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特許7678431グラファイトの薄板状構造物の製造方法、及び、薄片化グラファイトの製造方法
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  • 特許-グラファイトの薄板状構造物の製造方法、及び、薄片化グラファイトの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】グラファイトの薄板状構造物の製造方法、及び、薄片化グラファイトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/22 20170101AFI20250509BHJP
   C25B 1/135 20210101ALI20250509BHJP
   C25B 11/043 20210101ALI20250509BHJP
   C01B 32/225 20170101ALI20250509BHJP
   C01B 32/19 20170101ALI20250509BHJP
【FI】
C01B32/22
C25B1/135
C25B11/043
C01B32/225
C01B32/19
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021553691
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2020040683
(87)【国際公開番号】W WO2021085551
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019197209
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】716002448
【氏名又は名称】株式会社仁科マテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】赤田 充生
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-510721(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088845(WO,A1)
【文献】LU, Jiong et al.,ACS Nano,米国,2009年,Vol.3/No.8,pp.2367-2375
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のグラファイトシートで構成される陽極、
電解質としてテトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸を含む電解質溶液(但し、テトラフルオロ硼酸を有するイオン液体を含む場合を除く)、及び
前記電解質溶液に浸漬された陰極、を含む電気化学反応系を準備する工程、
前記長尺のグラファイトシートの片方の端を繰り出して前記電解質溶液に連続的に浸漬しつつ前記電気化学反応系に対して電流を流すことで、前記グラファイトシートをグラファイトの薄板状構造物に変換する工程、及び、
前記グラファイトの薄板状構造物を連続的に前記電解質溶液から取り出す工程、を含む、グラファイトの薄板状構造物の製造方法。
【請求項2】
前記グラファイトシートが、縮重合系高分子化合物から構成されるシートの熱処理物である、請求項1に記載のグラファイトの薄板状構造物の製造方法。
【請求項3】
前記縮重合系高分子化合物が、芳香族ポリイミドである、請求項2に記載のグラファイトの薄板状構造物の製造方法。
【請求項4】
前記電解質溶液から取り出された前記グラファイトの薄板状構造物に付着又は包含されている前記電解質溶液を除去又は回収する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のグラファイトの薄板状構造物の製造方法。
【請求項5】
前記電解質溶液に浸漬した前記グラファイトシートの両面それぞれに対して前記陰極を対向させる、請求項1~4のいずれかに記載のグラファイトの薄板状構造物の製造方法。
【請求項6】
前記グラファイトシートが、支持フィルムに積層された状態で搬送される、請求項1~5のいずれかに記載のグラファイトの薄板状構造物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法によってグラファイトの薄板状構造物を得る工程、及び、
該薄板状構造物に剥離操作を加えることにより薄片化グラファイトを得る工程、を含む、薄片化グラファイトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイトの薄板状構造物の製造方法、及び、薄片化グラファイトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の説明において、「グラフェン」とは、sp2結合炭素原子によって構成された、一原子分の厚みを有するシート形状の物質をいう。「グラファイトの薄板状構造物」とは、層構造を有する原料黒鉛の層間に層間物質が挿入されて、黒鉛の層間(グラフェン同士の距離)が拡大したものをいう。また、「薄片化グラファイト」とは、グラフェンの積層体であって、前記グラファイトの板状構造物に剥離操作を加えて、原料の黒鉛よりもグラフェンの積層数を少なくした黒鉛をいう。
【0003】
グラフェンは、高いキャリア移動度、高い熱伝導度、透明性などの物性を一つの材料に兼ね備えた特異な物質である。これに加えて、その構造が究極のナノシート状であるために、デバイスの大面積化が容易である上に、熱的にも化学的にも安定性に富むため、エレクトロニクス分野を始めとする先端工業材料への応用が期待されているナノ炭素材料である。
【0004】
黒鉛は多数のグラフェンが積み重なって構成される積層体であり、地上に豊富に存在する。従って、黒鉛はグラフェン製造における格好の原料と考えられるため、この積層体の層間を剥離させることで、グラフェンや、黒鉛よりもグラフェンの積層数が遥かに少ない薄片化グラファイトを製造する様々な試みが提案されてきた。
【0005】
黒鉛の層間を剥離する主たる方法としては、これに機械的または物理的な外力を加える方法や、黒鉛を酸化剤で化学修飾してから層間剥離した後、これを還元してグラフェンを得る方法、あるいは、黒鉛を作用電極としてこれを電解質溶液中に浸漬して通電することで、黒鉛の層間に電解質イオンをインターカレートしてグラファイトの薄板状構造物を得た後、該薄板状構造物に対し層間剥離を行う、電気化学的な方法などが知られている。
【0006】
電気化学的な方法で黒鉛の層間に電解質イオンをインターカレートしたのち層間剥離を行うアプローチは、酸化剤や還元剤などの薬剤を必要としない。またこの方法は、制御が容易な電気エネルギーでかつ温和な反応条件下でグラファイトの薄板状構造物を得ようとするアプローチで、プロセスの大規模化への可能性を秘めている。
【0007】
この電気化学的な方法では、黒鉛を作用電極として用いて数多くの試みがなされてきた。そこでは、硫酸、硝酸または過塩素酸などの酸性物質の水溶液を電解質溶液として電気を流し、当該酸性物質を作用電極(陽極)である黒鉛の層間にインターカレートしたのち層間剥離を行う方法が最も広く試されてきた(非特許文献1を参照)。なかでも、硫酸は入手が容易でかつ黒鉛との層間化合物を作り易いために電解質としてしばしば用いられる物質である。しかしながら、これら公知の酸を電解質として使用する場合には、層間剥離を起こす過程で生成物の構造に欠陥が生じやすく、さらには電解質由来の分解ガスの発生による黒鉛組織構造の破壊や脱落が技術を応用拡大するにあたって大きな障壁となっていた。あわせて水の酸化などの望ましくない副反応が起きることによる問題もあった。
【0008】
これらの問題を回避する為に、できるだけ温和な電解条件でインターカレートを進めようとする試みがある(特許文献1を参照)。しかしながら、その結果として、電気化学的処理の長時間化が避けられず、また電位制御などの複雑な電解装置を必要とするなど大規模に実施するには生産効率が低く、コスト的に満足できるものではない。
【0009】
これに対し、短時間での電解を試みたと謳う例がある。50%硫酸水を電解質溶液として用いて酸化グラフェンを合成できるとした例である(非特許文献2を参照)。ところがこの方法は、該酸化工程の前段階で、濃硫酸を用いて原料黒鉛を膨張黒鉛に変える工程を必要とし、この工程のほうが酸化工程より長い時間を必要とする。要するに、二段構えの煩雑なプロセスを採らざるを得ないので洗練された方法とはいえない。
【0010】
一方、上記した水系で電気化学的処理を行う場合の欠点を回避する目的で、非水系の電解質を使用する試みがある(非特許文献3を参照)。なかでもイオン液体を電解質に用いる検討が近年活発であるが、イオン液体そのものが極めて高価であるために経済性の観点で大規模生産には向かない。
【0011】
以上述べた従来技術では、いずれの場合においても、グラファイトの薄板状構造物を製造するに際し、反応槽(反応系)に供給する原料黒鉛の重量、電気量、反応時間等の条件は予め設定されており、その仕込み開始から目的物を得て終了するまでを一つのサイクルとする、いわゆるバッチ反応形式の事例しか示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2012-131691号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】CARBON,54,1-21(2013).
【文献】Nature Commun.,9:145(2018).
【文献】Adv.Funct.Mater.,18(10),1518-25(2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上述べたように、グラファイトの薄板状構造物に対し層間剥離を行うことによる薄片化グラファイトの製造方法は多数報告されている。しかしながら公知のグラファイトの薄板状構造物の製造方法は、前記したいわゆるバッチ反応形式に限られるものである。グラファイトの薄板状構造物を大規模かつ経済的に製造する技術はいまだ満足できる水準にない。薄片化グラファイトを工業材料として活用するには、大規模かつ経済的な製造に適した、グラファイトの薄板状構造物の製造技術の確立が求められている。
【0015】
本発明は、上記現状に鑑み、高品質のグラファイトの薄板状構造物又は薄片化グラファイトを製造するための合理的な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討の結果、電解質としてテトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸を使用すると共に、陽極としてシートの幅に対して十分な長さを有する、いわゆる長尺のグラファイトシートを使用することで、連続的に原料であるグラファイトを反応系に供給し、これと同期させて連続的に生成物として高品質のグラファイトの薄板状構造物を取り出すことができる方法を見出して本発明を完成した。
【0017】
即ち本発明は、原料であるグラファイトの供給と、生成物である高品質のグラファイトの薄板状構造物の系外への取り出しとを連続的に行うことができる、商業生産に相応しい連続反応システムを提供するものである。
本発明は、長尺のグラファイトシートで構成される陽極、
電解質としてテトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸を含む電解質溶液、及び
前記電解質溶液に浸漬された陰極、を含む電気化学反応系を準備する工程、
前記長尺のグラファイトシートの片方の端を繰り出して前記電解質溶液に連続的に浸漬しつつ前記電気化学反応系に対して電流を流すことで、前記グラファイトシートをグラファイトの薄板状構造物に変換する工程、及び、
前記グラファイトの薄板状構造物を連続的に前記電解質溶液から取り出す工程、を含む、グラファイトの薄板状構造物の製造方法に関する。
好ましくは、前記グラファイトシートが、縮重合系高分子化合物から構成されるシートの熱処理物であり、より好ましくは、前記縮重合系高分子化合物が、芳香族ポリイミドである。前記グラファイトの薄板状構造物の製造方法は、前記電解質溶液から取り出された前記グラファイトの薄板状構造物に付着又は包含されている前記電解質溶液を除去又は回収する工程をさらに含んでもよい。また、前記電解質溶液に浸漬した前記グラファイトシートの両面それぞれに対して前記陰極を対向させてもよい。また、前記グラファイトシートが、支持フィルムに積層された状態で搬送されてもよい。
また本発明は、前記グラファイトの薄板状構造物の製造方法によってグラファイトの薄板状構造物を得る工程、及び
該薄板状構造物に剥離操作を加えることにより薄片化グラファイトを得る工程、を含む、薄片化グラファイトの製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、高品質のグラファイトの薄板状構造物又は薄片化グラファイトを製造する方法を提供することができる。また、本発明によると、連続的なプロセスによって、酸素含有割合が高いグラファイトの薄板状構造物又は薄片化グラファイトを製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施態様を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本実施形態は、特定の電解質を使用した連続的な電気化学反応によって、陽極として使用するグラファイトシートを、グラファイトの薄板状構造物に変換するものである。
【0022】
本実施形態において、陽極は、長尺のグラファイトシートで構成される。一つの好適な使用形態として、当該グラファイトシートは、ロール状に巻かれており、当該ロールからグラファイトシートの一端を反応系に連続的に繰り出すことが可能なように構成される。
【0023】
前記グラファイトシートを構成するグラファイトは、後述する電解質と層間化合物を形成(インターカレート)できるものであれば特に限定されない。例えば、天然グラファイト、合成グラファイトの他、縮重合系高分子化合物を熱処理して得たグラファイト、高配向熱分解黒鉛(HOPG)等が挙げられる。
【0024】
前記縮重合系高分子化合物としては特に限定されないが、例えば、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。なかでも、芳香族ポリイミドが好ましい。
【0025】
前記グラファイトの好適な具体例として、芳香族ポリイミドを熱処理して得たグラファイトが挙げられる。このようなグラファイトは、面状のグラファイト結晶が層状に積層された構造を有しており、グラファイトの層間へのテトラフルオロ硼酸の陰イオンまたはヘキサフルオロ燐酸の陰イオンのインターカレートが特に進行しやすい。また、当該インターカレートが進行したときに、グラファイトから小片の剥離や脱離などが特に生じにくく、陽極としての全体的な形態を維持しやすい。そのため、より効率良く、より高品質のグラファイトの薄板状構造物または薄片化グラファイトを製造することが可能となる。
【0026】
また、前記陽極は、天然グラファイトを濃硫酸や硝酸等の強酸に浸したのち膨張炉で加熱処理工程を経て得た膨張黒鉛を、高圧プレスによって成型したものであってもよい。これを陽極として使用することによっても、効率良く、高品質のグラファイトの薄板状構造物または薄片化グラファイトを製造することができる。
【0027】
前記グラファイトシートの厚みは、本電気化学反応系に連続的にグラファイトシートを供給可能な柔軟性と強度を与えるものであれば特に限定されないが、例えば、1~200μmであってよく、好ましくは4~100μmであり、より好ましくは10~50μmである。また、前記グラファイトシートの長手方向における相応しい長さは、本電気化学反応の規模に応じて変わり得るが、例えば、0.3~1000mであってよく、好ましくは10~300mである。
【0028】
本実施形態のグラファイトの薄板状構造物の製造方法で用いる陰極は、電解質溶液中でグラファイトシートに対向して設置される電極であるが、グラファイトの薄板状構造物の製造を直接的に担っているものではない。よって、陽極反応の結果生じたカチオンに電子を与える機能を持ち、かつ、電気化学的に安定な系を構築できるものであれば特に限定されることはなく、広範囲な材料から適宜選択することができる。例えば、白金、ステンレススチール、銅、亜鉛、鉛などの金属、または、グラファイトなどの炭素質材料から選択することができる。また、陰極の形状としては、ワイヤー状、板状、またはメッシュ(網目)状のものを適宜選択できる。
【0029】
陰極反応でガスが発生する場合には、陰極反応の効率を損ねないこと又は電解系の電気抵抗を無用に増加させないことなどのために、陰極の面積を可能な範囲で大きくしてもよい。
【0030】
本実施形態の製造方法では、陽極および/または陰極で望ましくない反応が起きるのを防ぐため、あるいは陽陰両極の短絡を防ぐために、両極の間にイオン交換膜またはスペーサーなどを設置してもよい。
【0031】
本実施形態の製造方法における電極系は、前述した陽極と陰極のみからなる最も単純な電極構成でよい。但し、より精密な電位制御が必要な場合には、陽極と陰極に加えて、参照電極をさらに用いても良い。参照電極としては、Ag/AgClなど常法のものを使用できる。
【0032】
本実施形態では電解質として、テトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸を用いる。これら電解質の陰イオンは、グラファイトの層間へのインターカレートが極めて速やかに進行するため、電気化学反応における電流効率および時間効率が極めて高く、効率よく、高品質のグラファイトの薄板状構造物を製造することができる。以上の電解質は、40~50%の水溶液として市販されているものを用いてもよいし、必要に応じて適宜、適切な溶媒を加え希釈して用いてもよい。
【0033】
電解質溶液は、上記電解質が溶媒に溶解したものである。使用可能な溶媒としては、前記電解質またはこれらの水溶液と混和可能な溶媒であって、かつ、グラファイトの薄板状構造物を製造する際に電気化学的に安定な溶媒のなかから適宜選択することができる。
【0034】
好ましい溶媒は、水や、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等のプロトン性極性溶媒;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒である。これらのうち1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
溶媒としては、水を含むことが好ましい。水およびプロトン性極性溶媒を含むこと、又は、水および非プロトン性極性溶媒を含むことがより好ましい。水および非プロトン性溶媒を含むことが特に好ましい。プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を使用することによって、比較的親油性が高いとされるテトラフルオロ硼酸の陰イオンまたはヘキサフルオロ燐酸の陰イオンが黒鉛層間に侵入するのをサポートすることを期待できる。また、電解質溶液を構成する溶媒の選択肢が増加することによって、グラファイトの薄板状構造物を効率よく製造するために有利な電解条件の幅が拡大する。
【0036】
前記電解質溶液における前記電解質の濃度は、電気化学反応系の電気抵抗が十分に低く、かつ、テトラフルオロ硼酸の陰イオンまたはヘキサフルオロ燐酸の陰イオンが速やかに陽極のグラファイトに供給されてグラファイトの薄板状構造物が得られる濃度であればよい。好ましくは、1.0~50質量%であり、さらに好ましくは、5.0~50質量%である。
【0037】
本実施形態の一態様を図1に沿って説明する。所定の幅及び長さを有する長尺のグラファイトシート1は、ロール2の形状に巻かれている。グラファイトシート1の一端は、ロール2から繰り出され、複数の搬送ローラ3によって所定の経路を経て搬送される。グラファイトシート1を搬送するときの搬送速度は、本実施形態の実施規模、即ち、グラファイトシートの厚みと幅等の反応規模の因子と、グラファイトの薄板状構造物もしくは薄片化グラファイトにおける所望の酸化度を支配する供給電気量、電流密度等の通電条件が関わる因子とを総合的に考慮して決定される。従って、該グラファイトシートの搬送速度は、特定の値に限定されないが、通常10~2000cm/hrであり、好ましくは20~1000cm/hrであり、より好ましくは200~500cm/hrである。
【0038】
一方、電解槽4内には電解質溶液5が満たされている。グラファイトシート1の搬送経路は、ロール2から繰り出されたグラファイトシート1が電解質溶液5に進入し、電解質溶液5内で所定の距離(電気化学反応ゾーン)を搬送され、そのプロセスで所望の電気化学反応を受けた後、電解質溶液5の外部に進行するように設定する。
【0039】
電解質溶液5内で、グラファイトシート1に対向するように陰極6が設置される。図1では、陰極6は、グラファイトシート1の片面(上向きの面)にのみ対向するように配置されているが、グラファイトシート1の上下両面それぞれに対向するように設置されてもよい。両面それぞれに対向させることによって、より効率よく、グラファイトの薄板状構造物を製造することができる。
【0040】
図1では、電解質溶液5中のグラファイトシート1は、陰極6と対向している部分において、水平方向に搬送されているが、搬送方向はこれに限定されず、所望の電解成績が得られる限りにおいて任意に選択できる。
【0041】
搬送ロール3の少なくとも1つと陰極6はそれぞれ電源7に接続されている。電源7に接続されている搬送ロールは、通電性の材料から構成される。当該搬送ロールを経て、グラファイトシート1に陽電圧が印加される。これにより、グラファイトシート1が陽極となる。
【0042】
印加電圧は、少なくとも、グラファイトシート1のグラファイトの層間にテトラフルオロ硼酸の陰イオン又はヘキサフルオロ燐酸の陰イオンがインターカレートし、かつ、所望の電気化学反応が生起するために必要な電位を確保できればよいが、速やかにグラファイトの薄板状構造物を得るために過電圧を印加してもよい。実用的な印加電圧は、本実施形態の実施規模、即ち、単位時間あたりに系に供給するグラファイトシートの厚みと幅等の反応規模の因子と、グラファイトの薄板状構造物もしくは薄片化グラファイトにおける所望の酸化度を支配する供給電気量、電流密度等の通電条件が関わる因子とを総合的に考慮して決定される。従って、該グラファイトシートへの印加電圧は、一義的に限定されないが、所望の電流値、及び、電解質濃度、電解質溶液の溶媒組成、陽陰両極間の距離、電解温度など、電解系の電気抵抗が支配する電圧降下要素に打ち勝つように設定することが好ましい。具体的には、好ましい印加電圧の範囲は、1.5~50Vであり、より好ましい範囲は2.0~25Vである。
【0043】
本実施形態の電気化学反応系に流す電流値は、本実施形態の実施規模、即ち、グラファイトシートの厚みと幅等、単位時間あたりに系に供給する原料の重量規模の因子と、グラファイトの薄板状構造物もしくは薄片化グラファイトにおける所望の酸化度を支配する供給電気量、電流密度等の通電条件が関わる因子とを総合的に考慮して決定される。従って、該グラファイトシートに流す電流値は、一義的に限定されないが、少なくとも、グラファイトシート1のグラファイトの層間にテトラフルオロ硼酸の陰イオン又はヘキサフルオロ燐酸の陰イオンがインターカレートし、かつ、所望の電気化学反応が所望の反応時間の中で完結できる値とすればよい。
【0044】
グラファイトシート1に供給する電流の密度は、印加電圧と、電解液中にあって陰極と対面して電気分解を受ける陽極の表面積によってコントロールされる。本実施形態によると、テトラフルオロ硼酸の陰イオン又はヘキサフルオロ燐酸の陰イオンがグラファイトの層間に極めて速やかにインターカレートして、グラフェンの層間を均一に拡大することが可能になる。従って、電流密度は微小な域から高度な域まで広く設定することができ、電流密度の大小に関わらずグラファイトの薄板状構造物を得ることができる。好ましくは、1~2,000mA/cmであり、より好ましくは、10~1,000mA/cmである。
【0045】
本実施形態の一形態では、電気化学反応系に供給する電流を一定の値に設定することは好ましい。この場合、好ましい設定電流値は、前述した好ましい電流密度の範囲になるよう設定される。また、この場合、電気化学反応系に印加される電圧は、反応系の抵抗値に応じて変動し得るが、好ましい印加電圧の範囲は、前述した印加電圧の範囲と同様である。
【0046】
電気化学反応系に供給する電気量(F/モル、F:ファラデー定数)は、電解反応に供するグラファイトの炭素原子のモル数に対して、好ましくは0.2F/モル以上、より好ましくは0.8~3.0F/モル、さらに好ましくは1.0~2.0F/モルである。この電気量を供給すれば、グラファイトの薄板状構造物又は薄片化グラファイトを効果的に得ることができる。
【0047】
前記電気化学反応系に電圧を印加する時の電解質溶液の温度は、電解質を溶解する溶媒の種類や電解質溶液の濃度によって変わり得るが、実効的には、下限は電解質溶液が凍結しない温度で、上限は電解質溶液の沸点である。好ましくは、0~100℃の範囲で実施することができる。より好ましくは、0~80℃の範囲で実施することができる。
【0048】
以上のとおり前記電気化学反応系において陽電圧が印加されたグラファイトシート1は、これが電解質溶液5内を搬送される過程で、テトラフルオロ硼酸の陰イオンまたはヘキサフルオロ燐酸の陰イオンが、該グラファイトの層間にインターカレートした結果、グラファイトの薄板状構造物を含む反応粗生成物シート8に変換される。反応粗生成物シート8は、先のグラファイトシートの供給と同期して本電気化学反応系から連続的に取り出される。これにより、本実施形態による、原料グラファイトの連続的供給と、生成物の連続的取り出しの一連のフロー反応プロセスが完成する。
【0049】
得られる反応粗生成物シート8中のグラファイトの薄板状構造物においては、グラファイトが酸化されていると共に、テトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸がグラファイトの層間にインターカレートしているため、グラファイトシート1と比較して厚みが増大している。本実施形態によると、このように厚みが増大した長尺の反応粗生成物シート8を連続的に取得することが可能となる。
【0050】
電解質溶液6から取り出された長尺の反応粗生成物シート8は、連続的に、巻き取りロール(図示せず)に巻き取られてもよいし、巻き取らずに、連続的に容器(図示せず)の中に収納してもよい。
【0051】
本実施形態においては、グラファイトシートを支持フィルムに積層した状態で、搬送し、電解質溶液に浸漬してもよい。これによると、支持フィルムに積層した状態で、グラファイトの薄板状構造物を電解質溶液から取り出すことができる。支持フィルムに積層することで、グラファイトシートおよびグラファイトの薄板状構造物の搬送をより確実に実施することができる。支持フィルムの材質としては電気化学反応に悪影響を与えず、安定なものを選択すればよいが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリフルオロエチレンとその類縁物質であるフッ素系樹脂などが挙げられる。支持フィルムは、メッシュ状のものであってもよい。
【0052】
本実施形態において、グラファイトの薄板状構造物の製造に使用した後の電解質溶液は繰り返し再利用することができる。このとき、電解質溶液から取り出したグラファイトの薄板状構造物に付着するなどして減少した電解質は、必要に応じて反応系に補充してもよい。
【0053】
また、本実施形態による反応直後のグラファイトの薄板状構造物には、テトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸を含む電解質溶液の抱き込みおよび付着が生じている。このようなグラファイトの薄板状構造物に随伴した電解質溶液成分は除去又は回収することができる。回収された電解質溶液は必要に応じて反応系に戻すことができるので、本回収は、グラファイトの薄板状構造物の製造規模が大きくなるほど有効となり得る。具体的な除去又は回収方法としては、例えば、電解質溶液を含むグラファイトの薄板状構造物を遠心分離機あるいは遠心濾過分離機にかける方法、加圧プレス濾過に供する方法、またはベルトプレス上で連続的に電解質溶液を圧搾回収する方法等が挙げられる。
【0054】
電解質溶液から取り出したグラファイトの薄板状構造物は、前記除去又は回収プロセスの実施の有無に関わらず、過剰の脱イオン水で洗液が中性になるまで洗浄することで、当該構造物から電解質溶液成分を取り除くことができる。
【0055】
以上の工程により得たグラファイトの薄板状構造物は、湿潤状態で、後続の薄片化グラファイトの製造工程に供することができ、また、必要に応じて乾燥工程に付してから薄片化グラファイトの製造工程に供してもよい。具体的な乾燥方法としては特に限定されないが、例えば、80℃以下の温度で、恒温乾燥器または真空乾燥器で乾燥させればよい。
【0056】
本実施形態では以上のようにして、グラファイトを含む陽極を用いると共に、電解質としてテトラフルオロ硼酸またはヘキサフルオロ燐酸を含む電解質溶液を用いた電気化学反応系に対し電流を流すことにより、テトラフルオロ硼酸の陰イオンまたはヘキサフルオロ燐酸の陰イオンが素早く、しかも均一にグラファイトの層間にインターカレートし、その結果、グラファイトを構成する各グラフェン間の層間距離が均一に拡大したグラファイトの薄板状構造物を得ることができる。
【0057】
本実施形態により得られたグラファイトの薄板状構造物は、これに対して剥離操作を加えることにより、好適には厚みが100nm以下である薄片化グラファイトを得ることができる。
【0058】
前記剥離操作としては特に限定されないが、例えば、超音波照射による剥離操作、機械的剥離力を付加することによる剥離操作、加熱することによる剥離操作等が挙げられる。より具体的には、グラファイトの薄板状構造物を適量の脱イオン水に分散し、これを超音波照射装置にかける方法や、ミキサー、または、せん断力を印加できる装置で処理する方法などを例示できる。剥離操作を行った後の処理物は、凍結乾燥するか、あるいは、濾過または遠心分離に供し得られたケーキを、前述したグラファイトの薄板状構造物に対する乾燥処理と同様の乾燥処理に供すればよい。
【0059】
以上により、厚みが100nm以下の薄片化グラファイトを有利に得ることができる。薄片化グラファイトの厚みは、50nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。厚みが1nm以下の薄片化グラファイトが特に好ましい。薄片化グラファイトの平均粒子径はナノメートルからミリメートルにわたって変化させることができるが、30nm以上1mm以下が好ましく、50nm以上100μm以下がより好ましく、100nm以上50μm以下がさらに好ましい。得られた薄片化グラファイトは、好ましくは酸化グラフェン(酸素を含むグラフェン)より構成されるものであり、より好ましくはフッ化酸化グラフェン(フッ素と酸素を含むグラフェン)より構成されるものである。
【0060】
本実施形態によって好適に製造される薄片化グラファイトは、本実施形態の製造方法の特徴に起因して、高純度で、不純物の含有率が小さいことが特徴となる。特に、重金属成分と硫黄成分の含有率が小さいことが特徴である。具体的には、前記フッ素を含む薄片化グラファイトにおいては、マンガン含有量が0.002質量%以下であり、硫黄含有量が0.1質量%以下であることが好ましく、マンガン含有量が0.001質量%以下であり、硫黄含有量が0.01質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
本実施形態で好適に製造される薄片化グラファイトは、炭素原子で構成される分子骨格に酸素原子とフッ素原子が含まれる。フッ素含有量が0.5質量%以上40質量%以下であり、炭素含有量が40質量%以上80質量%以下であり、酸素含有量が1.0質量%以上50質量%以下であることが好ましく、フッ素含有量が1.0質量%以上15質量%以下であり、炭素含有量が45質量%以上75質量%以下であり、酸素含有量が15質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【実施例
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
<薄片化グラファイトの酸素に対する炭素の質量比(C/O)の測定方法>
エネルギー分散型X線分析(EDX、Energy dispersive X-ray spectrometry)の原理を用いて、薄片化グラファイトの酸素に対する炭素の質量比(C/O)を測定した。具体的な測定方法は、所定の処理をして得た薄片化グラファイトの乾燥粉末をカーボンテープに満遍なく貼り付け、日本電子製JSM IT-100にて測定した。
【0064】
<薄片化グラファイトの最小厚みの測定方法>
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、薄片化グラファイトの最小厚みを測定した。具体的には、薄片化グラファイトの希薄分散液をマイカ基板に塗布し、島津製作所製SPM-9700HTを用いてタッピングモードで測定した。
【0065】
(実施例1)
図1に示す電気化学反応装置の電解槽4に電解質溶液5としてテトラフルオロ硼酸の20%水溶液を約1.5L仕込んだ。別途、厚さ約20μm、幅30mmおよび長さ約10mのグラファイトシート(縮重合系高分子化合物である芳香族ポリイミドを熱処理してグラファイト化したグラファイトシート)のロールを準備した。これの片端を、直流電源の陽極側と接続され、かつ、原料グラファイトシートの送り出し機能を併せ持つ搬送ローラ3(ステンレス製の円柱型回転ロール)に通した。次に、陰極6としてステンレススチール製メッシュ2枚を、前記グラファイトシートから約1cmの間隔を保持して前記グラファイトシートの上下両面に向き合うように、電解質溶液5内に設置した。陰極6を直流電源7に接続し、グラファイトシートの搬送速度を12cm/hrに設定し、2.0Aの定電流条件下の室温で2時間電解した。このとき反応に供したグラファイトシートの総量は0.58gであった。この過程で、陽極においては、電解質溶液5に浸漬した部分(陰極に対面する実効的電気化学反応ゾーンの長さが6cm)でグラファイトシートの厚みの連続的かつスムーズな増大と、表面の微褐色化が観測され、反応粗生成物シート8を形成した。反応粗生成物シート8はグラファイトシートの供給と同期した速度で、反応系に滞留することなく生成物受け槽に排出した。反応終了後の陽極は、電解質溶液中に剥離したり脱落することはほとんどなく、シートの形状を保っていたが、厚みは反応前に比べて明らかに増大していた。これは、グラファイトシートにテトラフルオロ硼酸が十分にインターカレートした結果、グラファイトの薄板状構造物が確実に形成されたものと確認した。
【0066】
反応粗生成物シート8は、これを洗液が中性になるまで脱イオン水で洗浄して、未乾燥で黒褐色のグラファイトの薄板状構造物を得た。このものに少量の脱イオン水を加えた後、15分間超音波照射して、引き続き凍結乾燥することで薄片化グラファイトを0.78g得た。このものは、EDX分析の結果から、酸素に対する炭素の質量比(C/O)が1.4の比率で酸素原子を含み、かつフッ素を3質量%含む薄片化グラファイトから構成されていた。加えて、AFM分析の結果から、薄片化グラファイトの最小厚みは1.0nmであった。
【0067】
(実施例2)
電解質溶液5として、テトラフルオロ硼酸の20%水溶液に替えて、ヘキサフルオロ燐酸の20%水溶液を約1.5L用いた以外は実施例1と同じ条件で電解反応を実施した。このとき反応に供したグラファイトシートの総量は0.57gであった。
反応の後処理は実施例1と同様に実施して薄片化グラファイトを0.72g得た。このものは、EDX分析の結果から、酸素に対する炭素の質量比(C/O)が1.5の比率で酸素原子を含み、かつフッ素を5質量%含む薄片化グラファイトから構成されていた。加えて、AFM分析の結果から、薄片化グラファイトの最小厚みは1.0nmであった。
【0068】
(実施例3)
電解質溶液5として、テトラフルオロ硼酸の20%水溶液に替えて、テトラフルオロ硼酸の42%水溶液を約1.5L用い、グラファイトシートの搬送速度を36cm/hrにセットし、3.0Aの定電流条件下の室温で1時間通電した以外は実施例1と同じ条件で電解反応を実施した。このとき反応に供したグラファイトシートの総量は0.86gであった。
反応終了後の陽極は、電解質溶液中に剥離したり脱落することはほとんどなく、シートの形状を保っており、厚みは反応前に比べて明らかに増大していたが、シートの厚み方向の中心層部分に僅かながら未反応の層の残留が認められた。
反応の後処理は実施例1と同様に実施して薄片化グラファイトを0.80g得た。このものは、EDX分析の結果から、酸素に対する炭素の質量比(C/O)が1.3の比率で酸素原子を含み、かつフッ素を3質量%含む薄片化グラファイトから構成されていた。加えて、AFM分析の結果から、薄片化グラファイトの最小厚みは1.0nmであった。
【0069】
(実施例4)
グラファイトシートに供給する電流値を3.0Aから3.6Aに変更した以外は実施例3と同じ条件で電解反応を実施した。このとき反応に供したグラファイトシートの総量は0.86gであった。
反応終了後の陽極は、電解質溶液中に剥離したり脱落することはほとんどなく、シートの形状を保っていたが、厚みは反応前に比べて明らかに増大していた。これは、グラファイトシートにテトラフルオロ硼酸が十分にインターカレートした結果、グラファイトの薄板状構造物が確実に形成されたものと確認した。
反応の後処理は実施例1と同様に実施して薄片化グラファイトを1.20g得た。このものは、EDX分析の結果から、酸素に対する炭素の質量比(C/O)が1.2の比率で酸素原子を含み、かつフッ素を3質量%含む薄片化グラファイトから構成されていた。加えて、AFM分析の結果から、薄片化グラファイトの最小厚みは1.0nmであった。
【0070】
【表1】
【符号の説明】
【0071】
1 グラファイトシート
2 グラファイトシートのロール
3 搬送ローラ
4 電解槽
5 電解質溶液
6 陰極
7 直流電源
8 反応粗生成物シート
図1