(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20250513BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20250513BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250513BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250513BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250513BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20250513BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20250513BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20250513BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60L50/16
B60L50/61
B60L53/14
B60L58/10
(21)【出願番号】P 2021080183
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 健敏
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047218(JP,A)
【文献】特開2014-080144(JP,A)
【文献】特開2010-089718(JP,A)
【文献】特開2020-192897(JP,A)
【文献】特開2021-011155(JP,A)
【文献】特許第6089601(JP,B2)
【文献】特開2015-055220(JP,A)
【文献】特開2014-100944(JP,A)
【文献】特開平09-184436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0120108(US,A1)
【文献】特開2015-128936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-20/50
B60L 1/00- 3/12、
7/00-13/00、
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載される内燃機関と、
前記電動車両の駆動軸を駆動するモータと、
前記モータに電力を供給する駆動用電池と、
前記内燃機関を潤滑するオイルの温度を検知するセンサと、
前記オイルの温度から前記内燃機関が冷態状態か否かを判断し、前記内燃機関が冷態状態の場合、前記駆動用電池からの電力を用いて前記モータが前記駆動軸を駆動する領域を、前記内燃機関が温態状態よりも広くする第1EV走行領域拡大制御を実行する制御装置と、
前記電動車両に接続される外部機器に前記駆動用電池から電力を供給可能な外部給電装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記外部給電装置が前記外部機器に電力を供給する外部給電制御中は前記外部給電制御を実行していない場合よりも、前記駆動用電池からの電力を用いて前記モータが前記駆動軸を駆動する頻度を前記第1EV走行領域拡大制御よりも抑制する一方、前記内燃機関が温態状態よりも前記駆動用電池からの電力を用いて前記モータが前記駆動軸を駆動する領域が多くなるような第2EV走行領域拡大制御を実行する、
電動車両。
【請求項2】
前記センサが、前記内燃機関のオイルパンに配置される請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内燃機関が冷態状態において前記内燃機関を始動する場合、前記内燃機関を冷態状態から温態状態に暖機する暖機制御を実行し、
前記内燃機関の使用頻度を取得し、前記内燃機関の使用頻度が所定の頻度以下の場合、前記暖機制御による前記内燃機関の運転を抑制する、
請求項1に記載の電動車両。
【請求項4】
前記使用頻度とは、イグニッションスイッチがオンされてから、前記内燃機関が運転された時間と回数である請求項3に記載の電動車両。
【請求項5】
前記内燃機関により駆動されて発電した電力を前記モータ又は前記駆動用電池に供給する発電機と、
前記内燃機関と前記駆動軸との間で動力を伝達および遮断するクラッチと、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記クラッチを遮断した状態で前記内燃機関を停止させつつ前記駆動用電池から供給された電力により駆動された前記モータの駆動力を前記駆動軸に伝達して走行するEV走行モードと、前記クラッチを遮断した状態で前記内燃機関により前記発電機を発電しつつ前記モータの駆動力を前記駆動軸に伝達して走行するシリーズ走行モードと、前記クラッチを接続した状態で前記内燃機関の動力を前記駆動軸に伝達して走行するパラレル走行モードとを切り替えるよう制御し、
前記内燃機関が冷態状態の場合には、前記内燃機関が温態状態の場合に比べて、前記EV走行モードでの領域を拡大して、前記シリーズ走行モード及び前記パラレル走行モードの領域を縮小する、請求項1から4のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記電動車両は、燃料タンクをさらに備え、
前記制御装置は、前記燃料タンクに給油されたのちの所定期間は前記所定期間以外よりも、前記モータが前記駆動用電池からの電力を用いて前記駆動軸を駆動する前記第1EV走行領域拡大制御よりも領域を抑制する一方、前記内燃機関が温態状態よりも前記駆動用電池からの電力を用いて前記モータが前記駆動軸を駆動する領域が多くなるような第2EV走行領域拡大制御を実行する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記内燃機関の排熱を利用するヒータをさらに備え、
前記制御装置は、前記ヒータの作動中は、前記ヒータの非作動中よりも前記モータが前記駆動用電池からの電力を用いて前記駆動軸を駆動する領域を前記第1EV走行領域拡大制御よりも抑制する一方、前記内燃機関が温態状態よりも前記駆動用電池からの電力を用いて前記モータが前記駆動軸を駆動する領域が多くなるような第2EV走行領域拡大制御を実行する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関を搭載する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド型、またはプラグインハイブリッド型の電動車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電動車両は、内燃機関と、発電機と、駆動用電池と、モータと、を有する。特許文献1の電動車両は、内燃機関を発電または駆動軸を駆動する動力源として用いる。特許文献1の電動車両では、内燃機関をいつでも始動できるように、内燃機関が冷態状態の場合、モータによる走行を禁止して内燃機関を始動させ、内燃機関の暖機運転を行う。これによって、モータによって走行中であっても内燃機関を暖機完了状態にし、いつでも始動できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、内燃機関が冷態状態において内燃機関を始動させると、内燃機関のフリクションが大きい。これによって、燃費が悪化することもある。
【0005】
本開示の課題は、冷態状態における内燃機関の燃料消費を抑制できる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動車両は、電動車両に搭載される内燃機関と、電動車両の駆動軸を駆動するモータと、モータに電力を供給する駆動用電池と、内燃機関を潤滑するオイルの温度を検知するセンサと、オイルの温度から前記内燃機関が冷態状態か否かを判断し、内燃機関が冷態状態の場合、駆動用電池からの電力を用いてモータが駆動軸を駆動する領域を、内燃機関が温態状態よりも広くする第1EV走行領域拡大制御を実行する制御装置と、を備える。
【0007】
この電動車両によれば、内燃機関が冷態状態の場合、モータが駆動軸を駆動する。これによって、内燃機関のフリクションが大きい冷態状態において、内燃機関の使用を極力回避できる。この結果、冷態状態における内燃機関の燃料消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、冷態状態における内燃機関の燃料消費を抑制できる電動車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の実施形態による電動車両に搭載された内燃機関のシステム図。
【
図3】本開示の実施形態による電動車両の各走行領域の一例を示すタイミングチャート。
【
図4】本開示の実施形態による電動車両の制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による電動車両1は、四輪駆動型のハイブリッド自動車である。電動車両1は、内燃機関(ENG)2と、発電機(第1回転電機の一例:GEN)4と、フロントモータ(第2回転電機の一例:FrM)6と、リアモータ(RM)8と、駆動用電池(BT)10と、制御装置(HVECU)20と、アクセルペダル21と、外部給電装置22と、を有する。
【0012】
本実施形態の電動車両1は、フロントモータ6がトランスアクスル16を介して前輪12の前輪駆動軸12aを駆動する。リアモータ8は、減速機8cを介して後輪14の後輪駆動軸14aを駆動する。フロントモータ6は、フロントインバータ18を介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第2電力)が供給される。
【0013】
フロントインバータ18は、フロントモータ制御装置(FrMCU)6aと、発電機4を制御する発電機制御装置(GCU)4aと、を有する。フロントモータ制御装置6aは、制御装置20から信号を取得し、フロントモータ6が所望の運転状態となるようにフロントモータ6の回生と力行を制御する。リアモータ8も同様に、リアインバータ8bを介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第2電力)が供給される。リアインバータ8bは、リアモータ制御装置(RMCU)8aを有する。リアモータ制御装置8aは、制御装置20から信号を取得し、リアモータ8が所望の運転状態となるようにリアモータ8の回生と力行を制御する。
【0014】
内燃機関2は、トランスアクスル16を介して発電機4を駆動する。内燃機関2は、燃料タンク(Fuel TANK)23から供給される燃料が燃焼することで駆動する。本実施形態では、燃料タンク23は、燃料タンクを密閉する密閉弁と、燃料タンク23の蒸散ガスを吸着するキャニスタと、を有する密閉タンク型の燃料タンク23である。このような密閉タンク型の燃料タンク23は、給油を行うために、密閉弁を開きキャニスタに吸着させることによって、燃料タンク23の圧力を下げる給油制御を行う。内燃機関2の各種装置および各種センサは、エンジン制御装置(ENG-ECU)2aと電気的に接続される。エンジン制御装置2aは、制御装置20からの信号を取得し、内燃機関2が所望の運転状態となるように制御する。トランスアクスル16は、内燃機関2の回転速度を増幅し発電機4に伝達する。また、本実施形態のトランスアクスル16は、クラッチ16aを有する。クラッチ16aは、内燃機関2とフロントモータ6との間および内燃機関2と前輪駆動軸12aとの間で動力を伝達および遮断する。内燃機関2は、トランスアクスル16のクラッチ16aを介して前輪駆動軸12aに接続され、前輪駆動軸12aを駆動する。
【0015】
図2に示すように、内燃機関2は、少なくとも、燃料噴射弁2cと、排気管2dと、排気浄化装置2eと、ヒータ装置2Kと、油温センサ2lと、を有する。本実施形態では、内燃機関2は、排気管2dが内燃機関2から電動車両1の後方に向かって延びる後方排気型のものである。内燃機関2は、排気管2dを介して排気浄化装置2eに接続される。また、本実施形態では、内燃機関2は、マルチインジェクション方式のガソリンエンジンである。内燃機関2は、吸気ポート2fに配置された燃料噴射弁2cによって燃料を噴射し、スロットル弁2bによって吸入空気量を調整することによって出力を調整する。しかし、内燃機関2は、気筒2gに直接燃料を噴射する直噴方式のガソリンエンジンやディーゼルエンジンであってもよい。さらに、内燃機関2は、マルチインジェクション方式および直噴方式を併用するガソリンエンジンであってもよい。また、内燃機関2は、このほか排気循環弁2iおよび排気循環通路2jを含む排気循環装置などの装置を含んでもよい。また、内燃機関2は、内燃機関2の冷却水温度を検知する水温センサを含んでもよい。
【0016】
ヒータ装置2Kは、内燃機関2の電動車両1の室内を温める装置である。
図2に示すヒータ装置2Kは、ヒータ装置2Kのうち、排気管2dの下方に配置され、排気熱を受熱するヒータパイプを示す。本実施形態のヒータ装置2Kは、内燃機関2の排気熱を利用した装置である。このような、ヒータ装置2Kは、ヒータパイプの内部に冷却水が通り、冷却水が冷媒となって図示しないヒータコアを温める。ヒータコアを通過した空気は、電動車両1の室内に供給され室内を温める。このため、制御装置20は、ヒータ装置2Kを作動させる場合、内燃機関2を始動させる。ヒータ装置2Kは、例えば、駆動用電池10の電力を用いたヒートポンプ式の装置、または、駆動用電池10の電力を用いて電熱線を温める電気式ヒータ装置であってもよい。このようなヒータ装置2Kであっても、駆動用電池10の充電率が低下した場合、制御装置20が内燃機関2を始動させる。
【0017】
油温センサ2lは、内燃機関2を潤滑するオイルの温度を検知するセンサである。本実施形態では、油温センサ2lは、内燃機関2のオイルパンに配置される。しかし、油温センサ2lは、オイルの流路のいずれかの場所に配置すればよい。
【0018】
図1に示すように、発電機4は、内燃機関2と接続され、内燃機関2によって駆動されることにより発電する。発電機4によって発電された電力(第1電力)は、駆動用電池10を充電可能であるとともに、フロントインバータ18およびリアインバータ8bを介してフロントモータ6およびリアモータ8(以下明細書において各モータと記す)に供給可能である。本実施形態では、発電機4はモータジェネレータであり、発電に加えて内燃機関2を回転駆動することによって内燃機関2をモータリングすることができる。発電機4は、内燃機関2から駆動される場合、発電機4に負荷を与えることで発電する。一方、発電機4は、駆動用電池10から電力が供給され力行することによって内燃機関2を駆動しモータリングさせる。発電機4は、フロントインバータ18に設けられた発電機制御装置4aによって制御される。発電機制御装置4aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20からの信号を取得し、発電機4が所望の運転状態となるように発電と力行を制御する。
【0019】
駆動用電池10は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルで構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用電池10は、各モータの電源として機能する。さらに駆動用電池10は、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOC)の算出、電池モジュールの劣化状態(State Of Health 以下 SOH)、および電池モジュールの電圧Bvおよび電池温度Btmpの検出を行う電池モニタリングユニット(BMU)10aを有する。電池モニタリングユニット10aは、駆動用電池10の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpを取得し、制御装置20に送信する。
【0020】
制御装置20は、少なくとも走行モードの切り替えをする制御と、各走行モードにおいて、内燃機関2に発電させる発電制御と、内燃機関2を発電機4によって駆動するモータリング制御と、を実行する。
【0021】
本実施形態では、制御装置20は、速度V、充電率SOC、およびアクセル開度Thなどの情報に基づいて、クラッチ16aを制御することによって、パラレル走行モード、シリーズ走行モード、およびEV走行モード(以下明細書において各走行モードと記す)の中から、いずれかにひとつの走行モードに切り替える。より具体的には、制御装置20は、アクセル開度Thに基づいて演算されるドライバ要求トルクDTqが、パラレル走行モード、シリーズ走行モードおよびEV走行モードのそれぞれに設定されるモード判定トルクMTq以上または以下か否かを判断する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqがモード判定トルクMTq以上または以下の場合、各走行モードに切り替える。
【0022】
パラレル走行モードでは、電動車両1は、クラッチ16aを接続した状態で内燃機関2の動力を前輪駆動軸12aに伝達して走行する。本実施形態では、パラレル走行モードでは、制御装置20は、クラッチ16aを接続し、内燃機関2とフロントモータ6の両方よって前輪駆動軸12aを駆動する。このとき、フロントモータ6には、駆動用電池10からの電力(第2電力)、および発電機4で発電した電力(第1電力)のいずれか一方、または両方が供給される。リアモータ8も同様に駆動用電池10からの電力(第2電力)、および発電機4で発電した電力(第1電力)のいずれか一方、または両方が供給され、後輪駆動軸14aを駆動する。EVモードでは、電動車両1は、クラッチ16aを遮断した状態で内燃機関2を停止させつつ駆動用電池10から供給された電力により駆動された各モータの駆動力を各駆動軸に伝達して走行する。本実施形態では、EV走行モードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、駆動用電池10の電力(第2電力)を各モータに供給し、各モータが前輪駆動軸12aおよび後輪駆動軸14a(以下明細書において各駆動軸と記す)を駆動する。
【0023】
シリーズ走行モードでは、電動車両1は、クラッチ16aを遮断した状態で内燃機関2により発電機4を発電しつつ各モータの駆動力を各駆動軸に伝達して走行する。本実施形態では、シリーズ走行モードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、内燃機関2で発電機4を駆動し、発電機4で発電した第1電力を各モータに供給する。また、制御装置20は、第1電力によっては各モータが各駆動軸を駆動する駆動力が不足する場合、駆動用電池10からも各モータに第2電力を供給する。
【0024】
制御装置20は、パラレル走行モード、シリーズ走行モード、およびEV走行モードの各走行モードにおいて、内燃機関2に要求するエンジン要求トルク(要求出力値の一例)ETqを演算し、エンジン制御装置2aに送信する。エンジン制御装置2aは、エンジン要求トルクETqを取得し、エンジン要求トルクETqを達成できるように、内燃機関2を制御する。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。制御装置20は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両1が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。
【0025】
また、本実施形態では、エンジン制御装置2a、発電機制御装置4a、フロントモータ制御装置6a、リアモータ制御装置8a、および電池モニタリングユニット10aを含む各種制御装置が、それぞれ制御装置20と別に設けられる。各種制御装置は、それぞれ制御装置20と電気的に接続される。しかし、各種制御装置は、制御装置20と一体で設けられてもよい。各種制御装置は、制御装置20と同様に、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。
【0026】
アクセルペダル21は、電動車両1のドライバが踏み込み操作することで、電動車両1の加減速を制御するペダルである。アクセルペダル21には、踏み込み位置を検知するアクセルポジションセンサ21aが設けられる。アクセルポジションセンサ21aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20にアクセル踏み込み位置(アクセル開度)を送信する。
【0027】
外部給電装置22は、駆動用電池10の電力を、電動車両1のユーザが電動車両1と別に用意する電気機器(外部機器の一例、例えば家電機器等)に供給するための装置である。外部給電装置22はインバータを含み、駆動用電池10からの直流電流を、電気機器に適した交流電流に変換する。
【0028】
ところで、特許文献1の電動車両は、内燃機関が冷態状態の場合、内燃機関を始動させて暖機運転させる。しかし、内燃機関が冷態状態の場合、内燃機関のフリクションが高い。これによって、エネルギ損失が生じ、内燃機関の燃料消費が多くなる。このような状態では、内燃機関2の運転を抑制し、駆動用電池10からの電力を用いた各モータによって各駆動軸を駆動する領域を拡大する方が好ましい。
【0029】
より具体的には、
図3に示すように、例えば、電動車両1は、内燃機関2が温態状態の場合、EV走行モードで走行する領域(以下明細書においてEV走行領域と記す)、シリーズ走行モードによって走行する領域(以下明細書においてシリーズ走行領域と記す)、パラレル走行モードで走行する領域(以下明細書においてパラレル走行領域と記す)がある。本実施形態では、例えば、速度V1(例えば50km/h)以下の時刻t1から時刻t2は、EV走行領域である。速度V1から速度V2(例えば70km/h)の間である時刻t2から時刻t3の領域は、シリーズ走行領域である。速度V2以上まで加速し、その後定常走行および速度V3(例えば、100km/h)まで加速する時刻t4から時刻t5の高速走行領域は、パラレル走行領域である。
【0030】
内燃機関2が冷態状態の場合、
図3の時刻t2aから時刻t3の破線X、および
図3の時刻t4aから時刻t4bの破線Yに示すように、このようなシリーズ走行領域およびパラレル走行領域の一部をEV走行領域に置き換えることによって、EV走行領域を拡大して、シリーズ走行モードおよびパラレル走行モードの領域を縮小する。これによって、内燃機関2の使用を抑制し、フリクションによる燃料消費の増大を抑制できる。
【0031】
一方、このような電動車両1では、発電機4から各モータ、および駆動用電池10に送電する電力の送電損失、および駆動用電池10から各モータに供給する電力の送電損失が生じる。内燃機関2が温態状態において、内燃機関2の冷態状態と同様にEV走行領域を拡大した場合、送電損失によるエネルギ損失の方が、内燃機関2のフリクションによるエネルギ損失よりも大きい。
【0032】
より具体的に、冷態状態においても温態状態においても、時刻t5の時点で所定SOCtとなることを前提に説明する。時刻t5の時点で所定SOCtとなる場合、内燃機関2が冷態状態では、時刻t2aから時刻t3の領域をシリーズ走行領域からEV走行領域にする。また、時刻t4aから時刻t4bの領域をパラレル走行領域からEV走行領域にする。これによって、温態状態よりもSOCは低下し、低下した分を他のシリーズ走行領域およびパラレル走行領域において、駆動力に使う内燃機関2の出力に上乗せして発電する必要がある。しかし、冷態状態では、フリクションによるエネルギ損失が、送電損失によるエネルギ損失を上回るため、破線Xの部分、および破線Yの部分をEV領域とした方が電動車両1全体としてのエネルギ損失が小さい。この結果、内燃機関2の燃料消費を抑制できる。
【0033】
一方、内燃機関2が温態状態では、内燃機関2のフリクションによるエネルギ損失が送電損失よるエネルギ損失よりも小さい。このため、時刻t2aから時刻t3の領域をシリーズ走行領域、時刻t4aから時刻t4bの領域をパラレル走行領域として内燃機関2を使用し、SOCの低下を抑制する方が、送電損失を抑制できる。この結果、駆動力に使う内燃機関2の出力に上乗せして発電する発電量が減り、内燃機関2の燃料消費を抑制できる。上記観点から制御装置20は以下のような制御を実行する。
【0034】
次に、
図4のフローチャートを用いて、本実施形態の制御装置20の制御手順について説明する。制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることで、制御動作を開始する。
【0035】
ステップS1では、制御装置20は、内燃機関2が冷態状態であるか否か判断する。本実施形態では、制御装置20は、油温センサ2lから取得した油温から内燃機関2が冷態状態か否か判断する。内燃機関2の油温は水温に比べて遅れて上昇する。このため、制御装置20は、内燃機関2の油温によって冷態状態か否かを判断することにより、EV走行領域をより拡大しやすい。
【0036】
制御装置20は、内燃機関2が冷態状態であると判断した場合(ステップS1 YES)、ステップS2に処理を進め、外部給電制御中か否か判断する。ステップS2で制御装置20が外部給電制御中でないと判断した場合(ステップS2 NO)、制御装置20は、ステップS3に処理を進め、給油制御の有無を判断する。制御装置20は、給油制御が無いと判断した場合(ステップS3 NO)、ステップS4に処理を進める。ステップS4では、制御装置20はヒータ要求の有無を判断する。制御装置20は、ヒータ要求が無いと判断し、ヒータが非作動の場合(ステップS4 NO)、処理をステップS5に進める。
【0037】
ステップS5では、制御装置20は、第1EV走行領域拡大制御を実行する。制御装置20は、第1EV走行領域拡大制御を実行する場合、EV走行モードからシリーズ走行モード、またはパラレル走行モードに切り替わるためのモード判定トルクMTqを、より高い値に変更する。本実施形態では、制御装置20は、温態状態における第3モード判定トルクMTq3よりも高いトルクとなる第1モード判定トルクMTq1にモード判定トルクMTqを変更する。これによって、内燃機関2が冷態状態である場合、内燃機関2が温態状態よりも高いドライバ要求トルクDTqにおいてEV走行モードに切り替わる。より具体的には、例えば、
図3に示す破線Xの領域、および破線Yの領域がEV走行領域となる。すなわち、EV走行領域が拡大する。制御装置20は、第1EV走行領域拡大制御を実行するとステップS6に処理を進める。
【0038】
ステップS6では、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが、ステップS5で変更した第1モード判定トルクMTq1以上か否かを判断する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが第1モード判定トルクMTq1以上であると判断した場合(ステップS6 YES)、EV走行モードからシリーズ走行モード、またはパラレル走行モードに切り替え、ステップS7に処理を進める。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが第1モード判定トルクMTq1よりも小さいと判断した場合(ステップS6 NO)、ステップS5の前に処理を戻し、第1EV走行領域拡大制御を続ける。
【0039】
ステップS7では、制御装置20は、内燃機関2の使用頻度Nが所定頻度N1以下か否か判断する。使用頻度Nは、図示しないイグニッションスイッチがオンされてから、内燃機関2が運転された時間や、回数であればよい。制御装置20は、内燃機関2の使用頻度Nが所定頻度N1以下でないと判断した場合(ステップS7 NO)、ステップS8に処理を進める。制御装置20は、内燃機関2の使用頻度Nが所定頻度N1以下であると判断した場合(ステップS7 YES)、ステップS11の前に処理を戻し、第1EV走行領域拡大制御を続ける。これによって、EV走行領域が拡大した状態が継続する。
【0040】
ステップS8では、制御装置20は、内燃機関2の暖機要求制御(暖機制御)を実行する。本実施形態では、制御装置20がエンジン制御装置2aに暖機に必要なエンジン要求トルクETqを送信する。制御装置20は、内燃機関2の暖機要求制御を実行するとステップS9に処理を進める。ステップS9では、制御装置20は、内燃機関2を始動させドライバ要求トルクDTqに応じてエンジン要求トルクETqを送信し、内燃機関2が所望の運転状態となるように制御する。制御装置20は、内燃機関を運転すると、処理をステップS1の前に戻す。
【0041】
制御装置20は、ステップS1で冷態状態ではないと判断した場合、すなわち内燃機関2が温態状態の場合、ステップS10に処理を進める。ステップS10では、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが温態状態における第3モード判定トルクMTq3以上であるか否か判断する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが第3モード判定トルクMTq3以上であると判断した場合(ステップS10 YES)、シリーズ走行モード、またはパラレル走行モードに切り替え、ステップS9に処理を進める。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが温態状態における第3モード判定トルクMTq3以下であると判断した場合(ステップS10 NO)、処理をステップS1に戻す。
【0042】
制御装置20は、ステップS2で外部給電制御中であると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3で給油制御が有ったと判断した場合(ステップS3 YES)、ステップS4でヒータ要求が有ると判断した場合(ステップS4 YES)、処理をステップS11に進める。
【0043】
外部給電制御中は、駆動用電池10の充電率SOCが低下するため、駆動用電池10の充電のために制御装置20が内燃機関2を始動する可能性が高い。また、給油制御が行われたのち所定期間は、制御装置20が内燃機関2を始動させて、キャニスタに吸着した燃料蒸散ガスを内燃機関2に吸わせる制御(以下明細書においてキャニスタパージ制御と記す)をする必要がある。さらに、ヒータ要求が有った場合は、制御装置20が内燃機関2を運転する必要がある。
【0044】
そこで、制御装置20は、ステップS11において、第2EV走行領域拡大制御を実行する。第2EV走行領域拡大制御は、ステップS5の第1EV走行領域拡大制御よりも、EV走行領域の拡大を抑制する一方、内燃機関2が温態状態よりもEV走行領域が多くなるように、制御装置20が電動車両1を制御するモードである。本実施形態では、制御装置20は、モード判定トルクMTqが、第1モード判定トルクMTq1よりも小さく、第3モード判定トルクMTq3よりも大きい第2モード判定トルクMTq2に設定する。これによって、第2EV走行領域拡大制御におけるEV走行領域が第1EV走行領域拡大制御のEV走行領域よりも抑制される。このため、内燃機関2の使用頻度が上昇する。この結果、外部給電制御に備えた発電のための内燃機関2の運転、キャニスタパージ制御のための内燃機関2の運転、およびヒータ要求のための内燃機関2の運転に備えることができる。制御装置20は、第2EV走行領域拡大制御を実行すると、ステップS12に処理を進める。なお、第2EV走行領域拡大制御において、制御装置20は、外部給電制御中、キャニスタパージ制御、ヒータ要求のそれぞれに応じた第2モード判定トルクMTq2を設定してもよい。
【0045】
ステップS12では、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqがステップS11で変更した第2モード判定トルクMTq2以上か否か判断する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが第2モード判定トルクMTq2以上であると判断した場合(ステップS12 YES)、EV走行モードからシリーズ走行モード、またはパラレル走行モードに切り替え、処理をステップS7に進める。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが第2モード判定トルクMTq2より小さい場合、ステップS11に処理を戻し、第2EV走行領域拡大制御を続ける。
【0046】
以上説明した通り、本開示によれば、冷態状態における内燃機関2の燃料消費を抑制できる電動車両1を提供できる。
【0047】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0048】
(a)上記実施形態では、四輪駆動型のハイブリッド自動車を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。電動車両1は、前輪駆動のハイブリッド型およびプラグインハイブリッド型の自動車であってもよい。また、電動車両1は、四輪駆動型のプラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0049】
(b)上記実施形態では、クラッチ16aを用いて、内燃機関2と前輪駆動軸12aを接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と前輪駆動軸12aは遊星ギヤを介して接続してもよい。
【0050】
(c)上記実施形態では、内燃機関2と発電機4をギヤで接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と発電機4は遊星ギヤを介して接続してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:電動車両,2:内燃機関,2K:ヒータ装置
2l:油温センサ,6:フロンとモータ,10:駆動用電池
12a:前輪駆動軸,20:制御装置,22:外部給電装置,23:燃料タンク
DTq:ドライバ要求トルク
MTq:モード判定トルク,MTq1:第1モード判定トルク
MTq2:第2モード判定トルク,MTq3:第3モード判定トルク
N:使用頻度