(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-07
(45)【発行日】2025-05-15
(54)【発明の名称】無線充電装置およびそれを含む移動手段
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20250508BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20250508BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20250508BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20250508BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250508BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F1/153 133
H01F1/26
H02J50/12
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2023518900
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2022000554
(87)【国際公開番号】W WO2022164087
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010694
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テキョン
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204440(JP,A)
【文献】国際公開第2020/174864(WO,A1)
【文献】特開2008-021991(JP,A)
【文献】特開2015-103660(JP,A)
【文献】特開2019-029523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 1/153
H01F 1/26
H02J 50/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
前記磁性部は、高分子型磁性部、及びナノ結晶質または酸化物系磁性部を含み、
前記
高分子型磁性部は、フィラーおよびバインダー樹脂
を含み、
前記フィラーは、Fe-Si-Al合金組成を有するセンダスト粒子であり、
前記バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部のうちの少なくとも一部は、シールド部に接触し、
前記磁性部は、下記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下である、無線充電装置:
[数式1]
ここで、前記D
25は、動的機械分析(dynamic mechanical analysis、DMA)によって測定される25℃における位置変化量であり、
前記D
180は、前記動的機械分析によって測定される180℃における位置変化量であり、
前記Msは、60mmの長さ、13mmの幅および1mmの厚さを有する直方体形状を有するサンプルの長さのうち、治具で取られる部分を除いた長さであって、前記Msは46mmであり、
前記動的機械分析において、周波数は1Hzであり、
前記動的機械分析は、DMAマルチストレインモード(Multi-Strain Mode)、温度変化法(Temperature Ramp Method)、およびデュアルカンチレバークランプ(Dual Cantilever Clamp)により行われる。
【請求項2】
前記磁性部は、下記数式2で表される195℃における位置変化(ΔDR2)が0.20以下である、請求項1に記載の無線充電装置:
[数式2]
ここで、前記D
195は、前記動的機械分析によって測定される195℃における位置変化量であり、
前記D
25および前記Msは、前述の通りである。
【請求項3】
前記磁性部は、下記数式3で表される195℃における位置変化(ΔDR2)に対して180℃における位置変化(ΔDR1)の比(ΔDR)が0.35以下である、請求項2に記載の無線充電装置:
[数式3]
【請求項4】
前記磁性部は、下記数式4で表される温度変化に対して位置変化量(DPT)が0.2/50℃以下である、請求項1に記載の無線充電装置:
[数式4]
ここで、前記D
130は、前記動的機械分析によって測定される130℃における位置変化量であり、
前記D
180および前記Msは、前述の通りである。
【請求項5】
前記磁性部の位置変化開始温度が150℃以上である、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項6】
前記フィラーが、前記高分子型磁性部の総重量を基準に60重量%~90重量%の量で含まれる、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項7】
前記フィラーが、1μm~300μmの平均粒径(D50)を有する、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項8】
前記フィラーが、下記化学式1の組成を有する、請求項6に記載の無線充電装置:
[化学式1]
Fe
1-a-b-cSi
aAl
bY
c
前記式において、
Yは、Mn、B、Co、Mo、またはこれらの組み合わせであり、
aは、0.01~0.2であり、
bは、0.01~0.1であり、
cは、0~0.05である。
【請求項9】
前記バインダー樹脂の融点(Tm)が150℃~210℃である、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項10】
前記高分子型磁性部が、リン酸およびシランからなる群より選択される1種以上を含む添加剤をさらに含む、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項11】
無線充電装置を含み、
前記無線充電装置は、
コイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、
前記磁性部は、高分子型磁性部、及びナノ結晶質または酸化物系磁性部を含み、
前記
高分子型磁性部は、フィラーおよびバインダー樹脂
を含み、
前記フィラーは、Fe-Si-Al合金組成を有するセンダスト粒子であり、
前記バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部のうちの少なくとも一部は、シールド部に接触し、
前記磁性部は、前記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下である、移動手段:
[数式1]
ここで、前記D
25は、動的機械分析(DMA)によって測定される25℃における位置変化量であり、
前記D
180は、前記動的機械分析によって測定される180℃における位置変化量であり、
前記Msは、60mmの長さ、13mmの幅および1mmの厚さを有する直方体形状を有するサンプルの長さのうち、治具で取られる部分を除いた長さであって、前記Msは46mmであり、
前記動的機械分析において、周波数は1Hzであり、
前記動的機械分析は、DMAマルチストレインモード、温度変化法、およびデュアルカンチレバークランプにより行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、無線充電装置およびそれを含む移動手段に関するものである。より具体的に、実現例は、耐熱特性および充電効率の向上した無線充電装置およびそれを含む移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報通信分野は極めて速い速度で発展しており、電気、電子、通信、半導体などが総合的に組み合わされた多様な技術が持続的に開発されている。また、電子機器のモバイル化傾向が増大するにつれ、通信分野においても無線通信および無線電力伝送技術に関する研究が盛んに行われている。特に、電子機器などに無線で電力を伝送する方案に関する研究が活発に進んでいる。
【0003】
前記無線電力伝送は、電力を供給する送信機と、電力供給を受ける受信機との間に物理的な接触なく電磁結合(inductive coupling)、容量結合(capacitive coupling)またはアンテナなどの電磁場共振構造を利用して、空間を介して電力を無線で伝送するものである。前記無線電力伝送は、大容量のバッテリーが求められる携帯用通信機器、電気自動車などに適しており、接点が露出されないため漏電などの危険がほとんどなく、有線方式の充電不良現象を防ぐことができる。
【0004】
一方、最近では電気自動車への関心が急増するにつれ、充電インフラ構築に対する関心が増大している。既に、家庭用充電器を利用した電気自動車充電をはじめ、バッテリー交換、急速充電装置、無線充電装置などと、多様な充電方式が登場しており、新しい充電事業ビジネスモデルも登場し始めている(特許文献1参照)。また、欧州では試験運行中の電気自動車と充電所が目立ち始め、日本では自動車メーカーと電力会社が主導して電気自動車および充電所を試験的に運営している。
【0005】
無線充電装置は、無線充電の動作中にコイル部の抵抗と磁性部の磁気損失とによって熱が発生する。特に、無線充電装置内の磁性部は、無線充電の際に、不可避的に高温の熱が発生し、発生した熱は磁性部の磁気特性を変化させ、無線充電装置の破損および電力変換回路の破壊可能性などの安全上の問題を引き起こして、使用性に制約を招くか、充電効率を低下させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第2011-0042403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するべく考案されたものである。
本発明が解決しようとする技術的課題は、車両用磁性部の信頼性評価温度である150℃~180℃の温度、具体的に180℃における位置変化(ΔDR1)の少ない磁性部を含むことにより、耐熱特性および磁性特性を向上させ得る無線充電装置を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記無線充電装置を含む移動手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実現例によると、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、下記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下である、無線充電装置が提供される。
【0010】
[数式1]
ここで、前記D
25は、動的機械分析(dynamic mechanical analysis、DMA)によって測定される25℃における位置変化量であり、前記D
180は、前記動的機械分析によって測定される180℃における位置変化量であり、前記Msは、60mmの長さ、13mmの幅および1mmの厚さを有する直方体形状を有するサンプルの長さのうち、治具で取られる部分を除いた長さであって、前記Msは46mmであり、前記動的機械分析において、周波数は1Hzであり、前記動的機械分析は、DMAマルチストレインモード(Multi-Strain Mode)、温度変化法(Temperature Ramp Method)、およびデュアルカンチレバークランプ(Dual Cantilever Clamp)により行われる。
【0011】
他の実現例によると、無線充電装置を含み、前記無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、前記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下である、移動手段が提供される。
【発明の効果】
【0012】
前記実現例によると、本発明の無線充電装置は、180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下であって、180℃における変形率(熱変形率)の少ない磁性部を含むことにより、耐熱特性および磁性特性がより向上して、無線充電の際に前記磁性部の変形および破損を防止し、高温安定性および充電効率を向上させ得る。
【0013】
したがって、前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段に有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例による前記無線充電装置の斜視図を示すものである。
【
図3a】
図3aは、
図2におけるA-A'線に沿って切開した前記無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図3b】
図3bは、他の実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図4】
図4は、本発明の実現例により、動的機械分析(DMA)のカンチレバークランプに装着された磁性シート(磁性部)サンプルおよびMsを説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の実現例により、DMAにおけるカンチレバークランプに装着された磁性シート(磁性部)サンプルの動きと、それによる位置変化量を示すものである。
【
図6】
図6は、実施例3における高分子型磁性部の温度による位置変化した長さを示すDMAテストの結果グラフである。
【
図7】
図7は、比較例2における高分子型磁性部の温度による位置変化した長さを示すDMAテストの結果グラフである。
【
図8】
図8は、一実現例による、モールドにより高分子型磁性部を成形する工程を示すものである。
【
図9】
図9は、一実現例による無線充電装置を備える移動手段(電気自動車)を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下においては、本発明の思想を実現するための具体的な実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
なお、本発明を説明するにおいて、関連する公知の構成または機能に関する具体的な説明が、本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0017】
また、添付の図面において、一部の構成要素は誇張、省略、または概略的に示されており、各構成要素の大きさは実際の大きさを完全に反映するものではない。
【0018】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図で用いられるものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。
本明細書において、同一の符号は同一の要素を指す。
【0019】
本明細書において、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に形成されるものと記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成されるものを全て含む。
【0020】
また、各構成要素の上/下に関する基準は図面を基準にして説明する。図面における各構成要素の大きさおよび厚さは説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0021】
また、本明細書で用いられる「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外するものではない。
【0022】
また、本明細書に記載された構成要素の物性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0023】
本明細書において単数表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈される。
【0024】
(無線充電装置)
【0025】
図1および
図2は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図および斜視図をそれぞれ示すものである。
【0026】
図1および
図2を参照すると、本発明の一実現例による無線充電装置10は、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部とを含む。また、前記無線充電装置10は、前記コイル部200を支持する支持部100と、前記磁性部上に配置されるシールド部400と、前記構成要素を保護するハウジング600とをさらに含み得る。
【0027】
本発明の実現例による無線充電装置において、前記磁性部は、下記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下である。
【0028】
[数式1]
ここで、前記D
25は、動的機械分析(DMA)によって測定される25℃における位置変化量であり、
前記D
180は、前記動的機械分析によって測定される180℃における位置変化量であり、
前記Msは、60mmの長さ、13mmの幅および1mmの厚さを有する直方体形状を有するサンプルの長さのうち、治具で取られる部分を除いた長さであって、前記Msは46mmであり、
前記動的機械分析において、周波数は1Hzであり、
前記動的機械分析は、DMAマルチストレインモード、温度変化法、およびデュアルカンチレバークランプにより行われる。
【0029】
前記実現例によると、本発明の無線充電装置は、車両用磁性部の信頼性評価温度である150℃~180℃の温度、具体的に180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下であって、180℃における変形率(熱変形率)の少ない磁性部を含むことにより、耐熱特性および磁性特性がより向上して、無線充電の際に磁性部の変形および破損を防止し得るので、高温安定性および充電効率をさらに向上させ得る。
以下、前記無線充電装置の各構成要素別に具体的に説明する。
【0030】
[コイル部]
本発明の実現例による無線充電装置は、交流電流が流れて磁場を発生させ得るコイル部を含む。
【0031】
前記コイル部は導電性ワイヤを含み得る。
前記導電性ワイヤは導電性物質を含む。例えば、前記導電性ワイヤは導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電性ワイヤは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0032】
また、前記導電性ワイヤは、絶縁性外皮を備え得る。例えば、前記絶縁性外皮は、絶縁性高分子樹脂を含み得る。具体的に、前記絶縁性外皮は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含み得る。
【0033】
前記導電性ワイヤの直径は、例えば、1mm~10mm、2mm~7mm、または3mm~5mmであり得る。
【0034】
前記導電性ワイヤは、平面コイル状で巻き付かれ得る。具体的に、前記平面コイルは、平面螺旋コイル(planar spiral coil)を含み得る。また、前記コイルの平面形状は、楕円形、多角形、または角の丸い多角形の形状であり得るが、特に限定されない。
【0035】
前記平面コイルの外径は、5cm~100cm、10cm~50cm、10cm~30cm、20cm~80cm、または50cm~100cmであり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、10cm~50cmの外径を有し得る。
【0036】
また、前記平前記面コイルの内径は、0.5cm~30cm、1cm~20cm、または2cm~15cmであり得る。
【0037】
前記平面コイルの巻き回数は、1回~50回、5回~30回、5回~20回、または7回~15回であり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、前記導電性ワイヤを7回~15回巻いて形成されたものであり得る。
【0038】
また、前記平面コイル形状内において、前記導電性ワイヤ間の間隔は、0.1cm~1cm、0.1cm~0.5cm、または0.5cm~1cmであり得る。
【0039】
前記のような好ましい平面コイル寸法および規格範囲内であるとき、電気自動車のような大容量電力伝送を求める分野のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段分野に好適であり得る。
【0040】
前記コイル部は、前記磁性部と一定間隔離隔して配置され得る。例えば、前記コイル部と前記磁性部との離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~2mmであり得る。
【0041】
[磁性部]
前記磁性部は、コイル部の周囲に生成される磁場の磁路(magnetic path)を形成することができ、前記コイル部と前記シールド部との間に配置される。
【0042】
前記磁性部は、前記シールド部と一定間隔離隔して配置され得る。例えば、前記磁性部と前記シールド部との離隔距離は、3mm以上、5mm以上、3mm~10mm、または4mm~7mmであり得る。
【0043】
また、前記磁性部は、前記コイル部と一定間隔離間して配置され得る。例えば、前記磁性部と前記コイル部との離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~2mmであり得る。
【0044】
前記磁性部は、前記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下であり得る。具体的に、前記ΔDR1は、0.07未満、0.068以下、0.065以下、0.063以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、0.01以下、0.008以下、0.007以下、または0.005以下であり得る。または、前記磁性部は、前記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0であり得る。
【0045】
前記ΔDR1は、前記Msに対する前記DMAによって測定される180℃おける位置変化量(D180)と25℃おける位置変化量(D25)との差(D180-D25)の比を意味するものであり、ΔDR1が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をさらに向上させ得る。この場合、高温において磁性部の変形および破損の発生を最小化し得るので、充電効率を向上させ得る。
【0046】
前記DMAは、材料の熱特性を測定するために用いられる技法であり、本発明の実現例によると、前記磁性部の耐熱特性を測定するため、温度上昇による磁性部の位置変化量および位置変化した長さ等の特性を確認し得る。例えば、時間、温度および振動数の関数を利用して、磁性部の変形または応力の機械的物性を測定し得る。
【0047】
具体的に、前記DMAは、TA社のDMA Q800装置を用いて、-20℃~200℃および周波数1Hzにて、機械的物性を測定する磁性部(磁性シート)サンプルをクランプと駆動軸(drive shaft)とを用いて固定し、駆動モータを用いて、前記磁性部サンプルに応力または変形の動的刺激を加えて、センサによって測定される磁性部サンプルの位置変化(変形)を測定し得る。
【0048】
前記DMAは、DMAマルチストレインモード、温度変化法、およびデュアルカンチレバークランプを用いて行われる。
【0049】
具体的に、磁性部の温度による位置変化特性を測定するために、
図4および
図5を参照すると、例えば、磁性部シートサンプル301をDMAのカンチレバークランプ800に装着する。なお、
図4において、Lはサンプルの長さを意味し、Msはサンプルの長さLのうち、治具で取られる部分を除いた長さを意味し、Wはサンプルの幅、Tはサンプルの厚さであり、
図5において、サンプル上の実線部分に位置する矢印方向は、温度によるサンプル301の動きを示し、Dは、前記サンプルの動きによって測定されたサンプルの位置変化量を示すものである。
【0050】
本発明の実現例によると、前記Msは、
図4に示すように、デュアルカンチレバークランプ800で行う際、60mmの長さL、13mmの幅W、および1mmの厚さTを有する直方体形状を有するサンプル(磁性部、例えば磁性シート)の長さ(L、約60mm)のうち、サンプルの両端に治具で取られる部分(すなわち、サンプルの両端がそれぞれ約7mmの長さでクランプされた部分)である、合計14mmを除いた長さである。本発明の実現例によると、前記Msは46mmである。
【0051】
本発明の実現例によると、前記180℃における位置変化量(D180)は、3.5mm未満、3.2mm以下、3.0mm以下、2.9mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、または0.3mm以下であり得る。または、前記180℃における位置変化量(D180)は0であり得る。
【0052】
前記D180が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をより向上させることができ、さらには、高温において磁性部の変形および破損の発生を最小化し得るので、充電効率を向上させ得る。
【0053】
本発明の実現例によると、前記25℃における位置変化量(D25)は、0.2mm以下、0.1mm以下、0.01mm以下、または0.001mm以下、具体的に0mmであり得る。
【0054】
前記180℃おける位置変化量(D180)と25℃おける位置変化量(D25)との差(D180~D25)は、前記D25が0の場合、前記180℃おける位置変化量(D180)と同一であり、具体的に、3.5mm未満、3.2mm以下、3.0mm以下、2.9mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、または0.3mm以下であり得る。
【0055】
前記D180-D25が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をより向上させることができ、さらには、高温において磁性部の変形および破損発生を最小化し得るので、充電効率を向上させ得る。
【0056】
本発明の他の実現例によると、前記磁性部は、下記の数式2で表される195℃における位置変化(ΔDR2)が0.20以下であり得る。
【0057】
[数式2]
ここで、前記D
195は、前記動的機械分析によって測定される195℃における位置変化量であり、前記D
25および前記Msは、前述の通りである。
【0058】
具体的に、前記ΔDR2は、0.20未満、0.19以下、0.185以下、0.183以下、0.18以下、0.15以下、0.10以下、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、または0.054以下であり得る
【0059】
前記ΔDR2は、前記Msに対する前記DMAによって測定される195℃おける位置変化量(D195)と25℃おける位置変化量(D25)との差(D195-D25)の比を意味するものであり、前記ΔDR2が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をさらに向上させ得る。
【0060】
本発明の実現例によると、前記195℃における位置変化量(D195)は、10.0mm以下、9.5mm以下、9.0mm以下、8.5mm以下、8.4mm以下、8.0mm以下、7.5mm以下、7.0mm以下、5.0mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、または0.3mm以下であり得る。
【0061】
前記D195が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をさらに向上させ得る。
【0062】
前記195℃おける位置変化量(D195)と25℃おける位置変化量(D25)との差(D195-D25)は、前記D25が0の場合、前記195℃おける位置変化量(D195)と同一であり、具体的に、10.0mm以下、9.5mm以下、9.0mm以下、8.5mm以下、8.4mm以下、8.0mm以下、7.5mm以下、7.0mm以下、5.0mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、または0.3mm以下であり得る。
【0063】
前記D195-D25が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をより向上させることができ、さらには、高温において磁性部の変形および破損発生を最小化し得るので、充電効率を向上させ得る。
【0064】
本発明のまた他の実現例によると、前記磁性部は、下記数式3で表される195℃における位置変化(ΔDR2)に対して180℃における位置変化(ΔDR1)の比(ΔDR)が0.35以下であり得る。
【0065】
[数式3]
具体的に、前記ΔDRは、0.35未満、0.345以下、0.32以下、0.30以下、0.20以下、0.15以下、または0.12以下であり得る。前記ΔDRが前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をさらに向上させ得る。
【0066】
一方、本発明のまた他の実現例によると、前記磁性部は、下記数式4で表される温度変化に対して位置変化量(DPT)が0.2/50℃以下である。
【0067】
[数式4]
ここで、前記D
130は、前記動的機械分析によって測定される130℃における位置変化量であり、前記D
180および前記Msは、前述の通りである。
【0068】
具体的に、前記DPTは、0.1/50℃以下、0.07/50℃以下、0.068/50℃以下、0.065/50℃以下、0.063/50℃以下、0.06/50℃以下、0.05/50℃以下、0.04/50℃以下、0.03/50℃以下、0.02/50℃以下、0.01/50℃以下、0.008/50℃以下、または0.007/50℃以下であり得る。
【0069】
前記DPTは、温度変化に対する位置変化量であり、具体的に、前記Msと温度変化50℃との積に対する前記DMAによって測定される180℃おける位置変化量(D180)と130℃おける位置変化量(D130)の差(D180-D130)の比で示す。
【0070】
本発明の実現例により、前記磁性部が前記DPTを満足すると、高温において磁性部の変形および破損の発生を最小化し得るので、充電効率を向上させ得る。
【0071】
前記D130は、0.2mm以下、0.1mm以下、0.01mm以下、または0.001mm以下、具体的に0mmであり得る。
【0072】
前記180℃おける位置変化量(D180)と130℃おける位置変化量(D130)との差(D180-D130)は、前記D130が0の場合、前記180℃おける位置変化量(D180)と同一であり得る。前記180℃おける位置変化量(D180)と130℃おける位置変化量(D130)との差(D180-D130)は、具体的に3.5mm未満、3.2mm以下、3.0mm以下、2.9mm以下、2.5mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、0.5mm以下、または0.3mm以下であり得る。
【0073】
前記D180-D130が前記範囲を満足すると、耐熱特性および磁性特性をさらに向上させ得る。
【0074】
前記磁性部の位置変化開始温度は150℃以上であり得る。前記磁性部の位置変化開始温度は、例えば155℃以上、例えば160℃以上、例えば165℃以上、例えば168℃以上、例えば175℃以上、例えば178℃以上、例えば 例えば180℃以上、例えば183℃以上であり得る。前記磁性部の位置変化開始温度が高いほど、前記磁性部の耐熱特性が向上され得るので、磁性特性および充電効率をさらに向上させ得る。
【0075】
もし、前記磁性部の位置変化開始温度が150℃未満の場合、磁性部の位置変化量が増加することとなり、磁性特性および充電効率が減少し得る。
【0076】
本発明の実現例によると、前記磁性部は、フィラーおよびバインダー樹脂を含む高分子型磁性部を含み得る。
【0077】
前記高分子型磁性部の位置変化、具体的に位置変化量、位置変化した長さおよび位置変化開始温度は、前記高分子型磁性部に含まれているフィラーの種類、粒径および含有量等に応じて変わり得る。または、前記高分子型磁性部に含まれているバインダー樹脂の種類および含有量に応じて変わり得る。または、前記高分子型磁性部に添加される各種添加剤の種類および含有量に応じて変わり得る。または、前記高分子型磁性部を構成する組み合わせによって変わり得るので、フィラー、バインダー、および/または添加剤の適切な種類および含有量で選択することにより、高分子型磁性部の位置変化を効果的に制御し得る。
【0078】
前記磁性部は、金属系磁性部、例えばナノ結晶質(nanocrystalline)磁性部をさらに含み得る。
【0079】
また、前記磁性部は、酸化物系磁性部をさらに含み得る。
前記磁性部は、これらの複合体を含み得る。
【0080】
[高分子型磁性部]
前記磁性部は、バインダー樹脂とフィラーとを含む高分子型磁性部を含み得る。具体的に、前記磁性部は、前記バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散しているフィラーとを含む高分子型磁性部を含み得る。前記高分子型磁性部は、高分子型磁性ブロック(PMB)を含み得る。
【0081】
前記高分子型磁性部は、バインダー樹脂によってフィラー同士が結合することにより、広い面積で全体的に欠陥が少なく衝撃により損傷が少なくあり得る。
【0082】
前記フィラーは、フェライト(Ni-Zn系、Mg-Zn系、Mn-Zn系フェライト等)のような酸化物フィラー;パーマロイ(permalloy)、センダスト(sendust)、ナノ結晶質磁性体のような金属系フィラー;または、これらの混合粉末であり得る。より具体的に、前記フィラーは、Fe-Si-Al合金組成を有するセンダスト粒子であり得る。
【0083】
一例として、前記フィラーは下記化学式1の組成を有し得る。
[化学式1]
Fe1-a-b-cSiaXbYc
前記式において、XはAl、Cr、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせであり、YはMn、B、Co、Mo、またはこれらの組み合わせであり、0.01≦a≦0.2、0.01≦b≦0.1、および0≦c≦0.05である。具体的に、前記式において、Xは、Al、Cr、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0084】
前記フィラーはセンダストを含み得る。
前記フィラーの平均粒径(D50)は、約1μm~300μm、約10μm~200μm、または約30μm~150μmの範囲であり得る。前記フィラーの平均粒径が前記範囲を満足すると、180℃おける変形率(熱変形率)の少ない磁性部を実現することができ、これにより耐熱特性および磁性特性が向上され、無線充電の際に前記磁性部の変形および破損を防止し、高温安定性および充電効率を向上させ得る。
【0085】
前記フィラーは、前記高分子型磁性部の総重量を基準に、60重量%以上、70重量%以上、または85重量%以上の量で含み得る。
【0086】
例えば、前記高分子型磁性部は、前記フィラーを60重量%~90重量%、70重量%~90重量%、75重量%~90重量%、78重量%~90重量%、80重量%~90重量%、85重量%~90重量%、87重量%~90重量%、または89重量%~90重量%の量で含み得る。前記フィラーの含有量が60重量%未満であると、前記磁性部の位置変化が増加することとなり、磁性部の耐熱特性が低下して高温において磁性部の変形および破損が発生することがあり、これにより磁性特性が減少して充電効率が減少し得る。
【0087】
前記バインダー樹脂の融点(Tm)は150℃~210℃であり得る。例えば、前記バインダー樹脂の融点(Tm)は160℃~200℃、例えば160℃~180℃であり得る。前記バインダー樹脂の融点(Tm)が前記範囲を満足すると、150℃~180℃の温度にて位置変化を最小化して、磁性部の耐熱特性および磁性特性をより向上させることができ、これにより充電効率を向上させ得る。
【0088】
前記バインダー樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニルスルフィド(PSS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂およびエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0089】
前記バインダー樹脂は、硬化性樹脂であり得る。具体的に、前記バインダー樹脂は、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂であり、特に、硬化して接着性を示し得る樹脂であり得る。より具体的に、前記バインダー樹脂は、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミド基のような、熱による硬化が可能な官能基または部位を1つ以上含むか、または、エポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、スルフィド(sulfide)基、アセタール(acetal)基、またはラクトン(lactone)基のような、活性エネルギーによって硬化可能な官能基または部位を1つ以上含む樹脂を使用し得る。このような官能基または部位は、例えばイソシアネート基(-NCO)、ヒドロキシ基(-OH)、またはカルボキシル基(-COOH)であり得る。
【0090】
具体的に、前記バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリプロピレン樹脂からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0091】
また、前記バインダー樹脂として耐熱特性に優れた樹脂を用いたとしても、フィラーとの混合が上手く行かないと、180℃おける位置変化が増加し得る。したがって、前記バインダー樹脂およびフィラーの混合が望ましくなるように選択することが重要であり得る。
【0092】
例えば、前記バインダー樹脂として、ポリアミド樹脂を使用することができ、前記フィラーとして、センダストを使用し得る。
【0093】
前記高分子型磁性部は、前記バインダー樹脂を5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、10重量%~20重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、または7重量%~15重量%の量で含有し得る。
【0094】
一実現例によると、磁性部の180℃における位置変化を前記範囲に制御するために、前記バインダー樹脂を10重量%~40重量%、および前記フィラーを60重量%~90重量%の量で含み得る。
【0095】
一実現例によると、磁性部の180℃における位置変化を前記範囲に制御するために、前記バインダー樹脂を10重量%~20重量%、および前記フィラーを80重量%~90重量%の量で含み得る。
【0096】
また、前記高分子型磁性部は、添加剤をさらに含み得る。具体的に、前記高分子型磁性部は、リン酸およびシランからなる群より選択される1種以上の絶縁コーティング剤をさらに含み得る。前記絶縁コーティング剤は、高分子型磁性部の総重量を基準に0.1重量%~10重量%の量で添加され得る。
【0097】
前記添加剤を前記範囲の含有量で含むと、磁性部の180℃における位置変化を減少するのに有利であるため、充電効率を向上させ得る。
【0098】
前記高分子型磁性部の79kHz~90kHzの周波数帯域において、透磁率は素材によって異なり、広くは5~150000であり、具体的な素材によって5~300、500~3500、または10000~150000であり得る。また、前記高分子型磁性部の79kHz~90kHzの周波数帯域において、透磁損失は素材によって異なり、広くは0~50000であり、具体的な素材によって、0~1000、1~100、100~1000、または5000~50000であり得る。
【0099】
具体的な一例として、前記磁性部が磁性粉末およびバインダー樹脂を含む高分子型磁性部、具体的に高分子型磁性ブロックである場合、79kHz~90kHz、具体的に85kHzの周波数帯域において透磁率は、5~500、5~130、15~80、または10~50であり、透磁損失は0~50、0~20、0~15、または0~5であり得る。
【0100】
前記高分子型磁性部は、一定の比で伸び得る。例えば、前記高分子型磁性部の伸び率は0.5%以上であり得る。前記伸び特性は、高分子を適用しないセラミック系磁性部では得られ難いものであり、大面積の磁性部が衝撃により歪み等が発生しても損傷を減らし得る。具体的に、前記高分子型磁性部の伸び率は、0.5%以上、1%以上、または2.5%以上であり得る。前記伸び率の上限に特に制限はないが、伸び率向上のために高分子樹脂の含有量が多くなると、磁性部のインダクタンス等の物性が低下し得るので、前記伸び率は10%以下とすることが好ましい。
【0101】
前記高分子型磁性部は、衝撃前後の物性変化率が少なく、一般的なフェライト磁性シートに比べてはるかに優れる。
【0102】
本明細書において、ある物性の衝撃前後の物性変化率(%)は、下記式で計算され得る。
特性変化率(%)=|衝撃前特性値-衝撃後特性値|/衝撃前特性値×100
【0103】
例えば、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後のインダクタンス変化率が5%未満、または3%以下であり得る。より具体的に、前記インダクタンス変化率は、0%~3%、0.001%~2%、または0.01%~1.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後のインダクタンス変化率が相対的に少ないため、磁性部の安定性がより向上され得る。
【0104】
また、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の品質係数(Qファクタ)変化率が、0%~5%、0.001%~4%、または0.01%~2.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後の物性変化が少ないため、磁性部の安定性と耐衝撃性とがより向上され得る。
【0105】
また、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の抵抗変化率が、0%~2.8%、0.001%~1.8%、または0.1%~1.0%であり得る。前記範囲内であるとき、実際の衝撃や振動が加えられる環境において繰り返し適用しても、抵抗値が一定レベル以下に上手く維持され得る。
【0106】
また、前記高分子型磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の充電効率変化率が、0%~6.8%、0.001%~5.8%、または0.01%~3.4%であり得る。前記範囲内であるとき、大面積の磁性部が衝撃や歪みが繰り返し発生しても、物性をより安定して維持し得る。
【0107】
[ナノ結晶質磁性部]
前記磁性部は、ナノ結晶質磁性部をさらに含み得る。
【0108】
前記ナノ結晶質磁性部を適用する際に、コイル部と距離が離れるほど、コイル部のインダクタンスLsが低くなっても抵抗Rsがさらに低くなることにより、コイルの品質係数(Qファクタ:Ls/Rs)が高くなるため、充電効率が向上し発熱が減少し得る。
【0109】
例えば、前記ナノ結晶質磁性部は、Fe系ナノ結晶質磁性部であり、具体的に、Fe-Si-Al系ナノ結晶質磁性部、Fe-Si-Cr系ナノ結晶質磁性部、またはFe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性部であり得る。
【0110】
より具体的に、前記ナノ結晶質磁性部は、Fe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性部であってよく、この場合、Feが70元素%~85元素%、SiとBとの合計が10元素%~29元素%、CuとNbとの合計が1元素%~5元素%であることが好ましい(ここで元素%とは、磁性部をなす総元素数に対する特定元素の数の百分率のことを意味する)。前記組成範囲において、Fe-Si-B-Cu-Nb系合金が、熱処理によりナノ相の結晶質に容易に形成され得る。
【0111】
前記ナノ結晶質磁性部は、例えば、Fe系合金をメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)により製造し、所望の透磁率が得られるように300℃~700℃の温度範囲で30分~2時間の無磁場熱処理を行って製造され得る。
【0112】
もし、熱処理温度が300℃未満であると、ナノ結晶質が十分に生成されないため、所望の透磁率が得られず、熱処理時間が長くかかることがあり、700℃を超えると、過熱処理により透磁率が著しく低下し得る。また、熱処理温度が低い場合は熱処理時間を長くし、熱処理温度が高い場合は熱処理時間を短くして所望の透磁率に調整し得る。
【0113】
ナノ結晶質磁性部は、製造工程上厚さを厚く作ることが困難であり、例えば15μm~35μmの厚さに形成され得る。
【0114】
前記ナノ結晶質磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数付近で特定範囲の磁性特性を有し得る。また、前記ナノ結晶質磁性部は、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段分野における無線充電標準周波数付近で一定レベルの磁性特性を有し得る。
【0115】
例えば、前記ナノ結晶質磁性部は、85kHzの周波数にて500~150000の透磁率および100~50000の透磁損失を有し得る。一例として、前記ナノ結晶質磁性部が破砕型のナノ結晶質磁性体を含む場合、85kHzの周波数にて500~3000の透磁率および100~1000の透磁損失を有し得る。他の例として、前記ナノ結晶質磁性部が非破砕型のナノ結晶質磁性体を含む場合、85kHzの周波数にて5000~150000の透磁率および1000~10000の透磁損失を有し得る。
【0116】
[酸化物系磁性部]
前記磁性部は、酸化物系磁性部を含み得る。
【0117】
例えば、前記酸化物系磁性部はフェライト系素材であり、具体的な化学式はMOFe2O3(ここでMは、Mn、Zn、Cu、Niなどの1種以上の2価金属元素である)で表され得る。前記フェライト系素材は、焼結体であるものが透磁率のような磁性特性の面から有利であり、より具体的にフェライト焼結体であり得る。前記フェライト系素材は、原料成分を混合してか焼後粉砕し、これをバインダー樹脂と混合して成形し焼成して、シート状またはブロック状に製造され得る。
【0118】
より具体的に、前記酸化物系磁性部は、Ni-Zn系、Mg-Zn系、またはMn-Zn系フェライトであってよく、特に、Mn-Zn系フェライトは、79kHz~90kHzの周波数にて室温~100℃以上の温度範囲にわたって高い透磁率、低い透磁損失、および高い飽和磁束密度を示し得る。
【0119】
前記Mn-Zn系フェライトは、主成分として、酸化鉄Fe2O3を66mol%~70mol%、ZnOを10mol%~20mol%、MnOを8mol%~24mol%、およびNiOを0.4mol%~2mol%で含み、その外、副成分として、SiO2、CaO、Nb2O5、ZrO2、SnO等を含有し得る。前記Mn-Zn系フェライトは、主成分を所定のモル比で混合して、空気中で800℃~1100℃の温度で1時間~3時間か焼後、副成分を添加して粉砕し、これにポリビニルアルコール(PVA)等のバインダー樹脂を適量混合し、プレスを用いて加圧成形した後、1200℃~1300℃まで昇温して2時間以上焼成することにより、シート状またはブロック状に製造され得る。その後、必要に応じて、ワイヤソー(wire saw)またはウォータージェット(water jet)などにより加工して、所望の大きさに切断される。
【0120】
前記酸化物系磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数付近で特定範囲の磁性特性を有し得る。また、前記酸化物系磁性部は、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段分野における無線充電標準周波数付近で一定レベルの磁性特性を有し得る。
【0121】
例えば、前記酸化物系磁性部、具体的にフェライト系素材の85kHzの周波数における透磁率は、1000~5000、1000~4000、または2000~4000であり、透磁損失は、0~1000、0~100、または0~50であり得る。
【0122】
[磁性部の製造方法]
前記磁性部は、例えば、高分子型磁性部を含んでよく、前記高分子型磁性部は、フィラーとバインダー樹脂とを混合してスラリー化した後、シート状に成形して硬化するなどのシート化過程により製造し得る。
【0123】
また、熱可塑性樹脂を用いて一定の厚さを有する大面積の磁性部を製造するために、モールドにより立体構造に形成することができ、具体的には、フィラーと熱可塑性樹脂とを機械的せん断力と熱を用いて混練した後、機械装置を用いてペレット化して射出成形の方式でブロックを製造し得る。
【0124】
前記製造の方法には、通常のシート化またはブロック化方法が適用され得る。
前記成形は、射出成形によって磁性部の原料をモールドに注入して行われ得る。より具体的に、前記磁性部は、フィラーと高分子樹脂組成物とを混合して原料組成物を得た後、
図8に示すように、前記原料組成物701を射出成形機702によりモールド703に注入して製造され得る。この際、モールド703の内部形状を立体構造に設計して、磁性部の立体構造を容易に実現し得る。このような工程は、既存の焼結フェライトシートを磁性部として使用する場合に比べて、構造の自由度の面から有利であり得る。
【0125】
[磁性部の面積および厚さ]
前記磁性部は、磁性シート、磁性シート積層体、または磁性ブロックであり得る。
【0126】
前記磁性部は、大面積を有することができ、具体的に200cm2以上、400cm2以上、または600cm2以上の面積を有し得る。また、前記磁性部は、10000cm2以下の面積を有し得る。
【0127】
前記大面積の磁性部は、多数の単位磁性部が組み合わされて構成され、この際、前記単位磁性部の面積は、60cm2以上、90cm2以上、または95cm2~900cm2であり得る。
【0128】
前記磁性シートの厚さは、15μm以上、50μm以上、80μm以上、15μm~150μm、15μm~35μm、または85μm~150μmであり得る。このような磁性部は、通常のフィルムまたはシートを製造する方法により製造され得る。
【0129】
前記磁性シートの積層体は、前記磁性シートが20枚以上、または50枚以上積層されたものであり得る。また、前記磁性シートの積層体は、前記磁性シートが150枚以下、または100枚以下に積層されたものであり得る。
【0130】
前記磁性ブロックの厚さは、1mm以上、2mm以上、3mm以上、または4mm以上であり得る。また、前記磁性ブロックの厚さは10mm以下であり得る。
【0131】
[シールド部]
前記実現例による無線充電装置10は、電磁波遮蔽により無線充電効率を高める役割を果たすシールド部400をさらに含み得る。
前記シールド部は前記コイルの一面上に配置される。
【0132】
前記シールド部は金属板を含み、その素材はアルミニウムであり、その外に電磁波遮蔽能を有する金属または合金素材が使用され得る。
【0133】
前記シールド部の厚さは、0.2mm~10mm、0.5mm~5mm、または1mm~3mmであり得る。
【0134】
また、前記シールド部の面積は、200cm2以上、400cm2以上、または600cm2以上であり得る。
【0135】
[ハウジング]
前記実現例による無線充電装置10は、前記コイル部200と前記磁性部300とを収容するハウジング600をさらに含み得る。
【0136】
また、前記ハウジング600は、前記コイル部200、前記シールド部400、前記磁性部300などの構成要素が適切に配置され組み立てられ得るようにする。前記ハウジングの形状(構造)は、その内部に含まれる構成要素に応じて、または環境に応じて、任意に設定し得る。前記ハウジングの材質および構造は、無線充電装置に使用される通常のハウジングの材質および構造を採用し得る。
【0137】
[支持部]
前記実現例による無線充電装置10は、前記コイル部200を支持する支持部100をさらに含み得る。前記支持部の材質および構造は、無線充電装置に使用される通常の支持部の材質および構造を採用し得る。前記支持部は、平板構造またはコイル部を固定し得るよう、コイル形状に沿って溝が掘られた構造を有し得る。
【0138】
[無線充電装置の多様な例]
図3aおよび
図3bは、本発明の実現例による様々な構造の無線充電装置の断面図を示すものである。
【0139】
一実現例による無線充電装置は、
図3aを参照して、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部300とを含み、前記磁性部と一定間隔離隔してシールド部400を含み得る。また、前記磁性部300と前記シールド部400との間に空き空間またはスペーサ部700をさらに含み得る。この際、前記磁性部300は、フィラーとバインダー樹脂とを含む高分子型磁性部を含み得る。
【0140】
また、前記磁性部は平面構造であり得る。または、前記磁性部は立体構造であり得る。前記磁性部が立体構造の場合、充電効率および放熱特性を向上させ得る。
【0141】
図3bを再度参照すると、前記磁性部は、2種以上のハイブリッド型磁性部を含み得る。具体的に、前記磁性部は、互いに異なる種類の磁性部、例えば、高分子型磁性部300と、ナノ結晶質または酸化物系磁性部500とを含み得る。
【0142】
前記高分子型磁性部300は、前記コイル部200が配置される部分に対応する外郭部310と、前記外郭部310によって囲まれる中心部320とを含み、前記外郭部310の厚さが前記中心部320の厚さよりも大きくあり得る。この際、前記高分子型磁性部において、外郭部と中心部とは互いに一体型に形成され得る。または、前記高分子型磁性部において、外郭部と中心部とは厚さが同一でもあり得る。
【0143】
このように、無線充電中に電磁エネルギーが集中するコイル近傍における磁性部の厚さを厚くし、コイルがないため相対的に電磁エネルギー密度が低い中心の磁性部の厚さを薄くすることにより、コイル周辺に集中する電磁波を効果的に集束させて、充電効率を向上させるだけでなく、別途のスペーサなしで堅くコイルとシールド部との距離を維持し得るので、スペーサ等の使用による材料コストおよび工程コストを節減し得る。
【0144】
前記高分子型磁性部において、前記外郭部が前記中心部に比べて1.5倍以上厚い厚さを有し得る。前記厚さ比であるとき、コイル周辺に集中する電磁波をより効果的に集束させて、充電効率を向上させることができ、防熱および軽量化にも有利である。具体的に、前記高分子型磁性部において外郭部/中心部の厚さ比は、2以上、3以上、または5以上であり得る。また、前記厚さ比は、100以下、50以下、30以下、または10以下であり得る。より具体的に、前記厚さ比は、1.5~100、2~50、3~30、または5~10であり得る。
【0145】
前記高分子型磁性部の外郭部の厚さは、1mm以上、3mm以上、または5mm以上であり、また、30mm以下、20mm以下、または11mm以下であり得る。さらに、前記高分子型磁性部の中心部の厚さは、10mm以下、7mm以下、または5mm以下であり、また、0mmか、0.1mm以上または1mm以上であり得る。具体的に、前記高分子型磁性部の外郭部が5mm~11mmの厚さを有し、前記中心部が0mm~5mmの厚さを有し得る。
【0146】
前記高分子型磁性部300の中心部320の厚さが0の場合、前記高分子型磁性部300は、中心部320が空いている形状を有し得る(例えばドーナツ形状)。この場合、前記高分子型磁性部は、より小さい面積でも充電効率を効果的に向上させ得る。
【0147】
例えば、前記無線充電装置は、
図3bを参照して、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、高分子型磁性部300と、ナノ結晶質または酸化物系磁性部500とを含み得る。また、前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部の少なくとも一部が、前記シールド部に接触し得る。これにより、前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部で発生する熱が、前記シールド部を介して効果的に排出され得る。例えば、前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部がシート状であると、その一面全部が前記シールド部に接触し得る。具体的に、前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部は、前記シールド部の前記高分子型磁性部に向かう一面上に付着され得る。前記ナノ結晶質または酸化物系磁性部は、前記シールド部の一面に熱伝導性接着剤で付着されることにより、放熱効果をさらに高め得る。前記熱伝導性接着剤は、金属系、カーボン系、セラミック系などの熱伝導性素材を含むことができ、例えば、熱伝導性粒子が分散された接着剤樹脂であり得る。
【0148】
その外にも、本発明の実現例により、前記磁性部が180℃おける位置変化(ΔDR1)が0.07以下である高分子型磁性部を含み、他の素材の磁性部と複合した様々な構造に配置して、本発明の効果を妨げない範囲内で多様に設計し得る。
【0149】
本発明の実現例による無線充電装置の充電効率は、85%以上、88%以上、89%以上、90%以上、または91%以上であり得る。
【0150】
(移動手段)
前記実現例による無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のような移動手段のみならず、電気バイク、電動キックボード、電動スクーター、電動車椅子、および電動自転車などの様々な個人用移動手段などに有用に作用され得る。
【0151】
図9を参照すると、一実現例による電気自動車1は、前記実現例による無線充電装置を受信機720として含む。
【0152】
前記無線充電装置は、電気自動車1の無線充電の受信機として機能し、無線充電システムの送信機730から電力供給を受け得る。
【0153】
このように、前記移動手段は、無線充電装置を含み、前記無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部とを含み、前記磁性部は、前記数式1で表される180℃における位置変化(ΔDR1)が0.07以下であり得る。前記移動手段に含まれる無線充電装置の各構成要素の構成および特徴は、前述の通りである。
【0154】
前記移動手段は、前記無線充電装置から電力伝送を受けるバッテリーをさらに含み得る。前記無線充電装置は、無線により電力伝送を受けて前記バッテリーに伝達し、前記バッテリーは、前記電気自動車の駆動系に電力を供給し得る。前記バッテリーは、前記無線充電装置またはその他追加の有線充電装置から伝送される電力によって充電され得る。
【0155】
また、前記移動手段は、充電に関する情報を無線充電システムの送信機に伝達する信号伝送機をさらに含み得る。このような充電に関する情報は、充電速度のような充電効率、充電状態などであり得る。
【0156】
(実施例)
以下においては、本発明の具体的な実現例を提示する。ただし、以下に記載される実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が限定されてはならない。
【0157】
(実施例1:無線充電装置の製造)
段階1)高分子型磁性部(PMB磁性シート)の製造
バインダー樹脂としてポリアミド樹脂(製品名:L1724k、Daicel-Evonik社)35重量%、フィラーとしてセンダスト(製品名:C1F-02A、Crystallite Technology社製)60重量%、および添加剤としてリン酸およびシランを5重量%使用して、約170℃~200℃の温度、120rpm~150rpmの条件で押出機によりペレットを製造し、該ペレットを射出機により約250℃の温度条件で射出して、厚さ5mmの磁性部を得た。
【0158】
段階2)無線充電装置の製造
前記段階1の磁性部を用いて、導電性ワイヤを含むコイル部、前記磁性部、およびシールド部を含む無線充電装置を得た。
【0159】
(実施例2~実施例4)
下記表1に記載のようにフィラーの含有量を調整したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、磁性部およびそれを含む無線充電装置を得た。
【0160】
(実施例5および実施例6)
下記表1に記載のようにバインダー樹脂の種類を変更したことを除いては、前記実施例3と同様の方法により行い、磁性部およびそれを含む無線充電装置を得た。
【0161】
(比較例1)
下記表1に記載のようにフィラーの含有量を調整したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、磁性部およびそれを含む無線充電装置を得た。
【0162】
(比較例2)
下記表1に記載のようにバインダー樹脂の種類およびフィラーの含有量を調整したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、磁性部およびそれを含む無線充電装置を得た。
【0163】
(比較例3)
下記表1に記載のようにバインダー樹脂およびフィラーの含有量を調整したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、磁性部およびそれを含む無線充電装置を得た。
【0164】
(試験例)
(1)動的機械分析(DMA)テスト
分析装置:TA社のDMA Q800
磁性シート試験片:大きさ60mm(横、長さ)×13mm(縦、幅)×1mm(厚さ)の直方体
【0165】
[測定条件]
DMAマルチストレインモード
測定周波数:1Hz
温度変化法:-20℃~200℃、5℃/分
デュアルカンチレバークランプ:サンプルの両端は約7mmの長さにクランプされる。
前記条件で磁性シートの温度による位置変化特性を測定した。
【0166】
実施例および比較例で得られた磁性部に含まれている磁性シート(試験片)をサンプルホルダ内に入れて固定し、温度変化による機械方向(垂直方向)への位置変化開始温度、位置変化を測定した。この際、サンプルの温度は、前記装置のチャンバー内の温度と同一であると仮定した。その結果を下記表2および表3にまとめた。
【0167】
(2)充電効率測定
充電効率は、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト方法により測定した。具体的に、SAE J2954 WPT2 Z2クラススタンダードテスト規格のコイル部およびフレームを適用し、磁性部、スペーサ、アルミプレートを積み重ねて受信パッド(35cm×35cm)および送信パッド(75cm×60cm)を製造して、85kHz周波数にて出力電力6.6kWの同一条件で充電効率を評価した。
前記測定結果を下記表2および表3にまとめた。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
表1~表3に示すように、本発明の実現例による実現例の無線充電装置において、磁性部は180℃おける位置変化(ΔDR1)が0.063以下であり、無線充電装置の充電効率も全て約85.5%以上であることが分かる。
【0172】
具体的に、実施例1および実施例2の磁性部は、180℃における位置変化(ΔDR1)がそれぞれ0.063~0.007であり、特に実施例3~実施例6の磁性部は、180℃における位置変化(ΔDR1)がいずれも0.000であった。
【0173】
これに対し、比較例1~比較例3の磁性部は、180℃おける位置変化(ΔDR1)がそれぞれ0.089、0.207および0.076と、180℃おける位置変化が実施例に比べて著しく増加しており、無線充電装置の充電効率も著しく減少した。特に、比較例1および比較例2は、磁性特性の不足により、充電効率測定が不可能であった。
【0174】
一方、実施例1~実施例4および比較例3の結果から、フィラーの含有量によって磁性部の位置変化および無線充電装置の充電効率が著しく変わることが分かる。
【0175】
具体的に、実施例1~実施例4の磁性部の場合、同種のバインダー樹脂を用い、フィラー含有量を調節して、180℃おける位置変化(ΔDR1)を制御することができ、これにより充電効率も向上させ得る一方、比較例1および比較例3のように、同種のバインダー樹脂を用いるとともに、フィラー含有量を60重量%未満で使用した場合、180℃おける位置変化(ΔDR1)が0.076以上と、実施例1~実施例4の磁性部の180℃おける位置変化(ΔDR1)に比べて著しく増加しており、無線充電装置の充電効率が85%に減少することを確認した。
【0176】
さらに、実施例3、5および6の磁性部において、バインダー樹脂を異にして位置変化および充電効率を比較した。
【0177】
実施例3、5および6の磁性部の場合、いずれも180℃おける位置変化(ΔDR1)が0.000と優れているが、充電効率において差を示した。特に、実施例3の磁性部のように、ポリアミドバインダー樹脂を使用し、フィラーの含有量が89重量%の場合、180℃おける位置変化(ΔDR1)が0.000であり、充電効率も90%以上と、非常に優れた効果を示すことを確認した。
【0178】
一方、
図6および
図7は、それぞれ実施例3および比較例2の高分子型磁性部の温度による位置変化した長さを示すDMAテストの結果グラフである。
【0179】
図6および
図7に示すように、実施例3の高分子型磁性部は、温度が-20℃~200℃まで増加しても位置変化した総長さが約0.4mm未満と、温度が増加しても位置変化がほとんどないことが分かる。
【0180】
これに対し、比較例2の高分子型磁性部の場合、150℃以上から位置変化した長さが急激に増加して、約180℃の場合は位置変化した総長さが約9.5mmであり、200℃に近くなると位置変化した総長さが約25mmと、著しく上昇することを確認した。
【符号の説明】
【0181】
1:移動手段(電気自動車)
10、10a、10b:無線充電装置
100:支持部
200:コイル部
300:磁性部(高分子型磁性部)
301:サンプル
310:外郭部
320:中心部
400:シールド部
500:酸化物系またはナノ結晶質磁性部
700:スペーサ部
701:原料組成物
702:射出成形機
703:モールド
720:受信機
730:送信機
800:カンチレバークランプ
L:サンプルの総長さ
Ms:サンプルの長さ(L)のうち治具で取られる部分を除いた長さ
W:サンプルの幅
T:サンプルの厚さ
D:位置変化量