(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】樹脂造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20250509BHJP
【FI】
B29C64/118
(21)【出願番号】P 2024172690
(22)【出願日】2024-10-01
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輝
(72)【発明者】
【氏名】寺山 陽葵
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025761(JP,A)
【文献】再公表特許第97/024217(JP,A1)
【文献】特開2021-133633(JP,A)
【文献】特開2018-051917(JP,A)
【文献】特表2020-518484(JP,A)
【文献】特開2019-018399(JP,A)
【文献】特開2019-142089(JP,A)
【文献】特開2020-183110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の樹脂造形物を製造する樹脂造形物の製造方法であって、
造形物製造装置を使用して樹脂材料を積層して
複数の層を有する粗造形物を造形する造形工程と、
前記粗造形物の不要部を除去して樹脂造形物を造形する除去工程と、を備え
、
前記造形工程では、前記複数の層のうち少なくとも1つの層において、前記造形物製造装置のノズルを始点から終点まで一筆書き状に移動させつつ、前記ノズルから樹脂材料を吐出し、
前記少なくとも1つの層における前記始点及び前記終点は、前記粗造形物の外側部の前記不要部を減少させるために、前記粗造形物の外側部を形成する位置から内側に離れた位置に設定される
ことを特徴とする樹脂造形物の製造方法。
【請求項2】
造形工程では、造形物製造装置のノズルを
端点同士が連結された閉曲線状に移動させつつ樹脂材料を吐出する
ことを特徴とする請求項
1記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項3】
造形工程では、造形物製造装置のノズルを
平面視または積層方向から見て始点と終点とが一致した一筆書き状に移動させつつ樹脂材料を吐出する
ことを特徴とする請求項
2記載の樹脂造形物の製造方法
。
【請求項4】
造形工程では、造形物製造装置のノズルを積層方向に連続的に移動させつつ樹脂材料を吐出する
ことを特徴とする請求項1
ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法
。
【請求項5】
除去工程では、粗造形物の表面部を切削し、切削面を作成する
ことを特徴とする請求項1
ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項6】
不要部は、積層痕である
ことを特徴とする請求項1
ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項7】
積層痕は、ノズルの折り返しに伴い生じる樹脂溜まりである
ことを特徴とする請求項6記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項8】
積層痕は、粗造形物の側部の凹凸である
ことを特徴とする請求項6記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項9】
樹脂造形物は、機械加工用の樹脂ブロックである
ことを特徴とする請求項1
ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法
。
【請求項10】
除去工程は、造形物製造装置の造形テーブルから取り外した粗造形物に対して実施する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項11】
樹脂造形物は、直方体、立方体、円柱、球、角錐、円錐のいずれかである
ことを特徴とする請求項1
ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法。
【請求項12】
樹脂造形物は、筒状である
ことを特徴とする請求項1
ないし3いずれか一記載の樹脂造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂造形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な製品に使用されている樹脂造形物について、例えば製品開発段階において試作品を製作する場合、既存の樹脂材料、例えば押し出し成形等により板状や棒状に形成された樹脂材料を切削して製作するのが通常である。
【0003】
しかし、板状の樹脂材料を切削する方法においては、一般的に流通している切削用樹脂材料の種類が少なく、試作に使用できる樹脂の種類や色が限られている。また、一般的に流通している樹脂材料の形状は、板材あるいは棒材等であり、切削によりある程度大きな物品を製作、試作できるような樹脂材料は極めて限られている。そのため、樹脂切削によるサンプル製作では、材料として樹脂の種類や色を自由に選ぶことができず、量産で使用したい材料、あるいは、量産のために検討対象としたい材料で製作できない場合が多い。その結果、量産化・商品化したときの樹脂成形物の性能を評価するための試作品を製造できず、樹脂成形で量産品、商品を製造する際の障害となっている。
【0004】
このような状況のため、量産化・商品化したときの樹脂造形物の強度等の性能を適切に評価する必要があるときは、量産化と同様に型を製作し、使用予定の樹脂材料を用いて試作品を射出成形することが行われている。
【0005】
例えば、簡易的な金型を用いることにより、短納期で廉価に正規の商品と同じ材料の試作品を成型する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の方法も量産化・製品化したときと同様、型を製作することには変わりなく、例えば切削により試作する場合と比較して、期間、コスト、手間等がかかる。また、このような射出成形法においては、金型内で溶融樹脂を冷却する際に、樹脂の内部に空隙(いわゆるボイド)が不可避的に発生することがあるといった理由から、成形可能な樹脂材料の大きさに限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題の一つは、品質が良好な所望の寸法の樹脂造形物を容易に製造できる樹脂造形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る樹脂造形物の製造方法は、3次元の樹脂造形物を製造する樹脂造形物の製造方法であって、造形物製造装置を使用して樹脂材料を積層して粗造形物を造形する造形工程と、前記粗造形物の不要部を除去して樹脂造形物を造形する除去工程と、を備えるものである。
【0010】
上記樹脂造形物の製造方法において、造形物製造装置は、熱溶解積層方式の3Dプリンタでもよい。
【0011】
上記樹脂造形物の製造方法において、樹脂材料は、ペレット状の熱可塑性樹脂でもよい。
【0012】
上記樹脂造形物の製造方法において、造形工程では、造形物製造装置のノズルを深さ有限の任意の2次元平面上の空間充填曲線に沿って移動させつつ樹脂材料を吐出してもよい。
【0013】
上記樹脂造形物の製造方法において、造形工程では、造形物製造装置のノズルを閉曲線状に移動させつつ樹脂材料を吐出してもよい。
【0014】
上記樹脂造形物の製造方法において、造形工程では、造形物製造装置のノズルを一筆書き状に移動させつつ樹脂材料を吐出してもよい。
【0015】
上記樹脂造形物の製造方法において、造形工程では、樹脂材料をオーバーラップさせ、重複部を作成してもよい。
【0016】
上記樹脂成形物の製造方法において、造形工程では、造形物製造装置のノズルを積層方向に連続的に移動させつつ樹脂材料を吐出してもよい。
【0017】
上記樹脂造形物の製造方法において、造形工程では、粗造形物の周回上に沿って、樹脂材料を順次積層してもよい。
【0018】
上記樹脂造形物の製造方法において、除去工程では、粗造形物の表面部を切削し、切削面を作成してもよい。
【0019】
上記樹脂造形物の製造方法において、不要部は、積層痕でもよい。
【0020】
上記樹脂造形物の製造方法において、樹脂造形物は、機械加工用の樹脂ブロックでもよい。
【0021】
上記樹脂造形物の製造方法において、樹脂造形物は、切削加工用の樹脂ブロックでもよい。
【0022】
上記樹脂造形物の製造方法において、樹脂造形物は、直方体、立方体、円柱、球、角錐、円錐のいずれかでもよい。
【0023】
上記樹脂造形物の製造方法において、樹脂造形物は、筒状でもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態によれば、品質が良好な所望の寸法の樹脂造形物を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る樹脂造形物製造方法に用いられる造形物製造装置である熱溶解積層方式の3Dプリンタを概略的に示す正面図である。
【
図2】(a)は同上樹脂造形物製造方法の造形物製造装置による粗造形物の造形例を示す斜視図、(b)は(a)の粗造形物に対して除去工程を経て製造された樹脂造形物の造形例を示す斜視図である。
【
図3】同上樹脂造形物製造方法の造形工程における同心環状の形状の3D造形データの例を示す平面図である。
【
図4】
図3の3D造形データにおいて3Dプリンタのノズルの走査経路構成用の基準線の設定例を示す平面図である。
【
図5】(a)は
図4の3D造形データにおいて3Dプリンタのノズルの走査経路の一の設定例を示す平面図、(b)は他の設定例を示す平面図である。
【
図6】(a)は
図3及び
図4の3D造形データに基づき造形される層の例を示す平面図、(b)は(a)の断面図、(c)は(b)の一部の拡大図である。
【
図8】(a)は
図2(b)の粗造形物の例を示す断面図、(b)は(a)の一部の拡大図である。
【
図9】(a)は同上樹脂造形物製造方法の造形物製造装置による粗造形物の造形例を示す写真、(b)は(a)の粗造形物に対して除去工程を経て製造された樹脂造形物の造形例を示す写真、(c)は(b)に対して除去工程をさらに進めて製造された樹脂造形物の造形例を示す写真である。
【
図10】(a)は同上3Dプリンタのノズルの走査経路の他の設定例を示す平面図、(b)は同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図、(c)は3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図である。
【
図11】(a)は同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図、(b)は同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図である。
【
図12】(a)は
図11(b)の走査経路に基づく同上樹脂造形物製造方法の造形物製造装置による粗造形物の造形例を示す写真、(b)は(a)の粗造形物に対して除去工程を経て製造された樹脂造形物の造形例を示す写真である。
【
図13】同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図である。
【
図14】
図13の走査経路に基づく同上樹脂造形物製造方法の造形物製造装置による粗造形物の造形例を示す写真である。
【
図15】(a)は同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図、(b)は同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図である。
【
図16】同上3Dプリンタのノズルの走査経路のさらに他の設定例を示す平面図である。
【
図17】
図16の走査経路に基づく同上樹脂造形物製造方法の造形物製造装置による樹脂造形物の造形例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1において、1は造形物製造装置である熱溶解積層方式の3Dプリンタで、この熱溶解積層方式の3Dプリンタ(以下では単に「3Dプリンタ1」という場合がある)は、3D造形データに基づいて、熱で溶解(溶融)した造形材料である樹脂材料を1層ずつ順次積層して3次元の樹脂造形物Wを製造するための造形機である。
【0028】
なお、3Dプリンタ1に用いられる樹脂材料は、熱可塑性樹脂であり、汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、強化樹脂、リサイクルプラスチック、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチック等である。より具体的には、例えばPVC、POM、PBAT、AAS、PS、PLA、PBS、PE、植物繊維入りPLA、植物繊維入りPBS、ABS、硝子繊維入りABS、炭素繊維入りABS、PP、硝子繊維入りPP、バサルト繊維入りPLA、バサルト繊維入りABS、バサルト繊維入りPP、バサルト繊維入りPC、バサルト繊維入りPE、PVC炭素繊維入りPP、PC、硝子繊維入りPC、PC・ABS、ASA、TPE、TPU、酢酸セルロース、PA、PETG等である。樹脂材料の形状は、フィラメントや粉末状等、任意のものを使用してよいが、好ましくはペレットが用いられる。また、3Dプリンタ1は、例えばシングルノズルヘッド仕様のもので、造形に用いる樹脂は1種類のみでよく、サポート専用の樹脂(水溶性の樹脂等)は不要である。
【0029】
3Dプリンタ1は、例えば造形室2を内部に有する箱状の本体3と、造形室2内でX軸方向(水平方向である左右方向)及びZ軸方向(上下方向である高さ方向)に移動可能な造形ヘッド4と、造形室2内でY軸方向(水平方向である前後方向)に移動可能な造形テーブル5とを備えている。
【0030】
なお、このように造形ヘッド4がX軸方向及びZ軸方向に移動可能でかつ造形テーブル5がY軸方向に移動可能であることから、造形ヘッド4は造形テーブル5に対して相対的に3次元に移動する(後述するが、3Dプリンタ1は、
図1に図示した構成には限定されず、造形ヘッド4が造形テーブル5に対して相対的に少なくとも3次元に移動する構成であればよい)。
【0031】
また、3Dプリンタ1は、造形ヘッド4を造形室2内でX軸方向及びZ軸方向に移動させる第1駆動部6と、造形テーブル5を造形室2内でY軸方向に移動させる第2駆動部7と、STLデータ等の3D造形データに基づいて両駆動部6,7等を制御する制御部8とを備えている。
【0032】
そして、その制御部8による制御に基づいて、造形ヘッド4が造形テーブル5に対して相対的に3次元に移動しながら、この移動中の造形ヘッド4のノズル11から樹脂(溶解樹脂)が吐出され、この吐出された樹脂が硬化して固まることで、造形テーブル5上に樹脂が積層状態となって所望形状の3次元の粗造形物W1が造形される。
【0033】
粗造形物W1は、最終的に目的の樹脂造形物Wを製造するためのものである。つまり、粗造形物W1を3Dプリンタ1により一旦造形した後、その粗造形物W1の不要部を除去して、目的の樹脂造形物Wを得ることになる。
【0034】
ここで、シングルノズルヘッド仕様の熱溶解積層方式の3Dプリンタ1の造形ヘッド4は、例えば溶解樹脂押出方式のもので、当該造形ヘッド4内の加熱手段(図示せず)からの熱で溶解した樹脂を吐出口から吐出する単一のノズル11を有している。
【0035】
すなわち、図示しないヒータ等の加熱手段で加熱されて溶けた樹脂は、造形ヘッド4内のギア等の押出手段(図示せず)にて押し出されるようにして、樹脂材料吐出用の1つのノズル11の吐出口からこの吐出口の中心軸方向、例えば下方に向かって吐出(排出)される。なお、加熱手段や押出手段は、造形ヘッド4内ではなく造形ヘッド4外に設けてもよい。
【0036】
次に、上述した熱溶解積層方式の3Dプリンタ1を使用して、例えば
図2(b)に示す3次元の樹脂造形物Wを製造する樹脂造形物の製造方法について説明する。
【0037】
樹脂造形物Wは、機械加工用、特に切削加工用の樹脂ブロックであって、本実施の形態では、例えば直方体、立方体、柱(円柱、多角柱)、筒(円筒、多角形筒)、錐(円錐、多角錐)、截頭錐(截頭円錐、截頭多角錐)、球等の単純な(プリミティブな)形状を有する。
図2(b)に示す例では、樹脂造形物Wは、平面視正方形状の薄板状の直方体である。
【0038】
樹脂造形物Wは、切削面である下面15、切削面である上面16、及び、切削面である側面17を有する。下面15、上面16、及び、側面17は、それぞれ巨視的には実質的な凹凸がない、滑らかな面として形成されていることが好ましいが、機械加工に用いられることを考慮すると、全ての面が滑らかである必要はなく、また、滑らかさの度合いも、機械加工そのものや機械加工後の仕上がりに支障がない程度であればよい。例えば樹脂造形物Wが直方体である場合、少なくとも下面15、上面16、及び、各側面17がそれぞれ平面状に形成されている。また、例えば樹脂造形物Wが円柱、円筒、あるいは円錐等の場合には、側面17が円筒面又は球面状等に形成されている。
【0039】
樹脂造形物Wは、少なくとも高さ方向(厚み方向)に中実に形成されている。すなわち、樹脂造形物Wは、下面15から上面16に亘り、樹脂材料が密に連なっている。本実施の形態では、面方向(XY軸方向)及び高さ方向(Z軸方向)に樹脂原料が密に連なって中実となっており、基本的に空洞(鬆)等の成形不良が厚み内に生じていない。なお、「中実」とは、肉厚内に基本的に空洞を有しないことを意味するものであり、筒形状や穴部を有する形状等、空隙や空洞を外形に有するものを除外することを意図するものではない。
【0040】
この樹脂造形物Wを製造するための粗造形物W1は、所望の樹脂造形物Wを内包し得る寸法及び形状に造形される。粗造形物W1は、樹脂造形物Wの寸法に対し僅かな除去代を加えた程度の、つまり樹脂造形物Wよりも一回り大きい程度の寸法で造形すると、粗造形物W1の不要部を除去して樹脂造形物Wに加工するまでの加工時間を抑制できるとともに、無駄な除去屑の発生を抑制できる。他方、粗造形物W1は、樹脂材料の熱収縮により、中心部に近づくほど密(ソリッド)に形成されるので、除去代を大きく取るほど、つまり樹脂造形物Wに対して大きく造形するほど、樹脂造形物Wの品質が向上することとなる。したがって、粗造形物W1の寸法及び形状については、樹脂造形物Wの品質やコストに応じて不要部の除去代分の厚みを適宜選択することが好ましい。
【0041】
そして、3Dプリンタ1(
図1)を使用して、樹脂材料Rの層LYを積層することで粗造形物W1を造形する(造形工程)。
【0042】
この造形工程において、層LYは、例えば3Dプリンタ1のノズル11から樹脂材料Rを所定の走査経路(走査線)Lに沿って吐出することにより形成する。走査経路Lは、層LYを樹脂材料Rにより隙間なく埋めることができれば任意に設定してよいが、例えば、平面視正方形状の直方体である樹脂造形物Wを製造する例の場合、
図3に示す例では、粗造形物W1の平面視での外形に沿う正方形SCを所定のピッチp1で中心側に向かってオフセットした同心環状の3D造形データに基づき設計する。なお、「同心環状」とは、中心を共有する相似形状が複数集合した状態を言い、樹脂造形物Wの外形や形状に応じて、円や楕円、長円等のオーバル形状、四角形、多角形等も含むものとする。また、平面視での外形が正方形SCの場合について説明しているが、X軸方向及び/またはY軸方向に任意に変倍したり、傾斜させたりすることにより、平面視での外形が長方形や平行四辺形等の場合でも対応できる。
【0043】
ピッチp1は、隣接する環の樹脂材料R同士が連なれば、つまりノズル11から吐出される樹脂材料R同士が流動や重み、圧力等によりオーバーラップすれば、樹脂材料Rの種類、グレード等に応じて任意に設定してよいが、例えば3Dプリンタ1のノズル11の開口幅以下とする。本実施の形態では、ノズル11の吐出口が円形状であり、開口幅である開口直径(ノズル11の開口直径)が0.2mm~10.0mm、好ましくは0.2mm~2.0mm、本実施の形態では、例えば2.0mmのものを用い、ピッチp1を1.6mm、つまりピッチp1をノズル11の開口幅未満で、かつ、ノズル11の開口幅の1/2より大きい寸法とする例を示すが、これに限らず、粗造形物W1の寸法や樹脂材料R、及び、ノズル11からの樹脂材料Rの吐出量に応じて、任意形状、任意寸法のものを用いてよい。仮にピッチp1がノズル11の吐出口の開口幅より大きかったとしても、例えばノズル11からの樹脂材料Rの吐出量(吐出率)を増やすことで、吐出された後に流動や重み、圧力によって潰れた樹脂材料Rが隙間なく連なった層LYを形成することが可能である。また、例えばノズル11が小口径のものである場合等には、仮にピッチp1がノズル11の開口幅の1/2より若干小さかったとしても、樹脂材料Rが隙間なく連なった層LYを形成することが可能である。
【0044】
次いで、造形工程において、
図3に示す3D造形データに対し、
図4に示すように、同心環の間に基準線となるオフセット線OLをピッチp1で設定する。これらオフセット線OLについては、
図5(a)に例を示すように、各オフセット線OLをそれぞれ別個の走査経路Lとし、一周する毎に隣に位置する走査経路Lにノズル11又はノズル11の吐出口の中心軸を移動させるように構成してもよいし、
図5(b)に例を示すように、複数のオフセット線OL同士を一筆書き状に任意に連結して一本の走査経路Lを構成してもよい。なお、
図5(a)に示す別個の走査経路はそれぞれ一筆書き状であることが好ましい。この
図5(b)に示す例では、オフセット線OLを一周した位置で隣に位置するオフセット線OLに移り、そのオフセット線OLを反対方向に周回するように、複数のオフセット線OLを連ねて走査経路Lを構成する。したがって、走査経路Lに沿って移動するノズル11は、始点PSから終点PEまでを基本的に自己交差することなく短い移動距離で移動することとなる。なお、始点PS(終点PE)においては樹脂材料Rの溜まりが生じやすく、その溜まりに起因して粗造形物W1に形成される不要部が大きくなりやすいため、始点PS(終点PE)は頂点部を除く位置、例えば辺部の中央部等に設定することにより、不要部を最小限とし、後述する除去工程を軽減することが好ましい。また、
図5(b)中において、オフセット線OL間を連ねる線は、説明を明確にするために僅かに左右に位置をずらして示している。
【0045】
そして、走査経路Lに沿ってノズル11を移動させつつ、つまりノズル11を周回させつつ樹脂材料Rを順次吐出することにより、
図6(a)ないし
図6(c)に示すように、所定のピッチp1で隣接する樹脂材料Rが面を埋めるように層状に形成され、固化前の隣接する溶融状態の樹脂材料R同士が隣接部分でオーバーラップして(図中の二点鎖線に示す)連なることで、所定の断面形状を有する、面方向に中実な面状の層LYをなす。なお、層LYにおいて、走査経路Lにより描画される図形の中心部分のように、走査経路Lにより埋められない部分については、例えばノズル11からの樹脂材料Rの吐出量を増加させたり、走査経路Lとは別個にノズル11を任意に移動させたりすることにより空隙とならないように埋めることが好ましい。また、ノズル11から吐出された樹脂材料Rは、実際にはその粘性や表面張力の影響に応じた断面略半円状に積層されるが、説明を明確にするために、円形状に積層されるものとして説明する。
【0046】
そして、造形工程において、3Dプリンタ1では、
図7に示すように、同一又は相似形状の所定の断面形状の層LYを所定の積層ピッチp2で高さ方向にオーバーラップさせて重複部を形成しつつ順次積層して高さ方向に中実となるように粗造形物W1を造形する。このとき、各層LYにおけるノズル11の走査経路については、同一でもよいし、異なっていてもよい。例えば、
図5(a)または
図5(b)に示す走査経路Lの場合には、下層の終点PEを上層の始点PSとし、下層の始点PSを上層の終点PEとして、下層と上層とでノズル11の移動方向を反対とすることで、効率よくノズル11を移動させることができる。
【0047】
積層ピッチp2については、積層される下の層LYの上部に生じている積層痕による凹部が粗造形物W1の内部に空洞として残留しないよう、その凹部を埋めるように設定すればよい。また、積層ピッチp2が小さく、ノズル11の開口が造形テーブル5または下の層LYに近いほど樹脂材料Rが潰れて拡がるため、より密に積層できる。本実施の形態では、積層ピッチp2は、原則ノズル11の開口幅より小さくてよく、例えばピッチp1以下、一例として0.8mmとする。つまり、本実施の形態の積層ピッチp2は、0より大きく、ノズル11の開口幅の1/2未満である。そのため、上下に隣接する層LYの断面形状同士(樹脂材料同士)がオーバーラップして(図中の二点鎖線に示す)、高さ方向に中実となる。なお、積層ピッチp2については、全ての層LYにおいて一定である必要はなく、粗造形物W1の形状に応じて、積層ピッチp2を任意に変えてよい。
【0048】
このように層LYを複数、例えば5層積層して造形された粗造形物W1の例を
図2(a)、
図8(a)及び
図8(b)に示す。粗造形物W1については、上部にノズル11から吐出される樹脂材料Rの断面形状に起因する不要部である積層痕Sが上部に、樹脂材料Rの断面形状の積層に起因する不要部である積層痕Sが側部に、それぞれ生じている。
【0049】
そこで、造形された粗造形物W1を3Dプリンタ1の造形テーブル5から取り外した後、粗造形物W1の表面部にある積層痕Sを除去装置によって除去することにより、
図2(b)に示す樹脂造形物Wを造形する(除去工程)。例えば、積層痕Sを除去する際に、除去装置として切削装置を用いる場合には、粗造形物W1を切削装置にセットし、この切削装置の切削工具を使用して粗造形物W1の表面部である外側部(ウォール)を切削し、切削面である下面15、上面16、及び、側面17を平面状に形成する。切削工具については、切削部位が細かいほど樹脂造形物Wの表面の滑らかさが向上するものの、滑らかさと加工時間とは互いにトレードオフ関係にあるから、樹脂造形物Wに要求される滑らかさの度合いに応じて選択すればよい。
【0050】
図2ないし
図8に示す例では、積層する層LYを例えば5層としたが、層LYを増やすことにより、
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)に造形例を示すように、立方体形状の粗造形物W1(樹脂造形物W)を製造することも可能である。
図9(b)に示す造形例では、除去工程を簡易に施して積層痕Sを除去することで加工時間が短く、また切削部位が少ないことで無駄が少なくて済み、
図9(c)に示す造形例では、除去工程をより入念に実施することで滑らかな樹脂造形物Wを製造できる。
【0051】
このように、3Dプリンタ1を使用して樹脂材料Rを中実となるように積層して粗造形物W1を造形し、その粗造形物1の不要部である積層痕Sを除去して樹脂造形物Wを造形することにより、3Dプリンタ1に使用可能な多様な樹脂材料Rを用いて任意の寸法の樹脂造形物Wを、層間の段差等を生じることなく製造できるので、品質が良好な所望の寸法の樹脂造形物Wを簡素な工程で容易に製造できる。
【0052】
射出成形により高さ(厚み)が大きい樹脂造形物を成形する場合、内部発熱やガス、成形収縮等に起因して鬆や空洞(ボイド)等の内部不良が不可避的に生じやすくなるのに対し、3Dプリンタ1を使用して中実な層LYを高さ方向に中実となるように積層して粗造形物W1を造形することにより、粗成形物(樹脂造形物)を射出成形する場合等と比較して、鬆や空洞(ボイド)等の内部不良が少なく、高さ(厚み)が大きく、中実な粗造形物W1(樹脂造形物W)を製造できる。
【0053】
造形工程において、各層LYを造形する際に造形物製造装置のノズル11を一筆書き状に移動させつつ樹脂材料Rを吐出することにより、ノズル11の移動距離を短くすることができ、粗造形物W1の造形速度が向上する。
【0054】
また、造形工程では、粗造形物W1の周回上に沿って樹脂材料Rを順次積層していくことにより、製造される粗造形物W1に樹脂原料Rの偏り等が生じにくく、樹脂造形物Wの品質が向上する。
【0055】
さらに、造形工程において、樹脂材料Rをオーバーラップさせ、重複部を作成することにより、層LY毎には走行経路間の隙間がなくなるとともに、高さ方向には層LY毎に形成されている積層痕の凹部がその上に隣接する層LYの樹脂材料Rにより埋められて、空洞として粗造形物W1(樹脂造形物W)に内包されにくくなり、粗造形物W1を中実に造形できる。
【0056】
そして、従来品のような押出成形や射出成形による切削加工用の樹脂ブロックの場合には、各成型方法に適した樹脂材料しか使用できず、また肉厚等にも限度があったのに対して、本実施の形態の樹脂造形物Wは、3Dプリンタ1を用いて粗造形物W1から不要部を除去して形成することにより、型を使わず任意の樹脂材料により任意の寸法に造形できるので、つまり材料自由度及び寸法自由度が高いので、肉厚を含め最適寸法(必要最小量)かつグレードを問わない最適材料からなる、高品位な機械加工(切削加工)用の樹脂ブロックとして好適に利用することができる。つまり、樹脂造形物Wは、機械加工(切削加工)用の樹脂ブロックとして寸法最適化された状態で成形できるので、所望のサイズ、形状、材料の加工品を製造するのに適しているとともに、機械加工における削り量も最小とすることができ、材料ロスが少なく環境配慮型の成形品となる。例えば、樹脂造形物Wを、直方体、立方体、又は、円柱として形成することにより、機械加工しやすい形状となる。特に、除去工程において、粗造形物W1を切削加工することで樹脂造形物Wの各面をフラットに形成できるので、完成した樹脂造形物Wに対して機械加工(切削加工)をする際に、フラットな面を利用して押さえ治具により強固に固定することが可能となり、加工精度が向上する。
【0057】
したがって、上記の方法によって、例えば量水器ボックス等の、従来複雑な金型を必要としていた、リブ等を多数有する大型の樹脂造形物Wを造形することも可能となる。
【0058】
また、樹脂造形物Wは、一体でブロック状に形成できるので、板状や棒状の樹脂造形物を接着剤やボルト等により複数組み合わせてブロック状とする場合と比較して、手間やコストの削減が可能になるとともに、環境面への配慮にもつながる。しかも、樹脂造形物Wについては、接着等の継ぎ目が生じないので、例えば樹脂造形物Wを加工した加工品を液体等の流体を用いる試験等に用いた場合でも、樹脂造形物Wの強度や水密性能に関わる安全率等を精度よく算出できる。
【0059】
熱溶解積層方式の3Dプリンタ1、特にペレット式の3Dプリンタ1を用いることにより、安価に取得可能な一般的なペレット状の多種多様な熱可塑性樹脂(リサイクルペレット材等でもよい)を樹脂材料Rとして利用することが可能となり、機械加工用、特に切削加工用の樹脂ブロックとして樹脂造形物Wを好適に用いることができる。
【0060】
樹脂造形物Wは、任意の材料により造形できるため、従来の一般的な樹脂造形物と同様に、複数を接着、超音波溶着や振動溶着等により組み合わせて、より大型の一つの樹脂造形物(樹脂ブロック)とすることも可能である。
【0061】
なお、上記の実施の形態において、3Dプリンタ1のノズル11の走査経路Lは、層LYを樹脂材料により埋めることができれば任意に設定してよい。
【0062】
例えば、
図10(a)に示すように、走査経路Lをジグザグ状に設定してもよい。この例では、走査経路Lのジグザグ方向がX軸方向及びY軸方向に平行又は略平行な成分からなる折れ線である。この場合、各層LYについて同一の走査経路Lを用いてもよいが、一の層LYの走査経路Lの終点PEを、その層LYに積層される他の層LYの走査経路Lの始点とすることにより、ノズル11の移動距離を抑制して粗造形物W1の造形速度をより向上することができるとともに、これらの走査経路Lを例えば交差または直交させることにより、粗造形物W1の内部を効率よく中実とすることができる。その場合、ジグザグのパターンを細かくするほど粗造形物W1の内部に鬆が発生することを抑制できる。
【0063】
また、走査経路Lのジグザグ方向については、
図10(b)に示す例のように、X軸方向及びY軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0064】
さらに、
図10(c)に示すように、外側部を除く範囲を埋めるランダム状等の任意の走査経路に沿ってノズル11を移動させた後、周回上に沿ってそれらの外側を囲む外側部を造形するように走査経路Lを設定してもよいし、その順番を逆にして、外側を囲む外側部を造形した後、その内側を、ランダム状等の任意の走査経路Lによって埋めるようにしてもよい。
【0065】
なお、
図10(a)ないし
図10(c)では、積層される他の層LYの走査経路の例を二点鎖線で示している。
【0066】
また、除去工程における切削量(材料ロス)、つまり積層痕Sをより減らすために、造形工程におけるノズル11の動作を角部や頂点部等で停止しにくいシームレスなものとして、粗造形物W1の頂点部に角を立たせるようにした走査経路Lを設定してもよい。つまり、ノズル11の動作を円滑にしてノズル11の停滞に起因する樹脂原料Rの溜まり(樹脂溜まり)を減らし、粗造形物W1の外形を樹脂造形物Wの外形に近づけた、不要部が少ない造形とする。
【0067】
例えば、
図11(a)に示すように、走査経路Lを、X軸方向とY軸方向とに沿う直線からなる折れ線であって稲妻紋状(角渦巻状)に巻回する線として設定する。走査経路Lの線のピッチは、ノズル11の径寸法以上でも以下でもよいが、ノズル11から吐出された樹脂原料Rの密着によって埋められる程度の隙間とする。また、走査経路Lの走査方向は、外側から内側でも、内側から外側でもよい。図示される例では、例えば図中の右上の端点を始点PSとし、時計回り方向に徐々に内側に巻き込むように走査経路Lを設定する。この走査経路Lは、等間隔または略等間隔の折れ線とする。
【0068】
好ましくは、走査経路Lは、
図11(a)に示す例に基づき、
図11(b)に示すように、積層方向から見て閉曲線状に設定する。すなわち、積層方向から見て、始点PSと終点PEとが一致するように走査経路Lを構成する。このとき、走査経路Lについては、
図11(a)に示す稲妻紋に対して両側にオフセットした稲妻紋状のオフセット線からなる二重形状の端点同士を連結した形状である。したがって、この走査経路Lは、積層方向から見て始点PSと終点PEとが一致した一筆書き状となっている。
【0069】
さらに好ましくは、
図11(b)に示す例では、走査経路Lを積層方向、本実施の形態ではZ軸方向も含めて一筆書き状とする。すなわち、走査経路Lは、積層方向にも延びる螺旋状となっている。そのため、3Dプリンタ1は、ノズル11を積層方向に所定の速度で連続的に移動させつつ樹脂材料Rを吐出して積層していくこととなる。ノズル11を積層方向に移動させる速度は、例えば樹脂材料Rの種類や樹脂造形物Wの大きさに応じて設定される。この速度は、基本的に一定とするが、部分的に速度が異なっていてもよい。そして、この
図11(b)に示す走査経路Lに沿って、造形工程において、3Dプリンタ1では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動しつつ樹脂原料Rを積層して中実となるように粗造形物W1を造形する。この
図11(b)に示す走査経路Lに基づく粗造形物W1の造形例を
図12(a)に示し、その粗造形物Wに対して除去工程を経て製造された樹脂造形物Wの造形例を
図12(b)に示す。この
図12では、例えば3Dプリンタ1としてペレット式のものを用い、樹脂原料Rとして、有色の熱可塑性樹脂(例えばABS等)を用いた例を示す。
【0070】
このように、走査経路Lを稲妻紋状に形成することにより、粗造形物W1の頂点部に角が立つので、除去工程で除去する不要部つまり切削量を抑制できるだけでなく、ノズル11が直線状に短い距離で移動するため、走査経路L中の一の線において樹脂原料Rを吐出するタイミングと、その隣接する線において樹脂原料Rを吐出するタイミングとが近く、隣接する樹脂原料R同士が溶けている状態で密着するので、樹脂原料Rの吐出が小さい吐出率でも樹脂原料R同士が溶着しやすくなり、また、吐出率を増加させた場合には内部に鬆や空洞(ボイド)等の不良がより生じにくくなり、粗造形物W1及び樹脂造形物Wの仕上がりが良好である。
【0071】
稲妻紋状の走査経路Lは、例えば
図5(b)に示す例と比較して、同一面積において曲がり角が少ない分、ノズル11の移動経路が簡略・短縮化され、粗造形物W1及び樹脂造形物Wの仕上がりがより良好になる。
【0072】
また、ノズル11を積層方向に連続的に移動させつつ樹脂材料Rを吐出して積層していくことにより、ノズル11が常時動いていることとなり、樹脂原料Rが溜まる位置が生じにくく、粗造形物W1の外観における側部等の凹凸、つまり積層痕Sが抑制されるとともに、吐出率を低減させた、より少ない樹脂原料Rでの粗造形物W1の造形が可能となるため、稲妻紋状の形状による切削量の低減と併せて、材料ロスの削減が可能となり、環境に配慮し、かつ、低コストの樹脂造形物Wを製造可能となる。スクリュ回転数を下げ吐出量を低くし、吐出率を下げる操作をすることも可能である。例えば、上記
図12に示す例の場合には、スクリュ回転数を下げ、吐出率を95%に下げても、積層した樹脂原料R同士が密着し、鬆や空洞等の不良が生じないことが分かった。
【0073】
また、他の例として、正方形SCを略偏りなく埋め尽くす、例えば深さ有限のヒルベルト曲線等、深さ有限の任意の2次元平面上の空間充填曲線(ペアノ曲線)等を走査経路Lとして用いてもよい。
図13には、ペアノ曲線を利用した走査経路Lの例を示す。この例では、走査経路Lは、線対称な一次のペアノ曲線、つまりX軸方向とY軸方向とに沿う直線からなるS字の折れ線と逆S字の折れ線とを対称または略対称に連結した折れ線の両側にオフセットしたオフセット線からなる二重形状の端点同士を連結した閉曲線状となっている。したがって、この走査経路Lは、積層方向から見て、または平面視で、始点PSと終点PEとが一致した一筆書き状となっている。この場合、始点PS(終点PE)は任意の位置としてよいが、始点PS(終点PE)には樹脂原料Rの溜まりが生じやすいので、粗造形物W1の外側部の積層痕Sを減少させるために、好ましくは走査経路Lにおける最も外側の位置、すなわち粗造形物W1の外側部を形成する位置から中心側(内側)に離れた位置に設定する。走査経路Lの線のピッチは、ノズル11の径寸法以上でも以下でもよいが、ノズル11から吐出された樹脂原料Rの密着によって埋められる程度の隙間とする。
【0074】
さらに好ましくは、
図13に示す例では、
図11(b)に示す例と同様に、走査経路Lを積層方向、本実施の形態ではZ軸方向も含めて一筆書き状とする。そして、この
図13に示す走査経路Lに沿って、造形工程において、3Dプリンタ1では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動しつつ樹脂原料Rを積層して面方向(平面視)及び高さ方向に中実となるように粗造形物W1を造形する。この
図13に示す走査経路Lに基づく粗造形物W1の造形例を
図14に示す。この
図14では、例えば3Dプリンタ1としてペレット式のものを用い、樹脂原料Rとして、有色の熱可塑性樹脂(例えばABS等)を用いた例を示す。
【0075】
このように、走査経路Lを、ペアノ曲線を利用した単純な折れ線形状に形成することにより、粗造形物W1の頂点部に角が立ち、基本的に左右両側部(X軸方向及びY軸方向)に突出するフリル状の積層痕Sを除去工程で除去するだけで樹脂造形物Wを容易に製造できる。特に、
図13に示す走査経路Lの例では、折り返し部分を粗造形物W1の外側部に近接させて設定しているので、ノズル11の折り返しに伴い生じる樹脂原料Rの溜まりに起因するフリル状の積層痕Sを粗造形物W1の外側部に設定でき、折り返し部分を粗造形物W1の内側に設定する場合と比較して、樹脂溜まりに起因する空洞等が粗造形物W1の内部に生じにくくなる。また、例えば、フリル状の積層痕Sの切削寸法を予め考慮に入れておくことにより、フリル状の積層痕Sを有する二つの側部を切削するだけで正方形状の底面を持つ角柱状の粗造形物W1を容易に製造することも可能になる。つまり、品質が良好な樹脂造形物Wを製造するための除去工程が簡素かつ短時間で済み、製造の手間やコストを抑制できる。また、ノズル11の移動距離が正方形SCを埋め尽くすための最短距離となるとともに、走査経路Lにおいて左右方向に直線状の線の長さが略一定であるため、樹脂原料Rの偏りが生じにくく、かつ、隣り合う線同士の樹脂原料Rを吐出するタイミングが近く、樹脂原料Rが溶けた状態で密着しやすくなり、樹脂原料Rの吐出が小さい吐出率でも樹脂原料R同士が溶着しやすいことで、鬆や空洞(ボイド)等の不良がより生じにくくなり、粗造形物W1及び樹脂造形物Wの仕上がりが良好である。
【0076】
ペアノ曲線に基づき形成した
図13に示す走査経路Lは、例えば
図5(b)や
図11(b)に示す例と比較して、同一面積において曲がり角がより少なく効率がよい走査経路である分、ノズル11の移動経路がより簡略・短縮化され、粗造形物W1及び樹脂造形物Wの仕上がりがより良好であって、最も汎用性が高い走査経路Lとなる。しかも、除去工程において、除去装置による積層痕Sの除去方向、例えば切削装置による切削方向を走査経路Lが長く延びる方向、つまり
図13の左右方向(XY軸方向)とすることにより、走査経路Lによる積層痕Sの方向と切削痕の方向とが略一致し、樹脂造形物Wを製造した際に積層痕Sをより目立ちにくくできる。
【0077】
また、ノズル11を積層方向に連続的に移動させつつ樹脂材料Rを吐出して積層していくことにより、ノズル11が常時動いていることとなり、樹脂原料Rが溜まる位置が生じにくく、粗造形物W1の外観における側部等の凹凸、つまり積層痕Sが抑制されるとともに、吐出率を低減させた、より少ない樹脂原料Rでの粗造形物W1の造形が可能となるため、稲妻紋状の形状による切削量の低減と併せて、少ない量の樹脂で製造でき、材料ロスの削減が可能となり、環境に配慮し、かつ、低コストの樹脂造形物Wを製造可能となる。上記
図14に示す例の場合には、少なくとも92.5%以上の吐出率があれば樹脂原料Rが密着し、鬆や空洞等の不良が生じないことが分かった。
【0078】
なお、粗造形物W1から不要部を除く部分に収まる大きさや形状の樹脂造形物Wであれば、上記のように直方体状または立方体状の粗樹脂造形物Wから除去工程によって不要部を除去することで、例えば円柱状や円錐状等の樹脂造形物Wを製造することが可能であるが、例えば粗造形物W1自体の外形を円柱状や円筒状等としてもよい。
【0079】
例えば
図15(a)に示すように、同心環状の線を一筆書き状に連ねた走査経路Lを設定してもよいし、
図15(b)に示すように、(アルキメデスの)螺旋状つまり等間隔の渦巻曲線状に走査経路Lを設定してもよい。
図15(b)に示す例の場合には、例えば各層LYの走査経路Lを二次元のアルキメデスの螺旋状とし、一の層LYにおいては、外端部又は中心部を始点としてノズル11を中心部又は外端部へと渦巻状に移動させつつ樹脂材料Rを吐出し、その走査経路Lの終点を、その層LYに積層される他の層LYの走査経路Lの始点として、一の層LYと同一の走査経路Lを逆に辿るようにノズル11を移動させることにより、層LY間のノズル11の移動距離を抑制できる。また、例えば円錐形状の樹脂造形物Wを造形したい場合、
図15(b)に示す例において、走査経路を三次元のアルキメデスの螺旋状とし、ノズル11を積層方向に連続的に移動させつつ樹脂材料を吐出して積層していくようにしてもよい。
図15(b)に示す走査経路Lの例は曲線状であることから、
図5(b)や
図11(b)等に示す走査経路Lの例と比較して、移動距離は相対的に長くなるものの、各層LYの印刷時間が長くなる分、粗造形物W1の造形完了後の温度が低くなることにより、反りが発生しにくい。また、Z方向へ積層される際、先に積層され造形完了した部分の温度が低いことで、過剰な熱による積層不良(例えば積層崩壊)が発生しにくい。そのため、寸法サイズが大きい樹脂造形物Wを製造する際には、
図15(b)に示す走査経路Lに基づいて製造した粗造形物W1を用いると、より良好な品質の樹脂造形物Wを得ることができる。
【0080】
したがって、少ない樹脂量で製造し造形物Wの鬆を減らしたいときには、
図13に示すような走査経路Lを用いて粗造形物W1を製造し、樹脂造形物Wの反りを防止したいときには
図15に示すような走査経路Lを用いて粗造形物W1を製造して、それぞれ不要部を切削することで所望の品質、形に合わせた樹脂造形物Wを作成可能である。
【0081】
また、アルキメデスの螺旋の場合には、係数a、係数b及び媒介変数tを用いてXt=a・t・cost、Yt=b・t・sint、Zt=tと表され、式が単純であることから、Xt、Yt、Ztに対して、例えば係数aと係数bとを異なる数に設定することにより楕円形状等の粗造形物W1を容易に製造できる。三次元のアルキメデスの螺旋状の走査経路を用いることで、特に円錐形状の粗造形物W1から樹脂造形物Wを得る際において除去する不要部を減らすことができる。
【0082】
さらに、円柱状等の円形の底面形状を持つ樹脂造形物Wを製造する際には、この円を内接円とする正方形状の走査経路Lを設定して粗造形物W1を造形することにより、樹脂造形物Wを得る際において除去する不要部をより減らすことができる。
【0083】
また、
図5(b)や
図15(a)、
図15(b)等に示す走査経路Lを閉曲線状に形成することで、ノズル11を積層方向に連続的に移動させつつ樹脂材料Rを吐出して積層することが可能になる。
【0084】
さらに、走査経路Lを閉曲線状とする場合には、例えば線同士を接近させて設定することにより、これら複数の線によって、粗造形物W1つまり樹脂造形物Wにおいて、ノズル11の径寸法と比較して幅広い、すなわち厚みが大きい壁部等を製造できるため、手間を要するノズル11の交換を逐一実施することなく、走査経路Lの設定によってノズル11の径寸法の大きさに依存しない厚みの樹脂造形物Wを製造できる。
図16には、筒状、例えば六角形筒状の粗造形物W1を形成するための走査経路Lの例を示す。この例では、走査経路Lを閉曲線とし、粗造形物W1の外側部に相当する部分を多重とすることにより、外側部の厚みをノズル11の径寸法の略逓倍、本実施の形態では略2倍にすることができる。また、筒状の粗造形物W1を形成するための走査経路Lの場合、閉曲線状に形成すると、多重の線同士を接続する箇所において不可避的に接続部分が生じ、この接続部分が外観に露出すると積層痕Sを除去しても接続部分の跡が外観に残ってしまうため、接続部分を外方から覆う突出部分18を設定して粗造形物W1を製造し、例えば突出部分18に始点PS(終点PE)を設定して、除去工程において突出部分18の外側部を図中の二点鎖線ILに示す位置等から不要部として切削等により除去することで、接続部分を外観に直接露出させないようにして外観を良好に保つことができる。
図16に示す走査経路Lに基づき造形された樹脂造形物Wの例を
図17に示す。この樹脂造形物Wは例えばランプシェードであり、走査経路Lの周方向の角度を積層方向に徐々に変えていくことにより、周方向に捻れた形状となっている。このように、各層の走査経路Lは、同一のパターンであったとしても、積層方向において周方向に角度を変えることによって複雑な形状の粗造形物W1(樹脂造形物W)を製造できる。外側部に現れる積層痕については、除去工程において必要に応じて研磨及び/または切削して除去すればよい。
【0085】
さらに、各層の走査経路のパターンは同一のものや類似するものでなくてもよく、例えば上記の走査経路のパターンを、層毎に異ならせて任意に組み合わせてもよい。
【0086】
さらに、造形物製造装置は、シングルノズルヘッド仕様のものに限らず、デュアルノズルヘッド仕様(マルチノズルヘッド仕様)のものでもよい。特に、X軸方向とY軸方向とに独立して移動可能な複数のノズルを有する仕様の場合、例えば粗造形物W1(樹脂造形物W)を構成する樹脂原料をノズル毎に異ならせることによって、より多機能な樹脂造形物Wを造形することが可能になる。例えば材料コストが高い樹脂原料を必要部分にのみ用い、残りの他の部分については材料コストが安い樹脂原料を用いる等することにより、製造コストを低減することが可能になる。一例として、粗造形物W1(樹脂造形物W)の外側部分(表面部分)を耐候性が良好なASA等の樹脂原料により構成し、内側部分をより安価なABS等の樹脂原料により構成する等することにより、樹脂造形物Wの製造後にコーティングを施すことなく耐候性に優れた樹脂造形物Wを安価に製造することも可能である。また、同じ樹脂原料であっても、色やグレードが異なるものをノズル毎に用いることにより、部分的に色や物性が異なる樹脂造形物W等を造形することも可能である。さらに、相溶性のない樹脂原料同士を組み合わせて樹脂造形物Wを造形すること等も可能である。
【0087】
3D造形において、一般的に行われるラスター(インフィル)、コンター(ウォール)を積層する手法や、吐出量を増やすといった手法を用いることなく、走査経路Lの設定で一筆書きによって、ノズル11の径寸法の大きさに依存しない厚みの樹脂造形物Wを製造することが可能である。なお、積層方法はこの限りではなく、樹脂同士が溶融し密着する方法であればよい。
【0088】
また、造形物製造装置は、樹脂材料を吐出するノズルを有する造形ヘッド(吐出手段)がX軸方向及びZ軸方向に移動可能でかつ造形テーブルがY軸方向に移動可能な構成には限定されず、造形ヘッドが造形テーブルに対して相対的に少なくとも3次元に移動可能な構成であればよく、例えば造形ヘッドがX軸方向及びY軸方向に移動可能でかつ造形テーブルがZ軸方向に移動可能な構成や、例えば造形ヘッドがロボットアーム(例えば6軸のロボットのロボットアームが好ましい)の先端部に設けられて、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3方向を含む任意の方向に移動可能な構成等でもよい。
【0089】
例えば、さらに造形テーブル5がX軸、Y軸、Z軸に移動/回転可能である構成でもよい。これら造形テーブル5の構成は、3軸の内少なくとも1つ選ばれればよい。
【0090】
また、一筆書きで3次元の空間を埋めつくすフラクタル図形(例えばヒルベルト曲線)においては、特に8軸造形、あるいは9軸造形の場合、ノズルが干渉することなくスムーズに造形でき、かつ最短距離でノズルが相対的に移動可能であるため、造形効率が向上する。
【符号の説明】
【0091】
1 造形物製造装置である3Dプリンタ
11 ノズル
15 切削面である上面
16 切削面である下面
17 切削面である側面
LY 層
R 樹脂材料
S 不要部である積層痕
W 樹脂造形物
W1 粗造形物
【要約】
【課題】品質が良好な所望の寸法の樹脂造形物を容易に製造できる樹脂造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】3次元の樹脂造形物Wを製造する製造方法であって、3Dプリンタを使用して樹脂材料を積層して粗造形物W1を造形する造形工程と、粗造形物W1の不要部を除去して樹脂造形物Wを造形する除去工程と、を備える。
【選択図】
図2