(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】電動車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60L 58/10 20190101AFI20250513BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250513BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250513BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20250513BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20250513BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20250513BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
B60L58/10
B60L50/16
B60L50/60
B60K6/442
B60W10/26 900
B60W10/30 900
B60W10/08 900
(21)【出願番号】P 2022021791
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛之
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-98888(JP,A)
【文献】特開2015-139328(JP,A)
【文献】特開2020-58136(JP,A)
【文献】特開2006-37780(JP,A)
【文献】特開2012-44849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60K 6/20-6/547
B60W 10/26
B60W 10/30
B60W 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関と、
前記車両に搭載され、前記内燃機関によって駆動される第1回転電機と、前記車両の駆動軸を駆動する第2回転電機と、を含む回転電機と、
前記回転電機と異なる電気機器と、
前記回転電機および前記電気機器に電力を出力するとともに、前記回転電機が発生した電力が入力される第1電池と、
前記第1電池と前記回転電機との間で入出力される第1電力と、前記第1電池から前記電気機器に出力される第2電力と、を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1電力を前記第2電力に優先して決定し、
前記第1電力に基づいて前記第1電池に入出力される第3電力を演算し、
前記第3電力に基づいて前記第2電力を決定し、
前記車両が前記内燃機関を停止させた状態で前記第1電力が前記第1電池から前記第2回転電機に出力され前記第2回転電機によって走行するEV走行モードの場合は、前記第1電力が前記第1電池から入出力されていない場合よりも、前記第2電力を抑制する第1モードを実行し、
前記第1回転電機が前記内燃機関に駆動され前記第1回転電機から前記第2回転電機へ出力し前記第2回転電機によって走行するシリーズ走行モードの場合と、前記車両の駆動軸を前記内燃機関によって駆動させることで走行するパラレル走行モードの場合は、前記第1電力が前記第1電池から入出力されていない場合よりも、前記第2電力を増大する第2モードを実行し、
前記シリーズ走行モード時は前記第2モードのうち第1出力増大モードを、前記パラレル走行モード時は前記第2モードのうち第2出力増大モードを、実行
し、
前記第2出力増大モードの第2電力の方が、前記第1出力増大モードの第2電力よりも大きいことを特徴とする、
電動車両の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第2回転電機が回生している場合、
前記第2出力増大モードを実行する、
請求項
1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項3】
前記電気機器は、前記第1電池からの直流電流の電圧を変換するDC-DCコンバータであり、
前記EV走行モードであり、かつ、前記DC-DCコンバータによって変換された電力を蓄電する第2電池をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2電池の充電率が第1所定充電率以上の場合、前記第1モードを実行する、
請求項
1に記載の電動車両の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2電池の充電率が前記第1所定充電率より大きい第2所定充電率
以上の場合、
前記第1モードを実行することに代えて、前記第2電力の出力を停止する、
請求項
3に記載の電動車両の制御システム。
【請求項5】
前記電気機器は、前記第1電池からの直流電流の電圧を変換するDC-DCコンバータであり、前記DC-DCコンバータによって変換された電力を蓄電する第2電池をさらに備え、
前記制御装置は、
前記シリーズ走行モードであり、かつ、前記第2電池が第3所定充電率未満の場合、
前記第1出力増大モードを実行し、
前記パラレル走行モードであり、かつ、前記第2電池が前記第3所定充電率未満の場合、前記第2出力増大モードを実行する、
請求項
1から
4のいずれか1項に記載の電動車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動用電池と、モータやジェネレータなどの回転電機と、電気機器と、を有する電動車両の制御システムが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1は、電気機器として駆動用電池から流れる直流電力の電圧を変換するDC-DCコンバータを搭載し、モータを回生する際はDC-DCコンバータが変換する電力を最大にする電動車両の制御システムを開示する。特許文献2は、DC-DCコンバータで変換される電力を蓄電する低電圧バッテリを基準に、DC-DCコンバータを制御する電動車両の制御システムを開示する。
【0003】
例えば、特許文献2は、EV走行中のアクセルペダルの出力変化が所定時間以内に所定値以上の場合に、内燃機関を始動する電動車両の制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-23294号公報
【文献】特開2010-136495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動用電池は、内部抵抗を有する。このため、駆動用電池に入出力される電力が増大すると、内部抵抗によって生じる電力の損失(以下明細書において内部損失と記す)も増大する。したがって、モータと駆動用電池に間で入出力される電力、および駆動用電池から電気機器に出力される電力は、駆動用電池の内部損失を考慮して制御する必要がある。特許文献1、および特許文献2は内部損失を考慮した電動車両の制御システムを開示していない。
【0006】
本開示の課題は、回転電機に電力を入出力する電池で発生する内部損失を考慮した電動車両の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電動車両の制御システムは、車両に搭載される回転電機と、前記回転電機と異なる電気機器と、前記回転電機および前記電気機器に電力を出力するとともに、前記回転電機が発生した電力が入力される第1電池と、前記第1電池と前記回転電機との間で入出力される第1電力と、前記第1電池から前記電気機器に出力される第2電力と、を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記第1電力を前記第2電力に優先して決定し、前記第1電力に基づいて前記第1電池に入出力される第3電力を演算し、前記第3電力に基づいて前記第2電力を決定する。
【0008】
この電動車両の制御システムによれば、第1電力を第2電力に優先して決定し、第1電力に基づいて第1電池に入出力される第3電力を演算し、第3電力に基づいて第2電力を決定する。第3電力は、第1電池の内部損失に関わる電力である。この電動車両の制御システムによれば、第1電池の内部損失を考慮した制御ができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転電機に電力を入出力する電池で発生する内部損失を考慮した電動車両の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の実施形態による電動車両の制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【
図3】本開示の実施形態による電力の流れを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、車両の前後方向をQと図面に記し、前方をFと記す。また、車両の車幅方向をPと図面に記し、車両の後方からみて右側をRと記す。
【0012】
図1に示すように、本実施形態による電動車両の制御システム1は、四輪駆動型のハイブリッド自動車の制御システムである。電動車両の制御システム1は、内燃機関(ENG)2と、発電機(第1回転電機の一例:GEN)4と、フロントモータ(第2回転電機の一例:FrM)6と、発電機(第1回転電機の一例:GEN)6と、リアモータ(RM)8と、駆動用電池(第1電池の一例:BT)10と、制御装置(HVECU)20と、アクセルペダル22と、DC-DCコンバータ(電気機器の一例:DCDC)24と、電装部品26と、低電圧バッテリ(第2電池の一例)28と、を備える。
【0013】
本実施形態の電動車両の制御システム1は、フロントモータ6がトランスアクスル16を介して前輪12の前輪駆動軸12aを駆動する。リアモータ8は、減速機8cを介して後輪14の後輪駆動軸14aを駆動する。フロントモータ6は、フロントインバータ18を介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力が供給される。
【0014】
フロントインバータ18は、発電機4を制御する発電機制御装置(GCU)4aと、フロントモータ制御装置(FrMCU)6aと、発電機4を制御する発電機制御装置(GCU)4aと、を有する。フロントモータ制御装置6aは、制御装置20から信号を取得し、フロントモータ6が所望の運転状態となるようにフロントモータ6の回生と力行を制御する。リアモータ8も同様に、リアインバータ8bを介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力が供給される。リアインバータ8bは、リアモータ制御装置(RMCU)8aを有する。リアモータ制御装置8aは、制御装置20から信号を取得し、リアモータ8が所望の運転状態となるようにリアモータ8の回生と力行を制御する。
【0015】
内燃機関2は、トランスアクスル16を介して発電機4を駆動する。内燃機関2は、燃料タンク(Fuel TANK)23から供給される燃料が燃焼することで駆動する。内燃機関2の各種装置および各種センサは、エンジン制御装置(ENG-ECU)2aと電気的に接続される。エンジン制御装置2aは、制御装置20からの信号を取得し、内燃機関2が所望の運転状態となるように制御する。トランスアクスル16は、内燃機関2の回転速度を増幅し発電機4に伝達する。また、本実施形態のトランスアクスル16は、クラッチ16aを有する。クラッチ16aは、内燃機関2とフロントモータ6との間および内燃機関2と前輪駆動軸12aとの間で動力を伝達および遮断する。内燃機関2は、トランスアクスル16のクラッチ16aを介して前輪駆動軸12aに接続され、前輪駆動軸12aを駆動する。
【0016】
発電機4は、内燃機関2と接続され、内燃機関2によって駆動されることにより発電する。発電機4によって発電された電力は、駆動用電池10を充電可能であるとともに、フロントインバータ18およびリアインバータ8bを介して各モータに供給可能である。本実施形態では、発電機4はモータジェネレータであり、発電に加えて内燃機関2を回転駆動することによって内燃機関2をクランキングまたはモータリングすることができる。発電機4は、内燃機関2から駆動される場合、発電機4に負荷を与えることで発電する。一方、発電機4は、駆動用電池10から電力が供給され力行することによって内燃機関2を駆動しクランキングまたはモータリングさせる。発電機4は、フロントインバータ18に設けられた発電機制御装置4aによって制御される。発電機制御装置4aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20からの信号を取得し、発電機4が所望の運転状態となるように発電と力行を制御する。
【0017】
駆動用電池10は、各モータおよび発電機4に電力を出力するとともに、各モータおよび発電機4が発生した電力が入力される。本実施形態の駆動用電池10は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用電池10は、各モータの電源として機能する。さらに駆動用電池10は、電池モニタリングユニット(BMU)10aを有する。電池モニタリングユニット(BMU)10aは、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOCと記す)の算出、電池モジュールの劣化状態(State Of Health 以下 SOH)、電池モジュールの電圧Bv、および電池温度Btmpの検出を行う。電池モニタリングユニット10aは、駆動用電池10の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpを取得し、制御装置20に送信する。駆動用電池10のターミナル端子10bには、フロントインバータ18を介してフロントモータ6および発電機4に接続される高電圧ケーブル、リアインバータ8bを介してリアモータ8に接続される高電圧ケーブル、およびDC-DCコンバータ24に繋がる高電圧ケーブルが接続される。
【0018】
制御装置20は、少なくとも走行モードの切り替えをする制御と、各走行モードにおいて、内燃機関2を発電機4によってモータリングし始動する始動制御と、発電機4に発電させる発電制御と、各モータの回生と力行とを実行させる制御と、を実行する。
【0019】
本実施形態では、制御装置20は、速度V、充電率SOC、およびアクセル開度Thなどの情報に基づいて、クラッチ16aを制御することによって、シリーズ走行モード(シリーズモード)、パラレル走行モード(パラレルモード)、およびEV走行モード(EVモード)の中から、いずれかにひとつの走行モードに切り替える。
【0020】
EV走行モードにおいて、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、内燃機関2を停止させた状態で、駆動用電池10の電力を各モータに供給(出力)し、各モータが前輪駆動軸12aおよび後輪駆動軸14a(以下明細書において各駆動軸と記す)を駆動する。シリーズ走行モードにおいて、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、内燃機関2で発電機4を駆動し、発電機4で発電した電力を各モータに供給(出力)する。このとき、発電機4で発電した電力の一部は、駆動用電池10に入力し、充電する。パラレル走行モードでは、制御装置20は、クラッチ16aを接続し、内燃機関2とフロントモータ6の両方よって前輪駆動軸12aを駆動する。このとき、内燃機関2の出力の余剰分を発電機4の発電で使用する。このため、発電機4で発電した電力が駆動用電池10に入力される。
【0021】
また、制御装置20は、各走行モードにおいて各モータを回生させて電動車両Cを制動する場合、各モータの回生によって発生した電力を駆動用電池10に入力する。
【0022】
制御装置20は、各走行モードにおいて、各モータおよび発電機4と、駆動用電池10との間で入出力される主機入出力電力(第1電力の一例)Mpと、駆動用電池10からDC-DCコンバータ24に出力される補機出力電力(第2電力の一例)Spと、を制御する。制御装置20は、主機入出力電力Mpを補機出力電力Spに優先して決定し、主機入出力電力Mpに基づいて、駆動用電池10に入出力される電力の収支である電池入出力電力Bp(第3電力の一例)を演算する。そして、制御装置20は、電池入出力電力Bpに基づいて補機出力電力Spを決定する。制御装置20は、例えば、駆動用電池10から主機入出力電力Mpが出力された場合に、主機入出力電力Mpを負の値としてもよい。制御装置20は、駆動用電池10に主機入出力電力Mpが入力される場合に主機入出力電力Mpを正の値としてもよい。
【0023】
制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。制御装置20は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両の制御システム1が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。
【0024】
また、本実施形態では、エンジン制御装置2a、発電機制御装置4a、フロントモータ制御装置6a、リアモータ制御装置8a、および電池モニタリングユニット10aを含む各種制御装置が、それぞれ制御装置20と別に設けられる。各種制御装置は、それぞれ制御装置20と電気的に接続される。しかし、各種制御装置は、制御装置20と一体で設けられてもよい。各種制御装置は、制御装置20と同様に、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。
【0025】
アクセルペダル22は、電動車両Cのドライバが踏み込み操作することで、電動車両Cの加減速を制御するペダルである。アクセルペダル22には、踏み込み位置を検知するアクセルポジションセンサ22aが設けられる。アクセルポジションセンサ22aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20にアクセル踏み込み位置(アクセル開度Th)を送信する。
【0026】
DC-DCコンバータ24は、発電機4、または駆動用電池10から供給される直流電流を、電装部品26で使用可能な電圧まで降圧する装置である。電装部品26は、フロントモータ6よりも低い電圧で駆動可能な部品である。本実施形態では、電装部品26は、例えば低圧電源(例えば12V電源)によって駆動可能な、車室内のオーディオ等の装置、内燃機関2やフロントモータ6を冷却する冷却装置などの装置である。電装部品26は、制御装置20、およびエンジン制御装置2aなどの各種制御装置であってもよい。
【0027】
低電圧バッテリ28は、DC-DCコンバータ24によって変換された電力を蓄電する装置である。本実施形態では、電装部品26で使用可能な電圧の電力を蓄電するバッテリである。
【0028】
次に、
図2のフローチャート、および
図3の概略図を用いて、本実施形態の制御装置20の制御手順について説明する。制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることで、制御動作を開始する。なお、本実施形態ではリアモータ8を有する電動車両Cのため、実際には第2電力系統に流れる第2電力をフロントモータ6およびリアモータ8に分配しているが、以下説明においてリアモータ8への電力の分配については説明を省略する。したがって
図3においてもリアモータ8については省略する。
【0029】
ステップS1では、制御装置20は、主機入出力電力Mpを決定する。主機入出力電力Mpは、例えば、各モータが要求する電力に応じて決定してもよい。制御装置20は、例えば、駆動用電池10の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpと、に基づいて、駆動用電池10が出力可能な出力可能電力を演算し、出力可能電力とモータが要求する電力に基づいて、主機入出力電力Mpを決定してもよい。制御装置20は、主機入出力電力Mpを決定すると、ステップS2に処理を進める。
【0030】
ステップS2では、制御装置20は、EV走行モードか否か判断する。制御装置20は、EV走行モードであると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。ステップS3では、制御装置20は、主機入出力電力Mpに基づいて電池入出力電力Bpを演算する。
図3(a)に示すように、EV走行モードでは、主機入出力電力Mpは、駆動用電池10から各モータに流れるモータ電力Fpである。したがって、制御装置20は、主機入出力電力Mpを負の値にし、駆動用電池10の電池入出力電力Bpを演算する。また、制御装置20は、主機入出力電力Mpが駆動用電池10に入出力されていない状態(主機入出力電力Mpがプラスマイナスゼロ)における、基準補機出力電力Sp0を取得する。基準補機出力電力Sp0は駆動用電池10から出力される電力のため、負の値である。制御装置20は、主機入出力電力Mpに基準補機出力電力Sp0を加算し、電池入出力電力Bpを演算する。制御装置20は、電池入出力電力Bpを演算すると、ステップS4に処理を進める。
【0031】
ステップS4では、制御装置20は、低電圧バッテリ28の充電率SOC2を取得し、充電率SOC2が第1所定充電率SOCt1以上か否か判断する。第1所定充電率SOCt1は、低電圧バッテリ28が電装部品26に供給する電力が不足しないレベルの充電率であればよい。
【0032】
制御装置20は、ステップS4で、充電率SOC2が第1所定充電率SOCt1以上であると判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。ステップS5では、制御装置20は、充電率SOC2が第2所定充電率SOCt2以上か否か判断する。第2所定充電率SOCt2は、第1所定充電率SOCt1よりも高い充電率である。第2所定充電率SOCt2は、低電圧バッテリ28が電装部品26に供給する電力が十分であるか否かによって決定される値であってもよい。制御装置20は、ステップS4で、充電率SOC2が第1所定充電率SOCt1未満であると判断した場合(ステップS4 No)、ステップS1に処理を進める。
【0033】
制御装置20は、ステップS5で充電率SOC2が第2所定充電率SOCt2未満であると判断した場合(ステップS5 NO)、ステップS6に処理を進める。ステップS6では、制御装置20は、DC-DCコンバータ24への出力を抑制する出力抑制モード(第1モードの一例)を実行する。出力抑制モードは、基準補機出力電力Sp0よりも補機出力電力Spを抑制するモードである。EV走行モードでは、主機入出力電力Mp、および基準補機出力電力Sp0の両方が負の値である。すなわち、主機入出力電力Mp、および基準補機出力電力Sp0の両方が駆動用電池10から出力される。
【0034】
このような場合、駆動用電池10に流れる電流が多くなり、駆動用電池10の内部抵抗が大きくなる。このため、制御装置20は、出力抑制モードによって基準補機出力電力Sp0よりも補機出力電力Spを抑制し、駆動用電池10の内部損失を減少させる。一方で、主機入出力電力Mpを減少させると、電動車両Cの動力性能が低下する。このため、制御装置20は、主機入出力電力Mpを補機出力電力Spに優先して決定する。制御装置20は、出力抑制モードにすると処理をステップS1に進める。
【0035】
制御装置20は、ステップS4において、充電率SOC2が第1所定充電率SOCt1未満であると判断した場合(ステップS4 NO)、ステップS1に処理を進める。
【0036】
制御装置20は、充電率SOC2が第2所定充電率SOCt2以上であると判断した場合(ステップS5 YES)、ステップS7に処理を進める。ステップS7では、制御装置20は、DC-DCコンバータ24への補機出力電力Spの出力を停止する。これによって、制御装置20は駆動用電池10の内部損失をさらに減少させる。制御装置20は、補機出力電力Spの出力を停止すると、ステップS1に処理を進める。
【0037】
制御装置20は、ステップS2でEV走行モードでないと判断した場合(ステップS2 NO)、ステップS8に処理を進める。ステップS8では、制御装置20は、シリーズ走行モードか否か判断する。制御装置20は、シリーズ走行モードであると判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。ステップS9では、制御装置20は、主機入出力電力Mpに基づいて電池入出力電力Bpを演算する。
図3(b)に示すように、シリーズ走行モードでは、主機入出力電力Mpは、発電機4による発電電力Gpと各モータに流れるモータ電力Fpとの差分である。制御装置20は、発電電力Gpの方がモータ電力Fpよりも大きくなるように、発電機4を制御する。このため、発電電力Gpの一部は、主機入出力電力Mpとなって発電機4から駆動用電池10に入力される。したがって、制御装置20は、主機入出力電力Mpを正の値にし、駆動用電池10の電池入出力電力Bpを演算する。また、制御装置20は、基準補機出力電力Sp0を取得する。制御装置20は、主機入出力電力Mpから基準補機出力電力Sp0を減算し、電池入出力電力Bpを演算する。制御装置20は、電池入出力電力Bpを演算すると、ステップS10に処理を進める
【0038】
ステップS10では、制御装置20は、低電圧バッテリ28の充電率SOC2を取得し、充電率SOC2が第3所定充電率SOCt3以下か否か判断する。第3所定充電率SOCt3は、低電圧バッテリ28が電装部品26に供給する電力が不足するレベルの充電率であればよい。
【0039】
制御装置20は、ステップS10で充電率SOC2が第3所定充電率SOCt3以下と判断した場合(ステップS10 YES)、ステップS11に処理を進める。ステップS11では、制御装置20は、DC-DCコンバータ24への出力を増大する出力増大モード(第2モードの一例)を実行する。出力増大モードは、基準補機出力電力Sp0よりも補機出力電力Spを増大させるモードである。本実施形態の制御装置20は、出力増大モードを実行する際に、補機出力電力Spを走行モードに応じて複数の段階で増大させる。シリーズ走行モードでは、上記のとおり発電電力Gpがモータ電力Fpに使用される。このため、駆動用電池10に入力される主機入出力電力Mpは、パラレル走行モードよりも小さい。この結果、制御装置20は、後述するパラレル走行モードよりも補機出力電力Spの少ない、第1出力増大モードを実行する。
【0040】
このように、補機出力電力Spを増大することによって、主機入出力電力Mpの一部が補機出力電力Spとなって、駆動用電池10のターミナル端子10bからDC-DCコンバータ24に流れる。これによって、駆動用電池10に入力される電力が小さくなる。この結果、駆動用電池10の内部損失が減少する。
【0041】
制御装置20は、充電率SOC2が第3所定充電率SOCt3より大きいと判断する場合(ステップS10 NO)、ステップS1に処理を進める。
【0042】
制御装置20は、ステップS8でシリーズ走行モードでないと判断した場合(ステップS8 NO)、ステップS12に処理を進める。ステップS12では、制御装置20は、パラレル走行モードか否か判断する。制御装置20は、パラレル走行モードであると判断する場合(ステップS12 YES)、ステップS13に処理を進める。ステップS13では、制御装置20は、主機入出力電力Mpに基づいて電池入出力電力Bpを演算する。
図3(c)に示すように、パラレル走行モードでは、内燃機関2によって前輪駆動軸12aが駆動される。この間、制御装置20は、内燃機関2に発電機4を駆動させることによって、内燃機関2の負荷を増加させる。これによって、制御装置20は、内燃機関2を最良燃費点で運転する。発電機4で発電した発電電力Gpは、主機入出力電力Mpとなり駆動用電池10に入力される。このため、主機入出力電力Mpは正の値になる。したがって、制御装置20は、主機入出力電力Mpを正の値にし、駆動用電池10の電池入出力電力Bpを演算する。また、制御装置20は、基準補機出力電力Sp0を取得する。制御装置20は、主機入出力電力Mpから基準補機出力電力Sp0を減算し、電池入出力電力Bpを演算する。制御装置20は、ステップS13で電池入出力電力Bpを演算すると、ステップS14に処理を進める。
【0043】
ステップS14では、制御装置20は、低電圧バッテリ28の充電率SOC2を取得し、充電率SOC2が第3所定充電率SOCt3以下か否か判断する。制御装置20は、充電率SOC2が第3所定充電率SOCt3以下と判断した場合(ステップS14 YES)、ステップS15に処理を進める。ステップS15では、制御装置20は、DC-DCコンバータ24への出力を増大する出力増大モード(第2モードの一例)を実行する。パラレル走行モードでは、上記のとおり発電電力Gpが主機入出力電力Mpとなる。このため、駆動用電池10に入力される主機入出力電力Mpは、シリーズ走行モードよりも大きい。この結果、制御装置20は、シリーズ走行モードよりも補機出力電力Spが大きい、第2出力増大モードを実行する。これによって、主機入出力電力Mpの一部が、シリーズ走行モードよりも大きな補機出力電力Spとなって、駆動用電池10のターミナル端子10bからDC-DCコンバータ24に流れる。この結果、制御装置20は、内部損失を低減しながら短時間で低電圧バッテリ28を充電できる。
【0044】
制御装置20は、充電率SOC2が第3所定充電率SOCt3より大きいと判断した場合(ステップS14 NO)、ステップS1に処理を進める。
【0045】
制御装置20は、ステップS12でパラレル走行モードではないと判断した場合(ステップS12 NO)、ステップS16に処理を進める。ステップS16では、制御装置20は、各モータが回生しているか否か判断する。制御装置20は、各モータが回生しているか否かの判断を図示しないブレーキペダルのブレーキストロークセンサやブレーキスイッチなどによって判断してもよい。制御装置20は、回生していると判断した場合(ステップS16 YES)、ステップS17に処理を進め、主機入出力電力Mpに基づいて電池入出力電力Bpを演算する。
図3(d)に示すように、各モータが回生している場合、モータ電力Fpが主機入出力電力Mpとなって駆動用電池10に入力される。このため、主機入出力電力Mpは正の値になる。したがって、制御装置20は、主機入出力電力Mpを正の値にし、駆動用電池10の電池入出力電力Bpを演算する。また、制御装置20は、基準補機出力電力Sp0を取得する。制御装置20は、主機入出力電力Mpから基準補機出力電力Sp0を減算し、電池入出力電力Bpを演算する。制御装置20は、電池入出力電力Bpを演算すると、ステップS15に処理を進める。ステップS15以降は、パラレル走行モードと同様のため、説明を省略する。
【0046】
なお、制御装置20は、各モータが回生している場合、第2出力増大モードよりも大きな補機出力電力Spとしてもよい。制御装置20は、回生していないと判断する場合(ステップS16 NO)、ステップS1に処理を進める。制御装置20は、このような制御手順を所定期間毎に繰り返す。
【0047】
以上説明した通り、本開示の電動車両Cの制御システム1によれば、制御装置20が主機入出力電力Mpを補機出力電力Spに優先して決定し、主機入出力電力Mpに基づいて駆動用電池10に入出力される電池入出力電力Bpを演算し、電池入出力電力Bpに基づいて補機出力電力Spを決定する。電池入出力電力Bpは、駆動用電池10の内部損失に関わる電力である。
【0048】
制御装置20は、例えば電動車両Cが各モータのみによって走行するEV走行モードの場合、DC-DCコンバータ24への出力を抑制する出力抑制モードを実行し、補機出力電力Spを基準補機出力電力Sp0よりも抑制する。これによって、電池入出力電力Bpが減少し、駆動用電池10に流れる電力が減少する。この結果、内部損失が減少する。
【0049】
制御装置20は、例えば、発電機4が内燃機関2に駆動されるシリーズ走行モード、およびパラレル走行モードの場合、DC-DCコンバータ24への出力を増大する出力増大モードを実行し、補機出力電力Spを基準補機出力電力Sp0よりも増大する。このように、主機入出力電力Mpが正の値の場合、負の値である補機出力電力Spを増大することによっても電池入出力電力Bpが減少し、駆動用電池10に流れる電力が減少する。この結果、内部損失が減少する。このように、この電動車両Cの制御システム1によれば、駆動用電池10の内部損失を考慮した制御ができる。
【0050】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0051】
(a)上記実施形態では、四輪駆動型のハイブリッド自動車を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。電動車両Cは、内燃機関2を搭載していないバッテリEVであってもよい。このようなバッテリEVであっても、上記実施形態におけるEV走行モードの制御が適用できる。このほか電動車両Cは、前輪駆動のハイブリッド型およびプラグインハイブリッド型の自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。また、電動車両Cは、四輪駆動型のプラグインハイブリッド自動車であってもよい。さらに、本開示の電動車両Cの制御システム1を外部充電または外部給電が可能なプラグインハイブリッド車両に適用してもよい。
【0052】
(b)上記実施形態では、クラッチ16aを用いて、内燃機関2と前輪駆動軸12aを接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と前輪駆動軸12aは遊星ギヤを介して接続してもよい。
【0053】
(c)上記実施形態では、内燃機関2と発電機4をギヤで接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と発電機4は遊星ギヤを介して接続してもよい。
【0054】
(c)上記実施形態では、補機出力電力Spを基準補機出力電力Sp0よりも抑制する出力抑制モード、および補機出力電力Spを基準補機出力電力Sp0よりも増大する出力増大モードを例に説明したが、本開示はこれに限定されない。補機出力電力Spは、主機入出力電力Mp、および電池入出力電力Bpに基づいて決定されればよく、例えば、主機入出力電力Mp、電池入出力電力Bp、および補機出力電力Spとの関係を定めたマップなどから補機出力電力Spを決定してもよい。制御装置20は、このようなマップを低電圧バッテリ28の充電率に応じて複数記憶してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1:制御システム,2:内燃機関,4:発電機(第1回転電機の一例)
6:フロントモータ(第2回転電機の一例)
10:駆動用電池(第1電池の一例),20:制御装置
24:DC-DCコンバータ(電気機器の一例)
28:低電圧バッテリ(第2電池の一例)
C:電動車両,
SOC2:充電率
SOCt1:第1所定充電率
SOCt2:第2所定充電率
SOCt3:第3所定充電率
Mp :主機入出力電力(第1電力の一例)
Sp :補機出力電力(第2電力の一例)
Bp :電池入出力電力(第3電力の一例)