(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】ロードポート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250509BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2022556396
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2021023419
(87)【国際公開番号】W WO2022085236
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2020175698
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591213232
【氏名又は名称】ローツェ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】玉造 大悟
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-239006(JP,A)
【文献】特開2009-200200(JP,A)
【文献】特開2009-200136(JP,A)
【文献】特開2014-138011(JP,A)
【文献】特開2004-71728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを収納する容器本体と該容器本体を気密に閉鎖する蓋とを備える密閉容器を、所定の位置に載置するステージと、
前記密閉容器の前記ステージへの載置状態を検出するセンサと、
前記ステージを、少なくともドッキング位置とアンドッキング位置との間で進退移動させるステージ駆動機構と、
前記蓋と接合して一体化した後に前記蓋を前記容器本体から分離して密閉容器を開扉するロードポートドアと、
前記ロードポートドアを昇降移動させるドア昇降機構と、
前記ステージ駆動機構とロードポートドアと前記ドア昇降機構を動作させるための複数の動作手順を記憶しており、該動作手順に基づいて前記ステージ駆動機構と前記ロードポートドアと前記ドア昇降機構の動作を制御するロードポート制御部と、を備え、
前記ロードポート制御部は、
前記容器本体から前記蓋を分離して前記密閉容器を開扉するために、第一の動作手順に基づいて、前記ドッキング位置で前記ロードポートドアと前記蓋が接合して一体化した状態から、前記ステージを第1の速度で
前記アンドッキング位置に後退させるように前記ステージ駆動機構と前記ドア昇降機構を制御し、
前記第一の動作手順による開扉動作の際に、前記センサが前記密閉容器の載置異常を検出した場合には、前記密閉容器を前記ドッキング位置に戻した後、前記第一の動作手順とは異なる第二の動作手順に基づいて前記開扉動作を再実行するよう制御する、
ことを特徴とするロードポート。
【請求項2】
前記第二の動作手順は、前記第1の速度よりも遅い速度で前記ドッキング位置から後退するよう前記ステージ駆動機構を制御することを特徴とする請求項1に記載のロードポート。
【請求項3】
前記第二の動作手順は、前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置までの距離を複数に分割して、該分割した区割距離ごとに一時停止しながら前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置まで前記ステージを後退させる動作手順であることを特徴とする請
求項1に記載のロードポート。
【請求項4】
前記第二の動作手順は、前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置までの距離を複数に分割して、該分割した区割距離ごとに前記ステージの後退と進退を繰り返して、前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置まで前記ステージを移動させる動作手順であることを特徴とする請求項1に記載のロードポート。
【請求項5】
前記ロードポートドアの上方と左右方向の周縁には所定の寸法の隙間を介して気流調整部材が配置されており、
前記第二の動作手順は、前記ドア昇降機構により前記蓋と一体化した前記ロードポートドアを
前記所定の寸法の隙間より小さい範囲で上下方向に昇降動作をさせながら、
前記ステージ駆動機構により前記ステージを前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置まで移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のロードポート。
【請求項6】
前記ロードポート制御部は、前記第二の動作手順を実行したときに前記センサが前記密閉容器の載置異常を再度検出した場合には、前記第二の動作手順を所定回数繰り返し実行するよう制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のロードポート。
【請求項7】
前記ロードポート制御部は、
前記第1の速度よりも遅い速度で前記ドッキング位置から後退するよう前記ステージ駆動機構を制御する前記第二の動作手順による開扉動作を実行したときに、前記センサが前記密閉容器の載置異常を再度検出した場合に、前記密閉容器を再度前記ドッキング位置に戻した後、前記第一及び第二の動作手順とは異なる第三の動作手順に基づいて前記開扉動作を再実行するよう制御することを特徴とする請求項2に記載のロードポート。
【請求項8】
前記ロードポート制御部は、
前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置までの距離を複数に分割して、該分割した区割距離ごとに一時停止しながら前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置まで前記ステージを後退させる前記第二の動作手順による開扉動作を実行したときに、前記センサが前記密閉容器の載置異常を再度検出した場合に、前記密閉容器を再度前記ドッキング位置に戻した後、前記第一及び第二の動作手順とは異なる第三の動作手順に基づいて前記開扉動作を再実行するよう制御することを特徴とする請求項3に記載のロードポート。
【請求項9】
前記ロードポート制御部は、
前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置までの距離を複数に分割して、該分割した区割距離ごとに前記ステージの後退と進退を繰り返して、前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置まで前記ステージを移動させる前記第二の動作手順による開扉動作を実行したときに、前記センサが前記密閉容器の載置異常を再度検出した場合には、前記密閉容器を再度前記ドッキング位置に戻した後、前記第一及び第二の動作手順とは異なる第三の動作手順に基づいて前記開扉動作を再実行するよう制御することを特徴とする請求項4に記載のロードポート。
【請求項10】
前記ロードポートドアの上方と左右方向の周縁には所定の寸法の隙間を介して気流調整部材が配置されており、
前記ドア昇降機構により前記蓋と一体化した前記ロードポートドアを
前記所定の寸法の隙間より小さい範囲で上下方向に昇降動作をさせながら、
前記ステージ駆動機構により前記ステージを前記ドッキング位置から前記アンドッキング位置まで移動させる前記第二の動作手順による開扉動作を実行したときに、前記センサが前記密閉容器の載置異常を再度
検出した場合には、前記密閉容器を再度前記ドッキング位置に戻した後、前記第一及び第二の動作手順とは異なる第三の動作手順に基づいて前記開扉動作を再実行するよう制御することを特徴とする請求項4に記載のロードポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを所定の間隔で複数枚収納して搬送する密閉可能な容器の蓋を着脱するための蓋開閉装置に関するものであり、密閉容器であるFOUP(Front-Opening Unified Pod)の蓋と一体化して、蓋とFOUP本体とを着脱するロードポートドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体ウエハの表面処理は高清浄度な環境に維持された所謂クリーンルーム内で行われていたが、半導体の微細化が進むにつれて、多くの処理装置が設置されたクリーンルーム全体を高清浄度に維持するには大きな設備投資費用と維持費が必要となり、コスト面で大きな障害となっていた。そこで、クリーンルーム全体は比較的清浄度の低い状態に維持しておき、ウエハ表面に処理を施す処理装置の内部の微少な環境(ミニエンバイロメント)のみを高清浄度に保つことで、半導体製造工程の歩留まり向上を図ってきた。
【0003】
半導体ウエハの製造工程には多くの表面処理工程や検査工程が必要であり、クリーンルーム内には、ウエハ表面に各種表面加工や検査を行う専用の処理装置が多数配置されている。処理中のウエハは、内部を高清浄度に保ったFOUPに収納されて、クリーンルーム内の各処理装置の間を搬送され、各種の加工処理が施される。また、各処理装置へのFOUPの搬送や各処理工程の進捗は、ホストコンピュータによって管理される。各処理工程を実行する各処理装置にはEFEM(Equipment Front End Module)と呼ばれるウエハ搬送装置が備えられていて、このEFEMには、FOUPを載置してFOUPの蓋を開閉するロードポートと呼ばれる複数の蓋開閉装置が備えられている。また、EFEMの内部はクリーンルーム内の環境よりも高い圧力に維持されており、クリーンルーム内の塵埃がEFEMの微小環境(ミニエンバイロメント)内に侵入することは出来ない構成となっている。これにより、FOUP内部に収納されて前の工程から運ばれてきたウエハは、塵埃が付着することなく次の処理装置へと運ばれる。
【0004】
FOUPとFOUPの蓋を着脱するロードポートの構成は、国際的な業界団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が定めるSEMI規格によって規定されており、多くのメーカーがこの規格に準拠したFOUPやロードポートを製造している。一般的にFOUPはウエハを収納するFOUP本体と、このFOUP本体に形成された開口を閉鎖する蓋とで構成されていて、FOUP本体の内部には棚板が上下方向に所定の間隔を開けて形成されており、この各棚板の上にウエハを1枚ずつ収容することが可能となっている。FOUP本体の開口を閉鎖する蓋の周縁にはパッキン等のシール部材が固定されており、このシール部材によって、FOUPの開口周縁と蓋との間は気密に閉鎖される。
【0005】
特許文献1には従来のロードポートが記載されている。ロードポートは、FOUPを載置してFOUPを進退移動させる進退機構と、FOUPの蓋と一体化して蓋を開閉するロードポートドアと、このドアを昇降移動させる昇降機構とを備えている。進退機構の所定の位置にFOUPが載置されると、ロードポートは、進退機構が備える固定部材によってFOUPを載置ステージ上に固定した状態で、進退機構によりステージをドアに向かって前進させてFOUPの蓋とロードポートドアとを接触させる。蓋とロードポートドアが接触すると、ロードポートドアが備える一体化手段によりロードポートドアと蓋とを一体化させるとともに蓋のロック機構を解除する。その後ステージを後退移動させることにより、FOUP本体と蓋とを分離させる。FOUP本体と蓋とを分離したら、昇降機構により一体化している蓋とロードポートドアとを、ウエハの搬送に干渉しない位置まで下降させる。上記動作により、FOUPの蓋が開放されて、搬送装置が備える搬送ロボットがFOUP本体に対してウエハを搬入搬出することが可能な状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体製造工程では、単位時間当たりのウエハ処理枚数の向上をはかるため、ロードポートが蓋を開閉する際の動作速度は出来るだけ高速となるように設定される。従来のロードポートでは、FOUP本体と蓋とを分離させるときに、FOUP本体と蓋とを高速で相対移動させるので、蓋の周縁に設けられたシール部材とFOUP本体との間に発生する摩擦や、シール部材の癒着によって蓋が本体からスムーズに離れず、FOUP本体が進退機構から浮き上がってしまうことがあった。また、FOUP本体が浮き上がったまま開扉動作を継続すると、蓋が本体から完全に外れた際に、FOUP本体が進退機構へと落下してしまうというトラブルが発生していた。このFOUP本体が落下する時の衝撃によって、収納されていたウエハがFOUP内で位置ずれを起こしてしまったり、落下の衝撃でウエハと棚板とが衝突して塵埃が発生したりしていた。さらにFOUP本体が浮き上がることで、ステージに備えられる在荷センサが反応してエラーとなるため、複数のロードポートを備える搬送装置全体が停止してしまうというトラブルが発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明のロードポートは、
ウエハを収納する容器本体と該容器本体を気密に閉鎖する蓋とを備える密閉容器を、所定の位置に載置するステージと、
前記密閉容器の前記ステージへの載置状態を検出するセンサと、
前記ステージを進退移動させるステージ駆動機構と、
前記蓋と接合して一体化した後に前記蓋を前記容器本体から分離して密閉容器を開扉するロードポートドアと、
前記ロードポートドアを昇降移動させるドア昇降機構と、
前記ステージ駆動機構と前記ロートポートドアと前記ドア昇降機構を動作させるための複数の動作手順を記憶しており、該動作手順に基づいて前記ステージ駆動機構と前記ロードポートドアと前記ドア昇降機構の動作を制御するロードポート制御部と、を備え、
前記ロードポート制御部は、
前記容器本体から前記蓋を分離して前記密閉容器を開扉するために、第一の動作手順に基づいて、前記ドッキング位置で前記ロードポートドアと前記蓋が接合して一体化した状態から、前記ステージを第1の速度で前記案ドッキング位置に後退させるように前記ステージ駆動機構と前記ドア昇降機構を制御し、
前記第一の動作手順による開扉動作の際に、前記センサが前記密閉容器の載置異常を検出した場合には、前記密閉容器を前記ドッキング位置に戻した後、前記第一の動作手順とは異なる第二の動作手順に基づいて前記開扉動作を再実行するよう制御する、
ことを特徴としている。
【0009】
上記構成とすることで密閉容器の容器本体と蓋とは、容器本体が浮き上がる第一の動作手順とは別の、より確実に容器本体と蓋とを分離可能な第二の動作手順によって開扉動作を行うので、第一の動作手順による開扉動作により一度浮き上がったとしても第二の動作手順による開扉動作により、容器本体がステージから浮き上がることなく蓋を分離することが可能となる。これにより、開扉動作の不具合により、正常なロードポートを含む搬送装置全体が頻繁に動作を停止してしまうというトラブルの発生を防止することができる。
【0010】
なお、本発明のロードポート制御部が実行する開扉動作の第二の動作手順は、前記第一の動作手順よりも遅いスピードであり、前記ロードポート制御部は、少なくとも前記密閉容器の前記蓋と前記容器本体とが分離するまでは、前記第二の動作手順を実行する構成としても良い。また、第二の動作手順は微小な後退動作を断続的に繰り返してアンドッキング位置まで移動する処理手順(後退動作と停止を断続的に繰り返す)であり、前記ロードポート制御部は、少なくとも前記密閉容器の前記蓋と前記容器本体とが分離するまでは、前記第二の動作手順を実行する構成としても良い。さらに、第二の動作手順は、ステージを所定の後退位置まで移動させた後、一旦前記ステージを前記後退位置までの距離よりも短い距離で前進させる設定であり、前記ロードポート制御部は、少なくとも前記密閉容器の前記蓋と前記容器本体とが分離するまでは、前記第二の動作手順を実行する構成としても良い。
【0011】
さらに本発明のロードポート制御部は、少なくとも前記密閉容器の前記蓋と前記容器本体とが分離するまでは、前記ドア昇降機構により前記ドアを所定の動作範囲で上下方向に昇降移動させることを特徴としている。上記構成とすることで、ステージを進退移動させる動作に加えて、容器の蓋を上下方向に昇降移動させる動作を行うので、蓋を容器本体からスムーズに分離させることが出来る。
【0012】
なお、前記ドアの前記上下方向の動作範囲は、容器本体と前記蓋との間の上下方向の隙間寸法よりも小さい寸法であることが望ましい。上記構成とすることで、蓋を上下方向に移動させることによる容器本体と蓋との衝突や上下動による容器本体の浮き上がりを防止することが出来る。また、前記ドアと前記ドアの周囲に配置される気流調整板との間の隙間寸法よりも小さい寸法であることが望ましい。上記構成とすることで、ドアと気流調整板とが衝突することによる塵埃の発生を防止することが出来る。
【0013】
また、上記で例示した各種第二の動作手順は、それぞれ適宜組み合わせて使用することができる。さらに第二の動作手順でも蓋を分離することができないときは、各種第二の動作手順を所定の回数実行するように構成することもできる。また、第二の動作手順に適宜優先順位をつけて、優先順位順に各種の異なる第二の動作手順を実行するように構成することもできる。例えば、第二の動作手順として、第一の動作手順の移動速度よりも遅い速度でステージを移動させても、容器本体から蓋を分離できなかった場合に、第三の動作手順としてステージの移動を分割して断続的に移動と停止を繰り返す動作を行うことができる。また、上記で第二の動作手順として説明した動作手順に優先順位順を付与して、第三、第四の動作手順として組み合わせて実行するように構成しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明のロードポートによれば、シール部材が癒着している場合やシール部材の摩擦が大きいなどの理由により、密閉容器の開扉動作が通常の開扉動作手順では異常が発生してしまう場合であっても、より確実に開扉できる第二の動作手順により開扉処理を行うことにより、開扉異常が発生する度に搬送装置全体が停止してしまうというトラブルを防ぎ、システム全体の稼働効率を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態であるEFEMを示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるロードポートを示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるロードポートが備えるステージを示す図であり、(a)は本実施形態のロードポートが備えるステージを上面から見た図であり、(b)はステージを側面方向から見た要部を説明するためFOUPの模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるロードポートが備えるポートドアとその周辺及び内部の機構を示す図であり、(a)は、ポートドアをステージが配置される側から見た図であり、(b)はラッチキーを左回転させて開錠した状態を示す蓋開閉機構の模式図である。
【
図5】本発明で使用されるFOUP本体と蓋とを示す図であり、(a)は、ウエハWが収納されたFOUP本体と本体から分離された蓋を示す斜視図であり、(b)は蓋の内側を示す斜視図であり、(c)はFOUPの底面を示す図である。
【
図6】本発明で使用される蓋の内部構造を示す図である。
【
図7】FOUP本体に対する蓋の位置とシール部材の状態を示す部分拡大断面図であり、(a)はFOUP本体と蓋とが開錠された状態を示し、(b)は施錠された状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】蓋をFOUPに押し付ける付勢機構の構造を示す部分拡大断面図であり、(a)及び(b)は、蓋がFOUP本体に押し付けられていない状態を示し、(c)は蓋がFOUP本体に押し付けられた状態を示す。
【
図9】本発明のロードポートが備える検出センサの一例を示す模式図であり、(a)は、FOUPが正しく載置されており、光路が検出ピンにより遮蔽された正常状態を示す図であり、(b)はFOUPが傾いているために受光部が受光している、エラー状態を示す図である。
【
図10】FOUP30の載置状態を示す図であり、(a)はドッキング位置のFOUPを示す側面図であり、(b)はシール部材がフランジと癒着しているために開扉動作によりFOUPの後部が浮き上がった状態を示す側面図である。
【
図11】第一の動作手順と第二の動作手順による開扉動作の効果を比較して示す図であり、(a)は、第一の動作手順でステージを移動させた際の経過時間と移動距離を実線で示す図であり、(b)は第一の動作手順よりも遅い移動速度でステージを移動させる第二の動作手順により開扉動作を行ったときの経過時間と移動距離を実線で示す図であり、(c)は、短い距離の移動と停止を繰り返しながらアンドッキング位置までステージを移動させる第二の動作手順の場合を示す図である。
【
図12】第二の動作手順の他の例を示しており、(a)は、アンドッキング位置まで後退と前進を繰り返すことにより第二の動作手順による開扉動作の例を示す図であり、(b)及び(c)は、ロードポートドアを上下に振動させながらステージをアンロード位置まで移動させる第二の動作手順を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るロードポートの構成の一部を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、FOUP30に収納されたウエハWを、外部環境に晒すことなくFOUP30とウエハ処理装置6との間で搬送する搬送装置であるEFEM7の概要を示す断面図である。少なくとも、EFEM7はFOUP30を載置してFOUP30のドアを開閉するロードポート8と、FOUP30の内部に収納されたウエハWを取り出して処理装置へと搬送する搬送ロボット9と、EFEM7の内部空間に清浄な空気を供給するFFU(Fun Filter Unit)10とを備えている。これらロードポート8と搬送ロボット9が協働する搬送動作はEFEM7内に配置された制御装置17により制御される。なお、
図1では、FOUP30は1つだけ示されているが、通常、横方向に複数配列されていることが多い。
【0017】
EFEM7の内部空間は、フレーム18と、このフレーム18に固定されたカバーとで覆われる清浄空間となっていて、この空間の天井部分にはFFU10が設置されている。FFU10は、ファンによって外部から導入してきた空気をフィルタによって濾過して、EFEM7の内部空間に清浄な空気をダウンフローとして供給する。さらに、EFEM7の床面には、所定の開口率で開けられた複数の開口を有する底面カバー13が配置されていて、FFU10から供給された清浄な空気は、EFEM7の内部空間を通過して、この底面カバー13の開口からEFEM7の外部へと排出される。FFU10から供給される清浄な空気の流量と底面カバー13の開口率とは、EFEM7の内部空間の圧力が外部の気圧よりも高くなるように調整されていて、EFEM7の外部で発生した塵埃がEFEM7の内部空間に流入することを防止している。
【0018】
図2は本発明の実施形態に係るロードポート8を示す断面図である。また、
図3(a)は
図2に示す実施形態のロードポート8が備えるステージ21を上面から見た図であり、
図3(b)はステージ21を側面方向から見た模式図である。説明の便宜のため、FOUP本体1と蓋2のみを断面で示している。ロードポート8は、外部雰囲気が入り込まないようにしつつFOUP30の蓋2をFOUP本体1から取り外して、FOUP30の内部雰囲気とEFEM7の内部雰囲気とを連通させる、蓋開閉装置としての役割を担っている。これにより、FOUP30及びEFEM7内部を外部雰囲気に晒すことなく、搬送ロボット9によってFOUP30からウエハWを取り出して搬送することができる。
【0019】
図2を参照すると、本実施形態のロードポート8は、EFEM7のフレーム18に対して直立した状態で接続固定されている本体フレーム19に設けられた水平フレーム20と、FOUP30を所定の位置に載置するステージ21と、水平フレーム20上に設けられてステージ21を水平面内で前進・後退移動させるステージ駆動部23と、本体フレーム19に固定され、ウエハW及びFOUP30の蓋2が通過可能なポート開口部26が形成されたプレート27と、ポート開口部26を通過可能であり、FOUP30の蓋2と一体化する機構を備えるロードポートドア28と、ロードポートドア28を昇降移動させるドア昇降部29とを備えている。
【0020】
本実施形態のステージ駆動部23は、
図3(b)に示すように、駆動源であるモータ31と、モータ31と連結する送りネジ機構32とを備えている。モータ31の回転軸と送りねじ機構32のボールねじ軸とは公知のカップリング機構によって連結されていて、モータ31の回転軸の回転がボールねじ軸に伝達されることで、ステージ21は水平方向の所定の位置まで移動することができる。該所定の位置として、ステージ駆動機構23は、例えば、FOUP30の蓋2とロードポートドア28とが接合して一体化するドッキング位置、FOUP本体1と蓋2とを分離するアンドッキング位置、FOUP本体1と蓋2とが分離した後のロードポートドア28の下降動作の際に、ステージ駆動機構23が干渉しないための退避位置、クリーンルーム内に敷設されたFOUPを運搬する手段にFOUP30を受け渡すための基準位置等のそれぞれの位置にステージ21を移動させることが出来る。
【0021】
ドア昇降部29は、駆動源であるモータ33と送りネジ機構34とを備えている(
図2参照)。モータ33の回転軸と送りねじ機構34のボールねじ軸にはそれぞれプーリが固定されていて、この2つのプーリの間にはベルトが掛け渡されている。これにより、モータ33の回転軸の回転が送りねじ機構34のボールねじ軸に伝達されることで、ロードポートドア28は所定の位置まで昇降移動する。なお、本実施形態のステージ駆動部23とドア昇降部29が備えるモータ31、33は、回転軸の角度制御が可能なステッピングモータが好ましく、これらのモータ31、33の動作速度や動作距離は、ロードポート8が備えるロードポート制御部35によって制御される。また、ステージ駆動部23とドア昇降部29が備える駆動源として
図2及び
図3に示すモータ31、33に代えて、空気圧や油圧といった流体圧を利用した公知のシリンダを備える構成としても良い。
【0022】
ステージ21の上面には、FOUP30を支持する円柱状の部材であるキネマティックピン12-1、12-2、12-3が平面視して二等辺三角形の各頂点に位置するように所定の間隔を開けて3本立設されている(
図3(a)、(b)参照)。キネマティックピン12-1、12-2、12-3は頂部が略半球状の形状が好ましい。FOUP30がキネマティックピン12-1、12-2、12-3の上に載置されたときに、FOUP30の底面に略V字状の窪みとして形成された3つのV溝部11とそれぞれキネマティックピン12-1、12-2、12-3のそれぞれの頂部とが接することにより、FOUP30はステージ21上の所定の位置に位置決めされる。さらに、各キネマティックピン12-1、12-2、12-3のそれぞれの近傍には、FOUP30がステージ21上の正常な位置に載置されているかどうかを検出するための検出センサ36-1、36-2、36-3が配置されている。
【0023】
本実施形態のロードポート8が備える検出センサ36-1、36-2、36-3は、それぞれ検出ピンと、検出ピンを上方に付勢する圧縮ばねと、透過光式センサとで構成されている。透過光式センサによる検出センサの一例を
図9に例示する。
図9(a)に示すように、FOUP30がキネマティックピン12-1、12-2、12-3上に正しく載置されていると、検出ピン66がFOUP30の底面により下方に押し下げられて、発光部71から照射される検出光70が検出ピン66に遮られる。そのため受光部72は検出光70を検出できず、オフ信号を出力する。一方、FOUP30が載置されていないとき、または
図9(b)に示すようにFOUP30が正しく載置されていないときには、圧縮コイルばね67等により検出ピン66が上方に押し上げられた状態となり、受光部72は検出光70を検出するので、オン信号(受光信号)を出力する。このオン又はオフ信号はロードポート制御部35に送信されて、制御部はFOUP30が正しく載置されているかどうかを認識する。
【0024】
キネマティックピン12-1、12-2、12-3がFOUP30のV溝部11内の所定の位置に当接するように正しく載置されると、FOUP30の底面の位置がV溝11の深さに相当する距離だけ下降する。FOUP30正しく載置されていない場合には、正しく配置された場合よりもFPUP30の底面が高い位置となる。検出センサ36-1、36-2、36-3は、この底面の下降位置の違いから、FOUP30が正しく載置されたときにオフ信号を、正しく配置されていないときにはオン信号をロードポート制御部35に送信する。
【0025】
検出センサ36-1、36-2、36-3の高さ方向の位置は、FOUP30が正常載置されている場合にのみ全ての検出センサ36-1、36-2、36-3がオフ信号を出力するように調整されている。例えば、キネマティックピンの一つが正しくV溝部11の位置に載置されていないためにFOUP30が傾いた状態で載置された場合には、これらの3つの検出センサ36-1、36-2、36-3のうちの少なくともいずれか一つがオン状態となるように調整されている。したがって、ロードポート制御部35は各検出センサ36-1、36-2、36-3から送信されるこれらの信号によって、FOUP30がステージ21上に正常に載置されているか否かを認識することが出来る。
【0026】
また、キネマティックピン12-1、12-2、12-3上に載置されたFOUP30は、係止フック37によってステージ21に係止される(
図3(b)参照)。係止フック37は不図示のエアシリンダと連動していて、このエアシリンダに圧縮空気が供給されることでエアシリンダのピストンロッドが伸長することにより係止フック37がFOUP30をステージ21に係止する。また、エアシリンダに供給された圧縮空気が開放されることによりピストンロッドが収縮して係止フック37はFOUP30の係止を解除する。エアシリンダへの圧縮空気の供給と解放はロードポート8に備えられた不図示の電磁弁により切り替えられる。電磁弁は圧縮空気の供給源とエアシリンダとを連通する配管の途中に設けられていて、ロードポート制御部35により作動が制御される。
【0027】
また、ステージ21には、ウエハWの処理工程を管理するために各FOUP30に個別に付与されたID情報を読み取る不図示のIDリーダーを設けることができる。なお、IDリーダーとして、FOUP30に備えられているバーコードを読み取るバーコードリーダーや、FOUP30に備えられるIDタグに電波を送り、IDタグから送り返された電波を受信するRFID(Radio Frequency Identifier)リーダー等が利用可能である。
【0028】
図4は、本実施形態のロードポート8が備えるポートドア28とその周辺機構を示す図であり、図(a)はポートドア28をステージ21が配置される側から見た図、図(b)は、ラッチキー15を左回転させて開錠した状態の蓋開閉機構39を示す模式図である。ロードポートドア28は、FOUP30の蓋2をロードポートドア28に対して位置決めするレジストレーションピン38と、蓋2に備えられる施錠機構51(
図6参照)と係合して蓋2の施錠と開錠を行うラッチキー15と、ラッチキー15を回転させる蓋開閉機構39とを具えている。レジストレーションピン38は、
図4に示すロードポートドア28の正面左上と右下に配置されている直径約9mmの略円柱状の部材である。各レジストレーションピン38の周囲には、シリコンゴム等の柔軟な素材で形成された吸着パッド40が備えられている。さらに、レジストレーションピン38には蓋2を吸引(真空吸着)するための流路が形成されており、この流路は装置外部に設けられる不図示の真空源に接続されている。ロードポートドア28と接触したFOUP30の蓋2はレジストレーションピン38によりロードポートドア28に対して所定の位置に位置決めされ、さらに真空源からの真空吸着力により蓋2が吸引されてロードポートドア28と蓋2とは一体化される。
【0029】
ラッチキー15はロードポートドア28の表面から突出するように配置されている略T字状の部材であり、ロードポートドア28の正面に左右一対で備えられている。それぞれのラッチキー15は、ロードポートドア28の内部に備えられる蓋開閉機構39によって、時計回り及び反時計回りに回転させられる。本実施形態の蓋開閉機構39は駆動源としてエアシリンダ41を備えており、エアシリンダ41のピストンロッドが進退移動することで、ピストンロッドと連結されたカム機構42が連動してラッチキー15を回転動作させる。なお、エアシリンダへ41の圧縮空気の供給と開放は、ロードポート制御部35によって制御される。上記構成によって、ロードポートドア28と蓋2とが一体化したのち、ラッチキー15が所定の方向に回転することで蓋2は開錠されて、FOUP本体1から分離可能となる。また、ラッチキー15が反対方向に回転することでFOUP30の蓋2はFOUP本体1から分離できないように施錠される。
【0030】
上記の構成に加えて、ロードポート8にはFOUP30の内部に形成された各棚上にウエハWが収容されているか否かを検知するマッピングセンサ43が備えられている(
図4(a)参照)。本実施形態のロードポート8が備えるマッピングセンサ43としては、光源と受光部を左右に間隔を置いて配置した透過光式センサが用いられている。本実施形態のマッピングセンサ43は、FOUP本体1の内部方向に揺動可能な状態で、ロードポートドア28に取り付けられている。マッピングセンサ43は、ロードポートドア28が所定の高さ位置まで下降したところでマッピングセンサ43の左右に配置された光源と受光部の双方がFOUP本体1の内部に向かってウエハに接触しない程度に内部に入り込む。その状態で、ドア昇降部29によってロードポートドア28とともにマッピングセンサ43が下降する際に、各棚板上に載置されているウエハWのエッジにより光源の光が遮断されるか否かを検出することにより、各棚板上のウエハWの有無を順次検出する。マッピングセンサ43をFOUP本体1の内部方向に進退移動させるセンサ駆動機構の駆動源としては不図示のエアシリンダが備えられている。なお、マッピングセンサ43の駆動及びドア昇降部29等の各駆動機構はロードポート制御部35によって制御されており、マッピングセンサ43の検出信号は、ロードポート制御部35に入力される。マッピングセンサ43の検出信号によりFOUP本体1内の全ての棚について、ウエハWの有無を検出することができる。
【0031】
次に、ウエハWを収容する密閉容器であるFOUP30について説明する。
図5(a)はウエハWが収納されたFOUP本体1と蓋2を示す分解斜視図であり、
図5(b)は蓋2の内側を示す斜視図である。
図5(c)はFOUP30の底面を示す図である。FOUP30は、上下方向に間隔をおいて形成された棚板上にウエハWを収容するFOUP本体1と、FOUP本体1を気密に閉鎖する蓋2とで構成される。FOUP本体1の一側面にはウエハWを出し入れするための開口44が形成されていて、この開口44が蓋2によって閉鎖される。FOUP本体1の底部にはキネマティックピン12-1、12-2、12-3のそれぞれと接触してFOUP30のステージ21に対する位置を規定する略V字状に形成される位置決め溝11が所定の位置に3つ配置されている。また、FOUP本体1の底部には係合部45が形成されていて、この係合部45がステージ21の係止フック37(
図3(b))と係合することでFOUP本体1はステージ21に固定される。なお、FOUP本体1の底部には、FOUP30の内部の雰囲と置換するパージガスを注入するための注入用ポート46と、FOUP30内に残留する気体をFOUP30外部へ排出するための排出用ポート47とが必要に応じて備えられる。
【0032】
さらに、FOUP本体1の開口44の周縁には、開口44を取り囲むように形成される開口フランジ48が設けられている。開口フランジ48の上端と下端の開口44に対向する面には、後述する蓋2のロック部材55を挿入するための凹部49が設けられている。また、蓋2の周縁のFOUP本体1側にはシール部材50が周設されていて、このシール部材50が開口フランジ48の内側に形成される第2の平面58(
図7を参照)と密着することで、FOUP本体1の内部空間は気密に閉鎖される。
【0033】
蓋2は、互いに嵌合する表面プレート2aと裏面プレート2bとで構成されており、表面プレート2aと裏面プレート2bとの間には、FOUP本体1と蓋2とを施錠および開錠するための施錠機構51
図6参照)が備えられている。また、蓋2の周縁には、
図7に示すような、シール部材50と、表面プレート2aと裏面プレート2bとによりシール部材50を挟み込み固定する溝部が設けられており、このシール部材50によりFOUP本体1と蓋2との間の密閉性を維持している。さらに、裏面プレート2bには、FOUP本体1に収容されるウエハWを所定の位置に固定するためのリテーナ52が備えられている(
図5(b)参照)。表面プレート2aには、ロードポートドア28に設けられたレジストレーションピン38が挿入されるレジストレーションピン孔4と、後述する蓋開閉機構39のラッチキー15と係合するためのキー孔53が設けられている。
【0034】
図6は蓋2の内部構造を示す図である。蓋2の内部に配置される施錠機構51は、ロードポートドア28が備えるラッチキー15に対応する位置にそれぞれ配置される2つの円盤状部材54と、円盤状部材54の上方と下方とに配置されて円盤状部材54の回転動作に連動して上下移動するロック部材55とで構成される。それぞれの円盤状部材54にはその周方向に約90°にわたってカム溝56が2か所に設けられている。このカム溝56の円盤状部材54の回転中心からの半径方向の距離は、図面視して時計回り方向に進むにしたがって遠くなるように形成されている。
【0035】
また、このカム溝56にはロック部材55の基端部がピンを介して連結されている。また、ロック部材55は蓋2の内部に鉛直方向に移動可能に配置されており、上記構成により、円盤状部材54が時計回りに90°回転することにより連結ピンがカム溝56の周縁部により押される。これにより、ロック部材55の先端部は蓋2の上面と下面に対して突出して、開口フランジ48の凹部49に進入しFOUP30と蓋2とは施錠される。また、円盤状部材54が反時計回りに90°回転することにより連結ピンがカム溝56の周縁部により内部に引き込まれることによりロック部材55の先端部は後退する。これにより開口フランジ48の凹部49から退出することで、FOUP30と蓋2とは開錠される。
【0036】
円盤状部材54の中央には略長方形にラッチキー孔53が設けられている。ロードポート8のステージ21上に固定されたFOUP30がステージ21によって前進移動してロードポートドア28と接触すると、このラッチキー孔53にロードポートドア28に配置されるラッチキー15の先端部分が嵌合する。そして、蓋開閉機構39が作動することでラッチキー15と円盤状部材54とが正転して、FOUP30と蓋2は開錠される。また、蓋開閉機構39が反対方向に作動することによってラッチキー15と円盤状部材54は逆転して、FOUP30と蓋2とは施錠される。
【0037】
図7は、蓋2が開錠または施錠されたときのFOUP本体1に対するシール部材50の状態を示す拡大部分断面図であり、
図7(a)はFOUP本体1と蓋2とが開錠された状態を示し、
図7(b)はFOUP本体1と蓋2とが施錠された状態を示す図である。蓋2の外周面に設けられるシール部材50は、各種の熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム等の材料で成形される。シール部材50は、エンドレス部50aとリップ部50bとで構成されている。エンドレス部50aは表面プレート2aと裏面プレート2bとの間に形成された溝部に嵌合されており、該エンドレス部50aからリップ部50bが突出している。リップ部50bは根本部分から先端部分にかけて厚みが徐々に薄くなるように成形されていて、先端部がFOUP本体1の内部方向外側に向かって斜めに突出するように成形されている。蓋2がFOUP本体1と嵌合した際には、このリップ部50bとFOUP本体1の内部壁とが接触することでFOUP本体1の内部空間は密封される。また、一体化した蓋2とFOUP本体1との間には隙間62が設けられている。この隙間62は蓋2の外周に設けられており、本実施形態のFOUP本体1と蓋の間の隙間寸法をL2とする。
【0038】
FOUP本体1の開口部44の周縁は、
図7に示すように、FOUP本体1の開口フランジ48に形成された第1の平面57と、この第1の平面57よりも奥まった位置に形成され、第1の平面57よりも小さい面積の第2の平面58が形成されている。また、第1の平面57と第2の平面58とは段状に形成されており、この第1の平面57と第2の平面58との間には、FOUP30内部から外側にいくにしたがって徐々に開口面積が大きくなるように傾斜面59aが形成されている。また、蓋2にはこの外向きの傾斜面59aに対応する傾斜面59bが形成されており、これらの傾斜面59a、59bは蓋2とFOUP本体1とが嵌合するときに、蓋2がFOUP本体1に対して円滑に嵌合するためのガイドとして機能する。
【0039】
また、蓋2の内部には、施錠する際に蓋2をFOUP本体1に向かって押し付ける方向に付勢する付勢機構が設けられている。
図8は付勢機構の構造を示す部分拡大断面図であり、施錠又は開錠の際に、ロック部材55が開口フランジ48の凹部49に侵入又は退避する状態を示している。
図8(a)は、蓋2とFOUP本体1とは施錠されておらず、FOUP本体1の第2の平面58にシール部材50のリップ部50bが接触した状態を示している。ラッチキー15が回転することで、ロック部材55が蓋2に対して没入した状態から蓋2から突出して凹部49に侵入する位置まで移動する際に、ロック部材55に設けられた突起部分60aが裏面プレート2bに設けられた突起部分60bと接触して、ロック部材55の先端はFOUP本体1から離れる方向に付勢される(
図8(b)を参照)。さらにロック部材55が蓋2から突出すると、ロック部材55の先端はFOUP本体1の凹部49の壁面に当接して、蓋2はFOUP本体1の内側方向へと押し込められる方向に付勢される(
図8(c)を参照)。この付勢力によって蓋2はFOUP本体1の奥へと押し付けられ、シール部材50のリップ部50bもFOUP本体1の第2の平面58へと押し付けられ、リップ部50bは変形しながら第2の平面58と密着する。これにより、FOUP30の内部空間は密閉される。
【0040】
シール部材50はフッ素ゴムやシリコンゴムといった柔軟な材料で成形されており、一旦FOUP本体1と蓋2とが施錠されると、シール部材50のリップ部50bとFOUP本体1の第2の平面58とが癒着してしまう場合がある。さらに、シール部材50の加工精度にバラつきがある場合、リップ部50bが第2の平面58の周縁の壁と接触して、スムーズにFOUP30の蓋2を開けることが出来ず、ロードポート8が動作不良を起こすというトラブルが発生する。さらに、FOUP30は長期間にわたり使用されることが多く、長期間の使用によりシール部材50が劣化したり、FOUP本体1が変形してしまったりする。こういったシール部材50の劣化やFOUP本体1の変形が開扉動作時の抵抗となって、無理に蓋2を開けようとすると、FOUP本体1が浮き上がる等のトラブルが発生する原因となる。このようなトラブルが発生した際には、問題の発生したFOUP30を回収してシール部材50の交換やFOUP本体1のメンテナンスが必要となる。
【0041】
図10はシール部材50が第2の平面58と癒着した状態のFOUP30をロードポート8が開扉する際の、FOUP30の動作異常状態を説明するための側面図である。はじめに、
図10(a)に示すように、FOUP30を載置したロードポート8のステージ21をロードポートドア28に向かって前進させて、蓋2とロードポートドア28とを接触させる。本実施形態のロードポート8においては、この蓋2とロードポートドア28とが一体化するステージ21とロードポートドア28の位置をドッキング位置としている。なお、ステージ21がこのドッキング位置にあるとき、ロードポートドア28の周縁に配置される気流調整部材61とFOUP30の周縁の開口フランジ48とは接触しておらず、水平方向に所定の隙間63を開けて互いに対向する位置にある。
【0042】
次に、ロードポートドア28と蓋2とが一体化して蓋2が開錠された後、ステージ21は、FOUP本体1から蓋2を取り外すために
図10(a)に示すドッキング位置から後退移動する。ここで、FOUP本体1と蓋2とを正常に分離できたときに、完全に分離していると認識される位置をアンドッキング位置と呼ぶ。また、リップ部50bが第2の平面58と癒着しているFOUP1であっても、このアンドッキング位置に到達するまでにリップ部50bが第2の平面58と分離していれば、載置異常として検出されることはない。
【0043】
ステージ21は、このアンドッキング位置までの移動により正常に蓋が分離されると、さらに後退を続けて退避位置まで移動する。蓋2を取り外されると、FOUP本体1に収容されたウエハWを搬出するために搬送ロボット9がFOUP本体1の内部にフィンガを挿入する。このときのフィンガの動作に干渉しない位置まで、蓋2とロードポートドア28とは下降する。ステージ21の退避位置とは、この蓋2とロードポートドア28との下降移動に干渉しない位置のことである。
【0044】
ステージ21がアンドッキング位置まで後退移動する際に、FOUP本体1がアンドッキング位置まで移動したにも関わらずシール部材50のリップ部50bが第2の平面58から分離されておらず、蓋2とFOUP本体1とがスムーズに分離されない場合がある。その場合FOUP本体1のフランジ48が蓋2に張り付いて後方に移動できないので、
図10(b)に示すように、FOUP本体1が前方の2本のキネマティックピン12-1、12-2を支点として前方に傾いた姿勢となる。すなわちFOUP本体1の後部が、ステージ21の後方に配置されるキネマティックピン12-3から浮き上がった姿勢となってしまう。
【0045】
FOUP本体1の後部が浮き上がると、キネマティックピン12-3の近傍に配置される検出センサ36-3がオン信号を出力する。このタイミングで検出センサ36-3からのオン信号を受信すると、ロードポート制御部35は、開扉動作中にエラーが発生したと認識してEFEM7の制御装置17にエラー発生信号を送信する。このように、FOUP本体1が傾くと、FOUP本体1の開口フランジ48と気流調整部材61とが接触して(
図10(b)参照)、接触時に発生した塵埃がFOUP本体1に収容されたウエハWに付着してしまうというトラブルが発生する恐れがある。また、FOUP本体1の後部が浮き上がった姿勢となった状態から、リップ部50bが第2の平面58から分離することによりFOUP本体1の後部がキネマティックピン12-3に落下し、その衝撃でFOUP1に収容されているウエハWがダメージを受ける可能性もある。そのため、このようなトラブルが頻繁に発生する場合、制御装置17はEFEM7の搬送動作を停止させることになる。なお、こういったトラブルは、ステージ21を後退移動させずに、ロードポートドア28と蓋2とをFOUP本体1に対して後退移動させることでFOUP本体1から蓋2を取り外す形態のロードポート8においても、同様に発生しうるトラブルである。
【0046】
上記のようなトラブルは、ステージ21がドッキング位置からアンドッキング位置まで移動する時間が、癒着したリップ部50bが第2の平面58から分離する時間よりも短い場合に発生する。リップ部50bは柔軟な素材で形成された部材であるので、ステージ21がアンドッキング位置まで後退してもリップ部50bの一部は第2の平面58に癒着しており、この癒着したリップ部50bが徐々に第2の平面58から剥がれるために蓋2の分離が遅れてしまうのである。そこで、本実施形態のロードポート8では、FOUP本体1の後部が浮き上がったことを検出センサ36-3が検知すると、その信号を受信したロードポート制御部35が一旦ステージ21をドッキング位置まで戻してFOUP本体1を元の正常な載置状態(
図10(a)の状態)に戻す動作を実行する。その後、例えば、通常の動作速度よりも動作速度が遅い第二の動作手順でステージ21を後退させるなどの、FOUP本体1の浮き上がりを防止しつつFOUP本体1と蓋2とを分離するための動作を実行する。
【0047】
なお、EFEM7全体の搬送スループットを低下させないという観点から、FOUP30が浮き上がるという載置異常が発生していないときは通常の動作手順である第一の動作手順での開扉動作を行い、載置異常が発生した場合にのみ第二の動作手順で開扉動作を実行することが望ましい。また、載置異常が発生したときは、アンドッキング位置までステージ21を第二の動作手順で後退させてFOUP本体1と蓋2とを確実に分離させ、分離に成功した後の動作は速度の速い通常の第一の動作手順でステージ21を退避位置まで移動させることが望ましい。これにより開扉動作全体のスループット低下を抑制することができる。
【0048】
さらに、制御装置17は、ロードポート制御部35からFOUP30の浮き上がりエラー信号を受信すると、クリーンルーム内のウエハ処理工程を管理するホストコンピュータにアラーム信号(エラー信号)とFOUP30のID情報を送信する。ホストコンピュータに送信されたエラー信号はクリーンルーム内の作業者に伝達され、作業者が問題の発生したFOUP30の補修を実行することで、トラブルの再発を防止することが出来る。
【0049】
図9は検出センサ36-3を示す断面図である。検出センサ36-3は、検出ピン66と、検出ピン66を上方に付勢する圧縮コイルばね67と、透過光式センサ68と、ステージ21上に固定されて、検出ピン66と圧縮コイルばね67を収容するハウジング69とを備えている。キネマティックピン12-1、12-2、12-3上にFOUP30が正しき載置されているときは、
図9(a)に示すように、FOUP30の荷重により圧縮コイルばね67が圧縮されて検出ピン66がFOUP30によって下方に押され、透過光式センサ68の投光部71から照射される検出光70が遮られる。これにより受光部72は検出光70を感知せず、検出センサ63-3はオフ信号を出力する。各検出センサ36-1,36-2,36-3からのオフ信号はロードポート制御部35に送信され、ロードポート制御部35はすべての検出センサからオフ信号が送信されているときに、FOUP30が正しく載置されていると認識する。
【0050】
FOUP30の後部が浮き上がった状態になった際には、
図9(b)に示すように、検出ピン66は圧縮コイルばね67によって上方に付勢される。このとき透過光式センサ68の投光部から照射される検出光70は受光部72に届き、透過光式センサ68は受光状態となり、検出センサはオン信号を出力する。このオン信号はロードポート制御部35に送信され、ロードポート制御部35はFOUP30が載置されていないこと、または正しく載置されていないことを認識する。検出ピン66の上下方向寸法と可動範囲は、FOUP30の底面が浮き上がった状態であっても、圧縮コイルばね67はFOUP30の後部の荷重を受けて底面を支持するように構成するのが好ましい。FOUP30の後部が浮き上がった状態であっても圧縮コイルばね67がFOUP30の荷重を受けていることで、FOUP30の後部が落下するときのスピードを低下させ、落下による衝撃を緩和することができる。なお、本実施形態の検出センサ36-3が備える圧縮コイルばね67は、ウエハWを一枚も収容していないFOUP本体1が載置された際であっても、検出ピン66が透過光式センサ68の検出光70を遮ることができる程度の弾性力を有することが望ましい。
【0051】
さらに、
図3に示すように、FOUP本体1が浮き上がったことを検出する手段は、キネマティックピン12-3の近傍に配置される検出センサ36-3とは別の検出センサ65を追加してもよい。検出センサ65として、例えば、近接センサやフォトセンサ、光電センサ等を用いることができる。検出センサ65はどのような検出形態のセンサであっても良いが、検出センサ36-3よりも検出精度の高いものを使用するのが望ましい。例えば、検出センサ36-3がFOUP本体1の後部が2mm浮き上がったところで載置異常を検出するものであった場合、検出センサ65は2mmよりも小さい浮き上がり量でも検出できるものとすることで、FOUP本体1の浮き上がりを精度よく検出することが出来る。
【0052】
図11(a)は、シール部材の癒着によって蓋が本体からスムーズに離れにくい状態のときに、第一の動作手順でステージ21をドッキング位置からアンドッキング位置まで移動させた際の経過時間と移動距離を実線で示すグラフである。
図11(b)は、同様に蓋を分離し難い状態において、第一の動作手順よりも移動速度が遅い第二の動作手順でステージ21をドッキング位置からアンドッキング位置まで移動させた際の経過時間と移動距離を実線で示すグラフである。どちらのグラフも、横軸が時間で縦軸は移動距離であり、移動距離はモータ31の動作パルス数で表している。本実施形態のモータ31では、一例としてステージ21がドッキング位置にあるときを0パルスとし、モータ31の回転軸を正転させてドッキング位置からアンドッキング位置まで移動したときのモータ31のパルス数を10000パルスとしている。さらに、グラフ上の点は、リップ部50bが第2の平面58から分離した時点TXを示しており、ステージ21が第一の動作手順でアンドッキング位置(10000パルスの位置)まで移動した時点をT1で、ステージ21が第二の動作手順でアンドッキング位置(10000パルスの位置)まで移動した時点をT2で表している。
【0053】
図11(a)では、通常の開扉動作である第一の動作手順では、ステージ21がアンドッキング位置までの移動が終了してもリップ部50bが第2の平面58から分離しておらず、FOUP本体1の後部が浮き上がった姿勢となりエラーとなる。これに対して、
図11(b)に示すように、第一の動作手順より遅い速度で移動する第二の動作手順では、ステージ21がアンドッキング位置まで移動するよりも前にリップ部50bは第2の平面58から分離しているので、FOUP本体1の後部が浮き上がることは無く、エラーは発生しない。この第一の動作手順から第二の動作手順への切り替えはロードポート制御部35によって行われる。ロードポート制御部35は、
図13に示すように、各種演算を行うコンピュータと、各種設定データや教示データ、動作プログラムを記憶している記憶手段と、ロードポート8が備える駆動装置及び各種センサ等との間で信号を送受信する通信手段とを備えている。ロードポート制御部35は検出センサ36-1、36-2、36-3からの信号を受信すると、記憶手段に記憶された動作プログラムに則って、第一の動作手順から第二の動作手順に切り替えてFOUP30の開扉動作を実行する。
【0054】
また、第二の動作手順での開扉動作は、ロードポート制御部35がステージ21をドッキング位置からアンドッキング位置まで移動させる際に、ステージ21の開扉動作を短い距離の後退移動と停止を繰り返しながらアンドッキング位置まで移動する形態としてもよい。例えば、
図11(c)に示すように、アンドッキング位置までステージ21を移動させるモータ31の動作パルス数を10000パルスとすると、モータ31の回転軸を2000パルス正転させてステージ21を後退させる度にモータ31の回転軸を一旦停止させ、再度モータ31の回転軸を2000パルス正転させるという動作を、ステージ21がアンドッキング位置までの移動が終了した時点T3まで繰り返し行う。この動作を行うことで、ステージ21がアンドッキング位置まで移動するよりも早い時点でリップ部50bが第2の平面58から分離している。これにより、FOUP本体1が浮き上がることは無くなる。なお、
図11(b)、(c)に示すように、開扉動作全体のスループット低下を抑制するために、アンドッキング位置まではステージ21を第二の動作速度で後退させて、その後の動作は動作速度の速い第1の動作速度でステージ21を移動させるようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態のロードポート8は、上記開扉動作以外の開扉動作を行うことも出来る。第二の動作手順の他の実施形態では、ステージ21をドッキング位置からアンドッキング位置まで後退させる際に、ステージ21を所定の位置まで後退させた後、一旦ステージ21を前進させて、その後再度ステージ21を後退させるという動作を繰り返しながらアンドキング位置まで移動する形態としてもよい。この動作は、ロードポート8が備えるステージ駆動部23のモータ31の回転軸の回転方向と回転角度とを順次切り替えることで行われる。
【0056】
例えば、
図12(a)に示すように、ドッキング位置からアンドッキング位置までステージ21を移動させるために必要なモータ31の動作パルス数を10000パルスとすると、モータ31の回転軸を3000パルス正転させてステージ21を後退させた後、モータ31の回転軸を1000パルス逆転させてステージ21を前進させる。これによりステージ21はドッキング位置から2000パルス後退した位置まで移動したことになる。この動作をステージ21がアンドッキング位置に移動する時点T4まで繰り返し行うことで、蓋2とFOUP本体1とを分離する。
【0057】
上記した各種動作により、癒着したリップ部50bを、徐々に第2の平面58から剥がしていくことで、FOUP本体1の浮き上がりを防止しながら蓋2とFOUP本体1とを分離させることが出来る。なお、開扉動作全体のスループット低下を抑制するために、ステージ21が3000パルス分後退する動作速度とステージ21が1000パルス分前進する動作速度は、第一の動作手順よりも早い動作速度に設定してもよい。また、この開扉動作で利用されるモータのスピードデータや教示データ、及び動作プログラムはロードポート8が備えるロードポート制御部35に記憶されており、ロードポート制御部35は、記憶した動作プログラムに則ってこの開扉動作を実行する。なお、蓋2をフランジ48に押し付ける距離や、第一動作手順や第二動作手順におけるステージ21の移動量(パルス数)等その他の上述した数値や量はあくまでも例示であり、FOUP30の種類やステージ駆動部23の構成によって適宜調整することができる。
【0058】
また、第二の動作手順の他の実施形態では、ロードポートドア28を上下方向(鉛直方向)に振動させながらステージ21を後退させることでFOUP本体1と蓋2とを分離させることも出来る。本実施形態のロードポート8では、ロードポートドア28の上方と左右に気流調整部材61が配置されており、ロードポートドア28と気流調整部材61との間には所定の隙間64が設けられている(
図2,4、8参照)。ここで、隙間64の寸法をL1とすると、ロードポートドア28の上方の隙間64の寸法L1よりも小さい動作範囲でロードポートドア28を振動させる。なお、気流調整部材61は、ロードポートドア28の蓋2と接触する面よりも奥まった方向、すなわちEFEM7の内部空間寄りに配置されている。そのため、ステージ21が前進してロードポートドア28と蓋2とが一体化した状態であってもFOUP本体1と気流調整部材61とは接触することはなく、ロードポートドア28が上下方向に振動してもFOUP本体1と気流調整部材61とが擦れあって塵埃が発生することはない。
【0059】
ロードポートドア28の振動動作は、ロードポートドア28と蓋2とが一体化した後、ステージ21がアンドッキング位置まで移動するまでにドア昇降部29の駆動源であるモータ33の回転軸の回転方向と回転角度とを順次切り替えてロードポートドア28を昇降移動させることで実行される。
図12(b)は、ステージ21がドッキング位置からアンドッキング位置まで移動している間のロードポートドア28の昇降動作を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間であり、縦軸はロードポートドア28の移動距離をドア昇降部29のモータ33の動作パルス数であって、ロードポートドア28が蓋2と一体化するドッキング位置にあるときのパルス数を0としている。グラフ上の縦の破線T1はステージ21がアンドック位置までの移動が終了した時点を示しており、グラフ上の点は、リップ部50bが第2の平面58から分離した時点TXを示している。
【0060】
本実施形態のロードポート8は、ロードポートドア28を5000パルス上昇移動させるとロードポートドア28が気流調整部材61に接触してしまう恐れがあるので、ロードポートドア28の動作範囲の上限は、4000パルス程度に留めておく。ロードポートドア28を振動させる場合、モータ33の回転軸を4000パルス正転させてロードポートドア28を上昇移動させた後、モータ33の回転軸を4000パルス逆転させてロードポートドア28を下降移動させて元のドッキング位置(パルス数は0)に戻す。このロードポートドア28の昇降移動により、ロードポートドア28と一体化した蓋2もFOUP本体1に対して昇降移動を繰り返して、癒着したリップ部50bを第2の平面58から剥がしていくことでFOUP本体1と蓋2とを分離させる。なお、ロードポートドア28の昇降移動は、ステージ21がアンドッキング位置に移動するまで継続することが望ましい。また、アンドッキング位置まではステージ21を第二の動作手順で後退させて、その後は動作速度の速い第一の動作手順でステージ21を移動させることで、開扉動作全体のスループット低下を抑制することが出来る。
【0061】
なお、上記動作パルス数や昇降動作の回数はあくまでも例示であり、FOUP30の種類やロードポート8の構成に応じて適宜調整することが好ましい。また、上記実施形態では、ステージ21がドッキング位置からアンドッキング位置まで移動している間にロードポートドア28の昇降動作を行うように設定されているが、本発明はこれに限定されることはなく、ロードポートドア28と蓋2とが一体化して蓋2を開錠したら、ステージ21がアンドッキング位置への移動動作を開始する前にロードポートドア28の昇降動作を行い、ロードポートドア28の昇降動作の終了後、ステージ21がアンドッキング位置への移動を開始するようにしても良い。なお、ロードポートドア28と蓋2とを振動させることで、ロードポートドア28と蓋2を一体化しているラッチキー15周辺から塵埃が発生することがあるが、ロードポートドア28と蓋2とは密着しているので、発生した塵埃が接合部分から外部に飛散することはない。また、仮に塵埃がロードポートドア28と蓋2との隙間から外部に飛散したとしても、塵埃はFFU10からのダウンフローによってEFEM7の外部へと排出されるので、FOUP本体1に収容されたウエハWの表面に付着することはない。
【0062】
さらに、ロードポート8が行う昇降動作の他の実施形態として、ロードポートドア28の昇降動作範囲を、ロードポートドア28が蓋2と一体化するドッキング位置(0パルス)よりも下方にも広げることも出来る。
図12(c)は拡大されたロードポートドア28の昇降動作を示すグラフである。
図12(b)と同様に、グラフの横軸は時間であり、縦軸はロードポートドア28の移動距離をドア昇降部29のモータ33の動作パルス数を示している。本実施形態では、ロードポートドア28を蓋2と一体化する位置よりも上方(プラス方向)に移動させる動作に加えて、ロードポートドア28を蓋2と一体化する位置よりも下方(マイナス方向)まで移動させる動作を行っている。
【0063】
ロードポートドア2と蓋2とが一体化した後、初めにモータ33の回転軸を4000パルス正転させてロードポートドア28を4000パルス分上昇移動させ、その後、モータ33の回転軸を8000パルス逆転させてロードポートドア28を8000パルス分下降移動させて、ドッキング位置(パルス数0)から4000パルス分下降した位置に移動させる。次にモータ33の回転軸を8000パルス正転させてロードポートドア28をドッキング位置から4000パルス分上昇した位置に移動させる。このロードポートドア28の昇降移動により、蓋2もFOUP本体1に対して昇降移動を繰り返して、癒着したリップ部50bを第2の平面58から剥がしていくことでFOUP本体1と蓋2とを分離し易くさせる。なお、ロードポートドア28の昇降移動は、ステージ21がアンドッキング位置に移動するまで継続することが望ましい。また、アンドッキング位置まではステージ21を第二の動作手順で後退させて、その後は動作速度の速い第一の動作手順でステージ21を移動させることで、開扉動作全体のスループット低下を抑制することが出来る。
【0064】
上記のように、本実施形態ではロードポートドア28の振動範囲を大きくとっているので、癒着したリップ部50bを第2の平面58から素早く分離させることが出来る。なお、ロードポートドア28の振動時の下降動作は、FOUP30の後端が浮き上がらない程度に抑えることが望ましい。また、上記のロードポートドア28を振動させる二つの実施形態では、ロードポートドア28を昇降移動させる際の動作範囲を、ロードポートドア28と気流調整部材61との隙間63の寸法L1を基準として説明したが、FOUP本体1と蓋2との間の隙間62の寸法L2の方が寸法L1よりも小さい場合は、ロードポートドア28の昇降範囲を、寸法L2を基準とすることが望ましい。寸法L1よりも小さい動作範囲でロードポートドア28を昇降動作させることで、FOUP本体1と蓋2とが衝突したり、FOUP本体1の後部が浮き上がったりすることを防止することが出来る。
【0065】
なお、上記動作パルス数や昇降動作の回数はあくまでも例示であり、FOUP30の種類やロードポート8の構成に応じて適宜調整することが好ましい。また、ロードポートドア28の昇降動作は、ステージ21がドッキング位置からアンドッキング位置まで移動する動作と組み合わせて行っても良いし、ステージ21がアンドッキング位置までの動作を開始する前にロードポートドア28の昇降動作を行い、ロードポートドア28の昇降動作の終了後、ステージ21がアンドッキング位置までの移動を開始するようにしても良い。
【0066】
また、上記で例示したその他の各種第二の動作手順も、それぞれ適宜組み合わせて使用することができる。さらに第二の動作手順でも蓋を分離することができないときは、各種第二の動作手順を所定の回数実行するように構成することもできる。また、第二の動作手順に適宜優先順位をつけて、該優先順位順に従って、前述した各種の異なる第二の動作手順を順次実行するように構成することもできる。例えば、第二の動作手順として、第一の動作手順の移動速度よりも遅い速度でステージを移動させても、容器本体から蓋を分離できなかった場合に、第三の動作手順としてステージの移動を分割して断続的に移動と停止を繰り返す動作を行うことができる。また、上記で第二の動作手順として説明した動作手順に優先順位順を付与して、第三、第四の動作手順として組み合わせて実行するように構成しても良い。
【0067】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳しく説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。