(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-09
(45)【発行日】2025-05-19
(54)【発明の名称】トリオルガノアミノホスフィンを含むエチレン系ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20250512BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20250512BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20250512BHJP
C08K 5/50 20060101ALI20250512BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20250512BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/00
C08K5/14
C08K5/50
H01B3/44 F
(21)【出願番号】P 2021577030
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 US2020037931
(87)【国際公開番号】W WO2020263626
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-05
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー、バーラト アイ.
(72)【発明者】
【氏名】コーゲン、ジェフリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】リオッタ、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】サルンガドハラン、サラス チャンド
(72)【発明者】
【氏名】ポレット、パメラ
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-045642(JP,A)
【文献】特表2018-525454(JP,A)
【文献】特開昭62-101644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
H01B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(i)エチレン系ポリマーと、
(ii)有機過酸化物と、
(iii)
組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~0.1重量%の構造(1)のトリオルガノアミノホスフィンと、
【化1】
(iv)
組成物の総重量に基づいて、0.0001重量%~0.1重量%のプロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)と、を含み、
R
1およびR
2が各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、
およびC
4-C
6N-ヘテロシクロアルキ
ルからなる群から選択され、
R
3が、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、
およびC
4-C
6N-ヘテロシクロアルキ
ルから選択さ
れ、
前記組成物を空気雰囲気中で、100℃で2時間加熱した後、前記組成物が、12%~100%の過酸化物保持割合を有し、得られた加熱された組成物の過酸化物含有量が、液体クロマトグラフィーを使用して測定される、組成
物。
【請求項2】
前記PASCが、前記プロトン酸であり、前記プロトン酸が、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、カルボン酸、リン系の酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PASCが、前記PAGCであり、前記PAGCが、酸化防止剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、硫黄系酸化防止剤である、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
R
1およびR
2が各々独立して、フェニル基、N,N-ジエチルアミノ基、ピロリジニル基
、およびシクロヘキシル基からなる群から選択され、
R
3が、N,N-ジエチルアミノ基、
およびピロリジニル
基からなる基から選択される、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
R
1が、フェニル基であり、
R
2およびR
3がそれぞれ、N,N-ジメチルアミノ基である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
R
1、R
2、およびR
3がそれぞれ、ピロリジニル基である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
R
1、R
2、およびR
3が同じである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機過酸化物が、過酸化ジクミルである、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物を、前記組成物を架橋するのに十分な温度に加熱することにより作製された、架橋生成物。
【請求項11】
被覆された導体であって、
導体と、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物または請求項
10に記載の架橋生成物を含む、前記導体上の被覆と、を含む、被覆された導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架橋性組成物およびそれを含む被覆された導体に関する。
【発明の概要】
【0002】
エチレン系ポリマーと有機過酸化物とを含む架橋性組成物は、電線およびケーブル用の被覆、特に絶縁体または外被層を形成するために頻繁に使用される。しかしながら、架橋性組成物中の酸化防止剤などの添加剤に含まれているかまたはこれから生成され得るプロトン酸は、架橋性組成物の架橋にとって非生産的な経路を介して有機過酸化物の早期分解を引き起こすことが知られている。すなわち、組成物が経時的に貯蔵されるか、または組成物が導体上に押し出されると、有機過酸化物は、所望のフリーラジカル架橋反応をもたらさないイオン経路で分解する。貯蔵および押出中に組成物において十分な量の有機過酸化物が保持されないと、被覆された導体を作製する押出後に行われる後続の連続加硫ステップにおいて組成物が架橋することができず、それにより、被覆された導体は、電線およびケーブルの用途にとって好適ではなくなる。
【0003】
当該技術分野は、電線およびケーブルの用途に好適なエチレン系ポリマーと、有機過酸化物と、プロトン酸源化合物とを含む被覆組成物の必要性を認識している。さらに、貯蔵中におけるまたは約140℃以下の押出温度における有機酸化物のイオン分解を防止または遅延して、それにより、組成物が好適な量の有機過酸化物を保持し、続いて(約140℃超の温度での)連続加硫中に被覆組成物が架橋することを可能にする、エチレン系ポリマーと、有機過酸化物と、プロトン酸源化合物とを含む被覆組成物の必要性を認識している。
【0004】
本開示は、組成物を提供する。組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノアミノホスフィンと、(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせから選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)とを含む。トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1)を有し、
【化1】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0005】
本開示はまた、被覆された導体を提供する。被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は組成物を含む。組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノアミノホスフィンと、(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせから選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)とを含む。トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1)を有し、
【化2】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0006】
本開示はまた、組成物を架橋するのに十分な温度に組成物を加熱することにより作製された架橋生成物を提供する。架橋生成物は、導体上の被覆であり得る。
【0007】
定義
元素周期表へのいずれの参照も、CRC Press,Inc.によって1990~1991に発行されたときのものである。この周期表の元素の族への参照は、族の番号付与の新しい表記法による。
【0008】
米国特許慣行の目的のため、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない程度において)および当該技術分野の一般知識に関して、それらの全体が参照により組み込まれる(またはその米国版に相当するものが、参照により同様に組み込まれる)。
【0009】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値のすべての値を含む。明示的な値を含む範囲(例えば、1、2、または3~5、または6、または7の範囲)の場合、2つの明示的な値の間の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6等)。
【0010】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは、重量に基づき、すべての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
本明細書に開示される任意の例は、限定するものではない。
【0012】
「アルキル」および「アルキル基」とは、飽和直鎖状、環状、または分岐状炭化水素基を指す。
【0013】
「アルファ-オレフィン」、「α-オレフィン」、および同様の用語は、炭化水素分子または置換炭化水素分子(すなわち、例えば、ハロゲン、酸素、窒素など、水素および炭素以外の1つ以上の原子を含む炭化水素分子)を指し、炭化水素分子は、(i)唯一のエチレン系不飽和であって、この不飽和が、第1の炭素原子と第2の炭素原子との間に位置する、唯一のエチレン系不飽和と、(ii)少なくとも2個の炭素原子、好ましくは3~20個の炭素原子、または4~10個の炭素原子、または4~8個の炭素原子とを含む。α-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、およびこれらのモノマーのうちの2つ以上からの混合物が挙げられる。
【0014】
「酸化防止剤」は、ポリマーの加工中に起こり得る酸化を最小限に抑えるために使用することができる化学的化合物の種類またはクラスを指す。
【0015】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、および同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を指す。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、ならびにドメイン構成を測定および/または特定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含んでも、含まなくてもよい。
【0016】
「ケーブル」は、保護絶縁体、ジャケットまたはシース内の少なくとも1つの導体、例えば、ワイヤ、光ファイバなどである。ケーブルは、一般的な保護ジャケットまたはシース内で共に結合した2つ以上のワイヤまたは2つ以上の光ファイバである。組み合わせケーブルは、電気ワイヤおよび光ファイバの両方を含み得る。ジャケットまたはシース内部の個々のワイヤまたはファイバは、むき出しであってもよく、カバーされてもよく、または絶縁されてもよい。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、USP6,496,629、およびUSP6,714,707に例証される。ケーブルは、低、中、および/または高電圧用途のために設計され得る。
【0017】
「カルボン酸」は、カルボキシル基(-COOH)を含む有機酸である。
【0018】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0019】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。あらゆる疑義を避けるため、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求の範囲に記載されるすべての組成物は、別段の記載がない限り、ポリマーであるかないかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「~から本質的になる」という用語は、任意の後続の詳述の範囲から、操作性に必要不可欠ではないものを除き、任意の他の構成成分、ステップ、または手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に記述または列挙されていない任意の構成要素、ステップ、または手順を除外する。「または」という用語は、別途記載がない限り、列挙される構成要素を個々に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆の場合も同じである。
【0020】
「導体」は、任意の電圧(DC、AC、または過渡)において、熱、光および/または電気を伝導するための1つ以上のワイヤ(複数可)または1つ以上のファイバ(複数可)である。導体は、単線/ファイバまたはマルチワイヤ/ファイバであってもよく、かつ撚線形態または管状形態であってもよい。好適な導体の非限定的な例としては、炭素、銀、金、銅、およびアルミニウムなどの様々な金属が挙げられる。導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製された光学ファイバであり得る。導体は、保護シース内に配置されてもされなくてもよい。導体は、単一のケーブルでも、一緒に束ねられた複数のケーブル(すなわち、ケーブルコアまたはコア)でもよい。
【0021】
「架橋性」および「硬化性」とは、物品に成形される前または後のポリマーが、硬化も架橋もされておらず、実質的な架橋を誘発した処理に供されても曝露されてもいないが、ポリマーが、そのような処理(例えば、熱への曝露)に供されるかまたは曝露されたときに実質的な架橋をもたらす添加剤(複数可)または官能基を含み得ることを示す。ポリマーまたは組成物の架橋性は、高温でムービングダイレオメーター(MDR)において試験して弾性トルクの変化を測定することにより評価され得る。
【0022】
「架橋された」および類似する用語は、ポリマー組成物が、物品に成形される前または後に、90重量パーセント以下のキシレンまたはデカリン抽出物(すなわち、10重量パーセント以上のゲル含有量)を有することを意味する。
【0023】
「硬化された」および類似する用語は、ポリマーが、物品に成形される前または後に、架橋を誘発する処理に供されたか、または曝露されたことを示す。
【0024】
「エチレン系ポリマー」、「エチレンポリマー」、または「ポリエチレン」は、ポリマーの重量に基づいて、50重量%以上または過半量の重合エチレンを含むポリマーであり、任意に、1つ以上のコモノマーを含み得る。したがって、「エチレン系ポリマー」という一般用語は、エチレンホモポリマーおよびエチレンインターポリマーを含む。好適なコモノマーは、アルファオレフィンである。「エチレン系ポリマー」および「ポリエチレン」という用語は、互換可能に使用される。エチレン系ポリマー(ポリエチレン)の例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られる)、シングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。一般に、ポリエチレンは、チーグラーナッタ触媒などの不均質触媒系、第4族遷移金属およびメタロセン、非メタロセン金属中心、ヘテロアリール、ヘテロ原子アリールオキシエーテル、ホスフィンイミンなどの配位子構造を含む均質触媒系を使用して、気相流動床反応器、液相スラリープロセス反応器、または液相溶液プロセス反応器で生成され得る。不均質触媒および/または均質触媒の組み合わせもまた、単一反応器または二重反応器の構成のいずれかにおいて使用され得る。ポリエチレンは、触媒なしで、高圧反応器内で製造され得る。
【0025】
「エチレン/α-オレフィンポリマー」は、ポリマーの重量に基づいて過半量の重合エチレン、および1つ以上のα-オレフィンコモノマーを含むポリマーである。
【0026】
「エチレンマルチブロックインターポリマー」、「エチレンマルチブロックコポリマー」(または「OBC」)、および類似する用語は、好ましくは線状方式で結合された2つ以上の化学的に異なる領域または区分(「ブロック」と称される)を含むエチレン系ポリマー、すなわち、ペンダントまたはグラフト様式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端部と端部とが結合している化学的に区別された単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量またはタイプ、密度、結晶化度、そのような組成のポリマーに起因する結晶径、立体規則性の種類または程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、分岐の量(長鎖分岐または超分岐を含む)、均質性、または任意の他の化学的もしくは物理的特性が異なる。連続的なモノマー添加、流動触媒、またはアニオン重合技術により生成されるコポリマーを含む従来技術のブロックコポリマーに比べて、マルチブロックコポリマーは、好ましい実施形態においては、それらの調製で使用される複数の触媒と組み合わせたシャトル剤(複数可)の効果を理由に、両ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)の独特な分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布により特徴付けられる。代表的なエチレンマルチブロックインターポリマーとしては、Dow Chemical CompanyによりINFUSE(商標)の商標で製造および販売されているエチレンマルチブロックインターポリマーが挙げられる。
【0027】
「エチレンプラストマー/エラストマー」とは、エチレンから誘導された単位と、少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC4-C8α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC6-C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む、均質短鎖分岐分布を含む実質的に直鎖状または直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。エチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/ccまたは0.880g/ccまたは0.890g/cc~0.900g/ccまたは0.902g/ccまたは0.904g/ccまたは0.909g/ccまたは0.910g/ccまたは0.917g/ccの密度を有する。エチレンプラストマー/エラストマーの例としては、AFFINITY(商標)プラストマーおよびエラストマー(Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACT(商標)プラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、Tafmer(商標)(Mitsuiから入手可能)、Nexlene(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、およびLucene(商標)(LG Chem Ltd.から入手可能)が挙げられる。
【0028】
「官能基」および同様の用語は、特定の化合物にその特徴的な反応を与えることに関与する原子の部分または基を指す。官能基の例としては、ヘテロ原子含有部分、酸素含有部分(例えば、加水分解性シラン、アルコール、アルデヒド、エステル、エーテル、ケトン、およびペルオキシド基)、および窒素含有部分(例えば、アミド、アミン、アゾ、イミド、イミン、硝酸塩、ニトリル、および亜硝酸塩基)が挙げられる。
【0029】
「ヘテロ原子」とは、炭素または水素以外の原子である。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、およびVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の例としては、F、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。
【0030】
「高密度ポリエチレン」(または「HDPE」)は、エチレンホモポリマーであるか、あるいは少なくとも1つのC4-C10α-オレフィンコモノマーまたはC4α-オレフィンコモノマー、および0.94g/cc、または0.945g/cc、または0.95g/cc、または0.955g/cc~0.96g/cc、または0.97g/cc、または0.98g/cc超の密度を有するエチレン/α-オレフィンコポリマーである。HDPEは、単峰性コポリマーまたは多峰性コポリマーであり得る。「単峰性エチレンコポリマー」とは、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において1つの明確なピークを有するエチレン/C4-C10α-オレフィンコポリマーである。「多峰性エチレンコポリマー」とは、分子量分布を示すGPCにおいて少なくとも2つの明確なピークを有するエチレン/C4-C10α-オレフィンコポリマーである。多峰性には、2つのピークを有するコポリマー(二峰性)、ならびに3つ以上のピークを有するコポリマーが含まれる。HDPEの例としては、DOW(商標)高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE(商標)強化ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、CONTINUUM(商標)二峰性ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、LUPOLEN(商標)(Lyondell Basellから入手可能)、ならびにBorealis、Ineos、およびExxonMobilからのHDPE製品が挙げられる。
【0031】
「ヒドロカルビル」および「炭化水素」という用語は、分岐または非分岐の、飽和または不飽和の、環式、多環式、または非環式の種を含む、水素および炭素原子のみを含む置換基を指す。例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、およびアルキニル基が含まれる。「ヘテロヒドロカルビル基」という用語は、分岐または非分岐の、飽和または不飽和の、環状、多環式、または非環式の種を含む、水素原子、炭素原子、およびヘテロ原子を含む置換基を指す。
【0032】
「ジャケット」は、導体の最も外側の被覆である。
【0033】
「直鎖状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)は、エチレンから誘導された単位と、少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマーまたは少なくとも1つのC4-C8α-オレフィンコモノマーまたは少なくとも1つのC6-C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む不均質短鎖分岐分布を含む直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.916g/cc~0.925g/ccの密度を有する。LLDPEの例としては、TUFLIN(商標)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、MARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)、およびAXELERON(商標)GP 6059 CPD(Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0034】
「低密度ポリエチレン」(または「LDPE」)は、0.915g/cc~0.925g/ccの密度を有し、かつ広いMWDの長鎖分岐を含む、エチレンホモポリマー、または少なくとも1つのC3-C10α-オレフィン、もしくはC3-C4α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーである。LDPEは、典型的には、高圧フリーラジカル重合(フリーラジカル開始剤を用いる管状反応器またはオートクレーブ)によって生成される。LDPEの例としては、MarFlex(商標)(Chevron Phillips)、LUPOLEN(商標)(Lyondell Basell)、ならびにBorealis、Ineos、ExxonMobilなどからのLDPE製品が挙げられる。
【0035】
中密度ポリエチレン(または「MDPE」)は、エチレンホモポリマーであるか、または0.926g/cc~0.940g/ccの密度を有する、少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンもしくはC3-C4α-オレフィンを含むエチレン/α-オレフィンコポリマーである。好適なMDPEの例としては、それぞれDow Chemical Companyから入手可能なAXELERON(商標)FO 6548 BK CPD、AXELERON(商標)FO 6549 NT CPD、AXELERON(商標)FO 8864 NT CPD、およびAXELERON(商標)FO 8864 BK CPDが挙げられる。
【0036】
「多成分エチレン系コポリマー」(または「EPE」)は、エチレンから誘導された単位と、特許参考文献USP6,111,023、USP5,677,383、およびUSP6,984,695に記載されているような少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC4-C8α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC6-C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む。EPE樹脂は、0.905g/ccまたは0.908g/ccまたは0.912g/ccまたは0.920g/cc~0.926g/ccまたは0.929g/ccまたは0.940g/ccまたは0.962g/ccの密度を有する。EPE樹脂の例としては、ELITE(商標)強化ポリエチレン(Dow Chemical Companyから入手可能)、ELITE AT(商標)先端技術樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)、SURPASS(商標)ポリエチレン(PE)樹脂(Nova Chemicalsから入手可能)、およびSMART(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)が挙げられる。
【0037】
「オレフィン系ポリマー」または「ポリオレフィン」は、(ポリマーの重量に基づいて)50重量%以上または過半量の重合オレフィンモノマーを含むポリマーであり、任意に、少なくとも1つのコモノマーを含み得る。α-オレフィンモノマーの例としては、C2、またはC3~C4、またはC6、またはC8、またはC10、またはC12、またはC16、またはC18、またはC20α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンが挙げられる。オレフィン系ポリマーの例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0038】
「ポリマー」は、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、および「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、および4つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。例えば、触媒残渣などの微量の不純物が、ポリマー中および/またはポリマー内に組み込まれ得る。また、例えば、ランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーも包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ重合エチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンコモノマーとから調製される、上に記載されるコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「から作製される」、特定のモノマーもしくはモノマーの種類「に基づく」、または特定のモノマー含有量「を含む」などと称されるが、この文脈において、「モノマー」という用語は、非重合種を指すのではなく、特定のモノマーの重合レムナント(remnant)を指すことに留意されたい。一般に、本明細書中のポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0039】
「シース」は総称であり、ケーブルに関連して使用される場合、絶縁被覆または層、保護ジャケットなどを含む。
【0040】
「超低密度ポリエチレン」(または「ULDPE」)および「極低密度ポリエチレン」(または「VLDPE」)はそれぞれ、エチレンから誘導された単位と、少なくとも1つのC3-C10α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC4-C8α-オレフィンコモノマー、または少なくとも1つのC6-C8α-オレフィンコモノマーから誘導された単位とを含む不均質短鎖分岐分布を含む直鎖状のエチレン/α-オレフィンコポリマーである。ULDPEおよびVLDPEは、各々、0.885g/cc、または0.90g/cc~0.915g/ccの密度を有する。ULDPEおよびVLDPEの例としては、ATTANE(商標)超低密度ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)およびFLEXOMER(商標)極低密度ポリエチレン樹脂(Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0041】
「ワイヤ」は、単一撚線の伝導性金属、例えば、銅もしくはアルミニウム、または単一撚線の光ファイバである。
【0042】
試験方法
密度を、ASTM D792、方法Bに従って測定する。結果を、1立方センチメートル当たりのグラム(g)(g/ccまたはg/cm3)で記録する。
【0043】
融点(Tm)は、USP5,783,638に記載される、ポリオレフィンの融解ピークを測定するための示差走査熱量測定(DSC)技術によって測定する。融点は、摂氏(℃)で報告する。
【0044】
過酸化物保持割合
「過酸化物保持割合」とは、2分の時間にわたり100℃で調節した後に同じ組成物中に存在する有機過酸化物の量(すなわち、有機過酸化物の著しい分解が起こる前の初期過酸化物量)と比較した、一定時間(0.5時間、1.0時間、1.5時間、または2.0時間)にわたり100℃に曝露した後に組成物中に存在する有機過酸化物の量である。
【0045】
(エチレン系ポリマーをシミュレートするために)過酸化ジクミル(DCP)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、トリオルガノアミノホスフィン、およびドデカンを含む試料溶液を6ドラムのガラスバイアル内で形成する。この溶液を磁気撹拌棒で撹拌する。
【0046】
ガラスバイアルを、撹拌式ホットプレート上で100℃の温度で維持されて十分に撹拌された(500rpm)シリコンオイル浴に浸す。試料溶液を、100℃の温度に加熱し、混合しながら、2分、0.5時間、1.0時間、1.5時間、および2.0時間の期間にわたり100℃で維持する。試料溶液を、キャップまたは蓋のないガラスバイアル内で加熱する(言い換えれば、試料溶液を加熱中に大気に曝露する)。
【0047】
次に、試料溶液を、100℃で2分、0.5時間、1.0時間、1.5時間、および2.0時間の時間後に分析し、DCPの濃度または量を決定する。600μlのアリコートを、各ガラスバイアルから取り出し、1.5mLの小型遠心分離管に入れ、氷浴中で7~10分にわたり冷却し、VWR Galaxy Mini Centrifuge、モデルC1413内にて6,000rpmで遠心分離する。次に、350μlの透明な画分を各アリコートから取り出し、700μlのi-プロパノールと組み合わせ、液体クロマトグラフィーで分析し、画分中に存在するDCPの濃度を決定する。DCPの量を、重量%またはmol%の単位で報告し、それから過酸化物保持割合に変換する。100℃で2分後に測定される試料溶液中のDCPの量を初期DCP量として参照する。
【0048】
過酸化物保持割合は、以下の方程式(1)に従って計算される。
【数1】
式中、t=0.5時間、1.0時間、1.5時間、または2.0時間である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、ワイヤおよびケーブル用途に好適な組成物を提供する。組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノアミノホスフィンと、(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせから選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)とを含む。トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1)を有し、
【化3】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0050】
一実施形態では、組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノアミノホスフィンと、(iv)プロトン酸、PAGC、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるPASCと、(v)任意に添加剤とを含む。トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1)を有し、
【化4】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0051】
i.エチレン系ポリマー
本組成物は、エチレン系ポリマーを含む。
【0052】
エチレン系ポリマーは、本明細書に開示される任意のエチレン系ポリマーであり得る。
【0053】
エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレンインターポリマーであり得る。エチレン系ポリマーの例としては、LDPEおよび直鎖状ポリエチレンが挙げられる。直鎖状ポリエチレンの例としては、LLDPE、ULDPE、VLDPE、多成分エチレン系コポリマー(EPE)、エチレン/α-オレフィンマルチブロックコポリマー(オレフィンブロックコポリマー(OBC)としても知られている)、シングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、MDPE、およびHDPEが挙げられる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、LDPE、LLDPE、ULDPE、VLDPE、EPE、OBC、m-LLDPE、実質的に直鎖状または直鎖状のプラストマー/エラストマー、MDPE、HDPE、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0054】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態では、エチレン/αオレフィンコポリマーは、エチレン/C3-C20αオレフィン、またはエチレン/C3-C10αオレフィン、またはエチレン/C4-C10αオレフィン、またはエチレン/C4-C8αオレフィンである。好適なα-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが挙げられる。
【0055】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、スチレンを含まないか、または実質的に含まない。
【0056】
一実施形態では、エチレン/αオレフィンコポリマーは、エチレンおよびC4-C8αオレフィンコモノマーからなる。言い換えれば、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーは、エチレンおよびC4-C8α-オレフィンコモノマーを唯一のモノマー単位として含む。
【0057】
エチレン系ポリマーは、官能化されていても、官能化されていなくてもよい。「官能化エチレン系ポリマー」は、官能基を含む。一実施形態では、官能基は、ポリマー鎖にペンダントでグラフトされている。官能基はまた、所望の官能基を含む好適なモノマーの共重合を通して組み込まれてもよい。好適な官能基の例としては、ハロ基、特にクロロ基およびブロモ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、ホスホノ基、酸無水物基、アミノ基、アミン基、イミド基、エポキシ基、メルカプト基、スルフェート基、スルホネート基、アミド基、およびエステル基が挙げられる。予め形成されたエチレン系ポリマーにグラフトすることが可能な不飽和カルボン酸および酸無水物化合物の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、および無水イタコン酸が挙げられる。一実施形態では、官能化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸官能化エチレン/α-オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態では、官能化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸官能化エチレン/オクテンインターポリマーである。エチレン系ポリマーには、エチレン-エチルアクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-ブチルアクリレートコポリマー、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-ビニルトリメトキシシランコポリマー、または高圧反応器内で作製され、かつ0.2重量%~50重量%未満もしくは50重量%のコモノマーを含む他のコポリマーのうちの1つ以上が挙げ含まれ得る。
【0058】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、官能化されていない。
【0059】
エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%~80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または100重量%のエチレンを含む。
【0060】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%、または75重量%~80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%のエチレンと、相対応する量(reciprocal amount)のα-オレフィンコモノマー、すなわち5重量%、または10重量%、または15重量%、または20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%のα-オレフィンコモノマーとを含む。
【0061】
エチレン系ポリマーは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0062】
ii.有機過酸化物
本組成物は、有機過酸化物を含む。「有機過酸化物」は、以下の構造(2)を有する、少なくとも1個の炭素原子を含む化合物であり、
R4-O-O-R5 構造(2)
R4およびR5は各々独立して、C1-C40ヒドロカルビル基、C1-C40ヘテロヒドロカルビル基、水素、およびそれらの組み合わせから選択され、但し、R4およびR5の少なくとも1つが、C1-C40ヒドロカルビル基またはC1-C40ヘテロヒドロカルビル基であることを条件とする。
【0063】
好適な有機過酸化物の例としては、過酸化ジクミル(DCP)、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過安息香酸第三ブチル、過酸化ジ(三級ブチル)、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3、2,-5-ジ-メチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、三級ブチルヒドロペルオキシド、過炭酸イソプロピル、アルファ,アルファ’-ビス(三級ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル-モノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロキシペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アルファ,アルファ’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、ジ-(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0064】
好適な市販の有機過酸化物の非限定的な例としては、AkzoNobelのTRIGONOX(商標)およびARKEMAのLUPEROX(商標)が挙げられる。
【0065】
一実施形態では、有機過酸化物は、過酸化ジクミル(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、ジ-(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
一実施形態では、有機過酸化物は、過酸化ジクミル(DCP)である。
【0067】
一実施形態では、過酸化物は、ジアルキルペルオキシドである。「ジアルキルペルオキシド」は、以下の構造(2A)を有する化合物であり、
R4-O-O-R5 構造(2A)
R4およびR5はそれぞれ、アルキル基である。
【0068】
一実施形態では、構造(2A)のR4およびR5はそれぞれ、C1-C20アルキル基またはC1-C10アルキル基である。
【0069】
-OOH基を含む有機ヒドロペルオキシドは有機過酸化物から除外される。
【0070】
過酸化水素には炭素がないため、式H2O2を有する過酸化水素は有機過酸化物から除外される。
【0071】
有機過酸化物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0072】
iii.トリオルガノアミノホスフィン
本組成物は、トリオルガノアミノホスフィンを含む。
【0073】
「トリオルガノアミノホスフィン」は、以下の構造(1)を有する化合物であり、
【化5】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0074】
一実施形態では、「トリオルガノアミノホスフィン」は、以下の構造(1’)を有する化合物であり、
【化6】
R
1’、R
2’、およびR
3’は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基、およびそれらの組み合わせから選択され、但し、R
1’、R
2’、およびR
3’の少なくとも1つが、少なくとも1個の窒素原子を含むことを条件とし、窒素原子は、(i)リン原子に直接結合しているか、または(ii)リン原子に直接結合しているアルキル基もしくはアリール基に結合している。
【0075】
トリオルガノアミノホスフィンは、3個の炭素原子に結合したリン原子、または1個、もしくは2~3個の窒素原子に結合したリン原子を含む。
【0076】
構造(1)、R1、R2、およびR3に関して本明細書に記載される説明はまた、それぞれ、構造(1’)、R1’、R2’、およびR3’にも適用される。
【0077】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、3個の炭素原子に結合したリン原子を含む。構造(1)のR1、R2、およびR3の少なくとも1つは、リン原子に直接結合している、少なくとも1つの窒素原子を含み、窒素原子は、C1-C20、またはC2-C10、またはC4-C8アルキル基、またはC5-C20、またはC6-C10、またはC4-C8アリール基である。
【0078】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、1個、または2~3個の窒素原子に直接結合したリン原子を含む。別の実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、3個の窒素原子に直接結合したリン原子を含む。
【0079】
一実施形態では、構造(1)のヒドロカルビル基は、C1-C20ヒドロカルビル基、またはC1-C10ヒドロカルビル基、またはC2-C8ヒドロカルビル基、またはC6-C8ヒドロカルビル基である。好適なC1-C40ヒドロカルビル基の例としては、フェニル基、p-トリル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基が挙げられる。
【0080】
一実施形態では、R1およびR2はそれぞれ、C1-C40、またはC1-C20、またはC2-C10、またはC4-C8、またはC6ヒドロカルビル基であり、R3は、C8-C40、またはC8-C20、またはC8-C10(N,N-ジアルキル)アミノアリール基である。好適な(N,N-ジアルキル)アミノアリール基の例は、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である。
【0081】
一実施形態では、R1は、C1-C40ヒドロカルビル基、C2-C40N,N-ジアルキルアミノ基、C4-C6N-ヘテロシクロアルキル、C8-C40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC8-C40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択され、R2およびR3は各々独立して、C2-C40N,N-ジアルキルアミノ基、C4-C6N-ヘテロシクロアルキル、C8-C40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、C8-C40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基、およびそれらの組み合わせから選択される。リン原子は、2個または3個の窒素原子に直接結合されている。
【0082】
構造(1)において、R1、R2、およびR3は、同じであっても、異なっていてもよい。一実施形態では、R1、R2、およびR3は同じである。別の実施形態では、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも2つまたはそれぞれが異なる。
【0083】
一実施形態では、構造(1)において、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも2つは同じである。
【0084】
一実施形態では、R1、R2、およびR3は各々独立して、フェニル基、N,N-ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、シクロヘキシル基、およびそれらの組み合わせから選択され、但し、R1、R2、およびR3の少なくとも1つが、少なくとも1個の窒素原子を含むことを条件とする。
【0085】
一実施形態では、R1は、フェニル基であり、R2およびR3はそれぞれ、N,N-ジエチルアミノ基である。トリオルガノアミノホスフィンは、ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンである。
【0086】
一実施形態では、R1、R2、およびR3はそれぞれ、ピロリジニル基である。トリオルガノアミノホスフィンは、トリス-(1-ピロリジニル)ホスフィンである。
【0087】
一実施形態では、R1およびR2はそれぞれ、フェニル基であり、R3は、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である。トリオルガノアミノホスフィンは、(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィンである。
【0088】
一実施形態では、R1およびR2はそれぞれ、シクロヘキシル基であり、R3は、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である。トリオルガノアミノホスフィンは、ジシクロヘキシル-4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルホスフィンである。
【0089】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィン、トリス-(1-ピロリジニル)ホスフィン、(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシル-4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルホスフィン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0090】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィン、トリス-(1-ピロリジニル)ホスフィン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0091】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシル4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルホスフィン、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0092】
トリオルガノアミノホスフィンは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0093】
iv.プロトン酸源化合物
本組成物は、プロトン酸源化合物を含む。
【0094】
「プロトン酸源化合物」(または「PASC」)は、プロトン酸またはプロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)である。
【0095】
A.プロトン酸
「プロトン酸」とは、ポリオレフィン溶融押出または他の条件下で水素イオン(H+)を生成し、かつフリーラジカル分解の代わりに有機過酸化物のイオン分解を引き起こすことができる物質のことである。ポリオレフィン系のラジカルはプロトン酸から除外される。プロトン酸は、プロトン供与体として機能することができ、電子対を受容して共有結合を形成することができる。好適なプロトン酸の例としては、硫黄系の酸、カルボン酸、リン系の酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0096】
「硫黄系の酸」は、硫黄原子を含む有機酸である。好適な硫黄系の酸の例としては、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
「スルホン酸」は、以下の構造(3)の基を含む有機酸である。
【化7】
【0098】
好適なスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)である。
【0099】
「スルフェン酸」は、以下の構造(4)の基を含む有機酸である。
-S-O-H 構造(4)
【0100】
好適なスルフェン酸の例は、メタンスルフェン酸である。
【0101】
「スルフィン酸」は、以下の構造(5)の基を含む有機酸である:
【化8】
【0102】
好適なスルフィン酸の例は、フェニルスルフィン酸である。
【0103】
「リン系の酸」とは、リン原子を含む有機酸のことである。好適なリン系の酸の例としては、亜リン酸、リン酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0104】
一実施形態では、プロトン酸は、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、カルボン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。さらなる実施形態では、プロトン酸は、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0105】
プロトン酸は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0106】
B.プロトン酸発生剤化合物
「プロトン酸発生剤化合物」(または「PAGC」)とは、プロトン酸ではないが、本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に、酸素および/または酸化生成物(例えば、ヒドロペルオキシド)と反応してプロトン酸に変換されるかまたはこれを生成する官能基を含む物質のことである。PAGCは、潜在的なプロトン酸である。組成物の形成(例えば、溶融混合)、貯蔵、加工、および/または押出中に、PAGCは、プロトン酸を生成する1回の反応または一連の反応を受ける。
【0107】
適切なPAGCの例としては、酸化防止剤(AO)、添加剤、充填剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な酸化防止剤の例としては、亜リン酸塩酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0108】
一実施形態では、PAGCは、亜リン酸塩酸化防止剤である。亜リン酸塩酸化防止剤およびそれらの酸化生成物(リン酸塩)は、(酸化防止剤としての)使用中および/または加工中に加水分解を受けて、リン系の酸を生成する。酸化は、加水分解の前または後に起こり得る。好適な亜リン酸塩酸化防止剤の例は、BASF Inc.からIRGAFOS(商標)168として市販されている亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)である。
【0109】
一実施形態では、PAGCは、硫黄系酸化防止剤である。硫黄系酸化防止剤は、本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に酸化する。酸化生成物は、熱開裂を受けて、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、およびそれらの組み合わせなどの硫黄系の酸を形成する。硫黄系の酸は、さらに酸化を受けて、より高い酸化状態を有する硫黄系の酸を形成し得る。硫黄系酸化防止剤の例としては、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)(例えば、Addivant Corporationから入手可能なLOWINOX(商標)TBM-6)、2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)(例えば、Addivant Corporationから入手可能なLOWINOX(商標)TBP-6)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0110】
一実施形態では、PAGCはエステル添加剤である。エステルは、使用、加工、および/または貯蔵中に加水分解してカルボン酸を形成することがある。好適なエステル添加剤の例としては、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、BASFから入手可能なIRGANOX(商標)1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(例えば、Ciba Inc.から入手可能なIRGANOX(商標)1076)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
一実施形態では、PAGCは、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸塩酸化防止剤、エステル添加剤、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0112】
一実施形態では、PAGCは、硫黄系酸化防止剤、亜リン酸塩酸化防止剤、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0113】
PAGCは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0114】
本組成物は、組成物を形成する際にPAGC(例えば、硫黄系酸化防止剤)を含み得て、そしてPAGCが、プロトン酸(例えば、スルホン酸、スルフェン酸、および/またはスルフィン酸)を生成する反応(例えば、酸化)を受けたら、プロトン酸を含むだろう。ある時点で、組成物は、(i)PAGCのみ(プロトン酸はなし)、(ii)PAGCとプロトン酸との両方の組み合わせ、または(iii)プロトン酸のみ(PAGCはなし)を含み得る。
【0115】
PASC、さらにはPAGCは、エチレン系ポリマーとは異なる。言い換えれば、エチレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマーからのいずれの酸化反応生成物も、PASC、さらにはPAGCから除外される。
【0116】
PASCは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0117】
v.任意の添加剤
本組成物は、1種以上の添加剤を含んでもよい。好適な添加剤の例としては、酸化防止剤、着色剤、腐食防止剤、潤滑剤、紫外線(UV)吸収剤または安定剤、ブロッキング防止剤、カップリング剤、相溶化剤、可塑剤、充填剤、加工助剤、湿気捕捉剤、スコーチ防止剤、金属不活性化剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0118】
添加剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0119】
vi.組成物
本組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノアミノホスフィンと、(iv)プロトン酸、PAGC、およびそれらの組み合わせから選択されるPASCと、(v)任意に添加剤と、を含む。トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1)を有し、
【化9】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0120】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1’)を有する。
【0121】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または98重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマーを含む。
【0122】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物を含む。
【0123】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.05重量%~0.10重量%、または0.20重量%、または0.40重量%、または0.50重量%、または0.60重量%、または0.70重量%、または0.80重量%、または0.90重量%、または1.00重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む。一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1.00重量%、または0.01重量%~1.00重量%、または0.01重量%~0.50重量%、または0.01重量%~0.10重量%、または0.02重量%~1.00重量%、または0.02重量%~0.60重量%、または0.02重量%~0.60重量%、または0.04重量%~0.60重量%、または0.04重量%~0.60重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む。
【0124】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001mol%、または0.01mol%、または0.02mol%、または0.04mol%、または0.1mol%~0.4mol%、または0.5mol%、または1.0mol%、または2.0mol%、または5.0mol%、または10mol%、または15mol%、または20mol%、または25mol%のトリオルガノアミノホスフィンを含む。
【0125】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%のPASCを含む。
【0126】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、または0.002重量%、または0.005重量%、または0.006重量%~0.007重量%、または0.008重量%、または0.009重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または2.5重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含む。
【0127】
一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または7%、または10%、または12%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。さらなる実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%~100%、または10%~100%、または12%~100%、または15%~100%、または20%~100%、または50%~100%、または70%~100%、または75%~100%、または90%~100%、または95%~100%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本組成物にトリオルガノアミノホスフィンを含めると、組成物中にプロトン酸が存在することにより従来引き起こされた有機過酸化物の分解が防止または遅延されると考えられる。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物の分解を停止または遅延することにより、トリオルガノアミノホスフィンは、有機過酸化物を保持することを有利に可能にするため、有機過酸化物が存在して、導体上への本組成物の押出後のフリーラジカル架橋に利用可能である。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物が十分に保持されないと、本組成物から形成された被覆は、導体上に押し出された後に架橋しないであろう。
【0128】
一実施形態では、組成物は、100℃で1.5時間加熱した後、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0129】
一実施形態では、組成物は、100℃で1.0時間加熱した後、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0130】
一実施形態では、組成物は、100℃で0.5時間加熱した後、50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0131】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または98重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマー、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物、(iii)0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.05重量%~0.10重量%、または0.20重量%、または0.30重量%、または0.40重量%、または0.50重量%、または0.60重量%、または0.70重量%、または0.80重量%、または0.90重量%、または1.00重量%のトリオルガノアミノホスフィン、(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.01重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%のPASC、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含み、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)100℃で2時間加熱した後、5%、または7%、または10%、または12%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)100℃で1.5時間加熱した後、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)100℃で1.0時間加熱した後、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(d)100℃で0.5時間加熱した後、50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0132】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または98重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマー、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物、(iii)0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.05重量%~0.10重量%、または0.20重量%、または0.30重量%、または0.40重量%、または0.50重量%、または0.60重量%、または0.70重量%、または0.80重量%、または0.90重量%、または1.00重量%のトリオルガノアミノホスフィン、(iv)0.0001重量%、または0.001重量%、または0.0101重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または0.10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%の、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、硫黄系酸化防止剤、およびそれらの組み合わせから選択されるPASC、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.101重量%、または0.505重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含み、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)100℃で2時間加熱した後、5%、または7%、または10%、または12%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)100℃で1.5時間加熱した後、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)100℃で1.0時間加熱した後、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(d)100℃で0.5時間加熱した後、50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0133】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含み、構造(1)において、R1は、フェニル基であり、R2およびR3はそれぞれ、N,N-ジエチルアミノ基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0134】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含み、構造(1)において、R1、R2、およびR3はそれぞれ、ピロリジニル基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0135】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含み、構造(1)において、R1およびR2はそれぞれ、フェニル基であり、R3は、4-(N,N-ジエチルアミノ基)フェニル基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0136】
一実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含み、構造(1)において、R1およびR2はそれぞれ、シクロヘキシル基であり、R3は、4-(N,N-ジエチルアミノ基)フェニル基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0137】
前述の組成物を含む、本明細書に開示される各組成物中の構成成分の合計は、100重量パーセント(重量%)をもたらす。
【0138】
組成物は、構成成分のすべてまたはいくつかを溶融混合することにより(例えば、押出などにより)形成され得る。一実施形態では、エチレン系ポリマー、トリオルガノアミノホスフィン、PASC、および任意の添加剤が押し出されてペレット化される。次に、有機過酸化物が、浸漬ステップでペレットに吸収される。すべての構成成分を含むペレットは、バッグ、バレル、箱、またはレールカー内で一定期間にわたり貯蔵され得る。ペレットは、押出機に加えられ、導体の表面上に押し出され得る。
【0139】
代替実施形態では、組成物のすべての構成成分が押出機内で組み合わされ、組成物が導体の表面上に押し出される。
【0140】
組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0141】
一実施形態では、組成物は、架橋されている。
【0142】
組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0143】
本開示は、組成物を架橋するのに十分な温度に組成物を加熱することにより作製された架橋生成物も提供する。架橋生成物は、導体上の被覆であり得る。
【0144】
vii.被覆された導体
本開示はまた、被覆された導体を提供する。被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は組成物を含む。組成物は、(i)エチレン系ポリマーと、(ii)有機過酸化物と、(iii)トリオルガノアミノホスフィンと、(iv)プロトン酸、PAGC、およびそれらの組み合わせから選択されるPASCと、(v)任意に添加剤と、を含む。トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1)を有し、
【化10】
R
1およびR
2は各々独立して、C
1-C
40ヒドロカルビル基、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3は、C
2-C
40N,N-ジアルキルアミノ基、C
4-C
6N-ヘテロシクロアルキル、C
8-C
40(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8-C
40(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される。
【0145】
一実施形態では、トリオルガノアミノホスフィンは、構造(1’)を有する。
【0146】
組成物、エチレン系ポリマー、有機過酸化物、トリオルガノアミノホスフィン、PASC、および任意の添加剤は、本明細書に開示される任意のそれぞれのエチレン系ポリマー、有機過酸化物、トリオルガノアミノホスフィン、PASC、および任意の添加剤であり得る。
【0147】
一実施形態では、被覆は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。さらなる実施形態では、被覆は、100℃で2時間加熱した後、5%~100%、または10%~100%、または12%~100%、または15%~100%、または20%~100%、または50%~100%、または70%~100%、または80%~100%、または90%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、組成物にトリオルガノアミノホスフィンを含めると、組成物中にプロトン酸が存在することにより従来引き起こされた有機過酸化物のイオン分解が防止または遅延されると考えられる。組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物のイオン分解を停止または遅延することにより、トリオルガノアミノホスフィンは、有機過酸化物を保持することを有利に可能にするため、有機過酸化物が存在して、導体上への本組成物の押出後のフリーラジカル架橋に利用可能である。本組成物の形成、貯蔵、加工、および/または押出中に有機過酸化物が十分に保持されないと、本組成物から形成された被覆は、導体上に押し出された後に架橋しないであろう。
【0148】
一実施形態では、被覆は、100℃で1.5時間加熱した後、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。
【0149】
一実施形態では、被覆は、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。
【0150】
一実施形態では、被覆は、50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合を有する組成物を含む。
【0151】
一実施形態では、被覆は、導体用の絶縁シースである。別の実施形態では、被覆は、導体用のジャケットである。
【0152】
被覆された導体を製造するためのプロセスは、本組成物を少なくともエチレン系ポリマーの溶融温度に加熱し、次いでポリマー溶融ブレンドを導体上に押し出すことを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触または間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0153】
被覆は、導体上にある。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的にまたは部分的に覆うか、またはそうでなければ囲むかもしくは包むことができる。被覆は、導体を囲む唯一の構成要素であり得る。被覆が導体を囲む唯一の構成要素である場合、被覆はジャケットおよび/または絶縁体として機能し得る。一実施形態では、被覆は、被覆された導体の最外層である。あるいは、被覆は、金属導体を包む1層の多層ジャケットまたはシースであり得る。一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。別の実施形態では、被覆は、導体を囲む絶縁層と直接接触する。
【0154】
一実施形態では、被覆は、導体と直接接触する。本明細書で使用される「直接接触する」という用語は、被覆が導体に直接隣接して配置され、被覆が導体に接触し、介在層、介在被覆、および/または介在構造が被覆と導体との間に存在しない被覆構成である。
【0155】
一実施形態では、被覆は、導体と間接接触する。本明細書で使用される場合、「間接接触する」という用語は、介在層、介在被覆、または介在構造が被覆と導体との間に存在する被覆構成である。好適な介在層、介在被覆、および介在構造の例としては、絶縁層、防湿層、緩衝管、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好適な絶縁層の例としては、発泡絶縁層、熱可塑性絶縁層、架橋絶縁層、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0156】
一実施形態では、被覆は、高電圧送電ケーブルまたは超高電圧送電ケーブルの絶縁層である。
【0157】
被覆は、架橋されている。一実施形態では、本被覆の架橋は、押出機内で始まるが、ごくわずかな程度である。別の実施形態では、被覆が導体上に押し出されるまで架橋を遅延させる。本組成物の架橋は、熱または放射線を加えることによって開始および/または加速することができる。一実施形態では、押出後に、被覆された導体は、連続加硫管内で160℃、または180℃~200℃、または400℃の温度に調整される。
【0158】
一実施形態では、被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。被覆は、組成物を含むか、実質的にこれからなるか、またはこれからなる。組成物は、組成物の総重量に基づいて、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または98重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマー、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物、(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.05重量%~0.10重量%、または0.20重量%、または0.30重量%、または0.40重量%、または0.50重量%、または0.60重量%、または0.70重量%、または0.80重量%、または0.90重量%、または1.00重量%のトリオルガノアミノホスフィン、(iv)0.0001重量%、または0.007重量%、または0.0101重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または0.10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%のPASC、(v)0重量%、または0重量%超、または0.001重量%、0.005重量%、または0.01重量%、または0.101重量%、または0.505重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含むか、実質的にこれからなるか、またはこれからなり、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)100℃で2時間加熱した後、5%、または7%、または10%、または12%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)100℃で1.5時間加熱した後、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)100℃で1.0時間加熱した後、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(d)100℃で0.5時間加熱した後、50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0159】
一実施形態では、被覆された導体は、導体と、導体上の被覆とを含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。被覆は、組成物を含むか、実質的にこれからなるか、またはこれからなる。組成物は、組成物の総重量に基づいて、(i)45重量%、または50重量%、または55重量%、または60重量%、または65重量%、または70重量%~75重量%、または80重量%、または85重量%、または90重量%、または95重量%、または98重量%、または99重量%、または99.96重量%のエチレン系ポリマー、(ii)0.02重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1重量%~2重量%、または3重量%、または4重量%、または5重量%の有機過酸化物、(iii)0.001重量%、または0.003重量%、または0.005重量%、または0.007重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.05重量%~0.10重量%、または0.20重量%、または0.30重量%、または0.40重量%、または0.50重量%、または0.60重量%、または0.70重量%、または0.80重量%、または0.90重量%、または1.00重量%のトリオルガノアミノホスフィン、(iv)0.0001重量%、または7重量%、または0.0101重量%、または0.05重量%、または0.1重量%、または0.5重量%、または1.0重量%、または5重量%、または0.10重量%、または15重量%~20重量%、または25重量%、または30重量%、または35重量%、または40重量%、または45重量%、または50重量%の、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、硫黄系酸化防止剤、およびそれらの組み合わせから選択されるPASC、(v)0重量%、または0重量%超、または0.0001重量%、0.005重量%、または0.011重量%、または0.101重量%、または0.505重量%、または1.0重量%、または2.0重量%、または3.0重量%、または4.0重量%、または5.0重量%~6.0重量%、または7.0重量%、または8.0重量%、または9.0重量%、または10.0重量%、または15.0重量%、または20.0重量%の添加剤を含むか、実質的にこれからなるか、またはこれからなり、組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する:(a)100℃で2時間加熱した後、5%、または7%、または10%、または12%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(b)100℃で1.5時間加熱した後、10%、または15%、または20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(c)100℃で1.0時間加熱した後、20%、または25%、または30%、または35%、または40%、または45%、または50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合、および/または(d)100℃で0.5時間加熱した後、50%、または55%、または60%、または65%、または70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または98%~100%の過酸化物保持割合。
【0160】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む組成物を含み、構造(1)において、R1は、フェニル基であり、R2およびR3はそれぞれ、N,N-ジエチルアミノ基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0161】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む組成物を含み、構造(1)において、R1、R2、およびR3はそれぞれ、ピロリジニル基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0162】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む組成物を含み、構造(1)において、R1およびR2はそれぞれ、フェニル基であり、R3は、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0163】
一実施形態では、被覆は、組成物の総重量に基づいて、0.001重量%、または0.01重量%、または0.02重量%、または0.04重量%、または0.10重量%~0.60重量%、または1.0重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む組成物を含み、構造(1)において、R1およびR2はそれぞれ、シクロヘキシル基であり、R3は、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である。一実施形態では、組成物は、100℃で2時間加熱した後、5%、または10%、または12%、または20%、または50%、または55%、または70%、または80%、または90%、または95%、または97%、または98%、または99%~100%の過酸化物保持割合を有する。
【0164】
一実施形態では、被覆された導体は、光ファイバケーブル、通信ケーブル(電話線またはローカルエリアネットワーク(LAN)ケーブルなど)、電源ケーブル、家庭用電化製品用の配線、携帯電話および/またはコンピュータ用の充電器用配線、コンピュータデータコード、電源コード、家電配線材料、家庭用内部配線材料、家庭用電化製品付属コード、ならびにこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0165】
別の実施形態では、本組成物は、導体、例えば、電気コネクタまたは電気コネクタの構成要素上の被覆以外の物品に溶融成形される。
【0166】
被覆された導体は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0167】
一例として、これに限定されないが、本開示のいくつかの実施形態について以下の実施例において以下に詳細に説明される。
【実施例】
【0168】
実施例で使用される材料を、以下の表1に提供する。
【表1】
【0169】
以下の3種類のストック溶液を調製し、試料溶液を作製するために使用する:(i)過酸化ジクミル(DCP)が0.1154Mでドデカンに入った溶液(ストック溶液A)、(ii)ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)が0.00346Mでドデカンに入った溶液(ストック溶液B)、および(iii)ドデカンに入った0.1154MのDCP溶液中0.1重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む溶液(ストック溶液C)。ストック溶液Cを、80℃に設定した油浴中で撹拌(1~2分間)し、トリオルガノアミノホスフィンの完全な溶解を確実にする。
【0170】
試料溶液および比較溶液は、6ドラムのガラスバイアル内で形成する。ドデカンは、エチレン系ポリマーの特性をシミュレートする(すなわち、そのためのモデルとして機能する)。溶液を磁気撹拌棒で撹拌する。各溶液の組成を、以下の表2に提供する。
【0171】
比較溶液1(CS1)を、2mLのストック溶液Aおよび2mLのストック溶液Bをガラスバイアルに添加し、室温で、磁気撹拌棒で混合することにより調製する。CS1の総量は、4mLである。CS1は、0.0577MのDCP(2重量%のDCPに相当)および0.00173MのDBSAを含む。CS1は、トリオルガノアミノホスフィンを含まない。CS1の組成を、以下の表2に提供する。
【0172】
比較溶液2(CS2)を、2mLのストック溶液Aおよび2mLのドデカンをガラスバイアルに添加し、室温で、磁気撹拌棒で混合することにより調製する。CS2の総量は、4mLである。CS2は、0.0577MのDCP(2重量%のDCPに相当)を含む。CS2は、トリオルガノアミノホスフィンおよびDBSAを含まない。CS2の組成を、以下の表2に提供する。
【0173】
試料溶液1~7および9~20はそれぞれ、2mLのストック溶液B、XmLのストック溶液C、および(2-X)mLのストック溶液Aをガラスバイアルに添加し、室温で、磁気撹拌棒で混合することにより調製し、Xは、10にトリオルガノアミノホスフィンの重量パーセント濃度を掛けたものに等しい。例えば、0.05重量%のトリオルガノアミノホスフィンを含む試料溶液を調製するには、2mLのストック溶液Bを、1.5mLのストック溶液Aおよび0.5mLのストック溶液Cと混合する。試料溶液1~7および9~20の組成を、以下の表2に提供する。
【0174】
試料溶液8を、2mLのストック溶液Aおよび2mLのストック溶液Bをガラスバイアルに添加し、室温で、磁気撹拌棒で混合することにより調製する。トリオルガノアミノホスフィンをガラスバイアルの内容物に添加する。試料溶液8の組成を、以下の表2に提供する。
【0175】
次に、ガラスバイアルを、Corning(商標)PC-420D撹拌式ホットプレート上で、100℃の温度で維持されて十分に撹拌された(500rpm)シリコンオイル浴に浸す。比較溶液および試料溶液を、それぞれ100℃の温度に加熱し、混合しながら100℃で維持し、2分(この時点で、トリオルガノアミノホスフィンは溶液に完全に溶解する)、0.5時間、1.0時間、1.5時間、および2.0時間後に、600μlのアリコートを取り出す。比較溶液および試料溶液を、それぞれキャップまたは蓋のないガラスバイアル内で加熱する(言い換えれば、溶液を加熱中に大気に曝露する)。
【0176】
ガラスバイアルから取り出した各600μlのアリコートを、1.5mLの小型遠心分離管に入れ、氷浴中で7~10分にわたり冷却し、VWR Galaxy Mini Centrifuge、モデルC1413内にて6,000rpmで遠心分離する。次に、350μlの透明な画分を各アリコートから取り出し、700μlのi-プロパノールと組み合わせ、液体クロマトグラフィーで分析し、画分中に存在するDCPの濃度を決定する(210nmに設定されたSPD-20A紫外可視検出器を備えるShimadzu LC- 20AD液体クロマトグラフ;カラムは、粒度3.5μmを有するWaters SunFire C18 2.1mm×50mmカラムであり、移動相は、流量0.25mL/分で75%メタノール/25%水である)。100℃で2分後に測定される試料溶液中のDCPの量を初期DCP量として参照する。
【0177】
過酸化ジクミル(DCP)保持割合は、以下の方程式(2)に従って計算され、
【数2】
式中、t=0.5時間、1.0時間、1.5時間、または2.0時間である。
【0178】
例えば、100℃で2時間加熱した後、溶液1は、1.0209重量%のDCPを含む。溶液1中のDCPの初期量(すなわち、100℃で2分後)は、1.9630重量%である。したがって、2時間にわたり100℃で加熱した後の溶液1のDCP保持割合は、以下の等式(2A)に従って計算される:
【数3】
【0179】
2時間にわたり100℃で加熱した後の溶液1のDCP保持割合は、52.01%である。
【0180】
試料溶液および比較溶液の特性を、以下の表2に提供する。
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】
【0181】
CS1は、(i)ドデカン(エチレン系ポリマーをシミュレートするため)と、(ii)過酸化ジクミル(DCP)と、(iii)ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)とを含んでおり、トリオルガノアミノホスフィンを含んでいない比較溶液である。表2に示されるように、CS1は、100℃で2時間加熱した後、0.44%の過酸化物(ここではDCP)保持割合しか呈しない。したがって、CS1は、組成物の架橋を可能にするために100℃で2時間加熱した後、好適な濃度の有機過酸化物を保持しない。結果的に、CS1は、電線およびケーブルの用途、ならびに他の用途にとって好適ではない過酸化物含有ポリマー組成物の代表的なものである。
【0182】
CS2は、(i)ドデカン(エチレン系ポリマーをシミュレートするため)と、(ii)過酸化ジクミル(DCP)とを含んでおり、トリオルガノアミノホスフィンまたはDBSAを含んでいない比較組成物である。したがって、CS2には、DCPのイオン分解を引き起こすプロトン酸源化合物(PASC)がない。
【0183】
出願人は、(i)ドデカン(エチレン系ポリマーをシミュレートするため)と、(ii)過酸化ジクミル(DCP)と、(iii)トリオルガノアミノホスフィン(ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィン、トリス-(1-ピロリジニル)ホスフィン、(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、またはジシクロヘキシル-4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルホスフィン)と、(iv)ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)とを含む組成物(溶液1~20)が、100℃で2時間加熱した後、12%超、場合によっては97%超の過酸化物(ここではDCP)保持割合を有利に呈することを予期せず見出した。結果的に、溶液1~20は、電線およびケーブルの用途、ならびに他の用途にとって好適な過酸化物含有ポリマー組成物の代表的なものである。
【0184】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範疇に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
組成物であって、
(i)エチレン系ポリマーと、
(ii)有機過酸化物と、
(iii)構造(1)のトリオルガノアミノホスフィンと、
【化1】
(iv)プロトン酸、プロトン酸発生剤化合物(「PAGC」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるプロトン酸源化合物(「PASC」)と、を含み、
R
1
およびR
2
が各々独立して、C
1
-C
40
ヒドロカルビル基、C
2
-C
40
N,N-ジアルキルアミノ基、C
4
-C
6
N-ヘテロシクロアルキル、C
8
-C
40
(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8
-C
40
(N,N-ジアルキル)アミノアリール基からなる群から選択され、
R
3
が、C
2
-C
40
N,N-ジアルキルアミノ基、C
4
-C
6
N-ヘテロシクロアルキル、C
8
-C
40
(N,N-ジアルキル)アリールアミノ基、およびC
8
-C
40
(N,N-ジアルキル)アミノアリール基から選択される、組成物。
[2]
前記PASCが、前記プロトン酸であり、
前記組成物を空気雰囲気中で、100℃で2時間加熱した後、前記組成物が、12%~100%の過酸化物保持割合を有し、得られた加熱された組成物の過酸化物含有量が、液体クロマトグラフィーを使用して測定される、[1]に記載の組成物。
[3]
前記PASCが、前記プロトン酸であり、前記プロトン酸が、スルホン酸、スルフェン酸、スルフィン酸、カルボン酸、リン系の酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記PASCが、前記PAGCであり、前記PAGCが、酸化防止剤である、[1]に記載の組成物。
[5]
前記酸化防止剤が、硫黄系酸化防止剤である、[4]に記載の組成物。
[6]
R
1
およびR
2
が各々独立して、フェニル基、N,N-ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、およびシクロヘキシル基からなる群から選択され、
R
3
が、N,N-ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、および4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基からなる基から選択される、[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
R
1
、R
2
、およびR
3
が同じである、[6]に記載の組成物。
[8]
前記有機過酸化物が、過酸化ジクミルである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノアミノホスフィンを含み、
R
1
が、フェニル基であり、
R
2
およびR
3
がそれぞれ、N,N-ジメチルアミノ基である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10]
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノアミノホスフィンを含み、
R
1
、R
2
、およびR
3
がそれぞれ、ピロリジニル基である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[11]
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノアミノホスフィンを含み、
R
1
、R
2
、およびR
3
がそれぞれ、フェニル基であり、
R
3
が、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]
前記組成物が、前記組成物の総重量に基づいて、0.001重量%~1.0重量%の、前記構造(1)を有する前記トリオルガノアミノホスフィンを含み、
R
1
およびR
2
がそれぞれ、シクロヘキシル基であり、
R
3
が、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[13]
[1]~[12]のいずれか一項に記載の組成物を、前記組成物を架橋するのに十分な温度に加熱することにより作製された、架橋生成物。
[14]
被覆された導体であって、
導体と、
[1]~[12]のいずれか一項に記載の組成物または請求項13に記載の架橋生成物を含む、前記導体上の被覆と、を含む、被覆された導体。