(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-12
(45)【発行日】2025-05-20
(54)【発明の名称】作業装置
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20250513BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20250513BHJP
A01C 15/04 20060101ALI20250513BHJP
【FI】
A01C15/00 G
A01C11/02 302
A01C15/04
(21)【出願番号】P 2023088908
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】東 靖之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
(72)【発明者】
【氏名】田井 義浩
(72)【発明者】
【氏名】讃井 琢哉
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-027976(JP,A)
【文献】特開2021-132613(JP,A)
【文献】特開2022-030945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00
A01C 11/02
A01C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪の駆動によって圃場内を走行しながら作業を行う作業車両において前記圃場へ資材を供給する作業を行うための作業装置であって、
前記資材を貯留する貯留部と、
繰出駆動軸を有し、前記繰出駆動軸の回転によって前記貯留部から前記資材を所定の量ずつ繰り出す繰出部と、
前記繰出駆動軸へ回転動力を付与可能な第1駆動源と、
前記繰出駆動軸へ回転動力を付与可能なモータである第2駆動源と、
前記第1駆動源および前記第2駆動源の少なくともいずれか一方から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与するように制御する制御部と
を備え
、
前記作業車両は、前記後輪へ駆動力を付与する後輪ギヤケースを有し、
前記第1駆動源は、前記後輪ギヤケースであり、
前記繰出駆動軸は、前記後輪ギヤケースから付与される回転動力によって回転し、
前記制御部は、前記後輪のスリップを検知し、前記後輪のスリップを検知した場合には、前記繰出駆動軸への回転動力の付与を前記後輪ギヤケースから前記第2駆動源へと切り替える
ことを特徴とする作業装置。
【請求項2】
前記作業車両は、当該作業車両の現在位置を取得する測位装置を有し、
前記制御部は、前記測位装置によって取得された前記作業車両の現在位置に基づいて該作業車両の第1走行速度を算出し、前記後輪の回転数から前記作業車両の第2走行速度を算出し、前記第1走行速度と前記第2走行速度とを比較することで前記後輪のスリップを検知し、前記後輪のスリップを検知しない場合には、前記後輪ギヤケースからの回転動力の付与とする
ことを特徴とする請求項
1に記載の作業装置。
【請求項3】
前記作業車両は、前記後輪へ駆動力を付与する後輪ギヤケースを有し、
前記第1駆動源は、前記後輪ギヤケースであり、
前記作業車両は、当該作業車両の現在位置を取得する測位装置を有し、
前記作業車両は、所定の固定値の供給量で前記圃場へ前記資材を供給する慣行供給作業と、区分けされた区画ごとの前記資材の供給量情報に基づいて前記圃場へ供給する前記資材の供給量を制御するマップ連動方式の供給作業とを含む前記資材の供給作業を行い、
前記制御部は、前記マップ連動方式の供給作業の場合には、前記後輪ギヤケースからの回転動力の付与とする
ことを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【請求項4】
前記作業車両は、当該作業車両の走行中に得られる前記圃場の情報から該圃場へ供給する前記資材の供給量を制御するリアルタイムセンシング方式の供給作業をさらに含む前記資材の供給作業を行い、
前記制御部は、前記測位装置によって取得された前記作業車両の現在位置が前記圃場外
であり、かつ、前記マップ連動方式の供給作業を行う場合に定義される作業指示値のない他の圃場であると判断した場合には、前記後輪ギヤケースからの回転動力の付与とし、前記第2駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与しない
ことを特徴とする請求項
3に記載の作業装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記マップ連動方式の供給作業または前記リアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、前記繰出部による前記資材の繰出量が多い場合は前記後輪ギヤケースからの回転動力の付与とし、前記繰出部による前記資材の繰出量が少ない場合は前記第2駆動源からの回転動力の付与とする
ことを特徴とする請求項
4に記載の作業装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記マップ連動方式の供給作業または前記リアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、前記繰出駆動軸へ付与する回転動力が所定以上となる場合は前記後輪ギヤケースからの回転動力の付与とし、前記繰出駆動軸へ付与する回転動力が所定未満となる場合は前記第2駆動源からの回転動力の付与とする
ことを特徴とする請求項
4に記載の作業装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記マップ連動方式の供給作業または前記リアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、前記測位装置による前記作業車両の現在位置の取得ができない場合または誤検知によって前記作業車両が前記圃場外に位置している場合は前記後輪ギヤケースからの回転動力の付与とし、
前記作業車両は、前記慣行供給作業による前記資材の供給作業を行う
ことを特徴とする請求項
4に記載の作業装置。
【請求項8】
前記作業車両は、前記後輪へ駆動力を付与する後輪ギヤケースを有し、
前記第1駆動源は、前記後輪ギヤケースであり、
前記第2駆動源は、前記繰出駆動軸への回転動力の付与として使用するとともに発電にも使用可能であり、前記第1駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与
している間に蓄電する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【請求項9】
前記作業車両は、当該作業車両の現在位置を取得する測位装置を有し、
前記測位装置は、当該作業車両の第1走行速度をさらに取得し、
前記作業車両は、所定の固定値の供給量で前記圃場へ前記資材を供給する慣行供給作業と、区分けされた区画ごとの前記資材の供給量情報に基づいて前記圃場へ供給する前記資材の供給量を制御するマップ連動方式の供給作業と、当該作業車両の走行中に得られる前記圃場の情報から該圃場へ供給する前記資材の供給量を制御するリアルタイムセンシング方式の供給作業とを含む前記資材の供給作業を行い、
前記制御部は、前記測位装置によって取得された前記作業車両の現在位置に基づいて該作業車両の第1走行速度を算出し、前記後輪の回転数から前記作業車両の第2走行速度を算出し、前記第1走行速度と前記第2走行速度とを比較することで前記後輪のスリップを検知し、
前記慣行供給作業の場合、前記後輪のスリップを検知しない場合は前記後輪ギヤケースから前記繰出駆動軸へ回転動力を付与し、前記後輪のスリップを検知した場合は前記第2駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与し、
前記マップ連動方式の供給作業の場合、前記後輪のスリップを検知しない場合は前記後輪ギヤケースおよび前記第2駆動源のいずれか一方を選択して前記後輪ギヤケースまたは前記第2駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与し、前記後輪のスリップを検知した場合は前記第2駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与し、
リアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、前記後輪のスリップを検知しない場合は前記後輪ギヤケースおよび前記第2駆動源のいずれか一方を選択して前記後輪ギヤケースまたは前記第2駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与し、前記後輪のスリップを検知した場合は前記第2駆動源から前記繰出駆動軸へ回転動力を付与する
ことを特徴とする請求項
8に記載の作業装置。
【請求項10】
前記作業車両は、区分けされた区画ごとの前記資材の供給量情報に基づいて前記圃場へ供給する前記資材の供給量を制御するマップ連動方式の供給作業と、当該作業車両の走行中に得られる前記圃場の情報から該圃場へ供給する前記資材の供給量を制御するリアルタイムセンシング方式の供給作業とを含む前記資材の供給作業を行い、
前記作業車両は、前記マップ連動方式の供給作業をベースに前記資材の供給作業を行い、
前記制御部は、前記マップ連動方式の供給作業の場合でも、前記リアルタイムセンシング方式の供給作業による前記圃場の情報に基づいて前記資材の供給量を調節する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場内を走行しながら作業を行う作業車両に設けられ、この作業車両から圃場へ肥料、薬剤および作物の種などの資材を供給するための作業装置において、資材の貯留部から資材を繰り出す繰出部をモータで駆動する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、たとえば、繰出部の駆動開始時や資材の詰まりの発生時のような繰出駆動軸に大きな負荷が発生するような場合には繰出部を適切に駆動することができないことがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、資材を繰り出す繰出部の繰出駆動軸に大きな負荷が発生するような場合でも繰出部を適切に駆動することができる作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る作業装置(40)は、後輪(16)の駆動によって圃場(F)内を走行しながら作業を行う作業車両(1)において圃場(F)へ資材(M)を供給する作業を行うための作業装置(40)であって、貯留部(41)と、繰出部(42)と、第1駆動源(51)と、第2駆動源(52)と、制御部(100)とを備える。貯留部(41)は、資材(M)を貯留する。繰出部(41)は、繰出駆動軸(421)を有し、繰出駆動軸(421)の回転によって貯留部(41)から資材(M)を所定の量ずつ繰り出す。第1駆動源(51)は、繰出駆動軸(421)へ回転動力を付与可能なものである。第2駆動部(52)は、モータであり、繰出駆動軸(421)へ回転動力を付与可能なものである。制御部(100)は、第1駆動源(51)および第2駆動源(52)の少なくともいずれか一方から繰出駆動軸(421)へ回転動力を付与するように制御する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る作業装置によれば、資材を繰り出す繰出部の繰出駆動軸に大きな負荷が発生するような場合でも繰出部を適切に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業装置を備える作業車両の一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業装置の第1駆動源および第2駆動源の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る作業装置の第1駆動源および第2駆動源の他の例を示す図(その1)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る作業装置の第1駆動源および第2駆動源の他の例を示す図(その2)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る作業装置を備える作業車両の制御系の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る作業装置を備える作業車両の自律作業の説明図(その1)である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る作業装置を備える作業車両の自律作業の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
<作業車両の全体構成>
図1を参照して実施形態に係る作業装置40を備える作業車両1の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る作業装置40を備える作業車両1の一例を示す概略側面図である。作業車両1は、圃場F内を走行しながら圃場Fで作業を行う。作業車両1は、圃場F内を走行しながら、この圃場Fの土壌面FSに苗を植え付ける「苗移植機」である。
【0011】
なお、
図1を含む各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。なお、以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0012】
また、以下では、作業車両である苗移植機1や後述する走行車体2を指して「機体」という場合がある。
【0013】
図1に示すように、苗移植機1は、走行車体2と、苗植付部3とを備える。走行車体2は、圃場F内を走行可能なものである。苗植付部3は、苗移植機1における作業機(作業装置)の一種であり、走行車体2に設けられる。苗植付部3は、圃場Fの土壌面FSに苗を植え付ける。苗移植機1は、操縦者(「作業者」ともいう)が搭乗して操縦する乗用型である一方、予め設定された作業経路に沿って自律走行しながら自動で苗の植え付け作業を行う機能を有する。
【0014】
走行車体2は、左右一対の前輪11と、左右一対の後輪12とを備える。走行車体2においては、左右一対の前輪11が操舵輪であり、左右一対の後輪12が駆動輪である。なお、たとえば、4WDモードの場合は、左右一対の前輪11および左右一対の後輪12が駆動輪となる。
【0015】
また、走行車体2の車体骨格を形成するメインフレーム13の前部には、後述する苗植付部3などへ駆動力を伝達するミッションケース14と、エンジンE(
図5参照)やモータなどの駆動源から供給される駆動力、すなわち、駆動源(たとえば、エンジンE)の回転動力をミッションケース14へ出力する油圧式の無段変速装置(図示せず)とが設けられる。無段変速装置は、たとえば、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。なお、以下では、無段変速装置を「HST」という。
【0016】
ミッションケース14内には、路上走行時や苗の植え付け時などにおける走行モードを切り替える副変速機構(図示せず)が設けられる。走行車体2では、ミッションケース14の左右側方に前輪ファイナルケース15が設けられ、左右の前輪ファイナルケース15の操向方向を変更可能な支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸に前輪11が取り付けられる。
【0017】
また、メインフレーム13の後部には、左右方向に延設された後部フレームの左右側方に後輪ギヤケース16が設けられ、後輪ギヤケース16からそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸に後輪12が取り付けられる。後輪ギヤケース16は、後輪12へ駆動力を付与する。
【0018】
また、後部フレームの上部には、後述する昇降リンク17を支持する左右のリンク支持フレーム18が上方へ向けて延設される。左右のリンク支持フレーム18の間には、左右のアッパリンク19および左右のロワリンクアーム20が設けられる。左右のアッパリンク19および左右のロワリンクアーム20の左右方向の間には、油圧によって駆動される昇降シリンダ21が設けられる。
【0019】
左右のアッパリンク19および左右のロワリンクアーム20は、平行リンク機構である昇降リンク17を形成する。なお、左右のアッパリンク19、左右のロワリンクアーム20および昇降シリンダ21は、それぞれの一端が走行車体2側に連結され、それぞれの他端が苗植付部3側に連結される。
【0020】
また、メインフレーム13上には、駆動源であるエンジンE(
図5参照)が搭載される。エンジンEの回転動力が、ベルト伝動装置(図示せず)およびHSTを介して、ミッションケース14へ伝達される。ミッションケース14へ伝達された回転動力は、ミッションケース14内の副変速機構によって変速された後、走行動力と外部取り出し動力とに分けられる。
【0021】
また、エンジンEの回転動力は、油圧ポンプ(図示せず)へ伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HSTや、ステアリングハンドル22のパワステ機構23(
図5参照)や昇降シリンダ21などへ供給される。
【0022】
ミッションケース14へ伝達された回転動力から取り出される外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチ24(
図5参照)へ伝達され、植付クラッチ24から植付伝動軸(図示せず)を介して苗植付部3へ伝達される。ミッションケース14の後部には、左右のドライブシャフト(図示せず)が設けられる。エンジンEからの回転動力は、ミッションケース14およびドライブシャフト(図示せず)を介して、左右の後輪ギヤケース16へ伝動される。
【0023】
なお、左右のドライブシャフトよりも動力伝達上流側には、左右のドライブシャフトに対する動力伝達を入切するサイドクラッチ25(
図5参照)が設けられる。
図1に示すように、たとえば、操縦席26の前方下部、かつ、左右側方には、左右のサイドクラッチ25を入切操作するサイドクラッチペダル(図示せず)が設けられる。
【0024】
左右のサイドクラッチペダルのうち、旋回内側のサイドクラッチペダルを踏み込んでサイドクラッチ25を切状態としてからステアリングハンドル22を操作して旋回走行すると、旋回内側の後輪12の駆動回転を遮断することができる。
【0025】
走行車体2におけるフロアステップ27の前方には、エンジンEを収容するボンネット28が設けられる。ボンネット28の後部には、操縦パネル29が設けられる。操縦パネル29には、メータパネルや、スイッチなどの各種操作具などが設けられる。
【0026】
また、ボンネット28の後部には、前輪11の操舵量を調整するために回転可能なステアリングハンドル(以下、「ハンドル」という)22、HSTや苗植付部3を操作する主変速レバー30、副変速機構を操作する副変速レバー31(
図5参照)などが設けられる。
【0027】
また、ボンネット28内には、燃料タンクやバッテリ、ハンドル22の操作に応じて左右の前輪11および左右の前輪ファイナルケース15の下部側を回動させる連動機構が設けられる。ボンネット28の前部は、開閉可能なフロントカバー28aによって覆われている。
【0028】
操縦席26の後方であって、メインフレーム13の後部には、後述する作業装置である施肥装置40が設けられる。施肥装置40の駆動力は、左右の後輪ギヤケース16の左右の一側方から施肥装置40へ臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
【0029】
ボンネット28の下部における左右側方には、フロアステップ27が形成される。フロアステップ27は、略水平であるとともに一部格子状であり、フロアステップ27上を歩く操縦者(作業者)や他の作業者の靴などについた泥がフロアステップ27に落ちても、落ちた泥などが圃場Fへ落下するようになる。
【0030】
また、走行車体2の前部、かつ、左右側方には、苗枠支柱32に複数の予備苗載せ台33を上下方向に間隔をあけて配置する予備苗枠34が設けられる。予備苗枠34は、苗植付部3に補給される苗マットや肥料袋などが載置可能である。
【0031】
また、昇降リンク17の後端部には、圃場Fの土壌面FSに植え付ける苗を含む苗マットを積載および貯留する苗タンク35が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に連結される。苗タンク35の下方には、積載された苗マットから苗を掻き取り、掻き取った苗を土壌面FSに植え付ける植付爪38を含む植付装置36が設けられる。
【0032】
植付装置36は、植付伝動ケース37と、植付爪38と、植付ロータリ39とを備える。植付装置36では、植付伝動ケース37が苗タンク35の下方に間隔をあけて設けられ、植付伝動ケース37の左右側方において植付爪38を回転させる植付ロータリ39が設けられる。植付装置36では、植付爪38が、回転しながら苗マットから苗を掻き取り、上記のように、掻き取った苗を圃場Fに植え付ける。
【0033】
また、苗移植機1は、苗植付部3の他に、圃場Fや圃場Fに生育している作物に対する作業装置40を備える。作業装置40は、圃場F内を走行する苗移植機1から圃場Fへ資材Mを供給する。本実施形態では、資材Mは、「肥料」であり、作業装置40は、資材である肥料Mを圃場Fへ供給(施肥)する「施肥装置」である。なお、資材Mには、肥料の他にも、薬剤や作物の種などがあり、作業装置40には、施肥装置の他にも、薬剤散布装置や播種装置などがある。
【0034】
作業装置である施肥装置40は、貯留部41と、繰出部42と、ダクトと、ホースと、ブロワと、第1駆動源51(
図2参照)と、第2駆動源52(
図2参照)と、制御部100(
図2参照)とを備える。
【0035】
貯留部(以下、「ホッパ」という)41は、資材である肥料M(
図1参照)を貯留する。ホッパ41は、苗植付部3の作業条数と同数に仕切られている。なお、ホッパ41は、たとえば、全条の半分ずつ(たとえば、8条の場合は4条ずつ)に仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
【0036】
繰出部42は、ホッパ41の下部に1条ごとに設けられ、ホッパ41から肥料Mを所定の量ずつ繰り出す。繰出部42は、繰出駆動軸(「施肥ロール」ともいう)421(
図2参照)を備える。繰出部42は、繰出駆動軸421の回転によって、ホッパ41の下部に設けられた肥料排出口から肥料Mを所定の量ずつ繰り出すことができる。
【0037】
ダクトは、繰出部42の下方に設けられ、繰出部42によって繰出された肥料Mを移動させる搬送風を通過させる。ホースは、繰出部42の下方に設けられ、苗植付部3において苗を植え付ける位置の近傍へ肥料Mを案内する。ブロワは、ダクトの一側端部に設けられ、モータの駆動力で搬送風を発生させる。
【0038】
第1駆動源51は、繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与可能である。第1駆動源51は、たとえば、後輪ギヤケース16である。後輪ギヤケース16は、後輪12へ駆動力を付与する他、繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ付与される回転動力は、施肥クラッチ44a(
図2参照)が「切」となることで解除される。施肥クラッチ44aが「入」となると、後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力が付与される。
【0039】
なお、第1駆動源51には、後輪ギヤケース16ではなく、専用の駆動モータ511(
図3および4参照)を用いてもよい。
【0040】
第2駆動源52は、第1駆動源51とは異なるモータであり、繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与可能である。
【0041】
ここで、
図2~4を参照して第1駆動源51および第2駆動源52について説明する。
図2は、実施形態に係る作業装置の第1駆動源51および第2駆動源52の一例を示す図である。
図3および4は、実施形態に係る作業装置の第1駆動源51および第2駆動源52の他の例を示す図である。なお、
図4は、
図3におけるIV部の拡大図である。
【0042】
図2に示すように、作業装置である施肥装置40は、ホッパ41の下方に繰出部42を備える。施肥装置40は、施肥伝動機構43を介して、後輪12(
図1参照)の車軸12aに設けられた後輪ギヤケース16からの回転動力を繰出駆動軸421へ伝達する。第1駆動源51となる後輪ギヤケース16側には、後輪ギヤケース16から施肥伝動機構43への動力伝達を入切する施肥クラッチ44aを備える施肥クラッチ機構44が設けられる。施肥クラッチ機構44は、施肥クラッチ44aの入切によって、出力軸45aへの動力伝達を入切する。
【0043】
施肥クラッチ機構44(施肥クラッチ44a)の接続(「入」)によって出力軸43aへ伝達された回転動力は、施肥伝動駆動ロッド43bから回転駆動の伝達方向を機体の前後方向へ変更する中継ロッド43cへと伝達され、中継ロッド43cからサブ駆動ロッド43dへと伝達され、サブ駆動ロッド43dから施肥調節機構45へと伝達される。このような施肥装置40は、後述する第2駆動源52(および制御部100)を除いて既存の構成である。
【0044】
図2に示すような第1駆動源51および第2駆動源52の一例では、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16は、肥料M(
図1参照)の供給量(施肥量)を調節する施肥調節機構45を介して、繰出部42の繰出駆動軸421と接続される。後輪ギヤケース16は、繰出駆動軸421へ回転動力を付与するためのメインの駆動源となる。
【0045】
第2駆動源52は、繰出部42の繰出駆動軸421と接続される。第2駆動源52は、繰出駆動軸421へ回転動力を付与するための補助的な駆動源(アシストモータ)となる。なお、第2駆動源52は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16とは別系統から繰出駆動軸421へ回転動力を付与するように構成されてもよい。
【0046】
第1駆動源51(後輪ギヤケース16)および第2駆動源52は、それぞれ制御部100に接続される。制御部100は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16および第2駆動源52の少なくともいずれか一方から繰出駆動軸421へ回転動力を付与するように制御する。制御部100は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16に対しては、施肥クラッチ44aを入切することで、後輪ギヤケース16からの繰出駆動軸421への回転動力を入切する。
【0047】
なお、
図2に例示するような施肥装置40は、既存の施肥装置に第2駆動源52などの構成を追加することで、容易に実現可能である。
【0048】
また、第2駆動源52は、繰出駆動軸421への回転動力の付与として使用する他、発電にも使用することが可能である。この場合、第2駆動源52は、第1駆動源51(後輪ギヤケース16)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与している間に蓄電する。このように、第2駆動源52の発電によって肥料Mの供給作業を行うことができ、ハイブリッド化を実現することができる。
【0049】
図3および4に示すような第1駆動源51および第2駆動源52の他の例では、第1駆動源51として、後輪ギヤケース16ではなく、専用の駆動モータ511を用いた例を示している。
【0050】
図3に示すように、第1駆動源51および第2駆動源52は、機体の左右方向に延在している繰出部42の左右いずれか一方の端部(たとえば、右端部)に設けられる。
【0051】
図4に示すように、第1駆動源51は、繰出部42(
図3参照)の繰出駆動軸421と接続される。第1駆動源51は、繰出駆動軸421へ回転動力を付与するためのメインの駆動源となる。第2駆動源52は、第1駆動源51と同様に、繰出部42(
図3参照)の繰出駆動軸421と接続される。第2駆動源52は、繰出駆動軸421へ回転動力を付与するための補助的な駆動源(「アシストモータ」ともいう)となる。
【0052】
第2駆動源52は、繰出駆動軸421への回転動力の付与として使用する他、発電にも使用することが可能である。この場合、第2駆動源52は、第1駆動源51から繰出駆動軸421へ回転動力を付与している間に蓄電する。このように、第2駆動源52の発電によって肥料Mの供給作業を行うことができ、ハイブリッド化を実現することができる。
【0053】
第1駆動源51(駆動モータ511)および第2駆動源52は、それぞれ制御部100に接続される。制御部100は、第1駆動源51となる駆動モータ511および第2駆動源52の少なくともいずれか一方から繰出駆動軸421へ回転動力を付与するように制御する。
【0054】
苗植付部3の下方には、フロート61が設けられる。フロート61は、中央のセンタフロート61aと、左右のサイドフロート61bとを備える。センタフロート61aおよび左右のサイドフロート61bは、圃場Fの土壌面FSに接地して、走行車体2の進行(前進)に伴い、土壌面FS上を滑走する。
【0055】
また、苗植付部3は、フロート61よりも前方に設けられ、土壌面FSを均すための整地ロータ62を備える。なお、整地ロータ62は、センタフロート61aの前方および左右のサイドフロート61bの前方のそれぞれに設けられる。苗植付部3は、整地ロータ62で均した土壌面FSに苗を植え付ける。整地ロータ62には、ロータ伝動シャフト(図示せず)を介して駆動力が伝達される。
【0056】
また、苗植付部3の左右側方には、左右のいずれか一方が圃場Fの土壌面FSに接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝(ガイド線)を形成する線引きマーカがそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカは、左右のいずれか一方が下降して接地すると他方が上昇する。また、左右の線引きマーカは、機体の旋回時に苗植付部3を上昇させたときには左右共に上昇し、機体旋回後に苗植付部3が下降すると、左右のいずれか一方が上昇して他方が下降(接地)する。
【0057】
また、走行車体2の左右方向の中央であり、かつ、ボンネット28の前方には、センタマスコット63が上方へ延びるように立設される。センタマスコット63を、左右の線引きマーカによって圃場Fの土壌面FSに形成されたガイド線に合わせることで、直前の作業条の作業位置にあわせた走行が可能となり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
【0058】
なお、圃場Fの土質によっては、左右の線引きマーカによって形成したガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカよりも前方に設けられた左右のサイドマーカを用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカを外側へ移動させ、前工程で植え付けた苗の上方にサイドマーカを位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能となる。
【0059】
図1に示すように、苗移植機1は、測位装置150をさらに備える。測位装置150は、走行車体2(苗移植機1)の現在位置P(
図6参照)を取得する。測位装置150は、たとえば、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛生測位システムを利用して、苗移植機1の現在位置Pを取得する。
【0060】
<作業車両の制御系>
次に、
図5を参照して作業車両(苗移植機)1の制御系について説明する。
図5は、実施形態に係る作業装置40を備える作業車両(苗移植機)1の制御系の一例を示すブロック図である。作業車両である苗移植機1は、
図2などに示すように、電子制御によって第1駆動源51および第2駆動源52を含む各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御部100を備える。
【0061】
制御部100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部を有し、これらが互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能なものである。なお、記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。制御部100は、記憶部などに格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0062】
制御部100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ70、油圧制御弁71,72、植付クラッチ作動ソレノイド73、サイドクラッチ作動ソレノイド74、HSTモータ75、ステアリングモータ76、線引きマーカ昇降モータ77、デフロック切替モータ78などが接続される。
【0063】
スロットルモータ70は、エンジンEの吸気量を調節するスロットルを作動させることで、エンジンEの出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁71は、昇降シリンダ21の伸縮動作を制御する。油圧制御弁72は、パワステ機構23を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド73は、植付クラッチ24を作動させる。
【0064】
サイドクラッチ作動ソレノイド74は、後輪12(
図1参照)への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ25を作動させる。HSTモータ75は、HSTのトラニオンの回動角度を変更することで、HSTの斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ76は、操舵輪である前輪11(
図1参照)を操舵駆動する。ステアリングモータ76は、前輪11の操舵量(「操舵角」または「切れ角」ともいう)を調整するハンドル22を駆動するモータである。線引きマーカ昇降モータ77は、線引きマーカを昇降させる。
【0065】
デフロック切替モータ78は、左右の車輪(たとえば、左右の前輪11)を同じ回転速度で回転させるデファレンシャルロック機構(以下、「デフロック機構」という)79の作動および作動停止を切り替えるモータである。デフロック機構79が「入」状態となることで、強制的に四輪駆動(4WDモード)とすることができ、左右の走行車輪が同じ回転速度で回転する。
【0066】
また、制御部100には、後輪回転数センサ80、操舵量センサ81、傾斜センサ82などが接続される。後輪回転数センサ80は、左右の後輪12に対応して2つ設けられ、左右の後輪12の回転数をそれぞれ検出する。
【0067】
操舵量センサ81は、ハンドル22の回転、すなわち、前輪11の操舵量を検出する。操舵量センサ81は、たとえば、ピットマンアームに連結する軸上に設けられる。傾斜センサ82は、走行車体2(苗移植機1)の傾きである傾斜角(たとえば、ロール角および/またはピッチ角)を検出する。
【0068】
また、制御部100には、操作信号として、たとえば、主変速レバー30、副変速レバー31、苗植付部昇降スイッチ83、線引きマーカ自動昇降スイッチ84、自動旋回切替スイッチ85、モード切替スイッチ86などから信号が入力される。
【0069】
苗植付部昇降スイッチ83は、苗植付部3を昇降を切り替えるスイッチである。苗植付部昇降スイッチ83は、「上昇」および「下降」位置に変更可能である。苗植付部昇降スイッチ83が「上昇」位置にあるときは、苗植付部3は、所定の非作業位置まで上昇し、植付装置36(
図1参照)が停止する非作業状態(苗植付部3の「切」状態)となる。苗植付部昇降スイッチ83が「下降」位置にあるときは、苗植付部3は、所定の作業位置まで下降し、植付装置36が作動する作業状態(苗植付部3の「入」状態)となる。すなわち、苗植付部昇降スイッチ83は、苗植付部3の作業状態が検出可能なスイッチである。
【0070】
線引きマーカ自動昇降スイッチ84は、ハンドル22の操舵量(すなわち、前輪11の操舵量)に連動して線引きマーカを自動的に昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。線引きマーカ自動昇降スイッチ84が「ON」のときは、操舵量に連動して線引きマーカを自動的に昇降させる制御が実行される。一方、線引きマーカ自動昇降スイッチ84が「OFF」のときは、操舵量に連動して線引きマーカを自動的に昇降させる制御は実行されない。
【0071】
自動旋回切替スイッチ85は、操縦者が苗移植機1を手動で操縦する場合において自動旋回の実行を可とするか不可とするかを切り替えるスイッチである。なお、自動旋回切替スイッチ85が「ON」のときは、自動旋回の実行を可とする。自動旋回切替スイッチ85が「OFF」のときは、自動旋回の実行を不可とする。モード切替スイッチ86は、苗移植機1の自律走行を実行するか否かを切り替えるスイッチである。
【0072】
なお、制御部100には、方位センサ(図示せず)などが接続されてもよい。方位センサは、たとえば、機体の進行方向の絶対方位角(たとえば、「北」を0°(360°)、「東」を90°、「南」を180°、「西」を270°)を検出する。方位センサは、一定時間ごとに絶対方位角を検出し、検出した絶対方位角を制御部100へ送信する。
【0073】
制御部100は、操舵量センサ81の検出結果に基づいて、ステアリングモータ66を介してハンドル22を制御する。制御部100は、ハンドル22を制御しつつ、測位装置150によって取得された苗移植機1の現在位置Pなどに基づいて、苗移植機1の直進制御および旋回制御を行う。
【0074】
制御部100は、上記のように、第1駆動源51(後輪ギヤケース16)および第2駆動源52の少なくともいずれか一方から、施肥装置40における繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与するように制御する。この場合、第1駆動源51は、繰出駆動軸421に対するメインの駆動源として機能する。また、第2駆動源52は、繰出駆動軸421に対して第1駆動源51と共に駆動する補助的な駆動源として機能する。すなわち、第2駆動源52は、繰出駆動軸421を補助的に駆動するためのアシストモータとなる。
【0075】
このような構成によれば、2つの駆動源によって資材Mを繰り出す繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与することが可能となるため、たとえば、繰出部42の駆動開始時や肥料Mの詰まりの発生時のような繰出駆動軸421に大きな負荷が発生するような場合でも繰出部42を適切に駆動することができる。また、第1駆動源51をメインの駆動源とし、第2駆動源52となるモータを補助的な駆動源(アシストモータ)とすることができる。これにより、メインの駆動源となる第1駆動源51の負担を軽減することができ、第1駆動源51の小型化が可能となる。
【0076】
なお、制御部100は、繰出部42の駆動開始時には、繰出部42が駆動開始してから一定負荷まで下がった後に第2駆動源52となるアシストモータのみを停止する。また、制御部100は、第2駆動源52となるアシストモータが異常停止した場合は、機体停止し、警告音を発生させたり、表示部に警告表示を表示させたりする。また、制御部100は、繰出部42の駆動開始時には、第1駆動源51が駆動モータ511である場合は、駆動モータ511を所定の角度だけ反対方向へ回転させてから回転させる。
【0077】
制御部100は、後輪12(
図1参照)のスリップを検知する。制御部100は、後輪12(
図1参照)のスリップを検知することで、苗移植機1のスリップを検知する。この場合、制御部100は、後輪回転数センサ80の検出結果に基づいて、後輪12(すなわち、苗移植機1)のスリップを検知する。
【0078】
制御部100は、スリップを検知した場合には、繰出駆動軸421への回転動力の付与を後輪ギヤケース16から第2駆動源52へと切り替える。すなわち、通常時には、後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には、第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0079】
このような構成によれば、通常時には既存の駆動源である後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には第2駆動源52となるモータから繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における肥料Mの供給量のより精密な制御が可能となる。これにより、肥料Mの部分的な供給ムラを抑えることができ、作物の生育の均一化を実現することができるとともに肥料Mの無駄な供給を抑えることができる。また、常時のモータ駆動が必要ないため、第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)の小型化が可能となる。
【0080】
なお、第1駆動源51(後輪ギヤケース16)から第2駆動源52へ切り替える場合、繰出部42が駆動されない時間をなくすために、所定の引き継ぎ時間が設定される。引き継ぎ時間においては、第1駆動源51および第2駆動源52の両方から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。引き継ぎ時間が経過すると、第1駆動源51を停止して、第2駆動源52からのみ回転動力を付与する。
【0081】
制御部100は、測位装置150によって取得された苗移植機1の現在位置Pに基づいて、圃場F内を走行している苗移植機1の走行速度(以下、「第1走行速度」という)を算出する。また、制御部100は、後輪回転数センサ80の検出結果に基づいて、圃場F内を走行している苗移植機1の走行速度(以下、「第2走行速度」という)を算出する。そして、制御部100は、測位装置150によって取得した第1走行速度と第2走行速度とを比較することで、後輪12(苗移植機1)のスリップを検知する。
【0082】
制御部100は、スリップを検知した場合には、上記のように、第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。制御部100は、スリップを検知しない場合には、第1駆動源51、すなわち、後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とする。
【0083】
このような構成によれば、スリップの検知を具体的に実現することができ、スリップ時には第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における肥料Mの供給量のより精密な制御が可能となる。これにより、たとえば、肥料Mの部分的な供給ムラを抑えることができ、作物の生育の均一化を実現することができるとともに肥料Mの無駄な供給を抑えることができる。
【0084】
ここで、
図6および7を参照して作業車両である苗移植機1の自律作業について説明する。
図6および7は、実施形態に係る作業装置40を備える作業車両(苗移植機1)の自律作業の説明図である。苗移植機1は、制御部100による各部の制御によって、上記のような自動直進および自動旋回を繰り返しながらの自律作業が可能である。
【0085】
図6に示すように、苗移植機1は、所定の圃場Fに対する作業指示を取得すると、測位装置150(
図1参照)によって取得された現在位置Pに基づいて、この圃場Fにおいて自律作業を行う。まず、苗移植機1は、圃場F内の周縁部を走行して、作業を行う圃場Fの形状を取得する第1工程(ティーチング工程)を行う。
【0086】
次いで、苗移植機1は、圃場F内の作業エリアAWにおいて直進および旋回を繰り返しながら走行する第2工程(自動往復工程)を行う。苗移植機1は、第2工程において、たとえば、圃場Fに苗を植え付けたり、圃場Fへ肥料Mを供給したりする作業を行う。
【0087】
次いで、苗移植機1は、作業エリアAWの外周であり、かつ、圃場Fの内周を走行する第3工程(自動内周工程)を行う。苗移植機1は、第3工程においても、たとえば、圃場Fに苗を植え付けたり、圃場Fへ肥料Mを供給したりする作業を行う。
【0088】
次いで、苗移植機1は、圃場Fの内周を走行しながら仕上げ作業を行う第4工程(仕上げ工程)を行い、この圃場Fにおける作業を終了する。なお、第1工程および第4工程においては、苗移植機1に操縦者(作業者)が搭乗して、苗移植機1を操縦することで行う。
【0089】
苗移植機1は、圃場Fへの肥料Mの供給作業を行う場合、慣行供給作業と、マップ連動方式の供給作業と、リアルタイムセンシング方式の供給作業とのいずれか1つを選択して実行する。
【0090】
慣行供給作業では、所定の固定値の供給量で圃場Fへ肥料Mを供給する。マップ連動方式の供給作業では、情報提供システムから提供されるマップデータを利用する。マップ連動方式の供給作業では、区分けされた区画ごとの肥料Mの供給量情報に基づいて、圃場Fへ供給する肥料Mの供給量を制御しながら肥料Mを供給する。リアルタイムセンシング方式の供給作業では、苗移植機1の走行中に深度センサや肥沃度センサなどから得られる、圃場Fの深度や肥沃度などの圃場Fの情報から、この圃場Fへ供給する肥料Mの供給量を制御しながら肥料Mを供給する。
【0091】
制御部100は、マップ連動方式の供給作業の場合には、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16(
図1参照)から繰出部42の繰出駆動軸421(
図3参照)へ回転動力を付与する。
【0092】
このような構成によれば、マップ連動方式の供給作業の場合には、第2駆動源52となるモータではなく、既存の駆動源である後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、苗移植機1の走行と連動した肥料Mの供給量となる。
【0093】
制御部100は、測位装置150によって取得された苗移植機1の現在位置Pが圃場F外であると判断した場合には、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。この場合、制御部100は、第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与しない。
【0094】
このような構成によれば、苗移植機1の現在位置Pが圃場F外であっても、すなわち、マップ連動方式の供給作業を行う場合に定義される作業指示値のない他の圃場Fなどであっても、肥料Mの供給作業を行うことができる。また、この場合、既存の駆動源である後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、苗移植機1の走行と連動した肥料Mの供給量となる。
【0095】
制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、繰出部42による肥料Mの繰出量が多い場合は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。また、制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、繰出部42による肥料Mの繰出量が少ない場合は、第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0096】
このような構成によれば、第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)に、出力が低めな安価なモータを用いることができる。また、繰出部42による肥料Mの繰出量が少ない場合、すなわち、肥料Mの繰出量に精度が要求される場合にはモータ駆動することで、繰出部42を適切に駆動することができる。
【0097】
制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、繰出部42の繰出駆動軸421へ付与する回転動力が所定以上となる場合は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。また、制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、繰出駆動軸421へ付与する回転動力が所定未満となる場合は、第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0098】
このような構成によれば、第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)に、出力が低めな安価なモータを用いることができる。また、たとえば、肥料Mの繰り出し始めのような繰出駆動軸421へ付与する回転動力が所定以上となる場合には後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、繰出部42を適切に駆動することができる。
【0099】
制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、測位装置150による苗移植機1の現在位置Pの取得ができない場合は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。また、制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、測位装置150などの誤検知によって苗移植機1が圃場F外に位置している場合も、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0100】
このような構成によれば、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合に電波のロストなどが原因で苗移植機1の現在位置Pの取得ができない場合には、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業から慣行供給作業に切り替えて、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、肥料Mの供給作業を継続することができる。また、誤検知によって苗移植機1が圃場F外に位置している場合にも、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業から慣行供給作業に切り替えて、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、肥料Mの供給作業を継続することができる。
【0101】
なお、苗移植機1では、制御部100は、傾斜センサ82(
図5参照)によって前輪11(
図1参照)が浮いた位置(すなわち、圃場Fにおいて深くなった位置)で自動的に肥料Mを減らす(減肥する)制御を行う。これにより、作物の倒伏を低減することができる。
【0102】
また、苗移植機1では、制御部100は、GPSなどにで取得した画像において圃場F周辺の障害物によって影になっている部分がある場合、影になっている部分には自動的に肥料Mを増やす(増肥する)制御を行う。これにより、作物の生育のばらつきを抑制することができる。
【0103】
また、苗移植機1では、制御部100は、後輪12のスリップを検知した位置で自動的に肥料Mを減らす(減肥する)制御を行う。これにより、作物の倒伏を低減することができる。
【0104】
また、苗移植機1では、制御部100は、第3工程(自動内周工程)においては、圃場Fが深くなるため、自動的に肥料Mを減らす(減肥する)制御を行う。これにより、作物の倒伏を低減することができる。
【0105】
また、苗移植機1では、制御部100は、第1工程(ティーチング工程)および第4工程(仕上げ工程)においては、自動的に肥料Mを減らす(減肥する)制御を行う。第1工程(ティーチング工程)および第4工程(仕上げ工程)の操縦者(作業者)の搭乗状態において減肥することで、作物の倒伏をより低減することができる。
【0106】
また、
図7に示すように、苗移植機1では、制御部100は、圃場F内において旋回があった位置で自動的に肥料Mを減らす(減肥する)制御を行う。これにより、作物の倒伏を低減することができる。
【0107】
また、
図7に示すように、苗移植機1では、制御部100は、苗移植機1が、耕耘作業および代掻き作業の作業エリアA
Wにおける進行方向と直交する方向へ進行する工程S1,S2,S3に苗を植え付ける場合、自動的に肥料Mを減らす(減肥する)制御を行う。このように、耕耘作業および代掻き作業を苗の植え付け作業と連動させた減肥制御を行うことで、作物の倒伏を低減することができる。
【0108】
また、苗移植機1では、制御部100は、第1工程(ティーチング工程)の実行中に可変施肥の圃場基準値を取得する。この場合、制御部100は、ティーチング走行した経路における圃場Fの深度や肥沃度の平均値を圃場基準値とする。このように、ティーチングと共に圃場基準値を取得することで、それぞれを別々に取得するような手間を省くことができ、自動走行時に受ける影響を低減することができる。
【0109】
また、苗移植機1では、制御部100は、第1工程(ティーチング工程)の実行中に可変施肥の圃場基準値を取得する場合、ティーチング走行した経路のそれぞれの中間位置における圃場Fの深度や肥沃度の平均値を圃場基準値とする。畦際や圃場Fの角部では圃場Fの中央部と土壌の質が異なることがあるが、ティーチング走行経路の中間位置における圃場Fの深度や肥沃度の平均値を圃場基準値とすることで、適切な圃場基準値を取得することができる。
【0110】
また、苗移植機1では、制御部100は、第1工程(ティーチング工程)の実行中に可変施肥の圃場基準値を取得する場合、上記のように、ティーチング走行した経路の平均値としつつ、利用場面によっては、畦際や圃場Fの角部と圃場Fの中央部との差分となる係数をかけて圃場基準値とする。
【0111】
また、苗移植機1では、制御部100は、第1工程(ティーチング工程)の実行中に可変施肥の圃場基準値を取得する場合、上記のように、ティーチング走行した経路の平均値としつつ、データにおける特異点となりやすい走行開始位置や旋回位置で取得したデータの影響度(重み)を下げる。
【0112】
また、苗移植機1では、制御部100は、第1工程(ティーチング工程)の実行中に可変施肥の圃場基準値を取得する場合、上記のように、ティーチング走行した経路の平均値としつつ、自動走行を開始した後の圃場Fの中央部を走行する場合に取得したデータと差が大きい場合は補正する。
【0113】
ここで、制御部100は、慣行供給作業の場合、スリップを検知しない場合は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。また、制御部100は、慣行供給作業の場合、スリップを検知した場合は、第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0114】
また、制御部100は、マップ連動方式の供給作業の場合、スリップを検知しない場合は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16および第2駆動源52のいずれか一方を選択して、後輪ギヤケース16または第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。また、制御部100は、マップ連動方式の供給作業の場合、スリップを検知した場合は、第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0115】
また、制御部100は、リアルタイムセンシング方式の供給作業の場合も、スリップを検知しない場合は、第1駆動源51となる後輪ギヤケース16および第2駆動源52のいずれか一方を選択して、後輪ギヤケース16または第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。また、制御部100は、マップ連動方式の供給作業の場合、スリップを検知した場合は、第2駆動源52から繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与する。
【0116】
このような構成によれば、慣行供給作業では、通常時には既存の駆動源である後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における肥料Mの供給量のより精密な制御が可能となる。また、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業では、通常時には第1駆動源51となる後輪ギヤケース16および第2駆動源52となるモータを切り替えて、いずれか一方から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における肥料Mの供給量のより精密な制御が可能となる。これらにより、たとえば、肥料Mの部分的な供給ムラを抑えることができ、作物の生育の均一化を実現することができるとともに肥料Mの無駄な供給を抑えることができる。また、常時のモータ駆動が必要ないため、第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)の小型化が可能となる。
【0117】
第1駆動源51となる後輪ギヤケース16および第2駆動源52となるモータを切り替え可能な施肥装置40において、第2駆動源52は、繰出駆動軸421への回転動力の付与として使用する他、発電にも使用することが可能である。この場合、第2駆動源52は、第1駆動源51から繰出駆動軸421へ回転動力を付与している間に蓄電する。このように、第2駆動源52の発電によって肥料Mの供給作業を行うことができ、ハイブリッド化を実現することができる。
【0118】
なお、第2駆動源52の状態が発電中か駆動中かがわかるように、たとえば、ハンドル22周りの表示部などに表示させてもよい。また、繰出部42の駆動が後輪ギヤケース16による駆動かモータ駆動かがわかるように、たとえば、ハンドル22周りの表示部などに表示させてもよい。
【0119】
また、苗移植機1は、基本的には、マップ連動方式の供給作業による肥料Mの供給作業を行う。制御部100は、苗移植機1がマップ連動方式の供給作業の場合であっても、リアルタイムセンシング方式の供給作業による圃場Fの情報(圃場Fの深度や肥沃度)に基づいて、肥料Mの供給量を調節する。
【0120】
このような構成によれば、マップ連動方式の供給作業の場合にリアルタイムセンシング方式の供給作業で使用する圃場Fの情報を用いて肥料Mの供給量を調節することで、自動減肥が可能となり、作物の倒伏などを軽減することができる。
【0121】
上述してきた実施形態により、以下の作業装置40が実現される。
【0122】
(1)後輪12の駆動によって圃場F内を走行しながら作業を行う作業車両1において圃場Fへ資材Mを供給する作業を行うための作業装置40であって、資材Mを貯留する貯留部41と、繰出駆動軸421を有し、繰出駆動軸421の回転によって貯留部41から資材Mを所定の量ずつ繰り出す繰出部42と、繰出駆動軸421へ回転動力を付与可能な第1駆動源51と、繰出駆動軸421へ回転動力を付与可能なモータである第2駆動源52と、第1駆動源51および第2駆動源52の少なくともいずれか一方から繰出駆動軸421へ回転動力を付与するように制御する制御部100とを備える、作業装置40。
【0123】
このような作業装置40によれば、第1駆動源51および第2駆動源52の2つの駆動源によって資材Mを繰り出す繰出部42の繰出駆動軸421へ回転動力を付与することが可能となるため、たとえば、繰出部42の駆動開始時や資材Mの詰まりの発生時のような繰出駆動軸421に大きな負荷が発生するような場合でも繰出部42を適切に駆動することができる。また、第1駆動源51をメインの駆動源とし、第2駆動源52となるモータを補助的な駆動源(アシストモータ)とすることができる。これにより、メインの駆動源となる第1駆動源51の負担を軽減することができ、第1駆動源51の小型化が可能となる。
【0124】
(2)上記(1)において、作業車両1は、後輪12へ駆動力を付与する後輪ギヤケース16を有し、第1駆動源51は、後輪ギヤケース16であり、繰出駆動軸421は、後輪ギヤケース16から付与される回転動力によって回転し、制御部100は、後輪12のスリップを検知し、後輪12のスリップを検知した場合には、繰出駆動軸421への回転動力の付与を後輪ギヤケース16から第2駆動源52へと切り替える、作業装置40。
【0125】
このような作業装置40によれば、上記(1)の効果に加えて、通常時には既存の駆動源である後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には第2駆動源52となるモータから繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における資材Mの供給量のより精密な制御が可能となる。これにより、たとえば、資材Mの部分的な供給ムラを抑えることができ、作物の生育の均一化を実現することができるとともに資材Mの無駄な供給を抑えることができる。また、常時のモータ駆動が必要ないため、第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)の小型化が可能となる。
【0126】
(3)上記(2)において、作業車両1は、作業車両1は、作業車両1の現在位置Pを取得する測位装置150を有し、制御部100は、測位装置150によって取得された作業車両1の現在位置Pに基づいて作業車両1の第1走行速度を算出し、後輪12の回転数から作業車両1の第2走行速度を算出し、第1走行速度と第2走行速度とを比較することで後輪12のスリップを検知し、後輪12のスリップを検知しない場合には、後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とする、作業装置40。
【0127】
このような作業装置40によれば、上記(2)の効果に加えて、スリップの検知を具体的に実現することができ、スリップ時には第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における資材Mの供給量のより精密な制御が可能となる。これにより、たとえば、資材Mの部分的な供給ムラを抑えることができ、作物の生育の均一化を実現することができるとともに資材Mの無駄な供給を抑えることができる。
【0128】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、作業車両1は、後輪12へ駆動力を付与する後輪ギヤケース16を有し、第1駆動源51は、後輪ギヤケース16であり、作業車両1は、作業車両1の現在位置Pを取得する測位装置150を有し、作業車両1は、所定の固定値の供給量で圃場Fへ資材Mを供給する慣行供給作業と、区分けされた区画ごとの資材Mの供給量情報に基づいて圃場Fへ供給する資材Mの供給量を制御するマップ連動方式の供給作業とを含む資材の供給作業を行い、制御部100は、マップ連動方式の供給作業の場合には、後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とする、作業装置40。
【0129】
このような作業装置40によれば、上記(1)~(3)のいずれかの効果に加えて、マップ連動方式の供給作業の場合には、第2駆動源52となるモータではなく、既存の駆動源である後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、作業車両1の走行と連動した資材Mの供給量となる。
【0130】
(5)上記(4)において、作業車両1は、作業車両1の走行中に得られる圃場Fの情報から圃場Fへ供給する資材Mの供給量を制御するリアルタイムセンシング方式の供給作業をさらに含む資材Mの供給作業を行い、制御部100は、測位装置150によって取得された作業車両1の現在位置Pが圃場F外であると判断した場合には、後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とし、第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与しない、作業装置40。
【0131】
このような作業装置40によれば、上記(4)の効果に加えて、作業車両1の現在位置Pが圃場F外であっても、すなわち、マップ連動方式の供給作業を行う場合に定義される作業指示値のない他の圃場Fなどであっても、資材Mの供給作業を行うことができる。また、この場合、既存の駆動源である後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、作業車両1の走行と連動した資材Mの供給量となる。
【0132】
(6)上記(5)において、制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、繰出部42による資材Mの繰出量が多い場合は後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とし、繰出部42による資材Mの繰出量が少ない場合は第2駆動源52からの回転動力の付与とする、作業装置40。
【0133】
このような作業装置40によれば、上記(5)の効果に加えて、第2駆動源52となるモータに、出力が低めな安価なモータを用いることができる。また、繰出部42による資材Mの繰出量が少ない場合、すなわち、資材Mの繰出量に精度が要求される場合にはモータ駆動することで、繰出部42を適切に駆動することができる。
【0134】
(7)上記(5)において、制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、繰出駆動軸421へ付与する回転動力が所定以上となる場合は後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とし、繰出駆動軸421へ付与する回転動力が所定未満となる場合は第2駆動源52からの回転動力の付与とする、作業装置40。
【0135】
このような作業装置40によれば、上記(5)の効果に加えて、第2駆動源52となるモータに、出力が低めな安価なモータを用いることができる。また、たとえば、資材Mの繰り出し始めのような繰出駆動軸421へ付与する回転動力が所定以上となる場合には後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、繰出部42を適切に駆動することができる。
【0136】
(8)上記(5)において、制御部100は、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、測位装置150による作業車両1の現在位置Pの取得ができない場合または誤検知によって作業車両1が圃場F外に位置している場合は後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とし、作業車両1は、慣行供給作業による資材Mの供給作業を行う、作業装置40。
【0137】
このような作業装置40によれば、上記(5)の効果に加えて、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業の場合に、電波のロストなどが原因で作業車両1の現在位置Pの取得ができない場合または誤検知によって作業車両1が圃場F外に位置している場合には、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業から慣行供給作業に切り替えて、後輪ギヤケース16からの回転動力の付与とすることで、資材Mの供給作業を継続することができる。
【0138】
(9)上記(1)~(8)のいずれかにおいて、作業車両1は、後輪12へ駆動力を付与する後輪ギヤケース16を有し、第1駆動源51は、後輪ギヤケース16であり、第2駆動源52は、繰出駆動軸421への回転動力の付与として使用するとともに発電にも使用可能であり、第1駆動源51から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する場合は発電のために蓄電する、作業装置40。
【0139】
このような作業装置によれば、上記(1)~(8)のいずれかの効果に加えて、第2駆動源52の発電によって資材Mの供給作業を行うことができ、ハイブリッド化を実現することができる。
【0140】
(10)上記(9)において、作業車両1は、作業車両1の現在位置Pを取得する測位装置150を有し、測位装置150は、作業車両1の第1走行速度をさらに取得し、第1駆動源51は、作業車両1は、所定の固定値の供給量で圃場へ資材を供給する慣行供給作業と、区分けされた区画ごとの資材Mの供給量情報に基づいて圃場Fへ供給する資材Mの供給量を制御するマップ連動方式の供給作業と、作業車両1の走行中に得られる圃場Fの情報から圃場Fへ供給する資材Mの供給量を制御するリアルタイムセンシング方式の供給作業とを含む資材Mの供給作業を行い、制御部100は、測位装置150によって取得された作業車両1の現在位置Pに基づいて作業車両1の第1走行速度を算出し、後輪12の回転数から作業車両1の第2走行速度を算出し、第1走行速度と第2走行速度とを比較することで後輪12のスリップを検知し、慣行供給作業の場合、後輪12のスリップを検知しない場合は後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、後輪12のスリップを検知した場合は第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、マップ連動方式の供給作業の場合、後輪12のスリップを検知しない場合は後輪ギヤケース16および第2駆動源52のいずれか一方を選択して後輪ギヤケース16または第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、後輪12のスリップを検知した場合は第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、リアルタイムセンシング方式の供給作業の場合、後輪12のスリップを検知しない場合は後輪ギヤケース16および第2駆動源52のいずれか一方を選択して後輪ギヤケース16または第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、後輪12のスリップを検知した場合は第2駆動源52から繰出駆動軸421へ回転動力を付与する、作業装置40。
【0141】
このような作業装置によれば、上記(9)の効果に加えて、慣行供給作業では、通常時には既存の駆動源である後輪ギヤケース16から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における資材Mの供給量のより精密な制御が可能となる。また、マップ連動方式の供給作業またはリアルタイムセンシング方式の供給作業では、通常時には後輪ギヤケース16および第2駆動源52を切り替えて、いずれか一方から繰出駆動軸421へ回転動力を付与し、スリップ時には第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)から繰出駆動軸421へ回転動力を付与することで、スリップ時における資材Mの供給量のより精密な制御が可能となる。これらにより、たとえば、資材Mの部分的な供給ムラを抑えることができ、作物の生育の均一化を実現することができるとともに資材Mの無駄な供給を抑えることができる。また、常時のモータ駆動が必要ないため、第2駆動源52となるモータ(アシストモータ)の小型化が可能となる。
【0142】
(11)上記(1)~(10)のいずれかにおいて、作業車両1は、区分けされた区画ごとの資材の供給量情報に基づいて圃場Fへ供給する資材Mの供給量を制御するマップ連動方式の供給作業と、作業車両1の走行中に得られる圃場Fの情報から圃場Fへ供給する資材Mの供給量を制御するリアルタイムセンシング方式の供給作業とを含む資材Mの供給作業を行い、作業車両1は、マップ連動方式の供給作業をベースに資材Mの供給作業を行い、制御部100は、マップ連動方式の供給作業の場合でも、リアルタイムセンシング方式の供給作業による圃場Fの情報に基づいて資材Mの供給量を調節する、作業装置40。
【0143】
このような作業装置によれば、上記(1)~(10)のいずれかの効果に加えて、マップ連動方式の供給作業の場合にリアルタイムセンシング方式の供給作業で使用する圃場Fの情報を用いて資材Mの供給量を調節することで、たとえば、資材Mが肥料の場合には、自動減肥が可能となり、作物の倒伏などを軽減することができる。
【0144】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0145】
1 作業車両(苗移植機)
12 後輪
16 後輪ギヤケース
40 作業装置(施肥装置)
41 貯留部(ホッパ)
42 繰出部
421 繰出駆動軸
51 第1駆動源
52 第2駆動源(アシストモータ)
100 制御部
150 測位装置
F 圃場
M 資材(肥料)
P 現在位置