(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/40 20060101AFI20250509BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250509BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20250509BHJP
【FI】
H05K3/40 K
H05K3/46 N
H05K1/11 N
(21)【出願番号】P 2023551394
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035265
(87)【国際公開番号】W WO2023054137
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021159610
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 登志文
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕明
(72)【発明者】
【氏名】井本 晃
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山元 泉太郎
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-010605(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167355(WO,A1)
【文献】特開2010-056524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 ー 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有
し、
前記ビア導体の平均幅をW0、前記連続相の平均幅をW1とした場合に、W1/W0は0.01以上かつ0.5以下である
配線基板。
【請求項2】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有し、
前記ビア導体の内部における前記金属部の面積割合が60(%)以上99(%)以下である
配線基板。
【請求項3】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有し、
前記連続相は、サイズが10(nm)以上かつ50(nm)以下の酸化ケイ素成分を含む
配線基板。
【請求項4】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有し、
前記連続相は、多角形状の結晶子を含む
配線基板。
【請求項5】
複数の前記結晶子は、多角形状の前記結晶子が有する直線状を成す辺同士で接している、
請求項
4に記載の配線基板。
【請求項6】
多角形状の前記結晶子は、直線状を成す辺の数が2つ以上である結晶子のことである、
請求項
5に記載の配線基板。
【請求項7】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有し、
前記連続相には、前記金属部を構成する金属粒子の結晶子が複数存在し、複数の前記結晶子が連続的に繋がっている、
配線基板。
【請求項8】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有し、
前記金属部は、前記連続相の内側にコア部が位置するコアシェル構造を有し、
前記連続相内には前記セラミックス部が存在し、前記ビア導体を断面視したときの前記セラミックス部の面積割合は、前記ビア導体のコア部側よりも外周側が少ない、
配線基板。
【請求項9】
セラミックスで構成される絶縁層と、
前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、
を備え、
前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含み、
前記金属部は、金属で構成されており、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する前記金属の連続相を有し、
前記連続相は、大きさが0.5μm以上かつ6.0μm以下の結晶子を、個数比で90(%)以上有する、
配線基板。
【請求項10】
前記連続相の長さは、縦断面視で前記絶縁層の厚みと同じである
請求項1
または2に記載の配線基板。
【請求項11】
前記ビア導体を縦断面視した場合に、前記連続相は、前記ビア導体の幅方向における両方の端部に配置される
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項12】
前記ビア導体の幅方向における端部は、前記ビア導体の側面から、前記ビア導体の内側に向かって長さが1(μm)以上かつ10(μm)以下の範囲である
請求項
11に記載の配線基板。
【請求項13】
前記連続相は、前記絶縁層と前記ビア導体との界面の近傍に、該界面に沿うように位置している、
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項14】
前記金属部は、前記連続相の内側にコア部が位置するコアシェル構造を有している、
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項15】
前記連続相は、柱状形状を有する前記ビア導体の側面に沿って位置し、前記側面から中心方向に所定の厚みを有する、
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項16】
前記金属部は、前記ビア導体の側面の近傍に、縦断面視で帯状の前記連続相を有する、
請求項1または2に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁層と、銅を主成分とする導体層およびビア導体とを有する配線基板が知られている。かかる配線基板は、たとえば、銅粉末に金属酸化物を添加した導体材料と、絶縁層材料としてのガラスセラミックスとを同時に焼成することにより得られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
実施形態の一態様に係る配線基板は、セラミックスで構成される絶縁層と、前記絶縁層を厚み方向に貫通するビア導体と、を備える、前記ビア導体は、金属部およびセラミックス部を含む。前記金属部は、縦断面視で前記絶縁層の厚み方向に沿って位置する連続相を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態に係る配線基板の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るビア導体の構成の一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るビア導体の構成の一例を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るビア導体内の結晶子の配置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例に係るビア導体のSEM観察写真を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例におけるビア導体のSEM観察写真を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例に係るビア導体のSEM観察写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従来、絶縁層と、銅を主成分とする導体層およびビア導体とを有する配線基板が知られている。かかる配線基板は、たとえば、銅粉末に金属酸化物を添加した導体材料と、絶縁層材料としてのガラスセラミックスとを同時に焼成することにより得られる。
【0007】
しかしながら、従来技術では、ビア導体の界面導電率を高める点でさらなる改善の余地があった。
【0008】
そこで、上述の問題点を克服し、ビア導体の界面導電率を高めることができる技術の実現が期待されている。
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する配線基板の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本開示の添付図面では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸方向を絶縁層の厚み方向とする。
【0010】
<配線基板>
まず、実施形態に係る配線基板1の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る配線基板1の一例を示す断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る配線基板1は、絶縁層2と、導体層3と、ビア導体4とを備える。
【0011】
絶縁層2は、たとえば、ガラスセラミックス焼結体、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはムライト質焼結体などの群から選ばれる一つのセラミックスで構成される。
【0012】
絶縁層2は、たとえば、ガラスセラミックスで構成されてもよい。これにより、絶縁層2の原料であるグリーンシートと、導体層3およびビア導体4の原料である導電ペーストとを同時に焼成して配線基板1を製造することができる。したがって、実施形態によれば、配線基板1の製造コストを低減することができる。
【0013】
実施形態に係る配線基板1は、たとえば、
図1に示すように、複数(図では4枚)の絶縁層2が積層して構成される。なお、本開示では、1枚の絶縁層2によって配線基板1が構成されてもよい。
【0014】
導体層3は、導電性を有し、絶縁層2の表面、および互いに隣接する絶縁層2同士の間に所定のパターン形状で配置される。すなわち、配線基板1では、絶縁層2と導体層3とが交互に積層して構成される。
【0015】
導体層3は、銅、銀、パラジウム、金、白金、タングステン、モリブデンもしくはマンガンなどの金属材料、またはこれらの金属材料を主成分とする合金材料もしくは金属間化合物に代表される混合材料などによって構成される。
【0016】
ビア導体4は、導電性を有し、絶縁層2の厚み方向に沿って絶縁層2を貫通するように配置される。ビア導体4は、金属部7(
図5参照)およびセラミックス部8(
図5参照)を含む。
【0017】
金属部7は、金属で構成され、たとえば、銅、銀、パラジウム、金、白金タングステン、モリブデンもしくはマンガンなどで構成される。金属部7は、たとえば、銅で構成されるとよい。これにより、ビア導体4の導電率を高めることができる。
【0018】
セラミックス部8は、セラミックスで構成される。セラミックス部8は、たとえば、絶縁層2に含まれるセラミックス材料のうち少なくとも1種のセラミックス材料と同じ材料で構成されるとよい。
【0019】
これにより、絶縁層2とビア導体4との熱収縮の挙動を近づけることができることから、配線基板1の同時焼成処理において、焼成後の熱収縮による配線基板1の破損などを低減することができる。
【0020】
<ビア導体>
つづいて、実施形態に係るビア導体4の詳細について、
図2~
図4を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係るビア導体4の構成の一例を示す縦断面図であり、
図3は、実施形態に係るビア導体4の構成の一例を示す横断面図である。
【0021】
図2および
図3に示すように、ビア導体4は、柱状形状であり、たとえば略円柱形状である。また、ビア導体4は、連続相5と、コア部6とを有する。
【0022】
連続相5は、柱状形状を有するビア導体4の側面4aに沿って位置し、かかる側面4aから中心方向に所定の厚みを有する。すなわち、連続相5は、
図2に示すように、縦断面視において、絶縁層2の厚みTに相当する長さLを有する帯状である。
【0023】
図4は、実施形態に係るビア導体4内の結晶子9の配置の一例を示す図である。
図4に示すように、連続相5は、金属部7(
図5参照)を構成する金属粒子の結晶子9が複数存在し、この複数の結晶子9が連続的に繋がっている。すなわち、ビア導体4に含まれる金属部7は、ビア導体4の側面4a(
図2参照)近傍に、縦断面視で帯状の連続相5を有する。
【0024】
ここで、金属粒子の結晶子9は、断面視で多角形状であるものが含まれる。複数の結晶子9は、
図4に示すように、多角形状の結晶子9が有する直線的は辺同士で接している。このような多角形状の結晶子9により形成された金属部7は、ボイドなどの空隙、セラミック粒子などの異物の介入が無く、結晶子9が一体的につながった状態となっている。
【0025】
ここで、帯状の連続相5の領域を定める方法を以下に示す。なお、下記の特に区切り線5A(
図5参照)を特定する方法は一例にすぎない。帯状の連続相5とは、ビア導体4を縦断面視したときに、
図2に示すように、その長さが絶縁層2の厚み方向に等しい、いわゆる矩形状(または長方形状)を基本的な形状とするが、これだけではなく、連続相5の両側面が凹凸状になっている場合を含む意である。
【0026】
この場合、凹凸はビア導体4に含まれる金属部7およびセラミックス部8のうちの少なくとも一方を構成する粒子の外形状に起因したものである。このため、連続相5の両側面の平均粗さRaを測定したときには、ビア導体4に含まれる金属部7およびセラミックス部8のうちの少なくとも一方を構成する粒子(または結晶子)の平均粒子径よりも小さくなっている部分が存在する場合がある。
【0027】
ここで、連続相5の両側面とは、一方が絶縁層2に接している面であり、他方がコア部6に接している面である。ビア導体4の中で連続相5の部分を指定する場合、連続相5の幅方向の一方の側面は、その連続相5と絶縁層2との界面となる。その反対側の側面(他方側の側面)については、
図5に示すような区切り線5Aとしてもよい。
【0028】
この場合、区切り線5Aは、ビア導体4の中に含まれる複数の粒子状のセラミックス部8を厚み方向に直線的に結んだ線である。セラミックス部8において区切り線5Aを引く位置は、
図5に示すように、ビア導体4を縦断面視したときのセラミックス部8の連続相5側である。
【0029】
つまり、セラミックス部8において区切り線5Aを引く位置は、セラミックス部8の連続相5側の表面である。
図5で言えば、セラミックス部8において区切り線5Aを引く位置は、セラミックス部8の左側の表面の中で連続相5との間の接点となる位置である。この場合、選択するセラミックス部8は、平均粒子径が200(nm)以上のものとする。
【0030】
連続相5内には最大径が200(nm)以下のセラミックス部8が存在する場合もあるが、連続相5としては、コア部6に近いほうよりもビア導体4の外周側となる絶縁層2に近いほうでセラミックス部8の割合が少ないほうがよい。
【0031】
ここで、セラミックス部8の割合とは、体積割合または面積割合の他、個数割合でもよい。ビア導体4の中で絶縁層2に近い部分は、より高い周波数において表皮効果が顕著になる部分となるからである。
【0032】
このことから、ビア導体4の中で絶縁層2に近い部分は、セラミックス部8の存在割合が低いほうがよい。例えば、連続相5を絶縁層2との界面と区切り線5Aとの間で幅方向に2等分したときに、絶縁層2側の部分はコア部6側の部分よりもセラミックス部8の割合が少ないほうがよい。
【0033】
例えば、
図5に示すように、連続相5の中で、最大径が数(nm)の微小なセラミックス部8であっても、これらの微小なセラミックス部8も絶縁層2側よりもコア部6側に在るほうがよい。ビア導体4の外周付近は、最大径が数(nm)の微小なセラミックス部8の存在も認められない相になっているのがよい。
【0034】
図2および
図3に示すように、コア部6は、柱状形状を有するビア導体4において、連続相5の内側に配置される。コア部6には、金属部7とセラミックス部8(
図5参照)とが混在している。
【0035】
ここまで説明したように、実施形態では、絶縁層2の厚み方向に沿って電流が流れるビア導体4の中に、絶縁層2の厚み方向に沿って位置する連続相5が配置される。これにより、ビア導体4と絶縁層2との界面近傍に、連続相5による良好な導電パスを形成することができる。
【0036】
したがって、実施形態によれば、ビア導体4の界面導電率を高めることができる。
【0037】
また、実施形態では、連続相5の長さが、縦断面視で絶縁層2の厚みTと同じであってもよい。これにより、連続相5によってビア導体4の内部にさらに良好な導電パスを形成することができる。
【0038】
したがって、実施形態によれば、ビア導体4の界面導電率をさらに高めることができる。
【0039】
また、実施形態では、
図2に示すように、ビア導体4の平均幅をW0、連続相5の平均幅をW1とした場合に、W1/W0が0.01以上かつ0.5以下であってもよい。これにより、絶縁層2を厚み方向に貫通する連続相5の幅を広くすることができるため、ビア導体4の界面導電率をさらに高めることができる。
【0040】
また、実施形態では、
図2に示すように、ビア導体4を縦断面視した場合に、連続相5が、ビア導体4の幅方向における両方の端部に配置されていてもよい。すなわち、実施形態では、ビア導体4と絶縁層2との界面に沿って連続相5が位置し、かかる連続相5の内側にコア部6が位置するコアシェル構造を有していてもよい。
【0041】
これにより、ビア導体4と絶縁層2との界面近傍の導電率を高めることができることから、ビア導体4の高周波領域における界面導電率を高めることができる。
【0042】
なお、本開示において、ビア導体4の幅方向における端部とは、ビア導体4の幅方向における端(すなわち、ビア導体4の側面4a)から、ビア導体4の内側に向かって長さが1(μm)以上かつ10(μm)以下の範囲のことである。
【0043】
また、実施形態では、ビア導体4の内部における金属部7の面積割合が60(%)以上であってもよい。これにより、ビア導体4に加えて、コア部6の導電率も高めることができることから、ビア導体4全体の導電率を高めることができる。
【0044】
なお、この場合、ビア導体4の内部における金属部7の面積割合の上限は100%となるが、ビア導体4と絶縁層2との接着性を高めるという理由からセラミック成分を含んでいてもよい。このため、ビア導体4の内部における金属部7の面積割合の上限としては、99%でもよい。さらには、ビア導体4の側面の全体を絶縁層2に強固に接着させるという理由からは、ビア導体4の内部における金属部7の面積割合の上限としては、90%、80%でもよい。
【0045】
なお、本開示において、ビア導体4の内部における金属部7の面積割合は、ビア導体4を縦断面視で観察した領域の面積をA0、その領域に占める金属部7の面積をA1とした場合に、A1/A0によって求められる。
【0046】
また、実施形態では、ビア導体4の連続相5が、サイズが10(nm)以上かつ50(nm)以下の酸化ケイ素成分10(
図7参照)を含んでいてもよい。これにより、連続相5と、かかる連続相5に隣接するセラミックス製の絶縁層2との間の接着性を、この酸化ケイ素成分10によって高めることができる。ここで、サイズとは、ビア導体4の断面に見られる酸化ケイ素成分10の最大径のことである。
【0047】
したがって、実施形態によれば、配線基板1の信頼性を高めることができる。また、実施形態では、この酸化ケイ素成分10が微小な大きさであることから、連続相5の界面導電率の低下を低減することができる。
【0048】
また、実施形態では、
図4に示すように、連続相5が、多角形状の結晶子9を含んでもよい。そして、実施形態では、互いに隣接する結晶子9同士が、各結晶子9が有する直線状を成す辺を粒界として接していてもよい。
【0049】
これにより、結晶子9同士の界面に微小な酸化ケイ素成分10が存在していたとしても、結晶子9同士の接触面積を大きくすることができることから、ビア導体4の高周波領域における界面導電率をさらに高めることができる。
【0050】
また、実施形態では、大きさが0.5(μm)以上かつ6.0(μm)以下の結晶子9が、個数比で90(%)以上を占めるとよい。
【0051】
なお、本開示において、多角形状の結晶子9とは、直線状を成す辺の数が2つ以上である結晶子のことである。また、本開示において、結晶子9は、たとえば、研磨した面を電子線後方散乱解析(EBSD:Electron Back Scattered Diffraction Pattern)法を用いて解析することにより観察することができる。
【0052】
また、実施形態では、絶縁層2の比誘電率が5以上かつ7以下であってもよい。これにより、ビア導体4の高周波領域における界面導電率をさらに高めることができる。
【0053】
[実施例]
具体的に実施例および比較例の配線基板1を作製し、各種特性の相違について評価した。
【0054】
実施例としては、まず、絶縁層2の材料として、アルミナ粒子40(wt%)と、ホウケイ酸ガラス60(wt%)との混合物を用意した。かかる混合物は、焼成温度が900(℃)以上かつ1000(℃)以下のガラスセラミックス原料である。
【0055】
また、有機バインダとして、ガラスセラミックス原料100(質量部)に対して20(質量部)のメタクリル酸イソブチル樹脂とフタル酸ジブチルを使用し、ドクターブレード成形により厚みが100(μm)のグリーンシートを作製した。
【0056】
また、ビア導体4の原料として、平均粒径が2(μm)の銅粉末と、平均粒径が2(μm)のホウケイ酸ガラス粉末と、平均粒径が20(nm)のシリカ(酸化ケイ素)粒子を用意した。シリカ粒子は、下限10(nm)、上限30(nm)の積算量の割合が70(%)以上であった。銅粉末は、純度が99.9%であるものを用いた。
【0057】
また、有機バインダには、メタクリル酸イソブチル樹脂、ブチルカルビトールアセテートおよびジブチルフタレートの混合溶媒を用いた。銅粉末100(質量部)に対して5(質量部)の割合でメタクリル酸イソブチル樹脂を添加し、さらにブチルカルビトールアセテート、ジブチルフタレートの混合溶媒を添加して、銅粉末、ホウケイ酸ガラス粉末およびシリカ粒子を含有する導体ペーストを調製した。
【0058】
表1に示したガラス粉末、シリカ粒子の添加量は、いずれも銅粉末100質量部に対する割合である。
【0059】
なお、比較例の試料におけるガラス粉末の添加量が20.5質量部と多いのは、従来のビア導体は、この程度のガラス粉末を添加した導体ペーストを用いないと、焼成後に形成されるビア導体と絶縁層2との間に隙間ができやすいためである。
【0060】
つまり、実施例の導体ペーストは、微粒のシリカ粒子を含むことからガラス粉末の添加量を少なくすることができる。このため、実施例に示したようなガラス粉末の添加量の少ない組成であっても、金属部7が連続相5を形成するほどの高い充填率のビア導体4を形成することができる。
【0061】
この場合、シリカ粒子は、焼成後においてもビア導体4中に存在していることを確認できる場合がある。
【0062】
ビア導体4の断面におけるシリカ粒子の面積割合は、0.002(%)~0.01(%)ほどである。また、ビア導体4の断面におけるガラス相の面積割合は、シリカ粒子の面積割合の10倍程度であり、例えば、0.02(%)~0.1(%)となる。このため、ビア導体4中の残部は、金属部7およびセラミックス部8となる。
【0063】
セラミックス部8は、焼成後に絶縁層2となるグリーンシートに元々含まれていたアルミナ粒子、ホウケイ酸ガラスを前駆体としたガラスセラミックスである。このガラスセラミックスは、焼成時に絶縁層2側からビア導体4側へ移動したものと考えられる。
【0064】
そして、作製したグリーンシートに予め貫通孔を形成し、その貫通孔にスクリーン印刷法により導体ペーストを充填する。つまり、グリーンシートを貫通するように略円柱形状の導体ペーストを印刷する。次いで、作製したグリーンシートの貫通孔を含む両表面に導体ペーストを所定の面積で印刷し、焼成した。これにより、実施例に係る配線導体を得た。
【0065】
かかる焼成処理は、水素-窒素の混合ガスを用いた還元雰囲気中にて、最高温度を930(℃)、保持時間を2(時間)として行った。グリーンシートは、複数枚を重ねて、厚みを500(μm)とした。
【0066】
一方、比較例に係る配線基板1は、導電ペーストにシリカ粒子を添加しないことを除き、上記した実施例に係る配線基板1と同様に作製した。なお、実施例および比較例において、導電ペーストにおけるホウケイ酸ガラス粉末およびシリカ粒子の混合比率は後に示す表1に記載された値であり、焼成処理後に配線基板1が破損しないように適宜調整された値である。
【0067】
ここで、表1に示すように、導電ペーストに微小なシリカ粒子を含まない比較例に比べて、シリカ粒子を含んだ実施例では、ホウケイ酸ガラス粉末の割合を減らした(すなわち、銅粉末の割合を増やした)場合でも、焼成時に破損することなく配線基板1を形成するこができる。
【0068】
この要因については以下の通りと推測される。焼成処理前に、銅粉末の周囲に微粉末のシリカ粒子が付着することにより、銅粉末のネッキング開始温度が高温側にシフトする。そのため、ビア導体4の主成分である銅粉末のネッキング開始温度と、絶縁層2の主成分であるガラスセラミックス粉末のネッキング開始温度とを揃えることができる。
【0069】
したがって、実施例では、微小なシリカ粒子を導電ペーストに含ませることにより、ホウケイ酸ガラス粉末の割合を減らしたとしても、焼成処理後の熱収縮に起因する破損を低減することができる。表1に比較例として示しているように、従来のビア導体は、ホウケイ酸ガラス粉末を20.5質量部添加して作製したものとなっている。
【0070】
次に、得られた配線基板1を切断し、絶縁層2とビア導体4との界面、およびその近傍をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察した。
図5および
図7は、実施例に係るビア導体4のSEM観察写真を示す図であり、
図6は、比較例におけるビア導体4のSEM観察写真を示す図である。
【0071】
図5に示すように、実施例では、ビア導体4の中に、絶縁層2の厚み方向に沿って位置する連続相5が存在していた。また、かかる連続相5は、帯状であり、絶縁層2の厚みT(
図2参照)に相当する長さL(
図2参照)を有していた。
【0072】
なお、実施例では、ビア導体4の平均幅W0(
図2参照)が約80(μm)であり、連続相5の平均幅W1(
図2参照)が約2(μm)であった。帯状の連続相5の範囲は、SEM観察写真に映し出されたビア導体4に
図5に示したように区切り線5Aを付して定めた。
【0073】
一方で、
図6に示すように、比較例では、ビア導体4の中に帯状の連続相5は観察されなかった。
【0074】
実施例に係る配線基板1において、ビア導体4の中に帯状の連続相5が形成された要因については以下の通りと推測される。焼成処理において、グリーンシートのガラスセラミックス粉末に接するビア導体4の銅粉末では、その他の部位の銅粉末に比べて見かけの融点が低下する。
【0075】
さらに、グリーンシートに接するビア導体4の銅粉末では、微粉末のシリカ粒子によって銅粒子が膜状になりやすくなるため、帯状の連続相5が形成される。
【0076】
また、
図7に示すように、実施例に係る配線基板1のビア導体4では、連続相5において互いに隣接する銅の結晶子9同士の間に酸化ケイ素成分10が観察された。かかる酸化ケイ素成分10は、微粉末のシリカ粒子に起因するものと推測される。
【0077】
また、実施例および比較例におけるビア導体4のSEM観察写真を用いて、ビア導体4全体における金属部7の割合(面積比)を求めた。具体的には、得られたSEM観察写真を、所定の明度(たとえば、明度50%)以上と、所定の明度未満との二値化画像に変換し、かかる二値化画像中の全画素数に対する所定の明度以上の画素数の割合を計算し、金属部7の面積比とした。
【0078】
次に、実施例および比較例における配線基板1の界面導電率をそれぞれ測定した。この界面導電率は、以下に示す誘電体円柱共振器法にて測定した。
【0079】
誘電体円柱共振器法を利用した界面導電率の測定方法は、比誘電率、誘電損失が既知の誘電体材料からなる誘電体円柱の両端面または一方の端面に、上記導体が内部に形成された絶縁層を所定の関係になるように取り付けて誘電体共振器を形成することにより、導体と絶縁層との界面、すなわち導体界面での導電率を測定する方法である。
【0080】
この測定方法の原理は、所定の寸法比(高さh/直径d)を有する誘電体円柱の両端面に、縁端効果が無視できる程度に充分大きな導体板(通常は、誘電体円柱の直径dの3倍程度の直径Dを有する導体板)を平行に設けて挟持した電磁界共振器を構成した場合、TEomn共振モード(以下、TEomnモードと称する)によって導体板に流れる高周波電流は短絡面、即ち、誘電体と導体との対向面だけに分布していることによるものである。
【0081】
誘電体共振器においては、TEomnモード(m=1,2,3・・・、n=1,2,3,・・・)によって導体に流れる高周波電流は、導体と誘電体円柱と接する誘電体基板の界面だけに分布することを利用して、測定されたTEomnモード(m=1,2,3・・・、n=1,2,3,・・・)の共振周波数f0と無負荷Q、Quから界面導電率を算出することができる。界面導電率は、周波数6(GHz)において測定した。
【0082】
ここで、実施例および比較例について、ビア導体4の原料である導電ペーストに含まれるガラス粉末およびシリカ粒子の添加量と、周波数6GHzにおける界面導電率の測定結果と、ビア導体4における金属部7の割合の測定結果とを表1に示す。なお、周波数6(GHz)における界面導電率の測定結果は、直流における界面導電率を100(%)とした場合の相対値である。
【0083】
【0084】
ビア導体4に帯状の連続相5が配置された実施例と、かかる連続相5が配置されていない比較例との比較により、ビア導体4に帯状の連続相5が配置されることによって、ビア導体4の高周波領域における界面導電率が高くなっていることがわかる。
【0085】
また、ビア導体4の原料である導電ペーストにシリカ粒子を添加した実施例と、シリカ粒子を添加していない比較例との比較により、導電ペーストにシリカ粒子を添加することによって、金属部7の割合を60(%)以上に高めることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、ビア導体4の原料である導電ペーストにシリカ(酸化ケイ素)粒子の微粉末を添加する例について示したが、本開示はかかる例に限られない。
【0087】
たとえば、シリカ以外のセラミックス微粉末(たとえば、アルミナ微粉末など)を導電ペーストに添加させてもよい。これによっても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
一方で、絶縁層2のガラスセラミックス(ここでは、ホウケイ酸ガラス)に含まれる成分と同じ成分であるシリカ粒子の微粉末を用いることにより、絶縁層2とビア導体4との密着性を向上させることができることから、配線基板1の信頼性を高めることができる。
【0089】
さらなる効果や他の態様は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 配線基板
2 絶縁層
3 導体層
4 ビア導体
5 連続相
6 コア部
7 金属部
8 セラミックス部
9 結晶子
10 酸化ケイ素成分
L 長さ
T 厚み
W0、W1 平均幅