(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-08
(45)【発行日】2025-05-16
(54)【発明の名称】工程計画作成支援装置、工程計画作成支援システム、工程計画作成支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20250509BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20250509BHJP
G06Q 10/0639 20230101ALI20250509BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/0631
G06Q10/0639
(21)【出願番号】P 2024520246
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2022040891
(87)【国際公開番号】W WO2023218682
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2022079193
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】菅原 佑介
(72)【発明者】
【氏名】八田 俊之
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-117538(JP,A)
【文献】特開2020-034849(JP,A)
【文献】特開2009-245043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得する生産計画情報取得部と、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、前記生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出する人員配置算出部と、
生産順序を入れ替えて、前記人員配置算出部に人員配置を算出させて、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成する工程計画情報生成部と、
作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成する作業時間情報更新部と、
を備える、
工程計画作成支援装置。
【請求項2】
前記作業時間情報更新部は、
前記撮影情報が示す映像から、作業者および作業者が扱っている生産品の種別を検出する検出部、
前記撮影情報に基づいて、作業者の要素作業時間を計測する作業時間計測部、
前記検出部が検出した作業者の過去の作業実績がある場合に、前記検出部が検出した作業者および作業者が扱っている生産品の種別と前記作業時間計測部が計測した要素作業時間とに基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新する更新部、ならびに、
前記検出部が検出した作業者の過去の作業実績がない場合に、各作業者の属性を示す人物属性情報に基づいて、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者を特定し、特定した作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を示す前記作業時間情報を生成する作業時間予測部と、
を含む、
請求項1に記載の工程計画作成支援装置。
【請求項3】
前記作業時間情報が示す要素作業時間は、各作業者の各要素作業時間の確率分布である、
請求項2に記載の工程計画作成支援装置。
【請求項4】
前記作業時間予測部は、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の現時点での各要素作業時間の確率分布を、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の習熟率で割り戻すことで、過去の作業実績がない作業者の各要素作業時間の確率分布を得る、
請求項3に記載の工程計画作成支援装置。
【請求項5】
前記作業時間予測部は、前記過去の作業実績がない作業者の作業実績が決められた回数蓄積されると、前記過去の作業実績がない作業者を前記過去の作業実績がある作業者とし、前記検出部が検出した作業者および作業者が扱っている生産品の種別と前記作業時間計測部が計測した要素作業時間とに基づいて、前記作業
時間情報を生成する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の工程計画作成支援装置。
【請求項6】
前記撮影情報に基づいて前記出勤者を特定し、前記出勤者情報を生成する出勤者情報生成部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の工程計画作成支援装置。
【請求項7】
作業者を撮影するカメラと、前記カメラと接続する工程計画作成支援装置とを備え、
前記工程計画作成支援装置は、
生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得する生産計画情報取得部、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、前記生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出する人員配置算出部、
生産順序を入れ替えて、前記人員配置算出部に人員配置を算出させて、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成する工程計画情報生成部、ならびに、
前記カメラが作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成する作業時間情報更新部、
を有する、
工程計画作成支援システム。
【請求項8】
工程計画作成支援装置が実行する、
生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得するステップと、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、前記生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出するステップと、
生産順序を入れ替えて、人員配置を算出するステップを実行し、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成するステップと、
作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成するステップと、
を備える、
工程計画作成支援方法。
【請求項9】
コンピュータに、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、取得した生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出するステップと、
生産順序を入れ替えて、人員配置を算出するステップを実行し、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成するステップと、
作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工程計画作成支援装置、工程計画作成支援システム、工程計画作成支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場において、製品の生産計画に対して人員配置をし、各々の作業者に作業指示を与える場合に、作業者全員の作業時間の情報を得て、生産性の評価値を最大化する効率的な作業指示を作業者に与える方法がある。
【0003】
特許文献1には、組立ラインの作業ステーションごとに割り振られた作業について作業主体に対応する作業時間を算出し、算出された作業時間をもとに、作業ステーションごとの評価指標を算出して出力する工程計画支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、新人、応援者など、データがないために作業時間が不明の作業者がいる場合、その作業者がどれくらいの時間で作業ができるかが分からず、効率的な作業指示ができないことがある。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、作業時間が不明の作業者がいる場合にも効率的な作業指示を可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る工程計画作成支援装置は、生産計画情報取得部と、人員配置算出部と、工程計画情報生成部と、作業時間情報更新部とを備える。生産計画情報取得部は、生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得する。人員配置算出部は、出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出する。工程計画情報生成部は、生産順序を入れ替えて、人員配置算出部に人員配置を算出させて、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成する。作業時間情報更新部は、作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の作業時間情報に基づいて、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、過去の作業実績がない作業者の作業時間情報を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、各作業者の作業時間に基づいて生産性の評価値を最大化する工程計画を作成する場合に、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の作業時間情報に基づいて、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を示す作業時間情報を生成することで、作業時間が不明の作業者がいる場合にも効率的な作業指示が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る工程計画作成支援システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る工程計画作成支援装置の機能構成例を示す図
【
図3】実施の形態1に係る作業時間情報の一例を示す図
【
図4】実施の形態1に係る作業定義情報の一例を示す図
【
図5】実施の形態1に係る作業時間情報更新部の機能構成例を示す図
【
図6】実施の形態1に係る人物属性情報の一例を示す図
【
図7】実施の形態1に係る新人Xの人物属性情報を示す図
【
図8】実施の形態1に係る新人Xの要素作業時間を予測するプロセスを概念的に表す図
【
図9】実施の形態1に係る新人Xの要素作業時間の確率分布のグラフの一例を示す図
【
図10】実施の形態1に係る工程計画作成支援処理の動作の一例を示すフローチャート
【
図11】実施の形態1に係る作業時間予測処理の動作の一例を示すフローチャート
【
図12】実施の形態1および2に係る工程計画作成支援装置のハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本実施の形態に係る工程計画作成支援装置、工程計画作成支援システム、工程計画作成支援方法およびプログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一または相当する部分には同じ符号を付す。以下の実施の形態では、製品の生産計画に基づいて、製品を生産する工程に含まれる作業を作業者に割り当てる工程計画の作成を支援する例について説明する。製品は生産品の例である。
【0011】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る工程計画作成支援システム100の構成について、
図1を用いて説明する。工程計画作成支援システム100のユーザ(図中、管理者)は、工程計画作成支援装置1に、本日の製品の生産計画を示す生産計画情報を入力する。ここでの生産計画情報は、製品の機種ごとの生産台数を示す情報であり、生産する順序は決まっていなくてもよい。製品の機種は、生産品の種別の例である。
【0012】
カメラ2は、作業者を撮影するカメラである。例えば、カメラ2として、作業を行っている作業者の手元を撮影できる3Dカメラが固定設置されている。カメラ2は、作業者を撮影した映像を示す撮影情報を工程計画作成支援装置1に送信する。
【0013】
工程計画作成支援装置1は、入力された生産計画情報および受信した撮影情報に基づいて、生産計画に対応する作業に対する人員配置を算出する。工程計画作成支援装置1は、算出した人員配置に基づいて、生産性を評価する評価値を算出する。工程計画作成支援装置1は、生産順序を入れ替えて人員配置を行い、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を算出する。工程計画作成支援装置1は、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を出力する。
【0014】
続いて、工程計画作成支援装置1の機能構成について、
図2を用いて説明する。工程計画作成支援装置1は、カメラ2から撮影情報を受信し、撮影情報に基づいて、出勤している作業者である出勤者を特定し、出勤者を示す出勤者情報を生成する出勤者情報生成部11と、出勤者情報を記憶する出勤者情報記憶部12と、各作業者の作業時間を示す作業時間情報を記憶する作業時間情報記憶部13と、カメラ2から撮影情報を受信し、撮影情報に基づいて、作業時間情報を更新する作業時間情報更新部14と、ユーザからの本日の生産計画を示す生産計画情報の入力を受け付ける生産計画情報取得部15と、生産計画情報を記憶する生産計画情報記憶部16と、機種毎の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報を記憶する作業定義情報記憶部17とを備える。
【0015】
また、工程計画作成支援装置1は、出勤者情報、作業時間情報および作業定義情報に基づいて、生産計画情報が示す生産計画に対応する作業に対する人員配置を算出する人員配置算出部18と、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を算出し、工程計画情報を生成する工程計画情報生成部19と、工程計画情報を出力する工程計画情報出力部20とを備える。
【0016】
出勤者情報生成部11は、カメラ2から受信した撮影情報が示す映像に映っている人物を特定することにより、在場している作業者名、つまり出勤者名を取得する。出勤者情報生成部11は、出勤者名を示す出勤者情報を生成し、出勤者情報記憶部12に記憶する。映像に映っている人物を特定する手段としては、例えば作業者に固有のAR(Argumented Reality)マーカを読み取る方法、顔認識技術を用いる方法などがある。
【0017】
作業時間情報記憶部13は、各作業者の作業時間を示す作業時間情報を記憶する。ここで、作業時間情報について、
図3を用いて説明する。
図3の例では、作業時間情報は、作業者・機種・要素作業の組み合わせごとに要素作業にかかる時間を記録したデータである。以下、要素作業にかかる時間を要素作業時間という。作業時間情報が示す要素作業時間は定数でなく、要素作業時間を横軸とし、回数を縦軸とする連続型の確率分布である。
図3は、作業者1・機種M1・要素作業E01、作業者1・機種M1・要素作業E02、作業者2・機種M1・要素作業E01、および、作業者2・機種M1・要素作業E02の組み合わせの要素作業時間の確率分布を示している。
【0018】
作業者・機種・要素作業の組み合わせについて、過去の作業実績がある場合には、実績の要素作業時間を示す作業時間情報が格納されているが、過去の作業実績がない場合(新人、応援者など)は、予測の要素作業時間を示す作業時間情報が格納される。要素作業時間の予測方法については、後述する。また、作業者・機種・要素作業の組み合わせについて、新たな作業実績が得られた場合には、作業情報が更新される。
【0019】
図2に戻り、人員配置算出部18は、出勤者情報、作業時間情報および作業定義情報に基づいて、生産計画情報が示す生産計画(機種および台数)に対して、生産性を評価する評価値が最大になる人員配置を行う。人員配置とは、製品を生産する各工程を構成する要素作業ごとに、作業者を割り振ることである。生産性を評価する評価値とは、例えば生産台数を作業者の総在場時間で割った値(台/時間)である。この場合、生産台数を作業者の総在場時間で割った値(台/時間)が大きいほど、生産性は高い。
【0020】
ここで、作業定義情報について
図4を用いて説明する。
図4の例では、作業定義情報は、機種毎の生産プロセスがどのような要素作業で構成されているかを示す情報である。機種M1の生産プロセスは「段取」、「工程1」、「工程2」および「工程3」の4つの工程を有する。「段取」は、「要素作業E01」、…、「要素作業E0n0」で構成される。「工程1」は、「要素作業E11」、…、「要素作業E1n1」で構成される。「工程2」は、「要素作業E21」、…、「要素作業E2n2」で構成される。「工程3」は、「要素作業E31」、…、「要素作業E3n3」で構成される。例えば、工程1は、サブ組、工程2は、特性試験、工程3は、総組であるとする。「段取」の「要素作業E01」は、例えば治具交換、要素作業E0n0は、例えば記入作業である。「工程1」の「要素作業E11」は、例えば治具交換、要素作業E1n1は、例えばネジ締めである。「工程2」の「要素作業E21」は、例えば治具交換、要素作業E2n2は、例えば検査機取り外しである。「工程3」の「要素作業E31」は、例えば治具交換、要素作業E3n3は、例えば搬送作業である。
【0021】
図2に戻り、工程計画情報生成部19は、機種の生産順序を入れ替え、再度、人員配置算出部18に評価値が最大になる人員配置を実行させる。人員配置算出部18が算出した最大の評価値が前回の計算結果を上回った場合、人員配置および生産順序の最適解を更新する。これを繰り返し、工程計画情報生成部19は、人員配置算出部18が算出した全通りの最大の評価値を比較し、評価値を最大化する人員配置および生産順序を最適解として、工程計画情報を生成する。
【0022】
工程計画情報出力部20は、工程計画情報生成部19が生成した工程計画情報を出力する。工程計画情報の出力方法は、例えば、画面表示でもよいし、音声出力でもよい。あるいは、ユーザ(管理者または作業者)が使用するユーザ端末に送信してもよい。
【0023】
作業時間情報更新部14は、カメラ2から受信した撮影情報が示す映像に映っている人物および機種を特定し、要素作業時間を計測する。作業時間情報更新部14は、計測した要素作業時間に基づいて、作業時間情報記憶部13が記憶する作業時間情報を更新する。
【0024】
作業時間情報更新部14の機能構成について、
図5を用いて説明する。作業時間情報更新部14は、撮影情報が示す映像から作業者および作業者が扱っている製品の機種を検出する検出部141と、作業者の要素作業時間を計測する作業時間計測部142と、作業時間計測部142が計測した要素作業時間に基づいて作業時間情報を更新する更新部143と、過去の作業実績がある各作業者の属性を示す人物属性情報を記憶する人物属性情報記憶部144と、検出部141が検出した作業者の過去の作業実績がない場合(新人、応援者など)に、人物属性情報に基づいて、要素作業時間を予測する作業時間予測部145とを備える。
【0025】
検出部141は、カメラ2から受信した撮影情報が示す映像から作業者および作業者が扱っている製品の機種を検出する。検出部141は、人物属性情報記憶部144が記憶する人物属性情報を参照し、検出した作業者が過去の作業実績がある作業者であるか否かを判定する。検出部141は、検出した作業者が過去の作業実績がある作業者である場合、検出した作業者および機種を示す情報と撮影情報とを作業時間計測部142に送る。検出部141は、検出した作業者が過去の作業実績がある作業者でない場合(新人、応援者など)、検出した作業者および機種を示す情報と撮影情報とを作業時間予測部145に送る。
【0026】
作業時間計測部142は、検出部141から検出した作業者および機種を示す情報と撮影情報とを受け取ると、撮影情報が示す映像に基づいて、作業者が行っている要素作業を特定し、作業者の要素作業時間を計測する。要素作業を特定する手段として、例えば、行動分類装置がある。行動分類装置は、作業者が作業をしている映像に基づいて、AIによる判断で自動的に連続した作業の映像を要素作業ごとに区切ることができ、要素作業時間を取得することができる。あるいは、治具で要素作業が識別できる場合には、治具に固有のARマーカを読み取って要素作業を特定してもよい。作業時間計測部142は、検出部141から受け取った作業者および機種を示す情報と、算出した要素作業時間を示す情報とを更新部143に送る。
【0027】
更新部143は、作業時間計測部142から受け取った作業者および機種を示す情報と要素作業時間を示す情報とに基づいて、作業時間情報記憶部13が記憶する作業情報のうち、対応する作業者・機種・要素作業の組み合わせの作業時間情報を更新する。
【0028】
ここで、人物属性情報について
図6を用いて説明する。人物属性情報は、作業者の属性とその数値を格納する。
図6の例では、作業者の属性は、「氏名」、「性別」、「年代」、「勤続年数」、「体格」、「作業A評価」、「作業B評価」、および、「作業C評価」である。
【0029】
「性別」の数値は、男が1、女が2である。「年代」の数値は、10代が1、20代が2、30代が3、40代が4、50代が5、60代以上が6である。「勤続年数」の数値は、10年以内が1、11年~20年が2、21年~30年が3、31年~40年が4、41年以上が5である。「体格」の数値は、痩せているが1、標準が2、太っているが3である。「作業A評価」とは、作業Aを完了する時間の速さについての評価である。同様に、「作業B評価」および「作業C評価」はそれぞれ、作業Bおよび作業Cを完了する時間の速さについての評価である。作業A、作業Bおよび作業Cには、例えば、部品を取る、取付ける、ネジ締め、電子部品挿入、接着作業、はんだ付け作業、搬送作業などがある。「作業A評価」、「作業B評価」および「作業C評価」の数値は、速いが3、標準が2、遅いが1である。「作業A評価」、「作業B評価」および「作業C評価」の評価値は予め決められたルールに従って付与される。
【0030】
人物属性情報の作業者の属性の数値は、
図6の例に限らない。例えば、「年代」をより細かく5歳単位で分類してもよいし、年齢の値そのものにしてもよい。「勤続年数」を勤続年数の値そのものにしてもよい。「体格」を身長および体重から算出されるBMIの値にしてもよい。作業A、作業Bおよび作業C以外の作業を完了する時間の速さについての評価を属性に含んでもよい。また、人物属性情報には、過去の作業実績がない作業者(新人、応援者など)の属性およびその数値も含まれる。
【0031】
図5に戻り、作業時間予測部145は、人物属性情報に基づいて、過去の作業実績がない作業者(新人、応援者など)に近い過去の作業実績がある作業者を、計算式により判定する。作業時間予測部145は、過去の作業実績がない作業者(新人、応援者など)に近い過去の作業実績がある作業者の作業情報を参照し、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測する。
【0032】
具体的に、過去の作業実績がない作業者である新人Xの要素作業時間を予測する例について、
図7~
図9を用いて説明する。作業時間予測部145は、次の手順1から手順4を実行して新人Xの要素作業時間を予測する。手順1は、新人Xと属性が最も類似している人物(過去の作業実績がある作業者)を特定する。手順2は、その人物の作業時間情報を作業時間情報記憶部13から読み出す。手順3は、習熟度を逆算する。手順4は、新人Xの該当機種、該当要素作業における要素作業時間の確率分布を算出する。
【0033】
まず手順1について説明する。新人Xが有する属性の値をa01,a02,・・・,a0Nとする。
図7の例では、新人Xの属性は、「性別」が1(男)、「年代」が2(20代)、「勤続年数」が1(10年以内)、「体格」が3(太っている)である。また、「作業A評価」は2、「作業B評価」は1、「作業C評価」は3である。作業者i(i=1,2,・・・,N)がもつ属性値をai1,ai2,・・・,aiNとする。このとき新人Xと作業者iの属性の類似度Siは以下の数1で表される。
【0034】
【0035】
作業時間予測部145は、属性の類似度Siが最小となる作業者iを、新人Xに最も属性が類似する作業者であると判定する。係数kj(j=1,・・・,n),(0≦kj≦1)は、人物属性情報に含まれる属性ごとの重み付け係数であり、kjの値が小さいほど、その属性が強く類似度に影響する。
【0036】
また、作業時間予測部145は、新人Xが実際に作業を行い、作業時間計測部142によって要素作業時間が計測されると、予め決められたタイミングで係数kj(j=1,・・・,n)を更新する。係数kj(j=1,・・・,n)の更新方法の詳細は後述する。
【0037】
作業時間予測部145は、係数kj(j=1,・・・,n)の初期値として、例えば、(性別)k1=1.0、(年代)k2=0.5、(勤続年数)k3=0.5、(対角)k4=0.7、(作業A評価)k5=0.1、(作業B評価)k6=0.1、(作業C評価)k7=0.1といった値を与える。初期値では、類似度を予測する上で相関が高いと考えられる属性の係数kjは小さくするとよい。
【0038】
なお、数1では、最小二乗法を用いているが、類似度を算出する手段は、最小二乗法に限らず、他の手法を用いてもよい。例えば、重回帰分析が挙げられる。
【0039】
手順2で、作業時間予測部145は、属性の類似度Siが最小となる作業者iの作業時間情報を作業時間情報記憶部13から読み出す。手順2で選定した作業者iの該当機種、該当要素作業の要素作業時間は、作業者iが経験によって、ある程度その要素作業に習熟した結果、形成された確率分布である。新人Xはこの経験がない。そこで、手順3では、新人Xの要素作業時間を予測する上で、習熟度を逆算する。習熟度は一般的に以下の数2で表すことができる。
【0040】
[数2]
y(x)=cp^a(x)
【0041】
y(x)は、生産回数x回目の要素作業時間であり、x≧0である。cは、生産回数1回目の要素作業時間であり、c≧0である。pは習熟率であり、p=y(2x)/y(x)である。a(x)=logx/log2である。
【0042】
作業時間予測部145は、新人Xとの属性の類似度が最も高い作業者iの現時点(実績数x)での要素作業時間の確率分布を、習熟率pで割り戻すことで、新人Xの要素作業時間の確率分布を得る。習熟率pおよび実績数xは、作業者ごとに保持されている値であり、各作業者の習熟率pおよび実績数xを示す習熟度情報は、人物属性情報記憶部144に記憶されている。なお、作業実績が増えるごとに実績に応じて習熟度情報が示す習熟率pの値は更新される。
【0043】
手順4では、新人Xの該当機種、該当要素作業における要素作業時間の確率分布のグラフを算出する。作業時間予測部145は、同様に手順1~4を繰り返し、すべての機種、すべての要素作業に対して、新人Xの要素作業時間の確率分布のグラフを算出する。
【0044】
図8は、新人Xの要素作業時間を予測するプロセスを概念的に表す図である。
図8の例では、新人Xとの属性の類似度Siが最小となる作業者iは、作業者4である。つまり、作業者1~4のうち、作業者4の属性が新人Xの属性に最も近い。作業時間予測部145は、新人Xとの類似度が最も高い作業者4の現時点での要素作業時間の確率分布を、習熟率pで割り戻すことで、新人Xの要素作業時間の確率分布を得る。
【0045】
図9は、作業時間予測部145が予測した新人Xの要素作業時間の確率分布のグラフの一例を示す図である。
図9の例では、新人X・機種M1・要素作業E01の組み合わせの要素作業時間の確率分布を示している。
【0046】
作業時間予測部145は、予測した新人Xの各要素作業時間の確率分布を示す作業情報を作業時間情報記憶部13に記憶する。新人Xの作業実績が決められた回数蓄積されると、作業時間予測部145は、新人Xの実績の各要素作業時間の確率分布を示す作業情報を作業時間情報記憶部13に記憶する。決められた回数は、例えば50回とする。作業時間情報記憶部13に実績の各要素作業時間の確率分布を示す作業情報が記憶されると、新人Xは、作業実績がある作業者となる。
【0047】
ここで、係数kj(j=1,・・・,n)の更新方法の詳細について説明する。作業時間予測部145は、新人Xの作業時間情報を生成すると、事前に予測した要素作業時間と、実績に基づく要素作業時間とを比較し、精度の評価を行い、類似度の予測に用いる係数kj(j=1,・・・,n)を更新する。
【0048】
新人Xの要素作業時間として予測された確率密度関数をf0(t)、新人Xの実績の要素作業時間として得られた確率密度関数をfX(t)と表す。t(0≦t)は要素作業時間を表す実数とする。まず、作業時間予測部145は、予測精度の評価を行う。作業時間予測部145は、予測と実績との差に基づいて、予測精度を評価する評価値Vを、以下の数3を用いて算出する。
【0049】
【0050】
作業時間予測部145は、評価値Vを履歴として記憶する。予測精度が高いほど評価値Vは小さな数をとり、予測要素作業時間と実績要素作業時間とが完全に一致した場合、V=0となる。
【0051】
続いて、作業時間予測部145は、他の作業者iの実績要素作業時間の確率密度関数をfi(t)とし、他の作業者i(i=1,・・・,N)との要素作業時間の類似度Viを、以下の数4を用いて算出する。
【0052】
【0053】
要素作業時間の類似度Viが最小になる作業者(新人Xと最も要素作業時間の類似性が高い人物)を作業者Yとする。作業時間予測部145は、属性の類似度を定量化する数1を用いて、他の作業者i(i=1,・・・,N)との属性の類似度Siを計算する。作業時間予測部145は、下記の数5を満たす係数k1,・・・,knを算出し、更新する。
【0054】
【0055】
数5において、kj(j=1,・・・,n),(0≦kj≦1)である。数5を満たす係数k1,・・・,knの算出方法として、例えば、各係数を小数点以下3桁とし、有限実行回数内で繰り返し探索を行い、最適解を求める方法がある。要素作業時間の類似度Viが最も小さい作業者Yとの属性の類似度SYが最も小さくなる係数kj(j=1,・・・,n)に更新することで、新人Xと要素作業時間の類似性が最も高い人物との属性の類似性も最も高くなり、次回以降の要素作業時間の予測精度を高めることができる。
【0056】
工程計画作成支援装置1は、人物属性情報記憶部144が記憶する人物属性情報および作業定義情報記憶部17が記憶する作業定義情報についても、予め決められたタイミングで更新する。
【0057】
人物属性情報については、例えば、「年代」、「勤続年数」、「体格」、「作業A評価」、「作業B評価」、「作業C評価」などの変化する項目の値は変化する度に更新を行う。なお、工程計画作成支援装置1は、人物属性情報に付随する情報として、作業者の生年月日、入社年月日を示す情報を記憶している場合は、「年代」および「勤続年数」を自動更新することができる。また、工程計画作成支援装置1は、例えば作業者の健康を管理する社内の健康管理システムと連携することにより、作業者の体格を示す情報を取得して、「体格」を自動更新することができる。
【0058】
作業定義情報については、例えば、新機種の生産開始時、製品の設計変更時など、機種ごとの生産プロセスの各工程の要素作業の構成が変更される場合に、ユーザが作業定義情報を編集し、更新する。
【0059】
ユーザが作業定義情報を更新する構成では、ユーザが更新を忘れたり、要素作業の構成の変更に気付かなかったりする可能性がある。そのため、工程計画作成支援装置1は、機種ごとの生産プロセスの各工程の要素作業の構成が変更された可能性がある場合に、ユーザに通知を行う構成にしてもよい。例えば、工程計画作成支援システム100では、作業者が作業を行っている間、カメラ2が作業者を撮影している。工程計画作成支援装置1の作業時間情報更新部14は、カメラ2から受信した撮影情報が示す映像に映っている作業者、機種および要素作業を特定する。工程計画作成支援装置1は、作業時間情報更新部14が特定した機種に対して作業者が実際に行っている要素作業の順番が作業定義情報が示す該当機種の要素作業の順番と異なる場合、ユーザに該当機種における要素作業の構成が変更された可能性がある旨を通知する。
【0060】
ユーザへの通知方法は、例えば、画面にメッセージを表示してもよいし、音声で出力してもよいし、ユーザが使用するユーザ端末に送信してもよい。また、メッセージと共に作業定義情報の編集画面を表示し、ユーザによる編集を受け付けてもよい。このとき、作業定義情報の編集画面では、特定した機種に対して作業者が実際に行っている要素作業の順番に基づいて、変更する要素作業の候補を表示してもよい。
【0061】
続いて、工程計画作成支援装置1が実行する工程計画作成支援処理の流れについて、
図10を用いて説明する。
図10に示す工程計画作成支援処理は、例えば、工程計画作成支援装置1に電源が投入された時に開始する。工程計画作成支援装置1の生産計画情報取得部15は、本日の生産計画を示す生産計画情報が入力されたか否かを判定する(ステップS11)。生産計画情報が入力されない場合(ステップS11;NO)、処理はステップS19に移行する。生産計画情報が入力されると(ステップS11;YES)、生産計画情報取得部15は、入力された生産計画情報を生産計画情報記憶部16に記憶する。人員配置算出部18は、出勤者情報、作業時間情報および作業定義情報に基づいて、生産計画情報が示す生産計画(機種および台数)に対して、生産性を評価する評価値が最大になる人員配置を実行する(ステップS12)。
【0062】
図3の例では、作業時間情報は、作業者・機種・要素作業の組み合わせごとに要素作業時間を記録したデータである。作業時間情報が示す要素作業時間は定数でなく、要素作業時間を横軸とし、回数を縦軸とする連続型の確率分布である。
図3は、作業者1・機種M1・要素作業E01、作業者1・機種M1・要素作業E02、作業者2・機種M1・要素作業E01、および、作業者2・機種M1・要素作業E02の組み合わせの要素作業時間の確率分布を示している。
【0063】
図4の例では、作業定義情報は、機種毎の生産プロセスがどのような要素作業で構成されているかを示す情報である。機種1の生産プロセスは「段取」、「工程1」、「工程2」および「工程3」の4つの工程を有する。「段取」は、「要素作業E01」、…、「要素作業E0n0」で構成される。「工程1」は、「要素作業E11」、…、「要素作業E1n1」で構成される。「工程2」は、「要素作業E21」、…、「要素作業E2n2」で構成される。「工程3」は、「要素作業E31」、…、「要素作業E3n3」で構成される。
【0064】
図10に戻り、工程計画情報生成部19は、人員配置算出部18が算出した最大の評価値が前回の計算結果を上回ったか否かを判定する(ステップS13)。前回の計算結果を上回っていない場合、あるいは、前回の計算結果がない場合(ステップS13;NO)、処理はステップS15に移行する。前回の計算結果を上回った場合(ステップS13;YES)、工程計画情報生成部19は、人員配置および生産順序の最適解を更新し(ステップS14)、人員配置算出部18が全通りの最大の評価値を算出したか否かを判定する(ステップS15)。
【0065】
全通りの最大の評価値を算出していない場合(ステップS15;NO)、工程計画情報生成部19は、機種の生産順序を入れ替える(ステップS16)。処理はステップS12に戻り、再度、人員配置算出部18に評価値が最大になる人員配置を実行する。ステップS12~ステップS16を繰り返す。人員配置算出部18が全通りの最大の評価値を算出した場合(ステップS15;YES)、工程計画情報生成部19は、人員配置算出部18が算出した全通りの最大の評価値を比較し、評価値を最大化する人員配置および生産順序を最適解として、工程計画情報を生成する(ステップS17)。
【0066】
工程計画情報出力部20は、工程計画情報生成部19が生成した工程計画情報を出力する(ステップS18)。工程計画作成支援装置1の電源がOFFになっていない場合(ステップS19;NO)、処理はステップS11に戻り、ステップS11~ステップS19を繰り返す。工程計画作成支援装置1の電源がOFFになった場合(ステップS19;YES)、処理を終了する。
【0067】
続いて、工程計画作成支援装置1が実行する作業時間予測処理の流れについて、
図11を用いて説明する。
図11に示す作業時間予測処理は、例えば、工程計画作成支援装置1の検出部141が検出した作業者の過去の作業実績がない場合に開始する。工程計画作成支援装置1の作業時間予測部145は、新人Xと属性が最も類似している人物(過去の作業実績がある作業者)を特定する(ステップS21)。
【0068】
図8の例では、新人Xと属性が最も類似している人物は作業者4である。
【0069】
図11に戻り、作業時間予測部145は、特定した人物の作業時間情報を作業時間情報記憶部13から読み出す(ステップS22)。作業時間予測部145は、特定した人物の習熟度を算出する(ステップS23)。特定した人物の現時点(実績数x)での要素作業時間の確率分布を、習熟率で割り戻すことで、新人Xの要素作業時間の確率分布を算出し(ステップS24)、処理を終了する。
【0070】
図9の例では、新人X・機種M1・要素作業E01の組み合わせの要素作業時間の確率分布を示している。
【0071】
実施の形態1に係る工程計画作成支援装置1によれば、各作業者の要素作業時間に基づいて生産性の評価値を最大化する工程計画を作成する場合に、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の作業時間情報に基づいて、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を示す作業時間情報を生成することで、作業時間が不明の作業者がいる場合にも効率的な作業指示が可能になる。また、要素作業時間を確率分布で取り扱うので、要素作業時間にばらつきがある場合にも対応できる。
【0072】
(実施の形態2)
実施の形態2では、作業時間予測部145において、実施の形態1とは異なる予測プロセスを用いる。その他の構成は実施の形態1と同様である。ある作業者の要素作業時間を、負の指数をもつ指数関数モデルとして、以下の数6で表す。
【0073】
[数6]
y(x)=p-x+c
【0074】
y(x)は、生産回数x回目の要素作業時間であり、x≧0である。cは、生産回数1回目の要素作業時間であり、c≧0である。pは、習熟率である。ある作業者の生産回数x回目における実績の要素作業時間をT(x)とし、以下の数7が最小となるpをその作業者の習熟率とする。
【0075】
【0076】
習熟率pの小数点以下の桁数は、一般的に桁数が大きくなるにつれて計算時間がかかるため、ユーザが求める精度に応じて決めるとよい。作業時間予測部145は、実施の形態1と同様に、過去の作業実績がない作業者との属性の類似度が最も高い過去の作業実績がある作業者の現時点(実績数x)での要素作業時間の確率分布を、習熟率pで割り戻すことで、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間の確率分布を得る。
【0077】
実施の形態2に係る工程計画作成支援装置1によれば、習熟率を用いて算出する要素作業時間と実績の要素作業時間との差が最小となる習熟率を、過去の作業実績がない作業者の要素作業時間の予測に用いることで、予測精度を高めることができる。
【0078】
上記の実施の形態1および2では、出勤者情報生成部11は、撮影情報が示す映像に映っている人物を特定することにより、在場している作業者名、つまり出勤者名を取得し、出勤者名を示す出勤者情報を生成したが、これに限らない。例えば、出勤者情報生成部11は、作業者を撮影した静止画に写っている人物を特定することで、在場している作業者名、つまり出勤者名を取得し、出勤者名を示す出勤者情報を生成してもよい。あるいは、工程計画作成支援装置1は、作業者の出退を管理する社内の出退管理システムと連携することにより、出勤者情報を取得してもよい。
【0079】
上記の実施の形態1および2では、工程計画作成支援装置1は、作業時間情報記憶部13、出勤者情報記憶部12および作業定義情報記憶部17を備えるが、これらの記憶部は外部の装置またはシステムが備えてもよい。また、作業時間情報記憶部13および作業時間情報更新部14は、工程計画作成支援装置1とは別の作業時間情報更新装置が備えてもよい。同様に、出勤者情報記憶部12および出勤者情報生成部11は、工程計画作成支援装置1とは別の出勤者情報生成装置が備えてもよい。
【0080】
上記の実施の形態1および2では、工程計画作成支援装置1の生産計画情報取得部15は、本日の製品の生産計画を示す生産計画情報の入力を受け付けるが、これに限らない。ユーザは工程計画を作成したい日の製品の生産計画を示す生産計画情報を工程計画作成支援装置1に入力すればよい。あるいは、あるいは、工程計画作成支援装置1は、生産計画を管理する社内の生産計画システムと連携し、ユーザが工程計画を作成したい日(指定日)を工程計画作成支援装置1に入力すると、生産計画情報取得部15は、生産計画システムから指定日の生産計画を示す生産計画情報を取得する構成にしてもよい。また、工程計画を作成する単位は1日に限らず、半日、2日など、その他の単位でもよい。
【0081】
上記の実施の形態1および2では、製品を生産する工程に含まれる作業を作業者に割り当てる工程計画の作成を支援する例について説明したが、製品に限らず、生産する工程に予め決められた作業が含まれる生産品であればよい。
【0082】
工程計画作成支援装置1のハードウェア構成について
図12を用いて説明する。
図12に示すように、工程計画作成支援装置1は、一時記憶部101、記憶部102、計算部103、入力部104、送受信部105および表示部106を備える。一時記憶部101、記憶部102、入力部104、送受信部105および表示部106はいずれもBUSを介して計算部103に接続されている。
【0083】
計算部103は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。計算部103は、記憶部102に記憶されている制御プログラムに従って、出勤者情報生成部11、作業時間情報更新部14、人員配置算出部18および工程計画情報生成部19の処理を実行する。
【0084】
一時記憶部101は、例えばRAM(Random-Access Memory)である。一時記憶部101は、記憶部102に記憶されている制御プログラムをロードし、計算部103の作業領域として用いられる。
【0085】
記憶部102は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc - ReWritable)などの不揮発性メモリである。記憶部102は、工程計画作成支援装置1の処理を計算部103に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、計算部103の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを計算部103に供給し、計算部103から供給されたデータを記憶する。出勤者情報記憶部12、作業時間情報記憶部13、生産計画情報記憶部16および作業定義情報記憶部17は、記憶部102に構成される。
【0086】
入力部104は、キーボード、ポインティングデバイス、音声入力機器などの入力装置と、入力装置をBUSに接続するインターフェース装置である。入力部104を介して、ユーザが入力した情報が計算部103に供給される。入力部104は、生産計画情報取得部15として機能する。作業時間情報更新部14がメッセージと共に作業定義情報の編集画面を表示し、ユーザによる編集を受け付ける構成では、入力部104は、作業時間情報更新部14として機能する。
【0087】
送受信部105は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインターフェースまたはLAN(Local Area Network)インターフェースである。工程計画情報出力部20がユーザ(管理者または作業者)が使用するユーザ端末に工程計画情報を送信する構成では、送受信部105は、工程計画情報出力部20として機能する。
【0088】
表示部106は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置である。工程計画情報出力部20が工程計画情報を画面表示する構成では、送受信部105は、工程計画情報出力部20として機能する。作業時間情報更新部14がメッセージと共に作業定義情報の編集画面を表示し、ユーザによる編集を受け付ける構成では、表示部106は、作業時間情報更新部14として機能する。
【0089】
図2に示す工程計画作成支援装置1の出勤者情報生成部11、出勤者情報記憶部12、作業時間情報記憶部13、作業時間情報更新部14、生産計画情報取得部15、生産計画情報記憶部16、作業定義情報記憶部17、人員配置算出部18、工程計画情報生成部19および工程計画情報出力部20の処理は、制御プログラムが、一時記憶部101、計算部103、記憶部102、入力部104、送受信部105および表示部106などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0090】
その他、前記のハードウェア構成およびフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0091】
計算部103、一時記憶部101、記憶部102、入力部104、送受信部105、表示部106などの工程計画作成支援装置1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する工程計画作成支援装置1を構成してもよい。また、インターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロードすることで工程計画作成支援装置1を構成してもよい。
【0092】
また、工程計画作成支援装置1の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体、記憶装置に格納してもよい。
【0093】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して提供することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、通信ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを提供してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できる構成にしてもよい。
【0094】
なお、本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。即ち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。
【0095】
本出願は、2022年5月13日に出願された、日本国特許出願特願2022-079193号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2022-079193号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得する生産計画情報取得部と、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、前記生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出する人員配置算出部と、
生産順序を入れ替えて、前記人員配置算出部に人員配置を算出させて、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成する工程計画情報生成部と、
作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成する作業時間情報更新部と、
を備える、
工程計画作成支援装置。
(付記2)
前記作業時間情報更新部は、
前記撮影情報が示す映像から、作業者および作業者が扱っている生産品の種別を検出する検出部、
前記撮影情報に基づいて、作業者の要素作業時間を計測する作業時間計測部、
前記検出部が検出した作業者の過去の作業実績がある場合に、前記検出部が検出した作業者および作業者が扱っている生産品の種別と前記作業時間計測部が計測した要素作業時間とに基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新する更新部、ならびに、
前記検出部が検出した作業者の過去の作業実績がない場合に、各作業者の属性を示す人物属性情報に基づいて、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者を特定し、特定した作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を示す前記作業時間情報を生成する作業時間予測部と、
を含む、
付記1に記載の工程計画作成支援装置。
(付記3)
前記作業時間情報が示す要素作業時間は、各作業者の各要素作業時間の確率分布である、
付記2に記載の工程計画作成支援装置。
(付記4)
前記作業時間予測部は、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の現時点での各要素作業時間の確率分布を、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の習熟率で割り戻すことで、過去の作業実績がない作業者の各要素作業時間の確率分布を得る、
付記3に記載の工程計画作成支援装置。
(付記5)
前記作業時間予測部は、前記過去の作業実績がない作業者の作業実績が決められた回数蓄積されると、前記過去の作業実績がない作業者を前記過去の作業実績がある作業者とし、前記検出部が検出した作業者および作業者が扱っている生産品の種別と前記作業時間計測部が計測した要素作業時間とに基づいて、前記作業情報を生成する、
付記2から4のいずれかに記載の工程計画作成支援装置。
(付記6)
前記撮影情報に基づいて前記出勤者を特定し、前記出勤者情報を生成する出勤者情報生成部をさらに備える、
付記1から5のいずれかに記載の工程計画作成支援装置。
(付記7)
作業者を撮影するカメラと、前記カメラと接続する工程計画作成支援装置とを備え、
前記工程計画作成支援装置は、
生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得する生産計画情報取得部、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、前記生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出する人員配置算出部、
生産順序を入れ替えて、前記人員配置算出部に人員配置を算出させて、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成する工程計画情報生成部、ならびに、
前記カメラが作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成する作業時間情報更新部、
を有する、
工程計画作成支援システム。
(付記8)
工程計画作成支援装置が実行する、
生産品の生産計画を示す生産計画情報を取得するステップと、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、前記生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出するステップと、
生産順序を入れ替えて、人員配置を算出するステップを実行し、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成するステップと、
作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成するステップと、
を備える、
工程計画作成支援方法。
(付記9)
コンピュータに、
出勤している作業者である出勤者を示す出勤者情報、生産品の生産プロセスの各工程を構成する要素作業を示す作業定義情報、および、各作業者の要素作業にかかる時間である要素作業時間を示す作業時間情報に基づいて、取得した生産計画情報が示す生産計画に対応する要素作業に対する人員配置を算出するステップと、
生産順序を入れ替えて、人員配置を算出するステップを実行し、生産性を評価する評価値を最大化する人員配置および生産順序を示す工程計画情報を生成するステップと、
作業者を撮影した映像を示す撮影情報に基づいて、過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報を更新し、過去の作業実績がない作業者に最も属性が類似する過去の作業実績がある作業者の前記作業時間情報に基づいて、前記過去の作業実績がない作業者の要素作業時間を予測し、前記過去の作業実績がない作業者の前記作業時間情報を生成するステップと、
を実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0096】
1 工程計画作成支援装置、2 カメラ、11 出勤者情報生成部、12 出勤者情報記憶部、13 作業時間情報記憶部、14 作業時間情報更新部、15 生産計画情報取得部、16 生産計画情報記憶部、17 作業定義情報記憶部、18 人員配置算出部、19 工程計画情報生成部、20 工程計画情報出力部、100 工程計画作成支援装システム、101 一時記憶部、102 記憶部、103 計算部、104 入力部、105 送受信部、106 表示部、141 検出部、142 作業時間計測部、143 更新部、144 人物属性情報記憶部、145 作業時間予測部。