(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-09
(45)【発行日】2025-05-19
(54)【発明の名称】積層造形のための変色微粒子組成物及びその関連する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250512BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20250512BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20250512BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250512BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250512BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250512BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250512BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20250512BHJP
【FI】
C08L101/00
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C08K3/36
C09K9/02 B
C09K9/02 C
(21)【出願番号】P 2021168051
(22)【出願日】2021-10-13
【審査請求日】2024-10-10
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・レセッコ
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513505(JP,A)
【文献】特開2017-061144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B29C,B33Y,C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子組成物であって、
熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、前記熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含み、前記変色材料がフォトクロミック及びサーモクロミックの両方であり、
前記熱可塑性粒子が、
1μm~
1,000μmの範囲の平均粒径を有し、及び前記変色材料が、その形成後に熱可塑性微粒子の外側表面上に組み込まれる、微粒子組成物。
【請求項2】
前記変色材料が、1つ又は複数の共役ジインを含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性微粒子の外側表面上に配置された複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子を含む、複数のナノ粒子、を更に含み、
前記酸化物ナノ粒子が、
1nm~
100nmの範囲のサイズを有する、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項4】
前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項3に記載の微粒子組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性微粒子の外側表面に会合する界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の微粒子組成物。
【請求項6】
方法であって、
熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、前記熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含む微粒子組成物を提供することであって、前記変色材料がフォトクロミック及びサーモクロミックの両方であり、
前記熱可塑性微粒子が、
1μm~
1,000μmの範囲の平均粒径を有し、及び前記変色材料が、その形成後に熱可塑性微粒子の外側表面上に組み込まれる、提供することと、
前記熱可塑性ポリマー含むポリマーマトリックスと、前記ポリマーマトリックスと会合する前記変色材料とを有する印刷物を形成することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記印刷物を形成することが、
前記微粒子組成物を粉末床内に堆積させることと、
前記粉末床内の前記熱可塑性微粒子の一部を固結することと、
を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記印刷物の少なくとも一部分を、前記変色材料を、第1の着色状態を有する前記変色材料の重合形態に変換するために十分な第1の活性化条件に曝露することを更に含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の活性化条件が、前記印刷物の光照射を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記印刷物の少なくとも一部分を、前記変色材料の前記重合形態を、前記第1の着色状態とは異なる第2の着色状態に変換するために十分な第2の活性化条件に曝露することを更に含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の活性化条件が、前記印刷物の熱処理を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記変色材料が、1つ又は複数の共役ジインを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の熱可塑性微粒子が、前記熱可塑性微粒子の外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、前記複数のナノ粒子が複数の酸化物ナノ粒子を含み、
前記酸化物ナノ粒子が、
1nm~
100nmの範囲のサイズを有する、請求項
7に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、積層造形に関し、より具体的には、印刷物の形成中又は形成後に色変化可能な粉末微粒子を採用する積層造形プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(three-dimensional、3-D)印刷としても知られる積層造形は、急速に成長している技術分野である。積層造形は、伝統的にラピッドプロトタイピング作業に使用されてきたが、この技術は、任意の数の複雑な形状の商業部品及び工業部品(印刷物)を製造するためにますます採用されている。積層造形プロセスは、1)溶融印刷材料又は印刷材料への液体前駆体の流れ、又は2)印刷材料の粉末微粒子、のいずれかの層ごとの堆積によって行われる。層ごとの堆積は、通常、コンピュータの制御下で行われ、製造される部品のデジタル三次元「ブループリント」(コンピュータ支援設計モデル)に基づいて印刷材料を正確な位置に堆積及び固結する。特定の実施例では、粉末微粒子の固結は、層ごとに堆積された粉末床において、レーザー又は電子ビームを使用して粉末床の正確な位置を加熱し、それによって、特定の粉末微粒子を固結させて、所望の形状を有する部品を形成する三次元印刷システムを使用して行われてもよい。粉末床における粉末微粒子の融合は、局所加熱による粉末微粒子の固結を促進するためにレーザーを用いる選択的レーザー焼結(selective laser sintering、SLS)によって行われ得る。
【0003】
三次元印刷で使用可能な粉末微粒子の中には、熱可塑性ポリマーを含むものがある。幅広い熱可塑性ポリマーが知られているが、特に選択的レーザー焼結によって微粒子固結を行うときに、現在の三次元印刷技術での使用に適合する特性を有することは比較的少ない。選択的レーザー焼結による固結に好適な熱可塑性ポリマーとしては、融解開始と結晶化の開始との間に著しい差を有するものが挙げられ、この差が良好な構造的及び機械的一体性を促進し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層造形は、様々な種類の印刷物を製造するため一層幅広く採用されるようになってきたため、様々な色を有する印刷物を利用できることが、多くの場合で望ましくなっている。積層造形プロセスでの使用に適合する粉末微粒子内に着色剤を首尾良く組み込むことができる場合もあるが、この手法は、所望の様々な色を生成するのに適した複数種類の粉末微粒子の貯蔵を必要とする。高い経費及び在庫管理の問題に加えて、この手法は、特定の色の印刷物を製造するために、異なる種類の粉末微粒子を所定の時間に三次元印刷システムに装填する必要があり得る。複数の色を有する印刷物の場合、着色された粉末微粒子を三次元印刷システムに供給する問題は、更に複雑である場合がある。
【0005】
本開示は、積層造形に好適な微粒子組成物を提供する。微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含み、変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である。
【0006】
本開示はまた、微粒子組成物を使用して形成された印刷物も提供する。印刷物は、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと会合する変色材料とを含み、変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である。
【0007】
本開示はまた、積層造形によって印刷物を形成する方法を提供する。本方法は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含む微粒子組成物を提供することであって、変色材料が、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である、提供することと、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと会合する変色材料とを有する印刷物を形成することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題には、その形態及び機能において、当業者が想到し、しかも本開示の利益を有するような、相当な修正、変更、組み合わせ、及び等価物を考えることができる。
【0009】
【
図1】
図1は、本開示による熱可塑性微粒子を製造するための非限定的な例示的方法のフローチャートである。
【0010】
【
図2A】
図2Aは、254nmでのUV照射後のサンプル1~9の写真を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、UV照射及び50°Cでの熱処理後のサンプル1~9の対応する写真を示す図である。
【0011】
【
図3A】
図3Aは、254nmでのUV照射後のサンプル10~18の写真を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、UV照射に続いて50°C又は150°Cでの熱処理後のサンプル10~18の対応する写真を示す図である。
【0012】
【
図4A】
図4Aは、照射時間に応じた、サンプル1、2及び3の色空間明度(L
*)のプロットの図である。
【
図4B】
図4Bは、照射時間に応じた、サンプル6、7及び8の色空間明度(L
*)のプロットの図である。
【
図5A】
図5Aは、照射時間に応じた、色空間青色/黄色値(b
*)の対応するプロットの図である。
【
図5B】
図5Bは、照射時間に応じた、色空間青色/黄色値(b
*)の対応するプロットの図である。
【0013】
【
図6】
図6は、照射時間に応じた、サンプル1、4、5、6及び9の色空間明度(L
*)のプロットの図である。
【
図7】
図7は、照射時間に応じた、色空間青色/黄色値(b
*)の対応するプロットの図である。
【0014】
【
図8】
図8は、加熱温度に応じた、サンプル10~18の色空間明度(L
*)のプロットの図である。
【0015】
【
図9】
図9は、加熱温度に応じた、サンプル10~18のそれぞれの色空間緑色/赤色値(a
*)及び色空間青色/黄色値(b
*)のプロットの図である。
【
図10】
図10は、加熱温度に応じた、サンプル10~18のそれぞれの色空間緑色/赤色値(a
*)及び色空間青色/黄色値(b
*)のプロットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、概して、積層造形に関し、より具体的には、印刷物の形成中又は形成後に色変化可能な粉末微粒子を採用する積層造形プロセスに関する。
【0017】
上述のように、印刷物は、粉末微粒子を焼結することにより(例えば、選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセスにより)、様々な複雑な形状で形成され得る。場合によっては、同じ形状を有するが異なる色である印刷物、及び/又は単一の印刷物内に複数の色を有する印刷物を形成することが望まれる場合がある。目下のところ、両方の手法は、特定の着色剤を有する複数種類の粉末微粒子を貯蔵し(これは、在庫管理の観点から費用がかかり、運用を複雑にし得る)、かつ特定の時間に好適な粉末微粒子を三次元印刷システムに供給する必要がある。
【0018】
本開示は、変色材料、特にフォトクロミック及びサーモクロミックの両方である変色材料が、粉末微粒子内に首尾良く組み込まれ得ることを示す。本明細書で使用するとき、用語「フォトクロミック」は、特定の種類の電磁放射線の存在下で色変化する物質を指し、用語「サーモクロミック」は、特定の温度での熱活性化下で色変化する物質を指す。有利には、このような変色材料は、好適な技術による微粒子の合成の後に粉末微粒子内に組み込まれ得、それによって、未変性の微粒子を貯蔵し、必要に応じてこれら微粒子に変色材料を装填することができる。特定の変色材料を、特定の着色の必要性に応じて粉末微粒子内に組み込むことができる。フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である変色材料については、以下で更に詳細に説明する。
【0019】
有利な粉末微粒子は、特にナノ粒子の存在下で、高沸点不活性溶媒中での熱可塑性ポリマーの溶融乳化により形成され得る。2020年6月30日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/946,622号は、ナノ粒子、特に、シリカナノ粒子又は他の酸化物ナノ粒子の存在下での熱可塑性ポリマーの溶融乳化によって形成された粉末微粒子を提供し、これは、ナノ粒子の狭い粒径分布、容易な焼結性、及び良好な粉末流動性能に関して特に有利であり得る。ナノ粒子の存在下での粉末微粒子の溶融乳化調製に関する更なる詳細を以下に提供する。
【0020】
驚くべきことに、前述の望ましい特性を損なうことなく、溶融乳化によって形成された粉末微粒子上に、変色材料を組み込むことができる。特に、溶融乳化による合成後に、1つ又は複数の共役ジイン(本明細書ではジアセチレンとも呼ぶ)を、粉末微粒子の溶液系処理により熱可塑性ポリマーを含む粉末微粒子に組み込むことができる。多くのジインは、特性的なフォトクロミック及びサーモクロミック特性を有し、特にジインカルボン酸は本明細書の開示での使用に好適であり得る。本明細書の開示での使用に好適な1つの有利なジインカルボン酸は、10,12-ペンタコサジイン酸(式1)であり、
【化1】
光照射及び/又は熱活性化により、印刷物に青色、赤色、又は黄色の着色を提供し得る。有利には、これらの原色を混合し、様々な二次色(例えば、オレンジ色、紫色、及び緑色)を生成し得る。したがって、本開示は、本明細書で提供するような光照射又は熱活性化により直接的に得られるものよりも極めて広い色の配列の利用を提供する。
【0021】
ジインは、通常、光照射、加熱、又は化学線への曝露のいずれかによって活性化される前は、無色(透明又は白色)である。理論に束縛されるものではないが、ジインの光活性化条件は、共役エンイン主鎖を有するジアセチレンポリマーである重合反応生成物の形成をもたらすと考えられる。式2は、光照射条件下での10,12-ペンタコサジイン酸(式1)の活性化から生じると考えられるジアセチレンポリマーの構造を示す。
【化2】
有利には、共役ジインから着色を生成するための活性化条件は、粉末床融合及び同様の微粒子固結プロセス中に既に発生しているか、又はそのようなプロセスに容易に組み込まれる。或いは、熱可塑性ポリマーマトリックス内に共役ジインを含む印刷物は、印刷物の少なくとも一部を適切な活性化条件に曝露することにより、様々な着色状態の間で容易に変換され得る。したがって、共役ジインは、積層造形プロセスにおける組み込みに特に有利であり、適合性があり得る。
【0022】
好適な活性化条件下での共役ジインの変色性能は知られているが、本開示は、共役ジインがシリカナノ粒子を含む熱可塑性微粒子の表面上に組み込まれたときに予想外の性能が生じ得ることを示す。具体的には、シリカナノ粒子の存在下で共役ジインを活性化すると、色変化の強度が極めて顕著となり得る。着色及び色強度のある程度の調節可能性も、シリカナノ粒子の官能化、充填量、及び/又はサイズを変更することによって実現し得る。異なる界面活性剤もまた、色変化の強度に影響し得る。加えて、様々な活性化条件下で得られた共役ジイン着色は、シリカナノ粒子の存在下で永久的であるように思われるのに対し、一部のジインの着色変化は、シリカナノ粒子の非存在下で活性化条件が除去されると弱くなる場合がある。
【0023】
本明細書の説明及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下の段落によって修正される場合を除き、明白かつ通常の意味を有する。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「変色材料」は、特定の条件下で重合されると有色ポリマーを形成する1つ又は複数のモノマー、及び/又は特定の条件での曝露後に、第1の着色状態から1つ又は複数の第2の着色状態へと色変化するポリマーを指す。用語「色」及びその文法的形態は、人間の目で見たときに無色又は白色に見えない任意の色彩を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「不混和性」は、混合されたときに、大気圧で、及び室温で、又は構成成分が室温で固体である場合には構成成分の融点で、互いに5重量%未満の可溶性を有する2つ以上の相を形成する構成成分の混合物を指す。例えば、10,000g/モルの分子量を有するポリエチレンオキシドは、室温で固体であり、65℃の融点を有する。したがって、室温で液体である材料及び当該ポリエチレンオキシドが65℃において互いに5重量%未満の可溶性を有する場合、当該ポリエチレンオキシドは、当該材料と不混和性である。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「熱可塑性ポリマー」は、加熱及び冷却により、可逆的に軟化及び硬化するポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性エラストマーを包含する。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有する粒子状物質を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「酸化物」は、金属酸化物及び非金属酸化物の両方を指す。本開示の目的のために、ケイ素は、金属であるとみなされる。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「酸化物ナノ粒子」は、約1nm~約500nmの範囲の粒径を有し、かつ金属酸化物又は非金属酸化物を含む、粒子状物質を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「会合する」は、化学結合、2つ以上の物質の物理的混和、表面への物質の物理的接着、又はこれらの任意の組み合わせを指し、特に、物質は、ナノ粒子を含む乳化安定剤である。理論に制限されるものではないが、ポリマーと乳化安定剤との間の本明細書に記載される会合は、主に、水素結合及び/又は他の機構による物理的接着であると考えられる。しかしながら、化学結合がある程度発生している可能性がある。同様に、変色材料は、前述の機構のうちの1つ又は複数によって、別の物質と会合し得る。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「混合される」は、第2の物質中のへ第1の物質の溶解、又は第2の物質中への固体としての第1の物質の分散を指し、分散は均一であっても不均一であってもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「D10」は、サンプルの10%(特に指定がない限り体積基準)が当該直径値未満の直径を有する粒子で構成される直径を指す。本明細書で使用するとき、用語「D50」は、サンプルの50%(特に指定がない限り体積基準)が当該直径値未満の直径を有する粒子で構成される直径を指す。D50はまた、「平均粒径」とも称され得る。本明細書で使用するとき、用語「D90」は、サンプルの90%(特に指定がない限り体積基準)が当該直径値未満の直径を有する粒子で構成される直径を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「剪断力」は、流体中で機械的撹拌を誘導する撹拌又は類似のプロセスを指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、ナノ粒子及びポリマー微粒子の表面に対する用語「埋め込む」は、ナノ粒子がポリマー微粒子の表面上に単に置かれるという場合よりも大きな程度に、ポリマーがナノ粒子と接触するように、ナノ粒子が表面内部に少なくとも部分的に延在し、それにより表面の接線方向に接触していることを指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、分散媒の粘度は、特に指定がない限り、25℃での運動粘度を指し、特に指定のない限り、ASTM D445-19に従って測定される。
【0036】
熱可塑性ポリマーの融点は、特に指定がない限り、10℃/分の昇温速度及び冷却速度で、ASTM E794-06(2018)によって決定される。
【0037】
熱可塑性ポリマーの軟化温度又は軟化点は、特に指定がない限り、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1°C/分の加熱速度で0.50gのサンプルを使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定され得る。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「誘導体」は、別の化合物から直接的又は間接的に、典型的には多くても2つの合成工程で作られた化合物を指す。
【0039】
本開示の微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含む複数の熱可塑性微粒子を含んでもよく、変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である。具体的な実施例では、変色材料は、以下に更に詳細に記載するように、1つ又は複数の共役ジインを含んでもよい。本明細書に開示される微粒子組成物は、積層造形プロセス、特に、微粒子固結を促進するために使用される選択的レーザー焼結及び他の粉末床融合プロセスを採用する積層造形プロセスにおける使用に好適であり得る。積層造形に好適な微粒子組成物は、印刷ヘッド又は同様の装置を使用して粉末床内に分配するための良好な流動性能を呈し得る。熱可塑性微粒子上の流動助剤及び改質は、分配プロセスを促進することができる。好適な熱可塑性微粒子はまた、所与の積層造形プロセスにおいて特定の固結技術と適合する融解温度及び結晶化温度を呈し得る。
【0040】
積層造形に好適な本開示のより具体的な微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーを含む複数の微粒子と、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子と、熱可塑性微粒子に会合する変色材料とを含んでもよい。変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方であってよく、特に、1つ又は複数の共役ジイン、具体的には1つ又は複数の共役ジインカルボン酸又はその誘導体であってよい。任意選択で、ナノ粒子の第1の部分が熱可塑性微粒子内に位置し、ナノ粒子の第2の部分が熱可塑性微粒子の外側表面上に配置されるように、少なくともいくつかのナノ粒子が、熱可塑性ポリマーと混合されてもよい。熱可塑性微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子は、外側表面に少なくとも部分的に埋め込まれ、それと会合され得る。存在する場合、熱可塑性微粒子の外側表面上に配置されたナノ粒子は、積層造形中の微粒子組成物の容易な分配を促進し得る。
【0041】
いくつかの実施例では、複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子を含み得る。本開示での使用に好適な酸化物ナノ粒子としては、例えば、シリカナノ粒子、チタニアナノ粒子、ジルコニアナノ粒子、アルミナナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、酸化銅ナノ粒子、酸化スズナノ粒子、酸化ホウ素ナノ粒子、酸化セリウムナノ粒子、酸化タリウムナノ粒子、酸化タングステンナノ粒子、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。例えばアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノホウケイ酸塩等の混合酸化物もまた、用語「酸化物」に包含され、本明細書の開示において好適に使用され得る。酸化物ナノ粒子は、本質的に親水性であっても疎水性であってもよく、これはナノ粒子の天然特性であっても、ナノ粒子の表面処理による結果であってもよい。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリル等の疎水性表面処理を有するシリカナノ粒子は、親水性表面ヒドロキシル基を適切な官能化剤と反応させることによって形成され得る。疎水変性酸化物ナノ粒子は、本開示の方法及び微粒子組成物において特に望ましい場合があるが、未変性(非官能化)酸化物ナノ粒子又は親水性変性酸化物ナノ粒子もまた、使用に好適であり得る。
【0042】
シリカナノ粒子、特にその上に疎水性官能化を有するヒュームドシリカナノ粒子は、疎水性官能化の種類及び粒径が様々である、様々な官能化シリカが利用可能なので、本明細書の開示における使用に特に適し得る。親水性ヒュームドシリカナノ粒子はまた、本明細書の開示において好適に使用され得る。シラザン及びシラン疎水性官能化は、本開示で使用され得る疎水性官能化の中に含まれる。したがって、本明細書の開示で使用される複数の酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子、特に、疎水変性又は親水変性されたシリカナノ粒子を含んでもよく、又はこれらから本質的になってもよい。共役ジインのいずれかの種類は、共役ジインと好適に相互作用して、本明細書に記載の効果をもたらし得る。シリカナノ粒子を、別のタイプの酸化物ナノ粒子又は非酸化物ナノ粒子と組み合わせて使用してもよく、他の種類の酸化物ナノ粒子又は非酸化物ナノ粒子は、シリカナノ粒子単独で使用したときに得られない特性を、熱可塑性微粒子又はそれから形成される印刷物に伝達し得る。
【0043】
カーボンブラックは、本明細書の開示において熱可塑性微粒子上に存在し得る別の種類のナノ粒子である。様々な等級のカーボンブラックは、当業者によく知られており、これらのいずれも本明細書の開示で使用され得る。赤外線を吸収することができる他のナノ粒子は、熱可塑性微粒子の形成を容易にするために同様に使用され得る。場合によっては、カーボンブラック、シリカ、及び他の種類の酸化物ナノ粒子が互いに組み合わされて存在し得る。カーボンブラックが熱可塑性微粒子上に含まれる場合、上記の色変化を観察し得るように、充填量を十分に小さく保つことができる。
【0044】
ポリマーナノ粒子は、本明細書の開示において熱可塑性微粒子上に存在し得る別の種類のナノ粒子である。好適なポリマーナノ粒子は、熱硬化している及び/又は架橋された1つ又は複数のポリマーを含んでもよく、これにより、本明細書の開示による溶融乳化又は類似の微粒子形成技術によって処理されたときに、ポリマーナノ粒子は溶融しない。高融点又は分解点を有する高分子量熱可塑性ポリマーを含むナノ粒子は、低融点熱可塑性ポリマーからの微粒子形成の促進に同様に好適であり得る。
【0045】
熱可塑性微粒子上のシリカナノ粒子又は類似の酸化物ナノ粒子の充填量及び粒径は、本明細書の開示において広範囲にわたって変化し得る。シリカナノ粒子又は類似の酸化物ナノ粒子の充填量は、以下に更に記載するように、溶融乳化による熱可塑性微粒子の形成を促進するために使用される分散媒中のナノ粒子濃度によって決定され得る。熱可塑性ポリマーに対して最大約50重量%のナノ粒子が存在する場合があり、例えば最大約25重量%、又は最大約10重量%で存在する場合がある。非限定的な例では、分散媒中のナノ粒子の濃度は、熱可塑性ポリマーの重量に対して、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約2重量%、又は約0.25重量%~約1.5重量%、又は約0.2重量%~約1.0重量%、又は約0.25重量%~約1重量%、又は約0.25重量%~約0.5重量%の範囲としてもよい。ナノ粒子の粒径は、約1nm~約100nmの範囲であってもよいが、約500nmまでのナノ粒子サイズも許容され得る。非限定的な例では、ナノ粒子の粒径は、約5nm~約75nm、又は約5nm~約50nm、又は約5nm~約10nm、又は約10nm~約20nm、又は約20nm~約30nm、又は約30nm~約40nm、又は約40nm~約50nm、又は約50nm~約60nmの範囲としてもよい。ナノ粒子、特にシリカナノ粒子及び同様の酸化物ナノ粒子は、約10m2/g~約500m2/g、又は約10m2/g~約150m2/g、又は約25m2/g~約100m2/g、又は約100m2/g~約250m2/g、又は約250m2/g~約500m2/gのBET表面積を有し得る。
【0046】
本明細書の開示における使用に好適な特定のシリカナノ粒子は、疎水変性され得る。疎水性官能化は、高度に疎水性であり得る溶融乳化分散媒中へのシリカナノ粒子の分散を改善することができる。疎水性官能化は、シリカナノ粒子の表面に非共有結合又は共有結合され得る。共有結合は、例えば、シリカナノ粒子の表面ヒドロキシル基の官能化により行われ得る。非限定的な実施例では、シリカナノ粒子をジクロロジメチルシラン又はヘキサメチルジシラザンで処理して、疎水性変性の共有結合を得てもよい。市販の疎水官能化シリカナノ粒子としては、例えば、AEROSIL RX50(Evonik、平均粒径=40nm、25~45m2/g BET表面積)、AEROSIL R812S(Evonik、平均粒径=7nm、195~245m2/g BET表面積)、及びAEROSIL R972(Evonik、平均粒径=16nm、90~130m2/g BET表面積)が挙げられる。
【0047】
本明細書の開示において変色材料として組み込まれ得る好適な共役ジインは、特に限定されるものとはみなされない。本明細書の開示における使用に好適な例示的な共役ジインは、例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,063,164号、並びに米国特許出願公開第2008/0293095号及び同第2020/0199392号明細書に記載されているものが挙げられる。共役ジインカルボン酸又はその誘導体は、長鎖共役ジインカルボン酸が両親媒性であり、ミセル中に組織化し得るため、特に好適であり得る。実際、これらの分子の有効な重合を促進するために、ミセル中の共役ジインカルボン酸の事前組織化が通常必要である。驚くべきことに、本明細書の開示による熱可塑性微粒子上の共役ジインの事前組織化はまた、場合によってはカルボン酸頭部基を欠く分子を含む、これらの種類の分子の色変化重合反応の促進に有効であり得る。本明細書の開示における使用に好適な長鎖共役ジインカルボン酸の例は、式3で表される構造を有し得る。
【化3】
式中、R
1は、任意の分岐又はヘテロ原子置換を有するC
4-C
20アルキル基であり、Aは、任意の分岐又はヘテロ原子置換を有するC
4-C
20アルキレン基である。好ましくは、R
1及びAは、それぞれ直鎖アルキル基又はアルキレン基である。特定の実施例では、R
1は、直鎖C
4-C
16アルキル基又は直鎖C
6-C
12アルキル基であり、Aは、直鎖C
4-C
16アルキレン基又は直鎖C
6-C
12アルキレン基である。特定の実施例では、R
1及びAは、総じて約12個の炭素原子~約36個の炭素原子、又は約16個の炭素原子~約28個の炭素原子、又は約18個の炭素原子~約26個の炭素原子を含んでもよい。本開示の熱可塑性微粒子上への組み込みに好適な共役ジインカルボン酸の特定の例としては、例えば、10,12-ペンタコサジイン酸、4,6-ドデカジイン酸、10,12-ドコサジイン二酸、5,7-エイコサジイン酸、10-12-ヘネイコサジイン酸、10-12-ヘプタコサジイン酸、5,7-オクタデカジイン酸、6,8-ノナデカジイン酸、5,7-テトラデカジイン酸、10-12-トリコサジイン酸、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0048】
共役ジインカルボン酸の誘導体形態もまた、本明細書の開示における使用に好適であり得る。共役ジインカルボン酸の好適な誘導体形態としては、例えば、下記式4及び式5で表される構造を有するエステル及びアミドが挙げられ得る。またカルボン酸の塩形態も同様に、共役ジインカルボン酸の好適な誘導体形態であり得る。
【化4】
エステルは、場合によっては、共役ジインカルボン酸の好適な前駆体として機能し得る。式4において、R
2は、任意の分岐又はヘテロ原子置換を有するC
1-C
24アルキル基であり、好ましくはC
1-C
10直鎖又は分枝アルキル基である。式5において、R
3及びR
4は、H、及び任意の分岐又はヘテロ原子置換を有するC
1-C
24アルキル基、好ましくはH又はC
1-C
10直鎖又は分枝アルキル基から選択される。特定の誘導体形態を選択して、共役ジインの活性化後に特定の着色をもたらし、及び/又は熱可塑性微粒子上に共役ジインを組み込むときの適合性を改善し得る。カルボン酸誘導体ではない他のジインも色変化特性を示し、本明細書の開示における使用にも好適であり得る。
【0049】
共役ジインカルボン酸の塩形態誘導体を同様に採用して、活性化時に特定の着色を促進し得る。遷移金属塩は、例えば、共役ジインの活性化時に形成される色を減衰又は変化させ得る。また、特定の塩形態誘導体を選択して、例えば、熱可塑性微粒子上に共役ジインを組み込むとき、所与の溶媒における可溶性又は相溶性を促進し得る。本明細書の開示における使用に好適なジインカルボン酸の塩形態としては、アルカリ金属塩等の一価金属塩、アルカリ土類金属塩等の二価金属塩、アルミニウム塩等の三価金属塩と、遷移金属塩(例えば、Zn塩)を挙げることができる。
【0050】
代替的な変色材料を、共役ジインカルボン酸の代わりに、又は共役ジインカルボン酸と組み合わせて利用し得る。好適で代替的なサーモクロミック物質としては、例えば、ビス(2-アミノ-4-オキソ-6-メチルピリミジニウム)-テトラクロロクプラート(II)、ビス(2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジニウム)ヘキサクロロジクプラート(II)、塩化コバルト、3,5-ジニトロサリチル酸、ロイコ染料、スピロピレン、ビス(2-アミノ-4-オキソ-6-メチルピリミジニウム)テトラクロロクプラート(II)及びビス(2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジニウム)ヘキサクロロジクプラート(II)、ベンゾ-及びナフトピラン(クロメン)、ポリ(キシリルビオロゲン)ジブロミド、ジ-β-ナフトスピロピラン、フェロセン変性ビス(スピロピリドピラン)、1-イソプロピリデン-2-[1-(2-メチル-5-フェニル-3-チエニル)エチリデン]-無水コハク酸の異性体、赤外線染料、スピロベンゾピラン、スピロナフトオキサジン、スピロチオピラン及び関連化合物、ロイコキノン染料、天然ロイコキノン、従来のロイコキノン、合成キノン、チアジンロイコ染料、アシル化ロイコチアジン染料、非アシル化ロイコチアジン染料、オキサジンロイコ染料、アシル化オキサジン染料、非アシル化オキサジンロイコ染料、触媒染料、染料顕色剤との組み合わせ、アリールメタンフタリド、ジアリールメタンフタリド、モノアリールメタンフタリド、モノ複素環置換フタリド、3-複素環式置換フタリド、ジアリールメチルアザフタリド、ビス複素環置換フタリド、3,3-複素環置換フタリド、3-複素環置換アザフタリド、3,3-ビス複素環置換アザフタリド、アルケニル置換フタリド、3-エチレニルフタリド、3,3-ビスエチレニルフタリド、3-ブタジエニルフタリド、架橋フタリド、スピロフルオレンフタリド、スピロベンサントラセンフタリド、ビスフタリド、ジ及びトリアリールメタン、ジフェニルメタン、カルビノール塩基、フルオラン化合物、ケト酸とフェノールとの反応生成物、ケト酸と4-アルコキシジフェニルアミンとの反応生成物、ケト酸と3-アルコキシジフェニルアミンとの反応生成物、2’-アミノフルオランとアラルキルハライドとの反応生成物、3’-クロロフルオランとアミンとの反応生成物、テトラゾリウム塩、ホルマザンからのテトラゾリウム塩、テトラゾールからのテトラゾリウム塩等が挙げられ得る。
【0051】
目的の他の変色材料としては、例えば、ロイコ染料、ビニルフェニルメタン-ロイコシアン化物及び誘導体、フルオラン染料及び誘導体、サーモクロミック顔料、マイクロ顔料及びナノ顔料、モリブデン化合物、ドープ又は非ドープ二酸化バナジウム、インドリノスピロクロメン、溶融ワックス、封入染料、液晶材料、コレステリック液晶材料、スピロピラン、ポリビチオフェン、ビピリジン材料、塩化水銀染料、スズ錯体、温度に基づいて構造を変化させる熱成形性材料、豆中の顔料等の天然サーモクロミック材料、[Cu(ジエテン)2](BF4)2(ジエテン=N,N-ジエチルエチレンジアミン)、Securink Corp.(Springfield,Va.)、Matusui Corp.、Liquid Crystal Research Crop.より販売されている様々なサーモクロミックインク、或いは温度変化を報告する能力を有する、又は光刺激等が可能な任意の許容可能なサーモクロミック材料が挙げられる。
【0052】
熱可塑性微粒子上の変色材料の充填量は、広範囲にわたって変化し得る。求められる着色の強度に応じて、変色の充填量は、変色材料を熱可塑性微粒子の上に組み込む前の熱可塑性微粒子に対して最大約50重量%であり得る。特定の実施例では、熱可塑性微粒子上の変色材料の充填量は、熱可塑性ポリマーに対して約0.1重量%~約50重量%、熱可塑性ポリマーに対して約0.5重量%~約25重量%、熱可塑性ポリマーに対して約1重量%~約15重量%、熱可塑性ポリマーに対して約2重量%~約10重量%、又は熱可塑性ポリマーに対して約5重量%~約25重量%の範囲であり得る。
【0053】
本明細書の開示における使用に適した熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド(例えば、ナイロン-6、ナイロン-12等)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを含むコポリマー(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)、グラフト化又は非グラフト化熱可塑性ポリオレフィン、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/アルキル(メタ)アクリレート、官能化又は非官能化(メタ)アクリル酸ポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマー/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/カルボニルターポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノール樹脂、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。前述のうちの1つ又は複数を含むコポリマーもまた、本開示において使用され得る。
【0054】
本明細書の開示において使用するための熱可塑性ポリマーの特に好適な例としては、ナイロン6又はナイロン12などのポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアリールエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(アリーレンスルホン)、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを含むコポリマー(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0055】
好適なポリアミドの具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6、ポリアミド6、又はPA6)、ポリ(ヘキサメチレンスクシンアミド)(ナイロン46、ポリアミド46、又はPA46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66、ポリアミド66、又はPA66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56、ポリアミド56、又はPA56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610、ポリアミド610、又はPA610)、ポリウンデカアミド(ナイロン11、ポリアミド11、又はPA11)、ポリドデカアミド(ナイロン12、ポリアミド12、又はPA12)、及びポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T、ポリアミド6T、又はPA6T)、ナイロン10.10(ポリアミド10.10又はPA10.10)、ナイロン10.12(ポリアミド10.12又はPA10.12)、ナイロン10.14(ポリアミド10.14又はPA10.14)、ナイロン10.18(ポリアミド10.18又はPA10.18)、ナイロン6.10(ポリアミド6.10又はPA6.10)、ナイロン6.18(ポリアミド6.18又はPA6.18)、ナイロン6.12(ポリアミド6.12又はPA6.12)、ナイロン6.14(ポリアミド6.14又はPA6.14)、半芳香族ポリアミド等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。コポリアミドも使用され得る。好適なコポリアミドの例としては、PA11/10.10、PA6/11、PA6.6/6、PA11/12、PA10.10/10.12、PA10.10/10.14、PA11/10.36、PA11/6.36、PA10.10/10.36等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エラストマー系であってもよい、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリカーボネート-エステルアミド、及びポリエーテル-ブロック-アミドも使用され得る。
【0056】
好適なポリウレタンの例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、混合ポリエーテル及びポリエステルポリウレタン等、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリウレタンの例としては、ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン]、ELASTOLLAN(登録商標)1190A(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)、ELASTOLLAN(登録商標)1190A10(BASFから入手可能なポリエーテルポリウレタンエラストマー)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
好適な熱可塑性ポリマーは、エラストマー系又は非エラストマー系であり得る。前述の熱可塑性ポリマーの例のいくつかは、ポリマーの特定の組成に応じてエラストマー系又は非エラストマー系であり得る。例えば、エチレンとプロピレンとのコポリマーであるポリエチレンは、エラストマー系であってもよく、又はポリマー中に存在するプロピレンの量に依存しなくてもよい。
【0058】
エラストマー系熱可塑性ポリマーは、一般に、以下の6つのクラス(これらのいずれも本明細書の開示で使用され得る)のうちの1つに該当する:スチレン系ブロックコポリマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性加硫物(エラストマー合金とも呼ばれる)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、及び熱可塑性ポリアミド(典型的にはポリアミドを含むブロックコポリマー)。エラストマー系熱可塑性ポリマーの例は、Handbook of Thermoplastic Elastomers,2nd ed.,B.M.Walker and C.P.Rader,eds.,Van Nostrand Reinhold,New York,1988に見出すことができる。エラストマー系熱可塑性ポリマーの例としては、エラストマー系ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロック及びポリアミドブロックを含むコポリマー(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コア-シェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、及びポリアクリロニトリル)、シリコーン等が挙げられるが、これらに限定されない。弾性スチレン系ブロックコポリマーとしては、イソプレン、イソブチレン、ブチレン、エチレン/ブチレン、エチレン-プロピレン、及びエチレン-エチレン/プロピレンの群から選択される少なくとも1つのブロックが挙げられ得る。より具体的な弾性スチレン系ブロックコポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン-プロピレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン)等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0059】
非限定的な例では、本明細書の開示の熱可塑性微粒子は、溶融乳化によって形成され得る。熱可塑性微粒子を製造するためのこのような方法は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で熱可塑性ポリマーを混合することであって、熱可塑性ポリマー及び分散媒が加熱温度で実質的に不混和性である、混合することと、加熱温度で分散媒中の液化液滴として熱可塑性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、少なくとも、熱可塑性ポリマーを含む固化状態の熱可塑性微粒子が生じる温度まで分散媒を冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含み得る。このような方法の具体的な実施例は、熱可塑性ポリマーとナノ粒子とを熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度以上の加熱温度で分散媒中で混合することであって、熱可塑性ポリマーと分散媒が加熱温度で実質的に不混和性である、混合することと、加熱温度で分散媒中の液化液滴として熱可塑性ポリマーを分散させるために十分な剪断力を適用することと、液化液滴が形成された後、少なくとも、固化状態の熱可塑性微粒子が生じる温度まで分散媒を冷却することであって、熱可塑性微粒子は熱可塑性ポリマーを含み、ナノ粒子の少なくとも一部は熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面と会合している、分散媒を冷却することと、分散媒から熱可塑性微粒子を分離することと、を含み得る。熱可塑性ポリマー及びナノ粒子の好適な例は、上記で提供され、それらのいずれも、本明細書の開示による熱可塑性微粒子の形成に使用され得る。溶融乳化により形成されると、以下で更に詳細に記載するように、熱可塑性微粒子を更に処理して、変色材料を導入し得る。
【0060】
図1は、微粒子形成がナノ粒子の存在下で起こる、本開示による熱可塑性微粒子を製造するための非限定的な例示的方法100のフローチャートである。図示のように、熱可塑性ポリマー105、分散媒104及びナノ粒子106は、混合物110を製造するために混合108される。1つ又は複数のスルホネート界面活性剤などの1つ又は複数の界面活性剤もまた、混合物110中に存在し得る。存在する場合、熱可塑性ポリマー105に対して最大約25重量%の界面活性剤が混合物110中に存在してもよい。熱可塑性ポリマー105、分散媒104、及びナノ粒子106は、混合及び/又は加熱を実施しつつ、任意の順序で混合108され得る。具体な実施例では、分散媒104は、他の構成成分と混合される前に、熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度を超えて加熱され得る。
【0061】
熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度を超える加熱は、溶融エマルション中の構成成分のいずれかの分解温度又は沸点未満の任意の温度であってもよい。非限定的な実施例では、熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度を約1℃~約50℃、又は約1℃~約25℃、又は約5℃~約30℃、又は約20℃~約50℃上回る温度での加熱が行われ得る。本明細書の開示において、融点は、10℃/分の昇温速度及び冷却速度でASTM E794-06(2018)によって決定され得る。特に指定がない限り、ポリマーの軟化温度又は軟化点は、ASTM D6090-17によって決定される。軟化温度は、1°C/分の加熱速度で0.50gのサンプルを使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定され得る。本開示における融点又は軟化温度は、約50°C~約400°C、又は約60°C~約300°Cの範囲であってもよい。
【0062】
次いで、混合物110は、熱可塑性ポリマー105の融点又は軟化温度よりも高い温度で熱可塑性ポリマー105の液化液滴を製造するために十分な剪断力を適用することで処理112され、それにより溶融エマルション114を形成する。理論に制限されるものではないが、全ての他の要因が同じであれば、剪断力を増加させることは、分散媒104中の液化液滴のサイズを減少させ得ると考えられる。ある点では、剪断力の増加及び液滴の大きさの減少、及び/又はより高い剪断速度で液滴の内容物への分裂という側面での利益の減少があり得ることを理解されたい。溶融エマルション114を製造するのに好適な混合装置の例としては、押出機(例えば、連続押出機、バッチ押出機など)、撹拌反応器、ブレンダー、インラインホモジナイザーシステムを備える反応器等、及びそれから派生する装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
非限定的な例では、液化液滴は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μμm、又は約10μm~約150μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。固化後に形成された熱可塑性微粒子は、同様のサイズ範囲内に存在し得る。すなわち、本開示の微粒子組成物及び方法における熱可塑性微粒子は、約1μm~約1,000μm、又は約1μm~約500μm、又は約1μm~約200μm、又は約1μm~約150μm、又は約1μm~約130μm、又は約1μm~約100μm、又は約1μm~約200μm、又は約10μm~約100μm、又は約20μm~約80μm、又は約20μm~約50μm、又は約50μm~約90μmのサイズを有し得る。粒径測定は、光学画像の分析によって、又は粒径測定のための光散乱技術を使用するMalvern Mastersizer 3000 Aero S装置の内蔵ソフトウェアを使用することによって行われ得る。前述の微粒子サイズは、熱可塑性微粒子上に変色材料を組み込んだ後に維持されてもよい。
【0064】
光散乱技術については、Malvern Analytical Ltd.から入手した商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)で15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズ対照サンプルを使用することができる。サンプルは、Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して空気中に分散された乾燥粉末として分析され得る。粒径は、サイズの関数としての体積密度のプロットから機器ソフトウェアを使用して導出され得る。
【0065】
次いで、溶融エマルション114を冷却116して、液化液滴を固化状態の熱可塑性微粒子に固化させる。冷却速度は、約100℃/秒~約10℃/時間又は約10℃/秒~約10℃/時間の範囲であってもよく、これらの間の任意の冷却速度を含む。剪断は、冷却中に中断され得るか、又は冷却中に同じ速度又は異なる速度で維持され得る。次いで、冷却された混合物118を処理120して、熱可塑性微粒子126を他の構成成分124(例えば、分散媒104、過剰なナノ粒子106等)から分離することができる。熱可塑性微粒子122を更に精製するために、この段階で洗浄、濾過及び/又は同様のことを実施してもよく、熱可塑性微粒子122は、熱可塑性ポリマー105と、少なくとも部分的コーティングとして熱可塑性微粒子122の外側表面をコーティングするナノ粒子106の少なくとも一部とを含む。温度(冷却速度を含む)、熱可塑性ポリマー105の種類、及びナノ粒子106の種類及びサイズ等の非限定的な要因に応じて、ナノ粒子106は、熱可塑性微粒子122の上に配置される過程で、熱可塑性微粒子122の外側表面内に少なくとも部分的に埋め込まれ得る。埋め込みが起こらない場合であっても、ナノ粒子106は、熱可塑性微粒子122と強固に会合したままで、その更なる使用を容易にし得る。
【0066】
上記では、熱可塑性ポリマー105及び分散媒104は、これらの構成成分が、様々な処理温度(例えば、室温から、液化液滴が形成され、2つ以上の相として維持される温度まで)で、不混和性又は実質的に不混和性(5重量%未満の可溶性)、特に1重量%未満の可溶性であるように選択される。
【0067】
熱可塑性微粒子122を他の構成成分124から分離した後、熱可塑性微粒子122の更なる処理126が行われ得る。非限定的な例では、更なる処理126は、例えば、熱可塑性微粒子122をふるい分けすること、及び/又は熱可塑性微粒子122を他の物質とブレンドして、処理された熱可塑性微粒子128を形成することを含んでもよい。処理された熱可塑性微粒子128は、非限定的な例での積層造形などの所望の用途で使用するために配合され得る。
【0068】
別の非限定的な実施例では、更なる処理126は、熱可塑性微粒子122上に、1つ又は複数の共役ジイン等の変色材料を組み込むことを含んでもよい。任意選択的に、更なる処理126中に、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、中性界面活性剤、又は双性イオン性界面活性剤)を熱可塑性微粒子122上に組み込んでもよい。熱可塑性微粒子122上への変色材料の組み込みに関する更なる詳細を以下に提供する。
【0069】
本開示の熱可塑性微粒子は、約0.3g/cm3~約0.8g/cm3、又は約0.3g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.4g/cm3~約0.7g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.6g/cm3、又は約0.5g/cm3~約0.8g/cm3の嵩密度を有し得る。
【0070】
液化液滴を形成するのに十分な剪断力が、本開示の特定の実施例において分散媒をかき混ぜることによって適用され得る。非限定的な例では、撹拌速度は、約50回転/分(rpm)~約1500rpm、又は約250rpm~約1000rpm、又は約225rpm~約500rpmの範囲であり得る。熱可塑性ポリマーを融解又は軟化させる間の撹拌速度は、液化液滴が形成された時点で使用された撹拌速度と同じであっても異なっていてもよい。液化液滴は、約30秒~約18時間以上、又は約1分~約180分、又は約1分~約60分、又は約5分~約6分、又は約5分~約30分、又は約10分~約30分、又は約30分~約60分の撹拌時間にわたって撹拌され得る。
【0071】
分散媒中の熱可塑性ポリマーの充填量(濃度)は、広範囲にわたって変化し得る。非限定的な例では、分散媒中の熱可塑性ポリマーの充填量は、分散媒の重量に対して約1重量%~約99重量%の範囲としてもよい。より具体的な例では、熱可塑性ポリマーの充填量は、約5重量%~約75重量%、又は約10重量%~約60重量%、又は約20重量%~約50重量%、又は約20重量%~約30重量%、又は約30重量%~約40重量%、又は約40重量%~約50重量%、又は約50重量%~約60重量%の範囲としてもよい。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマーと分散媒とを合わせた量に対して、約5重量%~約60重量%、又は約5重量%~約25重量%、又は約10重量%~約30重量%、又は約20重量%~約45重量%、又は約25重量%~約50重量%、又は約40重量%~約60重量%の範囲の量で存在し得る。
【0072】
本明細書の開示によるナノ粒子の存在下で熱可塑性微粒子を形成する際、シリカナノ粒子又は他の酸化物ナノ粒子などのナノ粒子の少なくとも一部は、熱可塑性微粒子の外側表面上にコーティング又は部分コーティングとして配置され得る。コーティングは、外側表面上に実質的に均一に配置され得る。本明細書においてコーティングに関して使用する場合、用語「実質的に均一」は、ナノ粒子によって覆われた表面位置、特に外側表面全体の均一なコーティング厚さを指す。熱可塑性微粒子上のコーティング被覆率は、粒子の表面積の約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%の範囲としてもよい。被覆率は、SEM顕微鏡写真の画像解析によって判定され得る。
【0073】
本明細書の開示における使用に好適な分散媒としては、熱可塑性ポリマーが分散媒と実質的に不混和性であるものを含み、分散媒は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度を超える沸点を有し、分散媒は、熱可塑性ポリマーがその中で溶融されると、実質的に球形の液化液滴を形成するのに十分な粘度を有する。好適な分散媒としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、ペルフッ素化シリコーンオイル、ポリエチレングリコール、アルキル末端ポリエチレングリコール(例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TDG)のようなC1-C4末端アルキル基)、パラフィン、液体石油ゼリー、ミンクオイル、タートルオイル、大豆油、ペルヒドロスクアレン、スイートアーモンドオイル、カロフィラムオイル、パームオイル、パールリームオイル、グレープシードオイル、ゴマオイル、コーンオイル、菜種油、ヒマワリオイル、綿実油、杏仁油、ヒマシ油、アボカドオイル、ホホバオイル、オリーブオイル、穀物胚芽油、ラノリン酸のエステル、オレイン酸のエステル、ラウリン酸のエステル、ステアリン酸のエステル、脂肪族エステル、高級脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸で修飾されたポリシロキサン、脂肪族アルコールで修飾されたポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾されたポリシロキサン等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0074】
好適な分散媒は、約0.6g/cm3~約1.5g/cm3の密度を有してもよく、熱可塑性ポリマーは、約0.7g/cm3~約1.7g/cm3の密度を有してもよく、熱可塑性ポリマーは、分散媒の密度と同様、それよりも低い、又はそれよりも高い密度を有する。
【0075】
特に好適なシリコーンオイルは、ポリシロキサンである。本明細書の開示での使用に適した例示的なシリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0076】
非限定的な例では、分散媒及び熱可塑性ポリマーは、約200℃以上の温度で加熱され得る。好適な加熱温度は、熱可塑性ポリマーの融点又は軟化温度、及び分散媒の沸点に基づいて選択され得る。最大加熱温度は、分散媒及び/又は熱可塑性ポリマーの分解点によって制限され得るが、多くの場合、最大加熱温度は、最大約300°C、好ましくは最大約260°Cであってよい。液化されたポリマー液滴の形成後の冷却速度は、所望により様々であり得る。場合によっては、冷却は、加熱が中断された後、自然な(制御されていない)速度で起こる周囲環境への熱放散と共に起こり得る。他の場合では、制御された速度で冷却して(例えば、加熱温度を徐々に低下させること、及び/又はジャケット付き温度制御を使用することによって、冷却速度を増加又は減少させることが採用され得る。
【0077】
PDMSを含むポリシロキサンなどの好適な分散媒は、25℃で約1,000cSt~約150,000cSt、又は約1,000cSt~約60,000cSt、又は約40,000cSt~約100,000cSt、又は約75,000cSt~約150,000cStの粘度を有し得る。分散媒の粘度は、商業的供給元から入手され得るか、又は、所望により、当業者に既知の技術によって測定され得る。
【0078】
分散媒から熱可塑性微粒子を分離することは、様々な既知の分離技術のいずれかによって行われ得る。重力沈殿及び濾過、デカンテーション、遠心分離などのいずれかを使用して、分散媒から熱可塑性微粒子を分離し得る。次いで、熱可塑性微粒子は、分散媒が可溶性であり、熱可塑性微粒子が分離プロセスの過程で不溶性である溶媒で洗浄され得る。加えて、分散媒が可溶性であり、熱可塑性微粒子が不溶性である溶媒は、エラストマー粒子を分散媒から最初に分離する前に、分散媒及び熱可塑性微粒子と混合され得る。溶媒及び/又は分散媒は、必要があれば、その後の熱可塑性微粒子のバッチを処理するためにリサイクルされてもよい。
【0079】
熱可塑性微粒子を洗浄するか、又は分散媒と混合するのに好適な溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及び/又はキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘプタン、n-ヘキサン、及び/又はn-オクタン)、環状炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、及び/又はシクロオクタン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、及び/又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム及び/又は四塩化炭素)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び/又はn-プロパノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン及び/又はアセトン);エステル(例えば、酢酸エチル等)、水等、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。熱可塑性微粒子を洗浄した後、加熱、真空乾燥、空気乾燥、又はこれらの任意の組み合わせを実施して、残留溶媒を除去し得る。
【0080】
本開示に従って得られる熱可塑性微粒子の少なくとも大部分は、実質的に球形の形状であってもよい。より典型的には、本開示による溶融乳化によって生成される熱可塑性微粒子の約90%以上、又は約95%以上、又は約99%以上は、実質的に球形の形状であってもよい。他の非限定的な例では、本開示の熱可塑性微粒子は、約0.90~約1.0、又は約0.93~約0.99、又は約0.95~約0.99、又は約0.97~約0.99、又は約0.98~1.0を含む、約0.9以上の球形度(円形度)を有し得る。真球度(真円度)は、Sysmex FPIA-2100 Flow Particle Image Analyzerを使用して測定され得る。真円度を判定するには、微粒子の光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内での微粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)を計算する(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能な、SYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器を使用する)。微粒子の真円度はCEA/Pであり、CEAは、実際の微粒子の面積(A)と等価な面積を有する円の円周である。
【0081】
本開示の熱可塑性微粒子は、約25°~約45°、又は約25°~約35°、又は約30°~約40°、又は約35°~約45°の安息角を有し得る。安息角は、ASTM D6393-14「Standard Test Method for Bulk Solids」Characterized by Carr Indices」を使用して、Hosokawa Micron Powder Characteristics Tester PT-Rを使用して決定し得る。
【0082】
上記の開示による分散媒から分離された熱可塑性微粒子は、意図される用途に好適な熱可塑性微粒子を作製するために更に処理されてもよい。一実施例では、熱可塑性微粒子を、熱可塑性微粒子の平均粒径よりも大きい有効なスクリーニングサイズを有するふるい又は類似の構造に通過させてもよい。例えば、三次元印刷の使用に好適な熱可塑性微粒子を処理するための例示的なスクリーニングサイズは、約150μmの実効スクリーニングサイズを有し得る。ふるい分けを参照すると、孔/スクリーンサイズは、U.S.A.Standard Sieve(ASTM E11-17)に記載されている。より大きい又はより小さい他のスクリーニングサイズは、他の用途で使用することになっている熱可塑性微粒子に、より好適であり得る。ふるい分けは、溶融乳化プロセス中に形成され得るより大きな微粒子を除去し得る、及び/又は不十分な流動特性を有し得る塊状の微粒子を除去し得る。一般に、約10μm~約250μmの範囲の実効スクリーニングサイズを有するふるいが使用され得る。
【0083】
別の特定の実施例では、熱可塑性微粒子の更なる処理は、上記のように、溶融乳化条件下で、その形成後に、変色材料を熱可塑性微粒子と会合させることを含んでもよい。共役ジイン等の変色材料を、溶媒中に溶解又は懸濁し、次いで熱可塑性微粒子と接触させてもよい。好適な溶媒は、熱可塑性微粒子を感知できるほど膨張させない、又は別の方法でそれらの粉末流動性能に影響を与えないように選択され得る。非限定的な例では、変色材料は、溶融乳化による合成後に熱可塑性微粒子を洗浄するために使用される同じ溶媒中に、或いはヘプタン又は同様の飽和炭化水素溶媒等の同様の種類の溶媒中に、溶解又は懸濁されてもよい。
【0084】
溶媒中の熱可塑性微粒子と変色材料との接触は、静的又は非静的条件下で、約0°Cから溶媒の還流温度までの範囲の温度で行われてもよい。好ましくは、接触は室温で行われてもよい。非静的接触条件としては、撹拌、音波処理、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。熱可塑性微粒子上に変色材料を組み込むための接触時間は、約1分~約24時間、又は約10分~約12時間、又は約30分~約6時間、又は約1時間~約4時間、又は約6時間~約12時間の範囲であり得る。
【0085】
変色材料が熱可塑性微粒子と好適に会合した後、熱可塑性微粒子は、濾過、デカンテーション、遠心分離、又はこれらの任意の組み合わせ等により溶媒から分離され得る。次いで、熱可塑性微粒子の乾燥は、使用前に行われ得る。
【0086】
加えて、熱可塑性微粒子は、変色材料会合した後に、意図される用途のために熱可塑性微粒子の特性を調整することを意図した、流動助剤、充填剤又は他の物質等の1つ又は複数の追加の構成成分と混合され得る。追加の構成成分と熱可塑性微粒子との混合は、乾式ブレンド技術によって実施され得る。追加の構成成分は、上述の変色が観察可能であることを維持し得る量を含んでもよい。流動助剤(例えば、カーボンブラック、グラファイト、シリカ等)及び同様の物質の好適な例は、当業者によく知られている。また、熱可塑性微粒子の更なるふるい分けは、必要に応じて、この段階で、及び/又は変色材料との会合後に行われてもよい。
【0087】
特定の用途では、本明細書に開示される微粒子組成物は、積層造形プロセス、特に、微粒子固結を促進するために選択的レーザー焼結又は他の粉末床融合プロセスを使用するものであってもよい。微粒子固結がどのように行うかに応じて、変色材料を担持した熱可塑性微粒子の微粒子固結により形成される印刷物は、無色であっても(すなわち、主に熱可塑性ポリマーによって決定される着色を有する)、又は主に変色材料によって決定され、ナノ粒子の存在によって強化される第1の着色状態であってもよい。例えば、10,12-ペンタコサジイン酸等の共役ジインの場合、赤外レーザー(例えば、CO2レーザー又は類似の赤外レーザー又は近赤外レーザー)を用いた微粒子固結により得られた印刷物は、最初に共役ジインを活性化せず、印刷物を実質的に無色の状態のままにし得る。その後、共役ジインは、紫外線光照射により活性化されて、共役ジインのジアセチレンポリマーへの重合を促進し、これにより、印刷物を第1の着色状態にし得る。10,12-ペンタコサイジノイック(pentacosaidynoic)酸及び同様の共役ジノイック酸の場合、第1の着色状態は青色又は青色の色調であってもよい。完成した印刷物は、印刷物の外側表面全体を照射することにより第1の着色状態に変換されてもよく、又は第1の着色は、印刷物の表面上の特定の位置の局所的なUV照射により印刷物上に選択的に導入されてもよい。
【0088】
第1の着色状態を形成した後、第2の着色状態を、熱処理により印刷物に導入してもよい。第2の着色状態は、印刷物を約30°C~約200°Cの範囲の温度に加熱することによって達成され得る。10,12-ペンタコサジイン酸の場合、第2の着色状態は、印刷物を約50°Cに加熱することによって得られる赤色~マゼンタ色であってもよく、又は第2の着色状態は、印刷物を約150°Cに加熱することによる黄色又は黄色い色調であってもよい。印刷物の外側表面全体を第2の着色状態に変換してもよく、又は第2の着色状態は局所加熱によって選択的に導入されてもよい。或いは、第2の着色状態を生成した後、以前に第1の着色状態に変換されていない共役ジインのいずれかが、UV照射により第1の着色状態に変換されてもよい。したがって、場合によっては、第1の着色状態及び第2の着色状態は、変色材料が活性化されていない無色領域に加えて、印刷物において互いに組み合わせて共存することが可能である。また、第2の着色状態を既に生成した後に第1の着色状態に生成された任意の領域について、新たに生成された第1の着色状態は、以前に生成されたものと同じ又は異なる第2の着色状態に変換されてもよい。例えば、黄色の第2の着色状態を有する印刷物は、その後の共役ジインの活性化により、青色の第1の着色状態と組み合わせて生成されてもよい。その後、青色の第1の着色状態を活性化して、赤色又はマゼンタ色の第2の着色状態を生成し得る。したがって、特定の用途の必要性に応じて、広範囲の色の組み合わせが達成可能であり得る。
【0089】
よって、本開示の積層造形プロセスは、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと会合した変色材料とを有する印刷物を得ることができ、変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である。変色材料は、1つ又は複数の共役ジイン又はその重合形態を含んでもよく、重合形態は、第1の着色状態及び/又は第1の着色状態とは異なる第2の着色状態を、印刷物の少なくとも一部分にもたらし得る。例えば、印刷物の少なくとも一部分において、1つ又は複数の共役ジイン少なくとも大部分が重合形態として存在し、第1の着色状態を印刷物の一部分に伝えてもよい。印刷物の一部分が、印刷物の少なくとも一部分において第1の着色状態とは異なる第2の着色状態を有するように、重合形態は加熱によって改質され得る。
【0090】
複数のシリカナノ粒子又は他の種類の酸化物ナノ粒子等の複数のナノ粒子もまた、ポリマーマトリックス内に存在し得る。有利には、シリカナノ粒子は、第1の着色状態及び/又は第2の着色状態から得られる着色を強化し得る。界面活性剤もまた、ポリマーマトリックス内に存在し得る。
【0091】
本開示の積層造形プロセスは、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含む微粒子組成物を提供することであって、変色材料が、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である、提供することと、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと会合する変色材料とを有する印刷物を形成することと、を含んでもよい。好ましくは、熱可塑性微粒子は、熱可塑性微粒子の外側表面上に配置された、シリカナノ粒子又は他の酸化物ナノ粒子等の複数のナノ粒子を有し、これにより、シリカナノ粒子又は他の酸化物ナノ粒子が、印刷物を形成する際にポリマーマトリックス内に存在する。具体的な実施例では、本開示による印刷物を形成する方法は、粉末床に微粒子組成物を堆積させることと、粉末床内の熱可塑性微粒子の一部を固結することと、を含んでもよい。
【0092】
本開示による印刷物を形成する方法は、印刷物に着色を導入することを含み得る。具体的には、本開示の方法は、印刷物の少なくとも一部分を、変色材料を、第1の着色状態を有する変色材料の重合形態に変換するために十分な光照射(例えば、UV照射)等の第1の活性化条件に曝露することを含み得る。その後、必要に応じて、本開示の方法は、印刷物の少なくとも一部分を、変色材料の重合形態を、第1の着色状態とは異なる第2の着色状態に変換するために十分な熱活性化等の第2の活性化条件に曝露することを含み得る。第1の着色状態及び第2の着色状態は、第1及び第2の活性化条件の局所的な適用により、所与の印刷物内に共に存在し得る。
【0093】
印刷物を形成するための選択的レーザー焼結又は他の粉末床微粒子固結プロセスを実施するのに好適な条件は、特に限定されないと考えられる。所望の結果に応じて、微粒子固結プロセスは、第1の着色状態を生成するための共役ジインの重合を促進しても、又は促進しなくてもよい。すなわち、微粒子固結化がどのように行われるかに応じて、印刷物又は印刷物の一部分は、主に熱可塑性ポリマー(例えば、白色又は無色)によって決定された初期着色状態にあってもよく、次いで、共役ジインの重合形態によって決定された第1の着色状態に変換される。共役ジインを活性化することなく選択的レーザー焼結を実行するのに好適なレーザーは、連続波レーザーとパルス波レーザーの両方を含んでもよく、そのいずれかは、熱可塑性微粒子の固結を促進するために必要なエネルギーを提供し得る。CO2レーザーは、CO2レーザー発光波長に対するポリマーの高い吸収性により、選択的レーザー焼結中に熱可塑性微粒子の固結を促進するために一般的に使用される。CO2レーザーの動作条件は、共役ジインの活性化よりも、微粒子固結が優先して生じるように選択され得る。熱可塑性微粒子の固結を促進するための標準的なレーザー設定(例えば、電力、走査速度、床温度等)は、存在する特定の熱可塑性ポリマーに基づいて選択され、好適なレーザー設定は、当業者によって選択され得る。選択的レーザー焼結又は類似の粉末固結技術を行うための特定の条件の選択は、例えば、使用される熱可塑性ポリマーの種類、熱可塑性微粒子の粒径及び組成、製造される印刷物の種類、並びに印刷物の意図される使用条件などの非限定的な要因によって影響され得る。
【0094】
印刷物の少なくとも一部分の加熱は、実質的に印刷物の表面全体に放射的に伝導されてもよく、或いは加熱は、レーザー又は加熱空気流等の指向性の加熱により局所化されてもよい。局所加熱を生成するための他の技術もまた好適であり、当業者に認識可能であろう。
【0095】
本明細書に開示される微粒子組成物を使用した成形可能な印刷物の実施例は、特に限定することを考えていないが、例えば、容器(例えば、食品、飲料、化粧品、パーソナルケア組成物、医薬等用)、靴底、玩具、家具部品、装飾家庭用品、プラスチックギア、ネジ、ナット、ボルト、ケーブルタイ、医療用品、プロテーゼ、整形外科用インプラント、学習補助具、3D解剖学的モデル、ロボット、生物医学的装置(矯正器具)、家電、歯科用充填物、自動車及び航空機/航空宇宙部品、電子機器、スポーツ用品等が挙げられる。以下に説明するように、様々な色のこれら及び他の種類の印刷物及を製造する能力は有利であり得る。
【0096】
特定の実施例では、本明細書に開示される微粒子組成物は、自律型温度センサの少なくとも一部分を含み得る。具体的には、印刷物は、第1の着色状態(例えば、共役ジインの場合は青色)に活性化された変色材料のパターン化された位置を含んでもよい。或いは、熱可塑性ポリマーのパターン付きマークと、第1の着色状態に活性化された変色材料とを含むデカール又は類似のラベルは、印刷対象又は非印刷対象の既存の物体に適用され得る。その後、変色材料の第2の着色状態への更なる熱活性化は、対象物が曝露された状態を示し得る。
【0097】
本明細書に開示される実施形態は以下を含む。
【0098】
A.粉末微粒子を含む微粒子組成物。微粒子組成物は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含み、変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である。
【0099】
B.印刷物。印刷物は、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと会合する変色材料とを含み、変色材料は、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である。
【0100】
C.微粒子固結によって印刷物を形成するための方法。本方法は、熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含む微粒子組成物を提供することであって、変色材料が、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である、提供することと、熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、ポリマーマトリックスと会合する変色材料とを有する印刷物を形成することと、を含む。
【0101】
実施形態A~Cのそれぞれは、以下の追加要素のうちの1つ又は複数を任意の組み合わせで有してもよい。
【0102】
要素1:変色材料が、1つ又は複数の共役ジインを含む。
【0103】
要素2:1つ又は複数の共役ジインが、共役ジインカルボン酸又はその誘導体を含む。
【0104】
要素3:共役ジインカルボン酸が、10,12-ペンタコサジイン酸を含む。
【0105】
要素4:微粒子組成物が、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子が複数の酸化物ナノ粒子を含む。
【0106】
要素5:複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む。
【0107】
要素6:シリカナノ粒子が疎水変性されている。
【0108】
要素7:微粒子組成物が、熱可塑性微粒子の外側表面と会合する界面活性剤を更に含む。
【0109】
要素8:変色材料が、1つ又は複数の共役ジイン又はその重合形態を含む。
【0110】
要素9:1つ又は複数の共役ジインの少なくとも大部分が重合形態として存在し、印刷物が第1の着色状態を有する。
【0111】
要素10:重合形態が加熱によって改質され、印刷物が第1の着色状態とは異なる第2の着色状態を有する。
【0112】
要素11:印刷物が、ポリマーマトリックス内に存在する複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子が複数の酸化物ナノ粒子を含む。
【0113】
要素12:印刷物が、ポリマーマトリックス内に存在する界面活性剤を更に含む。
【0114】
要素13:印刷物を形成することが、粉末床内に微粒子組成物を堆積させることと、粉末床内の熱可塑性微粒子の一部を固結することとを含む。
【0115】
要素14:方法が、印刷物の少なくとも一部分を、変色材料を、第1の着色状態を有する変色材料の重合形態に変換するために十分な第1の活性化条件に曝露出することを更に含む。要素15:第1の活性化条件が印刷物の光照射を含む。
【0116】
要素16:方法が、印刷物の少なくとも一部分を、変色材料の重合形態を、第1の着色状態とは異なる第2の着色状態に変換するために十分な第2の活性化条件に曝露出することを更に含む。
【0117】
要素17:第2の活性化条件が、印刷物の熱処理を含む。
【0118】
要素18:複数の熱可塑性微粒子が、複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、複数のナノ粒子は、複数の酸化物ナノ粒子を含む。
【0119】
要素19:界面活性剤が熱可塑性微粒子の外側表面と会合する。
【0120】
非限定的な実施例として、Aに適用可能な例示的な組み合わせは、限定するものではないが、1及び4と、1、2又は3、及び4と、1~4及び5と、1、2又は3、及び4又は5と、1及び7と、1、4及び7と、1、2又は3,4及び7と、1~4、5及び7と、4及び7と、4、5及び7とを含む。Bに適用可能な更なる例示的な組み合わせは、限定するものではないが、8及び9と、8~10と、8及び11と、8、5及び11と、8及び12と、8、11及び12と、8、5、11及び12と、5及び11と、5、11及び12と、11及び12とを含む。Cに適用可能な例示的な組み合わせは、限定するものではないが、13及び14と、13~15と、13及び16と、13、14及び16と、13~16と、13、16及び17と、13~17と、1と更に組み合わせた前述のもののいずれかと、1、及び2又は3と、18と、19と、18及び19と、18及び5と、18、5、及び19とを含む。
【0121】
本開示のより良好な理解を促進するために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限するか、又は定義するために読まれるべきではない。
【実施例】
【0122】
ポリエーテルブロックアミド(PEBA、VESTAMID E40S3、ポリアミド-12、Evonik)を、以下の実施例では、溶融乳化により粉末微粒子に加工した。注目すべきところでは、シリカナノ粒子を溶融乳化プロセス中に含めた。
【0123】
UV照射は、254nm短波長照射ランプ(Spectroline Model ENF-260C、Spectronics Corporation)を用いて行った。サンプルから7cm離して照射を行った。
【0124】
特定の温度に設定されたIKA RCTベーシック・ホット・プレートを使用して加熱を行った。
【0125】
サンプルの着色は、XRITE 528分光光度計を用いて測定した。
【0126】
合成
サンプル1:500mLのガラス反応器に、160gのシリコーンオイル(PSF 10,000、Clearco)を充填し、500rpmの撹拌速度で窒素下で200°Cに加熱した。VESTAMID E40S3ポリマー微粒子(40g)を反応器に添加し、撹拌を更に30分間継続した。次いで、混合物を室温まで冷却し、得られたポリマー微粒子をワットマン濾紙上で真空濾過によって分離した。ポリマー微粒子を、濾紙上でヘプタン用いて3回洗浄した。
【0127】
次いで、10,12-ペンタコサジイン酸をポリマー微粒子に組み込んだ。0.8gのポリマー微粒子及び0.2gの10,12-ペンタコサジイン酸を9gのエタノール中で混合し、混合物を室温で1000rpmで2時間撹拌した。次いで、音波処理を1時間行い、混合物を4°Cで12時間保管した。次いで、ポリマー微粒子を濾過により回収し、24時間乾燥させた。
【0128】
サンプル2:0.05gのアニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム-SDBS)をエタノール中のポリマー微粒子及び10,12-ペンタコサジイン酸と混合した以外は、サンプル1を繰り返した。
【0129】
サンプル3:0.05gのカチオン性界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロミド-CTAB)をエタノール中のポリマー微粒子及び10,12-ペンタコサジイン酸と混合した以外は、サンプル1を繰り返した。
【0130】
サンプル4:溶融乳化中に、0.4gの疎水性変性シリカナノ粒子(AEROSIL R972、ジメチルジクロロシラン変性、BETによる表面積90~130m2/g)がシリコーンオイルに含まれたこと以外は、サンプル1を繰り返した。ポリマー微粒子の分離、及び10,12-ペンタコサジイン酸の組み込みを上記のように行った。
【0131】
サンプル5:溶融乳化中に、0.4gの疎水性変性シリカナノ粒子(AEROSIL RX50、ヘキサメチルジシラゼン変性、BETによる表面積25~45m2/g)がシリコーンオイルに含まれたこと以外は、サンプル1を繰り返した。ポリマー微粒子の分離、及び10,12-ペンタコサジイン酸の組み込みを上記のように行った。
【0132】
サンプル6:溶融乳化中に、0.4gの疎水性変性シリカナノ粒子(AEROSIL R812S、ヘキサメチルジシラゼン変性、BETによる表面積195~245m2/g)がシリコーンオイルに含まれたこと以外は、サンプル1を繰り返した。ポリマー微粒子の分離、及び10,12-ペンタコサジイン酸の組み込みを上記のように行った。
【0133】
サンプル7:溶融乳化中に、0.4gの疎水変性シリカナノ粒子(AEROSIL R812S、ヘキサメチルジシラゼン変性、BETによる表面積195~245m2/g)がシリコーンオイルに含まれ、0.05gのアニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム-SDBS)が10,12-ペンタコサジイン酸と共にエタノール中のポリマー微粒子と混合されたこと以外は、サンプル1を繰り返した。ポリマー微粒子の分離、及び10,12-ペンタコサジイン酸の組み込みを上記のように行った。
【0134】
サンプル8:溶融乳化中に、0.4gの疎水変性シリカナノ粒子(AEROSIL R812S、ヘキサメチルジシラゼン変性、BETによる表面積195~245m2/g)がシリコーンオイルに含まれ、0.05gのカチオン性界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロミド-CTAB)が10,12-ペンタコサジイン酸と共にエタノール中のポリマー微粒子と混合された以外は、サンプル1を繰り返した。ポリマー微粒子の分離、及び10,12-ペンタコサジイン酸の組み込みを上記のように行った。
【0135】
サンプル9:溶融乳化中に、0.4gの親水性ヒュームドシリカナノ粒子(AEROSIL 380、BETによる表面積350~410m2/g)がシリコーンオイルに含まれたこと以外は、サンプル1を繰り返した。ポリマー微粒子の分離、及び10,12-ペンタコサジイン酸の組み込みを上記のように行った。
【0136】
サンプル10:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル1を繰り返した。
【0137】
サンプル11:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル2を繰り返した。
【0138】
サンプル12:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル3を繰り返した。
【0139】
サンプル13:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル4を繰り返した。
【0140】
サンプル14:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル5を繰り返した。
【0141】
サンプル15:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル6を繰り返した。
【0142】
サンプル16:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル7を繰り返した。
【0143】
サンプル17:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル8を繰り返した。
【0144】
サンプル18:10,12-ペンタコサジイン酸を組み込んだときに、エタノールをヘプタンで置換したこと以外は、サンプル9を繰り返した。
【0145】
以下の表1は、上記のように調製されたサンプル1~18の組成を要約する。サンプル1~9の平均粒径(D
50)は、82ミクロンであり、スパンは1.865であった。サンプル10~18について、平均粒径は72ミクロンであり、スパンは2.182であった。平均粒径測定値を、Malvern Mastersizer 3000 Aero S粒径分析器を使用して光散乱によって測定した。Malvern Analytical Ltd.から入手したQuality Audit Standards QAS 4002(商標)の商品名で15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズ対照サンプルを使用した。Mastersizer 3000 Aero Sの乾燥粉末分散モジュールを使用して、空気中に分散した乾燥粉末としてサンプルを分析した。粒径は、機器ソフトウェアを使用して、サイズの関数としての体積密度のプロットから導出された。
【表1】
【0146】
10,12-ペンタコサジイン酸(サンプル1~9)のエタノール混入により得られたサンプルは、相当の膨潤及び凝集があり、それにより、ポリマー微粒子の自由流動性粉末が得られなかった。対照的に、10,12-ペンタコサジイン酸(サンプル10~18)のヘプタン混入は、ポリマー微粒子の自由流動性粉末が得られた。
色活性化
【0147】
サンプル1~18は、合成後は、本質的に白色であった。その後、濾紙上に堆積したサンプルの薄層を、254nmのUV照射又は254nmの連続UV照射により活性化し、続いて50°C又は150°Cで加熱した。UV照射は、サンプルを急速に青色にした(10秒未満)。以下の
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bに示すように、UV照射後に50°Cで加熱すると赤色~マゼンタ色が形成され、150°Cで加熱すると黄色が形成された。加熱を中止し、サンプルを室温に戻した後、赤色/マゼンタ色と黄色の両方が持続した。
【0148】
図2Aは、254nmでのUV照射後のサンプル1~9の写真を示す。
図2Bは、UV照射及び50°Cでの熱処理後のサンプル1~9の対応する写真を示す。図示のように、青色は、UV照射から得た(
図2Aのグレースケール画像、及び
図2Bのサンプルの左側)。濾紙上でサンプルの一部を加熱すると、赤色~マゼンタ色が形成された(
図2Bのサンプルの右側のグレースケール画像)。画像の色合いの変動は、濾紙上でのサンプルの不均一な乾燥から生じるカバレッジの不均一性に起因する。
【0149】
図3Aは、同様に、254nmでのUV照射後のサンプル10~18の写真を示す。
図3Bは、UV照射後、50°C又は150°Cで熱処理した後のサンプル10~18の対応する写真を示す。図示のように、青色は再びUV照射から得た(
図3Aのグレースケール画像、及び
図3Bのサンプルの右側)。濾紙上でサンプルの一部を50°Cに加熱すると、赤色~マゼンタ色が形成された(
図3Bのサンプルの左下側のグレースケール画像)。50°Cで既に加熱されたサンプルの一部を150°Cで更に加熱すると、黄色が形成された(
図3Bのサンプルの左上側のグレースケール画像)。サンプルを冷却してもどちらの色も変化しなかった。画像の色合いの変動は、濾紙上でのサンプルの不均一な乾燥から生じるカバレッジの不均一性に起因する。
【0150】
サンプル1~9の中でも、シリカナノ粒子及び界面活性剤の非存在下で、最も明るい青色を得た(サンプル1)。アニオン性及びカチオン性界面活性剤は両方とも、シリカが存在しないときに青色の強度が増大した(サンプル2及び3)。シリカナノ粒子が存在するとき、青色の強度が更に増大し、AEROSIL R812Sシリカの存在下で最も強い青色を得た(サンプル6)。シリカナノ粒子の存在下では、アニオン性及びカチオン性界面活性剤は、青色の強度に対して最小限の影響しか及ぼさなかった。様々な時間のUV照射後に、XRITE 528分光光度計を使用して、得られたサンプル1~9についての色空間測定を以下の表2に要約する。各照射時間について、L
*(明度)、a
*(緑色/黄色)及びb
*(青色/黄色)値を得た。色空間測定は、定性的な目視観察と概ね一致した。
【表2】
【0151】
図4Aは、照射時間に応じた、サンプル1、2及び3の色空間明度(L
*)のプロットである。
図4Bは、照射時間に応じた、サンプル6、7及び8の色空間明度(L
*)のプロットである。
図5A及び
図5Bは、照射時間に応じた、色空間青色/黄色値(b
*)の対応するプロットである。図示のように、一貫した色空間明度及び色空間青色/黄色値には、短い照射時間の後だけに達し、アニオン性又はカチオン性界面活性剤の存在によって、値は最小限の影響しか受けなかった。
【0152】
図6は、照射時間に応じた、サンプル1、4、5、6及び9の色空間明度(L
*)のプロットである。
図7は、照射時間に応じた、色空間青色/黄色値(b
*)の対応するプロットである。図示のように、様々な等級のシリカナノ粒子は、ポリマー微粒子に異なる度合い明度を付与し、これらの全ては、シリカナノ粒子を含まないポリマー微粒子よりも色が強かった。色空間青色/黄色値に対する異なる種類のシリカナノ粒子の効果は、まったく顕著ではなかった。長い照射時間で、色空間明度及び色空間青色/黄色値の変化は最小であった。
【0153】
サンプル10~18の中でも、シリカナノ粒子及び界面活性剤の非存在下で、最も明るい青色を再び得た(サンプル10)。一般に、シリカナノ粒子を含むサンプル(サンプル13~18)により、濃い青色を得た。UV照射後にXRITE 528分光光度計を使用して得たサンプル10~18についての色空間測定を、以下の表3に要約する。各照射時間について、L
*(明度)、a
*(緑色/黄色)及びb
*(青色/黄色)値を得た。
【表3】
【0154】
熱活性化がサンプル10~18に与える効果を
図8~
図10に示す。
図8は、加熱温度に応じた、サンプル10~18の色空間明度(L
*)のプロットである。図示のように、最初に、(UV照射により生成された)青色サンプルは、50°C及び150°Cに加熱すると、色の明るさが幾分低下した。
図9及び10は、加熱温度に応じた、サンプル10~18それぞれの色空間緑色/赤色値(a
*)及び色空間青色/黄色値(b
*)のプロットを示す。図示のように、色空間緑色/赤色値は、サンプル12、14及び18を除いて、50°Cでピークに達し、その後減少した(
図9)。色空間緑色/赤色値(a
*)の減少は、サンプル12、14及び18を除く全てのサンプルについて150°Cに更に加熱すると、赤色~マゼンタ色の消失及び黄色の形成と一致する。サンプル12、14及び18のa
*の限定された変化は、150°Cに加熱したときのこれらのサンプルの可視色の変化(
図3B)の程度が低いことと一致する。同様に、サンプル12、14及び18を除く全てのサンプルの色空間青色/黄色値(b
*)は、50°Cから150°Cへの加熱時に増加し、再び目視で観察された黄色の内部成長と一致する(
図3B)。
【0155】
本明細書に記載される全ての文書は、そのような実施が許可される全ての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。したがって、本開示はそれにより限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載される組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の構成成分、又は組成物を含まなくてもよい。任意の方法は、本明細書に列挙又は開示されていないいかなる工程を欠いてもよい。同様に、用語「備える、含む(comprising)」は、用語「含む(including)」と同義であると考えられる。方法、組成物、要素又は要素の群が移行句「備える、含む(comprising)」で先行する場合はいつでも、本発明者らがまた、組成物、要素、又は複数の要素の列挙に先行する移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」で同じ組成物又は要素の群を企図すること、及びその逆もまた同様であることは理解される。
【0156】
別途記載のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分、分子量などの特性、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、請求項の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0157】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値の全ての範囲は、広範な値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、請求項で使用するとき、不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ又は複数を意味するように定義される。
【0158】
1つ又は複数の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装の全ての特徴は、本出願に記載又は表示されていない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンスなど、実装によって及び随時に変化する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことは理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
【0159】
したがって、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上述の具体的な実施形態は例示的なものに過ぎず、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかである、異なるが同等の方法で本開示が修正及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示された具体的な例示的実施形態が、変更され、組み合わされ、又は修正され得、全てのそのような変形が、本開示の範囲及び趣旨内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択の要素の不在下で実施されてもよい。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕微粒子組成物であって、
熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、前記熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含み、前記変色材料がフォトクロミック及びサーモクロミックの両方である、微粒子組成物。
〔2〕前記変色材料が、1つ又は複数の共役ジインを含む、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔3〕前記複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子を含む、複数のナノ粒子、を更に含む、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔4〕前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、前記〔3〕に記載の微粒子組成物。
〔5〕前記熱可塑性微粒子の外側表面に会合する界面活性剤を更に含む、前記〔1〕に記載の微粒子組成物。
〔6〕印刷物であって、
熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスと、
前記ポリマーマトリックスと会合する変色材料であって、フォトクロミック及びサーモクロミックの両方である、変色材料と
を含む、印刷物。
〔7〕前記変色材料が、1つ又は複数の共役ジイン又はその重合形態を含む、前記〔6〕に記載の印刷物。
〔8〕前記1つ又は複数の共役ジインの少なくとも大部分が、前記重合形態として存在し、前記印刷物が第1の着色状態を有する、前記〔7〕に記載の印刷物。
〔9〕前記重合形態が加熱によって改質され、前記印刷物が、前記第1の着色状態とは異なる第2の着色状態を有する、前記〔8〕に記載の印刷物。
〔10〕前記ポリマーマトリックス内に存在する複数のナノ粒子であって、複数の酸化物ナノ粒子を含む、複数のナノ粒子、を更に含む、前記〔6〕に記載の印刷物。
〔11〕前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、前記〔10〕に記載の印刷物。
〔12〕方法であって、
熱可塑性ポリマーを含む複数の熱可塑性微粒子と、前記熱可塑性微粒子と会合する変色材料とを含む微粒子組成物を提供することであって、前記変色材料がフォトクロミック及びサーモクロミックの両方である、提供することと、
前記熱可塑性ポリマー含むポリマーマトリックスと、前記ポリマーマトリックスと会合する前記変色材料とを有する印刷物を形成することと、
を含む、方法。
〔13〕前記印刷物を形成することが、
前記微粒子組成物を粉末床内に堆積させることと、
前記粉末床内の前記熱可塑性微粒子の一部を固結することと、
を含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記印刷物の少なくとも一部分を、前記変色材料を、第1の着色状態を有する前記変色材料の重合形態に変換するために十分な第1の活性化条件に曝露することを更に含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔15〕前記第1の活性化条件が、前記印刷物の光照射を含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記印刷物の少なくとも一部分を、前記変色材料の前記重合形態を、前記第1の着色状態とは異なる第2の着色状態に変換するために十分な第2の活性化条件に曝露することを更に含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記第2の活性化条件が、前記印刷物の熱処理を含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記変色材料が、1つ又は複数の共役ジインを含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔19〕前記複数の熱可塑性微粒子が、前記複数の熱可塑性微粒子のそれぞれの外側表面上に配置された複数のナノ粒子を更に含み、前記複数のナノ粒子が複数の酸化物ナノ粒子を含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔20〕前記複数の酸化物ナノ粒子が、複数のシリカナノ粒子を含む、前記〔19〕に記載の方法。