、構成的にエンドサイトーシスされ、脱落しない。PSMAは、様々な臨床ADC(抗体薬物結合体)試験およびイメージングアプローチの標的である。PSMAは、ヒト前立腺腺癌で高度に発現され、転移(リンパ節)と一致する。前立腺腫瘍では、PSMAの発現レベルは、病期およびグレードに応じて増加する。アンドロゲン非依存性前立腺癌への移行は、最終的に発現の増加につながる。興味深いことに、PSMAの発現は、一部の固形腫瘍(結腸癌、肺癌、乳癌、腎癌、および膀胱癌のサブタイプを含む)の腫瘍新生血管系でも報告されている。
【0008】
PSMAは、正常組織中でも発現される。最も強い発現は、前立腺上皮細胞、十二指腸、尿細管細胞、唾液腺、および星状細胞に見られる。PSMAは、卵管、乳房で弱く発現され、子宮頸部の内皮ではめったに発現されない。
【0009】
CD28および標的抗原(PSMAなど)の両方に結合する二重特異性抗原結合分子は、標的抗原を発現する細胞の特異的標的化およびT細胞媒介性殺滅が望まれる治療環境において有用である。薬学的組成物での使用に安全な抗CD28抗体に対する必要性も存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Suntharalingam,et al.,Cytokine Storm in a Phase 1 Trial of the Anti-CD28 Monoclonal Antibody TGN1412,NEJM 355:1018-1028(2006)
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本発明は、CD28および標的抗原に結合する二重特異性抗原結合分子を提供する。ある特定の例示的な実施形態によると、二重特異性抗原結合分子は、CD28およびPSMAに結合し、そのような二重特異性抗原結合分子は、本明細書では「抗CD28/抗PSMA二重特異性分子」とも称される。抗CD28/抗PSMA二重特異性分子の抗PSMA部分は、PSMAを発現する腫瘍細胞(例えば、前立腺腫瘍細胞)を標的化するのに有用であり、二重特異性分子の抗CD28部分は、T細胞を活性化するのに有用である。腫瘍細胞上のPSMAおよびT細胞上のCD28の同時結合は、活性化T細胞によって標的腫瘍細胞の指向性殺滅(細胞溶解)を誘導する。したがって、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性分子は、とりわけ、PSMA発現腫瘍(例えば、前立腺癌)に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患および障害を治療するために有用である。
【0012】
本発明のこの態様に従う二重特異性抗原結合分子は、ヒトCD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合分子とを含む。本発明は、各抗原結合ドメインが、軽鎖可変領域(LCVR)と対をなす重鎖可変領域(HCVR)を含む、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。本発明のある特定の例示的な実施形態では、抗CD28抗原結合ドメインおよび抗PSMA抗原結合ドメインが各々、共通のLCVRと対をなす異なる別個のHCVRを含む。
【0013】
本発明は、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、表1に記載されるHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかを含む。CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインはまた、表1に記載されるLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかを含んでもよい。ある特定の実施形態によると、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、表1に記載されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のうちのいずれかを含む。本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、表1に記載される重鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のうちのいずれか、および/または表1に記載される軽鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のうちのいずれかを含む。
【0014】
ある特定の実施形態によると、本発明は、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号10、26、および58からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0015】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号18、42、および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0016】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号10/18、26/42、および58/66からなる群から選択されるHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む。
【0017】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号16、32、および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号24、48、および72からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列とを含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号16/24、32/48、および64/72からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0019】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を提供し、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号12、28、および60からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列、配列番号14、30、および62からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列、配列番号20、44、および68からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列、ならびに配列番号22、46、および70からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0020】
本発明のある特定の非限定的で例示的な抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、それぞれ配列番号12-14-16-20-22-24、28-30-32-44-46-48、および60-62-64-68-70-72からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、CD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
【0021】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号2、34、および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、または少なくとも90%、少な
くとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0022】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号18、42、および66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0023】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号2/18、34/42、および50/66からなる群から選択されるHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む。
【0024】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性分子を提供し、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号8、40、および56からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号24、48、および72からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列とを含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号8/24、40/48、および56/72からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
【0026】
本発明はまた、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を提供し、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号4、36、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列、配列番号6、38、および54からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列、配列番号20、44、および68からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列、ならびに配列番号22、46、および70からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0027】
ある特定の非限定的で例示的な抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、それぞれ配列番号4-6-8-20-22-24、36-38-40-44-46-48、および52-54-56-68-70-72からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0028】
関連する実施形態では、本発明は、PSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号2/18、34/42、および50/66からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列内に含有される重鎖および軽鎖CDRドメインを含む、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子のHCVR、LCVR、またはCDR配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、本明細書の表1に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子、および表1に記載されるポリヌクレオチド配列のうちの2つ以上をその任意の機能的組み合わせまたは配置で含む核酸分子を含む。本発明の核酸を保有する組み換え発現ベクター、およびそのようなベクターが導入された宿主細胞もまた、抗体の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって、および産生された抗体を回収することによって、抗体を産生する方法と同様に本発明に含まれる。
【0030】
本発明は、CD28に特異的に結合する前述の抗原結合ドメインのうちのいずれかが、PSMAに特異的に結合する前述の抗原結合ドメインのいずれかと組み合わされ、連結され、または他の方法で関連付けられて、CD28およびPSMAに結合する二重特異性抗原結合分子を形成する、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。
【0031】
本発明は、修飾グリコシル化パターンを有する抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。いくつかの用途において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、または例えば抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)機能を増大させるためのオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠失している抗体は有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照)。他の用途において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞傷害作用(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子と、第2の治療薬との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療薬は、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わされる任意の薬剤である。抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わせることができる例示的な薬剤は、本明細書の他所に詳細に論じられている。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を使用してPSMAを発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、これらの治療方法は、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む治療有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0034】
本発明はまた、PSMA発現細胞に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患または障害の治療のための薬剤の製造における本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子の使用を含む。
【0035】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を使用してPSMAを発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、CD3に結合する他の抗腫瘍二重特異性抗原結合分子と組み合わされる(例えば、抗CD28/抗PSMAは抗CD3/抗PSMA抗体と組み合わされる)。
【0036】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を使用してPSMAを発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、PD-1またはCTLA-4を標的とするチェックポイント阻害剤と組み合わされる(例えば、抗CD28/抗PSMAは抗PD-1抗体と組み合わされる)。
【0037】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を使用してPSMAを発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、CD3に結合する他の抗腫瘍二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD28/抗PSMAは抗CD3/抗PSMA二重特異性抗体と組み合わされる)およびPD-1またはCTLA-4を標的とするチェックポイント阻害剤と組み合わされる(例えば、抗CD28/抗PSMAは抗PD-1抗体と組み合わされる)。
【0038】
他の実施形態は、後述の詳細な説明の精査から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】例示的な抗CD28/PSMA二重特異性抗体の構造を示す概略図である。
【
図2】共刺激リガンド発現を導入した操作細胞株における腫瘍成長阻害を示すグラフである。3つの腫瘍細胞株、B16F10.9、EL4、およびMC38は、共刺激リガンドまたはGFPを対照として発現するように操作された。
図2は、生存率(%)を示すグラフである。腫瘍が2000mm
3超えて成長したとき、マウスを安楽死させた。
【
図3】抗PSMA×CD28二重特異性抗体を試験するための一次および操作されたバイオアッセイを示す概略図である。
【
図4A】CD4+T細胞および操作されたJRT3.T3/1G4/hCD28細胞の活性化が、一次刺激(REGN2281)およびHEK293/hCD20細胞上で発現されるPSMAの存在下で抗hPSMA×hCD28によって強化されたことを示す。
【
図4B】CD4+T細胞および操作されたJRT3.T3/1G4/hCD28細胞の活性化が、一次刺激(REGN2281)およびHEK293/hCD20細胞上で発現されるPSMAの存在下で抗hPSMA×hCD28によって強化されたことを示す。
【
図5A】
図5A~5Hは、PSMAを導入した操作細胞株において、PSMA×CD28二重特異性抗体が、抗CD20×CD3二重特異性抗体によるTCR刺激の存在下でT細胞活性化を増強することを示す。
図5Aは、二重特異性抗体の作用様式を示す概略図である。
【
図5B】
図5Bは、免疫シナプスに出入りするCD28蛍光の比率の定量化を示すグラフである。PSMA操作標的細胞(HEK293)およびヒトJurkat T細胞を、蛍光標識された二重特異性抗体(抗PSMA×CD28、抗CD20×CD3)と37℃で1時間共培養し、穏やかに固定して抗CD28で染色した。グループごとに分析された細胞の数を棒グラフに示す。
【
図5C】
図5Cおよび5Dは、PSMAで操作された標的細胞とともに培養されたヒトT細胞の増殖を示す。示されているデータは、平均±SEMである。データは、少なくとも2回の実験を表す。
図5Cは、0.5nMのhIgG4sアイソタイプ対照またはPSMA×CD28の存在下でのCD20×CD3の用量滴定を示すグラフを提供する。
【
図5D】
図5Dは、5pMのhIgG4sアイソタイプ対照またはCD20×CD3の存在下でのPSMA×CD28または示された対照の用量滴定を示すグラフを提供する。
【
図5E】
図5E~5Gは、5pMのhIgG4sアイソタイプ対照(各図の下パネル)またはCD20×CD3(各図の上パネル)の存在下での、パネルの上部に示されているようなTAA(PSMAまたはCD20)操作された標的細胞とともに培養されたヒトT細胞の増殖およびサイトカイン放出を示すグラフである。データは、平均±SEMである。データは、少なくとも3回の実験を表す。
図5Eは、増殖を示すグラフである。
【
図5H】
図5Hは、抗PSMA×CD28および抗PSMA×CD3二重特異性抗体が、PSMA発現細胞に同時に結合できることを示すグラフである。22RV1細胞を、20mg/mlのPSMA×CD3、またはPSMAxCD28二重特異性抗体と同様の抗PSMAアームを内包する20mg/mlの抗PSMA抗体を含むフローサイトメトリー緩衝液(PBS+1%FBS)中、4℃で30分間プレインキュベートした。インキュベーション後、細胞をフローサイトメトリー緩衝液で洗浄し、Alexa647で直接標識した5mg/mlのPSMA×CD28とともに4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【
図6A】抗PSMA×CD28が、前立腺癌およびヒトまたはカニクイザルT細胞の存在下で抗PSMA×CD3の細胞傷害性効能を強化したことを示す。
【
図6B】抗PSMA×CD28が、前立腺癌およびヒトまたはカニクイザルT細胞の存在下で抗PSMA×CD3の細胞傷害性効能を強化したことを示す。
【
図7A】
図7A~7Hは、内在性PSMAを有する癌細胞株において、PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMA×CD3二重特異性抗体によるTCR刺激の存在下でT細胞活性化を増強することを示すグラフを提供する。
図7A~7Dの場合、ヒトT細胞は、内在性PSMA発現を伴う癌標的細胞(前立腺癌株C4-2)および示された二重特異性抗体とともに96時間培養された。
図7Aは、腫瘍細胞の殺滅を示すグラフである。示されているデータは、生細胞のパーセンテージである。
【
図7C】
図7Cは、CD4T細胞の数およびCD25
+細胞の頻度をCD4T細胞のパーセンテージとして示すグラフを提供する。
【
図7D】
図7Dは、CD8T細胞の数およびCD25
+細胞の頻度をCD8T細胞のパーセンテージとして示すグラフを提供する。
【
図7E】
図7E~7Gの場合、カニクイザルT細胞は、内在性PSMA発現を伴う癌細胞(前立腺癌株C4-2)および示された二重特異性抗体とともに96時間培養された。
図7Eは、腫瘍細胞の殺滅を示すグラフである。示されているデータは、生細胞のパーセンテージである。
【
図7F】
図7Fは、CD4T細胞の数およびCD25
+細胞の頻度をCD4T細胞のパーセンテージとして示すグラフを提供する。
【
図7G】
図7Gは、CD8T細胞の数およびCD25
+細胞の頻度をCD8T細胞のパーセンテージとして示すグラフを提供する。
【
図7H】
図7Hは、フローサイトメトリーによって測定された細胞標的への抗体結合を示すグラフを提供する。
【
図8】TGNスーパーアゴニストの特性と本発明の抗CD28抗体の特性との比較を示す。
【
図9A】PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMA×CD3による抗腫瘍免疫、および誘発されたT細胞活性化を強化することを示すグラフおよびプロットを提供する。MC38/hPSMA腫瘍細胞を、hCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスの皮下に移植した。0、3、および7日目に、マウスを5mg/kgの示された二重特異性抗体で処置した。
図9Aは、経時的な腫瘍体積を示す。値は、平均±SEMを表し、群あたり3~7匹のマウスを用いた3回の実験を表す。P値は、二元配置分散分析で計算された。(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001、および****、p<0.0001)。
【
図9B】PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMA×CD3による抗腫瘍免疫、および誘発されたT細胞活性化を強化することを示すグラフおよびプロットを提供する。MC38/hPSMA腫瘍細胞を、hCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスの皮下に移植した。0、3、および7日目に、マウスを5mg/kgの示された二重特異性抗体で処置した。
図9Bは、各処置群の各クラスター内の細胞のパーセンテージを示すグラフ(上パネル)、示されたクラスターのviSNEプロットへのオーバーレイ(下パネル)を提供する。
【
図9C】PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMA×CD3によって誘発されるサイトカイン放出を強化することを示す棒グラフを提供する。0日目の投与後4時間で、血清サイトカインのためにマウスから採血した。統計的有意性は、アイソタイプ**p<0.01および***p<0.0001と比較して一元配置分散分析で計算された。n=7匹のマウス/群。データは、代表的な3回の実験である。
【
図9D】PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMA×CD3によって誘発されるサイトカイン放出を強化することを示す棒グラフを提供する。0日目の投与後4時間で、血清サイトカインのためにマウスから採血した。統計的有意性は、アイソタイプ**p<0.01および***p<0.0001と比較して一元配置分散分析で計算された。n=7匹のマウス/群。データは、代表的な3回の実験である。
【
図9E】PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMA×CD3によって誘発されるT細胞活性化を強化することを示すグラフおよびプロットを提供する。
【
図10】PSMA×CD28二重特異性抗体または親CD28二価抗体が、CD3/CD28/PSMAヒト化マウスにおいて血清サイトカイン産生を誘発しなかったことを示す。
【
図11】CD28スーパーアゴニスト治療が、PBMC移植NSGマウスにおいて4時間でサイトカイン応答を促進したが、抗CD28抗体mAb14226P2は促進しなかったことを示す。
【
図12】本発明の共刺激二重特異性抗原結合分子の潜在的により安全な毒性学的プロファイルを示す。抗CD28×抗PSMAは、サイトカイン応答を誘発しなかったが、抗CD3×抗PSMAは誘発した。
【
図13A】PSMA×CD3およびCD28スーパーアゴニストと比較して、PSMA×CD28がサイトカイン産生またはT細胞辺縁趨向を示さなかったことを示す。LLOQ:「定量下限」
【
図13B】PSMA×CD3およびCD28スーパーアゴニストと比較して、PSMA×CD28がサイトカイン産生またはT細胞辺縁趨向を示さなかったことを示す。LLOQ:「定量下限」
【
図14】
図14および17は、TSA×CD28およびPD-1遮断が、腫瘍部位のT細胞上のTCR/CD3およびCD28を活性化することを示す。
図15、16、および18は、TSA×CD28二重特異性およびPD-1遮断が、インビトロでT細胞の活性化を相乗的に促進することを示す。
図14~18において、非ブロッカーPD-1 mAb(NB PD-1 mAb)またはブロッカー(PD-1 mAb)、およびCD20×CD3二重特異性抗体の存在下でのT細胞(Jurkat/PD-1)および標的細胞(Raji WT)の結合体。 免疫シナプスにおけるPD-1およびCD28の局在の定量化を示す棒グラフを提供する。統計的有意性は、対応のないt検定で計算された(有意でない、ns)。免疫シナプスでのPD-1およびCD28の局在を定量化するために、非ブロッカーPD-1 mAb(NB PD-1 mAb)またはブロッカー(PD-1 mAb)および抗CD20×CD3二重特異性抗体の存在下でのT細胞(Jurkat/PD-1)および標的細胞(Raji WT)の結合体の画像を撮影した。PD-1 mAbは、Alexa647で直接標識され、抗CD20×CD3二重特異性抗体は、Alexa488で直接標識され、CD28 mAbは、PEで直接標識され、核はHoechst 33342で染色された(画像は示さず)。
【
図15】免疫シナプスにおけるPD-1およびCD28の局在の定量化を示す棒グラフを提供する。統計的有意性は、対応のないt検定で計算された(p<0.0001、****)。免疫シナプスでのPD-1およびCD28の局在を定量化するために、非ブロッカーPD-1 mAb(NB PD-1 mAb)またはブロッカー(PD-1 mAb)および抗CD20×CD3二重特異性抗体の存在下でのT細胞(Jurkat/PD-1)および標的細胞(Raji/PD-L1)の結合体の画像を撮影した。PD-1 mAbは、Alexa647で直接標識され(赤色で示される)、CD20×CD3は、Alexa488で直接標識され(緑色で示される)、CD28 mAbは、PEで直接標識され(青色で示される)、核は、Hoechst 33342で染色された(灰色で示される)。点線は、明視野画像に基づいて描かれた細胞の輪郭である。
【
図16】96時間での22RV1-PDL1細胞の生存率(%)を示す。
【
図17】96時間での上清中のIFNγレベルを示すグラフである。
【
図18】96時間でのIL-2放出を示すグラフである。
【
図19A】
図19A~19Dは、腫瘍細胞におけるCD28リガンド(CD86)の発現が、抗PD1処置と相乗作用して、CD8依存性抗腫瘍免疫を誘発することを示す。MC38腫瘍細胞は、CD28、CD86(MC38/CD86)、または空のベクター対照(MC38/EV)のリガンドで形質導入された。WT C57BL6マウスには、最初にマウスあたり1×10
6の腫瘍細胞を移植し、腫瘍移植後0、3、7、10、および14日目に、5mg/kgのPD-1 mAbまたはラットアイソタイプ対照で処置した。
図19Aは、経時的な平均腫瘍体積を示す。エラーバーは、+/-SEMを表す。統計的有意性は、二元配置分散分析およびテューキーの多重比較検定で決定された。
【
図19B】
図19Bは、経時的な生存率(2000mm
3未満の腫瘍を有するマウスのパーセンテージ)を示す。移植後60日目の統計的有意性は、ログ・ランク(Mantel-Cox)検定で決定された。
【
図19C】
図19Cでは、マウスをCD8枯渇抗体(CD8が枯渇した)またはアイソタイプ対照(枯渇なし)で処置した。CD8枯渇(点線)および枯渇なし(実線)を伴う経時的な平均腫瘍体積は、+/-SEMで示される。統計的有意性は、二元配置分散分析およびテューキーの多重比較検定で決定された。
【
図19D】
図19Dは、MC38/CD86を移植し、PD1 mAbで処置した無腫瘍マウスの二次腫瘍移植(再チャレンジ)を示す。
図19A~19Dにおいて、示されているデータは、群あたり10匹のマウスを用いた1回の実験からのものである。データは、少なくとも4回の別々の実験を表す。統計的有意性が示される(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、および****p<0.0001)。
【
図20A】
図20、21A、22、24、および25は、PSMA×CD28が、PD1 mAb治療と相乗作用して、抗腫瘍免疫を誘発することを示す。MC38/hPSMA腫瘍細胞を、hCD3/hCD28/hPSMAマウスの皮下に移植した。PSMA×CD28二重特異性抗体、PD-1 mAbまたはラットIgG2aアイソタイプ対照は、単剤療法として、または各々5mg/kgの腹腔内注射によって組み合わせて投与された。
図21Bおよび21Cは、PSMA×CD28とPD-1 mAbとの組み合わせが、腫瘍特異的T細胞の頻度を増加させることを示す。
図23Aおよび23Bは、PSMA×CD28が、抗PD1処置と相乗作用して、脾臓または全身のサイトカインではなく腫瘍内サイトカインを誘発することを示す。
図20A~20Eは、抗PSMA×抗CD28抗体による即時処置が、腫瘍部位における免疫力を強化し、抗PD-1抗体と相乗作用して腫瘍拒絶反応を促進することを示す。
図20Aは、経時的な平均腫瘍体積を示す。エラーバーは、+/-SEMを表す。統計的有意性は、二元配置分散分析およびテューキーの多重比較検定で決定された(***、p<0.001および****、p<0.0001)。
【
図20B】
図20Bは、経時的な生存率を示す(2000mm
3を超える腫瘍を有するマウスは安楽死させる)。統計的有意性は、ログ・ランク(Mantel-Cox)検定で決定された(**、p<0.01)。
【
図20C】
図20Cは、移植後21日目の平均腫瘍体積を示す。エラーバーは、+/-SEMを表す。統計的有意性は、一元配置分散分析およびHolm-Sidak多重比較検定で決定された(****、p<0.0001)。
【
図20E】
図20Eは、6回の別々の実験からの群あたりの無腫瘍マウスの数の表を示す。
【
図21A】PSMA×CD28とPD1 mAbとの組み合わせで以前に処置された無腫瘍マウスの二次腫瘍チャレンジを示す。エラーバーは、+/-SEMを表す。データは、4回の実験を表す。
【
図21B】CD3/CD28/PSMAヒト化マウスに移植され、移植後10日目および14日目に5mg/kgのアイソタイプ対照、PSMA×CD28、PD1 mAb、または組み合わせで処理されたMC38/PSMA腫瘍細胞を示す。17日目に脾臓を採取した。脾細胞を、10mg/mlのペプチド(p15EまたはOVA)および2mg/mlの抗CD28を含むT細胞培地で一晩培養した。一晩のインキュベーション後、標準手順に従って細胞内サイトカイン染色を行った。
【
図21C】抗CD28×PSMAおよび抗CD3×PSMA処置ではなく、抗CD28×PSMAおよび抗PD1からの無腫瘍マウスは、2回目の腫瘍再チャレンジを拒絶したことを示す。
【
図22A】
図22A~22D、24および25は、遅延/治療的処置レジメンを示す(投与は矢印で示される。
図22Aおよび22Bは9、16、および22日目、
図24および25は7、11、および14日目)。 経時的な平均腫瘍体積を示す。エラーバーは、+/-SEMを表す。統計的有意性は、二元配置分散分析およびテューキーの多重比較検定で決定された。データは、3回の実験を表す。
【
図22B】エクスビボの脾臓および腫瘍内サイトカインを示す。ポイントは、個々のマウスからのデータを表す。バーは、平均+/-SEMである。
【
図22D】異なる処置を受けたマウスの生存率を示す。
【
図23A】PSMA×CD28が、抗PD1処置と相乗作用して、腫瘍内サイトカインを誘発するが、脾臓または全身性サイトカインを誘発しないことを示す。
図23Aでは、データは、
図22Bに対応する。エクスビボの脾臓および腫瘍内サイトカイン。ポイントは、個々のマウスからのデータを表す。バーは、平均+/-SEMである。
【
図23B】PSMA×CD28が、抗PD1処置と相乗作用して、腫瘍内サイトカインを誘発するが、脾臓または全身性サイトカインを誘発しないことを示す。
図23Bでは、CD3/CD28/PSMAトリプルヒト化マウスにMC38/hPSMAを移植し、0日目に5mg/kgの示された抗体で処置した。マウスから採血し、投与後4時間で血清を収集した。
図23Aおよび23Bの両方において、統計的有意性は、一元配置分散分析およびテューキーの多重比較検定で計算された。*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001
【
図24】流入領域リンパ節(dLN)、脾臓(Sp)、および腫瘍(Tu)からのT細胞サブセット上のPD1発現を示す。ポイントは、個々のマウスからのデータを表す。バーは、平均+/-SEMである。
【
図25】示された処置群からのC1およびC2におけるCD8T細胞の頻度を示す。 各々1回の実験からの
図22B、24、および25のデータ。
図22Bおよび24、n=4~6匹のマウス/群。
図25、n=10匹のマウス/群。
【
図26A】
図26A~26Cは、
図27とともに、TAA×CD28単独、またはPD1療法との組み合わせが、カニクイザルにおいて、CD28スーパーアゴニストと比較して全身性T細胞活性化を誘発しないことを示す。カニクイザルは、示された用量(示されているように1mg/kgまたは10mg/kg)の単一用量の二重特異性抗体で処置された。投与後の時間(時間)が示される。
図26Aは、血清サイトカインを示す。
【
図26C】
図26Cは、Ki67
+およびICOS
+T細胞の頻度(CD3の%)を示す。
図26A~26Cでは、値は、平均+/-SEMを表す。N=3匹の動物/群。
【
図27】CD3/CD28/PSMAトリプルヒト化マウスが、単一用量の抗体(示されているように0.25mg/kgまたは2.5mg/kg)で処置されたことを示す。投与後4時間(0日目)にマウスから採血し、血清を収集した。統計的有意性は、一元配置分散分析およびHolm-Sidakの多重比較検定を用いて計算された。*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001
【
図28】PSMA×CD28+/-PD1が、担腫瘍マウスの血清サイトカインを上昇させなかったことを示す。
【
図29A】PSMA×CD28単独、またはPD1 mAbとの組み合わせが、非担腫瘍マウスにおいてインビボで安全なサイトカインプロファイルを示すことを示す。データは、
図27に対応する。CD3/CD28/PSMAトリプルヒト化マウスを、単一用量の抗体(示されているように0.25mg/kgまたは2.5mg/kg)で処置した。投与後4時間(0日目)および72時間(3日目)にマウスから採血し、血清を収集した。統計的有意性は、一元配置分散分析およびHolm-Sidakの多重比較検定を用いて計算された。*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001
【
図29B】PSMA×CD28単独、またはPD1 mAbとの組み合わせが、非担腫瘍マウスにおいてインビボで安全なサイトカインプロファイルを示すことを示す。データは、
図27に対応する。CD3/CD28/PSMAトリプルヒト化マウスを、単一用量の抗体(示されているように0.25mg/kgまたは2.5mg/kg)で処置した。投与後4時間(0日目)および72時間(3日目)にマウスから採血し、血清を収集した。統計的有意性は、一元配置分散分析およびHolm-Sidakの多重比較検定を用いて計算された。*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を説明する前に、本発明は、特定の方法および説明される実験条件が変わり得るので、このような方法および条件に制限されないことは理解されることになっている。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを企図するものではないことも理解されるべきである。
【0041】
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、本発明の属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙された値から1%以下だけ変動し得ることを意味する。例えば、本発明で使用される場合、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0042】
本明細書に説明されるものと類似のまたは等価の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をこれから説明する。本明細書で言及される特許、出願、および非特許刊行物は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
定義
本明細書で使用される「CD28」という表現は、共刺激受容体としてT細胞上に発現される抗原を指す。ヒトCD28は、配列番号74に記載されているアミノ酸配列を含み、および/またはNCBI受託番号NP_006130.1に記載されているアミノ酸配列を有する。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質フラグメントについての全ての言及は、非ヒト種由来であることが明確に特定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質フラグメントのヒト型を指すことを意図している。したがって、「CD28」という表現は、非ヒト種、例えば「マウスCD28」、「サルCD28」等に由来するものとして特定されない限り、ヒトCD28を意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「CD28に結合する抗体」または「抗CD28抗体」は、単量体CD28を特異的に認識する抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびに二量体CD28を特異的に認識する抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。本発明の抗体および抗原結合フラグメントは、可溶性CD28および/または細胞表面発現CD28に結合することができる。可溶性CD28には、天然CD28タンパク質、ならびに膜貫通ドメインを欠くかまたはそうでなければ細胞膜と会合していない、例えば単量体および二量体CD28構築物などの組み換えCD28タンパク質変異体が含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「細胞表面発現CD28」という表現は、インビトロまたはインビボで細胞表面上に発現される1つ以上のCD28タンパク質(複数可)を意味し、CD28タンパク質の少なくとも一部分は、細胞膜の細胞外側に曝され、抗体の抗原結合部分に接近可能である。「細胞表面発現CD28」としては、細胞膜内の機能的T細胞共刺激受容体の文脈に含まれるCD28タンパク質が挙げられる。「細胞表面発現CD28」という表現は、細胞の表面上のホモ二量体の一部として発現されるCD28タンパク質を含む。「細胞表面発現CD28」は、通常はCD28タンパク質を発現する細胞の表面上に発現されるCD28タンパク質を含み得るか、またはそれからなり得る。あるいは、「細胞表面発現CD28」は、通常はその表面上にヒトCD28を発現しないが、その表面上にCD28を発現するように人工的に操作されている細胞の表面上に発現されるCD28タンパク質を含み得るか、またはそれからなり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗CD28抗体」という表現は、単一特異性を有する一価抗体、ならびにCD28に結合する第1のアームおよび第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含む二重特異性抗体の両方を含み、抗CD28アームは、本明細書の表1に記載されているHCVR/LCVRまたはCDR配列のうちのいずれかを含む。抗CD28二重特異性抗体の例は、本明細書の他の場所に記載されている。用語「抗原結合分子」は、抗体および抗体の抗原結合フラグメントを含み、例えば二重特異性抗体を含む。
【0047】
本発明で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原(例えば、CD28)に特異的に結合するかまたはそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互連結された4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域へとさらに細分することができる。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。本発明の異なる実施形態では、抗CD28抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0048】
本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、完全抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」および同様の用語は、本明細書で使用される場合、天然の、酵素処理で入手可能な、合成の、または遺伝子操作された、抗原を特異的に結合して複合体を形成するポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗体結合フラグメントは、例えば、抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現に関連するタンパク質消化技術または組み換え遺伝子操作技術などの任意の適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から誘導され得る。そのようなDNAは既知であり、および/または例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な配置へと配置するか、またはコドンを導入し、システイン残基を創造し、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失などするために、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって配列決定および操作され得る。
【0049】
抗体結合フラグメントの非限定例としては、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール型免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用する「抗原結合フラグメント」という表現に包含される。
【0050】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成物であり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているかまたは1つ以上のフレームワーク配列とインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗体結合フラグメントにおいて、VHドメインおよびVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHドメインまたはVLドメインを含み得る。
【0051】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的立体配置としては、(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-CH2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3、および(xiv)VL-CLが挙げられる。先に列挙した例示的な立体配置のうちのいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配置において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、または完全もしくは部分的ヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可撓性または半可撓性の結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれより多数の)アミノ酸からなり得る。そのうえ、抗原結合フラグメントは、互いとのおよび/または1つ以上の単量体VHドメインもしくはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合(複数可)による)非共有結合において、先に列挙した可変ドメイン立体配置および定常ドメイン立体配置のうちのいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0052】
完全抗体分子と同様に、抗体結合フラグメントは、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになっており、各可変ドメインは、別個の抗原へまたは同じ抗原上の異なるエピトープへ特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な通例の技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントとの関連で使用に適合し得る。
【0053】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞傷害」(CDC)は、補体の存在下における本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、それによって標的細胞の溶解をもたらす、細胞媒介性反応を指す。CDCおよびADCCは、当該技術分野において周知であり利用可能なアッセイを用いて測定することができる。(例えば、米国特許第5,500,362号および第5,821,337号、ならびにClynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656を参照)。抗体の定常領域は、補体を固定して細胞依存性細胞傷害性を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、その抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいかに基づいて選択され得る。
【0054】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の抗CD28抗体(単一特異性または二重特異性)は、ヒト抗体である。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、別の哺乳類種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列へと移植された抗体を含むことを意図するものではない。
【0055】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態では、組み換えヒト抗体であり得る。本明細書で使用される用語「組み換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現される抗体など、組み換え手段によって調製、発現、作成、または単離される全てのヒト抗体(後述)、組み換え型コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(後述)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Res.20:6287-6295)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、生成、または単離された全てのヒト抗体を含むことを意図する。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組み換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が用いられる場合は、インビボ体細胞突然変異誘発)を受け、したがって組み換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し関連してはいるが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0056】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在することができる。第1の形態において、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されているおよそ150~160kDaの安定な四本鎖構築物を含む。第2の形態において、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合した軽鎖および重鎖からなる約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後でさえも分離することが極めて困難とされている。
【0057】
様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違によるが、それに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルまで第2の形態の出現を有意に減少させることができる(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2またはCH3領域に1つ以上の突然変異を有する抗体を包含し、例えば産生において、所望の抗体形態の収率を改善するのに望ましい場合がある。
【0058】
本発明の抗体は単離された抗体であり得る。本明細書で使用される「単離された抗体」は、同定された抗体、およびその天然環境の少なくとも1つの成分から分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織または細胞から分離または除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組み換え細胞内の原位置の抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程を受けている抗体である。ある特定の実施形態によると、単離された抗体は他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0059】
本発明はまた、CD28に結合するワンアーム抗体も含む。本明細書中で使用される場合、「ワンアーム抗体」とは、単一の抗体重鎖および単一の抗体軽鎖を含む抗原結合分子を意味する。本発明のワンアーム抗体は、表2に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかを含み得る。
【0060】
本明細書の抗CD28抗体またはその抗原結合ドメインは、抗原結合タンパク質または抗原結合ドメインが由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含み得る。そのような突然変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する抗体、およびその抗原結合ドメインを含み、ここで、1つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、もしくは別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に突然変異する(そのような配列変化は、本明細書では集合的に「生殖系列突然変異」と称される)。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列突然変異またはそれらの組み合わせを含む多くの抗体および抗体結合フラグメントを容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗体が由来した元の生殖系列配列において見出される残基へと再び突然変異する。他の実施形態では、ある特定の残基のみが、元の生殖系列配列へと再び突然変異し、例えば、突然変異した残基のみが、FR1の最初の8個のアミノ酸内に、もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に認められるか、または突然変異した残基のみが、CDR1、CDR2、もしくはCDR3内に認められる。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)のうちの1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ突然変異する。さらに、本発明の抗体またはその抗原結合ドメインは、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列突然変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ突然変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ突然変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列突然変異を含有する抗原結合ドメインは、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または強化(場合によって)、免疫原性の低減等の1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の範囲内に包含される。
【0061】
本発明はまた、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体を含む、抗CD28抗体および抗原結合分子を含む。本発明のこの態様に含まれる例示的な変異体には、1つ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体が含まれる。例えば、本発明は、本明細書の表1に記載されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下等の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗CD28抗体および抗原結合分子を含む。
【0062】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座または直鎖状のいずれかであり得る。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0063】
「実質的な同一性」または「実質的に同一である」という用語は、核酸またはそのフラグメントを指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列した場合、以下に考察するように、FASTA、BLASTまたはGapなど、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定される場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の場合では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じまたは実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0064】
ポリペプチドへ適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないことになっている。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的な置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0065】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータとともに使用することができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.BioI.215:403-410 and Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい。
【0066】
二重特異性抗原結合分子
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有し得る。例えば、Tutt et aI.,1991,J.Immunol.147:60-69、Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照されたい。本発明の抗CD28抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結するか、またはそれと同時発現させることができる。例えば、抗体またはそのフラグメントは、別の抗体または抗体フラグメントなどの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合、もしくは他の方法により)機能的に連結されて、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体または多重特異性抗体を産生することができる。
【0067】
本明細書における「抗CD28抗体」という表現の使用は、単一特異性抗CD28抗体、ならびにCD28結合アームおよび標的抗原に結合する第2のアームを含む二重特異性抗体の両方を含むことを意図している。したがって、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトCD28に結合し、免疫グロブリンの他方のアームが標的抗原に特異的である、二重特異性抗体を含む。CD28二重特異性抗体のもう一方のアームが結合する標的抗原は、細胞、組織、器官、微生物、またはウイルス上またはその近傍で発現される、標的免疫応答が望まれる任意の抗原であり得る。CD28結合アームは、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかを含み得る。ある特定の実施形態では、CD28結合アームは、ヒトCD28に結合し、ヒトT細胞増殖を誘発する。
【0068】
抗体の一方のアームがCD28に結合し、もう一方のアームが標的抗原に結合する本発明の二重特異性抗体の文脈において、標的抗原は、PSMAなどの腫瘍関連抗原であり得る。
【0069】
ある特定の例示的な実施形態によると、本発明は、CD28およびPSMAに特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。そのような分子は、本明細書では、例えば、「抗CD28/抗PSMA」もしくは「抗CD28×PSMA」もしくは「CD28×PSMA」もしくは「抗PSMA/抗CD28」もしくは「抗PSMA×CD28」もしくは「PSMA×CD28」二重特異性分子と称され得るか、または他の同様の用語であり得る。
【0070】
「PSMA」という用語は、本明細書で使用される場合、非ヒト種(例えば、「マウスPSMA」、「サルPSMA」等)に由来するものとして指定されない限り、ヒトPSMAタンパク質を指す。ヒトPSMAタンパク質は、配列番号73に示されるアミノ酸配列を有し、および/またはNCBI受託番号NP_004467.1に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0071】
図1に示されるある特定の例示的な実施形態によると、二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)は、エフェクターアームおよび標的化アームを有し得る。エフェクターアームは、エフェクター細胞(例えば、T細胞)上の抗原に結合する最初の抗原結合ドメイン(例えば、抗CD28抗体)であり得る。標的化アームは、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)上の抗原に結合する第2の抗原結合ドメイン(例えば、抗PSMA抗体)であり得る。ある特定の例示的な実施形態によると、エフェクターアームは、CD28に結合し、標的化アームは、PSMAに結合する。二重特異性抗CD28/PSMAは、エフェクター細胞(例えば、T細胞)に共刺激シグナルを提供することができる。エフェクターアームは、クラスター化せずにT細胞を刺激する効果はない。クラスター化すると、エフェクターアームだけでは、T細胞を刺激する効果がほとんどない。標的化アームと組み合わせて、エフェクターアームは、T細胞を刺激する。腫瘍標的化アームは、腫瘍特異性が不完全である可能性がある。標的化アームの標的である抗原(例えば、PSMA)は、腫瘍細胞の一部に発現され得る。腫瘍標的化アームの特異性は、抗CD3二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/PSMA二重特異性抗体)との組み合わせと重複することによって増加し得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、表現「抗原結合分子」は、単独で、または特定の抗原に特異的に結合する、1つ以上のさらなるCDRおよび/またはフレームワーク領域(FR)と組み合わせて少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むまたはそれからなるタンパク質、ポリペプチド、または分子複合体を意味する。ある特定の実施形態では、抗原結合分子は、それらの用語が本明細書の他所で定義されているように、抗体または抗体のフラグメントである。
【0073】
本明細書で使用される場合、表現「二重特異性抗原結合分子」は、少なくとも第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインを含むタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を意味する。二重特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または1つ以上の追加のCDRおよび/またはFRと組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する少なくとも1つのCDRを含む。本発明の文脈において、第1の抗原結合ドメインは、第1の抗原(例えば、CD28)に特異的に結合し、第2の抗原結合ドメインは、第2の別個の抗原(例えば、PSMA)に特異的に結合する。
【0074】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)および軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)の文脈において、第1の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「D1」を付けて指定され、第2の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「D2」を付けて指定され得る。したがって、第1の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書においてD1-HCDR1、D1-HCDR2、およびD1-HCDR3と称されてもよく、第2の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書においてD2-HCDR1、D2-HCDR2、およびD2-HCDR3と称されてもよい。
【0075】
第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、互いに直接的または間接的に結合して、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは各々、別々の多量体化ドメインに連結されていてもよい。1つの多量体化ドメインと別の多量体化ドメインとの会合は、2つの抗原結合ドメイン間の会合を促進し、それによって二重特異性抗原結合分子を形成する。本明細書で使用される場合、「多量体化ドメイン」は、同一または類似の構造または構成の第2の多量体化ドメインと会合する能力を有する任意の高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸である。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンCH3ドメインを含むポリペプチドであってもよい。多量体化成分の非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分(CH2-CH3ドメインを含む)、例えばアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプである。
【0076】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、典型的には2つの多量体化ドメイン、例えば、それぞれ別々の抗体重鎖の一部である2つのFcドメインを含む。第1および第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプであり得る。あるいは、第1および第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4等の異なるIgGアイソタイプであり得る。
【0077】
ある特定の実施形態では、多量体化ドメインは、Fcフラグメントまたは少なくとも1つのシステイン残基を含有する長さが1~約200アミノ酸のアミノ酸配列である。他の実施形態では、多量体化ドメインは、システイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。他の多量体化ドメインには、ロイシンジッパー、ヘリックスループヘリックス、またはコイルドコイルモチーフを含むかまたはそれらからなるペプチドまたはポリペプチドが含まれる。
【0078】
任意の二重特異性抗体フォーマットまたは技術を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製することができる。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体またはそのフラグメントは、第2の抗原結合特異性を有する別の抗体または抗体フラグメントなどの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合などにより)機能的に連結されて、二重特異性抗原結合分子を産生することができる。本発明の文脈において使用できる特定の例示的な二重特異性フォーマットには、例えば、scFv系フォーマットまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(OVO)-Ig、Quadroma、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)、共通の軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを備えた共通の軽鎖等)、CrossMab、CrossFab、(SEEO)体、ロイシンジッパー、Ouobody、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(OAF)-IgG、およびMab2二重特異性フォーマットが含まれるが、これらに限定されない(上述のフォーマットの総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、およびそこに引用されている参考文献を参照)。
【0079】
本発明の二重特異性抗原結合分子との関連で、多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、野生型の、天然に存在するFcドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失または置換)を含んでもよい。例えば、本発明は、FcとFcRnとの間の修飾された結合相互作用(例えば、強化または減少)を有する修飾Fcドメインをもたらす、Fcドメイン中の1つ以上の修飾を含む二重特異性抗原結合分子を含む。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、CH2またはCH3領域に修飾を含み、この修飾は、酸性環境(例えば、pH範囲約5.5~約6.0のエンドソーム内)において、FcRnに対するFcドメインの親和性を高める。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EもしくはQ)、250位および428位(例えば、LもしくはF)、252位(例えば、LN/FIWもしくはT)、254位(例えば、SもしくはT)、および256位(例えば、S/R/Q/EIDもしくはT)での修飾、あるいは428位および/または433位(例えばUR/S/P/QもしくはK)および/または434位(例えばH/FもしくはV)での修飾、あるいは250位および/または428位の修飾、あるいは307位または308位(例えば、308F、V308F)および434位での修飾が含まれる。一実施形態において、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の修飾;428L、2591(例えば、V2591)、および308F(例えば、V308F)の修飾;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の修飾;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の修飾、250Qおよび428Lの修飾(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0080】
本発明はまた、第1のCH3ドメインおよび第2のIgCH3ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1および第2のIgCH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸ほど互いに異なっており、少なくとも1つのアミノ酸の相違は、アミノ酸の相違を欠失する二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を低減させる。一実施形態では、第1のIgCH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIgCH3ドメインは、H95R修飾(IMGTエクソン番号付けによる、EU番号付けではH435R)などのプロテインA結合を低減または消失させる突然変異を含有する。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによるもの、EUによるY436F)をさらに含み得る。第2のCH3内に認められ得るさらなる修飾には、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV821(IMGTによるもの;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV4221)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV821(IMGT;EUによるN384S、K392N、およびV4221)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV821(IMGTによるもの;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV4221)が含まれる。
【0081】
ある特定の実施形態では、Fcドメインは、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラであり得る。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4のCH2領域に由来するCH2配列の一部または全部、およびヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4に由来するCH3配列の一部または全部を含むことができる。キメラFcドメインはまた、キメラヒンジ領域を含み得る。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせた、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を含むことができる。本明細書に記載される抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの特定の例は、N末端からC末端に、[IgG4 CH1]-[IgG4上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG4 CH3]を含む。本明細書に記載される抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの別の例は、N末端からC末端に、[IgG1 CH1]-[IgG1上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG1 CH3]を含む。本発明の抗原結合分子のうちのいずれかに含めることができるキメラFcドメインのこれらおよび他の例は、WO2014/022540A1に記載されており、これらの一般的な構造配列を有するキメラFcドメイン、およびそれらの変異体は、Fc受容体結合を改変することができ、これは順にFcエフェクター機能に影響を及ぼす。
【0082】
配列変異体
本明細書の抗体および二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。そのような突然変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明の抗原結合分子は、本明細書に開示される例示的なアミノ酸配列のうちのいずれかに由来する抗原結合フラグメントを含んでもよく、ここで、1つ以上のフレームワーク領域および/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)に、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に突然変異する(そのような配列変化は、本明細書では集合的に「生殖系列突然変異」と称される)。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列突然変異またはそれらの組み合わせを含む多くの抗体および抗体結合フラグメントを容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基は全て、抗原結合ドメインが本来由来した元の生殖系列配列において見出される残基へと再び突然変異する。他の実施形態では、ある特定の残基のみが、元の生殖系列配列へと再び突然変異し、例えば、突然変異した残基のみが、FR1の最初の8個のアミノ酸内に、もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に認められるか、または突然変異した残基のみが、CDR1、CDR2、もしくはCDR3内に認められる。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)のうちの1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗原結合ドメインが本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ突然変異する。さらに、抗原結合ドメインは、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列突然変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ突然変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基へ突然変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列突然変異を含有する抗原結合ドメインは、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または強化(場合によって)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、本発明の範囲内に包含される。
【0083】
本発明はまた、一方または両方の抗原結合ドメインが、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む、抗原結合分子を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないことになっている。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的な置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0084】
本発明はまた、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかと実質的に同一であるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。アミノ酸配列について言及する場合、「実質的な同一性」または「実質的に同一の」という用語は、2つのアミノ酸配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、配列同一性の割合または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。
【0085】
ポリペプチドに対する配列類似性は、配列同一性とも呼ばれ、典型的には配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータとともに使用することができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.BioI.215:403-410 and Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい。
【0086】
pH依存的結合
本発明は、pH依存性結合特性を有する、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。例えば、本発明の抗抗CD28抗体は、中性pHと比較して酸性pHでCD28への結合の低減を呈し得る。あるいは、本発明の抗PSMA抗体は、中性pHと比較して酸性pHでPSMAへの結合の強化を呈し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ以下のpH値を含む。本明細書で使用される場合、「中性pH」との表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0087】
場合によっては、「中性pHと比較して、酸性pHで...結合の低減」は、中性pHでその抗原に結合する抗体のKD値に対する酸性pHでその抗原に結合する抗体のKD値の比に関して、表される。(またはその逆)。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントが、約3.0以上の酸性/中性KD比を呈する場合、本発明の目的のために、抗体またはその抗原結合フラグメントは、「中性pHと比較して酸性pHでCD28への結合の低減」を呈すると見なされ得る。ある特定の例示的な実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0.25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、またはそれ以上であり得る。
【0088】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで特定の抗原への結合の低減(または強化)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特徴を有する抗体を産生し得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えばCDR内)の1つ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHに対して酸性pHで抗原結合が低減した抗体を得ることができる。
【0089】
Fc変異体を含む抗体
本発明のある特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を強化または減少させる1つ以上の突然変異を含むFcドメインを含む、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域に突然変異を含む抗体および抗原結合分子を含み、この突然変異(複数可)は、酸性環境(例えば、pH範囲約5.5~約6.0のエンドソーム内)において、FcRnに対するFcドメインの親和性を高める。そのような突然変異は、動物に投与されたときに抗体の血清半減期の増加をもたらし得る。そのようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾、または428位および/または433位(例えばH/L/R/S/P/QまたはK)および/または434位(例えばH/FまたはY)での修飾、あるいは250位および/または428位の修飾、あるいは307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での修飾が含まれる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の修飾;428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の修飾;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の修飾;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の修飾;250Qおよび428Lの修飾(例えば、T250QおよびM428L);ならびに307および/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0090】
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lのおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される、1つ以上の突然変異の対または群を含むFcドメインを含む、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。前述のFcドメイン突然変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の突然変異の全ての可能な組み合わせが、本発明の範囲内で熟慮される。
【0091】
抗体および抗原結合分子の生物学的特性
本発明は、ヒトCD28および/またはPSMAに高親和性で結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。本発明はまた、治療状況および所望される特定の標的化特性に応じて、中程度または低度の親和性でヒトCD28および/またはPSMAに結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。例えば、一方のアームがCD28に結合し、別のアームが標的抗原(例えば、PSMA)に結合する二重特異性抗原結合分子の文脈では、標的抗原結合アームが標的抗原に高い親和性で結合することが望ましい場合があるが、抗CD28アームは、中程度または低度の親和性でのみCD28に結合する。このようにして、標的抗原を発現する細胞への抗原結合分子の優先的標的化は、一般的/非標的CD28結合およびそれと関連する結果として生じる有害な副作用を回避しながら達成され得る。
【0092】
ある特定の実施形態によると、本発明は、例えば、本明細書の実施例3に定義されるようなアッセイフォーマットを使用して、表面プラズモン共鳴により測定して、約210nM未満のKDでヒトCD28に(例えば、25℃で)結合する抗体および抗体の抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書の実施例3に定義されるようなアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴により測定して、約150nM未満、約130nM未満、約120nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約80nM未満、約60nM未満、約40nM未満、または約30nM未満のKDでCD28に結合する。ある特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、約30nM~約207nMの間のKDでCD28に結合する。
【0093】
本発明はまた、例えば、本明細書の実施例3に定義されるようなアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃または37℃での表面プラズモン共鳴により測定して、約3.5分超の解離半減期(t1/2)でCD28に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、本明細書の実施例3に定義されるようなアッセイフォーマット、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃または37℃での表面プラズモン共鳴により測定して、約5分超、約10分超、約20分超、約30分超、約40分超、約50分超、約60分超、約70分超、約80分超、約90分超、約100分超、約200分超、約300分超、約400分超、約500分超、約600分超、約700分超、約800分超、約900分超、約1000分超、または約1200分超のt1/2でCD28に結合する。
【0094】
本発明は、ヒトCD28およびヒトPSMAに同時に結合することができる二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。ある特定の実施形態によると、本発明の二重特異性抗原結合分子は、CD28および/またはPSMAを発現する細胞と特異的に相互作用する。二重特異性抗原結合分子がCD28および/またはPSMAを発現する細胞に結合する程度は、本明細書の実施例4に例示されるように、蛍光標識細胞分取(FACS)によって評価することができる。例えば、本発明は、CD28を発現するがPSMAを発現しないヒト細胞株(例えば、CD28を発現するように操作されたHEK293)、およびPSMAを発現するがCD28を発現しないヒト前立腺癌細胞株(例えば、C4-2)に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。本発明は、実施例4に記載されるようなFACSアッセイまたは実質的に類似のアッセイを使用して決定して、約9.6×10-9~約3.5×10-10、またはそれ以下のEC50値で、前述の細胞および細胞株のうちのいずれかに結合する二重特異性抗原結合分子を含む。
【0095】
本発明はまた、腫瘍細胞のT細胞媒介性殺滅を誘発または増加させる抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を提供する。例えば、本発明は、本明細書の実施例6に定義されるようなアッセイフォーマット(例えば、抗CD28×PSMA抗体の存在下でのヒトPBMCによるC4-2腫瘍細胞殺滅の程度を評価する)または実質的に類似のアッセイを使用して、インビトロT細胞媒介性腫瘍細胞殺滅アッセイにおいて測定して、約78pM未満のEC50で腫瘍細胞のT細胞媒介性殺滅を誘発または増加させる抗CD28×PSMA抗体を含む。ある特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、本明細書の実施例6に定義されるようなアッセイフォーマットまたは実質的に類似のアッセイを使用して、インビトロT細胞媒介性腫瘍細胞殺滅アッセイにより測定して、約40pM未満、約20pM未満、約16pM未満、約10pM未満、約5.0pM未満、約4.0pM未満、約3.0pM未満、約2.5pM未満、約2.0pM未満、約1.5pM未満、または約1.45pM未満のEC50値で、T細胞媒介性腫瘍細胞殺滅(例えば、C4-2細胞のPBMC媒介性殺滅)を誘発する。
【0096】
本発明はまた、1.0pM~1000nMの間のEC50値でCD28発現ヒトT細胞に結合する抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。ある特定の実施形態では、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、48nM~180nMの間のEC50値でCD28を発現するヒトT細胞に結合する。例えば、本発明は、約1pM、約10pM、約100pM、約500pM、約1nM、約2nM、約5nM、約10nM、約20nM、約30nM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nM、約90nM、約100nM、約200nM、約300nM、約500nM、約800nM、約1000nM、またはそれ以上のEC50値でCD28を発現するヒトT細胞に結合する、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。
【0097】
本発明はまた、(a)インビトロでT細胞増殖を誘発する(例えば、本明細書の実施例8を参照)、(b)T細胞を活性化し、ヒトPBMCにおけるCD25およびPD-1の上方調節を誘発する(例えば、本明細書の実施例8を参照)、(c)PSMA発現細胞株に対するヒトT細胞媒介性細胞傷害性の増加(例えば、本明細書の実施例8を参照)、(d)PSMA発現細胞株に対してナイーブ霊長類T細胞媒介細胞傷害性を誘発する(例えば、本明細書の実施例8を参照)、(e)マウスにおける腫瘍細胞を枯渇させる(例えば、本明細書の実施例10)、(f)マウスにおける腫瘍クリアランスを強化する(例えば、本明細書の実施例10)、(g)サイトカインストームを誘発しない(例えば、本明細書の実施例10)、(h)カニクイザルにおいて全身性T細胞作用を誘発しない(例えば、本明細書の実施例11)、(i)T細胞活性化によって誘発された腫瘍細胞殺滅に対するPD-1遮断の効果を強化する(例えば、本明細書の実施例13)、(j)メモリーT細胞の増殖を強化する(例えば、本明細書の実施例13)からなる群から選択される1つ以上の特性を呈する、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む。
【0098】
本発明は、対象の腫瘍細胞を枯渇させることができる抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む(例えば、実施例8を参照)。例えば、ある特定の実施形態によると、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子が提供され、対象への二重特異性抗原結合分子の単回投与(例えば、約0.1mg/kg、約0.08mg/kg、約0.06mg/kg、約0.04mg/kg、約0.04mg/kg、約0.02mg/kg、約0.01mg/kg、またはそれ以下)は、対象における腫瘍細胞の数の低減を引き起こす。
【0099】
エピトープマッピングおよび関連技術
本発明の抗原結合分子が抗体が結合するCD28および/またはPSMA上のエピトープは、CD28タンパク質またはPSMAタンパク質の3つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上)のアミノ酸の単一連続配列からなってもよい。あるいは、エピトープは、CD28またはPSMAの複数の非連続アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなっていてもよい。本発明の抗体は、CD28単量体内に含まれるアミノ酸と相互作用し得るか、またはCD28二量体の2つ以上の異なるCD28鎖上のアミノ酸と相互作用し得る。本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座または直鎖状のいずれかであり得る。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0100】
当業者に既知の種々の技法を用いて、抗体の抗原結合ドメインがポリペプチドまたはタンパク質内にある「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを判定することができる。特定の抗体または抗原結合ドメインのエピトープまたは結合ドメインを決定するために使用できる例示的な技法には、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載されるものなどのルーチン交差遮断アッセイ、点突然変異誘発(例えば、アラニン走査突然変異誘発、アルギニン走査突然変異誘発等)、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、プロテアーゼ保護、およびペプチド切断分析が含まれる。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出、および抗原の化学修飾などの方法を採用することができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチドの内部にあるアミノ酸を同定するために用いることができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般的にいえば、水素/重水素交換法は、関心対象のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識タンパク質へ結合させることを包含する。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護されている残基(重水素標識されたままである)を除く全ての残基で水素-重水素交換を生じさせる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析へ供し、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照されたい。X線結晶構造解析を使用して、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定することもできる。
【0101】
本発明はさらに、本明細書に記載される特定の例示的な抗体のうちのいずれかと同じエピトープに結合する、抗CD28および抗PSMA抗体(本明細書の表1に記載されるようなアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体)を含む。同様に、本発明はまた、CD28および/またはPSMAへの結合について、本明細書に記載される特定の例示的な抗体のうちのいずれかと競合する、抗CD28および/または抗PSMA抗体(例えば、本明細書の表1に記載されるようなアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体)を含む。
【0102】
本発明はまた、ヒトCD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトPSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1の抗原結合ドメインは、本明細書に記載される特定の例示的なCD28特異的抗原結合ドメインのうちのいずれかと同じCD28上のエピトープに結合し、かつ/または第2の抗原結合ドメインは、本明細書に記載される特定の例示的なPSMA特異的抗原結合ドメインのうちのいずれかと同じPSMA上の同じエピトープに結合する。
【0103】
同様に、本発明はまた、ヒトCD28に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトPSMAに特異的に結合する第2の抗原結合フラグメントとを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1の抗原結合ドメインは、CD28への結合について、本明細書に記載される特定の例示的なCD28特異的抗原結合ドメインのうちのいずれかと競合し、かつ/または第2の抗原結合ドメインは、PSMAへの結合について、本明細書に記載される特定の例示的なPSMA特異的抗原結合ドメインのうちのいずれかと競合する。
【0104】
特定の抗原結合分子(例えば、抗体)またはその抗原結合ドメインが、本発明の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合するか、または結合について本発明の参照抗原結合分子と競合するかどうかは、当該技術分野で既知の常法を用いて容易に判定できる。例えば、試験抗体が本発明の参照二重特異性抗原結合分子と同じCD28(またはPSMA)上のエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照二重特異性分子は、最初にCD28タンパク質(またはPSMAタンパク質)に結合させた。次に、CD28(またはPSMA)分子に結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が参照二重特異性抗原結合分子との飽和結合後にCD28(またはPSMA)に結合することができる場合、試験抗体は、参照二重特異性抗原結合分子とは異なるCD28(またはPSMA)のエピトープに結合すると結論付けることができる。その一方で、試験抗体が、参照二重特異性抗原結合分子との飽和結合後にCD28(またはPSMA)分子に結合することができない場合、試験抗体は、本発明の参照二重特異性抗原結合分子によって結合したエピトープと同じCD28(またはPSMA)のエピトープに結合してもよい。次に、試験抗体の結合の観察された欠失が、実際に、参照二重特異性抗原結合分子と同じエピトープへの結合によるものであるか、それとも立体遮断(または別の現象)が、観察された結合の欠失の原因であるのかを確認するために、さらなる通例の実験(例えば、ペプチド変異および結合分析)を実施することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的な抗体結合アッセイを用いて行うことができる。本発明のある特定の実施形態によると、例えば、1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰量の一方の抗原結合タンパク質が、競合結合アッセイにおいて測定して、もう一方の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%、またはさらに99%阻害する場合、2つの抗原結合タンパク質は、同じ(または重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照)。あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を低減または排除する抗原における本質的に全てのアミノ酸変異が、もう一方の結合を低減または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は同じエピトープと結合すると見なされる。一方の抗原結合タンパク質の結合を減少または排除するアミノ酸変異のサブセットのみが他方の結合を減少または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は「重複エピトープ」を有するとみなされる。
【0105】
抗体またはその抗原結合ドメインが、結合について、参照抗原結合分子と競合するかどうかを決定するために、上述の結合方法を2つの方向性で実施する。第1の方向性おいて、参照抗原結合分子を飽和条件下でCD28タンパク質(またはPSMAタンパク質)に結合させた後、CD28(またはPSMA)分子への試験抗体の結合を評価する。第2の方向性において、試験抗体を飽和条件下でCD28(またはPSMA)分子に結合させた後、参照抗原結合分子のCD28(またはPSMA)分子への結合を評価する。両方の方向性において、第1の(飽和)抗原結合分子のみがCD28(またはPSMA)分子に結合することができる場合、試験抗体および参照抗原結合分子は、CD28(またはPSMA)への結合について競合すると結論される。当業者によって認識されるように、参照抗原結合分子との結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープへ結合するわけではないが、重複しているまたは隣接しているエピトープに結合することによって、参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0106】
抗原結合ドメインの調製と二重特異性分子の構築
特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインは、当該技術分野で既知の任意の抗体産生技術によって調製することができる。一旦得られれば、2つの異なる抗原(例えば、CD28およびPSMA)に特異的な2つの異なる抗原結合ドメインを互いに適切に配置して、ルーチン方法を用いて本発明の二重特異性抗原結合分子を産生することができる。(本発明の二重特異性抗原結合分子を構築するために使用できる例示的な二重特異性抗体フォーマットの考察は、本明細書の他所に提供される)。ある特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗原結合分子の1つ以上の個々の構成要素(例えば、重鎖および軽鎖)は、キメラ抗体、ヒト化抗体または完全ヒト型抗体に由来する。そのような抗体を作製するための方法は当該技術分野において周知である。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子の1つ以上の重鎖および/または軽鎖は、VELOCIMMUNE(商標)技術を用いて調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(または任意の他のヒト抗体生成技術)を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、特定の抗原(例えば、CD28またはPSMA)に対する高親和性キメラ抗体が、最初に単離される。抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けし選択する。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域と置換されて、本発明の二重特異性抗原結合分子に組み込まれ得る完全ヒト型重鎖および/または軽鎖を産生する。
【0107】
遺伝子操作された動物は、ヒト二重特異性抗原結合分子を作製するために使用され得る。例えば、内在性マウス免疫グロブリン軽鎖可変配列を再編成および発現することができない、遺伝子改変マウスを使うことができ、マウスは、内在性マウスカッパ遺伝子座のマウスカッパ定常遺伝子に作動可能に連結されているヒト免疫グロブリン配列によってコードされる1つまたは2つのヒト軽鎖可変ドメインのみを発現する。そのような遺伝子改変マウスを使用して、2つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントのうちの1つに由来する可変ドメインを含む同一の軽鎖と会合する2つの異なる重鎖を含む完全ヒト型二重特異性抗原結合分子を産生することができる。(そのような操作されたマウスおよび二重特異性抗原結合分子を産生するためのその使用の詳細な議論については、例えば、US2011/0195454を参照)。
【0108】
生物学的等価物
本発明は、記載される抗体のものとは異なるが、CD28および/またはPSMAに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗原結合分子を包含する。そのような変異体抗体は、親配列と比較して、アミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載された抗原結合分子のものと本質的に同等である生物学的活性を呈する。同様に、本発明の抗体結合分子をコードするDNA配列は、開示された配列と比較して、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の記載された抗原結合分子と本質的に生物学的同等性である配列を包含する。そのような変異体アミノ酸およびDNA配列の例は、上で議論されている。
【0109】
本発明は、本明細書に記載の例示的な抗原結合分子のいずれかと生物学的に等価な抗原結合分子を含む。2つの抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、それらが類似の実験条件下で単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与された場合に、吸収速度および吸収の程度が有意差を示さない医薬的等価物または医薬的選択肢である場合、生物学的等価物とみなされる。いくつかの抗体は、これらの吸収の程度は等価であるが吸収速度は等価ではなく、吸収速度のこのような差が意図的であり、標識することに反映されているので生物学的に等価とみなされ得る場合、等価物または薬学的選択肢とみなされることになっており、例えば長期使用に及ぼす有効な身体薬剤濃度の達成に必須ではなく、研究した特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされる。
【0110】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または有効性において臨床的に有意性のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0111】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、免疫原性の臨床的に有意な変化または有効性の減退を含む有害作用のリスクの期待される上昇なしで参照生成物と生物学的生成物の間での切り替えなしで持続される療法と比較して、患者が1回以上切り替えられることができる場合、生物学的に等価である。
【0112】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、条件または使用条件についての共通の機序または作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0113】
生物学的等価性は、インビボおよびインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒト生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗体の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0114】
本明細書に示す例示的な二重特異性抗原結合分子の生物学的に等価な変異体は、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈において、生物学的に等価な抗体は、抗体のグリコシル化特性を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する突然変異を含む、本明細書に記載される例示的な二重特異性抗原結合分子の変異体を含み得る。
【0115】
種の選択性および種の交差反応性
本発明は、ある特定の実施形態によると、ヒトCD28に結合するが、他の種からのCD28には結合しない抗原結合分子を提供する。本発明はまた、ヒトPSMAに結合するが、他の種からのPSMAには結合しない抗原結合分子を提供する。本発明はまた、ヒトCD28および1つ以上の非ヒト種由来のCD28に結合する抗原結合分子、ならびに/またはヒトPSMAおよび1つ以上の非ヒト種由来のPSMAに結合する抗原結合分子を含む。
【0116】
本発明のある特定の例示的な実施形態によると、ヒトCD28および/またはヒトPSMAに結合し、場合によってはマウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザルもしくはチンパンジーのCD28および/またはPSMAのうちの1つ以上に結合するか、または結合しない抗原結合分子が提供される。例えば、本発明の特定の例示的な実施形態では、ヒトCD28およびカニクイザルCD28に結合する第1の抗原結合ドメインと、ヒトPSMAに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0117】
免疫結合体
本発明は、細胞毒素、化学療法薬、免疫抑制剤、または放射性同位元素などの治療部分(「免疫結合体」)にコンジュゲートされた抗原結合分子を包含する。細胞傷害性薬剤には、細胞に有害な任意の薬剤が含まれる。免疫結合体を形成するために好適な細胞傷害性薬剤および化学療法剤の例は、当該技術分野で知られている(例えば、WO05/103081を参照)。
【0118】
治療用製剤および投与
本発明は、本発明の抗原結合分子を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、好適な担体、賦形剤、および改善された移動、送達、耐性などを提供する他の薬剤とともに製剤化される。多くの適切な製剤は、製薬化学者全員に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて認めることができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)など、Life Technologies,Carlsbad,CA)を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0119】
患者に投与される抗原結合分子の用量は、患者の年齢および大きさ、標的疾患、病態、投与経路などに応じて変わり得る。好ましい用量は、典型的には体重または体表面積に従って計算される。本発明の二重特異性抗原結合分子が成人患者の治療目的に使用される場合、本発明の二重特異性抗原結合分子を通常約0.01~約20mg/kg体重の単回投与で、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kg体重の単回投与で静脈内投与することが有利であり得る。容態の重症度に応じて、治療の頻度および期間を調整することができる。二重特異性抗原結合分子を投与するための有効投与量およびスケジュールは経験的に決定され、例えば、患者の経過を定期的な評価によってモニターし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当該技術分野において周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0120】
種々の送達系、例えば、リポソームにおける封入、微粒子、マイクロカプセル、突然変異体ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが知られており、本発明の薬学的組成物を投与するために使用され得る(例えば、Wu et al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照)。導入方法には、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入もしくはボーラス注射、上皮または粘膜皮膚内層(linings)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収による任意の好都合な経路によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身または局所であり得る。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の薬学的組成物を送達する上での適用を容易に有する。このようなペン送達デバイスは、再利用可能または使い捨て可能であり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、概して、薬学的組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。一度、カートリッジ内の薬学的組成物が全て投与され、カートリッジが空になると、この空のカートリッジは容易に廃棄することができ、薬学的組成物を含有する新しいカートリッジと容易に交換することができる。次に、ペン送達デバイスは再利用することができる。使い捨てのペン送達デバイスにおいて、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、このデバイス内の貯蔵器の中に保持された薬学的組成物が事前に充填されている。一度、貯蔵器が薬学的組成物に関して空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0122】
数多くの再利用可能なペン送達デバイスおよび自動注射送達デバイスは、本発明の薬学的組成物の皮下送達における用途を有する。例としては、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis,Frankfurt,Germany)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物の皮下送達における用途を有する使い捨てペン送達デバイスの例としては、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射器(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
ある特定の状況において、薬学的組成物は、徐放系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,上記;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、それによって全身用量の一部のみが必要となる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,上記,vol.2,pp.115-138を参照)。他の徐放系は、Langer,1990,Science249:1527-1533による総説で論じられている。
【0124】
注射可能な調製物には、静脈内注射、皮下注射、皮内注射および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公的に既知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来通り使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に上述の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化させることによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張液、および他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用され、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このように調製された注射は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0125】
有益なことに、上記に記載される経口または非経口での使用のための薬学的組成物は、有効成分の用量に適合するために好適な単位用量の投薬形態へと調製される。このような単位用量の剤形には、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射(アンプル)、坐薬などが含まれる。前述の含有される抗体の量は概して、単位用量の剤形あたり約5~約500mgであり、特に注射の形態では、前述の抗体は、約5~約100mgで、他の剤形については約10~約250mgで含有されることが好ましい。
【0126】
抗原結合分子の治療的使用
本発明は、抗CD28抗体またはCD28および標的抗原(例えば、PSMA)に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗体または二重特異性抗原結合分子のいずれかと薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み得る。本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という表現は、癌の1つ以上の症状または徴候を呈するヒトまたは非ヒト動物(例えば、腫瘍を発現する対象または本明細書で後述される癌のうちのいずれかに罹患している対象)、あるいは、そうでなければPSMA活性の阻害もしくは低減またはPSMA+細胞の枯渇から利益を得る者を意味する。
【0127】
本発明の抗体および二重特異性抗原結合分子(およびそれを含む治療用組成物)は、とりわけ、免疫応答の刺激、活性化および/または標的化が有益である任意の疾患または障害の治療に有用である。特に、本発明の抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子は、PSMA発現もしくは活性、またはPSMA+細胞の増殖に関連するかまたはそれによって媒介される任意の疾患または障害の治療、予防、および/または改善に使用され得る。本発明の治療方法が達成される作用機序は、エフェクター細胞、例えば、T細胞の存在下での、PSMAを発現する細胞の殺滅を含む。本発明の二重特異性抗原結合分子を使用して阻害または殺滅することができるPSMAを発現する細胞には、例えば、腫瘍原性前立腺細胞が含まれる。
【0128】
本発明の抗原結合分子は、例えば、結腸癌、肺癌、乳癌、腎癌、および膀胱癌のサブタイプで生じる原発性および/または転移性腫瘍を治療するために使用され得る。ある特定の例示的な実施形態によると、本発明の二重特異性抗原結合分子は、前立腺癌を治療するために使用される。
【0129】
本発明はまた、対象における残存癌を治療するための方法も含む。本明細書で使用される場合、用語「残存癌」は、抗癌療法による治療後の対象における1つ以上の癌性細胞の存在または持続を意味する。
【0130】
ある特定の態様によると、本発明は、対象が他の種類の抗癌療法に対して非応答性であることが示された後、本明細書の他所に記載される二重特異性抗原結合分子のうちの1つ以上を対象に投与することを含む、PSMA発現に関連する疾患または障害(例えば、前立腺癌)を治療するための方法を提供する。例えば、本発明は、対象が癌、例えば、前立腺癌に罹患している患者のための標準治療を受けてから1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、1年、またはそれ以上後に、抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を患者に投与することを含む、前立腺癌を治療するための方法を含む。他の態様では、IgG4 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子(抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子)は、最初に、1つ以上の時点で対象に投与され(例えば、前立腺癌細胞のロバストな初期枯渇を提供するため)、その後の時点で、IgG1 Fcドメインなどの異なるIgGドメインを含む等価の二重特異性抗原結合分子が投与される。本発明の抗CD28/抗PSMA抗体は、抗PSMA/抗CD3二重特異性抗体などの他の二重特異性抗原結合分子と併せて使用され得ることが想定される。本発明の二重特異性抗体は、チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1およびCTLA-4を標的とするもの、および他の標的と併せて使用されることも想定されている。同じ腫瘍抗原(例えば、PSMA)を標的とする2つの二重特異性抗体を組み合わせることが有利であり得るが、二重特異性抗体のうちの一方は、T細胞上のCD3を標的とし、もう一方の二重特異性抗体は、CD28のような共刺激分子を標的とする。この組み合わせは、腫瘍細胞殺滅を強化するために単独で使用することができるか、またはチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。
【0131】
併用療法および製剤
本発明は、本明細書に記載される例示的な抗体および二重特異性抗原結合分子のうちのいずれかを、1つ以上の追加の治療活性成分と組み合わせて含む組成物および治療用製剤、ならびにそのような組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法を含む。
【0132】
本発明の抗原結合分子と組み合わせることができるか、またはそれと組み合わせて投与することができる例示的な追加の治療薬には、例えば、化学療法、放射線療法、PD-1を標的とするチェックポイント阻害剤(例えば、ペムブロリズマブまたはニボルマブなどの抗PD-1抗体、US9,987,500も参照)、CTLA-4、LAG3、TIM3など、GITR、OX40、4-1BBなどの分子を標的とする共刺激アゴニスト二価抗体、CD3×二重特異性抗体(例えば、WO2017/053856A1、WO2014/047231A1、WO2018/067331A1、およびWO2018/058001A1を参照)、PSMA×CD3を標的とする他の抗体(例えば、WO2017/023761A1を参照)および他の共刺激CD28×二重特異性抗体が含まれる。
【0133】
本発明の抗体と組み合わせて有益に投与され得る他の薬剤には、例えば、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、ならびに小分子サイトカイン阻害剤およびIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18などのサイトカイン、またはそれらそれぞれの受容体に結合する抗体を含むサイトカイン阻害剤が含まれる。本発明の薬学的組成物(例えば、本明細書に開示される抗CD28/抗PSMA二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物)はまた、「ICE」:イホスファミド(例えば、Ifex(登録商標))、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標))、エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、「DHAP」:デキサメタゾン(例えば、Decadron(登録商標))、シタラビン(例えば、Cytosar-U(登録商標)、シトシンアラビノシド、ara-C)、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)、および「ESHAP」:エトポシド(例えば、Etopofos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、メチルプレドニゾロン(例えば、Medrol(登録商標))、高用量シタラビン、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)から選択される1つ以上の治療薬の組み合わせを含む治療レジメンの一部として投与され得る。
【0134】
本発明はまた、本明細書で言及される抗原結合分子のうちのいずれか、およびVEGF、Ang2、DLL4、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFRvIII、cMet、IGF1R、B-raf、PDGFR-o、PDGFR-I3、FOLH1、PRLR、STEAP1、STEAP2、TMPRSS2、MSLN、CA9、ウロプラキンのうちの1つ以上の阻害剤、または前述のサイトカインのうちのいずれかを含む治療薬の組み合せを含み、その阻害剤は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、ペプチボディ、ナノボディ、または抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント;F(ab’)2フラグメント;Fdフラグメント;Fvフラグメント;scFv;dAbフラグメント;もしくはダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、および最小認識ユニットなどの他の操作された分子)である。本発明の抗原結合分子は、抗ウイルス薬、抗生物質、鎮痛薬、コルチコステロイドおよび/またはNSAIDと組み合わせて投与および/または同時製剤することもできる。本発明の抗原結合分子はまた、放射線治療および/もしくは従来の化学療法、またはチェックポイント阻害剤もしくは他の二重特異性抗体を含む生物学的薬剤による治療も含む、治療計画の一部として投与してもよい。
【0135】
本発明は、1種以上の化学療法剤と組み合わせて、本明細書に記載される抗原結合分子のうちのいずれかを含む組成物および治療用製剤を含む。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(Cytoxan(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオラミド、およびトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストトラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2´,2´´-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(Taxol(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)およびドセタキセル(Taxotere(商標);Aventis Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;および上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲンなどの腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0136】
追加の治療活性成分は(複数可)、本発明の抗原結合分子の投与の直前、同時に、または直後に投与してもよい。(本開示の目的のために、このような投与計画は、追加の治療活性成分と「組み合わせて」抗原結合分子を投与することと見なされる。
【0137】
本発明は、本発明の抗原結合分子が、本明細書の他所に記載される追加の治療活性成分(複数可)のうちの1つ以上と同時製剤された薬学的組成物を含む。
【0138】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によると、複数回用量の抗原結合分子(例えば、PSMAおよびCD28に特異的に結合する抗CD28抗体または二重特異性抗原結合分子)を所定の期間にわたって対象に投与することができる。本発明のこの態様による方法は、本発明の抗原結合分子の複数回用量を対象へ連続的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「連続的に投与すること」は、抗原結合分子の各用量が、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間または数か月間)によって分けられた異なる日に対象へ投与されることを意味する。本発明には、抗原結合分子の単回の初回用量と、それに続く抗原結合分子の1回以上の二次用量、次いで場合により抗原結合分子の1回以上の三次用量を患者へ連続的に投与することを含む方法が含まれる。
【0139】
「一次用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、本発明の抗原結合分子の投与の時系列を指す。したがって、「一次用量」とは、治療様式の開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり、「二次用量」とは、一次用量後に投与される用量であり、「三次用量」とは、二次用量後に投与される用量である。一次用量、二次用量、および三次用量は全て、同じ量の抗原結合分子を含有し得るが、概して、投与頻度に関して互いに異なり得る。しかしながら、ある特定の実施形態では、一次用量、二次用量、および/または三次用量に含有される抗原結合分子の量は、治療経過の間、互いに異なる(例えば、適宜上下に調整される)。ある特定の実施形態では、2回以上(例えば、2回、3回、4回、または5回)の用量が治療レジメンの開始時において「負荷用量(loading dose)」として投与され、続いてより低い頻度に基づいて投与される後続用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0140】
本発明のある例示的な実施形態では、各二次用量および/または三次用量は、直前の用量の1~26(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、15、15と1/2、16、16と1/2、17、17と1/2、18、18と1/2、19、19と1/2、20、20と1/2、21、21と1/2、22、22と1/2、23、23と1/2、24、24と1/2、25、25と1/2、26、26と1/2、またはそれ以上)週間後に投与される。「直前の用量」という句は、本明細書で使用される場合、一連の複数回投与において、抗原結合分子の用量を意味し、これは、介入用量のない直後の用量の投与の前に患者へ投与される。
【0141】
本発明のこの態様による方法は、抗原結合分子(例えば、PSMAおよびCD28に特異的に結合する抗CD28抗体または二重特異性抗原結合分子)の二次用量および/または三次用量の任意の回数を患者に投与することを含んでよい。例えば、ある特定の実施形態では、単回の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単回の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0142】
複数回の二次用量を伴う実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与されてもよい。同様に、複数の三次用量を含む実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与されてもよい。あるいは、二次用量および/または三次用量が患者へ投与される頻度は、治療計画の経過にわたって変動し得る。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって治療経過の間に調整され得る。
【0143】
抗体の診断的使用
本発明の二重特異性抗体はまた、例えば、診断目的のために、試料中のCD28もしくはPSMAまたはCD28発現細胞もしくはPSMA発現細胞を検出および/または測定するために使用することができる。例えば、抗CD28抗体×PSMA抗体、またはそのフラグメントを使用して、CD28またはPSMAの異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現の欠如等)を特徴とする病態または疾患を診断してよい。CD28またはPSMAについての例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を本発明の抗体と接触させることを含んでよく、抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。あるいは、標識されていない抗体は、それ自体が検出可能に標識された二次抗体と組み合わせて診断用途において使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iなどの放射性同位体、フルオレセインイソチオシアナートもしくはローダミンなどの蛍光部分もしくは化学発光部分、またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。試料中のCD28またはPSMAを検出または測定するために使用することができる具体的な例示的アッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。本発明によるCD28またはPSMA診断アッセイにおいて使用することができる試料には、正常条件または病理学的条件下で、検出可能な量のCD28もしくはPSMAタンパク質またはそのフラグメントを含有する、患者から得ることのできる任意の組織または体液試料が含まれる。一般に、健常な患者(例えば、異常なCD28もしくはPSMAのレベルもしくは活性と関連した疾患もしくは病態に罹患していない患者)から得られた特定の試料中のCD28またはPSMAのレベルを測定して、CD28またはPSMAのベースラインレベルまたは標準レベルを最初に確立する。次いで、このCD28またはPSMAのベースラインレベルを、CD28またはPSMAに関連する疾患または病態を有することが疑われる個体から得られた試料において測定されたCD28またはPSMAのレベルと比較することができる。
【実施例】
【0144】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本発明とみなすことの範囲を限定することを企図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力はしてきたが、いくつかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段示されない限り、部分は重量部分であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0145】
要約
腫瘍特異性抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)-CD3二重特異性抗体(抗PSMA×CD3二重特異性抗体など)の最近の臨床的成功は、癌免疫療法を変革している。TAA-CD3抗体は、比較的安全ですぐに利用できる治療ソリューションを提供し、重要な新しいクラスの免疫療法であることが証明される可能性がある。しかしながら、CD28細胞内ドメインによって媒介されることが多い2番目の共刺激シグナルに関与するCAR-T細胞アプローチで見られる有効性を達成できない場合がある。確かに、CD28活性化抗体は、信じられないほど強力であるが、ヒトの研究では毒性でもある。TSAおよびTAAという用語は、本明細書では交換可能に使用され得る。
【0146】
本明細書では、安全で、それら自体で十分に耐容されると思われ、TAA-CD3と組み合わせると、大幅に増幅され、高度に標的化された抗腫瘍反応を生成する、TAA-CD28と称される新しいクラスの二重特異性抗体が説明される。前立腺腫瘍上で発現されるPSMAなどのTAAを使用すると、TAA×CD28は、T細胞の活性化を強化し、腫瘍標的およびTCR/CD3刺激の存在下で腫瘍細胞の溶解を大幅に増強することがわかっている。
【0147】
本発明のTAA×CD28二重特異性抗体は、同系腫瘍モデルにおいて、TAA×CD3誘発性T細胞活性化によって媒介される抗腫瘍免疫を有意に強化することが示されている。CD3は、正常組織の発現が制限された腫瘍抗原と対合したとき、非ヒト霊長類およびヒト化マウスモデルにおいて単独で、またはTAA×CD28と組み合わせた場合に、末梢サイトカインの産生をほとんどまたは全く誘発しなかった。さらに、TAA×CD28単独では、CD28スーパーアゴニスト抗体と比較して、カニクイザルの血清サイトカイン分泌およびT細胞活性化が最小であったか、または全くなかった。これらの結果は、この新規クラスの共刺激二重特異性抗体を、新しいクラスのTAA-CD3と組み合わせると、従来のTAA-CD3二重特異性抗体の有効性を著しく強化することができる、より安全な既製の生物製剤ソリューションを提供できる可能性があることを示唆する。
【0148】
前書き
モノクローナル抗体は、過去20年間にわたって抗腫瘍治療薬として確立されてきたが、T細胞を動員し、腫瘍部位で細胞傷害活性を効率的に発揮する能力は限られている。T細胞標的免疫療法およびその後の腫瘍細胞殺滅に対する二重特異性抗体の能力は、以前に実証されている。実際、二重特異性抗体プラットフォームは、抗CD3と抗腫瘍標的結合ドメインとを組み合わせることによって免疫エフェクター細胞を動員することを目的としている。最近、カツマキソマブ(EpCAM×CD3)およびブリナツモマブ(CD19×CD3)が、急性リンパ芽球性白血病の規制当局の承認を受け、他の多くの二重特異性抗体が調査中である。実際、B細胞マーカーCD20およびT細胞レパートリーのCD3成分の両方を認識する二重特異性抗体が構築されており、現在、血液悪性腫瘍の臨床研究が行われている。実際、TAA-CD3は、個々の患者向けに高度かつ骨の折れるカスタマイズを行う必要のない、比較的安全で既製の治療ソリューションを提供する。しかしながら、TAA-CD3二重特異性抗体は、重要な新しいクラスの免疫療法であることが証明される可能性があるが、横断研究の比較では、CAR-Tアプローチで見られる有効性を達成していない場合があることを示唆している。
【0149】
2つのキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞薬KymriiahおよびYescartaは、最近、血液B細胞悪性腫瘍についてFDAの承認を受けており、個別化された癌免疫療法の分野におけるこのアプローチの強力な可能性を実証している。どちらの製品も、CD19抗原を腫瘍関連抗原(TAA)として利用し、これは、B細胞への発現が制限されているため、T細胞媒介性殺滅の理想的な標的であり、オフターゲット毒性を最小限に抑え、抗腫瘍効果を高める。しかしながら、CAR-T細胞の高い効力は、サイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性などの副作用と関連している。さらに、全ての患者がまだ治療の恩恵を受けているわけではなく、各患者の臨床転帰に影響を与える可能性のある変数の数は、自家アプローチおよび同種アプローチの両方で比較的高い。さらに、固形腫瘍中の腫瘍関連抗原を標的とする試みは、これまでのところ限られた成功しか達成しておらず、最小限の抗腫瘍活性または重篤な副作用のいずれかを示している。腫瘍微小環境の阻害、腫瘍組織全体へのCAR-T細胞のアクセス不良、および骨の折れる製造は、有望なCAR-T細胞療法に対する現在の課題のうちのいくつかを表す。
【0150】
現在の免疫療法的治療の限界の1つは、特定の腫瘍細胞の認識および細胞傷害性の誘発を介して、腫瘍細胞に対する患者自身の免疫応答を最適に誘発することである。ナイーブT細胞の効果的な活性化および経験豊富なメモリーT細胞集団の誘発には、TCR/CD3複合体(シグナル1)を介した抗原特異的刺激に加えて、共刺激シグナル(シグナル2)が必要である。共刺激経路CD28および4-1BBのアゴニスト作用は、異なる免疫療法に対する患者の耐性に役立つ可能性のある標的細胞溶解の有意な増強をもたらし得る。しかしながら、共刺激のより広い役割は、臨床腫瘍学において依然として評価されている。多くの腫瘍は、共刺激受容体を欠いており、それらの腫瘍がCD3×TAAによって誘発されるT活性化をさらに強化することを妨げる。
【0151】
同系腫瘍のパネル上での共刺激リガンドの強制発現によって本明細書で実施される共刺激経路の盲検スクリーニングは、CD28を4-1BBとともに最も強力な共刺激受容体のうちの1つとして確立した。さらに、T細胞の表面上のCD28を架橋する共刺激ベースの二重特異性抗体が、抗腫瘍反応を増強するために前立腺組織からのTAAを用いて、本明細書で構築された。本明細書に開示されるのは、TAA-CD3およびTAA-CD28二重特異性抗体との併用療法が、TAAおよびTCR刺激の両方の存在下でT細胞活性化および細胞傷害性を効率的に高め、抗腫瘍免疫の強化をもたらすことを実証するデータである。実際、本明細書に開示されるデータは、この新規クラスの二重特異性抗体(TAA-CD28)を新たなTAA-CD3クラスと組み合わせると、カスタマイズされたCAR-T細胞療法の有効性に近づき得るより安全な既製の生物製剤ソリューションを提供し得ることを示唆している。
【0152】
より具体的には、例示的なPSMA×CD28二重特異性抗体が生成され、例示的な抗PSMA×CD28が、インビトロでPSMA×CD3またはCD20×CD3誘発性T細胞活性化を増強し、インビボで抗腫瘍効果を安全に強化することが実証された。インビトロでの活性は、T細胞および標的細胞結合体の免疫シナプスに局在する二重特異性抗体の画像、PSMA×CD3誘発性増殖の増強、サイトカイン放出、および細胞傷害性を示すことによって実証された。インビボ抗腫瘍効果は、マウス腫瘍モデル(同系)で評価された。腫瘍体積および血清サイトカインを経時的にモニターして、二重特異性抗体治療に対する応答を示した。非ヒト霊長類における本発明の例示的なPSMA×CD28の安全性および耐容性を決定するために、カニクイザルで研究が行われた。血清サイトカインおよびT細胞表現型を分析するために、臨床観察および血液試料収集によって、毒性について動物を調べた。
【0153】
以下に詳細に説明されるように、例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体は、TCR/CD3依存性T細胞活性化を増強するために生成され、したがって、プロフェッショナルAPCによって提供される共刺激(シグナル2)を模倣する。
【0154】
全ての手順は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の実験動物の管理と使用に関する指針に従って実施された。プロトコルは、Regeneron Pharmaceuticalsの動物実験委員会によって承認された。
【0155】
実施例1.抗PSMA×CD28抗体の構築
抗CD28抗体の生成
抗CD28抗体は、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作マウス)を、マウスIgG2aのFc部分に融合されたヒトCD28で免疫するか、またはCD28を発現する細胞またはCD28をコードするDNAで免疫することによって得た。抗体免疫応答を、CD28特異的イムノアッセイによってモニターした。所望の免疫応答が達成されたとき、脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、CD28特異的抗体を産生する細胞株を同定した。この技法を使用して、いくつかの抗CD28キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびマウス定常ドメインを有する抗体)を得た。さらに、US2007/0280945A1に記載されるように、いくつかの完全ヒト抗CD28抗体を、骨髄腫細胞に融合させることなく抗原陽性B細胞から直接単離した。
【0156】
本実施例の方法に従って生成された例示的な抗CD28抗体のある特定の生物学的特性を、以下に記載される実施例において詳細に説明する。
【0157】
抗PSMA抗体の生成
抗PSMA抗体は、遺伝子修飾マウスをヒトPSMA抗原で免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作マウスをヒトPSMA抗原で免疫することによって得た。あるいは、マウスを、ヒトPSMA(UniProtKB/Swiss-Prot.No.Q04609)を発現するヒト前立腺癌細胞(LNCaP、ATTC、Manassas,Virginia,USA)で免疫した。抗体免疫応答を、PSMA特異的イムノアッセイによってモニターした。所望の免疫応答が達成された場合、各マウスから脾細胞を採取して、(1)マウス骨髄腫細胞と融合してそれらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞を形成してPSMA特異性についてスクリーニングするか、または(2)N末端6-Hisタグを有するヒトPSMA(R&D、カタログ番号4234-ZN)を、反応性抗体(抗原陽性B細胞)に結合して同定する選別試薬として使用して、B細胞を選別した(US 2007/0280945A1に記載)。ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するPSMAに対するキメラ抗体が、最初に単離された。抗体を、親和性、選択性等を含む望ましい特徴について特徴付けし選択する。必要ならば、マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば、野生型または修飾IgG1またはIgG4と置き換えて、完全ヒト抗PSMA抗体を生成した。
【0158】
CD28およびPSMAに結合する二重特異性抗体の生成
抗PSMA特異的結合ドメインおよび抗CD28特異的結合ドメインを含む二重特異性抗体を、標準的な方法を用いて構築し、抗PSMA抗原結合ドメインおよび抗CD28抗原結合ドメインが各々、共通のLCVRと対をなす異なる別個のHCVRを含む。場合によっては、二重特異性抗体は、抗CD28抗体からの重鎖、抗PSMA抗体からの重鎖、および共通の軽鎖を利用して構築された(表1を参照)。ある特定の実施形態では、例示的な二重特異性抗体(bs16429D)の抗CD28抗体からの重鎖アミノ酸配列は、配列番号81に示されている。例示的な二重特異性抗体(bs16429D)の抗PSMA抗体からの重鎖アミノ酸配列は、配列番号82に示されている。bs16429Dの共通軽鎖アミノ酸配列を配列番号83に示す。
【0159】
本実施例に従って作成された二重特異性抗体は、2つの別個の抗原結合ドメイン(すなわち、結合アーム)を含む。第1の抗原結合ドメインは、抗CD28抗体(「CD28-VH」)に由来する重鎖可変領域を含み、第2の抗原結合ドメインは、抗PSMA抗体(「PSMA-VH」)に由来する重鎖可変領域を含む。抗PSMAおよび抗CD28の両方が、共通の軽鎖を共有する。CD28-VH/PSMA-VH対合は、T細胞上のCD28および腫瘍細胞上のPSMAを特異的に認識する抗原結合ドメインを作成する。
【0160】
実施例2.重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列および核酸配列
表1は、実施例1に従って作製された様々な二重特異性抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0161】
実施例3.CD28および4-1BBは、強力な共刺激受容体である
T細胞の活性化に重要な共刺激シグナルを提供するのにどの共刺激受容体が効果的であるかを決定するために、同系腫瘍のパネル上で共刺激リガンドの強制発現によって実施される共刺激経路のブラインドスクリーン(表3および
図2)が、4-1BBとともに最も強力な共刺激受容体の1つとしてCD28を再度確立した。表3は、ブラインドスクリーンでの無腫瘍マウスの数をまとめたものである。各群で5匹のマウスを試験した。アッセイは、7つの異なる共刺激リガンドを発現するように操作された3つの異なる腫瘍細胞株で実施された。簡単に説明すると、EL4、MC38、およびB16F10.9腫瘍細胞は、レンチウイルス形質導入によって個々の共刺激リガンドを発現するように操作された。細胞を、WT C57BL6マウスの皮下に移植した。腫瘍成長は、EL4、MC38、およびB16F10.9腫瘍型の移植後18、24、および25日目にそれぞれ測定した。これは、対照群の腫瘍体積が最大許容サイズ(>2000mm3)に達した時点である。腫瘍サイズを測定した。表3のデータと一致して、CD28および4-1BBも腫瘍のサイズを縮小するのに最も効果的である(データは示さず)。
【表3】
【0162】
実施例4.抗PSMA×CD28二重特異性抗体の表面プラズモン共鳴由来の結合親和力および速度定数
抗PSMAxCD28二重特異性モノクローナル抗体の結合速度論を決定するために、抗PSMA×CD28二重特異性抗体、ならびにPSMAおよび/またはCD28に対する関連親モノクローナル抗体の表面プラズモン共鳴由来の結合親和性および速度定数を決定した。
【0163】
抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体のPSMAへの結合速度論
精製された抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体または抗PSMA二価親モノクローナル抗体に結合する6h.hPSMA(組み換えヒトPSMA/FOLH1タンパク質、R&D、カタログ番号4234-ZN)の平衡解離定数(KD値)は、Biacore T-200機器を使用したリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定した。CM5 Biacoreセンサー表面は、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体とのアミンカップリングによって誘導体化され、精製された抗PSMA×CD28二重特異性、または抗PSMAおよび抗CD28親モノクローナル抗体を捕捉した。
【0164】
このBiacore結合研究は、0.01MのHEPES(pH7.4)、0.15MのNaCl、0.5mMのMgCl2、1.0mMのCaCl2、0.05% v/vの界面活性剤P20(HBS-P++泳動緩衝液)からなる緩衝液中で行った。N末端ポリヒスチジンタグ(6h.hPSMA、R&D)を有する異なる濃度のhPSMAを、抗PSMA×CD28二重特異性抗体および抗PSMAまたは抗CD28親モノクローナル抗体について、3倍段階希釈で、10nM~0.4nMの範囲のHBS-P++泳動緩衝液中で調製した。
【0165】
異なる濃度の6h.hPSMAを、50μL/分の流速でモノクローナル抗体で捕捉された表面に注入した。捕捉されたモノクローナル抗体への6h.hPSMAの会合を3分間モニターし、HBS-P++泳動緩衝液中の6h.hPSMAの解離を10分間モニターした。Scrubber 2.0c曲線適合ソフトウェア(BioLogic Software)を用いてリアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルにあてはめることによって、動的結合(ka)速度定数および動的解離(kd)速度定数を測定した。結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)を、動的速度定数から以下のように計算した:
KD(M)=kd/ka、およびt1/2(分)=0.693/kd/60
【0166】
25℃で精製モノクローナル抗体に結合する6h.hPSMAの結合速度論的パラメータを以下の表4に示す。
【表4】
【0167】
37℃で1つの精製された例示的なモノクローナル二重特異性抗体に結合する6h.hPSMAの結合速度論的パラメータを以下の表5に示す。製造元によって定義されたように、1つのRU(応答ユニット)は、1mm
2あたり1pgのタンパク質を表す。
【表5】
【0168】
抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体のCD28への結合速度論
精製されたモノクローナル抗体に結合するhCD28.mmhの平衡解離定数(KD値)は、Biacore T-200機器を使用したリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定された。CM5 Biacoreセンサー表面は、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体とのアミンカップリングによって誘導体化され、精製された抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体、および抗PSMAまたは抗CD28親モノクローナル抗体を捕捉した。
【0169】
異なる濃度のhCD28.mmhを、50μL/分の流速でモノクローナル抗体で捕捉された表面に注入した。捕捉されたモノクローナル抗体へのhCD28.mmhの会合を5分間モニターし、HBS-P++泳動緩衝液中のhCD28.mmhの解離を10分間モニターした。Scrubber 2.0c曲線適合ソフトウェアを用いてリアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルへあてはめることによって、動的結合(ka)速度定数および動的解離(kd)速度定数を測定した。結合解離平衡定数(KD)および解離半減期(t1/2)を、動的速度定数から以下のように計算した:
KD(M)=kd/ka、およびt1/2(分)=0.693/kd/60
【0170】
25℃での精製された抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体または抗CD28二価親モノクローナル抗体へのhCD28.mmh結合の結合速度論的パラメータを以下の表6に示す。
【表6】
【0171】
37℃での精製された抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体へのhCD28.mmh結合の結合速度論的パラメータを以下の表7に示す。
【表7】
【0172】
表4~7に示されるように、本発明のいくつかの抗CD28抗体は、高い親和性でCD28に結合する。本発明のいくつかの抗PSMA抗体は、高い親和性でPSMAに結合する。いくつかの抗PSMA×CD28二重特異性抗体は、CD28およびPSMAの両方に高い親和性で結合する。
【0173】
実施例5.PSMAおよびCD28に対する抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体の細胞結合の効力および特異性
これらの抗体(抗PSMA、抗CD28、および抗PSMA×D28モノクローナル抗体)が細胞表面タンパク質に特異的に結合する能力を評価するために、電気化学発光ベースの検出プラットフォーム(MSD)でヒトPSMAまたはCD28を発現する細胞を使用して、インビトロ結合アッセイを開発した。2つの研究を行った。1つの研究では、細胞表面抗原に結合するモノクローナル抗体の効力および特異性を評価した。これらの抗体(抗PSMA、抗CD28、および抗PSMA×CD28抗体)は、ヒトPSMAまたはヒトCD28を発現する細胞株への特異的結合を示した。補足実験では、IgG4sアイソタイプへのブリッジング研究が実施された。
【0174】
PSMAおよびCD28への抗PSMA×CD28二重特異性抗体の細胞結合の効力および特異性を決定するために使用される方法
ヒト上皮性前立腺癌細胞株であるC4-2(UroCor)は、ヒトPSMAを内在的に発現する。HEK293/hCD28発現細胞株は、ATCC(CRL-1573)からのヒト胎児腎細胞にヒトCD28をコードするネオマイシン耐性レンチウイルス構築体(hCD28受託番号NP_006130.1)を形質導入することによって操作された。結合の特異性を評価するために、これら2つの細胞株を、親HEK293HZ細胞株(PSMAおよびCD28に対して陰性)と並行して、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって評価した。抗Feld1ヒトIgG1抗体が、IgG検出の陰性対照として含まれた。
【0175】
上記の細胞株を、Ca2+/Mg2+(Irvine Scientific、カタログ番号9240)を含まない1×PBS緩衝液で1回すすぎ、酵素フリー細胞解離溶液(Millipore、カタログ番号S-004-C)とともに37℃で10分間インキュベートして、フラスコから細胞を分離した。Ca2+/Mg2+(Irvine Scientific、カタログ番号9236)を含む1×PBSでの追加洗浄を行った。次いで、Cellometer(商標)Auto T4セルカウンター(Nexcelom Bioscience、モデル#Auto T4)で細胞をカウントした。細胞洗浄緩衝液中のウェルあたりおよそ10,000個の細胞を、96ウェルカーボン電極プレート(MULTI-ARRAY高結合プレート、MSD、Meso Scale Discovery、カタログ番号L15XB-3/LX11XB-3)に個別に播種し、37℃で1時間インキュベートして、細胞を接着させた。非特異的結合部位は、PBS中2%のBSA(w/v)(Sigma、カタログ番号A8577-1L)によって、室温で1時間遮断した。
【0176】
抗PSMA、抗CD28、抗PSMA×CD28、もしくは対照抗体を、1.7pM~100nMの範囲の段階希釈で含む溶液、または抗体を含まない溶液をプレート結合細胞に付加し、室温で1時間インキュベートした。示された場合を除き、分析は二重に行った。次いで、細胞洗浄ヘッドを備えるAquaMax2000プレート洗浄機(MDS Analytical Technologies、モデル番号2000)を使用してプレートを洗浄し、未結合抗体を除去した。プレート結合抗体は、重鎖および軽鎖に特異的なSULFO-TAG(商標)コンジュゲートヤギポリクローナル抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ#109-005-088)を用いて室温で1時間検出した。洗浄後、製造元の推奨手順に従ってリードバッファー(MSD、Meso Scale Discovery、カタログ番号R92TD-2)を用いてプレートを展開し、発光シグナルを、SECTOR Imager 600(Meso Scale Discovery、モデル#600)機器で記録した。
【0177】
直接結合シグナル(相対光単位、RLU)を、抗体濃度の関数として分析した。GraphPad Prism(商標)ソフトウェア(GraphPadソフトウェアバージョン#6)を使用して、データをシグモイド(4パラメータロジスティック)用量反応モデルに適合させた。最大結合シグナルの50%が検出される抗体の濃度として定義されるEC50値は、HEK293/hCD28およびC4-2細胞への結合について決定され、それぞれCD28またはPSMAに結合する各抗体の効力を示した。さらに、HEK293/hCD28またはC4-2細胞上の11.1nMでの抗体の、HEK293HZ細胞に対する結合シグナルの比率を計算した。この代表的な濃度は、CD28、PSMA陰性HEK293HZ細胞上の高い標的細胞結合、低いバックグラウンドシグナルのために選択された。結合比が3未満の抗体は、以下の表8でNBとしてマークされた。NBは、「アッセイ条件下で特異的結合は観察されない」と定義される。
【0178】
補足研究では、上記と同じプロトコルを使用して別個の実験を実施したが、IgG4アイソタイプ対照(USSN15/147,791を参照)および親CD28モノクローナル抗体が含まれた。試験溶液は、3.4pM~200nMの抗PSMA、抗CD28、抗PSMA×CD28二重特異性モノクローナル抗体または対照抗体を段階希釈で含んでいた。結合比は、7.4nmで計算した。
【0179】
結果、要約、および結論
PSMAまたはCD28のいずれかを発現する細胞に特異的に結合する抗PSMA×CD28二重特異性抗体の能力を、免疫結合アッセイを使用して、PSMAまたはCD28発現が陰性の細胞株と比較して評価した。比較のために、PSMAまたはCD28に特異的な二価の親抗体を含めた。最大100nMの抗体濃度での、96ウェル高結合プレート(MSD、Meso Scale Discovery、カタログ番号L15XB-3/LX11XB-3)上の細胞への抗体の用量依存的結合を、SULFO-TAG(商標)コンジュゲート抗ヒトIgG抗体を使用して検出し、電気化学発光の結合シグナルは、Sector Imager 600(MSD)上で記録した。細胞に結合する抗体のRLU値を決定した。CD28またはPSMA発現細胞について、EC50値を効力の尺度として計算した。高いバックグラウンドシグナルをもたらした試料の場合、EC50値の計算から高濃度を除外し、値は表8に星印で示す。11.1nMでの抗体とHEK293/hCD28、またはC4-2細胞と陰性HEK293HZ細胞との結合シグナルの比較を使用して、抗体の結合特異性を評価した。特異的結合は、その濃度のHEK293HZ細胞と比較して、CD28またはPSMA発現細胞への結合の比率が3倍以上の抗体として定義される。
【0180】
結合結果を表8に要約する。11.1nMの濃度で、本発明の3つの例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体(bs16429D、bs16430D、およびbs16431D)は、HEK293-hCD28およびC4-2細胞の両方に特異的に結合し、比率はそれぞれHEK293HZ細胞の13~31倍および4~10倍上であった。二重特異性抗体の効力は、HEK293-hCD28細胞で5.31~9.58nMおよびC4-2細胞で0.35~5.24nMのEC
50値の範囲であった。
【表8】
【0181】
親抗体は、抗体ID列の括弧内に示されているように、それらを生成するために使用された抗原に対応する細胞に特異的に結合した。親抗体について、HEK293-hCD28およびC4-2細胞に結合するためのEC
50値は、HEK293-hCD28細胞上の1.04~10.2nM~C4-2細胞上の0.738~0.946nMの範囲であった。抗体について、C4-2細胞上のより高い濃度のmAb11838P2およびmAb11810P2結合値は、陰性細胞上の高バックグラウンドを補償するために、EC
50値の計算から除外した。予想どおり、IgG対照抗体は、CD28またはPSMA発現細胞株に特異的に結合しなかった。
補足実験は、上記のように実施されたが、IgG4アイソタイプ対照および親CD28モノクローナル抗体が含まれていた。このデータは、hIgG4sアイソタイプ対照を使用してわずかなバックグラウンドシグナルがあったことを実証するためのブリッジング研究として生成された。データを表9に要約する。表9に示されるように、抗CD28抗体mAb14226P2は、ヒトCD28発現細胞であるHEK293-hCD28P-3に特異的に結合する。抗CD28抗体mAb14226P2は、細胞がPSMA(C4-2)を発現するかどうかに関係なく(HEK293HZ)、ヒトCD28を発現しない細胞には結合しない。
【表9】
【0182】
PSMA×CD28二重特異性抗体のT細胞および標的細胞への結合
実験手順
フローサイトメトリー分析を利用して、抗PSMA×CD28二重特異性抗体のC4-2、22RV1、RAJI、ヒトおよびカニクイザルT細胞への結合を決定し、続いてフィコエリトリン(PE)標識抗ヒトIgG抗体で検出した。簡単に説明すると、1×105細胞/ウェルを、PSMA×CD28二重特異性抗体またはヒトIgG4抗体(USSN15/147,791を参照)の段階希釈物とともに4℃で30分間インキュベートし、これは、ヒトおよびカニクイザルT細胞については133nM~8.14pMの範囲、およびPSMA発現細胞については133nM~61pMの範囲の、ヒトまたはカニクイザルCD28との交差反応性なしにヒト抗原に結合する。インキュベーション後、細胞を1%濾過FBSを含有する冷PBSで2回洗浄し、PEコンジュゲート抗ヒト二次抗体(Jackson Immunoresearch、カタログ番号709-116-149)を細胞に添加して、さらに30分間インキュベートした。Live/dead色素を、ヒトおよびカニクイザルT細胞のインキュベーションに追加した。抗体を含有しないかまたは二次抗体のみを含有するウェルを対照として使用した。
【0183】
PSMA発現細胞とのインキュベーション後、細胞を洗浄し、1%の濾過したFBSを含有する200μLの冷PBSに再懸濁し、BD FACS Canto II上でフローサイトメトリーにより分析した。
【0184】
ヒトまたはカニクイザルT細胞とのインキュベーション後、細胞を洗浄し、Brilliant染色バッファー(BD、カタログ番号566349)中の抗CD2(BD、カタログ番号562638)、抗CD16(BD、カタログ番号562874)、抗CD4(BD、カタログ番号564305)、および抗CD8(BD、カタログ番号563795)抗体のカクテルで、さらに20分のインキュベーションにわたって4℃で染色した。洗浄後、細胞を、1%の濾過したFBS(TCB、カタログ番号101を含有する200μLの冷PBS(Gibco、カタログ番号14190-144)中に再懸濁し、Live/CD2+/CD4+/CD16またはLive/CD2+/CD8+/CD16ゲートにゲートし、BD FACS LSR-Fortessa-X20上でフローサイトメトリーにより分析した。
【0185】
結果、要約、および結論:
PSMA×CD28二重特異性抗体の、ヒトT細胞の表面への結合をフローサイトメトリーによって試験した。
【0186】
bs16429Dは、4.80×10-8MのEC50値で全てのT細胞に結合した。それぞれ5.09×10-8Mおよび5.89×10-8MのEC50値で、CD4+細胞およびCD8+T細胞の両方に結合した。
【0187】
bs16431Dは、1.80×10-7のEC50値で全てのT細胞に弱く結合した。CD4+およびCD8+T細胞の両方に弱く結合し、EC50値はそれぞれ1.67E-07Mおよび1.80E-07Mであった。
【0188】
PSMA×CD28二重特異性抗体の、PSMAを発現する細胞株の表面への結合をフローサイトメトリーによって試験した。
【0189】
C4-2は、LNCaP(リンパ節転移に由来するアンドロゲン感受性ヒト前立腺腺癌細胞、Wu et al.,Int.J.Cancer,57:406-412(1994)を参照)細胞に由来するCaP(前立腺癌)細胞株である。bs16429Dおよびbs16431Dの両方は、それぞれ3.87×10-9Mおよび1.50×10-9MのEC50値でC4-2細胞(Liu et al.,2004,Prostate,60:98-108を参照)に結合した。
【0190】
22RV1は、上皮性前立腺癌細胞株である(In Vitro Cell Dev.Biol.Anim.,1999,35(7):403-409を参照)。bs16429Dおよびbs16431Dの両方は、それぞれ3.05×10-9Mおよび6.33×10-09MのEC50値で22RV1細胞に結合した。
【0191】
これらの結果を表10~12に要約する。
【表10】
【表11】
【表12】
【0192】
実施例6:PSMA×CD28二重特異性抗体の一次および操作されたバイオアッセイ
T細胞の活性化は、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合性複合体クラスIまたはII(MHCIまたはMHCII)タンパク質によって提示される特定のペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)を刺激することによって達成される(Goldrath et al.,Selecting and maintaining a diverse T-cell repertoire,Nature 402,255-262(1999))。活性化されたTCRは、順にシグナル伝達事象のカスケードを開始し、これはアクチベータータンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)、または活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NFκB)などの様々な転写因子によって駆動される、レポーター遺伝子によってモニターすることができる。T細胞応答は次いで、CD28、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)、または他の分子などのT細胞上に構成的または誘発的のいずれかで発現した共受容体の関与を介してさらに精製される(Sharpe et al.,The B7-CD28 Superfamily,Nat.Rev.Immunol.,2(2):116-26(2002))。共刺激分子であるCD28は、APC上で発現する内在性リガンドCD80またはCD86によって活性化される。CD28は、TCR活性化後、NFκB転写因子によって制御される経路などの細胞シグナルを増強する。CD28共シグナルは、T細胞の分化、増殖、サイトカイン放出、および細胞死などの効果的なT細胞活性化に重要である(Smeets et al.,NFκB activation induced by T cell receptor/CD28 costimulation is mediated by protein kinase C-Θ,PNAS,97(7):3394-3399(2012)。
【0193】
一次刺激およびPSMA標的発現の両方の存在下でT細胞活性を強化する抗体を同定するために、抗CD28抗体および抗PSMA×CD28二重特異性抗体を、操作されたレポーターバイオアッセイおよびヒト初代T細胞を使用した細胞ベースのアッセイにおいて特徴付けた。アッセイは、一次刺激の存在下および非存在下、ならびに標的発現の存在下および非存在下での抗PSMA/CD28二重特異性抗体の挙動を評価する。アッセイの概略図を
図3に示す。一次刺激および標的発現の存在下でT細胞活性を強化する抗PSMA×CD28二重特異性抗体を選択するためにアッセイを実施した。したがって、アッセイは、一次刺激および標的発現の存在下および非存在下での二重特異性抗体の挙動を評価した。
【0194】
1)ルシフェラーゼベースのレポーターアッセイ:
a)レポーターT細胞の操作:
Jurkat由来のT細胞クローンであるJRT3.T3.5(ATCC、#TIB-153)に、NFκBルシフェラーゼレポーター構築体(NFκB-Luc,SA Biosciences/Qiagen、カタログ#CLS-013L)を形質導入した。ピューロマイシン耐性クローン(JRT3.T3.5/NFκB-Lucクローン1C2)の単離後、完全長ヒトTCRα(1G4A-アミノ酸M1~S274)およびTCRβサブユニット(1G4B-アミノ酸M1~G311)を発現するように細胞をさらに操作した(Robbins et al.,Single and Dual Amino Acid Substitutions in TCR CDRs Can Enhance Antigen-Specific T Cell Functions,J.Immunol.180(9):6116-31(2008))。単一のクローン(J.RT3-T3.5/NFκB-Luc/1G4ABクローン1D2)を単離した後、完全長ヒトCD8α(受託番号NP_001139345のhCD8a-アミノ酸M1~V235)およびヒトCD8βサブユニット(受託番号P10966のhCD8b-アミノ酸M1~K210)を発現するように細胞をさらに操作した。単一のクローンが再び生成され(J.RT3-T3.5/NFκB-Luc/1G4AB/hCD8abクローン1D5)、完全長ヒトCD28(受託番号#P10747のhCD28-アミノ酸M1~S220)でさらに形質導入された。細胞をCD28の高発現のために選別し、RPMI+20% FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(P/S/G)+NEAA+NaPyr+1μg/mLのピューロマイシン+500μg/mLのG418+250μg/mLのヒグロマイシン+10μg/mLのブラスチシジン中で維持した。より速い成長のために、操作されたレポーターT細胞を、抗生物質を含まない細胞培養培地に保持し、操作されたレポーターT細胞として細胞ベースのルシフェラーゼ実験に使用した。試薬情報は次のとおりである:RPMI 1640、Irvine Scientific、カタログ番号9160;FBS、Seradigm、カタログ#1500-50;ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン100×(P/S/G)、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016;非必須アミノ酸(NEAA)、Irvine Scientific、カタログ番号9304;ピルビン酸ナトリウム(NaPyr)、Millipore、カタログ番号TMS-005-C;ピューロマイシン、Sigma、カタログ番号P8833;ジェネティシン(G418)、Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11811-098;ハイグロマイシン;ブラスチシジン。
【0195】
b)APCの操作:
ヒトCD20(受託番号NP_068769.2のアミノ酸M1~P297)を発現する安定したHEK293細胞株(ATCC、#CRL-1573)にヒトPSMA(受託番号Q04609のアミノ酸M1~A750)を形質導入した。ヒトPSMA陽性細胞を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって分離し、得られた細胞株HEK293/CD20/hPSMAハイソートを、500μg/mLのG418を補充したDMEM+10%+P/S/G+NEAA中で維持した。
【0196】
c)T細胞/APC刺激:
この実験では、操作されたレポーターT細胞が、2つの二重特異性抗体を介して刺激される。最初の刺激は、T細胞活性化二重特異性抗体である抗CD3×CD20 hIgG4(WO14/047231、US9657102、およびUSSN14/661,334を参照)によって送達され、操作されたレポーターT細胞上のCD3分子およびHEK293細胞上のCD20を標的とする。ここで、最初の刺激は、MHC分子に表示される特定のペプチドである天然リガンドによるTCRの活性化の必要性を回避する。2番目の刺激は、CD28二重特異性抗体によって駆動される。この抗体は、APC上で発現されるリガンドであるCD80/CD86によるT細胞でのCD28活性化を模倣する。ここで、抗体は、T細胞上のCD28および操作されたHEK293細胞上のPSMAと相互作用し、操作されたレポーターT細胞上のCD28の活性化を促進する。TCRおよびCD28の同時活性化により、NFκBの転写活性が強化され、順にレポーター遺伝子であるルシフェラーゼの産生が誘発される。
【0197】
d)ルシフェラーゼアッセイの設定:
10% FBSおよびP/S/Gを補充したRPMI1640をアッセイ培地として使用して、抗PSMA×CD28二重特異性抗体のスクリーニング用の細胞懸濁液および抗体希釈液を調製した。
【0198】
スクリーニングの前日に、操作レポーターT細胞を、細胞培養培地中で1×106細胞/mLまで培養した。3倍(1:3)段階的に希釈した抗PSMA×CD28二重特異性抗体および対照を、一定の50pM抗CD20×CD3またはhIgG4アイソタイプ対照の存在下で試験した。10点希釈は、15pM~100nMの範囲であり、最終希釈には抗PSMA×CD28抗体が含まれていなかった。試薬は、次の順序で追加された。1)段階的に希釈した抗体を、96ウェル白色平底プレートに対応するウェルに添加した。2)固定濃度の50pM抗CD20×CD3またはhIgG4アイソタイプ対照を各ウェルに添加した。3)4×105細胞/mLに再懸濁したAPCを、最終濃度1×104細胞/ウェルでプレートに添加した。4)一晩培養したレポーターT細胞を、2×106/mLで再懸濁し、最終濃度5×104細胞/ウェルでプレートに添加した。プレートを37℃/5%CO2で4~6時間インキュベートした後、100μLのONE-Glo(商標)(Promega、カタログ番号E6051)試薬を添加して細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を検出した。放出された光は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer、モデル2104)上の相対光単位(RLU)で捕捉された。全ての段階希釈物を二重に試験した。
【0199】
抗体のEC
50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して、10点用量応答曲線上の4パラメータロジスティック方程式にデータを適合させることによって決定した。倍率誘発は、次の方程式を使用して計算した。
【数1】
【0200】
2)初代ヒトCD4+T細胞を使用したIL-2機能アッセイ:
初代CD4+T細胞/APC機能アッセイは、抗PSMA×CD28二重特異性抗体との係合によるIL-2産生に対するCD28活性化の影響を評価するために開発された。
【0201】
a)ヒト初代CD4+T細胞の単離:
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なドナー白血球パックから単離した。PBMC単離は、50mLのSepMate(商標)チューブ(StemCell Technologies、カタログ番号85450)を製造元の推奨プロトコルに従って使用し、密度勾配遠心分離によって達成された。簡単に説明すると、15mLのFicollPaque PLUSを50mLのSepMateチューブに重層し、続いてD-PBS(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、Irvine Scientific、カタログ#9240)で1:2に希釈した30mLの白血球を添加した。その後の工程は、SepMate製造元のプロトコルに従った。続いて、CD4+T細胞を、Miltenyi Biotec製のヒトCD4マイクロビーズキット(カタログ番号130-045-101)を製造元の指示に従って使用して、PBMCから単離した。単離されたCD4+T細胞を、10% DMSO(Macron Fine Chemicals、カタログ番号4948-02)を、1バイアルあたり5×106細胞の濃度で含有するFBS中で冷凍した。
【0202】
b)CD28抗体で処理された初代CD4+T細胞からのIL-2放出:
このアッセイでは、初代CD4+T細胞は、抗CD20×CD3二重特異性抗体を、ヒトCD20を発現するように操作されたHEK293細胞と組み合わせて使用して、表面上のCD3の架橋を介して活性化される。抗CD20×CD3二重特異性抗体のCD20アームを、CD20を発現するHEK293細胞に結合することにより、CD3受容体のクラスター化が促進され、T細胞刺激に重要な最初のシグナルが提供される。しかしながら、定量化可能なIL-2放出を検出するには、CD28分子を架橋することによって提供され得る共刺激が重要である。ここで、二重特異性抗PSMA×CD28抗体は、CD4+T細胞上のCD28および操作されたHEK293/hCD20細胞上のPSMAと相互作用し、CD28のクラスター化-活性化を促進する。組み合わされたTCRとCD28との係合により、IL-2産生が強化され、これが細胞培養培地中に放出される。IL-2は、均質な洗浄なしのAlphaLisaキット(PerkinElmer、カタログ番号AL221)を使用して、細胞上清から検出され、定量化される。
【0203】
ドナーから以前に単離および凍結したヒトCD4+T細胞を、アッセイの日に、50U/mLベンゾナーゼヌクレアーゼ(EMD Millipore、カタログ番号#71205-3)を含有する10%FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、および0.01mMのBME(β-メルカプトエタノール、Sigma-Aldrich、カタログ番号M-7522)を補充した刺激培地(X-VIVO 15細胞培養培地(Lonza、カタログ#04-418Q)中で解凍した。細胞を、1200rpmで10分間遠心分離し、刺激培地中に再懸濁し、1×105細胞/ウェルの濃度で96ウェル丸底プレート中にプレートした。ヒトCD20を単独で、またはヒトPSMAと組み合わせて発現するように操作されたHEK293細胞を、15μg/mLのマイトマイシンC(Sigma-Aldrich、カタログ#M4287)を用いて、一次刺激培地中10×106細胞/mLの濃度で処理した。37℃で1時間インキュベートした後、5%CO2、HEK293細胞を、2%FBSを含有するD-PBSで3回洗浄し、1ウェルあたり1×104細胞の最終濃度でCD4+T細胞を含有するウェルに添加した。
【0204】
続いて、15pM~100nMの範囲の1:3段階的に希釈した抗PSMA×CD28二重特異性または対照抗体を、50pMの抗CD20×CD3またはhIgG4アイソタイプ対照の存在下でウェルに添加した。10点希釈の最終点には、抗PSMA×CD28または抗CD28抗体は含まれていなかった。プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートした後、それらを遠心分離して細胞をペレット化し、40μLの培地上清を収集した。このことから、製造元のプロトコルに従い、ヒトIL-2AlphaLISAアッセイにおいて、5μLを試験した。測定値は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer、モデル2104)上で取得した。既知のIL-2濃度の標準曲線を使用して、アッセイウェルで生成されたIL-2の濃度を決定した。全ての段階希釈物を二重に試験した。
【0205】
抗体のEC
50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して、10点用量応答曲線上の4パラメータロジスティック方程式にデータを適合させることによって決定した。倍率誘発は、次の方程式を使用して計算した。
【数2】
【0206】
結果、要約、および結論
図4Aおよび4Bに示されるように、CD4+T細胞(IL-2放出によって測定)および操作されたJRT3.T3/1G4/hCD28細胞(ルシフェラーゼ活性によって測定)の活性化は、一次刺激(REGN2281抗CD20×CD3)およびHEK293/hCD20細胞上で発現されたPSMAの存在下でhPSMA×hCD28によって強化された。CD28二価抗体、mAb14193P2は、T細胞活性を一次刺激の存在下でわずかに強化し、一次刺激の非存在下で操作されたバイオアッセイにおいてわずかに強化する。CD28スーパーアゴニストであるTGN1412は、標的PSMAおよび一次刺激の存在下でPSMA×CD28二重特異性抗体よりも程度は低いものの、CD20×CD3刺激の存在下で一次および操作アッセイの両方でT細胞活性化を強化する。
【0207】
1)ルシフェラーゼベースのレポーターアッセイ:
EC
50および倍率誘発の値は、50pMの定常hIgG4アイソタイプ対照または抗CD3×CD20二重特異性抗体(T細胞刺激二重特異性抗体)に加えて、HEK293/hCD20またはHEK293/hCD20/hPSMA細胞と共インキュベートされた操作されたレポーターT細胞について、表13および14に要約される。
【表13】
表14は、HEK293/hCD20またはHEK293/hCD20/hPSMA細胞および50pMの定常hIgG4アイソタイプ対照と共インキュベートされた操作されたT細胞におけるルシフェラーゼ活性について、EC
50値および倍率誘発の結果を要約する。
【表14】
表14は、HEK293/hCD20またはHEK293/hCD20/hPSMA細胞および50pMの定常抗CD3×CD20と共インキュベートされた操作されたT細胞におけるルシフェラーゼ活性について、EC
50値および倍率誘発の結果を要約する。
【0208】
T細胞およびAPCを50pMのhIgG4アイソタイプ対照で処理した場合、CD28二重特異性抗体のいずれも、アッセイで使用したAPC系列に関係なく、TCR刺激の非存在下でルシフェラーゼ活性の増加を示さなかった。表14に示されるHEK293/hCD20細胞(4.76×)およびHEK293/hCD20/hSPMA細胞(3.59×)上で、親CD28抗体のうちの1つ(mAb14226P2)でわずかなルシフェラーゼ活性化が観察された。
【0209】
対照的に、細胞を50pMの抗CD3×CD20二重特異性抗体で処理した場合、3つ全ての抗PSMA×CD28二重特異性抗体bs16429D、bs16430D、およびbs16431Dは、表面上でhPSMAを発現するAPCと共インキュベートするとルシフェラーゼ活性を強く誘発した。APC系列に関係なく、ワンアーム対照(ワンアームのmAb14226P2、mAb14193P2、およびmAb14216P2)では、非常に低い活性化が観察されたか、または全く観察されなかった。表14に示されるように、3つ全ての親CD28抗体(mAb14226P2、mAb14193P2、およびmAb14216P2)でわずかなルシフェラーゼ活性化が観察された。
【0210】
2)初代ヒトCD4+T細胞を使用したIL-2機能アッセイ:
PSMA標的発現の非存在下または存在下でT細胞上でCD28を介して共刺激を提供する抗PSMA×CD28二重特異性抗体の能力を、IL-2サイトカイン産生を測定する機能的一次CD4+T細胞アッセイで評価した。
【0211】
EC50および倍率誘発の値は、50pMの定常hIgG4アイソタイプ対照または抗CD3×CD20二重特異性抗体(T細胞刺激二重特異性抗体)に加えて、HEK293/hCD20またはHEK293/hCD20/hPSMA細胞と共インキュベートされたCD4+T細胞について、表15に要約される。
【0212】
予想どおり、一次T細胞刺激がなかったため、一定量のhIgG4アイソタイプ対照を含むウェルでは、測定可能なIL-2放出は観察されなかった。
【0213】
対照的に、測定可能なIL-2レベルは、抗CD3×CD20二重特異性抗体で処理された試料中で検出された。これらの条件下で、ヒトCD4
+T細胞を、HEK293/hCD20細胞と共インキュベートした場合、bs16430Dおよびbs16431Dを除いて、抗CD28抗体および抗PSMA×CD28二重特異性抗体を含む、試験した全てのCD28モノクローナル抗体は、IL-2レベルの増加を示した(表15)。親抗体は、mAb14226P2は、最高の倍率誘発および約6nMのEC
50を示した。CD4
+T細胞を、hPSMAを発現するAPCおよび抗CD3×CD20二重特異性抗体と共培養すると、3つ全ての抗PSMA×CD28二重特異性抗体(bs16429D、bs16430D、およびbs16431D)でIL-2放出が検出された。より低いIL-2レベルは、表15に示されるものと同じ設定で、ワンアーム対照抗体および親抗体を用いて測定される。
【表15】
表15は、HEK293/hCD20またはHEK293/hCD20/hPSMA細胞および50pmの定常抗CD3×CD20抗体で共インキュベートされた初代CD4
+T細胞からのIL-2産生について、EC
50値および倍率誘発を要約する。
【0214】
実施例7:抗PSMAxCD28二重特異性抗体は、抗CD20×CD3によるPSMAおよびTCR刺激の両方の存在下でT細胞活性化を増強する
例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が生成され、biacoreで検証されている(例えば、実施例1および4を参照)。本発明の一対の二重特異性抗体(CD20×CD3および例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体)を使用して、PSMA(CD20および前立腺特異的膜腫瘍抗原-PSMA)に結合することにより、腫瘍細胞上のT細胞および共刺激受容体のクラスター化を誘発した(
図5A)。PSMA×CD28が、標的細胞上で発現されたPSMAおよびTCR活性化の存在下でCD28に結合して活性化することを示すために、一連のインビトロ細胞ベースのアッセイを行った。
【0215】
CD28の局在化
細胞株
安定したHEK293細胞株(ATCC、#CRL-1573)を、細胞株HEK293/hCD20、HEK293/hPSMA、およびHEK293/hCD20/hPSMAを作成する際に使用した。HEK293/hPSMA細胞株を生成するために、ユビキチンCプロモーター駆動型PSMA(受託番号Q04609のアミノ酸M1~A750)およびネオマイシン耐性遺伝子をコードする哺乳類ベクターを使用して、安定したトランスフェクションを行った。同様に、HEK293/hCD20細胞株は、ユビキチンプロモーター駆動型hCD20(受託番号NP_068769.2のアミノ酸M1~P297)をコードする哺乳類ベクターを使用して生成された。トランスフェクトされた細胞を、500μg/mlのジェネティシンAで培養し、安定して発現する細胞株を選択した。
【0216】
HEK293/hCD20/hPSMA細胞の生成のために、ヒトPSMA(受託番号Q04609のアミノ酸M1~A750)およびネオマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルスプラスミドを使用して、HEK293T細胞をトランスフェクトし、ウイルス粒子の産生を促進し、これを後に使用して、HEK293/hCD20細胞に感染させた。ヒトPSMA陽性細胞は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって単離した。生成された全ての細胞株は、500μg/mLのG418を補充したDMEM+10%FBS+P/S/G+NEAA中で維持した。JurkatクローンE6-1(ATCC、#TIB-152)を、ATCC推奨プロトコルに従って培養した。
【0217】
MC38/hPSMA細胞の生成のために、ヒトPSMA(受託番号Q04609のアミノ酸M1~A750)およびネオマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルスプラスミドを使用して、HEK293T細胞をトランスフェクトし、ウイルス粒子の産生を促進し、これを後に使用して、MC38/親細胞に感染させた。ヒトPSMA陽性細胞は、FACSによって単離した。MC38/hPMAは、500μg/mLのG418を補充したDMEM+10%FBS+P/S/G+NEAA中で維持した。
【0218】
Amnis Image stream
Jurkat T細胞および標的細胞(HEK293/hPSMAもしくはHEK293/hPSMA/hCD20)を、CD20×CD3-Alexa488(REGN2280、0.5μg/ml)単独で、またはPSMA×CD28-Alexa647(bs16429D、1μg/ml)と一緒に37℃で1時間インキュベートした。細胞を、FACS緩衝液(3%FBS、PBS中2mMのEDTA)で2回穏やかに洗浄し、抗CD28-ビオチン(REGN1412、2μg/ml)で15分間、4℃で染色し、続いてストレプトアビジン-PE-CF594(BD562284、1μg/ml)およびHoechst 33342(Thermo Fisher H3570、1μM)で15分間、4℃で染色した。細胞をPBSで洗浄し、BD安定化固定液(BD338036)中で保存した。細胞の画像を、Amnis(登録商標)イメージングフローサイトメーター上で収集し、IDEAS(登録商標)ソフトウェアによって分析した。細胞を、ダブレット明視野、ダブレット核、核フォーカス、シングルスポットカウント、シングレットCD28でゲートした。シナプス領域は、核染色に基づくバレーマスクによって定義された。バレーマスクとCD28との間の重複領域をゲートすることによって、バレーマスクが間違っているセルを排除した。シナプス内外のCD28の比率は、次の式によって計算された。
シナプス内外のCD28=シナプス内のCD28の強度/(CD28総強度-シナプス内のCD28の強度)*100%。
【0219】
結果、要約、および結論
T細胞は、CD20およびPSMAを過剰発現する操作された標的細胞(HEK293/hPSMAまたはHEK293/hCD20/hPSMA)、ならびに蛍光標識された二重特異性抗体(緑色のCD20×CD3、赤色のPSMA×CD28)と共培養された。CD28の局在化を決定するために、37℃で1時間インキュベートした後、細胞を固定し、抗CD28で染色した。T細胞および標的細胞結合体の画像は、Amnis ImageStreamイメージングフローサイトメトリーを使用して取得した。標的細胞上のPSMA発現の非存在下で、CD20×CD3二重特異性抗体のみでは、T細胞上のCD28のクラスター化はほとんどまたは全く誘発されなかった。PSMAが標的細胞上で発現されると、CD20×CD3は、T細胞および標的細胞結合体の界面に局在し、CD28が局在化する免疫シナプス(IS)を形成した。PSMA×CD28は、CD20×CD3とともに、ISでのCD28蓄積をさらに強化した。CD28の分布は、ISの内側と外側のCD28染色の比率を計算することによって定量化された(
図5B)。
【0220】
PSMA×CD3およびPSMA発現標的細胞の存在下でのPSMA×CD28は、T細胞活性化シグナル伝達が発生する場所であるISでのロバストなCD28蓄積を促進すると結論付けられている。
【0221】
サイトカイン放出
T細胞活性化に対するTAA×CD28の効果をさらに調査するために、初代ヒトT細胞および異なるTAAを過剰発現する操作された標的細胞(HEK293/hPSMA、HEK293/hCD20、またはHEK293/hCD20/hPSMA)との共培養物中の用量滴定のCD20×CD3またはPSMA×CD28二重特異性抗体とのインキュベーション後に、T細胞増殖、ならびにIL-2およびIFNγサイトカイン放出を測定した(
図5C~5G)本発明の例示的な抗PSMA×CD28抗体および抗PSMA×CD3二重特異性抗体は、PSMA発現細胞への結合について競合せず、したがって、異なるエピトープに結合することが確認された(
図5H)。PSMA×CD28は、標的細胞(HEK293/hCD20/hPSMA+5pMのCD20×CD3)上でのCD3刺激およびPSMA発現の両方の存在下でT細胞の活性化を誘発することがさらに検証された。例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体によるT細胞の活性化は、標的細胞上のPSMA発現の非存在下(HEK293/hCD20との共培養)またはCD3刺激の非存在下(HEK293/PSMA+5pMのCD20×CD3もしくはHEK293/hCD20/hPSMA+5pMのアイソタイプ対照との共培養)では観察されなかった。(
図5E~5G)。全体として、本発明の例示的な抗PSMA×CD28抗体は、PSMA×CD3およびPSMA発現標的細胞の存在下でT細胞活性化を促進し、増殖およびサイトカイン分泌の増加をもたらすことが実証された。
【0222】
実施例8:PSMA発現細胞の殺滅
2つのFACSベースの細胞傷害性研究が実施された。第1の研究では、抗PSMA×CD28刺激の存在下または非存在下、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の存在下で、C4-2細胞に対してFACSベースの細胞傷害性を実施した。刺激は、固定濃度の抗PSMA×CD28二重特異性抗体および連続希釈された抗PSMA×CD3二重特異性抗体の存在下で実施した。第2の研究は、ヒトPBMCの代わりにカニクイザルPBMCを使用することを除いて、第1の研究と同じである。PSMA×CD28二重特異性抗体は、PSMA×CD3によるTCR刺激の存在下で、前立腺腫瘍細胞に対するT細胞の活性化および細胞傷害性を増強すると結論付けられた。
【0223】
実験方法
ヒト初代CD4+T細胞の単離
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なドナー白血球パックから単離した。PBMCの単離は、製造元のプロトコルに従って、50mLのSepMate(商標)チューブを使用した密度勾配遠心分離によって達成された。その後、StemCell Technologies製のEasySep(商標)ヒトCD4+T細胞単離キットを使用し、製造元の推奨する指示に従って、CD4+T細胞をPBMCから単離した。単離されたCD4+T細胞を、1バイアルあたり50×106細胞の濃度で10% DMSOを含むFBS中で凍結させた。
【0224】
初代ヒトT細胞活性化アッセイ
以前に単離し、凍結したヒトCD4+T細胞を、50U/mlのベンゾナーゼヌクレアーゼを含む刺激培地(10% FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、および0.01μM BMEで補充されたX-VIVO 15細胞培養培地)中でアッセイの日に解凍した。細胞を、1200rpmで10分間遠心分離し、刺激培地中に再懸濁し、1ウェルあたり1×105細胞の濃度で96ウェル丸底プレート中にプレートした。HEK293細胞(HEK293/hPSMA、HEK293/hCD20、またはHEK293/hPSMA/hCD20)を、10×106細胞/mLの濃度で一次刺激培地中の15μg/mLのマイトマイシンCで処理した。37℃で1時間インキュベートした後、5%CO2、HEK293細胞を、2%FBSを含有するD-PBSで3回洗浄し、1ウェルあたり2×104細胞の最終濃度でCD4+T細胞を含有するウェルに添加した。
【0225】
T細胞を活性化するための最適以下のCD20×CD3二重特異性抗体濃度を決定するために、CD20×CD3を、500pMのPSMA×CD28二重特異性抗体またはhIgG4sアイソタイプ対照の存在下で1.5pM~10nMの範囲で1:3に段階的に希釈した。一定の5pMのCD20×CD3二重特異性抗体またはhIgG4対照を選択し、次の抗体:1)PSMA×CD28、2)非標的×CD28対照、3)CD28親、4)CD28SA(スーパーアゴニスト)、5)hIgG4アイソタイプ対照、および6)hIgG4sアイソタイプ対照を、1:3希釈で15pMから100nMまで滴定した。10点希釈の最終点には、滴定された抗体は含まれず、5pMのCD20×CD3二重特異性抗体またはhIgG4対照のみが含まれていた。
【0226】
プレートを37℃、5%CO2で48時間インキュベートした後、それらを遠心分離して細胞をペレット化し、50μLの培地上清を収集した。このことから、製造元のプロトコルに従い、ヒトIL-2およびヒトIFNγ AlphaLISAアッセイにおいて、5μLを試験した。測定値は、Perkin ElmerのマルチラベルプレートリーダーEnvisionで取得した。アッセイウェルで生成されたIL-2またはIFNγのpg/mLを推定するために、既知のIL-2またはIFNγ濃度の標準曲線を生成した。全ての段階希釈物を二重に試験した。ペレット化細胞を、[メチル-3H]-チミジン、0.25uCi/ウェルで16時間37℃、5%CO2でインキュベートした。Perkin ElmerのUnifilter 96細胞採取器を使用して、Perkin Elmer Unifilterプレート上に細胞を収集した。30μlのシンチレーション液を添加した後、プレートを密封し、Perkin Elmer製のTopCount NXTを使用して、各ウェルの1分あたりのカウントを取得した。
【0227】
抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して、10点用量応答曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。
【0228】
FACSベースの細胞傷害性アッセイ
抗PSMA×CD3抗体と抗PSMA×CD28抗体との組み合わせの存在下でPSMA+細胞の殺滅をモニターするために、C4-2細胞を、1μMの蛍光追跡色素バイオレット細胞トラッカー(Invitrogen、カタログ番号34557)で標識化した。標識後、細胞を37℃で一晩播種した。別に、ヒトPBMC(New York Blood Center)またはカニクイザルPBMC(Covance,Cranford NJ)を、1×106細胞/mLで補充RPMI培地に播種し、付着マクロファージ、樹状細胞、およびいくつかの単球を枯渇させることによってリンパ球を濃縮するために37℃で一晩インキュベートした。翌日、標的細胞を、接着細胞が枯渇したナイーブPBMC(エフェクター/標的細胞4:1比)、および抗PSMA×CD3二重特異性抗体またはIgG4対照の段階希釈物(濃度範囲:0.42nM~0.1pM)を単独で、または固定濃度のPSMA×CD28共刺激分子bs16429Dまたはbs16431Dと組み合わせて2.5μg/ml(16.7nM)で96時間、37℃で共インキュベートした。
【0229】
インキュベーション後、細胞を細胞培養プレートトリプシン-EDTA(Millipore、カタログ番号SM-2004-C)解離バッファー)から除去し、FACS BD LSRFortessa-X20(BD)上でFACSによって分析した。
【0230】
FACS分析の場合、細胞を生存率の遠赤細胞トラッカー(Invitrogen)で染色し、抗体をCD2、CD4、CD8、およびCD25(BD)に直接コンジュゲートした。試料は、細胞カウント用のキャリブレーションビーズとともに泳動させた。殺滅の特異性を評価するために、標的細胞を、バイオレット細胞トラッカー陽性集団としてゲートした。生きた標的細胞のパーセントは、次のように計算した:生細胞のパーセンテージ(%)=(R1/R2)*100(ここで、R1=抗体の存在下での生きた標的細胞のパーセンテージ(%)、およびR2=試験抗体の非存在下での生きた標的細胞のパーセンテージ(%))。T細胞の活性化は、CD2+/CD4+またはCD2+/CD8+)T細胞のうちの活性化(CD25+)T細胞のパーセントによって測定した。T細胞数は、キャリブレーションビーズあたりの生きたCD4+またはCD8+細胞の数を計算することによって測定した。
【0231】
培地に蓄積されたサイトカインのレベルは、BDサイトメトリービーズアレイ(CBA)ヒトTh1/Th2/Th17サイトカインキットを使用して、製造元のプロトコルに従って分析した。
【0232】
FACS分析の場合、細胞をdead/live近赤外反応性(Invitrogen、カタログ番号L34976)色素で染色した。FACS分析の直前に、500,000(5×105個)の計数ビーズを各ウェルに加えた。各試料につき100,000(1×105個)のビーズを収集した。殺滅の特異性を評価するために、細胞を生きたバイオレット標識集団にゲートした。生きた集団のパーセントを記録し、生存率の計算に使用した。
【0233】
T細胞の活性化およびPD-1マーカーの上方調節は、CD2、CD4、CD8、CD25、およびPD-1に対して直接コンジュゲートした抗体と細胞をインキュベートし、全T細胞(CD2+)のうちの後期活性化(CD25+/CD8+)T細胞およびPD-1+/CD4+T細胞の割合を報告することによって評価した。直接コンジュゲートした抗体の情報は、次のとおりである:CD2、PE:CD2(Cl:RPA-2.1)、BD、カタログ番号555327;CD4、PerCP-Cy5.5:CD4(Cl:OKT-4)、Biolegend、カタログ番号317428;CD8、APC:CD8(Cl:RPA-T8)、Biolegend、カタログ番号301049;CD25、BV510:CD25(Cl:M-A251)、BD、カタログ番号563352;およびPD-1、PE-Cy7:PD1(Cl:EH12.2H7)、Biolegend、カタログ番号329918。
【0234】
ヒトPBMCアッセイからのアッセイウェルの上清を、BDサイトメトリービーズアレイヒトキット(BD、カタログ番号560484)を使用し、製造元のプロトコルに従って、Th1/Th2サイトカイン放出について評価した。
【0235】
結果、要約、および結論:
図6Aおよび6Bは、抗PSMA×CD28が、ヒトまたはカニクイザルT細胞の存在下でbs13644D(抗PSMA×CD3)の細胞傷害効力を強化したことを示す。抗PSMA×CD3二重特異性抗体は、単剤としてまたは共刺激性抗PSMA×CD28二重特異性抗体の存在下で、ナイーブヒトT細胞を誘発して、ヒトPSMAを発現する標的細胞を殺滅する能力について試験した。
図6Aおよび6Bに示される研究では、抗PSMA×CD28抗体を、2.5μg/mlで固定した。抗PSMA×CD3は、1:4倍で段階的に希釈した。抗体を細胞とともに96時間インキュベートした。表16は、この研究で使用した抗体の成分を要約する。
【表16】
【0236】
例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が、PSMAを標的とすることによって、T細胞活性化および前立腺癌細胞に対する細胞傷害性を強化できるかどうかを試験した。FACSベースの細胞傷害性およびT細胞活性化アッセイを使用して、例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体を、PSMA×CD3と組み合わせて試験した(
図6、7A~7D)。T細胞を含むヒトPBMCを、内在的に高レベルのPSMAを発現するC4-2前立腺癌細胞と共培養した(データは示さず)。PSMA×CD28は、PSMA×CD3単独によって誘発される細胞傷害性の効力を著しく増加させ、EC50を(効力のログシフトにわたって)4.3×10
-11から1.5×10
-12にシフトした(
図6および7A)。T細胞の細胞傷害性の誘発と一致して、PSMA×CD28は、PSMA×CD3によって誘発されるIFNγ放出のレベルを4倍高めた(
図7B)。同様に、PSMA×CD28とPSMA×CD3との組み合わせは、CD4およびCD8 T細胞の数、ならびに活性化マーカーCD25の発現を増加させた(
図7Cおよび7D)。例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が、非標的化CD3二重特異性抗体と組み合わされた場合、T細胞の細胞傷害性または活性化に対する効果は観察されなかった。さらに、例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が、非ヒト霊長類からのT細胞のPSMA×CD3細胞傷害性および活性化を増強できることを示すために、カニクイザルからのPBMCを使用して、同じアッセイを行って同様の結果を得た(
図6、7E~7G)。これらの結果は、例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が、増殖およびサイトカイン放出だけでなく細胞傷害性によっても、PSMA×CD3媒介性T細胞活性化を強力に強化できることを実証した。
図7Hは、例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が、フローサイトメトリーによって測定されるように、細胞標的に結合することを示している。
【0237】
抗PSMA×CD3二重特異性抗体は、ヒトT細胞を活性化し、C4-2細胞(ヒト前立腺癌細胞株)を枯渇させるように誘導した。抗PSMA×CD3二重特異性抗体の存在下で標的細胞の殺滅が観察され、C4-2細胞は、ピコモルEC50秒で用量依存的に殺滅された(表17)。観察された標的細胞溶解は、これもピコモルEC50秒で、CD2+T細胞上のCD25+およびPD-1+細胞の上方調節と関連していた(表17)。抗PSMA×CD3二重特異性抗体は、ヒトサイトカインの放出を誘発した。単剤としての抗PSMA×CD3二重特異性抗体で観察された細胞傷害活性は、固定濃度の抗PSMA×CD28共刺激分子(二重特異性抗体)の存在下で強化された(表17)。
【0238】
要約すると、抗PSMA×CD28二重特異性抗体による共刺激は、抗PSMA×CD3二重特異性抗体を単剤として用いて観察されたものと比較した場合、T細胞活性化、PD-1上方調節、およびサイトカイン放出を増加させた。表16は、ヒトPBMCを使用した実験結果を要約する。
【表17】
【0239】
抗PSMA×CD3二重特異性抗体は、単剤としてまたは共刺激性抗PSMA×CD28二重特異性抗体の存在下で、ナイーブカニクイザルT細胞を誘発して、ヒトPSMAを発現する標的細胞を殺滅する能力についても試験した。選択した抗体滴定で、抗PSMA×CD3二重特異性抗体は、ヒトT細胞を活性化したが、T細胞にC4-2細胞を枯渇させるようには誘導しなかった(表18)。抗PSMA×CD28抗体との共刺激により、T細胞の活性化が増加し、細胞傷害活性が強化され、T細胞上のPD-1マーカーが上方調節された(表18)。
【表18】
【0240】
実施例9:細胞からのサイトカイン放出
本明細書の他所で述べられているように、「可溶性」フォーマットでヒトPBMCSを使用するエクスビボサイトカイン放出アッセイは、サイトカイン放出を予測することができなかった。そのため、「コーティングされた」アッセイフォーマットが開発された。
【0241】
本発明の抗PSMA/CD28二重特異性抗体および抗CD28抗体は、コーティングされたアッセイフォーマットを使用して、ヒトPBMC増殖および細胞からのサイトカイン放出を誘発するそれらの能力について評価された。PBMC増殖アッセイでは、新たに単離したPBMCを1×105/ウェルで使用した。共培養のために、マイトマイシンCで処理したC4-2細胞を、1×104/ウェルで添加した。抗体希釈物は、プレート上に一晩ウェットコーティングまたはドライコーティングされる。PBMCを添加する前に、プレートを洗浄する。Meso Scale Diagnostics(MSD、Rockville,MD)によるサイトカイン分析のために、約54時間で上清を収集した。3Hチミジンを18時間添加し、増殖を測定した。
【0242】
結果は、可溶性抗PSMA×CD28二重特異性抗体が、CD3刺激の存在下でヒトPBMCの増殖を誘発したことを示した。対照的に、抗CD28スーパーアゴニストは、CD3刺激の非存在下でヒトPBMCの増殖を誘発した(データは示さず)。
【0243】
さらに、ウェットコーティングされたbs16429D(PSMA×CD28「A」)およびmAb14226P2(CD28親「A」)は、ウェットコーティングされた抗CD28スーパーアゴニストよりも少ないサイトカイン放出を誘発したが、bs16431D(PSMA×CD28「B」)およびmAb14216P2(CD28親「B」)は、対照と比較して著しく多くのサイトカイン放出を誘発しなかった(データは示さず)。
【0244】
本発明の抗CD28抗体は、スーパーアゴニストTGN1412と比較していくつかの異なる特性を示す。従来のCD28アゴニストmAb(非スーパーアゴニスト)は、膜遠位エピトープに結合し、一価のAb結合のみを可能にすると考えられている(Dennehy et al.,Cutting Edge:monovalency of CD28 maintains the antigen dependence of T cell costimulatory responses,J.of Immunol.176(10):5725-29(2006))。CD28抗体は、TCRによるペプチド-MHCの抗原特異的認識の存在下で最適なT細胞活性化を促進する。CD28シグナル伝達は、TCR活性化の閾値を調節し、効果的なT細胞活性化に必要なTCR係合の数を大幅に減少させる。対照的に、TGN抗CD28抗体は、いくつかのスーパーアゴニスト特性を有していた(Luhder et al.,Topological requirements and signaling properties of T cell-activating,anti-CD28 antibody superagonists,J.of Exp.Med.197(8):955-966(2003))、Riley et al.,the CD28 family:a T-cell rheostat for therapeutic control of T-cell activation,Blood,105(1):13-21(2005))。例えば、TGN抗CD28は、TCRシグナル伝達の非存在下でも、インビトロおよびインビボで強力なT細胞増殖およびIL2産生を誘発し、従来の抗CD28/CD3シグナル伝達よりも効果的にNF-kB活性を増強し、AP-1/SRE活性化を誘発し、細胞表面の近位にあるCD28エピトープに結合して、二価結合を可能にする。
【0245】
したがって、
図8に示されるように、CD28スーパーアゴニストTGN1412は、CD3一次刺激の非存在下でAP-1レポーターを活性化した。対照的に、本発明の抗CD28抗体(PSMA×CD28の親)は、AP-1ルシフェラーゼバイオアッセイにおいてAP-1を最小限に活性化した。
【0246】
実施例10:抗PSMA×CD28抗体のインビボ研究
同系腫瘍モデル
実施例8のインビトロ研究と一致して、腫瘍抗原を標的とする抗CD3×PSMAと抗CD28×PSMA二重特異性抗体とを組み合わせることにより、マウスモデルにおける腫瘍クリアランスが強化された。単剤療法として、または抗PSMA×CD3二重特異性抗体と組み合わせて、抗PSMA×CD28二重特異性抗体の有効性をテストするために、Velocigene独自の技術を使用して生成された対応するマウス遺伝子の代わりに(hCD3/hCD28/hPSMAマウス)、ヒトCD28、ヒトCD3、およびヒトPSMAを発現するマウスで同系腫瘍実験を行った。抗PSMA×CD28二重特異性抗体は、抗PSMA×CD3誘発性T細胞活性化によってインビボで抗腫瘍免疫を強化すると結論付けられた。
【0247】
T細胞の活性化は、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体がペプチド-MHC複合体に結合すると開始される(「シグナル1」)。次に、活性化は、標的細胞上の同族のリガンド(複数可)に結合するT細胞上のCD28受容体などの第2の「共刺激」受容体の係合によって強化される(「シグナル2」)。最近記載されたCD3ベースの「二重特異性抗体」は、従来のシグナル1を置き換え、腫瘍特異的抗原(TSA)を二重特異性抗体の一方のアームに結合してT細胞を腫瘍細胞に結合し、もう一方のアームでTCR/CD3にブリッジすることによって作用する。これらのTSA×CD3二重特異性抗体のうちのいくつかは、癌患者において有望な抗腫瘍効果を示したが、それらの活性は、まだ最適化されていない。本明細書の他所に記載されるように、本発明において導入されるのは、第2のTSAをT細胞上の共刺激CD28受容体に架橋することによってシグナル2を模倣する新規クラスの二重特異性抗体である。これらの二重特異性抗体は、TSA×CD28二重特異性抗体または抗TSA/CD28二重特異性抗体と称される。本明細書に記載されるように、本発明の1つの例示的な抗体は、前立腺癌抗原(例えば、PSMA)に特異的である。T細胞を広く活性化し、ある特定の場合に初期の臨床試験で重篤な毒性をもたらしたCD28スーパーアゴニストとは異なり、これらのTSA×CD28二重特異性抗体は、遺伝的にヒト化された免疫担当マウスモデルまたは霊長類において単独で使用した場合、限られた活性を示し、毒性はない。しかしながら、TSA×CD3二重特異性抗体と組み合わせると、本発明の例示的な抗体は、T細胞とその標的細胞との間の人工シナプスを強化し、T細胞活性化を増強し、同系腫瘍モデルにおけるCD3二重特異性抗体の抗腫瘍活性を著しく改善した。この新規クラスのCD28共刺激二重特異性抗体を、新たなクラスのTSA×CD3二重特異性抗体と組み合わせると、耐容性の高い「既製の」抗体療法が提供され、抗腫瘍効果が高まる可能性がある。
【0248】
ウイルスに感染した細胞または腫瘍細胞などの細胞標的を認識して殺滅するT細胞の能力は、相互作用の調整されたセットに依存する。これらの中で最も重要なのは、TCR複合体(関連するCD3γ、δ、ε、ζ鎖を含む)による標的細胞の認識および結合である。この相互作用は、T細胞活性化の「シグナル1」と称されている。TCRは、標的細胞の表面上で発現されるMHCタンパク質の溝に存在するウイルスまたは腫瘍ペプチドを認識することができる。この結合は通常、親和性が低くなり、したがって、シグナル1のトリガーを成功させるには、T細胞とその標的細胞との間のインターフェースに沿って多くのTCR複合体をクラスター化することが重要であり、このインターフェースは、免疫シナプスと称されている(J.B.Huppa,M.M.Davis,T-cell-antigen recognition and the immunological synapse.Nat Rev Immunol 3,973-983(2003))。次いで、T細胞の活性化および増殖は、CD28(「シグナル2」)などの共刺激受容体との追加の相互作用によってさらに促進される(J.H.Esensten,Y.A.Helou,G.Chopra,A.Weiss,J.A.Bluestone,CD28 Costimulation:From Mechanism to Therapy.Immunity 44,973-988(2016))。T細胞がTCR複合体を介して標的細胞を認識し、プロフェッショナル抗原提示細胞または標的細胞上のその同族リガンド(複数可)(CD80/B7.1および/もしくはCD86/B7.2)に結合するCD28を介してシグナル2と係合する場合、T細胞の活性化が強化される。シグナル1と同様に、CD28を介したシグナル2は、免疫シナプスでの共クラスター化を介して発生すると考えられている。
【0249】
腫瘍特異的抗原(TSA)を標的とする従来のモノクローナル抗体は、過去20年間にわたって抗腫瘍治療薬として使用されてきた(G.Salles et al.,Rituximab in B-Cell Hematologic Malignancies:A Review of 20 Years of Clinical Experience.Adv Ther 34,2232-2273(2017)、M.V.Mateos et al.,Daratumumab plus Bortezomib,Melphalan,and Prednisone for Untreated Myeloma.N Engl J Med 378,518-528(2018):W.Eiermann,G.International Herceptin Study,Trastuzumab combined with chemotherapy for the treatment of HER2-positive metastatic breast cancer:pivotal trial data.Ann Oncol 12 Suppl 1,S57-62(2001)、J.M.Connors et al.,Brentuximab Vedotin with Chemotherapy for Stage III or IV Hodgkin´s Lymphoma.N Engl J Med 378,331-344(2018)、V.Dieras et al.,Trastuzumab emtansine versus capecitabine plus lapatinib in patients with previously treated HER2-positive advanced breast cancer(EMILIA):a descriptive analysis of final overall survival results from a randomised,open-label,phase 3 trial.Lancet Oncol 18,732-742(2017))。しかしながら、このクラスの抗体は、T細胞媒介性細胞傷害を誘発する能力が限られており、代わりに抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を促進するか、または腫瘍細胞に毒素を送達することによって作用した。最近、T細胞を腫瘍細胞に結合し、代理機序を介して(通常はCD3のe鎖を介して)CD3/TCR複合体を活性化し、したがってシグナル1を模倣することによって、腫瘍細胞のT細胞を介した殺滅を効率的に誘発できる新しいクラスの二重特異性抗体(TSA×CD3)が出現した。そのような二重特異性抗体の初期バージョン(一方のアームは白血病細胞上のCD19に結合し、もう一方のアームはCD3に結合する)は最近、B細胞急性リンパ芽球性白血病に対して規制当局の承認を受けた(R.Bargou et al.,Tumor regression in cancer patients by very low doses of a T cell engaging antibody.Science 321,974-977(2008)、H.Kantarjian et al.,Blinatumomab versus Chemotherapy for Advanced Acute Lymphoblastic Leukemia.N Engl J Med 376,836-847(2017))。最近、より高度なバージョンの二重特異性抗体が、非ホジキンリンパ腫に対して良好な活性を有し、これらのリンパ腫上のCD20を標的とすることを示した(E.J.Smith et al.,A novel,native-format bispecific antibody triggering T-cell killing of Bcells is robustly active in mouse tumor models and cynomolgus monkeys.Sci Rep 5,17943(2015)、L.L.Sun et al.,Anti-CD20/CD3 T cell-dependent bispecific antibody for the treatment of B cell malignancies.Sci Transl Med 7,287ra270(2015)、M.Bacac et al.,CD20-TCB with Obinutuzumab Pretreatment as Next-Generation Treatment of Hematologic Malignancies.Clin Cancer Res 24,4785-4797(2018)、R.Bannerji et al.,Emerging Clinical Activity of REGN1979,an Anti-CD20xAnti-CD3 Bispecific Antibody,in Patients with Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma(FL),Diffuse Large B-Cell Lymphoma(DLBCL),and Other B-Cell Non-Hodgkin Lymphoma(B-NHL)Subtypes.American Society of Hematology,(2018)、L.Budde et al.,Mosunetuzumab,a Full-Length Bispecific CD20/CD3 Antibody,Displays Clinical Activity in Relapsed/Refractory B-Cell Non-Hodgkin Lymphoma(NHL):Interim Safety and Efficacy Results from a Phase 1 Study.American Society of Hematology,(2018))。しかしながら、TSA×CD3二重特異性抗体は、血液悪性腫瘍における重要な新しいクラスの免疫療法として浮上しているが、横断研究の比較(E.A.Zhukovsky,R.J.Morse,M.V.Maus,Bispecific antibodies and CARs:generalized immunotherapeutics harnessing T cell redirection.Curr Opin Immunol 40,24-35(2016))は、場合によっては、個別化されたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法で見られるレベルの有効性を達成できない可能性があることを示唆している。
【0250】
CAR-T療法の強力な有効性の理由のうちの1つは、キメラ抗原受容体(CAR)が、腫瘍細胞上のその標的に結合する際に、シグナル1(CD3z細胞ドメインの一部分を介して)およびシグナル2(例えば、CD28細胞ドメインの一部分を介して)の両方を提供するように操作されていることである。2つのCAR-T細胞療法は最近、B細胞悪性腫瘍についてFDAの承認を受け、どちらも抗原CD19に結合して標的化することによって作用する(S.S.Neelapu et al.,Axicabtagene Ciloleucel CAR T-Cell Therapy in Refractory Large B Cell Lymphoma.N Engl J Med 377,2531-2544(2017)、S.J.Schuster et al.,Chimeric Antigen Receptor T Cells in Refractory B-Cell Lymphomas.N Engl J Med 377,2545-2554(2017))。CAR-T細胞アプローチは、サイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性などの重篤な有害作用(S.S.Neelapu et al.,Chimeric antigen receptor T-cell therapy-assessment and management of toxicities.Nat Rev Clin Oncol 15,47-62(2018)、J.Gust et al.,Endothelial Activation and Blood-Brain Barrier Disruption in Neurotoxicity after Adoptive Immunotherapy with CD19 CAR-T Cells.Cancer Discov 7,1404-1419(2017)、A.Shimabukuro-Vornhagen et al.,Cytokine release syndrome.J Immunother Cancer 6,56(2018))、ならびに高度に個別化された製造プロセスおよび化学療法レジメンを事前調整するための要件に起因して関連付けることができ(S.S.Neelapu et al.,Axicabtagene Ciloleucel CAR T-Cell Therapy in Refractory Large B Cell Lymphoma.N Engl J Med 377,2531-2544(2017)、S.J.Schuster et al.,Chimeric Antigen Receptor T Cells in Refractory B-Cell Lymphomas.N Engl J Med 377,2545-2554(2017)、P.Salmikangas,N.Kinsella,P.Chamberlain,Chimeric Antigen Receptor T-Cells(CART-Cells)for Cancer Immunotherapy-Moving Target for Industry?Pharm Res 35,152(2018))、多くの患者は適切な候補とは見なされない。
【0251】
TSA×CD3二重特異性抗体の、より広い患者集団に対する比較的耐容性が高く「既製の」治療ソリューションとしての利点は、抗腫瘍活性をさらに最適化できれば、特に耐容性を犠牲にすることなく実行できれば、さらに向上するか、または恐らく正常細胞とは対照的に、腫瘍細胞に対する特異性がさらに高まる。この目的に向けて、TSA×CD3二重特異性抗体を、シグナル2を独立して活性化する新規クラスの二重特異性抗体と対合すると、潜在的な有効性の向上と特異性の向上の機会がもたらされる可能性があるとの仮説が立てられた。したがって、第2のクラスの二重特異性抗体が設計された。これらの二重特異性抗体は、T細胞上で発現される共刺激受容体CD28(TSA×CD28二重特異性抗体)とともに、同じ腫瘍特異的抗原上の第2のエピトープまたは第2の別個の腫瘍抗原のいずれかに係合する可能性がある。TSA1×CD3とTSA2×CD28とを組み合わせると、シグナル1およびシグナル2の両方をトリガーすることによって、T細胞の誘導されおよび強化された代理活性化が可能になり、特異性は両方のエピトープまたは両方の抗原を発現する腫瘍細胞のみを標的とし、特異性を高める機会とともに、より大きな抗腫瘍活性を可能にするはずであると考えられた。
【0252】
本明細書に記載されているのは、前立腺癌を標的とするTSA×CD28共刺激二重特異性抗体(PSMA×CD28、前立腺特異的膜腫瘍抗原に結合する)の生成および試験である。遺伝的にヒト化された免疫担当マウスおよびカニクイザルにおける毒性学研究は、これらの二重特異性抗体が限られた活性を呈し、単剤として毒性を呈しないことを実証する。しかしながら、これらの新規共刺激二重特異性抗体は、TSA×CD3二重特異性抗体の新しいクラスと効果的に組み合わせて、同系腫瘍モデルにおける抗腫瘍反応を増強することができる。まとめると、これらのデータは、この新規クラスのCD28ベースの二重特異性抗体(TSA×CD28)をCD3ベースの二重特異性抗体(TSA×CD3)と組み合わせると、著しく強化された相乗的な抗腫瘍活性を備えた、耐容性の高い「既製の」生物製剤ソリューションを提供できることを示唆している。
【0253】
材料および方法
実施例10および13では、以下の材料および方法が使用された。
【0254】
同系腫瘍研究
対応するマウス遺伝子の代わりにヒトCD28、ヒトCD3、およびヒトPSMAを発現するマウスは、以前に記載されているように、Velocigene(登録商標)技術を使用して生成された(hCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスと称される)(Valenzuela(2003),Nat Biotechnol,Jun;21(6):652-9、Crawford et al.2018,Manuscript in preparation)。各ヒト化マウスについて、F1H4(C57BL/6×129ハイブリッド)胚性幹(ES)細胞クローンにおける正しい遺伝子標的化は、以前に記載されているように対立遺伝子喪失アッセイによって同定された(Poueymirou et al(2007),Nat Biotechnol,Jan;25(1):91-9)。標的ES細胞を、8細胞期のスイスウェブスター胚に注入して、C57BL/6Nマウス(Taconic、Rensselaer,NY)とホモ接合性で繁殖させるための完全にF0世代のヘテロ接合マウスを産生した。hCD3/hCD28/hPSMAマウス(4~8匹/群、8~16週齢)に、1×106MC38/hPSMA腫瘍細胞を皮下注射した。抗PSMA×CD28二重特異性抗体、抗PSMA×CD3二重特異性抗体、またはヒトIgG4アイソタイプ対照を、単剤療法として、または0、3、および7日目に5mg/kgを腹腔内注射することにより組み合わせて投与した。
【0255】
XおよびY直径のキャリパー測定を使用して、腫瘍の成長を経時的にモニターした。腫瘍体積を計算した(X*Y*(X/2))。腫瘍サイズが2000mm3を超えたとき、マウスを安楽死させた。
【0256】
マウスにおける血清サイトカインレベルの測定
示された時点で、顎下腺穿刺によってマイクロテイナー血清チューブ(BD365967)に血液を収集した。サイトカインレベルは、V-plex Human ProInflammatory-10 Plexキットを使用して、製造元の指示に従って分析した(Meso Scale Diagnostics,Rockville,MA)。
【0257】
結果、要約、および結論
T細胞およびNK細胞でのヒトCD28の発現は、FACSによって検証された(データは示さず)。トリプルヒト化マウスは、インビトロT細胞増殖アッセイを使用して機能的に検証された(データは示さず)。PSMAの発現は、QPCRによって確認された(データは示さず)。MC38/hPSMA腫瘍成長は、トリプルヒト化hCD3/hCD28/hPSMAマウス(上記)で経時的にモニターされた(
図9A)。アイソタイプ対照と比較して、PSMA×CD3およびPSMA×CD28の両方の単剤療法治療は、腫瘍成長を有意に阻害した(それぞれ、p<0.001およびp<0.0001)。腫瘍成長は、併用療法によってさらに有意に阻害された(p<0.00001)。アイソタイプ対照と比較して、PSMA×CD3二重特異性抗体とPSMA×CD28二重特異性抗体との組み合わせは、最大のサイトカイン産生を提供した(
図9Cおよび9D)。腫瘍内CD8
+T細胞の活性化状態に対する併用療法の役割をさらに理解するために、viSNE分析を行った(
図9B)。viSNEは、高次元構造を保持しながら、高次元サイトメトリーデータを2Dにマッピングするツールである。各治療は、脾臓および腫瘍における固有のCD8+T細胞クラスターを促進した。併用療法は、腫瘍のクラスター4に示されているように、活性化/メモリーT細胞表現型(TCF1、CD1-2、CD127、PD-1、ICOS、KLRG1、およびCD38を発現する)の拡大を促進した。
【0258】
hCD3+/+/hPSMA+/+/hCD28+/+マウスおよびhCD3+/-/hPSMA+/-/hCD28+/-マウスの両方における血清サイトカイン(IFNγ、IL-2、IL-6、IL-10、TNFα、IL-4、およびIL-5)のレベルを決定するために、研究を実施した。血液は、治療後0日目(4時間)、3、7、および11日目に採取された。hCD3+/+/hPSMA+/+/hCD28+/+マウスのIL-10を除いて、0日目に、抗PSMA×CD3抗体を含む治療において、抗PSMA×CD3と抗PSMA×CD28との併用療法により、サイトカインレベルが有意に増加し、最大のサイトカイン放出を提供する。対照的に、IgG対照および抗PSMA×CD28単剤療法は、サイトカイン産生の増加を引き起こさなかった。IL-5およびIL-10を除いて、サイトカイン産生は、3日後に全ての治療群で同様のレベルに減少した。IL-5産生は、hCD3+/+/hPSMA+/+/hCD28+/+では0日目よりも低いものの、3日目で有意に高い産生を示したが、併用療法を受けたhCD3+/-/hPSMA+/-/hCD28+/-マウスではそうではなかった。hCD3+/+/hPSMA+/+/hCD28+/+マウスでは、IL-10の産生は、0日目および3日目の全ての治療群で類似していたが、併用療法は、7日目および11日目の併用療法において有意に高いレベルをもたらした。hCD3+/-/hPSMA+/-/hCD28+/-マウスでは、併用療法により、0日目、3日目、および11日目に有意に多くのIL-10を産生したが、7日目では産生しなかった。抗PSMA×CD3単剤療法は、0日目および3日目に有意に多くのIL-10を産生したが、7日目および11日目では産生しなかった。抗PSMA×CD28単剤療法は、11日目に有意に多くのIL-10を産生しただけであった(データは示さず)。
【0259】
図9Aに示されるように、CD28二重特異性抗体が非常に限られた単剤活性を有していた以前のインビトロ分析(上記の実施例8を参照)とは異なり、この同系MC38/hPSMAモデルのCD28二重特異性抗体は、単剤としてより顕著な活性を有した。これは、このMC38モデルでは「シグナル1」が既にある程度活性化されていることを示唆した。これと一致して、MC38腫瘍細胞は、p15Eなどの再活性化された内在性レトロウイルスタンパク質を高レベルで発現し、C57BL6マウスは、このネオエピトープを認識して応答する内在性T細胞を生成できることが以前に示されている(J.C.Yang,D.Perry-Lalley,The envelope protein of an endogenous murine retrovirus is a tumor-associated T-cell antigen for multiple murine tumors.J Immunother 23,177-183(2000)、H.J.Zeh,3rd,D.Perry-Lalley,M.E.Dudley,S.A.Rosenberg,J.C.Yang,High avidity CTLs for two self-antigens demonstrate superior in vitro and in vivo antitumor efficacy.J Immunol 162,989-994(1999))。実際、MC38モデルでは、このp15Eネオ抗原に応答する腫瘍内T細胞を容易に検出できることが確認された。したがって、この同系腫瘍モデルのCD28二重特異性抗体は、内在性TCR/CD3依存性T細胞応答を促進することができ、CD3二重特異性抗体を介して追加の「シグナル1」活性化を提供することでさらに強化することができる。
【0260】
併用療法の根底にある細胞機序を決定するために、腫瘍浸潤および脾臓CD8+T細胞を、高次元フローサイトメトリーによってこれらの実験からプロファイリングし、無監督のクラスタリングアプローチを使用した。各治療は、脾臓および腫瘍において独特のCD8+T細胞クラスターを促進することが見出された。クラスターC35に示されるように、単一の治療レジメンは、腫瘍内CD8+T細胞を低減し、表現型の活性化は低かった(より低いICOS、KLRG1、Ki67、PD1、CD38、およびLAG3、
図9E)。しかしながら、クラスターC4に示されるように、併用療法は、より活性化された/メモリーT細胞表現型(Tcf1、CD122、CD127、PD1、ICOS、KLRG1、およびCD38を発現する、
図9B)の拡大を大幅に促進した。
【0261】
抗CD28×抗PSMAは、腫瘍の非存在下および存在下でCD28/CD3/PSMAヒト化マウスにおける血清サイトカインの上昇を誘発しない。
本明細書の他所で述べられているように、スーパーアゴニスト抗CD28抗体であるTGN1412は、患者に有害な「サイトカインストーム」を誘発した。本発明の抗CD28抗体および抗CD28×PSMA二重特異性抗体は、サイトカインストームを引き起こさなかった。この研究では、いくつかの抗体(表19に要約)を、hCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスに2.5mg/kgまたは0.25mg/kgの投与量で投与した。抗体投与の4時間後および3日後にマウスから採血した。
図10に示されるように、抗PSMA×CD28二重特異性抗体または親CD28二価抗体は、腫瘍の非存在下でCD3/CD28/PSMAヒト化マウスにおいて血清サイトカイン産生を誘発しなかった。
【表19】
2.5mg/kgにおいて、TGN1412は、IL-2、IL-4、IL-5、およびTNFαの血中濃度を大幅に上昇させる可能性がある(データは示さず)。
【0262】
さらに、
図28に示されるように、抗PSMA×CD28治療単独、または抗PD1との併用治療では、担腫瘍マウスの血清サイトカインは上昇しなかった。対照的に、抗PSMA×CD3治療は、単独で、または抗PD1と組み合わせて、担腫瘍マウスのTNFα、IL-5、IL-10、IL-2、およびIL-4などの血清サイトカインレベルを増加させた。抗PSMA×CD3治療は、投与後4時間でサイトカイン発現を誘発した。サイトカインの上昇は、7日目以降は持続しなかった。この研究は、MC38/hPSMA腫瘍を担持するhCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスにおいて行った。5mg/kgの示された抗体または二重特異性抗体を用いた0日目の投与後4時間、および7日目、その4日後に、MC38/hPSMA腫瘍を担持するhCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスから血清を収集した。血清サイトカインは、製造元のプロトコルに従って、10プレックスマウスサイトカインMSDキットを使用して測定した。
【0263】
さらに、
図11に示されるように、CD28スーパーアゴニスト処置は、PBMCを生着させたNSGマウスにおいて4時間でサイトカイン応答を促進したが、本発明の抗CD28抗体は促進しなかった。
図11に示される研究では、-10日目に、免疫不全NSGマウスに、正常な健常ドナーからの5×10
6PBMCを生着させた。-1日目に、T細胞の全身生着は、ヒトT細胞マーカーについて末梢血を染色することによって確認された。0日目に、マウスに、50μgのIgG4アイソタイプ対照抗体、5μgもしくは50μgの抗CD28スーパーアゴニスト、または5μgもしくは50μgの抗CD28 mAb14226P2抗体のいずれかを腹腔内注射した。抗体注射の4時間後、動物から血液を採取し、血清を調製した。血清中のサイトカイン濃度は、マルチプレックスアッセイ(Meso Scale Discovery V-PLEXキット)によって分析された。抗CD28スーパーアゴニストは、アイソタイプ対照抗体で処置した動物と比較して、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、IL-2、IL-6、およびTNFαの血清レベルを増加させたが、抗CD28 mAb14226P2で処置した動物の血清では、サイトカイン応答の増加は見られなかった。したがって、二重特異性抗CD28×PSMAは、共刺激性の二重特異性抗原結合分子の中で、潜在的により安全な毒性学プロファイルを有する。二重特異性抗CD28×PSMAは、サイトカイン応答を誘発しなかったが、抗CD3×PSMAは誘発した。
図12に示されるように、抗CD3×PSMAは、ヒト化マウスでIFNγの上昇を引き起こしたが、抗CD28×PSMAは引き起こさなかった。この研究では、MC38/hPSMA腫瘍を担持するCD3/CD28/PSMAまたはCD3/CD28ヒト化マウスから、5mg/kgの示された二重特異性抗体を投与してから4時間後に血清を収集した。血清サイトカインは、製造元のプロトコルに従って、10プレックスマウスサイトカインMSDキットを使用して測定した。データポイントは、マウスごとの個々のサイトカインレベルを表す。グラフ上のバーは、治療群ごとの平均を表す。エラーバーは、+/-SEMを表す。対照としてアイソタイプ処置マウスを使用した一元配置分散分析およびHolm-Sidak多重比較検定で決定された統計的有意性(**、p<0.01)
【0264】
ヒト化マウスのデータと一致して、抗CD3×PSMA二重特異性抗体は、非ヒト霊長類であるカニクイザルにおいてCRPの上昇および全身性サイトカイン放出を引き起こした。サルの研究では、抗CD3×PSMA二重特異性抗体が、0.01、0.1、および0.5mg/kgの投与量でカニクイザルに投与された。サルは、以下の症状を示した:嘔吐、むくみ、赤色/変色した皮膚;CRPの上昇(対照マウスでは約10対1mg/dL);血漿サイトカインの上昇(IL-6、TNF-α、IFN-γ、IL-2、およびMCP);血液中の絶対T細胞数の低下などの1日目までの臨床兆候(データは示さず)。
【0265】
さらに、抗CD28×PSMA処置を受けたマウスは、抗PSMA×CD3または抗CD28スーパーアゴニスト処置と比較して、サイトカイン産生またはT細胞辺縁趨向を示さなかった(
図13Aおよび13B)。
【0266】
概要
TCR複合体を介したT細胞の活性化(「シグナル1」)は、T細胞上のCD28受容体が、標的細胞上のそのリガンド(CD80/B7.1およびCD86/B7.2)に係合するときに媒介されるような共刺激シグナル(「シグナル2」)によって著しく強化され得ることが長い間認識されてきた(J.H.Esensten,Y.A.Helou,G.Chopra,A.Weiss,J.A.Bluestone,CD28 Costimulation:From Mechanism to Therapy.Immunity 44,973-988(2016))。本明細書に開示されたデータと一致して、T細胞の抗腫瘍活性を強化するCD28共刺激の可能性は、B7リガンドが腫瘍細胞上で過剰発現された研究によって最初に実証され(R.H.Schwartz,Costimulation of T lymphocytes:the role of CD28,CTLA-4,and B7/BB1 in interleukin-2 production and immunotherapy.Cell 71,1065-1068(1992)、L.Chen et al.,Costimulation of antitumor immunity by the B7 counterreceptor for the T lymphocyte molecules CD28 and CTLA-4.Cell 71,1093-1102(1992))、そのようなB7発現腫瘍のT細胞拒絶反応の改善を示した。これは、ヒト治験においてCD28活性化抗体を評価する取り組みに潜在的なインスピレーションを与えた。残念なことに、そのような抗体(TGN1412)の2006年の試験は、大量サイトカイン放出症候群(CRS)に起因する多臓器不全により、6人のヒトボランティア全員に生命を脅かす合併症をもたらした(G.Suntharalingam et al.,Cytokine storm in a phase 1 trial of the anti-CD28 monoclonal antibody TGN1412.N Engl J Med 355,1018-1028(2006))。この大惨事は、ヒトにおけるCD28活性化抗体のさらなる試験の中止につながった。
【0267】
本明細書に記載されているのは、共刺激「シグナル2」を提供することによって抗腫瘍活性を著しくかつ安全に促進することができる、新規クラスのCD28共刺激二重特異性抗体である。これらのCD28二重特異性抗体は、それら自体では限られた活性しかないが(「シグナル1」がない場合)、これらのCD28二重特異性抗体を新たなクラスのCD3二重特異性抗体と対合することによって提供され得る場合(またはこれらのCD28二重特異性が、腫瘍特異的T細胞の内在性集団がすでに存在する状況で使用される場合)、「シグナル1」の設定において抗腫瘍活性を著しく強化し得る。本明細書に記載されているのは、前立腺癌(PSMA×CD28)を標的とするTSA×CD28共刺激二重特異性抗体の生成および試験である。「シグナル1」の非存在下で、これらのCD28二重特異性抗体は、インビトロまたはインビボで最小限の活性を有することが示された。しかしながら、これらのCD28二重特異性は、CD3二重特異性抗体と対合されて、腫瘍抗原ならびにTCRおよびCD28の複合体を含む人工的な「免疫シナプス」を形成することができる。さらに、インビトロで適切なCD3二重特異性抗体と対合されると、これらのCD28二重特異性抗体は、T細胞の活性化および腫瘍細胞の殺滅を、抗原依存的に効率的かつ特異的に促進することができる。さらに、これらのCD28二重特異性抗体はまた、同系腫瘍モデルにおいて、CD3二重特異性抗体の抗腫瘍活性を、腫瘍抗原特異的な方法で、インビボで効率的に強化する。そのようなモデルでは、腫瘍特異的T細胞がすでに存在しない限り、CD28二重特異性抗体は、最小限の単剤活性を有し、そのような設定では、腫瘍抗原依存的にこの特異的活性を強化すると思われる。さらに、TSA×CD28とTSA×CD3との併用療法は、インビボで腫瘍内活性化/メモリーT細胞表現型の拡張を大幅に促進する。最後に、遺伝的にヒト化された免疫担当マウスおよびカニクイザルにおける毒性学研究は、これらの二重特異性抗体が、従来のCD28活性化抗体と直接比較して、単剤として限られた活性を呈し、毒性を呈しないことを実証する。
【0268】
多くの場合、免疫腫瘍学の分野におけるヒト特異的臨床候補の特徴付けは、生着されたヒト免疫細胞を用いた異種腫瘍モデルでの試験に限定されている。これらの異種モデルは非常に便利であるが、制限がある。そのような異種モデルで使用されるマウスは、それらの正常組織においてヒト腫瘍標的を発現せず、それにより、標的の正常組織発現の設定における試験薬剤の評価を妨げる。実際、標的が通常正常組織でも高レベルで発現される場合、これは試験薬を腫瘍からそらすことによって抗腫瘍効果を制限する可能性があり、これらの正常組織に毒性をもたらす可能性があり、これらのいずれも異種モデルにおいて評価することができなかった。追加の制限は、免疫不全マウスに移された生着したヒト末梢血単核細胞(PBMC)の活性を伴う可能性があり、これは免疫担当系に見られる正常な宿主T細胞の活性とは異なる可能性がある。これらの制限を克服し、ヒト固有の臨床候補を試験するためのより良いモデルを提供するために、ダブルおよびトリプルの遺伝的にヒト化されたマウスがここで作成された。これらのモデルでは、腫瘍抗原は、適切な宿主組織での正常な発現を可能にするために遺伝的にヒト化され、CD3および/またはCD28成分は、免疫担当宿主細胞が、ヒト特異的臨床候補に応答できるように遺伝的にヒト化された。これらの遺伝的にヒト化された免疫担当同系動物モデルにおいて、PSMA腫瘍標的のCD28二重特異性抗体が、それらの適切なCD3二重特異性抗体の抗腫瘍活性を強化することが見出された。複数の前臨床モデルにわたる異なるTSA×CD28二重特異性抗体による抗腫瘍効果の同様の強化は、この治療法がロバストであり、特定の腫瘍モデルに限定されず、免疫療法の新規組み合わせ標的クラスとしてより広い有用性を有し得ることを示唆する。全体として、調査結果は、TSA×CD28二重特異性抗体が、TSA×CD3二重特異性と相乗作用し得、十分に研究されたTSA×CD3二重特異性抗体の有効性を、合理的に安全で耐容性の高い方法で著しく強化し、ヒト治験での試験を正当化できる生物製剤ソリューションを提供する可能性があることを強調している。
【0269】
TSA×CD3二重特異性抗体は、有望な新しいクラスの免疫療法を表すが、多くの場合、抗腫瘍活性のさらなる最適化が確かに重要になる。CAR-Tアプローチが、「シグナル1」および「シグナル2」の両方を人工的に活性化して抗腫瘍活性を改善するキメラ受容体を採用したように(E.A.Zhukovsky,R.J.Morse,M.V.Maus,Bispecific antibodies and CARs:generalized immunotherapeutics harnessing T cell redirection.Curr Opin Immunol 40,24-35(2016)、S.L.Maude et al.,Tisagenlecleucel in Children and Young Adults with B-Cell Lymphoblastic Leukemia.N Engl J Med 378,439-448(2018))、CD3特異性抗体(「シグナル1」を提供する)とCD28二重特異性抗体(「シグナル2」を提供する)とを組み合わせて抗腫瘍活性を強化することの潜在的な利点をここに示す。そのようなアプローチが、CAR-T療法に勝る実際的な利点に加えて、各患者に個別にカスタマイズする必要のある面倒な細胞療法の準備を必要とせず、患者が毒性化学療法を介して先制的に「リンパ球枯渇」する必要なく、それにより、しばしば副作用を伴うこの細胞療法を受け入れることができる(A.Shimabukuro-Vornhagen et al.,Cytokine release syndrome.J Immunother Cancer 6,56(2018)、C.H.June,R.S.O´Connor,O.U.Kawalekar,S.Ghassemi,M.C.Milone,CAR T cell immunotherapy for human cancer.Science 359,1361-1365(2018))-本発明による二重特異性アプローチは、有効性の向上ならびに作用の安全性および特異性の向上の可能性を提供する。すなわち、1つの抗原のCD3二重特異性抗体を第2の抗原に特異的なCD28二重特異性抗体と対合することによって、「コンビナトリアル標的化」を利用することが可能であり、有効性の向上は、両方の抗原を発現する腫瘍細胞でのみ発生しであり、したがって両方の抗原を発現する腫瘍細胞のみに対するT細胞殺滅に焦点を当てる一方で、抗原のうちの1つのみを発現する正常組織における「オフターゲット毒性」を制限する。まとめると、本明細書に開示されるデータは、CD28ベースの二重特異性抗体をCD3ベースの二重特異性抗体と組み合わせると、著しく強化され相乗的な抗腫瘍活性を有する耐容性の高い「既製の」生物製剤ソリューションを提供し得ることを示唆している。ヒト治験におけるこの可能性に関する最初の試験は、今年行われる。
【0270】
実施例11:カニクイザル毒性学研究
これらの研究は、PSMA×CD28単独または併用療法が、カニクイザルのCD28スーパーアゴニストと比較して全身性T細胞作用を誘発しないことを実証した。本発明の例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体は、カニクイザルからのT細胞のTAA×CD3活性化を増強した(実施例8、
図7E~7G)。本発明の例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体の単独または抗PSMA×CD3との組み合わせの安全性および耐容性を決定するために、カニクイザルにおいて単回投与毒性学研究を行った。表20に示されるように、雌または雄のカニクイザルを治療群に割り当てた。
【表20】
【0271】
カニクイザルの研究は、IACUCガイドラインに従って実施した。雄のカニクイザル(3匹/群)は、およそ30分間の静脈内注入を介して各試験品の単回投与を受けた(併用処置は、合計1時間の個別注入として投与した)。毒性の評価は、臨床観察、定性的な食物消費、体重、神経学的検査、バイタルサイン(体温、心拍数、パルスオキシメトリ、および呼吸数)、ならびに臨床的および解剖学的病理学に基づいた。サイトカイン分析、FACS免疫表現型分析、組織病理学、および毒物動態評価のために、血液および組織試料を収集した。CRPレベルは、Roche Modular P800システムで分析した。サイトカインは、Meso Scale Diagnostics(MSD、Rockville,MD)によって測定した。末梢血フローサイトメトリーでは、血液をカリウムEDTAチューブに収集し、溶解し、抗CD3、抗Ki67、および抗ICOS(BD Biosciences)などの指定の抗体で染色し、FACS Canto IIで分析した。1mg/kgまたは10mg/kgでのPSMA×CD28の単一用量の投与後に、有意なサイトカイン放出、T細胞辺縁化、またはT細胞活性化マーカー上方調節は観察されず、有意なサイトカイン放出、T細胞辺縁趨向、またはT細胞活性化マーカー上方調節を誘発しなかった(表21)。
【表21】
【0272】
対照的に、CD28スーパーアゴニストを投与したサルでは、有意なサイトカイン放出、リンパ球辺縁化、およびT細胞活性化が見られた。さらに、これらの発見は、ドライコーティングおよびウェットコーティングされたヒトT細胞増殖アッセイを使用して検証された(実施例9)。実際、例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体ならびに親二価CD28抗体が、CD28スーパーアゴニスト抗体と比較して、ヒトT細胞増殖を誘発することは観察されなかった。全体として、サルにおける探索的単回投与毒性学研究およびインビトロヒトT細胞ベースのアッセイは、本発明の例示的な抗PSMA×CD28二重特異性抗体が安全であり、十分に耐容されることを示唆している。
【0273】
表21に示されるように、CD28スーパーアゴニストであるTGN1412は、T細胞の適度なサイトカイン放出と一過性の増加を引き起こした(D15で測定)。この研究は、雄のカニクイザルを対象に、5~50mg/kgを4週間にわたって毎週投与して行った。白血球サブセット分析のFACSは、TGN1412の毎週(d1、8、15、22)の漸増用量(5、10、25、50mg/kg)のIV注射後の雄のカニクイザルで行った。最初の2~24時間(2~20倍)にIL-2、IL-5、IL-6、IFN-γのわずかな増加が観察された。IL-4またはTNF-αに実質的な変化はなかった。抗CD28×PSMAを用いた探索的単回投与サル毒性学研究を実施して、抗CD28×PSMA二重特異性抗体の安全性および薬物動態プロファイルを確立した。
【0274】
要約すると、抗CD28×PSMA抗体が、腫瘍部位での免疫を強化することが示されている。抗CD28×PSMAは、腫瘍細胞を抗原提示細胞(APC)に変えた。抗CD28×PSMA抗体は、抗CD28スーパーアゴニストと比較して、T細胞増殖を誘発したり、またはサイトカイン放出を刺激したりしない。
【0275】
実施例12:水素重水素交換によるCD28へのmAb14226P2結合のエピトープマッピング
質量分析(HDX-MS)によるH/D交換エピトープマッピングを行って、抗hCD28モノクローナル抗体と相互作用するCD28のアミノ酸残基(hCD28 ecto(N19-P152).mmhとして示される組み換えヒトCD28、配列番号75)を決定した。H/D交換法の一般的な説明は、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、およびEngen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aに記載されている。
【0276】
HDX-MS実験は、統合型HDX/MSプラットフォーム上で行われ、これは重水素標識およびクエンチングのためのLeaptec HDX PALシステム、試料消化および充填のためのWaters Acquity M-Class(補助溶媒マネジャー)、分析勾配のためのWaters Acquity M-Class(μBinary溶媒マネジャー)、およびペプチド質量測定のためのThermo Q Exactive HF質量分析計からなる。
【0277】
標識溶液は、pD7.0でD2O中のPBS緩衝液として調製した(10mMのリン酸緩衝液、140mMのNaCl、および3mMのKCl、25℃でpH7.4と等価)。重水素標識のために、1:0.6モル比でREGN5705と予備混合した11μLのCD28.mmH(ハウスタンパク質REGN2011中のRegeneron、127μM)またはCD28.mmH(Ag-Ab複合体)を、20℃で44μLのD2O標識溶液により、様々な時点について二重にインキュベートした(例えば、重水素化されていない対照=0秒、重水素標識されたものは5分および10分)。重水素化反応は、20℃で5分のインキュベーションにわたって、55μLの事前に冷却されたクエンチバッファー(0.5M TCEP-HCl、8M尿素、および1%ギ酸)を各試料に添加することによってクエンチした。次に、クエンチした試料をオンライン(online)のペプシン/プロテアーゼXIII消化のためにWaters HDX Managerに注入した。消化されたペプチドは、10%から32%B(移動相A:水中0.5%ギ酸、移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸)から13分の勾配でC8カラム(1.0mm×50mm、NovaBioassays)によって分離した。溶出したペプチドを、Q Exactive HF質量分析によってLC-MS/MSまたはLC-MSモードで分析した。
【0278】
重水素化されていないCD28試料のLC-MS/MSデータは、Byonic検索エンジン(Protein Metrics)を使用して、CD28およびそのランダム化されたシーケンスを含むデータベースに対して検索された。検索パラメータ(ELN)は、非特異的酵素消化およびヒトグリコシル化を一般的な可変修飾として使用してデフォルトとして設定された。次いで、同定されたペプチドのリストを、HDX Workbenchソフトウェア(バージョン3.3)にインポートして、全ての重水素化試料からLC-MSによって検出された各ペプチドの重水素取り込みを計算した。所与のペプチドについて、各時点での重心質量(強度加重平均質量)を使用して、重水素取り込み(D)および重水素取り込みのパーセンテージ(%D)を計算した。
【数3】
【0279】
hCD28.mmH(配列番号75)からの合計73ペプチドが、hCD28.mmH単独および抗CD28抗体試料と複合した抗CD28.mmHの両方から同定され、hCD28の85.8%の配列包括度を表す。5%を超える異なるD-取り込み値のパーセントを示した任意のペプチドは、有意に保護されていると定義された。hCD28.mmH(配列番号75)の場合、アミノ酸5~20(VKQSPMLVAYDNAVNL、配列番号77)、29~38(FSREFRASLH、配列番号78)、80~84(YLQNL、配列番号79)、および91~108(IYFCKIEVMYPPPYLDNE、配列番号80)に対応する領域は、抗CD28抗体によって有意に保護され、アミノ酸91~108(IYFCKIEVMYPPPYLDNE、配列番号80)がCD28の一次エピトープとして定義された。抗CD28抗体によるこれらの残基の保護は、hCD28.mFc(配列番号76)を使用して確認された。この研究の結果の要約については、以下の表22も参照されたい。
【表22】
【0280】
実施例13:PSMA×CD28二重特異性抗体はPD-1免疫療法の抗腫瘍効果を強力に強化する
要約
T細胞の活性化は、抗原特異的なTCR/CD3の活性化(「シグナル1」)に加えて、第2の共刺激受容体(「シグナル2」)に係合することによって強化される。癌免疫療法の目標は、T細胞を最適に活性化および動員して、腫瘍細胞を検出および殺滅することである。しかしながら、現在の治療法は、腫瘍部位でT細胞を効率的かつ選択的に活性化しない傾向があり、耐久性のある応答を達成できない、および/または望ましくない毒性をもたらすことが多い。ここでは、PD-1阻害と二重特異性抗体とを一緒に組み合わせた新規腫瘍標的免疫療法モダリティが導入された。二重特異性抗体は、腫瘍特異的抗原(TSA)(例えば、PSMA)を一方のアームに結合し、T細胞上の共刺激受容体CD28をもう一方のアームに結合する。実際、PD-1-PD-L1シグナル伝達阻害は、免疫シナプスに蓄積されたCD28の比率を大幅に増加させ、TSA×CD28二重特異性抗体がその効果を発揮できるようにする。この併用免疫療法は、前立腺抗原に特異的な二重特異性抗体(例えば、PSMA)を使用して検証された。T細胞を広く活性化する非特異的CD28スーパーアゴニストとは異なり、TSA×CD28二重特異性抗体は、遺伝的にヒト化された免疫担当マウスモデルまたは霊長類において単独で、またはPD-1ブロッカーと組み合わせて使用した場合に十分に耐容された。重要なことに、内在性TCR/CD3トリガーの存在下で、TSA×CD28は、永続的な抗腫瘍反応に関連するPD-1抗体の抗腫瘍活性を著しく改善した。併用療法は、腫瘍内T細胞の活性化を特異的に増強し、様々な同系およびヒト腫瘍異種移植モデルにおいて、全身性サイトカイン分泌なしにエフェクター記憶様T細胞表現型を促進する。このクラスのCD28共刺激二重特異性抗体を、臨床的に検証された抗PD-1治療と組み合わせると、耐容性の高い「既製」の抗体療法に、著しく強化された抗腫瘍効果を提供する可能性がある。
【0281】
前書き
T細胞の活性化を強化することを目的とした多数のモノクローナル抗体(mAb)が、抗腫瘍治療薬として臨床開発中である(M.K.Callahan,M.A.Postow,J.D.Wolchok,Targeting T Cell Co-receptors for Cancer Therapy.Immunity 44,1069-1078(2016))。しかしながら、現在の治療法の大部分は、腫瘍微小環境の抑制性を克服することによって挑戦されており、したがって、効率的な腫瘍特異的T細胞活性化およびその後の腫瘍細胞殺滅を生成することができない(K.G.Anderson,I.M.Stromnes,P.D.Greenberg,Obstacles Posed by the Tumor Microenvironment to T cell Activity:A Case for Synergistic Therapies.Cancer Cell 31,311-325(2017))。細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)およびプログラム細胞死1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)などのチェックポイント阻害剤に対して向けられたいくつかのブロッキングmAbは、黒色腫、腎細胞癌、非小細胞肺癌、および進行した転移性皮膚扁平上皮癌に対して臨床的に承認されている(J.S.Weber et al.,Nivolumab versus chemotherapy in patients with advanced melanoma who progressed after anti-CTLA-4 treatment(CheckMate 037):a randomised,controlled,open-label,phase 3 trial.Lancet Oncol 16,375-384(2015)、S.L.Topalian et al.,Survival,durable tumor remission,and long-term safety in patients with advanced melanoma receiving nivolumab.J Clin Oncol 32,1020-1030(2014)、M.A.Postow,M.K.Callahan,J.D.Wolchok,Immune Checkpoint Blockade in Cancer Therapy.J Clin Oncol 33,1974-1982(2015)、M.R.Migden et al.,PD-1 Blockade with Cemiplimab in Advanced Cutaneous Squamous-Cell Carcinoma.N Engl J Med 379,341-351(2018))。PD-1をブロックすると、T細胞活性化の中断が解除されるが、単剤としての有効性では、腫瘍のクリアランスおよび持続的な抗腫瘍反応を得るのに十分でない場合が多い。抗PD-1/PD-L1と抗CTLA-4とを組み合わせると、ある特定の腫瘍型で高い奏効率が得られるが、高悪性度の毒性がしばしば観察される(J.Larkin et al.,Combined Nivolumab and Ipilimumab or Monotherapy in Untreated Melanoma.N Engl J Med 373,23-34(2015)、D.B.Johnson et al.,Fulminant Myocarditis with Combination Immune Checkpoint Blockade.N Engl J Med 375,1749-1755(2016)、M.H.Pollack et al.,Safety of resuming anti-PD-1 in patients with immune-related adverse events(irAEs)during combined anti-CTLA-4 and anti-PD1 in metastatic melanoma.Ann Oncol 29,250-255(2018)、J.D.Wolchok et al.,Nivolumab plus ipilimumab in advanced melanoma.N Engl J Med 369,122-133(2013))。その結果、応答性を予測するバイオマーカーの同定を通じてチェックポイント阻害に反応する可能性が高い患者を特定するための相当の努力が進行中である(R.Cristescu et al.,Pan-tumor genomic biomarkers for PD-1 checkpoint blockade-based immunotherapy.Science 362,(2018))。さらに、共刺激受容体を誘発するアゴニスト抗体を組み合わせるか、または化学療法もしくは放射線療法などの他のモダリティと組み合わせることによって、PD-1遮断の有効性および抗腫瘍反応の持続性を改善することを目的とした併用療法が、前臨床および臨床評価を受けている(S.Hu-Lieskovan,A.Ribas,New Combination Strategies Using Programmed Cell Death 1/Programmed Cell Death Ligand 1 Checkpoint Inhibitors as a Backbone.Cancer J 23,10-22(2017)、Y.K.Chae et al.,Current landscape and future of dual anti-CTLA4 and PD-1/PD-L1 blockade immunotherapy in cancer;lessons learned from clinical trials with melanoma and non-small cell lung cancer(NSCLC).J Immunother Cancer 6,39(2018)、P.S.Chowdhury,K.Chamoto,T.Honjo,Combination therapy strategies for improving PD-1 blockade efficacy:a new era in cancer immunotherapy.J Intern Med 283,110-120(2018)、B.Wang et al.,Combination cancer immunotherapy targeting PD-1 and GITR can rescue CD8(+)T cell dysfunction and maintain memory phenotype.Sci Immunol 3,(2018)、S.Chen et al.,Combination of 4-1BB agonist and PD-1 antagonist promotes antitumor effector/memory CD8 T cells in a poorly immunogenic tumor model.Cancer Immunol Res 3,149-160(2015))。Microsatellite instability and high mutational burden generate potential endogenous antigens that are expressed in certain cancers (K.W.Mouw,M.S.Goldberg,P.A.Konstantinopoulos,A.D.D´Andrea,DNA Damage and Repair Biomarkers of Immunotherapy Response.Cancer Discov 7,675-693(2017))。T細胞は、これらの突然変異ペプチドをネオ抗原として認識する(M.Efremova,F.Finotello,D.Rieder,Z.Trajanoski,Neoantigens Generated by Individual Mutations and Their Role in Cancer Immunity and ImmunotherapyFront Immunol 8,1679(2017))。しかしながら、単離状態では、これらの抗原の提示は、抗腫瘍活性を生成するためのロバストなT細胞活性化を促進するのに十分ではない(S.Spranger,R.Bao,T.F.Gajewski,Melanoma-intrinsic beta-catenin signaling prevents anti-tumour immunity.Nature 523,231-235(2015))。これは、腫瘍の免疫抑制性微小環境に起因する可能性がある。
【0282】
本明細書に記載されているのは、前立腺癌TSA PSMA×CD28を標的とするTSA×CD28二重特異性抗体を使用する新規免疫療法モダリティであり、PD-1ブロッキング抗体と組み合わせると、長寿命の抗腫瘍免疫を誘発し、ロバストな腫瘍内T細胞活性化およびT細胞メモリーを促進し、動物腫瘍モデルにおける全身性サイトカイン放出の兆候はなかった。遺伝的にヒト化された免疫担当マウスおよびカニクイザルにおける毒性学研究は、これらの二重特異性抗体がそれ自体で、または抗PD-1抗体との組み合わせで毒性を呈しないことを実証した。まとめると、これらのデータは、このクラスのCD28ベースの二重特異性抗体(TSA×CD28)をPD-1阻害と組み合わせると、著しく強化された特異的かつ相乗的な抗腫瘍活性を備えた、耐容性の高い「既製の」生物製剤ソリューションを提供できることを示唆している。
【0283】
材料および方法
実施例13では、以下の材料および方法を使用した。
【0284】
試験設計
本発明の1つの例示的な目的は、TSA×CD28二重特異性抗体を開発し、TSA×CD28が、インビトロでPD-1誘発性T細胞活性化を増強し、インビボで抗腫瘍効果を安全に強化することを実証することであった。インビトロでの活性は、T細胞および標的細胞結合体の免疫シナプスに局在する二重特異性抗体、PD-1、およびCD28の画像、PD-1 T細胞サイトカイン放出の強化を示すことによって実証された。インビボ抗腫瘍効果は、同系マウス腫瘍モデルで評価された。腫瘍体積および血清サイトカインを経時的にモニターして、二重特異性抗体治療に対する応答を示した。カニクイザル研究の目的の1つは、単剤療法としてのまたは非ヒト霊長類におけるPD-1との併用療法でのTSA×CD28の安全性および耐容性(薬理学的および毒性学的プロファイル)を決定することであった。血清サイトカインおよびT細胞表現型を分析するために、臨床観察および血液試料収集によって、毒性について動物を調べた。
【0285】
動物実験
全ての手順は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の実験動物の管理と使用に関する指針に従って実施された。プロトコルは、Regeneron Pharmaceuticalsの動物実験委員会によって承認された。
【0286】
細胞株
JurkatクローンE6-1(ATCC,#TIB-152)、Raji(ATCC,#CCL-86(商標)、HEK293細胞株(ATCC、#CRL-1573)、およびA-431(ATCC,CRL-1555(商標))を、ATCCにより推奨されるプロトコルに従って培養した。HEK293/hCD20細胞株は、ユビキチンプロモーター駆動型hCD20(受託番号NP_068769.2のアミノ酸M1~P297)をコードする哺乳類ベクターを使用して生成された。トランスフェクトされた細胞を、500μg/mlのジェネティシンA(G418)で培養し、安定して発現する細胞株のために選択した。hCD80またはhPDL1発現細胞を生成するために、ヒトCD80(288aa長、受託番号NM_005191.4)およびネオマイシン耐性遺伝子またはヒトPDL1(290aa長、受託番号NM_14143.4)およびピューロマイシン耐性遺伝子を使用してHEK293T細胞をトランスフェクトし、ウイルス粒子の産生を促進し、その後HEK293/hCD20またはRaji細胞の感染に使用した。ヒトCD80またはPDL1陽性細胞は、FACSによって単離した。Qiagen製のレンチウイルス(カタログ番号CLS-013L)と、ヒトPD-1およびピューロマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルスプラスミドとを使用して、Jurkat細胞にNFκB-Lucを形質導入した。生成された全ての細胞株は、500μg/mLのG418および/または0.5μg/mlのピューロマイシンを補充したDMEM+10%FBS+P/S/G+NEAA中で維持した。
【0287】
DU145/hPSMA細胞株は、DU145細胞(ATCC、HTB-81)に、ヒトPSMA(受託番号Q04609のアミノ酸M1~A750)をコードするレンチウイルスプラスミドおよびネオマイシン耐性遺伝子をトランスフェクトしたHEK293T細胞によって産生されたウイルス粒子を形質導入することによって生成された。感染後、細胞を500μg/mlのジェネティシンA(G418)中で培養して、PSMAを安定して発現する細胞のために選択した。生成された細胞株DU145/PSMAは、500μg/mLのG418を含むMEM+10%FBS+P/S/G中で維持した。
【0288】
共刺激リガンドを発現するように操作された腫瘍細胞株を生成するために、マウスCD86または空のベクターをコードするEF1aプロモーターと、ピューロマイシン耐性遺伝子(それぞれpLVX.EF1a.CD86-puroおよびpLVX.EF1a.EV-puro)とを備えたpLVXレンチウイルスプラスミドを使用して、HEK293T細胞をトランスフェクトし、ウイルス粒子の産生を促進し、その後MC38(National Cancer Institute,Laboratory of Tumor Immunology&Biology)に感染させるために使用した。CD86を発現する操作された細胞株は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって単離された。細胞は、0.5μg/mlピューロマイシンの存在下、ATCCによって推奨される条件下で維持した。得られた細胞株を、MC38/CD86およびMC38/EVと名付けた。
【0289】
MC38/hPSMA細胞の生成のために、ヒトPSMA(受託番号Q04609のアミノ酸M1~A750)およびネオマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルスプラスミドを使用して、HEK293T細胞をトランスフェクトし、ウイルス粒子の産生を促進し、これを後に使用して、MC38/親細胞に感染させた。ヒトPSMA陽性細胞は、FACSによって単離した。MC38/hPMAは、500μg/mLのG418を補充したDMEM+10%FBS+P/S/G+NEAA中で維持した。
【0290】
Amnis Image Stream
Amnis Image Streamは、実施例7に記載されるように行った。
【0291】
ヒト初代CD3+T細胞の単離
T細胞の単離は、実施例8に記載されるように行った。
【0292】
DU145/PSMA細胞とのMLR反応における初代CD3+T細胞からのIL-2放出
以前に単離し、凍結したヒトCD3+T細胞を、50U/mlのベンゾナーゼヌクレアーゼを含む刺激培地(10% FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、および0.01mM BMEで補充されたX-VIVO 15細胞培養培地)中でアッセイの日に解凍した。細胞を、1200rpmで10分間遠心分離し、刺激培地中に再懸濁し、1×105細胞/ウェルの濃度で96ウェル丸底プレート中に播種した。ヒトPSMAを発現するように操作されたDU145親細胞またはDU145細胞を、10×106細胞/mLの濃度で一次刺激培地中25μgのマイトマイシンCで処理した。37℃で1時間インキュベートした後、5%CO2、マイトマイシンCで処理した細胞を、2%FBSを含有するD-PBSで3回洗浄し、1ウェルあたり5×104細胞の最終濃度でCD3+T細胞を含有するウェルに添加した。Fc受容体へのCD28抗体のFcアンカーによるCD28アゴニスト活性の可能性を防ぐために、飽和量の非特異的ヒトIgG抗体(各々100nMのhIgG1、hIgG4、およびhIgG4s)を各アッセイウェルに含めた。続いて、PSMA×CD28、非標的×CD28対照、またはhIgG4sアイソタイプ対照、抗体を、1:3希釈で30pMから200nMまで滴定し、ウェルに添加した。10点希釈の最終点には、滴定抗体は含まれていなかった。DU145細胞は、PD-L1を内在的に発現するため、PD-1アンタゴニストREGN2810を20nM一定でウェルに添加することにより、T細胞活性のPD-1抑制の影響を評価した。また、PD-1阻害がない状態も含まれ、その代わりに20nMの一致するhIgG4アイソタイプ対照が使用された。プレートを37℃、5% CO2で72時間インキュベートし、続いて遠心分離して細胞をペレット化した。50μLの培地上清を収集し、これから、5μLを製造元のプロトコルに従ってヒトIL-2 AlphaLISAアッセイで試験した。測定値は、Perkin ElmerのマルチラベルプレートリーダーEnvisionで取得した。アッセイウェルで生成されたIL-2のpg/mLを推定するために、既知のIL-2濃度の標準曲線を生成した。全ての段階希釈物を二重に試験した。抗体のEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して、10点用量応答曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。
【0293】
FACSベースの細胞傷害性アッセイ
FACSベースの細胞傷害性アッセイは、以前に記載されたように行った(実施例8)。
【0294】
同系腫瘍研究
MC38/EVおよびMC38/CD86は、ATCCガイドラインに従った培養であった。1×106MC38/EVまたはMC38/CD86を、C57BL/6マウスの皮下に移植した。マウスを、腫瘍移植後0、3、7、10、および14日目に腹腔内注射により、5mg/kgのPD-1抗体(RPM1-14、BioXcell)またはラットIgG2aアイソタイプ対照(BioXcell)で処置した。キャリパー(Roboz RS-6466)を使用して、腫瘍サイズを週に2回測定した。腫瘍体積は、式X*Y*(X/2)を使用して計算した。ここで、Yは、最長の寸法であり、Xは、垂直の寸法である。2000mm3より大きい腫瘍を有するか、または潰瘍化腫瘍を有するマウスは、CO2窒息により安楽死させた。
【0295】
実施例10に記載されるように、hCD3/hCD28/hPSMAヒト化マウスを生成した。示された抗体または二重特異性抗体を、0、7、および14日目(予防的処置)または9、13、および22日目(遅延処置)に5mg/kgで単剤療法として、または腹腔内注射と組み合わせて投与したことを除いて、抗体処置も同様であった。
【0296】
エクスビボ組織サイトカイン分析
移植後29日目に、MC38/hPSMA腫瘍を担持するCD3/CD28/PSMAマウスを、二酸化炭素窒息によって安楽死させた。脾臓および腫瘍を収集し、氷上の培地中で保存した。以下の全ての工程は、特に明記されていない限り、氷上または4℃で行った。腫瘍を小片に切断し、製造プロトコル(Miltenyi 130-096-730)に従ってMiltenyiマウス腫瘍解離キットを使用してフラグメントを単一細胞懸濁液に処理した。脾臓は、穏やかなMACS機械的解離(脾臓4プログラム)を使用して単一細胞懸濁液に処理され、3mlシリンジのゴム端を使用して70ミクロンフィルターを通して潰した。1200rpmで5分間の遠心分離によって細胞をペレット化した。細胞ペレットを、1mlのACK溶解緩衝液に再懸濁し、氷上で5分間インキュベートすることによって赤血球を溶解した。ACK溶解緩衝液を、FACS緩衝液でクエンチした。1200rpmで5分間の遠心分離によって細胞をペレット化した。細胞懸濁液を、1mlの培地に再懸濁し、0.2mlを96ウェルプレート(20~400K腫瘍細胞または50~70K脾臓細胞)に播種した。細胞を37℃で一晩インキュベートし、培養上清を収集した。組織培養上清中のサイトカインレベルは、製造元のプロトコル(Meso Scale Diagnostics K15048D-4)に従い、V-Plex炎症誘発性MSDキットを使用して測定した。1ウェルあたりに播種された細胞の数は、FACS分析によって決定した。サイトカインのレベルは、播種された細胞の数に対して正規化した。キャリブレーションビーズを細胞と一緒に泳動させて、次の計算を使用して細胞の数を正確に測定した。
細胞数=(入力ビーズ数×FACSによってカウントされた細胞数)/FACSによってカウントされたビーズの数
【0297】
マウスにおける血清サイトカインレベルの測定
マウスにおける血清サイトカインレベルの測定は、以前に記載されたように行った(実施例10)。
【0298】
フローサイトメトリー分析
インビボ実験のフローサイトメトリー分析のために、腫瘍を採取し、単一細胞懸濁液を調製し、ACK溶解緩衝液(ThermoFisher Scientific)を使用して赤血球を溶解した。生/死細胞の識別は、生/死固定可能な青色の死細胞染色キット(ThermoFisher Scientific)を使用して行った。試料は、Symphony(BD Bioscience)上で取得し、Cytobankソフトウェア(Cytobank、Santa Clara,CA)を使用して分析した。分析は、試料ごとに同数の事象で行った。事象の範囲は、取得された事象が最も少ない試料によって決定された。特定のマーカーに基づいてT細胞を自動的にクラスター化するために、CytobankからのCITRUS分析を使用した。
【0299】
カニクイザルの毒性学研究
カニクイザルの研究は、以前に記載されたように実施した(実施例11)。
【0300】
結果
PD-1チェックポイント阻害は、免疫シナプス内のCD28の相対比を増加させ、TSA×CD28二重特異性抗体が、インビトロでT細胞活性化を促進する抗PD-1の能力を著しく強化することを可能にする
共刺激二重特異性アゴニストがチェックポイント阻害を補完できるかどうかを試験するために、本発明の例示的なPSMA×CD28二重特異性抗体(bs16429D)を、TCR/CD3依存性T細胞活性化様式でPD-1遮断の有効性を強化する能力に関して試験した。実際、効率的なT細胞の活性化は、「免疫シナプス」(IS)でのTCR/CD3およびCD28複合体の共クラスター化に依存する。しかしながら、TCR/CD3およびCD28の両方からの活性化シグナルは、シナプスでのPD-1/PD-L1クラスター化に続くPD-1-Shp-2リン酸化によって直接阻害される(E.Hui et al.,T cell costimulatory receptor CD28 is a primary target for PD-1-mediated inhibition.Science 355,1428-1433(2017)、J.M.Chemnitz,R.V.Parry,K.E.Nichols,C.H.June,J.L.Riley,SHP-1 and SHP-2 associate with immunoreceptor tyrosine-based switch motif of programmed death 1 upon primary human T cell stimulation,but only receptor ligation prevents T cell activation.J Immunol 173,945-954(2004))。ISでのCD28およびPD-1の相対的な局在化を決定するために、PD-1を過剰発現するJurkat T細胞およびPD-L1を過剰発現するように操作されたRaji腫瘍標的細胞を使用して、実施例7に記載されるようなインビトロアッセイであるAmnis Image Streamを開発した。蛍光標識された二重特異性CD20×CD3抗体(E.J.Smith et al.,A novel,native-format bispecific antibody triggering T-cell killing of B-cells is robustly active in mouse tumor models and cynomolgus monkeys.Sci Rep 5,17943(2015))を使用して、ペプチドMHC/TCR結合を複製し、ISを形成する標的細胞とのT細胞相互作用を視覚化した。2つの異なる蛍光標識モノクローナルPD-1抗体(PD-1 mAb)、ブロッカー(PD-1 mAb、REGN2810(E.Burova et al.,Characterization of the Anti-PD-1 Antibody REGN2810 and Its Antitumor Activity in Human PD-1 Knock-In Mice.Mol Cancer Ther 16,861-870(2017))、および非ブロッカー(NB PD-1 mAb)を使用して、PD-L1との相互作用を同時にブロックし、PD-1の局在を視覚化した。標的細胞上のPD-L1発現の非存在下で、およびPD-1 mAbの存在下で、ISでのPD-1またはCD28の相対量に変化はないことがわかった(
図14)。しかしながら、非ブロッキングPD-1 mAbの存在下での標的細胞上のPD-L1発現は、シナプスでのCD28を減少させ、ISでの高いPD-1蓄積を促進した。逆に、ブロッキングPD-1 mAbの存在下では、PD-1の局在が大幅に低減し、相対的なCD28レベルがISで維持された。PD-1およびCD28の分布は、ISの内側と外側の抗体染色の比率を計算することによって定量化した(
図15)。このデータは、標的細胞上のPD-L1の発現が、CD28を減少させながら、ISでのPD-1の局在を強化することを示す。さらに、PD-1ブロッキングmAbは、ISでのPD-1の相対量を低減し、CD28のレベルをレスキューするため、CD28とPD-1との相対比を増加させる。
【0301】
次に、PSMA×CD28がT細胞活性化によって誘発される腫瘍細胞殺滅に対するPD-1遮断の効果を強化できるかどうかを試験した。この目的に向けて、前立腺癌株22RV1を利用した。22RV1細胞は、内在的にPSMAを発現し、PD-L1(22RV1/PD-L1)を発現するように操作されている。同種T細胞応答によるTCR/CD3刺激がないため、PSMA×CD3(米国特許第10,179,819号)を使用して一次刺激を提供した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC、ヒトT細胞を含む)と22RV1/PD-L1細胞との共培養では、PSMA×CD3単独で約40%の腫瘍細胞殺滅を誘発した(
図16、菱形、8E-10のEC
50)。PSMA×CD3にPD-1 mAbを追加すると、腫瘍細胞の殺滅を約55%まで強化した(
図16、黒三角形、4E-10のEC
50)。興味深いことに、PSMA×CD28とPSMA×CD3との組み合わせは、同様に腫瘍細胞の殺滅の深さを約55%に高め、効力を高めた(
図16、黒丸、6E-11のEC
50)。これは、PSMA×CD28がPD-1/PD-L1を介した阻害を無効にできることを示唆している。興味深いことに、PSMA×CD28、PD-1 mAb、およびPSMA×C3トリプルの組み合わせは、約70%で最も強い腫瘍細胞殺滅を示し、この組み合わせの相乗効果を示している(
図16、黒四角、7E-11のEC
50)。予想通り、PSMA×CD28単独、PD-1 mAb、PSMA×CD28とPD-1 mAbとの組み合わせのいずれも、腫瘍細胞の殺滅を誘発しなかった(
図16、白抜きの記号)。一致して、トリプルの組み合わせ処置でIFNγ放出の最大の増加が観察された(
図17)。
【0302】
次に、インビトロでの初代ヒトT細胞活性化に対するPSMA×CD28とPD-1 mAbとの組み合わせの効果を決定した。生理学的PD-L1発現およびTCR/CD3刺激を再現するために、混合リンパ球反応(MLR)を採用した。一方向性MLRでは、同種異系決定因子の非互換性がT細胞の活性化につながり、これはサイトカイン産生によって定量化され得る。ここでは、健康なドナーからのT細胞を、PD-L1を内在的に発現し、PSMAを過剰発現する操作された前立腺癌細胞株であるDU145/PSMA細胞、および示された抗体とともにインキュベートした(
図18)。DU145/PSMA細胞およびT細胞の存在下では、PSMA×CD28二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプ対照の約3~4倍のIL-2放出の用量依存的増加をもたらす(
図18、円)。同様に、MLRアッセイへの20nMのPD-1 mAbの追加もまた、IL-2放出を、IgG4アイソタイプ対照の約3~4倍増加させた(
図18、三角形)。組み合わせて、PSMA×CD28および20nMのPD-1 mAbは、PSMA×CD28二重特異性抗体によって誘発される活性化を著しく増強し、最大IL-2レベルはアイソタイプ対照の約20倍増加し(
図18、四角)、PD-1ブロッキングmAbと組み合わせたPSMA×CD28二重特異性抗体が、内在性レベルのTCR/CD3活性化およびPD-L1阻害を伴う腫瘍細胞の存在下でT細胞を強力かつ相乗的に活性化することを示す。
【0303】
全体として、これらの結果は、PSMA×CD28二重特異性抗体が、TCR/CD3シグナル伝達(CD3二重特異性抗体または同種反応によって駆動される)の存在下でT細胞活性化を促進するPD-1 mAbの能力を強力に強化することができ、サイトカイン放出の増加と、PSMAおよびPD-L1を発現する腫瘍細胞の殺滅をインビトロでもたらすことを示した。
【0304】
腫瘍細胞での天然CD28リガンドの過剰発現は、PD-1 mAb治療と相乗作用して、インビボでCD8 T細胞依存性の耐久性のある抗腫瘍免疫を誘発する。
その天然リガンド(複数可)によるCD28の係合がインビボでPD-1 mAbの抗腫瘍効果を増強できるかどうかを決定するために、MC38腫瘍細胞を操作してCD28の共刺激リガンドのうちの1つであるCD86を過剰発現させた(データは示さず)。MC38/CD86細胞とPD-1 mAb治療との組み合わせは、腫瘍成長を著しく阻害し(
図19A)、空のベクター対照でトランスフェクトされた陰性対照MC38細胞(MC38/EV)と比較した場合、ロバストな生存利益に関連する完全な腫瘍退縮をもたらした(
図19B)。処置中のCD8
+T細胞の枯渇は、PD-1 mAb療法をMC38/CD86細胞と組み合わせることによって誘発された抗腫瘍効果を完全に無効にし、CD8
+T細胞への依存を示した(
図19C)。注目すべきことに、最初にMC38/CD86細胞を移植し、PD-1 mAbで処置した無腫瘍マウスは、原発腫瘍の移植後60日以上後に移植された2番目のMC38親腫瘍を拒絶し、T細胞メモリー応答の存在を示した(
図19D)。結果として、これらのデータは、構成的発現CD28リガンドと抗PD-1療法の相乗効果がインビボでの耐久性のあるCD8依存性抗腫瘍免疫をもたらす可能性があることを示す。
【0305】
PSMA×CD28は、PD-1 mAb治療と相乗作用して、同系腫瘍モデルにおいて抗腫瘍免疫を誘発する。
次に、上記の発見を拡張して、同系腫瘍モデルにおいてTSA×CD28二重特異性抗体を単独で、またはPD-1 mAbと組み合わせて使用した治療の抗腫瘍効果を示した。本明細書に記載される確立されたC57BL6同系MC38腫瘍モデルを使用して、hPSMA遺伝子(pLVX.EF1a.hPSMA)をMC38細胞に遺伝的に導入し、本明細書に記載される腫瘍特異的抗原MC38/hPSMAを作成した。導入されたヒト腫瘍抗原を発現するこれらの同系腫瘍をマウスが自発的に拒絶する可能性を回避するために、PSMAをこれらのマウスで遺伝的にヒト化した。さらに、CD3γ-δ-εおよびCD28遺伝子も、前述のようにVelociGene技術を使用してヒト化し(D.M.Valenzuela et al.,High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis.Nat Biotechnol 21,652-659(2003)、W.T.Poueymirou et al.,F0 generation mice fully derived from gene-targeted embryonic stem cells allowing immediate phenotypic analyses.Nat Biotechnol 25,91-99(2007))、それにより二重特異性抗体が、(hCD3またはhCD28を介して)宿主T細胞、ならびに正常組織および腫瘍(すなわち、hPSMA)の両方におけるヒト腫瘍抗原を認識し、実際の臨床状況を表す(Y.Kinoshita et al.,Expression of prostate-specific membrane antigen in normal and malignant human tissues.World J Surg 30,628-636(2006))。このモデルでは、PSMA×CD28二重特異性抗体とPD-1 mAbとの組み合わせにより、最大の腫瘍成長の制御が提供され、これがロバストな生存利益につながった。
【0306】
抗CD28×抗PSMAと抗PD1との組み合わせによる即時処置は腫瘍成長を相乗的に阻害する
即時処置研究では、抗CD28×抗PSMA、抗PD1、またはラットIgG2aアイソタイプ対照を、単剤療法として、または0、7、14日目に5mg/kgでの腹腔内注射により組み合わせて投与した。XおよびY直径のキャリパー測定を使用して、腫瘍の成長を経時的にモニターした。腫瘍体積を計算した(X*Y*(X/2))。腫瘍サイズが2000mm3を超えたとき、マウスを安楽死させた。
【0307】
図20A~20Eに示されるように、抗CD28×抗PSMA抗体は、単独で使用した場合、マウスの腫瘍成長を抑制し、生存率を高めただけでなく、抗PD-1抗体と相乗作用して、PD-1抗体の非存在下で使用した場合よりも腫瘍拒絶反応を促進し、生存率をさらに高めた。
【0308】
CD28×PSMAとPD1との組み合わせによる治療は、二次腫瘍チャレンジに対する長寿命の抗腫瘍免疫を誘発する。
さらに、PSMA×CD28二重特異性抗体とPD-1 mAbとの組み合わせで移植および処置された無腫瘍マウスは、原発腫瘍移植の60日以上後に移植された第2のMC38親腫瘍株を拒絶し、本明細書に記載される観察と一致する免疫記憶の生成を示した(
図21A)。これらの結果は、内在性抗原特異的TCRシグナル(シグナル1)がMC38/PSMA移植腫瘍細胞上のペプチドMHC複合体から生成されていることを示唆する。MC38腫瘍細胞は、p15Eなどの再活性化された内在性レトロウイルスタンパク質を高レベルで発現し、C57BL6マウスの腫瘍内T細胞は、このp15E抗原に応答性であることが示されている(J.C.Yang,D.Perry-Lalley,The envelope protein of an endogenous murine retrovirus is a tumor-associated T-cell antigen for multiple murine tumors.J Immunother 23,177-183(2000)、H.J.Zeh,3rd,D.Perry-Lalley,M.E.Dudley,S.A.Rosenberg,J.C.Yang,High avidity CTLs for two self-antigens demonstrate superior in vitro and in vivo antitumor efficacy.J Immunol 162,989-994(1999))。この発見と一致して、PSMA×CD28とPD-1 mAbとの併用療法は、少なくとも1つの内在性抗原P15Eに反応する末梢T細胞を誘発し、抗腫瘍免疫記憶の生成をサポートすることがわかった(
図21B)。特に、PSMA×CD3と組み合わせたPSMA×CD28による処置が、MC38/hPSMA腫瘍拒絶反応を誘発した同様の実験では、これらの無腫瘍マウスは、二次腫瘍の再チャレンジを拒絶できなかった(
図21C)。まとめると、このデータは、CD28二重特異性抗体が、このPSMA同系腫瘍モデルでPD-1 mAbと相乗作用し、内在性TCR/CD3依存性T細胞応答を促進できることを示す。
【0309】
抗CD28×抗PSMAと抗PD1との組み合わせによる治療的処置は、相乗的に腫瘍の成長を阻害する
同様に、遅延治療プロトコルでは、移植後10日目のPSMA×CD28とPD-1 mAbとの組み合わせにより、確立されたMC38/hPSMA腫瘍の成長が阻害され(
図22A)、また生存率の大幅な増加(
図22C)および腫瘍体積の低減(
図22D)をもたらした。興味深いことに、腫瘍を標的とした併用療法は、IFNγで示されているように腫瘍内サイトカインを選択的に増加させた(
図22B)。同じマウスでは、脾臓または全身のサイトカイン誘発は観察されなかった(
図23Aおよび23B)。さらに、T細胞活性化マーカーの発現プロファイリングは、この併用処置を支持して、腫瘍内PD-1発現が、PSMA×CD28処置(
図24)で増加したことを示した。併用処置で応答するT細胞サブセットをさらに特徴づけるために、腫瘍浸潤CD8
+T細胞を、高次元フローサイトメトリーによる腫瘍チャレンジの17日後にプロファイリングした。CITRUS(クラスターの同定、特性評価、および回帰)を使用して、統計的に有意な異なるT細胞クラスターを独立して層別化する。重要なことに、PD-1遮断は、高レベルの活性化/枯渇マーカー(PD-1、TIM3、LAG3、Ki67)を発現するエフェクター(CD44高CD62L低)CD8
+T細胞(クラスターC1)を拡張したことがわかった(
図25)。しかしながら、併用処置のみが、記憶様表現型(高Tcf1、EOMES、CD62L、中間CD122、およびCD127)の拡張、ならびにより少ない消耗表現型(低PD-1、LAG3、TIM3、CD38、KLRG1、より高いCD5)を有する腫瘍内CD8
+T細胞(クラスターC2)の拡張を促進することができた(
図25)(M.Philip et al.,Chromatin states define tumour-specific T cell dysfunction and reprogramming.Nature 545,452-456(2017))。これらのデータは、PSMA×CD28の二重特異性抗体と抗PD-1との併用療法が、記憶様表現型を伴う腫瘍内T細胞の活性化に関連するロバストな抗腫瘍免疫、および延命効果を促進することを示す。
【0310】
TSA×CD28単独またはPD-1 mAbとの併用療法は、カニクイザルのCD28スーパーアゴニストと比較して全身性T細胞活性化を誘発しない。
初期の臨床試験データは、「CD28スーパーアゴニスト」(CD28-SA)と呼ばれる二価のCD28活性化抗体が、T細胞を広く活性化し、健康なボランティアの群におけるサイトカイン放出症候群(CRS)に関連する深刻な毒性をもたらすことを示した(G.Suntharalingam et al.,Cytokine storm in a phase 1 trial of the anti-CD28 monoclonal antibody TGN1412.N Engl J Med 355,1018-1028(2006))。TSA×CD28二重特異性単独の耐容性、またはPD-1 mAbと組み合わせた相乗的薬理学の可能性を評価するために、遺伝子操作されたトリプルヒト化マウスおよびカニクイザルにおける探索的研究を実施した。治療群あたり3匹のサルは、PSMA×CD28の単回投与(10mg/kg)を単独で、またはPD-1 mAb(REGN2810)(10mg/kg)と組み合わせて、静脈内注入により受けた(併用群は連続注入を受けた)(表20、
図26A~26C、および27)。
【0311】
さらに、群あたり3匹のサルは、本明細書に記載されるように、単回投与(0.1mg/kg)の抗PSMA×CD3二重特異性抗体および単回投与(10mg/kg)のCD28スーパーアゴニスト抗体を受けた(表20、
図26A~26C、および27)。毒性の評価は、臨床観察、定性的な食物消費、体重、バイタルサイン(体温、心拍数、パルスオキシメトリ、および呼吸数)、実験完了時の臨床的および解剖学的病理に基づいていた。サイトカインおよびFACS免疫表現型分析のために血液試料を収集した。PSMA×CD28単独またはPD-1との併用は、十分に耐容され、全ての動物が試験期間中生存した。臨床観察に関連する試験品は観察されなかった(データは示さず)。臓器重量の変化は見られず、最終剖検で肉眼的変化も認められなかった(データは示さず)。さらに、有意なサイトカイン放出、T細胞の辺縁趨向または活性化は観察されなかった(表23、
図26A~26C)。対照的に、CD28「スーパーアゴニスト」を単独で投与したサルでは、有意なサイトカイン放出、リンパ球辺縁趨向、およびT細胞活性化が見られた(
図29Aおよび29B)。CD28スーパーアゴニストで処置した動物の腎臓、脳、および精嚢において、免疫細胞の大量浸潤が観察された。対照的に、PSMA×CD28を単独で、またはPD-1との組み合わせで投与した動物では、処置に関連した有意な組織学的変化は観察されなかった(データは示さず)。
【表23-1】
【表23-2】
【0312】
カニクイザルでの上記の研究と一致して、PSMA×CD28を単独でまたはPD-1と組み合わせて投与した担腫瘍または非担腫瘍のナイーブトリプルヒト化マウス(hCD3/hCD28/hPSMA)では、サイトカインの上昇は観察されなかった(
図27、ならびに
図29Aおよび29B)。対照的に、CD28スーパーアゴニストの投与は、投与後4時間でIFNγ、TNFα、IL-2、IL-4、およびIL-5の有意な増加を誘発した(
図27、ならびに
図29Aおよび29B)。上記の結果と一致して、TSA×CD28二重特異性抗体(およびこれらの二重特異性抗体を作製するために使用される親二価非スーパーアゴニストCD28抗体)は、CD28-SAによって誘発される強い増殖と比較して、FDAが推奨するインビトロでのドライコーティングおよびウェットコーティングアッセイにおいて、ヒトT細胞増殖を誘発できなかったことが以前に示されている(R.Stebbings,D.Eastwood,S.Poole,R.Thorpe,After TGN1412:recent developments in cytokine release assays.J Immunotoxicol 10,75-82(2013))(データは示さず)。全体として、これらのデータは、TSA×CD28二重特異性抗体が、十分に耐容されることを示唆する。
【0313】
さらに、以前に記載されたように(実施例10、
図28)、抗PSMA×CD28処置単独または抗PD1との組み合わせは、担腫瘍マウスにおける血清サイトカインを上昇させなかったが、抗PSMA×CD3処置は、単独でまたは抗PD1と組み合わせて、担腫瘍マウスにおける血清サイトカインレベルを上昇させた。
【0314】
考察
本明細書で紹介され、検証されたのは、TSA×CD28二重特異性抗体をPD-1ブロッキングmAbと組み合わせて使用する新規の腫瘍標的免疫療法であり、長寿命の抗腫瘍免疫を誘発し、動物腫瘍モデルにおけるロバストな腫瘍内T細胞活性化を促進する。遺伝的にヒト化された免疫担当マウスおよびカニクイザルにおける毒性学研究は、これらの二重特異性抗体が単独で、またはPD-1 mAbとの組み合わせで毒性を呈しないことを示し、この治療アプローチが、著しく強化された特異的かつ相乗的な抗腫瘍活性を有する、耐容性の高い「既製の」生物製剤ソリューションを提供する可能性があることを示唆している。
【0315】
PD-1ブロッキングmAbによるチェックポイント阻害は、T細胞活性化の中断を解除することが知られているが、単剤としてのそれらの有効性は、多くの癌で腫瘍クリアランスおよび持続的な抗腫瘍反応を得るのに十分でない場合が多い。PD-1阻害に対する応答率を改善するためのいくつかのアプローチが、現在評価されている。実際、PD-1 mAbに対する応答性を予測するためのバイオマーカーの同定(R.Cristescu et al.,Pan-tumor genomic biomarkers for PD-1 checkpoint blockade-based immunotherapy.Science 362(2018))、共刺激受容体をトリガーしてT細胞活性化を改善するアゴニスト抗体と一緒に、または化学療法もしくは放射線療法とともにPD-1阻害を使用する非腫瘍標的併用療法は全て、現在、前臨床および臨床試験を受けている(S.Hu-Lieskovan,A.Ribas,New Combination Strategies Using Programmed Cell Death 1/Programmed Cell Death Ligand 1 Checkpoint Inhibitors as a Backbone.Cancer J 23,10-22(2017)、Y.K.Chae et al.,Current landscape and future of dual anti-CTLA4 and PD-1/PD-L1 blockade immunotherapy in cancer;lessons learned from clinical trials with melanoma and non-small cell lung cancer(NSCLC).J Immunother Cancer 6,39(2018)、P.S.Chowdhury,K.Chamoto,T.Honjo,Combination therapy strategies for improving PD-1 blockade efficacy:a new era in cancer immunotherapy.J Intern Med 283,110-120(2018))。しかしながら、課題は、これらの組み合わせの多くが、真に仮説に基づくアプローチではなく、既存の薬剤の利用可能性および治療法を組み合わせるための事後の合理性に基づいていることが多く、場合によっては患者の転帰を悪化させることである(M.J.Ahn,J.M.Sun,S.H.Lee,J.S.Ahn,K.Park,EGFR TKI combination with immunotherapy in non-small cell lung cancer.Expert Opin Drug Saf 16,465-469(2017))。免疫系のチェックポイント阻害および再活性化が、多くの患者において長期寛解の可能性を提供することは明らかであり(J.S.Weber et al.,Nivolumab versus chemotherapy in patients with advanced melanoma who progressed after anti-CTLA-4 treatment(CheckMate 037):a randomised,controlled,open-label,phase 3 trial.Lancet Oncol 16,375-384(2015)、S.L.Topalian et al.,Survival,durable tumor remission,and long-term safety in patients with advanced melanoma receiving nivolumab.J Clin Oncol 32,1020-1030(2014)、M.A.Postow,M.K.Callahan,J.D.Wolchok,Immune Checkpoint Blockade in Cancer Therapy.J Clin Oncol 33,1974-1982(2015)、M.R.Migden et al.,PD-1 Blockade with Cemiplimab in Advanced Cutaneous Squamous-Cell Carcinoma.N Engl J Med 379,341-351(2018))、したがって、T細胞活性をさらに改善または強化して、より耐久性のある応答を促進する方法が保証される。ここでは、PD-1 mAbの抗腫瘍効果を改善するために、TSA×CD28二重特異性抗体を使用してT細胞のシグナル伝達および活性化を強化するという概念が導入された。実際、この新規併用免疫療法は、腫瘍標的(例えば、PSMA)を使用して検証され、CD28共刺激二重特異性抗体が、PD-1 mAbと相乗作用して、ロバストなT細胞活性化を生成するだけでなく、全身毒性のない耐久性のある抗腫瘍反応を提供することを実証した。結果として、この腫瘍標的併用療法は、前述の非標的アプローチに比べてかなりの利点を提供する可能性がある。腫瘍細胞表面上にクラスター化されない限り、CD28を直接活性化しないCD28二重特異性抗体を使用すると、腫瘍部位でのみ共刺激を促進する可能性がもたらされ、従来のCD28活性化抗体の全身毒性(G.Suntharalingam et al.,Cytokine storm in a phase 1 trial of the anti-CD28 monoclonal antibody TGN1412.N Engl J Med 355,1018-1028(2006))、CLTA-4とPD-1遮断との組み合わせでしばしば観察される毒性(J.Larkin et al.,Combined Nivolumab and Ipilimumab or Monotherapy in Untreated Melanoma.N Engl J Med 373,23-34(2015)、D.B.Johnson et al.,Fulminant Myocarditis with Combination Immune Checkpoint Blockade.N Engl J Med 375,1749-1755(2016)、M.H.Pollack et al.,Safety of resuming anti-PD-1 in patients with immune-related adverse events(irAEs)during combined anti-CTLA-4 and anti-PD1 in metastatic melanoma.Ann Oncol 29,250-255(2018))、または他の共刺激アゴニスト二価抗体(N.H.Segal et al.,Results from an Integrated Safety Analysis of Urelumab,an Agonist Anti-CD137 Monoclonal Antibody.Clin Cancer Res 23,1929-1936(2017))を回避する。遺伝的にヒト化された免疫担当マウスおよびカニクイザルにおける毒性学研究は、これらの二重特異性抗体が、単剤としてまたはPD-1 mAbとの組み合わせで毒性を呈しないことを示した。安全性プロファイルは、同系モデルにおけるPD-1 mAbを用いた本発明の抗PSMA×CD28二重特異性抗体による抗腫瘍効果の強化とともに、この治療法がロバストであり、免疫療法の新規併用クラスとしてより広い有用性を有する可能性があることを示唆する。
【0316】
T細胞を介した腫瘍細胞の殺滅を強化するために、腫瘍を標的としたアプローチが開発されている(E.Dahlen,N.Veitonmaki,P.Norlen,Bispecific antibodies in cancer immunotherapy.Ther Adv Vaccines Immunother 6,3-17(2018))。実際、CD3ベースの二重特異性抗体は、T細胞を腫瘍細胞に結合し、TCR/CD3を活性化することにより(E.J.Smith et al.,A novel,native-format bispecific antibody triggering T-cell killing of B-cells is robustly active in mouse tumor models and cynomolgus monkeys.Sci Rep 5,17943(2015))、したがって通常の「信号1」を模倣することによって、T細胞の活性化を効率的にトリガーすることができる新しいクラスの抗体を表す。しかしながら、CD3二重特異性抗体は、それらの有望な臨床効果にもかかわらず、直接的なT細胞の活性化と腫瘍のみの特異性の欠如により、サイトカイン放出症候群(CRS)と関連する可能性がある(S.L.Maude,D.Barrett,D.T.Teachey,S.A.Grupp,Managing cytokine release syndrome associated with novel T cell-engaging therapies.Cancer J 20,119-122(2014))。ここでは、TSA×CD28二重特異性抗体およびPD-1 mAbの併用療法が、免疫担当マウス腫瘍モデルにおける長期記憶反応に関連する腫瘍特異的T細胞活性化を誘発することが初めて実証された。TSA×CD28二重特異性抗体は、「シグナル1」がない場合、活性が制限されるか、全く活性がなく、PD-1遮断は、腫瘍ペプチドに対する内在性抗原特異的T細胞応答に依存する(W.Hugo et al.,Genomic and Transcriptomic Features of Response to Anti-PD-1 Therapy in Metastatic Melanoma.Cell 165,35-44(2016)、N.A.Rizvi et al.,Cancer immunology.Mutational landscape determines sensitivity to PD-1 blockade in non-small cell lung cancer.Science 348,124-128(2015)、J.M.Mehnert et al.,Immune activation and response to pembrolizumab in POLE-mutant endometrial cancer.J Clin Invest 126,2334-2340(2016)、D.T.Le et al.,Mismatch repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade.Science 357,409-413(2017))。したがって、内在性腫瘍抗原によって提供される「シグナル1」は、PSMA×CD28とPD-1 mAbの併用療法にとって重要である。これは、TCR特異性とは無関係にT細胞を活性化するCD3二重特異性抗体とは対照的であり、したがって、長寿命の腫瘍特異的免疫を生成しない可能性がある。実際、PSMA×CD3とPSMA×CD28との併用処置は、強力な抗腫瘍効果を誘発するが、強力な記憶反応を引き起こさないことがわかった。さらに、MC38腫瘍細胞は、p15Eなどの再活性化された内在性レトロウイルスペプチドを高レベルで発現し、C57BL6マウスは、このネオエピトープを認識して応答する内在性T細胞を生成できることが示されている(J.C.Yang,D.Perry-Lalley,The envelope protein of an endogenous murine retrovirus is a tumor-associated T-cell antigen for multiple murine tumors.J Immunother 23,177-183(2000)、H.J.Zeh,3rd,D.Perry-Lalley,M.E.Dudley,S.A.Rosenberg,J.C.Yang,High avidity CTLs for two self-antigens demonstrate superior in vitro and in vivo antitumor efficacy.J Immunol 162,989-994(1999))。本明細書に記載されるMC38モデルでは、PSMA×CD28とPD-1 mAbとの併用療法により、このp15Eネオ抗原に応答するT細胞の数が増加したことが実証された。さらに、PSMA×CD28とPD-1 mAbとの組み合わせが、機能不全の少ないCD8 T細胞をもたらし、強力な腫瘍内メモリーT細胞表現型を促進することが、腫瘍浸潤T細胞の広範なプロファイリングを通じて本明細書で見出された。したがって、CD28二重特異性抗体は、PD-1遮断と一緒に、内在性TCR/CD3依存性T細胞応答を促進し、耐久性のある抗腫瘍反応を促進する。
【0317】
本明細書でのデータは、PD-L1が標的細胞によって発現されると、PD-1が免疫シナプスに蓄積され、その蓄積が、シナプスでのCD28の低減に関連していることを示し、これは、PD-1が、シナプスへのCD28局在を防止することによって、T細胞阻害を行使できることを示唆している。さらに、本明細書では、PD-1遮断が、PD-1シナプス局在化を防止する一方で、シナプスでのCD28蓄積が増加し、TSA×CD28二重特異性抗体が、PD-1 mAbがT細胞活性化を促進する能力を著しく強化できることがわかった。これは、PD-1ブロッキング抗体が、T細胞の活性化を促進する機序のうちの1つであり得る。全体として、PD-1-PD-L1相互作用および/またはPD-1阻害後の免疫シナプスにおけるPD-1およびCD28の局在の視覚化により、T細胞活性化に対するPD-1遮断の影響、ならびに免疫シナプスのレベルでのTSA×CD28とPD-1 mAbとの間の相乗効果をよりよく理解することができる。
【0318】
PD-1 mAbは、重要な新しいクラスの免疫療法であるが、多くの場合、抗腫瘍活性のさらなる最適化が確実に重要になる。CAR-Tアプローチが、「シグナル1」および「シグナル2」の両方を人工的に活性化して抗腫瘍活性を改善するキメラ受容体を採用したように(E.A.Zhukovsky,R.J.Morse,M.V.Maus,Bispecific antibodies and CARs:generalized immunotherapeutics harnessing T cell redirection.Curr Opin Immunol 40,24-35(2016)、A.I.Salter et al.,Phosphoproteomic analysis of chimeric antigen receptor signaling reveals kinetic and quantitative differences that affect cell function.Sci Signal 11,(2018))、PD-1阻害をCD28二重特異性抗体(「シグナル2」を提供する)と組み合わせて抗腫瘍活性を強化することの潜在的な利点が示されている。このアプローチには、各患者に個別にカスタマイズする必要のある面倒な細胞療法の準備が不要であるという点で、CAR-T療法に比べていくつかの実用的な利点があり、また、多くの場合、患者が細胞療法を受け入れることができなくなるような有害作用に関連している毒性化学療法によって、患者を先制的に「リンパ球枯渇」させる必要もない(C.H.June,R.S.O´Connor,O.U.Kawalekar,S.Ghassemi,M.C.Milone,CAR T cell immunotherapy for human cancer.Science 359,1361-1365(2018))。この二重特異性アプローチは、その作用の特異性を通じて、有効性の向上と安全性の向上の可能性を提供する。まとめると、これらのデータは、CD28ベースの二重特異性抗体と、セミプリマブなどの臨床的に検証されたPD-1 mAbとを組み合わせると、著しく強化された相乗的な抗腫瘍活性を備えた、耐容性の高い「既製の」生物製剤ソリューションを提供できることを示唆する。
【0319】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な修正は、前述の記載および添付の図から当業者には明らかであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【配列表】