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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】解析システム、解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20250509BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20250509BHJP
   G01N 27/62 20210101ALN20250509BHJP
【FI】
G01N30/86 J
G01N30/72 C
G01N30/86 G
G01N30/86 D
G01N30/86 C
G01N30/86 H
G01N27/62 X
G01N27/62 Y
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020174413
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065746
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、「定量メタボローム解析の事業化に向けたデータ解析システムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】馬場 健史
(72)【発明者】
【氏名】中尾 素直
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-229150(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166861(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/004847(WO,A1)
【文献】特開2006-047280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86,
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物質を含むサンプルを分析して得られたスペクトラムデータを、前記サンプル及び前記対象物質をキーとして取得可能に記憶する記憶部と、
ユーザの入力指令情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記スペクトラムデータの中から、複数の前記サンプル及び複数の前記対象物質にまたがって複数の前記スペクトラムデータを選択可能な選択部と、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示する表示部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する設定部と、
前記設定部で設定された基準位置情報を基準として、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を一括で行う定量化部と、
を備え、
前記記憶部は、
前記設定部による前記基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミーのスペクトラムデータを記憶し、
前記表示部は、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータと、前記ダミーのスペクトラムデータとを重ねて表示し、
前記設定部は、
前記ダミーのスペクトラムデータによって規定される前記設定可能範囲外で、前記基準位置情報の設定を不可とする、
析システム。
【請求項2】
前記選択部は、
前記記憶部に記憶された前記スペクトラムデータに対応するサンプルのリストである第1のリストを生成して前記表示部に表示させる第1のリスト生成部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記第1のリストから選択された前記サンプルに対応するスペクトラムデータを前記対象物質毎に選択可能な第2のリストを生成して前記表示部に表示させる第2のリスト生成部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記表示部に表示された前記第1のリストから選択された前記サンプルに対応し、前記表示部に表示された前記第2のリストから選択された前記スペクトラムデータを、前記表示部に表示する前記スペクトラムデータとして取得するデータ取得部と、
を備える、
請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
前記設定部は、
前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータにおいて前記対象物質の定量化を行う範囲を前記基準位置情報として設定し、
前記定量化部は、
前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータ各々を用いて、前記設定部で設定された範囲内で前記対象物質の定量化を行う、
請求項1又は2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記設定部は、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記スペクトラムデータのベースラインを設定し、
前記定量化部は、
前記設定部で設定された前記ベースラインに基づいて、前記対象物質の定量化を行う、
請求項に記載の解析システム。
【請求項5】
前記表示部は、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、表示される複数の前記スペクトラムデータ各々の拡大又は縮小を一括して行う、
請求項1からのいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項6】
前記表示部は、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、表示される複数の前記スペクトラムデータ各々のスムージング処理を一括して行った後、複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示し、
前記定量化部は、スムージング処理された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を行う、
請求項1からのいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項7】
前記表示部は、
ピークが時間軸方向に一致するように前記スペクトラムデータ各々に対し前記時間軸方向にオフセット又は倍率を付与した状態で重ね合わせて表示し、
前記設定部は、
重ね合わせ表示された複数の前記スペクトラムデータに対して定量化を行う基準位置情報を一括して設定し、
前記定量化部は、
前記スペクトラムデータ各々に付与されたオフセット又は倍率がキャンセルされるように前記基準位置情報を変更し、変更した基準位置情報を基準として、複数の前記スペクトラムデータ各々での前記対象物質の定量化を行う、
請求項1からのいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項8】
対象物質を含むサンプルを分析して得られたスペクトラムデータに基づいて前記対象物質の定量化を行う解析システムによって実行される解析方法であって、
前記サンプル及び前記対象物質をキーとして前記スペクトラムデータを取得可能に記憶するデータベースの中から、ユーザの入力指令情報に基づいて、複数の前記サンプル及び複数の前記対象物質にまたがって複数の前記スペクトラムデータを選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示する表示ステップと、
ユーザの入力指令情報に基づいて、前記表示ステップで表示された複数の前記スペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定された基準位置情報を基準として、前記表示ステップで表示された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を一括で行う定量化ステップと、
を含み、
前記データベースは、
前記設定ステップにおける前記基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミーのスペクトラムデータを記憶し、
前記表示ステップでは、
前記選択ステップで選択された複数の前記スペクトラムデータと、前記ダミーのスペクトラムデータとを重ねて表示し、
前記設定ステップでは、
前記ダミーのスペクトラムデータによって規定される前記設定可能範囲外で、前記基準位置情報の設定を不可とする、
析方法。
【請求項9】
コンピュータを、
対象物質を含むサンプルを分析して得られたスペクトラムデータを、前記サンプル及び前記対象物質をキーとして取得可能に記憶する記憶部、
ユーザの入力指令情報を入力する入力部、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記スペクトラムデータの中から、複数の前記サンプル及び複数の前記対象物質にまたがって複数の前記スペクトラムデータを選択する選択部、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示する表示部、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する設定部、及び、
前記設定部で設定された基準位置情報を基準として、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を一括で行う定量化部、
として機能させ、
前記記憶部は、
前記設定部による前記基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミーのスペクトラムデータを記憶し、
前記表示部は、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータと、前記ダミーのスペクトラムデータとを重ねて表示し、
前記設定部は、
前記ダミーのスペクトラムデータによって規定される前記設定可能範囲外で、前記基準位置情報の設定を不可とする、
ログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システム、解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタボローム解析は、生体内で検出された化合物、すなわち代謝物質を検出することにより行われる。代謝物質の検出には様々な方法が用いられる。例えば、特許文献1、2に開示されるクロマトグラフィ質量分析は、そのような方法の1つである。
【0003】
クロマトグラフィ質量分析では、まず、サンプルがクロマトグラフのカラムに導入されて、サンプルの各種成分が時間方向に分離された溶出液が取り出される。そして、取り出された溶出液の各種成分が質量分析装置のイオン源でイオン化されて、四重極マスフィルタ等でサンプル成分由来のイオンを質量電荷比に応じて分離され、対象物質が検出される。この検出の結果として、対象物質を示すピークが出現したクロマトグラムが得られる。
【0004】
個々の代謝物質は、クロマトグラムに出現するピークの面積または高さを算出することにより定量化される。しかしながら、この定量化には、代謝物質の化学的特性又はクロマトグラフィ質量分析装置における測定条件等のバックグラウンド条件を加味して行う必要がある。そこで、熟練の解析者が、表示されたクロマトグラムのピークを目視で確認し、演算を行う範囲を操作入力で指定することにより定量化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/207228号
【文献】国際公開第2017/002156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタボローム解析では、多数のサンプルにおける多数の代謝物質の定量化が必要になる。例えば、100のサンプルで500の代謝物質を定量化する場合には、合計で50,000クロマトグラムが必要になる。しかしながら、上述のように、代謝物質の定量化を正確に行うためには、クロマトグラムを1つずつ表示し、そのピークを解析者が目視で確認する必要があった。このため、全体の解析には長時間を要し、解析者の作業負担が膨大なものになっていた。
【0007】
また、メタボローム解析においては、異なるサンプル間、異なる代謝物質間でクロマトグラムを比較できるようにすることは極めて有用である。しかしながら、特許文献1に開示された装置では、同時に表示するクロマトグラムは対象物質についてのターゲットイオン及び確認イオンに限定されている。また、特許文献2に開示された装置は、クロマトグラムを2次元テーブルに縮小表示するため、クロマトグラム同士の波形の詳細な比較には不向きである。
【0008】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、異なるサンプル、異なる対象物質でのクロマトグラムの詳細な比較表示を可能としつつ、複数のスペクトラムデータにおける対象物質の定量化を短時間かつ容易に行うことができる解析システム、解析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る解析システムは、
対象物質を含むサンプルを分析して得られたスペクトラムデータを、前記サンプル及び前記対象物質をキーとして取得可能に記憶する記憶部と、
ユーザの入力指令情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記スペクトラムデータの中から、複数の前記サンプル及び複数の前記対象物質にまたがって複数の前記スペクトラムデータを選択可能な選択部と、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示する表示部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する設定部と、
前記設定部で設定された基準位置情報を基準として、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を一括で行う定量化部と、
を備え、
前記記憶部は、
前記設定部による前記基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミーのスペクトラムデータを記憶し、
前記表示部は、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータと、前記ダミーのスペクトラムデータとを重ねて表示し、
前記設定部は、
前記ダミーのスペクトラムデータによって規定される前記設定可能範囲外で、前記基準位置情報の設定を不可とする。
【0011】
また、前記選択部は、
前記記憶部に記憶された前記スペクトラムデータに対応するサンプルのリストである第1のリストを生成して前記表示部に表示させる第1のリスト生成部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記第1のリストから選択された前記サンプルに対応するスペクトラムデータを前記対象物質毎に選択可能な第2のリストを生成して前記表示部に表示させる第2のリスト生成部と、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記表示部に表示された前記第1のリストから選択された前記サンプルに対応し、前記表示部に表示された前記第2のリストから選択された前記スペクトラムデータを、前記表示部に表示する前記スペクトラムデータとして取得するデータ取得部と、
を備える、
こととしてもよい。
【0012】
前記設定部は、
前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータにおいて前記対象物質の定量化を行う範囲を前記基準位置情報として設定し、
前記定量化部は、
前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータ各々を用いて、前記設定部で設定された範囲内で前記対象物質の定量化を行う、
こととしてもよい。
【0013】
前記設定部は、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記スペクトラムデータのベースラインを設定し、
前記定量化部は、
前記設定部で設定された前記ベースラインに基づいて、前記対象物質の定量化を行う、
こととしてもよい。
【0014】
前記表示部は、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、表示される複数の前記スペクトラムデータ各々の拡大又は縮小を一括して行う、
こととしてもよい。
【0015】
前記表示部は、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、表示される複数の前記スペクトラムデータ各々のスムージング処理を一括して行った後、複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示し、
前記定量化部は、スムージング処理された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を行う、
こととしてもよい。
【0016】
前記表示部は、
ピークが時間軸方向に一致するように前記スペクトラムデータ各々に対し前記時間軸方向にオフセット又は倍率を付与した状態で重ね合わせて表示し、
前記設定部は、
重ね合わせ表示された複数の前記スペクトラムデータに対して定量化を行う基準位置情報を一括して設定し、
前記定量化部は、
前記スペクトラムデータ各々に付与されたオフセット又は倍率がキャンセルされるように前記基準位置情報を変更し、変更した基準位置情報を基準として、複数の前記スペクトラムデータ各々での前記対象物質の定量化を行う、
こととしてもよい。
【0017】
本発明の第2の観点に係る解析方法は、
対象物質を含むサンプルを分析して得られたスペクトラムデータに基づいて前記対象物質の定量化を行う解析システムによって実行される解析方法であって、
前記サンプル及び前記対象物質をキーとして前記スペクトラムデータを取得可能に記憶するデータベースの中から、ユーザの入力指令情報に基づいて、複数の前記サンプル及び複数の前記対象物質にまたがって複数の前記スペクトラムデータを選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示する表示ステップと、
ユーザの入力指令情報に基づいて、前記表示ステップで表示された複数の前記スペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定された基準位置情報を基準として、前記表示ステップで表示された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を一括で行う定量化ステップと、
を含み、
前記データベースは、
前記設定ステップにおける前記基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミーのスペクトラムデータを記憶し、
前記表示ステップでは、
前記選択ステップで選択された複数の前記スペクトラムデータと、前記ダミーのスペクトラムデータとを重ねて表示し、
前記設定ステップでは、
前記ダミーのスペクトラムデータによって規定される前記設定可能範囲外で、前記基準位置情報の設定を不可とする。
【0018】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
対象物質を含むサンプルを分析して得られたスペクトラムデータを、前記サンプル及び前記対象物質をキーとして取得可能に記憶する記憶部、
ユーザの入力指令情報を入力する入力部、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記記憶部に記憶された前記スペクトラムデータの中から、複数の前記サンプル及び複数の前記対象物質にまたがって複数の前記スペクトラムデータを選択する選択部、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータを重ね合わせて表示する表示部、
前記入力部に入力された入力指令情報に基づいて、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する設定部、及び、
前記設定部で設定された基準位置情報を基準として、前記表示部に表示された複数の前記スペクトラムデータ各々の前記対象物質の定量化を一括で行う定量化部、
として機能させ、
前記記憶部は、
前記設定部による前記基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミーのスペクトラムデータを記憶し、
前記表示部は、
前記選択部で選択された複数の前記スペクトラムデータと、前記ダミーのスペクトラムデータとを重ねて表示し、
前記設定部は、
前記ダミーのスペクトラムデータによって規定される前記設定可能範囲外で、前記基準位置情報の設定を不可とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のサンプル及び複数の対象物質にまたがる複数のスペクトラムデータを重ね合わせて表示する。これにより、異なるサンプル、異なる対象物質でのスペクトラムデータの波形同士の詳細な比較が可能になる。さらに、複数のスペクトラムデータを重ね合わせて表示しているので、解析者の入力指令情報に従って代謝物質の化学的特性又は測定条件等のバックグラウンド条件を加味しつつ、複数のスペクトラムデータに対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定した状態で、複数のスペクトラムデータ各々の対象物質の定量化を一括して行うことができる。この結果、異なるサンプル、異なる対象物質でのスペクトラムデータの詳細な比較表示を可能としつつ、複数のスペクトラムデータにおける対象物質の定量化を短時間かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係る解析システムの構成を示すブロック図である。
図2】クロマトグラムの一例を示す図である。
図3図1の解析システムにおけるクロマトグラムの重ね合わせ表示のための機能構成を示す模式図である。
図4】スペクトラムデータが拡大又は縮小される様子を示す模式図である。
図5図1の設定部および定量化部の機能を示す模式図である。
図6】(A)及び(B)は、スペクトラムデータの波形の一例である。
図7】(A)は、重ね合わせ表示されたスペクトラムデータの一例である。(B)は、ピークが一致するように重ね合わせ表示されたスペクトラムデータの一例である。
図8】スペクトラムデータがスムージングされる様子を示す模式図である。
図9図1の解析システムのハードウエア構成を示すブロック図である。
図10図1の解析システムの動作を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施の形態2に係る解析システムの特徴であるダミークロマトグラムの一例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態2に係る解析システムの構成を示すブロック図である。
図13】入力テーブルの一例を示す図である。
図14】コレステロールエステルのクロマトグラムの表示例を示す図である。
図15】コレステロールエステルのクロマトグラムの他の表示例を示す図である。
図16図14に示すコレステロールクロマトグラムと、図15に示すクロマトグラムとを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
図17図14に示すクロマトグラムにおいて定量化を行う範囲を設定した様子を示す図である。
図18】コレステロールのクロマトグラムの表示例を示す図である。
図19図17に示すコレステロールクロマトグラムと、図18に示すクロマトグラムとを重ね合わせて表示した表示例を示す図である。
図20】すべてのトランジションのクロマトグラムを重ね合わせ表示した場合を示す図である。
図21】同じ分子種を対象物質とするクロマトグラムを重ね合わせ表示した場合を示す図である。
図22図21のクロマトグラムにおいて定量化の範囲を設定した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0022】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態に係る解析システム1は、対象物質の定量化を行う。図1に示すように、解析システム1は、液体クロマトグラフィ質量分析装置(LC-MS)2に接続されている。
【0023】
LC-MS2は、液体クロマトグラフと、質量分析器とを組み合わせた装置である。液体クロマトグラフは、移動相として液体を用い、固定相と移動相とに対する溶質の親和性の差を利用して物質を分離する。質量分析器は、液体クロマトグラフで分離された物質をさらにイオン化し、生成した正イオンまたは負イオンを分離し、それぞれのイオンの強度を測定する。
【0024】
LC-MS2を用いれば、サンプルに含まれる対象物質を分析して得られたスペクトラムデータ、すなわちクロマトグラムを得ることができる。図1に示すように、LC-MS2には、サンプルA1、A2、・・・、Amが注入され、それらに含まれる対象物質a1、a2、a3、…に対応するクロマトグラムが検出される。
【0025】
図2には、クロマトグラムの一例が示されている。図2に示すように、クロマトグラムの横軸は、LC-MS2にサンプルを注入してからの時間を示している。一方、縦軸は、LC-MS2で検出された信号の強度を示している。図2に示すクロマトグラムには、ピークPが出現している。サンプルを注入してからの時間、すなわち原点からピークPが頂点に達するまでの時間を溶出時間(保持時間)RTとする。溶出時間RTは、対象物質によって異なる。
【0026】
クロマトグラムにおいて、ピークPが出ていない部分をベースラインBLとする。ベースラインBLを基準とするピークPの高さ又は面積は、対象物質の濃度に応じて増減する。解析システム1は、クロマトグラムのピークPの高さ又は面積を求めることにより、対象物質の定量化を行う。
【0027】
図1に戻り、解析システム1は、記憶部10と、入力部11と、選択部12と、表示部13と、設定部14と、定量化部15と、を備える情報処理装置である。
【0028】
記憶部10は、LC-MS2における検出により、対象物質を含むサンプルを分析して得られたクロマトグラムを記憶するデータベースである。このデータベースは、サンプル及び対象物質をキーとしてクロマトグラムを取得可能に構成されている。例えば、図1に示す例では、LC-MS2でサンプルA1~Am(mは3以上の自然数)についての計測が行われ、サンプルA1に含まれる対象物質a1、a2、a3、・・・に対応するクロマトグラム、サンプルA2に含まれる対象物質a1、a2、a3、・・・に対応するクロマトグラム、・・・、サンプルAmに含まれる対象物質a1、a2、a3、・・・に対応するクロマトグラムが取得され、記憶部10に記憶されている。この場合、記憶部10は、例えば、サンプルA1及び対象物質a1をキーとして入力すれば、サンプルA1及び対象物質a1に対応するクロマトグラムを読み出すことができるように構成されている。
【0029】
解析システム1においてメタボローム解析を行う場合には、サンプルは生体の一部、例えば細胞となり、対象物質は代謝物質となる。メタボローム解析では、例えば、数百のサンプル、数百の代謝物質のクロマトグラムが用いられる。例えば、解析すべきサンプルの数が100であり、代謝物質の数が500である場合には、100×500のクロマトグラムの解析が必要になる。
【0030】
図1に戻り、入力部11は、対象物質の定量化を行う解析者であるユーザの入力指令情報を入力する。入力指令情報には、例えば、記憶部10のキーとなるサンプル及び対象物質の情報がある。なお、入力指令情報は、解析者の操作入力によって入力されるものであってもよいし、ファイルがインポートされることにより、入力されるものであってもよい。また、解析者の操作入力は、後述の図9のマンマシンインターフェイス43を構成するポインティングデバイス又はキーボードによる数値入力等によって実現することが可能である。
【0031】
選択部12は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、記憶部10に記憶されたクロマトグラムの中から、複数のサンプル及び複数の対象物質にまたがって複数のクロマトグラムを選択可能である。例えば、図1に示すように、サンプルA1の対象物質a1、a2、a3及びサンプルA2の対象物質a1、a2、a3の解析を行う場合には、それぞれに対応するクロマトグラムが選択される。
【0032】
[クロマトグラムの重ね合わせ表示のための機能構成]
ここで、クロマトグラムの重ね合わせ表示のための機能構成について説明する。図3に示すように、表示部13は、ユーザが確認可能な表示画面を有している。入力部11と表示部13とは連動しており、ユーザは、この表示画面に表示された各種情報に関連した入力指令情報を入力部11に入力することが可能となっている。
【0033】
表示部13は、表示画面に表示されるウインドウ13aに選択部12で選択された複数のクロマトグラムを重ね合わせて表示する。図3に示すように、このウインドウ13aは、サンプルリスト表示領域20と、対象物質リスト表示領域21と、クロマトグラム表示領域22とに分かれている。
【0034】
また、選択部12は、第1のリスト生成部30と、第2のリスト生成部31と、データ取得部32と、を備える。
【0035】
第1のリスト生成部30は、記憶部10に記憶されたクロマトグラムに対応するサンプルのリストである第1のリスト、すなわちサンプルリスト25を生成する。第1のリスト生成部30は、生成したサンプルリスト25を表示部13に表示させる。例えば、図3に示すように、表示部13のウインドウ13aのサンプルリスト表示領域20には、記憶部10に記憶されたサンプルA1、A2、・・・Amのサンプルリスト25が表示される。
【0036】
第2のリスト生成部31は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、サンプルリスト25から選択されたサンプルに対応するクロマトグラムを対象物質毎に選択可能な対象物質リスト26を生成する。第2のリスト生成部31は、生成した対象物質リスト26を表示部13のウインドウ13aの対象物質リスト表示領域21に表示させる。
【0037】
ここで、例えば、図3に示すように、サンプルリスト表示領域20に表示されたサンプルリスト25でサンプルA1,A2を選択した旨の入力指令情報が入力部11に入力されると、第2のリスト生成部31は、サンプルA1、A2に対応する対象物質リスト26を生成して、表示部13の対象物質リスト表示領域21に表示させる。これにより、表示部13のウインドウ13aの対象物質リスト表示領域21には、サンプルA1、A2に含まれる対象物質a1、a2、a3、・・・に対応するクロマトグラムの対象物質リスト26が表示される。
【0038】
データ取得部32は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、表示部13のウインドウ13aに表示されたサンプルリスト25から選択されたサンプルに対応し、表示部13に表示された対象物質リスト26から選択されたクロマトグラムを、表示部13のウインドウ13aのクロマトグラム表示領域22に表示するクロマトグラム27として取得する。図3に示す例において、このように、サンプルリスト25におけるサンプルの選択と、対象物質リストの対象物質の選択を繰り返すことにより、複数のサンプル及び複数の対象物質でのクロマトグラムを記憶部10から取得することができる。
【0039】
こうして、表示部13の表示ウインドウのクロマトグラム表示領域22には、異なるサンプルA1、A2及び異なる対象物質a1、a2、a3、・・・にそれぞれ対応する複数のクロマトグラム27が重ね合わせて表示される。図3では、それぞれの区別のために、サンプルA1に対応するクロマトグラム27が実線で示され、サンプルA2に対応するクロマトグラム27が点線で示されている。しかしながら、実際には、両方実線で表示することができる。場合によって、複数のクロマトグラム27は、それぞれ色分けして表示することができるし、太さを変えて表示することができる。
【0040】
また、図4に示すように、表示部13のクロマトグラム表示領域22では、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、表示された複数のクロマトグラム27各々の拡大又は縮小を一括して行うことができる。このようにすれば、クロマトグラム27の波形の確認をし易くすることができる。
【0041】
[定量化のための機能構成]
図1に戻り、設定部14は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、表示部13のクロマトグラム表示領域22に表示された複数のクロマトグラム27に対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する。
【0042】
例えば、設定部14は、表示部13に表示された複数のクロマトグラム27において対象物質の定量化を行う範囲を基準位置情報として設定する。例えば、図5に示すように、設定部14は、基準位置情報として、ピークPの頂点を探索する始点S1と終点S2とを設定する。定量化部15は、表示部13に表示された複数のクロマトグラム27各々で、設定部14で指定された探索範囲(S1~S2)内でピークPの頂点を探索し、探索されたピークPの頂点に基づいて定量化を行う。
【0043】
図5に示す例では、ピークPは、左側のピーク(対象物質)と右側のピーク(対象物質にm/zが類似する物質、例えばその誘導体)とが合成されたものとなっている。左側のピークを選択する場合には、定量化する範囲としてS1~S2が設定される。
【0044】
さらに、設定部14は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、例えば、図5に示すように、設定部14は、入力指令情報に従って、クロマトグラム27におけるベースラインBLを設定する。定量化部15は、設定部14で設定されたベースラインBLに基づいて、対象物質の定量化を行う。
【0045】
なお、定量化する範囲S1~S2の設定は、例えばポインティングデバイス(後述の図9のマンマシンインターフェイス43に相当)の操作により、表示部13のクロマトグラム表示領域22に表示されたクロマトグラム27のS1、S2として指定する位置にポインタを合わせクリックして指定することにより行うことができる。すなわち、定量化する範囲S1~S2の設定は、GUI(Graphic User Interface)を利用して行うことができる。また、定量化する範囲S1~S2の設定は、例えばキーボードの数値入力(図9のマンマシンインターフェイス43に相当)により行われるようにしてもよい。いずれにしても、入力部11は、マンマシンインターフェイス43への操作入力の内容を入力指令情報として入力し、入力された情報を、基準位置情報として設定部14に送る。
【0046】
定量化部15は、設定部14で設定された基準位置情報を基準として、表示部13に表示された複数のクロマトグラム27各々の対象物質の定量化を一括で行う。例えば、図5に示すように、定量化部15は、表示部13に表示された複数のクロマトグラム27各々を用いて、設定部14で設定された範囲内で対象物質の定量化を行う。例えば、定量化部15は、図2に示すように、ベースラインBLからピークPの頂点までの高さ又は斜線で示されるピークPの面積を求める。このピークPの高さ又は面積に基づいて、対象物質が定量化される。
【0047】
なお、クロマトグラム27は、実測定で取得されるデータであるため、時間軸方向に若干のずれを生じることがあり、そのずれが無視できないほど大きくなることもある。例えば、図6(A)に示すクロマトグラム27Aと、図6(B)に示すクロマトグラム27Bとは、同じ対象物質に対応するピークPを有しているが、その溶出時間RTにはずれが生じている。
【0048】
このような場合、図7(A)に示すように、クロマトグラム27A,27Bを単純に重ね合わせて表示しても,一度の範囲指定ですべてのクロマトグラム27A,27Bに対して定量を行う事は困難になる。そこで、本実施の形態に係る解析システム1は、個々のクロマトグラム27A,27Bを、時間軸方向にアライメントする機能を備えている。
【0049】
表示部13は、ピークが時間軸方向に一致するように複数のクロマトグラム27(例えば27A,27B)に対し、時間軸方向にオフセット又は倍率を付与した状態で重ね合わせて表示する。このようなオフセット又は倍率を、アライメント数という。オフセットの場合、単位は、時間を示す単位、例えば、時間、分、秒とすることができる。表示部13は、このアライメント数を自動または手動で設定する。例えば、クロマトグラム27Aの溶出時間RTが4.22minである場合には、クロマトグラム27Aのアライメント数ΔT1(オフセット)として、4.22minが設定される。また、例えば、クロマトグラム27Bの溶出時間RTが4.4minである場合には、クロマトグラム27Bのアライメント数(オフセット)ΔT2として4.44minが設定される。
【0050】
表示部13は、クロマトグラム27(例えばクロマトグラム27A,27B)の時間軸の値に対して,それぞれ設定されたアライメント数ΔT1、ΔT2を差し引く。これにより、各クロマトグラム27は、時間軸方向にアライメント数ΔT1、ΔT2だけシフトする。定量化部15は、アライメント数ΔT1、ΔT2だけシフトさせた状態で、クロマトグラム27を重ね合わせて表示する。図7(B)には、クロマトグラム27A,27Bがアライメント数ΔT1,ΔT2シフトした状態で、重ね合わせ表示されている。
【0051】
この状態であれば、設定部14は、クロマトグラム27A,27Bに対して、定量化する範囲S1~S2を一度に指定することができる。設定部14は、図7(B)に示すように、重ね合わせ表示された複数のクロマトグラム27(27A,27B)に対して定量化を行う範囲S1~S2を一括して設定している。
【0052】
定量化部15は、クロマトグラム27各々に付与されたオフセット又は倍率がキャンセルされるように範囲S1~S2を変更し、変更した範囲を基準として、複数のクロマトグラム27A、27B各々での対象物質の定量化を行う。例えば、設定部14により、定量化する範囲S1~S2が設定された場合、定量化部15は、クロマトグラム27Aについては、図6(A)に示すように、範囲S1~S2をΔT1だけ加算した範囲である範囲S1’~S2’で定量化を行う。また、定量化部15は、クロマトグラム27Bについては、図6(B)に示すように、範囲S1~S2をΔT2ずらして範囲S1”~S2”で定量化を行う。
【0053】
なお、アライメント数ΔT1、ΔT2は、上述のように、手動で設定することができる。基本的には、クロマトグラム27A,27BのピークPが最大のときの時間を設定すれば、それぞれのピークPを合わせた状態で両者を重ね合わせることができる。
【0054】
なお、表示部13は、重ね合わせ表示するクロマトグラム27のピークを時間軸方向に一致させて重ね合わせて表示すればよい。この場合、ピークPの位置は、0でなくてもよい。例えば、重ね合わせ表示するクロマトグラム27のうちのいずれか1つのクロマトグラム27のピークに他のクロマトグラム27のピークを合わせるようにアライメント数ΔT1、ΔT2を決定するようにしてもよい。
【0055】
また、アライメント数は、倍率によっても設定可能である。この場合には、クロマトグラム27は、原点0を中心に、時間軸方向に倍率に応じて拡大縮小される。アライメント数は、例えば、1.0001などと設定される。この場合、定量化部15が、定量化を行う範囲S1~S2の倍率をキャンセルした状態で、定量化を行うのは、オフセットの場合と同じである。また、表示部13は、強度の軸方向、すなわち縦軸方向のスケールを、クロマトグラム27毎に微調整可能としてもかまわない。
【0056】
なお、表示部13は、入力部11の操作入力により、クロマトグラム27の表示状態を、図6(A)又は図6(B)に示すような単独表示、図7(A)に示す重ね合わせ表示、図7(B)に示すようなアライメント重ね合わせ表示を切り替え可能とするようにしてもよい。このような切り替え操作は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて行われる。
【0057】
このように、本実施の形態では、実計測に生じる誤差によらず、複数のクロマトグラム27の一括の定量化が可能となる。
【0058】
なお、表示部13は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、図8に示すように、表示される複数のクロマトグラム27各々のスムージング処理を一括して行った後、複数のクロマトグラム27を重ね合わせて表示する。定量化部15は、表示部13に表示されスムージング処理された複数のクロマトグラム27各々の対象物質の定量化を行うようにしてもよい。このようなスムージング処理としては、例えば、移動平均法を用いることができる。
【0059】
[ハードウエア構成]
図9には、解析システム1のハードウエア構成が示されている。図9に示すように、解析システム1は、CPU(Central Processing Unit)40と、メモリ41と、補助記憶装置42と、マンマシンインターフェイス43と、通信インターフェイス44と、入出力インターフェイス45と、を備える。解析システム1の各構成要素は、内部バス50を介して互いに通信可能に接続されている。
【0060】
CPU40は、ソフトウエアプログラム(以下、単に「プログラム」とする)を実行するプロセッサ(演算装置)である。メモリ41には、補助記憶装置42から解析プログラム51が読み込まれる。CPU40は、メモリ41に格納された解析プログラム51を実行することにより、選択部12、設定部14及び定量化部15の機能が実現される。
【0061】
メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)である。メモリ41には、上述のように、CPU40によって実行される解析プログラム51が読み込まれる他、補助記憶装置42からクロマトグラム27が記憶される。なお、解析システム1は、ROM(Read Only Memory)も備えている。ROMには、解析システム1の起動プログラムが実装されており、CPU40がROMの起動プログラムを実行することにより、解析システム1が起動される。
【0062】
補助記憶装置42は、例えばハードディスク等である。補助記憶装置42は、CPU40により実行される解析プログラム51を記憶する。また、補助記憶装置42は、クロマトグラムのデータ群52を記憶する。本実施の形態では、補助記憶装置42が、記憶部10に対応する。
【0063】
マンマシンインターフェイス43は、操作者が操作入力を行う操作入力部と、表示画面を有するディスプレイとを備える。本実施の形態では、マンマシンインターフェイス43は、タッチパネルである。また、操作入力部としてキーボード及びポインティングデバイスを備え、ディスプレイは別に備えるようにしてもよい。このマンマシンインターフェイス43により、入力部11及び表示部13の機能が実現される。サンプルリスト25及び対象物質リスト26の選択、定量化の範囲の設定は、このマンマシンインターフェイス43により行われる。
【0064】
通信インターフェイス44は、インターネット等の通信ネットワークに準拠した通信インターフェイスである。解析プログラム51は、通信インターフェイス44を介して、補助記憶装置42に記憶することも可能である。また、解析システム1とLC-MS2とが通信ネットワークを介して接続されている場合には、通信インターフェイス44を介して、補助記憶装置42にクロマトグラムのデータ群が送信され、記憶される。
【0065】
入出力インターフェイス45は、持ち運び可能なUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体(一時的でない記録を行う記録媒体)60とのインターフェイスである。の記録媒体60には解析プログラム51が記憶されている。解析プログラム51は、この入出力インターフェイス45を介して入力され、補助記憶装置42に記憶することが可能である。また、解析システム1と、LC-MS2とが通信ネットワーク等で通信接続されていない場合には、記録媒体60から得られたクロマトグラムのデータ群52を、補助記憶装置42に記憶するようにしてもよい。
【0066】
次に、本実施の形態に係る解析システム1の動作について説明する。
【0067】
図10に示すように、まず、選択部12は、サンプル及び対象物質をキーとしてクロマトグラム27を取得可能に記憶するデータベースとしての記憶部10の中から、入力部11に入力されるユーザの入力指令情報に基づいて、複数のサンプル及び複数の対象物質にまたがって複数のクロマトグラムを選択する(ステップS10;選択ステップ)。ここでは、図3に示すように、選択部12の第1のリスト生成部30が、サンプルリスト25を生成し、表示部13が、サンプルリスト25を、サンプルリスト表示領域20に表示する。さらに、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、サンプルリスト25の中からサンプルが選択されると、第2のリスト生成部31が、そのサンプルに対応する対象物質リスト26を生成する。表示部13は、対象物質リスト25を表示部13の対象物質リスト表示領域21に表示する。さらに、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、対象物質リスト25から対象物質が選択されると、データ取得部32は、選択されたサンプル及び対象物質に対応するクロマトグラム27を、記憶部10から読み込む。
【0068】
続いて、表示部13は、ステップS10、すなわち選択ステップで選択された複数のクロマトグラム27を重ね合わせて表示する(ステップS20;表示ステップ)。ステップS10、S20を実行することにより、図3に示すように、表示部13のクロマトグラム表示領域22には、複数のサンプルA1、A2及び複数の対象物質a1、a2、a3にそれぞれ対応するクロマトグラム27が重ね合わせて表示される。
【0069】
続いて、設定部14は、入力部11に入力されるユーザの入力指令情報に基づいて、ステップS20、すなわち表示ステップで表示された複数のクロマトグラム27に対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定する(ステップS30;設定ステップ)。ここでは、例えば図5に示すように、クロマトグラム27における定量化を行う範囲(S1~S2)及びベースラインBLが基準位置情報として設定される。
【0070】
続いて、定量化部15は、ステップS30、すなわち設定ステップで設定された基準位置情報を基準として、ステップS20、すなわち表示ステップで表示された複数のクロマトグラム27各々の対象物質の定量化を一括で行う(ステップS40;定量化ステップ)。この定量化では、複数のクロマトグラム27各々に対して、例えば、図5に示すように、設定された範囲(S1~S2)内でクロマトグラム27のピークPが探索され、設定されたベースラインBLに基づいて、ピークPの高さ又は面積が算出される。
【0071】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る解析システム1は、図11に示すように、表示部13で表示される複数のクロマトグラム27にさらにダミーのスペクトラムデータ、すなわちダミークロマトグラム28を重ねて表示する点が、上記実施の形態と異なっている。なお、ダミークロマトグラム28は、これまでに取得された対象物質のクロマトグラム27の波形に基づいて統計的に推定されたものであり、ガイドクロマトグラムともいう。
【0072】
図11に示すように、ダミークロマトグラム28は、クロマトグラム27において対象物質にピークPが出現している部分がハイレベルとなり、他の部分はローレベル(ベースラインBLと同じレベル)となっている。ダミークロマトグラム28の形状は、対象物質に対応するピークP1と、クロマトグラムの溶出時間RT以外のピークP2とをユーザが識別し易くすることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、ダミークロマトグラム28がハイレベルとなっている区間以外は、対象物質を定量化する範囲の指定を不可としている。このようにすれば、ユーザが、定量化の範囲として、ピークP1でなく、ピークP2を選択しないようにすることが可能となる。ユーザは、ピークP1がダミークロマトグラム28のハイレベルな部分に入っているか否かの確認を行った後、定量化を行う範囲を、微修正する操作を行うだけで、正確な定量化が可能になる。
【0074】
図12に示すように、記憶部10は、設定部14によって基準位置情報の設定が可能な指定可能範囲を規定するダミークロマトグラム28を、対象物質a1、a2,a3毎に記憶する。表示部13は、選択部12で選択された複数のクロマトグラム27と、ダミークロマトグラム28とを重ねて表示する。この場合、表示されるダミークロマトグラム28は、ハイレベルを1とし、ローレベルを0として、対象物質a1、a2、a3のダミークロマトグラム28の論理和となる波形を有するものとなる。
【0075】
このクロマトグラム27とダミークロマトグラム28との比較表示により、ピークPが対象物質a1、a2、a3に対応するものであるか否かを確認することができる。また、設定部14は、ダミークロマトグラム28によって規定される設定可能範囲において、定量化の基準位置情報を設定可能とする。
【0076】
なお、定量化を行う範囲をクロマトグラム27毎に、すなわち個別に設定しようとする場合には、表示部13に図13に示すような入力テーブル29を表示させ、入力部11に入力テーブル29への入力を可能とするようにしてもよい。この入力テーブル29では、サンプル毎、対象物質毎に、定量化を行う範囲(開始時、終了時)を入力することができる。定量化部15は、入力テーブル29で入力された範囲を、サンプル毎、対象物質毎の定量化を行う範囲として用いる。この場合、ダミークロマトグラム28でハイレベルとなっていない範囲の値は入力することができないようになっていてもよい。
【0077】
[メタボローム解析における実施例]
次に、本実施の形態に係る解析システム1を用いてメタボローム解析を行った場合の実施例について説明する。図14図16には、コレステロールエステルの標準品を測定した場合のクロマトグラム27の表示例が示されている。図14には、10サンプル各々の同じMRM(Multiple Reaction Monitoring)トランジションを重ねて表示した場合の表示画像が示されており、図15には、10サンプル各々の図14とは他のMRMトランジションを重ねて表示した場合の表示画像が示されている。
【0078】
ここで、MRMトランジションとは、前段四重極マスフィルタ(Q1)を通過させるプリカーサイオンの質量電荷比と後段四重極マスフィルタ(Q3)を通過させるプロダクトイオンの質量電荷比の組である。図14に示すクロマトグラム27のプリカーサイオンのm/zは、675.7であり、プロダクトイオンのm/zは、369.4である。また、図15のクロマトグラム27のプリカーサイオンのm/zは、675.7であり、プロダクトイオンのm/zは、147.4である。
【0079】
MRMトランジションが同じクロマトグラム27は、対象物質が同じクロマトグラムであるということを意味している。図14図15では、複数のサンプルで、同一のMRMトランジション、すなわち同一の対象物質に対応するクロマトグラム27が表示された状態となっている。
【0080】
本実施の形態に係る解析システム1によれば、図16に示すように、図14に示すMRMトランジション(波形M)と、図15に示すMRMトランジション(波形N)とを重ね合わせて表示することができる。このようにすれば、2つのMRMトランジションを比較表示することができる。図14のクロマトグラム27(波形M)と図15のクロマトグラム27(波形N)とを、重ね合わせて比較表示すると、両者の違いを一目で確認することができる。例えば図16に示すように、波形Mと波形Nとでは、溶出時間RT(2.83~2.89分)が同じであり、非常に類似しているものの、波形Mの方が、波形Nよりも強度レベルが大きいことを一目で認識することができる。
【0081】
ここで、図17に示すように、指定した20のクロマトグラム27に対して下記のように定量化の範囲S1~S2を入力部11に入力された入力指令情報に基づいて設定部14が設定すれば、定量化部15は、設定された範囲S1(2.25分)~S2(3.72分)に従って、2つのMRMトランジションを同時に定量することができる。
【0082】
上記2つのMRMトランジションは同じ化合物由来であるため、上述のように、クロマトグラム27の波形は類似している。しかしながら、図15に示すクロマトグラム27の波形Nの強度レベルは、図14に示すクロマトグラム27の波形Mの強度レベルの1.5%ほどになる。このため、波形M、Nを同時に重ね合わせ表示した図16では、図13に示すMRMトランジションに対応するクロマトグラム27は、ベースラインBL上にはりついているように見える。しかしながら、図15に示すように、波形Nのクロマトグラム27を拡大表示すれば、波形Nの形状を確認することができる。
【0083】
本実施の形態に係る解析システム1では、2つのMRMトランジションのみならず、選択されたすべてのMRMトランジションを表示し、同時に対象物質を定量化することができる。図14図16で示したクロマトグラム27の波形は、サンプルが同じであるために、類似している。しかしながら、解析システム1では、このような制約はなく、選択されたすべてのクロマトグラム27を表示することができる。
【0084】
一方、コレステロールのMRMトランジション(プリカーサイオンのm/z=369.4/プロダクトイオンのm/z=287.4)は、例えば、図18に示すようになる。図18に示すように、コレステロールのクロマトグラム27の波形は、図16図17に示すコレステロールエステルのクロマトグラム27の波形と非常に類似したものとなる。これは、コレステロールエステルが、コレステロールと同じ骨格を有しているためである。図16に示すクロマトグラム27と、図18に示すクロマトグラム27とを重ね合わせて表示すると、図19に示すようになる。図19に示すクロマトグラム27のように重ね合わせて比較表示を行えば、図16に示すクロマトグラム27に出現しておらず、図18に示すクロマトグラム27に出現するピークP3(溶出時間RTが約4.4分)があることがわかる。この比較表示により、ピークP3は、コレステロールエステル由来ではなくて、コレステロール由来のピークであることが明らかとなった。
【0085】
また、メタボローム解析において、対象とするサンプル(例えば動物の血液)は統一することがほとんどであり、例えば、植物の抽出物と,動物の血液を比較することはない。そのような場合、図20に示すように、例えばすべてのトランジション(603個)のクロマトグラム27を表示することで、おおよその比較を行うことができる。
【0086】
さらに、603個のトランジションのうち、例えばフォスファシジルコリン(PC)という対象物質、すなわち分子種のみを選択して表示させたのが図21(10サンプル×81トランジション)である。同じ分子種であるため、これらのクロマトグラム27では、波形が類似し、溶出時間RTも近くなっている。これらの分子種を定量化する場合、例えば図22に示すように全部のクロマトグラム27について定量化する範囲を設定してしまえばこと足りる。すなわち10サンプル×81トランジション=810のクロマトグラムについて、目視確認を行い、定量化する範囲を一度に設定して一括してピークの面積を求め、定量化を行うことが可能となる。
【0087】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る解析システム1によれば、表示部13において複数のサンプルA1、A2、A3、・・・及び複数の対象物質a1、a2、a3、・・・にまたがる複数のクロマトグラム27を重ね合わせて表示する。これにより、異なるサンプル、異なる対象物質でのクロマトグラム27の波形同士の詳細な比較が可能になる。
【0088】
さらに、本実施の形態に係る解析システム1によれば、複数のクロマトグラム27を重ね合わせて表示しているので、解析者の入力指令情報に従って対象物質の化学的特性又は測定条件等のバックグラウンド条件を加味しつつ、複数のクロマトグラム27に対して演算を行う基準となる基準位置情報を設定した状態で、複数のクロマトグラム27各々の対象物質の定量化を一括して行うことができる。この結果、異なるサンプル、異なる対象物質でのクロマトグラム27の詳細な比較表示を可能しつつ、複数のクロマトグラム27における対象物質の定量化を短時間かつ容易に行うことができる。
【0089】
また、本実施の形態2によれば、記憶部10は、設定部14によって基準位置情報の設定が可能な設定可能範囲を規定するダミークロマトグラム28を記憶する。表示部13は、選択部12で選択された複数のクロマトグラム27と、ダミークロマトグラム28とを重ねて表示する。さらに、設定部14は、ダミークロマトグラム28によって規定された設定可能範囲において、定量化の基準位置情報を設定可能とする。このようにすれば、解析を行うユーザがピークを特定し易くなるうえ、定量化の範囲の設定をし易くすることができる。
【0090】
また、本実施の形態によれば、選択部12は、記憶部10に記憶されたダミークロマトグラム28に対応するサンプルリスト25を生成して表示する第1のリスト生成部30と、操作入力又はインポートされたファイルに基づいて、サンプルリスト25から選択されたサンプルに対応するクロマトグラム27を対象物質毎にまとめた対象物質リスト26を生成して表示する第2のリスト生成部31と、サンプルリスト25から選択されたサンプルに対応し、対象物質リスト26から選択されたクロマトグラム27を取得するデータ取得部32と、を備える。このようにすれば、選択するサンプル及び対象物質が多数である場合にも、表示したサンプル及び対象物質を特定し易くすることができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、設定部14は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、クロマトグラム27において対象物質の定量化を行う範囲を設定する。定量化部15は、設定部14で設定された範囲内で、対象物質の定量化を行う。これにより、バックグラウンド情報を反映した正確な対象物質の定量化が可能となる。
【0092】
また、本実施の形態によれば、定量化部15は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、クロマトグラムにおけるベースラインBLを設定し、設定されたベースラインBLに基づいて、定量化を行う。このようにすれば、バックグラウンド情報を反映した正確な対象物質の定量化が可能となる。
【0093】
また、本実施の形態によれば、表示部13は、入力部11に入力された入力指令情報に基づいて、表示された複数のスペクトラムデータの拡大又は縮小を一括して行う。このようにすれば、クロマトグラム27のスケールに合わせた表示を行って、クロマトグラム27を目視で確認し易くすることができる。
【0094】
なお、上記実施の形態では、解析システム1は、LC-MS2に接続された情報処理装置であるものとしたが、本発明はこれには限られない。解析システム1は、LC-MS2に組み込まれていてもよい。
【0095】
また、解析システム1は、LC-MS2の測定結果について定量化を行うものには限られない。解析システム1は、移動相として気体を用いる気体クロマトグラフィ装置、移動相として超臨界流体を用いる超臨界流体クロマトグラフィ装置の測定結果について定量化を行うものであってもよい。
【0096】
また、解析システム1で定量化の対象となるスペクトラムデータは、クロマトグラムには限られない。例えば、キャピラリー電気泳動による分析により得られるスペクトラムデータ、分光分析、X線、電子線分析、核磁気共鳴により得られるスペクトルデータを定量化の対象とすることができる。
【0097】
その他、解析システム1のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0098】
記憶部10、入力部11、選択部12、表示部13、設定部14及び定量化部15などから構成される、解析システム1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する解析システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで解析システム1を構成してもよい。
【0099】
解析システム1の機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムとの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0100】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS;Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0101】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、特に、メタボローム解析の他、化学物質の解析に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 解析システム、2 液体クロマトグラフィ質量分析装置(LC-MS)、10 記憶部、11 入力部、12 選択部、13 表示部、13a ウインドウ、14 設定部、15 定量化部、20 サンプルリスト表示領域、21 対象物質リスト表示領域、22 クロマトグラム表示領域、25 サンプルリスト、26 対象物質リスト、27 クロマトグラム、28 ダミークロマトグラム、29 入力テーブル、30 第1のリスト生成部、31 第2のリスト生成部、32 データ取得部、40 CPU、41 メモリ、42 補助記憶装置、43 マンマシンインターフェイス、44 通信インターフェイス、45 入出力インターフェイス、50 内部バス、51 解析プログラム、52 データ群、60 記録媒体、P,P1,P2、P3 ピーク
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