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特許7677946血管性認知症の予防用アジュバントとして使用するための栄養補助食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】血管性認知症の予防用アジュバントとして使用するための栄養補助食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/68 20060101AFI20250508BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 36/254 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20250508BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20250508BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20250508BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20250508BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20250508BHJP
【FI】
A61K36/68
A61P25/28
A61K31/122
A61K31/355
A61K31/198
A61K36/23
A61K31/164
A61K36/254
A61K36/185
A23L33/105
A23L33/15
A23L33/10
A23L33/175
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022506578
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 IB2020056996
(87)【国際公開番号】W WO2021019395
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】102019000013707
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520129539
【氏名又は名称】クリスタルファルマ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】デル・ボノ,マリア・クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ボノモ,フランチェスコ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/003981(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0051458(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102389437(CN,A)
【文献】Protective Effects of Tea on Human Health,2006年,pp.182-191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管性認知障害(VCI)の主要な修正可能リスク因子の低減に使用するための経口製剤であって、活性成分として、バコパ・モンニエリの乾燥抽出物、アスタキサンチン、ビタミンE、L-テアニン及びセンテラ・アシアティカの乾燥抽出物からなる組合せを、
適切な賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせて含み、前記経口製剤中には、
・バコパ・モンニエリの乾燥抽出物が70~200mgの量で含有され;
・アスタキサンチンが前記組合せ中に1mgの最小含量含有され;
・ビタミンEが、前記組合せ中に60mgの最大量含有され;
・L-テアニンが、前記組合せ中に150~300mgの範囲の量含有され;
・センテラ・アシアティカの乾燥抽出物が75~250mgの量で存在し、
前記主要なリスク因子が、酸化的ストレスによる神経炎症、酸素供給の変化と神経栄養の変化、アセチルコリンによって媒介される神経伝達の変化である、経口製剤
【請求項2】
前記経口製剤が栄養補助食品である、請求項1に記載の使用のための経口製剤
【請求項3】
前記経口製剤が1日1回又は2回投与される、請求項1~2のいずれか1項に記載の使用のための経口製剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、血管性認知症の予防、特に血管性認知障害(VCI)の主要な修正可能リスク因子の低減に使用するためのアジュバントとしての経口製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血管性認知症(VaD)は高齢者における認知症の最も一般的な原因の一つで、全認知症例の8~10%を占め、アルツハイマー病(AD)に次いで2番目に多い。2002年には既に、老化に関するイタリアの縦断研究(Italian Longitudinal Study on Aging)(ILSA)は、65~84歳のイタリア人口における認知症の有病率を女性7.2%、男性5.3%と推定している。同じ研究のヨーロッパのデータによれば、イタリアでは血管型が認知症の22%を占め、有病数は合計約150,000例に上る
【0003】
VaDの軽度の形態の一つは血管性認知障害(VCI)である。臨床的観点から、VCI患者は実行機能に欠陥を有することが認められており、相対的に記憶が保存されているものから2,3,4、より進行した段階では情動調節障害(構音障害、嚥下障害)や尿失禁が見られることも多い。血管性認知障害(VCI)を有する人のほぼ半数が、疾患の最初の診断から5年後に血管性認知症VaDに移行する。従って、VCIの症例に関与するリスク因子をなるべく早く識別し管理する必要性が、血管障害を予防し、患者の生活の質を向上させるために不可欠である。血管性認知症のリスク因子は、高齢であることのほかに、高血圧、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心疾患、及び脳卒中などがある。また、脳損傷の結果、グルタミン酸が大量放出されることも認められているが、この物質は神経毒性を持ち、酸化的ストレスひいてはニューロンの炎症を促進する6,7
【0004】
現在、血管性認知症に対する有効な薬物介入はない。標準的治療は、降圧剤、アスピリン、スタチン、抗糖尿病薬及び生活様式の改善などを用い、心臓血管及び脳血管のリスクの認識及び制御を通じて、主に対症的管理と更なる脳損傷の防止に焦点を当てている。数種類の抗AD薬が血管性認知症の対症的管理のために適応外使用されている。コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、及びリバスチグミン)及びNMDA受容体アンタゴニスト(メマンチン)は、認知機能の改善に多少の短期的な臨床的利益を示しているが、これらの研究のほとんどは、全体的機能、日常生活活動、及び生活の質の顕著な改善を示すことができていない。これまでに実施された研究の大部分は比較的短期間(5~6ヶ月)のため、これらの血管性認知症介入の長期的利益及び安全性は立証されていない
【0005】
酸化的ストレスによるニューロンの損傷(脳卒中などの神経血管問題に関連することが多い)に関して、脳は酸化的ストレスに対して非常に脆弱な器官であることに注意すべきである。なぜならば、これらの組織では代謝活動がより活発であるがゆえにエネルギー需要がより大きく、より多くのフリーラジカルが生成するからである。これは、酸化的リン酸化過程に固有のことであり、ミトコンドリア自体を始めとした細胞破壊のリスクの可能性を示す。生成するフリーラジカルは抗酸化機構(スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオン、カタラーゼ)の作用によって容易に不活化される。いずれにしても、100%有効な酵素防御系はないので、全部の抗酸化酵素でもミトコンドリアによって産生される反応性酸素を完全に中和することはできない。実際、抗酸化機構は、いくつかの要因のために危機に陥りかねず、そのため細胞によるフリーラジカル生成を相殺することはもはや不可能となる。酸化的ストレスはこのような場合に発生する。すなわち、フリーラジカルが生体分子(脂質、タンパク質、核酸)と反応して構造的及び機能的変化を引き起こし、炎症系を活性化させる。やがて、フリーラジカルに基づく老化理論は、ミトコンドリアのフリーラジカルに基づく老化理論に進化した8-9。この理論は、ミトコンドリアに対する全体的な酸化的損傷(内因性の代謝過程及び/又は外因性の酸化的影響によって悪化する10)が、ミトコンドリアの能力(efficiency)を徐々に低下させると断言している。実質的な損傷は、膜を通過する電子に起因しており、これがミトコンドリアを損傷し、エネルギー生成の低下をもたらす。それは機能的損傷とエネルギー生成低下を含む悪循環を誘起する。ミトコンドリアは次第にそれらの機能的完全性を喪失するため、到達する酸素分子がROSに変換される割合が高くなる。脳卒中の場合、ミトコンドリアの寄与は決定的である。虚血性発作の最中に神経及びグリアのミトコンドリアで生成した膨大な量のROSは脳組織にとって致命的でありうる11。血管ベースでの神経可塑性の低下は、神経新生の更なる調節にとって不可欠な血管内皮細胞の栄養因子の分泌が障害された結果でもある12。血流減少の代謝的影響は、毛細血管壁を通る輸送の変化によって悪化しうる。血管の構造及び機能に影響することに加えて、老化は微小血管の可塑性も低下させるので、毛細血管はニューロン活性の増加にあまり応答しなくなる(ただし、血管新生を促進する他の因子に対する応答は保たれうる)。血管可塑性の喪失は確かに神経可塑性に影響する。なぜならば、成人の脳におけるニューロンのターンオーバーは毛細血管及びその成長にリンクしているからである。内皮細胞によって産生される栄養因子は、成人の海馬内における神経新生の重要な追加的レギュレーターであり、これらの因子の分泌障害は、高齢者の脳に影響を及ぼしうる。従って、微小血管の構造及び可塑性の年齢関連変化は、脳の老化に随伴する認知機能の低下に様々な形で寄与する。血管問題によって引き起こされる認知障害に対抗するために、問題の根底にある修正可能なリスク因子をなるべく多く削減することを目的とした対策を適用することは理にかなっている。
【0006】
主要な修正可能リスク因子は下記の通りである。
- 神経炎症酸化的ストレス:酸素フリーラジカルの増加は神経炎症活性化を招き、ニューロン機能に悪影響を及ぼす;
- 酸素と神経栄養の供給変化:ニューロンレベルでの血流低下は必然的に栄養不足と酸素欠乏を招き、ニューロンの可塑性低下をもたらす;
- コリン作動性神経伝達の変化:記憶機能及び認知機能の減退は常にアセチルコリン媒介性神経伝達の効率低下と関連する。
【0007】
従って、血管性認知障害(VCI)を全体的に減らすためには下記のことをなすべきである。
1.酸化的ストレスと神経炎症を低減する;
2.栄養及び酸素の供給を促進するために神経細動脈の血管拡張を誘導する;
3.電気信号の効率的伝達を維持するためにアセチルコリンのシナプス後蓄積を促進する。
【0008】
本発明の目的は、下記のことができる一つ又は複数の活性成分を提供することである。
1.神経炎症及び酸化的ストレスから保護する
2.認知能力及び記憶能力を改善する
3.神経可塑性を促進する。
【0009】
L-テアニンは、チャノキ(茶の木)又は緑茶としてよく知られているカメリア・シネンシス(Camelia sinensis)の葉に見出される天然物質である。L-テアニンのグルタミン酸との構造的類似性は、それがグルタミン酸受容体に対して高親和性を有することを意味する。L-テアニンはグルタミン酸アンタゴニストであり、過剰グルタミン酸からニューロンを保護するのに重要な役割を果たしうるAMPA受容体、カイニン酸受容体及びNMDA受容体などのイオンチャンネル型グルタミン酸受容体に結合する。グルタミン酸受容体での作用に加えて、動物研究から、L-テアニンは脳のドーパミン及びセロトニン濃度に影響を及ぼし、皮質ニューロンの興奮を阻害することにより抗ストレス効果を有しうることが明らかになった。最近の研究でも、L-テアニンは不安を軽減するだけでなく、ストレス反応の高い成人の血圧上昇も和らげることが示されている。グルタミン酸の拮抗機構及びストレス高血圧の低下によって、L-テアニンは、認知障害及び認知症の原因となる酸化的及び炎症性損傷からニューロンを保護することができる13-15
【0010】
センテラ・アシアティカ(Centella asiatica)(ツボクサ)は、アーユルヴェーダ医学及び中国医学(漢方薬)で一般的に使用されている薬草で、主にテルペン類からなる植物複合体(フィトコンプレックス)のおかげにより、抗酸化、抗炎症及び抗アポトーシス特性を有する。これらの特性すべては、なぜセンテラ・アシアティカが血管を強化するだけでなく、脳の可塑性にも好影響を与えるのかを説明しうる。インビボ研究で、センテラ・アシアティカは樹状突起の長さを増し、神経変性疾患に罹患したマウスのCA3海馬の神経樹状分岐を改善することも示されている5。インビトロ研究では、認知機能の改善におけるセンテラ・アシアティカ抽出物の有効性はそのコリン作動性にリンクしていることが示されており、実際、それはアルツハイマー病(AD)の原因における鍵酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の作用を阻害する。センテラは抗酸化及び抗炎症特性も有しており、神経細胞に対するインビトロ研究で、虚血性低酸素によって引き起こされた乳酸デヒドロゲナーゼの過剰産生によって損傷されたニューロン膜の完全性に対するアシアチコシド(センテラ・アシアティカの抽出成分)の保護効果が確認された。細胞上清中の乳酸デヒドロゲナーゼの増加は、細胞膜の脂質過酸化との相関を示す。結果はさらに、アシアチコシドが膜の脂質過酸化も直接阻害でき、それによって神経細胞壊死を削減し、神経細胞を保護することを裏付けた16-18
【0011】
バコパ・モンニエリ(Bacopa monnieri)(オトメアゼナ)の薬理効果を担う成分は、アルカロイド、サポニン、ステロールなどである。一部の成分(アルカロイドのブラーミン(brahmin)及びヘルペスチン(herpestin)、サポニン、D-マンニトール、酸A、モンニエリン(monnierin))はインドで40年以上前に単離されている。その他の活性成分もその後同定され、ベツリン酸(betullic acid)、スチグマステロール、ベータ-シトステロール及びいくつかのバコサイド類(bacosides)とバコサポニン類(bacosaponins)などである。認知機能に効果のある成分はバコサイドA及びBと考えられているが、後者は光学活性が異なるだけで、おそらくはバコサイドAの単離工程中に生成した人工物(アーチファクト)である。トリテルペノイドサポニン及びそれらのバコサイドは、神経インパルスの伝達を増大するバコパの能力を担っている。バコサイドは、プロテインキナーゼ活性を増大し、ニューロン合成を促進し、シナプス活性の回復に寄与し、そして神経インパルス伝達を改善することによって、損傷されたニューロンの修復を助ける。動物モデル研究の結果に基づくと、バコサイドは、海馬、前頭皮質(前頭葉)、及び線条体で抗酸化活性を発揮すると言うことができる。動物モデル及びインビトロの摘出動脈において、バコパ・モンニエリ抽出物は、内皮から一酸化窒素を放出することによって血圧を低下させ、血管平滑筋のCa2+ホメオスタシスに対する追加効果もある。静脈内注射されると、心拍数を妨害することなく収縮期及び拡張期の血圧を低下させ、摘出動脈においては血管拡張を誘導する。バコパ・モンニエリは、アセチルコリンエステラーゼを減少させることによってコリン作動性神経伝達物質の放出及びそれらのシナプス後濃度を促進するため、向知性(脳の認知能力を高める)成分と定義される19-27
【0012】
アスタキサンチンは、多くの特性の中でも、抗炎症及び抗酸化作用を有し、細胞膜及びミトコンドリアの二重膜を保護し、その機能を改善、従ってエネルギーを産生するミトコンドリアの能力を増大する28-30
【0013】
ビタミンEの生物学的作用は、その抗酸化能力によるものである。ビタミンEは、ペルオキシ脂質ラジカルを封鎖することによって多価不飽和脂肪酸(PUFA)の酸化の拡大を防止する。これは、動物組織、特に細胞膜におけるビタミンEの基本的機能で、そこではトコフェロールはリン脂質中のPUFAと会合している。
【0014】
CN 107 789 429 A(SHANDONG YZANDER MEDICAL TECHNOLOGY CO)(XP002798468)には、血管性認知症の治療に使用するための、サポニンを含有するバコパ・モンニエリの抽出物が記載されている。
【0015】
KR 2012 0051458 A(XP002798476)には、ホスファチジルセリンとアスタキサンチンをオキアミ(Krill)由来のリン脂質と組み合わせることにより、血管性認知症を予防するための組成物の製造法が記載されている。
【0016】
CN 105 287 985 A(XP002798477)には、老年性認知症の治療に使用するための組成物が記載されており、その組成物は他の活性成分の中でも特にビタミンEを含んでいる。
【0017】
JP 2000 229854 A(XP002798469)には、血管性認知症の治療及び予防に使用するための活性物質としてテアニンが記載されている。
CN 102 389 437(XP002798470)には、血管性認知症を予防及び治療するための、センテラ・アシアティカのトリテルペノイドを含有する組成物が記載されている。
【0018】
WO 03/003981 A2には、特にバコパ・モンニエラ(Bacopa monniera)、ドコサヘキサエン酸及びビタミンEを含む組成物による精神機能の向上が記載されている。
【0019】
CN 109 419 800 A(XP002798471)には、他の活性成分の中でも特にDHA及びビタミンEを含む血管性認知症の治療に使用するための組成物が記載されている。
【0020】
WO 2013/066151 A1には、特にドコサヘキサエン酸及びビタミンEを含むアルツハイマー型認知症の治療に使用するための組成物が記載されている。
Mingyuan T.らによる“クルクミンは慢性的な脳灌流低下老齢ラットにおいてABCA1発現及びアポリポタンパク質A-I-媒介コレステロール膜貫通を誘導する(Curcumin Induces ABCA1 Expression and Apolipoprotein A-I-Mediated Cholesterol Transmembrane in the Chronic Cerebral Hypoperfusion Aging rats)” The American Journal of Chinese Medicine” World Scientific US,Vol.41 ページ1027-1042-XP009519445には、脳における膜貫通コレステロール輸送を調節するクルクミンの能力を利用して脳血管疾患に対する新規の異なるアプローチとしてのクルクミンの使用が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】中国特許出願公開第107 789 429 A号
【文献】韓国特許出願公開第2012 0051458 A号
【文献】中国特許出願公開第105 287 985 A号
【文献】特開2000-229854 A号
【文献】中国特許出願公開第102 389 437号
【文献】国際特許出願公開第03/003981 A2号
【文献】中国特許出願公開第109 419 800 A号
【文献】国際特許出願公開第2013/066151 Al号
【非特許文献】
【0022】
【文献】Mingyuan T.ら, The American Journal of Chinese Medicine” World Scientific US,Vol.41 1027-1042ページ
【発明の概要】
【0023】
出願人は今回、血管性認知障害(VCI)の主要な修正可能リスク因子を低減できる、従って血管性認知症の治療においてアジュバントとして使用できる活性成分の組合せを見出した。
【0024】
そこで、本発明の目的は、血管性認知症の予防においてアジュバントとして使用するための、バコパ・モンニエリの乾燥抽出物、アスタキサンチン、ビタミンE、L-テアニン及びセンテラ・アシアティカの乾燥抽出物と、任意に、下記のパルミトイルエタノールアミド(PEA)、エレウテロコックス(eleutherococcus)(ウコギ属)、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)から選ばれる活性成分の少なくとも一つからなる前述の組合せである。前記組合せは、適切な賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせて、それ(前記組合せ)を唯一の活性成分として含有する経口製剤、好ましくは錠剤の形態で投与される。前記経口製剤中には、
・バコパ・モンニエリが70~200mg、さらに好ましくは100mgの量で存在し、バコサイドの最小力価10%、好ましくは20%を有し;
・アスタキサンチンが前記組合せ中に1mgの最小含量、好ましくは2mg存在し;
・ビタミンEが、好ましくは酢酸ビタミンとして、前記組合せ中に60mgの最大量、好ましくは30mg存在し;
・L-テアニンが、前記組合せ中に150~300mgの範囲の量、さらに好ましくは200mg存在し;
・センテラ・アシアティカが75~250mg、さらに好ましくは150mgの量で存在し、トットテルペン(tot terpen)(アシアチコシドとして)の最小力価10%を有する。
本発明の態様には、以下も含まれる。
態様1 血管性認知症の予防においてアジュバントとして使用するための、バコパ・モンニエリの乾燥抽出物、アスタキサンチン、ビタミンE、L-テアニン及びセンテラ・アシアティカの乾燥抽出物と、任意に、下記:パルミトイルエタノールアミド(PEA)、エレウテロコックス、テオブロマ・カカオから選ばれる活性成分の少なくとも一つからなる組合せであって、
前記組合せは、適切な賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせて、それ(前記組合せ)を唯一の活性成分として含有する経口製剤、好ましくは錠剤の形態で投与され、前記経口製剤中には、
・バコパ・モンニエリが70~200mg、さらに好ましくは100mgの量で含有され、バコサイドの最小力価10%、好ましくは20%を有し;
・アスタキサンチンが前記組合せ中に1mgの最小含量、好ましくは2mg含有され;
・ビタミンEが、好ましくは酢酸ビタミンとして、前記組合せ中に60mgの最大量、好ましくは30mg含有され;
・L-テアニンが、前記組合せ中に150~300mgの範囲の量、さらに好ましくは200mg含有され;
・センテラ・アシアティカが75~250mg、さらに好ましくは150mgの量で存在し、トットテルペン(アシアチコシドとして)の最小力価10%を有する
組合せ。
態様2 血管性認知障害(VCI)の主要な修正可能リスク因子の低減に使用するための、バコパ・モンニエリ、アスタキサンチン、ビタミンE、L-テアニン及びセンテラ・アシアティカと、任意に、下記のパルミトイルエタノールアミド(PEA)、エレウテロコックス、テオブロマ・カカオから選ばれる活性成分の少なくとも一つからなる組合せであって、前記組合せは、適切な賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせて、それ(前記組合せ)を唯一の活性成分として含有する経口製剤、好ましくは錠剤の形態で投与され、前記経口製剤中には、
・バコパ・モンニエリが70~200mg、さらに好ましくは100mgの量で含有され、バコサイドの最小力価10%、好ましくは20%を有し;
・アスタキサンチンが前記組合せ中に1mgの最小含量、好ましくは2mg含有され;
・ビタミンEが、好ましくは酢酸ビタミンとして、前記組合せ中に60mgの最大量、好ましくは30mg含有され;
・L-テアニンが、前記組合せ中に150~300mgの範囲の量、さらに好ましくは200mg含有され;
・センテラ・アシアティカが75~250mg、さらに好ましくは150mgの量で存在し、トットテルペン(アシアチコシドとして)の最小力価10%を有する
組合せ。
態様3 前記主要なリスク因子が、酸化的ストレスによる神経炎症、酸素供給の変化と神経栄養の変化、アセチルコリンによって媒介される神経伝達の変化である、態様2に記載の使用のための組合せ。
態様4 バコパ・モンニエリの乾燥抽出物、アスタキサンチン、ビタミンE、L-テアニン及びセンテラ・アシアティカの乾燥抽出物からなる、態様1~3のいずれかに記載の使用のための組合せ。
態様5 前記経口製剤が栄養補助食品である、態様1~4のいずれかに記載の使用のための組合せ。
態様6 前記経口製剤、好ましくは錠剤が1日1回又は2回投与される、態様1~5のいずれかに記載の使用のための経口用組合せ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、軽度VCIを有する全35人の患者、うち20人は対照群を表し、残りの15人はサプリメント(その組成は実施例1に示されている)を錠剤として1日1回投与された処置群を表す、に対して実施されたMoCA試験(モントリオール認知評価試験)のT0時点、すなわち研究開始時と3ヶ月後のT1時点の結果を示す。
図2図2は、サプリメント(その組成は実施例に示されている)を錠剤として1日1回摂取した14人の患者における、研究開始時のT0時点と3ヶ月後のT1時点の高齢者うつ尺度(GDS)試験の結果を示す。
図3図3は、サプリメント(その組成は実施例に示されている)を錠剤として1日1回摂取した9人の患者に対して実施されたトレイルメイキングA(TMTA)テストの研究開始時のT0時点と3ヶ月後のT1時点の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的のために、“含む”の定義は、そのような定義の後に明示的に掲載されているものに加えて追加の成分がそのような定義の後にある可能性を排除しない。これに対して、“からなる”の定義は、そのような定義の後に明示的に掲載されているものに加えて追加の成分がある可能性を排除する。
【0027】
本発明の目的に使用するための組合せの好適な解(solution)によれば、前記組合せは、前述の4つの活性物質、バコパ・モンニエリ、アスタキサンチン、ビタミンE、L-テアニン及びセンテラ・アシアティカの乾燥抽出物からなる。
【0028】
別の特に好適な解によれば、前述の活性成分に加えて、本発明に従って使用するための組合せは、前述の4つの活性成分だけでなく、任意に、下記のパルミトイルエタノールアミド(PEA)、エレウテロコックス、テオブロマ・カカオから選ばれる活性成分の少なくとも一つからなる。
【0029】
当該組合せは、本発明に従って使用するために経口製剤の形態で投与され、該経口製剤は、適切な賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせて、それ(組合せ)を唯一の活性成分として含有する。
【0030】
さらに好ましくは、前記経口製剤は栄養補助食品(フードサプリメント)である。
なおさらに好ましくは、前記経口製剤又は栄養補助食品は錠剤形である。
本発明に従って使用するための好ましくは錠剤形の経口製剤は、前記組合せを唯一の活性成分として含有し、前記組合せ中に、
・バコパ・モンニエリの乾燥抽出物が70~200mg、さらに好ましくは100mgの量で含有され、バコサイドの最小力価10%、好ましくは20%を有し;
・アスタキサンチンが前記組合せ中に1mgの最小含量、好ましくは5mg含有され;
・ビタミンEが、好ましくは酢酸ビタミンEとして、前記組合せ中に60mgの最大量、好ましくは30mg含有され;
・L-テアニンが、前記組合せ中に150~300mgの範囲の量、さらに好ましくは200mg含有され;
・センテラ・アシアティカの乾燥抽出物が75~250mg、さらに好ましくは150mgの量、トットテルペン(アシアチコシドとして)の最小力価10%を有する。
【0031】
アスタキサンチンは、好ましくは、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis Flotow)藻の乾燥抽出物に含有され、最小アスタキサンチン力価は2%、さらに好ましくは5%である。
【0032】
好ましくは、本発明に従って使用するための前記組合せを唯一の活性成分として含有する錠剤は、1日に1回又は2回投与される。
本発明に従って使用するための前記組合せを唯一の活性成分として含有する錠剤の形態の栄養補助食品の組成を以下の実施例1に例示目的のために示す。実施例2には、VCIに対する、従って血管性認知症の予防における本錠剤(その組成は実施例1に報告されている)の有効性を示す臨床研究を示す。
【実施例
【0033】
実施例1-被覆錠剤の形態の栄養補助食品の配合表
【0034】
【表1】
【0035】
実施例2-臨床研究
本研究の目的は、内服用錠剤の形態で1日1回投与された本発明の目的のサプリメントが、血管性認知障害(VCI)を有する被験者の認知機能及び記憶を促進して、神経損傷の悪化を防止できるかどうかを検証することである。
【0036】
試験患者数及び選択/除外基準
血管障害(小血管疾患、動脈性高血圧、アテローム性動脈硬化症、微小脳卒中又は軽度脳卒中など)及び/又は代謝性疾患との併存疾患に基づいて仮定できる35人のVCI患者のデータを、生のMoCAテストスコア15~24(13年未満の教育で1ポイント加点)ならびに認知機能及び記憶の変化を証明する介護者とのインタビューと共に分析する。患者は男女両性で60歳以上である。
【0037】
35人の患者のうち、15人は本発明の目的のサプリメントを摂取した群に属し、20人の患者はサプリメントを摂取しなかった対照群に属する。
脳卒中及び脳出血で入院歴のある全患者、認知障害を説明するに足るその他の原発性神経障害、例えば、多発性硬化症、パーキンソン病、脳炎及びアルツハイマー病を有する患者、十分に重篤な状態、例えば、脳腫瘍及び大鬱を有する患者、薬物又はアルコール乱用/依存の積極的診断を受けている患者、腎疾患を有する患者、認知障害及び認知症を管理するために既に投薬治療を受けている患者、ベンゾジアゼピン及び神経弛緩薬で治療されている患者、製品の成分の少なくとも一つに対する不耐性(過敏症)が知られている又は疑われる患者は試験から除外した。
【0038】
用量:1錠/日(満腹時)
連続3ヶ月間にわたる観察データ
- T0 → ベースライン
- T1 → 3ヶ月間の観察後
本発明の目的のサプリメントの有効性を、処置群と非処置対照群のMoCA質問票の分析を通じて評価した。
【0039】
- モントリオール認知評価尺度(MoCA):かなり手軽なツールで、多くの場合、血管性の軽度認知障害をスクリーニングするために使用されている。注意力、集中力、実行機能、記憶、言語、視空間能力(視覚構成スキル)、抽象、計算、オリエンテーションの様々な機能領域の検証が可能である。スコア範囲:0~30ポイント(0は最悪のケース、30は認知障害(CI)なし)
- GDS試験(高齢者うつ尺度):高齢被験者の抑うつ気分を測定する質問票。最小“ゼロ”(障害なし)から最大“30”(最悪の障害)の範囲のスコアを有する。従って、うつの重症度は次のように表される:0~10 抑うつなし、11~16 軽度/中等度の抑うつ、17以上 重度の抑うつ。
【0040】
- トレイルメイキングA(TMT-A)テストは、視覚運動型作業における空間計画能力を評価する。被験者は、鉛筆で数字の1から25を順につなぐ。作業はなるべく早く完了する。間違いは試験者によって直ちに訂正される。
【0041】
結果
3つの試験で得られた結果をそれぞれ図1、2及び3に示す。
図1(MoCA試験)は、本発明の目的サプリメントで処置された群のスコアが最初の3ヶ月間で19から21に上昇していることを示す。これらのデータは、四半期における本発明のサプリメントの影響作用を示唆している。これに対し、対照群ではわずかな悪化が見られる。
【0042】
図2:14人の患者に対して実施されたGDS試験は、気分障害が軽度/中等度(12)からなし(10)に変化したことを示している。
図3:9人の患者に対して実施されたTMT-Aテストは、T0における平均実行時間81秒がおよそ70秒に減少したことを示している。ここでも、本発明の目的サプリメントは四半期でプラスに作用している。
【0043】
結論
具体的に、MoCA試験(注意力、集中力、実行機能、記憶、言語、視空間能力、抽象、計算、オリエンテーション)を通じて調査された全体的記憶(global memory)の状態についての試験に対する応答が改善し、また視覚運動型作業における空間計画能力も改善する(TMT-A)。被験者は精神的/体液性(humoral)幸福の知覚が高い(GDS)。
【0044】
参考文献
【0045】
【表2-1】
【0046】
【表2-2】
【0047】
【表2-3】
図1
図2
図3