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特許7677976T細胞アクティベーターとして有用な置換ヘテロアリール化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】T細胞アクティベーターとして有用な置換ヘテロアリール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20250508BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250508BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20250508BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20250508BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250508BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250508BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250508BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
C07D471/04 112
C07D471/04 CSP
A61K31/496
C07D471/04 116
A61K31/519 ZNA
C07D519/00 301
C07D519/00 311
A61K31/5025
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022538813
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020066510
(87)【国際公開番号】W WO2021133752
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】201911053558
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ベラパルチ,アッペンダー
(72)【発明者】
【氏名】ダルネ,チェタン パドマカル
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,リチャード イー
(72)【発明者】
【氏名】ジャラガム,プラサダ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ウォリアー,ジャヤクマール サンカラ
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/071550(WO,A1)
【文献】特開昭64-061468(JP,A)
【文献】DATABASE STN REGISTRY file,[online], RN 2324027-31-6, Entered STN: 04 Jun 2019, RN 2324040-93-7, Entered STN: 04 Jun 2019, RN 896634-20-1, Entered STN: 28 Jul 2006, RN 877808-10-1, Entered STN: 23 Mar 2006, RN 877647-18-2, Entered STN: 22 Mar 2006, RN 874463-49-7, Entered STN: 17 Feb 2006, RN 874463-50-0, Entered STN: 17 Feb 2006, RN 862486-67-7, Entered STN: 06 Sep 2005, RN 862487-66-9, Entered STN: 06 Sep 2005, RN 849918-13-4, Entered STN: 06 May 2005 等、 [retrieved on 31 Oct. 2024]
【文献】Biochemical Pharmacology,2000年,Vol. 59,No. 7,pp. 763-772
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中:
XがNであり、YがCR であるか;または
XがNであり、YがNであり;
は-CNであり;
は-CH であり;
はHであり;
はフェニル、チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が、0~2個のR 4a で置換され;
各R 4a は、独立して、F、Br、-OH、-CN、-CH 、-CF 、-OCH 、-OCF 、またはフルオロフェニルであり;
各R は、独立して、水素、-CH 、または-CH CH であり
各R はHであり;および
mは1、2、または3である]
で示される化合物またはその塩。
【請求項2】
XがNであり;YがCRである、請求項に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
XがNであり;YがNである、請求項に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
mが1または2である、請求項に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
構造が
【化2】
より選択される、請求項に記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
構造が
【化3】
より選択される、請求項に記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
以下、
4-((2S,5R)-2,5-ジエチル-4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(1);
4-((2S,5R)-2,5-ジエチル-4-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(2);
4-((2S,5R)-5-エチル-4-(3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(3);
4-((2S,5R)-5-エチル-2-メチル-4-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(4);
(S)-5-メチル-8-(2-メチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(5);
8-((2S,5R)-4-(6-フルオロキノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(6);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(チエノ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(7);
8-((2S,5R)-4-(イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(8);
(S)-5-メチル-8-(2-メチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(9);
8-((2S,5R)-4-(8-ブロモ-6-メチルキノリン-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(10);
8-((2S,5R)-4-(イソキノリン-1-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(11);
8-((2S,5R)-4-(4-ブロモイソキノリン-1-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(12);
8-((2S,5R)-4-(5-フルオロキノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(13);
8-((2S,5R)-4-(3-ブロモピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(14);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(7-(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(15);
8-((2S,5R)-4-(5,7-ジフルオロキノリン-4-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(16);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(キノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(17);
8-((2S,5R)-4-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(18);
8-((2S,5R)-4-(イソキノリン-4-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(19);
8-((2S,5R)-4-(ベンゾ[d]オキサゾール-7-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(20);
8-((2S,5R)-4-(3-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメトキシ)キノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(21);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(2-メチルキノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(22);
8-((2S,5R)-4-(6-フルオロキノリン-4-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(23);
8-((2S,5R)-4-(3-メトキシ-6-メチルキノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(24);
8-((2S,5R)-4-(6-フルオロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(25);
8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(26);または
8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(27)
である化合物またはその塩。
【請求項8】
請求項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項9】
がんまたはウイルス感染症の治療のための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項10】
がんが、結腸がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、腎臓がん、頭頸部がん、リンパ腫、白血病および黒色腫から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ジアシルグリセロールキナーゼアルファ(DGKα)およびジアシルグリセロールキナーゼゼータ(DGKζ)から選択される、少なくとも1つのジアシルグリセロールキナーゼの活性を阻害するための、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年12月23日付け出願のインド仮出願番号第201911053558号の優先権を主張するものであって、その全てを参照により本明細書に組み込むものである。
【0002】
(本発明の説明)
本発明は、一般に、T細胞を活性化させ、T細胞増殖を促進、および/または抗腫瘍活性を発現する置換ヘテロアリール化合物に関する。本明細書で提供されるものには、置換ヘテロアリール化合物、その化合物を含む組成物、およびそれらの使用方法がある。本発明はさらに、増殖性障害(例えば、がん、およびウイルス感染症)の治療に有用な本発明の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトのがんは、多数の遺伝的およびエピジェネティックな変化を包含し、免疫系が認識する可能性があるネオアンチゲンを生産する(Sjoblomら、(2006) Science 314:268-74)。TおよびBリンパ球から成る適応免疫系は、強力な抗がん作用を示す潜在力を有し、多様な腫瘍抗原に応答する、広範囲の能力および高い特異性を備えている。さらにこの免疫系は、相当な柔軟性および記憶成分を有する。適応免疫系のこれら全ての特性を上手く利用することで、あらゆるがん治療方法の中で免疫療法が特徴的なものになる。しかしながら、がんに対する内因性免疫応答は前臨床のモデルおよび患者において観測されてはいるが、この応答は効果が無く、確立されたがんは「自己」として見なされ、免疫系に耐容性を示している。この耐容状態がもたらされることで、腫瘍が複数の異なるメカニズムを利用し、積極的に抗腫瘍免疫を打ち破り得る。これらのメカニズムには、機能不全なT細胞のシグナル伝達(Mizoguchiら、(1992) Science 258:1795-98)、抑制的制御性細胞(Facciabeneら、(2012) Cancer Res. 72:2162-71)、および内因性「免疫チェックポイント」の利用が挙げられ、これらは適応免疫応答の強度を低下させ、腫瘍による副次的な損傷から正常組織を保護して免疫破壊を逃れる機能がある(Topalianら、(2012) Curr. Opin. Immunol. 24:1-6; Mellmanら、(2011) Nature 480:480-489)。
【0004】
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は、ジアシルグリセロールのホスファチジン酸への変換を仲介し、それによってTCRシグナル伝達経路を介して伝搬するT細胞の機能を停止させる脂質キナーゼである。それ故、DGKは細胞内のチェックポイントとして機能し、DGKを阻害することで、T細胞のシグナル伝達経路およびT細胞活性化を促進することが期待されている。これを支持する証拠として、DGKαまたはDGKζのいずれかのノックアウトマウスモデルでは過剰反応性T細胞表現型および改良抗腫瘍免疫活性を示すことが挙げられる(Riese M.J.ら, Journal of Biological Chemistry, (2011) 7: 5254-5265; Zha Yら, Nature Immunology, (2006) 12:1343; Olenchock B.A.ら, (2006) 11: 1174-81)。さらに、ヒト腎細胞がん患者から摘出された腫瘍湿潤リンパ球は、DGKαを過剰発現しており、T細胞の機能の阻害することが確認されている(Prinz, P.U.ら, J Immunology (2012) 12:5990-6000)。それ故、DGKαおよびDGKζはがん免疫療法での標的として見なされている(Riese M.J.ら, Front Cell Dev Biol. (2016) 4: 108; Chen, S.S.ら, Front Cell Dev Biol. (2016) 4: 130; Avila-Flores, A.ら, Immunology and Cell Biology (2017) 95: 549-563; Noessner, E., Front Cell Dev Biol. (2017) 5: 16; Krishna, S.,ら, Front Immunology (2013) 4:178; Jing, W.ら, Cancer Research (2017) 77: 5676-5686)。
【0005】
DGKαおよびDGKζの一方または両方の阻害剤として有用な化合物が必要とされている。さらに、DGKαおよびDGKζの一方または両方の阻害剤として有用な、その他のジアシルグリセロールキナーゼ、タンパク質キナーゼ、および/またはその他の脂質キナーゼに対する選択性を有する化合物が必要とされている。
【0006】
従って、T細胞活性を修復し、抗原閾値を引き下げ、抗腫瘍機能を強化し、/または1つ以上の内因性免疫チェックポイント(例えばPD-1、LAG-3およびTGFβ)の抑制効果を克服するのに安全で有効な薬剤は、増殖性障害(例えばがん、ならびにウイルス感染)の患者の治療に重要な付加である。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、DGKαおよびDGKζの一方または両方の阻害剤としての活性を有する化合物を見出した。さらに本発明者らは、DGKαおよびDGKζの一方または両方の阻害剤としての活性を有し、その他のジアシルグリセロールキナーゼ、タンパク質キナーゼ、および/またはその他の脂質キナーゼに対する選択性を有する化合物を見出した。これらの化合物は、望ましい安定性、バイオアベイラビリティ、治療指数、およびそれらのドラッグアビリティに重要な毒性値を有する、有用な医薬品を提供する。
【0008】
本発明は、DGKα、DGKζ、またはDGKαおよびDGKζの両方の阻害剤として有用である、式(I)の置換ヘテロアリール化合物、あるいはその塩およびプロドラッグを提供する。
【0009】
また本発明は、式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩、ならびに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
また本発明は、DGKα、DGKζ、またはDGKαおよびDGKζの両方の活性に関する疾患または障害の治療方法であって、哺乳動物の患者に式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩を投与することを特徴とする、方法を提供する。
【0011】
また本発明は、式(I)の化合物および/またはその塩を製造するための方法および中間体を提供する。
【0012】
また本発明は、治療に用いる式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0013】
また本発明は、増殖性障害(例えばがんおよびウイルス感染)の治療剤の製造のための、式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩の使用を提供する。
【0014】
式(I)の化合物および式(I)の化合物を含む組成物は、ウイルス感染および様々な増殖性障害(例えばがん)の治療、予防、または治癒に用いられ得る。これらの化合物を含む医薬組成物は、様々な治療分野(例えばウイルス感染およびがん)における疾患または障害の治療、予防、または進行の抑制に有用である。
【0015】
上記およびその他の本発明の特徴は、開示に伴い範囲を広げて記載される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様は、式(I):
【化1】
[式中:
XはCRまたはNであり;
YはCRまたはNであり;
は、H、F、Cl、Br、-CN、C1-3アルキル(0~4個のR1aで置換される)、C3-4シクロアルキル(0~4個のR1aで置換される)、C1-3アルコキシ(0~4個のR1aで置換される)、-C(O)NR、-NR、-S(O)、または-P(O)Rであり;
各R1aは、独立して、F、Cl、-CN、-OH、-OCH、または-NRであり;
各Rは、独立して、HまたはC1-3アルキルであり;
各Rは、独立して、C3-4シクロアルキルまたはC1-3アルキル(0~4個のR1aで置換される)であり;
は、H、C1-3アルキル(0~4個のR2aで置換される)、C2-3アルケニル(0~4個のR2aで置換される)、またはC3-4シクロアルキル(0~4個のR2aで置換される)であり;
各R2aは、独立して、F、Cl、-CN、-OH、-O(C1-2アルキル)、C3-4シクロアルキル、C3-4アルケニル、またはC3-4アルキニルであり;
は、H、F、Cl、Br、-CN、C1-3アルキル、C1-2フルオロアルキル、C3-4シクロアルキル、C3-4フルオロシクロアルキル、-NO、またはピリジニル(0~2個のR3aで置換される)であり;
各R3aは、ハロ、-CN、C1-3アルキル、またはC1-3アルコキシであり;
は、C6-10アリール、または5-ないし14-員のヘテロアリールであり、各々が、0~4個のR4aで置換されており;
各R4aは、独立して、ハロ、-CN、-OH、C1-6アルキル、-(CH1-2O(C1-3アルキル)、C1-4アルコキシ、-O(CH)1-3O(C1-3アルキル)、-O(CH)1-3NR、-OCHCH=CH、-OCHC≡CH、-C(O)(C1-4アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-4アルキル)、-C(O)NH、-C(O)NH(C1-4アルキル)、-C(O)N(C1-4アルキル)、-NR、-NRS(O)(C1-3アルキル)、-NRC(O)(C1-3アルキル)、-NRC(O)O(C1-4アルキル)、-P(O)(C1-3アルキル)、-S(O)(C1-3アルキル)、-(CH0-34b、-O(CH0-34b、-NR4b、または-C(O)R4bであり、ここで該アルキルおよびアルコキシは、各々、0~6個のR4cで置換され;
4bは、C3-7シクロアルキル、4-ないし7-員のヘテロシクリル、フェニル、または5-もしくは6-員のヘテロアリールであり、各々が、0~4個のR4dで置換され;
各R4cは、独立して、ハロ、-CN、-OH、C1-3アルコキシ、-O(C1-2フルオロアルキル)、または-NRであり;
各R4dは、独立して、ハロ、-CN、-OH、C1-3アルキル、C1-2フルオロアルキル、C1-3アルコキシ、または-NRであり;
各Rは、独立して、HまたはC1-2アルキルであり;
各Rは、独立して、F、Cl、-CN、-OH、C1-6アルキル(0~4個のRで置換される)、C1-3アルコキシ(0~4個のRで置換される)、C2-4アルケニル(0~4個のRで置換される)、C2-4アルキニル(0~4個のRで置換される)、C3-4シクロアルキル(0~4個のRで置換される)、フェニル(0~4個のRで置換される)、オキサジアゾリル(0~3個のRで置換される)、ピリジニル(0~4個のRで置換される)、-(CH1-2(0~4個のRで置換されるヘテロシクリル)、-(CH1-2NRC(O)(C1-4アルキル)、-(CH1-2NRC(O)O(C1-4アルキル)、-(CH1-2NRS(O)(C1-4アルキル)、-C(O)(C1-4アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-4アルキル)、-C(O)O(C3-4シクロアルキル)、-C(O)NR、または-C(O)NR(C3-4シクロアルキル)であるか、あるいは2個のRが同じ炭素原子に結合して=Oを形成し;
各Rは、独立して、F、Cl、-CN、-OH、C1-3アルコキシ、C1-3フルオロアルコキシ、-O(CH1-2O(C1-2アルキル)、C3-5シクロアルキル、または-NRであり;
各Rは、H、F、Cl、-CN、-CH、-CHF、-CHF、-CF、または-OCHであり;
mは0、1、2、または3であり;および
nは0、1、または2である]
で示される、少なくとも1の化合物、またはその塩を提供する。
【0017】
1の実施態様において、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRであり;およびYがCRまたはNである、化合物またはその塩が提供される。この実施態様の化合物は構造式(II):
【化2】
で示される。
【0018】
1の実施態様において、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;およびYがCRである、化合物またはその塩が提供される。この実施態様の化合物は、構造式(III):
【化3】
で示される。
【0019】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRであり、YがCRである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様の化合物は、構造式(IV):
【化4】
で示される。この実施態様には、XがCHである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、各RがHである、化合物も含まれる。
【0020】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがNであり、YがCRである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様の化合物は構造式(V):
【化5】
で示される。この実施態様には、各RがHである、化合物が含まれる。
【0021】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRであり、YがNである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様の化合物は構造式(VI):
【化6】
で示される。この実施態様には、XがCHである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、各RがHである、化合物が含まれる。
【0022】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがNであり、YがNである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様の化合物は構造式(VII):
【化7】
で示される。この実施態様には、各RがHである、化合物が含まれる。
【0023】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、ここで:
が、H、F、Cl、Br、-CN、C1-3アルキル(0~4個のR1aで置換される)、シクロプロピル(0~3個のR1aで置換される)、C1-3アルコキシ(0~3個のR1aで置換される)、-C(O)NR、-NR、-S(O)CH、または-P(O)(CHであり;
各R1aが、独立して、F、Cl、または-CNであり;
各Rが、独立して、HまたはC1-3アルキルであり;
が、H、C1-2アルキル(0~2個のR2aで置換される)、またはC2-3アルケニル(0~2個のR2aで置換される)であり;
各R2aが、独立して、F、Cl、-CN、-OH、-O(C1-2アルキル)、シクロプロピル、C3-4アルケニル、またはC3-4アルキニルであり;
が、H、F、Cl、Br、-CN、C1-2アルキル、C1-2フルオロアルキル、C3-4シクロアルキル、-NO、またはピリジニル(0~2個のR3aで置換される)であり;
が、フェニル、ピロリル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、インダゾリル、ナフタレニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が、0~3個のR4aで置換され;
各R4aが、独立して、F、Cl、Br、-CN、-OH、C1-4アルキル -(CH1-2O(C1-3アルキル)、C1-3アルコキシ、-O(CH)1-2NR、-C(O)(C1-3アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-3アルキル)、-C(O)NH、-C(O)NH(C1-3アルキル)、-C(O)N(C1-3アルキル)、-NR、-NRS(O)(C1-2アルキル)、-NRC(O)(C1-2アルキル)、-NRC(O)O(C1-3アルキル)、-S(O)(C1-2アルキル)、-(CH0-34b、-O(CH0-34b、-NR4b、または-C(O)R4bであり、ここで該アルキルおよびアルコキシの各々が、0~6個のR4cで置換され;
4bが、C3-6シクロアルキル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、フェニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはトリアジニルであり、各々が、0~3個のR4dで置換され;
各R4cが、独立して、ハロ、-CN、-OH、-O(C1-2アルキル)、-O(C1-2フルオロアルキル)、または-NRであり;
各R4dが、独立して、F、Cl、Br、-CN、-OH、C1-2アルキル、C1-2フルオロアルキル、C1-2アルコキシ、または-NRであり;
各Rが、独立して、F、-CN、-OH、C1-5アルキル(0~4個のRで置換される)、C1-2アルコキシ(0~3個のRで置換される)、C2-3アルケニル(0~4個のRで置換される)、C2-3アルキニル(0~4個のRで置換される)、C3-4シクロアルキル(0~4個のRで置換される)、フェニル(0~3個のRで置換される)、オキサジアゾリル(0~3個のRで置換される)、ピリジニル(0~3個のRで置換される)、-(CH1-2(0~4個のRで置換されるヘテロシクリル)、-(CH1-2NRC(O)(C1-4アルキル)、-(CH1-2NRC(O)O(C1-4アルキル)、-(CH1-2NRS(O)(C1-4アルキル)、-C(O)(C1-4アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-4アルキル)、-C(O)O(C3-4シクロアルキル)、-C(O)NR、または-C(O)NR(C3-4シクロアルキル)であるか、あるいは2個のRが同じ炭素原子に結合して=Oを形成し;
各RがH、F、または-CHであり;および
mが0、1、2、または3である
化合物またはその塩を提供する。
【0024】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、ここで:
XがNであり、YがCRであるか;または
XがNであり、YがNであり;
が-CNであり;
が-CHであり;
がHであり;
が、フェニル、チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が、0~2個のR4aで置換され;
各R4aが、独立して、F、Br、-OH、-CN、-CH、-CF、-OCH、-OCF、またはフルオロフェニルであり;
各Rが、独立して、水素、-CH、または-CHCHであり;および
各RがHである
化合物またはその塩を提供する。
【0025】
1の実施態様において、式(I)の化合物またはその塩であって、RがH、F、Cl、Br、-CN、C1-3アルキル(0~4個のR1aで置換される)、シクロプロピル(0~3個のR1aで置換される)、C1-3アルコキシ(0~3個のR1aで置換される)、-C(O)NR、-NR、-S(O)CH、または-P(O)(CHである、化合物またはその塩が提供される。この実施態様には、RがH、F、Cl、Br、-CN、-CH、-CHF、-CF、シクロプロピル、または-OCHである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、RがH、F、-CN、または-OCHである、化合物も含まれる。加えて、この実施態様には、Rが-CNである、化合物が含まれる。
【0026】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、各R1aが、独立して、F、Cl、-CN、-OH、または-OCHである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、各R1aが、独立して、F、Cl、-CN、または-OCHである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、各R1aが、独立して、F、Cl、または-CNである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、各Rが、独立して、HまたはC1-2アルキルである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、各Rが、独立して、Hまたは-CHである、化合物が含まれる。
【0027】
1の実施態様において、式(I)の化合物またはその塩であって、RがH、C1-2アルキル(0~2個のR2aで置換される)、またはC2-3アルケニル(0~2個のR2aで置換される)である、化合物またはその塩が提供される。この実施態様には、RがH、-CH、-CHCN、-CHCHF、または-CHCH=CHである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、RがH、-CH、-CHCN、または-CHCHFである、化合物が含まれる。加えて、この実施態様には、Rが-CHである、化合物が含まれる。
【0028】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、各R2aが、独立して、F、Cl、-CN、-OH、-O(C1-2アルキル)、シクロプロピル、C3-4アルケニル、またはC3-4アルキニルである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、各R2aが、独立して、F、Cl、-CN、-OH、-OCH、またはシクロプロピルである、化合物が含まれる。
【0029】
1の実施態様において、式(I)の化合物またはその塩であって、RがH、F、Cl、Br、-CN、C1-2アルキル、C1-2フルオロアルキル、C3-4シクロアルキル、-NO、またはピリジニル(0~2個のR3aで置換される)である、化合物またはその塩が提供される。この実施態様には、RがH、-CN、-CHOH、-C(O)OCHCH、-NO、またはピリジニルである、化合物が含まれる。この実施態様には、RがH、-CN、-CHOH、または-NOである、化合物も含まれる。加えて、この実施態様には、RがHである、化合物が含まれる。
【0030】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;RがClであり;およびRが-CNである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0031】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;RがBrであり;およびRが-CNである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;およびRがHである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0032】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;RがFであり;およびRが-NOである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-OCHであり;Rが-CNである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0033】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;Rが-CNである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;Rが-NOである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0034】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-C(O)NHであり;RがHである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;Rが-CHである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0035】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;およびRがFである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;RがClである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0036】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;Rが-CNであり;RがBrである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
【0037】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、XがCRまたはNであり;YがCRであり;RがClであり;RがHである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、XがCRであり、YがCRである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、XがNであり、YがCRである、化合物が含まれる。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、Rがフェニル、ピロリル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、インダゾリル、ナフタレニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が0~3個のR4aで置換される、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、Rがフェニル、チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が、0~2個のR4aで置換される、化合物が含まれる。
【0038】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、Rがフェニル、ピロリル、チアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、インダゾリル、ナフタレニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が0~3個のR4aで置換され;各R4aが、独立して、F、Cl、Br、-CN、-OH、C1-4アルキル、-(CH1-2O(C1-3アルキル)、C1-3アルコキシ、-O(CH)1-2NR、-C(O)(C1-3アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-3アルキル)、-C(O)NH、-C(O)NH(C1-3アルキル)、-C(O)N(C1-3アルキル)、-NR、-NRS(O)(C1-2アルキル)、-NRC(O)(C1-2アルキル)、-NRC(O)O(C1-3アルキル)、-S(O)(C1-2アルキル)、-(CH0-34b、-O(CH0-34b、-NR4b、または-C(O)R4bであり、該アルキルおよびアルコキシの各々が0~6個のR4cで置換され;R4bがC3-6シクロアルキル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、フェニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはトリアジニルであり、各々が0~3個のR4dで置換され;各R4cが、独立して、ハロ、-CN、-OH、-O(C1-2アルキル)、-O(C1-2フルオロアルキル)、または-NRであり;各R4dが、独立して、F、Cl、Br、-CN、-OH、C1-2アルキル、C1-2フルオロアルキル、C1-2アルコキシ、または-NRであり;各Rが、独立して、HまたはC1-3アルキルである、化合物またはその塩を提供する。
【0039】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、Rがフェニル、チアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾ[d]オキサゾリル、ベンゾ[d]チアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、またはチエノ[3,2-b]ピリジニルであり、各々が0~2個のR4aで置換され;各R4aが、独立して、F、Br、-OH、-CN、-CH、-CF、-OCH、-OCF、またはフルオロフェニルである、化合物またはその塩を提供する。
【0040】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、RがC6-10アリール(0~4個のR4aで置換される)である、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、Rがフェニル(0~3個のR4aで置換される)である、化合物が含まれる。また、この実施態様には、Rがフェニル(0~2個のR4aで置換される)である、化合物が含まれる。
【0041】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、Rが5-ないし14-員のヘテロアリール(0~4個のR4aで置換される)である、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、Rが5-ないし6-員のヘテロアリール(0~4個のR4aで置換される)である、化合物が含まれる。この実施態様には、Rが9-ないし10-員のヘテロアリールである、化合物も含まれる。
【0042】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、各R4aが、独立して、F、Cl、Br、-CN、-OH、C1-4アルキル -(CH1-2O(C1-3アルキル)、C1-3アルコキシ、-O(CH)1-2NR、-C(O)(C1-3アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-3アルキル)、-C(O)NH、-C(O)NH(C1-3アルキル)、-C(O)N(C1-3アルキル)、-NR、-NRS(O)(C1-2アルキル)、-NRC(O)(C1-2アルキル)、-NRC(O)O(C1-3アルキル)、-S(O)(C1-2アルキル)、-(CH0-34b、-O(CH0-34b、-NR4b、または-C(O)R4bであり、ここで該アルキルおよびアルコキシの各々が、0~6個のR4cで置換され;R4bがC3-6シクロアルキル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、フェニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはトリアジニルであり、各々が、0~3個のR4dで置換され;各R4cが、独立して、ハロ、-CN、-OH、-O(C1-2アルキル)、-O(C1-2フルオロアルキル)、または-NRであり;各R4dが、独立して、F、Cl、Br、-CN、-OH、C1-2アルキル、C1-2フルオロアルキル、C1-2アルコキシ、または-NRであり;各Rが、独立して、HまたはC1-2アルキルである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、各R4aが、独立して、F、Br、-OH、-CN、-CH、-CF、-OCH、-OCF、またはフルオロフェニルである、化合物が含まれる。
【0043】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、mが1、2または3である、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、mが0、1または2である、化合物が含まれる。また、この実施態様には、mが1または2である、化合物が含まれる。
【0044】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、mが1、2または3であり;各Rが、独立して、F、-CN、-OH、C1-5アルキル(0~4個のRで置換される)、C1-2アルコキシ(0~3個のRで置換される)、C2-3アルケニル(0~4個のRで置換される)、C2-3アルキニル(0~4個のRで置換される)、C3-4シクロアルキル(0~4個のRで置換される)、フェニル(0~3個のRで置換される)、オキサジアゾリル(0~3個のRで置換される)、ピリジニル(0~3個のRで置換される)、-(CH1-2(0~4個のRで置換されるヘテロシクリル)、-(CH1-2NRC(O)(C1-4アルキル)、-(CH1-2NRC(O)O(C1-4アルキル)、-(CH1-2NRS(O)(C1-4アルキル)、-C(O)(C1-4アルキル)、-C(O)OH、-C(O)O(C1-4アルキル)、-C(O)O(C3-4シクロアルキル)、-C(O)NR、または-C(O)NR(C3-4シクロアルキル)である、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、各Rが、独立して、水素、F、-CN、-OH、C1-2アルキル(0~4個のRで置換される)、またはC1-2アルコキシである、化合物が含まれる。また、この実施態様には、各Rが、独立して、水素、F、-OH、C1-2アルキル、またはC1-2アルコキシである、化合物が含まれる。加えて、この実施態様には、各Rが、独立して、水素、-CH、または-CHCHである、化合物が含まれる。
【0045】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、mが1または2であり;各Rが、独立して、水素、-CH、または-CHCHである、化合物またはその塩を提供する。
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、mが1であり;Rが水素、F、-OH、C1-2アルキル、またはC1-2アルコキシである、化合物またはその塩を提供する。
【0046】
1の実施態様は、
【化8】
より選択される構造を有する、式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0047】
1の実施態様は、
【化9】
より選択される構造を有する、式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0048】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、各RがH、F、または-CHである、化合物またはその塩を提供する。この実施態様には、RがHである、化合物が含まれる。
【0049】
1の実施態様は、式(I)の化合物またはその塩であって、
4-((2S,5R)-2,5-ジエチル-4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(1);
4-((2S,5R)-2,5-ジエチル-4-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(2);
4-((2S,5R)-5-エチル-4-(3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(3);
4-((2S,5R)-5-エチル-2-メチル-4-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(4);
(S)-5-メチル-8-(2-メチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(5);
8-((2S,5R)-4-(6-フルオロキノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(6);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(チエノ[3,2-b]ピリジン-3-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(7);
8-((2S,5R)-4-(イミダゾ[1,2-b]ピリダジン-3-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(8);
(S)-5-メチル-8-(2-メチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(9);
8-((2S,5R)-4-(8-ブロモ-6-メチルキノリン-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(10);
8-((2S,5R)-4-(イソキノリン-1-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(11);
8-((2S,5R)-4-(4-ブロモイソキノリン-1-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(12);
8-((2S,5R)-4-(5-フルオロキノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(13);
8-((2S,5R)-4-(3-ブロモピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(14);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(7-(トリフルオロメチル)キノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(15);
8-((2S,5R)-4-(5,7-ジフルオロキノリン-4-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(16);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(キノリン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(17);
8-((2S,5R)-4-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(18);
8-((2S,5R)-4-(イソキノリン-4-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(19);
8-((2S,5R)-4-(ベンゾ[d]オキサゾール-7-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(20);
8-((2S,5R)-4-(3-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメトキシ)キノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(21);
8-((2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(2-メチルキノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(22);
8-((2S,5R)-4-(6-フルオロキノリン-4-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(23);
8-((2S,5R)-4-(3-メトキシ-6-メチルキノリン-8-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(24);
8-((2S,5R)-4-(6-フルオロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(25);
8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(26);または
8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(27)
である、化合物を提供する。
【0050】
本発明は、その本質、または不可欠な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。本発明は、本明細書に記載の本発明の態様および/または実施態様のあらゆる組み合わせを含む。本発明のありとあらゆる実施態様は、さらなる実施態様を説明するために、他のいずれかの実施態様と組み合わせてもよいことが理解される。また、実施態様の個々の要素は、さらなる実施態様を説明するために、いずれかの実施態様からのありとあらゆる他の要素と組み合わされることを意味することも理解される。
【0051】
定義
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な記載を読むことで、当業者によってさらに容易に理解され得る。明瞭にするために、別の実施態様の文脈の前後に記載される本発明のある特徴を、組み合わせて1つの実施態様を形成してもよいと理解される。逆にまた、簡潔にするために単一の実施態様の文脈に記載される本発明の種々の特徴を、組み合わせてそのサブコンビネーションを形成してもよい。ここで例示としてまたは好適として特定される実施態様は、実例を意図とするものであり、制限を目的とするものではない。
【0052】
本明細書において特に断りが無い限り、単数形で表される参照は複数も含んでもよい。例えば、「a」および「an」は、1、あるいは1または複数のいずれに言及してもよい。
【0053】
本明細書で用いる「化合物および/またはその塩」なる文言は、少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの化合物の塩、またはその組み合わせをいう。例えば、式(I)の化合物および/またはその塩には、式(I)の化合物;2つの式(I)の化合物;式(I)の化合物の塩;式(I)の化合物、および1または複数の式(I)の化合物の塩;および2つ以上の式(I)の化合物の塩を含む。
【0054】
特に断りが無い限り、原子価が満たされていないいずれの原子にも、原子価を満たすために十分な水素原子が含まれると見なされる。
【0055】
ここに記載の定義は、引用により本願明細書に組み込まれた、あらゆる特許、特許出願および/または特許出願公報に記載の定義にも優先する。
【0056】
本発明を記載するのに使用される種々の用語の定義が以下に列挙される。これらの定義は、(特定の場合で限定されない限り)個々にまたはより大きな基の一部として、明細書を通して使用される用語に適用される。
【0057】
本明細書を通して、その基および置換基は、安定した部分および化合物を提供するように当業者により選択され得る。
【0058】
当該分野にて使用される慣習に従って、
【化10】
は、部分または置換基のコアまたは骨格構造への結合点である結合を表すために、本願明細書の構造式にて使用される。
【0059】
本明細書で用いる「ハロ」および「ハロゲン」なる語は、F、Cl、Br、およびIをいう。
【0060】
「シアノ」なる語は、基-CNをいう。
【0061】
「アミノ」なる語は、基-NHをいう。
「オキソ」なる語は、基=Oをいう。
【0062】
本明細書で使用される「アルキル」なる語とは、例えば、1~12個の炭素原子、1~6個の炭素原子および1~4個の炭素原子を有する、分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基をいう。アルキル基の例は、以下に限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピルおよびi-プロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、およびt-ブチル)、およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-メチルペンチル、および4-メチルペンチルが挙げられる。記号「C」の後に数字が下付きで示される場合、その下付き文字は特定の基が含有し得る炭素原子の数をより具体的に限定する。例えば、「C1-4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0063】
本明細書で用いる「フルオロアルキル」なる語とは、1または複数のフッ素原子で置換された、分岐鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を包むことを意味する。例えば、「C1-4フルオロアルキル」とは、1または複数のフッ素原子で置換された、C、C、C、およびCアルキル基を包むことを意味する。フルオロアルキル基の代表例には、以下に限定されないが、-CFおよび-CHCFが挙げられる。
【0064】
「ヒドロキシアルキル」なる語は、1または複数のヒドロキシル基で置換された分岐鎖および直鎖の両方の飽和アルキル基を含む。例えば、「ヒドロキシアルキル」には、-CHOH、-CHCHOH、およびC1-4ヒドロキシアルキルが挙げられる。
【0065】
「アルケニル」なる語は、2~12個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分岐鎖炭化水素基をいう。そのような基の例として、エテニルまたはアリルが挙げられる。例えば、「C2-6アルケニル」は、2~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル基を表す。
【0066】
「アルキニル」なる語は、2~12個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素基をいう。そのような基の例として、エチニルが挙げられる。例えば、「C2-6アルキニル」は、2~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキニル基を表す。
【0067】
本明細書で用いる「シクロアルキル」なる語は、飽和環炭素原子より1個の水素原子を取り除くことにより、非芳香族単環式炭化水素分子または非芳香族多環式炭化水素分子から誘導される基をいう。シクロアルキル基の代表例は、以下に限定されないが、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。記号「C」の後に数字が下付きで示される場合、その下付き文字は特定のシクロアルキル基が含有しうる炭素原子の数をより具体的に限定する。例えば、「C3-6シクロアルキル」は、3~6個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0068】
本明細書で用いる「フルオロシクロアルキル」なる語は、1または複数のフッ素原子で置換されたシクロアルキル基を包むことを意味する。
【0069】
本明細書で使用される「アルコキシ」なる語とは、酸素原子を介して親分子の一部に接続するアルキル基であり、例えば、メトキシ基(-OCH)をいう。例えば、「C1-3アルコキシ」は、1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。
【0070】
「フルオロアルコキシ」および「-O(フルオロアルキル)」なる語は、酸素結合(-O-)を介して結合する、上記に記載のフルオロアルキル基を表す。例えば、「C1-4フルオロアルコキシ」は、C、C、C、およびCフルオロアルコキシ基を包含することを意図する。
【0071】
「カルボシクロ」、「炭素環」または「カルボシクリル」なる語は、同義で用いられてもよく、全ての環の全ての原子が炭素である、少なくとも1つの飽和または部分飽和非芳香環を有する環状基をいう。カルボシクリル環は、非置換であり得るか、または1または複数の置換基を原子価の範囲で有し得る。それ故、この用語には、非芳香環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル環)が含まれる。二環カルボシクリル基の例として、インダニル、インデニル、ジヒドロナフタレニル、テトラヒドロナフタレニル、ヘキサヒドロナフタレニル、オクタヒドロナフタレニル、デカヒドロナフタレニル、ビシクロヘプタニル、ビシクロオクタニル、およびビシクロノナニルが挙げられる。
【0072】
本明細書で用いる「アリール」なる語は、芳香族炭素環を含む分子から芳香環に結合する1つの水素を除去することにより得られる原子群をいう。アリール基の代表例には、以下に限らないが、フェニルおよびナフタレニルが挙げられる。アリール環は、非置換であり得るか、または原子価の許す限り1または複数の置換基を有し得る。
【0073】
本明細書で用いる「ベンジル」なる語は、水素原子の1つがフェニル基に置き換えられたメチル基をいう。フェニル環は、非置換であり得るか、または原子価の許す限り1または複数の置換基を有し得る。
【0074】
「ヘテロ原子」なる語とは、酸素(O)、硫黄(S)、および窒素(N)をいう。
【0075】
「ヘテロシクロ」、「ヘテロ環」、または「ヘテロシクリル」なる語は、同義で用いられてもよく、少なくとも1つの飽和または部分飽和非芳香環を有する環状基をいい、ここで該環の1または複数が少なくとも1個のヘテロ原子(O、SまたはN)を有し、前記ヘテロ原子含有環は、好ましくはO、Sおよび/またはNから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子を有するこのような基の環には、各環のヘテロ原子の総数が4個以下となる条件かつ、さらに環が少なくとも1個の炭素原子を含む条件で、1または2個の酸素または硫黄原子、および/または1~4個の窒素原子が含まれ得る。窒素および硫黄原子は適宜酸化されてもよく、窒素原子は適宜四級化されてもよい。ヘテロシクロ基は、いずれの利用可能な窒素または炭素原子で結合してもよい。ヘテロシクロ環は、非置換であり得るか、または原子価の許す限り1または複数の置換基を有し得る。
【0076】
単環ヘテロシクリル基の例として、ピロリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、4-ピペリドニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、ジヒドロイソインドリルおよびテトラヒドロキノリニルが挙げられる。
【0077】
「ヘテロアリール」なる語は、少なくとも1つの環に少なくとも1個のヘテロ原子(O、SまたはN)を有し、前記ヘテロ原子含有環は、好ましくはO、S、および/またはNから独立して選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、非置換および置換芳香族基をいう。ヘテロ原子を含む各環のヘテロアリール基は、各環のヘテロ原子の総数が4個以下であり、各環が少なくとも1個の炭素原子を含む条件で、1または2個の酸素または硫黄原子、および/または1~4個の窒素原子が含まれ得る。5ないし14員のヘテロアリール基は、5または6員の単環式ヘテロアリール基、9または10員の二環式ヘテロアリール基、および11ないし14員の三環式ヘテロアリール基を包含する。二環基および三環式ヘテロアリール基を形成する縮合環は芳香族であり、炭素原子のみを含むものであってもよい。窒素および硫黄原子は適宜酸化されてもよく、窒素原子は適宜四級化されてもよい。二環および三環式ヘテロアリール基には芳香環のみが含まれなければならない。ヘテロアリール基は、いずれの利用可能な窒素または炭素原子で結合してもよい。ヘテロアリール環システムは、非置換であり得るか、または1または複数の置換基を有し得る。
【0078】
単環ヘテロアリール基の例には、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、およびトリアジニルが挙げられる。
【0079】
二環ヘテロアリール基の例には、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、およびピロロピリジルが挙げられる。
三環式ヘテロアリール基の例には、アクリジニル、ベンゾキノリニル、ベンゾイソキノリニル、およびベンゾナフチリジニルが挙げられる。
【0080】
本明細書で使用される「医薬的に許容される」なる文言とは、通常の医学的判断の範囲内において、ヒトおよび動物の組織と過度な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題、もしくは合併症を起こすことなく接触させるのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比をもたらす、化合物、物質、組成物、および/または投与剤形のことを示す。
【0081】
式(I)の化合物は塩を形成し得て、その塩もまた本発明の範囲である。特に断りが無い限り、発明に関する化合物への言及はその1または複数の塩への言及を含むと理解される。「塩」なる語は、無機および/または有機の酸および塩基により形成される酸塩および/または塩基塩を表す。さらに、「塩」なる語には、例えば式(I)の化合物が、塩基性部分(例えばアミンまたはピリジンまたはイミダゾール環)および酸性部分(例えばカルボン酸)の両方を有する場合には、双性イオン(分子内塩)が含まれ得る。医薬的に許容される(すなわち、無毒かつ生理学的に許容される)塩とは、例えば、カチオンが塩の毒性または生物活性に有意に寄与しないような許容される金属塩およびアミン塩が好ましい。しかしながら、その他の塩も、例えば、製造過程で使用され得る単離または精製のステップにおいて有用な場合もあり、それ故、その他の塩も本発明の範囲であると考えられる。式(I)の化合物の塩は、例えば、式(I)の化合物を一定量の酸または塩基(例えば1当量)と反応させることで、溶媒中、例えば塩を沈殿させるか、または水溶液を次いで凍結乾燥させることにより形成してもよい。
【0082】
酸付加塩の例として、酢酸塩(例えば、酢酸またはトリハロ酢酸(例えば、トリフルオロ酢酸)から調製される酢酸塩)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタノエート、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸から調製)、臭化水素酸塩(臭化水素から調製)、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸から調製)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸から調製)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(例えば硫酸から調製)、スルホン酸塩(例えば本明細書に記載のもの)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(例えばトシレート)、ウンデカン酸塩などが挙げられる。
【0083】
塩基塩の例として、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム、リチウム、およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムおよびマグネシウム塩)、バリウム、亜鉛、およびアルミニウム塩、有機塩基塩、例えば、有機アミン(例えばトリアルキルアミン(例えばトリエチルアミン)、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン、N,N'-ジベンジルエチレン-ジアミン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン)、または類似の医薬的に許容されるアミン、およびアミノ酸塩(例えばアルギニン、リシン)などが挙げられる。塩基性含窒素基は、試薬(例えば低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルクロライド、ブロマイドおよびアイオダイド)、ジアルキル硫酸塩(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸塩)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロライド、ブロマイドおよびアイオダイド)、アラルキルハライド(例えば、ベンジルおよびフェネチルブロマイド)、およびその他の基)により四級化されていてもよい。好ましい塩には、一塩酸塩、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩または硝酸塩が挙げられる。
【0084】
式(I)の化合物は、非晶質固体または結晶固体として提供され得る。式(I)の化合物は、凍結乾燥により固体として提供され得る。
【0085】
さらに、式(I)の化合物の溶媒和物(例、水和物)も本発明の範囲であると考えられるべきである。「溶媒和物」なる語とは、式(I)の化合物と1つまたはそれ以上の有機または無機溶媒分子との物理的結合を意味する。この物理的結合は水素結合を含む。場合によっては、例えば1または複数の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合に、溶媒和物を単離することが可能である。「溶媒和物」は溶液相および分離可能な溶媒和物の両方を含む。溶媒和物の例として、水和物、エタノレート、メタノレート、イソプロパノレート、アセトニトリル溶媒和物、および酢酸エチル溶媒和物が挙げられる。溶媒和物の方法は当該分野にて公知である。
【0086】
プロドラッグの様々な形態は当該分野にて周知であり、Rautio, J.ら, Nature Review Drug Discovery, 17, 559‐587(2018)に記載されている。
【0087】
加えて、式(I)の化合物は、その調製の後で、単離かつ精製され、式(I)の化合物を99%以上の量で含有する(「実質的に純粋な」)組成物を得て、次にそれをここに記載されるように使用または処方する。かかる「実質的に純粋な」式(I)の化合物もまた、ここで本発明の一部であると考えられる。
【0088】
「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から有用な純度にまで単離しても、効果的な治療剤に製剤化しても分解しない、十分に強固な化合物であることを意図とする。本発明は安定な化合物を具現化するものとする。
【0089】
「治療上の有効量」とは、DGKαおよび/またはDGKζの阻害剤として作用するのに効果的な、またはウイルス感染症および増殖性障害(例えばがん)の治療または予防に効果的な、本発明の化合物単体の量、または特許請求の範囲の化合物を組み合わせた量、あるいは本発明の化合物を他の活性成分と組み合わせた量が含まれるものとする。
【0090】
本明細書で用いる「治療する」または「治療」なる語には、哺乳類、特にヒトにおける病態の治療に及び、(a)特に、哺乳類が病態に罹りやすいが、まだ罹患していると診断されていない場合に、該哺乳類が病態に罹患することを妨げること;(b)病態を阻害すること、すなわち、病態の進行を阻むこと;および/または(c)病態を緩和すること、すなわち、病態の退行を生じさせることが含まれる。
【0091】
本発明の化合物は、本発明の化合物に含まれる原子の全ての同位体を含有するものとする。同位体には、原子番号が同一であるが質量数が異なる原子が含まれる。一般的な例として、以下に限らないが、水素の同位体にはジュウテリウム(D)およびトリチウム(T)が含まれる。炭素の同位体には13Cおよび14Cが含まれる。同位体で標識された本発明の化合物は、一般に当業者に公知の従来の技法、または本明細書に記載されているものと類似の方法により、他で用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて製造することが出来る。
【0092】
式(I)に記載の化合物および/またはその医薬的に許容される塩は、治療する症状に対して適切ないずれかの手段により投与され得て、それは部位特異的治療の必要性または運搬されるべき式(I)の化合物の量に依存し得る。
【0093】
また、本発明には、式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩;および毒性がなく、医薬的に許容される1または複数の担体および/または希釈剤および/またはアジュバント(本明細書で「担体」と総称される物質)および、所望により他の活性成分とを含む、医薬組成物の類が含まれる。式(I)の化合物は、いずれかの適切な経路により、好ましくはそのような経路に適応する医薬組成物の形態、および予定される治療に効果的な投薬量で投与されてもよい。本発明の化合物および組成物は、例えば、経口的、経粘膜的、または血管内的、静脈内的、腹腔内的、皮下的、筋肉内的、および胸骨内的を含む非経口的に、医薬的に許容される従来の担体、アジュバント、およびビヒクルを含有する投与単位製剤にて投与されてもよい。例えば、医薬担体には、マンニトールまたはラクトースおよび微結晶セルロースの混合物を包含してもよい。該混合物は、例えば滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム)および崩壊剤(例えばクロスポビドン)などの添加成分を包含してもよい。担体混合物はゼラチンカプセルに充填されてもよいか、または錠剤として圧縮されてもよい。医薬組成物は、例えば経口剤形または点滴として投与されてもよい。
【0094】
経口投与用として、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、液体カプセル、懸濁液、または液体の形態であってもよい。医薬組成物は、好ましくは特定の活性成分量を有する投与単位剤形で製剤化される。例えば、医薬組成物は、約0.1から1000mg、好ましくは約0.25から250mg、より好ましくは約0.5から100mgの範囲の活性成分量を含む錠剤またはカプセルとして提供されてもよい。ヒトまたはその他の哺乳類に投与する適切な1日用量は、患者の病状およびその他の要因によって大幅に変更されてもよいが、慣用的方法を用いて決定され得る。
【0095】
本明細書で検討される医薬組成物はいずれも、例えば、許容され、かつ適切ないずれかの経口製剤を介して経口的に運搬され得る。経口製剤の例として、以下に限らないが、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性および油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードおよびソフトカプセル、液体カプセル、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。経口投与用の医薬組成物は、経口投与用の医薬組成物を製造する分野で公知のいずれかの方法に従って製造され得る。医薬的に飲みやすい製剤を提供するために、本発明に記載の医薬組成物は、甘味剤、風味剤、着色剤、粘滑剤、抗酸化剤、および防腐剤から選択される少なくとも1つの物質を包含し得る。
【0096】
錠剤は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの医薬的に許容される塩と、少なくとも1つの毒性がなく医薬的に許容される、錠剤の製造に適切な添加剤を混合することで製造され得る。添加剤の例として、以下に限らないが、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、およびリン酸ナトリウム)、造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、およびアルギン酸)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、およびアラビアガム)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルク)が挙げられる。さらに、錠剤は被膜されていないか、または不快な薬物の嫌な味をマスキングするため、またはその消化管での活性成分の崩壊および吸収を遅延させ、より長期間にわたって活性成分の効果を持続させるために、公知の技術で被膜され得る。水可溶性味マスキング材料の例として、以下に限らないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。時間遅延材料の例として、以下に限らないが、エチルセルロースおよび酢酸酪酸セルロースが挙げられる。
【0097】
ハードゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその塩を、少なくとも1つの不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびカオリン)と混合することにより製造され得る。
【0098】
ソフトゼラチンカプセルは、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの水可溶性担体(例えば、ポリエチレングリコール)、および少なくとも1つの油性媒体(例えば、ピーナツ油、液体パラフィン、およびオリーブ油)と混合することに製造され得る。
【0099】
水性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの水性懸濁液の製造に適切な添加剤を混合することにより製造され得る。水性懸濁液の製造に適切な添加剤の例としては、以下に限らないが、例えば、懸濁化剤(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアラビアガム)、分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するフォスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、およびエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。また、水性懸濁液は、少なくとも1つの防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルおよびn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)、少なくとも1つの着色剤、少なくとも1つの風味剤、および/または少なくとも1つの甘味剤(以下に限らないが、例えば、スクロース、サッカリン、およびアスパルテーム)を包含し得る。
【0100】
油性懸濁液は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその医薬的に許容される塩を、植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、およびココナッツ油)、または鉱油(例えば液体パラフィン)のいずれかに懸濁することにより製造され得る。また、油性懸濁液は、少なくとも1つの濃化剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィン、およびセチルアルコール)を包含し得る。飲みやすい油性懸濁液を提供するために、少なくとも1つの既に上記に記載の甘味剤、および/または少なくとも1つの風味剤が油性懸濁液に添加され得る。油性懸濁液は、さらに少なくとも1つの防腐剤(以下に限らないが、例えば、抗酸化剤(例えば、ブチルヒドロキシアニソール、およびα-トコフェロール)を包含し得る。
【0101】
分散性粉末および顆粒は、例えば、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその医薬的に許容される塩を、少なくとも1つの分散剤および/または湿潤剤、少なくとも1つの懸濁化剤、および/または少なくとも1つの防腐剤を混合することにより製造され得る。適切な分散剤、湿潤剤、および懸濁化剤は既に上記に記載されている。防腐剤の例として以下に限らないが、例えば、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)が挙げられる。さらに、分散性粉末および顆粒は、また、少なくとも1つの賦形剤(以下に限らないが、例えば、甘味剤、風味剤、および着色剤)を包含し得る。
【0102】
少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つの医薬的に許容される塩のエマルジョンは、例えば、水中油型エマルジョンとして製造され得る。式(I)の化合物を含むエマルジョンの油相は、既知の方法で既知の成分から構成されてもよい。該油相は以下に限らないが、例えば、植物油(例えば、オリーブ油および落花生油)、鉱油(例えば液体パラフィン)、およびその混合物により提供され得る。油相は乳化剤のみを包含するものであってもよいが、少なくとも1つの乳化剤と脂肪または油、または脂肪および油の両方の混合物を包含してもよい。適切な乳化剤には、以下に限らないが、例えば、天然に存在するフォスファチド(例えば大豆レシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)、および部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。好ましくは、親水性乳化剤が、安定化剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。また、油および脂肪の両方を包含することも好ましい。併せて、乳化剤は、安定化剤と共に、または無しで、いわゆる乳化ワックスを作り上げ、およびそのワックスは、油および脂肪と共にクリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を作り上げる。エマルジョンはまた、甘味剤、風味剤、防腐剤、および/または抗酸化剤を包含し得る。本発明の製剤中での使用に適切な乳化剤およびエマルジョン安定化剤には、単体またはワックスと一緒になったTween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジステアリン酸グリセリル;または当該分野に公知の他の物質が挙げられる。
【0103】
また、式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその医薬的に許容される塩は、例えば、いずれの医薬的に許容され、かつ適切な注射形態を介して静脈内、皮下内、および/または筋肉内に運搬され得る。注射形態の例として、以下に限らないが、例えば、許容されるビヒクルおよび溶媒(例えば、水、リンゲル液、および塩化ナトリウム等張液)を含む無菌水溶液、無菌水中油型マイクロエマルジョン、および水性または油性懸濁液が挙げられる。
【0104】
非経口投与用製剤は、水性または非水性等張無菌注射液または懸濁液の形態であってもよい。これらの溶液および懸濁液は、経口投与用の製剤中での使用について記載される1または複数の担体または希釈剤を用いるか、または他の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いることにより、無菌粉末または顆粒から調製されてもよい。該化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、トラガカントガム、および/または様々な緩衝液に溶解させてもよい。その他のアジュバントおよび投与方法は、医薬分野において公知であり、広く知られている。また、その活性成分は適切な担体(例えば、生理食塩水、デキストロース、または水)、またはシクロデキストリン(すなわち、カプチソール(Captisol))、可溶化共溶媒(すなわち、プロピレングリコール)、または可溶化ミセル(すなわち、ツィーン(Tween)80)との組成物として、注射により投与されてもよい。
【0105】
また、無菌注射製剤とは、毒性がなく、非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液または懸濁液(例えば1,3-ブタンジオール中の溶液)であってもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒のうち、使用されてもよいものは、水、リンゲル液、および塩化ナトリウム等張液である。さらに、無菌不揮発油は、溶媒または懸濁媒体として慣例的に用いられている。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、いずれの無菌不揮発油が用いられてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射製剤として使用される。
【0106】
無菌注射水中油型マイクロエマルジョンは、例えば以下によって製造され得る。1)少なくとも1つの式(I)の化合物を油相(例えば、大豆油およびレシチンの混合物)に溶解し、2)油相を含有する式(I)を、水およびグリセロールの混合物と組み合わせ、3)その組み合わせを処理してマイクロエマルジョンを形成する。
【0107】
無菌水性懸濁液または無菌油性懸濁液は、当業者に公知の方法に従って製造され得る。例えば、無菌水溶液または無菌水性懸濁液は、毒性がなく、非経口的に許容される希釈剤または溶媒(例えば1,3-ブタンジオール)を用いて調製され得て、無菌油性懸濁液は、無菌の毒性のない許容される溶媒または懸濁媒体(例えば、無菌不揮発油(例えば、合成モノグリセリドまたはジグリセリド)、および脂肪酸(例えばオレイン酸)を用いて製造され得る。
【0108】
本発明の医薬組成物に使用され得る医薬的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルには、以下に限らないが、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、自己乳化ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)(例えばd-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート)、医薬剤形に用いられる界面活性剤(例えば、Tween、ポリエトキシ化ヒマシ油(例えばCREMOPHOR界面活性剤(BASF)、またはその他の類似するポリマーデリバリーマトリックス)、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、緩衝液物質(例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム)、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂)が挙げられる。また、シクロデキストリン(例えば、α-、β-、およびγ-シクロデキストリン、または化学的に修飾された誘導体(例えば、2-および3-ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリン、またはその他の可溶化誘導体)も、本明細書に記載の式の化合物の運搬を増進するために有利に使用されてもよい。
【0109】
本発明の医薬的に活性な化合物は、患者(例えば、ヒトおよびその他の哺乳類)に投与する薬剤を調製するために、従来の薬学の方法に従って処理され得る。医薬組成物は、従来の製薬操作(例えば滅菌処理)に供されてもよく、および/または従来のアジュバント(例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液など)を包含してもよい。錠剤および丸剤は、加えて腸溶性被覆剤を用いて調製され得る。また、そのような組成物は、アジュバント(例えば湿潤剤、甘味剤、風味剤、および芳香剤)も包含し得る。
【0110】
本発明の化合物および/または組成物を用いて病状を治療するために投与される化合物の量、および投与計画は、様々な要因(例えば、年齢、体重、性別、患者の病状、疾患のタイプ、疾患の危篤度、投与経路および投与頻度、および利用される特定の化合物)に依存する。それ故、投与計画は大幅に変更されてもよいが、標準的方法を用いて規定通りに決定され得る。1日用量は、約0.001から100mg/体重kg、好ましくは約0.0025から約50mg/体重kgの間、および最も好ましくは約0.005から10mg/体重kgの間が適切であり得る。1日用量は1日に1から4回投与され得る。その他の投与計画として、週に1回および2日に1回のサイクルが挙げられる。
【0111】
治療目的のために、本発明の活性化合物は、通常意図された投与経路に適切な1または複数のアジュバントと組み合わせられる。経口的に投与される場合、該化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、マグネシウムオキシド、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合されてもよく、次いで簡便な投与用に錠剤化またはカプセル化されてもよい。そのようなカプセルまたは錠剤は放出制御製剤を包含してもよく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に活性化合物を分散して提供されてもよい。
【0112】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの式(I)の化合物および/または少なくとも1つのその医薬的に許容される塩、およびいずれの医薬的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルから選択される添加剤を適宜包含する。本発明の別の組成物には、本明細書に記載の式(I)の化合物、またはそのプロドラッグ、および医薬的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを包含する。
【0113】
有用性
式(I)の化合物は、がんの治療に有用である。
【0114】
別の実施態様において、本発明は、T細胞におけるDGKの標的阻害に関連する複数の疾患または障害の治療および/または予防において、同時、別々または連続で用いる、式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩、その立体異性体またはその互変異性体と、別の治療薬の組み合わせ医薬を提供する。
【0115】
別の態様において、本発明は、T細胞におけるDGKの標的阻害に関連する病状に罹患しているか、または感染しやすい患者の治療方法を提供する。多数の病状が治療され得る。この方法は、治療上有効量の式(I)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩、その立体異性体またはその互変異性体を含む組成物を患者に投与することを特徴とする。例えば、本明細書に記載の化合物は、ウイルス感染症および増殖性疾患(例えばがん)を治療または予防するために用いられてもよい。
【0116】
式(I)の化合物および少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物は、T細胞におけるDGKの標的阻害に関連するあらゆる疾患または病状の治療または予防に有用である。その疾患または病状にはウイルスおよびその他の感染症(例えば、皮膚感染症、GI感染症、尿路感染症、泌尿性器感染症、全身性感染症)、および増殖性疾患(例えばがん)が含まれる。式(I)の化合物および少なくとも1つの式(I)の化合物を含む医薬組成物を、動物、好ましくは哺乳動物(例えば、家畜動物、ネコ、イヌ、マウス、ラット)、およびより好ましくはヒトに投与し得る。この化合物または医薬組成物を患者に送達するために、あらゆる投与方法が用いられてもよい。ある実施態様において、式(I)の化合物または少なくとも式(I)の化合物を含む医薬組成物は、経口的に投与される。他の実施態様において、式(I)または少なくとも式(I)の化合物を含む医薬組成物は、非経口的に投与される。
【0117】
式(I)の化合物は、ジアシルグリセロールキナーゼαおよびζ(DGKα/ζ)の活性を阻害し得る。例えば、式(I)の化合物は、DGKαおよびDGKζの調節が必要な細胞または個体において、阻害量の式(I)の化合物、またはその塩を投与することでDGKαおよびDGKζの活性を阻害するために用いられ得る。
【0118】
本発明はさらに、活性または発現(例えば個体(例えば患者)におけるDGKαおよびDGKζの異常活性および/または過剰発現)に関する疾患を、その治療が必要な個体に、治療上有効量または用量の式(I)の化合物またはその医薬組成物を投与することにより治療する方法を提供する。疾患の例には、直接的または間接的にDGKαおよびDGKζ酵素の発現または活性(例えば過剰発現または異常活性)が関わるあらゆる疾患、障害または病状が含まれ得る。またDGKαおよびDGKζ関連疾患には、DGKαおよびDGKζ酵素活性を調節することにより予防、改善、または回復し得る、あらゆる疾患、障害または病状が含まれ得る。DGKαおよびDGKζ関連疾患の例には、がんおよびウイルス感染症(例えばHIV感染症、肝炎B、および肝炎C)が挙げられる。
【0119】
ある態様において、式(I)の化合物は、免疫腫瘍薬剤の投与前に連続的に投与される。別の態様において、式(I)の化合物は、免疫腫瘍薬剤と同時に投与される。また別の態様において、式(I)の化合物は、免疫腫瘍薬剤の投与後に続けて投与される。
【0120】
別の態様において、式(I)の化合物は、免疫腫瘍薬剤と共に製剤されてもよい。
【0121】
免疫腫瘍薬剤には、例えば、低分子薬、抗体、またはその他の生物学的分子または低分子が含まれる。生物学的免疫腫瘍薬剤の例には、以下に限らないが、がんワクチン、抗体、およびサイトカインが含まれる。ある態様において、抗体とはモノクローナル抗体である。別の態様において、モノクローナル抗体とはヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0122】
ある態様において、免疫腫瘍薬剤とは、T細胞上の(i)(共刺激を含む)刺激受容体のアゴニスト、または(ii)(共阻害性を含む)阻害性シグナルのアンタゴニストであり、両方とも結果として(しばしば免疫チェックポイントレギュレーターとして称される)抗原特異的T細胞応答を増幅する。
【0123】
特定の刺激分子および阻害分子は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)に属す。共刺激受容体、または共抑制性受容体に結合する、膜結合リガンドの、ある重要なファミリーはB7ファミリーであり、これには、B7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA)、およびB7-H6が含まれる。共刺激受容体、または共抑制性受容体に結合する、膜結合リガンドの別のファミリーとは、同種TNF受容体ファミリーに結合するTNFファミリー分子であり、これにはCD40およびCD40L、OX-40、OX-40L、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4-1BBL、CD137(4-1BB)、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTβR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDAR、EDA1、XEDAR、EDA2、TNFR1、リンホトキシンα/TNFβ、TNFR2、TNFα、LTβR、リンホトキシンα1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROY、NGFRが含まれる。
【0124】
ある態様において、T細胞応答は、式(I)の化合物と、1または複数の、(i)T細胞活性化を阻害するタンパク質アンタゴニスト(例えば免疫チェックポイント阻害剤)、例えばCTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1、およびTIM-4、および(ii)T細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト、例えばB7-1、B7-2、CD28、4-1BB (CD137)、4-1BBL、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、GITR、GITRL、CD70、CD27、CD40、DR3およびCD28Hとの組み合わせにより刺激され得る。
【0125】
がん治療のために、式(I)の化合物と組み合わせられ得る別の薬剤には、NK細胞上の抑制性受容体のアンタゴニスト、またはNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが含まれ得る。例えば、式(I)の化合物は、例えばリリルマブといったKIRのアンタゴニストと組み合わされ得る。
【0126】
組み合わせ治療に用いる、さらに別の薬剤には、マクロファージまたは単球を阻害または激減させる薬剤を含み、以下に限定されないが、CSF-1Rアンタゴニスト、例えばRG7155(WO11/70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)またはFPA-008(WO11/140249;WO13169264;WO14/036357)を含むCSF-1Rアンタゴニスト抗体が挙げられる。
【0127】
別の態様において、式(I)の化合物は、ポジティブな共刺激受容体を結合させるアゴニスティック薬剤、抑制性受容体を介したシグナル伝達を減衰させるブロッキング剤、アンタゴニスト、および抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増加させる1または複数の薬剤、腫瘍微小環境において、異なる免疫抑制経路を克服する薬剤(例えば、抑制性受容体の関与(例えばPD-L1/PD-1相互作用)のブロック、トレグ(Treg)細胞の激減または阻害(例えば抗CD25モノクローナル抗体(例えばダクリズマブ)の使用、または体外での抗CD25ビーズの枯渇による)、IDOのような代謝酵素の阻害、またはT細胞アナジーまたはT細胞の枯渇の回復/阻止)、および自然免疫活性化および/または腫瘍部分の炎症を引き起こさせる1または複数の薬剤を用いて使用され得る。
【0128】
ある態様において、免疫腫瘍薬剤は、CTLA-4アンタゴニストであり、例えばアンタゴニスティックCTLA-4抗体である。適切なCTLA-4抗体には、例えば、ヤーボイ(イピリムマブ)またはトレメリムマブが挙げられる。
【0129】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、PD-1アンタゴニストであり、例えばアンタゴニスティックPD-1抗体である。適切なPD-1抗体には、例えば、オプジーボ(ニボルマブ)、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)、またはMEDI-0680(AMP-514;WO2012/145493)が挙げられる。免疫腫瘍薬剤には、PD-1結合への特異性は疑問視されているが、ピディリズマブ(CT-011)もまた挙げられ得る。PD-1受容体をターゲットとした別のアプローチには、IgG1のFc部分を融合させたPD-L2(B7-DC)の細胞外ドメインからなる組み換えタンパク質があり、AMP-224と称される。
【0130】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、PD-L1アンタゴニストであり、例えばアンタゴニスティックPD-L1抗体である。適切なPD-L1抗体には、例えば、MPDL3280A(RG7446;WO2010/077634)、デュルバルマブ(MEDI4736)、BMS-936559(WO2007/005874)、およびMSB0010718C(WO2013/79174)が挙げられる。
【0131】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、LAG-3アンタゴニストであり、例えばアンタゴニスティックLAG-3抗体である。適切なLAG3抗体には、例えば、BMS-986016(WO10/19570、WO14/08218)、またはIMP-731またはIMP-321(WO08/132601、WO09/44273)が挙げられる。
【0132】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、CD137(4-1BB)アゴニストであり、例えばアゴニスティックCD137抗体である。適切なCD137抗体には、例えば、ウレルマブおよびPF-05082566(WO12/32433)が挙げられる。
【0133】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、GITRアゴニストであり、例えばアゴニスティックGITR抗体である。適切なGITR抗体には、例えばBMS-986153、BMS-986156、TRX-518(WO06/105021、WO09/009116)およびMK-4166(WO11/028683)が挙げられる。
【0134】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、IDOアンタゴニストである。適切なIDOアンタゴニストには、例えばINCB-024360(WO2006/122150、WO07/75598、WO08/36653、WO08/36642)、インドキシモド、BMS-986205、またはNLG-919(WO09/73620、WO09/1156652、WO11/56652、WO12/142237)が挙げられる。
【0135】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、OX40アゴニストであり、例えばアゴニスティックOX40抗体である。適切なOX40抗体には、例えばMEDI-6383またはMEDI-6469が挙げられる。
【0136】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、OX40Lアンタゴニストであり、例えばアンタゴニスティックOX40抗体である。適切なOX40Lアンタゴニストには、例えばRG-7888(WO06/029879)が挙げられる。
【0137】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、CD40アゴニストであり、例えばアゴニスティックCD40抗体である。さらに別の実施態様において、免疫腫瘍薬剤は、CD40アンタゴニストであり、例えばアンタゴニスティックCD40抗体である。適切なCD40抗体には、例えばルカツムマブまたは、ダセツズマブが挙げられる。
【0138】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤は、CD27アゴニストであり、例えば、アンタゴニスティックCD27抗体である。適当なCD27抗体には、例えばバルリルマブが挙げられる。
【0139】
別の態様において、免疫腫瘍薬剤で、B7H3に対する薬とは、MGA271(WO11/109400)である。
【0140】
組み合わせ治療は、逐次的方法でこれらの治療薬の投与を含むことが意図される、即ち各治療薬は種々の異なる時点で投与され、ならびにこれらの治療薬または少なくとも2つの治療薬が、実質的に同時的手法で投与される。実質的な同時投与とは、例えば、各治療薬の固定比にて単一投与剤形、または治療薬各々についての複数の単一投与剤形で患者に投与することにより達成され得る。各治療薬の連続的または実質的な同時投与とは、例えば、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路および粘膜の膜組織を介する直接吸収などの任意の適切な経路により実施され得るが、これらに限定されるものではない。治療薬は、同一経路または異なる経路により投与され得る。例えば、選択された組み合わせにおける第1治療薬は静脈内注射により投与され得るが、この組み合わせの内の別の治療薬は経口投与されてもよい。あるいは、例えば、全ての治療薬が経口投与されても、または全ての治療薬が静脈注射により投与されてもよい。上記の治療薬の投与を、更に他の生物学的活性成分および非薬物療法(例えば、手術または放射線治療)と合わせて、組み合わせ治療を行なうことも出来る。この組み合わせ治療が更に非薬剤処置を含む場合、治療薬および非薬剤治療の組み合わせに関する共同作用から生じる有用な効果が達成される限り、非薬剤処置はいずれの適切な時点でも行なうことが出来る。例えば、好適な症例では、この有用な効果は、非薬物処置が、治療薬の投与から一時的に、おそらく数日または数週間、休止される場合であっても達成される。
【0141】
本明細書で用いる「細胞」なる語は、インビトロ、エクスビボまたはインビボの細胞を指すことを意図する。一部の実施態様において、エクスビボ細胞は、生物(例えば哺乳動物)から摘出した組織サンプルの一部であり得る。一部の実施態様において、インビトロ細胞は、細胞培養中の細胞であり得る。一部の実施態様において、インビボ細胞は、生物(例えば哺乳動物)中の生きた細胞である。
【0142】
本明細書で用いる「接触」なる語は、インビトロシステムまたはインビボシステムの指示された部分の接合をいう。例えば、DGKαおよびDGKζ酵素と式(I)の化合物を「接触」させることは、本発明の化合物をDGKαおよびDGKζを持つ個体または患者(例えばヒト)に投与すること、ならびに、例えば、細胞を含むサンプルまたはDGKαおよびDGKζ酵素を含む精製物に式(I)の化合物を導入することが挙げられる。
【0143】
「DGKαおよびDGKζ阻害剤」なる語は、T細胞におけるジアシルグリセロールキナーゼαおよび/またはジアシルグリセロールキナーゼζ(DGKαおよびDGKζ)の活性の阻害が可能であり、T細胞に刺激をもたらす薬剤をいう。DGKαおよびDGKζ阻害剤は、可逆性または不可逆性DGKαおよびDGKζ阻害剤であり得る。「可逆性DGKαおよびDGKζ阻害剤」は、触媒部位または非触媒部位のいずれかでDGKαおよびDGKζ酵素活性を可逆的に阻害する化合物であり、「不可逆性DGKαおよびDGKζ阻害剤」は、酵素と共有結合を形成することにより、不可逆的にDGKαおよびDGKζ酵素活性を損なわせる化合物である。
【0144】
式(I)の化合物で治療されてもよいがんのタイプには、以下に限らないが、脳がん、皮膚がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、血液がん、肺がん、骨がんが含まれる。そのようながんのタイプの例には、神経芽腫、腸癌(例えば、直腸がん、結腸がん、家族性大腸腺腫症、および遺伝性非ポリポーシス大腸癌)、食道癌、口唇がん、喉頭がん、下咽頭がん、舌がん、唾液腺がん、胃がん、腺がん、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん、腎臓がん、腎実質がん、卵巣がん、頸がん、子宮体がん、子宮内膜がん、絨毛がん、膵臓がん、前立腺がん、精巣がん、乳癌、泌尿器癌、黒色腫、脳 腫瘍例えば神経膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽腫および末梢性神経外胚葉性腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、成人T細胞白血病リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、肝細胞がん、胆嚢がん、気管支がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫および形質細胞腫が挙げられる。
【0145】
DGKαおよびDGKζに関する疾患、障害または病状の治療には、1または複数の別の医薬品または治療方法(例えば、抗ウイルス薬、化学療法剤またはその他の抗がん剤、免疫エンハンサー、免疫抑制剤、放射線、抗腫瘍および抗ウイルスワクチン、サイトカイン療法(例えば、IL2およびGM-CSF)、および/またはチロシンキナーゼ阻害剤)が、式(I)の化合物と適宜組み合わせて用いられ得る。上記薬剤は、本化合物と単一の投与形態で組み合わせ得るか、または薬剤を同時、または順に異なる投与形態で投与され得る。
【0146】
適切な化学療法剤またはその他の抗がん剤には、例えばアルキル化剤(以下に限らないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホン酸、ニトロソウレア類およびトリアゼンを含む)、例えばウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミドが含まれる。
【0147】
黒色腫の治療において、式(I)の化合物と組み合わせて用いる適切な薬剤には、ダカルバジン(DTIC)が挙げられ、適宜その他の化学療法剤(例えばカルムスチン(BCNU)およびシスプラチン);DTIC、BCNU、シスプラチンおよびタモキシフェンから成る「Dartmouthレジメン」;シスプラチン、ビンブラスチン、およびDTIC、テモゾロミドまたはヤーボイ(登録商標)の組み合わせ)と共に用いる。また式(I)の化合物は、黒色腫の治療において、免疫療法薬(例えばサイトカイン(インターフェロンα、インターロイキン2、および腫瘍壊死因子(TNF)など))とも組み合わせられ得る。
【0148】
また式(I)の化合物は、黒色腫の治療において、ワクチン療法とも組み合わせて用いられ得る。抗黒色腫ワクチンは、ウイルスにより引き起こされる疾患(例えばポリオ、麻疹、およびムンプス)を予防するために用いられる抗ウイルスワクチンと幾つかの点で類似している。弱毒化させた黒色腫細胞または抗原と呼ばれる黒色腫細胞の一部を患者に注射して体の免疫系を刺激し、黒色腫細胞を破壊してもよい。
【0149】
腕または脚の黒色腫もまた、1または複数の式(I)の化合物を含む薬剤を組み合わせて、温熱灌流療法を用いて処理され得る。この治療プロトコルでは、一時的に疾患部位の四肢の循環系を体の他の循環系から独立させ、該当四肢の動脈に高濃度の化学療法剤を注入することで、内臓に曝せば深刻な副作用を起こし得る高用量を腫瘍部位に投与する。通常、この治療では体液を38.9℃~40℃に加温させる。メルファランがこの化学療法において最も頻繁に用いられる薬である。これには腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれる別の薬剤も用いられ得る。
【0150】
適切な化学療法剤またはその他の抗がん剤には、例えば、代謝拮抗剤(以下に限らないが葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤など)、例えばメトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびゲムシタビンが挙げられる。
【0151】
適切な化学療法剤またはその他の抗がん剤にはさらに、例えば、ある自然生成物およびそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍抗生物質、酵素、リンホカインおよびエピポドフィロトキシン)、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シタラビン、パクリタキセル(タキソール)、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシンC、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFNα)、エトポシド、およびテニポシドが挙げられる。
【0152】
その他の細胞障害性薬剤には、ナベルビン、CPT-11、アナストロゾール、レトロゾール、カペシタビン、ラロキシフェン、およびドロロキシフェンが含まれる。
【0153】
また、適切な細胞障害性薬剤には、例えばエピポドフィロトキシン;抗悪性腫瘍酵素;トポイソメラーゼ阻害剤;プロカルバジン;ミトキサントロン;白金配位複合体(例えばシスプラチンおよびカルボプラチン);生物反応修飾物質;成長阻害剤;抗ホルモン治療剤;ロイコボリン;テガフール;および造血成長因子がある。
【0154】
その他の抗がん剤には、抗体医薬、例えばトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、共刺激分子に対する抗体(例えばCTLA-4、4-1BBおよびPD-1)、またはサイトカインに対する抗体(IL-1OまたはTGF-β)が挙げられる。
【0155】
またその他の抗がん剤には、免疫細胞移動を遮断する抗がん剤、例えばケモカイン受容体(例えばCCR2およびCCR4)に対するアンタゴニストも挙げられる。
【0156】
またその他の抗がん剤には、免疫系を増強させる抗がん剤、例えばアジュバントまたは養子T細胞移植も挙げられる。
【0157】
抗がんワクチンには、樹状細胞、合成ペプチド、DNAワクチンおよび組み換えウイルスが挙げられる。
【0158】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのシグナル伝達阻害剤(STI)を適宜含み得る。「シグナル伝達阻害剤」は、がん細胞の正常機能においてシグナル伝達経路中の1または複数の重要なステップを選択的に阻害し、それによりアポトーシスを引き起こす薬剤である。適切なSTIには、以下に限らないが、(i)bcr/ablキナーゼ阻害剤(例えばSTI 571(グリベック(登録商標));(ii)上皮細胞増殖因子(EGF)受容体阻害剤(例えばキナーゼ阻害剤(イレッサ(登録商標)、SSI-774)および抗体(イムクロン(Imclone):C225 [Goldsteinら, Clin. Cancer Res., 1: 1311-1318 (1995)]、およびアブゲニクス(Abgenix):ABX-EGF);(iii)her-2/neu受容体阻害剤(例えばファルネシル基転移酵素阻害剤(FTI)(例えばL-744,832(Kohlら, Nat. Med., 1(8):792-797 (1995));(iv)AktファミリーキナーゼまたはAkt経路の阻害剤(例えばラパマイシン(例えばSekulicら, Cancer Res., 60: 3504-3513 (2000) を参照));(v)細胞周期キナーゼ阻害剤(例えばフラボピリドールおよびUCN-O1(例えばSausville, Curr. Med. Chem. Anti-Canc. Agents, 3:47-56(2003)を参照);および(vi)ホスファチジルイノシトールキナーゼ阻害剤(例えばLY294002(例えばVlahosら, J. Biol. Chem., 269: 5241-5248 (1994)を参照))が挙げられる。あるいは、少なくとも1つのSTIおよび少なくとも1つの式(I)の化合物は、別々の医薬組成物に配合され得る。本発明の特定の実施態様において、少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つのSTIは、同時または順に患者に投与され得る。言い換えれば、少なくとも1つの式(I)の化合物が初めに投与され得るか、少なくとも1つのSTIが初めに投与され得るか、または少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つのSTIが同時に投与され得る。さらに、1または複数の式(I)の化合物および/またはSTIが用いられる場合、化合物は任意の順序で投与され得る。
【0159】
さらに本発明は、患者の慢性ウイルス感染症を治療する、少なくとも1つの式(I)の化合物、適宜少なくとも1つの化学療法剤、および適宜少なくとも1つの抗ウイルス薬を医薬的に許容される担体中に含む医薬組成物を提供する。
【0160】
また、有効量の上記医薬組成物の投与による患者の慢性ウイルス感染症の治療方法を提供する。
【0161】
本発明の特定の実施態様において、少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つの化学療法剤が同時または順に患者に投与される。言い換えれば、少なくとも1つの式(I)の化合物が初めに投与され得るか、少なくとも1つの化学療法剤が初めに投与され得るか、または少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つの化学療法剤が同時に投与され得る。さらに、1または複数の式(I)の化合物および/または化学療法剤が用いられる場合、化合物は任意の順で投与され得る。同様に、あらゆる抗ウイルス薬またはSTIは、式(I)の化合物の投与と比較して、任意の時点で投与され得る。
【0162】
本組み合わせ治療を用いて治療され得る慢性ウイルス感染症には、以下に限らないが、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、水痘帯状疱疹ウイルス、コクサッキーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされる疾患が挙げられる。特に、寄生虫感染症(例えばマラリア)は、寄生虫症の治療で公知の化合物を抗ウイルス薬の代わりに適宜加えて、上記の方法により治療され得る。
【0163】
式(I)の化合物と組み合わせた使用が検討される適切な抗ウイルス薬には、ヌクレオシド系およびヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬およびその他の抗ウイルス薬が含まれ得る。
【0164】
適切なNRTIの例には、ジドブジン(AZT);ジダノシン(ddI);ザルシタビン(ddC);スタブジン(d4T);ラミブジン(3TC);アバカビル(1592U89);アデホビルピボキシル[ビス(POM)-PMEA];ロブカビル;BCH-I0652;エムトリシタビン[(-)-FTC];β-L-FD4(β-L-D4Cとも称され、名称はβ-L-2’,3’-ジデオキシ-5-フルオロ-シチジンである);DAPD、((-)-β-D-2,6-ジアミノ-プリンジオキソラン);およびロデノシン(FddA)が挙げられる。代表的で適切なNNRTIには、ネビラピン(BI-RG-587);デラビルジン(BHAP、U-90152);エファビレンツ(DMP-266);PNU-142721;AG-1549;MKC-442(1-(エトキシ-メチル)-5-(1-メチルエチル)-6-(フェニルメチル)-(2,4(1H,3H)-ピリミジンジオン);および(+)-カラノリドA(NSC-675451)およびBが挙げられる。代表的で適切なプロテアーゼ阻害薬には、サキナビル(Ro 31-8959);リトナビル(ABT-538);インジナビル(MK-639);ネルフィナビル(AG-1343);アンプレナビル(141W94);ラシナビル;DMP-450;BMS-2322623;ABT-378;およびAG-1549が挙げられる。その他の抗ウイルス薬には、ヒドロキシ尿素、リバビリン、IL-2、IL-12、ペンタフシドおよびYissum Project No.11607が挙げられる。
【0165】
また本発明は、例えば、DGKαおよびDGKζ関連疾患または障害、および本明細書に記載のその他の疾患の治療または予防において有用な医薬キットを含み、それには治療上有効量の式(I)の化合物を含む医薬組成物を包含する、1または複数の容器を含む。そのようなキットには、さらに、所望により、1または複数の様々な従来の医薬キットの構成要素(例えば、1または複数の医薬的に許容される担体を含む容器、別の容器)が含まれ、それらは当業者にとって容易に明らかである。投与すべき成分量、投与指針、および/または成分の混合指針を示す、添付文書またはラベルのいずれかでの説明書もキットに含まれ得る。
【0166】
組み合わせ治療は、逐次的方法でこれらの治療薬の投与を含むことが意図される、即ち各治療薬は種々の異なる時点で投与され、ならびにこれらの治療薬または少なくとも2つの治療薬が、実質的に同時的手法で投与される。実質的な同時投与とは、例えば、各治療薬の固定比にて単一投与剤形、または治療薬各々についての複数の単一投与剤形で患者に投与することにより達成され得る。各治療薬の連続的または実質的な同時投与とは、例えば、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路および粘膜の膜組織を介する直接吸収などの任意の適切な経路により実施され得るが、これらに限定されるものではない。治療薬は、同一経路または異なる経路により投与され得る。例えば、選択された組み合わせにおける第1治療薬は静脈内注射により投与され得るが、この組み合わせの内の別の治療薬は経口投与されてもよい。あるいは、例えば、全ての治療薬が経口投与されても、または全ての治療薬が静脈注射により投与されてもよい。組み合わせ治療には、上記した治療薬に更に他の生物学的活性成分および非薬物療法(例えば、手術または放射線治療)を組み合わせて、の投与を行なうこともできる。この組み合わせ治療が更に非薬剤処置を含む場合、治療薬および非薬剤治療の組み合わせに関する共同作用から生じる有用な効果が達成される限り、非薬剤処置はいずれの適切な時点でも行なうことができる。例えば、好適な症例では、この有用な効果は、非薬物処置が、治療薬の投与から一時的に、おそらく数日または数週間、休止される場合であっても達成される。
【0167】
本発明は、治療上有効な量の1または複数の式(I)の化合物を含み、1または複数の医薬的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤、および所望により上記の1または複数の別の治療薬と共に製剤化される医薬的に許容される組成物もまた提供する。
【0168】
本発明の化合物は、本明細書に記載のあらゆる用途のために、任意の適切な手段(例えば、経口投与(例えば錠剤、カプセル(それぞれ徐放性製剤または時限放出型製剤を含む)、丸剤、粉末剤、顆粒剤、エリキシル、チンキ剤、懸濁液(ナノ懸濁液、マイクロ懸濁液、噴霧乾燥分散液を含む)、シロップ、およびエマルジョン);舌下投与;口腔投与;非経口投与(例えば皮下、静脈内、筋肉内、または胸骨内注射、または点滴技法(例えば、無菌注射剤水溶液または非水溶液または懸濁液));経鼻膜への投与を含む経鼻投与(例えば吸入スプレー);局所投与(例えばクリーム製剤または軟膏の形態);または直腸投与(例えば坐薬形態))により投与され得る。これらは単体で投与されてもよいが、一般には選択された投与経路および標準的な薬学的基準を基に選ばれた医薬担体と共に投与される。
【0169】
本明細書で用いる「医薬的に許容される担体」なる文言とは、医薬的に許容される物質、組成物または、ビヒクルを意味し、例えば、液体増量剤または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、加工助剤(例えば滑沢剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒封入剤が挙げられ、それらはある臓器、または体の一部から異なる臓器へ、または異なる体の一部への特定の化合物の運搬または送達に関与する。各担体は製剤中の他の成分(すなわち、投与方法および投与形態の性質によって異なるアジュバント、賦形剤またはビヒクル(例えば希釈剤、防腐剤、増量剤、流量調整剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、風味剤、香料、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤および調剤用薬)を含む)と相溶し得るという意味、かつ患者にとって有害でないという意味において「許容され」なければならない。
【0170】
「医薬組成物」なる語は、本発明の化合物と、少なくとも1つの別の医薬的に許容される担体を組み合わせて含む組成物を意味する。
【0171】
医薬的に許容される担体は、十分当業者の専門技術内である多くの要因に従って処方される。医薬的に許容される担体は、十分当業者の専門技術内である多くの要因に従って処方される。これらの要因には、以下に限らないが、処方される活性剤のタイプおよび性質、その活性剤を含有する組成物が投与される患者、その組成物の意図された投与経路、および目標とされる治療指標が挙げられる。医薬的に許容される担体には、水性および非水性の両方の液体媒体、ならびに様々な固体および半固体の投与剤形を包含する。そのような担体は、活性剤に加え、多くの異なる成分および添加剤を包含することができ、かかる付加的な成分は様々な理由で、例えば、当業者に周知の活性剤、結合剤などの安定化の理由で製剤中に含まれる。適当な医薬的に許容される担体、およびそれを選択する際の要因の説明は、入手が容易な様々な文献、例えば、Allen, L. V. Jr.ら Remington: The Science and Practice of Pharmacy (2巻), 第22版 (2012), Pharmaceutical Pressに記載されている。
【0172】
本発明の化合物の投与計画は、既知の要因(例えば特定の薬剤の薬力学特性およびその投与方法および投与経路;レシピエントの種、年齢、性別、健康状態、病状、および体重;症状の性質および範囲;併用治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎臓および肝臓の機能、および所望の効果)により当然異なる。
【0173】
一般的なガイダンスでは、各活性成分の1日経口用量は、意図した効果を得るために用いる際、約0.001~約5000mg/日、好ましくは約0.01~約1000mg/日、最も好ましくは約0.1~約250mg/日の間の範囲となる。静脈内投与における定速注入の最も好ましい用量は、約0.01~約10mg/kg/分の範囲である。本発明の化合物は、1日1回の用量で投与され得るか、または1日の総用量を2回、3回、または4回に分割した用量を投与され得る。
【0174】
本化合物は一般に、意図した投与形態(例えば、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、およびシロップ剤)に対して適切に選択され、適切な医薬希釈剤、賦形剤、または(本明細書で医薬担体と総称される)担体との混合物で投与され、従来の薬学的基準と一致するものである。
【0175】
投与に適切な剤形(医薬組成物)は、投与単位あたり約1mg~約2000mgの活性成分を包含し得る。これらの医薬組成物において、活性成分は、通常、組成物の総重量の約0.1~95%の重量で存在する。
【0176】
典型的な経口投与用のカプセルには、少なくとも1つの本発明の化合物(250mg)、ラクトース(75mg)、およびステアリン酸マグネシウム(15mg)が含まれる。この混合物は60メッシュで篩過され、No.1のゼラチンカプセルに充填される。
【0177】
典型的な注射製剤は、少なくとも1つの本発明の化合物(250mg)を無菌状態でバイアルに加え、無菌状態で凍結乾燥および密封することで製造される。使用の際は、バイアルの内容物を生理食塩水(2mL)と混合し、注射製剤を調製する。
【0178】
本発明は、治療上有効量の少なくとも1つの本発明の化合物を活性成分として、単体、または医薬担体との組み合わせで含む医薬組成物をその範囲に含む。本発明の化合物は、単体、本発明の他の化合物との組み合わせ、または1または複数の他の治療剤(例えば、抗がん剤またはその他の医薬活性物質)との組み合わせで適宜使用され得る。
【0179】
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業者には公知の従来の方法により医薬的に許容され得る投薬形態にて製剤化される。
【0180】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性がなく、特定の患者、組成物および投与様式に対して治療効果を得るために有効な活性成分の量を含むように変更され得る。
【0181】
選択される投与量レベルは、用いる本発明の特定の化合物あるいはそのエステル、塩またはアミドの活性、用いる特定の化合物の投与経路、投与時間、排泄または代謝速度、吸収の速度および程度、治療期間、用いる特定化合物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または物質、治療する患者の年齢、性別、体重、症状、健康状態、ならびに既往歴、および医学分野では公知の要素を含む、様々な要素に依存する。
【0182】
当分野における通常の技術常識を有する医師または獣医は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定でき、かつ処方することができる。例えば、医師または獣医は、治療効果を得るために、医薬組成物中で用いる本発明の化合物の投薬量を、必要量よりもより低いレベルにて開始することができ、効果が得られるまで徐々に投与量を増大させることができる。
【0183】
一般的に、本発明の化合物の適切な1日用量とは、治療効果を得るために有効な最低用量の化合物量である。そのような有効用量は、一般的に、上記の要素によって決定される。一般的に、患者への本発明の化合物の用量は、経口、静脈内、脳室内および皮下投与では、約0.01~約50mg/kg体重/日である。
【0184】
所望により、活性化合物の効果的な1日用量は、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上に分割した投与量で、1日を通して適当な間隔で、適宜単位投与形態で投与され得る。本発明のある態様において、投薬は1日1回である。
【0185】
本発明の化合物を単独で投与することは可能であるが、医薬製剤(組成物)として化合物を投与することが好ましい。
【0186】
上記のその他の治療剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用する場合、例えば、米医薬品便覧(PDR)に記載の量、またはそうでなければ当業者によって特に定められた量で使用されてもよい。本発明の方法において、その他の治療剤は、本発明の化合物の投与の前、同時、または後に投与されてもよい。
【0187】
製造方法
本発明の化合物は、有機化学の当業者が利用可能な多くの方法により合成され得る。本発明の化合物を製造するための一般的な合成スキームは、下記に記載されている。本スキームは、実例であり、当業者が本明細書に記載の化合物を製造するために用い得る、可能な技法の制限を目的とするものではない。本発明の化合物を製造するための様々な方法は、当業者に明白である。一般スキームに記載の方法により製造された本発明の化合物の実施例は、以下に記載の実施例セクションで示される。ホモキラルな実施例の製造は、当業者に公知の技法により行われ得る。例えば、ホモキラル化合物は、ラセミ生成物またはジアステレオマーをキラル相分取HPLCで分離することにより製造され得る。あるいは、化合物は、エナンチオマーリッチまたはジアステレオマーリッチな生成物を与える公知の方法により製造され得る。
【0188】
本セクションに記載の反応および技法は、用いる試薬および物質に適した溶媒中で実施され、もたらされる変換に適切である。また、以下に記載の合成方法の説明において、提示した反応条件(溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験時間およびワークアップ方法を含む)は全て、該反応の標準である条件となるように選択されていると理解され、それは当業者によって容易に認識されるべきである。分子の様々な部分に存在する官能基が、提示された試薬および反応に適合しなければならないことは、有機合成の分野の当業者により理解される。反応条件に適合する置換基がそのように制限されることは当業者にとっては容易に明白であり、存在する置換基が適さない場合、代替案が必要とされる。該反応は本発明の化合物を得るために、合成ステップの順序の変更またはある特定の反応過程を異なるものに選択する判断が必要な場合もある。また、この分野のあらゆる合成経路計画における、もう1つの重要な検討対象は、本発明に記載の所望の化合物に存在する反応性官能基の保護に用いる保護基の賢明な選択であると認識される。熟練した実験者に対し、多くの保護基の代替案を記載している権威ある文献としてWutsおよびGreene著のGreene's Protective Groups in Organic Synthesis (Fourth Edition,Wiley & Sons, 2007) が挙げられる。
【0189】
実施例
以下の実施例は、特定の、および好ましい本発明の実施態様を説明するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。化学的略語および記号、ならびに科学的略語および記号は、特に断りがない限り、その一般的および慣用的意味をもつ。本明細書の実施例および各所にて利用される、さらなる略語は上記にて定義されるとおりである。共通の中間体は、一般に、1または複数の実施例の製造に有用であり、順番に特定され(例えば、中間体1、中間体2等)、Int.1またはI1、Int.2またはI2等と略語で示される。実施例の化合物は、それらが製造される実施例および工程により特定されるか(例えば、「1-A」は実施例1の工程Aを表す)、または化合物が実施例の表題化合物である場合のみ、実施例により特定される(例えば、「1」は実施例1の表題化合物を表す)。ある場合には、中間体または実施例の代替製造方法が記載される。合成分野の当業者は、頻繁に、1または複数の検討(例えば、より短い反応時間、より安価な出発材料、操作および単離の容易さ、収率の改善、触媒の取り扱い、毒性試薬の回避、特殊な機器の利用可能性、および直線的な工程の数の削減など)に基づいて望ましい代替製造方法を考案しうる。代替製造方法を記載する意図は、本発明の実施例の製造をさらに可能とするためである。ある場合には、概略した実施例および請求項におけるいくつかの官能基は、当業者に知られている周知の生物学的等価体の置換(例えば、カルボン酸基とテトラゾールまたはホスフェート部分との置換)により置換されてもよい。重水素化ジメチルスルホキシドで収集したH NMRデータは、データ処理において水抑制を用いた。スペクトルの報告では、水抑制の影響については修正されていない。3.35ppmの水抑制周波数に隣接するプロトンはシグナル強度の減少を示す。
【0190】
略語
【表1】
【表2】
【0191】
本発明の実施例の製造において有用な中間体を合成するのに利用され得る方法は、以下のスキームにて示される。
【0192】
表示される型のベンゾオキサジン-2,4(1H)-ジオンは、強塩基、およびヨウ化メチルなどのメチル化剤で処理して、1-メチル-2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4(1H)-ジオンを得ることができる。これらは、例えば、ニトロアセテートで処理して、1-メチル-3-ニトロキノリン-2,4(1H,3H)-ジオンを生成し得る。かかる化合物は、関連する4-クロロ誘導体に順次変換され、それは多種多様な官能基を付与したピペリジンと反応し、本発明の実施例を得ることができる。
【0193】
他の方法において、ピコリン酸は標準的条件下でエステル化され、ついで、例えば、無水酢酸で処理され、エチル 3-アセトアミドピコリネートを得てもよい。これらは標準的条件下でアルキル化され、その後で過酸化水素と無水トリフルオロ酢酸との混合物で処理し、関連するN-オキシド、例えば、2-(エトキシカルボニル)-3-(N-メチルアセトアミド)ピリジン 1-オキシドにアクセスしてもよい。当業者に公知の条件下、これらの中間体は6-シアノ-3-(N-メチルアセトアミド)ピコリネートに変換され、それは塩基での処理で環化され、1,5-ナフチリジン-2,4(1H,3H)-ジオンを得ることができる。この型の化合物は、多種多様な方法にて誘導体化され、多くの有用な中間体にアクセスし得る。例えば、標準的な窒化条件下で処理し、関連する1-メチル-3-ニトロ-1,5-ナフチリジン-2,4(1H,3H)-ジオンを生成することができ、それは標準的条件下で4-クロロ-または4-トリフルオロメタンスルホネート中間体に変換され、それを様々な官能基を付与したピペリジンと反応させ、本発明のさらなる実施例を得ることができる。別法として、臭素化条件下で処理し、例えば、DMF中にてN-ブロモスクシンイミドで処理すると、関連した3-ブロモ誘導体を得ることができ、これが上記のように誘導体化されると、ヘテロサイクルの4-位でピペリジンの多様性を導入すること、ならびにさらにはナフチリジンの3-位で誘導体化することの両方が可能となる。例えば、芳香族およびヘテロ芳香族の部分は、当該分野にて知られるカップリング化学によってこのベクターに導入され得る。
【0194】
さらなる方法において、関連するエチル 3-アミノピコリネートより生成されるエチル 3-アミノ-6-ブロモピコリネートは、上記のように処理され、6-ブロモ-1-メチル-1,5-ナフチリジン-2,4(1H,3H)-ジオンを得ることができ、それはナフチリジンヘテロサイクルの6位に部分の多様性を導入することを可能とし、その一例が、スキーム1に示されるように、この位置にシアノ官能基を導入することである。
【0195】
スキーム1
【化11】
【0196】
本発明の中間体の合成にて有用であり得る、さらなる方法を以下のスキームに示す。
エチル 3-アミノ-6-ブロモピコリネートは、2-シアノアセチルクロリドで処理されると、環化して6-ブロモ-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,5-ナフチリジン-3-カルボニトリルを生成することができる。これらは、標準的条件下でN1でアルキル化され、その後で、他の実施例の製造において有用である、関連する6-ブロモ-3-シアノ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-4-イル トリフルオロメタンスルホネートに変換されてもよい。あるいはまた、ジオキサン中でPOClおよびHClで順次処理すると、有用な中間体でもある、4,6-ジクロロ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-3-カルボニトリルとアクセスすることができる。
【0197】
スキーム2
【化12】
【0198】
本発明の実施例の6位にシアノモチーフを導入するのに有用であり得る他の合成方法は、エチル 6-ブロモ-3-(2-シアノアセトアミド)ピコリネート中間体を、パラジウム触媒の条件下で、亜鉛およびシアン化亜鉛で処理し、エチル 3-(2-シアノアセトアミド)-6-シアノピコリネートを生成することを含み得る。これらは、上記されるような方法を用いて誘導体化され、4-クロロ-6-イソシアノ-1-メチル-2-オキソ-1、2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-3-カルボニトリルとアクセスすることができ、これを多様に官能基を付与したピペリジンと反応させ、本発明の多くの実施例を生成することができる。
【0199】
さらに有用な中間体は、下記のスキームに示されるように、適切に官能基を付与したナフチリジノンおよびキノロンヘテロサイクルと、様々に官能基を付与したピペリジンとを縮合させることにより製造され得る。かかる中間体は、例えば、適宜に官能基を付与した芳香族またはヘテロ芳香族カップリングパートナーとの光延またはSNAr反応を用いてさらに工夫することにより、本発明の実施例に変換されてもよい。
【0200】
実施例
以下の実施例は、特定の、および好ましい本発明の実施態様を説明するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。化学的略語および記号、ならびに科学的略語および記号は、特に断りがない限り、その一般的および慣用的意味をもつ。本明細書の実施例および各所にて利用される、さらなる略語は上記にて定義されるとおりである。共通の中間体は、一般に、1または複数の実施例の製造に有用であり、順番に特定され(例えば、中間体1、中間体2等)、Int.1またはI1、Int.2またはI2等と略語で示される。実施例の化合物は、それらが製造される実施例および工程により特定されるか(例えば、「1-A」は実施例1の工程Aを表す)、または化合物が実施例の表題化合物である場合のみ、実施例により特定される(例えば、「1」は実施例1の表題化合物を表す)。ある場合には、中間体または実施例の代替製造方法が記載される。合成分野の当業者は、頻繁に、1または複数の検討(例えば、より短い反応時間、より安価な出発材料、操作および単離の容易さ、収率の改善、触媒の取り扱い、毒性試薬の回避、特殊な機器の利用可能性、および直線的な工程の数の削減など)に基づいて望ましい代替製造方法を考案しうる。代替製造方法を記載する意図は、本発明の実施例の製造をさらに可能とするためである。ある場合には、概略した実施例および請求項におけるいくつかの官能基は、当業者に知られている周知の生物学的等価体の置換(例えば、カルボン酸基とテトラゾールまたはホスフェート部分との置換)により置換されてもよい。重水素化ジメチルスルホキシドで収集したH NMRデータは、データ処理において水抑制を用いた。スペクトルの報告では、水抑制の影響については修正されていない。3.35ppmの水抑制周波数に隣接するプロトンはシグナル強度の減少を示す。
【0201】
略語
【表3】
【表4】
【0202】
本発明の実施例の製造において有用な中間体を合成するのに利用され得る方法は、以下のスキームにて示される。
【0203】
LCMS条件:
方法A:カラム:エックス・ブリッジ(XBridge) BEH XP C18(50x2.1mm)、2.5μm;移動相A:95%水:5%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;移動相B:5%水:95%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;流れ:1.1mL/分;温度:50℃;時間(分):0-3;%B:0-100%)
方法B:カラム:キネテックス(Kinetex)XB-C18(3x75mm)2.6μm;移動相A:10mMギ酸アンモニウム:アセトニトリル(98:2)、移動相B:10mMギ酸アンモニウム:アセトニトリル(2:98)、勾配=4分間にわたって20-100%Bとし、ついで100%Bで0.6分間保持する;温度:27℃;流速:1.0mL/分;検出:UV(220nm)
方法C: カラム:ウォーターズ(Waters)・エックス・ブリッジC18、2.1mmx50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0%B~100%Bとし、ついで100%Bで0.50分間保持する;流れ:1mL/分;検出:MSおよびUV(220nm)
【0204】
スキーム1
【化13】
【0205】
実施例1
4-((2S,5R)-2,5-ジエチル-4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル
【化14】
【0206】
4-((2S,5R)-2,5-ジエチルピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル・塩酸塩(50mg、0.14ミリモル)の1,4-ジオキサン(3mL)中の撹拌した溶液に、1-ブロモ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(78mg、0.34ミリモル)、炭酸セシウム(135mg、0.41ミリモル)およびrac-BINAP(17.2mg、0.028ミリモル)を室温にて連続して添加した。反応混合物をアルゴンでパージし、Pd(dba)(12.6mg、0.01ミリモル)をアルゴン下で添加した。反応バイアルを密封し、100℃で14時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(2x30mL)で抽出し、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して粗残渣を得、それを分取性HPLC[方法:ウォーターズ・エックス・ブリッジC18、19x150mm、5μm粒子;移動相A:10mM酢酸アンモニウム;移動相B:アセトニトリル;勾配:20分間にわたって15-75%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流れ:15mL/分]に付して精製し、4-((2S,5R)-2,5-ジエチル-4-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(4.5mg、収率7%)を得た。LCMS:m/z、471.2(M+H);保持時間:2.20分間;(LCMS方法:カラム:エックス・ブリッジ BEH XP C18(50x2.1)mm、2.5μm;移動相A:95%水:5%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;移動相B:5%水:95%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;流れ:1.1mL/分;温度:50℃;時間(分):0-3;%B:0-100%);H NMR(400MHz、DMSO-d)δ ppm 8.28(dd,J=4.2、8.8Hz,1H)、8.03(brdd,J=6.2、8.7Hz,1H)、7.49(d,J=8.8Hz,2H)、7.06(brd,J=8.1Hz,2H)、6.02-5.65(m,1H)、5.24-4.90(m,1H)、4.16-3.97(m,1H)、3.78(brd,J=12.5Hz,1H)、3.46(s,3H)、3.42-3.35(m,1H)、3.30(brs,1H)、1.96-1.72(m,2H)、1.61(brd,J=7.6Hz,1H)、1.45-1.28(m,1H)、1.01-0.73(m,6H)
【0207】
表1に記載の実施例2は、実施例1において開示される一般的操作に従って、適切なピペリジンより製造された。
表1
【表5】
【0208】
実施例3
4-((2S,5R)-5-エチル-4-(3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル
【化15】
【0209】
4-((2S,5R)-5-エチル-2-メチルピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(30mg、0.10ミリモル)の1,4-ジオキサン(2mL)中の撹拌した溶液に、4-ブロモ-2-フルオロ-1-(トリフルオロメチル)ベンゼン(28.0mg、0.11ミリモル)、CsCO(94mg、0.29ミリモル)およびX-Phos Pd-G2(1310584-14-5)(8mg、9.60マイクロモル)を室温にて添加した。反応混合物をアルゴンで5分間にわたって脱気処理に付した。バイアルを密封し、110℃で14時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、シリンジフィルターを介して濾過し、過剰量のEtOAcで洗浄し、濾液を減圧下で濃縮して粗残渣を得、それを分取性HPLC[方法:ウォーターズ・ エックス・ブリッジC18、19x150mm、5μm粒子;移動相A:10mM酢酸アンモニウム;移動相B:アセトニトリル;勾配:20分間にわたって15-75%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流れ:15mL/分]に付して精製し、4-((2S,5R)-5-エチル-4-(3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリド[3,2-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(19mg、収率40%)を得た。LCMS:m/z、475.2(M+H);保持時間:2.12分間;(LCMS方法:カラム:エックス・ブリッジ BEH XP C18(50x2.1)mm、2.5μm;移動相A:95%水:5%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;移動相B:5%水:95%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;流れ:1.1mL/分;温度:50℃;時間(分):0-3;%B:0-100%);H NMR(400MHz、DMSO-d)δ ppm 8.27(d,J=8.8Hz,1H)、8.03(d,J=9.0Hz,1H)、7.47(t,J=9.0Hz,1H)、6.95(brd,J=15.4Hz,1H)、6.85(dd,J=0.9、8.4Hz,1H)、5.93-5.79(m,1H)、5.21-4.89(m,1H)、4.20-4.02(m,1H)、3.87-3.69(m,2H)、3.47(s,3H)、3.42-3.35(m,1H)、1.76-1.57(m,1H)、1.53-1.18(m,4H)、0.91(t,J=7.5Hz,3H)
【0210】
表2に記載の実施例4は、実施例3において開示される一般的操作に従って、適切なピペリジンより製造された。
表2
【表6】
【0211】
中間体1
tert-ブチル (2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化16】
【0212】
tert-ブチル (2S,5R)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(0.155g、0.721ミリモル)のDMSO(4mL)中溶液に、8-ブロモキノリン(0.1g、0.481ミリモル)、[(2,6-ジメチルフェニル)カルバモイル]ギ酸(0.019g、0.096ミリモル)、ヨウ化銅(I)(9.15mg、0.048ミリモル)および三塩基性リン酸カリウム(0.204g、0.961ミリモル)を添加した。反応混合物にアルゴンを1分間にわたって通気した。反応容器に蓋をし、100℃で一夜加熱した。反応をLC-MS(アクイティ(Acquity) UPLC BEH C18 2.1x50mm、1.7μmカラム;0-100%B;2分間勾配、3分間の駆動 0.8mL/分の流速(溶媒A:90%水、10%メタノール、0.1%TFA:溶媒B:10%水、90%メタノール、0.1%TFA)でモニター観察した。生成物の形成が観察され、少量の出発材料が観察された。さらなる[(2,6-ジメチルフェニル)カルバモイル]ギ酸(0.019g、0.096ミリモル)、ヨウ化銅(I)(9.15mg、0.048ミリモル)および三塩基性リン酸カリウム(0.204g、0.961ミリモル)を添加し、反応混合物を100℃で一夜にわたって加熱した。LC-MSでは出発材料を全く検出しなかった。反応混合物を濾過し、逆相分取性HPLC(30x100mm エックステラ(Xterra)カラム、および5-100%B、12分間勾配、14分間の稼働(溶媒A:90%水、10%アセトニトリル、0.1%TFA:溶媒B:10%水、90%アセトニトリル、0.1%TFA))に付して精製した。必要とされるフラクションを濃縮し、tert-ブチル (2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(0.068g、0.199ミリモル、収率41.4%)を得た。LC-MS:Rt=1.76分間、(M+H)=342.35
【0213】
中間体2
8-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)キノリン
【化17】
【0214】
tert-ブチル (2S,5R)-2,5-ジメチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(0.068g、0.199ミリモル)の室温でのジクロロメタン(4mL)中溶液に、HCl(0.149mL、0.597ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で一夜撹拌した。反応をLC-MS(アクイティ UPLC BEH C18 2.1x50mm 1.7μmカラム;0-100%B;2分間の勾配、3分間の稼働時間;0.8mL/分の流速(溶媒A:90%水、10%メタノール、0.1%TFA:溶媒B:10%水、90%メタノール、0.1%TFA))に付してモニター観察した。生成物のピークが正確な質量と一緒に観察された。反応混合物を濃縮し、8-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)キノリン(0.048g、0.199ミリモル、収率100%)を粗生成物として得た。LC-MS:Rt=1.36分間、(M+H)=242.30
【0215】
実施例5
(S)-5-メチル-8-(2-メチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル
【化18】
【0216】
6-シアノ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-4-イル トリフルオロメタンスルホネート(0.030g、0.090ミリモル)の窒素下の室温でのDMF(15mL)中溶液に、8-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)キノリン(0.024g、0.099ミリモル)およびDIEA(0.039mL、0.225ミリモル)を添加した。反応容器に蓋をし、80℃で一夜加熱した。反応物をLC-MS(アクイティ UPLC BEH C18 2.1x50mm 1.7μmカラム;0-100%B;2分間の勾配、3分間の駆動時間、0.8mL/分の流速(溶媒A:90%水、10%メタノール、0.1%TFA:溶媒B:10%水、90%メタノール、0.1%TFA))に付してモニター観察した。生成物の形成が観察された。反応混合物を濃縮し、残渣をメタノールに溶かし、濾過し、分取性LC/MSを介して次の条件(カラム:エックス・ブリッジC18、200mmx19mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;勾配:29%Bで0分間保持し、25分間にわたって29-69%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流速:20mL/分)を用いて精製した。必要とされるフラクションを合わせ、濃縮して(S)-5-メチル-8-(2-メチル-4-(キノリン-8-イル)ピペラジン-1-イル)-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(0.0057g、0.013ミリモル、収率15%)を得た。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ 8.94(brd,J=3.1Hz,1H)、8.41(brd,J=7.6Hz,1H)、8.23-8.08(m,2H)、7.57-7.50(m,1H)、7.24(s,2H)、7.13(s,1H)、7.03(s,1H)、6.16(s,1H)、5.04-4.93(m,1H)、4.91-4.81(m,1H)、3.99-3.82(m,2H)、3.57(s,2H)、3.13(brd,J=11.3Hz,1H)、2.55(s,1H)、1.33(d,J=6.7Hz,3H)、1.03(d,J=6.7Hz,3H);LC-MS:Rt=1.21分間、(M+H)=425.26
【0217】
QC方法1:カラム:ウォーターズ・エックス・ブリッジC18、2.1mmx50mm、1.7μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+0.1%トリフルオロ酢酸;温度:50℃;勾配:3分間にわたって0%B~100%Bとし、ついで100%Bで0.50分間保持する;流れ:1mL/分;検出:MSおよびUV(220nm)
【0218】
表3に示される化合物は、上記した実施例5と同じ化学的方法を用いて、6-シアノ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-4-イル・トリフルオロメタンスルホネートより製造された。
【0219】
表3
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0220】
実施例25
【化19】
【0221】
8-((2S,5R)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(50mg、0.17ミリモル)のDMSO(4mL)中の撹拌した溶液に、2-クロロ-6-フルオロベンゾ[d]チアゾール(38mg、0.20ミリモル)およびKCO(70mg、0.50ミリモル)を添加した。反応混合物を90℃で一夜加熱した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(3x30mL)で抽出し、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗残渣を得、それを分取性HPLC(カラム:ウォーターズ・エックス・ブリッジ C18、19x150mm、5μm粒子;移動相A:10mM酢酸アンモニウム;移動相B:アセトニトリル;勾配:20分間にわたって15-50%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流れ:15mL/分)に付して精製し、8-((2S,5R)-4-(6-フルオロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(10mg、収率13%)を得た。LCMS:m/z、449.2(M+H);RT 1.98分間;(LCMS方法:カラム:エックス・ブリッジ BEH XP C18(50x2.1)mm、2.5μm;移動相A:95%水:5%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;移動相B:5%水:95%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;流れ:1.1mL/分;温度:50℃;時間(分):0-3;%B:0-100%);H NMR(400MHz、DMSO-d)δ ppm 8.26-8.18(m,1H)、8.16-8.06(m,1H)、7.74(dd,J=2.7、8.8Hz,1H)、7.46(dd,J=4.6、8.8Hz,1H)、7.13(dt,J=2.7、9.0Hz,1H)、6.14(s,1H)、4.74-4.62(m,1H)、4.43(brd,J=2.4Hz,1H)、3.93-3.70(m,3H)、3.64(dd,J=3.7、13.2Hz,1H)、3.56(s,3H)、1.40(d,J=6.6Hz,3H)、1.20(d,J=6.6Hz,3H)
【0222】
中間体3
tert-ブチル (2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート
【化20】
【0223】
tert-ブチル (2S,5R)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(300mg、1.40ミリモル)のトルエン(4mL)中溶液に、2-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)チアゾール(400mg、1.54ミリモル)、ナトリウム tert-ブトキシド(404mg、4.20ミリモル)、キサントホス(81mg、0.14ミリモル)を添加した。反応混合物をアルゴンを用いて5分間にわたって脱気処理に付した。次に、Pd(dba)(128mg、0.14ミリモル)を室温で添加し、つづいて110℃で14時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水で希釈し、EtOAc(3x50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(カラム:12gシリカ;溶媒駆動:石油エーテル中25-40%EtOAc)に付して精製しtert-ブチル (2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(300mg、収率55%)を得た。LCMS:m/z、392.3(M+H);rt 2.34分間;カラム:ウォーターズ・アクイティー(Waters Acquity) UPLC BEH C18(2.1x50mm)1.7μm、移動相A:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(95:5);移動相B:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(5:95)、勾配=1.1分間にわたって20-90%Bとし、ついで90%Bで0.6分間保持する;温度:50℃; 流速:0.7mL/分;検出:UV(220nm)
【0224】
中間体4
2-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)チアゾール・HCl
【化21】
【0225】
tert-ブチル (2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(250mg、0.64ミリモル)のDCM(5mL)中溶液に、ジオキサン中4N HCl(0.8mL、3.19ミリモル)を0℃で添加した。反応混合物を室温に到達させ、2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、乾燥させて2-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)チアゾール・HCl(150mg、収率81%)を得た。LCMS:m/z、292.3(M+H);rt 1.36分間;カラム:ウォーターズ・アクイティー UPLC BEH C18(2.1x50mm)1.7μm、移動相A:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(95:5);移動相B:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(5:95)、勾配=1.1分間にわたって20-90%Bとし、ついで90%Bで0.6分間保持する;温度:50℃; 流速:0.7mL/分;検出:UV(220nm)
【0226】
実施例26
8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル
【化22】
【0227】
2-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)チアゾール・HCl(54mg、0.16ミリモル)のアセトニトリル(5mL)中溶液に、炭酸水素ナトリウム(125mg、1.50ミリモル)および6-シアノ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-4-イル トリフルオロメタンスルホネート(50mg、0.15ミリモル)を室温にて添加した。得られた混合物を80℃で14時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去し、粗残渣を得た。該粗残渣を分取性HPLC(カラム:ウォーターズ・ エックス・ブリッジC18、150mmx19mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;勾配:15%Bで0分間保持し、25分間にわたって15-55%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流速:15mL/分、カラム温度:25℃)に付して精製し、8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)チアゾール-2-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(4.3mg、収率6%)を得た。LCMS:m/z、475.1(M+H);RT 2.08分間;(LCMS方法:カラム:エックス・ブリッジ BEH XP C18(50x2.1)mm、2.5μm;移動相A:95%水:5%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;移動相B:5%水:95%アセトニトリル;10mM酢酸アンモニウム;流れ:1.1mL/分;温度:50℃;時間(分):0-3;%B:0-100%);H NMR(400MHz、DMSO-d)δ ppm 8.26-8.17(m,1H)、8.15-8.07(m,1H)、7.92(dd,J=5.6、8.6Hz,2H)、7.30-7.14(m,3H)、6.14(s,1H)、4.76-4.63(m,1H)、4.37(brs,1H)、3.87(brd,J=12.5Hz,1H)、3.76-3.61(m,3H)、3.56(s,3H)、1.37(d,J=6.6Hz,3H)、1.22(d,J=6.6Hz,3H)
【0228】
中間体5
5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール
【化23】
【0229】
4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール(800mg、4.14ミリモル)のDCM(8mL)中溶液に、Br2(0.25mL、4.55ミリモル)を室温にて添加し、つづいて45℃で4時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水で希釈し、EtOAc(3x50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。該粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(カラム:12gシリカ;溶媒稼働:石油エーテル中25-40%EtOAc)に付して精製し、5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール(900mg、収率80%)を得た。H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ ppm7.82-7.96(m,2H)、7.08-7.16(m,2H)、2.70(s,3H)
【0230】
中間体6
tert-ブチル (2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート
【化24】
【0231】
tert-ブチル (2S,5R)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(300mg、1.40ミリモル)のトルエン(4mL)中溶液に、5-ブロモ-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール(420mg、1.54ミリモル)、ナトリウム tert-ブトキシド(410mg、4.20ミリモル)、およびキサントホス(Xantphos)(81mg、0.14ミリモル)を添加した。反応混合物をアルゴンを用いて5分間にわたって脱気処理に付した。次に、Pd(dba)(130mg、0.14ミリモル)を室温で添加し、つづいて110℃で14時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水で希釈し、EtOAc(3x50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。該粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(カラム:12gシリカ;溶媒駆動:石油エーテル中25-40%EtOAc)に付して精製し、tert-ブチル (2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(350mg、収率62%)を得た。LCMS:m/z、406.4(M+H);rt 2.32分間;カラム:ウォーターズ・アクイティー UPLC BEH C18(2.1x50mm)1.7μm、移動相A:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(95:5);移動相B:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(5:95)、勾配=1.1分間にわたって20-90%Bとし、ついで90%Bで0.6分間保持する;温度:50℃; 流速:0.7mL/分;検出:UV(220nm)
【0232】
中間体7
5-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール・塩酸塩
【化25】
【0233】
tert-ブチル (2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-カルボキシレート(300mg、0.74ミリモル)のDCM(8mL)中溶液に、ジオキサン中4N HCl(0.8mL、3.70ミリモル)を0℃にて添加した。反応混合物を室温に到達させ、2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、乾燥させて5-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール・HCl(180mg、収率71%)を得た。LCMS:m/z、306.3(M+H);rt 1.11分間;カラム:ウォーターズ・アクイティー UPLC BEH C18(2.1x50mm)1.7μm、移動相A:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(95:5);移動相B:10mM酢酸アンモニウム:アセトニトリル(5:95)、勾配=1.1分間にわたって20-90%Bとし、ついで90%Bで0.6分間保持する;温度:50℃; 流速:0.7mL/分;検出:UV(220nm)
【0234】
実施例27
8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル
【化26】
【0235】
5-((2R,5S)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール・HCl(50mg、0.15ミリモル)のアセトニトリル(5mL)中溶液に、炭酸水素ナトリウム(62mg、0.73ミリモル)および6-シアノ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-4-イル トリフルオロメタンスルホネート(59mg、0.18ミリモル)を室温にて添加した。 反応混合物を80℃で14時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去し、粗残渣を得た。該粗残渣を分取性HPLC(カラム:ウォーターズ・エックス・ブリッジC18、150mmx19mm、5μm粒子;移動相A:5:95 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;移動相B:95:5 アセトニトリル:水+10mM酢酸アンモニウム;勾配:15%Bで0分間保持し、25分間にわたって15-65%Bとし、ついで100%Bで5分間保持する;流速:15mL/分、カラム温度:25℃)に付して精製し、8-((2S,5R)-4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルチアゾール-5-イル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)-5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル(7.8mg、収率10%)を得た。LCMS:m/z、489.2(M+H);rt 1.44分間;(LCMS方法:カラム:エックス・ブリッジ BEH XP C18(50x2.1)mm、2.5μm;移動相A:95%水:5%アセトニトリル;0.1%TFA;移動相B:5%水:95%アセトニトリル;0.1%TFA;流れ:1.1mL/分;温度:50℃;時間(分):0-3;%B:0-100%);H NMR(400MHz、DMSO-d)δ ppm 8.15-8.23(m,1H)、7.95-8.12(m,4H)、7.28(t,J=8.8Hz,2H)、6.10(s,1H)、4.42-4.53(m,1H)、4.02-4.13(m,1H)、3.95(d,J=15.9Hz,1H)、3.58-3.61(m,1H)、3.55(s,3H)、3.23-3.30(m,1H)、3.09-3.16(m,1H)、1.27(d,J=6.6Hz,3H)、1.21(d,J=6.4Hz,3H)、(3Hは溶媒のピークで不明瞭とされ得る)
【0236】
生物学的アッセイ
本発明の化合物の薬理学的特性は、多数の生物学的アッセイにより確認され得る。下記に例示の生物学的アッセイを、本発明の化合物を用いて行った。
【0237】
アッセイ1:インビトロDGK阻害アッセイ(方法A)
DGKαおよびDGKζの反応を、押出したリポソームを用いて行った(DGKαおよびDGKζのLIPGLOアッセイ)。反応は、50mM MOPS pH7.5、100mM NaCl、10mM MgCl、1μM CaCl、および1mM DTT(アッセイ緩衝液)で実施された。脂質基質濃度は、押出したリポソーム反応では、2mM PS、0.25mM DAG、および2.75mM PCとした。反応を150μM ATP中で行った。酵素濃度はDGKαおよびDGKζでは5nMであった。
【0238】
化合物の阻害実験は、以下のように行われた:DMSOに溶解した各試験化合物の50nLの液滴(各化合物について最高濃度10mMから11ポイントで3倍連続希釈する)を、白色1536ウェルプレート(Corning 3725)のウェルに移した。2.5mLの4x酵素溶液(アッセイ緩衝液中の20nM DGKαまたはDGKζ(下記のように製造される))と、2.5mLの4xリポソーム溶液(下記の組成物)とを合わせることで、5mLの酵素/基質溶液を2xの最終反応濃度で製造し、室温で10分間インキュベートした。次に、1μLの2x酵素/基質溶液を、試験化合物を含有するウェルに加え、1μLの300μM ATPを加えて反応を開始させた。1時間にわたって反応を進行させ、その後で2μLのGlo試薬(Promega V9101)を加え、40分間インキュベートした。次に、4μLのキナーゼ検出試薬を加え、30分間インキュベートした。エンビジョン(EnVision)製マイクロプレートリーダーを用いて発光を記録した。%阻害は、酵素不含の対照反応を100%阻害とし、ビヒクルのみの反応を0%阻害とすることで生成されるATP変換から算出された。化合物を11の濃度で評価し、IC50を決定した。
【0239】
4xリポソームの調製
脂質組成は、4xリポソーム溶液では、5モル%DAG(Avanti 800811O)、40モル%PS(Avanti 840035P)、および55モル%PC(Avanti 850457)であり、総合脂質濃度は15.2mg/mLであった。PC、DAG、およびPSをクロロホルムに溶解し、合わせ、真空下で乾燥させ、薄膜とした。脂質を50mM MOPS pH7.5、100mM NaCl、5mM MgCl中で20mMに中和し、冷凍-解凍を5回繰り返した。脂質懸濁液を100nmのポリカーボネートフィルターを介して11回押出した。動的光散乱法を行い、リポソームの大きさを確認した(半径50~60nm)。リポソーム調製液を4℃で4週間と長期間保存した。
【0240】
ヒトDGKαおよびDGKζにおけるバキュロウイルス発現
ヒトDGK-アルファ-TVMV-His-pFBゲートおよびヒトDGK-ゼータ-転写変種-2-TVMV-His-pFBゲートのバキュロウイルスサンプルを、Bac-to-Bac(登録商標)バキュロウイルス発現システム(Invitrogen)を用い、メーカーのプロトコルに従って調製した。DGK-アルファおよびDGK-ゼータの発現に用いたDNAは、それぞれ、配列番号1および3である。バキュロウイルスの増幅は、ウイルス/細胞が1:1500の割合で感染したSf9細胞を用いて行われ、遺伝子導入後、65時間27℃で増殖させた。
各タンパク質の発現のスケールアップは、Cellbag 50L WAVEバイオリアクターシステム20/50(GE Healthcare Bioscience製)で行った。ESF921昆虫細胞培地(Expression System)で培養した12Lの2x10細胞/mLのSf9細胞(Expression System、Davis、CA)を、ウイルス/細胞が1:200の割合のウイルスストック溶液を用いて感染させ、感染後66~68時間27℃で増殖させた。SORVALL(登録商標)RC12BP遠心機(2000rpm、20分間、4℃)で遠心分離に付し、感染細胞培養物を回収した。細胞ペレットを精製するまで-70℃で保存した。
【0241】
ヒトDGK-アルファおよびDGK-ゼータの精製
TVMV切断可能な、C末端Hex-Hisタグ配列(それぞれ、配列番号2および4)を含有して発現し、上記のように製造された、各全長ヒトDGKαおよびDGKζを、Sf9バキュロウイルス感染昆虫細胞ペーストから精製した。窒素キャビテーション法を用いて窒素破砕器(Parr Instruments)で細胞を溶解させ、ライセートを遠心分離により清澄化した。清澄化したライセートを、AKTA Purifier Plusシステムで3連続のカラムクロマトグラフィー工程を用い、均質性が約90%となるまで精製した。3工程のカラムクロマトグラフィーには、ニッケルアフィニティレジンキャプチャー(すなわち、HisTrap FF crude、GE Healthcare)、つづいてサイズ排除クロマトグラフィー(すなわち、DGK-αにはHiLoad 26/600 Superdex 200 分取用グレード、GE Healthcare; DGK-ζにはHiPrep 26/600 Sephacryl S 300_HR、GE Healthcare)が含まれる。第3の工程はイオン交換クロマトグラフィーであり、2つのアイソフォームで異なる。DGKαは、Q-セファロースアニオン交換クロマトグラフィー(GE Healthcare)を用いて精錬された。DGKζは、SPセファロースカチオン交換クロマトグラフィー(GE Healthcare)を用いて精錬された。タンパク質は、2mg/mLの濃度でデリバーされた。製剤用緩衝液は、両タンパク質で同一であり、50mM Hepes、pH7.2、500mM NaCl、10%v/vグリセロール、1mM TCEP、および0.5mM EDTAであった。
【0242】
アッセイ2:インビトロDGK阻害アッセイ(方法B)
DGKαおよびDGKζの反応を、押出したリポソームを用いて行った(DGKαおよびDGKζのLIPGLOアッセイ)。反応は、50mM MOPS pH7.5、100mM NaCl、10mM MgCl、1μM CaCl、および1mM DTT(アッセイ緩衝液)で実施された。脂質基質濃度は、押出したリポソーム反応(合計で5mMの脂質)では、2mM PS、0.25mM DAG、および2.75mM PCとした。反応を150μM ATP中で行った。酵素濃度はDGKαおよびDGKζでは5nMであった。
【0243】
化合物の阻害実験は、以下のように行われた:DMSOに溶解した各試験化合物の25nLの液滴(各化合物について最高濃度10mMから11ポイントで3倍連続希釈する)を、白色1536ウェルプレート(Corning 3725)のウェルに移した。2.5mLの4x酵素溶液(アッセイ緩衝液中の20nM DGKαまたはDGKζ(下記のように製造される))と、2.5mLの4x界面活性剤/脂質ミセル溶液(下記の組成物)とを合わせることで、5mLの酵素/脂質基質溶液を2xの最終反応濃度で製造し、室温で10分間インキュベートした。次に、1μLの2x酵素/脂質基質溶液を、試験化合物を含有するウェルに加え、1μLの300μM ATPを加えて反応を開始させた。2時間にわたって反応を進行させ、その後で2μLのGlo試薬(Promega V9101)を加え、40分間インキュベートした。次に、4μLのキナーゼ検出試薬を加え、30分間インキュベートした。エンビジョン製マイクロプレートリーダーを用いて発光を記録した。%阻害は、酵素不含の対照反応を100%阻害とし、ビヒクルのみの反応を0%阻害とすることで生成されるATP変換から算出された。化合物を11の濃度で評価し、IC50を決定した。
【0244】
2xリポソームの調製
脂質組成物は、リポソーム溶液では、5モル%DAG(Avanti 800811O)、40モル%PS(Avanti 840035P)、および55モル%PC(Avanti 850457)であり、全体としての脂質濃度は7~8mg/mLであった。PC、DAG、およびPSをクロロホルムに溶解し、合わせ、真空下で乾燥させて薄膜とした。該脂質を50mM MOPS、pH7.5、100mM NaCl、5mM MgCl中で20mMに水和させ、5回凍結-解凍を繰り返した。脂質懸濁液を100nmポリカーボネートフィルターを通して10~12回押出した。動的光散乱を行い、リポソームの大きさ(半径50~60nm)を確認した。リポソーム調製液を4℃で4週間と長期間保存した。
【0245】
全長に近いヒトDGKαおよび全長ヒトDGKζのバキュロウイルス発現
ヒトMA-hDGKα-(S9-S727)-Ct-TVMV-His-pFBゲートおよび全長ヒトDGK-ζ-転写変種-2-TVMV-His-pFBゲートのバキュロウイルスサンプルを、Bac-to-Bacバキュロウイルス発現システム(Invitrogen)を用いて、メーカーのプロトコルに従って調製した(DGKα試薬の名前の「MA-」は、2つの追加アミノ酸がSer-9の前に付加されたことを示す)。DGKα(9-727)およびDGKζの発現に用いたDNA配列は、それぞれ配列番号5および3である。バキュロウイルスの増幅は、ウイルス/細胞が1:1500の割合で感染したSf9細胞を用いて達成され、遺伝子導入後に27℃で65時間増殖させた。
【0246】
全長に近いDGK-α(9-727)タンパク質についての発現のスケールアップは、フラスコ(2L)中で行われ、全長DGKζについては、Cellbag 50L WAVEバイオリアクターシステム(GE Healthcare Bioscience製)を用いて行われた。タンパク質は、同様の条件を用い、異なる容量で発現された。DGKα(9-727)の発現には、各々が、0.8Lの最終容量の培地を含有する2x2Lフラスコを用い、DGKζは50LのCellbag中、12Lのスケールで培養した。それぞれについて、初期密度が2x10細胞/mLのSf9細胞(Expression System, Davis, CA)をESF921昆虫細胞培地(Expression System)に播種し、ウイルスストックにウイルス/細胞が1:200の割合で感染させ、感染後に27℃で66~68時間増殖させた。感染した細胞培養物は、ソルバール(SORVALL)(登録商標)RC12BP遠心機にて2000rpm、4℃で20分間にわたって遠心分離に付して収穫された。細胞ペレットを、精製するまで-80℃で貯蔵した。
【0247】
ヒトDGK-アルファおよびDGK-ゼータの精製
ヒトDGKα(9-727)および全長DGKζは、各々、TVMV切断可能な、C末端Hex-Hisタグ配列(それぞれ配列番号2および4)を含有して発現し、上記のように製造され、Sf9バキュロウイルス感染昆虫細胞ペーストから精製された。細胞ペーストを解凍し、緩衝液(50mM HEPES、pH7.2、300mM NaCl、10%v/vグリセロール、1mM TCEP、ベンゾナーゼおよびプロテアーゼ阻害剤を含有する)に懸濁させ、元の培養容量の1:10v/vとした。溶解を、窒素キャビテーション法を用いて窒素破砕器(Parr Instruments)で達成され、ライセートを高速遠心分離に付して清澄化した。清澄化したライセートを、AKTA Purifier Plusシステムで、各々、2または3連続のカラムクロマトグラフィー工程を用いて、均質性が約90%となるまで精製した。両方のアイソフォームは、イミダゾール勾配溶出を用いるニッケルアフィニティ精製(すなわち、HisTrap FF, GE Healthcare)に付し、つづいてサイズ排除クロマトグラフィー(すなわち、DGKα(9-727)では、HiLoad 26/600 Superdex 200 分取用グレード、GE Healthcare;DGKζでは、HiPrep 26/600 Sephacryl S 300 HR, GE Healthcare)に付して精製した。これらの2つの工程は、DGKα(9-727)を>90%の純度でもたらした。全長DGKζで同等の純度を達成するためには、カチオン交換クロマトグラフィー(SP Sepharose FF、GE Healthcare)を利用し、NaCl勾配で溶出する第3の工程が必要となる。最終的な製剤用緩衝液は両タンパク質で似ており、DGKα(9-727)では50mM Hepes、pH7.3、300mM NaCl、10%v/vグリセロール、および1mM TCEP中で調製され、全長DGKζでは50mM Hepes、pH7.3、500mM NaCl、5%v/vグリセロール、および1mM TCEP中で調製された。タンパク質を1~2mg/mLに濃縮し、急速冷凍に付し、長期保存のために-80℃で保管した。
【0248】
アッセイ3:Raji CD4 T細胞IL2アッセイ
1536ウェルのIL-2アッセイを、4μLの容量にて、予め活性化させたCD4T細胞およびRaji細胞を用いて行った。アッセイの前に、CD4T細胞をα-CD3、α-CD28およびPHA(それぞれ、1.5μg/mL、1μg/mL、および10μg/mL)で処理し、予め活性化させた。Raji細胞をスタフィロコッカス・エンテロトキシンB(SEB、10,000ng/mL)で処理した。連続希釈した化合物を初めに1536ウェルアッセイプレート(Corning、#3727)に移し、つづいて予め活性化させたCD4T細胞(2μL、最終密度:6000細胞/ウェル)およびSEB処理したRaji細胞(2μL、2000細胞/ウェル)を加えた。37℃/5%COインキュベーター中にて24時間インキュベートした後、IL-2検出試薬(4μL)をアッセイプレート(Cisbio、#64IL2PEC)に加えた。アッセイプレートをエンビジョンリーダーで読み取った。化合物の細胞毒性を評価するために、Raji細胞またはCD4T細胞のいずれかを連続希釈した化合物と共にインキュベートした。24時間インキュベーション後、CellTiter-Glo(4μL、Promega、#G7572)を加え、プレートをエンビジョンリーダーで読み取った。50%有効濃度(IC50)を4変数ロジスティック方程式:
y=A+((B-A)/(1+((C/x)^D)))
(式中、AおよびBはそれぞれ最小%および最大%の活性化率または阻害率を表し、CはIC50、Dは曲線の傾き、およびxは化合物濃度を表す)
を用いて算出した。
【0249】
アッセイ4: CellTiter-Glo CD8T細胞増殖アッセイ
凍結されたナイーヴなヒトCD8T細胞をRPMI+10%FBS中で解凍し、37℃で2時間インキュベートし、計数した。384ウェル組織培養プレートを、抗ヒトCD3(20μL、プレーンRPMI中0.1μg/mL)を用いて4℃で一夜コーティングし、これをプレートから除去し、その後でCD8T細胞(20k/40μL)を可溶性抗ヒトCD28(0.5μg/mL)と共に各ウェルに加えた。化合物を、細胞がプレーティングされた直後に、細胞プレートにエコーした。37℃のインキュベーターで72時間インキュベートした後、CellTiter-Glo試薬(10μL、Promegaカタログ番号G7570)を各ウェルに加えた。プレートを5分間激しく振盪し、室温でさらに15分間インキュベートし、CD8T細胞の増殖についてエンビジョンで読み取った。解析では、抗CD3(0.1μg/mL)および抗CD28(0.5μg/mL)による刺激のCD8T細胞シグナルがバックグラウンドとなった。対照化合物である、8-(4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-7-ニトロ-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリルは、3μMで、100%範囲を設定するために、EC50は絶対50%でデータを正規化するために用いられた。
【0250】
アッセイ5:DGK AP1レポーターアッセイ
Cignal Lenti AP1レポーター(luc)キット(SABiosciences製(CLS-011L))を用いてJurkat AP1ルシフェラーゼレポーターを作製した。
化合物をEcho LDVプレートから384ウェルプレート(白色で固体の底部、不透明なPE CulturPlate6007768)の各ウェルにEcho550の器具を用いて移した。サンプルサイズは、30nL/ウェルであり、ソースプレート1枚につきデスティネーションプレート1枚であった。細胞懸濁液は、40mLの細胞(2x20mL)を清潔なコニカルチューブ(50mL)に移すことにより製造された。細胞を遠心分離(1200rpm、5分間、外界温度)により濃縮した。上清を除去し、全ての細胞をRPMI(Gibco 11875)+10%FBSに懸濁させ、1.35x10細胞/mLの濃度とした。細胞をマルチチャンネルピペットを用いて手動で、30μL/ウェルの細胞懸濁液を化合物を含有する384ウェルTCプレートに、4.0x104細胞/ウェルで添加した。この細胞プレートを37℃および5%COで20分間インキュベートした。
【0251】
インキュベーションの間、αCD3(3μL、1.3mg/mL)を培地(10mL)と混合して、抗CD3抗体(αCD3)溶液を調製した[最終濃度=0.4μg/mL]。次に、αCD3(1.5μL、1.3mg/mL)を培地(0.5mL)と混合した[最終濃度=4μg/mL]。20分後、参考のために、培地(10μL)を1列目の全てのウェル(A~Mウェル)に加え、ウェル当たり10μLのαCD3(4μg/mL)を1列目の行N~Pに加えた。次いでマルチチャンネルピペットを用いて、ウェル当たりαCD3(10μL、0.4μg/mL)を加えた。αCD3刺激+/-化合物処理した細胞を37℃、5%COで6時間インキュベートした。
【0252】
このインキュベーションの間、Steady-Glo(Promega E2520)試薬をゆっくりと外界温度に解凍した。次に、Multidrop Combiディスペンサーを用いて20μLのSteady-Glo試薬/ウェルを加えた。遠心分離(2000rpm、外界温度、10秒)に付すことにより気泡を除去した。細胞を室温で5分間インキュベートした。エンビジョンプレートリーダー機器を用いて発光のプロトコルに従って相対的光単位量(RLU)を測定し、サンプルを特徴付けた。データは、参照化合物である(8-(4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-7-ニトロ-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリル)を用いて解析され、100%の阻害を正規化した。
【0253】
アッセイ6:ネズミ細胞傷害性Tリンパ球アッセイ
抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)アッセイは、DGKαおよびDGKζ阻害剤のエフェクターT細胞介在の腫瘍細胞殺活性を高める能力を機能的に評価するために開発された。OT-1トランスジェニックマウスから単離したCD8+T細胞は、オボアルブミン由来のペプチドSIINFEKLを呈する抗原提示細胞、MC38を認識する。同種の抗原を認識することでOT-1抗原特異的CD8+T細胞の細胞溶解活性が開始される。
【0254】
機能的なCTL細胞を以下のように調製した。8~12週齢マウスからOT-1脾細胞を単離し、SIINFEKLペプチド(1μg/mL)およびmIL2(10U/mL)の存在下で増殖させた。3日後、mIL2(U/mL)を含む新しい培地を加えた。増殖5日目に、CD8+T細胞を単離し、使用に備えた。活性化CTL細胞は、6ヶ月間凍結保存され得る。これとは別に、100万個のMC38腫瘍細胞をSIINFEKL-OVAペプチド(1μg/mL)を用いて37℃で3時間パルスさせた。細胞を新しい培地で洗浄し(3x)、過剰なペプチドを除去した。最後に、96ウェルプレート(U字底)中、DGK阻害剤で予め1時間処理したCTL細胞を、抗原を負荷したMC38腫瘍細胞と1:10の割合で合わせた。細胞を次いで700rpmで5分間にわたって回転させ、インキュベーター中、37℃で一夜静置した。24時間後、上清を集め、IFN-γサイトカインレベルをAlphaLisa(Perkin Elmer社から購入)により分析した。
【0255】
アッセイ7:PHA増殖アッセイ
凍結ストックから由来のフィトヘマグルチニン(PHA)刺激芽細胞を、10%ウシ胎児血清(Sigma Aldrich、St.Louis, MO)が補充されたRPMI培地(Gibco, ThermoFisher Scientific、Waltham, MA)中で1時間インキュベートし、その後で384ウェルプレートの各ウェルに添加した(10,000細胞/ウェル)。化合物を384ウェルプレートの各ウェルに移し、処理した細胞をヒトIL2(20ng/mL)を含有する培地中で37℃、5%COで72時間維持し、その後でMTS試薬である[3-(4,5-ジメチル-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム]を用い、メーカー(Promega, Madison, WI)の指示に従って、増殖を測定した。阻害率は、IL2刺激(0%阻害)および非刺激対照(100%阻害)の間の値と比較して算出した。阻害濃度(IC50)の決定は、IL2刺激処理および非刺激処理の間の倍数インダクションに対する50%阻害に基づいて算出された。
【0256】
アッセイ8:ヒトCD8T細胞IFN-γアッセイ
凍結されたナイーヴなヒトCD8T細胞をAIM-V培地中で解凍し、37℃で2時間インキュベートし、計数した。384ウェル組織培養プレートに、20μLの抗ヒトCD3をPBS中0.05μg/mLで4℃にて一夜にわたってコーティングし、これをプレートから除去し、その後で0.1μg/mLの可溶性抗ヒトCD28を含む40マイクロリットルのCD8T細胞に付き40,000個の細胞を各ウェルに加えた。化合物は、細胞をプレーティングした直後に、Echo液体ハンドラーを用いて細胞プレートに移された。37℃のインキュベーターで20時間インキュベートした後、3マイクロリットル/ウェルの上清を新たな384ウェル白色アッセイプレートに移し、サイトカインを測定した。
【0257】
インターフェロン-γ(IFN-γ)をAlphaLISAキット(カタログ番号AL217)を用い、メーカー(Perkin Elmer)の説明書の記載に従って定量した。各ウェルからのカウントは、IFN-γ濃度(pg/mL)に変換された。化合物のEC50値は、抗CD3(0.05μg/mL)+抗CD28(0.1μg/mL)をベースラインとして設定し、3μMの参照となる化合物の8-(4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-7-ニトロ-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリルと、抗CD3+抗CD28との共刺激を100%活性として決定した。
【0258】
アッセイ9:ヒトCD8T細胞pERKアッセイ
凍結されたナイーヴなヒトCD8T細胞をAIM-V培地中で解凍し、37℃で2時間インキュベートし、計数した。CD8陽性T細胞を384ウェル組織培養プレートにAIM-V培地中、20,000細胞/ウェルで加えた。1つの化合物を各ウェルに加え、次いでビーズ固定抗ヒトCD3および抗CD28mAbを最終濃度0.3μg/mLで加えた。細胞を37℃で10分間インキュベートした。AlphaLISA Surefireキット(Perkin Elmer、カタログ番号ALSU-PERK-A)から由来の溶解緩衝液を加えて反応を止めた。ライセート(5μL/ウェル)を新たな384ウェル白色アッセイプレートに移し、pERKの活性化を測定した。
化合物のEC50は、抗CD3+抗CD28をベースラインとして設定し、3μMの8-(4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-7-ニトロ-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリルと、抗CD3+抗CD28との共刺激を100%活性化として決定した。
【0259】
アッセイ10:ヒト全血IFN-γアッセイ
健康なドナーから得たヒト静脈全血(22.5μL/ウェル)を、95%空気/5%COの加湿インキュベーター中、37℃で1時間にわたって化合物を用いて予め処理した。血液を、最終濃度が各1μg/mLの2.5μLの抗ヒトCD3および抗CD28mAbを用い、37℃で各24時間刺激した。上清中のIFN-γを、AlphaLISAキット(カタログ番号AL217)を用いて測定した。
化合物のEC50は、抗CD3+抗CD28をベースラインとして設定し、3μMの参照となる化合物の8-(4-(ビス(4-フルオロフェニル)メチル)ピペラジン-1-イル)-5-メチル-7-ニトロ-6-オキソ-5,6-ジヒドロ-1,5-ナフチリジン-2-カルボニトリルと、抗CD3+抗CD28との共刺激を100%活性化として設定して決定した。
【0260】
アッセイ11:DGKヒト全血pERKアッセイ
健康なドナーから得たヒト静脈全血(抗凝固剤としてヘパリンで採血)を用いてヒト全血ERKリン酸化アッセイを行った。DMSOで連続希釈した化合物(11ポイント、3倍希釈)を、ECHO 550アコースティックディスペンサー(Labcyte)を用いて384ウェルプレートに20nL/ウェルで加え、アッセイにおける20μMの最終出発濃度を達成した。ヘパリンを加えたヒト全血を化合物プレートに、ウェルに付き9μLで加え、湿度95%、5%COのインキュベーター中、37℃で1時間インキュベートした。化合物を1時間インキュベートした後、1μLのヒト抗CD3抗体(自社製)を、架橋抗体ヤギ抗マウスIgG(4μg/mL)の存在下で、経路を刺激するために1μg/mLの最終濃度でウェルに加え、さらに37℃で15分間インキュベートした。90μLのFix/Lyse緩衝液(BD 558049)を加えて刺激を止めた。細胞を洗浄し、60分間室温で抗CD8 PE(BD 555635)抗体を用いて染色し、再度洗浄し、Perm III緩衝液(BD 558050)を用いて氷上で30分間透過処理に付した。次いで細胞をAlexa Fluor(商標登録)647 抗ERK1/2ホスホ(Thr202/Tyr204)抗体(Bioleged 675504)を1:50の希釈割合で用いて60分間染色した。サンプルを洗浄し、1%BSAを含むdPBS(dPBS、Gibco 14190136;BSA、Sigma-Aldrich A9205)に再懸濁した。サンプルをIntellicyt(商標登録)iQue Screener PLUSを用いて解析した。CD8陽性集団のうちのpERK陽性集団の割合によってpERK活性化を定量した。濃度20μMの内部化合物を用いた値を100%活性化ベースライン、抗CD3コントロールの値を0%活性化のベースラインとし、化合物の有効性を計算した。
【0261】
hDGKα-(M1-S735)-Ct-TVMV-Hisをコードするヌクレオチド配列:
【表13】
【表14】
【0262】
hDGKα-(M1-S735)-Ct-TVMV-Hisのアミノ酸配列:
【表15】
(配列番号:2)
【0263】
hDGKζ-(M1-A928)-転写変種-2Ct-TVMV-Hisをコードするヌクレオチド配列:
【表16】
【表17】
【0264】
hDGKζ-(M1-A928)-転写変種-2Ct-TVMV-Hisのアミノ酸配列:
【表18】
【0265】
MA-hDGKα-(S9-S727)-Ct-TVMV-Hisをコードするヌクレオチド配列:
【表19】
【表20】
【表21】
【配列表】
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