(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-09
(45)【発行日】2025-05-19
(54)【発明の名称】汚濁負荷監視システム及び汚濁負荷の把握方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20250512BHJP
【FI】
C02F3/12 A
(21)【出願番号】P 2023182444
(22)【出願日】2023-10-24
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000195834
【氏名又は名称】株式会社西原ネオ
(74)【代理人】
【識別番号】100224443
【氏名又は名称】加藤 弘行
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】松崎 賢司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智耶
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-275742(JP,A)
【文献】特許第5399725(JP,B2)
【文献】特開平05-096287(JP,A)
【文献】特許第4836556(JP,B2)
【文献】特表2022-526143(JP,A)
【文献】特開2020-179326(JP,A)
【文献】特許第4097505(JP,B2)
【文献】特開2019-100910(JP,A)
【文献】特開2015-020126(JP,A)
【文献】特開2019-188360(JP,A)
【文献】特許第7174521(JP,B2)
【文献】特公平05-025522(JP,B2)
【文献】特開昭60-87816(JP,A)
【文献】特開平6-99166(JP,A)
【文献】特許第3740505(JP,B2)
【文献】特許第5993196(JP,B2)
【文献】特開2015-16392(JP,A)
【文献】特開2006-35028(JP,A)
【文献】特開平2-290298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
B01D 21/34
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝気槽を備える排水処理施設における汚濁負荷情報を取得する監視システムであって、
前記曝気槽への流入水である曝気槽流入水の濁度を測定する濁度計と、
前記曝気槽流入水の導電率を測定する導電率計と、
前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて、BOD換算値を算出する演算装置と、
を備え、
前記濁度計及び前記導電率計の測定値とCODと間の相関情報である第1相関情報と、CODとBODと間の相関情報である第2相関情報が、それぞれ予め設定されており、
前記第1相関情報が重回帰式であり、第1の重回帰式と、第2の重回帰式を有し、
前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて、前記第1の重回帰式を使用してCOD換算値を算出し、当該算出したCOD換算値が閾値以上であった場合には、前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて前記第2の重回帰式を使用して前記COD換算値を再度算出し、
前記COD換算値に基づいて、前記第2相関情報を使用して前記BOD換算値を算出する、汚濁負荷監視システム。
【請求項2】
前記BOD換算値が所定値を超えていた場合に、警報情報を出力する、請求項1に記載の汚濁負荷監視システム。
【請求項3】
前記BOD換算値が所定値を超えていた場合に、前記排水処理施設の運転条件の変更の指示を出力する、請求項1に記載の汚濁負荷監視システム。
【請求項4】
前記濁度計の測定値が所定値を超えている場合、又は、前記濁度計の測定値が所定時間内に所定値以上の変化をしている場合には、当該測定値を使用しない、請求項1
から3の何れかに記載の汚濁負荷監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥法の曝気槽を備える排水処理施設における汚濁負荷情報を取得する汚濁負荷監視システム及び汚濁負荷の把握方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の処理施設等においては、その運転状況等をモニタリングすること等が行われている。
これに関する技術として、特許文献1には、水処理プラントの運転状態を示す少なくとも2項目以上のデータに基づいて水処理プラントの運転を管理する水処理プラントの運転管理装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水処理施設における運転状況を適切なものとするための情報の一つとして、処理水の水質の変動を示す汚濁負荷情報が挙げられる。汚濁負荷(有機物の量)がどの程度であるかを把握することで、より適切な運転条件を定めることができるものである。
曝気槽を備える排水処理施設においては、曝気槽に流入する流入水のBOD(Biochemical Oxygen Demand、生物化学的酸素要求量)が、汚濁負荷情報として用いられる。しかしながら、BODの測定は、一定期間(BOD5であれば5日間)サンプル水を恒温槽で温度管理して、その前後の酸素量を測定し、消費された酸素量を算出するものであり、従来、サンプル水を取得して分析機関で測定しているものであるため、リアルタイムで測定することが難しく、例えば時間ごとの変動を捉えて解析すること等が難しいものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、曝気槽に流入する流入水のBOD換算値(汚濁負荷情報)を自動的に取得し、これをモニタリングすることが可能な、汚濁負荷監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
曝気槽を備える排水処理施設における汚濁負荷情報を取得する監視システムであって、前記曝気槽への流入水である曝気槽流入水の濁度を測定する濁度計と、前記曝気槽流入水の導電率を測定する導電率計と、前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて、BOD換算値を算出する演算装置と、を備える、汚濁負荷監視システム。
【0007】
(構成2)
前記BOD換算値が所定値を超えていた場合に、警報情報を出力する、構成1に記載の汚濁負荷監視システム。
【0008】
(構成3)
前記濁度計及び前記導電率計の測定値とCODと間の相関情報である第1相関情報と、CODとBODと間の相関情報である第2相関情報が、それぞれ予め設定されており、前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて、前記第1相関情報を使用してCOD換算値を算出し、前記COD換算値に基づいて、前記第2相関情報を使用して前記BOD換算値を算出する、構成1又は2に記載の汚濁負荷監視システム。
【0009】
(構成4)
前記第1相関情報が重回帰式であり、第1の重回帰式と、第2の重回帰式を有し、前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて、前記第1の重回帰式を使用して算出した前記COD換算値が、閾値以上であった場合には、前記濁度計及び前記導電率計の測定値に基づいて前記第2の重回帰式を使用して前記COD換算値を再度算出する、構成3に記載の汚濁負荷監視システム。
【0010】
(構成5)
前記濁度計の測定値が所定値を超えている場合、又は、前記濁度計の測定値が所定時間内に所定値以上の変化をしている場合には、当該測定値を使用しない、構成1から4の何れかに記載の汚濁負荷監視システム。
【0011】
(構成6)
前記曝気槽内の混合液の酸素利用速度(Rr)を自動測定するRr自動測定装置であって、サンプリング槽と、前記曝気槽内の混合液を前記サンプリング槽に流入させる流入手段と、前記サンプリング槽に設けられた曝気手段と、前記サンプリング槽に設けられた溶存酸素濃度計と、を備え、前記サンプリング槽に採取した前記混合液に前記曝気手段による曝気を行い、その後曝気を停止させて、前記溶存酸素濃度計によりDO値を測定し、当該測定したDO値に基づいて酸素利用速度(Rr)を測定するRr自動測定装置を備える、構成1から5の何れかに記載の汚濁負荷監視システム。
【0012】
(構成7)
前記曝気槽内の混合液の活性汚泥沈殿率(SV)を自動測定するSV自動測定装置であって、透明容器からなるサンプリング槽と、前記曝気槽内の混合液を前記サンプリング槽に流入させる流入手段と、前記サンプリング槽を撮影するカメラと、を備え、前記サンプリング槽に採取した前記混合液を所定時間静置した後に、前記カメラによって静置された前記混合液を収容している前記サンプリング槽を撮影するSV自動測定装置を備える、構成1から6の何れかに記載の汚濁負荷監視システム。
【0013】
(構成8)
曝気槽を備える排水処理施設の監視における汚濁負荷の把握方法であって、前記曝気槽への流入水である曝気槽流入水の濁度情報及び前記曝気槽流入水の導電率情報と、前記曝気槽流入水のBODと、の相関情報を予め取得するステップと、前記曝気槽流入水の濁度情報及び導電率情報を随時取得し、当該取得した濁度情報及び導電率情報と、前記相関情報とに基づいて、BOD換算値を算出するステップと、を有する、汚濁負荷の把握方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の汚濁負荷監視システムによれば、曝気槽に流入する流入水のBOD換算値(汚濁負荷情報)を自動的に取得し、これをモニタリングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施形態1の汚濁負荷遠隔監視システムの構成の概略を示すブロック図
【
図2】実施形態1の曝気槽流入水監視槽の構成の概略を示す図
【
図3】実施形態1の汚濁負荷遠隔監視システムの処理動作の概略を示すフローチャート
【
図4】実施形態2の汚濁負荷遠隔監視システムの構成の概略を示すブロック図
【
図5】実施形態2のRr、SV自動測定装置の構成の概略を示すブロック図
【
図6】実施形態2のRr、SV自動測定の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図7】Rr自動測定の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図8】SV自動測定の処理動作の概略を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0017】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の汚濁負荷遠隔監視システム(汚濁負荷監視システム)の構成の概略を示すブロック図である。
本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1は、曝気槽25を備える排水処理施設2における汚濁負荷情報を取得するための遠隔監視システムであり、自動的に取得した汚濁負荷情報であるBOD換算値を記録(ログ)すると共に、BOD換算値が所定値を超えていた場合には、ネットワーク3を介して警報情報を情報処理装置4に送信する(警報情報を出力する)遠隔監視システムである。なお、BOD換算値(mg/L)とは、以下で説明する方法によって本システムによって算出されるBODの想定値(推定値)である。同様に、COD
Cr換算値(mg/L)は、本システムによって算出されるCOD
Crの想定値(推定値)である。
【0018】
監視対象である排水処理施設2は、例えば食品工場等における排水を処理するための水処理施設であり、
原水(処理対象である工場排水)を流入させる原水ポンプ槽21と、
流量を調整するための流量調整槽22と、
加圧・常圧浮上や凝集沈殿等の前処理装置23と、
活性汚泥法による生物処理を行う曝気槽25と、
固液分離を行う沈殿槽や膜分離槽26と、
消毒処理を行う消毒槽27と、
放流を行うための放流ポンプ槽28と、
等を備えている。なお、排水処理施設そのものや、排水処理施設における水処理の内容自体は、本発明の直接の対象では無く、従来の任意の排水処理施設(曝気槽を備える排水処理施設)を利用することができるため(排水処理施設としての構成は、
図1で示した構成に限られるものではない)、排水処理施設そのものや排水処理施設における処理内容に関するここでの説明を省略する。
【0019】
本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1は、曝気槽25への流入水の汚濁負荷情報(BOD換算値)をほぼリアルタイムで自動的に測定(監視)すること、即ち、曝気槽25の負荷状態を監視することが可能な遠隔監視システムである。
本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1は、曝気槽25への曝気槽流入水の流入経路24上に設けられた曝気槽流入水監視槽12と、曝気槽流入水監視槽12に備えられたセンサのセンサ値に基づいて、汚濁負荷情報であるBOD換算値の算出処理等を行う遠隔監視装置11と、を備えている。
【0020】
図2は、曝気槽流入水監視槽12の構成の概略を示す図である。
本実施形態の曝気槽流入水監視槽12は、
曝気槽流入水の流入経路24上に設けられ、曝気槽25へ流入水する曝気槽流入水が採取される流入水監視槽121と、
流入水監視槽121に設置され、曝気槽流入水の濁度を測定する濁度計122と、
流入水監視槽121に設置され、曝気槽流入水の導電率を測定する導電率計123と、
を備えている。
濁度計122は、発光部と受光部(特に図示せず)を有し、流入水監視槽121内の曝気槽流入水に光を照射してその透過光(または散乱光式等もある)を検知するセンサである。濁度、即ち、水に溶けていない汚れによる水の濁りに関する情報を検知するセンサとして使用される。なお濁度計は、濁度を測定可能な任意のセンサを使用することができる。
導電率計123は、流入水監視槽121内の曝気槽流入水の導電率を測定するセンサであり、水に溶けている汚れ(水に溶けた(イオン化した)汚れが多くなると、導電率が高くなる)を検知するセンサとして使用している。
【0021】
遠隔監視装置11は、
図1に示されるように、
曝気槽流入水監視槽12が接続される入出力端子112と、
以下で説明する「曝気槽流入水の濁度情報及び曝気槽流入水の導電率情報と、曝気槽流入水のBODと、の相関情報」に関する情報等が記憶されている記憶部113と、
ユーザに対する入力インターフェース(操作ボタン、キーボード、タッチパネル或いは音声入力部等の任意の入力手段)や出力インターフェース(表示画面やインジケータ等の視覚的な表示装置やスピーカ等の聴覚的な出力部等の任意の出力手段)である入出力部114と、
ネットワーク3を介した情報処理装置4への情報の送受信を行う送受信部115と、
装置の制御や演算処理等を行う制御・演算部111と、
を備え、後に説明するように、「濁度計及び導電率計の測定値に基づいて、BOD換算値を算出する演算装置」としての機能を有している。なお、入出力端子112は、制御・演算部111に入出力する適切な信号とするために、適宜、増幅回路、A/D変換回路、フィルター回路など(不図示)を介して、制御・演算部111に接続される。
遠隔監視装置11は、以下で説明する処理を実行することが可能な、PLC、MCU等のマイコン、PC等の任意の情報処理装置等によって構成することができる。
【0022】
なお、ネットワーク3は、インターネット或いはローカルエリアネットワーク等の任意のネットワークであってよく、有線、無線の別なども問わない(送受信部115は、ネットワークの種別等に適したものが適宜使用される)。
また、情報処理装置4は、例えば排水処理施設2の管理者等が保有するPCや携帯端末などの任意の装置である。
【0023】
遠隔監視装置11は、曝気槽流入水の汚濁負荷情報(BOD換算値)をほぼリアルタイムで自動的に測定(監視)するために、予め、「曝気槽流入水の濁度情報及び曝気槽流入水の導電率情報と、曝気槽流入水のBODと、の相関情報」が、取得、設定されている。
本実施形態における、「曝気槽流入水の濁度情報及び曝気槽流入水の導電率情報と、曝気槽流入水のBODと、の相関情報」は、
1.濁度計及び導電率計の測定値とCODCrと間の相関情報である第1相関情報
2.CODCrとBODと間の相関情報である第2相関情報
の2段階の相関情報によって構成されており、第1相関情報は、第1の重回帰式及び第2の重回帰式によって構成されている。
【0024】
第1相関情報は、濁度計及び導電率計の測定値とCOD(Chemical Oxygen Demand、化学的酸素要求量、単位:mg/L)と間の相関情報であり、曝気槽25へ流入する曝気槽流入水を予めサンプリングすることで取得、設定される。
より具体的には、曝気槽流入水を定期的に繰り返しサンプリングし、当該採取した各サンプルの濁度及び導電率と、CODCrを実測し、濁度と導電率を説明変数、CODCrを目的変数とした重回帰分析を行って、相関情報(重回帰式)を算出する。
実施例(実験)として、あるサイトにおいて6時間ごとにサンプリングを行い、相当数のサンプルデータを取得し、これらのサンプルデータに基づいて重回帰分析を行った。この実験においては、CODCrの実際の測定値と、濁度と導電率から上記算出した重回帰式に基づいて算出したCODCrの換算値と、の間の誤差が約-25%~+15%となり、CODCrの換算値の所定の値を境にして、誤差の正負が逆転する(傾向が変わる)結果となった。
そこで、誤差の正負が逆転する点(所定の値)を境界として分けてそれぞれの重回帰式(CODCrが所定の値未満で使用する第1の重回帰式、及び、所定の値以上で使用する第2の重回帰式)を得て、場合分けしてCODCr換算値を算出するようにしたところ、CODCrの実際の測定値とCODCrの換算値との間の誤差を、概ね±10%の範囲内に収めることができた。
このような傾向は、純水に電解質を溶かすと、濃度と導電率の関係は薄いときは比例するが、濃度が濃くなると勾配が小さくなるという現象や、有機化合物水溶液において電解質を溶解させながら導電率を測定すると、有機化合物の濃度が薄いときは勾配が大きく、有機化合物の濃度が濃いときは勾配が小さくなるという現象に基づいている(これらの現象に基づき、CODCrの換算値の増加に伴い、傾向が変わるもの)と考えられる。従って、各サイトにおけるサンプリングに基づいて、必要に応じて場合分けした(2つ以上に場合分けするものや、場合分けしないものを含む)重回帰式を用いることで、誤差を小さくし得ると考えられる。
【0025】
なお、サンプリングにおいて、濁度の値が所定値(具体的には、上記実施例においては600NTU)を超えた場合には、当該データは使用せずに重回帰分析を行った。
濁度計は、前述のように、サンプルに光を照射してその透過光を検知するセンサであるため、発光センサ若しくは受光センサの直前を固形物が横切って遮った場合等に、スパイク状のノイズデータとなって濁度(センサ値)が上昇する場合がある。このようなスパイク状のノイズデータは、濁度を正しく反映するものとは言えないため、これを除いた処理としているものである。
なお、ここでは、濁度(センサ値)が所定値を超えた(若しくは所定値以上となった)場合にこれを除くものを例としたが、濁度(センサ値)が所定時間内に所定値以上の変化をしている場合(スパイク的に急激に上昇、下降している場合)に、これを除くようにしてもよい。
【0026】
第2相関情報は、上記のサンプリングにおいてCODCrを測定したサンプル(1点もしくは数点でよい)のBODを測定し、これらの比(変換式)として取得される。
【0027】
上記により取得された第1相関情報と第2相関情報(各変換式のパラメータ)は、入出力部114を使用してユーザによって入力(設定)され、記憶部113に記憶される。また、第1の重回帰式と第2の重回帰式の場合分けに使用したCODCrの値(所定の値)についても、閾値として、設定、記憶される。
【0028】
次に、遠隔監視装置11の処理動作の概略を、
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、下記説明では処理主体を省略して記載しているが、各処理は記憶部113や入出力端子112から取得する情報を使用する等して、制御・演算部111によって実行されるものである。
所定の測定タイミング(予め設定された測定時刻や、予め設定された時間間隔で測定するもの等、測定のタイミングは任意に設定されるものであってよい)において、濁度計122と導電率計123のセンサ値を読み取ることで、曝気槽流入水の濁度と導電率を取得する(ステップ301)。この際、濁度が所定値を超えている場合には、濁度の測定をやり直す(ステップ302)。上記説明したサンプリング時と同様に、スパイク状のノイズデータを除く趣旨である(「濁度計の測定値が所定値を超えている場合、又は、濁度計の測定値が所定時間内に所定値以上の変化をしている場合には、当該測定値を使用しない」ものである)。なお、濁度の測定のやり直し時に、導電率も再度測定し直すものであってもよいし、導電率の再測定は行わないものであってもよい。
【0029】
曝気槽流入水の濁度と導電率を取得したら、これらから第1の重回帰式(第1相関情報)を使用してCOD換算値を算出する(ステップ303)。
COD換算値が閾値以上であった場合には、第2の重回帰式(第1相関情報)を使用してCOD換算値を再計算する(ステップ304:Yes→ステップ305)。
続くステップ306では、第1の重回帰式(ステップ303)若しくは第2の重回帰式(ステップ305)によって算出されたCOD換算値を、BOD換算値に変換(第2相関情報を使用してBOD換算値を算出)し、これをログ(記憶部113に記憶)する。
【0030】
算出されたBOD換算値が所定値(各サイトの設備条件や運転条件等に応じて、予め設定された値)以上であった(若しくは超えた)場合には、ネットワーク3を介してアラート(警報情報)を情報処理装置4に送信する(ステップ307:Yes→ステップ308)。
【0031】
続くステップ309では、次の測定タイミング(前述のごとく、予め設定された測定時刻や、予め設定された時間間隔で測定するもの等、測定のタイミングは任意に設定されるものであってよい)の到来を待ち、次の測定タイミングになったら、ステップ301へと戻って上記処理を繰り返す。
上記処理により、曝気槽流入水の濁度情報及び導電率情報が随時取得され、これらと相関情報とに基づいてBOD換算値が算出、記憶される。従って、曝気槽に流入する流入水のBOD換算値(汚濁負荷情報)をほぼリアルタイムで自動的に取得(及びログ)することができる。
【0032】
以上ごとく、本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1によれば、曝気槽に流入する流入水のBOD換算値(汚濁負荷情報)をほぼリアルタイムで自動的に取得(及びログ)し、これを遠隔からモニタリングすること等が可能となる。
従来、BODの測定は、一定期間(BOD5であれば5日間)サンプル水を恒温槽で温度管理して消費された酸素量を測定するものであった。従って、基本的に分析機関で測定しているものであり、オンサイトでリアルタイムで測定することが難しく、例えば時間ごとの変動を捉えることが難しいものであったが、本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1によれば、これらが可能となるものである。リアルタイムでの測定を可能としたことにより、負荷が急激に変化したような場合においても、これに即座に対応(運転条件の最適化等の対応)すること等が可能となり、非常に有用である。また、継続的に負荷状況をログすることができるため、当該データを解析することで、傾向(例えば季節的傾向など)を把握し、当該傾向に基づく負荷状況の変化予測に応じて予めの対策をすること等も可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、情報処理装置4について、BOD換算値が所定値以上となった(即ち負荷が大きくなった)際のアラートを受け取る点のみ説明しているが、情報処理装置4から遠隔監視装置11にアクセスしてログされているBOD換算値や、リアルタイムのBOD換算値を参照可能とするもの等としても勿論よい。
【0034】
本実施形態では、「曝気槽流入水の濁度情報及び曝気槽流入水の導電率情報と、曝気槽流入水のBODと、の相関情報」が、「1.濁度計及び導電率計の測定値とCODCrと間の相関情報である第1相関情報」と「2.CODCrとBODと間の相関情報である第2相関情報」の2段階の相関情報によって構成されるものを例としているが、本発明をこれに限るものでは無い。例えば、サンプリングにおいて、各サンプルの濁度及び導電率と、BODを実測し、濁度と導電率を説明変数、BODを目的変数とした重回帰分析を行って、濁度及び導電率から直接BOD換算値を算出可能としても良い。ただし、サンプリング時に複数のサンプルについてBODを実測する必要があり、BOD5であれば5日間サンプルを恒温槽で温度管理する必要があるため、相関情報の取得(相当数のサンプリング)に非常に手間がかかることになる。これに対し、実施形態の2段階方式によれば、BODの測定は1回若しくは数サンプルで済むため、相関情報の取得作業が効率化される。
「曝気槽流入水の濁度情報及び曝気槽流入水の導電率情報と、曝気槽流入水のBODと、の相関情報」は、必要に応じて更新されるものであってよい。例えば、工場における生産状況が変化したような場合等において、変化後の排水(曝気槽流入水)に対するサンプリングに基づいて相関情報を更新するもの等であってよい。また、定期的に、曝気槽流入水のBODの実測を行い、BOD変換値との誤差を確認し、誤差が大きいようであれば、相関情報の更新(サンプリング)をするもの等であってもよい。
【0035】
本実施形態では、CODとして、CODCrを用いるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、CODとして、CODMnを用いるもの等であってもよい。
また、実施形態ではBOD換算値をログするものを例としているが、COD換算値についてもログするものであっても勿論よい。
【0036】
本実施形態では、BOD換算値(汚濁負荷情報)が所定値以上であった場合には、アラート(警報情報)を情報処理装置4に送信(警報情報を出力)するものを例としているが、単なるアラートだけでなく、推奨される運転条件の変更の指示等(例えば、曝気槽の負荷が高くなり過ぎないように、流入量を低減させるためのバルブの操作量を具体的に示すものなど)も通知する等してもよい。また、警報情報の出力は、情報処理装置4に送信するものに限られず、例えば、排水処理施設2に設置されている装置において警報を出力させるもの等であってもよい。
【0037】
<実施形態2>
図4は、実施形態2の汚濁負荷遠隔監視システムの構成の概略を示すブロック図である。実施形態1と同様の構成となるものについては実施形態1(
図1)と同一の符号を使用し、ここでの説明を簡略化若しくは省略する。
【0038】
本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1´は、実施形態1の汚濁負荷遠隔監視システム1と同様の構成及び機能を有し、さらに、Rr、SV自動測定装置13を備えることにより、曝気槽25内の活性汚泥と原水の混合液である曝気槽混合液(以下単に「混合液」という)の酸素利用速度(Rr)と活性汚泥沈殿率(SV)を自動測定する機能を有している。
【0039】
図5は、Rr、SV自動測定装置13の構成の概略を示すブロック図である。
Rr、SV自動測定装置13は、
透明容器からなるサンプリング槽131と、
曝気槽25内の混合液をサンプリング槽131に流入させる流入手段132と、
サンプリング槽131内の混合液に酸素を供給するためにサンプリング槽131に設けられた曝気手段(曝気ノズル1331及びブロア1332)と、
サンプリング槽131内の混合液の溶存酸素濃度を測定するためにサンプリング槽131に設けられた溶存酸素濃度計134と、
サンプリング槽131を撮影するカメラ135と、
サンプリング槽131内の水位を測定する水位計136と、
サンプリング槽131内の水を循環させるための循環経路137と、
サンプリング槽131内へ洗浄水を流入させる洗浄手段138と、
サンプリング槽131内の水を排出させる排出経路139と、
を備えている。
【0040】
流入手段132は、曝気槽25の流入側から混合液を採取する上流採取経路1321と、曝気槽25の流出側から混合液を採取する下流採取経路1322と、ポンプ1323を有している。
なお、各径路には、各径路を開閉するための電動弁(図中でMVと表記)が設けられている。
各電動弁、ポンプ1323、ブロア1332、カメラ135は、遠隔監視装置11の制御・演算部111によって制御可能に接続されている。また、水位計136及び溶存酸素濃度計134の測定値が制御・演算部111によって取得可能なように接続されている。
【0041】
次に、曝気槽25の混合液の酸素利用速度(Rr)と活性汚泥沈殿率(SV)を自動測定する処理の概略を、
図6~8のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、下記説明では処理主体を省略して記載しているが、各処理は実施形態1と同様に制御・演算部111によって実行されるものである。
【0042】
図6は、RrとSVの自動測定処理の概略の全体を示すフローチャートである。
ステップ601、ステップ602のループ処理は、RrとSVのそれぞれの測定タイミングの到来を待つ処理である。それぞれの測定タイミングは、予め設定された測定時刻や、予め設定された時間間隔で測定するもの等、任意に設定されるものであってよい。
Rrの測定タイミングとなった場合には(ステップ601:Yes)、ステップ603へと移行してRr測定処理(以下で説明)を行い、得られたRrのデータを記録(ログ)し、ネットワーク3を介して情報処理装置4に送信する(ステップ604)。
SVの測定タイミングとなった場合には(ステップ602:Yes)、ステップ605へと移行してSV測定処理(以下で説明)を行い、得られたSVのデータを記録(ログ)し、ネットワーク3を介して情報処理装置4に送信する(ステップ606)。
【0043】
図7は、
図6のステップ603で実行されるRr自動測定の処理動作の概略を示すフローチャートである。
先ず、サンプリング槽131に、曝気槽25の混合液を所定量流入させる(ステップ701)。当該処理は、上流採取経路1321上の電動弁(電磁弁等、ルート切り換えられる方法であれば他の機構でも代用可)と下流採取経路1322上の電動弁の何れかを開く一方、循環経路137と排出経路139の電動弁を閉じた状態とし、水位計136によって得られる水位が所定の値となるまでポンプ1323を駆動することによって行われる。なお、曝気槽25の流入側と流出側の双方から混合液を採取可能としているのは、流入側(上流側)でRrを測定することで原水負荷を評価することと、流出側(下流側)でRrを測定することで生物処理の処理不良を検知することを、それぞれ目的としたものである。即ち、それぞれの目的に応じて、上流採取経路1321上の電動弁と下流採取経路1322上の電動弁の一方を開く処理が行われる。
所定量の混合液が採取されたら、ブロア1332を駆動して混合液に対する曝気を行い、溶存酸素濃度計134による測定値(DO値)が所定値1(例えば、5mg/L)になるまで曝気を継続し(即ち、サンプリング槽131の混合液を所定の溶存酸素濃度にさせる)、所定値1になったらブロア1332を停止させて曝気を停止する(ステップ702~704)。
サンプリング槽131の混合液を所定の溶存酸素濃度にしたら、混合液を攪拌しつつサンプリング槽131の混合液の溶存酸素濃度を所定間隔で測定し、溶存酸素濃度が所定値2(例えば、1mg/L)以下となったら、溶存酸素濃度が所定値1から2へとなるのにかかった時間や、所定値1及び2の値に基づいて、Rrを算出する(ステップ705~707)。なお、「混合液の攪拌」は、上流採取経路1321、下流採取経路1322、及び排出経路139の電動弁を閉じた状態とし、循環経路137の電動弁を開けて、ポンプ1323を駆動することによって行う。
Rrの測定が終わったら、サンプリング槽131の排水と洗浄処理(ステップ708)を行って、Rr測定処理を終了する。サンプリング槽131の排水は、排出経路139の電動弁を開くことで行われ、洗浄は、洗浄手段138上の電動弁を開いて洗浄水をサンプリング槽131に流入(その後排出)させることで行われる。なお、洗浄処理はサンプリング槽131内に洗浄水を所定量溜めた後に排水することを複数回繰り返すもの等であってよい(洗浄水を所定量溜める際に、循環経路137によって洗浄水を循環させる等してもよい)。
【0044】
図8は、
図6のステップ605で実行されるSV自動測定の処理動作の概略を示すフローチャートである。
先ず、サンプリング槽131に、曝気槽25の混合液を所定量流入させる(ステップ801)。基本的には
図7のステップ701と同様の処理概念であるが、ここでは下流採取経路1322のみを使用して曝気槽25からの混合液の採取を行う。
所定量の混合液が採取されたら、所定時間(例えば30分間)静置する(ステップ802)。
所定時間静置の後、カメラ135によって静置された混合液を収容しているサンプリング槽を撮影する(ステップ803)。
図9(b)に概念図を示したように、活性汚泥の沈殿により、サンプリング槽内の混合液には界面が表れており、これを撮影することでSVを示す情報として利用できるものである。なお、サンプリング槽に、採取する混合液の量に応じた割合を示すメモリを付しておき、当該メモリを撮影するようにカメラ135を構成することにより、SVを示す情報としてより分かり易くするものであってもよい。また、単に撮影をするだけではなく、当該撮影された画像データに対する画像認識によって界面の位置を自動判別し、採取した混合液に対する界面の位置の割合(即ちSVそのもの)を自動算出するようにしてもよい。
カメラの撮影(SVを示す情報の取得)が終わったら、サンプリング槽131の排水と洗浄処理(ステップ804)を行って、Rr測定処理を終了する。サンプリング槽131の排水と洗浄処理は、
図7のステップ708と同様の処理概念である。
【0045】
以上ごとく、本実施形態の汚濁負荷遠隔監視システム1´によれば、曝気槽内の混合液の酸素利用速度(Rr)と活性汚泥沈殿率(SV)をほぼリアルタイムで自動的に取得(及びログ)し、これを遠隔からモニタリングすることが可能となる。
なお、本実施形態では、情報処理装置4について、情報(Rr、SV)を受け取る点のみ説明しているが、情報処理装置4から遠隔監視装置11にアクセスしてログされているRrやSVを示す情報を参照可能とするもの等としても勿論よい。
【0046】
本実施形態では、Rr、SV自動測定装置13が、RrとSVの両方を測定する装置であるものを例としているが、本発明をこれに限るものでは無く、例えば、Rr用の測定装置と、SV用の測定装置を別個に設けるものであっても構わない。
図9には、Rr用の測定装置と、SV用の測定装置を別個にした例(Rr、SV自動測定装置13(
図5)と同様の構成については同一の符号を使用)を示した。
図9(a)のRr自動測定装置13´は、サンプリング槽131と、流入手段132と、曝気手段(曝気ノズル1331及びブロア1332)と、溶存酸素濃度計134と、水位計136と、循環経路137と、洗浄手段138と、排出経路139と、を備えている。なお、Rr自動測定装置13´におけるサンプリング槽は透明容器である必要はない。
図9(b)のSV自動測定装置13´´は、サンプリング槽131と、流入手段132と、カメラ135と、水位計136と、洗浄手段138と、排出経路139と、を備えている。
【0047】
本実施形態では、曝気槽25の混合液の酸素利用速度(Rr)と活性汚泥沈殿率(SV)を自動測定する処理が、遠隔監視装置の制御・演算部111によって実行されるものを例としているが、本発明をこれに限るものでは無い。Rr自動測定装置又はSV自動測定装置において制御部等を備えることにより、Rrを自動測定する処理又はSVを自動測定する処理が、Rr自動測定装置又はSV自動測定装置において実行されるようなものであってもよい。
【0048】
なお、各実施形態(
図1や
図4)では、遠隔監視装置11が排水処理施設2のあるサイトに配置されているような表記としており、従って、「濁度計及び導電率計の測定値に基づいて、BOD換算値を算出する処理」が、排水処理施設2のあるサイトにおいて行われるようなものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。
例えば、「濁度計及び導電率計の測定値に基づいて、BOD換算値を算出する処理」は、インターネット3(クラウド)上のサーバ等で実行される(この場合、当該サーバが「濁度計及び導電率計の測定値に基づいて、BOD換算値を算出する演算装置」としての機能を有することになる)もの等であってもよい。
また、BOD換算値を算出する処理はローカルで行った上で、この算出されたBOD換算値をインターネット3(クラウド)上のサーバ等でログし、当該サーバに対して情報処理装置4からアクセスして情報を取得するようなもの等であってもよい。
Rrを自動測定する処理やSVを自動測定する処理についても同様であり、サイトで取得された測定値を受信したインターネット3(クラウド)上のサーバ等これらの処理が実行される(勿論、物理的にオンサイトでの動作が必要なものは、各サイトにて実行される)ものであってもよいし、データをインターネット3(クラウド)上のサーバ等で保持するもの等であってもよい。
加えて、本発明に係る、「曝気槽に流入する流入水のBOD換算値(汚濁負荷情報)を自動的に取得し、これをモニタリングすることが可能な、汚濁負荷監視システム」は、インターネットなどを介した遠隔監視システムである必要はなく、オンサイトでローカルに構築されるシステムであってよい。Rr自動測定装置又はSV自動測定装置についてもどうように、インターネットなどを介した遠隔監視システムである必要はなく、オンサイトでローカルに構築されるシステムであってよい。
【符号の説明】
【0049】
1...汚濁負荷遠隔監視システム(汚濁負荷監視システム)
11...遠隔監視装置(演算装置)
12...曝気槽流入水監視槽
122...濁度計
123...導電率計
13...Rr、SV自動測定装置
131...サンプリング槽
132...流入手段
1331...曝気ノズル(曝気手段)
1332...ブロア(曝気手段)
134...溶存酸素濃度計
135...カメラ
2...排水処理施設
25...曝気槽
3...ネットワーク
4...情報処理装置