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特許7678047ワーク曲げ角度測定方法、及び曲げ加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】ワーク曲げ角度測定方法、及び曲げ加工機
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/04 20060101AFI20250508BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
B21D5/04 L
G01B11/26 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023165230
(22)【出願日】2023-09-27
(65)【公開番号】P2025055840
(43)【公開日】2025-04-08
【審査請求日】2024-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】山本 有馬
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-275952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0266752(US,A1)
【文献】特開2018-001255(JP,A)
【文献】国際公開第2021/179028(WO,A1)
【文献】特開平08-141650(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01102032(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第115889519(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/00-5/04
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップダイとボトムダイとでワークを押圧することによりワーク基準面に対して前記ワークを固定した状態で、曲げ金型が装着されたベンドビームを動作させることにより前記ワークに曲げ加工を行う曲げ工程と、
前記ワークの曲げ角度を測定する測定工程と、を備え、
前記ベンドビームには、前記曲げ角度を測定するための検出光を前記ワークに照射する角度測定ユニットが搭載されており、
前記測定工程は、
前記曲げ工程において曲げられた前記ワークの曲げ方向に応じて、前記ワークに照射される前記検出光の向きを切り替える切替工程を含
前記切替工程は、前記ベンドビームを旋回させる工程である
ワーク曲げ角度測定方法。
【請求項2】
前記曲げ工程が、前記ベンドビームの前端側の下部に設けられた正曲げ用曲げ金型により前記ワークを上方向に曲げる正曲げの場合、
前記切替工程は、前記検出光の中心が前記ワーク基準面と平行となる状態よりも、前記検出光を上向きに切り替え、
前記曲げ工程が、前記ベンドビームの前端側の上部に設けられた逆曲げ用曲げ金型により前記ワークを下方向に曲げる逆曲げの場合、
前記切替工程は、前記検出光の中心が前記ワーク基準面と平行となる状態よりも、前記検出光を下向きに切り替える
請求項1記載のワーク曲げ角度測定方法。
【請求項3】
前記角度測定ユニットは、
前記ワークに前記検出光を照射する照射装置と、
前記検出光が照射された前記ワークを撮像する撮像装置と、を含む
請求項1記載のワーク曲げ角度測定方法。
【請求項4】
前記ベンドビームは、
前記ベンドビームの内部に配置され、前記ベンドビームの長手方向に沿って移動自在に構成された移動ユニットを有し、
前記角度測定ユニットは、前記移動ユニットに搭載されている
請求項1から3いずれか一項記載のワーク曲げ角度測定方法。
【請求項5】
前記移動ユニットは、前記ベンドビームに装着された前記曲げ金型では曲げることができない曲げ加工を行うための専用金型が装着可能なユニットである
請求項記載のワーク曲げ角度測定方法。
【請求項6】
トップダイが設けられ、上下方向に可動する上部フレームと、
前記トップダイと対向するボトムダイが設けられた下部フレームと、
前記トップダイと前記ボトムダイとでワークをワーク基準面に固定した状態で、前記ワークに曲げ加工を行うベンドビームと、を備え、
前記ベンドビームは、前記ワークの曲げ角度を測定するための検出光を前記ワークに照射する角度測定ユニットを備え、
角度測定ユニットは、前記曲げ加工により曲げられた前記ワークの曲げ方向に応じて、前記ワークに照射される前記検出光の向きを切り替えるための動作モードを備え
前記動作モードは、前記ベンドビームを旋回させることである
曲げ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク曲げ角度測定方法、及び曲げ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
トップダイと、トップダイの下方において対向するボトムダイと、トップダイ及びボトムダイの後方に設けられたベンドビームとを備える曲げ加工機が知られている。この曲げ加工機では、トップダイとボトムダイとによってワークを固定した状態で、上下方向及び前後方向の動きを通じてベンドビームが揺動させられる。ベンドビームの前側上部又はベンドビームの前側下部に装着された曲げ金型によって、トップダイ及びボトムダイから後方へ突出したワークの端部に対して曲げ加工(しごき曲げ加工)が行われる。
【0003】
特許文献1に記載の旋回曲げ機械は、C字状の断面を有するベンドビームの内部に、曲げ角度を非接触で測定する角度測定システムを備えている。角度測定システムは、ワークが配置される基準面よりも下方に配置される第1角度測定ユニットと、ワークが配置される基準面よりも上方に配置される第2角度測定ユニットと、を含んでいる。第1角度測定ユニットは、基準面よりも上側に測定範囲を有し、第2角度測定ユニットは、基準面よりも下側に測定範囲を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/181208号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された手法によれば、2回以上の曲げを行う場合に、先行する曲げ工程で曲げられたワークの曲げ領域によって、角度測定ユニットから照射されるレーザ光が遮られてしまい、測定対象となる曲げ領域の角度測定を行えないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のワーク曲げ角度測定方法は、トップダイとボトムダイとでワークを押圧することによりワーク基準面に対してワークを固定した状態で、曲げ金型が装着されたベンドビームを動作させることによりワークに曲げ加工を行う曲げ工程と、ワークの曲げ角度を測定する測定工程と、を備え、ベンドビームには、曲げ角度を測定するための検出光をワークに照射する角度測定ユニットが搭載されており、測定工程は、曲げ工程において曲げられたワークの曲げ方向に応じて、ワークに照射される検出光の向きを切り替える切替工程を含む。
【0007】
このワーク曲げ角度測定方法によれば、曲げ工程で曲げられたワークの曲げ方向に応じて、レーザ光の向きを切り替えることができる。これにより、先行する曲げ工程で曲げられたワークの曲げ領域によって、角度測定ユニットから照射されるレーザ光が遮られることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、測定対象となるワークの曲げ領域に対してレーザ光を適切に照射することができるので、ワークの曲げ角度を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る曲げ加工機の要部を模式的に示す側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る曲げ加工機のベンドビームの要部を模式的に示す正面図である。
図3図3は、曲げ加工機によるワークWの曲げ加工方法の概念を示す図である。
図4図4は、曲げ加工機によるワークWの曲げ加工方法の概念を示す図である。
図5図5は、曲げ加工機によるワークWの曲げ加工方法の概念を示す図である。
図6図6は、曲げ加工機によるワークWの曲げ加工方法の概念を示す図である。
図7図7は、曲げ加工機の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係るワーク曲げ角度測定方法、及び曲げ加工機について説明する。
【0011】
まず、図1及び図2を参照し、本実施形態に係る曲げ加工機1を説明する。図1は、本実施形態に係る曲げ加工機1の要部を模式的に示す側面図である。図2は、本実施形態に係る曲げ加工機1のベンドビーム30の要部を模式的に示す正面図である。図2では、便宜上、ベンドビーム30の右側部分のみが描かれているが、ベンドビーム30の左側部分の構成もこれと同じである。
【0012】
曲げ加工機1の構成を説明するにあたり、方向の定義として、左右方向、前後方向、及び上下方向を用いる。左右方向及び前後方向は水平方向において直交する2つの方向に対応し、上下方向は鉛直方向に対応する。図1において紙面の鉛直方向は左右方向に対応し、図2において紙面の鉛直方向が前後方向に対応する。ただし、これらの方向は、本実施形態に係る加工機を説明するために、便宜的に定義された方向に過ぎない。
【0013】
曲げ加工機1は、板状のワークWの端辺部に曲げ加工(しごき曲げ加工)を行うことにより、ワークWを所望の形状に曲げる加工機であり、パネルベンダーと称される。曲げ加工機1の前方には、ワークWの供給及び位置決めを行うマニピュレータ(図示せず)が配置されている。
【0014】
図1に示すように、曲げ加工機1は、下部フレーム10と、上部フレーム20と、ボトムダイ15と、トップダイ25と、ベンドビーム30と、制御装置100とを備えている。
【0015】
下部フレーム10は、左右方向に沿って横長に形成されている。下部フレーム10の上部には、固定金型としてのボトムダイ15が設けられている。
【0016】
上部フレーム20は、左右方向に沿って横長に形成されている。上部フレーム20の下部には、ボトムダイ15と対向する、可動金型としてのトップダイ25が設けられている。
【0017】
上部フレーム20は、上下方向に移動可能に構成されており、図示しないフレーム駆動機構によって駆動される。フレーム駆動機構によって上部フレーム20が下方向に移動すると、ボトムダイ15とトップダイ25とによってワークWが押圧される。この押圧によってワークWが固定されるとともに、ワークWがワーク基準面Pwに位置決めされる。逆に、フレーム駆動機構によって上部フレーム20が上方向へと移動すると、トップダイ25がワークWから離間し、これにより、ワークWの固定が解放される。
【0018】
ベンドビーム30は、ボトムダイ15及びトップダイ25の後方に配置されている。ベンドビーム30は、左右方向に延在している。ベンドビーム30は、前後方向及び上下方向に移動可能に構成されており、図示しないベンドビーム駆動機構によって駆動される。ベンドビーム30は、上下方向及び前後方向の動きによって、ベンドビーム30の前端側が円弧を描くように動作する。
【0019】
図1及び図2に示すように、ベンドビーム30は、複数の縦フレーム31と、下部ビーム32と、上部ビーム33とで構成されている。
【0020】
複数の縦フレーム31は、左右方向にかけて一定間隔で配置されている。個々の縦フレーム31は、開口部を備えるC字形状の断面形状を有しており、開口部が前方を臨むように配置されている。
【0021】
下部ビーム32は、複数の縦フレーム31の下面に設けられており、左右方向に延在している。下部ビーム32の前端には、ワークWを上方向に曲げる正曲げを行うための正曲げ用標準曲げ金型40が装着される。
【0022】
上部ビーム33は、複数の縦フレーム31の上面に設けられており、左右方向に延在している。上部ビーム33の前端には、ワークWを下方向に曲げる逆曲げを行うための逆曲げ用標準曲げ金型41が装着される。
【0023】
ベンドビーム30の内部には、ベース部材35が設けられている。ベース部材35は、縦フレーム31における上下方向のほぼ中央に配置されており、左右方向に延在している。ベース部材35における左右方向の寸法は、ベンドビーム30における左右方向の寸法よりも大きい。
【0024】
図2に示すように、ベース部材35の右端には、ベンドビーム30の右端よりも一定量だけ右方向に突出した、右側の延長部35aが存在している。図2では省略されているが、ベース部材35の左端には、ベンドビーム30の左端よりも一定量だけ左方向に突出した、左側の延長部35aが存在している。
【0025】
ベンドビーム30には、一対の曲げユニット50が設けられている。個々の曲げユニット50は、ベンドビーム30の装着される標準曲げ金型40、41では曲げることができない曲げ加工を行うための専用金型を装着することができる。曲げユニット50に装着された専用金型により、板厚の薄いワークWへの曲げ、鋭角曲げ、切り起こし部を折り曲げる切り起こし曲げ、などを行うことができる。曲げユニット50の左右方向のサイズは、ベンドビーム30の左右方向のサイズよりも小さく設定されている。
【0026】
一対の曲げユニット50は、ベース部材35にそれぞれ取り付けられており、右側の曲げユニット50と左側の曲げユニット50とに分けられる。個々の曲げユニット50は、図示しない駆動機構を通じて左右方向に移動することで、ワークWの加工に応じた位置に位置決めされる。
【0027】
また、ベンドビーム30に装着された標準曲げ金型40、41を用いて曲げ加工を行う場合、右側の曲げユニット50は、ベース部材35における右側の延長部35aに待避させられる。同様に、左側の曲げユニット50は、ベース部材35における左側の延長部35aに待避させられる。これにより、標準曲げ金型40、41を用いた曲げ加工時に、一対の曲げユニット50が、ワークW、又はボトムダイ15及びトップダイ25といった機構の一部と干渉することを抑制することができる。
【0028】
曲げユニット50は、上下に対向して配置された下部プレート51と、上部プレート52とを備えている。曲げユニット50は、ベンドビーム30と同様、前方に開口部を備えるC字形状の断面形状を有している。曲げユニット50の下部プレート51の前端、及び上部プレート52の前端には、必要に応じて、専用金型を装着することができる。
【0029】
本実施形態において、曲げユニット50は、ベンドビーム30のベース部材35に取り付けられている。したがって、専用金型が装着された曲げユニット50を用いて曲げ加工を行う場合には、ベンドビーム30が上下方向及び前後方向へと移動する。ベンドビーム30の上下方向及び前後方向の動きに対応して、曲げユニット50の前端側が円弧を描くように動作し、これにより、ワークWの曲げ加工を行うことができる。
【0030】
曲げユニット50の内部には、角度測定ユニット60が設けられている。角度測定ユニット60は、ワークWの曲げ角度を測定する。角度測定ユニット60は、曲げユニット50が移動することで、左右方向に移動することができる。角度測定ユニット60は、ベンドビーム30が上下方向及び前後方向に移動することで、上下方向及び前後方向に移動することができる。
【0031】
角度測定ユニット60は、照射装置61と、撮像装置62とを備えている。図2において、照射装置61は左側、撮像装置62は右側に配置されている。ただし、照射装置61と撮像装置62との位置は逆であってもよい。
【0032】
照射装置61は、ワークWにレーザ光(検出光の一例)を照射する。照射装置61は、点光源から射出される平面的な扇形状のレーザ光、または線光源から射出される平面的な矩形状のレーザ光をワークWに照射する。撮像装置62は、レーザ光が照射されたワークWを撮像する。すなわち、撮像装置62は、ワークWで反射したレーザ光の反射光を撮像する。曲げ角度の測定結果である、撮像装置62で撮像された画像は、制御装置100へと出力される。
【0033】
本実施形態において、角度測定ユニット60は、曲げ加工により曲げられたワークWの曲げ方向に応じて、ワークWに照射されるレーザ光の向きを切り替えるための動作モードを備えている。この動作モードの詳細についは後述する。
【0034】
なお、角度測定ユニット60によって曲げ角度の測定を行う場合、専用金型は曲げユニット50から取り外した状態で行うことが好ましい。これは、角度測定ユニット60から射出されるレーザ光、又はワークWで反射した反射光が専用金型によって遮られてしまうことを抑制するためである。
【0035】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、制御装置100が備える種々の機能が実現される。
【0036】
制御装置100は、曲げ加工機1の動作を制御する。具体的には、制御装置100は、上部フレーム20の上下移動、ベンドビーム30の前後方向及び上下方向への移動、一対の曲げユニット50の左右方向への移動などを制御する。
【0037】
また、制御装置100は、角度測定ユニット60から出力された曲げ角度の測定結果、すなわち、撮像装置62で撮像された画像に基づいて画像処理を行うことで、ワークWの曲げ角度を演算する。なお、曲げ角度の演算は、制御装置100が行うことに限らない。角度測定ユニット60に処理回路を搭載することで、角度測定ユニット60がワークWの曲げ角度を演算してもよい。
【0038】
以下、図3から図6を参照し、曲げ加工機1によるワークWの曲げ加工方法について説明する。このワークWの曲げ加工方法には、本実施形態の特徴の一つであるワーク曲げ角度測定方法が含まれる。
【0039】
本実施形態に係るワーク曲げ角度測定方法は、トップダイ25とボトムダイ15とでワークWを押圧することによりワーク基準面Pwに対してワークWを固定した状態で、標準曲げ金型40、41が装着されたベンドビーム30を動作させることによりワークWに曲げ加工を行う曲げ工程と、ワークWの曲げ角度を測定する測定工程と、を備えている。ベンドビーム30には、曲げ角度を測定するためのレーザ光をワークWに照射する角度測定ユニット60が搭載されている。測定工程は、曲げ工程において曲げられたワークWの曲げ方向に応じて、ワークWに照射されるレーザ光の向きを切り替える切替工程を含んでいる。
【0040】
以下、ワークWの端辺と平行に正曲げを行った後に、1回目の曲げ位置よりもワーク内側においてワークWの端辺と平行に逆曲げを行う状況を例に、ワークWの曲げ加工方法を具体的に説明する。
【0041】
まず、制御装置100は、可動フレーム22を動作させ、1回目の曲げである正曲げに合わせて位置決めされたワークWを、ボトムダイ15とトップダイ25とによって固定する。
【0042】
図3の工程a1に示すように、制御装置100は、正曲げの曲げ工程を行う。具体的には、制御装置100は、ベンドビーム30を動作させることにより、正曲げ用標準曲げ金型40により、ワークWに対して正曲げを行う。このとき、制御装置100は、目標曲げ角度に完全に到達しない程度の曲げ状態となるように、ベンドビーム30の動作を制御する。ワークWの曲げが終わると、制御装置100は、ベンドビーム30の開口部が正面を向くように、ベンドビーム30の姿勢を制御する。
【0043】
つぎに、図3の工程b1及び図4の工程c1に示すように、制御装置100は、ワークWの曲げ角度を測定する測定工程を行う。具体的には、制御装置100は、左右の曲げユニット50のうち、一方の曲げユニット50を左右方向に移動させ、曲げユニット50を所定の位置へと位置決めする(工程b1)。この位置決めにより、曲げユニット50に搭載された角度測定ユニット60の位置、すなわち、角度測定ユニット60からワークWに照射されるレーザ光の位置が、角度を測定すべきワークW上の位置に対して整合される。
【0044】
併せて、制御装置100は、ベンドビーム30を正曲げ測定姿勢へと移動させる(工程c1)。正曲げ測定姿勢は、レーザ光の中心がワーク基準面Pwと一致するベンドビーム30の基準姿勢に対して、レーザ光が所定の角度だけ上向きとなるようにベンドビーム30を旋回させた姿勢である。ベンドビーム30が正曲げ測定姿勢となることで、ワークの曲げ方向(上方向)に応じて、ワークWに照射されるレーザ光の向きが切り替えられる(切替工程)。
【0045】
なお、ベンドビーム30を正曲げ測定姿勢へと移動させる場合、制御装置100は、角度測定ユニット60がボトムダイ15及びトップダイ25から予め定められた基準距離となるように、ベンドビーム30の位置制御も行う(後述する逆曲げ測定姿勢についても同様)。
【0046】
角度測定ユニット60は、ワークWにレーザ光を照射し、レーザ光を照射したワークWを撮影する。制御装置100は、撮影した画像を画像処理することで、ワークWの曲げ角度を特定する。
【0047】
そして、制御装置100は、一方の曲げユニット50を左右方向に移動させ、曲げユニット50をベース部材35の延長部35aへと待避させる。
【0048】
図4の工程d1に示すように、制御装置100は、正曲げの曲げ工程を改めて行う。具体的には、制御装置100は、ベンドビーム30を動作させることにより、正曲げ用標準曲げ金型40により、ワークWに正曲げを行う。このとき、制御装置100は、測定したワークWの曲げ角度と目標曲げ角度との差に基づいて、ワークWの曲げ角度が目標曲げ角度と一致するように、ベンドビーム30の動作を制御する。
【0049】
つぎに、制御装置100は、上部フレーム20を上昇させた上で、2回目の曲げ加工である逆曲げに合わせてワークWを位置決めする。制御装置100は、可動フレーム22を動作させ、ボトムダイ15とトップダイ25とによってワークWを固定する。
【0050】
図5の工程a2に示すように、制御装置100は、逆曲げの曲げ工程を行う。具体的には、制御装置100は、ベンドビーム30を動作させることにより、逆曲げ用標準曲げ金型41により、ワークWに逆曲げを行う。このとき、制御装置100は、目標曲げ角度に完全に到達しない程度の曲げ状態となるように、ベンドビーム30の動作を制御する。ワークWの曲げが終わると、制御装置100は、ベンドビーム30の開口部が正面を向くように、ベンドビーム30の姿勢を制御する。
【0051】
つぎに、図5の工程b2及び図6の工程c2に示すように、制御装置100は、ワークWの曲げ角度を測定する測定工程を行う。具体的には、制御装置100は、左右の曲げユニット50のうち、一方の曲げユニット50を左右方向に移動させ、曲げユニット50を所定の位置へと位置決めする(工程b2)。
【0052】
併せて、制御装置100は、ベンドビーム30を逆曲げ測定姿勢へと移動させる(工程c2)。逆曲げ測定姿勢は、ベンドビーム30の基準姿勢に対して、レーザ光が所定の角度だけ下向きとなるようにベンドビーム30が旋回した姿勢である。ベンドビーム30が逆曲げ測定姿勢となることで、ワークの曲げ方向(下方向)に応じて、ワークWに照射されるレーザ光の向きが切り替えられる(切替工程)。
【0053】
角度測定ユニット60は、ワークWにレーザ光を照射し、レーザ光を照射したワークWを撮影する。制御装置100は、撮影した画像を画像処理することで、ワークWの曲げ角度を特定する。
【0054】
そして、制御装置100は、一方の曲げユニット50を左右方向に移動させ、曲げユニット50をベース部材35の延長部35aへと待避させる。
【0055】
図6の工程d2に示すように、制御装置100は、逆曲げの曲げ工程を改めて行う。制御装置100は、ベンドビーム30を動作させることにより、逆曲げ用標準曲げ金型41により、ワークWに逆曲げを行う。このとき、制御装置100は、測定したワークWの曲げ角度と目標曲げ角度との差に基づいて、ワークWの曲げ角度が目標曲げ角度と一致するように、ベンドビーム30の動作を制御する。
【0056】
以上の一連の工程により、ワークWの曲げ加工が終了する。
【0057】
このように、本実施形態に係るワーク曲げ角度測定方法は、曲げ工程で曲げられたワークWの曲げ方向に応じて、レーザ光の向きを切り替える切替工程を含んでいる。具体的には、曲げ工程が、ベンドビーム30の前端側の下部に設けられた正曲げ用標準曲げ金型40によりワークWを上方向に曲げる正曲げの場合、切替工程は、レーザ光の中心がワーク基準面Pwと平行となる状態よりも、レーザ光を上向きに切り替える。一方、曲げ工程が、ベンドビーム30の前端側の上部に設けられた逆曲げ用標準曲げ金型41によりワークWを下方向に曲げる逆曲げの場合、切替工程は、レーザ光の中心がワーク基準面Pwと平行となる状態よりも、レーザ光の向きを下向きに切り替えている。
【0058】
この方法によれば、曲げ工程で曲げられたワークWの曲げ方向に応じて、レーザ光の向きを切り替えることができる。これにより、先行する曲げ工程で曲げられたワークWの曲げ領域によって、角度測定ユニット60から照射されるレーザ光が遮られることを抑制することができる。測定対象となるワークWの曲げ領域に対してレーザ光を適切に照射することができるので、ワークWの曲げ角度を精度よく測定することができる。
【0059】
本実施形態において、角度測定ユニット60は、ワークWにレーザ光を照射する照射装置61と、ワークWに照射されたレーザ光の反射光を撮影する撮像装置62とを含んでいる。
【0060】
この角度測定ユニット60によれば、曲げ角度の測定対象となる曲げ領域の曲げ方向に応じて、正曲げ測定姿勢又は逆曲げ測定姿勢を選択すればよく、この曲げ領域の角度測定を行うにあたり複数の姿勢へと変化させる必要はない。これにより、角度測定を効率よく行うことができる。
【0061】
本実施形態において、切替工程は、角度測定ユニット60が固定されたベンドビーム30を旋回させる工程である。
【0062】
この工程によれば、ワークWの曲げを行うために動作するベンドビーム30を旋回動作させることで、その内部に固定された角度測定ユニット60も旋回動作させることができる。これにより、ワークWの曲げ方向に応じて、レーザ光の向きを適切に切り替えることができる。
【0063】
本実施形態において、ベンドビーム30は、ベンドビーム30の内部に配置され、ベンドビーム30の長手方向に沿って移動自在に構成された移動ユニットを有している。角度測定ユニット60は、移動ユニットに搭載されている。この移動ユニットは、ベンドビーム30に装着された標準曲げ金型40、41では曲げることができない曲げ加工を行うための専用金型が装着可能な曲げユニット50である。
【0064】
この構成によれば、曲げユニット50の左右方向の移動に連動して、角度測定ユニット60を移動させることができる。これにより、角度測定ユニット60を、ワークWの測定位置に対して適切に位置決めすることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、レーザ光の向きを切り替える方法として、ベンドビーム30を旋回動作させている。しかしながら、図7に示すように、角度測定ユニット60を旋回させるための旋回機構63を曲げユニット50に搭載してもよい。この構成の場合、切替工程は、ベンドビーム30を不動にした状態で、角度測定ユニット60のみを旋回させてもよい。また、ベンドビー30を旋回動作させた上で、さらに角度測定ユニット60を旋回動作させてもよい。これにより、ベンドビーム30の旋回角度が不足する場合であっても、角度測定に必要な旋回角度を確保することができる。
【0066】
また、角度測定ユニット60は、ワークWに照射されるレーザ光の向きを切り替える光学系を含んでもよい。この場合、切替工程は、光学系により、ワークWに照射されるレーザ光の向きを切り替えてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、角度測定ユニット60を曲げユニット50に搭載することで、曲げユニット50の左右方向の移動を通じて、角度測定ユニット60を左右方向に移動させている。しかしながら、曲げユニット50が付属していない機種の場合、角度測定ユニット60を左右方向に移動させるための専用の機構を用意してもよい。
【0068】
上述した実施形態では、左右の曲げユニット50に搭載された角度測定ユニット60のうち、一方の曲げユニット50に搭載された角度測定ユニット60によって曲げ角度の測定を行う例を示した。しかしながら、左右の曲げユニット50に搭載された角度測定ユニット60がそれぞれ曲げ角度の測定を行ってもよい。曲げ領域の複数の位置で曲げ角度を測定することができるので、曲げ加工の通り精度を評価することができる。ただし、角度測定ユニット60は、左右の曲げユニット50のうち、一方の曲げユニット50のみに搭載してもよい。この場合であっても、一方の曲げユニット50を左右方向に移動させて複数の位置で曲げ角度を測定することで、曲げ加工の通り精度を評価することができる。
【0069】
また、本実施形態は、ワーク曲げ角度測定方法に限らす、この方法を実行する曲げ加工機1にも及ぶものである。すなわち、曲げ加工機1は、トップダイ25が設けられ、上下方向に可動する上部フレーム20と、トップダイ25と対向するボトムダイ15が設けられた下部フレーム10と、トップダイ25とボトムダイ15とでワークWをワーク基準面Pwに固定した状態で、ワークWに曲げ加工を行うベンドビーム30と、を備える。ベンドビーム30は、ワークWの曲げ角度を測定するためのレーザ光をワークWに照射する角度測定ユニット60を備える。角度測定ユニット60は、曲げ加工により曲げられたワークWの曲げ方向に応じて、ワークWに照射されるレーザ光の向きを切り替えるための動作モードを備える。
【0070】
上記のように、本実施形態を記載したが、この実施形態の一部をなす論述及び図面はこの実施形態を限定するものであると理解すべきではない。この実施形態から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0071】
1 曲げ加工機
10 下部フレーム
15 ボトムダイ
20 上部フレーム
25 トップダイ
30 ベンドビーム
40 正曲げ用標準曲げ金型
41 逆曲げ用標準曲げ金型
50 曲げユニット
60 角度測定ユニット
61 照射装置
62 撮像装置
100 制御装置
Pw ワーク基準面
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7