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特許7679063循環粉砕処理装置、循環粉砕処理方法、アルコールの製造方法及びセルロースを含む組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-09
(45)【発行日】2025-05-19
(54)【発明の名称】循環粉砕処理装置、循環粉砕処理方法、アルコールの製造方法及びセルロースを含む組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C13B 45/00 20110101AFI20250512BHJP
   B02C 15/08 20060101ALI20250512BHJP
   C13K 1/02 20060101ALI20250512BHJP
   C12P 7/06 20060101ALI20250512BHJP
【FI】
C13B45/00
B02C15/08 A
C13K1/02
C12P7/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021078034
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171415
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000152181
【氏名又は名称】株式会社奈良機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】森 英明
(72)【発明者】
【氏名】川上 頼一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】若松 喜浩
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-079192(JP,A)
【文献】特開平8-218084(JP,A)
【文献】特開2001-122973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C13B
B02C
C13K
C12P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器下部に、スラリー状処理物の供給口が設けられ、容器内部に、回転するメインシャフトが立設され、該メインシャフトに複数のサブシャフトが間隔を置いて周設支持され、該サブシャフトに複数のリング状部材がサブシャフトとの間に間隙を設けて嵌設され、該リング状部材が容器内壁に当接するように配置されていると共に、容器上部に、スラリー状処理物の排出口が設けられた粉砕装置と、
上記粉砕装置の上記排出口と連結されたスラリー状処理物の外部循環経路部と、
上記外部循環経路部の排出口から排出されたスラリー状処理物を、上記粉砕装置の上記供給口に搬送するスクリューフィーダを有し、
上記スクリューフィーダが、上記外部循環経路部の排出口から上記粉砕装置の供給口にかけて配置され、
スラリー状処理物を、上記粉砕装置、上記外部循環経路部、上記スクリューフィーダの順に循環させて粉砕処理を行うことを特徴とする、
循環粉砕処理装置。
【請求項2】
上記外部循環経路部は、外部タンクを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の循環粉砕処理装置。
【請求項3】
上記スクリューフィーダは、その先端部は上記粉砕装置の供給口直下よりもさらに下流に延伸され、該スクリューフィーダのスクリュー羽根は、上記粉砕装置の供給口の直前までは送り方向に形成され、供給口直下には形成されておらず、供給口よりも下流側では戻り方向に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の循環粉砕処理装置。
【請求項4】
上記スクリューフィーダは、2軸スクリューに形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の循環粉砕処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の循環粉砕処理装置を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理することを特徴とする、循環粉砕処理方法。
【請求項6】
上記スラリー状処理物は、固形分濃度が3~15質量%の植物系バイオマスのスラリーであることを特徴とする、請求項5に記載の循環粉砕処理方法。
【請求項7】
上記植物系バイオマスは、木質系、草本系、セルロース系のいずれかのバイオマスであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の循環粉砕処理方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の循環粉砕処理装置を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理し、得られた粉砕処理物を糖化、発酵処理することを特徴とする、アルコールの製造方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の循環粉砕処理装置を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理することを特徴とする、セルロースファイバーを含む組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環粉砕処理装置に関するもので、特に、高濃度のスラリー状処理物を粉砕処理するのに適した循環粉砕処理装置、該循環粉砕処理装置を用いた循環粉砕処理方法、アルコールの製造方法及びセルロースを含む組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロースなどの多数の糖が結合した多糖類と、多数のベンゼン環を有するフェノール類からなるリグニンとで構成されている。セルロースやヘミセルロースとリグニンとで形成された高次構造かつ難溶性の高分子組成物を、リグノセルロースともいう。
セルロースは、結晶性を示し、それが集合して形成された繊維又はその集合体は、非常に強固である。さらにリグニンがその強固な繊維を互いに強力に接着し、かつ覆っているので、非常に強固な積層構造体が形成されている。木質材料が構造材料として利用されているのは、その強固で丈夫な構造を持っているが故である。
この強固で丈夫な構造が、木質系バイオマスからセルロースを単離する際や、セルロースを単糖類に分解する際の障害となっている。同じ多糖類であるデンプンは、このような強固な構造を持っていないため、容易に単糖類に分解しエタノールに変換できる。
【0003】
セルロースからのエタノール製造工程の糖化方法としては、これまで様々な方法が提案されてきているが、主に酸糖化法と酵素糖化法に大別できる。
酸糖化法は、セルロースを硫酸などの強酸によって直接単糖に分解する方法で、短時間で反応が進むメリットがあるが、過分解により発酵阻害物質が発生する問題や、耐酸性設備や糖化液や廃液からの硫酸回収・処理が必要となるなど、環境負荷が高いという問題がある。
一方、酵素糖化法では、酵素反応は50℃程度の比較的低い温度で進行し、多量の強酸や強アルカリ薬品などを必要としないため、環境負荷は小さいというメリットはあるが、上記した酸糖化法に比べて長い反応時間を要するという欠点がある。また、セルラーゼと総称される酵素は極めて多数存在し、目的のセルロース、ヘミセルロースに対して適切な酵素を選択し、調合する必要があり、現状では高コストであるという問題もある。さらには、酵素糖化法のもっとも大きな問題は、強固な木質構造が障害となり、そのままでは酵素反応が進行しないということである。即ち、セルロース及びヘミセルロースをリグニンが覆っており、酵素がセルロース及びヘミセルロースに物理的に到達するのが難しいという問題がある。
【0004】
近年、植物由来であることから、生産・廃棄に関する環境負荷が小さい素材として、セルロースファイバーが注目されている。
セルロースファイバーは、軽量であるにもかかわらず、弾性率は高強度繊維で知られるアラミド繊維と同等に高く、温度変化に伴う伸縮はガラス繊維と同等に少ないなどの優れた特性を有する。
セルロースファイバーの用途としては、繊維を断熱材として用いる例、樹脂に分散させてフィラーとして用いる例などが知られている。特に、生分解性樹脂にセルロースファイバーを分散させた複合材料は、生分解性と強度を両立することで、生分解性樹脂の用途が広がる可能性があり、海洋プラスチック問題解決に貢献することが期待されている。また、ナノオーダーに調製されたセルロースナノファイバーは、フィルター部材、高ガスバリア包装部材、エレクトロニクスデバイス、食品、医薬、化粧品、ヘルスケアなど様々な分野において、活用が期待されている。
セルロースファィバーは、パルプ等の植物に由来する繊維を、解繊する処理によって得る事ができる。解繊は、必要に応じて酵素等の存在下で行われる。
セルロースファイバーは、用途によってはセルロース以外の成分が残存していてもよく、この場合はセルロースを含む植物系バイオマスを粉砕処理することで、セルロースが分離し、更に粉砕処理を進めることで、セルロースが解繊され、セルロースファイバーを含む組成物を得る事ができる。
【0005】
ここで、湿式粉砕は、粉砕原料を液中に分散した状態、すなわちスラリー状で粉砕する操作で、粒子が水等に分散しているので微粉砕しやすく、乾式粉砕より到達粒径は細かくなるため、上記したバイオエタノールの製造、セルロースファイバーの製造などに用いられている。
例えば、特許文献1には、ビーズミルを用いて湿式粉砕で植物繊維を微細化することにより、マイクロメートルオーダーのセルロースファイバーを得る方法が開示されている。
ところが、ビーズミルでは、高粘度のスラリー状処理物を粉砕することが難しく、原材料の固形分濃度を高めることができず、固形分濃度が5質量%以下のオーダーで処理されている。このようにして調製したスラリー状処理物は、多量の水を含んでいるため、後工程で多量の水分を除去するために膨大なエネルギーを消費するという課題がある。
【0006】
また、湿式粉砕には、バッチ式と連続式とがある。
バッチ式は、一回の投入量に対して粉砕装置の容器や部材などへの処理物の付着が多く、これらは回収できないために歩留まりが悪くなり、一般的には、投入した固形分の2~3割程度を破棄するものとなっていた。また、バッチ式は、1回の処理量が少ないため、大量に処理するには多数回の処理が必要となり、処理回数が多いことは、バッチの切り替え回数も多くなり、切り替え時の清掃を免れ得ないことなどから、更に大量の破棄分が発生することとなっていた。
一方、連続式は、通常は、処理物を一回通過する1パス方式を意味し、十分な粉砕処理が行えない。そこで、粉砕部から排出された処理物を循環させて再度粉砕する循環方式が検討されている。循環方式の利点としては、微細な粉砕処理が行えるという点だけでなく、タンク等を設けて循環経路を拡大することで、一度に大量の粉砕処理が可能となる点があげられる。粉砕手段の処理能力は同じでも、外部循環経路を設けることで、オペレーターが処理物をセットして運転を開始して処理を待つだけで、大量の粉砕品が得られるため、作業効率の大幅な改善も期待できる。
【0007】
上記したビーズミルにおいても、効率的に大量処理する目的で、図8に示したように、タンクを備えた循環経路を有する循環粉砕処理が行われている。しかし、ビーズミルは、上述したようにスラリーの粘度か高いと、ビーズによる粉砕効率が低下する。またビーズミルは、ビーズを分離する機構(スクリーン等)が必要であり、高粘度のスラリーを処理する場合や、スラリーの流量が多い場合には、ビーズの偏りが生じ、この点も粉砕効率が低下する要因となっていた。それ故、ビーズミルの循環粉砕処理では、更に固形分濃度を下げる必要があり(例えば1質量%程度)、このようにして調製されたスラリー状処理物は、更に多量の水を含んでいることから、後工程で水分を除去するために更に膨大なエネルギーを消費するという課題があった。
【0008】
ビーズを用いない湿式粉砕装置としては、特許文献2に、容器中心に回転するメインシャフトを立設し、該メインシャフトに複数のサブシャフトを間隔を置いて周設支持し、該サブシャフトに複数のリング状部材をサブシャフトとの間に充分な間隙を設けて嵌設し、該リング状部材を前記容器内壁に当接するようにした粉砕装置が開示されている。
この特許文献2に開示された粉砕装置は、回分式(バッチ式)だけでなく、連続式(1パス方式)の処理が可能であることが記載されている。
【0009】
特許文献2に開示されたものと同じ粉砕装置は、特許文献3によれば、固形分濃度40重量%のリン酸カルシウムのスラリーを混合粉砕可能であることが記載されている。特許文献2に開示されている粉砕装置は、このように固形分濃度の高い高粘度のスラリー状処理物を粉砕処理できることから、この粉砕装置を用いて循環粉砕処理を行えば、希釈して固形分濃度を下げることなく、大量の処理物を湿式粉砕処理することが期待できる。特に、木質材料や植物由来の繊維の湿式粉砕に適用することで、上記したバイオエタノールの製造やセルロースファイバーの製造を、従来よりも大量かつ効率的に行えることが期待できる。本発明者らの検討によれば、特許文献2の粉砕装置は、木質材料や植物由来の繊維の湿式粉砕に用いた場合、固形分濃度15質量%までの高い固形分濃度でのスラリー状処理物の粉砕処理が可能であることがわかった。
【0010】
しかしながら、上記した特許文献2に記載された粉砕装置にあっても、図8に示したような、外部循環経路を有する循環粉砕処理を行った場合、以下に記載する課題があることが判明した。
外部タンク等を設けて循環経路を大きく拡大すると、システム全体としては従前のバッチ式に比べて大量の処理物が循環経路内において循環することになる。例えば、外部タンクの容量によっては、バッチ式の十数倍を超える処理物が循環することとなる。このような場合、循環経路全体では流れやすい物が優先して循環してしまい、特許文献2に記載された粉砕装置を用いた場合においても、固形分(処理物)の粉砕処理が思いのほか進まないことが判明した。特に、水と分離しやすい植物系バイオマス材料、例えば木質材料の粉砕処理や、パルプの解繊処理では、この傾向が著しいことが判明した。
特許文献2の粉砕装置では、装置の底面からスラリー状処理物を供給し、粉砕装置の内部では、スラリー状処理物が重力に逆らって上方に移送される構造を有する。これは、固形分濃度が高い状態からスタートしても、粉砕処理が確実に進行するという利点を有する一方、外部タンクを備えた循環経路を有する循環粉砕処理を行った場合、循環経路の各所、特に粉砕装置の供給口の直前で水と固形分の循環速度に差異が生じ、流れ難い固形分(処理物)の粉砕装置への投入が滞り、固形分(処理物)の粉砕処理の進行を妨げているものと推察された。
また、植物系バイオマスの循環粉砕処理では、スラリー状処理物は、初期は水と固形分の混合物だが、粉砕処理の進行にともない粘度が増大する。特に固形分濃度が高い場合は、このような性状や粘性の変化が著しく、初期の水と固形分の混合物の循環処理に比較的対応した搬送手段を選択すると、経時で粘度が上昇し、スラリー状処理物の搬送が不可能になるという問題があり、大量処理のための、初期から経時まで対応可能な簡便なシステムの構築が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-213754号公報
【文献】特開平06-79192号公報
【文献】国際公開2000-58210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、循環経路を有する循環粉砕処理を、初期から経時まで安定して行うことのできる循環粉砕処理装置を提供することにある。特に、植物系バイオマス材料、特に木質材料や植物由来の繊維を、高い固形分濃度のスラリー状処理物の状態で大量に循環粉砕処理することを可能とする循環粉砕処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕~〔9〕に記載した循環粉砕処理装置、循環粉砕処理方法、アルコールの製造方法及びセルロースを含む組成物の製造方法とした。
〔1〕容器下部に、スラリー状処理物の供給口が設けられ、容器内部に、回転するメインシャフトが立設され、該メインシャフトに複数のサブシャフトが間隔を置いて周設支持され、該サブシャフトに複数のリング状部材がサブシャフトとの間に間隙を設けて嵌設され、該リング状部材が容器内壁に当接するように配置されていると共に、容器上部に、スラリー状処理物の排出口が設けられた粉砕装置と、
上記粉砕装置の上記排出口と連結されたスラリー状処理物の外部循環経路部と、
上記外部循環経路部の排出口から排出されたスラリー状処理物を、上記粉砕装置の上記供給口に搬送するスクリューフィーダを有し、
上記スクリューフィーダが、上記外部循環経路部の排出口から上記粉砕装置の供給口にかけて配置され、
スラリー状処理物を、上記粉砕装置、上記外部循環経路部、上記スクリューフィーダの順に循環させて粉砕処理を行うことを特徴とする、
循環粉砕処理装置。
〔2〕上記外部循環経路部は、外部タンクを備えていることを特徴とする、上記〔1〕に記載の循環粉砕処理装置。
〔3〕上記スクリューフィーダは、その先端部は上記粉砕装置の供給口直下よりもさらに下流に延伸され、該スクリューフィーダのスクリュー羽根は、上記粉砕装置の供給口の直前までは送り方向に形成され、供給口直下には形成されておらず、供給口よりも下流側では戻り方向に形成されていることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕に記載の循環粉砕処理装置。
〔4〕上記スクリューフィーダは、2軸スクリューに形成されていることを特徴とする、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の循環粉砕処理装置。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の循環粉砕処理装置を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理することを特徴とする、循環粉砕処理方法。
〔6〕上記スラリー状処理物は、固形分濃度が3~15質量%の植物系バイオマスのスラリーであることを特徴とする、上記〔5〕に記載の循環粉砕処理方法。
〔7〕上記植物系バイオマスは、木質系、草本系、セルロース系のいずれかのバイオマスであることを特徴とする、上記〔5〕又は〔6〕に記載の循環粉砕処理方法。
〔8〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の循環粉砕処理装置を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理し、得られた粉砕処理物を糖化、発酵処理することを特徴とする、アルコールの製造方法。
〔9〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の循環粉砕処理装置を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理することを特徴とする、セルロースファイバーを含む組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明に係る循環粉砕処理装置によれば、循環経路を有する循環粉砕処理を、初期から経時まで安定して行うことのできるものとなる。特に、植物系バイオマス、特に木質材料や植物由来の繊維を、高い固形分濃度のスラリー状処理物の状態で大量に循環粉砕処理することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る循環粉砕処理装置の一実施形態を示した正面図である。
図2図1に示した循環粉砕処理装置の平面図である。
図3図1に示した循環粉砕処理装置の側面図である。
図4】本発明に係る循環粉砕処理装置に用いる粉砕装置の一実施形態を示した縦断面図である。
図5図4に示した粉砕装置の横断面図である。
図6】本発明に係る循環粉砕処理装置に用いるスクリューフィーダの一実施形態の要部を示した正面図である。
図7図6に示したスクリューフィーダのスクリューシャフトを示した平面図である。
図8】ビーズミルを用いた循環粉砕処理装置の従来例を概念的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る循環粉砕処理装置の一実施形態を、図面を示して詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る循環粉砕処理装置1は、図1図3に示したように、粉砕装置100と、外部循環経路部200と、スクリューフィーダ300とから構成されている。
【0018】
上記粉砕装置100は、図4及び図5に詳細に示したように、円筒状の容器101と、該容器101内に装備された回転機構102と、容器の下部に形成されたスラリー状処理物の供給口103と、容器の上部に形成されたスラリー状処理物の排出口104とを有している。
【0019】
上記容器101は、縦方向に中心軸を有する内周面105を有し、処理室となる容器101内には上記した回転機構102が装備されている。この回転機構102は、容器101と中心軸を同一にするメインシャフト106と、このメインシャフト106の長手方向に一定の間隔をおいて固定された上下一対の押え板107,108と、メインシャフト106と平行かつ等距離に位置するように各押え板107、108間に固定されたサブシャフト109から成る。
【0020】
上記押え板107,108は、サブシャフト109の本数と同数の腕を放射状に突出させた形状としている。この押え板107,108の形状を単なる円盤状ではなく、各腕と腕との間に隙間を有する形状とすることにより、容器101内に投入されたスラリー状処理物の対流(混合)度合が向上するとともに、上部の押え板107上にデッドストックとして堆積する処理物量を極力低減することが可能となる。
【0021】
上記サブシャフト109は、長尺ボルト状の部材であり、両押え板107,108の腕状部先端に設けられた貫通孔に各端部が挿通され、ナット110によって締着固定されている。またメインシャフト106の上端部は、図示しないモータ等の駆動源に直接連結されたり、またはプーリーを付設しVベルトを介して駆動源の回転力をメインシャフト106に伝達するように構成されている。
【0022】
各サブシャフト109には、構成材の耐摩耗性を高めるために、図示した実施形態において示したように、わずかの間隙をおいて円筒状のカラー111が嵌合されている。さらに各サブシャフト109には、篏合されたカラー111を介して複数個のリング状部材112が粉砕媒体として回転自在に装着されている。各リング状部材112の内径はカラー111の外径よりも充分に大きく、リング状部材112は、その外周面が容器101の内周面105に当接したときに、リング状部材112の内周面とカラー111の外周面との間に充分な間隙を有する構造とされている。またリング状部材112は、両押え板107,108間に隙間なく密に積層されているものではなく、リング状部材112の積層上端面と押え板107の下面との間に、リング状部材112の2~3枚相当の厚さの間隙を形成するように積層される。この積層構造により、各リング状部材112は、それぞれカラー111の周りを自在に回動することができる。
【0023】
上記リング状部材112は、平行な上下面を有する円筒状に形成され、上下面及び外周面が平滑な、いわゆるワッシャー形状に形成されている。また必要に応じて、処理物への食い込み現象を促進するために、外周面を曲面状に形成してもよい。この粉砕媒体としてのリング状部材112の大きさは、処理装置の型式(大きさ)によっても異なるが、外径が25~45mmで厚さが数mm程度であり、また、その材質は、処理物の物性により異なるが、ステンレス鋼,アルミナやジルコニアなどのセラミックス材,WCなどの超硬材などから形成されている。
【0024】
下側の押え板108の下部及び上側の押え板107の上部に位置するメインシャフト106には、必要に応じて、図示した実施形態において示したように、容器101内に投入されたスラリー状処理物を撹拌するための撹拌羽根113,114がそれぞれ配設されている。
また、粉砕処理を実施した場合におけるスラリー状処理物の温度上昇を防止するために、容器101の側面をジャケット115で覆い、このジャケット115に冷媒の供給口116及び排出口117を設け、このジャケット115内に各種冷媒を連続的に供給することにより、容器101内に投入されたスラリー状処理物を冷却できるように構成されている。
【0025】
上記した構成の粉砕装置100においては、サブシャフト109の外径(円筒状のカラー111の外径)と、該サブシャフト109(円筒状のカラー111)に嵌設されたリング状部材112の内径との間にギャップが形成されており、リング状部材112は、個々に独立して自由に回動できるように構成されている。この粉砕媒体としての働きを有するリング状部材112は、メインシャフト106の回転に伴って発生する遠心力によって上記ギャップ相当分だけ半径方向に移動し、容器内周面105に押圧されながら容器101内を周回する。また内周面105との摩擦等によりリング状部材112自身もサブシャフト109を中心にして回転する。すなわちリング状部材112は、公転と自転とを繰り返しながら容器101内を運動する複雑なものとなる。そのため、容器101の下部に設けられた供給口103からスラリー状処理物を連続的に供給すると、容器101内に供給されたスラリー状処理物は、下方から押されて上昇しながら上記複雑に回動するリング状部材112の圧縮力、剪断力を受けて効率的に粉砕され、容器101の上部に設けられた排出口104から連続的に排出される。
【0026】
上記粉砕装置100の上記排出口104には、図1に示したように、外部循環経路部200が連結されている。この外部循環経路部200は、スラリー状処理物を上記粉砕装置100の外部において循環させる経路としての作用とともに、処理量を増やす作用を有する。そのため外部循環経路部200は、ある程度の容積を有していることが好ましい。図1図3に示した実施形態においては、処理量を増やす観点等から、外部タンク201を備える外部循環経路部200としている。
【0027】
外部タンク201は、スラリー状処理物を一時的に溜める内部空間202と、該内部空間202にスラリー状処理物を供給するための供給口203と、スラリー状処理物を内部空間202の外部に排出するための排出口204を備えている。図示した実施形態においては、鉛直方向に沿って延在した楕円形の横断面形状を有する筒状に内部空間202が形成され、上端を閉塞する蓋板に上記供給口203が形成され、下方開口端が上記排出口204とされている。
【0028】
外部タンク201の供給口203には、粉砕装置100の排出口104に接続された配管205の開口端が接続され、粉砕装置100により粉砕処理されたスラリー状処理物が配管205を介して外部タンク201の内部空間202に供給され、一時的に貯留された後、下方開口端である排出口204より排出される。外部タンク201の容積は、スラリー状処理物の物性により異なるが、処理量と粉砕効率の兼ね合い等から決定され、図示した実施形態に係る循環粉砕処理装置1にあっては、外部タンク201の容積は、粉砕装置100の容積(回転機構を除いた容積)の好ましくは5倍以上の容積、より好ましくは10倍以上の容積に設計されている。
【0029】
上記外部循環経路部200の排出口204から排出されたスラリー状処理物は、スクリューフィーダ300により上記粉砕装置100の上記供給口103に搬送される。スクリューフィーダ300は、図1に示したように、そのスクリューが上記外部循環経路部200の排出口204から上記粉砕装置100の供給口103にかけて配置され、スクリューの回動によりスラリー状処理物が外部循環経路部200から粉砕装置100へと強制的に搬送される。
【0030】
スクリューフィーダ300は、図1図3に示したように、水平方向に沿って並列に配置される一対のスクリューシャフト301,302を有する2軸スクリューに形成されており、該一対のスクリューシャフト301,302をそれぞれ回動可能に支持する軸受303,304と、水平方向に沿って延在するとともに一対のスクリューシャフト301,302を収納するケーシング305と、一対のスクリューシャフト301,302を回動させる駆動機構306を備えている。
【0031】
上記一対のスクリューシャフト301,302のそれぞれは、図7に示したように、軸線LA(LA1、LA2)に沿って延在するとともに回転可能に構成されたシャフト307,308と、該シャフト307,308の外周に螺旋状に設けられるスクリュー羽根309、310とを備える。一対のスクリューシャフト301,302を収納する上記ケーシング305には、図6に示したように、外部循環経路部200の排出口204に対応する位置、及び粉砕装置100の供給口103に対応する位置に、それぞれ開口311,312が形成されている。駆動機構306は、図1に示したように、モータ313と、該モータ313の回転を伝える歯車列314とによって、上記した一対のスクリューシャフト301,302のそれぞれシャフト307,308を、図3図7に矢印で示したように、上方から見て互いに内方に向けて回動させる。
【0032】
一対のスクリューシャフト301,302の少なくとも一方のスクリューシャフト302は、図6図7に示したように、その先端部は粉砕装置100の供給口103直下よりもさらに下流に延伸され、該スクリューシャフト302のスクリュー羽根310は、上記粉砕装置100の供給口103の直前までは送り方向に形成され、供給口103直下には形成されておらず、供給口103よりも下流側では戻り方向に形成されている。
【0033】
一対のスクリューシャフト301,302は、それぞれ駆動機構306側の軸受303,304で支持されている片持ち梁構造であり、回転軸に垂直な方向に力が加わった場合でも、スクリューシャフト先端側のスクリュー羽根309,310が、その周囲を覆うケーシング305に当たらないようにする必要がある。そのためには、スクリューシャフト301,302の先端を支持する軸受けを設けてもよいが、スクリューフィーダ300では、スクリュー羽根309,310がケーシング305に当たる前に、スクリューシャフト301,302の先端がケーシングに設けられたブラケット等に当たるように、両者のクリアランスを狭くしている。
この様な構造を供給口103直下に設けるのは、スラリー状処理物の搬送のためには好ましくないため、スクリュー先端は粉砕装置100の供給口103よりもさらに延伸された位置関係になっており、かつ供給口103直下にはスクリュウー羽根310は形成されておらず、供給口103よりも下流側ではスクリュウー羽根310が戻り方向に形成されているので、スクリュー先端側に向かったスラリー状処理物は戻り方向に形成されたスクリュー羽根310によって押し戻され、粉砕装置100の供給口103に向かってスラリー状処理物が効果的に押し込まれ、スラリー状処理物の滞留が防止されるものとなる。
【0034】
上記構成のスクリューフィーダ300とすることにより、図6に示したように、外部循環経路部200の排出口204から排出されたスラリー状処理物は、ケーシング305に形成された移送方向Aにおける上流側の開口311からフィーダの内部空間に供給され、回転するスクリュー羽根309,310のピッチ間の隙間に補足され、下流側に向かって搬送される。移送方向Aにおける下流側に搬送されたスラリー状処理物は、ケーシング305に形成された下流側の開口312から外部に排出され、粉砕装置100の供給口103から粉砕装置100内に押し込まれる状態で投入される。
【0035】
スクリューフィーダ300の搬送能力は、粉砕装置100の処理能力、また搬送するスラリー状処理物の物性により異なるが、処理量と粉砕効率の兼ね合い等から決定され、図示した実施形態に係る循環粉砕処理装置1にあっては、スクリューフィーダ300の搬送能力は、スクリュー羽根309,310の大きさやピッチ、またシャフトの回転数等を調節することにより、時間当たりに搬送されるスラリー状処理物の体積として、好ましくは50~1000ml/分、より好ましくは100~1000ml/分に設計されている。
【0036】
上記した本発明に係る循環粉砕処理装置1は、粉砕装置100として、容器101の下部に、スラリー状処理物の供給口103が設けられ、容器101の内部に、回転するメインシャフト106が立設され、該メインシャフト106に複数のサブシャフト109が間隔を置いて周設支持され、該サブシャフト109に複数のリング状部材112がサブシャフト109との間に間隙を設けて嵌設され、該リング状部材112が容器内壁105に当接するように配置されていると共に、容器101の上部に、スラリー状処理物の排出口104が設けられたものとしたので、容器101の下部に設けられた供給口103から連続的に供給されたスラリー状処理物は、容器101内において下方から押されて上昇しながら複雑に回動するリング状部材112の圧縮力、剪断力を受けて効率的に粉砕され、容器101の上部に設けられた排出口104から連続的に排出されるものとなり、固形分濃度の高い高粘度のスラリー状処理物であっても、効率的に処理物の粉砕処理できるものとなる。
また、本発明に係る循環粉砕処理装置1は、上記粉砕装置100の上記排出口104と連結されたスラリー状処理物の外部循環経路部200と、該外部循環経路部200の排出口204から排出されたスラリー状処理物を、上記粉砕装置100の上記供給口103に搬送するスクリューフィーダ300を有し、該スクリューフィーダ300が、上記外部循環経路部200の排出口204から上記粉砕装置100の供給口103にかけて配置され、スラリー状処理物を、上記粉砕装置100、上記外部循環経路部200、上記スクリューフィーダ300の順に循環させて粉砕処理を行うものとしたので、スラリー状処理物は、ポンプ搬送の構成の装置においては懸念された、分散媒である水等と固形分(処理物)との分離が生じることなく循環され、固形分(処理物)の粉砕処理が確実に進行するものとなる。
また、容器101内に投入されたスラリー状処理物を撹拌するための撹拌羽根113,114により、容器101内にデッドスペースが生ずることなく、スラリー状処理物が循環する。
【0037】
上記により、本発明に係る循環粉砕処理装置1は、循環経路を有するスラリー状処理物の循環粉砕処理を、初期から経時まで安定して行うことのできるものとなる。
【0038】
上記した本発明に係る循環粉砕処理装置1は、高濃度のスラリー状処理物の循環粉砕処理に適しており、ここでスラリー状処理物の固形分(処理物)の割合は、この固形分(処理物)の粒径、真密度、形状等の物性によって異なるが、植物系バイオマスの場合は、3~15質量%の範囲にあることが好ましく、5~12質量%の範囲にあることがより好ましい。これは、3質量%に満たない濃度のものである場合は、従来技術に比較して処理効率の改善につながらず、植物系バイオマスで15質量%を超える濃度のものである場合は、粘度が高過ぎるためである。
また、本発明に係る循環粉砕処理装置1を用いて循環粉砕処理する処理物としては、特に分散媒である水等と分離しやすい処理物が挙げられ、例えば植物系バイオマスである。ここで、植物系バイオマスとしては、木質系、草本系、セルロース系があげられ、木質系、草本系としては、木材、竹、麻、草本類、農産物等の植物材料、前記植物材料の廃棄物、残渣物(皮、葉、茎、実)等がある。セルロース系としては、木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等がある。
木質系、草本系、セルロース系のバイオマスは、いずれもセルロースを含有する点で共通する。
【0039】
上記したようなことから、本発明に係る循環粉砕処理装置1は、該循環粉砕処理装置1を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理する循環粉砕処理方法として、また、該循環粉砕処理装置1を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理し、得られた粉砕処理物を糖化、発酵処理するアルコールの製造方法として、更には、該循環粉砕処理装置1を用い、植物系バイオマスのスラリー状処理物を循環粉砕処理するセルロースファイバーを含む組成物の製造方法として、好適に使用することができるものとなる。
【実施例
【0040】
1.木質材料の粉砕処理
〔実施例1〕
(1)処理物
処理物として、ガーデニング、ペット用として市販されている関東他方産の杉おが屑を用いた。この杉おが屑は、篩による粒度分布測定で中心粒径は0.5~1.0mmであった。また、針状のアスペクト比が大きいものも多く、長さは2~3mm程度に及ぶものもあった。
(2)処理物の調製
上記木質材料の粉末に水を加え、固形分濃度が10質量%及び固形分濃度が15質量%の2種のスラリー状処理物を調製した。
(3)粉砕装置を用いた粉砕処理
【0041】
〔実施例1-1〕
図1図7に示した本発明の実施形態に係る循環粉砕処理装置1を用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物の循環粉砕処理を行った。
粉砕装置100として、株式会社奈良機械製作所製、マイクロス0型(MIC-0、回転機構を除いた容積が0.4リットル)を用い、外部タンク201は容積0.3リットル、スクリューフィーダ300のスクリュー羽根を含む直径が14mmのものを用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 0.500kg
・固形分(処理物)総量 0.050kg
・粉砕装置の回転数 1500rpm
・スクリューフィーダの回転数 50rpm
・スクリューフィーダの搬送能力 100ml/分
【0042】
〔実施例1-2〕
図1図7に示した本発明の実施形態に係る循環粉砕処理装置1を用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物の循環粉砕処理を行った。
但し、外部タンク201は容積3リットルのものに変更し、他は上記〔実施例1-1〕と同様の装置を用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 2.500kg
・固形分(処理物)総量 0.250kg
・粉砕装置の回転数 1500rpm
・スクリューフィーダの回転数 50rpm
・スクリューフィーダの搬送能力 100ml/分
【0043】
〔実施例1-3〕
図1図7に示した本発明の実施形態に係る循環粉砕処理装置1を用い、上記調整した他方の固形分濃度が15質量%のスラリー状処理物の循環粉砕処理を行った。
粉砕装置100として、株式会社奈良機械製作所製、マイクロス0型(MIC-0、回転機構を除いた容積が0.4リットル)を用い、外部タンク201は3リットル、スクリューフィーダ300のスクリュー羽根を含む直径が14mmの、上記〔実施例1-2〕と同様の装置を用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 2.500kg
・固形分(処理物)総量 0.375kg
・粉砕装置の回転数 1500rpm
・スクリューフィーダの回転数 50rpm
・スクリューフィーダの搬送能力 100ml/分
【0044】
〔実施例1-4〕
図1図7に示した本発明の実施形態に係る循環粉砕処理装置1を用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物の循環粉砕処理を行った。
粉砕装置100として、株式会社奈良機械製作所製、マイクロス3型(MIC-3、回転機構を除いた容積が3.0リットル)を用い、外部タンク201は24リットル、スクリューフィーダ300のスクリュー羽根を含む直径が28mmのものを用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 40.0kg
・固形分(処理物)総量 4.00kg
・粉砕装置の回転数 1100rpm
・スクリューフィーダの回転数 50rpm
・スクリューフィーダの搬送能力 800ml/分
【0045】
〔比較例1-1〕
上記〔実施例1-1〕のスクリューフィーダをポンプ(兵神装備株式会社製、モーノポンプCY型)に変えた以外は、上記〔実施例1-1〕と同様の装置を用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物を、上記〔実施例1-1〕と同様の処理条件で循環粉砕処理を行った。
【0046】
〔比較例1-2〕
上記〔実施例1-1〕の粉砕装置をビーズミル(ベッセル容積1.0リットル、ビーズ充填量608ml(2300g))に、スクリューフィーダをポンプ(兵神装備株式会社製、モーノポンプCY型)に変えた以外は、上記〔実施例1-1〕と同様の装置を用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物を、上記〔実施例1-1〕と同様の処理条件で循環粉砕処理を先ず試みたが、固形分濃度10質量%のスラリー状処理物を投入し、ビーズミルの回転数を徐々に上げたところ、120rpmで、ビーズミル内に異音がしたため、試験を中止した。そこで、スラリー状処理物の固形分濃度を1質量%に下げ、ビーズミルを回転数20000rpmで処理を行った。
このときの固形分(処理物)総量は0.005kgであった。
【0047】
〔比較例1-3〕
図4図5に示した粉砕装置100のみを用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物のバッチ式の粉砕処理を行った。
粉砕装置100は株式会社奈良機械製作所製、マイクロス0型(MIC-0、回転機構を除いた容積が0.4リットル)を用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 0.250kg
・固形分(処理物)総量 0.025kg
・粉砕装置の回転数 1500rpm
【0048】
〔比較例1-4〕
図4図5に示した粉砕装置100のみを用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物について、バッチ式の粉砕処理を2回行った。
粉砕装置100は〔比較例1-3〕と同様の株式会社奈良機械製作所製、マイクロス0型(MIC-0、回転機構を除いた容積が0.4リットル)を用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 0.250kg
・固形分(処理物)量 0.025kg
・粉砕装置の回転数 1500rpm
上記条件で2バッチ分を処理
・固形分(処理物)総量 0.050kg
【0049】
〔比較例1-5〕
図4図5に示した粉砕装置100のみを用い、上記調整した固形分濃度が10質量%のスラリー状処理物について、バッチ式の粉砕処理を10回行った。
粉砕装置100は〔比較例1-3〕と同様の株式会社奈良機械製作所製、マイクロス0型(MIC-0、回転機構を除いた容積が0.4リットル)を用い、下記の処理条件で粉砕を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 0.250kg
・固形分(処理物)総量 0.025kg
・粉砕装置の回転数 1500rpm
上記条件で10バッチ分を処理
・固形分(処理物)総量 0.250kg
【0050】
上記〔実施例1-1〕~〔実施例1-4〕及び〔比較例1-1〕~〔比較例1-5〕について、収率、処理物がメジアン径(d50)が7μm±0.3μmに達するまでの時間(総粉砕時間)、収量を総作業時間で除した装置生産能力などを、表1に記載する。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、搬送手段として、スクリューフィーダを用いた〔実施例1-1〕は、モーノポンプを用いた〔比較例1-1〕と比較して、総粉砕時間が40%以下に短縮された。収量を総作業時間で除した装置生産能力は、〔実施例1-1〕と〔比較例1-1〕で、それぞれ「0.0129」、「0.0062」であり、2.1倍に向上した。
ビーズミルを用いた〔比較例1-2〕は固形分濃度を1質量%に下げて処理したため、収量を総作業時間で除した装置生産能力は「0.0009」であった。
〔実施例1-1〕は、収量を総作業時間で除した装置生産能力は「0.0129」であり、これは従来のバッチ式処理である〔比較例1-3〕の「0.0095」や同一仕込み量をバッチ式で処理した〔比較例1-4〕の「0.0108」と比較して、それぞれ1.35倍、1.2倍に向上した。
表1に示すように、外部循環経路を用いて処理量を10倍にした〔実施例1-2〕は切り替えロスが少なく、収率が96%であったのに対して、同一処理量の〔比較例1-5〕は収率80%であった。
〔実施例1-2〕は収量を総作業時間で除した装置生産能力は「0.0197」であり、これは同一仕込み量をバッチ式で処理した〔比較例1-5〕の「0.0121」と比較して、1.6倍に向上した。
〔実施例1-1〕、〔実施例1-2〕、〔比較例1-3〕から〔比較例1-5〕の対比からわかるように、同一仕込み量をバッチ式で処理した比較例に対して実施例の方が、装置生産能力が向上しており、外部循環経路を用いた仕込み量が多いほど、向上の度合いが大きい。
〔実施例1-3〕は、固形分濃度を15%に上げても装置生産能力は〔実施例1-2〕と同等であった。
〔実施例1-1〕~〔実施例1-4〕は長時間の連続運転処理が可能で、オペレーターの対応時間は、粒径の測定を除き、前後清掃の1時間のみであった。
〔実施例1-2〕は、原料をセットして循環処理装置の運転を開始し、総作業時間約12時間で処理が完了した。オペレーターは終了直前の粒径の測定を除き、作業から解放され、他の業務を行う事ができた。
同じ仕込み量をバッチ式で処理した〔比較例1-5〕は、総作業時間は16時間以上にわたり、作業を2日間に分けて行わざるをえなかった。この間、オペレーターは約1時間おきに、30分間、バッチの切り替え作業を行った。
また、処理装置を回転機構を除いた容積が3.0リットルの物に変えた〔実施例1-4〕は、固形分濃度10質量%のスラリー状処理物40kg(木質材料4kg)を総作業時間21時間で処理することができた。
【0053】
2.エタノール製造
〔実施例2〕
下記のアルカリ処理を行ったスラリー状処理物を処理物とした以外は、上記〔実施例1-1〕~〔実施例1-4〕、〔比較例1-3〕と同様に循環処理をそれぞれ行い、〔実施例2-1〕~〔実施例2-4〕、〔比較例2-3〕の木質スラリーをそれぞれ得た。
〔アルカリ処理〕
固形分濃度10質量%の木質材料のスラリーを市販の圧力釜に入れ、その後にアルカリ水を入れ、pHを2に調整し、120℃で4時間、加圧加熱しながら攪拌せずに浸漬処理を行った。
〔循環粉砕処理〕
〔実施例1-1〕~〔実施例1-4〕、〔比較例1-3〕と同様に循環処理をそれぞれ行った。
〔糖化、発酵条件〕
得られた〔実施例2-1〕~〔実施例2-4〕の木質スラリーに対して、それぞれ採取した木質スラリー50gに蒸留水90mlを加えて希釈し、バッフル付き三角フラスコに移した後、ノボザイム社製酵素(Ctec2を1.3ml及びHtec2を400μl)を蒸留水7.70mlで懸濁したものを添加し、フラスコにアルミ箔で蓋をした後、振盪恒温槽で温度50℃、48時間振盪を行い、糖化処理を行った。
得られた糖化液をpH6.5に調整し、0.45μlポアサイズの無菌フィルターで除菌し、1リットルメスシリンダーに入れ、さらにあらかじめ培養した酵母SS4-5を、1.0×107cells/mlの濃度で植菌し、30℃で3日間、発酵を行った。
なお、酵母SS4-5は、Schizosaccharomyces japonicus SS4-5株で、受託番号はNITE P-1197である酵母である。
【0054】
上記糖化、発酵処理を行った〔実施例2-1〕~〔実施例2-4〕のそれぞれについて、Glc生成濃度と得られたアルコール量を測定した。その測定結果を表2に示す。
また、〔比較例2-3〕として、上記アルカリ処理を行った木質スラリーを処理物とし、前記した〔比較例1-3〕と同様に粉砕処理をそれぞれ行ったものについて、上記糖化、発酵処理後のGlc生成濃度と得られたアルコール量を測定した。その測定結果を表2に示す。
表2示すように、従来に比べて、一度の処理で大量のアルコールを製造することができた。
【0055】
【表2】
【0056】
3.セルロースファイバー製造
〔実施例3〕
市販されている針葉樹漂白クラフトパルプ(N-BKP、王子製紙株式会社製、固形分濃度25質量%)を水で希釈し、固形分濃度10質量%のスラリー状処理物を調整した。
この調整したスラリー状処理物を、図1図7に示した本発明の実施形態に係る循環粉砕処理装置1(粉砕装置100は、株式会社奈良機械製作所製、マイクロス0型(MIC-0、回転機構を除いた容積が0.4リットル)、外部タンク201の容積3リットル、スクリューフィーダ300のスクリュー羽根を含む直径が14mm)を用い、下記の処理条件にて循環解繊処理を行った。
(処理条件)
・スラリー状処理物仕込み量 5.0kg(固形分0.5kg)
・粉砕装置の回転数 1800rpm
・スクリューフィーダの回転数 45rpm
・スクリューフィーダの搬送能力 80ml/分
【0057】
上記解繊処理を行ったところ、パルプは分離することなく、循環処理が可能であった。
10分間処理後、スラリー状処理物をブタノールで3回洗浄し、凍結乾燥機で乾燥した後に、窒素ガス吸着法により比表面積を求めた。その結果、比表面積は92m/gであった。また、30分間処理後、スラリー状処理物をブタノールで3回洗浄し、凍結乾燥機で乾燥した後に、比表面積を求めたところ、比表面積は132m/gであった。
以上のように、パルプに含まれるセルロースの解繊が進行していることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る循環粉砕処理装置は、植物系バイオマスを粉砕処理し、エタノールを製造する装置として、或いは、パルプを解繊処理し、セルロースファイバーを製造する装置として,好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・循環粉砕処理装置
100・・・粉砕装置
101・・・容器、102・・・回転機構、103・・・供給口、104・・・排出口、105・・・内周面、106・・・メインシャフト、107・・・押え板、108・・・押え板、109・・・サブシャフト、110・・・ナット、111・・・カラー、112・・・リング状部材、113・・・撹拌羽根、114・・・撹拌羽根、115・・・ジャケット、116・・・供給口、117・・・排出口
200・・・外部循環経路部
201・・・外部タンク、202・・・内部空間、203・・・供給口、204・・・排出口、205・・・配管
300・・・スクリューフィーダ
301・・・スクリューシャフト、302・・・スクリューシャフト、303・・・軸受、304・・・軸受、305・・・ケーシング、306・・・駆動機構、307・・・シャフト、308・・・シャフト、309・・・スクリュー羽根、310・・・スクリュー羽根、311・・・開口、312・・・開口、3013・・・モータ、314・・・歯車列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8