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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】ヘルメット及び二輪車安全運転システム
(51)【国際特許分類】
   B62J 27/00 20200101AFI20250509BHJP
   B62M 6/50 20100101ALI20250509BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20250509BHJP
   A42B 3/30 20060101ALI20250509BHJP
【FI】
B62J27/00
B62M6/50
B62J45/00
A42B3/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023186363
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】永井 辰憲
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕史
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 博史
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-278943(JP,A)
【文献】特開平10-168636(JP,A)
【文献】特開2022-156527(JP,A)
【文献】特開2018-157381(JP,A)
【文献】特開2011-195996(JP,A)
【文献】特開2017-186679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00-99/00
B62M 1/00-29/02
A42B 3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を覆うキャップ部と、
前記キャップ部から顎まで伸びる顎紐に取り付けられ、前記顎紐を装着状態に固定する顎紐装着装置と、
この前記キャップ部を被る人の人体を介して行われる人体通信の人体通信電極と、
前記人体通信電極を介して信号を少なくとも受信する人体通信部と、
前記人体通信部を介して受信した信号の内容情報に基づき前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除とを制御する安全装置制御部と
を具備することを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除とによりなる顎紐状態の情報の信号を前記人体通信部から送信するよう制御する送信制御部を具備する請求項1に記載のヘルメットと、
人体通信の二輪車側人体通信電極と、
この二輪車側人体通信電極を介して人体通信を行う二輪車側人体通信部と、
二輪車の車輪を回転不可能な状態にロックするブレーキロック機構と、
前記二輪車側人体通信部を介して得られる前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除の情報に基づきブレーキロック機構を制御して二輪車の車輪を回転可能・回転不可能な状態にするブレーキロック機構制御手段と、
を具備することを特徴とする二輪車安全運転システム。
【請求項3】
電動により車輪を回転させる電動アシストを行う電動アシスト機構を備え、
前記ブレーキロック機構制御手段により二輪車の車輪が回転可能な状態にされた場合にのみ、前記電動アシスト機構による電動アシストを行うことを可能とする請求項2に記載の二輪車安全運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘルメット及び二輪車安全運転システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車運転の安全対策について、考えられる第一のものはヘルメットである。改正道路交通法の施行により自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化され、バイクを含む幅広い二輪運転の際にヘルメットの着用が必要になる。自転車については、乗るときにヘルメット着用が努力義務となったものの、着用に多少なりとも手間がかかる。また、顎紐はしっかり装着しロックした状態としなければ、転倒や事故の際の危険性が高まる。更に、これまで強制ではないヘルメットを装着することは大変面倒であることから、持ったままで実際には着用しなかったり、また、正しい被り方をしなかったりなどの問題があった。
【0003】
二輪車運転の安全対策については、第二にライトの灯火に関する問題がある。特に自転車においては、夕方など暗くなりかけた際に無灯火のまま走行することによる事故も多発しているのが現状である。また、二輪車による照明は、その高さが所定以下に限られるため、目立ち難いという問題がある。
【0004】
特許文献1には、無線電波を二輪自動車とヘルメットとの間で用いた技術が開示されている(例えば、図1参照)。具体的には、二輪自動車を運転する際にはヘルメットの着用が義務付けられており、このヘルメットには運転者の頭部を保護する所定の規格が要求されている。そのため、この技術では、ヘルメットの識別信号と車両に記憶された識別信号とを比較してエンジンの始動許可を判断している。
【0005】
特許文献2の第1の発明は、二輪自動車の駆動力を発生させるエンジンと、エンジンを保持した車体に搭乗する運転者が着用すべきヘルメット等の保護具と、保護具に内蔵されており、保護具を着用した運転者の身体に電界を付与する電界発生手段と、車体に内蔵されており、運転者の身体に付与された電界を検出する電界検出手段と、エンジンの停止中であって、電界検出手段が電界発生手段による電界を検出した場合にのみ、エンジンを始動させる制御手段とを具備するものである。
【0006】
この特許文献2に記載の発明における電界検出手段は、車体に内蔵されており、運転者の身体に付与された電界を検出する。そして、制御手段は、エンジンの停止中に、電界検出手段が電界発生手段による電界を検出した場合、つまり、保護具を着用した運転者が車体に触れた場合に限り、エンジンを始動させる。これにより、仮に、保護具を着用しない運転者が車体に触れたとしても、電界発生手段では電界が発生しないので、エンジンは始動しない。また、運転者が保護具を着用しても、この運転者が車体に触れなければ、電界検出手段では電界が検出されないことから、エンジンは同じく始動しない。
【0007】
特許文献2に記載の第2の発明は、第1の発明の構成において、電界発生手段は、固有の識別信号を記憶する第1記憶手段を有する一方、制御手段は、固有の識別信号と同じ識別信号を記憶する第2記憶手段を有しており、電界発生手段は、固有の識別信号を変調して運転者の身体に電界を付与し、制御手段は、電界検出手段が電界発生手段による電界を検出して復調した結果、第2記憶手段に記憶された識別信号と同じ識別信号が得られた場合に、エンジンを始動させる構成を採用している。
【0008】
特許文献2に開示の第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、保護具自体が認証キーになり、制御手段が、受信した識別信号と記憶している識別信号とを照合し、この受信した識別信号が正規の識別信号であると判定した場合にエンジンを始動させることから、キーレスでのエンジンスタートが可能となる。また、金属製の専用鍵の亡失もなく、運転者の利便性が向上する。
【0009】
特許文献2に開示の第3の発明は、第1や第2の発明の構成において、保護具は、電界発生手段が運転者の身体に電界を付与するためのスイッチを有している構成である。この第3の発明によれば、第1や第2の発明の作用に加えてさらに、スイッチのオン作動をトリガーとして、電界発生手段が運転者の身体に電界を付与するので、常に運転者の身体に電界を付与する場合に比して、電界発生手段の消費電力を抑制可能になる。
【0010】
特許文献3には、盗難防止の効果を維持しつつ利便性の高い電気ロック機能を有するモータの制御装置、電気ロック機構、および電気ロック機構付き電動車両が開示されている。この発明では、電動アシスト自転車のモータの制御装置が、電動アシスト自転車の推進またはその走行を補助する。用いられている制御装置は、人体通信により送受信可能な通信信号を複数の信号受信部から受信可能な受信部と、通信信号の受信を検知しモータの駆動信号を生成し出力する制御部とを備える。制御部は、通信信号の受信の検知に応じて、モータの回転を制御する。
【0011】
特許文献4には、電源のメンテナンスの頻度を低くすることの可能な装着端末装置が開示されている。この装置は、ユーザーに装着される装着部と、ユーザーに接触する接触端末装置とユーザーを経路とする人体通信を行う装着通信部と、接触端末装置がユーザーの認証に用いる認証情報を記憶する装着記憶部と、装着通信部による人体通信を制御して、認証情報を人体通信によって接触端末装置に送信させる装着制御部と、人体通信に用いられる電力の少なくとも一部を環境中のエネルギーを用いて発電する環境発電部とを備える。
【0012】
上記のように特許文献4の発明では、接触端末装置の備える環境発電部が、接触端末装置において人体通信に必要な電力を発電する。そのため、接触端末装置が環境発電部を備えていない構成と比べて、接触端末装置に必要な電源の交換や充電が必要ないため、電源のメンテナンスの頻度を低くすることができる。
【0013】
特許文献5には、所定のユニフォームやヘルメットや手袋などのような装着すべき物が身体に装着されているか否かを誤判断や誤作動なく検知または検出するための方法と、この方法を応用したセーフティシステムが開示されている。この発明の方法は、ユニフォームやヘルメットなどの身体に装着すべき物に、その身体を通信路とする送信器と受信器を前記装着物に配設し、当該装着物が適正に身体に着用されているとき前記送信器と受信器とがそれらの間で身体を通して通信を行い、当該装着物が身体に未装着であるか又は適正に装着されていないことを、前記受信器の受信状態に基づいて検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2006-76424号公報
【文献】特開2010-278943号公報
【文献】特開2018-157381号公報
【文献】特開2015-97342号公報
【文献】特開2009-191420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、安全装置が装着されていることなど、所定の要件が満たされていることを検出するものはあるが、安全装置制御部のオンオフを制御可能なヘルメットは提供されていない。また、上記の如きヘルメットを用いた二輪車安全運転システムはなかった。
【0016】
本発明は上記のような従来のヘルメット安全装置制御部のオンオフを制御可能なヘルメットとそれを用いた二輪車安全運転システムの現状に鑑みてなされたもので、その目的は、安全装置制御部のオンオフを制御可能なヘルメット及び二輪車安全運転システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の実施形態に係るヘルメットは、頭部を覆うキャップ部と、前記キャップ部から顎まで伸びる顎紐に取り付けられ、前記顎紐を装着状態に固定する顎紐装着装置と、この前記キャップ部を被る人の人体を介して行われる人体通信の人体通信電極と、前記人体通信電極を介して信号を少なくとも受信する人体通信部と、前記人体通信部を介して受信した信号の内容情報に基づき前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除とを制御する安全装置制御部とを具備することを特徴とする。
【0023】
本発明の実施形態に係る二輪車安全運転システムは、前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除とによりなる顎紐状態の情報の信号を前記人体通信部から送信するよう制御する送信制御部を具備する請求項1に記載のヘルメットと、人体通信の二輪車側人体通信電極と、この二輪車側人体通信電極を介して人体通信を行う二輪車側人体通信部と、二輪車の車輪を回転不可能な状態にロックするブレーキロック機構と、前記二輪車側人体通信部を介して得られる前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除の情報に基づきブレーキロック機構を制御して二輪車の車輪を回転可能・回転不可能な状態にするブレーキロック機構制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0024】
本発明の実施形態に係る二輪車安全運転システムでは、電動により車輪を回転させる電動アシストを行う電動アシスト機構を備え、前記ブレーキロック機構制御手段により二輪車の車輪が回転可能な状態にされた場合にのみ、前記電動アシスト機構による電動アシストを行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係るヘルメットの平面図。
図2】本発明の第1の実施形態に係るヘルメットの顎紐装着装置の要部斜視図。
図3】本発明の第1の実施形態に係るヘルメットの顎紐装着装置の要部平面図。
図4】本発明の第1の実施形態に係るヘルメットの顎紐装着装置をコンピュータにより構成した場合のブロック図。
図5】本発明の二輪車安全運転システムにおける第1の実施形態に用いる二輪車である自転車の側面図。
図6】本発明の二輪車安全運転システムにおける第1の実施形態に用いる二輪車である稼働状態の自転車の側面図。
図7】本発明の二輪車安全運転システムにおける第1の実施形態の動作を示すフローチャート。
図8】本発明の第2の実施形態に係るヘルメットの平面図。
図9】本発明の第2の実施形態に係るヘルメットの安全装置である照明装置をコンピュータにより構成した場合のブロック図。
図10】本発明の二輪車安全運転システムにおける第2の実施形態の動作を示すフローチャート。
図11】本発明の第3の実施形態に係るヘルメットの平面図。
図12】本発明の第3の実施形態に係る二輪車安全運転システムに用いられる自転車の構成を示す平面図。
図13】本発明の第3の実施形態における自転車のブレーキロック機構制御手段を含む制御部をコンピュータにより構成した場合のブロック図。
図14】本発明の第3の実施形態における自転車における動作を示すフローチャート。
図15】本発明の第4の実施形態に係るヘルメットの平面図。
図16】本発明の第4の実施形態に係るヘルメットの安全装置をコンピュータにより構成した場合のブロック図。
図17】本発明の第4の実施形態に係る二輪車安全運転システムに用いられる自転車の構成を示す平面図。
図18】本発明の第4の実施形態に係る二輪車安全運転システムの電力送信制御部による動作を示すフローチャート。
図19】本発明の第4の実施形態に係る二輪車安全運転システムの充電処理部による動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るヘルメット及び二輪車安全運転システムを提供することである。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明の第1の実施形態に係るヘルメットを図1を参照して説明する。このヘルメットは、頭部を覆うキャップ部1を有する。キャップ部1又はこのキャップ部1の付属品には、安全を守るための安全装置が備えられている。
【0028】
本実施形態では、キャップ部1の付属品は、上記キャップ部1から顎まで伸びる顎紐2である。また、安全装置は、顎紐2を装着状態に固定する顎紐装着装置3である。
【0029】
顎紐装着装置3は、例えば図2図3に示すように、顎紐2の一方の端部に設けられた入込部31と、顎紐2の他方の端部に設けられた受部32とが嵌合する構造である。入込部31の先端は、細い基部33にハンマー状の張出部34が設けられた構造である。受部32は、顎紐2の延長された幅広のベース35に、弾性を有する2本のL字部36が向かい合うように設けられたものである。受部32は、筐体37に入れられており、図2に示すように筐体37に入込部31を入れ込むことにより結合がなされる。
【0030】
筐体37には、図3に示される2つロック機構40が設けられ、2本のL字部36により形成される間隙38に張出部34が入った状態で、ロックすることが可能である。即ち、ロック機構40は、電磁石部41から出入りする磁気固定された可動片42により構成されている。非ロック状態では電磁石部41が通電されておらず、可動片42が隠れた状態である。このとき、筐体37を図2の矢印の如く動かすことで、2本のL字部36が弾性により離れたり元へ戻ったりして、結合と非結合を自由に行き来することができる。これに対しロック状態となると、電磁石部41が通電されることにより、可動片42が飛び出た状態で2本のL字部36の先端を押圧し、張出部34が移動しない固定状態を実現する。
【0031】
キャップ部1内には、人体通信電極4と人体通信部5と安全装置制御部6とが設けられている。人体通信電極4は、キャップ部1を被る人の人体を介して行われる人体通信の電極となる。人体通信部5は、上記人体通信電極4を介して信号を人体通信により少なくとも受信するものである。安全装置制御部6は、上記人体通信部5を介して受信した信号の内容情報に基づき上記安全装置(ここでは、顎紐装着装置3)を制御するものである。
【0032】
人体通信電極4と人体通信部5と安全装置制御部6と安全装置(ここでは、顎紐装着装置3)は、図4に示すようなコンピュータを用いた構成とすることができる。即ち、CPU100が、主メモリ110やプログラムメモリ111のプログラムを用いて各部を制御する構成となっている。CPU100には、バス112を介して駆動インタフェース113、通信インタフェース114が接続されている。
【0033】
駆動インタフェース113には顎紐装着制御部13が接続され、通信インタフェース114には人体通信部5が接続され、CPU100は、駆動インタフェース113を介して顎紐装着制御部13を制御し、通信インタフェース114を介して人体通信部5を制御する。
【0034】
以上の構成に係る第1の実施形態のヘルメットを用いて二輪車安全運転システムを構成することができる。図5には、二輪車安全運転システムの第1の実施形態に用いる二輪車である自転車が示されている。この自転車のハンドルには、二輪車側人体通信電極61が設けられ、サドルには二輪車側人体通信電極62が設けられ、ペダルには二輪車側人体通信電極63が設けられている。二輪車である自転車には、二輪車側人体通信部60が設けられている。二輪車側人体通信部60は二輪車に取り付けられていれば良く、その設置場所は問わない。二輪車側人体通信部60は、人がこの二輪車を運転可能となったことを示す運転可能情報を上記二輪車側人体通信電極61(62,63)を介して通信するものである。
【0035】
二輪車安全運転システムの第1の実施形態の稼働状態を図6に示す。自転車の二輪車側人体通信部60は、人がこの二輪車を運転可能となったことを示す運転可能情報の信号を送信している。この信号は自転車の各部を介して二輪車側人体通信電極61(62,63)へ到り、この二輪車側人体通信電極61(62,63)から人体Pを介して人体通信により第1の実施形態に係るヘルメットHに到り、人体通信電極4を介して人体通信部5に受信される。人体通信部5から図4に示した安全装置制御部6が上記情報を取り込むことになる。
【0036】
図4に示したコンピュータにより構成される安全装置制御部6は、図7に示されるフローチャートに対応のプログラムにより動作を行うので、これを説明する。CPU100は、運転可能情報が到来したのかを監視している(S11)。図6に示すように、自転車の二輪車側人体通信部60が、「人がこの二輪車を運転可能となったことを示す」運転可能情報の信号を送信して、この信号が自転車の各部を介して二輪車側人体通信電極61(62,63)へ到り、この二輪車側人体通信電極61(62,63)から人体Pを介して人体通信により第1の実施形態に係るヘルメットHに到り、人体通信電極4を介して人体通信部5に受信される。これによりステップS11においてYESへ分岐し、CPU100が顎紐装着装置3を制御しロック状態が実現される(S12)。
【0037】
次に、CPU100は、運転可能情報が所定時間途絶えたかを監視している(S13)。人がハンドルから手を離し、ペダルから足を離し、サドルから降りると、人体Pへの信号が途絶えるので、この状況が所定時間続くとステップS13においてYESへ分岐し、CPU100は、顎紐装着装置3を制御してロック解除状態を実現する(S14)。これにより、人は顎紐2を外してヘルメットを取り去ることができる。なお、このフローチャートでは、運転可能情報が所定時間途絶えたことを条件として、ロック解除を実現しているが、これに代えて、または、この処理とともに、自転車にロック解除ボタンなどを設け、このボタンが操作されると二輪車側人体通信部60がこれを受けてロック解除指示の情報に係る信号を送信するようにしてもよい。この場合には、このロック解除指示の情報に係る信号が人体通信によってヘルメット側に伝わるとロック解除が実現される。
【0038】
図8は第2の実施形態に係るヘルメットを示す。本実施形態では、安全装置は、ライトにより照光する照明装置7であり、安全装置制御部は、上記照明装置7のライトのオンオフを制御する照明装置制御部8である。本実施形態の安全装置(ここでは、照明装置7)は、図9に示すようなコンピュータを用いた構成とすることができる。即ち、図4に示した第1の実施形態における顎紐装着装置3に代えて照明装置制御部8が用いられる。二輪車である自転車の構成は第1の実施形態のものと変わらない。
【0039】
図10は第2の実施形態に係る二輪車安全運転システムの動作を示すフローチャートである。これを説明する。CPU100は、運転可能情報が到来したのかを監視している(S21)。図6に示すように、自転車の二輪車側人体通信部60が、「人がこの二輪車を運転可能となったことを示す」運転可能情報の信号を送信して、この信号が自転車の各部を介して二輪車側人体通信電極61(62,63)へ到り、この二輪車側人体通信電極61(62,63)から人体Pを介して人体通信により第1の実施形態に係るヘルメットHに到り、人体通信電極4を介して人体通信部5に受信される。これによりステップS21においてYESへ分岐し、CPU100が照明装置制御部8を制御し照明装置7を制御してライト点灯状態が実現される(S22)。
【0040】
次に、CPU100は、運転可能情報が所定時間途絶えたかを監視している(S23)。人がハンドルから手を離し、ペダルから足を離し、サドルから降りると、人体Pへの信号が途絶えるので、この状況が所定時間続くとステップS23においてYESへ分岐し、CPU100は、照明装置7を制御してライト消灯状態を実現する(S24)。以上のように、照明装置7が運転中には確実にライトの点灯を実現することができる。
【0041】
図11に第3の実施形態に係るヘルメットを示す。この第3の実施形態に係るヘルメットは、上記の第1の実施形態に係るヘルメットの構成に概ね同じである。本実施形態の安全装置制御部6Aは、顎紐装着装置3を制御しロック状態或いはロック解除状態を実現するだけでなく、固定ロックと固定解除とによりなる顎紐状態の情報の信号を人体通信部から送信するよう制御する。人体通信部5Aは、上記人体通信電極4を介して信号を人体通信により受信及び送信するものである。
【0042】
図12は、第3の実施形態に係る二輪車安全運転システムに用いられる自転車の構成を示している。この自転車は、第1の実施形態の自転車の構成とほぼ等しい。本実施形態の自転車は、二輪車の車輪を回転不可能な状態にロックするブレーキロック機構70を備える。実際には、ブレーキロック機構70は、ブレーキハンドルと図示せぬ前ブレーキと後ブレーキと及びこれらと上記ブレーキハンドルを連絡するワイヤ等の伝達機構等により構成されるものであるが、ここでは、ブレーキハンドルの部分をブレーキロック機構70として示している。
【0043】
更に、本実施形態の自転車は、ブレーキロック機構制御手段80を備えている。このブレーキロック機構制御手段80は、二輪車側人体通信部60を介して得られる前記顎紐装着装置の固定ロックと固定解除の情報に基づきブレーキロック機構を制御して二輪車の車輪を回転可能・回転不可能な状態にするものである。
【0044】
本実施形態の自転車におけるブレーキロック機構制御手段80を含む制御部は、図13に示すようなコンピュータを用いた構成とすることができる。即ち、CPU200が、主メモリ210やプログラムメモリ211のプログラムを用いて各部を制御する構成となっている。CPU200には、バス212を介して駆動インタフェース213、通信インタフェース214が接続されている。
【0045】
駆動インタフェース213にはブレーキロック機構制御手段80が接続され、通信インタフェース214には二輪車側人体通信部60が接続され、CPU200は、駆動インタフェース213を介してブレーキロック機構制御手段80を制御し、通信インタフェース214を介して二輪車側人体通信部60を制御する。
【0046】
本実施形態では、人が自転車に乗ったときには、ヘルメット側において、既に説明した第1の実施形態の動作が行われ、顎紐ロック状態が実現される。ヘルメットでは、安全装置制御部6Aが、固定ロックの顎紐状態に係る情報の信号を人体通信部5Aから送信するよう制御する。人体通信部5Aは、上記人体通信電極4を介して上記情報の信号を人体通信により送信する。これ以降の本実施形態における自転車における動作を図14に示されるフローチャートにより説明する。
【0047】
CPU200は、顎紐ロック情報が到来を待っている(S31)。顎紐ロック情報が到来すると、ステップS31においてYESへ分岐し、ブレーキロック機構70を制御してロック解除状態を実現する(S32)。次に、CPU200は、顎紐ロック解除情報が到来したのかを監視し(S33)、当該情報が到来してステップS33においてYESへ分岐すると、ブレーキロック機構70を制御してロック状態を実現する(S34)。斯くして、自転車に乗る前にはブレーキロック状態であるが、乗車することにより顎紐のロック固定が行われ、これに続いて自転車のブレーキロックが解除される。これにより、ヘルメットの顎紐がロック固定されて安全が確保されたときに自転車を走らせることが可能となり、一層の安全が確保される。なお、図14では、ステップS33において顎紐ロック解除情報が到来したのかを監視しているのに加えて、顎紐ロック情報の継続的な到来がなくなったかを監視して、この条件が満たされたときに、ステップS34へ進む構成とすることができる。
【0048】
即ち、顎紐装着装置3がロック解除となるのは、人が自転車から降りたときであるから、人体通信により二輪車側人体通信部60において顎紐ロック解除情報を受け取れないことが考えられる。従って、ヘルメットの顎紐装着装置3がロック固定された後には、所要の時間間隔で顎紐ロック情報の継続的送信を行うようにし、人が自転車から降りた後に人体通信が途絶えてしまったときにブレーキロック状態が実現されるので、ブレーキのロック状態を手動により実現する機構を有しているにも拘らず、ブレーキロック状態にすることを忘れた場合などに好適である。
【0049】
図15に第4の実施形態に係るヘルメットを示す。ヘルメットには、安全装置制御部である照明装置7に電力を供給する蓄電池9、充電処理部9Aを備える。充電処理部9Aは、人体通信電極4を介して信号を受信し、この信号に基づき電力を生成し、生成した電力により上記蓄電池9を充電するものである。本実施形態の安全装置(ここでは、照明装置7)は、図16に示すようなコンピュータを用いた構成とすることができる。この構成では、第2の実施形態のヘルメットにおける安全装置のものと基本的に同一である。CPU100から延びるバス112に、電力用インタフェース115が接続されており、この電力用インタフェース115に充電処理部9Aが接続されている。CPU100は、電力用インタフェース115を介して充電処理部9Aを制御して蓄電池9への充電を行わせる。
【0050】
図17に、第4の実施形態に係る二輪車安全運転システムに用いられる自転車の構成を示す。この実施形態に係る自転車の構成は、第2の実施形態における自転車のものと基本的に同一である。この実施形態に係る自転車は、車輪の回転に応じて発電を行う発電装置90と、電力送信制御部95とを備えることが第2の実施形態と異なる。電力送信制御部95は、上記の発電装置90による電力の波形に、信号を重畳して二輪車側人体通信部60から送信させるものである。また、この自転車には、照明装置96が備えられており、発電装置90により発電された電力によって照明装置96を点灯させて走行することができる。
【0051】
図18に電力送信制御部95による動作のフローチャートを示し、図19に充電処理部9Aによる動作のフローチャートを示し、これらの動作を説明する。電力送信制御部95は、発電装置による発電中であるか否かを検出する(S41)。発電中を検出すると、発電に係る波形に、送信する情報の信号を重畳し二輪車側人体通信部60から送信させる(S42)。「発電に係る波形に、送信する情報の信号を重畳」の処理は、例えば発電の波形を搬送波として送信する情報の信号で変調を行い、送信することにより実現できる。
【0052】
一方、充電処理部9Aは、運転可能情報の到来を検出しており(S51)、このステップ51においてYESへ分岐すると、到来した情報の信号の搬送波を取出し、電力を生成する(S51)。更に、生成した電力を用いて蓄電池9を充電する(S52)。
【0053】
第5の実施形態に係る二輪車安全運転システムでは、電動により車輪を回転させる電動アシストを行う電動アシスト機構を備え、第3の実施形態に係る二輪車安全運転システムと基本的に同様の構成を採用し、ブレーキロック機構制御手段80により二輪車の車輪が回転可能な状態にされた場合にのみ、上記電動アシスト機構による電動アシストを行うことができるように構成する。
【符号の説明】
【0054】
1 キャップ部
2 顎紐
3 顎紐装着装置
4 人体通信電極
5 人体通信部
5A 人体通信部
6 安全装置制御部
6A 安全装置制御部
7 照明装置
8 照明装置制御部
9 蓄電池
9A 充電処理部
13 顎紐装着制御部
26 人体通信部
31 入込部
32 受部
33 基部
34 張出部
35 ベース
36 L字部
37 筐体
38 間隙
40 ロック機構
41 電磁石部
42 可動片
60 二輪車側人体通信部
61 二輪車側人体通信電極
62 二輪車側人体通信電極
63 二輪車側人体通信電極
70 ブレーキロック機構
80 ブレーキロック機構制御手段
90 発電装置
95 電力送信制御部
96 照明装置
100 CPU
110 主メモリ
111 プログラムメモリ
112 バス
113 駆動インタフェース
114 通信インタフェース
115 電力用インタフェース
200 CPU
210 主メモリ
211 プログラムメモリ
212 バス
213 駆動インタフェース
214 通信インタフェース
H ヘルメット
P 人体
【要約】
【課題】安全装置制御部のオンオフを制御可能なヘルメット及び二輪車安全運転システムを提供することである。
【解決手段】頭部を覆うキャップ部1と、前記キャップ部1又はこのキャップ部1の付属品に取り付けられ、安全を守るための安全装置と、このキャップ部1を被る人の人体を介して行われる人体通信の人体通信電極4と、前記人体通信電極4介して信号を少なくとも受信する人体通信部5と、前記人体通信部5を介して受信した信号の内容情報に基づき前記安全装置を制御する安全装置制御部6とを具備する。
【選択図】図1
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図2
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図18
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