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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】セラミック歯科インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20250509BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023536371
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021082427
(87)【国際公開番号】W WO2022128343
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-08-14
(31)【優先権主張番号】20215201.3
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510021649
【氏名又は名称】インスティトゥート・シュトラウマン・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン パーツ
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-511292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0162210(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0298377(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007046879(DE,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1800838(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎骨に埋め込むセラミック歯科インプラント(100、300)であって、前記インプラントは、根尖端(103)から歯冠端(102)に延びており、前記インプラントは、
前記インプラントの前記歯冠端(102)に向けて開放されており、長手方向の中心軸線(LA)に沿って、前記根尖端(103)に向けて延びている、止まり穴(104、304)を有し、前記止まり穴(104、304)は、
ベース面(108)を有するねじ部分(107、307)を備え、ねじ(109)は、前記ベース面(108)から径方向内側に突出しており、前記ベース面(108)は、前記長手方向の中心軸線(LA)から測定される前記ねじ(109)の最大半径(RMAX)を定め、前記ねじ(109)は、頂点(116)によって径方向内端で接続された歯冠フランク(112)及び根尖フランク(114)を有し、前記頂点(116)は、前記長手方向の中心軸線(LA)から測定される前記ねじ(109)の最小半径(RMIN)を定め、前記ねじ(109)は、前記ねじ部分(107、307)の軸方向の長さに沿って螺旋状に延びており、前記ベース面(108)と前記頂点(116)との間の半径の差によって定められる深さ(T)を有し、
前記ねじ部分(107、307)は、
主要部(115)であって、前記主要部(115)内で、前記ねじ(109)の前記最大半径(RMAX)は、前記主要部の前記長さに沿って一定のままである、前記主要部(115)と、
前記主要部(115)に対して根尖側に隣接するテーパ部(117)であって、前記テーパ部(117)内で、前記ベース面(108)は、前記主要部(115)における前記ねじ(109)の前記最大半径(RMAX)から、前記テーパ部(117)の前記根尖端における前記ねじ(109)の前記最小半径(RMIN)まで、根尖方向において径方向内側にテーパ状になっており、前記テーパ部(117)は、ねじ深さ(T)が徐々に減るテーパねじ(119)を形成するように、ねじピッチよりも大きい軸方向の長さにわたって延びており、前記テーパねじ(119)は、複数回のねじの回転にわたって延びている、前記テーパ部(117)と、
を備える、セラミック歯科インプラント。
【請求項2】
前記ねじ(109)の前記最小半径(RMIN)は、前記ねじ部分(107、307)の全長にわたって一定のままである、請求項1に記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項3】
ねじ輪郭は、前記主要部(115)の前記長さに沿って一定のままであり、前記テーパ部(117)内で、前記ねじ輪郭は、前記主要部(115)の前記ベース面(108)に対して一定のままであって、前記テーパ部(117)内で、前記ねじ(109)は徐々に、テーパ状の前記ベース面(108)に沈んでいる、請求項2に記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項4】
前記テーパねじ(119)は、少なくとも2回転わたって延びている、請求項1からのいずれかに記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項5】
前記テーパ部(117)の全長にわたって、前記ベース面(108)は、一定のテーパ角(γ)で径方向内側にテーパ状になっている、請求項1からのいずれかに記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項6】
前記テーパ部(117)内の前記ベース面(108)の前記テーパ角(γ)は、前記ねじ(109)の前記歯冠フランク(112)のテーパ角(α)未満である、請求項に記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項7】
前記長手方向の断面で見たときに、前記ねじ部分(107、307)の前記主要部(115)の前記長さに沿って、隣接する根尖フランク及び歯冠フランク(112、114)の間で前記根尖フランク及び前記歯冠フランクの径方向外端において充分に湾曲した移行部が存在し、
前記ねじ頂点(116)の前記長手方向の断面は、隣接する根尖フランク及び歯冠フランク(112、114)の間で前記根尖フランク及び前記歯冠フランクの径方向内端において充分に湾曲した移行部が存在するように、少なくとも前記主要部(115)の前記長さに沿って湾曲している、請求項1からのいずれかに記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項8】
前記インプラントは、射出成形によって製造される、請求項1からのいずれかに記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項9】
前記インプラントは、前記長手方向の中心軸線(LA)に沿って、根尖端(103)から歯冠端(102)に延びており、前記止まり穴(104、304)は、前記インプラントの歯冠端面(105)で開放されており、
前記長手方向に測定される前記止まり穴(104、304)の前記長さは、前記インプラントの前記軸方向の長さの70%よりも大きい、請求項1からのいずれかに記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項10】
前記止まり穴(104、304)は、前記ねじ部分(107、307)の根尖側に、前記ねじ部分(107、307)の根尖端から前記穴(104、304)の根尖端(144、344)に延びる非ねじ端部分(140、340)を更に備える、請求項1からのいずれかに記載のセラミック歯科インプラント。
【請求項11】
歯科インプラント(100、300)を製造する方法であって、
セラミック射出成形用の型を提供するステップであって、前記型は、
長手方向の中心軸線(LA)に沿って延びており、ねじ部分(207)を有する、ピン(200)を備え、前記ねじ部分(207)は、
ベース面(208)を備え、ねじ(209)は、前記ベース面(208)から径方向外側に突出しており、前記ベース面(208)は、前記長手方向の中心軸線(LA)から測定される前記ねじ(209)の最小半径(RMIN)を定め、前記ねじ(209)は、頂点(216)によって径方向外端で接続された歯冠フランク(212)及び根尖フランク(214)を有し、前記頂点(216)は、前記長手方向の中心軸線(LA)から測定される前記ねじ(209)の最大半径(RMAX)を定め、前記ねじ(209)は、前記ねじ部分(207)の軸方向の長さに沿って螺旋状に延びており、前記ベース面(208)と前記頂点(216)との間の半径の差によって定められる深さを有し、前記ねじ部分(207)は、
主要部(215)であって、前記主要部(215)内で、前記ねじ(209)の前記最大半径(RMAX)は、前記主要部(215)の前記長さに沿って一定のままである、前記主要部(215)と、
前記主要部(215)に対して根尖側に隣接するテーパ部(217)であって、前記テーパ部(217)内で、前記ねじ(209)の前記最大半径(RMAX)は、前記主要部(215)における前記ねじ(209)の前記最大半径(RMAX)から、前記テーパ部(217)の根尖端における前記ねじ(209)の前記最小半径(RMIN)まで、根尖方向に減少しており、前記テーパ部(217)は、ねじ深さが徐々に減るテーパねじ(219)を形成するように、ねじピッチよりも大きい軸方向の長さにわたって延びており、前記テーパねじ(219)は、複数回のねじの回転にわたって延びている、前記テーパ部(217)と、
を備える、ステップと、
セラミック射出成形を使用して歯科インプラントを製造するために、前記型を使用するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料で作られ、雌ねじ穴を有する歯科インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラントは、患者の口内の1本以上の歯を置換するために使用される。当該歯科インプラントは通常、患者の顎骨に挿入されるアンカー部と、歯肉を通じて患者の口腔内に延びるアバットメント部と、を備え、ここで、当該アバットメント部は、最終補綴物(例えば、クラウン、ブリッジ、総義歯)に中核となる支持を提供する。
【0003】
アンカー部及びアバットメント部は、単一の一体型ピースとして提供され得るが、より一般的には、ねじ留め、接着、圧縮適合などを介して共に接続される別々の構成要素として提供される。このようなインプラントシステムは通常、「2部品」又は「2ピース」のインプラントと称され、分離して通常、アンカー部は「インプラント」又は「フィクスチャ」と称され、アバットメント部は「アバットメント」又は「ポスト」と称される。
【0004】
2ピースのインプラントのアンカー部は通例、骨に完全に、すなわち歯槽頂の高さまで埋め込まれるか、又は歯槽頂から軟組織内に数ミリメートル突出する。骨に完全に挿入されることが意図されるアンカー部は通常、「ボーンレベル」インプラントと称される一方、軟組織内に延びることが意図されるものは通常、「ティッシュレベル」インプラントと称される。アバットメントは、様々な既知の手段のうちの1つを介してアンカー部に対して直接的に又は間接的に取り付けられ得る。最も一般的には、アバットメントは、アンカー部に対して、接着して結合されるか又はねじで固定される。後者の場合、通常、アンカー部は、雌ねじを有する長手方向に延びる止まり穴を備える。次いで、アバットメント又は別の構成要素は、アンカー部の雌ねじに固定されるスクリューによって、アンカー部に固定され得る。
【0005】
アンカー部及びアバットメント部が一体的に形成された1ピースの歯科インプラントはまた、インプラントへの歯科システム(例えば、補綴物、ヒーリングキャップなど)の他の構成要素のねじ取付を可能にするために、雌ねじ止まり穴を備え得る。
【0006】
本発明は、1ピース及び2ピースのインプラントシステムの両方に適用され得る。したがって、本明細書の残りの部分について、「インプラント」への参照は、これが一体的なアバットメントを含むかどうかに関わらず、骨への少なくとも部分的な挿入及び骨とのオッセオインテグレーション(osseointegration)が意図されるシステムの構成要素を指す。
【0007】
現在使用されている大多数の歯科インプラントは、チタン又はその合金で作られている。このような材料は、オッセオインテグレーションのために充分な生体適合性を有するだけでなく、インプラントがその寿命の間に受ける噛む力に耐えるのに必要な強度を有する。
【0008】
しかしながら、審美的な観点から、チタンのインプラントは、暗い色であり、したがって自然な歯の色と整合しないという欠点を有する。
【0009】
インプラントの寿命の間、歯肉、そして顎骨も多くの場合衰える。この結果として、歯科インプラントは、見える状態となり得、それが暗い色であるため、視覚的に認知もできる。
【0010】
対照的に、セラミック材料の色は、より類似して自然な歯の色と整合する。加えて、体内に配置されるインプラント内の金属の使用を低減又は排除したいという消費者の要望が高まっている。したがって、ジルコニア及びアルミナなどのセラミック材料から形成される歯科インプラントを提供するための努力がなされている。
【0011】
しかしながら、金属と比較して、セラミックは、砕けやすい材料であり、破損を受けやすい。したがって、例えば、生産の過程で回転防止要素及びねじ山がセラミック材料内に形成されるときにインプラントシステムの部品が損傷した状態になるというリスクがある。加えて、使用中、材料の破損は、負荷のピークが生じる領域、例えば、アバットメント又は他の構成要素とインプラントとの間の接触エリアで生じ得る。
【0012】
特に、スクリューを用いたインプラントへのアバットメント又は他の構成要素の固定は、インプラントの雌ねじにおける応力集中につながり得、クラック形成をもたらし得る。
【0013】
金属と比較したセラミックの異なる材料特性を考慮するために、セラミックインプラントシステムの好ましい設計は、金属システムのものと異なり得る。
【0014】
特許文献1には、射出成形によって形成され、雌ねじを備えるセラミック歯科インプラントが記載されている。雌ねじは、丸みのある頂部及び窪みを有して、ねじ部のより高い安定性を保証する。
【0015】
特許文献2には、ねじが穴の下半分に配置された、長い止まり穴を有するセラミック歯科インプラントが示されている。止まり穴の長さの増加により、インプラント本体における応力がよりよく分配されると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第6,280,193号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2735279号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
セラミックで形成されたインプラントに固有の上述の問題を鑑みて、本発明の少なくとも好ましい実施形態によって達成される目的は、破損を受けにくい雌ねじを有するセラミックインプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、請求項1に記載される本発明の少なくとも好ましい実施形態によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0019】
第1の態様によると、本発明は、顎骨に埋め込むセラミック歯科インプラントを提供し、インプラントは、根尖端から歯冠端に延びている。インプラントは、止まり穴を有し、止まり穴は、インプラントの歯冠端に向けて開放されており、長手方向の中心軸線に沿って、根尖端に向けて延びている。止まり穴は、ベース面を有するねじ部分を備え、ねじは、ベース面から径方向内側に突出しており、ベース面は、長手方向の中心軸線から測定されるねじの最大半径を定め、ねじは、頂点によって径方向内端で接続された歯冠フランク及び根尖フランクを有し、頂点は、長手方向の中心軸線から測定されるねじの最小半径を定め、ねじは、ねじ部分の軸方向の長さに沿って螺旋状に延びており、ベース面と頂点との間の半径の差によって定められる深さを有する。ねじ部分は、主要部であって、主要部内で、ねじの最大半径は、前記主要部の長さに沿って一定のままである、主要部と、主要部に対して根尖側に隣接するテーパ部であって、テーパ部内で、ベース面は、主要部におけるねじの最大半径から、テーパ部の根尖端におけるねじの最小半径まで、根尖方向において径方向内側にテーパ状になっており、テーパ部は、ねじ深さが徐々に減るテーパねじを形成するように、ねじピッチよりも大きい軸方向の長さにわたって延びており、上記テーパねじは、複数回のねじの回転にわたって延びている、テーパ部と、を備える。
【0020】
慣例的な歯科用語によると、「根尖側」は、骨に向かう方向を指し、「歯冠側」は、歯に向かう方向を指す。したがって、構成要素の根尖端は、使用時に顎骨へ又は顎骨内に向けられた端であり、歯冠端は、口腔へ又は口腔内に向けられたものである。
【0021】
本明細書全体を通して使用される「歯冠フランク」及び「根尖フランク」という用語は、ベース面から止まり穴の長手方向の中心軸線に向けて延びるねじの面を指す。根尖フランクは、インプラントの根尖端に面する斜面(flank)として定められる。換言すれば、根尖フランクの歯冠端が頂点(crest)で見出され、根尖フランクの根尖端がベース面に配置されている。それとは対照的に、歯冠フランクは、インプラントの歯冠端に面する斜面として定められる。換言すれば、歯冠フランクの歯冠端がベース面に配置されており、歯冠フランクの根尖端が頂点で見出される。
【0022】
本明細書全体を通して使用される「ピッチ」という用語は、2つの隣接するねじ頂点間の軸方向の距離、換言すれば、完全な1回のねじの回転の軸方向の距離を指す。
【0023】
本発明によると、ねじ部分は、テーパ部を備え、テーパ部内で、ベース面は、根尖方向において径方向内側にテーパ状になっている。したがって、テーパ部におけるねじの最大半径は、主要部におけるねじの最大半径、すなわち主要部内のベース面の半径から、テーパ部の根尖端におけるねじの最小半径まで、根尖方向に減少する。結果として、最大ねじ半径及び最小ねじ半径が互いに等しくなるため、テーパ部の根尖端でねじがなくなる。全てのねじ半径は、穴の長手方向の中心軸線から測定される。本発明によると、テーパ部の軸方向の長さは、ねじのピッチよりも大きい。このように、ねじ深さ(すなわち、ベース面と頂点との間の距離)は、複数回のねじの回転にわたって徐々に低減され、ねじが緩やかにテーパ状に消失することになる。
【0024】
これは、止まり穴の任意のねじ部分が通例、広い円錐角を有する滑らかな円錐部分において急に終わる従来技術のインプラントと異なる。この円錐部分の面は通常、鋭角をもたらし、且つ1回転未満、通例、ねじの約半回転でねじをなくならせるように、ねじの斜面と交わっている。この鋭角は、セラミックインプラントで形成されると、インプラントのクラック及び破損につながり得る。
【0025】
止まり穴のねじ部分にテーパ部をその根尖端において設けることによって、このような鋭角が回避され得ることが見出された。これにより、システムから応力ポイントが除去され、インプラント内のクラック形成のリスクが低減される。
【0026】
本発明によると、ねじの最大半径は、ねじ部分のベース面によって定められる。ねじの最小半径は、頂点の径方向最内側ポイントによって定められ、任意の軸方向の場所におけるねじの深さは、その場所におけるベース面及び頂点の半径の差によって与えられる。
【0027】
好ましい実施形態では、ねじの最小半径は、少なくとも、ねじ部分の主要部の長手方向の全長に沿って一定である。したがって、このような実施形態では、主要部内で、ねじ深さ及びねじの最大半径は一定のままである。これにより、穴の生産が容易になり、使用中に均一な力の分配が提供される。
【0028】
一部の実施形態では、テーパ部内で、ねじの最小半径は、テーパ部内のねじ深さの低減がねじの最大半径及び最小半径の両方のテーパによってもたらされるように、根尖方向に徐々に増加し得る。しかしながら、ねじの最小半径がテーパ部の全長に沿って一定であることが好ましい。これにより、テーパ部の生産が容易になる。したがって、この好ましい実施形態によると、テーパ部内のねじ深さの漸進的な低減は、ベース面のテーパのみによってもたらされる。特に好ましい実施形態では、ねじの最小半径は、ねじ部分の全長にわたって一定のままである。
【0029】
ねじの最大半径及び最小半径、したがってねじ深さも、主要部の長さに沿って一定のままである実施形態では、ねじ輪郭が主要部の長さに沿って一定のままであることが更に好ましい。「ねじ輪郭」は、ねじの長手方向の断面、すなわち、穴の長手方向の中心軸線の複数のポイントを含む2次元平面の断面を意味する。均一な輪郭は、製造するのがより容易であり、スクリューとの一貫した力の相互作用を提供する。
【0030】
しかしながら、ねじ深さの低減が必要とされる結果として、テーパ部内で、ねじ輪郭を変える必要がある。少なくともいくつかの製造方法、例えば3Dプリントを使用して、ねじ輪郭の断面形状を維持する一方、その寸法をテーパ部の長さに沿って低減することが可能である。例えば、テーパ部内のねじ輪郭は、三角形状を有し得るが、三角形の寸法は、根尖方向に減少する。
【0031】
しかしながら、設計を単純にするために、テーパ部の長さに沿ってねじ輪郭の断面形状を変更するように、最初のねじ輪郭のエリア、例えば主要部のねじ輪郭を徐々に除去することによって、テーパ部内でねじ輪郭を変更することが好ましい。例えば、テーパ部内で、ねじ輪郭は、テーパ部の長さに沿って輪郭の径方向内側部分を徐々に除去すること、すなわち、頂点形状を変更することによって変更され得る。上記の三角形の例に戻って、本実施形態では、三角形の先端(頂点に配置された先端)は、テーパ部の長さに沿って徐々に除去される。本設計は、ねじが完全に削られて除去されるまでねじ頂点が徐々に「剃られている」という視覚的な印象を与える。
【0032】
しかしながら、テーパ部内で、ねじ輪郭は、輪郭の径方向外側部分を徐々に除去すること、すなわち、ベース面からねじの斜面への移行部を変更することによって変更されることが好ましく、ねじのこのエリアは、ねじ谷底(thread root)として既知である。上記の三角形の例を使用して、本実施形態では、三角形のベース(それはベース面と接触する)は、テーパ部の長さに沿って徐々に除去される。本設計は、ねじがテーパのベース面の下に「沈んでいる」という視覚的な印象を与える。
【0033】
テーパ部内で、ねじ輪郭のエリアが径方向外側部分及び内側部分の両方で徐々に除去され、その結果、ねじが頂点から剃られているようにも見え、同時に谷底(root)から沈んでいるようにも見えるように、これらのアプローチを組み合わせることも可能である。しかしながら、本発明の目的は、ねじ深さを漸進的に低減させることであるため、設計を単純にするために、通例、テーパ部内のねじ輪郭の内側部分又は外側部分のいずれかのみを徐々に除去することが好ましい。このように、頂点形状が変化しつつねじ谷底は一定のままであるか、又はねじ谷底の形状が変化しつつねじ頂点は一定のままである。
【0034】
ねじ輪郭を変更する上記の設計の可能性の全ては、テーパ部におけるねじの最小半径が一定のままであるか又は根尖方向に増加する実施形態で使用され得る。
【0035】
前述したように、好ましい実施形態では、ねじの最小半径は、テーパ部内で一定のままである。特に好ましい一実施形態では、テーパ部内で、ねじ輪郭は、主要部のベース面に対して一定のままであって、テーパ部内で、ねじは徐々に、テーパのベース面に沈んでいる。本実施形態は、テーパねじを達成するためにねじ輪郭の径方向外側部分を徐々に除去する例である。
【0036】
特に好ましい実施形態では、ねじ輪郭は、主要部の長さに沿って一定のままであって、この輪郭は、上述の設計概念のうちの1つに従ってテーパ部で徐々に除去される。
【0037】
本発明によると、テーパ部内で形成されたテーパねじは、少なくとも1回のねじの回転にわたって延びている。換言すれば、ねじ深さの漸進的な低減は、長手方向の中心軸線周りに360°を超えて延びるねじの部分にわたって生じる。これは、ねじのピッチよりも大きい軸方向の長さを有するテーパ部を設けることによって達成される。好ましくは、テーパねじは、少なくとも2回転、より好ましくは2~8回転、最も好ましくは4~6回転にわたって延びる。
【0038】
好ましくは、ねじは、0.2mm~0.5mmのピッチを有する。
【0039】
好ましくは、テーパ部は、ねじ部分の軸方向の長さの少なくとも4分の1にわたって、より好ましくは、ねじ部分の軸方向の長さの3分の1にわたって延びる。
【0040】
上述したように、本発明によると、ねじ部分のベース面は、ねじの最大半径を定める。換言すれば、ベース面は、ねじ部分の軸方向の長さに沿って各ポイントで最大半径を有するねじの全てのポイントを含む面である。これらのポイントを外挿することで、ベース面の形状を定める仮想面が与えられる。ねじ部分の主要部では、ねじの最大半径、したがってベース面の半径は一定のままである。したがって、主要部の長さにわたるベース面の形状は、円筒形である。
【0041】
本発明によると、テーパ部内で、テーパねじは、少なくとも部分的に、根尖方向における径方向内側のベース面のテーパによって形成されている。テーパ部内のベース面は、湾曲してテーパ状になり得る、すなわち、ベース面は、ベース面によって形成される形状が例えば球形又は卵形であるように半径についてテーパ状になり得る。しかしながら、好ましくは、テーパ部内で、ベース面はテーパ角で径方向内側にテーパ状である。したがって、このような実施形態でベース面によって形成される形状は、円錐形である。これにより、テーパ部の設計が単純になる。本発明の文脈で使用される「テーパ角」という用語は、穴の長手方向の中心軸線に対して問題となる面によって形成される角を指す。ベース面のテーパ角が小さくなるほど、テーパ部内で所与のピッチについてねじの回転の数が多くなる。より小さいテーパ角は、ベース面のより漸進的な内側へのテーパ、したがって、ねじ深さのより漸進的な低減をもたらす。
【0042】
ベース面のテーパ角は、テーパ部の長さに沿って一定でなくてもよい。例えば、テーパ部は、ベース面が第1のテーパ角を有する第1の部分と、ベース面が第1のテーパ角よりも大きい第2のテーパ角を有する第2の根尖部分と、を備え得る。しかしながら、好ましくは、テーパ部内のベース面のテーパ角は、テーパ部の全長にわたって一定である。これは、製造及び力の分配の両方の観点から有利である。
【0043】
特に好ましい実施形態では、テーパ部内のベース面のテーパ角は、20°未満、好ましくは10°未満、最も好ましくは約8°である。これらの角は、テーパを充分に漸進的にし、望ましい緩やかなねじ山の消失をもたらす。
【0044】
追加的に又は代替的に、テーパ部内のベース面のテーパ角は、好ましくは、ねじの歯冠フランクのテーパ角未満である。根尖フランク及び歯冠フランクのテーパ角は、同じであり得るか又は異なり得る。歯冠フランクのテーパ角未満のベース面のテーパ角を有することは、鋭角がフランク及びベース面の交差部で形成されないことを保証するのに非常に有利である。
【0045】
追加的に又は代替的に、テーパ部内で、ベース面と根尖フランク及び歯冠フランクの両方との間で形成された角が、鈍角、すなわち90°よりも大きいことが好ましい。したがって、これらの角が鋭くなって応力ポイントを生成することが防がれる。
【0046】
テーパ部の上述の好ましい構成は全て、個々に及び/又は組み合わさって、応力集中を防ぐか又は低減するねじの漸進的なテーパ状の消失の生成を補助する。
【0047】
前述したように、本発明によると、ねじ部分は、ベース面から径方向内側に突出したねじを備え、ねじは、頂点によって径方向内端で接続された歯冠フランク及び根尖フランクを備える。
【0048】
好ましくは、ねじは、50°~70°のねじ角を有する。本明細書で「ねじ角」という用語は、頂点で2つのフランクによって囲まれた角を指す。
【0049】
好ましくは、ねじ部分の主要部の長さに沿って、ねじのフランクとベース面との間に湾曲した移行部が存在する。このような湾曲した移行部は、穴内で鋭角を防ぎ、且つ応力集中及びクラック形成の可能性を低減するのに役立つ。特に好ましい実施形態では、長手方向の断面で見たときに、隣接する根尖フランク及び歯冠フランクの間で根尖フランク及び歯冠フランクの径方向外端において充分に湾曲した移行部が存在する。前述したように、「長手方向の断面」は、止まり穴の長手方向の中心軸線、すなわちこの軸線の複数のポイントを含む2次元平面で取られた断面を意味する。ねじ谷底におけるこのような充分に湾曲した移行部は、インプラントの内側のねじと、第2の部品又は固定スクリューの外側のねじとの間の張力を軽減する。このような実施形態では、ベース面は、湾曲した移行部に対して接している。湾曲した移行部は、楕円形又は長円形であり得るが、好ましくは、長手方向の断面で見たときに、移行部は、円弧の形状を有する。
【0050】
テーパ部内のベース面と根尖フランク及び歯冠フランクとの間の移行部はまた、主要部に関して上述したように湾曲し得る。これは、特に、ねじの径方向内側部分が徐々に除去されつつ、ねじ輪郭がねじ谷底で一定のままであるケースか、又は寸法が低減されつつ、ねじ輪郭の断面形状が一定のままであるケースである。しかしながら、上述したように、好ましい実施形態では、テーパ部内のねじ輪郭は、ねじ輪郭の径方向外側部分を徐々に除去することによって変更される。このような実施形態では、テーパ部内で、ベース面とねじフランクとの間の任意の湾曲した移行部は、好ましくは、最小限に、すなわち、製造許容差で必要なように維持される。
【0051】
少なくとも主要部の長さに沿って、ねじ頂点の輪郭、すなわち長手方向の断面は、例えば、平坦、鋭い、丸い、任意の既知の形状であり得る。クラック防止を補助するために、頂点の輪郭が湾曲していることが好ましく、隣接する根尖フランク及び歯冠フランクの間で根尖フランク及び歯冠フランクの径方向内端において充分に湾曲した移行部が存在することを意味する。湾曲した輪郭は、楕円形又は長円形であり得る。しかしながら、本発明の特に好ましい実施形態では、頂点輪郭は、円弧の形状を有する。上述したように、好ましい実施形態では、ねじ頂点はテーパ部において一定のままである一方、ねじ輪郭の径方向外側部分は徐々に除去される。加えて、一部の実施形態では、テーパ部におけるねじの断面形状は一定のままである一方、寸法は徐々に低減される。特に、このような実施形態では、頂点の長手方向の断面が湾曲し、好ましくは、ねじ部分の全長に沿って円弧の形状を有することが好ましい。
【0052】
このような湾曲した頂点輪郭は概して、機械加工によって形成されるねじで可能ではないが、インプラントが例えば射出成形又は3Dプリントを使用して製造される場合、可能である。
【0053】
したがって、特に好ましい実施形態では、インプラントは、射出成形によって製造される。セラミックインプラントは、例えば、フライス加工、成形、又は3Dプリントによって製造され得る。フライス加工又は3Dプリントされたインプラントは、止まり穴においてアンダーカットを伴って構成され得る一方、成形されたインプラントでは、型を離すことができないため、これは可能ではない。当業者は、成形されたインプラントと、フライス加工又は3Dプリントされたインプラントとを、その外形、型分離線、及び注入口により正確に区別し得る。
【0054】
射出成形によるインプラントの製作は、製造するのがより迅速であり且つ製作された構成要素の適合性を保証するのがより容易であるだけでなく、多量について費用効果が高いため、好ましい。加えて、上述したように射出成形は、湾曲した谷底に加えて、湾曲した頂点を有する雌ねじの形成を可能にし、これは、クラック形成及びインプラント破損を防ぐのに有利である。
【0055】
本発明に係るセラミックインプラントの製造は、粉末のセラミック材料を成形型内に注入することによるセラミック射出成形(CIM)法に従って達成され得る。それによって、セラミック材料は概して、粉末の材料として提供され、より充分な成形又は形成のためのバインダを含み、バインダは、好ましくは、形成後にそれを焼くことによって焼結の前に除去される。焼結は、最終的な形状及び硬度を提供する。当業者は、焼結中、インプラントは、材料及び製造プロセスに依存する因子によるが、通常、約25%縮むことを認識している。
【0056】
特に射出成形によって製造する場合であるが、他の製造方法を使用する場合も、インプラントは、好ましくは、HIP(熱間等方圧加圧)プロセスを使用して形成される。これにより、材料の密度を増加させることによってインプラントの強度が向上する。
【0057】
インプラントが射出成形を介して形成される場合、ねじ輪郭の径方向外側部分が、ねじ深さの必要な低減を形成するために、テーパ部内で徐々に除去されることが特に好ましい。これは、例えば、ねじ輪郭の径方向内側部分を除去するよりも、成形された止まり穴において、このような設計の実装がより容易であるためである。特に、テーパ部内で、ねじ輪郭は、主要部のベース面に対して一定のままであって、テーパ部内で、ねじは徐々に、テーパのベース面に沈んでいることが好ましい。
【0058】
本発明によると、ねじ部分は、インプラント内の止まり穴に配置されている。好ましくは、穴の根尖端は、穴における鋭いエッジ及び応力ポイントを防ぐために丸くなっている。ねじ部分は、止まり穴の全長にわたって延び得る。しかしながら、好ましい実施形態では、それは、止まり穴の一部のみにわたって延び、その結果として、生産の費用及び複雑性が低減される。特定の実施形態では、ねじ部分は、止まり穴の下半分、すなわち根尖側半分のみに存在する。結果として、接続スクリューの長さを増加させることができ、これにより、スクリューの可能な予め与えられた負荷(preload)の力が増加する。
【0059】
本発明によると、止まり穴は、長手方向の中心軸線に沿って延びている。止まり穴の長手方向の中心軸線は、インプラントの長手方向の中心軸線からずらされ得るが、止まり穴がインプラントの少なくとも一部と同軸であることが好ましい。例えば、一部のインプラントが、第1の長手方向の中心軸線に沿って延びる歯冠部分と、第2の長手方向の中心軸線に沿って延びる根尖部分と、を備え、第1及び第2の軸線には互いに対して角度が付けられているように、一部のインプラントには角度が付けられている。このような場合、止まり穴は、好ましくは、インプラントの歯冠部分又は根尖部分のいずれかと同軸である。角度が付いたインプラントの根尖部分と同軸である場合、止まり穴開口は、インプラントの歯冠端面に配置されないが、インプラントの歯冠端から穴にアクセスできるようにインプラントの歯冠端に向けて開放されている。
【0060】
しかしながら、ほとんどのインプラントは、単一の長手方向の中心軸線に沿って、その根尖側から歯冠端に延びている。このような場合、止まり穴は、インプラントの歯冠端に向けて開放されているだけでなく、その開口は、インプラントの歯冠端面に配置されている。好ましくは、止まり穴は、インプラントの長手方向の中心軸線と同軸である。換言すれば、好ましくは、インプラントは、長手方向の中心軸線に沿って、根尖端から歯冠端に延びており、止まり穴は、インプラントの歯冠端面で開放されており、上記長手方向の中心軸線に沿って根尖端に向けて延びている。このような場合、穴の長手方向の中心軸線は、インプラントの長手方向の中心軸線と同一である。
【0061】
このような好ましい実施形態では、長手方向に測定される止まり穴の長さは、インプラントの軸方向の長さの好ましくは70%よりも大きい、より好ましくは75%よりも大きい、最も好ましくは少なくとも80%である。これは、標準的なチタンのインプラントで見出される穴よりも長い。インプラントの長さに対して止まり穴の長さが長くなるほど、インプラントの質量分配がより均衡した状態になる。標準的なインプラントでは、止まり穴よりも下のインプラントの根尖端は通常、中実であり、より多い質量をもたらす。穴内でスクリューに張力をかけると、この根尖側の質量は、インプラント内でより大きい歪みを生成する。より長い穴は、インプラントの根尖端で質量を低減し、その結果、使用中の歪みを低減する。これは特に、材料の砕けやすい性質を考慮すると、セラミックインプラントで有利である。加えて、インプラントのセラミック量の低減は、特に3Dプリント及び射出成形法に関して、セラミック材料内の欠陥の可能性を低減する。
【0062】
これらの利点は、穴がインプラントの根尖部分に配置された角度が付いたインプラントにも存在する。したがって、このような実施形態では、長手方向に測定される止まり穴の長さは、インプラントの根尖部分の軸方向の長さの好ましくは70%よりも大きい、より好ましくは75%よりも大きい、最も好ましくは少なくとも80%であることが好ましい。
【0063】
上述したように、ねじ部分が、止まり穴の全長にわたって延びないことが好ましい。更に、ねじ部分が、穴の根尖端まで延びないことが好ましい。したがって、止まり穴が、ねじ部分の根尖側に、ねじ部分の根尖端から穴の根尖端に延びる非ねじ端部分を更に備えることが好ましい。これは特に、より長い穴の長さが使用される、すなわち、止まり穴が、インプラント(又は角度が付いたインプラントの根尖部分)の長さの少なくとも70%の長さを有する実施形態で有利である。このような非ねじ端部分は、穴を長くする一方、設計の単純性を維持し、且つ全てのインプラント長さで同じスクリュー長さを使用することを可能にする。
【0064】
穴内のねじ部分の位置が、インプラントと共に使用され得るスクリューの長さを決定するので、インプラントの様々な長さで、止まり穴の歯冠端に対するこのねじ部分の位置は通常、一定のままである。これにより、全てのインプラント長さで標準的なスクリュー長さを使用することができる。したがって、様々な長さのインプラント間で、非ねじ端部分の長さは通常、インプラントの所望の長さにわたって穴を延ばすために変えられる。
【0065】
好ましくは、非ねじ端部分は、テーパ部の長さの少なくとも3分の1の軸方向の長さ、より好ましくは、テーパ部の長さの3分の1~3倍の長さを有する。
【0066】
非ねじ端部分は、円筒形、湾曲、若しくは円錐形、又はこれらの形状の組合せであり得る。一部の実施形態では、非ねじ端部分の形状は、非ねじ端部分の軸方向の場所におけるインプラントの外面の形状と一致し、その結果、インプラントは、非ねじ端部分の長さにわたって実質的に一定の壁厚さを有する。したがって、インプラントの外面がその根尖端でテーパ状になっている場合、穴の非ねじ端部分も同様にテーパ状になっていることが好ましい。代替的に、インプラントが平行壁(円筒形)インプラントである場合、非ねじ端部分が円筒形であることが好ましい。
【0067】
インプラントが射出成形によって製造される場合、ほぼ一定の壁厚さは、射出成形中のフィードストックの流れを向上させる。したがって、このような実施形態では、上述したように、止まり穴の任意の非ねじ端部分が、非ねじ端部分の軸方向の場所におけるインプラントの外面の形状と一致することが特に好ましい場合がある。しかしながら、多くの場合、止まり穴の根尖端が狭くなりすぎないことを保証するために折衷が必要である。穴を形成するために使用される型ピンが細すぎる場合、これは、射出成形プロセス中に振動し得る。したがって、特定の好ましい実施形態では、非ねじ端部分は、存在する場合、ねじ部分のテーパ部のテーパ角以下である(穴の長手方向の中心軸線に対する)テーパ角を有する。これは、穴の最適な長さ及び直径の提供を補助する。追加的に又は代替的に、テーパ部がテーパ角を備えるかどうかに関わらず、好ましい実施形態では、非ねじ端部分は、1°未満、より好ましくは約0.5°のテーパ角を有する。この小さいテーパ角は、型の分離も補助しつつ、長い穴の長さであっても穴の根尖端が細くなりすぎるのを防ぐ。型の分離を補助するために小さいテーパ角を設けることは、平行壁インプラント及び根尖側にテーパ状のインプラントで有利である。
【0068】
好ましい実施形態では、歯科インプラントは、ねじ部分の歯冠側に回転防止要素を更に備える。回転防止要素は、止まり穴の長手方向の中心軸線に対して垂直な平面内で非円形対称断面を有する。この回転防止要素は、止まり穴内又はインプラントの外部の面上に形成され得る。インプラントの回転防止要素は、例えば、楕円形、多角形、トルクス(登録商標)、一連の交互の凹凸などの任意の既知の形状であり得る。好ましくは、止まり穴は、ねじ部分の歯冠側に回転防止要素を備える。
【0069】
補完的な形状の回転防止要素を有するアバットメント、クラウンなどの協働する第2の構成要素がインプラントに接続される場合、2つの回転防止要素の軸方向のアライメントは、穴の長手方向の中心軸線周りの第2の構成要素及びインプラントの相対的な回転を防ぐ。存在する場合、インプラントの回転防止要素は、顎骨でインプラントを固定するために好適な挿入ツールについてのトルク伝達手段としても機能し得る。この目的のために、既知の方法で、対応して形成された挿入ツールの自由端には、ねじりモーメントを歯科インプラントに伝達するために、インプラントの回転防止要素との解放可能な噛み合いがもたらされ得る。
【0070】
インプラントの止まり穴は、ねじ部分とのスクリュー接続を介したインプラントへの第2の構成要素(例えば、アバットメント、ヒーリングキャップなど)の接続を可能にするように意図される。第2の構成要素をインプラントに固定して接続するために、第2の構成要素は、インプラントの止まり穴のねじ部分の主要部と噛み合うように意図された外側のねじを備え得る。代替的に、第2の構成要素は、貫通孔を備えてもよく、固定スクリューは当該貫通孔から挿入され得、その結果、スクリューの根尖端は、第2の構成要素の根尖端から突出し、インプラント穴のねじ部分と噛み合い得る。
【0071】
例えば、スクリュー溝を有するアバットメントは、インプラントの止まり穴に挿入されるように設計された根尖端を有し得る。固定スクリューは、アバットメントのスクリュー溝を通じて挿入され、上からアバットメントのスクリュー溝内に導入されるツールによってインプラントの雌ねじ内に進められ、それによって、アバットメント及びインプラントを固定して接続し得る。アバットメントの根尖端は、インプラント及びアバットメントの相対的な回転を防ぐため、その外面上の回転防止要素、例えば、止まり穴で提供される補完的な回転防止要素、例えば、多角形部分との軸方向のアライメントがもたらされ得る多角形断面を有する部分を含んでもよい。
【0072】
好適な固定スクリューは、金属、好ましくはチタン又はチタン合金から既知の方法で製造され得る。これは、上記の材料が優れた安定性、生体適合性、及び滅菌性を保証するためである。金属材料の追加の利点は、当該金属材料が、ある弾性を含み、スクリューがねじ込まれるとその長手方向の軸線に沿って弾性的に、最小限に広がる結果として、固定スクリューの保持力が増加することである。次いで、その広がりに起因する張力は、歯科インプラントと第2の構成要素との間に、特に頑丈な接続をもたらす。他の実施形態では、例えば、フライス加工によって製造されたセラミック又はポリマーのスクリューが使用され得る。これは、金属フリーの歯科インプラントの消費者の要望を満たすのに有利である。
【0073】
特定の好ましい実施形態では、インプラントの止まり穴は、ねじ部分、存在する場合、円形対称非ねじ部分の歯冠側に、回転防止要素を更に備える。この非ねじ部分は、長手方向にテーパ状であってもよく又は非テーパ状であってもよく、インプラントと第2の構成要素との間に、より深い、したがってより安定した接続を提供するように機能する。
【0074】
好ましくは、歯冠側の円形対称非ねじ部分は、円筒形である。しかしながら、他の実施形態では、歯冠側の円形対称非ねじ部分は、円錐形であってもよく、インプラントと第2の構成要素との間に、優れたシール、例えばモールステーパの生成を補助し得る。代替的な好ましい実施形態では、歯冠側の円形対称非ねじ部分は、複数の円錐形及び/又は円筒形セグメントを備える。これらは、任意の順序で配置され得る。例えば、歯冠側の円形対称非ねじ部分は、1つ以上の円錐形セグメントが歯冠側に続く円筒形セグメントを備え得る。複数の円錐形セグメントが存在する場合、これらは、連続して、又は1つ以上の円筒形セグメントと交互に配置され得る。円筒形及び円錐形セグメントは、軸方向の異なる長さを有し得、円錐形セグメントはまた、異なるテーパ角を有し得る。
【0075】
歯科インプラントの外面は、好ましくは、少なくともその長さの一部にわたって根尖方向にテーパ状になっており、テーパは、少なくともインプラントの根尖側半分で現れる。
【0076】
インプラントは、好ましくは、顎骨内にインプラントを固定する雄ねじを備え、当該雄ねじは、インプラントの外面から突出しており、その長さの少なくとも一部にわたって延びている。雄ねじは、顎骨における歯科インプラントの主要な又は直接的な固定に役立つ。それによって、雄ねじは、歯科インプラントの全長にわたって延び得る。これに対する代替として、雄ねじは、歯科インプラントの全長の少なくとも50%にわたって、好ましくは歯科インプラント長さの少なくとも75%にわたって延びてもよく、ねじは、根尖端で、又は根尖端の近く(例えば、1mm以内)で始まる。雄ねじは、任意の既知の形状を有し得、1つ以上のセルフタッピング溝を備え得る。雄ねじのねじ深さは、一定のままであり得るか、又はインプラントの長さにわたって変えることができる。その歯冠端で、歯科インプラントの外面は、雄ねじの歯冠側にねじ無部分を備え得る。
【0077】
オッセオインテグレーションを向上させるために、骨に配置するように意図される歯科インプラントの部分は、任意の既知の技術に従って粗くされた外部の面を有し得るか、又は別の既知の方法、例えばコーティングで面処理され得る。「外部の面」は、外面、存在する場合、雄ねじを意味する。
【0078】
好ましい実施形態によると、本発明に係る複数のインプラントが提供され、複数のインプラントは、軸方向に異なる長さを有する。止まり穴の歯冠端に対する各インプラントの止まり穴内のねじ部分の位置は一定である。各インプラントの止まり穴は、好ましくは、ねじ部分の根尖端から止まり穴の根尖端に延びる非ねじ端部分を更に備え、非ねじ端部分の軸方向の長さは、より長い軸方向の長さを有するインプラントが、より長い非ねじ端部分を有するように、インプラント間で異なっている。
【0079】
本発明は更に、射出成形によって上述の歯科インプラントを製造する方法に関し、止まり穴のねじ部分の反対の型枠としてピンが使用される。これは、ピンの外側形状が、止まり穴のねじ部分の内側形状に対応するが、焼結後のセラミックの収縮率を考慮に入れた、ねじを備えることを意味する。したがって、ピン寸法は、最終的なインプラント寸法よりも約25%大きい。
【0080】
したがって、別の態様によると、本発明は、歯科インプラントを製造する方法を提供し、当該方法は、セラミック射出成形用の型を提供するステップであって、型は、長手方向の中心軸線に沿って延びており、ねじ部分を有する、ピンを備え、ねじ部分は、ベース面を備え、ねじは、ベース面から径方向外側に突出しており、ベース面は、長手方向の中心軸線から測定されるねじの最小半径を定め、ねじは、頂点によって径方向外端で接続された歯冠フランク及び根尖フランクを有し、頂点は、長手方向の中心軸線から測定されるねじの最大半径を定め、ねじは、ねじ部分の軸方向の長さに沿って螺旋状に延びており、ベース面と頂点との間の半径の差によって定められる深さを有し、ねじ部分は、主要部であって、ねじの最大半径が、主要部の長さに沿って主要部内で一定のままである、主要部と、主要部に対して根尖側に隣接するテーパ部であって、テーパ部内で、ねじの最大半径が、主要部におけるねじの最大半径から、テーパ部の根尖端におけるねじの最小半径まで、根尖方向に減少しており、テーパ部は、ねじ深さが徐々に減るテーパねじを形成するように、ねじピッチよりも大きい軸方向の長さにわたって延びており、上記テーパねじは、複数回のねじの回転にわたって延びている、テーパ部と、を備える、ステップと、セラミック射出成形を使用して歯科インプラントを製造するために、上記型を使用するステップと、を含む。
【0081】
好ましくは、ピンのねじは、少なくとも主要部の長さに沿って、ベース面と根尖フランク及び歯冠フランクとの間に、湾曲した移行部を備える。好ましくは、長手方向の断面で見たときに、移行部は、円弧の形状を有する。追加的に又は代替的に、ピンのねじは、少なくとも主要部の長さに沿って、好ましくは円弧の形状を有する湾曲した長手方向の断面を有する頂点を備える。
【0082】
ピンのねじ部分の更に好ましい特徴は、インプラントのねじ部分の好ましい特徴に対して補完的である。例えば、ピンのテーパ部内のねじ輪郭は、輪郭の径方向外側部分を徐々に除去することによって変更されることが好ましい。追加的に又は代替的に、ねじの最小半径がねじ部分の長さに沿って一定のままであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
ここで、本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して例示としてのみ記載される。
図1A図1Aは、当該技術分野で既知のインプラントの長手方向の断面を示す。
図1B図1Bは、図1Aのねじ部分の拡大を示す。
図1C図1Cは、図1A及び図1Bからの詳細Yを示す。
図2A図2Aは、本発明の好ましい実施形態に係るインプラントの長手方向の断面を示す。
図2B図2Bは、図2Aのねじ部分の拡大を示す。
図2C図2Cは、図2Bからの詳細Yを示す。
図2D図2Dは、射出成形法によって図2Aのインプラントを製造するピンを示す。
図3図3は、本発明によるインプラントの代替的な好ましい実施形態を示す。
図4A図4Aは、テーパ部内のねじ輪郭の代替的な設計の概略図を示す。
図4B図4Bは、テーパ部内のねじ輪郭の代替的な設計の概略図を示す。
図4C図4Cは、テーパ部内のねじ輪郭の代替的な設計の概略図を示す。
図4D図4Dは、テーパ部内のねじ輪郭の代替的な設計の概略図を示す。
図4E図4Eは、テーパ部内のねじ輪郭の代替的な設計の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1Aは、従来技術を表すインプラント1を示す。インプラント1は、第2の構成要素、例えばアバットメント(図示せず)と共に使用するように構成されており、長手方向の中心軸線LAに沿って根尖端3から歯冠端2に延びている。インプラント1は、止まり穴4を含み、止まり穴4は、歯冠端2で開放され、インプラント1の歯冠端面5によって囲まれており、歯冠端面5は、穴開口6を径方向に囲っている。止まり穴4は、インプラント1と同軸であり、したがって、それはまた、長手方向の中心軸線LAに沿って延びる。インプラント1の外面には、インプラント1を患者の顎骨にねじ込むための雄ねじ32が設けられている。
【0085】
止まり穴4は、止まり穴4の根尖端に向けて配置されたねじ部分7を備える。ねじ部分7は、ベース面8を備え、ねじ9は、ベース面8から穴4内へ径方向内側に(すなわち、長手方向の中心軸線LAに向けて)突出している。図1Bでも詳細に示されているように、ねじ9は、頂点16によって径方向内端で接続された歯冠フランク12及び根尖フランク14を有し、ねじ部分7の長さに沿って螺旋状に延びている。図1Bに示されているように、ベース面8は、ねじ9の最大半径RMAXを定める一方、頂点16は、最小半径RMIN定め、任意の所与のポイントでの最大半径と最小半径との差は、ねじ深さTを与える。
【0086】
ねじ部分7の根尖端で、非ねじ円錐形部分10は、ねじ9と交わっている。これは、図1Cで詳細に示されている。この図で分かるように、円錐形面10は、鋭角で根尖フランク14と交わって、穴において細く鋭いエッジ18を形成している。これは、応力集中ポイントを生成している。インプラント1がセラミックで作られている場合、このような鋭いエッジ18は、クラック形成及びインプラント破損につながり得る。この図でも分かるように、頂点16は、長手方向の断面で見たときに平面形状を有する。このような頂点は、インプラントをフライス加工するときに形成される最も単純な形状であるが、セラミックインプラント内で問題となる応力集中にもつながり得る。
【0087】
図2Aは、本発明によるインプラント100を示す。インプラント100は、セラミック材料、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、若しくは酸化マグネシウム、又はこれらの組合せなどのアルミニウム、ジルコニウム、又はマグネシウムベースのセラミック材料で作られている。加えて、酸化イットリウム又は酸化セリウムなどの安定化剤がセラミック材料に含まれ得る。
【0088】
上述の従来技術のインプラント1と同様に、本発明のインプラント100は、長手方向の中心軸線LAに沿って根尖端103から歯冠端102に延びている。インプラント100は、同軸の長手方向に延びる止まり穴104を含み、止まり穴104は、歯冠端102で開放されており、軸線LAに沿って根尖端103に向けて延びている。止まり穴104は、ベース面108を有するねじ部分107を備え、ねじ109は、ベース面108から穴104内へ径方向内側に突出している。ねじ109は、頂点116によって径方向内端で接続された歯冠フランク112及び根尖フランク114を有する。ねじ109は、ねじ部分107の長さに沿って螺旋状に延びている。ベース面108は、ねじ109の最大半径RMAXを定める一方、頂点116は、最小半径RMIN定め、任意の所与のポイントでの最大半径と最小半径との差は、ねじ深さTを与える(図2Bを参照)。
【0089】
従来技術のインプラントとは対照的に、インプラント100のねじ部分107は、主要部115と、主要部115に対して根尖側に隣接したテーパ部117と、を備える。主要部115内のねじ109の最大半径RMAXは、一定のままである一方、テーパ部117内では、ベース面108は、主要部115におけるねじ109の最大半径RMAXから、テーパ部117の根尖端におけるねじ109の最小半径RMINまで、根尖方向において径方向内側にテーパ状になっており、テーパ部117は、複数回のねじの回転にわたって延びてねじ深さTが徐々に減るテーパねじ119を形成するように、ねじピッチよりも大きい軸方向の長さにわたって延びている。ベース面108の径方向内側のテーパは、図4B図4Eで更に明確に見える。テーパのベース面108には、複数回のねじの回転にわたって徐々に減少するねじ深さTが形成され、ねじ109が緩やかに消失する。したがって、ねじ109が急に断たれることがなく、従来技術(図1Cを参照)で見出される鋭いエッジ18の形成が防がれる。したがって、クラック形成をもたらし得る穴内の応力ポイントが除去される。
【0090】
図2Bは、ねじ部分107の拡大を示す。拡大図は、どのようにテーパのベース面108が、長手方向の中心軸線LAから測定されるテーパ角γで径方向内側にテーパ状になっているか、したがって、円錐形状を形成しているかを示す。テーパ角γは、テーパ部117の長さにわたって一定のままである。本実施形態では、テーパ角γは、8°である。この角は、長手方向の中心軸線LAから測定される歯冠フランク112のテーパ角αよりも小さい。図2Cで最もよく分かるように、テーパベース面108と根尖フランク114及び歯冠フランク112の両方との間で鈍角が形成されている。テーパ角γは、ねじの消失が3回よりも多くのねじの回転にわたって生じるように選択されている。
【0091】
主要部115内で、最大半径RMAXは一定のままであり、円筒形状を有するベース面108が形成される。加えて、ねじ109及びねじ輪郭の最小半径RMINも一定のままであり、使用時に均一な力の分配を提供する。
【0092】
テーパ部117内で、最小半径RMINは一定のままであり、その結果、溝深さの低減は、ベース面108のテーパのみによってもたらされる。ねじ輪郭は、主要部115のベース面に対して一定のままである。このように、ねじ109は、ねじ谷底121から頂点116に向けてテーパのベース面108に徐々に沈んでいる。
【0093】
テーパねじ119の代替的な設計は、図4A図4Eを参照して概略的に示される。図4Aは、ねじ部分の主要部で形成され得るような均一なねじ輪郭を有するねじ400の長手方向の断面を示す。ねじ400は、ベース面408から延びており、頂点416によって接続された根尖フランク414及び歯冠フランク412を有する。図4B図4Eは、この基本的なねじ輪郭がテーパねじを形成するように変更され得る様々な方法を示す。
【0094】
図4Bは、ねじ400の断面形状を維持する一方、その寸法を徐々に低減することによって、どのようにねじ深さが低減され得るかを示す。図4Cは、輪郭の径方向内側部分を徐々に除去することによって、どのように図4Aのねじ輪郭が変更され得るかを示す。このように、ねじ頂点416はねじの長さに沿って変化する一方、ベース面408からフランク414、412への移行部は一定のままである。図4Dで、図4Aのねじ輪郭は、輪郭の径方向外側部分を徐々に除去することによって変更される。このように、ねじ頂点416は一定のままである一方、ベース面408からねじフランク414、412への移行部は変更される。図4C及び図4Dの両方で、三角形のねじ輪郭のエリアは徐々に除去され、この除去は、ねじ頂点又はねじ谷底のいずれかで現れる。材料がねじ頂点(輪郭の径方向内側部分)から除去される場合、これは、ねじが完全に削られて除去されるまでねじ先端が「剃られている」という視覚的な印象を与える(図4Cを参照)。材料がねじ谷底(輪郭の径方向外側部分)から除去される場合、これは、ねじがベース面の下に「沈んでいる」という視覚的な印象を与える(図4Dを参照)。したがって、テーパ部117の設計は、この形態の輪郭変更の一例である。
【0095】
図4B図4Dでは、ねじ400の最小半径は一定のままであるが、最小半径が根尖方向に増加することも可能である。これは、図4Eに示されている。図4Eでは、ねじ輪郭の内側部分及び外側部分の両方が徐々に除去されており、その結果、ねじは、頂点から剃られているようにも見え、同時に谷底から沈んでいるようにも見える。
【0096】
図4B図4Eに示されるねじ設計の各々は、本発明のテーパねじを提供するために、ねじ深さが徐々に低減されることを可能にする。
【0097】
図2A図2Cに示されるインプラントに戻って、頂点116は、湾曲して、ねじ部分107の全長にわたって長手方向の断面で円弧を形成している。加えて、主要部115内で、ねじ谷底121として既知である(図2Bを参照)、ベース面108での根尖114及び歯冠112のフランク間の移行部も、長手方向の断面で円弧を形成している。フランク間のこれらの丸みのある谷底121及び頂点116は、ねじ109のこれらの狭いエリアでの応力集中を防ぐ。丸みのある谷底121は、フライス加工によって形成されるインプラントのベース面108で可能であるが、従来のフライス加工技術によって丸みのある頂点116を形成することはできない。これは、頂点16が長手方向の断面で平面である、図1のインプラント1で分かる。丸みのある頂点116を形成するために、インプラント100は、3Dプリント又は射出成形される必要がある。射出成形での使用に好適であり、インプラント100のねじ部分107を形成するために使用され得るピン200が図2Dに示されている。
【0098】
図2Dのピン200は、型に配置され、ここで、当該型は、製造されるインプラントの外部形状に対応する中空の内部空間を有する。ピン200は、インプラント100のねじ部分107の形状の反対の型枠を備え、将来のインプラント100内のねじ部分107の内側形状に対応する外側形状を当該反対の型枠が有することを意味する。ピン200の寸法は、セラミックインプラント製造の焼結ステップの間に生じる収縮を考慮するために、完成したねじ部分107の所望の寸法よりも約25%大きい。インプラントの穴104が、追加の特徴、例えば回転防止要素を含む場合、所望の追加の特徴に対応するカラー(collar)が、製造される穴104の内部形状を好適に修正するためにピン200の周囲に配置される。セラミック材料が、ピン200の周囲で型に注入される。これにより、型から除去され得る固体の安定した素地が製造され、本体からピン(任意でカラー)を除去すると、本発明による図2Aに示されるようなインプラントが焼結を通じて取得され得る。
【0099】
ピン200は、軸222を含み、軸222は、長手方向の中心軸線LAに沿って根尖端203から歯冠端202に延びており、外側のねじ部分207を含む。ねじ部分207は、ベース面208を備え、ねじ209は、ベース面208から径方向外側に突出している。このように、インプラントの最終的なねじ109とは対照的に、ベース面208は、ねじ209の最小半径RMINを定める。ねじ209は、頂点216によって径方向最外側ポイントに接続された歯冠フランク212及び根尖フランク214を有し、頂点216の最外側ポイントは、ねじ209の最大半径RMAXを定める。ピン200が反対の型板であるため、ピン200の根尖フランク214は、インプラント100の歯冠フランク112についての形状を提供する一方、ピン200の歯冠フランク212は、インプラント100の根尖フランク114についての形状を提供する。同様に、ピン200の頂点216は、インプラント100のベース面108及び谷底121を定める一方、ピン200のベース面208は、インプラント100の頂点116を定める。
【0100】
ピン200のねじ部分207は、主要部215と、主要部215に対して根尖側に隣接したテーパ部217と、を備える。主要部215内で、ねじ209の最大半径RMAXは一定のままである。テーパ部217内で、最大半径RMAXは、主要部215の最大半径RMAXから、テーパ部217の根尖端におけるねじ209の最小半径RMINまで、根尖方向に減少する。テーパ部217は、ねじピッチよりも大きい軸方向の長さにわたって延び、その結果、テーパねじ219が、複数回のねじの回転にわたって延びるテーパ部217内で形成される。
【0101】
ピン200のテーパ部217内の頂点216の形状は、製造されるインプラント100のテーパ部117のベース面108の所望の形状を反映する。したがって、本実施形態では、頂点216は、約8°のテーパ角で径方向内側にテーパ状になっており、円錐形面を形成している。
【0102】
図2Aに示されるインプラント100は、第2の構成要素、例えば、アバットメント(図示せず)又は直接的な接続の補綴物と共に使用するように構成されている。追加的に、ヒーリングキャップ又はインプレッションポストなどのアバットメントの接続の前に、一時的な第2の構成要素がインプラント100に適合され得る。これらの構成要素は全て、ねじ部分107によってインプラント100に接続され得る。
【0103】
インプラント100の外面には、インプラント100を患者の顎骨における穴(図示せず)にねじ込むための雄ねじ132及び自己切削溝135が設けられている。ねじ132は、インプラントの根尖端103の近くで始まり、歯冠端102まで延び得る。しかしながら、本実施形態では、インプラントは、非ねじの歯冠ネック部分120を備える。インプラント100の歯冠端面105は、平面であり、長手方向の中心軸線LAを横断する。歯冠端面105は、止まり穴104の歯冠開口106を径方向に囲っている。
【0104】
止まり穴104は、ねじ部分107に加えて、穴104の歯冠端に配置された円形対称非ねじ部分134を備える。この歯冠円形対称非ねじ部分134は、円筒形若しくは円錐形であり得るか、又は本ケースでは、複数の円錐形及び円筒形セグメント134a、134b、134cを備える。このような歯冠円形対称非ねじ部分134を設けることにより、インプラント100内のより深い場所に第2の構成要素を配置することができ、したがって、より安定した接続が提供される。歯冠円形対称非ねじ部分134の任意の円錐形面、例えば円錐形面134cはまた、インプラントと第2の構成要素との間のシールを形成するために使用され得る。代替的に、第2の構成要素とのシールは、歯冠端面105を使用して形成され得る。
【0105】
止まり穴104は、回転防止要素130を更に備える。この要素130は、ねじ部分107の歯冠側、且つ歯冠円形対称非ねじ部分134の根尖側に配置されている。本実施形態では、回転防止要素130は、穴104内へ径方向内側に突出した、周方向に離隔した複数のリブ133を備える。したがって、回転防止要素130は、長手方向の中心軸線LAに対して垂直な平面内で非円形対称断面を有する。補完的な回転防止要素を有するアバットメント又は他の第2の構成要素が穴104内に挿入されると、リブ133が第2の構成要素内の補完的な溝と噛み合うことで、長手方向の中心軸線LA周りの相対的な回転が防がれる。このような補完的な回転防止要素は、歯科インプラントの分野で周知であり、代替的な断面形状、例えば、多角形、楕円形などを有し得る。
【0106】
止まり穴104の内側で回転防止要素130に対して根尖側に隣接して、インプラント100は、上述のねじ部分107に及ぶ非ねじ面を有する円筒形部分138を備える。この円筒形部分138の長さの変更により、ねじ部分107が始まる深さ、したがって、インプラント100と共に使用するのに必要なスクリューの長さを決定するために使用され得る深さが変更される。このような円筒形部分は、例えば、ねじ部分107がインプラント100の下半分のみに存在することを保証するために使用され得る。
【0107】
ねじ部分107に対して根尖側に隣接して、インプラント100は、湾曲して根尖方向にテーパ状になっている非ねじ端部分140を含む。非ねじ端部分140は、ねじ部分107の根尖端から、止まり穴104の根尖端144に延びている。非ねじ端部分140は、ねじ部分107を長くすることを必要とすることなく、穴104の長さを増加させる。穴104の長さの増加は、インプラント100の根尖端の量を低減し、したがって、使用中の歪みを低減する。
【0108】
ねじ部分107の位置が、インプラント100と共に使用され得るスクリューの長さを決定するので、インプラント100の全体の長さの変化に関わらず、インプラント100の歯冠端102に対するねじ部分107の位置は概して、一定のままである。これにより、ある範囲のインプラントと共に使用され得る標準的なスクリュー長さで、これらのインプラントの長さと無関係にアバットメント及び他の第2の構成要素を販売することができる。ねじ部分107の位置及び長さは通常、一定のままであるので、インプラントの根尖部分の量を低減するために、より大きい長さのインプラントにおいて非ねじ端部分140の長さを増加させ得る。
【0109】
この例が、図3に示されている。図3に示されるインプラント300は実質的に、図2Aのインプラント100に対応する。特に、ねじ部分307、及びねじ部分307の歯冠側の穴304の全ての部分は、図2Aと同一である。ねじ部分307に対して根尖側に隣接する非ねじ端部分340が、図2Aに示されるインプラント100の対応する非ねじ端部分140よりもはるかに長いという点でのみ、止まり穴304の根尖部分は、異なっている。これは、インプラント300がインプラント100よりも大きい軸方向の長さを有し、したがって、インプラント300の根尖端で量が多くなることを、より長い非ねじ端部分340によって防ぐためである。非ねじ端部分340は、型の分離を補助するために、例えば、0.5°のテーパ角でわずかに円錐形である。非ねじ端部分340のテーパ角は、ねじ端部分307のテーパ部のテーパ角よりも小さい。その根尖端で、非ねじ端部分340は、止まり穴304の根尖端344に向けて湾曲して根尖方向にテーパ状になっている。穴304の根尖端のこの丸みは、応力集中のエリアを回避するのに役立つ。
【0110】
当該技術分野で既知であるように、オッセオインテグレーションを向上させるために、外部のインプラント面には、付加的又は非付加的な面構造が設けられ得る。上記面構造は、歯科インプラント学の当業者に周知であるような、機械研磨処理、化学エッチング、レーザ処理、付加的処理、及びこれらの組合せによって作られ得る。
【0111】
上述の実施形態は、単なる例示のためであり、当業者は、特許請求の範囲内に入る代替的な配置が可能であることを認識するであろう。例えば、インプラントの外部に配置される回転防止要素を含む任意の既知の回転防止要素が使用され得る。ねじ端部分のテーパ部は、角度というよりもむしろ半径についてテーパ状になり得るか、又は複数のテーパ角を備え得る。穴は、角度が付いたインプラントの歯冠部分又は根尖部分に配置され得る。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E