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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】電力装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250508BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20250508BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20250508BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/10 L
H02J7/04 L
H01M10/48 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021567587
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048335
(87)【国際公開番号】W WO2021132420
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2019238385
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】井野 光泰
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-033936(JP,A)
【文献】特開2018-050401(JP,A)
【文献】特開2014-161211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/10
H02J 7/04
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電部(12、12a~12d)とECU(14)とを有する電力装置(10)において、
複数の前記蓄電部の各々は、前記蓄電部の電圧値を検出する電圧検出部(32)と、前記蓄電部の温度を検出する温度検出部(36)と、前記電圧値及び前記温度を前記ECUに送信する通信部(38)とを有し、前記電力装置に対して着脱可能であり、
前記ECUは、
複数の前記蓄電部の前記通信部から送信される前記電圧値をそれぞれ取得する電圧取得部(14)と、
複数の前記蓄電部の前記通信部から送信される前記温度をそれぞれ取得する温度取得部(14)と、
前記電圧取得部が取得した複数の前記蓄電部の前記電圧値の電圧差が電圧閾値(Vthr)を超える場合、前記電圧差が前記電圧閾値を超える複数の前記蓄電部同士の接続を禁止し、且つ、前記温度取得部が取得した複数の前記蓄電部の前記温度の温度差が温度閾値を超える場合、前記温度差が前記温度閾値を超える複数の前記蓄電部同士の接続を禁止する接続制御部(14)と、
を有する、電力装置。
【請求項2】
請求項1記載の電力装置において、
前記ECUは、複数の前記蓄電部が前記電力装置に収容されているか否かを判定する判定部(14)をさらに有する、電力装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電力装置において、
複数の前記蓄電部の各々は、前記ECUから印加される電圧に基づいて起動する、電力装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記接続制御部は、複数の前記蓄電部の前記電圧値のうち、最大電圧と最小電圧との差が前記電圧閾値を超える場合、前記電圧値の差が前記電圧閾値以内となる少なくとも2つの前記蓄電部の組み合わせがあるか否かを判定し、前記組み合わせが存在する場合には、少なくとも2つの前記蓄電部の接続を許可する、電力装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電力装置において、
複数の前記蓄電部は、複数の前記蓄電部の電力を利用する電力利用部(24)に接続可能であり、
前記接続制御部は、前記電圧差が前記電圧閾値を超える場合、複数の前記蓄電部と前記電力利用部との接続を禁止する、電力装置。
【請求項6】
請求項記載の電力装置において、
前記接続制御部は、前記電圧差が前記電圧閾値を超える場合、1つの前記蓄電部と前記電力利用部との接続を許可する、電力装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記接続制御部は、複数の前記蓄電部に前記電圧差が前記電圧閾値を超えない組み合わせが存在する場合、前記電圧差が前記電圧閾値を超えない複数の前記蓄電部同士の接続を許可する、電力装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記接続制御部は、前記電力装置に収容される複数の前記蓄電部のうち、使用可能な複数の前記蓄電部同士の接続を許可するか、又は、接続を禁止する、電力装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力装置において、
複数の前記蓄電部の電力を利用する電力利用部に対して、複数の前記蓄電部を並列に接続する複数の接続部(26)をさらに有し、
複数の前記接続部は、前記接続制御部が複数の前記蓄電部同士の接続を禁止する場合、複数の前記蓄電部と前記電力利用部との接続を遮断し、一方で、前記接続制御部が複数の前記蓄電部同士の接続を許可する場合、複数の前記蓄電部と前記電力利用部とを接続する、電力装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の電力装置において、
前記接続制御部は、前記電圧差が前記電圧閾値を超える場合、及び、前記温度差が前記温度閾値を超える場合のいずれでもない場合には、複数の前記蓄電部同士の接続を許可し、
前記電力装置は、前記接続制御部が接続を許可した複数の前記蓄電部の数の情報前記電力装置のユーザに報知する報知部(16)をさらに有する、電力装置。
【請求項11】
複数の蓄電部(12、12a~12d)とECU(14)とを有する電力装置(10)の制御方法において、
複数の前記蓄電部の各々は、前記電力装置に対して着脱可能であり、
前記制御方法は、
複数の前記蓄電部の各々が電圧検出部(32)によって前記蓄電部の電圧値を検出するステップと、
複数の前記蓄電部の各々が温度検出部(36)によって前記蓄電部の温度を検出するステップと、
複数の前記蓄電部の各々が通信部(38)によって前記電圧値及び前記温度を前記ECUに送信するステップと、
前記ECUの電圧取得部(14)によって複数の前記蓄電部の前記通信部から送信される前記電圧値をそれぞれ取得するステップと、
前記ECUの温度取得部(14)によって複数の前記蓄電部の前記通信部から送信される前記温度をそれぞれ取得するステップと、
前記電圧取得部が取得した複数の前記蓄電部の前記電圧値の電圧差が電圧閾値(Vthr)を超える場合、前記ECUの接続制御部(14)によって前記電圧差が前記電圧閾値を超える複数の前記蓄電部同士の接続を禁止し、且つ、前記温度取得部が取得した複数の前記蓄電部の前記温度の温度差が温度閾値を超える場合、前記接続制御部によって前記温度差が前記温度閾値を超える複数の前記蓄電部同士の接続を禁止するステップと、
を有する、電力装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電部を有する電力装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバッテリ(蓄電部)が電圧変換器を介して互いに並列接続される電力装置が、例えば、特開2016-25791号公報に開示されている。
【発明の概要】
【0003】
ところで、電圧又はSOC(充電率)の異なる複数の蓄電部を互いに並列接続する場合、複数の蓄電部の間では、電圧又はSOCが互いに均等になるように、各蓄電部の電圧差に比例して電流が流れる充放電が行われる。この場合、複数の蓄電部を単純に結線した際、無視できるほど小さな電圧差であれば、各蓄電部を直接、並列接続しても問題はない。
【0004】
しかしながら、電圧差の大きな複数の蓄電部を並列接続すると、当該電圧差に起因して大電流が流れる。これにより、蓄電部の劣化や故障が発生し、蓄電部の寿命が短くなる場合がある。例えば、鉛バッテリは、内部抵抗が高いため、電圧差があっても大電流(過電流)は流れにくい。一方、着脱式のリチウムイオンバッテリのような内部抵抗の低い蓄電部について、並列に接続して充放電を行う場合、大電流(過電流)が流れやすい。
【0005】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、蓄電部の劣化や故障を未然に防止することで、蓄電部の長寿命化を実現することができる電力装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の第1の態様は、複数の蓄電部を有する電力装置であって、複数の前記蓄電部の電圧値をそれぞれ取得する電圧取得部と、前記電圧取得部が取得した複数の前記蓄電部の前記電圧値の電圧差が電圧閾値を超える場合、前記電圧差が前記電圧閾値を超える複数の前記蓄電部同士の接続を禁止する接続制御部とを有する。
【0007】
本発明の第2の態様は、複数の蓄電部を有する電力装置の制御方法であって、電圧取得部によって複数の前記蓄電部の電圧値をそれぞれ取得するステップと、前記電圧取得部が取得した複数の前記蓄電部の前記電圧値の電圧差が電圧閾値を超える場合、接続制御部によって前記電圧差が前記電圧閾値を超える複数の前記蓄電部同士の接続を禁止するステップとを有する。
【0008】
本発明によれば、複数の蓄電部の電圧値の電圧差が電圧閾値を超えると、複数の蓄電部同士の接続を禁止する。これにより、電圧差に起因して大電流が流れることが回避される。この結果、蓄電部の劣化や故障が未然に防止され、蓄電部の長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る電力装置の構成図である。
図2図1の蓄電部の構成図である。
図3図1の電力装置の動作を図示したフローチャートである。
図4図1の電力装置の動作を図示したフローチャートである。
図5】具体例の説明図である。
図6】変形例に係る電力装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電力装置及びその制御方法について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
[1.本実施形態の概略構成]
本実施形態に係る電力装置10は、図1に示すように、複数の蓄電部12と、ECU14(電圧取得部、接続制御部、温度取得部)と、報知部16と、内蔵バッテリ18と、複数のスイッチ20、22とを有する。なお、図1では、4つの蓄電部12(以下、第1~第4蓄電部12a~12dという場合がある。)が配置される場合を図示している。本実施形態では、少なくとも2つの蓄電部12が電力装置10に配置されていればよい。
【0012】
また、電力装置10は、例えば、一輪車、二輪車、三輪車、四輪車等の各種の電動車両の電源システムに適用される。なお、電力装置10は、電動車両への適用に限定されることはない。(1)車両以外の航空機や船舶等の移動体、(2)家庭用の充電器等の各種の充電設備、(3)蓄電部12から電力を出力させる各種の放電器、(4)汎用作業機、芝刈り機、耕うん機等の各種の作業機、(5)家屋等の建物の内外に設置又は配置されている各種の電気機器に電力を供給する電源システム(Energy Storage System)にも、電力装置10を適用可能である。以下の説明では、主として、電動車両に電力装置10を適用した場合について説明する。
【0013】
各蓄電部12は、電力装置10に対して着脱可能で、且つ、充放電可能な蓄電装置である。例えば、着脱式のリチウムイオンバッテリのバッテリパックが蓄電部12として好適である。各蓄電部12は、電動車両のモータ及びPDU等の負荷24(電力利用部)に対して並列に接続されている。すなわち、各蓄電部12の出力側の正極端子は、負荷24の正極端子と接続されている。各蓄電部12の出力側の負極端子は、負荷24の負極端子と接続されている。なお、負荷24は、モータ及びPDUに限らず、複数の蓄電部12の電力を利用する装置であればよい。
【0014】
内蔵バッテリ18は、電力装置10に設けられている固定型の蓄電装置である。内蔵バッテリ18は、スイッチ20を介して負荷24に並列に接続されている。すなわち、内蔵バッテリ18の正極端子は、スイッチ20を介して、負荷24の正極端子と接続されている。内蔵バッテリ18の負極端子は、負荷24の負極端子と接続されている。なお、内蔵バッテリ18と負荷24との間には、DC/DCコンバータ等の不図示の電圧変換回路が介挿されてもよい。これにより、各蓄電部12と内蔵バッテリ18との双方から負荷24に電力を供給する場合、内蔵バッテリ18の電圧を電圧変換回路で調整し、調整後の電圧を負荷24側に出力することができる。また、内蔵バッテリ18単独で負荷24に電力を供給するか、又は、各蓄電部12から負荷24に電力を供給する場合には、電圧変換回路は無くてもよい。
【0015】
内蔵バッテリ18は、電力装置10の主電源であると共に、各蓄電部12を起動させるための起動用電源でもある。従って、内蔵バッテリ18は、各スイッチ22を介して各蓄電部12にも接続されている。すなわち、内蔵バッテリ18の正極端子は、各スイッチ22を介して、各蓄電部12の正極の電源端子と接続されている。内蔵バッテリ18の負極端子は、各蓄電部12の負極の電源端子と接続されている。
【0016】
ECU14は、電動車両の電子制御装置であり、不図示の非一過性の記憶媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する各スイッチ26(図2参照)に対する接続制御等の各種機能を実現する。また、報知部16は、電動車両に備わる表示装置又はスピーカ等の出力装置であり、ECU14の処理結果を外部(例えば、電動車両のユーザ)に報知する。
【0017】
ECU14と、各蓄電部12、各スイッチ20、22及び負荷24とは、Controller Area Network(CAN)の通信線28を介して、信号又は情報の送受信が可能である。従って、ECU14は、各スイッチ20、22を制御してオンさせることで、内蔵バッテリ18と負荷24とを電気的に接続させ、又は、内蔵バッテリ18と各蓄電部12とを電気的に接続させる。
【0018】
図2は、各蓄電部12の内部構成図である。各蓄電部12は、同じ構成を有しており、図2では、1つの蓄電部12のみ図示している。図2に示すように、各蓄電部12は、スイッチ26(接続部)と、バッテリ30と、バッテリマネジメントシステム(BMU)32と、抵抗器34と、温度センサ36と、通信部38とを収容するバッテリパックである。
【0019】
バッテリ30の正極は、スイッチ26及び蓄電部12の正極端子を介して負荷24の正極端子に接続されている。バッテリ30の負極は、抵抗器34及び蓄電部12の負極端子を介して負荷24の負極端子に接続されている。また、通信部38は、通信線28を介してECU14との間で信号又は情報の送受信を行う。
【0020】
BMU32は、ECU14の制御でスイッチ22がオンとなり、内蔵バッテリ18から電力が供給されることで起動する。BMU32は、バッテリ30の監視等を行う。具体的に、BMU32は、ECU14から通信線28を介して通信部38に受信される制御信号に基づき、スイッチ26をオンさせることで、バッテリ30と負荷24とを電気的に接続する。また、BMU32は、抵抗器34の両端の電圧値を逐次検出し、検出した電圧値と抵抗器34の抵抗値とに基づき、バッテリ30に流れる電流(放電電流又は充電電流)の電流値を逐次算出する。さらに、BMU32は、バッテリ30の電圧値を逐次検出し、検出した電圧値と、算出した電流値とに基づき、バッテリ30のSOCを逐次算出する。さらにまた、BMU32は、サーミスタ等の温度センサ36が検出したバッテリ30の温度を逐次取得する。BMU32は、通信部38から通信線28を介してECU14に、電圧値、電流値、SOC及び温度を含む情報を逐次送信する。
【0021】
従って、ECU14は、上記の情報を逐次取得し、取得した各情報に基づいて、各スイッチ26のオン(接続)又はオフ(遮断)の要否を決定(判定)する。また、ECU14は、この判定結果に基づく制御信号を、通信線28を介して各通信部38に送信することで、各蓄電部12のスイッチ26をオン又はオフさせる。さらに、ECU14は、通信線28を介して各スイッチ20、22に制御信号を送信することで、各スイッチ20、22をオン又はオフさせる。
【0022】
[2.本実施形態の動作]
以上のように構成される本実施形態に係る電力装置10の動作(電力装置10の制御方法)について、図3を参照しながら説明する。この動作は、複数の蓄電部12(図1及び図2参照)の電圧値の電圧差が電圧閾値を超える場合、電圧閾値を超える電圧差の蓄電部12同士の接続を禁止することで、電圧差に起因した許容電流を超える大電流(過電流)が各蓄電部12間を含む電力装置10内に流れることを回避させるというものである。なお、電圧閾値とは、電圧差に起因して各蓄電部12の間を流れる大電流(過電流)が発生するか否かを判定するための閾値であり、許容電流に応じた電圧差の値をいう。従って、電圧差が電圧閾値以内に収まっていれば過電流の発生は抑制される。一方、電圧差が電圧閾値を超えていれば、過電流が発生する可能性がある。
【0023】
この動作説明では、スイッチ20のオフによって内蔵バッテリ18と負荷24との接続が遮断されている場合に、各蓄電部12から負荷24に電力を供給する場合について説明する。なお、スイッチ20のオンによって内蔵バッテリ18と負荷24とを接続する場合には、内蔵バッテリ18は、不図示の電圧変換回路を介して、負荷24に電力を供給することに留意する。
【0024】
ステップS1において、ECU14は、各スイッチ22に制御信号を供給することで、各スイッチ22をオフからオンに切り替える。これにより、内蔵バッテリ18と各蓄電部12のBMU32とが電気的に接続され、該内蔵バッテリ18から各蓄電部12(BMU32)への電力供給が開始される。これにより、各BMU32が起動する。また、各通信部38は、通信線28を介してECU14と通信可能な状態に至る(ステップS1:YES)。なお、ステップS1において、ECU14及び各蓄電部12は、通信線28を介して、各蓄電部12にID番号等を付与する付番処理を行ってもよい。
【0025】
ステップS2において、各蓄電部12のBMU32は、バッテリ30の電圧値を検出する。この場合、各BMU32は、バッテリ30の温度の取得、バッテリ30に流れる電流の電流値の算出、及び、バッテリ30のSOCの算出を併せて行っている。そのため、各BMU32は、これらの情報を、通信部38から通信線28を介してECU14に送信する。従って、ECU14は、各蓄電部12からバッテリ30の電圧値等の情報を取得することができる。
【0026】
ステップS3において、ECU14は、複数の蓄電部12が電力装置10に配置(収容)されているか否かを判定する。この場合、ECU14は、例えば、通信線28を介して各蓄電部12に情報の送信を指示し、この指示に対して各蓄電部12から通信線28を介して何らかの情報を受信した場合、各蓄電部12が電力装置10に収容されていると判定する。
【0027】
少なくとも2つの蓄電部12が収容されていることを判定した場合(ステップS3:YES)、次のステップS4において、ECU14は、収容されている全ての蓄電部12のうち、使用可能な蓄電部12が複数存在するか否かを判定する。この場合、ECU14は、例えば、バッテリ30の電圧値が所定値以上であるか、又は、SOCが所定値以上である場合、該バッテリ30を有する蓄電部12が使用可能であると判定する。
【0028】
使用可能な蓄電部12が複数存在することを判定した場合(ステップS4:YES)、次のステップS5において、ECU14は、各蓄電部12のバッテリ30の電圧値を比較し、最も高い電圧値(最大電圧値)と、最も低い電圧値(最小電圧値)との電圧差が電圧閾値以内であるか否かを判定する。
【0029】
ここで、最大電圧値と最小電圧値との電圧差が電圧閾値以内に収まっていれば(ステップS5:YES)、ステップS7に進む。すなわち、ECU14は、負荷24に対して全ての蓄電部12を並列に接続しても過電流は発生しない可能性があると判定する。
【0030】
また、最大電圧値と最小電圧値との電圧差が電圧閾値を超えている場合(ステップS5:NO)、ECU14は、ステップS6に進み、各蓄電部12のバッテリ30の電圧値を比較し、電圧閾値以内の電圧差となるような少なくとも2つの蓄電部12の接続の組み合わせが存在するか否かを判定する。電圧閾値以内の電圧差となるような接続の組み合わせが存在する場合(ステップS6:YES)、ステップS7に進む。すなわち、ECU14は、この接続の組み合わせの場合、互いの電圧値が近い(隣接している)ため、少なくとも2つの蓄電部12を並列に接続すれば、過電流は発生しない可能性があると判定する。
【0031】
ステップS7において、ECU14は、各蓄電部12のバッテリ30の温度を比較し、最も高い温度(最高温度)と、最も低い温度(最低温度)との温度差が温度閾値以内であるか否かを判定する。すなわち、バッテリ30の温度に応じて該バッテリ30の内部抵抗が変化すれば、バッテリ30の電圧値も変化する。そこで、本実施形態では、蓄電部12(バッテリ30)の温度も考慮して、蓄電部12の接続の組み合わせを選択する。
【0032】
なお、温度閾値とは、温度差に応じた電圧差に起因して各蓄電部12の間を流れる大電流(過電流)が発生するか否かを判定するための閾値であり、許容電流に応じた温度差の値をいう。従って、温度差が温度閾値以内に収まっていれば過電流の発生は抑制される。一方、温度差が温度閾値を超えていれば、過電流が発生する可能性がある。
【0033】
最高温度と最低温度との温度差が温度閾値以内である場合(ステップS7:YES)、ECU14は、ステップS5、S6における肯定的な判定結果の接続の組み合わせであれば、負荷24に対して少なくとも2つの蓄電部12を並列に接続しても過電流は発生しないと判定し、ステップS9に進む。
【0034】
また、最高温度と最低温度との温度差が温度閾値を超えている場合(ステップS7:NO)、ECU14は、ステップS8に進み、各蓄電部12のバッテリ30の温度を比較し、温度閾値以内の温度差となるような少なくとも2つの蓄電部12の接続の組み合わせが存在するか否かを判定する。温度閾値以内の温度差となるような接続の組み合わせが存在する場合(ステップS8:YES)、ステップS9に進む。すなわち、ECU14は、この接続の組み合わせの場合、少なくとも2つの蓄電部12を並列に接続すれば、過電流は発生しないと判定する。
【0035】
ステップS9において、ECU14は、ステップS5~S8での肯定的な判定結果に基づく接続の組み合わせに対応した少なくとも2つの蓄電部12に対して、通信線28を介して、スイッチ26のオンを指示する制御信号を送信する。
【0036】
少なくとも2つの蓄電部12のBMU32は、通信部38で受信された制御信号に基づき、スイッチ26をオフからオンに切り替える。これにより、負荷24に対して少なくとも2つの蓄電部12(バッテリ30)が並列に接続される。この結果、各蓄電部12の間の電圧差を電圧閾値以内に抑えつつ、負荷24への電力供給や、各蓄電部12の間での充放電を行うことができる。
【0037】
また、ECU14は、ステップS10において、少なくとも2つの蓄電部12が接続されたことを、報知部16から電動車両のユーザ等に報知する。
【0038】
そして、ステップS11において、上記の処理を再度実行する場合(ステップS11:YES)、ECU14は、ステップS1又はS2に戻る。従って、本実施形態では、ステップS1又はS2からステップS11までの処理を繰り返し実行することができる。
【0039】
一方、ステップS3、S4において、否定的な判定結果となった場合(ステップS3、S4:NO)、ECU14は、電力装置10の現在の状態では、1つの蓄電部12しか使用することができないと判断する。次に、ECU14は、図4のステップS12に進み、該1つの蓄電部12が使用可能な状態にあるか否かを判定する。
【0040】
1つの蓄電部12が使用可能な状態にある場合(ステップS12:YES)、次のステップS13において、ECU14は、通信線28を介して、1つの蓄電部12の通信部38に、スイッチ26のオンを指示する制御信号を送信する。
【0041】
1つの蓄電部12のBMU32は、通信部38で受信された制御信号に基づき、スイッチ26をオフからオンに切り替える。これにより、負荷24に対して1つの蓄電部12(バッテリ30)が接続され、1つの蓄電部12と負荷24との間で電力の授受が行われる。その後、図3のステップS10の処理が実行され、1つの蓄電部12と負荷24とを接続したことが報知部16から外部に報知される。
【0042】
一方、ステップS12において、1つの蓄電部12が使用不可能である場合(ステップS12:NO)、ECU14は、接続可能な蓄電部12が存在しないと判断する。次のステップS14において、ECU14は、全ての蓄電部12の接続を禁止することを決定する。その後、図3のステップS10の処理が実行され、全ての蓄電部12の接続を禁止したことが報知部16から外部に報知される。これにより、接続が禁止されたことを電動車両のユーザに警告することができる。
【0043】
また、ステップS6、S8において、否定的な判定結果となった場合(ステップS6、S8:NO)でも、ECU14は、接続可能な蓄電部12が存在しないと判断し、図4のステップS14に進み、全ての蓄電部12の接続を禁止する。
【0044】
なお、図3及び図4の処理において、ステップS7、S8の処理はスキップしてもよい。すなわち、図3及び図4の処理では、少なくとも、電圧差に基づいて、各蓄電部12の接続の組み合わせや、各蓄電部12の接続の禁止を判定すればよい。
【0045】
[3.本実施形態の動作の具体例]
次に、上述した動作の具体例について、図5を参照しながら説明する。この具体例は、図5のように、第1~第4蓄電部12a~12d(図1及び図2参照)の順に電圧値が低くなっている場合に、電圧閾値を超える電圧差の接続の組み合わせを禁止することで、電圧閾値以内の電圧差の接続の組み合わせで第1~第4蓄電部12a~12dを接続するものである。
【0046】
なお、具体例では、第1~第4蓄電部12a~12dの接続前の電圧値は、V1~V4であり、電圧閾値をVthrとする。また、図5では、第1~第4蓄電部12a~12dをNO.1~NO.4として表記している。
【0047】
図5に示すように、|V1-V4|>Vthrである(図3のステップS5:NO)。そのため、負荷24(図1及び図2参照)に対して第1~第4蓄電部12a~12dを並列に接続すると過電流が流れる可能性がある(図5中の「NG」の接続)。一方、第1~第3蓄電部12a~12cの接続、第2~第4蓄電部12b~12dの接続、第1蓄電部12aと第2蓄電部12bとの接続、第2蓄電部12bと第3蓄電部12cとの接続、及び、第3蓄電部12cと第4蓄電部12dとの接続では、接続対象の蓄電部12の電圧値が互いに近い(隣接している)ため、電圧差が電圧閾値Vthr以内となり、過電流は発生しない(図5中の「OK」の接続、図3のステップS6:YES)。
【0048】
そこで、ECU14は、図5中の「OK」の接続のうち、いずれか1つの接続の組み合わせを択一的に選択する(図3のステップS9)。この場合、ECU14は、通信線28を介して、接続対象の各蓄電部12の通信部38に、スイッチ26をオンにするための制御信号を送信する。これにより、該各蓄電部12のBMU32は、通信部38が受信した制御信号に基づきスイッチ26をオフからオンに切り替える。この結果、負荷24に対して各蓄電部12が並列に接続され、各蓄電部12の間で充放電が行われる。
【0049】
[4.変形例]
本実施形態に係る電力装置10は、図6に示す変形例の構成であってもよい。この変形例では、各蓄電部12(12a~12d)は、バッテリ30及び温度センサ36のみ有する。各バッテリ30には、該バッテリ30の電圧値を逐次検出する電圧センサ40が並列に接続されている。さらに、各バッテリ30の正極端子は、電流センサ42及びスイッチ26を介して負荷24の正極端子に接続されている。さらにまた、各バッテリ30の負極端子は、負荷24の負極端子に接続されている。電流センサ42は、バッテリ30に流れる電流の電流値を逐次検出する。
【0050】
ECU14は、各温度センサ36、各電圧センサ40及び各電流センサ42とアナログ信号線44を介して接続されている。そのため、ECU14は、通信部38(図2参照)のような通信手段を用いなくても、アナログ信号線44を介して、各温度センサ36が検出したバッテリ30の温度、各電圧センサ40が検出したバッテリ30の電圧値、各電流センサ42が検出した電流値を逐次取得することができる。従って、この変形例でも、ECU14は、上述したスイッチ26の接続処理等を実行することが可能である。
【0051】
上記のように、図1及び図2の構成では、ECU14は、各蓄電部12から電圧値等を取得する。また、図6の構成では、電圧センサ40が検出した電圧値がECU14に入力される。本実施形態では、これらの構成に限定されることなく、ECU14は、各蓄電部12等からの情報に基づき、電圧値を推定してもよい。
【0052】
[5.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態は、複数の蓄電部12(12a~12d)を有する電力装置10及びその制御方法に関する。
【0053】
この場合、電力装置10は、複数の蓄電部12の電圧値をそれぞれ取得する電圧取得部と、取得した複数の蓄電部12の電圧値の電圧差が電圧閾値(Vthr)を超える場合、電圧差が電圧閾値を超える複数の蓄電部12同士の接続を禁止する接続制御部として機能するECU14を有する。
【0054】
また、電力装置10の制御方法は、ECU14が複数の蓄電部12の電圧値をそれぞれ取得するステップ(図3のステップS2)と、取得した複数の蓄電部12の電圧値の電圧差が電圧閾値を超える場合、ECU14によって電圧差が電圧閾値を超える複数の蓄電部12同士の接続を禁止するステップ(図4のステップS14)とを有する。
【0055】
このように、本実施形態では、複数の蓄電部12の電圧値の電圧差が電圧閾値を超えると、複数の蓄電部12同士の接続を禁止する。これにより、電圧差に起因して大電流が流れることが回避される。この結果、蓄電部12の劣化や故障が未然に防止され、蓄電部12の長寿命化を実現することができる。
【0056】
この場合、複数の蓄電部12は、複数の蓄電部12の電力を利用する負荷24(電力利用部)に接続可能であり、ECU14は、電圧差が電圧閾値を超える場合、複数の蓄電部12と負荷24との接続を禁止する。これにより、電力装置10内に大電流が流れることが回避され、各蓄電部12及び負荷24の劣化や故障を未然に防止することができる。
【0057】
また、ECU14は、電圧差が電圧閾値を超える場合、1つの蓄電部12と負荷24との接続を許可する(図4のステップS13)。これにより、電圧差が電圧閾値を超える場合でも、1つの蓄電部12から負荷24に電力供給を行うことができる。
【0058】
また、ECU14は、複数の蓄電部12に電圧差が電圧閾値を超えない組み合わせが存在する場合、電圧差が電圧閾値を超えない複数の蓄電部12同士の接続を許可する(図3のステップS6:YES、ステップS9)。これにより、電圧差が電圧閾値を超えないように、蓄電部12間の充放電を行うことが可能となる。
【0059】
さらに、ECU14は、電力装置10に収容され、且つ、使用可能な複数の蓄電部12同士の接続を許可するか、又は、接続を禁止する(図3のステップS3~S5)。これにより、各蓄電部12の接続処理を効率よく行うことができる。
【0060】
ECU14は、複数の蓄電部12の温度を取得し、取得した複数の蓄電部12の温度の温度差が温度閾値を超える場合、温度差が温度閾値を超える複数の蓄電部12同士の接続を禁止する(図3のステップS7、S8、図4のステップS14)。蓄電部12の温度の変化によって内部抵抗が変化し、電圧値が変化する。従って、温度差が温度閾値を超える場合に複数の蓄電部12同士の接続を禁止することで、大電流が流れることを回避し、蓄電部12の劣化や故障を確実に防止することが可能となる。
【0061】
電力装置10は、複数の蓄電部12の電力を利用する負荷24(電力利用部)に対して、複数の蓄電部12を並列に接続する複数のスイッチ26(接続部)をさらに有する。複数のスイッチ26は、ECU14が複数の蓄電部12同士の接続を禁止する場合、複数の蓄電部12と負荷24との接続を遮断し(図4のステップS14)、一方で、ECU14が複数の蓄電部12同士の接続を許可する場合、複数の蓄電部12と負荷24とを接続する(図3のステップS9)。これにより、各スイッチ26による複数の蓄電部12と負荷24との接続を、ECU14から確実に制御することができる。
【0062】
電力装置10は、複数の蓄電部12の接続状態を外部に報知する報知部16をさらに有する。これにより、電動車両のユーザ等は、該接続状態を容易に把握することができる。
【0063】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6